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▶ ロンザ コロン ゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】細胞懸濁液供給装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
C12M1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513371
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2021075893
(87)【国際公開番号】W WO2022073754
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】20200202.8
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523063759
【氏名又は名称】ロンザ コロン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グライスナー、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】トドール、クラウディウ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB01
4B029CC01
4B029GB05
4B029HA05
(57)【要約】
本発明は、細胞を処理するための器具に細胞懸濁液を供給するための装置に関し、当該装置は、懸濁液を保持するための少なくとも1つの内部空間16を備え、また内部空間16は壁15によって少なくとも部分的に囲まれている。当該装置は更に、内部空間16に懸濁液を導入するための少なくとも1つの第1開口部3を有する少なくとも1つのインレットポート2と、前記内部空間16から懸濁液を除去するための少なくとも1つの第2開口部を有する少なくとも1つのアウトレットポートとを備えている。インレットポート2は、壁15に対して最も遠い側で第1開口部3に接し、第1開口部3と内部空間16との間に部分的に配置される、少なくとも1つのバリア要素6を更に備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を処理するための器具に細胞懸濁液を供給するための装置であって、前記装置は、前記懸濁液を保持するための少なくとも1つの内部空間(16、21)を備え、前記内部空間(16、21)は少なくとも部分的に壁(15、20)で囲まれており、前記装置は更に、前記懸濁液を前記内部空間(16、21)に導入するための少なくとも1つの第1開口部(3)を含む少なくとも1つのインレットポート(2)と、前記内部空間(16、21)から前記懸濁液を除去するための少なくとも1つの第2開口部(25)を含む少なくとも1つのアウトレットポート(23)とを備え、前記インレットポート(2)は更に、前記壁(15、20)に対して最も遠い側で前記第1開口部(3)に接しているとともに、前記第1開口部(3)と前記内部空間(16、21)との間に部分的に配置されている、少なくとも1つのバリア要素(6)を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記壁(15、20)が少なくとも1つの凹部(17、26)と前記バリア要素(6)とを有し、前記凹部(17、26)が、前記内部空間(16、21)に流れ込む空洞(18)を形成している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インレットポート(2)が前記壁(15、20)に近い領域に配置され、前記凹部(17、26)は前記第1開口部(3)に近い領域に配置される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1開口部(3)と、少なくとも1つの第1ホースへ接続可能に設計された少なくとも1つの第3開口部(5)との間に配置された管状チャネル(4)を、前記インレットポート(2)が更に備えている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第2開口部(25)と、少なくとも1つの第2ホースへ接続可能に設計された少なくとも1つの第4開口部(19)との間に配置された管状チャネル(29)を、前記アウトレットポート(23)が更に含んでいる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記インレットポート(2)が、前記内部空間(16、21)を覆うように設計されたキャップ状要素(1)の一部である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記キャップ状要素(1)が、少なくとも1つの磁性要素を保持するための少なくとも1つのリテーナ(11)を更に備えている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記壁(20)と前記アウトレットポート(23)との間にある移行領域(28)が均一に形作られている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記アウトレットポート(23)が、前記内部空間(21)の底部(24)の中心点に配置されている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記アウトレットポート(23)が、前記内部空間(21)の最も深い点に配置されている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記内部空間(21)の前記底部エリア(24)が、磁性要素を受け止めて誘導するための平坦で円形の領域を有する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記内部空間(16、21)内の圧力バランスをとるための少なくとも1つの第5開口部(8)を有する、少なくとも1つの通気ポート(7)を更に備える、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記壁(15、20)および/または前記キャップ状要素(1)の外側表面が、前記装置の位置を固定するための少なくとも1つの凹部および/または突起(13、27)を備えている、請求項1から請求項12のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を処理するための器具に細胞懸濁液を供給する装置に関し、前記装置は、懸濁液を保持するための少なくとも1つの内部空間を備え、前記内部空間は少なくとも部分的に壁で囲まれている。前記装置は更に、前記内部空間に懸濁液を導入するための少なくとも1つの第1開口部を含む少なくとも1つのインレットポートと、前記内部空間から懸濁液を除去するための少なくとも1つの第2開口部を含む少なくとも1つのアウトレットポートとを備える。
【背景技術】
【0002】
US 2019/0169572 A1は、自動バイオリアクタおよびエレクトロポレーションユニットを含む細胞治療製品の製造システムを開示しており、細胞培養物はバイオリアクタからエレクトロポレーションユニットへ流れ、再び戻ってくる。このシステムは更に、細胞エンジニアリングカセット、エレクトロポレーションカートリッジ、2つのエレクトロポレーションリザーバ、および2つの接続チューブセットなど、いくつかの使い捨て消耗品を含んでいる。エレクトロポレーションリザーバには、ルアーロック接続端部付きのインレットおよびアウトレット用溶接可能チューブ、リザーバへの無菌細胞移送用の外部インレットリザーバチューブに接続されたリザーバハウジング内の細胞インレットポート、リザーバのインレットチューブ上のルアーロック基材用追加ポート、ならびにボリューム転送中の空気逃しのためのキャップ上のベントフィルター、が含まれている。ただし、各リザーバの細胞インレットポートはリザーバハウジングの中央位置に配置されているため、細胞懸濁液は比較的高所からリザーバの内部空間に落下する結果、各液滴はリザーバハウジングの表面および/またはリザーバ内に既に存在する液体と衝突する。そのため、細胞はリザーバに移送される際に大きな応力を受け、生存性が低下する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、細胞処理装置に細胞懸濁液を供給する器具を提供することであり、これによって細胞の穏やかで保存性に優れた供給が可能となり細胞の生存性を高めることができる。
【0004】
この目的は、壁に対して最も遠い側で第1開口部に接し、第1開口部と内部空間との間にその一部が配置されている少なくとも1つのバリア要素を、インレットポートに更に備えた、冒頭に述べた装置によって達成される。このようにバリア要素は、内部空間に導入された細胞懸濁液が壁の内面に沿って穏やかに流れるように配置されるため、第1開口部から内部空間に懸濁液が落下し、その結果懸濁液の液滴が任意の表面と衝突することを回避できる。細胞懸濁液がインレットポートに導入されると、懸濁液はバリア要素によって壁の方向に偏向され、その流れが減速され、懸濁液は壁に沿って第1開口部から内部空間にゆっくりと流れる。その結果、細胞は機械的応力にさらされず、細胞収率を大幅に向上させることができる。更に、予想できない細胞損失を回避できるため、試験結果の再現性あるいは製品収量も向上する。
【0005】
本発明の有利な実施形態では、壁は少なくとも1つの凹部を含み、バリア要素と凹部とが、内部空間に流れ込む空洞を形成する。したがって、バリア要素および凹部は、インレットポートに導入された細胞懸濁液がバリア要素によって凹部方向に偏向され、その流れが減速されるように配置および設計されている。このように懸濁液は空洞内に蓄積し、空洞から壁に沿ってゆっくりと内部空間に流れる。その結果、細胞の機械的応力への曝露を更に減らすことができる。
【0006】
本発明の更に有利な実施形態では、インレットポートは壁に近い領域に配置され、凹部は第1開口部に近い領域に配置される。このような配置により、第1開口部と凹部との、および第1開口部と壁との距離が短くなるため、細胞の機械的応力への曝露が更に減少する。この特定の配置により、本発明に拠る装置の製造がしやすくなる。
【0007】
本発明のもうひとつの有利な実施形態では、インレットポートが、第1開口部と、少なくとも1つの第1ホースへ接続可能に設計された少なくとも1つの第3開口部との間に配置された管状チャネルを更に備えている。本発明の更に有利な実施形態では、アウトレットポートが、第2開口部と、少なくとも1つの第2ホースへ接続可能に設計された少なくとも1つの第4開口部との間に配置された管状チャネルを更に備えている。したがって、本発明に拠る装置は、容器/リザーバおよび/または細胞処理/エンジニアリングシステムの他の装置に容易に接続することができる。たとえば、インレットポートおよび/またはアウトレットポートの管状チャネルをルアーテーパ接続の雄型金具として設計すれば、細胞処理/エンジニアリングシステムの他のパーツと装置との接続を標準化することができる。
【0008】
このように、本発明に拠る装置は、細胞懸濁液、また任意選択によりDNA、RNA、タンパク質または他の生物学的活性分子のような基質のためのリザーバとして使用し、前記リザーバから、細胞および任意選択により基質を、細胞処理/エンジニアリングシステム、例えば大容量細胞トランスフェクション器具に供給することができる。
【0009】
インレットポートは、内部空間を覆うように設計されたキャップ状要素の一部であっても良い。キャップ状要素は、スナップアクション接続などによって、内部空間を囲む壁に(可逆的に)取り付けることができる。これに代えて、あるいは付加的にでも良いが、キャップ状要素は、接着接合あるいは溶接接続などによって、内部空間を囲む壁に(不可逆的に)取り付けても良い。またキャップ状要素は壁の一部であっても良い。つまり、キャップ状要素と壁が1つのパーツ/ピースとして成形されることになる。更にキャップ状要素は、本発明に拠る装置の内部空間を囲む壁の少なくとも一部を含んでも良い。
【0010】
本発明の有利な実施形態においては、キャップ状要素は、少なくとも1つの磁性要素(例えば攪拌棒)を保持するための少なくとも1つのリテーナを備えることができる。
【0011】
本発明のさらなる有利な実施形態では、壁とアウトレットポートとの間の移行領域(エリア)が均一に形成される。この手段により、細胞懸濁液をほとんど残留物なしに内部空間から完全に除去することができる。したがって、処理された細胞の損失を最小限に抑えることができる。
【0012】
壁および/または内部空間は、任意の種類の形/形状にできる。例えば、壁および/または内部空間は、球状、立方体状、円筒状もしくは柱状、または箱状もしくは矩形のブロック形状を有し得る。好ましくは、内部空間は細長い形状で垂直方向または少なくとも傾斜した方向性を有し、インレットポートとアウトレットポートは内部空間の両端に配置される。例えば、本発明に拠る装置は、チューブの一方の遠位端にあるインレットポートとチューブのもう一方の遠位端にあるアウトレットポートとを含む細長いチューブで構成し得る。本発明の好ましい実施形態では、細胞懸濁液は重力によってインレットポートから内部空間の底部および/またはアウトレットポートに押し出される。
【0013】
本発明の有利な実施形態では、アウトレットポートは内部空間底部の中心点に配置される。アウトレットポートはまた、内部空間の最も深い点に、好ましくは底部が急角度で落ち込むようにして配置しても良い。これらの手段により、細胞懸濁液を残留物なしに除去することが可能になり、貴重な細胞の損失を最小限に抑えることもできる。
【0014】
本発明に拠る装置は基本的に、内容物を最大限に回収できるよう特に最適化されている。つまり、1ml以下のごく少量の細胞懸濁液であっても、装置の内部空間に充填することができ、更にその全てをそこから除去することができる。このような完全な細胞除去は、袋など従来のリザーバを使用した場合には達成できない。
【0015】
本発明に拠る装置の壁は、医療グレードポリカーボネート(マクロロン 2458)などの合成材料で作られても良い。好ましい実施形態では、合成材料にコーティング(少なくとも壁の内表面において)を施しても良く、および/または、特定の有益な特性、例えば、更に少量の細胞懸濁液(例:1ml未満)を装置の内部空間から完全に除去できるようにする疎水性特性を得るために、本質的に改変しても良い。
【0016】
本発明のさらなる有利な実施形態では、内部空間の底部エリアは、磁性要素(例えば、攪拌棒)を受け止め、誘導するための平坦で円形の領域を有している。これにより、細胞懸濁液を処理中に完全に攪拌することができ、磁性要素の滑らかで一定の動きが保証される。したがって、細胞の不均一な混合や懸濁液内の乱流の発生を回避し、細胞の機械的応力への曝露を更に低減できる。
【0017】
本発明に拠る装置は、更に、内部空間内の圧力バランスをとるための少なくとも1つの第5開口部を有する、少なくとも1つの通気ポートを備え得る。通気ポートは、通気バルブを備えても良く、および/または、内部空間内の細胞懸濁液の汚染を回避するために、滅菌メンブレンフィルタなどのフィルタエレメントを備えることができる。
【0018】
本発明のさらなる有利な実施形態では、本発明に基づく装置が、好ましく下記のような支持装置によって保持される場合には、壁および/またはキャップ状要素の少なくとも外側の表面に、装置の位置を固定するための、少なくとも1つの凹部および/または突起を備える。
【0019】
更に、本発明に基づく装置を保持するための支持装置が設けられ、前記支持装置は、装置を保持するための少なくとも1つのベース要素と、少なくとも1つの取付け要素とで構成されており、その取付け要素は、装置に収容される少なくとも1つの磁性要素を保持するための磁性手段を有している。取付け要素は、好ましくは本発明に基づく装置の内部空間内において、細胞懸濁液または生物学的/化学的溶液を攪拌するために使用される磁性要素のための一種のトラップとして機能する。磁性要素を含む装置が磁性手段に沿って誘導されるように支持装置に固定されている場合、磁性要素は磁性手段によって保持され、装置の壁に固定されることにより、装置のアウトレットポートから遠ざけられる。こうしなければ磁性要素が装置からの懸濁液または溶液の除去を妨げることになるため、この機能により、残留物の無い懸濁液/溶液の除去が保証され、貴重な材料の損失を更に低減できる。
【0020】
磁性手段は、支持装置と一体化された部分であっても良く、または支持装置に(可逆的または不可逆的に)取り付けることができる別の部材であっても良い。
【0021】
取付け要素は、装置を固定するための少なくとも1つの突起または凹部を更に備えても良い。ここで取付け要素の突起および/または凹部は、装置の壁および/またはキャップ状要素の凹部および/または突起にそれぞれ対応する。したがって、装置は、特定の用途に有用である特定の位置で、支持装置に容易かつ確実に固定することができる。
【0022】
本明細書で使用する場合、「細胞懸濁液」とは、液体(例えば、水、生理食塩水、細胞培養培地など)を含む流体を指し、その中で細胞が懸濁されるものである。細胞は、ヒトまたは動物の細胞などの高等真核細胞、細菌または酵母などの微生物、あるいは生物学的に活性な小器官または小胞であり得る。液体は、懸濁細胞と混合される基質(例えばDNA、mRNA、タンパク質、または他の生物学的に活性な分子)を更に含み得る。
【0023】
本発明を、図を参照しながら更に例示的に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による装置の一部(キャップ)の好ましい実施形態の概略図を示す。a)斜視図b)上面図
図2図1に示す一部(キャップ)の背面側の概略図を示す。a)平面図b)バリア要素の拡大図
図3図1に示す一部(キャップ)と、本発明に拠る装置の好ましい実施形態の壁の一部を縦方向に切り開いた断面を示す。
図4】本発明に拠る装置の、別の一部(ボディー、壁)の好ましい実施形態の概略図を示す。a)斜視図b)上面図
図5図4に示す一部(ボディー、壁)を縦方向に切り開いた断面を示す。a)一部の全体b)一部の底部(拡大図)
図6】本発明に拠る装置を保持する支持装置の好ましい実施形態の概略図を示す。a)斜視図b)縦方向の断面
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1および図2は、本発明に拠る装置の一部を示しており、前記一部とは装置の内部空間を覆うように設計されたキャップ状要素1である。キャップ状要素1は、細胞懸濁液を装置の内部空間(図3から5を参照)に導入するための第1開口部3を含むインレットポート2を備えている。インレットポート2は、第1開口部3と、少なくとも1つの第1ホース(図示せず)へ接続可能に設計された少なくとも1つの第3開口部5との間に配置された管状チャネル4を更に含んでいる。インレットポート2はまた、バリア要素6を含み、これによって懸濁液が装置の壁の方向に偏向され(図3を参照)、懸濁液が流れる速度が減速し、懸濁液が壁に沿って第1の開口3から内部空間内へとゆっくり流れるようになる。バリア要素6は、第1開口部3に配置され、壁に対して最も遠い側で第1開口部3に接している。バリア要素6は、第1開口部3と内部空間との間に部分的に配置されている。その結果、バリア要素6は、内部空間に導入された細胞懸濁液が壁の内面に沿って穏やかに流れるように配置されるため、第1開口部3から内部空間への懸濁液の落下、また懸濁液の液滴と装置底部との衝突、あるいは内部空間内にすでに存在する懸濁液表面との衝突を効果的に回避することができる。細胞懸濁液がインレットポート2に導入されると、懸濁液はバリア要素6によって壁の方向に偏向され、その流れが減速され、懸濁液は壁に沿って第1開口部3から内部空間にゆっくりと流れるため、細胞が機械的応力に曝露されることがない。懸濁液が流れる距離を短くするため、インレットポート2、特に第1開口部3は装置の壁に近い領域に配置される。
【0026】
キャップ状要素1は更に、内部空間内の圧力バランスをとるために、第5開口部8を含む通気ポート7を備えている。通気ポート7は更に、第5開口部8と、内部空間内の細胞懸濁液の汚染を回避するために例えばフィルタエレメントに接続できるように設計された少なくとも1つの第6開口部10との間に配置された、管状チャネル9を含んでいる。
【0027】
またキャップ状要素1は、本発明に基づく装置が好ましく図6に示すような支持装置によって保持されている場合には、装置の位置を固定するための突起13を含む。更に、キャップ状要素1の下側には、少なくとも1つの磁性要素を保持するための少なくとも1つのリテーナ11が備えられている。
【0028】
キャップ状要素1は、スナップアクション手段12によって、内部空間を囲む壁に可逆的に取り付けられ得る。なお、キャップ状要素1は、接着接合手段を使って、内部空間を囲む壁に不可逆的に取り付けられても良い。後者の場合、キャップ状要素1が内部空間を囲む壁に押し付けられる前に、適切な接着剤を接着路14に塗布すれば良い。
【0029】
図3は、図1および図2に示すキャップ状要素1を、本発明に拠る装置の壁15の一部を含めて縦方向に切り開いた断面を示す。図3から明らかなように、バリア要素6は、懸濁液が装置の内部空間16を囲む壁15の方向に偏向し、壁15の内面に沿って内部空間16に流れ込むように配置されている。このために、バリア要素6は、第1開口部3に配置され、壁15に対して最も遠い側で第1開口部3に接している。バリア要素6は、懸濁液が内部空間16に直接落下しないように、第1開口部3と内部空間16との間に部分的に配置されている。したがって、懸濁液の液滴が装置の底部またはそこに既に存在する懸濁液の表面と衝突するのを回避できるため、機械的応力への細胞の曝露は最小限に抑えられる。これに対して、細胞懸濁液がインレットポート2に導入されると、懸濁液はバリア要素6によって壁15の方向に偏向されるため、その流速が減速され、懸濁液は壁15に沿って第1開口部3から内部空間16にゆっくりと流れ得る。懸濁液が流れる距離を短くするため、インレットポート2、特に第1開口部3は壁15に近い領域に配置される。
【0030】
壁15は、バリア要素6と共に内部空間16に流れ込む空洞18を形成する凹部17を備える。このように、バリア要素6および凹部17は、インレットポート2に導入された細胞懸濁液がバリア要素6によって凹部17方向に偏向され、その流れが減速されるように配置および設計されている。したがって懸濁液は空洞18内に蓄積し、空洞18から壁15に沿ってゆっくりと内部空間16に流れ込む。その結果、細胞の機械的応力への曝露を更に減らすことができる。凹部17は、インレットポート2と第1開口部3に近い領域に配置することが望ましい。
【0031】
キャップ状要素1は更に、内部空間内の圧力バランスをとるために、第5開口部8を有する通気ポート7を備えている。通気ポート7は更に、第5開口部8と、内部空間内の細胞懸濁液の汚染を回避するため例えばフィルタエレメントに接続可能に設計された少なくとも1つの第6開口部10との間に配置された管状チャネル9を含んでいる。そのうえ、キャップ状要素1は、少なくとも1つの磁性要素(例えば、攪拌棒)を保持するための少なくとも1つのリテーナ11をその下側に備えている。
【0032】
図4および図5は、本発明に拠る装置の一部を示しており、前記一部とは、本発明に拠る装置の内部空間21を囲む壁20(ボディー)である。内部空間21を覆うために、図1から図3に示すキャップ状要素1を壁20の上部領域22に取り付けても良い。壁20と内部空間21は、どちらも細長い形状と垂直方向の向きを有し、インレットポート(ここでは図示せず)とアウトレットポート23は内部空間21の両端に配置される。アウトレットポート23は、内部空間21の底部24に配置され、内部空間21から懸濁液を除去するための第2開口部25を備えている。アウトレットポート23は、第2開口部25と、少なくとも1つの第2ホース(図示せず)へ接続可能に設計された第4開口部19との間に配置された、管状チャネル29を更に備えている。
【0033】
壁20は、内部空間21に流れ込む空洞をバリア要素(図示せず)と共に形成する凹部26を更に備える。このように、バリア要素と凹部26は、インレットポートに導入された細胞懸濁液がバリア要素によって凹部26方向に偏向され、その流れが減速されるように配置および設計されている。したがって、懸濁液は空洞内に蓄積し、空洞から壁20に沿ってゆっくりと内部空間21に流れ込む。その結果、細胞の機械的応力への曝露を更に減らすことができる。凹部26は、インレットポートと第1開口部に近い領域に配置することが望ましい。
【0034】
加えて壁20は、本発明に基づく装置が好ましく図6に示すような支持装置によって保持されている場合には、装置の位置を固定するための突起27を備える。
【0035】
図5から明らかなように、アウトレットポート23は、底部24の中心点かつ内部空間21の最も深い点に配置されており、壁20は底部エリア24で急激に下降している。このような有利な構造により、細胞懸濁液を残留物なしに内部空間21から除去することが可能になり、貴重な細胞の損失を最小限に抑えることができる。壁20とアウトレットポート23との間の移行領域28は、均一に、すなわち凹凸、縁取り、またはエッジが無い形状に作られるため、内部空間21からアウトレットポート23へのスムーズな移行が保証される。この手段により、細胞懸濁液をほとんど残留物なしに内部空間から完全に除去することができる。更に、細胞が内部空間21から除去される際の、不要な機械的応力を防止することができる。
【0036】
図6は、少なくとも1つのベース要素31と少なくとも1つの取付け要素32を備えた、本発明に拠る装置33を保持するための支持装置30の好ましい実施形態を示している。取付け要素32は、装置33の内部空間36に収容される少なくとも1つの磁性要素35を保持するための磁性手段34を含む。この実施形態において、磁性手段34は、支持装置30の取付け要素32に可逆的に取り付けることができる別個の部材である。磁性手段34は、プラスチック製部材37と一体化されており、それを取り付け要素32に取り付けるための手段を備えている。その結果、磁性手段34、そして取付け要素32は磁性要素35のトラップとして機能し、磁性手段34に沿って案内されるように装置33が支持装置30に固定される場合には、磁性要素35は磁性手段34によって保持され、装置33の上部領域の壁38に固定される。その結果、磁性要素35は、装置33の内部空間36からの細胞懸濁液の除去を妨げないように装置33のアウトレットポート39から遠ざけられる。
【0037】
更に、取り付け要素32は、装置33を固定するための凹部40を含み、前記凹部40は、装置33の壁38の突起41に対応している。この手段により、装置33は、特定の用途に有用である特定の位置で、支持装置30に固定することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】