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特表2023-543130L-キシロン酸からL-トレオン酸塩を生産する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】L-キシロン酸からL-トレオン酸塩を生産する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/235 20060101AFI20231005BHJP
   C25B 3/07 20210101ALI20231005BHJP
   C13B 50/00 20110101ALI20231005BHJP
   C07C 59/10 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 51/00 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 47/19 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 45/54 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 51/47 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/191 20060101ALN20231005BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C07C51/235
C25B3/07
C13B50/00
C07C59/10
C07C51/00
C07C47/19
C07C45/54
C07C51/47
A61K31/191
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513590
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-16
(86)【国際出願番号】 US2021048057
(87)【国際公開番号】W WO2022047231
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】62/706,632
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518399070
【氏名又は名称】ディーエフアイ ユーエスエー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタプリー,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンダース,ダヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
4H039
4K021
【Fターム(参考)】
4C206AA04
4C206DA02
4C206DA07
4C206NA20
4H006AA02
4H006AC45
4H006AC46
4H006AD17
4H006BA05
4H006BN10
4H006BS10
4H039CA65
4H039CC30
4K021AC05
(57)【要約】
L-キシロン酸からL-トレオン酸を生産する効率的な方法が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-キシロン酸からL-トレオン酸を生産する方法であって、L-キシロニック(xylonic)を提供することと、L-キシロン酸をL-トレオースへと脱炭酸することと、前記L-トレオースをL-トレオン酸へと酸化することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記L-キシロン酸が、L-ソルボースまたはKLGの化学的脱炭酸から生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記L-キシロン酸が、L-キシロースの酸化から生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記L-キシロン酸が、次亜塩素酸または過酸化水素を使用して、トレオースへと脱炭酸される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記L-キシロン酸が、電気化学セル内でトレオースへと脱炭酸される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記L-キシロン酸が、KLGの同時脱炭酸によって提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記L-トレオースが、酸素および金属水酸化物の存在下で触媒を使用してL-トレオン酸へと酸化される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記L-トレオースが、酸素および金属水酸化物の存在下で触媒を使用してL-トレオン酸へと酸化される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記L-トレオースが、酸素および金属水酸化物の存在下で触媒を使用してL-トレオン酸へと酸化される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記L-トレオースが、酸素および金属水酸化物の存在下で触媒を使用してL-トレオン酸へと酸化される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記L-トレオースが、酸素および金属水酸化物の存在下で触媒を使用してL-トレオン酸へと酸化される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記L-トレオースが、酸素および金属水酸化物の存在下で触媒を使用してL-トレオン酸へと酸化される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が金系である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が金系である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が金系である、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が金系である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒が金系である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が金系である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記トレオースが、陽イオン交換樹脂を含有する分離ゾーンを通して前記脱炭酸溶液を溶出することによって精製される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、L-キシロン酸から高純度のL-トレオン酸塩を生産するプロセスに関し、L-キシロン酸を提供することと、L-トレオースを生産するためにL-キシロン酸を脱炭酸することと、L-トレオン酸塩を生産するためにL-トレオースを酸化することと、を含む。本開示はまた、プロセス内の未反応材料のリサイクルにも関する。
【背景技術】
【0002】
L-トレオン酸は、価値のある商業用の糖酸であり、その塩は、医薬品およびサプリメント調製に採用される。特にL-トレオン酸マグネシウムおよびL-トレオン酸カルシウムは、サプリメント業界では重要な製品である。L-トレオン酸の塩は、従来、米国特許第4,822,816号、同第4,968,716号、および中国特許第1,267,662A号、ならびに同第106,083,567A号のように、アルカリ分解または過酸化物脱炭酸によってアスコルビン酸から生産される。これらの方法は、高価な試薬を使用し、選択性が低く、また希釈溶液中で実行されるため、容易に入手可能な原材料から選択的な様態で高純度のL-トレオン酸塩を生産するニーズが依然としてある。
【発明の概要】
【0003】
L-トレオン酸塩の調製のための方法が見出されたが、これが本発明の対象であり、以下の段階を含むことを特徴とする:L-キシロン酸が提供され、かつ脱炭酸されてL-トレオースを生じ、L-トレオースは、好ましくは貴金属触媒を使用して、そしてより好ましくは未反応の酸を除去した後、L-トレオン酸へと酸化される。本方法は、無駄を最小化し、かつ操業コストを低減するために、以下のリサイクル工程を含むことが好ましい:L-トレオースからの未反応L-キシロン酸の分離、およびL-トレオース生産のための原材料としての再使用、好ましくは、陽イオン交換樹脂を収容する分離ゾーンを通した反応生成物の溶出。
【発明を実施するための形態】
【0004】
定義
本明細書で使用される場合、L-キシロン酸という用語は、アルドン酸、L-キシロン酸およびその塩を指す。L-キシロン酸の塩は、L-キシロネートと呼ばれる。例えば、L-キシロン酸のナトリウム塩は、ナトリウムL-キシロネートである。
【0005】
本明細書で使用される場合、L-トレオースという用語は、L-トレオースを指す。L-トレオースは希少糖であり、また現時点では工業的に生産されていない。
【0006】
本明細書で使用される場合、KLGという用語は、2-ケト-L-グロン酸、およびその塩を指す。2-ケト-L-グロン酸(2-keto-L gulonic acid)の塩は、2-ケト-L-グロネートと呼ばれる。例えば、2-ケト-L-グロン酸のナトリウム塩は、ナトリウム2-ケト-L-グロネートである。KLGは、アスコルビン酸生産中の中間体である。
【0007】
本明細書で使用される場合、L-ソルボースという用語は、ケトースL-ソルボースを指す。L-ソルボースは、アスコルビン酸生産中の中間体である。
【0008】
本明細書で使用される場合、金属水酸化物という用語は、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、またはカルシウムの水酸化物塩を指す。
【0009】
本明細書で使用される場合、「脱炭酸」という用語は、化学反応または物理的プロセスによるカルボキシル基(-COOH)の除去を指す。脱炭酸反応の典型的な産物としては、二酸化炭素(CO2)またはギ酸が挙げられる場合がある。
【0010】
「電気化学」という用語は、導電体(電極)とイオン性導体(電解質)との界面において行われる化学反応を指す。電気化学反応は、二つの導電性材料(または単一の導電性材料の二つの部分)の間に電位を生成することができ、または外部電圧の印加によって引き起こすことができる。一般に、電気化学は、酸化反応および還元反応が空間内で分離される状況に対処する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「電解」という用語は、一つ以上の化学結合の破壊をもたらす電気化学的酸化または還元反応を指す。本明細書で使用される場合、電解反応は、陰極または陽極との相互作用の産物として生じる反応を記述することが好ましい。
【0012】
L-キシロン酸の提供
本方法は、L-キシロン酸をL-トレオン酸の生産のための原材料として提供することを必要とする。L-キシロン酸は、異なる経路、例えば、Isbell et al., J. Res. Nat. Bur. Stand. 29(1942)227-232および米国特許第6,894,199 B2号のように、L-ソルボースの酸化を通して生産することができる。KLGは、Isbell et al. Carbohydr. Res. 36(1974)283-291および米国特許第6,894,199 B2号のように、アルカリ性過酸化水素を使用して、脱炭酸して、キシロン酸を良好な収率で生じることができる。L-キシロースは、すべてのアルドースのように、貴金属触媒を介して、その対応するアルドン酸、L-キシロン酸に酸化することができる。KLGもまた、電気化学的に脱炭酸されて、L-キシロン酸を生産することができる。
【0013】
キシロン酸脱炭酸
アルドン酸は、米国特許第5,714,602号のように、次亜塩素酸および過酸化水素システムを含む様々な化学システムを使用して脱炭酸することができる。アルドン酸は、米国特許第7,598,374号、同第7,955,489号、および同第9,702,047号のように、電気化学セルを使用して、選択的に脱炭酸されて、炭素が一つ少ない糖を生じることができる。例えば、米国特許第7,955,489号は、エリトロースを生じるための、水性D-またはL-アラビノニック(arabinonic)の電解脱炭酸を記述する。糖酸の電気化学的脱炭酸は、二電子酸化である。
【0014】
本開示の一実施形態では、キシロン酸の脱炭酸工程は、電気化学セルを使用して実施される。好ましくは、電気化学セルは、陽極と、陰極と、陽極室と陰極室とを分離する陽イオン交換膜を含む。一実施形態では、L-キシロン酸は、KLGの同時電気化学的脱炭酸によってセル内に提供される。
【0015】
L-トレオース酸化
アルドースは、化学的酸化によってアルドン酸塩へと選択的に酸化することができる。貴金属触媒は、文献に広く記述されており、そして特に金触媒は、Theilecke, et al, Catalisalysis Today, 115-120(2007)によって記述されるように、この酸化のために大変に効果的であることが示されている。L-トレオースは、PCT出願第PCT/US2020/070085号に記述されるように、L-トレオン酸マグネシウムへと酸化される。
【0016】
本開示の一実施形態では、L-トレオース酸化の工程は、金属水酸化物の存在下で加圧酸素または空気を使用して実施される。酸化は、金系触媒を使用して実施されることが好ましい。より好ましくは、95%超のL-トレオースがL-トレオン酸へと変換される。
【0017】
トレオース精製
糖、糖酸、およびポリオールの混合物は、しばしばクロマトグラフィーで分離され、また産業的には疑似移動床クロマトグラフィーを使用する。陽イオン交換樹脂を含有する分離ゾーンをクロマトグラフィー媒体として使用することができ、様々なカチオン種を用いて、異なる糖溶出速度がもたらされる。カルシウムは、米国特許第3,416,961号、同第4,472,203号、同第8,802,843号のように、グルコースおよびフルクトース、ならびにガラクトースおよびタガトースを分離するために広く使用されてきた。ナトリウムは、米国特許第6,030,820号のように、グリセロールとエリスリトールを分離するために使用されてきた。
【0018】
本開示の一実施形態では、L-キシロン酸の電気化学的脱炭酸から生産されたL-トレオースおよびL-キシロン酸の溶液は、陽イオン交換樹脂を含有する分離ゾーンを通して溶出される。水は溶離液であり、二つの生成物溶液が収集され、一方は主にL-トレオースから成り、もう一方は主に酸から成る。陽イオン交換樹脂は、酸と同じカチオン性形態であることが好ましい。
【実施例
【0019】
[実施例1]
キシロン酸の2モル溶液が提供された。この溶液を、グラファイト箔陽極、陽イオン交換膜、およびステンレス鋼陰極を備える電気化学セルを通った流れの陽極液として使用した。陰極液は、水酸化カリウムの3.5モル溶液であった。陽極液の温度を31℃に維持した。90mA/cm2の幾何学的電極表面の電流をセルに印加した。陽極液の中和は、陽極液に水酸化カリウムを添加することによって維持された。セルを6.8時間実行した。反応の終了時に、932mmolのL-キシロン酸、および694mmolのL-トレオースがあった。
【0020】
[実施例2]
カリウム2-ケト-L-グロニック(potassium 2-keto-L-gulonic)の2モル溶液を6のpHで提供した。この溶液を、グラファイト箔陽極、陽イオン交換膜、およびステンレス鋼陰極を備える電気化学セルを通った流れの陽極液として使用した。陰極液は、水酸化カリウムの3.5モル溶液であった。陽極液の温度を45℃に維持した。100mA/cm2の幾何学的電極表面の電流をセルに印加した。陽極液の中和は、陽極液に水酸化カリウムを添加することによって維持された。セルを19.5時間実行した。反応の終了時に、5.4mmolのKLG、254mmolのL-キシロン酸、および577mmolのL-トレオースがあった。
【0021】
[実施例3]
350mlの50グラム毎リットルのL-トレオース溶液を、KLGの電気化学的脱炭酸から提供し、1Lの撹拌タンク圧力容器へと添加した。2.8gの4.5%の金触媒、および9.78gの水酸化マグネシウムを溶液に添加した。容器を酸素で1回パージし、次いで酸素で100psiに加圧し、撹拌した。反応を3時間後に停止した。98.6%のL-トレオースが、L-トレオン酸マグネシウムに変換された。
【0022】
[実施例3]
2リットルのカラムを調製し、そしてカリウム形態の陽イオン樹脂Diaion UBK550で充填し、70℃で維持した。150mlのL-トレオースおよびL-キシロン酸の25%ブリックス溶液を、電気化学的脱炭酸から提供し、0.54ベッドボリューム毎時で、水で溶出した。溶出の%ブリックスを、屈折率を使用して測定した。L-トレオースおよびL-キシロン酸はベースライン溶解され、またL-トレオース画分が収集され、これから酸の98%が取り出された。
【0023】
ステートメント
【0024】
1)L-キシロン酸からL-トレオン酸を生産する方法であって、L-キシロニック(xylonic)を提供することと、L-キシロン酸をL-トレオースへと脱炭酸することと、L-トレオースをL-トレオン酸へと酸化することと、を含む、方法。
【0025】
2)L-キシロン酸が、L-ソルボースまたはKLGの化学的脱炭酸から生産される、ステートメント1の方法。
【0026】
3)L-キシロン酸が、L-キシロースの酸化から生産される、ステートメント1の方法。
【0027】
4)L-キシロン酸が、次亜塩素酸または過酸化水素を使用して、トレオースへと脱炭酸される、ステートメント1の方法。
【0028】
5)L-キシロン酸が、電気化学セル内でトレオースへと脱炭酸される、ステートメント1の方法。
【0029】
6)L-キシロン酸が、KLGの同時脱炭酸によって提供される、ステートメント5に記載の方法。
【0030】
7)L-トレオースが、酸素および金属水酸化物の存在下で触媒を使用してL-トレオン酸へと酸化される、ステートメント1~6のうちのいずれか一つの方法。
【0031】
8)触媒が金系である、ステートメント7の方法。
【0032】
9)トレオースが、陽イオン交換樹脂を含有する分離ゾーンを通して脱炭酸溶液を溶出することによって精製される、ステートメント1~8のうちのいずれか一つの方法。
【国際調査報告】