(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】シクロデキストリンによる心血管疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/724 20060101AFI20231005BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K31/724
A61P9/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513670
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 US2021048084
(87)【国際公開番号】W WO2022047249
(87)【国際公開日】2022-03-03
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523066141
【氏名又は名称】ベレン セラピューティクス ピー.ビー.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】カーウィン,ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】カム,ジェイソン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA45
(57)【要約】
本明細書では、治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを対象に投与することによる、アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患(PVD)、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症、勃起不全、間欠性跛行、術後もしくは医原性動脈疾患)の治療方法が開示される。場合により、上記治療有効量は、上記対象における1種以上のステロールもしくはオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを、ベースラインと比較して上昇させるのに十分な量、上記対象におけるABCA1及び/またはABCG1のレベルを、ベースラインと比較して上昇させるのに有効な量、上記対象における血漿のコレステロール結晶溶解能のレベルを、ベースラインと比較して上昇させるのに有効な量、またはそれらの任意の組み合わせである。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患の治療方法であって、前記方法は、前記ヒト個体に治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することを含み、ここで、前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、
(a)前記投与後に、前記ヒト個体における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/もしくは全身レベルを、前記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量、
(b)前記投与後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を、前記投与以前と比較して少なくとも約10%増加させるのに有効な量、
(c)前記投与後に、ABCA1及び/もしくはABCG1のレベルを、前記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量、
(d)約50mg/kg~約2,000mg/kg、または
(e)それらの任意の組み合わせ
であり、それにより前記ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療する、前記方法。
【請求項2】
前記アテローム硬化性心血管疾患が、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、及び末梢血管疾患(PVD)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒト個体におけるコレステロールを多く含むプラークの発生の低減または阻害方法であって、前記方法は、前記ヒト個体に治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することを含み、ここで、前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、
(a)前記投与後に、前記ヒト個体における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/もしくは全身レベルを、前記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量、
(b)前記投与後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を、前記投与以前と比較して少なくとも約10%増加させるのに有効な量、
(c)前記投与後に、ABCA1及び/もしくはABCG1のレベルを、前記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量、
(d)約50mg/kg~約2,000mg/kg、または
(e)それらの任意の組み合わせ
であり、それにより前記ヒト個体におけるコレステロールを多く含むプラークの発生を低減または阻害する、前記方法。
【請求項4】
前記治療有効量が、前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの約4g~約250gである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記治療有効量が、約0.6mM~約3mMの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの血清、血漿、及び/または全血濃度を達成するのに十分な量である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記治療有効量が、前記投与後に、前記ヒト個体における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを、前記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記循環レベル及び/または全身レベルが、血清、血漿、及び/または全血レベルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上のオキシステロールが、27-ヒドロキシコレステロール及び24-ヒドロキシコレステロールからなる群より選択される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも約10%が、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%を含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記治療有効量が、1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを約40ng/mL以上に上昇させるのに有効な量である、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記治療有効量が、1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ngに上昇させるのに有効な量である、請求項6~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記1種以上のオキシステロールが27-ヒドロキシコレステロールを含む、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記治療有効量が、前記27-ヒドロキシコレステロールの循環レベル及び/または全身レベルを少なくとも約100ng/mLに上昇させるのに有効な量である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記治療有効量が、前記27-ヒドロキシコレステロールの循環レベル及び/もしくは全身レベルを、循環及び/もしくは全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約90ngに上昇させるのに有効な量である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記治療有効量が、前記1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを少なくとも24時間持続させるのに十分な量である、請求項6~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記治療有効量が、前記投与後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を、前記投与以前と比較して少なくとも約10%増加させるのに有効な量である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記治療有効量が、前記投与後に、ABCA1及び/またはABCG1のレベルを、前記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記治療有効量が約50mg/kg~約2,000mg/kgである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記治療有効量が少なくとも約100mg/kgである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記治療有効量が少なくとも約250mg/kgである、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記治療有効量が少なくとも約500mg/kgである、請求項18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療有効量が少なくとも約1,000mg/kgである、請求項18~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記治療有効量が少なくとも約1,500mg/kgである、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記治療有効量が約500mg/kg~約1,500mg/kgである、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記治療有効量が約800mg/kg~約1,200mg/kgである、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒト個体が少なくとも30歳である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記投与が、
(i)第1の時点で、前記ヒト個体に治療上有効な第1の用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することと、
(ii)第2の時点で、前記ヒト個体に治療上有効な第2の用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することと
をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の時点が前記第1の時点の少なくとも1週間後である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の時点が前記第1の時点の少なくとも2週間後である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の時点が前記第1の時点の少なくとも1ヶ月後である、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療が、前記ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症の進行及び/もしくは発症を減少させるまたは予防することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記治療が、前記ヒト個体におけるアテローム硬化性プラークの退縮を媒介することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記治療が、以下:
a)肝酵素(例えば、ALT、AST)レベルが、正常値に対して2.5倍未満、
b)血清クレアチニンレベルが0.3mg/dl未満、または
c)感音性難聴が実質的にない
の1つ以上をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与が静脈内投与による、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療するのに有効な量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、
薬学的に許容される賦形剤と
を含む、医薬組成物。
【請求項36】
約4g~約250gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、
薬学的に許容される賦形剤と
を含む、医薬組成物。
【請求項37】
前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量が、前記ヒト個体に前記医薬組成物を投与した後に、前記ヒト個体における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを少なくとも約10%上昇させるのに有効な量である、請求項35または36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量が、前記ヒト個体に前記医薬組成物を投与した後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を少なくとも約10%増加させるのに有効な量である、請求項35~37のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量が、前記ヒト個体に前記医薬組成物を投与した後に、ABCA1及び/またはABCG1のレベルを少なくとも約10%上昇させるのに有効な量である、請求項35~38のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
単回投与用に製剤化された、請求項35~39のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
静脈内投与用に製剤化された、請求項35~40のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
(a)1つ以上の容器と、
(b)前記1つ以上の容器内に収納された請求項35~41のいずれか1項に記載の医薬組成物と
を備える、キット。
【請求項43】
(c)ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/もしくはアテローム硬化性心血管疾患を治療するため、ならびに/またはヒト個体におけるコレステロールを多く含むプラークの発生を低減もしくは阻害するための、前記医薬組成物の使用説明書をさらに備える、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
前記1つ以上の容器の少なくとも1つが静脈内注入バッグである、請求項42または43に記載のキット。
【請求項45】
前記1つ以上の容器が、前記医薬組成物と、1種以上のさらなる活性医薬品成分とを含む単一の容器を含む、請求項42~44のいずれか1項に記載のキット。
【請求項46】
前記1つ以上の容器が、前記医薬組成物を収納した第1の容器と、1種以上のさらなる活性医薬品成分を収納した第2の容器とを含む、請求項42~44のいずれか1項に記載のキット。
【請求項47】
静脈内注入バッグ、カテーテル、チューブ、針、注射器、溶液、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される1種以上のさらなる構成要素をさらに備える、請求項42~46のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は2020年8月27日出願の米国仮出願第63/071,257号の利益を主張し、上記出願はその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
心血管疾患は、心臓及び血管が関与するある種の疾患である。アテローム性動脈硬化症は心血管疾患の主要な原因であると考えられている。アテローム性動脈硬化症、すなわちプラークの蓄積によって引き起こされる動脈の狭窄及び硬化は、例えば、心臓発作(心筋梗塞)、脳卒中、末梢血管疾患、及び冠動脈疾患をもたらす可能性がある。アテローム性動脈硬化症はわれわれの近代社会にとって大きな負担となっている。2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、アテローム硬化性疾患の発症に関与する病理学的機序に対して深く有益な効果を有し、且つ心血管疾患の進行を停止または逆転させる可能性があることを示唆する前臨床データがある。したがって、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、心血管疾患の新規な治療選択肢を提供する可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
心血管疾患の安全且つ効果的な治療が必要とされている。本開示はこの満たされていないニーズに対処するものである。
【0004】
一態様において、ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患の治療方法であって、上記ヒト個体に治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与し、それにより上記ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療することを含み、ここで、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、(a)上記投与後に、上記ヒト個体における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/もしくは全身レベルを、上記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量、(b)上記投与後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を、上記投与以前と比較して少なくとも約10%増加させるのに有効な量、(c)上記投与後に、ABCA1及び/もしくはABCG1のレベルを、上記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量、(d)約50mg/kg~約2,000mg/kg、または(e)それらの任意の組み合わせである、上記方法が提供される。場合により、上記アテローム硬化性心血管疾患は、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、及び末梢血管疾患(PVD)からなる群より選択される。
【0005】
別の態様において、ヒト個体におけるコレステロールを多く含むプラークの発生の低減または阻害方法であって、上記ヒト個体に治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与し、それにより上記ヒト個体におけるコレステロールを多く含むプラークの発生を低減または阻害することを含み、ここで、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、(a)上記投与後に、上記ヒト個体における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/もしくは全身レベルを、上記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量、(b)上記投与後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を、上記投与以前と比較して少なくとも約10%増加させるのに有効な量、(c)上記投与後に、ABCA1及び/もしくはABCG1のレベルを、上記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量、(d)約50mg/kg~約2,000mg/kg、または(e)それらの任意の組み合わせである、上記方法が提供される。
【0006】
場合により、上記治療有効量は約4g~約250gの上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。場合により、上記治療有効量は、約0.6mM~約3mMの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの血清、血漿、及び/または全血濃度を達成するのに十分な量である。場合により、上記治療有効量は、上記投与後に、上記ヒト個体における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを、上記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量である。場合により、上記循環レベル及び/または全身レベルは、血清、血漿、及び/または全血レベルを含む。場合により、上記1種以上のオキシステロールは、27-ヒドロキシコレステロール及び24-ヒドロキシコレステロールからなる群より選択される。場合により、上記少なくとも約10%は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%を含む。場合により、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを約40ng/mL以上に上昇させるのに有効な量である。場合により、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ngに上昇させるのに有効な量である。場合により、上記1種以上のオキシステロールは27-ヒドロキシコレステロールを含む。場合により、上記治療有効量は、27-ヒドロキシコレステロールの循環レベル及び/または全身レベルを少なくとも約100ng/mLに上昇させるのに有効な量である。場合により、上記治療有効量は、27-ヒドロキシコレステロールの循環レベル及び/もしくは全身レベルを、循環及び/もしくは全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約90ngに上昇させるのに有効な量である。場合により、上記治療有効量は、上記1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを少なくとも24時間持続させるのに十分な量である。場合により、上記治療有効量は、上記投与後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を、上記投与以前と比較して少なくとも約10%増加させるのに有効な量である。場合により、上記治療有効量は、上記投与後に、ABCA1及び/またはABCG1のレベルを、上記投与以前と比較して少なくとも約10%上昇させるのに有効な量である。場合により、上記治療有効量は約50mg/kg~約2,000mg/kgである。場合により、上記治療有効量は少なくとも約100mg/kgである。場合により、上記治療有効量は少なくとも約250mg/kgである。場合により、上記治療有効量は少なくとも約500mg/kgである。場合により、上記治療有効量は少なくとも約1,000mg/kgである。場合により、上記治療有効量は少なくとも約1,500mg/kgである。場合により、上記治療有効量は約500mg/kg~約1,500mg/kgである。場合により、上記治療有効量は約800mg/kg~約1,200mg/kgである。場合により、上記ヒト個体は少なくとも30歳である。場合により、上記投与することは、(i)第1の時点で、上記ヒト個体に治療上有効な第1の用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することと、(ii)第2の時点で、上記ヒト個体に治療上有効な第2の用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することとをさらに含む。場合により、上記第2の時点は上記第1の時点の少なくとも1週間後である。場合により、上記第2の時点は上記第1の時点の少なくとも2週間後である。場合により、上記第2の時点は上記第1の時点の少なくとも1ヶ月後である。場合により、上記治療することは、上記ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症の進行及び/もしくは発症を減少させるまたは予防することを含む。場合により、上記治療することは、上記ヒト個体におけるアテローム硬化性プラークの退縮を媒介することを含む。場合により、上記治療することは、以下、すなわち、a)肝酵素(例えば、ALT、AST)レベルが、正常値に対して2.5倍未満、b)血清クレアチニンレベルが0.3mg/dl未満、またはc)感音性難聴が実質的にない、の1つ以上をもたらす。場合により、上記投与することは静脈内投与による。
【0007】
別の態様において、ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療するのに有効な量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。さらに別の態様において、約4g~約250gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物が提供される。場合により、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量は、上記ヒト個体に上記医薬組成物を投与した後に、上記ヒト個体における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを少なくとも約10%上昇させるのに有効な量である。場合により、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量は、上記ヒト個体に上記医薬組成物を投与した後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を少なくとも約10%増加させるのに有効な量である。場合により、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量は、上記ヒト個体に上記医薬組成物を投与した後に、ABCA1及び/またはABCG1のレベルを少なくとも約10%上昇させるのに有効な量である。場合により、上記医薬組成物は単回投与用に製剤化されている。場合により、上記医薬組成物は静脈内投与用に製剤化されている。
【0008】
さらに別の態様において、(a)1つ以上の容器と、(b)上記1つ以上の容器内に収納された前述のいずれか1種の医薬組成物とを備えるキットが提供される。場合により、上記キットは、(c)ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患の治療、及び/またはヒト個体におけるコレステロールを多く含むプラークの発生を低減または阻害するための上記医薬組成物の使用のための説明書をさらに備える。場合により、上記1つ以上の容器の少なくとも1つは静脈内注入バッグである。場合により、上記1つ以上の容器は、上記医薬組成物と、1種以上のさらなる活性医薬品成分とを含む単一の容器を含む。場合により、上記1つ以上の容器は、上記医薬組成物を収納した第1の容器と、1種以上のさらなる活性医薬品成分を収納した第2の容器とを含む。場合により、上記キットは、静脈内注入バッグ、カテーテル、チューブ、針、注射器、溶液、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される1種以上のさらなる構成要素をさらに備える。
【0009】
別の態様において、ヒトにおけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患(PVD)、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、術後もしくは医原性動脈疾患)の治療方法であって、上記ヒトに治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与し、それにより上記ヒトにおけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療することを含み、ここで、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、ベースラインと比較して少なくとも約10%(例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%)上昇させるのに有効な量である、上記方法が提供される。
【0010】
別の態様において、ヒトにおけるコレステロールを多く含むプラークの発生の低減または阻害方法であって、上記ヒトに治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与し、それにより上記ヒトにおけるコレステロールを多く含むプラークの発生を低減または阻害することを含み、ここで、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、ベースラインと比較して少なくとも約10%(例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%)上昇させるのに有効な量である、上記方法が提供される。
【0011】
別の態様において、ヒトにおけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患(PVD)、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、術後もしくは医原性動脈疾患)の治療方法であって、上記ヒトに治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与し、それにより上記ヒトにおけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療することを含み、ここで、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを約40ng/ml以上に上昇させるのに有効な量である、上記方法が提供される。
【0012】
さらに別の態様において、ヒトにおけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患(PVD)、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、術後もしくは医原性動脈疾患)の治療方法であって、上記ヒトに治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与し、それにより上記ヒトにおけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療することを含み、ここで、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ngに上昇させるのに有効な量である、上記方法が提供される。
【0013】
先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、約50mg/kg~約2,000mg/kg(または約4g~約250g)である。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、約0.6mM~約3mMの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの血清、血漿、及び/または全血濃度を達成するのに十分な量である。
【0014】
別の態様において、個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患(PVD)、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、術後もしくは医原性動脈疾患)の治療方法であって、上記個体に治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与し、それにより上記個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療することを含み、ここで、上記治療有効量は約50mg/kg~約2,000mg/kg(または約4g~約250g)である、上記方法が提供される。
【0015】
さらに別の態様において、個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患(PVD)、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、術後もしくは医原性動脈疾患)の治療方法であって、上記個体に治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与し、それにより上記個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療することを含み、ここで、上記治療有効量は、約0.6mM~約3mMの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの血清、血漿、及び/または全血濃度を達成するのに十分な量である、上記方法が提供される。
【0016】
先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、ベースラインと比較して少なくとも約10%(例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%)上昇させるのに有効な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、約40ng/ml以上に上昇させるのに有効な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ngに上昇させるのに有効な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記オキシステロールは27-ヒドロキシコレステロールである。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、27-ヒドロキシコレステロールの循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを少なくとも約100ng/mlに上昇させるのに有効な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、27-ヒドロキシコレステロールの循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを少なくとも約90ng/mgに上昇させるのに有効な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記オキシステロールは24-ヒドロキシコレステロールである。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、24-ヒドロキシコレステロールの循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを少なくとも約50ng/mlに上昇させるのに有効な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、24-ヒドロキシコレステロールの循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ngに上昇させるのに有効な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、少なくとも24時間(例えば、少なくとも48時間、少なくとも72時間)、上記1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを持続させるのに十分な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は少なくとも約100mg/kgである。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は少なくとも約250mg/kgである。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は少なくとも約500mg/kgである。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は少なくとも約1,000mg/kgである。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は少なくとも約1,500mg/kgである。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は約500mg/kg~約1,500mg/kgである。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、約800mg/kg~約1,200mg/kgである。先行態様のいずれかにおいて、上記ヒトまたは個体は、少なくとも30歳(例えば、少なくとも40歳、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳、少なくとも80歳、少なくとも90歳)である。先行態様のいずれかにおいて、上記治療有効量は、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、少なくとも72時間、ベースラインと比較して少なくとも約10%(例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%)上昇させるのに有効な量である。先行態様のいずれかにおいて、上記投与することは、(i)第1の時点で、上記ヒトまたは個体に治療上有効な第1の用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することと、(ii)第2の時点で、上記ヒトまたは個体に治療上有効な第2の用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することとをさらに含む。先行態様のいずれかにおいて、上記第2の時点は上記第1の時点の少なくとも1週間後である。先行態様のいずれかにおいて、上記第2の時点は上記第1の時点の少なくとも2週間後である。先行態様のいずれかにおいて、上記記第2の時点は上記第1の時点の少なくとも1ヶ月後である。先行態様のいずれかにおいて、上記第2の時点は、27-ヒドロキシコレステロールレベル、24S-ヒドロキシコレステロールレベル、ABCA1の転写レベル、ABCG1の転写レベル、PBMCの後成的(クロマチン)シグネチャー、トリグリセリドレベル、総コレステロールレベル、vLDL/LDL/HDLレベル、血清または血漿のコレステロール結晶溶解、炎症促進性メディエーター(例えば、インターロイキン-1b(IL-1b)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-18(IL-18))のレベルに基づいて決定される。先行態様のいずれかにおいて、上記治療することは、アテローム硬化性プラークのサイズを少なくとも約0.5%低減することを含む。先行態様のいずれかにおいて、上記治療することは、上記ヒト対象におけるアテローム性動脈硬化症の進行及び/もしくは発症を減少させるまたは予防することを含む。先行態様のいずれかにおいて、上記治療することは、上記ヒト対象におけるアテローム硬化性プラークの退縮を媒介することを含む。先行態様のいずれかにおいて、上記治療することは、以下、すなわち、a)高解像度超音波検査を使用した7日後の虚血誘発性内皮依存性血管拡張反応(ischemia-induced endothelial-dependent vasodilation)によって測定される、上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(flow-mediated vasodilation)(FMD)の増加、b)血清、血漿、尿、便、もしくはそれらの任意の組み合わせにおけるステロール及び/またはオキシステロールレベル(例えば、24S-ヒドロキシ-コレステロール、25-ヒドロキシ-コレステロール、27-ヒドロキシコレステロール)の上昇、c)コレステロール結晶溶解能アッセイによって測定されるコレステロール結晶溶解の増加、d)末梢血単核細胞(PBMC)における肝臓X受容体(LXR)による制御を受ける遺伝子(例えば、ABCA1、ABCG1)の遺伝子発現の増加、e)PBMCの貪食活性の増加、f)トリグリセリド及び/またはLDL-コレステロールのレベルの低下;及び/または血清、尿、便、もしくはそれらの任意の組み合わせにおけるHDL-コレステロール及び/またはApoA1のレベルの増加、g)炎症及び心筋損傷の血清マーカー(例えば、IL-1β、IL-1a、IL-6、hsCRP、トロポニン、CK、CK-MB、NT-pro-BNP)の減少及び/または抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-1ra)の血清レベルの上昇、h)補体活性化の減少、i)死亡率及び/または全死因死亡率(ACM)の減少、j)心筋梗塞の減少、k)重症脳卒中または軽傷脳卒中の減少、l)血圧の低下、m)主要な有害心血管事象(MACE)の減少、ならびにn)CADの重症度と相関した勃起不全の改善の1つ以上をもたらす。先行態様のいずれかにおいて、上記治療することは、以下、すなわち、a)肝酵素(例えば、ALT、AST)レベルが、正常値に対して2.5倍未満、b)血清クレアチニンレベルが0.3mg/dl未満、またはc)感音性難聴が実質的にない、の1つ以上をもたらす。先行態様のいずれかにおいて、上記投与することは静脈内投与による。
【0017】
別の態様において、ヒトにおけるアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、冠動脈疾患(CAD)、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患(PVD)、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、術後もしくは医原性動脈疾患)を治療するのに有効な量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0018】
別の態様において、約4g~約250gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0019】
先行態様のいずれかにおいて、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、ヒトにおいて、治療後に、1種以上のオキシステロール(例えば、27-ヒドロキシコレステロール)の循環及び/または全身(例えば、血清、血漿、及び/または全血)レベルを、少なくとも72時間、ベースラインと比較して少なくとも約10%(例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%)上昇させるのに十分である。先行態様のいずれかにおいて、上記医薬組成物は単回投与用に製剤化されている。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は静脈内投与用に製剤化されている。
【0020】
援用
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの個別の刊行物、特許、または特許出願が援用されることが具体的且つ個別に示されているのと同様に、本明細書に援用される。
【0021】
本発明の新規な特徴は添付の特許請求の範囲に詳細に記載される。本発明の特徴及び利点は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、及び以下の添付の図面を参照することによって、より深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】第1b相治験におけるプラセボ及び2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの投与の詳細の非限定的な例を示す図である。
【
図1B】第1b相治験におけるプラセボ及び2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの投与の詳細の非限定的な例を示す図である。
【
図2A】第2a相治験におけるプラセボ及び2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの投与の詳細の非限定的な例を示す図である。
【
図2B】第2a相治験におけるプラセボ及び2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの投与の詳細の非限定的な例を示す図である。
【
図3A】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象から得られた血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)の非限定的な例を示す図である。
【
図3B】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象から得られた血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)の非限定的な例を示す図である。
【
図4A】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象から得られた血漿中のオキシステロールレベルの非限定的な例を示す図である。
【
図4B】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象から得られた血漿中のオキシステロールレベルの非限定的な例を示す図である。
【
図4C】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象から得られた血漿中のオキシステロールレベルの非限定的な例を示す図である。
【
図5A】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象における、LXR転写因子による制御を受ける遺伝子のmRNAレベルの非限定的な例を示す図である。
【
図5B】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象における、LXR転写因子による制御を受ける遺伝子のmRNAレベルの非限定的な例を示す図である。
【
図5C】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象における、LXR転写因子による制御を受ける遺伝子のmRNAレベルの非限定的な例を示す図である。
【
図5D】漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた男性のヒト対象における、LXR転写因子による制御を受ける遺伝子のmRNAレベルの非限定的な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書では心血管疾患の治療方法が開示される。場合により、上記心血管疾患は、アテローム硬化性心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化に起因するまたはアテローム性動脈硬化が関与する心血管疾患)である。上記アテローム硬化性心血管疾患は、冠動脈疾患(CAD)、脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、末梢血管疾患(PVD)、アテローム性動脈硬化に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、及び/または術後もしくは医原性動脈疾患のいずれか1種であってよい。場合により、PADは下肢動脈疾患を含む。場合により、上記方法は、アテローム性動脈硬化症の治療及び/または予防を含む。場合により、上記方法は、(例えば、欧州心臓病学会によって定義される)急性冠症候群(ACS)もしくは慢性冠症候群(CCS)に罹患している、ACSもしくはCCSに罹患している疑いがある、またはACSもしくはCCSを発症するリスクがある対象を治療することを含む。いくつかの態様において、上記方法は、治療有効量のシクロデキストリンを、それを必要とする対象(例えば、心血管疾患(例えば、アテローム硬化性心血管疾患)に罹患している、心血管疾患に罹患している疑いがある、または心血管疾患を発症するリスクがある対象)に投与することを含んでいてもよい。場合により、上記治療有効量は、上記対象における1種以上のステロール及び/もしくはオキシステロールの循環レベルならびに/または全身レベルを、ベースライン(例えば、シクロデキストリンによる治療以前)と比較して上昇させるのに有効な量である。特定の態様において、上記シクロデキストリンは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書では、個体(例えば、ヒト)における循環(例えば、血液、血漿、血清)コレステロール結晶(及び/もしくはコレステロール結晶を含む血餅)の量及び/またはサイズの低減方法、ならびに/あるいは上記結晶(及び/もしくは血餅)の形状を変化させる方法が開示される。場合により、上記方法は、(例えば、コレステロール結晶塞栓、コレステロール結晶血餅、コレステロール結晶/タンパク質血餅、コレステロール結晶/DNA血餅(例えば、細胞外トラップ)などによる小血管の閉塞を予防することにより)コレステロール結晶塞栓症(CCE)を治療することを含む。場合により、上記方法は、例えばCCEに起因するさまざまな器官及び/または組織の虚血を治療することを含む。概括的には、本明細書で提供される方法は、治療有効量のシクロデキストリンを、それを必要とする対象(例えば、循環コレステロール結晶(及び/もしくはコレステロール結晶を含む血餅)のレベルが上昇した対象)に投与することを含む。特定の態様において、上記シクロデキストリンは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0025】
いくつかの実施形態において、個体(例えば、ヒト)における循環(例えば、血液、血漿、血清)コレステロール結晶(及び/もしくはコレステロール結晶を含む血餅)の発生の予防方法または上記発生のリスクの低減方法が開示される。本明細書では、個体(例えば、ヒト)における循環(例えば、血液、血漿、血清)コレステロール結晶(及び/もしくはコレステロール結晶を含む血餅)の量及び/またはサイズの増加の予防方法または上記増加のリスクの低減方法、ならびに/あるいは上記結晶(及び/または血餅)の形状を変化させる方法がさらに開示される。場合により、上記方法は、(例えば、コレステロール結晶塞栓、コレステロール結晶血餅、コレステロール結晶/タンパク質血餅、コレステロール結晶/DNA血餅(例えば、細胞外トラップ)などによる小血管の閉塞を予防するもしくは上記閉塞のリスクを低減することにより)コレステロール結晶塞栓症(CCE)を予防するまたはその発症のリスクを低減することを含む。場合により、上記方法は、CCEの症状及び/もしくは臨床症状を予防することまたはその発症のリスクを低減することを含む。場合により、上記方法は、例えばCCE(及び/またはその症状もしくは臨床症状、例えば腎傷害、アテローム塞栓性腎疾患(ARD))に起因するさまざまな器官ならびに/または組織の虚血を予防するあるいは上記虚血のリスクを低減することを含む。概括的には、本明細書で提供される方法は、治療有効量のシクロデキストリンを、それを必要とする対象に(例えば予防的に、例えばCCEを発症するリスクのある対象に)投与することを含む。特定の態様において、上記シクロデキストリンは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0026】
以下の用語について、当業者によるこれらの用語の理解に加えて、本明細書で使用される該用語の意味を説明するために論じる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によって明確な指示がなされない限り、複数の指示対象を含む。本特許請求の範囲は、いずれの任意選択の要素も除外するように起草することができることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の構成要素の記述または「否定的な」限定の使用に関連して、「単独で」、「のみ」などの排他的な用語の使用に関する前提条件としての役割を果たすことを意図する。
【0027】
本明細書では、用語「約」+数は、当該の数±当該の数の10%を指す。用語「約」+範囲は、当該の範囲-最低値の10%且つ+最大値の10%を指す。
【0028】
本明細書では、用語「対象」、「個体」、及び「患者」は同義で使用される。これらのいずれの用語も、医療専門家(例えば、医師、看護師、医師の助手、看護助手、ホスピス職員)の管理を要すると解釈されるべきものではない。本明細書では、対象は、哺乳動物(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)及び非哺乳動物を含む任意の動物であってよい。一実施形態において、上記対象はヒトである。
【0029】
本明細書では、用語「治療する」、「治療すること」、または「治療」、及び他の文法上の等価物は、疾患または疾病の1つ以上の症状の根本的な原因を改善または予防すること;疾患または疾病の1つ以上の症状を緩和、軽減、または改善すること;疾患または疾病の1つ以上の症状の出現、重症度、もしくは頻度を改善、予防、または低減すること;疾患または疾病を抑制すること、例えば、疾患もしくは疾病の発症を阻止する、疾患または疾病を緩和する、疾患または疾病の退行を生じさせる、疾患または疾病によって生じる状態を緩和する、あるいは疾患もしくは疾病の症状を予防的及び/または治療的のいずれかで抑制することを含む。本明細書に開示の治療方法は、本明細書に記載の任意の適応症の治療のための、本明細書に提供される(例えば、医薬)組成物の使用の開示を含み、本明細書に記載の任意の適応症の治療における使用のための、本明細書に提供される(例えば、医薬)組成物の開示を含む。
【0030】
用語「薬学的に許容される」とは、一般に、安全、無毒で、且つ生物学的にも他の点からも望ましくないものではなく、獣医学的使用ならびにヒトの薬学的使用に許容される、医薬組成物を調製するのに有用な材料の属性を意味する。「薬学的に許容される」とは、上記化合物の生物学的活性または特性を抑止せず、且つ比較的非毒性である、担体または希釈剤などの材料を指す場合があり、例えば、上記材料は、望ましくない生物学的影響を生じるまたは当該材料が含まれる本組成物の成分のいずれかと有害な形態で相互作用することなく、個体に投与することができる。
【0031】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」とは、医薬品の製剤化に使用される、崩壊剤、結合剤、増量剤、溶媒、緩衝剤、等張化剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、防腐剤、または滑沢剤などの、治療上の活性を有さず、且つ投与を受けた対象に対して非毒性である、医薬組成物中の任意の薬学的に許容される成分をいう。
【0032】
本明細書で使用される用語「有効量」または「治療有効量」とは、治療の対象である疾患もしくは疾病の1つ以上の症状をある程度緩和するか、または治療の対象である疾患もしくは疾病の根本的な原因を低減する、投与される薬剤あるいは化合物の十分な量をいう。いくつかの実施形態において、その結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因の低減及び/または緩和、あるいは生物学系の任意のその他の所望する変化である。例えば、治療上の使用に関する「有効量」は、疾患の症状または疾患の根本的な原因を、(例えば、過度の有害な副作用なしに)臨床上有意に減少させるのに要する、本明細書に開示の化合物を含む組成物の量である。いくつかの実施形態において、任意の個々のケースにおける適切な「有効量」は、用量漸増試験などの技法を使用して決定される。用語「治療有効量」は、例えば、予防有効量を含む。本明細書に開示の化合物の「有効量」は、(例えば、過度の有害な副作用なしに)所望の効果または治療上の改善を達成するのに有効な量であってよい。本明細書に開示の化合物の「有効量」は、1つ以上の所望の転帰(例えば、本明細書に記載のステロールまたはオキシステロールの全身レベル及び/または循環レベル)を達成するのに有効な量であってよい。場合により、「有効量」または「治療有効量」は、本組成物の代謝、当該の対象の年齢、体重、全身状態、該対象が服用している可能性のある併用薬、治療の対象である疾病、治療の対象である疾病の重症度、及び処方医の判断の違いに起因して、対象毎に変化することを理解する必要がある。場合により、治療の対象である疾患または疾病は、アテローム硬化性心血管疾患(例えば、冠動脈疾患(CAD))、またはアテローム硬化性心血管疾患に起因する結果的な疾患である。場合により、治療の対象である疾患または疾病はアテローム性動脈硬化症である。場合により、上記方法は、アテローム硬化性心血管疾患(例えば、CAD)の根底にある原因を治療及び/または予防するために使用されてもよい。アテローム硬化性心血管疾患の根底にある原因は、例えば、初期の血管の変化(例えば、硬化、機能障害)、石灰化、動脈及び/または静脈におけるプラークの蓄積、脂質の循環レベルの上昇、炎症、コレステロールの蓄積、プラークの形成、血管閉塞、プラーク破壊、及び/または虚血であってよい。
【0033】
アテローム硬化性心血管疾患の治療方法
【0034】
本明細書の実施例2~4は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けたヒト対象における、血漿のコレステロール結晶溶解能の増加、オキシステロールレベルの上昇、ならびにLXR転写因子による制御を受ける遺伝子ABCA1及びABCG1のmRNAレベルの上昇を実証するデータを示している。上記データは、本明細書に記載のように、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンをアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を治療するために使用することができることを示唆している。
【0035】
本明細書では、アテローム性硬化性心血管疾患に罹患している、アテローム性硬化性心血管疾患に罹患していることが疑われる、またはアテローム性硬化性心血管疾患を発症するリスクがある対象の治療方法が開示される。上記アテローム硬化性心血管疾患は、例えば、CAD、PAD、PVD、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因するまたはアテローム性動脈硬化症が関与する心血管疾患慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因するまたはアテローム性動脈硬化症が関与する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因するまたはアテローム性動脈硬化症が関与する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、及び/または術後もしくは医原性動脈疾患であってよい。本明細書では、アテローム性動脈硬化症に罹患している、アテローム性動脈硬化症に罹患していることが疑われる、またはアテローム性動脈硬化症を発症するリスクのある対象の治療方法がさらに開示される。場合により、上記方法は、(例えば、欧州心臓病学会によって定義される)急性冠症候群(ACS)もしくは慢性冠症候群(CCS)に罹患している、ACSもしくはCCSに罹患している疑いがある、またはACSもしくはCCSを発症するリスクがある対象を治療することを含む。場合により、本明細書に記載のように対象を治療することにより、上記対象におけるアテローム硬化性プラーク(例えば、コレステロールを多く含むプラーク及び/もしくは脂質を多く含むプラーク)の発生が阻害、予防、または低減される可能性がある。場合により、本明細書に記載のように対象を治療することにより、すでに発生したアテローム硬化性プラーク(例えば、コレステロールを多く含むプラーク及び/もしくは脂質を多く含むプラーク)の退縮が媒介される、促進される、亢進する、または増大する可能性がある。場合により、本明細書に記載のように対象を治療することにより、上記対象におけるアテローム硬化性プラークがより少なくなるか、上記対象におけるアテローム硬化性プラークがより小さくなるか、またはその両方の可能性がある。場合により、上記対象におけるアテローム硬化性プラークの数及び/またはサイズを低減することにより、アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、CAD)に関連する1つ以上の症状が改善、予防、または軽減される可能性がある。
【0036】
さまざまな態様において、上記方法は対象にシクロデキストリンを投与することを含む。シクロデキストリンは、α-1,4グリコシド結合によって連結されたグルコースサブユニットの環(例えば、マクロ環)からなる環状オリゴ糖のファミリーである。シクロデキストリンは環構造中に多数のグルコースモノマーを含む。一般的なシクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン(6個のグルコースモノマーからなる)、β-シクロデキストリン(7個のグルコースモノマーからなる)、γ-シクロデキストリン(8個のグルコースモノマーからなる)、及びδ-シクロデキストリン(9個のグルコースモノマーからなる)が挙げられる。上記環構造の外側部分は親水性であり、上記環構造の内部空洞は疎水性であり、したがってシクロデキストリンは一般に(例えば、上記親水性の外側に起因して)水溶性であり、且つ(例えば、上記疎水性の空洞に起因して)上記空洞中に疎水性分子を取り込むことが可能である。親シクロデキストリンの水溶性は限定的であり、そのため、数種の化学的に修飾されたシクロデキストリンが合成されており、該修飾シクロデキストリンにおいては、ヒドロキシル基が他の化学部分で置換され、溶解度を向上させている。さまざまな態様において、本明細書で提供される方法は、シクロデキストリンを、それを必要とする(例えば、アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、CAD)に罹患している、アテローム硬化性心血管疾患に罹患していることが疑われる、またはアテローム硬化性心血管疾患を発症するリスクがある)対象(例えば、ヒト)に投与することを含む。場合により、上記対象は、アテローム硬化性プラーク(例えば、コレステロールを多く含むプラーク及び/または脂質を多く含むプラーク)を有する、アテローム硬化性プラークを有することが疑われる、またはアテローム硬化性プラークが発性するリスクがある。
【0037】
特定の実施形態において、上記シクロデキストリンは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。場合により、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、Kleptose(登録商標)HP非経口グレード(Roquette Freres, #346114;roquette.com/-/media/roquette-sharepoint-libraries/sdol_product-specification-sheet/roquette_quality_specification-sheet_kleptose-hp-parenteral-grade_50_346114_en.pdfでアクセス可能(2020年8月26日現在))、Kleptose(登録商標)HPB非経口グレード(Roquette Freres, #346111;roquette.com/-/media/roquette-sharepoint-libraries/sdol_product-specification-sheet/roquette_quality_specification-sheet_kleptose-hpb-parenteral-grade_50_346111_en.pdfでアクセス可能(2020年8月26日現在))、Kleptose(登録商標)HPB-LB非経口グレード(Roquette Freres, #346115;roquette.com/-/media/roquette-sharepoint-libraries/sdol_product-specification-sheet/roquette_quality_specification-sheet_kleptose-hpb-lb-parenteral-grade_50_346115_en.pdfでアクセス可能(2020年8月26日現在))、Cavitron(登録商標)W7 HP5 Pharmaシクロデキストリン(Ashland;ashland.com/file_source/Ashland/Product/Documents/Pharmaceutical/PC_11734_Cavitron_Cavasol.pdfでアクセス可能(2020年8月26日現在))、Cavitron(登録商標)W7 HP7 Pharmaシクロデキストリン、(Ashland;ashland.com/file_source/Ashland/Product/Documents/Pharmaceutical/PC_11734_Cavitron_Cavasol.pdfでアクセス可能(2020年8月26日現在))、Trappsol(登録商標)Cyclo(商標)(Cyclo Therapeutics,Inc.;cyclotherapeutics.com/cyclodextrins/trappsol-cycloでアクセス可能(2020年8月26日現在))、及びVTS-270/アドラベタデクスからなる群より選択される。
【0038】
特定の実施形態において、本明細書における(例えば、医薬)組成物もしくは方法もしくは他の用途において提供または使用されるシクロデキストリンは、複数のシクロデキストリンの混合物であり、例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で提供される2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、複数の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの混合物を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるシクロデキストリン分子は、任意選択で、それぞれが独立にヒドロキシプロピル基、ヒドロキシエチル基、メチル基、エチル基、カルボキシメチル基、ヘプタキス(2,6)-ジ-O-メチル)基、スルホエチル基、スルホプロピル基、及び/またはスルホブチルエチル基である1種以上の化学基で置換されているか、またはそのオリゴマーである。いくつかの好ましい実施形態において、上記シクロデキストリンは、シクロデキストリンの1つ以上のヒドロキシルがヒドロキシプロピル(例えば、2-ヒドロキシプロピル基)で置換されているような、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。例えば、以下の式Iに示されるような、ヒドロキシル(OH)のHを-CH
2CH
2(OH)CH
3基で置換することにより、1つ以上のヒドロキシル位が1つ以上のヒドロキシプロピル基で置換されている。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、さまざまな異なる置換度(DS)の値を有する、及び/またはモル置換(MS)値を有する複数のシクロデキストリンを含む。
【化1】
【0039】
いくつかの実施形態において、β-シクロデキストリン(複数種のβ-シクロデキストリン分子の混合物)中の複数種のβ-シクロデキストリン分子は、平均モル置換によって特徴付けられる。「モル置換」、すなわち「MS」は、当該複数種のβ-シクロデキストリン分子におけるグルコース単位当たりの置換基の平均数である。いくつかの実施形態において、MSは、ヒドロキシプロピルベタデクスに関するUSPモノグラフ(USP NF 2015)(「USPヒドロキシプロピルベタデックスモノグラフ」)(その全体が本明細書に援用される)に記載の手順に従って測定される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される(例えば、医薬)組成物は、平均MSが少なくとも約0.3である複数種のβ-シクロデキストリン分子を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される(例えば、医薬)組成物は、平均MSが約0.3~1.0である複数種のβ-シクロデキストリン分子を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記複数種のβ-シクロデキストリン分子は平均置換度によって特徴付けられる。用語「置換度」、すなわち「DS」とは、β-シクロデキストリン分子上で直接または間接的に置換された置換基の総数をいう。いくつかの実施形態において、上記β-シクロデキストリン分子は、ヒドロキシル位で置換基によって置換された1つ以上のグルコース単位を有していてもよい。したがって、平均DSとは、β-シクロデキストリンの集団中の置換基の総数をβ-シクロデキストリン分子の数で除したものをいう。いくつかの実施形態において、上記分子の平均DSは、電子スプレーイオン化質量分析(ESI-MS)分析(例えば、HPLC-ESI-MSなど)を使用して測定される。いくつかの実施形態において、上記分子の平均DSは、エレクトロスプレーMSスペクトルのピーク高さによって測定される。いくつかの実施形態において、上記分子の平均DSは、MSに7を乗じることによって決定される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される(例えば、医薬)組成物は、平均DSが約2.0~7.0である複数種のβ-シクロデキストリン分子を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のシクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)の任意の原子は、任意且つ適宜の同位体で置換されていてもよい。特定の実施形態において、本明細書に記載のシクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)の任意の1つ以上の水素原子が、重水素原子で置換されていても(substituted)または置換されていても(replaced)よい。かかるシクロデキストリンは、重水素を含まない元のシクロデキストリンと比較して、特性が類似しているかまたは改善されると予想される。重水素は、安全で安定した水素の非放射性同位体である。重水素は、水素と比較して、炭素とより強い結合を形成する。場合により、重水素によって付与される上記結合強度の増加は、当該シクロデキストリンの特性にプラスの影響を与え、薬物の有効性、安全性、及び/または忍容性を改善する可能性を創出する。さらに、重水素化はインビボでの代謝クリアランスを低下させ、それによって当該化合物の半減期及び循環が増加する可能性がある。同時に、重水素のサイズ及び形状は本質的に水素のサイズ及び形状と同一であるため、重水素による水素の置換は、水素のみを含む元の化学物質と比較して、当該化合物の生化学的効力及び選択性に影響を与えないことが予想される。
【0042】
さまざまな態様において、上記対象に治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが投与される。いくつかの実施形態において、治療有効量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することにより、1種以上のコレステロールの誘導体の循環レベル及び/または全身レベルが、ベースラインと比較して上昇する。いくつかの実施形態において、上記1種以上のコレステロールの誘導体はコレステロール生合成の副産物である。いくつかの実施形態において、上記1種以上のコレステロールの誘導体は、水素化生成物、異なる形態で水素化された1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-オール生成物を含む生成物、またはヒドロキシル基、エポキシ基、またはケト基を有して形成された生成物を含む。場合により、上記1種以上のコレステロールの誘導体はオキシステロールまたはステロールである。
【0043】
治療有効量は、上記対象における1種以上のステロール及び/もしくはオキシステロールの循環量ならびに/または全身量を、ベースラインと比較して増加させるのに有効な2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量であってよい。ステロール及び/またはオキシステロールの循環量及び/または全身量は、上記対象の生体試料(例えば、血液(例えば、全血)、血漿、血清など)中に存在する量であってよい。場合により、上記循環及び/もしくは全身のステロールならびに/またはオキシステロールのレベルは、(例えば、治療後24時間で)ベースラインと比較して、少なくとも約10%、(例えば、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれ以上)上昇してもよい。場合により、上記循環及び/もしくは全身のステロールならびに/またはオキシステロールのレベルは、少なくとも約40ng/mL(例えば、少なくとも約40ng/mL、少なくとも約50ng/mL、少なくとも約60ng/mL、少なくとも約70ng/mL、少なくとも約80ng/mL、少なくとも約90ng/mL、少なくとも約100ng/mL、またはそれ以上)に上昇してもよい。別の態様において、上記循環及び/もしくは全身のステロールならびに/またはオキシステロールのレベルは、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ng(例えば、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ng、少なくとも約50ng、少なくとも約60ng、少なくとも約70ng、少なくとも約80ng、少なくとも約90ng、または少なくとも約100ng)に上昇してもよい。概括的には、(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療後の)ステロール及びオキシステロールの循環ならびに/または全身レベルは、ベースラインレベル(例えば、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療以前の当該対象における上記ステロール及び/もしくはオキシステロールの循環ならびに/または全身レベル)と比較される。2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの投与によって(例えば、全血、血漿、及び/もしくは血清中の)レベルの増加を示す可能性のあるステロールならびにオキシステロールの非限定的な例にとしては、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール、及び25-ヒドロキシコレステロールが挙げられる。さまざまな態様において、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの上記治療有効量は、治療後に少なくとも24時間(例えば、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間)、上記ステロール及び/もしくはオキシステロールの上記全身ならびに/または循環レベルを維持あるいは持続させるのに十分な量であってよい。
【0044】
特定の態様において、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、27-ヒドロキシコレステロールの循環量及び/または全身量を、ベースラインと比較して増加させるのに有効な量である。場合により、循環及び/または全身の27-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、(例えば、治療後24時間で)ベースラインと比較して、少なくとも約10%上昇、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれ以上上昇してもよい。場合により、循環及び/または全身の27-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、少なくとも約40ng/mL、例えば、少なくとも約50ng/mL、少なくとも約60ng/mL、少なくとも約70ng/mL、少なくとも約80ng/mL、少なくとも約90ng/mL、少なくとも約100ng/mL、またはそれ以上に上昇してもよい。特定の実施形態において、循環及び/または全身の27-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、少なくとも約100ng/mLに上昇してもよい。別の態様において、循環及び/または全身の27-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ng、例えば、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約50ng、少なくとも約60ng、少なくとも約70ng、少なくとも約80ng、少なくとも約90ng、または少なくとも約100ngに上昇してもよい。特定の態様において、循環及び/または全身の27-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約90ngに上昇してもよい。
【0045】
さらに、またはあるいは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、24-ヒドロキシコレステロールの循環量及び/または全身量をベースラインと比較して増加させるのに有効な量であってもよい。場合により、循環及び/または全身の24-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、(例えば、治療後24時間で)ベースラインと比較して、少なくとも約10%上昇、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれ以上上昇してもよい。場合により、循環及び/または全身の24-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、少なくとも約40ng/mL、例えば、少なくとも約50ng/mL、少なくとも約60ng/mL、少なくとも約70ng/mL、少なくとも約80ng/mL、少なくとも約90ng/mL、少なくとも約100ng/mL、またはそれ以上に上昇してもよい。特定の実施形態において、循環及び/または全身の24-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、少なくとも約50ng/mLに上昇してもよい。別の態様において、循環及び/または全身の24-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ng、例えば、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約50ng、少なくとも約60ng、少なくとも約70ng、少なくとも約80ng、少なくとも約90ng、または少なくとも約100ngに上昇してもよい。特定の実施形態において、循環及び/または全身の24-ヒドロキシコレステロールの上記レベルは、循環及び/または全身の総コレステロールのmg当り少なくとも約40ngに上昇してもよい。
【0046】
治療有効量は、投与後(例えば、上記投与後1時間)に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を、上記投与以前と比較して増加させるのに有効な2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量であってよい。場合により、上記治療有効量は、投与後に、血漿のCCDCを、上記投与以前と比較して少なくとも約10%(例えば、1時間で)、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれ以上増加させるのに有効な2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量である。
【0047】
治療有効量は、上記投与後(例えば、上記投与の24時間後)に、LXR転写因子による制御を受ける1種以上の遺伝子(例えば、ABCA1、ABCG1)のmRNAレベルを、上記投与以前と比較して上昇させるのに有効な2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量であってよい。場合により、上記治療有効量は、上記投与後に、ABCA1及び/またはABCG1のmRNAレベルを、上記投与以前と比較して少なくとも約10%(例えば、24時間で)、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれ以上上昇させるのに有効な2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの量である。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、本明細書に記載の治療効果を達成するのに好適な量である。いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、少なくとも約50mg/kg、少なくとも約100mg/kg、少なくとも約200mg/kg、少なくとも約300mg/kg、少なくとも約400mg/kg、少なくとも約500mg/kg、少なくとも約600mg/kg、少なくとも約700mg/kg、少なくとも約800mg/kg、少なくとも約900mg/kg、少なくとも約1000mg/kg、少なくとも約1100mg/kg、少なくとも約1200mg/kg、少なくとも約1300mg/kg、少なくとも約1400mg/kg、少なくとも約1500mg/kg、少なくとも約1600mg/kg、少なくとも約1700mg/kg、少なくとも約1800mg/kg、少なくとも約1900mg/kg、または少なくとも約2000mg/kgである。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は少なくとも約100mg/kgである。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は少なくとも約250mg/kgである。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は少なくとも約500mg/kgである。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は少なくとも約1000mg/kgである。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は少なくとも約1500mg/kgである。
【0049】
いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、本明細書に記載の治療効果を達成するのに好適な量である。いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、約50mg/kg~約2000mg/kg(例えば、約50mg/kg~約1000mg/kg、約500mg/kg~約1000mg/kg、約500mg/kg~約1500mg/kg、約800mg/kg~約1500mg/kg、約800mg/kg~約1200mg/kg、約1000mg/kg~約1500mg/kg、約1000mg/kg~約2000mg/kg)である。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は約500mg/kg~約1500mg/kgである。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は約800mg/kg~約1200mg/kgである。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、本明細書に記載の治療効果を達成するのに好適な量である。いくつかの実施形態において、上記治療有効量は、少なくとも約4g(例えば、少なくとも約10g、少なくとも約25g、少なくとも約50g、少なくとも約75g、少なくとも約100g、少なくとも約125g、少なくとも約150g、少なくとも約175g、少なくとも約200g、少なくとも約250g)である。いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は約4g~約250g(例えば、約4g~約200g、約4g~約150g、約4g~約100g、約4g~約50g、約50g~約250g、約50g~約200g、約50g~約150g、約50g~約100g、約100g~約250g、約100g~約200g)であってよい。(例えば単回投与で、例えば治療有効量で)投与される2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの総量は、当該対象の年齢、性別、体重などを含む、ここでこれらに限定されない多数の因子に依存する場合がある。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、本明細書に記載の治療効果を達成するのに好適な2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの全血、血清、及び/または血漿濃度を達成するのに十分な量である。いくつかの実施形態において、上記全血、血清、及び/または血漿濃度は、少なくとも約0.1mM(例えば、少なくとも約0.2mM、少なくとも約0.3mM、少なくとも約0.4mM、少なくとも約0.5mM、少なくとも約0.6mM、少なくとも約0.7mM、少なくとも約0.8mM、少なくとも約0.9mM、少なくとも約1.0mM、少なくとも約1.5mM、少なくとも約2.0mM、少なくとも約2.5mM、または少なくとも約3mM)である。上記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの治療有効量は、約0.6mM~約3mM(例えば、約0.6mM~約2mM、約0.6mM~約1mM、約1mM~約3mM、約1mM~約2mM、約2mM~約3mM)の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの全血、血清、及び/または血漿濃度を達成するのに十分な量であってよい。
【0052】
本明細書に開示の方法は、第1の時点で、対象に治療上有効な第1の量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することと、第2の時点で、上記対象に治療上有効な第2の量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することとをさらに含んでいてもよい。第2の時点は、第1の時点の、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、または少なくとも6日後であってよい。第2の時点は、第1の時点の少なくとも1週間後(例えば、第1の時点から2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、または10週間後)であってよい。場合により、第2の時点は、第1の時点の1週間以上後、第1の時点の2週間後、または第1の時点の1ヶ月以上後である。いくつかの実施形態において、上記投与することは静脈内投与によるものであってよい。
【0053】
場合により、第2の時点は、薬物の追加投与が上記対象にとって有益であるとの1つ以上の指標に基づいて決定されてもよい。例えば、第2の時点は、第1の投与の治療上の利益が減少した、または減少し始めた後に投与されてもよい。第2の時点は、例えば、循環及び/または全身の27-ヒドロキシコレステロールのレベル、循環及び/または全身の24S-ヒドロキシコレステロールのレベル、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー1(ABCA1)の転写レベル、ATP結合カセットサブファミリーGメンバー1(ABCG1)の転写レベル、末梢血単核細胞(PBMC)の後成的(クロマチン)シグネチャ、トリグリセリドレベル、総コレステロールレベル、超低密度リポタンパク質(vLDL)レベル、低密度リポタンパク質(LDL)レベル、高密度リポタンパク質(HDL)レベル、血清または血漿のコレステロール結晶溶解、炎症促進性メディエーター(例えば、インターロイキン-1b(IL-1b)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-18(IL-18))に基づいて決定されてもよい。
【0054】
さまざまな態様において、上記対象はヒトであってよい。場合により、上記対象は、アテローム性動脈硬化症及び/もしくはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、CAD)の発症のリスクがあるか、またはそれをより発症しやすい任意の年齢の対象であってよい。上記対象は、少なくとも30歳(例えば、少なくとも40歳、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳、少なくとも80歳、少なくとも90歳)であってよい。上記対象は、30歳未満(例えば、20歳未満、15歳未満、10歳未満、または5歳未満)であってもよい。上記対象はアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患(例えば、CAD)と診断されていてもよい。上記対象は、(例えば、欧州心臓病学会によって定義される)急性冠症候群(ACS)または慢性冠症候群(CCS)と診断されていてもよい。アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患は、血管造影、コレステロール検査、コンピュータ断層撮影(CT)走査、二重走査、心エコー図、心電図(ECGまたはEKG)、運動負荷試験、血管内超音波検査、磁気共鳴撮像(MRI)走査、陽電子放出断層撮影(PET)走査、光コヒーレン断層撮影(OCT)走査、薬理学的負荷試験、症状/病歴(例えば、患者報告症状)、脂肪減衰指数(FAI)、またはそれらの組み合わせによって診断することができる。上記対象はアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患に関連する症状を有していてもよい。上記アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患に関連する症状は、胸痛(例えば、狭心症)、息切れ、疲労、錯乱、筋力低下、またはそれらの組み合わせであってよい。上記対象はアテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を発症するリスクがあってもよい。アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患を発症するリスクがある対象は、少なくとも1つのアテローム性動脈硬化症の危険因子を有していてもよい。いくつかの実施形態において、アテローム性動脈硬化症の危険因子としては、過体重または肥満であること、高血圧、高コレステロールレベル、糖尿病、身体活動の欠如、1種以上の併存症(例えば、喫煙、腎疾患、リウマチ疾患)、及び化学療法剤の使用が挙げられるが、これらに限定はされない。上記対象は、動脈及び/または静脈に少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の狭窄があってもよい。上記対象は動脈及び/または静脈に少なくとも50%の狭窄があってもよい。上記動脈は、例えば、冠状動脈、大脳動脈、末梢動脈、大動脈であってよい。上記対象は、(例えば、光コヒーレン断層撮影(OCT)によって測定した)コレステロール含有量及び/または脂質含有量が高い1種以上のアテローム硬化性プラークを有していてもよい。上記対象は、(例えば、コンピュータ断層撮影(CT)走査によって測定した)カルシウムスコアが低い1種以上のプラークを有していてもよい。上記対象は安定CADまたは不安定CADに罹患していてもよい。上記対象は(例えば、欧州心臓病学会によって定義される)急性冠症候群(ACS)または慢性冠症候群(CCS)に罹患していてもよい。上記対象は、心筋梗塞を起こした後(例えば、直後)に(例えば、本明細書に記載の方法によって)治療を受けてもよい。上記対象には動脈壁(中膜)の肥厚があってもよい。上記対象は、化学療法を受けた後に(例えば、本明細書に記載の方法によって)治療を受けてもよい(例えば、上記対象は、化学療法剤の使用に起因して、アテローム性動脈硬化症のリスクが増大していても、またはアテローム性動脈硬化症を発症していてもよい)。
【0055】
本明細書に開示の方法は、アテローム硬化性心血管疾患を治療及び/または予防するために使用することができる。例えば、本明細書に開示の方法は、CAD、PAD、PVD、脳卒中、アテローム性動脈硬化症に起因する慢性腎疾患(CKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する末期腎疾患(ESKD)、アテローム性動脈硬化症に起因する急性腎不全、アテローム硬化性腎血管疾患(ARVD)、腎動脈狭窄、大動脈瘤、突発性末梢性心房高血圧症(idiopathic peripheral atrial hypertension)、勃起不全、間欠性跛行、及び/または術後もしくは医原性動脈疾患を治療ならびに/あるいは予防するために使用することができる。本明細書に開示の方法はアテローム性動脈硬化症を治療及び/または予防するために使用することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法により、上記対象におけるアテローム硬化性プラーク(例えば、コレステロールを多く含むプラーク及び/または脂質を多く含むプラーク)のサイズが低下する。上記プラークはコレステロール含有量及び/または脂質含有量が高くてもよい。上記コレステロール含有量及び/または脂質含有量は、例えば、光コヒーレン断層撮影(OCT)によって測定することができる。上記プラークはカルシウム含有量が低くてもよい。上記プラークはコンピューター断層撮影(CT)走査によるカルシウムスコアが低くてもよい。場合により、アテローム硬化性プラークのサイズは、上記治療以前のアテローム硬化性プラークのサイズと比較して低下してもよい。いくつかの実施形態において、アテローム硬化性プラークのサイズは少なくとも約0.5%低下してもよい。いくつかの実施形態において、アテローム硬化性プラークのサイズは、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、またはそれ以上低下してもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法により、上記対象におけるアテローム性動脈硬化症の進行及び/もしくは発症が減少するならびに/または予防される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法によりアテローム性動脈硬化症の進行が予防される。例えば、本明細書に記載の方法により、アテローム硬化性プラークのサイズの増加が予防され、プラークの体積の増加が予防され、プラークに覆われた冠動脈表面の量の増加が予防され、アテローム硬化性プラークの肥厚が予防され、動脈もしくは静脈の狭窄の増加が予防され、動脈壁の肥厚が予防されるかもしくは低下し、且つ/または血管の石灰化が予防されるかもしくは低下する。場合により、本明細書に記載の方法は、上記対象において既に発生したアテローム硬化性プラークの退縮を媒介する。例えば、本明細書に記載の方法により、上記対象において既に発生したアテローム硬化性プラークのサイズ及び/もしくは数が低減し、且つ/またはアテローム硬化性プラークの壊死性コアのサイズが低減する。
【0058】
上記治療することにより、上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(FMD)が増加する可能性がある。上記血流依存性血管拡張反応(FMD)の増加は、上記治療の少なくとも7日後に生じる可能性がある。血流依存性血管拡張反応(FMD)は、例えば、虚血誘発性内皮依存性血管拡張反応によって測定することができる。いくつかの実施形態において、血流依存性血管拡張反応(FMD)は、高解像度超音波検査によって測定される。場合により、上記治療することにより、全血、血清、血漿、もしくはそれらの任意の組み合わせにおけるステロール及び/またはオキシステロールレベル(例えば、27-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール)が上昇する可能性がある。場合により、上記治療することにより、例えばアテローム硬化性プラーク中に存在するコレステロール結晶が溶解する可能性がある。コレステロール結晶の溶解は、例えば、コレステロール結晶溶解能アッセイによって測定することができる。場合により、上記治療することにより、肝臓X受容体(LXR)による制御を受ける遺伝子の遺伝子発現が増加する可能性がある。上記LXRによる制御を受ける遺伝子の増加は、例えば上記対象の末梢血単核細胞(PBMC)中であってよい。上記LXRによる制御を受ける遺伝子は、例えば、ATP結合カセットサブファミリーAメンバー1(ABCA1)、ATP結合カセットサブファミリーGメンバー1(ABCG1)、脂肪酸シンターゼ(FAS)、アポリポタンパク質E(APOE)、またはそれらの組み合わせであってよい。場合により、上記治療することにより、PBMCの貪食活性が増加する可能性がある。場合により、上記治療することにより、上記対象由来の生体試料中の脂質レベルが上昇または低下する可能性がある。上記脂質は、トリグリセリド、LDLコレステロール、HDLコレステロール、またはアポリポタンパク質A1(ApoA1)であってよい。上記治療することにより、上記生体試料中のトリグリセリドのレベルが低下する可能性がある。上記治療することにより、上記生体試料中のLDLコレステロールが減少する可能性がある。上記治療することにより、上記生体試料中のHDLコレステロールのレベルが増加する可能性がある。上記治療することにより、上記生体試料中のApoAlのレベルが上昇する可能性がある。上記生体試料は、血液(例えば、全血、血清、血漿)であってよい。場合により、上記治療することにより、炎症及び心筋損傷の血清マーカーが減少する、及び/または抗炎症の血清マーカーが増加する可能性がある。上記血清マーカーは、インターロイキン(IL)-1β(IL-1β)、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)、インターロイキン-1α(IL-1a)、インターロイキン-6(IL-6)、高感度C反応性タンパク質(hsCRP)、トロポニン、クレアチンキナーゼ(CK)、クレアチンキナーゼ-MB(CK-MB)、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro-BNP)であってよい。場合により、上記治療することにより補体活性化が低下する可能性がある。場合により、上記治療することにより、上記対象の死亡のリスク及び/または全死因死亡率(ACM)が低下する可能性がある。いくつかの実施形態において、上記対象の死亡リスクは、25%、50%、75%、または90%低下する。いくつかの実施形態において、上記対象の死亡リスクは、上記投与後の少なくとも1年間、2年間、または3年間低下する。場合により、上記治療することにより、上記対象における心筋梗塞のリスクが低下する可能性がある。いくつかの実施形態において、上記対象における心筋梗塞のリスクは、25%、50%、75%、または90%低下する。いくつかの実施形態において、上記対象における心筋梗塞のリスクは、上記投与後の少なくとも1年間、2年間、または3年間低下する。場合により、上記治療することにより、上記対象における重症脳卒中または軽症脳卒中のリスクが低下する可能性がある。いくつかの実施形態において、上記対象における重症脳卒中または軽症脳卒中のリスクは、25%、50%、75%、または90%低下する。いくつかの実施形態において、上記対象における重症脳卒中または軽症脳卒中のリスクは、上記投与後の少なくとも1年間、2年間、または3年間低下する。場合により、上記治療することにより、上記対象における血圧が低下する可能性がある。いくつかの実施形態において、上記対象における血圧は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、または30%低下する。上記血圧の低下は、収縮期血圧、拡張期血圧、またはそれらの組み合わせの低下を含んでいてよい。場合により、上記治療することにより、上記対象における重大な有害心血管事象(MACE)のリスクが低下する可能性がある。いくつかの実施形態において、重大な有害心血管事象としては、心不全、再梗塞、再発性狭心症疼痛、心血管関連疾病による再入院、経皮的冠動脈形成術(PCI)の繰り返し、冠動脈バイパス移植、冠動脈血管再建、脳卒中、全死因死亡率(ACM)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、上記対象におけるMACEのリスクは、25%、50%、75%、または90%低下する。いくつかの実施形態において、上記対象におけるMACEのリスクは、上記投与後の少なくとも1年間、2年間、または3年間低下する。場合により、上記治療することにより、CADの重症度と相関して勃起不全が改善される可能性がある。
【0059】
場合により、上記治療することにより、肝酵素の正常レベルに対する2.5倍の上昇未満の肝酵素のレベルとなる可能性がある。上記肝酵素は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、またはそれらの組み合わせであってよい。上記肝酵素は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、5’ヌクレオチダーゼ、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、またはそれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態において、上記肝酵素の正常レベルは、肝臓への損傷がない状態での当該肝酵素のレベルである。場合により、上記治療することにより、血清クレアチニンレベルが0.3mg/dl未満になる可能性がある。上記治療することにより、血清クレアチニンレベルが1.3、1.0、0.75、0.5、または0.3mg/dl未満になる場合がある。場合により、上記治療することにより感音性難聴が実質的になくなる可能性がある。
【0060】
医薬組成物
【0061】
本明細書では、特定の実施形態において、ヒトにおけるアテローム硬化性心疾患及び/またはアテローム性動脈硬化症を治療するのに有効な量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、賦形剤とを含む医薬組成物が開示される。上記賦形剤は薬学的に許容される賦形剤であってよい。
【0062】
上記医薬組成物は、該医薬組成物の投与後に、対象における1種以上のオキシステロールの循環レベル及び/または全身レベルを、少なくとも約10%(例えば、24時間で)、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれ以上上昇させるのに有効な量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0063】
上記医薬組成物は、上記対象に上記医薬組成物を投与した後に、血漿のコレステロール結晶溶解能(CCDC)を少なくとも約10%(例えば、1時間で)、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれ以上増加させるのに有効な量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0064】
上記医薬組成物は、上記対象に上記医薬組成物を投与した後に、LXR転写因子による制御を受ける1種以上の遺伝子(例えば、ABCA1及び/またはABCG1)のmRNAレベルを、少なくとも約10%(例えば、24時間で)、例えば、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、またはそれ以上上昇させるのに有効な量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含んでいてもよい。
【0065】
上記賦形剤は、張度調整剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤、溶液(例えば、静脈内投与用溶液)、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。上記張度調整剤は、デキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリン、マンニトール、またはそれらの組み合わせであってよい。上記防腐剤は、抗酸化剤、抗菌剤、キレート剤、またはそれらの組み合わせであってよい。上記抗酸化剤は、アスコルビン酸、アセチルシステイン、亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩)、モノチオグリセロール、またはそれらの組み合わせであってよい。上記抗菌剤は、フェノール、メタクレゾール、ベンジルアルコール、パラベン、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、フェニル水銀塩(例えば、酢酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩)、またはそれらの組み合わせであってよい。上記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)カルシウム二ナトリウム、EDTA二ナトリウム、EDTAナトリウム、カルシウムベルセタミドナトリウム、カルテリドール、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、またはそれらの組み合わせであってよい。上記可溶化剤は、界面活性剤または共溶媒であってよい。上記界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 80)、ソルビタンモノオレアート ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween 20)、レシチン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(Pluronics)、またはそれらの組み合わせであってよい。上記共溶媒は、プロピレングリコール、グリセリン、エタノール、ポリエチレングリコール(PEG)、ソルビトール、ジメチルアセトアミド、Cremophor EL、またはそれらの組み合わせであってよい。上記ポリエチレングリコールは、PEG 300、PEG 400、PEG 600、PEG 3350、またはPEG 4000であってよい。上記緩衝剤は、酢酸ナトリウム、酢酸、氷酢酸、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、アルギニン、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、ジエタノールアミン、グルコノデルタラクトン、グリシン、グリシンHCl、ヒスチジン、ヒスチジンHCl、塩酸、臭化水素酸、リシン、マレイン酸、メグルミン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、phosphate acid, monobasic potassium, dibasic potassium、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸、酒石酸ナトリウム、酒石酸、トロメタミン(トリス)、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0066】
上記医薬組成物は、少なくとも約4g、少なくとも約10g、少なくとも約50g、少なくとも約100g、少なくとも約150g、少なくとも約200g、または少なくとも約250gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は少なくとも約4gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は少なくとも約50gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は少なくとも約100gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、少なくとも約200gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。いくつかの実施形態において、上記医薬組成物は、約4g~約250gの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(例えば、約4g~約100g、約4g~約50g、約50g~約150g、約50g~約250g、約100g~約200g、約100g~約250g、約150g~約250g)を含む。
【0067】
上記医薬組成物は単回投与用に製剤化されていてもよい。上記医薬組成物は静脈内投与用に製剤化されていてもよい。上記医薬組成物は等張となるように製剤化されていてもよい。
【0068】
キット
【0069】
本明細書ではキットがさらに提供される。場合により、上記キットは、本明細書で提供される1種以上の医薬組成物(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び薬学的に許容される賦形剤)が収納された1つ以上の容器(例えば、バイアル、フラスコ、広口瓶、アンプルなど)を備える。場合により、上記キットは複数の容器(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上の容器)を備える。場合により、上記1つ以上の容器のうちの少なくとも1つは静脈内注入バッグである。上記1つ以上の容器は、単回用量の上記医薬組成物、または複数回用量(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上)の上記医薬組成物を含んでいてもよい。場合により、上記1つ以上の容器には高濃度の量の上記医薬組成物が収納されており、該組成物はその後投与の前に希釈されて、有効用量が得られる。投与量は、本明細書に記載の1種以上の適応症を治療するのに有効な、本明細書に記載の任意の量であってよい。上記キットは、上記医薬組成物の静脈内注入用の1種以上のさらなる構成要素をさらに備えていてもよい。場合により、上記キットは静脈内注入バッグを備える。場合により、上記キットは、上記医薬組成物を混合及び/または希釈するための1種以上の溶液(例えば、生理学的食塩水)を備える。場合により、上記キットは、カテーテル、チューブ、注射器、及び針のうちの1種以上を備える。上記キットは、例えば、本明細書に記載の任意の適応症の治療の使用のために(例えば、ヒト個体におけるアテローム性動脈硬化症及び/もしくはアテローム硬化性心血管疾患を治療するため、ならびに/あるいはヒト個体におけるコレステロールを多く含むプラークの発生を低減または阻害するために)、対象に上記医薬組成物を投与するための説明書をさらに備えていてもよい。上記キットは、箱、袋、または任意の他の適宜の容器で提供されてもよい。
【0070】
いくつかの態様において、上記キットは1種以上のさらなる活性医薬成分(例えば、治療用化合物、薬物など)を備えていてもよい。場合により、上記キットは、本開示の医薬組成物(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び薬学的に許容される賦形剤)ならびに1種以上のさらなる活性医薬成分が収納された単一の容器を備えていてもよい。他の場合において、上記キットは、本開示の医薬組成物(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び薬学的に許容される賦形剤)が収納された第1の容器ならびに1種以上のさらなる活性医薬成分が収納された第2の容器を備えていてもよい。
【実施例】
【0071】
例1 進行アテローム性動脈硬化症の患者の治療に向けた、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる第1b相及び第2a相治験
安定した冠動脈疾患に罹患した男性及び女性が、無作為化、二重盲検、単一施設、プラセボ対照試験に参加する。単回投与(第1b相)及び反復投与(第2a相)後の、27-ヒドロキシコレステロールレベルならびに後成的変化を誘導する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの安全性(第1b相)及び有効性(第2a相)を評価する。
図1A、1B、2A、及び2Bは、第1b相及び第2a相試験で使用するためのプラセボ及び治験薬(IP)の投与をさらに説明する。
【0072】
この無作為化、二重盲検、プラセボ対照治験は、単一試験施設で実施され、2つのパートを有する。
【0073】
パートA(第1b相)は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの安全性及び忍容性、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの薬物動態を評価し、単回漸増静脈内用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与するCAD患者の、4つまでの連続コホートにおけるバイオマーカーの評価項目への影響を調査する。それぞれのコホートの試験の後に、次のコホートにおいてさらに用量を漸増する前に、安全性及び忍容性のデータを再検討する。用量漸増は十分に忍容される最大の用量まで継続してよいが、治験プロトコルにおいて事前に指定された血漿2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの曝露量を超えない。
【0074】
パートB(第2a相)は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの安全性及び忍容性、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの薬物動態、ならびに、4週間までの間隔で漸増、複数回静脈内用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与するCAD患者の3つの連続したコホートにおいて、注入の48時間後に主要なバイオマーカーの評価項目として測定する27-ヒドロキシコレステロールに対する影響を評価する。パートBでの用量及び投与間隔は、パートAの、予備的な安全性及び忍容性、ならびにPK及びバイオマーカー(PD)の結果に基づいて選択される。
【0075】
パートAの用量レベルは次のとおりである。すなわち、A1群:被験者に250mg/kgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはプラセボのいずれかを投与する;A2群:被験者に500mg/kgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはプラセボのいずれかを投与する;A3群:被験者に1,000mg/kgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはプラセボのいずれかを投与する;A4群:被験者に1,500mg/kgの2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはプラセボのいずれかを投与する。
【0076】
パートBでは、各投与群(投与A;投与B)に、性別毎に少なくとも4人を含む合計24人の被験者を登録する。各投与群を、3つの投与頻度アーム(1週間毎(qweek)、2週間毎(q2weeks)、1ヶ月毎(qmonth))に無作為化する。各投与頻度アームにおいて、6人の被験者を2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンに無作為に割り付け、2人の被験者をプラセボに割り付ける。群1:被験者に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはプラセボのいずれかを、1x週、4回まで投与する;群2:被験者に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはプラセボのいずれかを、1x2週、4回まで投与する;群3:被験者に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはプラセボのいずれかを、1x月、4回まで投与する。
【0077】
主要目的
【0078】
主要評価項目は、単回及び複数回静脈内投与として投与する2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの安全性及び忍容性を判定することである。
【0079】
副次的目的
【0080】
副次的評価項目は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの単回及び複数回投与での薬物動態を評価する。
【0081】
安全性評価項目
【0082】
安全性評価項目としては、身体検査、バイタルサイン(例えば、血圧、心拍数、呼吸数、体温、体重)、12誘導心電図、パルスオキシメトリーspO2、定期的な臨床検査(例えば、血液学、化学、尿検査など)、肝機能検査(eGFR)、聴力検査、及び有害事象が挙げられる。
【0083】
薬力学評価項目
【0084】
薬力学評価項目としては、血液及び尿試料中のコレステロール代謝産物(例えば、24-、25-、27-ヒドロキシコレステロール);全血試料におけるコレステロール結晶溶解能(CCDC)アッセイ(エクスビボ);血漿脂質(例えば、HDL-、LDL-コレステロール、総コレステロール、トリグリセリド)及びApoA1レベル;血漿ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及びフィブリノーゲン;炎症の血漿マーカー(例えば、IL-1β、IL-1a、IL-6、hsCRP)及び/または抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-1ra)の血漿レベル及びC3/C4補体活性;遺伝子発現(LXR標的遺伝子を含む)、エピゲノムアッセイ、及び単離PBMCにおける貪食アッセイ(エクスビボ);ならびに上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(FMD)(例えば、非侵襲的、定量的超音波画像法)が挙げられる。
【0085】
副次的評価項目を測定することにより、特定の器官及び細胞系に対するHPCDによる治療の有効性ならびに生物学的効果の評価も行う。副次的評価項目としては、高解像度超音波検査を使用した7日後の虚血誘発性内皮依存性血管拡張反応によって測定される、上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(FMD)の変化;ステロール/オキシステロール(例えば、血清/血漿、尿、及び便中の24S-及び25-ヒドロキシコレステロールレベル);エピゲノムデータ、全血(PBMC)のATAC配列決定;コレステロール結晶溶解能(CCDC);PMBCにおけるLXRによる制御を受ける遺伝子の遺伝子発現の変化;PBMCの貪食活性;MPO、フィブリン;マイクロバイオーム;血清、尿、便中でHPCDのpK;血清、尿、便中の脂質レベル(トリグリセリド、LDL/HDLコレステロール、ApoA1);炎症及び心筋損傷の血清マーカー(IL-1β、IL-1a、IL-6、hsCRP、トロポニン、CK、CK-MB、及びNT-pro-BNP);抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-1ra)の血清レベル;補体の活性化;全死因及び心血管死亡率;心筋梗塞;重症脳卒中及び軽傷脳卒中;ならびに血圧(24時間記録)が挙げられる。
【0086】
例2 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療を受けた被験者から得た血漿はコレステロール結晶溶解能を示す
男性のヒト対象を、以下の表1に従って4週間毎に静脈内投与する単回漸増用量の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンで治療した。
【表1】
【0087】
各投与について、投与前、投与(ラインフラッシュ)後、投与後1時間、及び投与後24時間に全血を採取した。上記全血から血漿を分離し、文献に記載の技法と同様の技法を使用して、コレステロール結晶溶解能(CCDC)アッセイに供した。上記CCDCアッセイは試料がコレステロール結晶を溶解する能力を測定する。
【0088】
図3Aは上記CCDCアッセイの結果を示す。
図3Aは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療後に、血漿のコレステロール結晶を溶解する能力が増加することを示している。このことは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療により、コレステロール結晶に結合してこれを可溶化する、コレステロール逆輸送(RCT)を促進する組織間輸送のための血漿因子を増加させることを示唆している。2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは遊離コレステロールの血漿溶解を回復及び改善することが可能であり、コレステロール逆輸送を加速することにより、アテローム硬化性プラークが低減されることが明らかになっており、データはさらに、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療が、アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患の好適な治療である可能性があることを示している。
【0089】
投与前の血漿もエクスビボで2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと共にインキュベートし、上記血漿のコレステロール結晶を溶解する能力を測定した。
図3Bは、エクスビボにおいて2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンで処理した血漿が、コレステロール結晶を溶解する能力の向上を示すことを示している。
【0090】
まとめると、本明細書に示すデータは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療によって血漿のコレステロール結晶溶解能が向上し、それによりアテローム硬化性プラークが溶解する且つ/または排出される可能性があることを示している。上記データはさらに、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療が、本明細書で述べるように、アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患の好適な治療である可能性があることを示している。
【0091】
例3 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療はヒト対象におけるステロール及びオキシステロール濃度を上昇させる
この例では、男性のヒト対象を例2に記載したように、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンで治療し、24S-ヒドロキシコレステロール及び27-ヒドロキシコレステロールの血漿レベルを測定した。
図4A~4Cは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療によって、24S-ヒドロキシコレステロール及び27-ヒドロキシコレステロールの血漿レベルは上昇した一方で、総コレステロールレベルは安定した状態を維持したことを示している。24S-ヒドロキシコレステロール及び27-ヒドロキシコレステロールの産生の増加により、抗炎症遺伝子シグネチャーに関与するLXR転写因子の内因性リガンドとして作用することによって、コレステロール代謝が亢進する。27-ヒドロキシコレステロールの上昇は、詳細には、マクロファージ活性化、ならびにコレステロール結晶貪食及びアテローム硬化性プラーククリアランスの活性の増加の細胞マーカーであり、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患の好適な治療薬である可能性があることを示している。
【0092】
例4 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療はLXR転写因子による制御を受ける遺伝子を増加させる
この例では、男性のヒト対象を例2に記載したように、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンで治療し、ABCA1及びABCG1のmRNAレベルを測定した。
図5A~5Dは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンによる治療により、LXR転写因子による制御を受ける遺伝子ABCA1及びABCG1のmRNAレベルが上昇したことを示している。ABCA1及びABCG1は主要な細胞輸送体であり、これにより未熟(crude)または成熟HDL粒子へのコレステロールの流出が生じる。心血管疾患では、ABC輸送体の発現はプラークの安定性及び罹患率と相関している。このデータは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを投与することによるLXR転写因子による制御を受ける遺伝子の活性化は、アテローム硬化性プラークを元に戻すまたは低減する可能性があり、アテローム性動脈硬化症及び/またはアテローム硬化性心血管疾患の治療に好適である可能性があることを示唆している。
【0093】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し且つ説明してきたが、当業者にはかかる実施形態が単なる例として提供されていることは明らかであろう。ここに至って、当業者であれば、本開示から逸脱することなく、多数の変化形、変更、及び置換を想起しよう。本明細書に記載の開示の実施形態に対するさまざまな代替物を、本開示の実施にあたって採用することができることを理解する必要がある。添付の特許請求の範囲が本開示の範囲を規定し、且つこれらの特許請求の範囲内の方法及び構造、ならびにそれらの等価物がそれによってカバーされることが意図される。
【国際調査報告】