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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】眼内レンズ用の挿入器
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023515141
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2020074761
(87)【国際公開番号】W WO2022048766
(87)【国際公開日】2022-03-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523078580
【氏名又は名称】オフサルモ・プロ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー・アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097BB04
4C097MM09
4C097SA10
(57)【要約】
本発明の主題は、眼内レンズを埋植するための挿入器(1)であって、本体(10)を備え、その本体内に、細長く形成された操作部材(11)が、後端側で部分的に挿入され、操作軸線(12)に沿って移動可能に案内されており、操作部材(11)は、操作軸線(12)に沿ったプッシュ操作(P)によるか或いは操作軸線(12)周りのスクリュー操作(S)によるかのいずれかを選択して本体(10)内へと動かすことができ、操作部材(11)は、少なくとも一部の上に螺子山(13)を備えている。本発明によれば、本体(10)に、少なくとも一つのスプリングアーム(14)が配置され、このスプリングアームは、螺子山(13)に面する内面に螺合構造(15)を備え、本体(10)に、操作軸線(12)周りに回転可能で貫通路を備えた切替部材(16)が配置され、その貫通路を操作部材(11)が貫通して延在し、貫通路は、少なくとも一つの内表面(17)を備え、その内表面は、周方向に変化する内半径(Ri)を備え、スプリングアーム(14)の外面(18)が、切替部材(16)の内表面(17)に接触していることで、切替部材(16)が操作軸線(12)周りに回転するときに、スプリングアーム(14)の周方向位置における内半径(Ri)の変化により、スプリングアーム(14)の、操作軸線(12)へと向かう弾性変形および操作軸線(12)から離れる弾性変形を生じさせることができ、これにより、螺合構造(15)を螺子山(13)に選択的に係合させるか或いは係合解除させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを埋植するための挿入器(1)であって、本体(10)を備え、その本体内に、細長く形成された操作部材(11)が、後端側で部分的に突入しているとともに、操作軸線(12)に沿って移動可能に案内されており、前記操作部材(11)は、前記操作軸線(12)に沿ったプッシュ操作(P)によるか或いは前記操作軸線(12)周りのスクリュー操作(S)によるかのいずれかを選択して前記本体(10)内へと動かすことができ、前記操作部材(11)は、少なくとも一部の上に螺子山(13)を備えている挿入器において、
前記本体(10)に、少なくとも一つのスプリングアーム(14)が配置され、当該スプリングアームは、前記螺子山(13)に面する内面に螺合構造(15)を備え、前記本体(10)に、前記操作軸線(12)周りに回転可能で貫通路を備えた切替部材(16)が配置され、前記貫通路を前記操作部材(11)が貫通して延在し、前記貫通路は、少なくとも一つの内表面(17)を備え、当該内表面は、変化する内半径(Ri)を周方向に少なくとも部分的に備え、前記スプリングアーム(14)の外面(18)が、前記切替部材(16)の前記内表面(17)に接触していることで、前記切替部材(16)が前記操作軸線(12)周りに回転するときに、前記スプリングアーム(14)の周方向位置で変化する前記内半径(Ri)により、前記スプリングアーム(14)の、前記操作軸線(12)へと向かう弾性変形および前記操作軸線(12)から離れる弾性変形を生じさせることができ、これにより、前記螺合構造(15)を前記螺子山(13)に選択的に係合させるか或いは係合解除させることができることを特徴とする挿入器。
【請求項2】
請求項1に記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)は、貫通路のある受け部(19)を備え、当該貫通路を前記操作部材(11)が貫通して延在し、当該受け部上に前記切替部材(16)が回転可能に受容されていることを特徴とする挿入器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の挿入器(1)において、
少なくとも一つの前記スプリングアーム(14)が、終端側で前記受け部(19)上或いは前記受け部(19)内において前記受け部(19)または前記本体(10)に配置されていることを特徴とする挿入器。
【請求項4】
請求項1または3に記載の挿入器(1)において、
前記切替部材(16)は、前記受け部(19)上にスナップ嵌めされ、前記操作軸線(12)に対して動かない軸線方向位置において、前記受け部(19)上を回転可能に案内されていることを特徴とする挿入器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)は、翼状把持部(20)を備え、前記受け部(19)は、前記翼状把持部(20)の後端側に突出部としてつながっていることを特徴とする挿入器。
【請求項6】
請求項2から5のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記受け部(19)の外周に、少なくとも一つの溝部(21)が設けられ、前記切替部材(16)には、内周側に少なくとも一つのピン(22)が形成され、当該ピンが前記溝部(21)内を案内されていることを特徴とする挿入器。
【請求項7】
請求項6に記載の挿入器(1)において、
前記溝部(21)は、少なくとも一つの区間(A)上を前記受け部(19)の外表面の周方向に延びていることを特徴とする挿入器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記切替手段(16)の周方向セグメント(U1,U2)上に、前記内半径(Ri)が周方向に変化する前記内表面(17)が形成されていることを特徴とする挿入器。
【請求項9】
請求項8に記載の挿入器(1)において、
前記周方向セグメント(U1,U2)は、中心角が360°の円周上または180°の中心角または120°の中心角または90°の中心角上に延在していることを特徴とする挿入器。
【請求項10】
請求項8に記載の挿入器(1)において、
前記切替部材(16)の前記内表面(17)に互いに対向する二つの周方向セグメント(U1,U2)が形成され、互いに対向する二つのスプリングアーム(14)が前記本体(10)上および/または前記受け部(19)上に配置され、当該スプリングアームは、それぞれ一つの周方向セグメント(U1,U2)に対応して設けられ、これらと相互作用することを特徴とする挿入器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記操作部材(11)上の前記螺子山(13)は、3mmから20mmのピッチまたは5mmから15mmのピッチまたは9mmから11mmのピッチを備えていることを特徴とする挿入器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記挿入器(1)がレンズカートリッジ(29)のための収容手段(30)を備え、前記レンズカートリッジ内に眼内レンズ(24)が組み込まれており、前記レンズカートリッジ(29)が、前記収容手段(30)内に装着可能とされていることを特徴とする挿入器。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)は、収容室(23)を備え、その中に眼内レンズ(24)が装填されていることで、前記眼内レンズ(24)が装填された前記挿入器(1)が、個別に取扱可能且つ流通可能なユニットを形成することを特徴とする挿入器。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)内にピストン(25)が収容されており、当該ピストンは、回転変換部(26)を介して前記操作部材(11)により軸線方向にスライド可能とされていることを特徴とする挿入器。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)は、前記受け部(19)とともに、且つ前記翼状把持部(20)とともに、一体的に一つのプラスチック体から作られ、前記本体(10)における前側に、前記眼内レンズ(24)を送出するための送出ノズル(28)を先端側に備えたレンズガイド部(27)が配置されていることを特徴とする挿入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器であって、本体を備え、その本体内に、細長く形成された操作部材が、後端側で部分的に突入しているとともに、操作軸線に沿って移動可能に案内されており、操作部材は、操作軸線に沿ったプッシュ操作によるか或いは操作軸線周りのスクリュー操作によるかのいずれかを選択して本体内へと移動させることができ、操作部材は、少なくとも一部の上に螺子山を備えている挿入器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器はよく知られている。この場合、眼内レンズは、眼に嵌め込まれる少し前に、内部に眼内レンズが組み込まれたレンズカートリッジを用いて挿入器に組み込むことができ、その後、粘弾性物質を加えてから眼内レンズを前側の送出ノズルから眼の後房に送出するようになっている。本体の前側に、挿入器のレンズガイド部が配置されており、送出ノズルは、そのレンズガイド部の開放端を形成している。
【0003】
本体内には、ピストンが操作軸線に沿って移動可能に案内されており、操作軸線に沿って前後の位置で操作部材に接続している当該ピストンは、操作部材を前進させると、それがピストンに伝わって、送出ノズルに向かう方向で眼内レンズに接触することができ、眼内レンズを送出ノズルを通して送出することができる。
【0004】
ピストンを挿入器の本体内部において動かすために、そして、ピストンをレンズガイド部をも通して送出ノズルの方に制御しながらさらに前へと動かすために、操作部材が本体内に突入するように設けられており、これにより、その操作部材を前進させると、ピストンが、操作軸線に沿って先ず眼内レンズに接触し且つそのまま進んで行くことで眼内レンズが後房内に送り出されるまで眼内レンズと一緒に送出ノズルの方に移動させられ得るようになっている。新しい構造の挿入器は、使い捨ての挿入器として利用され、一度使用されてプリロードされた眼内レンズが送り出されると廃棄される。挿入器のこの構造は、一般にプリロードシステムと呼ばれる。
【0005】
操作部材は、通常、操作者、すなわち眼科医によって手動で本体の後方開口部に押し込まれる。ここで、操作部材を操作軸線に沿って動かすために、第一の操作モードでは、手動で操作部材に加えられる純粋なスラスト運動が可能になり、第二の操作モードでは、同じ操作部材に加えられる回転運動が可能になる挿入器が知られている。その点では、新しい構造の挿入器は、プッシュ操作とスクリュー操作の両方を可能にすることができ、そのために、挿入器には、操作モードを切り替えるための然るべき仕組みが設けられる。
【0006】
例えば、特許文献1は、眼内レンズを埋植するための挿入器を開示し、その操作部材は、後ろからのプッシュか或いはスクリュー運動によって本体内に入り込ませることができ、そのスクリュー運動は、操作部材の螺子山と直にネジ結合している切替部材に手動で加えることができる。一方、操作部材が手動で本体内に押し込まれると、切替部材は自由に共回りする。操作部材を後ろから押すか或いは切替部材を回すかのいずれかによって操作部材が本体内に押し込まれると、操作部材がピストンと接触したまま眼内レンズを前側で送出ノズルから送出することができる。
【0007】
特許文献2は、ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器のさらに他の態様であって、本体を備え、その本体内に、細長く形成された操作部材が、後端側で部分的に突入しているとともに、操作軸線に沿って移動可能に案内されており、操作部材は、操作軸線に沿った操作部材のプッシュ操作によるか或いは操作軸線周りの操作部材のスクリュー操作によるかのいずれかを選択して本体内へと移動させることができ、そのために、操作部材は、少なくとも一部の上に螺子山を備えている挿入器を開示する。操作部材のプッシュ操作とスクリュー操作を切り替えるために、折り畳みと展開が可能な対向し合う二つの翼状把持部が設けられており、展開した姿勢にすることにより操作モードをプッシュ操作に、畳み込まれた状態ではスクリュー操作に切り替えることができる。プッシュ操作の操作モードではこのとき、折り畳みと展開が可能な翼状把持部は、フィンガーグリップとして機能することができるため、執刀医は、翼状把持部のところで挿入器を人指と中指の間でつかんで親指を使って後端側で操作部材を本体内に押し込むことができるようになる。翼状把持部が畳み込まれている場合、操作部材は、執刀医の一方の手に本体が保持されつつ執刀医の他方の手により操作部材がねじ込まれることで、本体内に螺入させることができる。
【0008】
挿入器をプッシュ操作にするのかスクリュー操作にするかの設定は、通常は助手により行なわれ、その後、眼科医は、操作モードが予め設定された挿入器を駆使しながら、前方のレンズガイド部における送出ノズルを眼球内に挿入し、次に眼内レンズを後房に入り込ませた状態にするまで操作部材の操作を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3476375号明細書
【特許文献2】国際公開第2019/195951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器をさらに発展させ、挿入器が、眼内レンズを前進させるための操作部材のプッシュ操作とスクリュー操作のできる限り簡単な切替性能を持つようにすることである。特に、プッシュ操作とスクリュー操作との間の操作モードの切り替えは、それ以外の点では挿入器を同じように扱える一方、プッシュ操作とスクリュー操作との間の切替が挿入器の使用の直前に設定可能となるようにできなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1のおいて書きに係る挿入器に基づいて、その特徴的な特徴部を組み合わせることにより解決される。本発明の有利な発展態様は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明は、本体に、少なくとも一つのスプリングアームが配置され、このスプリングアームは、螺子山に面する内面に螺合構造を備え、本体に、操作軸線周りに回転可能で貫通路を備えた切替部材が配置され、その貫通路を操作部材が貫通して延在し、貫通路は、少なくとも一つの内表面を備え、その内表面は、変化する内半径を周方向に少なくとも部分的に備え、スプリングアームの外面が、切替部材の内表面に接触していることで、切替部材が操作軸線周りに回転するときに、スプリングアームの周方向位置で変化する内半径により、スプリングアームの、操作軸線へと向かう弾性変形および操作軸線から離れる弾性変形を生じさせることができ、これにより、螺合構造を螺子山に選択的に係合させるか或いは係合解除させることができるという技術的教示を含む。
【0013】
本発明の中心となる思想は、二つの切替位置の間において手で回転させることのできる切替部材であり、第一の切替位置では、切替部材は、スプリングアームにおける螺合構造を操作部材の螺子山にスクリュー操作のために係合させ、第二の切替位置では、切替部材は、螺合構造を持つスプリングアームを操作部材の螺子山から解放することで、スプリングアームが操作部材における螺子山との係合が外れた状態になって、最終的に、操作部材がプッシュ操作のために自由にスライドできるようになる。
【0014】
こうして、切替部材が第二の切替位置へと回されると、上記スプリングアーム或いは複数のスプリングアーム(特に、互いに向き合う位置にある二つのスプリングアーム)が、自ずと外側に弾性的に拡開することで、螺合構造が操作部材の螺子山を解放する。
【0015】
内半径が円周にわたって変化する内表面により、切替部材が第一の切替位置へと回転するときに、少なくとも一つのスプリングアームが、半径方向内側に向かって押されることで、螺合構造が螺子山に係合するようになる。そうするために、スプリングアームの外面は、特に、内側にある螺合構造の後端側で、切替部材の内表面と接触しており、切替部材が回転すると、内表面がある程度縮径することで、スプリングアームは、内側に向けて押され、切替部材が逆回りに回転すると、再び外側に向かって元に戻るように弾発する。スプリングアームはこのとき、周方向位置において本体に動かないように配置され、その点では、切替部材の回転に伴って連れ回りしない。
【0016】
こうして、切替部材は、特にネジを用いずに構成されている。このように、この挿入器は、挿入器の外側で一つの部材をスライドさせたり折り畳んだりしなくても、回転リングまたは回転輪の形態の簡素な切替部材を用いて、プッシュ操作の操作モードと、スクリュー操作の操作モードとの間を切り替えることができる。切替部材は、例えば、“プッシュ”や“スクリュー”などのラベルを付けることができ、切替部材の上に矢印を付すことで、ユーザは、プッシュ操作またはスクリュー操作を選択的に作動させるために、切替部材を本体に配置した状態で操作軸線周りのどの方向に回転させなければならないのかが難なく分かるようになる。
【0017】
本発明による可能な構成の範囲内で、スプリングアームと切替部材との間の接触は、直接的な接触である必要はなく、例えば、偏心部材、特に、偏心した内部部品が、本発明の意味において同じ効果を達成するように切替部材とスプリングアームの間に配置されているようにされてもよいし、或いは、切替部材が複数の部分で形成されているようにしてもよい。この場合、偏心部材はまた、操作軸線周りの回転性に関連して、変化する内半径を生じさせることができ、そこに少なくとも一つのスプリングアームが接触していることで、内表面そのものが周方向に変化する内半径を有して形成されている切替部材を用いた場合と同じ効果が得られるようになる。
【0018】
特に有利にも、本体は、貫通路のある受け部を備え、貫通路を操作部材が貫通して延在し、受け部上に切替部材が回転可能に受容されている。受け部はこのとき、本体と一体的に形成されていてもよいし、或いは、受け部は、本体に取り付けられていて、例えば、本体にクリップ式に固定されていてもよい。
【0019】
また、少なくとも一つのスプリングアームが、終端側で受け部上或いは受け部内において受け部そのものに或いは代替的に本体に配置されている場合も有利である。スプリングアームは、例えば、中空に構成された受け部を一部が貫通して延び、後端側で受け部の開放端から突出していてもよい。このようにして、簡単な方法で切替部材の内表面の一部が、スプリングアームの外面と接触させられる一方、内表面のさらに他の部分が、円周にわたって内半径が同じになるように構成され、この部分で、切替部材が受け部上に回転可能に受容されている。
【0020】
さらに有利にも、切替部材は、受け部上にスナップ嵌めされているか、或いは操作軸線に対して固定的な軸線方向位置において受け部上を操作軸線と一致する固有の回転軸線回りに回転可能に案内されているか、の少なくともいずれかである。切替部材は、製造工程中に受け部上にスナップ嵌めすることができるので、環状の形をした切替部材は、固定的な軸線方向位置において受け部上を操作軸線周りに回転運動可能に案内されている。切替部材はここで、受け部の外周上に例えばスナップ手段が設けられ、そのスナップ手段を介して、スナップ嵌めする方向にだけ切替部材を動かすことができ、逆向きの取り外す方向には、そのスナップ手段が切替部材を制止することで、切替部材が手では二度と受け部から取り外すことができないように受け部上に配置されていてもよい。
【0021】
さらに、切替部材のための係止位置(スナップ留め位置)が周方向に設けられていてもよい。この係止位置は、例えば、係止位置の手前で抵抗を克服しなければならないことによって、ユーザが感触によるフィードバックを知験するように形成されており、切替部材は、プッシュ操作のための係止位置と、スクリュー操作のための係止位置とにおいて、その都度自ずと停留するように、例えばその回転の終了位置においてスナップフィットできるようになっている。
【0022】
さらに有利にも、本体は、翼状把持部を備え、受け部は、翼状把持部の後端側に突出部としてこの翼状把持部につながっている。執刀医が挿入器をプッシュモードで使用するかスクリューモードで使用する場合、切替部材は、翼状把持部の後側にあり、操作部材が、後ろからスラスト運動か或いはスクリュー運動によって本体内に入り込ませられる間、ユーザは、この切替部材を動かすことができず、特に、うっかり動かすことができないので、切替部材が、挿入器の取り扱いの際の妨げになることはない。
【0023】
最後に、受け部の外周に、少なくとも一つの溝部が設けられ、切替部材には、内側に少なくとも一つのピンが形成され、このピンが溝部内を案内されていることが有利である。溝部は、特に、受け部の外表面の周方向において、少なくとも一つの区間上に、円周の一部に亘って形成され、このとき、二つの溝部が、切替部材の内周側にそれぞれ対応するように形成されたピンを備えて設けられていてもよく、これにより、切替部材が傾くことなく操作部材に取り付けられるようになる。特に、各溝部には、一個を超えるピンが設けられていてもよい。また、切替部材は、一定の軸方向幅を持つ内周部分を備え、この部分が受け部の外表面上を案内されることで、傾きのない、遊びが最小で感触がかなり良い切替部材の回転性能が実現されることが有利である。
【0024】
溝部は、少なくとも一つの区間上を受け部の外表面の周方向に延びているのでもよい。切替部材を受け部上に嵌挿するために、操作軸線に平行に延びるさらに他の溝部が設けられていてもよく、この溝部が上記の周回する溝部につながる。この溝部或いはこれらの溝部は、切替部材の内面上のそれぞれのピンに対して設けられており、これにより切替部材を有利に組み付けることができる。軸線方向に延びる溝部が周方向に延びる溝部につながる部分が、スナップ嵌めの隆起部を備えていてもよく、この隆起部を超えてピンが向こう側に押し込まれなければならないことで、切替部材は、最終的に抜け止めされた状態で受け部上に取り付けることができる。
【0025】
切替部材の内表面上で周方向に変化する内半径は、特に、区間として一重または多重に構成することができる。特に、一つまたは複数の周方向セグメントが設けられていることで、切替手段の周方向セグメント上に、内半径が周方向に変化する内表面が形成されているようにしてもよい。このとき、円周に亘って特に均等に配分された複数の周方向セグメントが設けられていてもよく、例えば、それぞれ内半径が変化する互いに対向する二つの周方向セグメントが設けられていてもよい。
【0026】
変化する内表面の内半径は、切替部材の周方向位置に応じて小さくなったり大きくなったりする操作軸線までの内表面の距離を生じさせ、切替部材を受け部上で回転させると、内表面は、スプリングアームが配置されている決まった周方向位置では、ある意味で縮径していき且つ反対の回転方向において再び拡径するので、スプリングアームは、内側に向けて動くことができ且つ自身の弾性により再び外側に向けて動くことができ、これにより、最終的に螺合構造を操作部材上の螺子山に係合させるか或いは係合解除させることができる。
【0027】
切替部材の軸線方向において、すなわち、切替部材を本体上で回転させることのできる回転軸線または対称軸線の方向において、とびとびの周方向位置については、内半径はもちろん一定のままにしておいてもよい。従って、特に、内表面と、スプリングアームの外面との間の線接触が生じ、スプリングアームの外面は、内半径が変化する湾曲した内表面にこの外面がフィットするように湾曲していてもよく、これによれば、最終的には、内半径が内側に向かって縮径していく内表面と、スプリングアームの外面との間の面接触も生じさせることができる。
【0028】
周方向セグメントは、中心角が360°の円周上または180°の中心角または120°の中心角または90°の中心角上に延在するのでもよい。こうして例えば、中心角が完全な円に及んでいる場合、ただ一つのスプリングアームが内表面に接触し、周方向セグメントの中心角が180°では、互いに対向する二つの内表面が設けられ、二つのスプリングアームがそれらに対応して設けられ、周方向セグメントの中心角が120°である場合、三つの周方向セグメントが設けられ、三つのスプリングアームがそれらに対応して設けられ、それぞれの周方向セグメントの中心角が90°では、四つの周方向セグメントを設けることができ、四つのスプリングアームがそれらに対応して設けられている等々となる。
【0029】
特に好ましくは、切替部材の内表面に互いに対向する二つの周方向セグメントが形成されてもよく、これにより、互いに対向する二つのスプリングアームも本体上および/または受け部材上にあり、当該スプリングアームは、それぞれ一つの周方向セグメントに対応して設けられ、これらと相互作用するようになっている。挿入器が、プッシュ操作とスクリュー操作の間で切り替えられる場合、切替部材は、略180°回されなければならず、スプリングアームの幅は、回転角として丸々180°にならないように考慮されなければならない。この点で、挿入器の操作モード間で切り替えるための回転角度は、通常、対応する中心角を持つ周方向セグメントの周方向の拡がりより少ない。
【0030】
さらに、操作部材上の螺子山が、3mmから20mmのピッチまたは5mmから15mmのピッチまたは9mmから11mmのピッチを備えていることが有利である。操作部材上の螺子山が10mmのピッチを備えていることで、眼内レンズを有利に送出できるようにするのに、特に、多過ぎる回転や少な過ぎる回転を加えなくてもよいようにするのに、執刀医が、スクリュー操作の際に、操作部材に常に適正数の回転を加えることになる場合には特に有利である。というのも、後者では、送出ノズルからレンズを送り出す動きの微妙な調整ができなくなると考えられるからである。
【0031】
挿入器は、レンズカートリッジのための収容手段を備えていてもよく、そのレンズカートリッジ内に眼内レンズが組み込まれており、レンズカートリッジが眼内レンズとともに収容手段内に装着可能とされている。このような挿入器は、眼内レンズの仕様に無関係に提供できるが、挿入器の使用準備のために、患者に必要な仕様の眼内レンズを保持したレンズカートリッジを装着しなければならない。次に、粘弾性物質を注入して、眼内レンズおよびレンズカートリッジ内の内腔並びにレンズガイド部の内部空間を湿らせ、粘弾性物質で満たす必要がある。最後に、レンズの送出を行うことができるが、このとき挿入器は再利用可能であるか或いは好ましくは使い捨てとして設けられている。
【0032】
さらに、挿入器は、プリロードシステムとして構成することができ、この構成により、本体またはレンズガイド部が、収容室を備え、その中に眼内レンズが予め装填されていることで、眼内レンズが装填された挿入器が、個別に取扱可能且つ流通可能なユニットを形成し且つ装填されたレンズの仕様を持っていることになる。レンズガイド部はこのとき、本体の一部として捉えることもできる収容室を備えていてもよい。この点に関して、この収容室は、場所的に見て本体内に設けられている必要はなく、レンズガイド部内にも或いはレンズガイド部と本体の間にも設けられていてもよい。
【0033】
本体内にピストンが収容されており、このピストンは、回転変換部を介して操作部材により軸線方向にスライド可能とされている。特に、挿入器をスクリュー操作により操作しなければならないときには、自らは回転運動することなく操作軸線に沿って特に直線運動することしかしないピストンの動きから、操作部材の回転運動が切り離されなければならない。
【0034】
本体は、受け部とともに、且つ翼状把持部とともに、および/または特にレンズガイド部とさえも、一体的に且つ物質的に一様に一つのプラスチック体から作られ、本体における前側に、眼内レンズを送出するための送出ノズルを先端側に備えたレンズガイド部が、選択的には別体としても、配置されていてもよい。
【0035】
以下に、本発明の好ましい実施例の記載により、本発明をさらに良くする手段を図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器であって、挿入器をプッシュ操作で操作することのできる態勢に挿入器の切替部材が置かれている挿入器の斜視図である。
図2図1による挿入器であって、挿入器をスクリュー操作で操作することのできる態勢に挿入器の切替部材が置かれている挿入器を示す図である。
図3】挿入器の主要構成部の分解図である。
図4】動作状態がプッシュ操作用に設定されている挿入器を斜視的に表した断面図である。
図5図4による挿入器であって、図4に示された位置に対して切替部材が回されたことで挿入器のスクリュー操作が設定されている挿入器を示す図である。
図6】切替部材の部分断面図とともに挿入器を示す斜視図である。
図7】プッシュ操作による本体上の切替部材の配置の断面図である。
図8】スクリュー操作による本体上の切替部材の配置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1および図2は、ヒトの眼に眼内レンズを埋植するために使用される挿入器1の斜視図を示す。挿入器1は、主要な構造部品として本体10を備え、その本体内に、把手31が終端側にある細長く形成された操作部材11が、後端側において部分的に挿入されている。操作部材11は、その大半の長さにわたって螺子山13を有した部分があり、その操作部材11は、本体10内に後端側において部分的に挿入されていることで、操作部材11の自由端に把手31が形成されるようになっている。
【0038】
本体10の前側には、レンズガイド部27が配置され、その中に、詳細には図示していない態様で眼内レンズが収容されている。本体10の主要構成部品は、ほぼ円筒形であるか或いは取り扱いのために人間の手に馴染みやすく作られているとともに、細長く延びた部分を備えており、本体10と、前側のレンズガイド部27と、後端側に挿入された操作部材11とを備えた挿入器1が、操作軸線12に沿って細長に延在している。操作軸線12はここで、終端側に把手31を備えた回転可能な操作部材11の回転軸線を同時に形成している。
【0039】
さらに取り扱い易くするために、本体10の後の部分には、翼状把持部20があり、これにより、翼状把持部20を使って挿入器1を人差し指と中指の間に挟みながら、後側で親指を把手31にのせて押すことができる。翼状把持部20に対して背面側には、操作軸線12周りに回転可能に本体10上に受容された切替部材16が隣接しており、この切替部材16が貫通路を有し、その中を操作部材11が貫通して延在している。切替部材16はここで、切替部材が操作部材11に直に接触せず、切替部材と直接的に相互作用することもないように本体10上に設置されている。
【0040】
レンズガイド部27には、投入口32が示されており、ここを通して、挿入器の使用開始前に粘弾性体を注入することができる。これが、特にレンズガイド部27内の内腔および内在する眼内レンズを湿潤し、これにより、眼内レンズを送出するプロセスがやり易くなるか若しくは眼内レンズの損傷をなくすようにできる。
【0041】
挿入器1は、切替部材16を用いることで、挿入器1の使用のためにプッシュ操作Pとスクリュー操作Sの間の切り替えを行なうことができるようにするのに用いられる一つの手段を備えている。図1はここで、プッシュ操作Pが可能な切替部材16の切替位置を示す一方、図2は、スクリュー操作Sが可能な回転された位置にある切替部材16の態勢を示す。
【0042】
切替部材16が、プッシュ操作Pとスクリュー操作Sとの間を切り替えるための手段になれるように、切替部材16は、内側に内表面17を有し、その内表面が、切替部材16の周延部に亘って、アルキメデスの螺旋のように、半径について少なくとも部分的に変化し、それにより、回転に際して、本体10の決まった位置に配置された、内側に位置するスプリングアーム14を、縮径時に操作部材11の螺子山13の方に動かすことができるとともに、それとは逆の開放時に螺子山から離れさせることができる。
【0043】
こうして図1は、切替部材16の内表面17の所定の周方向領域にスプリングアーム14が位置し、それに応じて、スプリングアーム14が自ずと弾性的に拡開できることで、操作軸線12までの距離が拡大し、スプリングアーム14が操作部材11上の螺子山13を解放する切替部材16の切替位置を示している。
【0044】
これに対して、図2には、所定の切替位置にある切替部材16が、回転された状態で示されており、それに応じて、スプリングアーム14は、より小さな内半径により、この場所で操作部材11の螺子山13へと押されて螺子山に係合するので、この位置において、本体10内へ操作部材11を前進させるためのスクリュー操作Sが可能となるようになっている。
【0045】
操作部材11がより深く本体10内に押し込まれる或いはねじ込まれるにつれて、眼内レンズは、レンズガイド部27における前側の送出ノズル28の方にさらに前方へと動かされる。プッシュ操作Pとスクリュー操作Sの間で挿入器1を切り替えるための機能の詳細な図が、挿入器1の分解図で図3に示されている。
【0046】
図3は、挿入器1を分解図で示し、そこには、挿入器1の主要構成部品が示されているが、本発明を説明するのに必要ないという理由で図示されていないさらに他の挿入器1の構成部品も存在しており、図示されていないとはいえ、それらの部品は、本発明に係る挿入器1の構成部品であることに違いはなく、図は、限定的に理解されるべきものではない。
【0047】
図3の表示は、本体10をレンズガイド部27から切り離して示しており、操作軸線12と一列に並んで示されたレンズガイド部27は、収容室23を備えて構成され、その中に、(支持部の一つが見えている)眼内レンズ24が装填されており、下側に示されたさらに他のレンズガイド部27は、代替的な構成を形成し、レンズカートリッジ29を収容するための収容手段30を備え、その中に、別に描かれた眼内レンズ24が装填されている。レンズカートリッジ29が収容手段30内に装填されているときに、眼内レンズ24は、ピストン25により、前側で送出ノズル28からヒトの眼の後房内へと送出することができる。
【0048】
これに関して、ピストン25は、操作軸線12に沿って直線運動を行い、操作部材11がスクリュー操作により本体10内に螺入されると、回転変換部26の働きで、操作部材11の回転運動がピストン25に伝わらない。
【0049】
本体10は、翼状把持部20の後ろ側に、射出成形による受け部19を有し、その上に、切替部材16が操作軸線12周りに回転可能に取り付けられている。これに関して、受け部の外表面19は、溝部21を備え、この溝部が、図示された区間A上を周方向に延びていることで、軸線方向の定まった位置において操作軸線12周りに切替部材16を回すことができるようになっている。スライドのためには溝部21の区間Bが用いられるが、スナップ式の突出部が存在していて、そのスナップ式の突出部を乗り越えられなければならないために、所定の位置にある切替部材16は、受け部19の溝部21の区間Aから区間Bへ移れないようになっている。
【0050】
受け部19は、スリーブ状に構成され、特に、翼状把持部20の背面側で本体10に一体的に接続されている。受け部19の内側には、例えば、互いに対向する数が二つのスプリングアーム14が配置され、スプリングアーム14は、受け部18における内側か、或いは、本体10若しくは翼状把持部20の後側に根元で固定されている。こうして、スプリングアーム14は、弾性変形によって、操作軸線12に向かって内向きに、或いは、操作軸線12から離れるように外向きに弾性的に動くことができる。力が加わっていないスプリングアーム14の配置では、これらは、互いに所定の隔たりを有し、それによって、操作部材11上の螺子山13は、二つのスプリングアーム14の間を自由に動くことができる。従って、挿入器1の出荷時の状態は、切替部材16がプッシュ操作のための切替位置にある切替部材16の態勢に設定されていなければならない。
【0051】
切替部材16が受け部19上にスナップ嵌めされると、切替部材16は、内半径Riが変化する内表面17の様々な周方向位置がスプリングアーム14の外面18に接触することになるように、受け部19上で回転させることができる。連続する円周に亘って内表面17の内半径Riが変化することで、つまり、半径が狭くなったり或いは広くなったりすることで、スプリングアーム14は、半径方向内側に向かって押されるか或いは自身の弾性により半径方向に再び外側に向かって弾性的に拡開することができる。従って、操作軸線12周りの切替部材16の切替位置に応じて、スプリングアーム14の内面における螺合構造15が螺子山13と係合するようになるか或いは螺合構造15が螺子山13との係合を解除させられるかを調整することができる。スプリングアーム14の螺合構造15が、操作部材11上の螺子山13と係合しているとき、挿入器1は、スクリュー操作Sで使用することができ、スプリングアーム14における螺合構造15が操作部材11の螺子山13との係合を解除させられると、挿入器1は、プッシュ操作Sにより使用することができる。
【0052】
図4および図5は、本体10を通る断面における挿入器の斜視図を示し、一層明確にするために、図4は、挿入器をプッシュ操作Pで用いることができる状態にある挿入器1を示し、図5は、挿入器をスクリュー操作Sで用いることができる状態にある挿入器1を示す。
【0053】
挿入器1をプッシュ操作Pの操作モードで用意しなければならない場合、図4に示された回転位置に切替部材が位置するまで、把手31から視て反時計回りに切替部材16を回転させる。この回転位置では、内表面17の内半径は、スプリングアーム14の接触位置で広げられ、スプリングアーム14が弾性的に拡開し、操作軸線12までの距離が最大となる。この位置では、スプリングアーム14の内面上の螺合構造15は、操作部材11の螺子山13に係合しない。すると、操作部材11は、操作軸線12に沿って自由に動かすことができ、操作部材11は、ピストン25とともに前に向けてレンズガイド部27の方に押すことができる。
【0054】
図5では、切替部材16は、時計回りに回転させた位置にあり、それに応じて、スプリングアーム14との接触点における内表面17の内半径は、かなり縮小されているので、螺合構造15は、操作部材11上の螺子山13と係合させられている。切替部材16のこの切替位置では、操作部材11は、把手31によって操作部材が操作軸線12で回転させられて最終的に本体10内に螺入される場合にのみ、操作軸線12に沿って変位させることができる。従って、スプリングアーム14の互いに対向する螺合構造15は、本体10内にネジ貫通路を形成し、その貫通路を介して、操作部材11を後端側で本体10内に螺入させることができる。そうしたときにだけ、ピストン25は、前に向けてレンズガイド部27の方に変位させることができ、眼内レンズを送出ノズルから送出することができる。
【0055】
図6は、さらに他の斜視図で、受け部19上にスナップ嵌めされている切替部材16が一部破断された挿入器1を示す。切替部材16の内側には、複数のピン22があり、そのうちの一つが断面により視認でき、このピンが溝部21内を走行する。こうして、切替部材16は、最初に、溝部21の区間Bを介して受け部19上に被嵌することができ、最終的には、溝部21の区間Aの内側を操作軸線12周りに回転させることができる。
【0056】
スプリングアーム14は、切替部材16を操作軸線12周りに回転させるとき、切替部材16の内表面17に沿ってスプリングアームが内側を滑っていくことができるように、後端側の外面18を備えて形成されている。スプリングアーム14は、受け部19における内側か、或いは、本体10の後端側のいずれかに根元で固定されており、スプリングアーム14は、操作軸線12周りのその周方向位置が変らない。このようにするだけで、スプリングアーム14の外面18は、切替部材16が回転すると、切替部材16の様々な周方向位置で内面17に接触するようになるので、変化する内半径Riにより、スプリングアーム14を操作軸線12に向かって変位させ、また、操作軸線12から離れるようにすることができる。
【0057】
図7および図8は、翼状把持部20を通るように図示しつつ、本体に配置された切替部材16の構成を断面視して示す。切替部材16を操作部材11が貫通して延在し、操作軸線12は、図の面に対して垂直である。
【0058】
図7は、プッシュ操作が可能な切替部材16の切替位置を示し、図8は、スクリュー操作が可能な切替部材16の切替位置を示す。
【0059】
プッシュ操作を設定するために、スプリングアーム14は、その外側の外面18を介して、内半径Riが特に大きい周方向位置で内表面17に接触している。自身の弾性によるスプリングアーム14の拡開により、螺合構造15は、操作部材11上の螺子山13との係合が外れた状態になる。
【0060】
図8に示されるように、切替部材16は、スクリュー操作Sが可能とされる切替位置まで時計回りに回転させることができる。この位置では、スプリングアーム14の外面18は、内半径Riがより小さな周方向位置で内表面17に接触しており、その位置では、スプリングアーム14の内側の螺合構造15は、操作部材11上の螺子山13と係合させられる。この位置では、操作部材11は、スクリュー運動によってのみ本体内に螺入させることができる。
【0061】
本発明は、その構成において、上で述べられた好ましい実施例に限定されない。むしろ、基本的に異なる類の構成であっても、示された解決策を利用する多くの変形例が考えられ得る。請求項、明細書または図面から導かれる全ての特徴および/または長所は、構造的な詳細または空間的な配置も含めて、それ自体でも或いはさまざまな組み合わせでも本発明に本質的であり得る。
【符号の説明】
【0062】
1 挿入器

10 本体
11 操作部材
12 操作軸線
13 螺子山
14 スプリングアーム
15 螺合構造
16 切替部材
17 内表面
18 外面
19 受け部
20 翼状把持部
21 溝部
22 ピン
23 収容室
24 眼内レンズ
25 ピストン
26 回転変換部
27 レンズガイド部
28 送出ノズル
29 レンズカートリッジ
30 収容手段
31 把手
32 投入口

A 溝部の区間
B 溝部の区間
Ri 内半径
P プッシュ操作
S スクリュー操作
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを埋植するための挿入器(1)であって、本体(10)を備え、その本体内に、細長く形成された操作部材(11)が、後端側で部分的に突入しているとともに、操作軸線(12)に沿って移動可能に案内されており、前記操作部材(11)は、前記操作軸線(12)に沿ったプッシュ操作(P)によるか或いは前記操作軸線(12)周りのスクリュー操作(S)によるかのいずれかを選択して前記本体(10)内へと動かすことができ、前記操作部材(11)は、少なくとも一部の上に螺子山(13)を備え、前記本体(10)に、前記操作軸線(12)周りに回転可能で貫通路を備えた切替部材(16)が配置され、前記貫通路を前記操作部材(11)が貫通して延在している挿入器において、
前記本体(10)に、少なくとも一つのスプリングアーム(14)が配置され、当該スプリングアームは、前記螺子山(13)に面する内面に螺合構造(15)を備え、前記切替部材(16)の前記貫通路は、少なくとも一つの内表面(17)を備え、当該内表面は、変化する内半径(Ri)を周方向に少なくとも部分的に備え、前記スプリングアーム(14)の外面(18)が、前記切替部材(16)の前記内表面(17)に接触していることで、前記切替部材(16)が前記操作軸線(12)周りに回転するときに、前記スプリングアーム(14)の周方向位置で変化する前記内半径(Ri)により、前記スプリングアーム(14)の、前記操作軸線(12)へと向かう弾性変形および前記操作軸線(12)から離れる弾性変形を生じさせることができ、これにより、前記螺合構造(15)を前記螺子山(13)に選択的に係合させるか或いは係合解除させることができることを特徴とする挿入器。
【請求項2】
請求項1に記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)は、貫通路のある受け部(19)を備え、当該貫通路を前記操作部材(11)が貫通して延在し、当該受け部上に前記切替部材(16)が回転可能に受容され、前記本体(10)は、翼状把持部(20)を備え、前記受け部(19)は、前記翼状把持部(20)の後端側に突出部としてつながっていることを特徴とする挿入器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の挿入器(1)において、
少なくとも一つの前記スプリングアーム(14)が、終端側で前記受け部(19)上或いは前記受け部(19)内において前記受け部(19)または前記本体(10)に配置されていることを特徴とする挿入器。
【請求項4】
請求項1または3に記載の挿入器(1)において、
前記切替部材(16)は、前記受け部(19)上にスナップ嵌めされ、前記操作軸線(12)に対して動かない軸線方向位置において、前記受け部(19)上を回転可能に案内されていることを特徴とする挿入器。
【請求項5】
請求項2からのいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記受け部(19)の外周に、少なくとも一つの溝部(21)が設けられ、前記切替部材(16)には、内周側に少なくとも一つのピン(22)が形成され、当該ピンが前記溝部(21)内を案内されていることを特徴とする挿入器。
【請求項6】
請求項に記載の挿入器(1)において、
前記溝部(21)は、少なくとも一つの区間(A)上を前記受け部(19)の外表面の周方向に延びていることを特徴とする挿入器。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記切替部材(16)の周方向セグメント(U1,U2)上に、前記内半径(Ri)が周方向に変化する前記内表面(17)が形成されていることを特徴とする挿入器。
【請求項8】
請求項に記載の挿入器(1)において、
前記周方向セグメント(U1,U2)は、中心角が360°の円周上または180°の中心角または120°の中心角または90°の中心角上に延在していることを特徴とする挿入器。
【請求項9】
請求項に記載の挿入器(1)において、
前記切替部材(16)の前記内表面(17)に互いに対向する二つの周方向セグメント(U1,U2)が形成され、互いに対向する二つのスプリングアーム(14)が前記本体(10)上および/または前記受け部(19)上に配置され、当該スプリングアームは、それぞれ一つの周方向セグメント(U1,U2)に対応して設けられ、これらと相互作用することを特徴とする挿入器。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記操作部材(11)上の前記螺子山(13)は、3mmから20mmのピッチ備えていることを特徴とする挿入器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記挿入器(1)がレンズカートリッジ(29)のための収容手段(30)を備え、前記レンズカートリッジ内に眼内レンズ(24)が組み込まれており、前記レンズカートリッジ(29)が、前記収容手段(30)内に装着可能とされていることを特徴とする挿入器。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)は、収容室(23)を備え、その中に眼内レンズ(24)が装填されていることで、前記眼内レンズ(24)が装填された前記挿入器(1)が、個別に取扱可能且つ流通可能なユニットを形成することを特徴とする挿入器。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)内にピストン(25)が収容されており、当該ピストンは、回転変換部(26)を介して前記操作部材(11)により軸線方向にスライド可能とされていることを特徴とする挿入器。
【請求項14】
請求項に記載の挿入器(1)において、
前記本体(10)は、前記受け部(19)とともに、且つ前記翼状把持部(20)とともに、一体的に一つのプラスチック体から作られ、前記本体(10)における前側に、前記眼内レンズ(24)を送出するための送出ノズル(28)を先端側に備えたレンズガイド部(27)が配置されていることを特徴とする挿入器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器であって、本体を備え、その本体内に、細長く形成された操作部材が、後端側で部分的に突入しているとともに、操作軸線に沿って移動可能に案内されており、操作部材は、操作軸線に沿ったプッシュ操作によるか或いは操作軸線周りのスクリュー操作によるかのいずれかを選択して本体内へと移動させることができ、操作部材は、少なくとも一部の上に螺子山を備え、本体に、操作軸線周りに回転可能で貫通路を備えた切替部材が配置され、貫通路を操作部材が貫通して延在している挿入器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器はよく知られている。この場合、眼内レンズは、眼に嵌め込まれる少し前に、内部に眼内レンズが組み込まれたレンズカートリッジを用いて挿入器に組み込むことができ、その後、粘弾性物質を加えてから眼内レンズを前側の送出ノズルから眼の後房に送出するようになっている。本体の前側に、挿入器のレンズガイド部が配置されており、送出ノズルは、そのレンズガイド部の開放端を形成している。
【0003】
本体内には、ピストンが操作軸線に沿って移動可能に案内されており、操作軸線に沿って前後の位置で操作部材に接続している当該ピストンは、操作部材を前進させると、それがピストンに伝わって、送出ノズルに向かう方向で眼内レンズに接触することができ、眼内レンズを送出ノズルを通して送出することができる。
【0004】
ピストンを挿入器の本体内部において動かすために、そして、ピストンをレンズガイド部をも通して送出ノズルの方に制御しながらさらに前へと動かすために、操作部材が本体内に突入するように設けられており、これにより、その操作部材を前進させると、ピストンが、操作軸線に沿って先ず眼内レンズに接触し且つそのまま進んで行くことで眼内レンズが後房内に送り出されるまで眼内レンズと一緒に送出ノズルの方に移動させられ得るようになっている。新しい構造の挿入器は、使い捨ての挿入器として利用され、一度使用されてプリロードされた眼内レンズが送り出されると廃棄される。挿入器のこの構造は、一般にプリロードシステムと呼ばれる。
【0005】
操作部材は、通常、操作者、すなわち眼科医によって手動で本体の後方開口部に押し込まれる。ここで、操作部材を操作軸線に沿って動かすために、第一の操作モードでは、手動で操作部材に加えられる純粋なスラスト運動が可能になり、第二の操作モードでは、同じ操作部材に加えられる回転運動が可能になる挿入器が知られている。その点では、新しい構造の挿入器は、プッシュ操作とスクリュー操作の両方を可能にすることができ、そのために、挿入器には、操作モードを切り替えるための然るべき仕組みが設けられる。
【0006】
例えば、特許文献1は、眼内レンズを埋植するための挿入器を開示し、その操作部材は、後ろからのプッシュか或いはスクリュー運動によって本体内に入り込ませることができ、そのスクリュー運動は、操作部材の螺子山と直にネジ結合している切替部材に手動で加えることができる。一方、操作部材が手動で本体内に押し込まれると、切替部材は自由に共回りする。操作部材を後ろから押すか或いは切替部材を回すかのいずれかによって操作部材が本体内に押し込まれると、操作部材がピストンと接触したまま眼内レンズを前側で送出ノズルから送出することができる。
【0007】
特許文献2は、ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器のさらに他の態様であって、本体を備え、その本体内に、細長く形成された操作部材が、後端側で部分的に突入しているとともに、操作軸線に沿って移動可能に案内されており、操作部材は、操作軸線に沿った操作部材のプッシュ操作によるか或いは操作軸線周りの操作部材のスクリュー操作によるかのいずれかを選択して本体内へと移動させることができ、そのために、操作部材は、少なくとも一部の上に螺子山を備えている挿入器を開示する。操作部材のプッシュ操作とスクリュー操作を切り替えるために、折り畳みと展開が可能な対向し合う二つの翼状把持部が設けられており、展開した姿勢にすることにより操作モードをプッシュ操作に、畳み込まれた状態ではスクリュー操作に切り替えることができる。プッシュ操作の操作モードではこのとき、折り畳みと展開が可能な翼状把持部は、フィンガーグリップとして機能することができるため、執刀医は、翼状把持部のところで挿入器を人指と中指の間でつかんで親指を使って後端側で操作部材を本体内に押し込むことができるようになる。翼状把持部が畳み込まれている場合、操作部材は、執刀医の一方の手に本体が保持されつつ執刀医の他方の手により操作部材がねじ込まれることで、本体内に螺入させることができる。
特許文献3より、さらに他の挿入器が公知であり、この挿入器は、本体に配置され且つ操作軸線周りに回転可能な貫通路のある切替部材を備え、その貫通路を操作部材が貫通して延在している。操作部材はここで、切替部材の内部輪郭に接触している固定されていないボールと協働し、その内部輪郭が可変な半径を備えている。切替部材が操作軸線周りに回されると、ボールは、解放位置に従って、外側で本体上へ押されるか、或いは、係合位置に従って、本体に設けられた開口部内へと半径方向内向きに押される。操作部材は、解放位置では、本体を自由に通り抜け、係合位置では、ボールが操作部材上の螺子山に係合するため、これを本体内にねじ込むことができる。
特許文献4より、螺子山を有して構成された押圧ピストンを備えた骨セメントまたは人工骨置換材料のための混練配出装置が公知である。押圧ピストンが本体内に押し込まれると、この押圧ピストンが、本体に配置されたラッチと相互作用する。そうして、押圧ピストンは、ラッチによって押圧ピストンが再び外れることを阻止されながら、例えば骨セメントまたは人工骨置換材料が充填された本体内に押し込められることができる。この場合、ラッチは、ネジ山を乗り越えると弾性的に拡開するので、押圧ピストンは、本体内に押し込めることはできても、再び引っ張り出すことができない。より大きな力が必要な場合に、押圧ピストンを押し込むため、そして、骨セメントや骨置換材料などからなる混錬物を送出するため、押圧ピストンをねじ込み動作により中に押しやるために、ロックスリーブを軸方向にラッチに押し付けることができ、これにより、ラッチは、半径方向に弾性的に拡開しなくなるとともに、そのときに限り雌ネジを形成することになり、そこに、押圧ピストンを螺子山により螺入することができるようになっている。
最後に、特許文献5は、プランジャーを備えた医療用の注射器であって、プランジャーが螺子山を備え、注射器のプランジャーは、選択的に、それ自体公知の押圧運動で注射器の本体内に押し込むことができるか、或いは、本体に存在する爪が作動させられ、その爪の作動後にプランジャーが螺子山に係合することで、プランジャーをそれ以上本体内に押し込むことができなくなる一方、ねじ込むことだけはできるようになる注射器を開示する。
【0008】
挿入器をプッシュ操作にするのかスクリュー操作にするかの設定は、通常は助手により行なわれ、その後、眼科医は、操作モードが予め設定された挿入器を駆使しながら、前方のレンズガイド部における送出ノズルを眼球内に挿入し、次に眼内レンズを後房に入り込ませた状態にするまで操作部材の操作を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3476375号明細書
【特許文献2】国際公開第2019/195951号
【特許文献3】米国特許第8105332号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2016/0128752号明細書
【特許文献5】米国特許第4810249号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器をさらに発展させ、挿入器が、眼内レンズを前進させるための操作部材のプッシュ操作とスクリュー操作のできる限り簡単な切替性能を持つようにすることである。特に、プッシュ操作とスクリュー操作との間の操作モードの切り替えは、それ以外の点では挿入器を同じように扱える一方、プッシュ操作とスクリュー操作との間の切替が挿入器の使用の直前に設定可能となるようにできなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1のおいて書きに係る挿入器に基づいて、その特徴的な特徴部を組み合わせることにより解決される。本発明の有利な発展態様は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明は、本体に、少なくとも一つのスプリングアームが配置され、このスプリングアームは、螺子山に面する内面に螺合構造を備え、切替部材の貫通路は、少なくとも一つの内表面を備え、その内表面は、変化する内半径を周方向に少なくとも部分的に備え、スプリングアームの外面が、切替部材の内表面に接触していることで、切替部材が操作軸線周りに回転するときに、スプリングアームの周方向位置で変化する内半径により、スプリングアームの、操作軸線へと向かう弾性変形および操作軸線から離れる弾性変形を生じさせることができ、これにより、螺合構造を螺子山に選択的に係合させるか或いは係合解除させることができるという技術的教示を含む。
【0013】
本発明の中心となる思想は、二つの切替位置の間において手で回転させることのできる切替部材であり、第一の切替位置では、切替部材は、スプリングアームにおける螺合構造を操作部材の螺子山にスクリュー操作のために係合させ、第二の切替位置では、切替部材は、螺合構造を持つスプリングアームを操作部材の螺子山から解放することで、スプリングアームが操作部材における螺子山との係合が外れた状態になって、最終的に、操作部材がプッシュ操作のために自由にスライドできるようになる。
【0014】
こうして、切替部材が第二の切替位置へと回されると、上記スプリングアーム或いは複数のスプリングアーム(特に、互いに向き合う位置にある二つのスプリングアーム)が、自ずと外側に弾性的に拡開することで、螺合構造が操作部材の螺子山を解放する。
【0015】
内半径が円周にわたって変化する内表面により、切替部材が第一の切替位置へと回転するときに、少なくとも一つのスプリングアームが、半径方向内側に向かって押されることで、螺合構造が螺子山に係合するようになる。そうするために、スプリングアームの外面は、特に、内側にある螺合構造の後端側で、切替部材の内表面と接触しており、切替部材が回転すると、内表面がある程度縮径することで、スプリングアームは、内側に向けて押され、切替部材が逆回りに回転すると、再び外側に向かって元に戻るように弾発する。スプリングアームはこのとき、周方向位置において本体に動かないように配置され、その点では、切替部材の回転に伴って連れ回りしない。
【0016】
こうして、切替部材は、特にネジを用いずに構成されている。このように、この挿入器は、挿入器の外側で一つの部材をスライドさせたり折り畳んだりしなくても、回転リングまたは回転輪の形態の簡素な切替部材を用いて、プッシュ操作の操作モードと、スクリュー操作の操作モードとの間を切り替えることができる。切替部材は、例えば、“プッシュ”や“スクリュー”などのラベルを付けることができ、切替部材の上に矢印を付すことで、ユーザは、プッシュ操作またはスクリュー操作を選択的に作動させるために、切替部材を本体に配置した状態で操作軸線周りのどの方向に回転させなければならないのかが難なく分かるようになる。
【0017】
本発明による可能な構成の範囲内で、スプリングアームと切替部材との間の接触は、直接的な接触である必要はなく、例えば、偏心部材、特に、偏心した内部部品が、本発明の意味において同じ効果を達成するように切替部材とスプリングアームの間に配置されているようにされてもよいし、或いは、切替部材が複数の部分で形成されているようにしてもよい。この場合、偏心部材はまた、操作軸線周りの回転性に関連して、変化する内半径を生じさせることができ、そこに少なくとも一つのスプリングアームが接触していることで、内表面そのものが周方向に変化する内半径を有して形成されている切替部材を用いた場合と同じ効果が得られるようになる。
【0018】
特に有利にも、本体は、貫通路のある受け部を備え、貫通路を操作部材が貫通して延在し、受け部上に切替部材が回転可能に受容されている。受け部はこのとき、本体と一体的に形成されていてもよいし、或いは、受け部は、本体に取り付けられていて、例えば、本体にクリップ式に固定されていてもよい。
【0019】
また、少なくとも一つのスプリングアームが、終端側で受け部上或いは受け部内において受け部そのものに或いは代替的に本体に配置されている場合も有利である。スプリングアームは、例えば、中空に構成された受け部を一部が貫通して延び、後端側で受け部の開放端から突出していてもよい。このようにして、簡単な方法で切替部材の内表面の一部が、スプリングアームの外面と接触させられる一方、内表面のさらに他の部分が、円周にわたって内半径が同じになるように構成され、この部分で、切替部材が受け部上に回転可能に受容されている。
【0020】
さらに有利にも、切替部材は、受け部上にスナップ嵌めされているか、或いは操作軸線に対して固定的な軸線方向位置において受け部上を操作軸線と一致する固有の回転軸線回りに回転可能に案内されているか、の少なくともいずれかである。切替部材は、製造工程中に受け部上にスナップ嵌めすることができるので、環状の形をした切替部材は、固定的な軸線方向位置において受け部上を操作軸線周りに回転運動可能に案内されている。切替部材はここで、受け部の外周上に例えばスナップ手段が設けられ、そのスナップ手段を介して、スナップ嵌めする方向にだけ切替部材を動かすことができ、逆向きの取り外す方向には、そのスナップ手段が切替部材を制止することで、切替部材が手では二度と受け部から取り外すことができないように受け部上に配置されていてもよい。
【0021】
さらに、切替部材のための係止位置(スナップ留め位置)が周方向に設けられていてもよい。この係止位置は、例えば、係止位置の手前で抵抗を克服しなければならないことによって、ユーザが感触によるフィードバックを知験するように形成されており、切替部材は、プッシュ操作のための係止位置と、スクリュー操作のための係止位置とにおいて、そのつど自ずと停留するように、例えばその回転の終了位置においてスナップフィットできるようになっている。
【0022】
さらに有利にも、本体は、翼状把持部を備え、受け部は、翼状把持部の後端側に突出部としてこの翼状把持部につながっている。執刀医が挿入器をプッシュモードで使用するかスクリューモードで使用する場合、切替部材は、翼状把持部の後側にあり、操作部材が、後ろからスラスト運動か或いはスクリュー運動によって本体内に入り込ませられる間、ユーザは、この切替部材を動かすことができず、特に、うっかり動かすことができないので、切替部材が、挿入器の取り扱いの際の妨げになることはない。
【0023】
最後に、受け部の外周に、少なくとも一つの溝部が設けられ、切替部材には、内側に少なくとも一つのピンが形成され、このピンが溝部内を案内されていることが有利である。溝部は、特に、受け部の外表面の周方向において、少なくとも一つの区間上に、円周の一部に亘って形成され、このとき、二つの溝部が、切替部材の内周側にそれぞれ対応するように形成されたピンを備えて設けられていてもよく、これにより、切替部材が傾くことなく操作部材に取り付けられるようになる。特に、各溝部には、一個を超えるピンが設けられていてもよい。また、切替部材は、一定の軸方向幅を持つ内周部分を備え、この部分が受け部の外表面上を案内されることで、傾きのない、遊びが最小で感触がかなり良い切替部材の回転性能が実現されることが有利である。
【0024】
溝部は、少なくとも一つの区間上を受け部の外表面の周方向に延びているのでもよい。切替部材を受け部上に嵌挿するために、操作軸線に平行に延びるさらに他の溝部が設けられていてもよく、この溝部が上記の周回する溝部につながる。この溝部或いはこれらの溝部は、切替部材の内面上のそれぞれのピンに対して設けられており、これにより切替部材を有利に組み付けることができる。軸線方向に延びる溝部が周方向に延びる溝部につながる部分が、スナップ嵌めの隆起部を備えていてもよく、この隆起部を超えてピンが向こう側に押し込まれなければならないことで、切替部材は、最終的に抜け止めされた状態で受け部上に取り付けることができる。
【0025】
切替部材の内表面上で周方向に変化する内半径は、特に、区間として一重または多重に構成することができる。特に、一つまたは複数の周方向セグメントが設けられていることで、切替手段の周方向セグメント上に、内半径が周方向に変化する内表面が形成されているようにしてもよい。このとき、円周に亘って特に均等に配分された複数の周方向セグメントが設けられていてもよく、例えば、それぞれ内半径が変化する互いに対向する二つの周方向セグメントが設けられていてもよい。
【0026】
変化する内表面の内半径は、切替部材の周方向位置に応じて小さくなったり大きくなったりする操作軸線までの内表面の距離を生じさせ、切替部材を受け部上で回転させると、内表面は、スプリングアームが配置されている決まった周方向位置では、ある意味で縮径していき且つ反対の回転方向において再び拡径するので、スプリングアームは、内側に向けて動くことができ且つ自身の弾性により再び外側に向けて動くことができ、これにより、最終的に螺合構造を操作部材上の螺子山に係合させるか或いは係合解除させることができる。
【0027】
切替部材の軸線方向において、すなわち、切替部材を本体上で回転させることのできる回転軸線または対称軸線の方向において、とびとびの周方向位置については、内半径はもちろん一定のままにしておいてもよい。従って、特に、内表面と、スプリングアームの外面との間の線接触が生じ、スプリングアームの外面は、内半径が変化する湾曲した内表面にこの外面がフィットするように湾曲していてもよく、これによれば、最終的には、内半径が内側に向かって縮径していく内表面と、スプリングアームの外面との間の面接触も生じさせることができる。
【0028】
周方向セグメントは、中心角が360°の円周上または180°の中心角または120°の中心角または90°の中心角上に延在するのでもよい。こうして例えば、中心角が完全な円に及んでいる場合、ただ一つのスプリングアームが内表面に接触し、周方向セグメントの中心角が180°では、互いに対向する二つの内表面が設けられ、二つのスプリングアームがそれらに対応して設けられ、周方向セグメントの中心角が120°である場合、三つの周方向セグメントが設けられ、三つのスプリングアームがそれらに対応して設けられ、それぞれの周方向セグメントの中心角が90°では、四つの周方向セグメントを設けることができ、四つのスプリングアームがそれらに対応して設けられている等々となる。
【0029】
特に好ましくは、切替部材の内表面に互いに対向する二つの周方向セグメントが形成されてもよく、これにより、互いに対向する二つのスプリングアームも本体上および/または受け部材上にあり、当該スプリングアームは、それぞれ一つの周方向セグメントに対応して設けられ、これらと相互作用するようになっている。挿入器が、プッシュ操作とスクリュー操作の間で切り替えられる場合、切替部材は、略180°回されなければならず、スプリングアームの幅は、回転角として丸々180°にならないように考慮されなければならない。この点で、挿入器の操作モード間で切り替えるための回転角度は、通常、対応する中心角を持つ周方向セグメントの周方向の拡がりより少ない。
【0030】
さらに、操作部材上の螺子山が、3mmから20mmのピッチまたは5mmから15mmのピッチまたは9mmから11mmのピッチを備えていることが有利である。操作部材上の螺子山が10mmのピッチを備えていることで、眼内レンズを有利に送出できるようにするのに、特に、多過ぎる回転や少な過ぎる回転を加えなくてもよいようにするのに、執刀医が、スクリュー操作の際に、操作部材に常に適正数の回転を加えることになる場合には特に有利である。というのも、後者では、送出ノズルからレンズを送り出す動きの微妙な調整ができなくなると考えられるからである。
【0031】
挿入器は、レンズカートリッジのための収容手段を備えていてもよく、そのレンズカートリッジ内に眼内レンズが組み込まれており、レンズカートリッジが眼内レンズとともに収容手段内に装着可能とされている。このような挿入器は、眼内レンズの仕様に無関係に提供できるが、挿入器の使用準備のために、患者に必要な仕様の眼内レンズを保持したレンズカートリッジを装着しなければならない。次に、粘弾性物質を注入して、眼内レンズおよびレンズカートリッジ内の内腔並びにレンズガイド部の内部空間を湿らせ、粘弾性物質で満たす必要がある。最後に、レンズの送出を行うことができるが、このとき挿入器は再利用可能であるか或いは好ましくは使い捨てとして設けられている。
【0032】
さらに、挿入器は、プリロードシステムとして構成することができ、この構成により、本体またはレンズガイド部が、収容室を備え、その中に眼内レンズが予め装填されていることで、眼内レンズが装填された挿入器が、個別に取扱可能且つ流通可能なユニットを形成し且つ装填されたレンズの仕様を持っていることになる。レンズガイド部はこのとき、本体の一部として捉えることもできる収容室を備えていてもよい。この点に関して、この収容室は、場所的に見て本体内に設けられている必要はなく、レンズガイド部内にも或いはレンズガイド部と本体の間にも設けられていてもよい。
【0033】
本体内にピストンが収容されており、このピストンは、回転変換部を介して操作部材により軸線方向にスライド可能とされている。特に、挿入器をスクリュー操作により操作しなければならないときには、自らは回転運動することなく操作軸線に沿って特に直線運動することしかしないピストンの動きから、操作部材の回転運動が切り離されなければならない。
【0034】
本体は、受け部とともに、且つ翼状把持部とともに、および/または特にレンズガイド部とさえも、一体的に且つ物質的に一様に一つのプラスチック体から作られ、本体における前側に、眼内レンズを送出するための送出ノズルを先端側に備えたレンズガイド部が、選択的には別体としても、配置されていてもよい。
【0035】
以下に、本発明の好ましい実施例の記載により、本発明をさらに良くする手段を図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ヒトの眼に眼内レンズを埋植するための挿入器であって、挿入器をプッシュ操作で操作することのできる態勢に挿入器の切替部材が置かれている挿入器の斜視図である。
図2図1による挿入器であって、挿入器をスクリュー操作で操作することのできる態勢に挿入器の切替部材が置かれている挿入器を示す図である。
図3】挿入器の主要構成部の分解図である。
図4】動作状態がプッシュ操作用に設定されている挿入器を斜視的に表した断面図である。
図5図4による挿入器であって、図4に示された位置に対して切替部材が回されたことで挿入器のスクリュー操作が設定されている挿入器を示す図である。
図6】切替部材の部分断面図とともに挿入器を示す斜視図である。
図7】プッシュ操作による本体上の切替部材の配置の断面図である。
図8】スクリュー操作による本体上の切替部材の配置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1および図2は、ヒトの眼に眼内レンズを埋植するために使用される挿入器1の斜視図を示す。挿入器1は、主要な構造部品として本体10を備え、その本体内に、把手31が終端側にある細長く形成された操作部材11が、後端側において部分的に挿入されている。操作部材11は、その大半の長さにわたって螺子山13を有した部分があり、その操作部材11は、本体10内に後端側において部分的に挿入されていることで、操作部材11の自由端に把手31が形成されるようになっている。
【0038】
本体10の前側には、レンズガイド部27が配置され、その中に、詳細には図示していない態様で眼内レンズが収容されている。本体10の主要構成部品は、ほぼ円筒形であるか或いは取り扱いのために人間の手に馴染みやすく作られているとともに、細長く延びた部分を備えており、本体10と、前側のレンズガイド部27と、後端側に挿入された操作部材11とを備えた挿入器1が、操作軸線12に沿って細長に延在している。操作軸線12はここで、終端側に把手31を備えた回転可能な操作部材11の回転軸線を同時に形成している。
【0039】
さらに取り扱い易くするために、本体10の後の部分には、翼状把持部20があり、これにより、翼状把持部20を使って挿入器1を人差し指と中指の間に挟みながら、後側で親指を把手31にのせて押すことができる。翼状把持部20に対して背面側には、操作軸線12周りに回転可能に本体10上に受容された切替部材16が隣接しており、この切替部材16が貫通路を有し、その中を操作部材11が貫通して延在している。切替部材16はここで、切替部材が操作部材11に直に接触せず、切替部材と直接的に相互作用することもないように本体10上に設置されている。
【0040】
レンズガイド部27には、投入口32が示されており、ここを通して、挿入器の使用開始前に粘弾性体を注入することができる。これが、特にレンズガイド部27内の内腔および内在する眼内レンズを湿潤し、これにより、眼内レンズを送出するプロセスがやり易くなるか若しくは眼内レンズの損傷をなくすようにできる。
【0041】
挿入器1は、切替部材16を用いることで、挿入器1の使用のためにプッシュ操作Pとスクリュー操作Sの間の切り替えを行なうことができるようにするのに用いられる一つの手段を備えている。図1はここで、プッシュ操作Pが可能な切替部材16の切替位置を示す一方、図2は、スクリュー操作Sが可能な回転された位置にある切替部材16の態勢を示す。
【0042】
切替部材16が、プッシュ操作Pとスクリュー操作Sとの間を切り替えるための手段になれるように、切替部材16は、内側に内表面17を有し、その内表面が、切替部材16の周延部に亘って、アルキメデスの螺旋のように、半径について少なくとも部分的に変化し、それにより、回転に際して、本体10の決まった位置に配置された、内側に位置するスプリングアーム14を、縮径時に操作部材11の螺子山13の方に動かすことができるとともに、それとは逆の開放時に螺子山から離れさせることができる。
【0043】
こうして図1は、切替部材16の内表面17の所定の周方向領域にスプリングアーム14が位置し、それに応じて、スプリングアーム14が自ずと弾性的に拡開できることで、操作軸線12までの距離が拡大し、スプリングアーム14が操作部材11上の螺子山13を解放する切替部材16の切替位置を示している。
【0044】
これに対して、図2には、所定の切替位置にある切替部材16が、回転された状態で示されており、それに応じて、スプリングアーム14は、より小さな内半径により、この場所で操作部材11の螺子山13へと押されて螺子山に係合するので、この位置において、本体10内へ操作部材11を前進させるためのスクリュー操作Sが可能となるようになっている。
【0045】
操作部材11がより深く本体10内に押し込まれる或いはねじ込まれるにつれて、眼内レンズは、レンズガイド部27における前側の送出ノズル28の方にさらに前方へと動かされる。プッシュ操作Pとスクリュー操作Sの間で挿入器1を切り替えるための機能の詳細な図が、挿入器1の分解図で図3に示されている。
【0046】
図3は、挿入器1を分解図で示し、そこには、挿入器1の主要構成部品が示されているが、本発明を説明するのに必要ないという理由で図示されていないさらに他の挿入器1の構成部品も存在しており、図示されていないとはいえ、それらの部品は、本発明に係る挿入器1の構成部品であることに違いはなく、図は、限定的に理解されるべきものではない。
【0047】
図3の表示は、本体10をレンズガイド部27から切り離して示しており、操作軸線12と一列に並んで示されたレンズガイド部27は、収容室23を備えて構成され、その中に、(支持部の一つが見えている)眼内レンズ24が装填されており、下側に示されたさらに他のレンズガイド部27は、代替的な構成を形成し、レンズカートリッジ29を収容するための収容手段30を備え、その中に、別に描かれた眼内レンズ24が装填されている。レンズカートリッジ29が収容手段30内に装填されているときに、眼内レンズ24は、ピストン25により、前側で送出ノズル28からヒトの眼の後房内へと送出することができる。
【0048】
これに関して、ピストン25は、操作軸線12に沿って直線運動を行い、操作部材11がスクリュー操作により本体10内に螺入されると、回転変換部26の働きで、操作部材11の回転運動がピストン25に伝わらない。
【0049】
本体10は、翼状把持部20の後ろ側に、射出成形による受け部19を有し、その上に、切替部材16が操作軸線12周りに回転可能に取り付けられている。これに関して、受け部の外表面19は、溝部21を備え、この溝部が、図示された区間A上を周方向に延びていることで、軸線方向の定まった位置において操作軸線12周りに切替部材16を回すことができるようになっている。スライドのためには溝部21の区間Bが用いられるが、スナップ式の突出部が存在していて、そのスナップ式の突出部を乗り越えられなければならないために、所定の位置にある切替部材16は、受け部19の溝部21の区間Aから区間Bへ移れないようになっている。
【0050】
受け部19は、スリーブ状に構成され、特に、翼状把持部20の背面側で本体10に一体的に接続されている。受け部19の内側には、例えば、互いに対向する数が二つのスプリングアーム14が配置され、スプリングアーム14は、受け部18における内側か、或いは、本体10若しくは翼状把持部20の後側に根元で固定されている。こうして、スプリングアーム14は、弾性変形によって、操作軸線12に向かって内向きに、或いは、操作軸線12から離れるように外向きに弾性的に動くことができる。力が加わっていないスプリングアーム14の配置では、これらは、互いに所定の隔たりを有し、それによって、操作部材11上の螺子山13は、二つのスプリングアーム14の間を自由に動くことができる。従って、挿入器1の出荷時の状態は、切替部材16がプッシュ操作のための切替位置にある切替部材16の態勢に設定されていなければならない。
【0051】
切替部材16が受け部19上にスナップ嵌めされると、切替部材16は、内半径Riが変化する内表面17の様々な周方向位置がスプリングアーム14の外面18に接触することになるように、受け部19上で回転させることができる。連続する円周に亘って内表面17の内半径Riが変化することで、つまり、半径が狭くなったり或いは広くなったりすることで、スプリングアーム14は、半径方向内側に向かって押されるか或いは自身の弾性により半径方向に再び外側に向かって弾性的に拡開することができる。従って、操作軸線12周りの切替部材16の切替位置に応じて、スプリングアーム14の内面における螺合構造15が螺子山13と係合するようになるか或いは螺合構造15が螺子山13との係合を解除させられるかを調整することができる。スプリングアーム14の螺合構造15が、操作部材11上の螺子山13と係合しているとき、挿入器1は、スクリュー操作Sで使用することができ、スプリングアーム14における螺合構造15が操作部材11の螺子山13との係合を解除させられると、挿入器1は、プッシュ操作Sにより使用することができる。
【0052】
図4および図5は、本体10を通る断面における挿入器の斜視図を示し、一層明確にするために、図4は、挿入器をプッシュ操作Pで用いることができる状態にある挿入器1を示し、図5は、挿入器をスクリュー操作Sで用いることができる状態にある挿入器1を示す。
【0053】
挿入器1をプッシュ操作Pの操作モードで用意しなければならない場合、図4に示された回転位置に切替部材が位置するまで、把手31から視て反時計回りに切替部材16を回転させる。この回転位置では、内表面17の内半径は、スプリングアーム14の接触位置で広げられ、スプリングアーム14が弾性的に拡開し、操作軸線12までの距離が最大となる。この位置では、スプリングアーム14の内面上の螺合構造15は、操作部材11の螺子山13に係合しない。すると、操作部材11は、操作軸線12に沿って自由に動かすことができ、操作部材11は、ピストン25とともに前に向けてレンズガイド部27の方に押すことができる。
【0054】
図5では、切替部材16は、時計回りに回転させた位置にあり、それに応じて、スプリングアーム14との接触点における内表面17の内半径は、かなり縮小されているので、螺合構造15は、操作部材11上の螺子山13と係合させられている。切替部材16のこの切替位置では、操作部材11は、把手31によって操作部材が操作軸線12で回転させられて最終的に本体10内に螺入される場合にのみ、操作軸線12に沿って変位させることができる。従って、スプリングアーム14の互いに対向する螺合構造15は、本体10内にネジ貫通路を形成し、その貫通路を介して、操作部材11を後端側で本体10内に螺入させることができる。そうしたときにだけ、ピストン25は、前に向けてレンズガイド部27の方に変位させることができ、眼内レンズを送出ノズルから送出することができる。
【0055】
図6は、さらに他の斜視図で、受け部19上にスナップ嵌めされている切替部材16が一部破断された挿入器1を示す。切替部材16の内側には、複数のピン22があり、そのうちの一つが断面により視認でき、このピンが溝部21内を走行する。こうして、切替部材16は、最初に、溝部21の区間Bを介して受け部19上に被嵌することができ、最終的には、溝部21の区間Aの内側を操作軸線12周りに回転させることができる。
【0056】
スプリングアーム14は、切替部材16を操作軸線12周りに回転させるとき、切替部材16の内表面17に沿ってスプリングアームが内側を滑っていくことができるように、後端側の外面18を備えて形成されている。スプリングアーム14は、受け部19における内側か、或いは、本体10の後端側のいずれかに根元で固定されており、スプリングアーム14は、操作軸線12周りのその周方向位置が変らない。このようにするだけで、スプリングアーム14の外面18は、切替部材16が回転すると、切替部材16の様々な周方向位置で内面17に接触するようになるので、変化する内半径Riにより、スプリングアーム14を操作軸線12に向かって変位させ、また、操作軸線12から離れるようにすることができる。
【0057】
図7および図8は、翼状把持部20を通るように図示しつつ、本体に配置された切替部材16の構成を断面視して示す。切替部材16を操作部材11が貫通して延在し、操作軸線12は、図の面に対して垂直である。
【0058】
図7は、プッシュ操作が可能な切替部材16の切替位置を示し、図8は、スクリュー操作が可能な切替部材16の切替位置を示す。
【0059】
プッシュ操作を設定するために、スプリングアーム14は、その外側の外面18を介して、内半径Riが特に大きい周方向位置で内表面17に接触している。自身の弾性によるスプリングアーム14の拡開により、螺合構造15は、操作部材11上の螺子山13との係合が外れた状態になる。
【0060】
図8に示されるように、切替部材16は、スクリュー操作Sが可能とされる切替位置まで時計回りに回転させることができる。この位置では、スプリングアーム14の外面18は、内半径Riがより小さな周方向位置で内表面17に接触しており、その位置では、スプリングアーム14の内側の螺合構造15は、操作部材11上の螺子山13と係合させられる。この位置では、操作部材11は、スクリュー運動によってのみ本体内に螺入させることができる。
【0061】
本発明は、その構成において、上で述べられた好ましい実施例に限定されない。むしろ、基本的に異なる類の構成であっても、示された解決策を利用する多くの変形例が考えられ得る。請求項、明細書または図面から導かれる全ての特徴および/または長所は、構造的な詳細または空間的な配置も含めて、それ自体でも或いはさまざまな組み合わせでも本発明に本質的であり得る。
【符号の説明】
【0062】
1 挿入器

10 本体
11 操作部材
12 操作軸線
13 螺子山
14 スプリングアーム
15 螺合構造
16 切替部材
17 内表面
18 外面
19 受け部
20 翼状把持部
21 溝部
22 ピン
23 収容室
24 眼内レンズ
25 ピストン
26 回転変換部
27 レンズガイド部
28 送出ノズル
29 レンズカートリッジ
30 収容手段
31 把手
32 投入口

A 溝部の区間
B 溝部の区間
Ri 内半径
P プッシュ操作
S スクリュー操作
【国際調査報告】