(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】治療/診断化合物の送達のためのナノ粒子を埋め込んだマイクロ粒子に基づく粉末組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/72 20060101AFI20231005BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231005BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231005BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231005BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20231005BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231005BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231005BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231005BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231005BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20231005BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K9/72
A61K9/14
A61K47/02
A61K45/00
A61K38/00
A61K39/395 M
A61P11/00
A61P37/04
A61K47/10
A61K49/00
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023515340
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 IB2021058184
(87)【国際公開番号】W WO2022053955
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】102020000021292
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591095362
【氏名又は名称】コンシグリオ・ナツィオナーレ・デレ・リチェルケ
【氏名又は名称原語表記】CONSIGLIO NAZIONALE DELLE RICERCHE
(71)【出願人】
【識別番号】523081513
【氏名又は名称】プルメスターズ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カタルッチ、ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】イアフィスコ、ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ、パオロ
(72)【発明者】
【氏名】クアルタ、エリデ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC15
4C076DD26A
4C076DD38
4C076FF02
4C076FF68
4C076GG09
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA43
4C084MA44
4C084NA10
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB091
4C084ZB092
4C085AA13
4C085EE05
4C085GG10
4C085JJ11
4C085KB05
4C085KB23
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA43
4C086MA44
4C086NA10
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZB09
(57)【要約】
本発明は、治療/診断化合物の送達のために、リン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性薬学的に許容できるキャリアを含む複数のマイクロ粒子を含む吸入使用のための粉末組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性薬学的に許容されるキャリアのマトリックスを含むマイクロ粒子を含む粉末組成物であって、粉末組成物が吸入により投与される医薬品としての使用のための、前記の粉末組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の治療/診断化合物が、核酸、ペプチド、タンパク質、抗体、および700ダルトンを超えない分子量を有する合成化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
重量比(リン酸カルシウム):(薬学的に許容されるキャリア)が1:2.5~1:7である、請求項1又は2に記載の粉末組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアが多価アルコールである、請求項1~3のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項5】
空気力学的直径が5.0ミクロン未満のマイクロ粒子の割合(FPF)が0.5より大きい、請求項1~4のいずれかに記載の粉体組成物。
【請求項6】
体積メジアン径(Dv
50)が5.0μm未満である、請求項1~5のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項7】
前記マイクロ粒子は、多孔質の内部構造を有する、請求項1~6のいずれかに記載の粉体組成物。
【請求項8】
多孔質構造を有する前記マイクロ粒子は、50nm未満の投影直径を有する細孔を有する、請求項7に記載の粉体組成物。
【請求項9】
心血管疾患の治療に使用するための、請求項1~8のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項10】
呼吸器疾患の治療に使用するための、請求項1~8のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項11】
免疫賦活物質として使用するための、請求項1~8のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の粉末組成物を収容した容器を備える吸入装置。
【請求項13】
リン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性薬学的に許容されるキャリアのマトリックスを含むマイクロ粒子を含む粉末組成物であって、リン酸カルシウムと前記少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアの重量比が1:2.5~1:7である、前記の粉末組成物。
【請求項14】
下記の工程:
a)1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子の第1の水性分散体を提供すること;
b)第2の水性分散体を得るために、工程a)の分散体中に少なくとも1つの薬学的に許容される水溶性キャリアを溶解させること;および
c)工程b)の第2の水性分散体を噴霧乾燥すること、
を含む、請求項1~11のいずれかに記載の粉末組成物の調製方法。
【請求項15】
前記工程a)は、以下の工程:
1)7~10の範囲のpHを有し、カルシウムイオンの水溶液、リン酸イオンの水溶液、クエン酸イオンの水溶液、および1つ以上の治療/診断化合物の水溶液を含む混合物を、20℃~40℃の範囲の温度で30秒~10分の時間提供すること;
2)リン酸カルシウムナノ粒子の懸濁液を得ることにより、工程1)で得られた溶液から非反応イオンを除去すること;および
3)工程2)の懸濁液から、1つ以上のリン酸カルシウムナノ粒子の生成物を回収すること、
を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本申請に至ったプロジェクトは、欧州連合のHorizon 2020 CUPIDO研究・イノベーションプログラムより、助成金契約番号720834の助成を受けている。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本発明は、治療/診断化合物の送達のために、リン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性医薬キャリアを含むマイクロ粒子の集団を含む吸入使用用粉末組成物に関する。
【0003】
技術水準
患者の病態を選択的かつ効果的に治療するために、治療・診断化合物を臓器に伝達できる医療用リン酸カルシウムナノ粒子を用いた医薬品が知られており、開発が進められている。
【発明の概要】
【0004】
例えば、WO 2016/102576は、下記の工程を含む、-41.0mV~-27.0mVの範囲のζ電位を有する1つ以上の負に表面帯電したリン酸カルシウムナノ粒子を含む製品の調製を記載している:a)7と10の間のpHを有し、カルシウムイオンの水溶液、リン酸イオンの水溶液およびクエン酸イオンの溶液を含む混合物を、20℃と40℃の間の温度で、30秒と10分の間の時間維持する;b)フェーズa)の溶液から未反応イオンを取り除き、1つ以上のリン酸カルシウムナノ粒子の懸濁液を得る;c)フェーズb)の懸濁液から1つ以上のリン酸カルシウムナノ粒子のプロダクトを回復する。本発明の製品は、心血管疾患などの病態を治療するための1つ以上の診断/治療化合物のキャリアとして使用することができる。
【0005】
エアロゾルは、空気中の粒子(固体または液体)の微細な分散体として定義され、医薬技術の分野では、吸入によるエアロゾルは、全身に作用する薬剤の吸収部位として肺を利用することができ、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺感染などの疾患の局所治療にも利用できるので、ナノ粒子ベースの薬剤に関しても研究中の有望な投与手段である。
【0006】
しかし、本出願人は、治療/診断化合物を伝達することができるナノ粒子材料の投与のための吸入エアロゾルの使用は、その投与量と排出量に制約を課し、また、二重の性質の技術的および機能的制約を依然として有しており、これらは依然として対処し相互にバランスをとる必要がある適切な調剤装置(inhalers)の使用を必要とすると指摘する。
【0007】
第1の観点から、吸入後のサイズが小さすぎる粒子は肺に定着せず、容易に吐き出されるため、エアロゾルの粒子自体の肺への沈着現象(一般に「呼吸性」と呼ばれる特性)を適切に制御し最適化する必要が実際に存在する。本出願人は、この現象が、薬剤の効果的な投与につながらないこと、および/または、患者によってより大量のエアロゾルの放出および吸入に頼る必要性をもたらし、それによって、治療のコストおよび効果に悪影響を与えることを発見した。
【0008】
別の観点から、吸入エアロゾルによる効果的な投与を妨げる可能性のあるナノ粒子材料の他の特性も存在する。ナノ粒子は、実際、凝集現象を容易に受けることができ、これは、制御不能な方法でエアロゾルの空気力学的特性を変化させるため、投与または分注のいずれかを困難にする。また、ナノ粒子材料の凝集現象は、ナノ粒子の寸法および表面特性を変化させるため、投与の効果に悪影響を及ぼし、肺への正しい沈着、患者の体への効果的な吸収、ひいては治療/診断化合物の標的部位への伝達も損なう可能性がある。
【0009】
本出願人は、マイクロメトリックマトリックスへの組み込み(いわゆる「ナノ包埋マイクロ粒子」、NEMを得ること)を伴うナノ粒子の呼吸可能特性を改善することを目的とした技術が存在し、試験中であることを発見した。
【0010】
しかし、本出願人は、これらの技術の使用は、問題を解決するものではなく、むしろナノ粒子の凝集を助長し、それによって、その寸法および表面特性が損なわれ、したがって、患者の体による正しい肺の沈着および効果的な吸収、ひいては治療/診断化合物を標的部位に伝達する能力を損なうことを発見した。
【0011】
したがって、本発明の主な目的は、上述の技術的および機能的な限界を克服するように、治療/診断化合物を標的部位に伝えることができる医療用ナノ粒子を吸入によって患者に効果的に投与するための組成物を特定することである。
【0012】
本発明の概要
本発明に従って、本出願人は、驚くべきことに、これらの所望の特性が、1つ以上の治療/診断化合物を既に含むリン酸カルシウムナノ粒子を組み込む特定のタイプのマトリックスを特定することによって達成できることを見出し、したがって、治療/診断化合物を標的部位に伝達できる医療用のナノ粒子を吸入によって患者に有効に投与するために用いるのに特に適した微粉末形態の組成物を得ることができた。
【0013】
したがって、その第1の側面において、本発明は、1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの薬学的に許容できる水溶性キャリアのマトリックスを含むマイクロ粒子を含む粉末組成物を指し、前記粉末が吸入により投与される医薬品として使用するためのものである。
【0014】
少なくとも薬学的に許容される水溶性キャリアのマトリックス中に、1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子を組み込むおかげで、本発明による粉末組成物は、実際、治療/診断化合物を伝えることができる医療用のナノ粒子を吸入によって効果的に投与することができる。このため、治療/診断化合物の十分な吸収と標的部位への効果的な送達が保証される。
【0015】
本発明者らは、薬学的に許容される水溶性キャリアを用いることで、1つ以上の治療/診断化合物を既に含むリン酸カルシウムナノ粒子を効果的に組み込むことができ、高い呼吸性を特徴とする吸入によるエアロゾルの生成に適したサイズのマイクロ粒子が得られ、それによって患者の肺レベルでの有効な投与と堆積が可能になることを実際に驚くべきことに発見した。マイクロ粒子が堆積されると、薬学的に許容される水溶性キャリアのマトリックスが効率的に溶解し、ナノ粒子を放出する。ナノ粒子は、有利には分散した形で、望ましい表面および寸法特性で取り戻され、治療/診断化合物をターゲット部位に効果的に伝えることができる。
【0016】
本発明者らは、実際、1つ以上の治療/診断化合物の存在下での薬学的に許容される水溶性キャリアとリン酸カルシウムのナノ粒子との間の特定の相互作用により、一方では、マイクロ粒子自体の調製中の凝集現象を防止し、したがって、呼吸可能性に適した特性を有するマイクロ粒子を得ることに貢献し、他方では、肺の沈着の部位におけるマトリックスの溶解後にナノ粒子の凝集現象を防止できることを驚くべきことに見出した。
【0017】
このようにして、本発明による組成物は、有利には、1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子の吸入によるエアロゾルによる投与と同時に、治療/診断化合物を標的部位に有効に伝達できるように適切な寸法および表面特性でそれらを組み込むマトリックスの溶解後の堆積部位でそれらを容易に入手できるようにすることを可能にする。
【0018】
さらなる有利な側面の下で、本発明は、心血管疾患、呼吸器疾患の治療における使用、ならびに免疫賦活物質としての使用のための、本発明の第1の側面による粉末の形態の組成物に関して、考察する。
【0019】
本発明による粉末組成物は、医薬品として、例えば、心血管疾患の治療において使用する場合、吸入により投与される。
【0020】
本発明による粉末の形態の組成物の特性は、乾燥粉末として吸入によって投与されることを特に有利にする。
【0021】
したがって、本発明は、さらなる側面において、本発明による粉末組成物を含む容器を含む吸入デバイスに関係する。
【0022】
好都合なことに、本発明による粉末組成物は、簡単で再現性の高い方法によって得ることができるという追加の利点を有する。これは、本発明による組成物の製造を経済的に競争力のあるものにするのに寄与する。
【0023】
それゆえ、さらなる側面において、本発明は、本発明の第1の側面による粉末組成物の調製のための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
- 1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子の第1の水性分散体を提供すること;
- 第2の水性分散体を得るために、水中に可溶な少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアを、フェーズa)の分散体中に溶解させること;
- 前記第2の水性分散体を噴霧乾燥すること。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面の簡単な記述
図面では、
【
図1】
図1は、実施例1のマイクロ粒子をSEMで分析し(1a)、Focus Ion Beamで分解したもの(1b)である。
【
図2】
図2は、実施例2のマイクロ粒子をSEMで分析し(2a)、Focus Ion Beamで分解したもの(2b)である。
【
図3】
図3は、実施例3のマイクロ粒子をSEMで分析し(3a)、Focus Ion Beamで分解したもの(3b)である。
【
図4】
図4は、実施例4のマイクロ粒子をSEMで分析し(4a)、Focus Ion Beamで分解したもの(4b)である。
【
図5】
図5は、実施例5のマイクロ粒子をSEMで分析し(5a)、Focus Ion Beamで分解したもの(5b)である。
【
図6】
図6は、実施例6のマイクロ粒子をSEMで分析し(6a)、Focus Ion Beamで分解したもの(6b)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な記述
本発明の文脈では、治療/診断化合物を運ぶことができる医療用ナノ粒子を吸入によって患者に効果的に投与するための新しい組成物を特定し、公知技術の技術的および機能的限界を克服する。
【0026】
より具体的には、本発明は、その第1の側面において、1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性薬学的に許容できるキャリアのマトリックスを含むマイクロ粒子を含む粉末組成物を指し、前記粉末が吸入により投与される医薬品として使用するためのものである。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、量、パラメータ、パーセンテージなどを示すすべての数値量は、特に指示しない限り、すべての状況において「約」という用語が先行すると見なされるものとする。さらに、すべての数値量の範囲には、以下に具体的に示すものに加えて、最大および最小の数値のすべての可能な組み合わせと、すべての可能な中間範囲が含まれる。
【0028】
本発明において、定義を使用する場合:
「マイクロ粒子」とは、体積径が10μm未満の粒子を意味する。
「ナノ粒子」とは、体積径が300nm未満の粒子を意味する。
「予め投与された量」(以下、「MD」ともいう)とは、粉末組成物をエアロゾルで吸入するための装置(吸入器)に装填される粉末組成物の質量をいう。通常、この組成物はカートリッジ、またはハードカプセルに装填される。
「放出量」(以下、「ED」ともいう)とは、吸入行為に伴って吸入器から放出される予め投与された量のことをいう。放出量は、the European Pharmacopoeia 9.0 chapter 2.9.18の方法に従い、Fast Screening Impactor and Next Generation Impactorの衝撃装置を用いて測定可能である。
「放出割合」(以下、「EF」と略す)とは、放出量と予め投与された量の比、すなわちED/MD比のことをいう。
「空気力学的直径」とは、検討中の実際の粒子と同じ沈降速度を持つ単位密度の球体の直径を意味する。この値は、impactors Fast Screening Impactor and Next Generation Impactorを用いて、the European Pharmacopoeia 9.0 chapter 2.9.18に記載されている方法を適用して測定することができる。
「中央質量空気力学的直径」(以下、「MMAD」ともいう)とは、粉体組成物の粒子の空気力学的直径の分布の中央値をいう。
「幾何標準偏差」(以下、「GSD」ともいう)とは、粉末状の組成物の粒子の空気力学的直径の分布データの中央値(MMAD)付近の分散を意味する。
「投影直径」とは、任意の適切な顕微鏡技術(例えば、走査型電子顕微鏡)により決定された、粒子と同じ平面上の投影面積を有する円の直径に対応する等価球直径をいう。
「微粒子」(以下、「FP」ともいう)とは、空気力学的直径が5.0μm未満の粒子をいう。
「超微粒子」(以下、「EFP」ともいう)とは、空気力学的直径が3.0μm未満の粒子をいう。
「微粒子量」(以下、「FPD」ともいう)とは、粉体組成物の微粒子の量をいう。
「超微粒子量」(以下、「EFPD」ともいう)とは、粉体組成物の超微粒子の量をいう。
「微粒子割合」(以下、「FPF」ともいう)とは、放出される量に対する微粒子の量の比率、すなわちFPD/ED比のことをいう。
「超微粒子割合」(以下、「EFPF」ともいう)とは、超微粒子の量と放出量の比、すなわちEFPD/ED比のことをいう。
「体積径」とは、分析対象の粒子と同じ体積を持つ完全球の直径を意味する。体積径は、レーザー光回折法により測定可能である。
「Dv50」(以下、「体積中央径」または「VMD」ともいう)とは、分析対象となる複数の粒子の体積径分布の中央値を意味する。
「Dv10」とは、分析対象となる複数の粒子の体積径分布の10パーセンタイルを意味する。分析に供される試料の粒子の10%が、その直径未満である。
「Dv90」とは、分析対象となる複数の粒子の体積径分布の90パーセンタイルを意味する。分析に供される試料の粒子の90%が、その直径未満である。
「高応答性」とは、FPFが0.5より大きい粉末組成物を意味する。
【0029】
少なくとも1つの薬学的に許容される水溶性キャリアのマトリックス中に1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子が組み込まれるおかげで、本発明による粉末の形態の組成物は、実際には、治療/診断化合物を輸送可能な医療用ナノ粒子を吸入により効果的に投与し、その肺への沈着量を高く確保するとともに、沈着部位においてもナノ粒子自体の凝集現象を防止し、治療/診断化合物を十分に吸収させて、標的部位に効果的に送達することを可能にする。
【0030】
本発明者らは、実際に、薬学的に許容される水溶性キャリアを用いて、1つ以上の治療/診断化合物を既に含んでいるリン酸カルシウムナノ粒子を効果的に組み込むことが可能であり、これにより、高い呼吸性を特徴とする吸入エアロゾルを生成するのに適したサイズのマイクロ粒子が得られ、患者の肺レベルで効果的に投与および堆積できることを驚くべきことに発見した。マイクロ粒子が堆積されると、水溶性薬学的キャリアマトリックスは効率的に溶解し、ナノ粒子を放出する。ナノ粒子は、有利には分散した形で、望ましい表面および寸法特性を持ち、したがって治療/診断化合物を標的部位に効果的に伝えることができる。
【0031】
本発明者らは、実際、1つ以上の治療/診断化合物の存在下での薬学的に許容される水溶性キャリアとリン酸カルシウムナノ粒子との間の特異的相互作用により、一方では、マイクロ粒子自体の調製中に凝集現象を防止することができ、したがって、その呼吸性に適した特性を有するマイクロ粒子を得ることに貢献し、他方では、肺の沈着の部位におけるマトリックスの溶解後にナノ粒子の凝集現象を防止するという驚くべきことを発見した。
【0032】
本発明は、その1つ以上の側面において、以下に列挙する好ましい特性の1つ以上を呈することができ、これらは用途の必要性に応じて互いに組み合わされることができる。
【0033】
本発明による粉末組成物は、1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性薬学的に許容できるキャリアのマトリックスを含む複数のマイクロ粒子を含んでいる。
【0034】
好ましくは、前記少なくとも1つのナノ粒子は、50~300nmの間、より好ましくは50~100nmの間、レーザー光回折によって決定される中程度の流体力学的直径(Z-medium)を有する。この範囲の寸法は、実際に、肺を通るナノ粒子の吸収および標的部位への治療/診断化合物の送達に特に有効であることが証明されている。
【0035】
好ましくは、前記少なくとも1つのナノ粒子は、-10mV~-41mV、より好ましくは-15mV~-30mVの範囲の電気泳動光散乱(ELS)により決定されたζ電位を有する負の表面電荷を有する。この範囲のζ電位値は、実際に、肺を介したナノ粒子の吸収、および治療/診断化合物の標的部位への送達に特に有効であることが証明されている。
【0036】
好ましくは、前記少なくとも1つのナノ粒子は、リン酸カルシウムの重量に関して、0.03重量%から32重量%の1つ以上の治療/診断化合物のそれを含む。
【0037】
好ましくは、前記ナノ粒子は、1つ以上の前記治療/診断化合物をカプセル化する。
【0038】
好ましくは、前記1つ以上の治療/診断化合物は、核酸、ペプチド、タンパク質、抗体、および700ダルトン以下の分子量を有する合成化合物からなる群から選択され、最も好ましくは、核酸、およびペプチドからなる群から選択される。
【0039】
本発明及び特許請求の範囲の文脈では、「700D以下の分子量を有する合成化合物」という用語は、いわゆる低分子を意味する。
【0040】
本発明の特に好ましい実現態様では、前記核酸は、以下からなる群から選択される。干渉RNA(shRNA、siRNA、microRNA、lncRNA、アプタマー)、模倣RNA(microRNA模倣体、lncrNAまたは他の非コードRNA)、コードRNA(mRNA)、分子結合RNA(アプタマー、lncRNA)、コードDNA(cDNA)または分子結合DNA(アプタマー)、あるいはPNA(ペプチド核酸)からなる群から選択される。
【0041】
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、前記ペプチドは、L-またはD-レトロインバースペプチド(<100アミノ酸)、L-またはD-レトロインバース模倣ペプチド、(<100アミノ酸)、またはL-またはD-レトロインバース修飾ペプチド(模倣)、(<100アミノ酸)からなる群において選ばれる。
【0042】
本発明による700ダルトンに等しいかそれより低くない分子量を有する合成化合物は、例えば、ミルリノン(211D)、レボシメンダン(280D)、ベスナリノン(395D)などの強心剤、アミオダロン(645D)などの抗不整脈剤、または心臓への直接放出から利益を得ることができる他の薬である。
【0043】
特定の理論に結び付けられることを望むものではないが、上述のような治療/診断化合物、特に核酸およびペプチドは、患者に対する治療/診断の役割を果たすことに加えて、驚くべきことに、本発明による粉末組成物の特性に対して他の側面でも寄与すると考えられている。本発明者らは、実際に、リン酸カルシウムナノ粒子中の治療/診断化合物が、マイクロ粒子の空気力学的特性およびリン酸カルシウムナノ粒子自体および薬学的に許容される水溶性キャリアの間の相互作用を共に改善することを見出した。また、肺沈着部位でマトリックスが溶解しても、ナノ粒子同士の凝集現象を防ぎ、ナノ粒子自体が肺で吸収される可能性を保持することができる。
【0044】
好ましくは、本発明による粉末組成物の複数のマイクロ粒子において、重量比(リン酸カルシウム):(薬学的に許容できるキャリア)は、1:2.5~1:7、より好ましくは1:2.5~1:6、さらに好ましくは1:3~1:5、最適には1:3.5~1:4.5とする。
【0045】
本発明者らは、リン酸カルシウムと薬学的に許容される水溶性キャリアとの重量比がこれらの範囲にあることが、マイクロ粒子の空気力学的特性に正の影響を与え、特に高い呼吸性を有する粉末組成物の達成に寄与することを驚くべきことに発見した。
【0046】
好ましくは、前記少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアは、ポリアルコールであり、例えば、好ましくは:マンニトール、キシリトール、ソルビトール、又はラクチトールからなる群から選択される化合物である。
【0047】
より好ましくは、前記少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアはマンニトールであり、これは、1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子との特に有効な相互作用の確立のおかげで、本発明の目的に特に適していることが示されている。したがって、吸入によるエアロゾルの実現に理想的な空気力学的特性を有する粉末組成物を得ることに貢献することができ、同時に、粉末組成物の調製中および堆積部位でのキャリア自体の溶解後の両方で、ナノ粒子自体の凝集現象を防止することができる。これらの特性により、吸入によるナノ粒子の効果的な投与が可能になり、その高い堆積収率、治療/診断化合物の十分な吸収、および標的部位への効果的な送達が保証される。
【0048】
本発明による粉末組成物は、吸入エアロゾルによる投与に使用するのに特に適した空気力学的特性を有し、高い収率で肺の沈着部位に効果的に到達することができる。
【0049】
好ましくは、本発明による粉末組成物は、FPFが0.5以上、より好ましくは0.5~0.85、さらに好ましくは0.6以上である。
【0050】
好ましくは、本発明による粉末組成物は、0.4より大きいEFPFを有する。
【0051】
好ましくは、本発明による粉末組成物は、5.0μmより低いメジアン体積径(Dv50)を有する。
【0052】
好ましくは、本発明による粉末組成物は、1.0μmと5.0μmの間の空気力学的質量中央径(MMAD)を有するマイクロ粒子の画分を有する。
【0053】
上記範囲のFPF、EFPF、MMAD、および/またはDv50の空力特性は、本発明による粉末組成物を高い呼吸性を有する組成物とし、したがって、治療/診断化合物を標的部位に伝えるために、ナノ粒子の吸収の前にマイクロ粒子を効果的に肺に沈着させることができる。
【0054】
好ましくは、本発明による組成物のマイクロ粒子は、6重量%に等しいか又はそれ未満の量の水を含む。
【0055】
好ましくは、本発明による組成物のマイクロ粒子は、多孔質な内部構造を有する。より好ましくは、多孔質構造を有するマイクロ粒子は、50nm未満、さらに好ましくは10~50nm、最適には20nmの投影直径を有する孔を有する。
【0056】
このようにして、本発明によるマイクロ粒子は、特に高いレスピラビリティ値を示し、本発明者らは、ナノ粒子中の1つ以上の治療/診断化合物、好ましくは核酸およびペプチドの存在が、このような多孔質構造の達成に寄与することを観察した。
【0057】
したがって、特に好ましい実施形態では、本発明は、多孔質の内部構造を有し、1つ以上の治療/診断化合物からなるリン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込む少なくとも1つの薬学的に許容できる水溶性キャリアのマトリックスを含むマイクロ粒子を含む粉末組成物を指し、ここで前記1つ以上の治療/診断化合物は:核酸、及びペプチドからなる群から選ばれる。
【0058】
特に好ましい実施形態では、前記核酸は、以下からなる群から選択される。干渉RNA(shRNA、siRNA、microRNA、lncRNA、アプタマー)、模倣RNA(microRNA模倣体、lncrNAまたは他の非コードRNA)、コードRNA(mRNA)、分子結合RNA(アプタマー、lncRNA)、コードDNA(cDNA)または分子結合(アプタマー)、PNA(ペプチド核酸)。
【0059】
さらに特に好ましい実施形態では、前記ペプチドは、L-もしくはD-レトロインバースペプチド(<100アミノ酸)、またはL-もしくはD-レトロインバース模倣ペプチド(<100アミノ酸)、または修飾L-もしくはD-レトロインバースペプチド(模倣)、(<100アミノ酸)から成る群から選択される。
【0060】
本発明による組成物は、有利には、1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子の吸入によるエアロゾルによる投与と同時に、それらを組み込んだマトリックスの溶解後に堆積部位で、それらに含まれる治療/診断化合物を標的部位に有効に伝達できる正しい寸法で利用可能とすることを可能にする。
【0061】
本発明は、医薬品として使用するための、本発明の第1の態様に係る粉末組成物に関するものである。
【0062】
さらなる有利な側面の下で、本発明は、心血管疾患、呼吸器疾患、好ましくは鼻腔、レトロナスおよび肺の治療における使用、ならびに免疫刺激物質としての使用のための、本発明の第1の側面による粉末組成物に関する。
【0063】
本発明のこれらの追加的かつ有利な側面の利点は、本発明の第1の側面による粉末組成物の利点と同じである。
【0064】
本発明の有利な態様において、本発明による粉末組成物は、医薬品として、例えば、心血管疾患の治療において使用する場合、吸入により投与される。
【0065】
本発明による粉末組成物の特性は、吸入によって投与されることを特に有利にする。
【0066】
したがって、本発明は、さらなる態様において、本発明による粉末組成物を含む容器を含む吸入デバイスに関する。好ましくは、前記容器は、以下からなる群から選択される:カートリッジもしくはハードカプセル、またはブリスター。
【0067】
さらに別の態様において、本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容される水溶性キャリアのマトリックスがリン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んでなるマイクロ粒子を含む粉末組成物にも言及し、その際、重量比(リン酸カルシウム):(薬学的に許容できるキャリア)は1:2.5~1:7、より好ましくは1:2.5~1:6、さらにより好ましくは1:3~1:5、最適的には1:3.5~1:4.5である。
【0068】
本発明者らは、驚くべきことに、これらの範囲におけるリン酸カルシウムと薬学的に許容される水溶性キャリアとの重量比が、マイクロ粒子の空気力学的特性に正の影響を与え、したがって、特に高い呼吸性を有する粉末組成物の達成に寄与することを発見した。
【0069】
この組成物は、例えば吸入エアロゾルによる投与のために、様々な種類の治療/診断化合物の運搬に有利に使用することができる。
【0070】
好都合なことに、本発明による粉末組成物は、簡単で再現性の高い方法によって得ることができるという追加の利点を有する。これは、本発明による組成物の製造を経済的に競争力のあるものにするのに寄与する。
【0071】
したがって、さらなる態様において、本発明は、以下の工程を含む、本発明の第1の態様による粉末組成物の調製のための方法に関する:
a)1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子の第1の水性分散体を提供すること;
b)第2の水性分散体を得るために、フェーズa)の分散体に少なくとも1つの薬学的に許容される水溶性キャリアを溶解させること;および
c)工程b)の第2の水性分散体を噴霧乾燥させること。
【0072】
本発明による粉末組成物は、当該分野の当業者にこの目的のために知られている他の技術によっても得ることができるが、本発明による粉末組成物の調製方法は、有利には、簡単な実施と高い再現性、および容易に拡張可能という結果をもたらし、それによって組成物の調製自体を競争的かつ信頼性のあるものにする。
【0073】
工程a)による第1の水性分散体の調製は、例えば特許出願WO 2016/102576に報告されているように、当該分野の当業者にその目的のために知られている任意の方法で実施することができる。
【0074】
好ましくは、このフェーズa)は、以下の工程を含む:
1)7から10の範囲のpHを有し、カルシウムイオンの水溶液、リン酸イオンの水溶液、クエン酸イオンの水溶液、および1つ以上の治療/診断化合物の水溶液を含む混合物を、20℃から40℃の範囲の温度で30秒から10分の期間提供すること;
2)工程1)で得られた溶液から非反応イオンを除去して、リン酸カルシウムナノ粒子(NP-CaP)の懸濁液を得ること;および
3)工程2)の懸濁液から、1つ以上のリン酸カルシウムナノ粒子(NP-CaP)の生成物を回収すること。
【0075】
好ましくは、工程1)の混合物のカルシウムイオンの水溶液は、20~200mMの範囲のモル比を有する塩化カルシウムの溶液である。
【0076】
好ましくは、工程1)の混合物のリン酸イオンの水溶液は、24~240mMの範囲のモル比を有するNa2HPO4の溶液である。
【0077】
好ましくは、工程1)の温度は35~40℃の範囲であり、より好ましくは、それは約37℃である。
【0078】
好ましくは、工程1)の混合物の維持時間は、約5分である。
【0079】
好ましくは、クエン酸イオン溶液は、40~800mMの範囲のモル比を有するクエン酸ナトリウムの水溶液である。
【0080】
好ましくは、工程1)の混合物は、約10のpHを有する。
【0081】
好ましくは、未反応イオンを除去する工程2)は、透析膜によって実施される。好ましくは、透析膜は、カットオフが3500ダルトン以下であるセルロース膜である。
【0082】
好ましくは、透析膜を用いて行われる除去2)の工程は、5時間から24時間、好ましくは6時間の時間にわたって行われる。
【0083】
好ましくは、ナノ粒子の回収の工程3)は、乾燥によって、より好ましくは凍結乾燥によって行われる。これにより、有利には、固体状態のナノ粒子を回収することが可能になる。
【0084】
工程a)による1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子の水性分散体が得られたら、この発明による方法は、第2の水性分散体を得るために、少なくとも1つの薬学的に許容できる水溶性キャリアをこの水性分散体に溶解する、工程b)を提供する。
【0085】
前記工程b)において、許容される水溶性薬学的キャリアとリン酸カルシウムとの重量比は、粉末組成物のマイクロ粒子において得たい最終的な比率に応じて変化してもよく、好ましくは本発明の第1の側面を参照して説明したものである。
【0086】
好ましくは、前記第2の水性分散体において、固体の濃度は、25℃で測定して、0.1%w/vと1.5%w/vとの間、より好ましくは0.15%w/vと1.0%w/vとの間、さらに好ましくは0.2%w/vと0・9%w/vとの間にある。
【0087】
工程b)の第2の水性分散体が得られたら、本発明による方法は、前記第2の水性分散体を噴霧乾燥する工程c)を提供する。
【0088】
噴霧乾燥は、当業者に知られている技術である。噴霧乾燥の前記工程c)は、当業者に知られている噴霧乾燥技術のいずれかに従って実施することができるが、それにもかかわらず、本発明者らは、最適な結果を得るために、この工程を実施するためにいくつかの好ましい条件を驚くべきことに特定した。
【0089】
好ましくは、噴霧乾燥の前記工程c)において、空気温度は110℃から170℃の間、より好ましくは115℃から160℃の間、さらに好ましくは120℃から150℃の間にある。
【0090】
好ましくは、噴霧乾燥の前記工程c)において、出口温度は、45℃と95℃の間、より好ましくは50℃と85℃の間、さらに好ましくは60℃と75℃の間で変化する。
【0091】
好ましくは、噴霧乾燥の前記工程c)において、乾燥空気流の速度は、100リットル/時間~850リットル/時間、より好ましくは300リットル/時間~750リットル/時間、さらに好ましくは450リットル/時間~700リットル/時間の間である。
【0092】
好ましくは、噴霧乾燥の前記工程c)において、ノズルは、直径が0.3mmから1.0mmの間、より好ましくは0.5mmから0.9mmの間、さらに好ましくは0.4mmから0.7mmの間にある。
【0093】
好ましくは、噴霧乾燥の前記工程c)において、溶液の噴霧速度は、2.0ml/分~8.0ml/分、より好ましくは2.5ml/分~7.0ml/分、さらに好ましくは3.0ml/分~5.0ml/分とする。
【0094】
好ましくは、噴霧乾燥の前記工程c)において、吸引速度は、20m3/時と4020m3/時の間、より好ましくは2520m3/時と3820m3/時の間、さらに好ましくは3020m3/時と35m3/時の間にある。
【0095】
空気温度、出口温度、乾燥空気流量、ノズル直径、スプレー速度及び吸引速度の前記条件は、利用可能な設備及び用途又は生産性の必要性に応じて、当業者によって異なる方法で組み合わせることができ、一方で、本発明による粉末組成物を高収率で、再現性のある方法で得ることを可能にする。
【0096】
したがって、さらなる態様において、本発明は、本発明による方法によって得られる、1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムの少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性薬学的に許容できる可溶性キャリアのマトリックスを含むマイクロ粒子を含む粉末組成物に言及する。
【0097】
次に、本発明は、説明のために理解され、それを限定するものではないいくつかの実施例を通じて説明される。
【0098】
実験
実施例1
クエン酸ナトリウム0.2Mを含むCaCl2 0.1MとNa2HPO40.12Mの2つの水溶液を、pH10.0で1:1(v/v)の固定混合量比で混合した。
【0099】
得られた混合物は、ナノ粒子の沈殿を可能にするために、37℃で5分間保持され、次いで未反応の塩を除去するために一晩透析された。水性分散体に調製されたナノ粒子の濃度は約7.0mg/mlであった。得られたリン酸カルシウムナノ粒子をレーザー光回折で分析したところ、平均流体力学的直径(Z平均)は80±15nm、電気泳動光散乱法(ELS)で求めたζ電位は-37±2mVとなった。
【0100】
その後、このようにして調製したリン酸カルシウムナノ粒子の分散体を精製水で希釈し、固形分濃度が0.重量比でリン酸カルシウム:マンニトールが1:4となるようにマンニトールをナノ粒子の分散体に溶解させた。乾燥させる溶液の濃度は、乾燥残渣として、2.5mg/mlであった。次に、Buchi B-290噴霧乾燥機を用いて、表1に報告されている条件下で、噴霧乾燥工程を実施した。最後に、こうして得られた粉末を回収容器から回収し、密閉したガラスバイアルに20~25℃で保存した。
【表1】
【0101】
得られたマイクロ粒子を走査型電子顕微鏡で分析し、the SEM/Focus Ion Beam (FIB) particle sectioning techniqueで内部構造を分析した。
【0102】
マイクロ粒子の形態と粉末の表面特性を走査型電子顕微鏡SEM/Focus Ion Beam (FIB)で調べた。
【0103】
採用した装置は、異なる解像度と作業距離の電界放出顕微鏡を備えた走査型電界放出電子顕微鏡-集束イオンビーム(FESEM-FIB, Auriga Compact, Zeiss, Germany)であった。
【0104】
アルミニウムスタブ上のカーボンテープに1~2mgのマイクロ粒子を配置し、サンプルを作製した。マイクロ粒子の形態は、Phenom-Prox SEM(Phenom-World, The Netherlands)を用いて、検出器を二次電子モードにし、動作電圧1kV、動作圧力1Paの条件で観察した。空隙率解析のためにCaPを埋め込んだマイクロ粒子の内部構造を調べるために、Zeiss Auriga FIB-SEM(Zeiss, Germany)を用い、動作電圧1kV、電流1nAでコースライン彫刻により粒子を切断し、次に動作電圧30kV、電流100pAでFIB(細線)研磨した。
【0105】
FIB切断中、FIB加工後に同じSEM操作条件でSEMモードで5000倍から70.000倍の倍率でランド画像を撮影した。
【0106】
図1aは得られたマイクロ粒子の走査型顕微鏡写真で、
図1bはマイクロ粒子を分解したものである。
【0107】
得られたマイクロ粒子が実質的に球形であることを指摘することができた。また、SEM/FIB粒子切片化技術で得られた画像は、中央に大きな空洞があり、その周りにいくつかの小さな空洞が散在している内部構造の存在を示していた。
【0108】
また、粒子の寸法特性(Dv10,Dv50,Dv90)、残留水分量、空気力学的挙動(EF、FPF)、およびマンニトールマトリックスの溶解後のナノ粒子の安定性を決定するために、粒子の特性を評価した。
【0109】
寸法特性については、Dv10,Dv50,Dv90の値をレーザー散乱法で求め、測定した直径の寸法分布から算出した。
【0110】
マイクロ粒子のin vitro空気力学的挙動をFast--Screening Impactorで測定した。ハードカプセルに40mgの粉末を装填し、RS01(登録商標)吸入装置(Plastiape、ITA)に挿入し、60L/minの空気速度を適用して粉末をin vitroで「吸入」させた。FPFは、5μmより小さい粒子を保持するFine Fractionと呼ばれるステージ2のFast Screeningで堆積した粉塵の量を測定し、それが5μmより大きい粒子を保持するステージ1を通過することによって決定された。
【0111】
マイクロ粒子の含水率は、熱重量分析(TGA)により測定した。
【0112】
マンニトール溶解後のナノ粒子のサイズの安定性は、以下の方法で測定した:粉末2.5mgを精製水1mlに穏やかに振とうして溶解し、リン酸カルシウムの濃度が0.5mg/mlとなるようにした。その後、浮遊したナノ粒子を分析し、平均流体力学的直径(Z-medium)およびζ電位を、上記と同様の方法で測定した。
【0113】
これらの特性評価によって得られた結果を表2に示す。
【0114】
したがって、得られたマイクロ粒子は、吸入エアロゾルとしての使用に適するような寸法(Dv10、Dv50、Dv90)および呼吸特性(EF、FPF)を示すことに気づくことが可能であった。さらに、マンニトールマトリックスに組み込む前とマトリックス溶解後のナノ粒子の平均流体力学的直径(Z-medium)とζ電位の比較から、値のかなりの一致を見つけることができ、有意なナノ粒子の凝集現象がないこと、したがってナノ粒子が肺のレベルで吸収可能である特性を維持していることを証明することができた。
【0115】
実施例2
カルシウムチャネルのCavβ2サブユニットの結合を意図した模倣ペプチド(MP; 11 AA, MW: 1326 Da, a-helix構造)を含むリン酸カルシウムナノ粒子(欧州特許出願番号EP 3 107 933)を、例1の手順に従い、異なる点として、模倣ペプチドを濃度0.Na2HPO40.12Mの溶液中に6mg/mlを添加した。得られたペプチドを含むリン酸カルシウムナノ粒子は、平均流体力学的直径(Z平均)105±20nmおよびζ電位-25±7mVを示した。また、HPLCで測定したリン酸カルシウム量に対するペプチド量で表されるペプチド含有量は、6.0±2.0%w/wであった。
【0116】
ペプチドの定量には、HPLCグラジエント法を用い、空隙率5μmのC18クロマトグラフィーカラムを使用した。ペプチドを構成するCaP分散体1mlに、HCl0.1Nを1ml加えた。穏やかに振とうして溶解を完了させ、透明な溶液を得た。この溶液を1.5mlの透明ガラスバイアルに移し、Agilent 1200 LC Series tool (Agilent Technologies, USA)を用いてHPLC分析を行った。
【0117】
実施例1と同じ噴霧乾燥機を用いて、ペプチドを含むリン酸カルシウムナノ粒子(dpCaPs/MP)を埋め込んだマイクロ粒子を製造した。ナノ粒子の分散体に、リン酸カルシウム:マンニトールの重量比が1:4になるようにマンニトールを溶解し、乾式スプレー用溶液にマンニトール2.0mg/mlとペプチドを含むリン酸カルシウムナノ粒子0.5mg/mlを含むようにした。この混合液を室温で数分間振とうして、キャリアの溶解を行った。この供給溶液を、実施例1と同じ条件下で噴霧乾燥した。最後に、回収した粉末を密封したバイアルに入れ、室温で保存した。乾燥工程での収率は約65%であった。得られたマイクロ粒子は、試料調製を除いて、実施例1に記載したのと同じHPLC法で測定したところ、0.5% w/wのMPペプチドを含んでいた:マイクロ粒子20mgをHCl 0.1 N 2mlに溶解し、15分後、完全に溶解した時点で、透明溶液をHPLCにより分析した。
【0118】
得られたマイクロ粒子も実施例1と同様に特性評価を行った。
【0119】
図2aでは、得られたマイクロ粒子の走査型電子顕微鏡写真を示し、
図2bでは、実施例1に記載の方法に従って、FIB/SEM技術で分解したマイクロ粒子を示し、実施した他の特性評価の結果は、表2に報告する。
【0120】
図2aおよび2bに報告された得られたSEM画像から、実施例2で得られたマイクロ粒子も実質的に球状の形状を示すことを観察することが可能であった。しかし、内部構造は、実施例1によるマイクロ粒子のものとは実質的に異なり、内部多孔質構造を有していた。
図2bに格子状に見える直径2~20nmの無数の小さな空洞が、実際にFIB/SEM分析によって明らかになった。これらの多数の孔は、肺胞型と定義することができるマイクロ粒子の内部構造を決定し、これは、本発明者らの知る限り、本発明によるもののようなマイクロ粒子においてこれまで観察されたことがない。また、実施例2によるマイクロ粒子は、実施例1のマイクロ粒子よりも有意に優れた空気力学的特性を示し(表2参照)、組み込み前後のナノ粒子の寸法の値を比較することによって明らかなように、マンニトールマトリックスの溶解後、元のサイズのリン酸カルシウムナノ粒子を得ることができた(表2、列「元のナノ粒子」および「再分散したナノ粒子」)ことが指摘されている。これらのマイクロ粒子は、空気力学的直径の分布に関しても特徴づけられ、MMADの値は2.6μm、幾何標準偏差(GSD)は1.72であった。
【0121】
実施例3
リン酸イオン溶液に、心筋細胞のリモデリングに重要な役割を果たすことができる心血管疾患の治療化合物としてよく知られている(Qiagen, #339174)の模倣マイクロRNAを0.014 mg/ml添加して、例1で報告したようにリン酸カルシウムナノ粒子を準備した。得られたマイクロRNAを含むリン酸カルシウムナノ粒子は、平均流体力学的直径(Z-mean)が1900±50nm、ナノ粒子凝集体の存在のシグナル、ζ電位が-17±5mV、リン酸カルシウムの重量に対するマイクロRNA含有量が0.03重量%であった。
【0122】
その後、前記ナノ粒子を埋め込んだマイクロ粒子(dpCaPs/micro-RNA)を噴霧乾燥により調製した。
【0123】
この目的のために、リン酸カルシウム:マンニトールの重量比が1:4になるようにマンニトールをナノ粒子の分散体に溶解し、乾燥スプレー用の溶液が2.0mg/mlのマンニトールとマイクロRNAを含むリン酸カルシウムナノ粒子を0.5mg/ml含むようにした。得られた分散体を室温で数分間振とうし、ベクターを溶解させた。この供給溶液を、実施例1と同じ条件下で噴霧乾燥した。製造されたマイクロ粒子は、密閉された瓶の中で室温で保存された。噴霧乾燥の収率は約70%であった。得られたマイクロ粒子は、0.006 % w/wのマイクロRNAを含んでいた。
【0124】
マイクロRNAの定量には、デジタルPCR法を使用した。1mlのCaP懸濁液(n=4)、20,000rpmで15分間遠心分離された。0.1mlの上清を引き出し、一方、ペレットを1mlの水に再懸濁し、そこから0.1mlを取り出した。0.1mlの全懸濁液、ペレット、上清をHCl 0.1 Nで酸溶解し、その後5分間ボルテックスした。各サンプルからRNAを抽出し、再転写し、デジタルPCRによりマイクロRNAを定量化した。
【0125】
得られたマイクロ粒子は、実施例1と同様に特性も確認した。
【0126】
図3aには、得られたマイクロ粒子の走査型顕微鏡写真を示し、
図3bには、実施例1に記載の方法に従って、FIB/SEM技術で分解したマイクロ粒子を示し、他の特性評価の結果は、表2に報告する。
【0127】
走査電子顕微鏡分析(
図3a)から、実施例3によるマイクロ粒子は、実質的に球形の形状およびしわのある外面を示し、5ミクロン未満の体積中央径を有することを検出することが可能であることがわかった。また、分解されたマイクロ粒子(
図3b)は、肺胞型の多孔質内部構造を示し、直径10~50nmの複数の小孔を有していた。表2に報告されたデータから分かるように、本発明者らは、これらのマイクロ粒子は、一旦マンニトールマトリックスを溶解させると、驚くべきことに、ナノ粒子自体の調製の最後に得られた初期ナノ粒子の凝集体を分解して、250nm前後の寸法を有するナノ粒子を復元できることも発見した。したがって、本発明者らは、マンニトールが意外にも、リン酸カルシウムナノ粒子の解離に積極的な分子的役割を果たしたと考える。
【0128】
実施例4
リン酸イオン溶液中に、模倣ペプチドMPの代わりに、R7Wペプチド(R7W-MP)(19アミノ酸、MW:2605.9、α-helix構造)を0.15mg/ml添加し、実施例2を繰り返した。乾燥工程での収率は84.4%であった。製造された微細構造体のR7W-MPペプチド含有量は0.25%w/wであった。
【0129】
図4aには、得られたマイクロ粒子の走査型電子顕微鏡による顕微鏡写真を示し、
図4bには、実施例1に記載の方法に従って、FIB/SEM技術で分解したマイクロ粒子を示し、他の特性評価の結果は、表2に示すとおりである。
【0130】
この場合も、走査型電子顕微鏡で、球状(
図4a)で表面が粗く、平均サイズが200nmから2μmの範囲にあるマイクロ粒子を確認した。SEM/FIB(
図4b)により、この場合にも、直径20nm以下の細孔を有する肺胞型の多孔質内部構造の存在を強調することができた。本発明者らは、この内部構造は、R7W-MPペプチドを含むナノ粒子とマイクロ粒子マトリックスとの間の相互作用に由来すると考えており、ナノ粒子が高分子構造の治療/診断化合物を含む実施例2および3において観察されたものと同様である。
【0131】
実施例5
実施例2は、リン酸イオン溶液中に、模倣ペプチドの代わりに、インフルエンザヘマグルチニンペプチド(HA)(YPYDVPDYA、分子量1102.05 Da、MPおよびR7W-MPより組織化された二次構造を持たない、マイクロRNA)0.15 mg/mlを加えて繰り返した。乾燥工程での収率は80%であった。製造された微細構造体中のHAペプチドの含有量は0.25%w / wであった。
【0132】
図5aには、得られたマイクロ粒子の走査型顕微鏡写真を示し、
図5bには、実施例1に記載の方法に従って、FIB/SEM技術で分解したマイクロ粒子を示し、他の特性評価の結果は、表2に示すとおりである。
【0133】
この場合も、走査型電子顕微鏡分析により、球状の形状を持つマイクロ粒子が確認された(
図5a)。また、SEM/FIB(
図5b)により、直径20nm以下の孔を有する多孔質内部構造の存在を強調することができたが、この孔は、実施例2~4に比べ、規則的に分布していないように見えた。この違いにもかかわらず、マイクロ粒子は、マンニトールマトリックスの溶解後、高いin vitro呼吸能力値とナノ粒子を復元する能力を示し、寸法および表面電荷特性は実質的に変化しなかった(表2参照)。
【0134】
実施例6
マイクロ粒子の調製に、1:4の代わりに1:6の重量比のリン酸カルシウム:マンニトールを用い、噴霧乾燥段階に、11.5mg/mlのマンニトールと、模倣ペプチドを含むリン酸カルシウムナノ粒子1.9mg/mlを含む供給溶液を使用して、例2を繰り返した。
【0135】
表2には、特性評価のデータを示す。
【0136】
実施例6のマイクロ粒子は、実施例2によるマイクロ粒子のそれと同様に、高い呼吸性を示した。
【表2】
【0137】
(1)は、ナノ粒子の総重量に対する治療診断化合物の重量パーセントを示す。
(2)は、マイクロ粒子の総重量に対する治療/診断化合物の重量比率を示す。
(3)は、マイクロ粒子の総重量に対する水の重量%を示す。
(4)は、粉体組成物のEF値を示す。
(5)は、粉体組成物のFPF値を示す。
(6)は、体積径値を示す。
(7)下の欄は、マイクロ粒子化する前のナノ粒子の平均流体力学的直径とζ電位の値である。
(8)下の欄は、マイクロ粒子マトリックスを溶解した後のナノ粒子の平均流体力学的直径およびζ電位の値を指す。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムの
体積径が300nm未満の少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性薬学的に許容されるキャリアのマトリックスを含む
体積径が10μm未満のマイクロ粒子を含む粉末組成物であって、粉末組成物が吸入により投与される医薬品としての使用のための
ものであって、しかも、少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアが多価アルコールである、前記の粉末組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の治療/診断化合物が、核酸、ペプチド、タンパク質、抗体、および700ダルトンを超えない分子量を有する合成化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の
使用のための粉末組成物。
【請求項3】
重量比(リン酸カルシウム):(薬学的に許容されるキャリア)が1:2.5~1:7である、請求項1又は2に記載の
使用のための粉末組成物。
【請求項4】
空気力学的直径が5.0ミクロン未満のマイクロ粒子の割合(FPF)が0.5より大き
く、
FPFは、FPD/ED比であり、
「空気力学的直径」とは、検討中の実際の粒子と同じ沈降速度を持つ単位密度の球体の直径を意味し、the European Pharmacopoeia 9.0 chapter 2.9.18に記載されている方法を適用して測定し;
FPDは、粉体組成物の微粒子(空気力学的直径が5.0μm未満の粒子)の量であり;
EDは、放出される予め投与された量であり、the European Pharmacopoeia 9.0 chapter 2.9.18の方法に従って測定される、
請求項1~
3のいずれかに記載の
使用のための粉体組成物。
【請求項5】
体積メジアン径(Dv
50)が5.0μm未満であ
り、「体積径」は、粒子と同じ体積を持つ完全球の直径であり、レーザー光回折法により測定される、請求項1~
4のいずれかに記載の
使用のための粉末組成物。
【請求項6】
前記マイクロ粒子は、多孔質の内部構造を有する、請求項1~
5のいずれかに記載の
使用のための粉体組成物。
【請求項7】
多孔質構造を有する前記マイクロ粒子は、50nm未満の投影直径を有する細孔を有
し、「投影直径」は、走査型電子顕微鏡により決定された、粒子と同じ平面上の投影面積を有する円の直径に対応する等価球直径である、請求項
6に記載の
使用のための粉体組成物。
【請求項8】
心血管疾患の治療に使用するための、請求項1~
7のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項9】
呼吸器疾患の治療に使用するための、請求項1~
7のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項10】
免疫賦活物質として使用するための、請求項1~
7のいずれかに記載の粉末組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載の
使用のための粉末組成物を収容した容器を備える吸入装置。
【請求項12】
リン酸カルシウムの
体積径が300nm未満の少なくとも1つのナノ粒子を埋め込んだ少なくとも1つの水溶性薬学的に許容されるキャリアのマトリックスを含む
体積径が10μm未満のマイクロ粒子を含む粉末組成物であって、リン酸カルシウムと前記少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアの重量比が1:2.5~1:7
であって、しかも、少なくとも1つの薬学的に許容されるキャリアが多価アルコールである、前記の粉末組成物。
【請求項13】
下記の工程:
a)1つ以上の治療/診断化合物を含むリン酸カルシウムナノ粒子の第1の水性分散体を提供すること;
b)第2の水性分散体を得るために、工程a)の分散体中に少なくとも1つの薬学的に許容される水溶性キャリアを溶解させること;および
c)工程b)の第2の水性分散体を噴霧乾燥すること、
を含む、請求項1~
10のいずれかに記載の
使用のための粉末組成物の調製方法。
【請求項14】
前記工程a)は、以下の工程:
1)7~10の範囲のpHを有し、カルシウムイオンの水溶液、リン酸イオンの水溶液、クエン酸イオンの水溶液、および1つ以上の治療/診断化合物の水溶液を含む混合物を、20℃~40℃の範囲の温度で30秒~10分の時間提供すること;
2)リン酸カルシウムナノ粒子の懸濁液を得ることにより、工程1)で得られた溶液から非反応イオンを除去すること;および
3)工程2)の懸濁液から、1つ以上のリン酸カルシウムナノ粒子の生成物を回収すること、
を含む、請求項
13に記載の
使用のための方法。
【国際調査報告】