IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルデブロン,エル.エル.シー.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】筋特異的ハイブリッドプロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20231005BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516514
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 US2021049914
(87)【国際公開番号】W WO2022056291
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】63/077,339
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523089036
【氏名又は名称】アルデブロン,エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ジェームズ,エー.
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
(57)【要約】
【要約】
本開示は、筋組織又は筋細胞における高度でかつ持続的な発現を達成するのに有用な筋特異的エンハンサー及びプロモーターの新規組み合わせを提供する。筋特異的プロモーターエレメントは、デスミンプロモーターに由来する。筋特異的エンハンサーエレメントは、デスミンプロモーター及び筋クレアチンキナーゼエンハンサーに由来する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え筋特異的調節核酸配列であって、
哺乳類デスミンプロモーターと、
哺乳類デスミンエンハンサーと、
1つ以上の哺乳類筋クレアチンキナーゼ(MCK)エンハンサーと、を含み、
前記哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び哺乳類MCKエンハンサーが、作動可能に連結されている、組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項2】
前記哺乳類デスミンプロモーターが、ヒトデスミンプロモーターである、請求項1に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項3】
前記哺乳類デスミンプロモーターが、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択される核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項4】
前記哺乳類デスミンプロモーターが、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項1に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項5】
前記哺乳類デスミンプロモーターが、マウスデスミンプロモーターである、請求項1に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項6】
前記哺乳類デスミンプロモーターが、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項7】
前記哺乳類デスミンプロモーターが、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項1に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項8】
前記哺乳類デスミンエンハンサーが、ヒトデスミンエンハンサーである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項9】
前記哺乳類デスミンエンハンサーが、配列番号6の核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項10】
前記哺乳類デスミンエンハンサーが、配列番号6の核酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項11】
前記哺乳類デスミンエンハンサーが、マウスデスミンエンハンサーである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項12】
前記哺乳類デスミンエンハンサーが、配列番号3の核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項13】
前記哺乳類デスミンエンハンサーが、配列番号3の核酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項14】
前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが各々、MCK CK7エンハンサーである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項15】
前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが各々、ヒトMCKエンハンサーである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項16】
前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが各々、マウスMCKエンハンサーである、請求項1~14のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項17】
前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが各々、配列番号11及び配列番号12からなる群から選択される核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項18】
前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが各々、配列番号11及び配列番号12からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項19】
前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが各々、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項20】
前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが各々、配列番号1の核酸配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項21】
前記組換え筋特異的調節核酸配列の唯一のエンハンサーが、前記哺乳類デスミンエンハンサー及び前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーである、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項22】
前記組換え筋特異的調節核酸配列が、前記哺乳類デスミンエンハンサー及び前記1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー以外のいかなる追加のエンハンサーも含まない、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項23】
前記組換え筋特異的核酸配列が、脊椎動物トロポニンI IRE(FIRE)エンハンサーを含まない、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項24】
1つ以上の追加のエンハンサーを更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項25】
配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む1つ以上の追加のエンハンサーを更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核配列。
【請求項26】
配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される核酸配列を含む1つ以上の追加のエンハンサーを更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核配列。
【請求項27】
前記筋特異的調節核酸配列が、2つ以上の前記哺乳類MCKエンハンサーを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項28】
前記筋特異的調節核酸配列が、1~3つの前記哺乳類MCKエンハンサーを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項29】
イントロンの1つ以上のコピーを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項30】
前記イントロンの前記1つ以上のコピーが各々、配列番号17及び配列番号18からなる群から選択される核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む、請求項29に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項31】
前記イントロンの前記1つ以上のコピーが各々、配列番号17及び配列番号18からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項29に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項32】
前記イントロンの前記1つ以上のコピーが、前記哺乳類デスミンプロモーターに対して3’に位置付けられる、請求項29~31のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項33】
前記哺乳類デスミンエンハンサー及び前記哺乳類MCKエンハンサーが、前記哺乳類デスミンプロモーターに対して5’に位置付けられる、先行請求項のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項34】
前記哺乳類MCKエンハンサーが、前記哺乳類デスミンエンハンサーに対して5’に位置付けられる、請求項33に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項35】
導入遺伝子を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項36】
前記導入遺伝子が、前記哺乳類デスミンプロモーターの制御下にある、請求項35に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項37】
前記導入遺伝子が、前記哺乳類デスミンプロモーターの3’に位置付けられる、請求項35に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項38】
前記筋特異的調節核酸配列が、1つの哺乳類デスミンエンハンサーのみを含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項39】
前記筋特異的調節核酸配列が、2つ以上の哺乳類デスミンエンハンサーを含まない、請求項1~37のいずれか一項に記載の組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項40】
配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号55、配列番号56、配列番号57、及び配列番号58からなる群から選択される核酸配列と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含む、組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項41】
配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号55、配列番号56、配列番号57、及び配列番号58からなる群から選択される核酸配列を有する核酸配列を含む、組換え筋特異的調節核酸配列。
【請求項42】
先行請求項のいずれか一項に記載の筋特異的調節核酸配列を含む、ベクター。
【請求項43】
前記ベクターが、プラスミド、ミニサークル、Doggybone、MIDGE、ナノプラスミド、及びウイルスベクターからなる群から選択される、請求項42に記載のベクター。
【請求項44】
前記ベクターが、エピソーム非複製発現ベクター、エピソーム複製発現ベクター、トランスポゾン組み込みベクター、ウイルスベクター組み込みベクター、及び同一性指向修復組み込みベクターからなる群から選択される、請求項42に記載のベクター。
【請求項45】
前記ベクターが、ウイルスベクターであり、前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、並びにレンチウイルス及びレトロウイルスからなる群から選択される、請求項42に記載のベクター。
【請求項46】
前記ベクターが、ナノプラスミドであり、前記ナノプラスミドが、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項42に記載のベクター。
【請求項47】
請求項1~41のいずれか一項に記載の筋特異的調節核酸配列又は請求項42~46のいずれか一項に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項48】
真核筋細胞又は筋細胞において導入遺伝子を発現させるための方法であって、
真核筋細胞又は筋細胞を、請求項42~46のいずれか一項に記載のベクターでトランスフェクトすること、を含む、方法。
【請求項49】
細胞において導入遺伝子を含むベクターを複製するための方法であって、
宿主細胞を、請求項42~46のいずれか一項に記載のベクターで形質転換することと、
前記ベクターを複製するのに十分な条件下で前記細胞をインキュベートすることと、を含む、方法。
【請求項50】
ベクターであって、
i)5’及び3’末端を有する、請求項35~37のいずれか一項に記載の筋特異的調節核酸配列を含む真核生物領域配列と、
ii)前記真核生物領域配列の前記5’及び3’末端を連結し、細菌複製起点及びRNA選択可能マーカーを含む、500未満の長さの塩基対を有するスペーサー領域と、を含む、ベクター。
【請求項51】
前記筋特異的調節核酸配列が、1つの哺乳類デスミンエンハンサーのみを含む、請求項50に記載のベクター。
【請求項52】
前記筋特異的調節核酸配列が、2つ以上の哺乳類デスミンエンハンサーを含まない、請求項50に記載のベクター。
【請求項53】
前記筋特異的調節核酸配列が、3つの哺乳類MCKエンハンサーを含む、請求項50~52のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項54】
前記細菌複製起点が、R6K細菌複製起点である、請求項50~53のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項55】
前記細菌複製起点が、配列番号19~23のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、請求項54に記載のベクター。
【請求項56】
前記RNA選択可能マーカーが、配列番号24又は配列番号26と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、請求項50~55のいずれか一項に記載のベクター。
【請求項57】
筋特異的ベクターを産生するための方法であって、
非筋特異的プロモーター又は非デスミンプロモーターを含むベクターを提供することと、
前記ベクターを改変して、前記非筋特異的プロモーター又は非デスミンプロモーターを、請求項1~41のいずれか一項に記載の筋特異的調節核酸配列で置き換えることと、を含む、方法。
【請求項58】
前記ベクターが、ナノプラスミドである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記細菌複製起点が、R6K細菌複製起点である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記細菌複製起点が、配列番号19~23のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記RNA選択可能マーカーが、配列番号24又は配列番号26と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、請求項57~60のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2020年9月11日に出願された米国仮特許出願第63/077,339号に対する優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2021年9月10日に作成された当該ASCIIコピーは、85535-328408_SL.txtという名前が付けられ、サイズは48,920バイトである。
【背景技術】
【0003】
CMV、EF1、又はCAGなどのユビキタスプロモーターは、遺伝子産物の標的発現を可能にしない。これは、非標的組織における発現と関連した有害な副作用をもたらす可能性がある。例えば、抗原提示細胞における発現は、導入遺伝子に対して不都合な免疫応答をもたらし得る(Weeratna RD,Wu T,Efler SM,Zhange L,Davis HL,2001 Gene Ther.8:1872)。
【0004】
筋組織では、筋特異的発現ベクターの使用によってオフターゲット発現問題を回避することができるが、筋特異的プロモーターを含有するベクターからの導入遺伝子発現レベルが低いことで、これらのベクターの細胞及び遺伝子治療の適用が制限される。
【0005】
したがって、細胞及び遺伝子治療のための筋特異的発現ベクターに組み込まれ得る筋特異的プロモーター及びエンハンサーエレメントが必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、筋特異的調節核酸配列を使用する、筋細胞における導入遺伝子の発現のための組成物及び方法を提供する。
【0007】
本発明の主な目的は、筋細胞及び筋組織における高レベルの導入遺伝子発現のために最適化された発現ベクターを提供することである。
【0008】
本発明の主な目的は、筋細胞及び筋組織における持続的な導入遺伝子発現のために最適化された発現ベクターを提供することである。
【0009】
本発明の主な目的は、非筋組織における低い導入遺伝子発現のために最適化された発現ベクターを提供することである。
【0010】
本発明の主な目的は、低いCpG対GpGジヌクレオチド比のために最適化された発現ベクターを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、多種多様な非ウイルス及びウイルス発現ベクター型を使用して、筋細胞及び筋組織における高レベルでかつ持続的な発現レベルを指示し得るエンハンサー/プロモーターの組み合わせを提供することである。
【0012】
これらの目的は、デスミン筋特異的プロモーター及びデスミン筋特異的エンハンサー並びにMCK筋特異的エンハンサーを組み合わせて、筋細胞及び筋組織における導入遺伝子発現を駆動するハイブリッドプロモーターを提供することによって達成される。得られるハイブリッドプロモーターは、筋細胞及び遺伝子療法に有用である。本発明の様々な筋特異的ハイブリッドプロモーターは、限定としてではなく例として、エピソーム又は組み込みプラスミド、ナノプラスミド、ミニサークル、Doggybone、MIDGE、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、及びレンチウイルスベクターからの、培養細胞又は組織における筋特異的導入遺伝子発現のために使用されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、作動可能に連結されている、哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上の哺乳類筋クレアチンキナーゼ(MCK)エンハンサーを含む、筋特異的調節核酸配列が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示の筋特異的調節核酸配列を含むベクターが提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示のベクターを含む宿主細胞が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態では、真核細胞において導入遺伝子を発現させるための方法は、真核細胞を本開示のベクターでトランスフェクトする工程を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示のベクターを複製するための方法であって、宿主細胞を本開示のベクターで形質転換し、ベクターを複製するのに十分な条件下で細胞をインキュベートする工程を含む、方法が提供される。
【0018】
本発明及びその利点のより完全な理解のために、以下の説明を添付の図面と併せて参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】NTC8685-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1B】NTC8685-3xMCKenh-CMV-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1C】NTC8685-3xMCKenh-MCAT-CMV-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1D】NTC8685-C5-C12-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1E】NTC8685-3xMCKenh-C5-C12-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1F】NTC8685-3xMCKenh-MCAT-C5-C12-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1G】NTC8685-3xMCKenh-MCK-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1H】NTC8685-3xMCKenh-MCAT-MCK-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1I】NTC8685-デスミン-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図1J】pVAX1-EGFPナノプラスミドのベクターマップを示す。
図2A】HEK293細胞におけるEGFP発現結果を示す。
図2B】C5-C12筋管におけるEGFP発現結果を示す。
図3A】筋特異的調節核酸配列が配列番号35を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号27を有するベクターマップを示す。
図3B】筋特異的調節核酸配列が配列番号36を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号27を有するベクターマップを示す。
図3C】筋特異的調節核酸配列が配列番号35を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号28を有するベクターマップを示す。
図3D】筋特異的調節核酸配列が配列番号36を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号28を有するベクターマップを示す。
図4A】筋特異的調節核酸配列が配列番号35を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号28を有するベクターマップを示す。
図4B】筋特異的調節核酸配列が配列番号35を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号28を有するベクターマップを示す。
図4C】筋特異的調節核酸配列が配列番号36を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号28を有するベクターマップを示す。
図4D】重鎖について第1の筋特異的調節核酸配列が配列番号35を有し、軽鎖について第2の筋特異的調節核酸配列が配列番号36を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号28を有する、二重プロモーターベクターマップを示す。
図5A】筋特異的調節核酸配列が配列番号56を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号27を有するベクターマップを示す。
図5B】筋特異的調節核酸配列が配列番号56を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号28を有するベクターマップを示す。
図5C】筋特異的調節核酸配列が配列番号57を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号28を有するベクターマップを示す。
図5D】重鎖について筋特異的調節核酸配列が配列番号56を有し、軽鎖について筋特異的調節核酸配列が配列番号58を有し、ナノプラスミド骨格が配列番号27を有する、二重プロモーターベクターマップを示す。
図6】ルシフェラーゼ発現によって決定されるトランスフェクション効率を示す。骨格筋におけるNanotaxi(登録商標)ルシフェラーゼプラスミドDNA投与は、高いルシフェラーゼ発現をもたらす。スイスマウスに、Nanotaxi(登録商標)で製剤化された異なるプラスミドDNA10μgをD0で筋肉内注射した。7日目に、注射した筋肉を採取し、それらのルシフェラーゼ発現について分析した。記号は、注射した個々の筋肉を表し、水平棒は、両側に注射した5匹のマウス群の平均及びSEMを表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、筋特異的調節核酸配列を使用する、筋細胞における導入遺伝子の発現のための組成物及び方法と、当該筋特異的調節核酸配列を含有するベクターを複製するための方法と、を提供する。
【0021】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明白に別途指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0022】
特許請求の範囲及び本開示における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すよう明示的に示されない限り、又は代替物が互いに排他的である場合を除き、「及び/又は」を意味するように使用される。
【0023】
「約」という用語の使用は、数値とともに使用される場合、+/-10%を含むことが意図される。限定としてではなく例として、ヌクレオチドの数が約200と特定される場合、これは、180~220(プラス又はマイナス10%)を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、「cmv」又は「CMV」は、サイトメガロウイルスを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルスベクター」は、分裂細胞及び非分裂細胞に感染し得る組み込みウイルスベクターを指す。レンチウイルストランスファープラスミドとも呼ばれる。プラスミドは、レンチウイルスLTR隣接発現ユニットをコードする。トランスファープラスミドは、ウイルス粒子を作製するために必要なレンチウイルスエンベロープ及びパッケージングプラスミドとともに、産生細胞にトランスフェクトされる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルスエンベロープベクター」は、エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドを指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルスパッケージングベクター」は、レンチウイルストランスファーベクターをパッケージングするのに必要なgag、pol、及びRev遺伝子機能を発現させる1つ又は2つのプラスミドを指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ミニサークル」は、インビボ又はインビトロ部位特異的組換え又はインビトロ制限消化/ライゲーションによって細菌領域が親プラスミドから除去された共有結合閉環状プラスミド誘導体を指す。ミニサークルベクターは、細菌細胞では複製能力がない。
【0029】
本明細書で使用される場合、「ナノプラスミド(商標)ベクター」又は「ナノプラスミド」は、RNA選択可能マーカーをR6K、ColE2、又はColE2-関連複製起点などの細菌複製起点と組み合わせるベクターを指す。例えば、ナノプラスミドベクターは、限定としてではなく例として、NTC9385C、NTC9685C、NTC9385R、NTC9685Rベクター、及びWO2014/035457に記載の改変型を含み得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、「NTC8シリーズ」は、kanRなどの抗生物質耐性マーカーの代わりに短いRNA(RNA-OUT)選択可能マーカーを含有する、抗生物質フリーのpUC起点ベクターである、NTC8385、NTC8485及びNTC8685プラスミドなどのベクターを指す。これらのRNA-OUTベースの抗生物質フリーベクターの作成及び適用は、WO2008/153733に記載されている。
【0031】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルスベクター」は、分裂細胞に感染し得る組み込みウイルスベクターを指す。トランスファープラスミドとも呼ばれる。プラスミドは、レトロウイルスLTR隣接発現ユニットをコードする。トランスファープラスミドは、ウイルス粒子を作製するために必要なエンベロープ及びパッケージングプラスミドとともに、産生細胞にトランスフェクトされる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルスエンベロープベクター」は、エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドを指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルスパッケージングベクター」は、レトロウイルストランスファーベクターをパッケージングするために必要なレトロウイルスgag及びpol遺伝子をコードするプラスミドを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」又は「形質転換」は、当該技術分野において既知であり、参照により本明細書に含まれるように、核酸を細胞に送達するための方法[例えば、ポリ(ラクチド-コグリコライド)(PLGA)、ISCOM、リポソーム、ニオソーム、ビロソーム、ブロックコポリマー、プルロニック(登録商標)ブロックコポリマー、キトサン、及び他の生分解性ポリマー、マイクロ粒子、マイクロスフィア、リン酸カルシウムナノ粒子、ナノ粒子、ナノカプセル、ナノスフィア、ポロキサミンナノスフィア、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、圧電透過化、ソノポレーション、イオントフォレシス、超音波、SQZ高速細胞変形媒介膜破壊、コロナプラズマ、プラズマ促進送達、組織耐性プラズマ、レーザーマイクロポレーション、衝撃波エネルギー、磁場、非接触磁気透過化、遺伝子銃、マイクロニードル、マイクロダーマブレイジョン、流体力学的送達、高圧尾静脈注射など]を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」は、標的生物における発現のためにベクター内にクローニングされる目的の遺伝子を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、ウイルス(例えば、アルファウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルスなど)及び非ウイルス(例えば、プラスミド、MIDGE、転写活性PCR断片、ミニサークル、バクテリオファージ、ナノプラスミド(商標)など)ベクターを含む、遺伝子送達ビヒクルを指す。これらは、当該技術分野において周知であり、参照により本明細書に含まれる。
【0037】
本明細書で言及される「Doggybone」は、酵素的に産生されたキャップされた線形ベクターである、最小限の閉鎖線形DNA構築物である。
【0038】
本明細書で言及される「MIDGE」は、小さい線形の共有結合的に閉鎖されたダンベル形状の分子である、最小限の、免疫学的に定義された遺伝子発現ベクターである。
【0039】
配列同一性パーセントを決定するために、本開示において理解されるように、クエリー配列(例えば、核酸配列)は、当該技術分野において周知である任意の好適な配列アラインメントプログラム、例えば、核酸配列のアラインメントがそれらの全長にわたって行われることを可能にするコンピュータプログラムClustalW(バージョン1.83、デフォルトパラメータ)を使用して、1つ以上のサブジェクト配列にアラインメントされる(グローバルアラインメント)。Chema et al.,2003 Nucleic Acids Res.,31:3497-500。好ましい方法では、配列アラインメントプログラム(例えば、ClustalW)は、クエリー配列と1つ以上のサブジェクト配列との間の最良の一致を計算し、同一性、類似性、及び差異を決定することができるようにそれらをアラインメントする。1つ以上のヌクレオチドのギャップは、配列アラインメントを最大化するために、クエリー配列、サブジェクト配列、又はその両方に挿入することができる。
【0040】
筋特異的調節核酸配列
いくつかの実施形態では、作動可能に連結されている、哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上の哺乳類筋クレアチンキナーゼ(MCK)エンハンサーを含む、筋特異的調節核酸配列が提供される。
【0041】
前述の実施形態のいずれかでは、哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上のMCKエンハンサーは、ヒト又はマウスであり得る。哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上のMCKエンハンサーは、これらの核酸配列が既知の方法及び検索ツールを使用して決定され得るように、任意の哺乳類種に由来し得ることを理解されたい。限定としてではなく例として、哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上のMCKエンハンサーは、ヒト、マウス、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、又は霊長類源に由来し得る。哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーの各々の起点が、異なるか又は同じであり得ることを更に理解されたい。デスミンエンハンサー又は複数の哺乳類MCKエンハンサーが筋特異的調節核酸配列に含まれる場合、複数のエレメントの各々が、同じ又は異なる起点からであり得ることを更に理解されたい。限定としてではなく例として、筋特異的調節核酸配列は、全てがヒト若しくはマウスであるか、又はヒトデスミンプロモーター、ヒトデスミンエンハンサー、及び1つ以上のマウスMCKエンハンサーなどのヒト及びマウスエレメントの任意の組み合わせである、哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーを含み得る。好ましい実施形態では、筋特異的調節核酸配列は、マウスデスミンエンハンサー及びマウスデスミンプロモーターと組み合わせた1つ以上のマウスMCKエンハンサー、又はヒトデスミンエンハンサー及びヒトデスミンプロモーターと組み合わせた1つ以上のマウスMCKエンハンサーを含み得、より好ましくは、ヒトデスミンエンハンサー及びヒトデスミンプロモーターと組み合わせたマウスMCKエンハンサーの3つのコピーを含み得る。哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーは、全長であり得るか、又は切断され得るが、但し、切断がエレメントの機能の少なくとも一部分を維持し、例えば切断された哺乳類デスミンプロモーターが、下流導入遺伝子の発現によってアッセイされるときにプロモーター活性を依然として有することを更に理解されたい。
【0042】
前述の実施形態のいずれかでは、哺乳類デスミンプロモーターがヒトである場合、哺乳類デスミンプロモーターは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のいずれかと80%以上の同一性を有する核酸配列を含み得る。限定としてではなく例として、哺乳類デスミンプロモーターは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、哺乳類デスミンプロモーターは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のいずれかの配列を含む。
【0043】
前述の実施形態のいずれかでは、哺乳類デスミンプロモーターがマウスである場合、哺乳類デスミンプロモーターは、配列番号4及び配列番号5のいずれかと80%以上の同一性を有する核酸配列を含み得る。限定としてではなく例として、哺乳類デスミンプロモーターは、配列番号4及び配列番号5のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、哺乳類デスミンプロモーターは、配列番号4又は配列番号5の配列を含む。
【0044】
前述の実施形態のいずれかでは、哺乳類デスミンプロモーターは、INR配列を含み得る。限定としてではなく例として、イニシエーターエレメントを含むINR配列は、配列番号59の核酸配列であり得る。限定としてではなく更なる例として、INR配列は、介在配列によって分離された核酸配列tataaaa及び核酸配列yyanwyyを含み得、任意選択的に、yyanwyyの下流にある下流配列を含み得る。イニシエーターエレメントが、例として、tcagtccであり得るyyanwyyのコンセンサス配列を含み得ることを理解されたい。限定としてではなくまた更なる例として、介在配列は、長さが約20~約25ヌクレオチド、例えば、約20、21、22、23、24、又は25ヌクレオチドであり得る。限定としてではなくまた更なる例として、下流配列は、任意の好適な長さを有し得る。
【0045】
前述の実施形態のいずれかでは、筋特異的調節核酸配列は、2つ以上の哺乳類デスミンエンハンサーを含み得る。例として、筋特異的調節核酸配列は、1、2、3、4、5つ以上の哺乳類デスミンエンハンサー配列を含み得る。いくつかの実施形態では、筋特異的調節核酸配列は、1つの哺乳類デスミンエンハンサーのみを含み、すなわち、筋特異的調節核酸配列は、2つ以上の哺乳類デスミンエンハンサーを含まない。
【0046】
前述の実施形態のいずれかでは、哺乳類デスミンエンハンサーは、配列番号3又は配列番号6と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含み得る。限定としてではなく例として、哺乳類デスミンエンハンサーは、配列番号3又は配列番号6と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、哺乳類デスミンエンハンサーは、配列番号3の配列を含む。いくつかの実施形態では、哺乳類デスミンエンハンサーは、配列番号6の配列を含む。
【0047】
前述の実施形態のいずれかでは、筋特異的調節核酸配列は、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーを含み得る。限定としてではなく例として、筋特異的調節核酸配列は、2つ以上の哺乳類MCKエンハンサー、1~3つの哺乳類MCKエンハンサー、1、2、3、4、5つ以上の哺乳類MCKエンハンサーを含み得る。1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが、連結配列によって分離され得るか、又は例えば、デスミンエンハンサー若しくはデスミンプロモーターによって、又は導入遺伝子によって、2つ以上存在する場合にその間に他のエレメントを有し得ることを理解されたい。限定としてではなく例として、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーは、1000、900、800、700、600、500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0ヌクレオチドによって分離され得る。1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーが、哺乳類デスミンプロモーター又は哺乳類デスミンエンハンサーによって分離され得ることを更に理解されたい。
【0048】
前述の実施形態のいずれかでは、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーの各々は、配列番号11(マウスMCKエンハンサー)又は配列番号12(ヒトMCKエンハンサー)と少なくとも80%の同一性を有する核酸配列を含み得る。限定としてではなく例として、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーは、配列番号11又は配列番号12と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーは各々、配列番号11又は配列番号12の配列を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーの各々は、限定としてではなく例として、配列番号1のMCK CK7エンハンサーなどのMCK CK7エンハンサーであり得る。限定としてではなく更なる例として、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有し得る。
【0049】
前述の実施形態のいずれかでは、筋特異的調節核酸配列は、1つ以上の追加のエンハンサーを更に含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加のエンハンサーは各々、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16のいずれかと80%以上の同一性を有する核酸配列を含む。限定としてではなく例として、1つ以上の追加のエンハンサーの各々は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加のエンハンサーは各々、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16のいずれかの配列を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、筋特異的調節核酸配列は、その唯一のエンハンサーとして、哺乳類デスミンエンハンサー及び1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーを含む。いくつかの実施形態では、筋特異的調節核酸配列は、1つ以上の追加のエンハンサーを含まない。いくつかの実施形態では、筋特異的調節核酸配列は、脊椎動物トロポニンI IRE(FIRE)エンハンサーを含まない。
【0051】
前述の実施形態のいずれかでは、筋特異的調節核酸配列は、イントロンを更に含み得る。前述の実施形態のいずれかでは、イントロンは、哺乳類デスミンプロモーターに対して3’に位置付けられ得る。任意の好適なイントロンを使用することができる。前述の実施形態のいずれかでは、イントロンは、配列番号17又は配列番号18と80%以上の同一性を有する核酸配列を含み得る。限定としてではなく例として、イントロンは、配列番号17又は配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有し得る。いくつかの実施形態では、イントロンは、配列番号17又は配列番号18の配列を含む。前述の実施形態のいずれかでは、イントロンは、約100~約10,000ヌクレオチドのサイズを有し得る。限定としてではなく例として、イントロンは、約100~約10,000ヌクレオチド、約100~約9,000ヌクレオチド、約100~約8,000ヌクレオチド、約100~約7,000ヌクレオチド、約100~約6,000ヌクレオチド、約100~約5,000ヌクレオチド、約100~約4,000ヌクレオチド、約100~約3,000ヌクレオチド、約100~約2,000ヌクレオチド、約100~約1,000ヌクレオチド、約100~約500ヌクレオチド、約100~約400ヌクレオチド、約100~約300ヌクレオチド、約100~約200ヌクレオチド、約200~約10,000ヌクレオチド、約200~約9,000ヌクレオチド、約200~約8,000ヌクレオチド、約200~約7,000ヌクレオチド、約200~約6,000ヌクレオチド、約200~約5,000ヌクレオチド、約200~約4,000ヌクレオチド、約200~約3,000ヌクレオチド、約200~約2,000ヌクレオチド、約200~約1,000ヌクレオチド、約200~約500ヌクレオチド、約200~約400ヌクレオチド、約200~約300ヌクレオチド、約300~約10,000ヌクレオチド、約300~約9,000ヌクレオチド、約300~約8,000ヌクレオチド、約300~約7,000ヌクレオチド、約300~約6,000ヌクレオチド、約300~約5,000ヌクレオチド、約300~約4,000ヌクレオチド、約300~約3,000ヌクレオチド、約300~約2,000ヌクレオチド、約300~約1,000ヌクレオチド、約300~約500ヌクレオチド、約300~約400ヌクレオチド、約400~約10,000ヌクレオチド、約400~約9,000ヌクレオチド、約400~約8,000ヌクレオチド、約400~約7,000ヌクレオチド、約400~約6,000ヌクレオチド、約400~約5,000ヌクレオチド、約400~約4,000ヌクレオチド、約400~約3,000ヌクレオチド、約400~約2,000ヌクレオチド、約400~約1,000ヌクレオチド、約400~約500ヌクレオチド、約500~約10,000ヌクレオチド、約500~約9,000ヌクレオチド、約500~約8,000ヌクレオチド、約500~約7,000ヌクレオチド、約500~約6,000ヌクレオチド、約500~約5,000ヌクレオチド、約500~約4,000ヌクレオチド、約500~約3,000ヌクレオチド、約500~約2,000ヌクレオチド、約500~約1,000ヌクレオチド、約1,000~約10,000ヌクレオチド、約1,000~約9,000ヌクレオチド、約1,000~約8,000ヌクレオチド、約1,000~約7,000ヌクレオチド、約1,000~約6,000ヌクレオチド、約1,000~約5,000ヌクレオチド、約1,000~約4,000ヌクレオチド、約1,000~約3,000ヌクレオチド、約1,000~約2,000ヌクレオチド、約2,000~約10,000ヌクレオチド、約2,000~約9,000ヌクレオチド、約2,000~約8,000ヌクレオチド、約2,000~約7,000ヌクレオチド、約2,000~約6,000ヌクレオチド、約2,000~約5,000ヌクレオチド、約2,000~約4,000ヌクレオチド、約2,000~約3,000ヌクレオチド、約3,000~約10,000ヌクレオチド、約3,000~約9,000ヌクレオチド、約3,000~約8,000ヌクレオチド、約3,000~約7,000ヌクレオチド、約3,000~約6,000ヌクレオチド、約3,000~約5,000ヌクレオチド、約3,000~約4,000ヌクレオチド、約4,000~約10,000ヌクレオチド、約4,000~約9,000ヌクレオチド、約4,000~約8,000ヌクレオチド、約4,000~約7,000ヌクレオチド、約4,000~約6,000ヌクレオチド、約4,000~約5,000ヌクレオチド、約5,000~約10,000ヌクレオチド、約5,000~約9,000ヌクレオチド、約5,000~約8,000ヌクレオチド、約5,000~約7,000ヌクレオチド、約5,000~約6,000ヌクレオチド、約6,000~約10,000ヌクレオチド、約6,000~約9,000ヌクレオチド、約6,000~約8,000ヌクレオチド、約6,000~約7,000ヌクレオチド、約7,000~約10,000ヌクレオチド、約7,000~約9,000ヌクレオチド、約7,000~約8,000ヌクレオチド、約8,000~約10,000ヌクレオチド、約8,000~約9,000ヌクレオチド、約9,000~約10,000ヌクレオチド、又は約100、200、300、400、500、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、若しくは10,000ヌクレオチドのサイズを有し得る。
【0052】
前述の実施形態のいずれかでは、筋特異的調節核酸配列は、導入遺伝子を更に含み得る。前述の実施形態のいずれかでは、導入遺伝子は、哺乳類デスミンプロモーターに対して3’に位置付けられ得る。導入遺伝子は、哺乳類デスミンプロモーターの制御下にあり得る。導入遺伝子は、任意の好適な導入遺伝子であり得、例えば、導入遺伝子は、VEGFなどの治療導入遺伝子、IX因子などの遺伝子治療置換遺伝子、糖尿病用インスリンなどの逆ワクチン抗原、又はアバスチンなどの治療抗体であり得る。前述の実施形態のいずれかでは、哺乳類デスミンプロモーターは、哺乳類デスミンプロモーターと導入遺伝子との間の任意のイントロンを含まない約500以下のヌクレオチドによって導入遺伝子から分離され得る。限定としてではなく例として、哺乳類デスミンプロモーターは、約0~約1000ヌクレオチド、約1~約1000ヌクレオチド、約1~約900ヌクレオチド、約1~約800ヌクレオチド、約1~約700ヌクレオチド、約1~約600ヌクレオチド、約1~約500ヌクレオチド、約1~約400ヌクレオチド、約1~約300ヌクレオチド、約1~約200ヌクレオチド、約1~約100ヌクレオチド、約1~約90ヌクレオチド、約1~約80ヌクレオチド、約1~約70ヌクレオチド、約1~約60ヌクレオチド、約1~約50ヌクレオチド、約1~約40ヌクレオチド、約1~約30ヌクレオチド、約1~約20ヌクレオチド、約1~約10ヌクレオチド、約10~約1000ヌクレオチド、約10~約900ヌクレオチド、約10~約800ヌクレオチド、約10~約700ヌクレオチド、約10~約600ヌクレオチド、約10~約500ヌクレオチド、約10~約400ヌクレオチド、約10~約300ヌクレオチド、約10~約200ヌクレオチド、約10~約100ヌクレオチド、約100~約1000ヌクレオチド、約100~約500ヌクレオチド、約200~約1000ヌクレオチド、約200~約500ヌクレオチド、約500~約1000ヌクレオチド、又は約1000、900、800、700、600、500、400、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、若しくは0ヌクレオチドによって導入遺伝子から分離され得る。
【0053】
前述の実施形態のいずれかでは、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーは、哺乳類デスミンエンハンサーに対して5’に位置付けられ得、哺乳類デスミンエンハンサーは、哺乳類デスミンプロモーターに対して5’に位置付けられ得る。前述の実施形態のいずれかでは、1つ以上のMCKエンハンサーに関して既に説明されているように、エレメントが作動可能に連結されている限り、筋特異的調節核酸配列のエレメント間に連結配列が存在し得ることを理解されたい。限定としてではなく例として、筋特異的調節核酸配列の1つ又はエレメントである、哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、及び1つ以上のMCKエンハンサーは、約0~約1000ヌクレオチド、約1~約1000ヌクレオチド、約1~約900ヌクレオチド、約1~約800ヌクレオチド、約1~約700ヌクレオチド、約1~約600ヌクレオチド、約1~約500ヌクレオチド、約1~約400ヌクレオチド、約1~約300ヌクレオチド、約1~約200ヌクレオチド、約1~約100ヌクレオチド、約1~約90ヌクレオチド、約1~約80ヌクレオチド、約1~約70ヌクレオチド、約1~約60ヌクレオチド、約1~約50ヌクレオチド、約1~約40ヌクレオチド、約1~約30ヌクレオチド、約1~約20ヌクレオチド、約1~約10ヌクレオチド、約10~約1000ヌクレオチド、約10~約900ヌクレオチド、約10~約800ヌクレオチド、約10~約700ヌクレオチド、約10~約600ヌクレオチド、約10~約500ヌクレオチド、約10~約400ヌクレオチド、約10~約300ヌクレオチド、約10~約200ヌクレオチド、約10~約100ヌクレオチド、約100~約1000ヌクレオチド、約100~約500ヌクレオチド、約200~約1000ヌクレオチド、約200~約500ヌクレオチド、約500~約1000ヌクレオチド、又は約1000、900、800、700、600、500、400、300、250、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、若しくは0ヌクレオチドによって分離され得る。
【0054】
筋特異的調節核酸配列の好ましい配列は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号55、配列番号56、配列番号57、及び配列番号58を含み得る。限定としてではなく例として、筋特異的調節核酸配列は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号55、配列番号56、配列番号57、及び配列番号58のいずれかと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する核酸配列を含み得る。
【0055】
これらの好ましい配列の詳細を以下に提供する。
【0056】
MCK CK7エンハンサー、hデスミンエンハンサー、hデスミンプロモーター、MVMイントロン(配列番号31)。
【0057】
MCKCK7エンハンサー、hデスミンエンハンサー、hデスミンINRプロモーター、MVMイントロン(配列番号32)。
【0058】
MCK CK7エンハンサー、hデスミンエンハンサー、hデスミンSプロモーター、MVMイントロン(配列番号33)。
【0059】
MCK CK7エンハンサー、hデスミンエンハンサー、hデスミンS INRプロモーター、MVMイントロン(配列番号34)。
【0060】
MCK CK7エンハンサー、hデスミンエンハンサー、hデスミンINRプロモーター、pCIイントロン(図3A図3C図4A図4B、及び図4D、配列番号35)
【0061】
MCK CK7エンハンサー、hデスミンエンハンサー、hデスミンS INRプロモーター、pCIイントロン(図3B図3D図4C、及び図4D、配列番号36)。
【0062】
MCK CK7エンハンサー、mデスミンエンハンサー、mデスミンプロモーター、MVMイントロン(配列番号55)。
【0063】
MCK CK7エンハンサー、mデスミンエンハンサー、mデスミンINRプロモーター、MVMイントロン(図5A図5B、及び図5D、配列番号56)。
【0064】
MCK CK7エンハンサー、mデスミンエンハンサー、mデスミンINRプロモーター、pCIイントロン(図5C、(配列番号57)。
【0065】
MCK CK7エンハンサー、mデスミンエンハンサー、mデスミンプロモーター、pCIイントロン(図5D、配列番号58)。
【0066】
好ましい構成は、限定としてではなく例として、以下を含み得る。
【0067】
5’-1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー、哺乳類デスミンエンハンサー、哺乳類デスミンプロモーター-3’。
【0068】
筋特異的調節核酸配列の他の構成は、限定としてではなく例として、以下を含み得る。
【0069】
1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー、哺乳類デスミンエンハンサー、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー、哺乳類デスミンプロモーター。
【0070】
哺乳類デスミンエンハンサー、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー、哺乳類デスミンプロモーター。
【0071】
哺乳類デスミンプロモーター、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー、哺乳類デスミンエンハンサー。
【0072】
哺乳類デスミンプロモーター、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー、哺乳類デスミンエンハンサー、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー。
【0073】
哺乳類デスミンプロモーター、哺乳類デスミンエンハンサー、1つ以上の哺乳類MCKエンハンサー。
【0074】
前述の他の構成のいずれかでは、イントロンは、筋特異的調節核酸配列に挿入され得る。同様に、前述の構成のいずれかでは、導入遺伝子は、哺乳類デスミンプロモーターから下流に、場合により、追加のエレメントの間に、又はデスミンプロモーターと追加のエレメントとの間に位置付けられ得る。また、複数の哺乳類デスミンエンハンサーが存在し得ること、並びに哺乳類デスミンエンハンサー及び1つ以上の哺乳類MCKエンハンサーの任意の組み合わせが、エレメントの順序に関して作製され得ることを理解されたい。
【0075】
ベクター
いくつかの実施形態では、前述の実施形態のいずれかの筋特異的調節核酸配列を含むベクターが提供される。
【0076】
ベクターは、細胞を筋特異的調節核酸配列でトランスフェクトするための任意の好適なベクターであり得る。限定としてではなく例として、ベクターは、プラスミド、ミニサークル、Doggybone、MIDGE、ナノプラスミド、又はウイルスベクターであり得る。限定としてではなく更なる例として、ベクターは、エピソーム非複製発現ベクター、エピソーム複製発現ベクター、トランスポゾン組み込みベクター、ウイルス組み込みベクター、又は相同組換え修復ベクターであり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、ベクターがウイルスベクターである場合、ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、又はレトロウイルスであり得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、ベクターは、2つ以上の筋特異的調節核酸配列を含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、ベクターは、二重プロモーターベクターであり得る。
【0080】
ベクターがナノプラスミドである場合、ナノプラスミドが、5’及び3’末端を有する筋特異的調節核酸配列及び導入遺伝子を含み得る真核生物領域と、真核生物領域の5’及び3’末端を連結する500未満の塩基対のスペーサー領域とを含み、限定としてではなく例として、R6K又はColE2などの細菌複製起点及びRNA選択可能マーカーを含むことを理解されたい。非限定的な例示的なR6K起点は、配列番号19~23に提供され、例示的なRNA選択可能マーカーは、配列番号24及び26に提供される。細菌複製起点が配列番号19~23のいずれか1つのR6K起点である場合、細菌複製起点は、それぞれ、配列番号19~23のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有し得ることを理解されたい。RNA選択可能マーカーが配列番号24又は配列番号26のうちの1つである場合、RNA選択可能マーカーは、それぞれ、配列番号24又は26のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有し得ることを更に理解されたい。ナノプラスミドベクターはまた、国際特許出願公開第2014/077866号及び米国特許出願第2010/0184158号にも記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
いくつかの実施形態では、ベクターがナノプラスミドである場合、ベクターは、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び配列番号30のいずれかの配列を含み得る。配列番号27及び29は、NTC9385R骨格の6つ及び7つのR6K起点イテロンバージョンであり、配列番号28及び30は、NTC9385R(3xCpG)骨格の6つ及び7つのR6K起点イテロンバージョンである。
【0082】
例として導入遺伝子(EGFP)を含むこれらの好ましい配列を使用するナノプラスミドベクターマップが、図3A図3D及び図5A図5Dに示される。例としてモノクローナル抗体軽鎖(mAB LC)又は重鎖(mAB HC)又はLC及びHC導入遺伝子の両方を含むこれらの好ましい配列を使用するナノプラスミドベクターマップが、図4A図4D及び図5A図5Dに示される。これらのベクターは、受動免疫療法、例えば、ウイルス中和抗体のインビボ発現のために使用することができる(Bakker JM,Bleeker WK,Parren PWHI.2004.Mol Ther 10:1525;Tjelle TE,Corthay A,Lunde E,Sandlie I,Michaelsen TE,Mathiesen I,Bogen B.2004.Mol Ther 9:328;Hollevoet K,Declerck PJ.2017.J Transl Med 15:131)。抗体軽鎖及び重鎖は、異なるベクターで発現されてもよく、又は両方が二重プロモーターベクターで発現されてもよい。単一のベクターにおける好ましい筋プロモーターからのLC及びHC導入遺伝子の両方を発現させる例としての二重プロモーターベクターが、図4D及び図5Dに示される。
【0083】
いくつかの好ましい実施形態では、ベクターは、0.7未満のCpG対GpG比を有し得る。限定としてではなく例として、ベクターは、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35、又は0.3未満のCpG対GpG比を有し得る。限定としてではなく更なる例として、ベクターは、約0.3~約0.7、約0.3~約0.6、約0.4~約0.5、約0.25、約0.3、約0.35、約0.4、約0.5、約0.55、又は約0.6のCpG対GpG比を有し得る。
【0084】
前述の実施形態のいずれかでは、ベクターは、前述の実施形態のいずれかによる2つ以上の筋特異的調節核酸配列を含み得る。限定としてではなく例として、ベクターは、第1の導入遺伝子が第1の筋特異的調節核酸配列の哺乳類デスミンプロモーターの制御下にある第1の筋特異的調節核酸配列と、第2の導入遺伝子が第2の筋特異的調節核酸配列の哺乳類デスミンプロモーターの制御下にある第2の筋特異的調節核酸配列と、を含み得る。そのような実施形態では、第1及び第2の導入遺伝子は、同じ産物又は異なる産物をコードし得る。限定としてではなく更なる例として、第1の導入遺伝子は、抗体重鎖をコードし得、第2の導入遺伝子は、抗体軽鎖をコードし得る。
【0085】
前述の実施形態のいずれかでは、筋特異的調節核酸配列が、導入遺伝子の5’又は3’に位置付けられ得ることを理解されたい。限定としてではなく例として、ナノプラスミドにおいて、筋特異的調節核酸配列は、真核生物領域の5’末端又は真核生物領域の3’末端、例えば、それぞれ、導入遺伝子の5’又は3’に存在し得、これは、導入遺伝子が、スペーサー領域全体で依然として哺乳類デスミンプロモーターの制御下にあり得るからである。
【0086】
同様に、本開示の哺乳類MCKエンハンサー及びデスミンエンハンサーが、導入遺伝子の下流に位置付けられ得ることを理解されたい。
【0087】
宿主細胞
いくつかの実施形態では、本開示のベクターを含む、形質転換された宿主細胞が提供される。宿主細胞は、DH5αなどの任意の好適な細菌細胞であり得る。いくつかの実施形態では、本開示のベクターを含む、トランスフェクトされた真核細胞が提供される。限定としてではなく例として、真核細胞は、ヒト筋細胞、筋管、又は筋芽細胞であり得る。ヒト筋細胞が、限定としてではなく例として、骨格筋細胞、心筋細胞、及び横隔膜筋細胞であり得ることを理解されたい。
【0088】
本開示のベクターを産生するための方法
いくつかの実施形態では、筋特異的発現ベクターを調製するための方法は、非筋特異的プロモーター又は非デスミンプロモーターを含むベクターを提供することと、非筋特異的プロモーター又は非デスミンプロモーターが本開示の筋特異的調節核酸配列によって置き換えられるようにベクターを改変することと、を含み得る。ベクター及び筋特異的調節核酸配列は、本開示の前述の実施形態のいずれかに記載されるようなものであり得る。
【0089】
複製又は発現のための方法
いくつかの実施形態では、導入遺伝子を真核細胞において発現させるための方法は、真核細胞を本開示のベクターでトランスフェクトする工程を含む。トランスフェクションが、ベクターが導入遺伝子を真核細胞において発現させるのに十分な条件下で実行することができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、真核細胞は、筋細胞である。ヒト筋細胞が、限定としてではなく例として、骨格筋細胞、心筋細胞、又は横隔膜筋細胞であり得ることを理解されたい。限定としてではなく例として、宿主細胞を本開示のベクターで形質転換する方法は、対象に本開示のベクターを投与することを含み得る。限定としてではなく更なる例として、対象は、ヒトであり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示のベクターを複製するための方法であって、宿主細胞を本開示のベクターで形質転換し、ベクターを複製するのに十分な条件下で細胞をインキュベートする工程を含む、方法が提供される。宿主細胞をトランスフェクトするための方法、及びベクターを複製するのに十分な条件下で宿主細胞をインキュベートするための条件は、当業者に既知である。
【実施例
【0091】
以下の実施例では、本明細書に記載の様々な導入遺伝子、筋プロモーター、5’UTRイントロンなどを含有するベクターを作成するためのクローニングを、標準的な制限断片ライゲーション媒介クローニングを使用して構築した。全ての構築物は、制限消化及び配列決定によって正しいことが検証された。
【0092】
以下の実施例では、Williams 2019 VIRAL AND NON-VIRAL NANOPLASMID VECTORS WITH IMPROVED PRODUCTION国際特許出願公開第2019/183248号(参照により本明細書に組み込まれる)において作成及び開示されたR6K起点の「コピーカッター」宿主細胞株NTC1050811-HF及びNTC1050811-HFdcmにおいて、ナノプラスミドベクターをクローニング及び増殖させた。pVAX1ベクターを、DH5α細胞において増殖させた。
【0093】
以下の実施例では、振盪フラスコ産生用に独自のプラスミド+振盪培養培地を使用した。種培養をグリセロールストック又はコロニーから開始し、50μg/mLの抗生物質(kanR選択pVAX1プラスミド)又は6%のスクロース(RNA-OUT選択NTC8プラスミド及びNTC9ナノプラスミド)を含有するLB培地寒天プレートに画線した。プレートを30~32℃で増殖させ、細胞を培地中に再懸濁し、約2.5OD600の接種材料を、500mLのプラスミド+振盪フラスコに提供するために使用し、このフラスコには、kanR選択pVAX1プラスミドのための50μg/mLの抗生物質、又はRNA-OUTプラスミド及びナノプラスミドについての選択のための0.5%のスクロースを含有していた。フラスコを、示されるように増殖温度で飽和するように振盪しながら増殖させた。低エンドトキシンナノプラスミドDNAを、Nucleobond AX2,000又はAX10,000カラムを使用して精製した(Macherey Nagel、Duren,Germany)。
【0094】
表1は、当該技術分野において説明される様々な筋特異的プロモーターを要約する。ヒト若しくはマウスデスミン、又はマウス筋クレアチンキナーゼ(MCK)などの天然筋プロモーターは、CMVと比較して比較的低い発現レベルを有する。異なる筋特異的制御エレメントからのエンハンサー及びプロモーターを組み合わせる多くのハイブリッド筋プロモーターもまた、CMVと比較して比較的低い発現である。例えば、Souza及びArmentanoのWO2002/095006は、MCKエンハンサーをhデスミンプロモーターと組み合わせることによって、比較的弱いプロモーターを得た(表1;DC310及びDC311)。これは、MCKエンハンサー及びhデスミンプロモーターを組み合わせることによって強力な筋プロモーターを得ることの阻害要因になることを教示している。tMCK及びSk-CRM4-Desなどの他のプロモーター-エンハンサーの組み合わせは、CMVプロモーターを超える活性を有するハイブリッド筋プロモーターを作成することが示された(表1)。
【表1-1】
【表1-2】
【0095】
[実施例1:様々なプロモーター-エンハンサー構築物におけるEGFPレポーター発現]
NTC8685ベクター(pUC起点及び無抗生物質RNA-OUTスクロース選択カセットを含有する)の様々な天然及びハイブリッド筋プロモーターバージョン(Luke,JM,Vincent JM,Du,SX,Gerdemann U,Leen AM,Whalen RG,Hodgson CP Williams JA.2011.Gene Ther 18:334)を構築し、C2C12筋管、A549、及びHEK293細胞において発現レベルを決定した。
【0096】
試験した構築物のベクターマップを図1A図1Hに提供する。ベクターの特定のエレメントの個々の配列を、以下の表2に列挙し、説明する。
【表2】
【0097】
付着性HEK293(ヒト胚性腎臓)、A549(ヒト肺がん)、及びC2C12(ハツカネズミ、マウス筋)の細胞株を、American Type Culture Collection(Manassas,VA,USA)から入手した。細胞株を、10%ウシ胎仔血清を含有するダルベッコ変法イーグル培地/F12中で繁殖させ、Invitrogen(Carlsbad,CA,USA)試薬及び従来の方法を使用して分割した(0.25%トリプシン-EDTA)。
【0098】
トランスフェクションのために、細胞を24ウェルの組織培養皿上にプレーティングした。プラスミド及びナノプラスミドを、製造業者の指示(Invitrogen)に従って、Lipofectamine 2000を使用して細胞株にトランスフェクトした。HEK293及びA549細胞については、ウェル当たり0.1ugの試験プラスミドをトランスフェクションに使用し、トランスフェクションの2~3日後に発現を測定した。C2C12については、ウェル当たり0.4ugの試験プラスミドをトランスフェクションに使用し、その後、DMEM F12+2%ウマ血清(分化培地)を添加することによって、細胞を筋管に分化させた。分化した筋管構造における発現を、T=6~7日で測定した。
【0099】
EGFP決定のための全細胞溶解物を、細胞溶解緩衝液(CelLytic M,Sigma、St Louis,MO,USA)中に細胞を再懸濁させ、37℃で30分間インキュベートし、続いて-80℃での凍結融解サイクルによって細胞を溶解させることによって調製した。溶解した細胞を遠心分離によって清澄化し、上清をFLX800マイクロプレート蛍光リーダー(Bio-Tek、Winooski,VT,USA)によってEGFPについてアッセイした。
【0100】
HEK293細胞及びC5-C12筋芽細胞について得られたEGFP発現レベルを図2A図2Bに示す。
【0101】
図2A図2Bに示すように、C5-12ランダムアセンブル合成プロモーター(Li X,Eastman EM,Schwartz RJ,Draghia-Akli RD 1999.Nature Biotech 17:241)は、最も強力な筋プロモーターであり、続いてhデスミン、次いでmMCK(CK7エンハンサー配列番号1の3つのコピーのマウスMCKプロモーター-357-+7配列番号40との組み合わせ)であった。興味深いことに、CMV、C5-12、及びMCKプロモーターを改変して、代わりに筋特異的エンハンサーエレメントを添加することによって活性が改善されたハイブリッドプロモーターを作成する試みで、プロモーターの強度が低減した。CMV又はC5-12プロモーターの上流の配列番号1のCK7 MCKエンハンサーの3つコピーを添加することで、筋肉発現が劇的に低減した。同様に、配列番号1のCK7 MCKエンハンサーとC5-12及びMCKプロモーターとの間で、M-CAT(5’CATTCCT-3’TEF-1結合部位を含有する筋肉-CATモチーフ;Li et al、上記参照、1999)(配列番号46)の2つのコピー(配列番号47)を添加することで、筋特異的発現が更に低減した。これは、MCKエンハンサーをhデスミンプロモーターと組み合わせることによって比較的弱いプロモーターを得たSouza及びArmentano、WO2002/095006の教示と一致する。まとめると、これらの結果によって、異種プロモーターの上流でクローニングされたときに、CK7 MCKエンハンサー及びM-CATモチーフが筋特異的発現を減少させることが示唆される。これと一致して、MCKエンハンサーを使用する表1の全ての強力なプロモーターは、MCKプロモーターの上流にそれらを組み込む。
【0102】
tMCK(Wang B,Li J,Fu FH,Chen C,Zhu X,Zhou L,Jiang X,Xiao X.2008.Gene Ther 15:1489)及びSk-CRM4-Des(Sarcar S,Tualamba W,et al.2019.Nat Comm 10:492)などの他のプロモーター-エンハンサーの組み合わせは、CMVプロモーターを超える活性を有するハイブリッド筋プロモーターを作成することが示された(表1)。これらのプロモーターを、線形AAVベクターを使用して試験し、超らせんプラスミド又はナノプラスミドDNAテンプレートにおいて同様に機能しない場合がある。これを試験するために、pVAX1(pUC起点kanRベクター;Invitrogen)及びNTC9385Rナノプラスミド骨格において、いくつかの筋プロモーター発現ベクターを作成した。これにより、1)筋プロモーター自体、及び2)ベクター骨格が筋細胞発現に及ぼす影響の評価が可能になった。発現結果を、表3に示す。全てのベクターは、同じウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化シグナルを有する。
【表3-1】
【表3-2】
【0103】
ベクター骨格は、発現に劇的な効果を有した。pVAX1発現は、CMVを有するNTC9385R、及びSk-CRM4-Desプロモーターよりも10~20倍低く、新しいハイブリッドであるSk-CRM4-tMCKプロモーターでは3倍低かった。これは、ナノプラスミド骨格がpVAX1と比較して、発現を劇的に改善することを教示している。
【0104】
pVAX1 CMVをCMVプロモーター発現の基準として使用すると、全ての筋特異的ナノプラスミドベクターは、CMVと比較して、筋細胞において発現が改善される。
【0105】
しかしながら、ナノプラスミドCMVを基準として比較すると、Sk-CRM4-DesプロモーターのみがCMVと比較して改善される。
【0106】
tMCKプロモーター発現は、Sk-CRM4-Desプロモーターよりもはるかに低かった。CK7 MCKエンハンサー及びM-CATモチーフを用いた図2A図2Bに観察されるように、tMCKプロモーターへの筋エンハンサーの添加(イントロンMCK SIEエンハンサー配列番号41;Tai PWL,Fisher-Aylor KI,Himeda CL,Smith CL,MacKenzie AP,Helterline DL,Agnello JC,Welikson RE<Wold BH,Hauschka SD.2011.Skeletal Muscle1:25)は、発現を減少させた(表3)。イントロンMCK SIEエンハンサーはまた、Sk-CRM4-Desプロモーターからの発現を2倍低減させ、tMCKE-mデスミンプロモーターからの発現をわずかに低減させた。
【0107】
mMCK 2RS5エンハンサー配列番号38(配列番号37の3つのコピー;Wang et al、上記参照、2008)を、mデスミンエンハンサー及びプロモーター(tMCKE-mデスミン)と組み合わせて試験し、MCKエンハンサーがSk-CRM4-DesプロモーターにおいてSk-CRM4の代替となり得るか否かを決定した。しかしながら、NTC9385R-tMCKE-mデスミンは、NTC9385 R-CRM-mデスミンよりも筋細胞における活性が2倍低かった。
【0108】
これらのデータをまとめると、MCKエンハンサーが、CMV、C5-12、及びデスミンプロモーターの上流でクローニングされたときに筋細胞における発現を改善しない場合があり、筋特異的プロモーターエレメントの大部分の組み合わせが、これらのプロモーターからの発現レベルに有益ではなく有害であることが示唆される。
【0109】
[実施例2:pVAX1及びナノプラスミド骨格における新規MCKデスミン筋プロモーターの評価]
実施例1からの試験されたプロモーターのうち、Sk-CRM4-Desプロモーターは、ナノプラスミドベクター骨格における発現が最も強力であった。驚くべきことに、上記の結果とは反対に、NTC9385R-CRM-mデスミンにおけるSk-CRM4-Desプロモーターを、MCK CK7エンハンサー(配列番号1)の1つ又は3つのコピーで置き換えると、以下の表4に示されるように、Sk-CRM4-Desプロモーターと同等の筋特異的発現を有する新規NTC9385R-MCK CK7 Eベクターが作成された。実施例1で使用したのと同じ方法を使用して、この追加のデータを生成した。全てのベクターは、同じウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化シグナルを有する。
【表4-1】
【表4-2】
【0110】
NTC9385R-MCK CK7 Eベクターは、
a)b)に対して5’にあるMCK CK7エンハンサーの1~3つのコピー、
b)c)に対して5’にあるmデスミンエンハンサー、
c)d)に対して5’にあるmデスミンプロモーター(INRの有無にかかわらず)、
d)MVMイントロン、を含む、ハイブリッド筋プロモーターを有する。
【0111】
mデスミンINRプロモーターは、Salva et al 2007.Mol Ther 15:320に開示されたMCK INRと同様に構築された。INR(イニシエーター-コアプロモーターエレメント)の変化は、TATAボックスの活性を増加させて転写開始を増加させる。INR変化は、非筋細胞におけるプロモーター発現をわずかに増加させるが(表5;HEK293及びA549細胞)、INR含有プロモーターは、筋細胞に対して非常に特異的であるままである。
【0112】
様々な構築物のEGFP発現レベルを、以下の表5に提供する。全てのベクターは、同じウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化シグナルを有する。エンハンサー、プロモーター、及びイントロン配列は、表4に記載の通りである。
【表5】
【0113】
MCK CK7エンハンサーの3つのコピーの、MCK2Rエンハンサーの3つのコピーによる置換は、発現を2倍低減させた(表6: NTC9385R-MCK 3x MCK2R mデスミン-pCI対NTC9385R-MCK 3xCK7 E mデスミン-pCI)。これにより、右Eボックスに一致するように左Eボックスを変化させる2R改変(Hauser et al 2000.Mol Ther 2: 16)が、この文脈において、デスミンプロモーターとの発現に有害であることが示唆される。
【0114】
NTC9385RナノプラスミドMCK-デスミンプロモーターベクターを構築し、マウスデスミンエンハンサープロモーターをヒトデスミンエンハンサープロモーターで置換した(INR並びに短及び長バージョンの有無にかかわらず、短いバージョンは、Li,Z and Paulin D.1991. J Biol Chem 266:-6562)に報告されたプロモーター内の負領域を除去する)。同様に、MCK mデスミン及びMCK hデスミンプロモーターの両方のMVMイントロン及びpCIイントロンバージョンを構築し、筋細胞における発現について試験した。結果を、表6及び7に提供する。
【表6-1】
【表6-2】
【表7】
【0115】
データは、MCK hデスミンが、MCK mデスミンよりも、筋管における発現に優れていることを実証し、MCK hデスミンS及びMCK hデスミンは、筋管において同様に高い発現を有し、INRを含むことは、筋管における発現の改善を提供し、pCIイントロンは、筋管におけるMVMイントロンよりも改善された発現を実証し、ナノプラスミドベクターは、筋管におけるpVAX1ベクターよりも発現の有意な改善を示す。
【0116】
本開示の筋特異的調節核酸配列及びベクターはまた、好ましくは低いCpG対GpG比を有し得る(表8)。より低いCpG対GpG比は、TLR9結合のためのCpGとのGpG競合によって仮説化された、導入遺伝子免疫原性の低減と相関する(Gottlieb P,Utz PJ,Robinson W,Steinman L.2013.Clin Immunol 149:297)。本発明の筋プロモーターを組み込んだナノプラスミドベクターも、特にpVAX1などの既存のCMVプロモーターベクターと比較して、好ましくは低いCpG対GpG比を有する(表9)。これは、免疫応答が問題である遺伝子療法及び受動免疫療法用途に非常に有益であろう標的導入遺伝子に対する免疫応答の低減につながり得る(Weeratna et al、上記参照、2001;Hollevoet and Declerck、上記参照、2017)。
【表8】
【表9】
【0117】
[実施例3:ナノプラスミドベクター骨格における新規MCKデスミン筋プロモーターのインビボ評価]
MCKデスミン筋プロモーターナノプラスミドベクターは、pVAX1 CMV対照と比較して、改善された発現についてインビボで評価することができる。例えば、pVAX1のルシフェラーゼ導入遺伝子バージョン並びに図3A図3DのナノプラスミドMCK-hデスミンベクター及び図5A図5DのナノプラスミドMCK-mデスミンベクターを作成し、精製DNAをインビボでマウス筋肉に送達する。送達は、エレクトロポレーションによるIM送達、BASF(Ludwigshafen,Germany)からのX字形ポロキサミン=Tetronic304、704、904、908などのブロックポリマーによるIM送達、脂質によるIM送達などである。ルシフェラーゼ発現は、注射した筋肉において様々な時点で決定される。pVAX1 CMVよりも1~2ログ優れた、ナノプラスミドMCKデスミン筋プロモーター発現レベルが予想される。
【0118】
例えば、図3CのMCK-hデスミンナノプラスミドのルシフェラーゼ導入遺伝子バージョン[NTC9385R(3xCpG)-MCK hデスミン-Luc CpGフリーBGH pA(4099bp)]及び図5BのMCK-mデスミンナノプラスミド[NTC9385R(3xCpG)-MCK mデスミン-Luc CpGフリーBGH pA(3948bp)]のインビボでのマウス筋肉へのブロックコポリマー送達は、以下に(図6)に記載されるように、pVAX1プラスミド[pVAX1-Luc(4613bp)]と比較して1ログ超の改善された発現を実証した。
【0119】
両親媒性ブロックコポリマー(ABC)(Nanotaxi;In-Cell-Art、Nantes,France)を用いた3つのDNA調製物の製剤は、等量のABCストック水溶液及びプラスミドDNA溶液を、所望の濃度で緩衝溶液中で混合することによって調製した。
【0120】
動物実験は、施設及び国家の倫理ガイドラインに従って実行した。マウスをイソフルランにより麻酔してから、ABC/DNA溶液を注射した。マウスルシフェラーゼ遺伝子発現実験は、6週齢の雌スイスマウスの群を使用して実行した(Janvier、Le Genest Saint Isle,France)。ABC/DNA製剤を、両方の剃毛された前脛骨筋に両側に筋肉内注射した。注射した筋肉を注射の7日後に採取し、液体窒素中で凍結し、ルシフェラーゼ活性についてアッセイするまで-80℃で貯蔵した。
【0121】
注射した筋肉におけるルシフェラーゼ活性を、Pitard B,et al.2002.Human Gene Therapy 13:1767-75に記載されるように分析した。結果を図6に示す。
【0122】
[実施例4:ナノプラスミドベクター骨格における新規MCKデスミン筋プロモーターの評価]
MCK CK7エンハンスの1つ又は3つのコピーが、Sk-CRM4-DesプロモーターにおけるSK-CRM4の代替となり得る(表1: Sarcar et al.上記参照2019)という本明細書で開示された驚くべき観察から拡張すると、Sk-CRM4-Desプロモーターからの発現を改善したCRE02(配列番号15)及びCRE64(配列番号16)エンハンサーの組み込み(表1: Chuah及びVanderdriessche WO2018/178067)も、本開示のMCK-デスミンプロモーターからの発現を改善することが予測される。本明細書に開示されるMCK-デスミンプロモーターの上流にSk-CRM4エンハンサー(配列番号14)を添加することも、本開示のMCK-デスミンプロモーターからの発現を改善し得ることが更に企図される。本明細書に開示されるMCK-デスミンプロモーターの上流にαMHC Eエンハンサー(配列番号13)を添加することも、MHCK7プロモーターにおけるCK7エンハンサーの上流に位置付けられたときのMCKプロモーターからの発現のその改善と同様に、本開示のMCK-デスミンプロモーターからの発現を改善し得ることが更に企図される(表1)。これらの企図されるプロモーターは、実施例1及び3に記載されるように試験され、
a)哺乳類デスミンプロモーターエレメントと、
b)哺乳類デスミンエンハンサーエレメントと、
c)哺乳類MCKエンハンサーと、
d)配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16からなる群から選択される哺乳類エンハンサーエレメントと、の構成を有し、プロモーター及びエンハンサーエレメントは、作動可能に連結されている、構成となるであろう。
【0123】
刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、参照により組み込まれることが個別に具体的に示され、その全体が本明細書に示されるのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
「含む」、「有する」、「含む」、及び「含有する」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、単に、範囲内に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略法として機能することのみを意図しており、各個別の値は、本明細書に個別に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書に提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(例えば、「例えば(such as)」)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図しており、特に別段の請求がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる言語も、あらゆる特許請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0125】
本発明を実施するための発明者らに知られている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書で説明する。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がかかる変形を適切に用いることを期待し、本発明者らは、本発明が、本明細書に具体的に記載される以外の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用される法律によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙された主題の全ての修正及び等価物を含む。更に、本明細書に別段に示さない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形における上述の要素のあらゆる組み合わせは、本発明によって包含される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
【配列表】
2023543154000001.app
【国際調査報告】