(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】AFX骨格構造を有するゼオライト材料の製造方法及び製造されたゼオライト材料
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20231005BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20231005BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20231005BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20231005BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J37/04 102
B01J35/08 Z ZAB
B01J29/76 A
B01D53/94 222
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516565
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 US2021049746
(87)【国際公開番号】W WO2022056185
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/114793
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ミン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リーウア,シー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッティパッリ,ヴィヴェク
(72)【発明者】
【氏名】モンルー,リー
(72)【発明者】
【氏名】ハイタオ,リウ
(72)【発明者】
【氏名】チン,リー
【テーマコード(参考)】
4D148
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
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4G073BA02
4G073BA04
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4G169AA03
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4G169ZD03
4G169ZD06
4G169ZF03B
4G169ZF05B
(57)【要約】
本発明は、X2O3及びYO2を含むAFX骨格構造を有するゼオライト材料を、ゼオライト間転換を介して製造するための方法に関し、該方法は(1)X2O3及びYO2を含む非FAU骨格構造を有する第1のゼオライト材料と、ジ四級アンモニウムカチオン含有化合物から選択される有機構造指向剤とを含む混合物を提供する工程、及び(2)工程(1)からの混合物を加熱し、X2O3及びYO2を含むAFX骨格構造を有する第2のゼオライト材料を形成する工程を含み、ここでXは三価元素であり、そしてYは四価元素であり、且つ第1のゼオライト材料がCHA骨格構造を有する場合、有機構造指向剤は1,4-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジヒドロキシドではない。本発明はまた、本方法から得ることができる又は得られたAFX骨格構造を有するゼオライト材料、及びこれを触媒活性材料として使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X
2O
3及びYO
2を含むAFX骨格構造を有するゼオライト材料を、ゼオライト間転換を介して製造するための方法であって、
(1) X
2O
3及びYO
2を含む非FAU骨格構造を有する第1のゼオライト材料と、ジ四級アンモニウムカチオン含有化合物から選択される有機構造指向剤とを含む混合物を提供する工程、及び
(2) 工程(1)からの前記混合物を加熱し、X
2O
3及びYO
2を含むAFX骨格構造を有する第2のゼオライト材料を形成する工程
を含み、
ここで、Xは三価元素であり、そしてYは四価元素であり、且つ第1のゼオライト材料がCHA骨格構造を有する場合、前記有機構造指向剤が1,4-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジヒドロキシドではない、方法。
【請求項2】
Xが、Al、B、In及びGa及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され、好ましくはXがAlである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され、好ましくはYがSiである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のゼオライト材料が、CHA骨格構造を有するゼオライト、又はMFI骨格構造を有するゼオライトである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のゼオライト材料が、アルミノシリケートゼオライト、好ましくはSSZ-13ゼオライト又はZSM-5ゼオライトである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機構造指向剤が、式(I)
(R
1R
2R
3)N
+(CH
2)
nN
+(R
4R
5R
6) (I)
のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物から選択され、
式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、互いに独立してC
1~C
10アルキルから選択され、そして
nは3~10の整数であり、
又は
式中、
R
1、R
2及びR
3の1つは、C
1~C
10アルキルから選択され、そして他の2つは共に結合してC
4~C
6アルキレンを形成し、
R
4、R
5及びR
6の1つは、C
1~C
10アルキルから選択され、そして他の2つは共に結合してC
4~C
6アルキレンを形成し、そして、
nは3~10の整数である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記有機構造指向剤が、式(I)のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物から選択され、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、互いに独立してC
1~C
6アルキルから選択され、そしてnは4~7の整数である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機構造指向剤が、式(I)のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物から選択され、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は同じであり且つC
1~C
6アルキルから選択され、そしてnは5、6又は7である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機構造指向剤が、式(I)のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物から選択され、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のそれぞれは、メチル、エチル又はプロピル、好ましくはエチルであり、そしてnは5、6又は7である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記有機構造指向剤が、N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサエチル-1,5-ペンタンジアンモニウムである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(1)における前記混合物が、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン、好ましくはアルカリ金属カチオンの少なくとも1つの源をさらに含み、そしてより好ましくは、少なくとも1つのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の、YO
2として計算されるYO
2の源(複数可)に対するモル比が、0.01~1.0の範囲、好ましくは0.1~0.8である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(1)で提供された前記混合物が、アルカリ金属の少なくとも1つの源を含み、そして少なくとも1つのアルカリ金属の、YO
2として計算されるYO
2の源(複数可)に対するモル比AM:YO
2が、0.01~1.0の範囲、好ましくは0.1~0.8、より好ましくは0.3~0.8、より好ましくは0.4~0.7、特に0.5~0.65である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のゼオライト材料がMFI骨格構造を有するゼオライトであり、そして少なくとも1つのアルカリ金属の、YO
2として計算されるYO
2の源(複数可)に対するモル比AM:YO
2が0.51~0.65の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のゼオライト材料がCHA骨格構造を有するゼオライトであり、そして少なくとも1つのアルカリ金属の、YO
2として計算されるYO
2の源(複数可)に対するモル比AM:YO
2が0.56~0.64の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
(3) AFX骨格構造を有する前記第2のゼオライト材料をか焼する工程
をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(4) 工程(2)又は(3)で得られた前記ゼオライト材料に含有されるイオン性非骨格元素の1つ以上を、H
+及び/又はNH
4
+、好ましくはNH
4
+に交換する工程
をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(5) 工程(3)又は(4)で得られた前記ゼオライト材料の上及び/又は中にプロモーター金属カチオンを担持する工程
をさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法により得られる、AFX骨格構造を有するゼオライト材料。
【請求項19】
球状の凝集体粒子の形態で存在する、請求項18に記載のAFX骨格構造を有するゼオライト材料。
【請求項20】
SCR効率が、ゼオライト間転換を介して同じ有機構造指向剤を用いてFAU骨格構造を有するゼオライトから調製されたゼオライト材料のSCR効率よりも、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%高く、このSCR効率は575℃で80,000h
-1のガス時間空間速度(GHSV)で、500ppmのNO、500ppmのNH
3、5%のH
2O、10%のO
2及び残りN
2を含むガス流中のNOx転換によって決定したものである、請求項18又は19に記載のAFX骨格構造を有するゼオライト材料。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか一項に記載のAFX骨格構造を有するゼオライト材料を、触媒及び/又は触媒成分として、好ましくは窒素酸化物NOxの選択的触媒還元(SCR)のための触媒及び/又は触媒成分として、使用する方法。
【請求項22】
基材上に触媒コーティングを含む触媒物品であって、前記触媒コーティングが請求項18から20のいずれか一項に記載のAFX骨格構造を有するゼオライト材料を含む、触媒物品。
【請求項23】
内燃機関、及び前記内燃機関と流体連通する排気ガス導管を含む排気ガス処理システムであって、請求項22に記載の触媒物品が前記排気ガス導管内に存在する、排気ガス処理システム。
【請求項24】
(A) NOxを含むガス流を提供する工程、
(B) 前記ガス流を請求項18から20のいずれか一項に記載のゼオライト材料又は請求項22に記載の触媒物品と接触させる工程
を含む、NOxの選択的触媒還元の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AFX骨格構造を有するゼオライト材料を、ゼオライト間転換を介して、有機構造指向剤の存在下で製造する方法に関する。さらに、本発明は、本方法から得ることができる又は得られたAFX骨格構造を有するゼオライト材料、及びこのゼオライト材料を触媒活性材料として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小細孔ゼオライトとしてのAFXゼオライトは、様々なプロセス、例えば燃焼排気ガス中のNOxの選択的触媒還元(SCR)、炭化水素の分解と改質、及びメタノールのオレフィンへの転換(MTO)における触媒として有用であることが知られている。AFXゼオライトの合成は、近年ますます注目を集めている。AFXゼオライトは一般に、シリカ源及びアルミナ源を含む合成混合物からゼオライト結晶を沈殿させることによって調製される。あるいは、AFXゼオライトは、例えば以下の非特許及び特許文献で報告されているように、ゼオライト間転換を介して異なる骨格型のゼオライトから構造指向剤(SDA)の存在下で調製される。
【0003】
Boruntea C.R.et al.,Microporous and Mesoporous Materials,278(2019年)、第105~114頁には、FAU又はCHAゼオライトからの、ゼオライトからゼオライトへの変換による、SDAとして1,4-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジヒドロキシドを用いたAFXゼオライト合成が記載されている。
【0004】
US2018/093259A1及びUS2016/0137518A1には、SDAとして1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムヒドロキシド又は2,6-N,N-ジエチル-シス-2,6-ジメチル-ピペリジニウムヒドロキシドを用いた、ゼオライトYからのAFXゼオライトの合成が記述されている。
【0005】
US2018/093897A1には、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリウムヒドロキシド及び少なくとも1つの中性アミンからなるマルチSDA系を用いた、ゼオライトYからのAFXゼオライトの合成が記載されている。
【0006】
WO2019/048940A1には、SDAとしてヘキサメトニウムヒドロキシドを用いた、ゼオライトYからのAFXゼオライトの合成が記載されている。
【0007】
WO2019/224085A1には、SDAとして1,5-ビス(メチルピペリジニウム)ペンタン、1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン、又は1,7-ビス(メチルピペリジニウム)ヘプタンを用いた、少なくとも2つのFAUゼオライトからのAFXゼオライトの合成が記載されている。
【0008】
JP6655959B2には、SDAとして1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-C4-ジクアットジブロミドを用いた、ゼオライトYからのAFXゼオライトの合成が記載されている。
【0009】
これらの文献で報告されているAFXゼオライトを製造する方法は、非常に特定の出発ゼオライト及び或る特定の有機構造指向剤(OSDA)に限定されている。AFX骨格構造を有するゼオライト材料を製造するためのより多くの方法、特に、触媒活性が改善されたAFX骨格構造を有するゼオライト材料を提供できる方法が、依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2018/093259A1
【特許文献2】US2016/0137518A1
【特許文献3】US2018/093897A1
【特許文献4】WO2019/048940A1
【特許文献5】WO2019/224085A1
【特許文献6】JP6655959B2
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Boruntea C.R.et al.,Microporous and Mesoporous Materials,278(2019年)、第105~114頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、AFX骨格構造を有するゼオライト材料、特に、高温でのNOxの選択的触媒還元にとってより効果的なAFX骨格構造を有するゼオライト材料を製造するための新規方法を提供することであった。
【0013】
驚くべきことに、この目的は、AFX骨格構造を有するゼオライト材料を、ゼオライト間転換により、非FAU骨格構造を有するゼオライトから、有機構造指向剤の存在下で製造する方法によって達成できることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0014】
よって、一側面において、本発明は、X2O3及びYO2を含むAFX骨格構造を有するゼオライト材料を、ゼオライト間転換を介して製造するための方法に関し、この方法は、
(1) X2O3及びYO2を含む非FAU骨格構造を有する第1のゼオライト材料と、ジ四級アンモニウムカチオン含有化合物から選択される有機構造指向剤とを含む混合物を提供する工程、及び
(2) 工程(1)からの混合物を加熱し、X2O3及びYO2を含むAFX骨格構造を有する第2のゼオライト材料を形成する工程
を含み、
ここで、Xは三価元素であり、そしてYは四価元素であり、且つ第1のゼオライト材料がCHA骨格構造を有する場合、有機構造指向剤は1,4-ビス(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジヒドロキシドではない。
【0015】
別の側面では、本発明は、第1の側面による方法から得ることができる又は得られたAFX骨格構造を有するゼオライト材料に関する。
【0016】
さらに別の側面では、本発明は、ここに記載するAFX骨格構造を有するゼオライト材料を、触媒及び/又は触媒成分として、好ましくは窒素酸化物NOxの選択的触媒還元(SCR)のための触媒及び/又は触媒成分として、使用する方法に関する。
【0017】
さらなる側面では、本発明は、基材上に触媒コーティングを含む触媒物品に関し、その触媒コーティングは、ここに記載するAFX骨格構造を有するゼオライト材料を含む。
【0018】
なお別の側面では、本発明は、内燃機関、及びその内燃機関と流体連通する排気ガス導管を含む排気ガス処理システムに関し、ここに記載する触媒物品が、排気ガス導管内に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1a、1b、1c及び1dは、実施例1.1、実施例2.1、実施例3.1及び実施例3.2のそれぞれから得られたAFXゼオライト材料のSEM画像であり、ゼオライトの球状凝集体の形態を示す。
【
図2】
図2は、実施例1.1、実施例2.1、実施例3.1及び実施例3.2で調製されたAFXゼオライト材料のXRDパターンを示す。
【
図3】
図3は、実施例1.1~1.6によりZSM-5ゼオライトから異なるNa/SiO
2モル比で調製したゼオライト材料のXRDパターンを示し、矢印で示すピークは、それぞれサンプル1.3及び1.6の非転換ZSM-5骨格に属する。
【
図4】
図4は、実施例2.1~2.4によりSSZ-13ゼオライトから異なるNa/SiO
2モル比で調製したゼオライト材料のXRDパターンを示し、矢印で示すピークは、それぞれサンプル2.2及び2.4の微量の不純物に属する。
【
図5】
図5は、実施例2.5~2.8によりSSZ-13ゼオライトから異なるNa/SiO
2モル比で調製したゼオライト材料のXRDパターンを示し、矢印で示すピークは、それぞれサンプル2.5及び2.8の微量の不純物に属する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を以下で詳細に記載する。本発明は、多くの異なる方法で具体化することができ、ここに記載されている実施形態に限定されると解釈してはならないことを理解されたい。
【0021】
本明細書中、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。用語「含む」、「含んでいる」などは、「含有する」、「含有」などと同じ意味で使用され、非限定的で開放的に解釈される。すなわち、例えば、さらなる構成要素又は要素が存在し得る。「~からなる」又は「~から本質的になる」という表現、又は同族語は、「含む」又は同族語の中に包含され得る。
【0022】
本明細書で使用される用語「AFX」、「FAU」、「MFI」、及び「CHA」とは、それぞれ国際ゼオライト委員会(IZA)構造委員会(International Zeolite Association (IZA) Structure Commission)によって承認されたAFX、FAU、MFI、及びCHA骨格型を指す。
【0023】
本明細書で使用される用語「ゼオライト間転換」とは、ゼオライト合成技術の通常の技術者が一般的に理解しているものと同じ意味を有し、一般的には「ゼオライトからゼオライトへの変換」及び「ゼオライト間変換」と同じ意味で使用される。
【0024】
本明細書で使用される用語「AFX骨格構造を有するゼオライト材料」とは、特定の骨格を有するゼオライトの任意の形態が含まれることが意図されており、例えば合成されたままの形態、NH4形態、H形態及び金属担持H形態が含まれる。用語「AFX骨格構造を有する」とは、少なくとも90%のフェーズが純粋なAFX骨格であること、すなわち、ゼオライト骨格の少なくとも90%がAFX型であることを指す。
【0025】
本発明の文脈では、Xは任意の三価元素であってよい。好ましくは、Xは、Al、B、In及びGa及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され、Alがより好ましい。本発明の文脈では、Yは任意の四価元素であってよい。好ましくは、Yは、Si、Sn、Ti、Zr、Ge及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され、Siがより好ましい。
【0026】
工程(1)について、非FAU骨格を有する第1のゼオライト材料に特に制限はないが、これは好ましくはCHA骨格構造を有するゼオライト、より好ましくはSSZ-13ゼオライト、又は好ましくはMFI骨格構造を有するゼオライト、より好ましくはZSM-5ゼオライトである。非FAU骨格を有する第1のゼオライトは、それぞれのNH4形態、H形態又はM形態であり、ここでMは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。
【0027】
特定の実施形態では、非FAU骨格を有するアルミノシリケートゼオライトは、工程(1)における非FAU骨格構造を有する第1のゼオライトとして有用である。好ましくは、アルミノシリケートゼオライト構造には、骨格中の置換されたリン又は他の金属が含まれず、アルミノホスフェート材料、例えばSAPO、ALPO及びMeAPO材料を除く。
【0028】
工程(1)で提供された混合物に含まれる非FAU骨格を有する第1のゼオライト材料は、同時にX2O3及びYO2の源として作用することが理解されよう。いくつかの実施形態では、工程(1)で提供された混合物中にX2O3又はYO2の追加の源はない。いくつかの他の実施形態では、工程(1)で提供された混合物は、YO2の追加の源を任意に含んでよい。YO2の好適な追加の源は、ゼオライト合成中に四価の骨格要素を提供するのに有用な既知の材料である。YがSiである特定の実施形態では、YO2の好適な源は、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、シリカヒドロゾル、シリカゲル、コロイダルシリカ、ケイ酸、シリコンアルコキシド、アルカリ金属シリケート、例えばナトリウムシリケート及びカリウムシリケート、ナトリウムメタシリケートヒドレート、セスキシリケート、ジシリケート、ケイ酸エステル、非FAU骨格を有する他のゼオライト、脱アルミニウム化ゼオライト、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択してよい。
【0029】
好ましくは、工程(1)で提供された混合物は、YO2として計算されるYO2の源(複数可)の、X2O3として計算されるX2O3の源に対するモル比YO2:X2O3が、5~60、好ましくは15~40、より好ましくは20~35、より好ましくは26~32の範囲である。
【0030】
有機構造指向剤は、任意のジ四級アンモニウムカチオン(Q)含有化合物であってよく、特に制限はない。好ましくは、有機構造指向剤は、式(I)
(R1R2R3)N+(CH2)nN+(R4R5R6) (I)
のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物から選択され、
式中、
R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに独立してC1~C10アルキルから選択され、そしてnは3~10の整数であり、
又は
式中、
R1、R2及びR3の1つは、C1~C10アルキルから選択され、そして他の2つは共に結合してC4~C6アルキレンを形成し、
R4、R5及びR6の1つは、C1~C10アルキルから選択され、そして他の2つは共に結合してC4~C6アルキレンを形成し、そして、
nは3~10の整数である。
【0031】
好ましい実施形態では、有機構造指向剤は、式(I)のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物から選択され、式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに独立してC1~C6アルキルから選択され、そしてnは4~7の整数である。
【0032】
より好ましい実施形態では、有機構造指向剤は、式(I)のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物から選択され、式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は同じであり且つC1~C6アルキルから選択され、nは5、6又は7である。
【0033】
最も好ましい実施形態では、有機構造指向剤は、式(I)のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物から選択され、式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは、メチル、エチル又はプロピル、好ましくはエチルであり、そしてnは5、6又は7である。
【0034】
特定の実施形態では、有機構造指向剤は、N,N,N,N’,N’,N’-ヘキサエチル-1,5-ペンタンジアンモニウム(Et6-ジクワット-5)であり、すなわち、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれがエチルであり、そしてnが5である式(I)のジ四級アンモニウムカチオンを含有する化合物である。
【0035】
ジ四級アンモニウムカチオン含有化合物は塩の形態であってよく、ここでアニオンは、ハライド、例えばフルオリド、クロリド及びブロミド、ヒドロキシド、スルフェート、ニトレート、カルボキシレート、例えばアセテート、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され、好ましくは、クロリド、ブロミド、ヒドロキシド、スルフェート、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、ジ四級アンモニウムカチオン含有化合物は、ヒドロキシド、クロリド又はブロミドであり、そして特に本明細書で上述した式(I)のジ四級アンモニウムカチオンのヒドロキシドである。
【0036】
好ましくは、工程(1)で提供された混合物は、ジ四級アンモニウムカチオン(Q)の、YO2として計算されるYO2の源(複数可)に対するモル比Q:YO2が、0.01~1の範囲、好ましくは0.02~0.5、より好ましくは0.02~0.2、より好ましくは0.05~0.15である。
【0037】
いくつかの実施形態では、工程(1)で提供された混合物は、少なくとも1つの溶媒、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水をさらに含む。好ましくは、工程(1)で提供された混合物は、水と、YO2として計算されるYO2の源(複数可)とのモル比H2O:YO2が、3~60の範囲、好ましくは10~35、より好ましくは15~30である。
【0038】
いくつかの実施形態では、工程(1)で提供された混合物は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(AM)カチオン、好ましくはアルカリ金属カチオンの少なくとも1つの源をさらに含む。アルカリ金属は、好ましくは、Li、Na、K、Cs及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され、より好ましくは、Na及び/又はK、及び最も好ましくはNaである。アルカリ土類金属は、好ましくは、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群より選択される。アルカリ金属又はアルカリ土類金属(AM)カチオンの源は、典型的には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と、ゼオライト間転換に有害ではない任意のアニオンとの塩である。有用なアニオンの例には、ハライド、例えばフルオリド、クロリド及びブロミド、ヒドロキシド、スルフェート、ニトレート、カルボキシレート、例えばアセテート、及びそれらの任意の組み合わせ、好ましくはクロリド、ブロミド、ヒドロキシド、スルフェート及びそれらの任意の組み合わせ、より好ましくはヒドロキシドが含まれる。
【0039】
工程(1)で提供された混合物は、少なくとも1つのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の、YO2として計算されるYO2の源(複数可)に対するモル比AM:YO2が、0.01~1.0の範囲、好ましくは0.1~0.8である。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態では、工程(1)で提供された混合物は、アルカリ金属の少なくとも1つの源を含み、そして少なくとも1つのアルカリ金属の、YO2として計算されるYO2の源(複数可)に対するモル比AM:YO2が、0.01~1.0の範囲、好ましくは0.1~0.8、より好ましくは0.3~0.8、より好ましくは0.4~0.7、特に0.5~0.65である。より好ましくは、少なくとも1つのアルカリ金属の、YO2として計算されるYO2の源(複数可)に対する比AM:YO2は、第1のゼオライト材料がMFI骨格構造を有するゼオライト、特にZSM-5である実施形態では0.51~0.65の範囲であり、そして少なくとも1つのアルカリ金属の、YO2として計算されるYO2の源(複数可)に対する比AM:YO2は、第1のゼオライト材料がCHA骨格構造を有するゼオライトである実施形態では0.56~0.64の範囲である。
【0041】
いくつかの実施形態では、工程(1)で提供された混合物は、OH-の少なくとも1つの源をさらに含み、OH-の源は金属ヒドロキシド、例えばアルカリ金属ヒドロキシド、又はアンモニウムヒドロキシドである。好ましくは、OH-アニオンは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属カチオン及び/又は有機構造指向剤の源に由来する。
【0042】
工程(1)で提供された混合物は、OH-の、YO2として計算されるYO2の源(複数可)に対するモル比OH-:YO2が、0.01~2の範囲、より好ましくは0.05~1.2、より好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.4~0.9、より好ましくは0.6~0.9である。
【0043】
いくつかの実施形態では、工程(1)で提供された混合物は、AFX骨格構造を有するゼオライトの種結晶の量をさらに含む。種結晶は、市販されているか、又は本発明による方法又は当該技術分野で既知の任意の他の方法で調製してよい。
【0044】
工程(2)について、混合物を好ましくは、80~250℃の範囲、より好ましくは90~230℃、より好ましくは100~200℃、より好ましくは110~190℃、より好ましくは120~180℃、より好ましくは130~170℃、最も好ましくは135~155℃で加熱する。加熱は、0.25~12日間の範囲、より好ましくは0.5~10日間、より好ましくは1~7日間、より好ましくは2~6日間、より好ましくは2.5~5日間行ってよい。好ましくは、加熱は自己圧力下で行い、より特には耐圧容器内で、より好ましくはオートクレーブ内で行う。さらに、加熱は、好ましくは攪拌下で行う。
【0045】
特定の実施形態では、工程(2)の加熱は、130~170℃の範囲、より好ましくは135~155℃の温度で、1~7日間、好ましくは2~6日間、より好ましくは2.5~5日間、自己圧力下で耐圧容器内で、より好ましくはオートクレーブ内で行う。
【0046】
一般的に、工程(2)で形成されたAFX骨格構造を有する第2のゼオライト材料は、例えばろ過による単離、任意の洗浄、及び乾燥を含む後処理手順に供される。よって、本発明による方法の工程(2)は、後処理手順を任意にさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、工程(2)からのAFX骨格構造を有する第2のゼオライト材料は、か焼手順に供される。よって、本発明による方法は、
(3) AFX骨格構造を有する第2のゼオライト材料をか焼する工程
をさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、AFX骨格構造を有する第2のゼオライト材料をイオン交換手順に供し、ゼオライト材料に含有されるイオン性非骨格元素の1つ以上がH+及び/又はNH4
+に交換されるようにしてよい。よって、本発明による方法は、
(4) 工程(2)又は(3)で得られたゼオライト材料に含有されるイオン性非骨格元素の1つ以上を、H+及び/又はNH4
+、好ましくはNH4
+に交換する工程
をさらに含む。
【0049】
一般的に、工程(4)においてH+及び/又はNH4
+に交換されたゼオライト材料は、例えばろ過による単離、任意の洗浄及び乾燥を含む後処理手順、及び/又はか焼手順に供してよい。よって、本発明による方法の工程(4)は、後処理手順及び/又はか焼手順を任意にさらに含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、AFX骨格構造を有するゼオライト材料は、ゼオライト材料の上及び/又は中への、プロモーター金属カチオンの担持に供してよい。よって、本発明による方法は、
(5) 工程(3)又は(4)で得られたゼオライト材料の上及び/又は中に、好ましくはイオン交換又は含浸によって、より好ましくは初期湿潤含浸によって、プロモーター金属カチオンを担持する工程
をさらに含む。
【0051】
プロモーター金属は、触媒用途におけるゼオライトの触媒活性を改善するのに有用であることが知られている任意の金属であってよく、例えば貴金属、例えば白金族金属、Au及びAg、遷移金属及びアルカリ土類金属が含まれる。好ましくは、プロモーター金属は、Ca、Mg、Sr、Zr、Cr、Mo、Fe、Mn、V、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Os、Ir、Pt、Au及びそれらの任意の組み合わせからなる群より、好ましくはCa、Mg、Sr、Cr、Mo、Fe、Mn、V、Co、Ni、Cu、Zn及びそれらの任意の組み合わせからなる群より、より好ましくはCa、Mn、Fe、Mn、Ni、Cu、Zn及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され、Cu及び/又はFeが最も好ましい。
【0052】
プロモーター金属は、ゼオライト材料の上及び/又は中に、ゼオライト材料中のアルミニウム、すなわちAFX骨格構造を有するゼオライト材料の骨格アルミニウム1モル当たり、0.1~1.0モル、好ましくは0.15~0.8モル、より好ましくは0.2~0.75モルの量で担持してよい。
【0053】
一般的に、工程(5)においてプロモーター金属が担持されたゼオライト材料は、単離、任意に洗浄及び乾燥が含まれる後処理手順、及び/又はか焼手順に供してよい。よって、本発明による方法の工程(5)は、後処理手順及び/又はか焼手順を任意にさらに含む。
【0054】
工程(3)で行われ、そして工程(4)及び(5)で任意に行われるか焼について、加熱を300~900℃の範囲の温度、好ましくは350~700℃、より好ましくは400~650℃、そしてより好ましくは450~600℃で行う。特に、か焼は、上記の範囲の温度を有するガス雰囲気中で行ってよく、これは空気、酸素、窒素、又はそれらの2つ以上の混合物であってよい。好ましくは、か焼は、0.5~10時間の範囲、好ましくは3~7時間、より好ましくは4~6時間の期間行う。
【0055】
本発明はさらに、本明細書中、上で記載した方法から得ることができる又は得られたAFX骨格構造を有するゼオライト材料に関する。AFX骨格構造を有するゼオライト材料は、本明細書に記載した方法において実際に行われる工程に応じて、直接工程(3)、工程(4)又は工程(5)から得ることができる又は得られた製品であることが理解されよう。
【0056】
本発明によるAFX骨格構造を有するゼオライト材料は、好ましくは、そのか焼されたH形態で測定して、モル比YO2:X2O3が、5~50の範囲、好ましくは5~35、より好ましくは5~20、より好ましくは5~15である。AFX骨格構造を有するゼオライト材料は、球状の凝集体粒子の形態で存在してよい。
【0057】
本発明によるAFX骨格構造を有するゼオライト材料は、任意の考えられる目的に使用でき、限定するものではないが、分子ふるいとして、吸着剤として、イオン交換のために、又は触媒及び/又は触媒成分として、好ましくは触媒として窒素酸化物NOxの選択的触媒還元(SCR)に、CO2の貯蔵及び/又は吸着に、NH3の酸化に、特にディーゼルシステムにおけるNH3スリップの酸化に、N2Oの分解に、流動接触分解(FCC)プロセスにおける添加剤として、及び/又は触媒として有機転換反応、好ましくはアルコールのオレフィンへの転換に、使用できる。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明によるAFX骨格構造を有するゼオライト材料は、窒素酸化物NOxの選択的触媒還元(SCR)に使用され、そしてより好ましくは、燃焼機関からの排気ガス中の窒素酸化物NOxの選択的触媒還元(SCR)に使用される。特に、本発明によるAFX骨格構造を有するゼオライト材料のSCR効率は、ゼオライト間転換を介して同じ有機構造指向剤を用いてFAU骨格構造を有するゼオライトから調製されたゼオライト材料のSCR効率よりも、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%高く、このSCR効率は575℃で80,000h-1のガス時間空間速度(GHSV)で、500ppmのNO、500ppmのNH3、5%のH2O、10%のO2及び残りN2を含むガス流中のNOx転換によって決定したものである。
【0059】
SCR適用については、本発明によるAFX骨格構造を有するゼオライト材料は、押出体の形態、又は好ましくは基材上のウォッシュコートであってもよい。用語「ウォッシュコート」とは、当該技術分野におけるその通常の意味を有し、すなわち、基材に適用された触媒又は他の材料の薄い付着したコーティングである。用語「基材」とは一般に、触媒コーティングが上に配置されたモノリシック材料、例えば、モノリシックハニカム基材、特にフロースルーモノリシック基材及びウォールフローモノリシック基材を指す。本発明によるAFX骨格構造を有するゼオライト材料は、任意の既知の方法(特に制限はない)によって適用形態に加工してよい。
【0060】
よって、本発明は、基材上に触媒コーティングを含む触媒物品に関し、その触媒コーティングは、本発明によるAFX骨格構造を有するゼオライト材料を含む。
【0061】
さらなる実施形態において、本発明は、内燃機関、及びその内燃機関と流体連通する排気ガス導管を含む排気ガス処理システムに関し、上記の触媒物品が、排気ガス導管内に存在する。
【0062】
本発明を、特に有利な実施例を示す以下の例によってさらに説明する。実施例は本発明を説明するために提供されるが、本発明を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0063】
走査電子顕微鏡(SEM)実験は、走査型電子顕微鏡(日立SU1510)で行った。
【0064】
X線粉末回折(XRD)パターンは、X線回折計(Malvern Panalytical社からのX’pert3Powder)(40kV、40mA)でCuKα(λ=1.5406Å)放射を用いて測定した。
【0065】
実施例1 ZSM-5ゼオライトを用いたAFXゼオライトの調製
実施例1.1(サンプル1.1、Na/SiO
2 0.56)
18.03質量%のEt6-ジクワット-5ヒドロキシド水溶液35.70gを、59.24gのDI水と混合し、次いで4.75gのNaOH(99%、固体)を撹拌しながら加えて溶液を得た。この溶液に、SiO
2/Al
2O
3モル比(SAR)が28のZSM-5ゼオライトの粉末14.62g(China Catalyst Group Ltd.(CCG)社)と、AFX粉末0.63g(SAR12.4)を加え、30分間撹拌した。得られた混合物を120mlのオートクレーブに移し、そして回転させながら140℃で4日間加熱した。室温まで冷却し圧力開放した後、生成物をろ過し、DI水で洗浄して120℃で乾燥した。合成したままの生成物を炉で空気中550℃で6時間か焼し、SARが10.7、BET表面が558m
2/gのNa型AFXゼオライトを得た。
図1に示すSEM画像から観察されるように、Na型AFXゼオライトは球状の凝集体粒子の形態で存在した。
【0066】
XRD分析から、合成したままの生成物は
図2及び3に示すAFX骨格構造を有し、aセルパラメータは13.667Å、cセルパラメータは19.648Å及びセル体積は3179Å
3であることが示された。
【0067】
実施例1.2(サンプル1.2、Na/SiO2 0.52)
4.41gのNaOH(99%固体)を使用したこと以外は、実施例1.1のプロセスを繰り返した。
【0068】
実施例1.3(サンプル1.3、Na/SiO2 0.48)
4.07gのNaOH(99%固体)を使用したこと以外は、実施例1.1のプロセスを繰り返した。
【0069】
実施例1.4(サンプル1.4、Na/SiO2 0.60)
5.09gのNaOH(99%固体)を使用したこと以外は、実施例1.1のプロセスを繰り返した。
【0070】
実施例1.5(サンプル1.5、Na/SiO2 0.64)
5.43gのNaOH(99%固体)を使用したこと以外は、実施例1.1のプロセスを繰り返した。
【0071】
実施例1.6(サンプル1.6、Na/SiO2 0.68)
5.77gのNaOH(99%固体)を使用したこと以外は、実施例1.1のプロセスを繰り返した。
【0072】
実施例2 SSZ-13ゼオライトを用いたAFXゼオライトの調製
実施例2.1(サンプル2.1、Na/SiO
2 0.58)
18.03質量%のEt6-ジクワット-5ヒドロキシド水溶液42.83gを、39.69gのDI水と混合し、次いで4.92gのNaOH(99%、固体)を撹拌しながら加えて溶液を得た。この溶液に、SiO
2/Al
2O
3モル比(SAR)が30のSSZ-13ゼオライトの粉末14.19g(China Catalyst Group Ltd.(CCG)社)を加え、30分間撹拌した。得られた混合物を120mlのオートクレーブに移し、そして回転させながら150℃で3日間加熱した。室温まで冷却し圧力開放した後、生成物をろ過し、DI水で洗浄して120℃で乾燥した。合成したままの生成物を炉で空気中550℃で6時間か焼し、SARが8.6、BET表面が554m
2/gのNa型AFXゼオライトを得た。
図1に示すSEM画像から観察されるように、Na型AFXゼオライトは球状の凝集体粒子の形態で存在した。
【0073】
XRD分析から、合成したままの生成物は
図2及び4に示すAFX骨格構造を有し、aセルパラメータは13.672Å、cセルパラメータは19.692Å及びセル体積は3188Å
3であることが示された。
【0074】
実施例2.2(サンプル2.2、Na/SiO2 0.54)
4.58gのNaOH(99%固体)を使用したこと以外は、実施例2.1のプロセスを繰り返した。
【0075】
実施例2.3(サンプル2.3、Na/SiO2 0.62)
5.26gのNaOH(99%固体)を使用したこと以外は、実施例2.1のプロセスを繰り返した。
【0076】
実施例2.4(サンプル2.4、Na/SiO2 0.66)
5.60gのNaOH(99%固体)を使用したこと以外は、実施例2.1のプロセスを繰り返した。
【0077】
実施例2.5(サンプル2.5、Na/SiO2 0.54)
4.58gのNaOH(99%固体)を加え、加熱温度を160℃としたこと以外は、実施例2.1のプロセスを繰り返した。
【0078】
実施例2.6(サンプル2.6、Na/SiO2 0.58)
4.92gのNaOH(99%固体)を加え、加熱温度を160℃としたこと以外は、実施例2.1のプロセスを繰り返した。
【0079】
実施例2.7(サンプル2.7、Na/SiO2 0.62)
5.26gのNaOH(99%固体)を加え、加熱温度を160℃としたこと以外は、実施例2.1のプロセスを繰り返した。
【0080】
実施例2.8(サンプル2.8、Na/SiO2 0.66)
5.60gのNaOH(99%固体)を加え、加熱温度を160℃としたこと以外は、実施例2.1のプロセスを繰り返した。
【0081】
実施例3 FAUゼオライトを用いたAFXゼオライトの調製
実施例3.1(サンプル3.1、Na/SiO
2 0.68)
18.03質量%のEt6-ジクワット-5ヒドロキシド水溶液32.64gを、74.93gのDI水と混合し、次いで6.59gのNaOH(99%固体)を撹拌しながら加えて溶液を得た。この溶液に、SiO
2/Al
2O
3モル比(SAR)が36のFAUゼオライトの粉末16.16g(HY、Pacific Industrial Development Corporation(PIDC)社)を加え、30分間撹拌した。得られた混合物を120mlのオートクレーブに移し、そして回転させながら140℃で4日間加熱した。室温まで冷却し圧力開放した後、生成物をろ過し、DI水で洗浄して120℃で乾燥した。合成したままの生成物を炉で空気中550℃で6時間か焼し、SARが10.4及びBET表面が518m
2/gのNa型AFXゼオライトを得た。
図1に示すSEM画像から観察されるように、Na型AFXゼオライトは球状の凝集体粒子の形態で存在した。
【0082】
XRD分析から、合成したままの生成物は
図2に示すAFX骨格構造を有し、aセルパラメータは13.686Å、cセルパラメータは19.686Å及びセル体積は3193Å
3であることが示された。
【0083】
実施例3.2(サンプル3.2、Na/SiO
2 0.76)
18.03質量%のEt6-ジクワット-5ヒドロキシド水溶液21.42gを、72.84gのDI水と混合し、次いで6.45gのNaOH(99%固体)を撹拌しながら加えて溶液を得た。この溶液に、SiO
2/Al
2O
3モル比(SAR)が5.2のFAUゼオライトの粉末2.78g(HY、Shandong Duoyou社)を加え、これに27.24gのコロイダルシリカ(Ludox-AS-40)を加えて、30分間撹拌した。得られた混合物を150mlのオートクレーブに移し、そして回転させながら140℃で4日間加熱した。室温まで冷却し圧力開放した後、生成物をろ過し、DI水で洗浄して120℃で乾燥した。合成したままの生成物を炉で空気中550℃で6時間か焼し、SARが9.9及びBET表面が566m
2/gのNa型AFXゼオライトを得た。
図1に示すSEM画像から観察されるように、Na型AFXゼオライトは球状の凝集体粒子の形態で存在した。
【0084】
XRD分析から、合成したままの生成物は
図2に示すAFX骨格構造を有し、aセルパラメータは13.696Å、cセルパラメータは19.798Å及びセル体積は3216Å
3であることが示された。
【0085】
実施例4 Fe担持AFXゼオライトの調製
実施例4.1
粉砕時に実施例1.1のNa型AFXゼオライト粉末を、10質量%のNH4Cl水溶液中に液体:固体比10:1(質量比)で加えた。得られたスラリーを80℃に加熱して2時間保持した後、ろ過、洗浄して110℃で乾燥させた。イオン交換手順を一度繰り返し、乾燥した生成物を炉で空気中450℃で6時間か焼し、H型AFXゼオライトを得た。
【0086】
H型AFXゼオライト粉末に初期湿式含浸法により鉄(III)ニトレート水溶液を含浸させ、炉で空気中450℃で5時間乾燥及びか焼して、Fe担持量が骨格アルミニウム1モル当たり0.40モルのFe担持AFXゼオライトを得た。
【0087】
実施例4.2
実施例3.2のNa型AFXゼオライト粉末を出発物質としたこと以外は、実施例4.1のプロセスを繰り返した。
【0088】
実施例5 エージングした触媒を用いた触媒試験
試験サンプルは、実施例4からのFe担持AFXゼオライトをZr-アセテート水溶液でスラリー化した後、空気中周囲温度で撹拌しながら乾燥してから550℃でか焼することにより、生成物の量に基づいてバインダーとして5質量%のZrO2を含有する生成物を得て調製した。得られた生成物を粉砕し、次に10vol%の蒸気/空気の流れ中820℃で16時間、250~500ミクロンの画分をエージングした。
【0089】
選択的触媒還元(SCR)測定は、各試験サンプル120mgを希釈液と同じふるい画分のコランダムと共に約1mLの床体積に担持した固定床反応器で、以下の条件に従って実施した。
【0090】
ガス供給:500ppmのNO、500ppmのNH3、5%のH2O、10%のO2及び残りN2、ガス時間空間速度(GHSV)80,000-1。
【0091】
温度:ラン1 - 200、400、575℃(脱グリーンのための第1のラン)
ラン2 - 175、200、225、250、500、550、575℃。
【0092】
250℃及び575℃でのラン2の結果を表1にまとめる。
【0093】
【0094】
表1の結果から、ZSM-5ゼオライト(非FAUゼオライト)から調製したゼオライト触媒で達成された575℃でのNOxの転化率は、FAUゼオライトから調製したゼオライト触媒で達成されたNOxの転化率よりも約2倍高いことがわかる。
【国際調査報告】