(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】連鎖球菌Mタンパク質に対する抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/12 20060101AFI20231005BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20231005BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231005BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231005BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231005BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C07K16/12 ZNA
C07K16/46
A61P31/04
A61K39/395 R
A61K39/395 D
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517681
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2021075789
(87)【国際公開番号】W WO2022058584
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523094579
【氏名又は名称】タネア メディカル アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ノルデンフェルト,ビル ポンタス
(72)【発明者】
【氏名】マルムストロム,アンデルス ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】バフナン,ウェール ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ハッポネン,ロッタ ヨハンナ オクサネン
(72)【発明者】
【氏名】カークザッド,ハメド
(72)【発明者】
【氏名】シャノン,ウーナ
(72)【発明者】
【氏名】ビョルク,ラルス ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】マルムストロム,ラルス グスタフ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB41
4C085CC21
4C085DD52
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA70
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新規抗体および抗体組成物、そのような抗体を得るための方法、ならびに細菌感染症およびウイルス感染症を治療するためにならびに研究およびスクリーニング目的のためにそのような抗体および組成物を使用する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連鎖球菌Mタンパク質に結合する抗体であって、
配列A
1~A
18を含む相補性決定領域(CDR)H3ループであり、
A
1はCであり、A
2はAもしくはVであり、A
3はRもしくはKであり、A
4は、S、N、Q、もしくはDであり、A
5は、Y、S、G、もしくは不在であり、A
6は、P、F、もしくは不在であり、A
7は、H、R、D、もしくは不在であり、A
8は、K、S、もしくはTであり、A
9はRもしくはGであり、A
10は、W、G、もしくはFであり、A
11は、L、Y、E、もしくはWであり、A
12はRもしくは不在であり、A
13は、P、F、D、もしくはGであり、A
14は、P、F、A、もしくはIであり、A
15はFであり、A
16はDもしくはEであり、A
17はYもしくはIであり、A
18はWであるか、または前記配列A
1~A
18は、それに6つ以下の保存的置換を含む、相補性決定領域(CDR)H3ループ、および
配列B
1~B
17を含むCDR L3ループであり、
B
1はQであり、B
2はYもしくはRであり、B
3は、N、D、もしくはSであり、B
4は、S、N、もしくはGであり、B
5は、Y、L、もしくはWであり、B
6はPであり、B
7は、V、L、S、もしくはPであり、B
8はIもしくは不在であり、B
9はFもしくは不在であり、B
10はTであり、B
11はFであり、B
12はGであり、B
13は、Q、G、もしくはPであり、B
14はGであり、B
15はTであり、B
16はKであり、B
17はVであるか、または前記配列B
1~B
17は、それに6つ以下の保存的置換を含む、CDR L3ループ
を含む抗体。
【請求項2】
ストレプトコッカス・ピオゲネスSF370との結合により決定して50×10
-9M
-1未満のK
Dで連鎖球菌Mタンパク質に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記CDR H3ループは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、および配列番号4から選択され、前記CDR L3ループは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8から選択される、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項4】
- 配列番号17および配列番号21の6つのCDRのすべてを含む抗体、
- 配列番号18および配列番号22の6つのCDRのすべてを含む抗体、
配列番号19および配列番号23の6つのCDRのすべてを含む抗体、ならびに
配列番号20および配列番号24の6つのCDRのすべてを含む抗体
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
- 重鎖としての配列番号17および軽鎖としての配列番号21を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号18および軽鎖としての配列番号22を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号19および軽鎖としての配列番号23を含む抗体、
- 重鎖として配列番号20および軽鎖として配列番号24を含む抗体、ならびに
- 前記抗体のいずれかのバリアントであり、前記バリアントは、好ましくは、前記重鎖および/または軽鎖の各々に多くとも1、2、5、または10個のアミノ酸改変、より好ましくは配列に保存的アミノ酸置換などのアミノ酸置換を有する、抗体
からなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
細菌凝集を媒介する能力を有する、請求項1~5のいずれかに記載の抗体。
【請求項7】
NFkB活性化を媒介する能力を有する、請求項1~6のいずれかに記載の抗体。
【請求項8】
食作用を誘導する能力を有する、請求項1~7のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
二重Fabシス抗体結合により前記連鎖球菌Mタンパク質の2つの異なるエピトープに対して同時結合を呈する能力を有する、請求項1~8のいずれかに記載の抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに規定の抗体および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
A群連鎖球菌などの連鎖球菌感染症を治療するための、請求項1~9のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項12】
ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、ELISA、および免疫蛍光から選択される応用における、請求項1~9のいずれかに規定の抗体の使用。
【請求項13】
二重Fabシス抗体結合により分子の2つの異なるエピトープに対して結合を呈する抗体。
【請求項14】
二重Fabシス抗体結合により分子の2つの異なるエピトープに対して同時結合を呈する抗体を得るための方法であって、
- 免疫応答などが生じるように前記分子に曝露されたドナーから抗体を得る工程、
- 前記抗体を酵素反応により前記抗体から単一Fab断片に切断する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片を酵素反応により前記抗体から切断する工程、
- インタクト抗体の結合と、F(ab’)2-断片および前記単一Fab断片の結合とを測定および比較する工程、
- 抗体結合と比較して、単一Fab結合の有意な低減を確認する工程
を含み、
それにより前記抗体を特定および提供する、方法。
【請求項15】
分子に結合した抗体F(ab’)2-断片を架橋するための方法であって、
- 抗体F(ab’)2-断片を酵素反応により前記抗体から切断する工程、
- 前記抗体F(ab’)2-断片を単離する工程、
- 前記抗体F(ab’)2-断片および前記分子を溶液中で接触させる工程
- 前記溶液にスベリン酸ジサクシンイミジルを添加し、反応の進行を可能にする工程、
- 架橋反応をクエンチする工程
を含み
それにより、架橋抗体F(ab’)2-断片を得る、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療科学、免疫学、および医薬製品の分野に関する。本発明は、免疫系に影響を及ぼし、連鎖球菌感染症などの病原性感染症を阻害することが可能な抗体および組成物を提供する。また、本発明は、そのような抗体を得るための方法、ならびにそのような抗体の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
抗体は、病原性細菌などの外部侵入物質を認識および中和するために使用される免疫系の必須成分である。抗体は、B細胞受容体がリンパ組織の特定の抗原と反応した後、B細胞により産生される。B細胞成熟および抗体発生は、多種多様な標的の結合を可能にする並外れた多様性を可能にするように進化している。V(D)J組換え事象ならびに体細胞超変異は、抗体可変ドメインの膨大なレパートリーを生み出す。B細胞活性化、クローン拡大増殖、成熟、およびクラススイッチの結果は、感染因子に対する長期的防御を提供するIgG抗体の生成である。IgG抗体は、2つの同一のFab断片および1つのFcドメインで構成されるY字型分子であり、独自の特異性は、Fabと抗原との相互作用により提供される。IgGは、典型的には、いずれかのFabで結合し、抗原密度および構成に応じて、同じ抗原の2つのコピーとの結合力によってより高い強度で結合することができる(KleinおよびBjorkman 2010年)。本発明は、この後者の形態の結合を二重Fabトランス結合と称する。標的に結合すると、IgG分子は、免疫細胞上のFc受容体のクラスター化を引き起こすことによりエフェクター機能を実施し、それにより、細胞シグナル伝達が誘導され、食作用、免疫認識、および活性化などの様々な下流効果がもたらされる。
【0003】
A群連鎖球菌(GAS)は、一般的なヒト病原体であり、ヒト集団において著しい罹患率および死亡率を引き起こし、重度侵襲性感染症の重要な原因因子である。この細菌は、食作用に対する抵抗性および幾つかの免疫グロブリン標的機序(IdeS、EndoS、タンパク質M/H)を含む、ヒト免疫応答に対抗するための広範な一連の対策を進化させてきた。病原性決定因子である連鎖球菌Mタンパク質は、反復領域(A、B、S、C、およびD)を有する長鎖コイルドコイル構造を有する。こうした領域は、典型的には、異なるタンパク質相互作用に関連付けられており、C4BPおよびアルブミンなどの体液性免疫応答の多数の成分に結合し、フィブリノゲンと複合体を形成し、こうした複合体は血管漏出を誘導し、食作用抵抗性に寄与する。また、Mタンパク質は、IgG Fcドメインを捕捉することによりIgGの向きを反転させ、それにより食作用を低減させることができる。こうした病原性機序は、免疫系から重要な防御機能を奪い、GASが宿主内におよび集団全体に広まることを可能にする。
【0004】
GAS感染は体液性免疫応答を生成し、防御メモリーB細胞免疫の生成には、反復曝露が必要であると考えられる。抗細菌モノクローナル抗体療法の候補は一般に少数であり、GASに使用可能なものは存在しない。GASに対するワクチンの開発には多大な労力が費やされている(DaleおよびWalker 2020年)、主な免疫抗原は、Mタンパク質、特にMタンパク質に基づくペプチドである(Azuarら 2019年)。しかしながら、GASに対する効果的なワクチンは現在まで承認されていない。免疫の生成を非常に難しくするものが何かであるか不明であるが、抗体サブセットの形成可能性は、免疫優性領域または潜在エピトープにより抑制される(Ozberkら 2018年)。重度の生命を脅かす侵襲性GAS感染症では、それらの有効性に関する報告が矛盾した結果を示しているにも関わらず、ヒトプール血漿に由来する静脈内IgG抗体(IVIG)が療法として使用されている。また、ヒト血漿に由来する医薬には安全性の問題が依然として存在する。したがって、こうした重篤疾病患者を治療するための新しい方法を見出すことが切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、病原性細菌およびウイルスなどの外部侵入物質に起因する疾患と闘うための効果的で安全な新しい抗体が必要とされている。1つのそのような病原性細菌は、A群連鎖球菌(GAS)である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以前にGAS感染を経験したことがある健常ドナーに由来する抗Mタンパク質抗体は、こうした抗体がGASおよびMタンパク質に曝露された際にそれらと結合し、細菌凝集、NFkB活性化、食作用、およびin vivo防御を含む一連の防御免疫機能を含む種々の効果を発揮することを発見した。また、本発明者らは、モノクローナルIgG抗体の1つの2つの同一Fabが同じ分子上の2つの異なるエピトープに同時に結合するという新しいタイプの相互作用を特定した。この形態の結合を二重Fabシス結合と称する。
【0007】
第1の態様では、本発明は、連鎖球菌Mタンパク質に結合する抗体であって、
配列A1~A18を含む相補性決定領域(CDR)H3ループであり、
A1はCであり、A2はAもしくはVであり、A3はRもしくはKであり、A4は、S、N、Q、もしくはDであり、A5は、Y、S、G、もしくは不在であり、A6は、P、F、もしくは不在であり、A7は、H、R、D、もしくは不在であり、A8は、K、S、もしくはTであり、A9はRもしくはGであり、A10は、W、G、もしくはFであり、A11は、L、Y、E、もしくはWであり、A12はRもしくは不在であり、A13は、P、F、D、もしくはGであり、A14は、P、F、A、もしくはIであり、A15はFであり、A16はDもしくはEであり、A17はYもしくはIであり、A18はWであるか、または配列A1~A18は、それに6つ以下の保存的置換を含む、相補性決定領域(CDR)H3ループ、および
配列B1~B17を含むCDR L3ループであり、
B1はQであり、B2はYもしくはRであり、B3は、N、D、もしくはSであり、B4は、S、N、もしくはGであり、B5は、Y、L、もしくはWであり、B6はPであり、B7は、V、L、S、もしくはPであり、B8はIもしくは不在であり、B9はFもしくは不在であり、B10はTであり、B11はFであり、B12はGであり、B13は、Q、G、もしくはPであり、B14はGであり、B15はTであり、B16はKであり、B17はVであるか、または配列B1~B17は、それに6つ以下の保存的置換を含む、CDR L3ループ
を含む抗体を提供する。
【0008】
一実施形態では、抗体は、
- 重鎖としての配列番号9および軽鎖としての配列番号13を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号10および軽鎖としての配列番号14を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号11および軽鎖としての配列番号15を含む抗体、ならびに
- 重鎖としての配列番号12および軽鎖としての配列番号16を含む抗体
からなる群から選択される。
【0009】
別の実施形態では、本発明の抗体は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)SF370との結合により決定して50×10-9M-1未満のKDで連鎖球菌Mタンパク質に結合する。
【0010】
本発明の抗体は、細菌凝集を媒介する能力を有することが見出された。さらなる実施形態では、本発明による抗体は、NFkB活性化を媒介することが見出された。本発明のまたさらなる実施形態では、本発明の抗体は、食作用を誘導する能力を有することが見出された。
【0011】
またさらなる実施形態では、本発明の抗体は、二重Fabシス抗体結合により連鎖球菌Mタンパク質の2つの異なるエピトープに対して同時結合を呈する能力を有する。
【0012】
第2の態様では、本発明は、上記で規定された抗体および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
一実施形態では、医薬組成物は、2つまたはそれよりも多くの異なる抗体を含む。
【0014】
第3の態様では、本発明は、A群連鎖球菌感染症などの連鎖球菌感染症を治療するための、第1の態様による抗体の使用を提供する。
【0015】
第4の態様では、本発明は、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、ELISA、および免疫蛍光から選択される応用における、本発明の抗体の使用を提供する。
【0016】
第5の態様では、本発明は、二重Fabシス抗体結合によりタンパク質の2つの異なるエピトープに対して結合を呈する抗体を提供する。
【0017】
第6の態様では、本発明は、二重Fabシス抗体結合により分子の2つの異なるエピトープに対して同時結合を呈する抗体を得るための方法であって、
- 免疫応答などが生じるように分子に曝露されたドナーから抗体を得る工程、
- 抗体を酵素反応により抗体から単一Fab断片に切断する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片を酵素反応により抗体から切断する工程、
- インタクト抗体の結合と、F(ab’)2-断片および単一Fab断片の結合とを測定および比較する工程、
- 抗体結合と比較して、単一Fab結合の有意な低減を確認する工程
を含み、
それにより抗体を特定および提供する、方法を提供する。
【0018】
二重Fabシス抗体結合を呈する抗体を得るための方法の一実施形態では、分子の2つの異なるエピトープは、連鎖球菌Mタンパク質などのタンパク質の2つの異なるエピトープである。
【0019】
第7の態様では、本発明は、分子に結合した抗体F(ab’)2-断片を架橋するための方法であって、
- 抗体F(ab’)2-断片を酵素反応により抗体から切断する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片を単離する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片および分子を溶液中で接触させる工程
- 溶液にスベリン酸ジサクシンイミジルを添加し、反応の進行を可能にする工程、
- 架橋反応をクエンチする工程
を含み、
それにより、架橋抗体F(ab’)2-断片を得る、方法を提供する。
【0020】
加えて、本発明による抗体は、既知の抗体および抗体組成物と比較して、細菌凝集、NFκB活性化、食作用、および/またはin vivo防御を含む一連の防御免疫機能を効果的に呈するための特性の向上を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ヒト単一細胞由来M特異的抗体の発生を可能にする抗原ベイティング(antigen-baiting)のための方法を示す図であり、B細胞は、Rosettesep Bを使用して単離され、生存し(Syto9-FITC陰性)、CD19を発現し(PE)、CD3を欠如し(BV510)、IgGおよびMタンパク質に対して二重陽性だった(それぞれBV410およびAF647)単一リンパ球にFACS選別された。
【
図2】SF370(GFP形質転換)細菌を表示の抗体で染色し、二次Fab抗Fab抗体(AF647にコンジュゲートされた)を使用して、フローサイトメトリー分析用のシグナルを生成させたことを示す図である。フローヒストグラムの右上隅の数字は、蛍光強度中央値を示す。
【
図3】WT SF370およびΔM SF370の染色を比較することにより、成功した抗体の特異性を評価したことを示す図である。
【
図5】総抗体濃度の関数としての、対数増殖中期SF370またはM突然変異体に対する特異的抗体の測定結合値(暗色エラーバー)を、最小二乗法を使用してフィッティングした結合曲線(暗色曲線)と共に示すプロットを示す図である。下段の3つのプロットは、左下の結合曲線のフィッティングに従って正規化した非特異的抗体による対照であり、それにより結合は3つの対照間で比較可能になった。フィッティングのK
D値は、ブートストラップ法を使用して計算された信頼区間と共に、各プロットに示されている。使用した抗体(抗体断片)は、各グラフの右上側に表示されている。
【
図6】IdeS切断α-M抗体で染色され、Dylight488コンジュゲートFab α-Fab断片でプローブされた細菌に対して、構造化照明顕微鏡(SIM)超解像度画像化を実施したことを示す図である。AF647コンジュゲートWGAを、細菌構造を強調するための対比染色として使用した。スケールバーは5μmを表す。
【
図7】抗体を、Mタンパク質に対する反応性についてELISAアッセイで試験したことを示す図である。XolairおよびPBSを陰性対照として使用した。450nmの吸光度を測定し、四重重複ウェルの平均としてプロットした。
【
図8】言及されている抗体を2μg/mlの濃度で用いてプローブしたことを示す図である。対数増殖させたWTおよびΔM SF370細菌のタンパク質ライセートをSDS-PAGEに流し、ブロッティングした後、抗体でプローブした。
【
図9】細菌凝集に対する抗体混合物(上段グラフ)または個々の抗体(下段グラフ)の効果の経時分析を、OD
600測定により評価した図である。
【
図10】THP-1-blue細胞を、抗M特異的抗体と共にまたは伴わずにM1タンパク質(2μg/ml)で処理したことを示す図である。表示されているデータは、3回行われた実験を表す三重重複試料からのものである。エラーバーはSEMを表す。統計的有意性は、クラスカル-ワリス多重比較補正を行った一元配置ANOVAを使用して評価した。
*はp≦0.05、
**はp≦0.01、
***はp≦0.001、および
****はp≦0.0001を示す。
【
図11】細菌に付随した細胞のパーセンテージをMOPの関数として表す曲線を示す図である。挿入図には、各オプソニン化条件のMOP
50が表示されている。THP-1細胞を、漸増MOPの熱死滅SF370細菌と共にインキュベートした。細菌との付随および内部移行を30分間可能にした後、THP-1細胞をフローサイトメトリー分析した。
【
図12】FITCチャネルにおけるTHP1細胞のMFIが、MOP400の細菌とTHP1細胞との付随に対する各抗体の効果を示すことを表す図である。
【
図13】各MOP毎にプロットした、内部移行細菌を含む細胞のパーセンテージを示す図である。
【
図14】400のMOPにおける、10μg/mlの個々の抗体で予めオプソニン化された内部移行細菌を有するTHP1細胞のMFI(内部移行細菌チャネル)を示す図である。
【
図15】一連の濃度(0.017~40μg/ml)のAb25(グラフの上部の記号)またはXolair(グラフの下部の記号)でオプソニン化された熱死滅SF370を、MOP150でTHP1細胞とインキュベートしたことを示す図である。この図に示されているデータは、3つの独立実験をプールした結果からのものである。エラーバーはSEMを表す。統計的有意性は、クラスカル-ワリス多重比較補正を行った一元配置ANOVAを使用して評価し、
*はp≦0.05、
**はp≦0.01、
***はp≦0.001、および
****はp≦0.0001を示す。
【
図16】脾臓、腎臓、および肝臓組織の細菌量をコロニー計数により測定したことを示す図である。
【
図17】血漿中のサイトカインレベルを、サイトメトリービーズアレイを使用して評価したことを示す図である。データは、2つの独立実験(1セット当たり1条件当たり5匹のマウス)からプールされている。
【
図18】抗体Ab25、Ab26、Ab32、およびAb49の、アミノ酸配列レベルでのL3-H3ループ差異を反映する複数の配列アラインメントを示す図である。
【
図19】モデル化抗体Ab25、Ab32、およびAb49のFab断片を表す図である。各抗体には、CDR H3およびL3ループが示されている(Ab25、黄色;Ab32、緑色;およびAb45、青緑色)。
【
図20】Ab25(黄色 CDRループ)、Ab32(緑色 ループ)、およびAb49(青緑色 ループ)の構造アラインメントを示す図である。
【
図21】Ab25のM1相互作用部位(赤)を示す図である。図間には、y軸での60°回転が適用されている。接触表面の長さは、上部結合部位(B2-B3ドメイン)では45Å、下部(Cドメイン)では18Åである。
【
図22】Ab49のM1相互作用部位(青緑色)を表す図である。Ab49の接触の長さ(B2-B3ドメイン)はおよそ16Åである。
図21および22の挿入図は、TX-MS(Hauriら 2019年)により生成された全長モデルを表し、Ab25またはAb49(重鎖は濃赤色、軽鎖は明色網掛け)とM1タンパク質(灰色)とのFab媒介姓相互作用を示す。架橋ペプチドは濃青色で、リジン(K)残基間の架橋は黒色破線で示されている。CDR H3ループは、黄色(Ab25の場合)または赤色(Ab49の場合)で示されている。M1タンパク質にはAb25との相互作用部位が2つあり、B2-B3ドメインの上部部位(挿入図)は4つの架橋により支持されており、C1ドメインの下部部位(挿入図)は6つの架橋により支持されている。Ab49とM1との相互作用部位は1つだけ存在し、2つの架橋により支持されている。
【
図23】FabエピトープならびにMタンパク質上のFc結合領域は、構造化照明顕微鏡(SIM)画像を使用した蛍光局在化平均法(fluorescence localization averaging method)(Kumra Ahnlideらの原稿 2020年)により推定されることを示す図である。相対的結合部位は、多数の画像の累積シグナルを使用して、抗体チャネルと参照チャネルとの距離(WGA)を解像することにより決定される。結果は、それぞれN=9、13、9、9の4つの独立実験からのものである。
【
図24】表示の抗体試料(10μg/ml)による前処理後のAlexa647コンジュゲートXolair(100μg/ml)とSF370との結合のデータを示す図である。データは、一緒にプールした3つの独立実験からのものである。統計的有意性は、クラスカル-ワリス多重比較補正を行った一元配置ANOVAを使用して評価し、
*はp≦0.05、
**はp≦0.01、
***はp≦0.001、および
****はp≦0.0001を示す。
【
図25】Fc結合を介した細菌に対するXolair結合の結果を示す図である。事前にOregon Greenで染色した熱死滅細菌を、10μg/mlのAb25またはIgdE消化(Spoerryら 2016年)Ab25(Fab)と共にインキュベートした。次いで、細菌を、蛍光標識Xolair(AF647)と共にインキュベートした後で、フローサイトメトリーで分析した。Fc結合を介してXolairに結合した細菌は、陽性として示されている。
【
図26】実施した競合抗Mタンパク質ELISAの結果を示す図であり、遊離M1断片を等モル比(10μg/ml)のAb25と混合した。次いで、ウェルを洗浄し、プロテインG-HRPを使用してシグナルを発生させた。
【
図27】抗体を、熱死滅Oregon Green細菌と混合し、次いでそれを洗浄し、Alexafluor647コンジュゲートFab抗Fabで染色し、フローサイトメトリーで分析することにより研究した、Xolair、IdeS切断またはIgdE切断Ab25またはAb49の結合特性に関する実験の結果を示す図である。右側のパネルは、結合分析で使用した抗体のSDS-PAGE分析を示す。
【
図28】実施例1(
図1~5)に記載のように実施したAb25およびAb49のIgdE処理により生成されたFabに対する親和性を示す図である。新しいFabデータは、
図5のデータに重ねられている。データは、4つの独立実験からプールした結果を表す。統計的有意性は、クラスカル-ワリス多重比較補正を行った一元配置ANOVAを使用して評価し、
*はp≦0.05、
**はp≦0.01、
***はp≦0.001、および
****はp≦0.0001を示す。
【
図29】重鎖および軽鎖の可変領域のクローニングRT-PCRからの10個の抗体対を示す図である。
【
図30】凝集の測定に使用したキュベットの画像を示す図である。SF370一晩培養物をTHYで1:5に希釈し、抗体(100μg/ml)と共にプラスチックキュベット内で3時間、37℃にてインキュベートした後でOD
600を測定した。抗体混合物(各々100μg/mlのAb25、32、および49)の凝集効果を、WT細菌およびΔM細菌で比較した。陽性対照としてドナー血漿を使用した。
【
図31】三重抗体カクテルならびに個々の抗体の両方の用量依存性凝集を示す図である。
【
図32】凝集細菌ならびに典型的なGAS凝集体は、抗M抗体または血漿の存在下で激しくボルテックスすることにより消散することを示す図である。
【
図33A】プレイの多重度(MOP)を漸増させた、pH感受性CypHer5染色細菌と貪食THP-1細胞とのインキュベーションを示す図である。本発明者らは、Ab25、32、および49を組み合わせて、THP-1細胞との細菌付随に対する累積効果を評価した。THP-1細胞を、FSCおよびSCCに基づいてゲート制御した。FSC面積および高さパラメーターに基づいて、単一細胞を選択した。非相互作用細胞は、FITC(細菌)またはCypHer5E(内部移行細菌)シグナルを示さない。細菌に付随した相互作用細胞は、左上象限(外側)へのシフトを示すが、細菌に内部移行されたTHP-1細胞は、APCシグナルの取得により右上象限にシフトする。細菌を接種したTHP-1細胞を氷上で維持して食作用を低減させた。これは、右上象限の事象数の低減として視認可能である。
【
図33B】プレイの多重度(MOP)を漸増させた、pH感受性CypHer5染色細菌と貪食THP-1細胞とのインキュベーションを示す図である。本発明者らは、Ab25、32、および49を組み合わせて、THP-1細胞との細菌付随に対する累積効果を評価した。THP-1細胞を、FSCおよびSCCに基づいてゲート制御した。FSC面積および高さパラメーターに基づいて、単一細胞を選択した。非相互作用細胞は、FITC(細菌)またはCypHer5E(内部移行細菌)シグナルを示さない。細菌に付随した相互作用細胞は、左上象限(外側)へのシフトを示すが、細菌に内部移行されたTHP-1細胞は、APCシグナルの取得により右上象限にシフトする。細菌を接種したTHP-1細胞を氷上で維持して食作用を低減させた。これは、右上象限の事象数の低減として視認可能である。
【
図34】Ab25による食作用増強を示す図である。10μg/mlのXolairまたはAb25を使用して、様々なM血清型にわたる食作用増強を研究した。M1 SF370株に加えて、血清型M1(AP1)、M12、M89、およびM5を有するGASを比較した。内部移行率に対する抗体処理の効果を、フローサイトメトリーにより測定した。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。データは3つの独立実験からのものである。
【
図35】抗体とM1タンパク質との間の架橋ペプチドを特定するためのM/Sデータを示す図である(パネルA~F)。
【
図36】抗体とM1タンパク質との間の架橋ペプチドを特定するためのM/Sデータを示す図である(パネルG~L)。
【
図37】Mタンパク質のB1B2B3領域ならびにC1C2C3領域にわたる断片に対するAb25(30μg/ml)またはIVIG(1mg/ml)のELISA反応性を示す図である。全長M1およびGFPは、それぞれ陽性対照および陰性対照としての役目を果たす。3つの独立実験がSDと共に示されている。
【
図38】使用したMタンパク質断片の配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1の態様では、本発明は、連鎖球菌Mタンパク質に結合する抗体であって、
配列A1~A18を含む相補性決定領域(CDR)H3ループであり、
A1はCであり、A2はAもしくはVであり、A3はRもしくはKであり、A4は、S、N、Q、もしくはDであり、A5は、Y、S、G、もしくは不在であり、A6は、P、F、もしくは不在であり、A7は、H、R、D、もしくは不在であり、A8は、K、S、もしくはTであり、A9はRもしくはGであり、A10は、W、G、もしくはFであり、A11は、L、Y、E、もしくはWであり、A12はRもしくは不在であり、A13は、P、F、D、もしくはGであり、A14は、P、F、A、もしくはIであり、A15はFであり、A16はDもしくはEであり、A17はYもしくはIであり、A18はWであるか、または配列A1~A18はそれに6つ以下の保存的置換を含む、相補性決定領域(CDR)H3ループ、および
配列B1~B17を含むCDR L3ループであり、
B1はQであり、B2はYもしくはRであり、B3は、N、D、もしくはSであり、B4は、S、N、もしくはGであり、B5は、Y、L、もしくはWであり、B6はPであり、B7は、V、L、S、もしくはPであり、B8はIもしくは不在であり、B9はFもしくは不在であり、B10はTであり、B11はFであり、B12はGであり、B13は、Q、G、もしくはPであり、B14はGであり、B15はTであり、B16はKであり、B17はVであるか、または配列B1~B17は、それに6つ以下の保存的置換を含む、CDR L3ループ
を含む抗体を提供する。
【0023】
一実施形態では、抗体は、1つ以下の保存的置換など、3つ以下の保存的置換を含む配列A1~A18を有する。第2の実施形態では、抗体は、1つ以下の保存的置換など、3つ以下の保存的置換を含む配列B1~B18を有する。
【0024】
保存的置換は、本明細書で使用される場合、表1~3の1つまたは複数の群の1つまたは複数に反映されているアミノ酸のクラス内の置換であると定義される。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
一実施形態では、抗体は、
配列A1~A18を含む相補性決定領域(CDR)H3ループであり、
A1はCであり、A2はAまたはVであり、A3はRまたはKであり、A4は、S、N、Q、またはDであり、A5は、Y、S、G、または不在であり、A6は、P、F、または不在であり、A7は、H、R、D、または不在であり、A8は、K、S、またはTであり、A9はRまたはGであり、A10は、W、G、またはFであり、A11は、L、Y、E、またはWであり、A12はRまたは不在であり、A13は、P、F、D、またはGであり、A14は、P、F、A、またはIであり、A15はFであり、A16はDまたはEであり、A17はYまたはIであり、A18はWである、相補性決定領域(CDR)H3ループ、および
配列B1~B17を含むCDR L3ループであり、
B1はQであり、B2はYまたはRであり、B3は、N、D、またはSであり、B4は、S、N、またはGであり、B5は、Y、L、またはWであり、B6はPであり、B7は、V、L、S、またはPであり、B8はIまたは不在であり、B9はFまたは不在であり、B10はTであり、B11はFであり、B12はGであり、B13は、Q、G、またはPであり、B14はGであり、B15はTであり、B16はKであり、B17はVである、CDR L3ループ
を含む。
【0029】
本発明のいずれかによる抗体は、好ましくは、ストレプトコッカス・ピオゲネスSF370との結合により決定して50×10-9M-1未満のKDで連鎖球菌Mタンパク質に結合する。一実施形態では、抗体は、15×10-9M-1未満、5×10-9M-1未満、または1×10-9M-1未満のKDで連鎖球菌Mタンパク質に結合する。
【0030】
さらなる実施形態では、本発明の抗体は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4から選択されるCDR H3ループを有する。
配列番号1は、CARSYPHKRWLRPPFDYWである。
配列番号2は、CAKNSRSGWYFFFDYWGQである。
配列番号3は、CARQGFDTRGEDAFEIWGである。
配列番号4は、CVRDSRFWGIFDYWGQGTである。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明による抗体は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、および配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12と比べて20個未満の保存的アミノ酸置換を有する任意のバリアント配列から選択されるH3鎖を有する。
【0032】
Ab25のH3鎖は、以下の配列を有する配列番号9である:
VQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYAMHWVRQAPGKGLEWVALISYDGRNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARSYPHKRWLRPPFDYWGQGTLVTVSS
【0033】
Ab26のH3鎖は、以下の配列を有する配列番号10である:
VQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGNNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQVNSLRAEDTAVYYCAKNSRSGWYFFFDYWGQ
【0034】
Ab32のH3鎖は、以下の配列を有する配列番号11である:
VQLVESGGGLVRPGGSLRLSCVASGFMFNEYYMSWIRQAPGKGLEWISFISNAGTYTNYAESVKGRFTISRDNAKDSLYLEMNSLRGEDTAVYYCARQGFDTRGEDAFEIWGQGTMVTVSS
【0035】
Ab49のH3鎖は、以下の配列を有する配列番号12である:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTVSINYMSWVRQAPGKGLQWVSVIYSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAMYYCVRDSRFWGIFDYWGQGTLVTVSS
【0036】
一部の実施形態では、抗体は、10個未満の保存的アミノ酸置換、5つ未満の保存的アミノ酸置換、または2つ未満の保存的アミノ酸置換を有するH3鎖のバリアント配列を含む。
【0037】
別の実施形態では、抗体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8から選択されるCDR L3ループを含む。
配列番号5は、QYNSYPVTFGQGTKVdである。
配列番号6は、QYDNLPLTFGGGTKVである。
配列番号7は、QRSGWPSIFTFGPGTKVである。
配列番号8は、QRSNWPPTFGQGTKVである。
【0038】
さらなる実施形態では、本発明による抗体は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号13、配列番号14、配列番号15、または配列番号16と比べて20個未満の保存的アミノ酸置換を有する任意のバリアント配列から選択されるL3鎖を有する。
【0039】
Ab25のL3鎖は、以下の配列を有する配列番号13である:
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFASYCCQQYNSYPVTFGQGTKVDIK
【0040】
Ab26のL3鎖は、以下の配列を有する配列番号14である:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQYDNLPLTFGGGTKVEIK
【0041】
Ab32のL3鎖は、以下の配列を有する配列番号15である:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQPLSGYLAWYQQKPGQAPRLLIYNASKRATGIPARFTGSGSGTDFTLTISSLESEDFAVYYCQQRSGWPSIFTFGPGTKVDIK
【0042】
Ab49のL3鎖は、以下の配列を有する配列番号16である:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQRKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK
【0043】
一部の実施形態では、抗体は、10個未満の保存的アミノ酸置換、5つ未満の保存的アミノ酸置換、または2つ未満の保存的アミノ酸置換を有するL3鎖のバリアント配列を含む。
【0044】
さらなる実施形態では、抗体は、
- 重鎖としての配列番号17および軽鎖としての配列番号21を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号18および軽鎖としての配列番号22を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号19および軽鎖としての配列番号23を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号20および軽鎖として配列番号24を含む抗体、ならびに
- 上記抗体のいずれかのバリアントであり、バリアントは、好ましくは、重鎖および/または軽鎖の各々に多くとも1、2、5、または10個のアミノ酸改変、より好ましくは、上記配列に保存的アミノ酸置換などのアミノ酸置換を有する、抗体
からなる群から選択される。
【0045】
Ab25の重鎖は、以下の配列を有する配列番号17である:
MGWSCIILFLVATATGVHSEVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYAMHWVRQAPGKGLEWVALISYDGRNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARSYPHKRWLRPPFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0046】
Ab26の重鎖は、以下の配列を有する配列番号18である:
MGWSCIILFLVATATGVHSEVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGNNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQVNSLRAEDTAVYYCAKNSRSGWYFFFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0047】
Ab32の重鎖は、以下の配列を有する配列番号19である:
MGWSCIILFLVATATGVHSEVQLVESGGGLVRPGGSLRLSCVASGFMFNEYYMSWIRQAPGKGLEWISFISNAGTYTNYAESVKGRFTISRDNAKDSLYLEMNSLRGEDTAVYYCARQGFDTRGEDAFEIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0048】
Ab49の重鎖は、以下の配列を有する配列番号20である:
MGWSCIILFLVATATGVHSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTVSINYMSWVRQAPGKGLQWVSVIYSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAMYYCVRDSRFWGIFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0049】
Ab25の軽鎖は、以下の配列を有する配列番号21である:
MGWSCIILFLVATATGVHSDIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFASYCCQQYNSYPVTFGQGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0050】
Ab26の軽鎖は、以下の配列を有する配列番号22である:
MGWSCIILFLVATATGVHSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQYDNLPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0051】
Ab32の軽鎖は、以下の配列を有する配列番号23である:
MGWSCIILFLVATATGVHSEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQPLSGYLAWYQQKPGQAPRLLIYNASKRATGIPARFTGSGSGTDFTLTISSLESEDFAVYYCQQRSGWPSIFTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0052】
Ab49の軽鎖は、以下の配列を有する配列番号24である:
MGWSCIILFLVATATGVHSEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQRKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0053】
別の実施形態では、本発明の抗体は、
- 重鎖としての配列番号17および軽鎖としての配列番号21を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号18および軽鎖としての配列番号22を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号19および軽鎖として配列番号23を含む抗体、ならびに
- 重鎖としての配列番号20および軽鎖としての配列番号24を含む抗体
からなる群から選択される。
【0054】
別の実施形態では、本発明の抗体は、
- 配列番号17および配列番号21の6つのCDRのすべてを含む抗体、
- 配列番号18および配列番号22の6つのCDRのすべてを含む抗体、
配列番号19および配列番号23の6つのCDRのすべてを含む抗体、ならびに
配列番号20および配列番号24の6つのCDRのすべてを含む抗体
からなる群から選択される。
【0055】
一実施形態では、本発明による抗体は、細菌凝集を媒介する能力を有する。
【0056】
別の実施形態では、本発明による抗体は、NFkB活性化を媒介する能力を有する。
【0057】
さらに別の実施形態では、本発明による抗体は、食作用を誘導する能力を有する。
【0058】
さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、二重Fabシス抗体結合により、連鎖球菌Mタンパク質の2つの異なるエピトープに対して同時結合を呈する能力を有する。一実施形態では、抗体は、a)BリピートおよびCリピート、b)線状配列、またはc)3次元構造である、連鎖球菌Mタンパク質の2つの異なるエピトープを有する。
【0059】
「二重Fabシス抗体結合」という用語は、本明細書で使用される場合、1つの結合部位のみが標的分子の2つの個別の結合部位に結合する抗体による結合を意味することが意図されている。したがって、二重Fabシス抗体結合は、各々が標的分子の2つの部位の1つに結合する2つの独立した可変部位を含む既知の二重特異性抗体による結合とは異なる。Ab25は、分子内シス結合様式で2つの個別の非同一エピトープに二重Fabシス結合することが可能である。
【0060】
Ab25が呈する別々のエピトープに対する二重Fabシス結合の要件は、抗体に見出されるすでに驚くべき多様性に加えて、予想外の機能的抗体相互作用の様式である(Kanyavuzら、2019年)。二重Fabシス結合に関連する現象は、抗HIV 2G12抗体の場合であり(Trkolaら、1996年)、この抗体は、Fab二量体化をもたらす突然変異をそのヒンジ領域に有する(Gachら、2010年)。2G12の2つのFabは高マンノース糖に結合するが、それらの非正統的な二量体化という事実のため、本質的に1つの大きなFabとして挙動する(Calareseら、2005年)。実際、複数の抗HIVグリカン抗体間の通常の単一Fabに基づく相互作用は、2G12と同様の生物学的結果をもたらした(総説は、Kongら、2014年を参照)。これは、2G12が非正統的な構造を有する一方で、その機能は、特定のエピトープと相関しており、個別様式の相互作用によるものではないことを示す。非正統的抗体の状況では、機能を向上させるために、二重特異性抗体(KontermannおよびBrinkmann、2015年)または抗原クラスピング抗体(antigen clasping antibody)(Hattoriら、2016年)が遺伝子操作されており、本発明は、進化が同様の結果をもたらしたことを示す。本発明は、機能的抗体をスクリーニングする際に、FabではなくF(ab’)2断片を使用することに関するこれまで知られていない付加価値を明らかにする。
【0061】
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0062】
一実施形態では、医薬組成物は、本発明により規定される2つまたはそれよりも多くの異なる抗体を含む。
【0063】
本明細書に開示される本発明の抗体および抗体組成物は、個体の細菌感染症またはウイルス感染症と闘うために使用することができる。特に、抗体は、A群連鎖球菌による感染症を治療するために使用することができる。
【0064】
静脈内投与または皮下投与などの非経口投与のための医薬組成物は、投与のためには、液体製剤であってもよくまたは固体製剤であってもよい。再構成用の固形製剤は、注射または輸注により送達することができる。そのような製剤は、典型的には無菌製品である。
【0065】
治療方法は、単回投与または一定期間にわたる複数回投与で構成されていてもよい。
【0066】
特定の治療および治療しようとする個体ならびに投与経路に応じて、組成物は、様々な用量および/または頻度で投与することができる。
【0067】
医薬組成物は、製造および保管条件下で安定でなければならない。したがって、必要に応じて、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保存されるべきである。溶液などの液体製剤の場合、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、緩衝剤、等張化剤、およびそれらの好適な混合物を含む溶媒であってもよい。
【0068】
本発明の治療方法で使用するための組成物は、担体、溶媒、pH調整剤、緩衝剤、安定剤、界面活性剤、可溶化剤、保存剤などの少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0069】
特に上記で言及した成分に加えて、本発明の製剤は、懸案の製剤のタイプに関して当技術分野で慣用されている他の作用剤を含んでいてもよいことが理解されるべきである。当業者であれば、好適な製剤をどのように選択し、それをどのように調製するかを知っているだろう(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第18版またはそれ以降を参照)。また、当業者であれば、好適な投与経路および投薬量を選択する方法を知っているだろう。
【0070】
さらなる態様では、本発明は、A群連鎖球菌などの連鎖球菌感染症を治療するための本発明の抗体の使用を提供する。
【0071】
一実施形態では、本発明による抗体の使用は、敗血症の治療のためである。
【0072】
さらなる実施形態では、抗体の使用は、静脈内、皮下、または筋肉内などの非経口投与を含む。
【0073】
一実施形態では、この使用は、静注用免疫グロブリン(IVIG)との組合せである。別の実施形態では、本発明の医薬組成物の使用は、敗血症の治療のためである。さらなる実施形態では、抗体のこの使用は、静脈内、皮下、または筋肉内投与を含む。
【0074】
さらなる態様では、本発明は、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、ELISA、および免疫蛍光から選択される応用における、本発明の抗体の使用を提供する。
【0075】
さらなる態様では、本発明は、二重Fabシス抗体結合により分子の2つの異なるエピトープに対して結合を呈する抗体を提供する。一実施形態では、分子の2つの異なるエピトープは、タンパク質または炭水化物の2つの異なるエピトープである。一実施形態では、分子はタンパク質である。別の実施形態では、タンパク質の2つの異なるエピトープは、連鎖球菌Mタンパク質の2つの異なるエピトープである。
【0076】
さらなる態様では、本発明は、二重Fabシス抗体結合により分子の2つの異なるエピトープに対して同時結合を呈する抗体を得るための方法であって、
- 免疫応答などが生じるように分子に曝露されたドナーから抗体を得る工程、
- 抗体を酵素反応により抗体から単一Fab断片に切断する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片を酵素反応により抗体から切断する工程、
- インタクト抗体の結合と、F(ab’)2-断片および単一Fab断片の結合とを測定および比較する工程、
- 抗体結合と比較して、単一Fab結合の有意な低減を確認する工程
を含み、
それにより抗体を特定および提供する方法を提供する。
【0077】
この方法の一実施形態では、タンパク質の2つの異なるエピトープは、連鎖球菌Mタンパク質の2つの異なるエピトープである。
【0078】
さらなる態様では、本発明は、分子に結合した抗体F(ab’)2-断片を架橋するための方法であって、
- 抗体F(ab’)2-断片を酵素反応により抗体から切断する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片を単離する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片および分子を溶液中で接触させる工程
- 溶液にスベリン酸ジサクシンイミジルを添加し、反応の進行を可能にする工程、
- 架橋反応をクエンチする工程
を含み、
それにより、架橋抗体F(ab’)2-断片を得る、方法を提供する。
【0079】
この方法の一実施形態では、分子は、連鎖球菌Mタンパク質などのタンパク質である。
【0080】
非限定的な実施形態の以下のリストは、本発明をさらに説明する。
1. 連鎖球菌Mタンパク質に結合する抗体であって、
配列A1~A18を含む相補性決定領域(CDR)H3ループであり、
A1はCであり、A2はAもしくはVであり、A3はRもしくはKであり、A4は、S、N、Q、もしくはDであり、A5は、Y、S、G、もしくは不在であり、A6は、P、F、もしくは不在であり、A7は、H、R、D、もしくは不在であり、A8は、K、S、もしくはTであり、A9はRもしくはGであり、A10は、W、G、もしくはFであり、A11は、L、Y、E、もしくはWであり、A12はRもしくは不在であり、A13は、P、F、D、もしくはGであり、A14は、P、F、A、もしくはIであり、A15はFであり、A16はDもしくはEであり、A17はYもしくはIであり、A18はWであるか、または配列A1~A18はそれに6つ以下の保存的置換を含む、相補性決定領域(CDR)H3ループ、および
配列B1~B17を含むCDR L3ループであり、
B1はQであり、B2はYもしくはRであり、B3は、N、D、もしくはSであり、B4は、S、N、もしくはGであり、B5は、Y、L、もしくはWであり、B6はPであり、B7は、V、L、S、もしくはPであり、B8はIもしくは不在であり、B9はFもしくは不在であり、B10はTであり、B11はFであり、B12はGであり、B13は、Q、G、もしくはPであり、B14はGであり、B15はTであり、B16はKであり、B17はVであるか、または配列B1~B17は、それに6つ以下の保存的置換を含む、CDR L3ループ
を含む抗体。
【0081】
2. 配列A1~A18は、3つ以下の保存的置換を含む、実施形態1に記載の抗体。
【0082】
3. 配列B1~B18は、3つ以下の保存的置換を含む、実施形態1に記載の抗体。
【0083】
4. 配列A1~A18は、1つ以下の保存的置換を含む、実施形態1に記載の抗体。
【0084】
5. 配列B1~B18は、1つ以下の保存的置換を含む、実施形態1に記載の抗体。
【0085】
6.
配列A1~A18を含む相補性決定領域(CDR)H3ループであり、
A1はCであり、A2はAまたはVであり、A3はRまたはKであり、A4は、S、N、Q、またはDであり、A5は、Y、S、G、または不在であり、A6は、P、F、または不在であり、A7は、H、R、D、または不在であり、A8は、K、S、またはTであり、A9はRまたはGであり、A10は、W、G、またはFであり、A11は、L、Y、E、またはWであり、A12はRまたは不在であり、A13は、P、F、D、またはGであり、A14は、P、F、A、またはIであり、A15はFであり、A16はDまたはEであり、A17はYまたはIであり、A18はWである、相補性決定領域(CDR)H3ループ、および
配列B1~B17を含むCDR L3ループであり、
B1はQであり、B2はYまたはRであり、B3は、N、D、またはSであり、B4は、S、N、またはGであり、B5は、Y、L、またはWであり、B6はPであり、B7は、V、L、S、またはPであり、B8はIまたは不在であり、B9はFまたは不在であり、B10はTであり、B11はFであり、B12はGであり、B13は、Q、G、またはPであり、B14はGであり、B15はTであり、B16はKであり、B17はVである、CDR L3ループ
を含む、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0086】
7. ストレプトコッカス・ピオゲネスSF370との結合により決定して50×10-9M-1未満のKDで連鎖球菌Mタンパク質に結合する、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0087】
8. KDは15×10-9M-1未満である、実施形態7に記載の抗体。
【0088】
9. KDは5×10-9M-1未満である、実施形態7に記載の抗体。
【0089】
10. KDは1×10-9M-1未満である、実施形態7に記載の抗体。
【0090】
11. CDR H3ループは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、および配列番号4から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0091】
12. CDR L3ループは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0092】
13. H3鎖は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、および配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12と比べて20個未満の保存的アミノ酸置換を有する任意のバリアント配列から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0093】
14. L3鎖は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、および配列番号13、配列番号14、配列番号15、または配列番号16と比べて20個未満の保存的アミノ酸置換を有する任意のバリアント配列から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0094】
15. バリアント配列は、10個未満の保存的アミノ酸置換を有する、実施形態13または14に記載の抗体。
【0095】
16. バリアント配列は、5つ未満の保存的アミノ酸置換を有する、実施形態13または14に記載の抗体。
【0096】
17. バリアント配列は、2つ未満の保存的アミノ酸置換を有する、実施形態13または14に記載の抗体。
【0097】
18. H3鎖は、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0098】
19. L3鎖は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、および配列番号16から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0099】
20.
- 重鎖としての配列番号17および軽鎖としての配列番号21を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号18および軽鎖としての配列番号22を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号19および軽鎖としての配列番号23を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号20および軽鎖としての配列番号24を含む抗体、ならびに
- 上記抗体のいずれかのバリアントであり、バリアントは、好ましくは、重鎖および/または軽鎖の各々に多くとも1、2、5、または10個のアミノ酸改変、より好ましくは、上記配列に保存的アミノ酸置換などのアミノ酸置換を有する、抗体
からなる群から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0100】
21.
- 重鎖としての配列番号17および軽鎖としての配列番号21を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号18および軽鎖としての配列番号22を含む抗体、
- 重鎖としての配列番号19および軽鎖としての配列番号23を含む抗体、ならびに
- 重鎖としての配列番号20および軽鎖としての配列番号24を含む抗体
からなる群から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0101】
22.
- 配列番号17および配列番号21の6つのCDRのすべてを含む抗体、
- 配列番号18および配列番号22の6つのCDRのすべてを含む抗体、
配列番号19および配列番号23の6つのCDRのすべてを含む抗体、ならびに
配列番号20および配列番号24の6つのCDRのすべてを含む抗体
からなる群から選択される、上記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0102】
23. 細菌凝集を媒介する能力を有する、前記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0103】
24. NFkB活性化を媒介する能力を有する、前記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0104】
25. 食作用を誘導する能力を有する、前記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0105】
26. 二重Fabシス抗体結合により連鎖球菌Mタンパク質の2つの異なるエピトープに対して同時結合を呈する能力を有する、前記実施形態のいずれかに記載の抗体。
【0106】
27. 連鎖球菌Mタンパク質の2つの異なるエピトープは、a)BリピートおよびCリピート、b)線状配列、またはc)3次元構造である、実施形態26に記載の抗体。
【0107】
28. 実施形態1~27のいずれかに規定の抗体および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0108】
29. 実施形態1~26のいずれかに規定の2つまたはそれよりも多くの異なる抗体を含む、実施形態28に記載の医薬組成物。
【0109】
30. A群連鎖球菌などの連鎖球菌感染症を治療するための、実施形態1~27のいずれかに記載の抗体の使用。
【0110】
31. 敗血症を治療するための、実施形態1~27のいずれかに記載の抗体の使用。
【0111】
32. 抗体は、静脈内、皮下、または筋肉内など、非経口投与される、実施形態30または31に記載の使用。
【0112】
33. 静注用免疫グロブリン(IVIG)との組合せである、実施形態30~32のいずれかに記載の使用。
【0113】
34. 敗血症を治療するための、実施形態28または29に規定の医薬組成物の使用。
【0114】
35. 抗体は、静脈内、皮下、または筋肉内など、非経口投与される、実施形態30~34のいずれかに記載の使用。
【0115】
36. ウエスタンブロット、フローサイトメトリー、ELISA、および免疫蛍光から選択される応用における、実施形態1~27のいずれかに記載の抗体の使用。
【0116】
37. 二重Fabシス抗体結合により分子の2つの異なるエピトープに対して結合を呈する抗体。
【0117】
38. 分子の2つの異なるエピトープは、連鎖球菌Mタンパク質などのタンパク質の2つの異なるエピトープである、実施形態37に記載の抗体。
【0118】
39. 二重Fabシス抗体結合により分子の2つの異なるエピトープに対して同時結合を呈する抗体を得るための方法であって、
- 免疫応答などが生じるように分子に曝露されたドナーから抗体を得る工程、
- 抗体を酵素反応により抗体から単一Fab断片に切断する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片を酵素反応により抗体から切断する工程、
- インタクト抗体の結合と、F(ab’)2-断片および単一Fab断片の結合とを測定および比較する工程、
- 抗体結合と比較して、単一Fab結合の有意な低減を確認する工程
を含み、
それにより抗体を特定および提供する、方法。
【0119】
40. 分子の2つの異なるエピトープは、連鎖球菌Mタンパク質などのタンパク質の2つの異なるエピトープである、実施形態39に記載の方法。
【0120】
41. 分子に結合した抗体F(ab’)2-断片を架橋するための方法であって
- 抗体F(ab’)2-断片を酵素反応により抗体から切断する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片を単離する工程、
- 抗体F(ab’)2-断片および分子を溶液中で接触させる工程
- 溶液にスベリン酸ジサクシンイミジルを添加し、反応の進行を可能にする工程、
- 架橋反応をクエンチする工程
を含み、
それにより、架橋抗体F(ab’)2-断片を得る、方法。
【0121】
42. 分子は、連鎖球菌Mタンパク質などのタンパク質である、実施形態41に記載の方法。
【0122】
参考文献
Akesson, P., Cooney, J., Kishimoto, F. and Bjorck, L. 1990. Protein H--a novel IgG binding bacterial protein. Molecular Immunology 27(6), pp. 523-531.
Akesson, P., Schmidt, K.H., Cooney, J. and Bjorck, L. 1994. M1 protein and protein H: IgGFc- and albumin-binding streptococcal surface proteins encoded by adjacent genes. The Biochemical Journal 300 ( Pt 3), pp. 877-886.
Azuar, A., Jin, W., Mukaida, S., Hussein, W.M., Toth, I. and Skwarczynski, M. 2019. Recent advances in the development of peptide vaccines and their delivery systems against group A streptococcus. Vaccines 7(3).
Bakalar, M.H., Joffe, A.M., Schmid, E.M., Son, S., Podolski, M. and Fletcher, D.A. 2018. Size-Dependent Segregation Controls Macrophage Phagocytosis of Antibody-Opsonized Targets. Cell 174(1), p. 131-142.e13.
Bournazos, S., Wang, T.T., Dahan, R., Maamary, J. and Ravetch, J.V. 2017. Signaling by antibodies: recent progress. Annual Review of Immunology 35, pp. 285-311.
Calarese, D.A., Lee, H.-K., Huang, C.-Y., Best, M.D., Astronomo, R.D., Stanfield, R.L., Katinger, H., Burton, D.R., Wong, C.-H., and Wilson, I.A. (2005). Dissection of the carbohydrate specificity of the broadly neutralizing anti-HIV-1 antibody 2G12. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 13372-13377.
Carapetis, J.R., Steer, A.C., Mulholland, E.K. and Weber, M. 2005. The global burden of group A streptococcal diseases. The Lancet Infectious Diseases 5(11), pp. 685-694.
Carlsson, F., Berggard, K., Stalhammar-Carlemalm, M. and Lindahl, G. 2003. Evasion of phagocytosis through cooperation between two ligand-binding regions in Streptococcus pyogenes M protein. The Journal of Experimental Medicine 198(7), pp. 1057-1068.
Carlsson, F., Sandin, C. and Lindahl, G. 2005. Human fibrinogen bound to Streptococcus pyogenes M protein inhibits complement deposition via the classical pathway. Molecular Microbiology 56(1), pp. 28-39.
Cedervall, T., Akesson, P., Stenberg, L., Herrmann, A. and Akerstrom, B. 1995. Allosteric and temperature effects on the plasma protein binding by streptococcal M protein family members. Scandinavian Journal of Immunology 42(4), pp. 433-441.
Collin, M. and Olsen, A. 2001. EndoS, a novel secreted protein from Streptococcus pyogenes with endoglycosidase activity on human IgG. The EMBO Journal 20(12), pp. 3046-3055.
Collin, M. and Olsen, A. 2000. Generation of a mature streptococcal cysteine proteinase is dependent on cell wall-anchored M1 protein. Molecular Microbiology 36(6), pp. 1306-1318.
Dale, J.B. and Walker, M.J. 2020. Update on group A streptococcal vaccine development. Current Opinion in Infectious Diseases.
Freeman, S.A., Vega, A., Riedl, M., et al. 2018. Transmembrane Pickets Connect Cyto- and Pericellular Skeletons Forming Barriers to Receptor Engagement. Cell 172(1-2), p. 305-317.e10.
Frick, I.M., Morgelin, M. and Bjorck, L. 2000. Virulent aggregates of Streptococcus pyogenes are generated by homophilic protein-protein interactions. Molecular Microbiology 37(5), pp. 1232-1247.
Gach, J.S., Furtmuller, P.G., Quendler, H., Messner, P., Wagner, R., Katinger, H., and Kunert, R. (2010). Proline is not uniquely capable of providing the pivot point for domain swapping in 2G12, a broadly neutralizing antibody against HIV-1. J. Biol. Chem. 285, 1122-1127.
Ghosh, P. 2018. Variation, Indispensability, and Masking in the M protein. Trends in Microbiology 26(2), pp. 132-144.
Gray, J.J. 2006. High-resolution protein-protein docking. Current Opinion in Structural Biology 16(2), pp. 183-193.
Happonen, L., Hauri, S., Svensson Birkedal, G., et al. 2019. A quantitative Streptococcus pyogenes-human protein-protein interaction map reveals localization of opsonizing antibodies. Nature Communications 10(1), p. 2727.
Hattori, T., Lai, D., Dementieva, I.S., et al. 2016. Antigen clasping by two antigen-binding sites of an exceptionally specific antibody for histone methylation. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 113(8), pp. 2092-2097.
Hauri, S., Khakzad, H., Happonen, L., Teleman, J., Malmstrom, J. and Malmstrom, L. 2019. Rapid determination of quaternary protein structures in complex biological samples. Nature Communications 10(1), p. 192.
Herr, A.B., Ballister, E.R. and Bjorkman, P.J. 2003. Insights into IgA-mediated immune responses from the crystal structures of human FcalphaRI and its complex with IgA1-Fc. Nature 423(6940), pp. 614-620.
Herwald, H., Cramer, H., Morgelin, M., et al. 2004. M protein, a classical bacterial virulence determinant, forms complexes with fibrinogen that induce vascular leakage. Cell 116(3), pp. 367-379.
Hollands, A., Gonzalez, D., Leire, E., et al. 2012. A bacterial pathogen co-opts host plasmin to resist killing by cathelicidin antimicrobial peptides. The Journal of Biological Chemistry 287(49), pp. 40891-40897.
Johansson, L., Thulin, P., Sendi, P., et al. 2008. Cathelicidin LL-37 in severe Streptococcus pyogenes soft tissue infections in humans. Infection and Immunity 76(8), pp. 3399-3404.
Kadri, S.S., Swihart, B.J., Bonne, S.L., et al. 2017. Impact of Intravenous Immunoglobulin on Survival in Necrotizing Fasciitis With Vasopressor-Dependent Shock: A Propensity Score-Matched Analysis From 130 US Hospitals. Clinical Infectious Diseases 64(7), pp. 877-885.
Kanyavuz, A., Marey-Jarossay, A., Lacroix-Desmazes, S. and Dimitrov, J.D. 2019. Breaking the law: unconventional strategies for antibody diversification. Nature Reviews. Immunology 19(6), pp. 355-368.
Karami, Y., Rey, J., Postic, G., Murail, S., Tuffery, P. and de Vries, S.J. 2019. DaReUS-Loop: a web server to model multiple loops in homology models. Nucleic Acids Research 47(W1), pp. W423-W428.
Klein, J.S. and Bjorkman, P.J. 2010. Few and far between: how HIV may be evading antibody avidity. PLoS Pathogens 6(5), p. e1000908.
Kline, K.A., Falker, S., Dahlberg, S., Normark, S. and Henriques-Normark, B. 2009. Bacterial adhesins in host-microbe interactions. Cell Host & Microbe 5(6), pp. 580-592.
Koehler Leman, J., Weitzner, B.D., Lewis, S.M., Consortium, R. and Bonneau, R. 2019. Macromolecular modeling and design in rosetta: new methods and frameworks.
Kong, L., Stanfield, R.L., and Wilson, I.A. (2014). Molecular recognition of HIV glycans by antibodies. In HIV Glycans in Infection and Immunity, R. Pantophlet, ed. (New York, NY: Springer New York), pp. 117-141.
Kontermann, R.E. and Brinkmann, U. 2015. Bispecific antibodies. Drug Discovery Today 20(7), pp. 838-847.
Kurosaki, T., Kometani, K. and Ise, W. 2015. Memory B cells. Nature Reviews. Immunology 15(3), pp. 149-159.
Laabei, M. and Ermert, D. 2019. Catch Me if You Can: Streptococcus pyogenes Complement Evasion Strategies. Journal of Innate Immunity 11(1), pp. 3-12.
Linner, A., Darenberg, J., Sjolin, J., Henriques-Normark, B. and Norrby-Teglund, A. 2014. Clinical efficacy of polyspecific intravenous immunoglobulin therapy in patients with streptococcal toxic shock syndrome: a comparative observational study. Clinical Infectious Diseases 59(6), pp. 851-857.
Lu, L.L., Suscovich, T.J., Fortune, S.M. and Alter, G. 2018. Beyond binding: antibody effector functions in infectious diseases. Nature Reviews. Immunology 18(1), pp. 46-61.
Macheboeuf, P., Buffalo, C., Fu, C., et al. 2011. Streptococcal M1 protein constructs a pathological host fibrinogen network. Nature 472(7341), pp. 64-68.
Madsen, M.B., Hjortrup, P.B., Hansen, M.B., et al. 2017. Immunoglobulin G for patients with necrotising soft tissue infection (INSTINCT): a randomised, blinded, placebo-controlled trial. Intensive Care Medicine 43(11), pp. 1585-1593.
Mitchell, T.J. 2003. The pathogenesis of streptococcal infections: from tooth decay to meningitis. Nature Reviews. Microbiology 1(3), pp. 219-230.
Mitsi, E., Roche, A.M., Reine, J., et al. 2017. Agglutination by anti-capsular polysaccharide antibody is associated with protection against experimental human pneumococcal carriage. Mucosal Immunology 10(2), pp. 385-394.
Moor, K., Diard, M., Sellin, M.E., et al. 2017. High-avidity IgA protects the intestine by enchaining growing bacteria. Nature 544(7651), pp. 498-502.
Motley, M.P., Banerjee, K. and Fries, B.C. 2019. Monoclonal antibody-based therapies for bacterial infections. Current Opinion in Infectious Diseases 32(3), pp. 210-216.
de Neergaard, T., Sundwall, M. and Nordenfelt, P. 2019. High-sensitivity assessment of phagocytosis by persistent association-based normalization. BioRxiv.
Nordenfelt, P. and Tapper, H. 2011. Phagosome dynamics during phagocytosis by neutrophils. Journal of Leukocyte Biology 90(2), pp. 271-284.
Nordenfelt, P., Waldemarson, S., Linder, A., et al. 2012. Antibody orientation at bacterial surfaces is related to invasive infection. The Journal of Experimental Medicine 209(13), pp. 2367-2381.
Okumura, C.Y.M. and Nizet, V. 2014. Subterfuge and sabotage: evasion of host innate defenses by invasive gram-positive bacterial pathogens. Annual Review of Microbiology 68, pp. 439-458.
Oliver, J., Malliya Wadu, E., Pierse, N., Moreland, N.J., Williamson, D.A. and Baker, M.G. 2018. Group A Streptococcus pharyngitis and pharyngeal carriage: A meta-analysis. PLoS Neglected Tropical Diseases 12(3), p. e0006335.
Ozberk, V., Pandey, M. and Good, M.F. 2018. Contribution of cryptic epitopes in designing a group A streptococcal vaccine. Human vaccines & immunotherapeutics 14(8), pp. 2034-2052.
Pandey, M., Ozberk, V., Calcutt, A., et al. 2016. Streptococcal immunity is constrained by lack of immunological memory following a single episode of pyoderma. PLoS Pathogens 12(12), p. e1006122.
Parks, T., Wilson, C., Curtis, N., Norrby-Teglund, A. and Sriskandan, S. 2018. Polyspecific Intravenous Immunoglobulin in Clindamycin-treated Patients With Streptococcal Toxic Shock Syndrome: A Systematic Review and Meta-analysis. Clinical Infectious Diseases 67(9), pp. 1434-1436.
Pascual, V., Liu, Y.J., Magalski, A., de Bouteiller, O., Banchereau, J. and Capra, J.D. 1994. Analysis of somatic mutation in five B cell subsets of human tonsil. The Journal of Experimental Medicine 180(1), pp. 329-339.
von Pawel-Rammingen, U., Johansson, B.P. and Bjorck, L. 2002. IdeS, a novel streptococcal cysteine proteinase with unique specificity for immunoglobulin G. The EMBO Journal 21(7), pp. 1607-1615.
Skwarczynski, M. and Toth, I. 2016. Peptide-based synthetic vaccines. Chemical science (Royal Society of Chemistry : 2010) 7(2), pp. 842-854.
Smith, K., Garman, L., Wrammert, J., et al. 2009. Rapid generation of fully human monoclonal antibodies specific to a vaccinating antigen. Nature Protocols 4(3), pp. 372-384.
Sondermann, P., Huber, R., Oosthuizen, V. and Jacob, U. 2000. The 3.2-A crystal structure of the human IgG1 Fc fragment-Fc gammaRIII complex. Nature 406(6793), pp. 267-273.
Song, Y., DiMaio, F., Wang, R.Y.-R., et al. 2013. High-resolution comparative modeling with RosettaCM. Structure 21(10), pp. 1735-1742.
Spoerry, C., Hessle, P., Lewis, M.J., Paton, L., Woof, J.M. and von Pawel-Rammingen, U. 2016. Novel IgG-Degrading Enzymes of the IgdE Protease Family Link Substrate Specificity to Host Tropism of Streptococcus Species. Plos One 11(10), p. e0164809.
Sriskandan, S., Ferguson, M., Elliot, V., Faulkner, L. and Cohen, J. 2006. Human intravenous immunoglobulin for experimental streptococcal toxic shock: bacterial clearance and modulation of inflammation. The Journal of Antimicrobial Chemotherapy 58(1), pp. 117-124.
Staali, L., Bauer, S., Morgelin, M., Bjorck, L. and Tapper, H. 2006. Streptococcus pyogenes bacteria modulate membrane traffic in human neutrophils and selectively inhibit azurophilic granule fusion with phagosomes. Cellular Microbiology 8(4), pp. 690-703.
Swanson, J.A. 2008. Shaping cups into phagosomes and macropinosomes. Nature Reviews. Molecular Cell Biology 9(8), pp. 639-649.
Trkola, A., Purtscher, M., Muster, T., Ballaun, C., Buchacher, A., Sullivan, N., Srinivasan, K., Sodroski, J., Moore, J.P., and Katinger, H. (1996). Human monoclonal antibody 2G12 defines a distinctive neutralization epitope on the gp120 glycoprotein of human immunodeficiency virus type 1. J. Virol. 70, 1100-1108.
Weineisen, M., Sjobring, U., Fallman, M. and Andersson, T. 2004. Streptococcal M5 protein prevents neutrophil phagocytosis by interfering with CD11b/CD18 receptor-mediated association and signaling. Journal of Immunology 172(6), pp. 3798-3807.
Weitzner, B.D., Jeliazkov, J.R., Lyskov, S., et al. 2017. Modeling and docking of antibody structures with Rosetta. Nature Protocols 12(2), pp. 401-416.
Wilson, P.C., de Bouteiller, O., Liu, Y.J., et al. 1998. Somatic hypermutation introduces insertions and deletions into immunoglobulin V genes. The Journal of Experimental Medicine 187(1), pp. 59-70.
Woof, J.M. and Burton, D.R. 2004. Human antibody-Fc receptor interactions illuminated by crystal structures. Nature Reviews. Immunology 4(2), pp. 89-99.
Yan, Y., Tao, H. and Huang, S.-Y. 2018. HSYMDOCK: a docking web server for predicting the structure of protein homo-oligomers with Cn or Dn symmetry. Nucleic Acids Research 46(W1), pp. W423-W431.
【実施例】
【0123】
基本方法/物質
STAR法
【0124】
【0125】
【0126】
単一B細胞の精製、ベイティング(baiting)、および分離
B細胞単離を、幾つかの変更を加えて以前に記載のように(Smithら 2009年)実施した。簡単に説明すると、A群連鎖球菌感染症から最近回復し、感染後(自己免疫性)後遺症のない若年女性から35mlの血液を採取した(クエン酸塩採血管に)。血液を、2.5μl/mlのRosettesep B(Stemcell technologies)で20分間室温にて処理した。次いで、血液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1:1に希釈し、Lymphoprep勾配上に層状に配置した。遠心分離後(800×gで30分間)、血漿を収集および凍結し、B細胞層(約7ml)を除去し、43mlのPBSで希釈し、再び遠心分離した。この洗浄工程を2回繰り返した。B細胞を計数し、染色のために室温で維持した(典型的な収量は、血液30~40ml当たり2~5百万個の細胞である)。
【0127】
B細胞染色、ベイティング、および選別
B細胞をPBSで最終容量500μlに濃縮した。次いで、細胞を5%BSAで20分間ブロッキングした後、CD19-PE(BD-555413)、CD3-BV510(BD-564713)、およびIgG-BV421(BD-562581)に対する抗体で染色した。また、B細胞を、Sytox-FITC生/死染色(Thermofischer-S34860)で標識した。MC25 A群連鎖球菌M1株から単離された可溶性M1タンパク質を使用して、B細胞のベイティングを行った。M1タンパク質単離手順は、以前に他所に記載されていた(CollinおよびOlsen 2000年)。マイクロスケール標識キット(Invitrogen)を使用して、M1タンパク質をAlexa Fluor647に直接コンジュゲートした。抗体および生/死染色剤に加えて、0.1μg/mlのAF694-M1を細胞に添加し、混合物を32℃で20分間インキュベートした(M1は、4℃で立体構造変化を起こし、それにより重要なエピトープが不明確になる可能性がある(Cedervallら 1995年))。インキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄し、さらなる分析まで氷上で維持した。FACSAriaFusion選別装置での選別のためのゲート制御は、未染色細胞およびFMO-1試料を使用して設定した。合計100個の細胞を、250万個のB細胞から96ウェルプレート内のRNase阻害剤を含む10μlの水へと直接的に選別し、直ちに-80℃冷凍庫に移した。この時点で細胞は浸透圧により溶解し、RNAは溶液中で安定化される。
【0128】
逆転写、ファミリー特定、およびクローニング
以前に凍結したプレートの細胞を氷上で解凍し、OneStep RT-PCRキット(Qiagen)プロトコールを変更せずに使用して、RT-PCRを実施した。PCR工程で使用したプライマー配列は、Smithら(2009年)の論文のものを変更なしで直接採用した。RT-PCR後、ネステッドPCRを実施し、重鎖および軽鎖の可変領域に対応するバンドを配列決定して、抗体ファミリーを特定した。ファミリー特異的クローニングプライマーを使用して、重鎖および軽鎖の定常領域を含むプラスミドに可変鎖をクローニングした。発現プラスミドは、Patrick Wilson博士グループの厚意により寄贈されたものである。
【0129】
基本的細胞培養およびトランスフェクション
THP1細胞(白血病性単球)を、L-グルタミンおよび10%FBSで補完されたRPMI培地中で維持した。細胞を、1ml当たり5~10×105細胞の細胞密度に維持した。THP1-XBlue細胞を、通常のTHP1細胞と同様に維持した。HEK293細胞を、L-グルタミンおよび10%FBSで補完されたDMEM培地中で維持した。細胞を、100%コンフルエントになるまで増殖させることは決してなかった。トランスフェクションの前日に、8×106細胞を円形150mm皿に播種した。このトランスフェクション形式は、最も効率的な抗体回収を可能にした。
【0130】
トランスフェクション、発現、および精製
合計で、100個の開始細胞から10個の抗体構築物対を生成することに成功した。抗体対を、Mix’n’go大腸菌に形質転換した。形質転換体コロニーを配列決定により検証し、プラスミドをさらに増殖させ、Zymoresearch midiprepキットを使用してDNAを抽出した。完全成熟抗体をコードするプラスミド対を、PEIトランスフェクション法(https://www.addgene.org/protocols/transfection/)を使用してHEK293細胞に共トランフェクトした。簡単に説明すると、細胞を25μMクロロキンで5時間処理した。その後、20μgの重鎖および軽鎖発現プラスミドDNAを、ポリエチレンイミン(PEI)を含むOptiMEM(Life technologies)培地で1:3比に希釈した(50μgのDNAの場合、1mg/mlのPEIストックを114μl使用した)。細胞を37℃で18時間インキュベートした後、PBSで2回洗浄し、DMEM培地をOptiMEMと交換した。細胞をさらに72時間インキュベートしてから、上清を収集した。カラム設定のプロテインGビーズを使用して、上清中の抗体を精製した。次いで、SDS-PAGEでの抗体の濃度を既知濃度のXolair(商業的に購入されたオマリズマブ、150mg/mlで保管)の系列希釈物と比較することにより、抗体を滴定した。
【0131】
細菌株、増殖、および形質転換
ストレプトコッカス・ピオゲネス株SF370(emm1血清型)およびAP1(emm1血清型)を、Todd-Hewitt酵母培地(THY)中で37℃にて増殖させた。細菌を寒天プレートで3週間維持してから廃棄した。本発明者らは、本発明者らのすべての実験でSF370を使用することを選択した。その理由は、SF370が、複雑化要因である(その強力なFc結合能力およびMタンパク質との広範な相同性のため(Åkessonら 1990年))タンパク質Hを欠如するM1血清型株であるためである。実験では、一晩培養物をTHYで調製し、実験当日に1:20に希釈した。希釈後、37℃で3時間の増殖により、細菌が対数増殖中期であることを保証した。GFP発現株の生成のために、SF370およびそのΔM同質遺伝子対応物を、対数中期まで増殖させた後、氷冷水で洗浄した。エレクトロコンピテント細菌を、20μgのpGFP1プラスミドでエレクトロポレーションし、エリスロマイシン補完THYプレートに播種した。成功した形質転換体は、紫外光下で調査したところ蛍光性だった。細菌の熱死滅は、培養物を対数中期まで増殖させ、PBSで1回洗浄し、氷上で5分間インキュベートすることにより行った。次いで80℃で5分間の熱ショックを細菌に与えた後、氷上で15分間静置した。食作用アッセイでは、熱死滅細菌を、8000×gで3分間遠心分離し、Na培地(5.6mMグルコース、127mM NaCl、10.8mM KCl、2.4mM KH2PO4、1.6mM MgSO4、10mM HEPES、1.8mM CaCl2;NaOHでpHを7.3に調整)に再懸濁した。熱死滅細菌を、穏やかに37℃にて回転させながら5μMのOregon Green 488-Xサクシニミジルエステル(Thermofischer)で染色し、30分間遮光した。次いで、細菌を遠心分離し、pH感受性色素CypHer5E(Fischer Scientific)による追加の染色工程のために炭酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH9.0)に再懸濁した。再懸濁では、1.5mlの容量中7μg/mlの濃度を使用し、遮光して穏やかに室温で2時間回転させた。試料をNa培地で1回洗浄して過剰な色素を除去し、後の使用のために4℃で保管した。
【0132】
抗体スクリーニングおよびフローサイトメトリー
ELISAの場合、ELISAプレートを、ヒトフィブリノゲン(100μlのPBS中25μg/ml)で一晩4℃にてコーティングした。翌日、コーティング緩衝液をPBSTで洗い流し、プレートを、MC25培養上清から精製した10μg/mlのM1でコーティングした(CollinおよびOlsen 2000年)。37℃で1時間インキュベーションした後、ウェルをPBSTで3回洗浄し、300μlのPBST中2%BSAで30分間ブロッキングした。ブロッキング後、300μlの抗体含有上清をウェルに添加したか、または希釈ドナー血漿を対照として添加した。試料を37℃で1時間インキュベートし、洗浄し、プロテインG-HRPの溶液(1:3000希釈)をウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、試料を洗浄し、100μlの展開試薬(20mlの基質緩衝液クエン酸Na pH4.5+1mlのABTS過酸化物基質+0.4mlのH2O2)で展開した。室温で5~30分間発色させた後、OD450の吸光度を読み取った。
【0133】
より短いM1 B1B2B3およびC1C2C3構築物を使用したELISAの場合、M1タンパク質のB1B2B3リピート(UniProtID:Q99XV0、emm1;アミノ酸132~194)およびC1C2C3リピート(アミノ酸229~348)をコードするオープンリーディングフレームを、ルンドタンパク質産生プラットフォーム(Lund Protein Production Platform)(LP3)(ルンド、スウェーデン)にクローニングした。コード配列は、Genscript(ニュージャージー州、米国)に合成構築物として注文し、タンデム親和性精製タグ(ヒスチジン-ヘマグルチニン-StrepII-タバコエッチウイルスプロテアーゼ認識部位)を構築物のC末端に組み込んだpNIC28-Bsa4ベースベクターにクローニングした。構築物は、50μg/mlのカナマイシンで補完されたLuria-Bertaniブロス(Difco)中の大腸菌TUNER(DE3)細胞で25℃にて発現させた。タンパク質発現のため、温度を18℃に低下させ、0.6のOD600時に0.1mM IPTGで発現を誘導した。発現細胞を回収し、無EDTA Complete Protease Inhibitor錠剤(Roche)で補完されたリン酸緩衝液(50mM NaPO4、300mM NaCl、20mMイミダゾール、pH8.0)に再懸濁した。フレンチプレスセルを使用して18,000psiで細胞を溶解した。ライセートを超遠心分離(Ti50.2ローター、244,000×g、60分、4℃)で清澄化し、その後0.45μmフィルターに通してから、HisTrap HPカラム(GE Healthcare)に負荷した。カラムを20カラム容量(CV)のリン酸緩衝液で洗浄し、リン酸緩衝液中0~500mMイミダゾールの勾配を使用して、結合タンパク質を溶出した。所望のタンパク質を含む画分をプールし、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS;10mMリン酸緩衝液、2.7mM KCl、137mM NaCl)pH7.3に対して透析し、-80℃で保管した。その後、こうした構築物を、ELISAウェルのコーティングまたはM抗体の競合として使用した。
【0134】
フローサイトメトリースクリーニングの場合、SF370-GFP細菌またはそのΔM対応物の一晩培養物をTHYで1:20希釈し、対数中期まで増殖させた。100μlの細菌を、96ウェルプレートのウェルに分配した。細胞培養上清から精製した抗体を5μg/mlに希釈し、1μg/mlのIdeSで3時間、37℃にて消化した。消化した抗体を、細菌懸濁物でさらに1:10希釈した。0.5μg/mlの最終濃度に到達させた。細菌を37℃で30分間インキュベートした後、PBSで2回洗浄した。AF647コンジュゲートFab α-Fab抗体断片を二次抗体として使用して、一次α-M抗体の結合を検出した。Fab α-Fab断片と30分間インキュベーションした後、細菌を洗浄し、Cytoflexフローサイトメーター(Beckman coulter)で分析した。GFP発現細菌のゲート制御は、SF370親株(GFPプラスミドを発現しない)を使用して設定した。GFP発現ゲート内のGFP発現細菌を、抗体染色について評価した(APCチャネル)。抗体染色は、表面結合一次-二次抗体複合体の存在を反映し、抗M抗体の結合を示す。
【0135】
ウェスタンブロッティングの場合、ウェスタンブロッティングを使用してSF370およびそのΔM突然変異体のライセートをプローブすることにより、線状エピトープに対する抗体反応性を評価した。簡単に説明すると、対数増殖細菌のペレットを、ライセートが透明性になるまで、ホスホリパーゼCと共に30分間PBS中でインキュベートした。ライセートを超音波処理し、遠心分離(15,000×gで3分間)により清澄化した。本発明者らは、SF370対ΔM突然変異タンパク質の5つの複製セットを40μgで勾配SDS-PAGEゲル(4~20%)に負荷した。ゲル電気泳動を60分間流して、タンパク質分離を達成した。タンパク質をゲルからPVDF膜へと移し、それをPBST中5%スキムミルクで45分間ブロッキングした。次いで、膜の複製レーンを切断し、2または10μg/mlのXolair、Ab25、32、49、またはIVIgGで一晩4℃にてプローブした。膜をPBSTで3回洗浄し、二次HRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG二次(Rockland)抗体で1時間室温にてプローブした。後に二次抗体を洗浄し、化学発光試薬(WestFemto基質、Thermofischer)を使用して膜を発色させた。
【0136】
凝集アッセイ
凝集アッセイの場合
SF370およびそのΔM株の一晩培養物を、RPMIで1:5希釈し、100μg/mlの抗M抗体または5%ドナー血漿で処理した。この一連の実験では、細菌をキュベットでインキュベートし、培養中は振盪もボルテックスもしないことが重要である。表示の時点で細菌のOD600を測定し、3.5時間の標記時点でキュベットの写真を撮影した。
【0137】
凝集体溶解実験の場合
SF370細菌を一晩増殖させ、THYで1:20希釈し、静置して2時間増殖させた。次いで、細菌を、100μg/mlの適切な抗体で補完した。接種の2時間後、細菌をボルテックスし、画像化し(無作為に)、Image Jを使用して凝集面積を分析した。
【0138】
SIM画像化
対数期細菌を0.5分間超音波処理して(VialTweeter;Hielscher)一切の凝集体を分離し、4%パラホルムアルデヒドで固定して氷上で5分間インキュベートした。その後、細菌をPBSで2回洗浄した(10,000×gで3分間)。SF370を、Alexa Fluor647コンジュゲート小麦胚芽凝集素(WGA)で染色した。細菌を、IdeSで切断したXolair、Ab25、Ab32、およびAb49と共にインキュベートし、蛍光標識IgGFabまたはIgGFc特異的F(ab’)2断片(DyLight488コンジュゲート抗ヒトIgGFcまたはIgGFab;Jackson ImmunoResearch Laboratory)で染色した。Prolong Gold Antifade Mountantを使用して1.5番のカバーガラスで、試料をガラススライドにマウントした。LU-NVレーザーユニット、CFI SR HPアポクロマートTIRF 100×オイル対物レンズ(N.A.1.49)および追加の1.5×倍率を有するN-SIM顕微鏡を使用して、単一細菌の画像を取得した。使用したカメラは、ORCA-Flash4.0 sCMOSカメラ(Hamamatsu Photonics K.K.)だった。画像は、NIS-Elements Ar(NIS-A 6DおよびN-SIM分析)のNikon社製SIMソフトウェアで再構築した。細菌の画像は、488および640nmレーザーで取得した。部位局在化のために、単一細菌を手動で特定し、50フレームで時系列的に画像化した。部位局在化の分析パイプラインは、Juliaに実装されていた。それは、GitHubで利用可能である(Kumra Ahnlideらの原稿 2020年)。初期信号対雑音比(SNR)のカットオフを0.3に設定し、含まれる時間フレームは、初期SNRの少なくとも70%を有するものだった。
【0139】
結合曲線
SF370細菌を対数中期まで増殖させ、洗浄し、10mlの培養物を1000μlのPBSに濃縮した。細菌を、抗M抗体の半減系列希釈物で染色した。IdeS処理抗体100μl毎に30μlの細菌を使用した。4℃で30分間(振盪しながら)染色を実施した後、細菌を洗浄し、30μlの容量の過剰AF647コンジュゲートFab抗Fab断片で30分間4℃にて振盪しながら染色した。次いで、細菌をPBSで250μlに希釈し、フローサイトメトリーで分析した。解離定数を未知変数とした理想的結合曲線は、MATLABでfminsearchを使用して理論的フィッティングを行った。
【0140】
抗体F(ab’)2断片とM1タンパク質との架橋
Ab25、Ab32、およびAb49F(ab’)2断片をM1タンパク質に架橋するために、本発明者らは、M1タンパク質の2つの異なる調製物を使用した。1つは、上記のB1B2B3構築物およびC1C2C3構築物について記載のように組換え体として大腸菌で発現および精製し、もう1つは、S.ピオゲネス(S.pyogenes)MC25株の培養上清から精製した(CollinおよびOlsen 2000年)。FragITキットを製造元の説明書に従って使用しFc捕捉カラム(Genovis)を用いて、発現されたインタクト抗体から抗体F(ab’)2断片を切断および精製した。架橋のために、25μgの組換えM1タンパク質または8μgのMC25 M1タンパク質を、1×PBS pH7.4中で、5μgの対応するF(ab’)2断片と共に、37℃、800rpmで30分間インキュベートした。ジメチルホルムアミド(DMF)に再懸濁した重/軽スベリン酸ジサクシンイミジル(DSS;DSS-H12/D12、Creative Molecules Inc.)を最終濃度が250および500μMになるように添加し、37℃、800rpmでさらに60分間インキュベートした。架橋反応は、最終濃度が50mMの重炭酸アンモニウムを用いて15分間37℃にて800rpmでクエンチした。
【0141】
MSのための試料調製
架橋された試料を8M尿素および100mM重炭酸アンモニウムと混合し、システイン結合を5mM TCEPで還元し(37℃で2時間、800rpm)、10mMヨードアセトアミドでアルキル化した(22℃で30分間、暗所にて)。タンパク質を、まず1μgの配列決定等級リシルエンドペプチダーゼ(Wako Chemicals)で消化した(37℃、800rpm、2時間)。試料を、100mM重炭酸アンモニウムで希釈して、最終尿素濃度を1.5Mにし、1μgの配列決定等級トリプシン(Promega)を添加してタンパク質をさらに消化した(37℃、800rpm、18時間)。試料を10%ギ酸で酸性化し(最終pH3.0まで)、ペプチドを、製造元の説明書に従ってC18逆相スピンカラムで精製した(Macrospinカラム、Harvard Apparatus)。ペプチドを、speedvacで乾燥し、2%アセトニトリル、0.2%ギ酸に再構成してから、質量分光分析を行った。
【0142】
液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)
すべてのペプチド分析は、EASY-nLC 1200超高速液体クロマトグラフィーシステム(Thermo Scientific)に接続されたQ Exactive HF-X質量分析計(Thermo Scientific)で実施した。ペプチドを、Acclaim PepMap100(75μm×2cm)C18(3μm、100Å)プレカラムに負荷し、800barの一定圧力で稼動させたEASY-Sprayカラム(Thermo Scientific;ID75μm×50cm、カラム温度45℃)で分離した。0.1%ギ酸水溶液中の80%アセトニトリルの4~45%の直線勾配を、流速350nl分-1で65分間流した。1回の完全なMSスキャン(分解能60000@200m/z;質量範囲390~1210m/z)に続いて、15個の最も豊富なイオンシグナルのMS/MSスキャン(分解能15000@200m/z)を行った。前駆体イオンを2m/z単離幅で単離し、HCDを使用して正規化衝突エネルギー30で断片化した。電荷状態スクリーニングを有効化し、電荷状態が不明である前駆体および電荷状態が1の前駆体を拒絶した。動的排除窓を10秒に設定した。MSおよびMS/MSの自動ゲイン制御を3e6および1e5に設定し、イオン蓄積時間はそれぞれ110msおよび60msだった。前駆体イオン選択の強度閾値を1.7e4に設定した。
【0143】
計算モデル化
この研究の高分子モデル化には、Rosettaソフトウェアスイート(software suit)(Koehler Lemanら 2019年)の幾つかのプロトコールを使用した。全長抗体をモデル化するために、まずRosetta抗体プロトコール(Weitznerら 2017年)を使用して抗原結合性ドメインを特徴付けた。次いで、RosettaCMプロトコール(Songら 2013年)を使用して、重鎖および軽鎖の両方の比較モデルを生成し、抗原結合性ドメインに対してアラインして抗体の初期構造を表した。HSYMDOCK(Yanら 2018年)WebサーバーおよびDaReUS_loop(Karamiら 2019)Webサーバーを、それぞれFcドメインの対称ドッキングおよびヒンジ領域のモデル化に使用した。最後に、最終精密化として各抗体の4Kモデルを作成し、rosettaエネルギースコアと組み合わせて質量分析から導出されたXLに基づき、上位得点モデルを選択した。さらに、M1抗体相互作用を特徴付けるために、TX-MSプロトコール(Hauriら 2019年)を使用し、それにより2Kドッキングモデルを生成し、DDAデータの距離制約を使用してフィルタリングした。RosettaDockプロトコール(Gray 2006年)を使用して、上位モデルに対して最終ラウンドの高解像度モデル化を実施して、側鎖を再パッキングした。
【0144】
蛍光Xolair競合実験
対数増殖SF370細菌を熱死滅させ、Oregon Greenで標識した(以前に記載の通りに)。細菌を抗体または血漿/IVIGと混合し、振盪しながら37℃で30分間インキュベートした。次いで、蛍光コンジュゲートXolair(タンパク質標識キット(Invitrogen)を製造元の説明書に従って使用してAlexafluor647にコンジュゲートした)を、100μg/mlの濃度で細菌にさらに30分間添加した後で、フローサイトメトリーで直接分析した。Fabを使用した実験では、Fabalactica消化キット(Genovis)を製造元の説明書に従って使用して、Fabを生成した。
【0145】
食作用アッセイ
食作用実験は持続的付随正規化(persistent association normalization)を使用して実施した(de Neergaardら 2019)。オプソニン化の前に、CypHer5E染色およびOregon Green染色SF370細菌を最大5分間超音波処理して(VialTweeter;Hielscher)、細菌のあらゆる大きな凝集体を分散させた。顕微鏡で塊分散が確認された場合、超音波処理は十分であるとみなした。染色ならびに細菌計数(FITC+veゲート制御での事象/μl)を、フローサイトメトリー(CytoFLEX、Beckman-Coulter)で評価した。CypHer5EのpH応答性を、1μlの酢酸ナトリウム(3M、pH5.0)を100μlの細菌懸濁物に添加する前後のAPCチャネルにおける細菌蛍光染色を測定することにより試験した。酸誘導性蛍光シフトの存在は、染色の成功を示した。実験の当日に、各実験に合わせて適切な数の細菌をオプソニン化した。本発明者らのM特異的抗体、Xolair、またはIVIGによるオプソニン化を37℃で30分間実施した。様々なMOPを用いた実験では、オプソニン化細菌の系列希釈物を製作し、THP-1細胞とのインキュベーションに使用した。白血球集団(付録
図3a)、特に単一細胞(付録
図3b)をゲート制御することにより、本発明者らは、細胞を、細菌と付随したもの(FITC陽性)および細菌に内部移行されたもの(FITCおよびAPC陽性)にグループ分けすることができた(付録
図3c~3e)。付録
図3cに示されているパネルは非相互作用細胞を示し、付録
図3dおよび3eは、それぞれ37℃および4℃での食作用の結果を示す。抗体濃度が変数である実験では、抗体の系列希釈物をNa培地で96ウェルプレートに製作し、オプソニン化のために細菌を抗体に直接添加した。実験の当日に、THP1細胞をPBSで洗浄し、Na培地に再懸濁した。食作用の前に、THP-1細胞の濃度をフローサイトメトリーで測定し、2000細胞/μl(1ウェル当たり100000細胞)に調整した。次いで、細胞を、様々な濃度の事前にオプソニン化された細菌(MOP)でまたは様々な抗体濃度で以前に準備した96ウェルプレートに添加した。最後に、氷上で50μlのTHP-1細胞を添加し、最終的な食作用容積を150μlにした。氷上で5分間インキュベーションした後、プレートを、光から保護しながら37℃に設定した振盪加熱ブロックに直接移したか、または内部移行の対照として氷上で維持した。食作用は、データ取得前に少なくとも15分間氷上に試料を置くことにより停止させた。3回の実験を実施して結合曲線を評価し、4回の実験をMOP400で実施して異なる抗体を比較した。
【0146】
フローサイトメトリー取得は、488nmおよび638nmレーザーならびにフィルター525/40FITCおよび660/10APCを有するCytoFLEX(Beckman-Coulter)を使用して実施した。閾値を、食作用の場合はFSC-H 70,000に、細菌の場合はFSC-H 2000およびSSC-H 2000に設定した。ゲインを、FITCの場合は3に、APCの場合は265に設定した。取得は、すべての試料を評価するのにおよそ30分かかる30μl/分の速度で、標的集団の少なくとも5,000事象を捕捉するように設定した。データ取得中は、96ウェルプレートを氷冷インサート上で維持して、さらなる食作用を阻害した。
【0147】
NF-κB活性ルシフェラーゼアッセイ
THP-XBlue-CD14(Invivogen)細胞を、96ウェルプレートに1ウェル当たり200,000細胞の密度で播種した。細胞を、M1タンパク質(2μg/ml)と共にまたは伴わずに、適切な抗体(0.5μg/ml)で18時間、37℃にて処理した。インキュベーション後、20μlの細胞上清を吸引し、アッセイの説明書に記載のように展開試薬(QuantiBlue溶液、Invivogen)と混合した。発色が適切になるまで試料を37℃でインキュベートし、マルチウェル分光光度計を使用して試料のOD650測定を行った。
【0148】
動物モデル
すべての動物使用および手順は、マルメ/ルンド地方実験動物委員会、倫理許可番号03681-2019により承認されていた。9週齢の雌C57BL/6Jマウス(Scanbur/Charles River Laboratories)を使用した。モノクローナル抗体Ab25(0.4mg/マウス)または静注用免疫グロブリン(10mg/マウス)を、感染の6時間前に腹腔内投与した。S.ピオゲネスAP1を、Todd-Hewittブロス(37℃、5%CO2)で対数期まで増殖させた。細菌を洗浄し、滅菌PBSに再懸濁した。106CFUの細菌を首筋に皮下注射し、24時間以内に全身性感染を引き起こした。感染24時間後にマウスを犠牲にし、器官(血液、肝臓、脾臓、および腎臓)を回収して、細菌播種の度合いを測定した。血球数を、フローサイトメトリーで分析した。サイトメトリービーズアッセイ(CBAマウス炎症キット、BD)を製造元の説明書に従って使用してサイトカインを定量化した。
【0149】
実施例1
ヒト単一細胞由来M特異的抗体を発生させるための抗原ベイティング
GAS感染に対する防御抗体を構成するものを理解するために、本発明者らは、機能的ヒト抗体を生成し、毒性に対する抗体の効果を分析したいと考えた。本発明者らは、Mタンパク質を標的抗原として選択し、Mタンパク質特異的抗体の供給源として、連鎖球菌感染の除去に成功したドナーを用いた。連鎖球菌Mタンパク質に対する特異性を有するヒト抗体を特定するために、本発明者らは、ドナーB細胞を蛍光標識Mタンパク質でベイティングすることによりM反応性B細胞を単離した。本発明者らは、生存単一CD19
+CD3
-IgG
+M
+B細胞を選別した(
図1)。重鎖および軽鎖の可変領域のRT-PCRのクローニングは、10個の抗体対を産出した(付録
図1)。HEK293細胞での発現後の抗体のSDS-PAGE分析は、正しい遊走パターンを示し、インタクト抗体が適正に発現されたことが示された(
図29)。4つの抗体が、GAS単離株の中で最も一般的なMタンパク質であるGAS(SF370株)の表面結合M1タンパク質に対して明らかな反応性を示した(
図2)。M1タンパク質を欠如するΔM SF370突然変異株を使用した3つの選択された抗体によるさらなる実験は、Ab25、32、および49とM1との相互作用の特異性を実証した(
図3)。本発明者らは、SF370の表面への抗体結合親和性を、インタクト抗体またはF(ab’)
2断片のいずれかで測定した(
図4)。後者は、M1とIgGFcとの結合の寄与を回避するためである(Åkessonら 1994年)。インタクトXolair(オマリズマブ、抗IgE)は、3.2×10
-6M
-1のK
Dを示し、これは、結合親和性が低いことを意味し、以前に報告された精製M1タンパク質に対するIgGFc親和性(3.4×10
-6M
-1)(Åkessonら 1994年)と一致した。Ab25、32、および49のF(ab’)
2断片は、M1に対して有意により高い親和性を示した;それぞれ2.3×10
-9、9.1×10
-9、および12.3×10
-9M
-1(
図5)。
【0150】
実施例2
抗M抗体の特徴付け
特定された抗M1抗体を特徴付けるために、本発明者らは、一群の生化学的および免疫学的アッセイを実施した。本発明者らは、構造化照明顕微鏡(SIM)免疫蛍光法(IF)を使用して、SF370の表面の抗M結合パターンを可視化した。興味深いことに、Mタンパク質は、Fc媒介性Xolair結合を含むすべてのモノクローナル抗体と、生物の表面に沿って同様の点状分布を示す(
図6)。何千人ものドナーからのプールしたIgGを含むIVIGは、むしろ細菌の表面全体を染色し、予想通りの多特異的網羅範囲を示した(
図6)。抗M ELISAを使用した場合、Ab25のみがMタンパク質との反応性を示したが(
図7)、ウエスタンブロット(WB)実験では、Ab32がMタンパク質に対する最も良好な結合を示した(
図8)。まとめると、IF、ELISA、およびWBからのデータは、3つのモノクローナルが、Mタンパク質の異なるエピトープに結合することを示している。
【0151】
抗体媒介性細菌凝集は、十分に記録されている抗体機能であり、効果的な免疫クリアランスのために細菌を連鎖させるなど、重要な生物学的意義を有する(Moorら 2017年;Mitsiら 2017年)。別の周知の細菌間GAS特異的現象は、増殖チューブの底部でのM依存性細菌凝集体の形成である(Frickら 2000年)。自己凝集を一切させずにGASを増殖させることは不可能であるが、抗体は、細菌凝集を大幅に増強した。三重抗体カクテルならびに個々の抗体は両方とも、M反応性B細胞が得られた患者に由来するドナー血清の場合と同様に、用量依存的な凝集をもたらした(
図9、
図31)。この増強は、ΔM株では観察されなかった。これにより、抗体依存性凝集がM特異的な現象であることがさらに検証された。凝集細菌ならびに典型的なGAS凝集体は、抗M抗体または血漿の存在下で激しくボルテックスすることにより消散させることができた(
図32)。GAS凝集および凝集体溶解は、Ab25、49で最も顕著であり、Ab32では程度がより低かったが、Xolair(IgGFc結合のみ)では効果がなかった。
【0152】
また、抗体は、抗原とライゲートし、抗原取込みを媒介することにより、マクロファージを活性化し、炎症性サイトカイン産生をもたらす(Bournazosら 2017年)。本発明者らは、NF-κB活性化の定量的指標としてSEAP(分泌胚性アルカリホスファターゼ)を分泌するTHP-1 X-Blueレポーター細胞を使用して、抗体依存性Mタンパク質誘導性免疫活性化に取り組んだ。本発明者らは、Mタンパク質単独ではNF-κBシグナル伝達を誘導することができないことを見出した。しかしながら、Mタンパク質とAb25との組合せは、Mタンパク質とXolairとの組合せと比較して、NF-κB活性化を2.8倍と著しく増加させた(
図10)。Mタンパク質とAb49との組合せは、NF-κB活性化に対してある程度の効果を示したが(1.6倍、ns)、Ab32との組合せは効果を示さなかった(1.2倍)。3つの抗体すべてを組み合わせると、おそらくはAb25および49の量が組み合わされるため、NF-κB活性化は累積で3.9倍と著しく増加した。興味深いことに、本発明者らは、IVIG処理Mタンパク質に対するTHP-1曝露時に、IVIGが同じ抗体媒介性NF-κB活性化を誘発しないことも見出した(1.4倍)。モノクローナルの生化学的特徴および免疫学的特徴の組合せは、すべてがMタンパク質に特異的であり、異なるエピトープに結合し、免疫学的効果を誘導することができ、Ab25が、全体的に最も強力な効果を有することを示している。
【0153】
実施例3
抗M抗体は効率的な食作用を促進する
食作用は、プレイがファゴソームに内部移行され、続いて酸性で過酷な区画へとそれらが成熟する受容体媒介性プロセスである。食作用を引き起こす抗体の能力を調査するために、本発明者らは、持続的付随に基づく正規化(persistent association-based normalization)(de Neergaardら 2019年)を使用して、食細胞との付随ならびに内部移行を増加させる抗体の能力を両方とも研究した。本発明者らは、プレイの多重度(MOP)を漸増させて、貪食THP-1細胞をpH感受性CypHer5染色細菌と共にインキュベートした(
図33~34)。本発明者らは、Ab25、32、および49を組み合わせて、THP-1細胞との細菌付随に対する累積効果を評価した。Xolairと比較して、抗体混合物および程度はより低いがIVIGは、細菌とTHP-1細胞との付随をある程度増加させた(
図11)。これは、曲線の左シフトとして確認することができ、最大付随を達成するために必要な細菌がより少数であることを意味する。個々に試験した場合、Ab25は単独でも付随の増強を示した。これは、抗体混合物媒介性の付随増加がAb25のみによるものであることを示す(
図12)。抗体混合物は、Xolairと比較して内部移行を増加させ、2つの処理間の相離は、MOPの関数として増加した(
図13)。個々の抗体をより詳細に調査すると、Ab25のみが内部移行の増加を示した(
図14)。用量応答分析では、Ab25は、内部移行の媒介がXolairよりも有意に効果的であることが示された(THP-1細胞の50%が細菌を内部移行させる濃度;EC
50 0.8対40.2μg/ml)(
図15)。食作用データは、すべてのモノクローナルによる強力なFab媒介性結合および他の免疫学的効果の誘導にも関わらず、1つの抗体Ab25のみが、A群連鎖球菌の食作用を促進させることができることを示した。
【0154】
実施例4
抗M抗体はGAS感染からマウスを防御する
Ab25で見られる食作用およびNF-κBの誘導は、免疫機能の重要な指標である。in vivoでのAb25の潜在的な防御効果を試験するため、本発明者らは、GASによる皮下感染のマウスモデルを使用した。マウスを、Ab25またはIVIGの腹腔内注射で前処置した。高用量IVIGは、重度GAS感染症のマウスモデルで使用されており(Sriskandanら 2006年)、陽性対照としての役割を果たした。IVIGまたはAb25による処置は、未処置の対照と比較して、脾臓、腎臓、および肝臓における細菌量を低減させ、Ab25は、IVIGよりも良好な防御を呈した(
図16)。Ab25またはIVIG処置は、血漿中のTNFα、MCP-1、およびIL-6レベルの低減からわかるように、サイトカイン動員にも影響を及ぼした(
図17)。IFNγ、IL-10、およびIL-12p70のレベルは、本発明者らの実験条件下では検出レベルを下回った。まとめると、凝集、NF-kB、食作用、および動物実験は、Ab25が免疫調節効果を示し、動物をGAS感染から防御することを示している。
【0155】
実施例5
抗体は、単一Fabまたは二重Fab結合を介してMタンパク質の類似領域を標的とする
Fabを介して高親和性で結合する抗体は、典型的には、免疫応答を促進することが予想される。しかしながら、試験した抗M抗体のうち、Ab25のみが、すべての試験した免疫エフェクター機能を促進することができた。抗体間の構造上の違いを評価するために、本発明者らは、Ab25、Ab32、およびAb49のFab断片のRosetta生成分子モデルを提示する。このモデルでは、本発明者らは相補性決定領域(CDR)ドメインを強調する(
図18)。CDR H3およびL3ループ領域の立体構造を比較するために、本発明者らは、3つの抗体すべてのFab断片を分析した(
図19)。CDR H3ループに関するAb25とAb49との類似性は明らかであるが(RMSD 1.0Å)、Ab32 CDR H3の立体構造は異なる(
図20)。Ab25およびAb49の一次アミノ酸配列レベルでの保存はそれほど明確ではない。
【0156】
それぞれのF(ab’)2断片により認識される、M1タンパク質のエピトープを決定するために、本発明者らは、質量分析とカップリングされた標的化溶液中架橋(TX-MS)を実施した(Hauriら 2019年)。TX-MSは、大型タンパク質複合体の正確な四次立体構造をモデル化し、多数の高精度架橋ペプチド断片に基づいて幾つかの独立した架橋を特定することにより、それらの立体構造を裏付けることができる。分析した3つの抗体のうち、本発明者らは、Ab25とM1タンパク質との間に10個の架橋ペプチドを特定した。こうした架橋は、F(ab’)
2とMタンパク質の2つの異なる領域との間に見出され、Ab25が、B-S-Cドメイン領域に2つの異なる結合部位を有することを示している(
図21、
図35)。TX-MSプロトコールの一部として、数多くのタンパク質間ドッキングモデルが作出される。架橋された距離的制約をこうしたドッキングモデルに重ね合わせることにより、Ab25 F(ab’)は、ヒンジ領域に大きな立体構造変化を誘導することなく、2つの架橋されたエピトープと同時に結合することができることが示されている。これは、Ab25が、分子内シス結合様式で二重Fab結合が可能であることを示唆する。抗体シス結合は、抗原が近近傍にある場合に結合力を誘導することができる伝統的な分子間トランス結合相互作用とは異なる(KleinおよびBjorkman 2010年)。M1タンパク質B-Sドメイン領域での類似結合部位は、Ab49でも特定され、本発明者らは、M1タンパク質との2つの架橋ペプチドを特定した(
図22、
図35)。興味深いことに、M1タンパク質S領域は、以前はFc媒介性結合にのみ関連付けられていた(Nordenfeltら 2012年;Åkessonら 1994年)。
【0157】
観察された結合部位を直交性手法で検証するために、本発明者らは、部位局在化顕微鏡法を使用した。この方法では、蛍光標識された細胞壁と抗体結合部位との間の相対距離が、複数の個々の細菌の反復測定により決定される(
図23)。高さ分析は、すべてのモノクローナルF(ab’)2断片が、M1タンパク質のFc結合ドメイン(S)付近に結合することを示した(Xolair Fc結合と比較して)。これはTX-MSの結果を裏付けている。抗体は、Fc結合ドメイン付近にエピトープを有すると考えられるため(
図21~22からわかるように)、本発明者らは、抗体のいずれかがFc結合を妨害することができるか否かをさらに調査した。観察されたAb25の二重Fabシス結合が有効である場合、Ab25は、Sドメインを覆って(
図5D)、Fc結合を遮断することができることになるが、単一のFab相互作用は、Fc結合に対する妨害がより小さいかまたはないだろう。本発明者らは、蛍光Xolairと、抗体試料と共にプレインキュベートしたSF370との結合を測定した。Ab25は、Fc結合を有意に遮ったが、Ab32およびAb49は遮らなかった。Ab49およびAb25は、S領域の上に位置する1つの類似エピトープを共有するため、そこに結合するだけではFc相互作用を破壊するには不十分であり、これがAb25の二重Fabシス結合能力によるものであることを強く示唆している。
【0158】
実施例6
機能的抗体結合には二重Fab様式の相互作用が必要である
単一タンパク質の2つの異なるエピトープに対する2つの同一Fabのシス様式での二重Fab抗体結合は、これまで観察されていなかった新規の抗体相互作用様式である。これは、二重Fabシス結合が免疫学的防御機能の明白な獲得と関連するという事実と相まって、本発明者らが、この知見を検証し、Ab25の二重Fab結合能力の特定の性質を解明する契機となった。第一に、本発明者らは、Fc結合を遮る単一Ab25 Fabの能力を調査した。いずれかの結合部位がFc結合の立体障害を維持することができる場合、低減が見られるはずである。しかしながら、Fc結合は、単一Fabでは影響を受けなかった(
図25)。第二に、Ab25はELISAで良好に機能するため(
図7)、本発明者らは、いずれかの結合部位を欠如するM1ベース断片とのAb25結合を阻害することができるか否かを確認したいと考えた(
図38)。Ab25は、単独で単一エピトープに結合することができれば、断片との結合を低減させることが可能なはずである。しかしながら、M1結合は断片による影響を受けず(
図26)、本発明者らは、別のアッセイでも断片との結合を確認することができなかった(
図38)。第三に、本発明者らは、様々な形態の抗体がどの程度良好に細菌に結合することができるかを確認したいと考えた。本発明者らは、IgG全体、F(ab’)2、および単一FabとSF370との結合を比較した。驚くべきことに、Ab25単一Fabは細菌に結合することができなかったが、Ab49 Fabは、それらの結合を増加させた(
図27)。後者は、単一Fabの方が接近し易いため、予想された結果であるが、こうした結果は、Ab25とMタンパク質との相互作用の支配的な様式が二重Fabシス結合であることを明らかにしている。単一Fabを介した結合がどれほどより弱いかを評価するために、本発明者らは、単一Fabの親和性測定を実施した。これらは、Ab25 Fab結合が、F(ab)’2結合(2.3nM
-1、
図28)と比較して、2000分の1のより低い親和性(4.4mM
-1)を有することを示した。こうした結果は、Ab25が効果的に結合し、防御機能を発揮するには、二重Fabシス様式の相互作用が必要であることを示している。
【配列表】
【国際調査報告】