(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/37 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61N1/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517832
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2021077032
(87)【国際公開番号】W WO2022069680
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166157
【氏名又は名称】ソーリン シーアールエム エス ア エス
【氏名又は名称原語表記】SORIN CRM S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ゴンドワン アンヌ・ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ロッセ ニクラ
(72)【発明者】
【氏名】プルー シルヴァン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053KK02
4C053KK05
(57)【要約】
本発明は、埋込み型能動心臓装置、特に埋込み型自動除細動器又は心臓再同期用除細動器のリードの動作を監視する装置であって、前記リードを特徴付ける複数のパラメータの値を決定するパラメータ決定装置と、少なくとも2つの異なる時間スケールに基づいて、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータの代表値を決定するよう構成された処理部と、を備え、前記処理部は、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータの少なくとも1つのパラメータのいわゆる分析値と前記パラメータの代表値とを比較するようにさらに構成される、装置に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込み型能動心臓装置、特に埋込み型自動除細動器又は心臓再同期用除細動器のリードの動作を監視する装置であって、
前記リードを特徴付ける複数のパラメータの値を決定するパラメータ決定装置と、
少なくとも2つの異なる時間スケールに基づいて、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータの代表値を決定するよう構成された処理部と、
を備え、
前記処理部は、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータの少なくとも1つのパラメータのいわゆる分析値と前記パラメータの代表値とを比較するようにさらに構成される、
装置。
【請求項2】
第1の代表値は、前記分析値よりも前に決定された第1の所定数の代表値の平均値であり、前記平均値は、前記処理部によって比較される、請求項1に記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項3】
第2の代表値は、前記分析値よりも前に決定された第2の所定数の代表値の平均値であり、前記平均値は、前記処理部によって比較され、前記第2の所定数は、前記第1の所定数より大きい、請求項2に記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項4】
第3の代表値は、前記分析値よりも前に決定された第3の所定数の代表値の平均値に基づくローリング平均値であり、前記平均値は、前記処理部によって比較され、前記第3の所定数の値の前記平均値は、前記複数のパラメータのうちの1つに対応する、請求項1から3のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記代表値の決定の際に、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータの値のうち、予め定義された限界値を超える1つの値を検討しないように構成される、請求項1から4のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータの前記分析値を、前記少なくとも1つのパラメータを代表する値と比較し、前記代表値の決定に検討される前記分析値に関する最も新しい値は、第1の所定の時間区間内にあるように構成される、請求項1から5のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータの前記分析値を、前記少なくとも1つのパラメータを代表する値と比較し、前記代表値の決定に検討される前記分析値に関する最も新しい値は、第2の所定の時間区間内にあるように構成される、請求項1から6のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項8】
パラメータは、検出信号の振幅、前記リードの導通性、1日の検出割合、非持続性心室細動の数、未治療の心室細動の数、治療された心室細動の数、孤立性期外収縮の数、総期外収縮の数、前記リードのインピーダンス、及びペーシング閾値のうちの1つのパラメータである、請求項1から7に記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項9】
前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータは、少なくとも2つの異なるパラメータ、特に少なくとも3つの異なるパラメータを含む、請求項1から8のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項10】
前記分析値が、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つの代表値の限界値又は/及び少なくとも1つのパラメータの閾値限界を増加又は減少するように超えた場合に、警報を発する警報部をさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項11】
前記複数のパラメータの各パラメータは、それぞれ1つの閾値限界を有し、
前記閾値限界は、1つのパラメータの閾値限界を超えた場合に警報を発するように前記警報部が構成されている閾値限界の第1のグループ、又は少なくとも2つの異なるパラメータの閾値限界を併行して超えた場合に警報を発するように前記警報部が構成されている閾値限界の第2のグループにグループ化される、
請求項10に記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項12】
前記第2グループに割り当てられたパラメータの閾値限界を所定回数連続して超えた場合に、前記閾値限界を前記第1グループに移行する、請求項11に記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項13】
前記リードのインピーダンス、前記リードの導通性、及び総期外収縮の数に関連する前記閾値限界は、前記第1のグループの一部であり、
検出信号の振幅、前記検出割合、前記ペーシング閾値、孤立性期外収縮の数、治療された心室細動の数、持続性だが未治療の心室細動の数、及び非持続性心室細動の数に関連する前記閾値限界は、前記第2のグループの一部である、
請求項11又は12に記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項14】
重み付け値が前記第2のグループの各パラメータに割り当てられ、
前記少なくとも2つのパラメータの重み付け値の合計が所定数を超えた場合に、前記警報部は警報を始動させるように構成される、
請求項11から13のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項15】
前記警報部は、閾値限界を越えたことを指定期間保存し、前記指定期間の満了後に削除するように構成されたメモリ部を備える、請求項11から14のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項16】
前記複数のパラメータのうちの1つのパラメータは、第1の閾値限界及び第2の閾値限界を含み、
前記第1の閾値限界は前記第1のグループの一部であり、
前記第2の閾値限界は前記第2のグループの一部である、
請求項11から15のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【請求項17】
前記第2のグループの前記閾値限界のうち一部の前記閾値限界は互いにリンクしており、他の閾値限界は互いにリンクしておらず、これによって、前記警報部は、前記第2のグループの閾値限界のうち互いにリンクしていない閾値限界を少なくとも2回超えた場合に警報を始動させるように構成された、請求項11から16のいずれかに記載の埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込み型能動心臓装置、特に埋込み型自動除細動器や心臓再同期用除細動器における、リードの動作を監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードは、埋込み型能動装置システムの重要な部分である。実際、埋込み型能動装置、特に埋込み型自動除細動器や心臓再同期用除細動器を装着した患者は、合併症の著しいリスク(最大30%)にさらされ、その大部分は不適切なショックが関係している。これらのショックは、除細動リードの変化に起因する場合が多く、心拍信号の検出が弱まり、不整脈についてノイズを考慮したことによる。
【0003】
このような不具合は、2つのリード間の摩擦による摩耗(絶縁不良を生じる)、導線の破断、あるいは位置ずれによるリード先端と心臓壁との接触不良によって発生し得る。
【発明の説明】
【0004】
本発明の課題は、問題が生じているリードをよりよく予測することである。
【0005】
本発明の課題は、リードを特徴付ける複数のパラメータの値を決定するパラメータ決定装置を備える、埋込み型能動心臓装置、特に埋込み型自動除細動器又は心臓再同期用除細動器のリードの動作を監視する装置によって達成される。この監視装置は、少なくとも2つの異なる時間スケールに基づいて、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータを代表する値を決定するように構成された処理部を含む。前記処理部は、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータのいわゆる分析値と、前記1つのパラメータの代表値とを比較するようにさらに構成される。
【0006】
分析値を、リードを特徴付ける少なくとも1つのパラメータの2つの異なる時間スケールによる代表値と比較することにより、本装置は、リードの故障を検出するように構成される。
【0007】
分析値の比較対象となるパラメータはリードの特性であるため、その代表値と分析値の乖離は、例えば心臓の異常ではなく、リードに問題があることを示す。このように、本装置によれば、欠陥のあるリードをよりよく予測することができる。
【0008】
2つの異なる時間スケールを検討した場合の比較により、リードの故障検出の信頼性をさらに向上させることができる。
【0009】
埋込み型能動心臓装置のリードの動作を監視する装置に関する本発明は、以下の実施形態によりさらに改善することができる。
【0010】
一実施形態によれば、第1の代表値は、前記分析値よりも前に決定された第1の所定数の代表値の平均値であってもよく、この平均値は、前記処理部によって比較される。
【0011】
したがって、前記第1の代表値は、前記分析値よりも前の前記リードを特徴付けるパラメータの傾向を表すように決定される。これにより、前記第1代表値は、比較値を構成し得る。
【0012】
一実施形態によれば、第2の代表値は、前記分析値よりも前に決定された第2の所定数の代表値の平均値であってもよく、この平均値は、前記処理部によって比較され、前記第2の所定数は、前記第1の所定数より大きい。
【0013】
このように、2つの異なる時間スケールに基づいて、2つの代表値を決定することができる。
【0014】
2つの異なる時間スケールを検討しながら分析値を比較することで、リードの故障検出の信頼性をさらに向上させることができる。実際、リードの故障の判定は、分析値との関係で検討される時間スケールに依存し得る。
【0015】
一実施形態によれば、第3の代表値は、前記分析値よりも前に決定された第3の所定数の代表値の平均値に基づくローリング平均値であってよく、この平均値は、前記処理部によって比較され、前記第3の所定数の値の前記平均値は、前記複数のパラメータのうちの1つのパラメータに対応する。ローリング平均とは、統計的平均の一種であり、とりわけ、より長期的な傾向を強調するように一過性の変動を抑制することによって、時系列の分析に特に適している。
【0016】
さらに、この装置は、3つの異なる時間スケールに基づく3つの代表値を決定することが可能である。
【0017】
一実施形態によれば、前記処理部は、前記代表値の決定の際に、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータの値のうち、予め定義された限界値を超える1つの値を検討しないように構成することができる。
【0018】
このように、使用可能であるとみなされない、又は適用可能な範囲に収まっているとみなされない値を破棄することができる。そのような異常とみなされる値は、信頼性を向上させるために、代表値の決定の際に破棄されることが有益である。
【0019】
一実施形態によれば、前記処理部は、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータの前記分析値を、前記少なくとも1つのパラメータを代表する値と比較し、前記代表値の決定の際に検討される前記分析値に関する最も新しい値は、第1の所定の時間区間内にあるように構成されてもよい。
【0020】
このように、分析値に対して古すぎるとみなされない事象を起点とした代表値決定のための値のみを検討することが可能な第1の時間区間を決定することができる。
【0021】
そうすることで、装置の信頼性、ひいては欠陥のあるリードをさらによりよく予測することができる。
【0022】
一実施形態によれば、前記処理部は、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータの前記分析値を、前記少なくとも1つのパラメータを代表する値と比較し、前記代表値の決定に検討される前記分析値に関する最も古い値は、第2の所定の時間区間内にあるように構成されてもよい。
【0023】
このように、分析値に対して古すぎるとみなされない事象にさかのぼって代表値決定のための値のみを検討することが可能な第1の時間区間を決定することができる。
【0024】
そうすることで、装置の信頼性、ひいては欠陥のあるリードをさらによりよく予測することができる。
【0025】
一実施形態によれば、パラメータは、検出信号の振幅、前記リードの導通性、1日の検出割合、非持続性心室細動の数、未治療の心室細動の数、治療された心室細動の数、孤立性期外収縮の数、総期外収縮の数、前記リードのインピーダンス、及びペーシング閾値のうちのパラメータであってもよい。このようにして、本装置は、リードを特徴付けるパラメータを決定し、それのみを検討するように構成される。
【0026】
一実施形態によれば、前記リードを特徴付ける前記複数のパラメータは、少なくとも2つの異なるパラメータ、特に少なくとも3つの異なるパラメータを含んでもよい。
【0027】
リードを特徴付ける2つの異なるパラメータ、好ましくは3つのパラメータを検討することで、本リード監視装置の信頼性と感度がさらに向上する。
【0028】
一実施形態によれば、前記装置は、前記分析値が、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つの代表値の限界値又は/及び少なくとも1つのパラメータの閾値限界を増加又は減少するように超えた場合に、警報を発する警報部をさらに備えてもよい。
【0029】
このように、分析値を超えたときにリードの故障が判定された場合に、警報を発するように装置は構成されている。パラメータの「閾値限界」という用語には、限界値(例えば、パラメータが限界値を超えている)と限界変動(例えば、パラメータがこの限界変動を超えて変動している)の2つの側面を包含する。
【0030】
一実施形態によれば、前記複数のパラメータの各パラメータは、それぞれ1つの閾値限界を有してもよく、前記閾値限界は、1つのパラメータの閾値限界を超えた場合に警報を発するように前記警報部が構成されている閾値限界の第1のグループ、又は少なくとも2つの異なるパラメータの閾値限界を併行して超えた場合に警報を発するように前記警報部が構成されている閾値限界の第2のグループにグループ化される。
【0031】
このように、本装置は、閾値限界を超えたパラメータに応じて、警報を発する必要があるか否かを区別することができる。このようにして、正当とみなされる警報のみが発される。上述のように、パラメータの「閾値限界」という用語には、限界値(例えば、パラメータが限界値を超えている)と限界変動(例えば、パラメータがこの限界変動を超えて変動している)の2つの側面を含む。
【0032】
一実施形態によれば、前記第2グループに割り当てられたパラメータの閾値限界を所定回数連続して超えた場合に、前記閾値限界を前記第1グループに移行することができる。
【0033】
このように、リードの監視中の警報の感度と特異性を、識別された閾値限界を超えたことに応じて適応させることが可能である。
【0034】
一実施形態によれば、前記リードのインピーダンス、前記リードの導通性、及び総期外収縮の数に関連する閾値限界は、前記第1のグループの一部であってもよく、検出信号の振幅、前記検出割合、前記ペーシング閾値、孤立性期外収縮の数、治療された心室細動の数、持続性だが未治療の心室細動の数、及び非持続性心室細動の数に関連する閾値限界は、前記第2のグループの一部であってもよい。
【0035】
このように、本装置は、警報を発することを保証するためにそれ自体で十分であるパラメータに関連する閾値限界を識別するように適応されている。
【0036】
一実施形態によれば、重み付け値が前記第2のグループの各パラメータに割り当てられてもよく、前記少なくとも2つのパラメータの重み付け値の合計が所定数を超えた場合に、前記警報部は警報を始動するように構成されてもよい。
【0037】
パラメータに互いに重み付けをすることで、併行してそれぞれの閾値限界を超えることが警報を始動させるのに十分であるか否かを判断することができる。
【0038】
一実施形態によれば、前記警報部は、閾値限界を越えたことを指定期間保存し、この指定期間の満了後に削除するように構成されたメモリ部を備えてもよい。
【0039】
また、警報を始動させた、あるいはその可能性のあった過去の事象を検討することで、欠陥のあるリードをよりよく予測することができる。
【0040】
一実施形態によれば、前記複数のパラメータのうちの1つのパラメータは、第1の閾値限界及び第2の閾値限界を含んでもよく、前記第1の閾値限界は前記第1のグループの一部であり、前記第2の閾値限界は前記第2のグループの一部である。
【0041】
閾値限界の各々は、例えば、異なる時間スケールに関連する閾値限界に対応してもよい。したがって、第1の閾値限界は離散的な時間値に関連し、第2の閾値限界はパラメータの変動に関連してもよい。
【0042】
一実施形態によれば、前記第2のグループの前記閾値限界のうち一部の前記閾値限界は互いにリンクしていてもよく、他の閾値限界は互いにリンクしていなくてもよく、これによって、前記警報部は、前記第2のグループの閾値限界のうち互いにリンクしていない閾値限界を少なくとも2回超えた場合に警報を始動させるように構成されていてもよい。
【0043】
パラメータの閾値限界は、同じ問題(例えば、検出割合と検出の振幅)を反映している場合、互いにリンクさせることができる。したがって、互いにリンクしている2つの閾値限界を超えることは、警報を発するのに十分ではないとみなされる。
【0044】
このように、警報を発するためには、互いにリンクしていない第2のグループの閾値限界(例えば、1日当たりの心室細動エピソード数とペーシング閾値など)のうち、閾値限界を少なくとも2回超えることが必要であってもよい。
【0045】
以下、本発明及びその利点を、例としての好ましい実施形態を用い、添付図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【0046】
ここで用いられる実施形態は、単に可能な構成の例であるに過ぎず、本発明を実施する際に、上記のような個々の特徴が互いに独立して提供され得るか、又は完全に省略され得ることに留意する必要である。
【0047】
図1は、本発明によるリードの動作を監視する装置4を形成する埋込み型能動心臓装置1及び処理部2を示す。
【0048】
埋込み型能動心臓装置1は、埋込み型自動除細動器又は心臓再同期化に適応した除細動器であってもよい。
【0049】
埋込み型心臓装置1は、筐体3を備える。筐体3は、特に、電子回路と、例えばリチウム/ヨウ素型の電池とを備える。筐体3は、埋込み型リード7を挿入して、ねじ止めすることができるコネクタ部5をさらに備える。
【0050】
図1には、埋込み型リード7を備える埋込み型能動心臓装置の例が示されているが、変形例(図示せず)では、筐体3のコネクタ部5に複数の埋込み型リードを接続できることに留意する必要がある。リードの動作を監視する装置4は、複数のリードを備える埋込み型能動心臓装置用に構成されている。リードの動作を監視する装置4は、このように、2つのリード間の摩擦による摩耗に起因する故障(それらの絶縁の少なくとも部分的な喪失を引き起こす)を判定するように構成される。
【0051】
埋込み型リード7は、複数の電極8a、8b、8cを備える。
図1に示された電極の数は限定するものではなく、これらは、埋込み型心臓装置1における検出及びペーシング及び/又は除細動のための手段を構成する。
【0052】
埋込み型リード7は、除細動リードであってもよい。
【0053】
埋込み型リード7は、例えば、インピーダンスの値など、リードを特徴付ける複数のパラメータの値を測定するように構成されている。
【0054】
本発明によれば、埋込み型リード7を特徴付ける複数のパラメータは、少なくとも、検出信号の振幅、リードの導通性、1日の検出割合、非持続性心室細動の数、未治療の心室細動の数、治療された心室細動の数、孤立性期外収縮の数、総期外収縮の数、リードのインピーダンス、及びペーシング閾値を含んでもよい。
【0055】
孤立性期外収縮は、1回の期外収縮を伴う心周期と定義される。
【0056】
埋込み型リード7が除細動リードである実施形態では、さらに、除細動リードの導通性、治療された心室細動の数、持続性だが未治療の心室細動の数、及び非持続性心室細動の数といったパラメータも検討され得る。
【0057】
治療された心室細動とは、持続しており、電気ショックによって治療された心室細動と定義される。
【0058】
未治療の心室細動とは、持続しているが、電気ショックによる治療を受けていない心室細動と定義される。
【0059】
非持続性心室細動とは、持続せず、電気ショックによる治療を受けていない心室細動と定義される。
【0060】
リードを特徴付ける前述のパラメータのすべてが、あらゆる種類のリードについて利用できるわけではなく、以下でさらに説明するように、このことは、本発明のリードの動作を監視する装置4によって実施される多因子分析に影響を与えないことに留意されたい。
【0061】
このように、埋込み型心臓装置1は、埋込み型リード7を特徴付ける複数のパラメータの値を決定するパラメータ決定装置を提供する。
【0062】
埋込み型リード7の長さは分断線9で省略され、図面の縮尺上、
図1では完全に図示されていないことを示す。
【0063】
埋込み型リード7は、雄型接触部11によって、筐体3のコネクタ部5に接続される。埋込み型心臓装置1のコネクタ部5への、雄型接触部11の部分的なねじ込みや不十分な挿入によって、接続性に問題が生じることがある。
【0064】
以下、より詳細に説明するように、本発明によるリードの動作を監視する装置4は、この種の故障を検出するように構成されている。
【0065】
このために、本発明によるリードの動作を監視する装置4は、処理部2をさらに備える。
【0066】
処理部2は、埋込み型心臓装置1内に実装されてもよいし、コンピュータなどの外部機器内に実装されてもよい。
【0067】
埋込み型心臓装置1と処理部2とは、例えばテレメトリ6によって、互いに通信するように構成される。
【0068】
処理部2は、少なくとも2つの異なる時間スケール、特に3つの時間スケールに基づいて、埋込み型リード7を特徴付ける複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータを代表する値を決定するように構成される。異なる時間スケールにおけるパラメータの値の変動の分析について、
図2及び
図3を参照してさらに説明する。
【0069】
処理部2は、埋込み型リード7を特徴付ける複数のパラメータのうち少なくとも1つのパラメータのいわゆる分析値と、当該パラメータを代表する値とを比較するようにさらに構成される。
【0070】
本発明によれば、埋込み型リード7を特徴付ける各パラメータの分析は、最大又は最小の閾値、「短期」と呼ばれる(例えば、1日にわたる)絶対的な上昇又は下降変動、「中期」と呼ばれる(例えば、1週間にわたる)絶対的又は相対的な上昇又は下降変動、及び「長期」と呼ばれる(例えば1ヶ月にわたる)相対的な上昇又は下降変動などのいくつかの要因に従って実行することができる。
図2、
図3、
図4を参照しながら、パラメータの変動の検討について説明する。
【0071】
第二に、埋込み型リードを特徴付けるパラメータに関連するこれらすべての分析の組合せが、
図5及び
図6を参照して説明される警報を発するために実施される。
【0072】
なお、処理部2は、代表値の決定の際に、リードを特徴付ける複数のパラメータの値のうち、予め定義された限界値を超える1つの値を検討しないように構成する。このような予め定義された限界値を超えた値を「不使用点」、つまり、値が使用可能な範囲外である、又は値が使用できない点として認定する。一方、値が最大又は最小閾値を超えた点である場合、予め定義された限界値を越えた値を「異常点」として認定する。予め定義された限界値を超えないそれ以外の値は、「正常値」とみなされ、変動分析に使用することができる。
【0073】
同じ日の最大点と最小点との間の変動を分析することによって、「短期」と呼ばれる第1の時間スケールでの変動を分析する。一例として、処理部2は、1日における4回のインピーダンス測定値を検討する。一変形例では、処理部2は、ペーシング閾値又は検出の振幅など、他のパラメータも検討する。測定部により、1日の間に、あるパラメータを5回以上測定することもできるし、3回以下測定することもできる。
【0074】
処理部2は、警報部(
図1に図示せず)をさらに備える。警報部は、分析値が、複数のパラメータのうちの少なくとも1つの代表値の限界値又は/及び少なくとも1つのパラメータの閾値限界を増加又は減少するように超えた場合に、警報を発するように構成される。パラメータの「閾値限界」という用語には、限界値(例えば、パラメータが限界値を超えている)と限界変動(例えば、パラメータがこの限界変動を超えて変動している)の2つの側面を含む。
【0075】
処理部2は、データを保存することができるメモリ部(
図1に図示せず)をさらに備える。
【0076】
図2は、「中期」と呼ばれる第2の時間スケールによる変動分析を示す。
【0077】
本発明による第2の時間スケールは、1日を超え、特に1週間にわたる変動分析を意味する点で、第1の時間スケールと異なる。
【0078】
第二のいわゆる「中期」時間スケールでの(相対的又は絶対的)変動分析は、分析点Paと中期ベースラインと呼ばれるベースラインLmとの間で行われる。
【0079】
分析点Paは、1日の平均を代表する点に相当する。
【0080】
ベースラインL
mは、1日の平均をそれぞれ代表する最終点の数nに相当する。ベースラインL
mは、「正常」と認定された点のみを含む。
図2の点A1、A2、A3は、それぞれ最大閾値(
図2の水平方向に延びる点線)を超える値を持つため、このベースラインL
mから除外されている。最小閾値を超えた点も同様に、ベースラインL
mから除外することができる。
【0081】
ベースラインLmは、「中期」(つまり、1週間に関する)ベースラインLmであるため、中期ベースラインLmは、ベースラインLmの正常と認定された最後の7点Pm1からPm7に相当する。上記で説明したように、7点Pm1からPm7のそれぞれが1日の平均に相当する。
【0082】
図2の例では、P
m1は、分析点P
aに対する中期ベースラインL
m上の最も新しい点を表している。一方、P
m7は、分析点P
aを基準として中期ベースラインL
mの最も古い点を表している。
【0083】
分析点Paを古すぎるとみなされる事象と比較しないために、分析点Paと中期ベースラインLmの最も新しい点Pm1との間に第1の時間区間Δm1を定めることができる。この第1の時間区間Δm1は、7日間に相当してもよい。そうでない場合は、変動分析を中断することができる。
【0084】
さらに、中期ベースラインLmの最も新しい点Pm1と、中期ベースラインLmの最も古い点に対応し得るベースラインLmの点Pmとの間に、第2の時間区間Δm2を定めてもよい。この第2の時間区間Δm2は、14日間に相当してもよい。そうでない場合は、変動分析を中断することができる。
【0085】
図3は、「長期」と呼ばれる第3の時間スケールでの値の変動分析を示す。
【0086】
本発明によるリードの動作を監視する装置4の処理部2は、前記監視装置4のパラメータ決定装置によって得られた信号Sを検討する。この信号Sは、生信号であってもよいし、公知のフィルタリング手段で処理された信号であってもよい。
【0087】
処理部2は、信号Sに対して、(特に7点の)ローリング平均を求めるように構成される。
図3の曲線C
mは、このようにして得られた平均化された曲線を表す。平均化することで、1日の変動といういわゆる「短期」変動による変化を回避することができる。
【0088】
図3の曲線C
mは、長期と呼ばれる第3の時間スケールでの変動分析のために検討された曲線に相当する。
【0089】
平均化するとシフトが生じることから、曲線Cmを再調整するために、3日間にわたり曲線Cmの焦点を定め直すことができる。
【0090】
図3の例で示した曲線C
mは、下降曲線である。一実施形態では、曲線C
mは、上昇曲線とすることができる。
【0091】
図2を参照して説明した第2の時間スケールでの変動分析については、平均化操作の前に異常とみなされる点を除外した。正常とみなされる点は、1週間の平均値に対応している。
【0092】
図3に示すように、所定の時間区間Δ
l1は、正常とみなされる最後の7点P
l1からP
l7を含んでもよい。最初の点P
l1は分析点P
aに対応し、点P
l7は分析点P
aに対して最も古い点に対応する。
【0093】
図3に示すように、分析点P
aを古すぎると考えられる事象と比較しないために、分析点P
aと長期ベースラインL
lの最も新しい点P
l7との間に第1の時間区間Δ
l1を定める。この第1の時間区間Δ
l1は、7日間に相当してもよい。そうでない場合は、変動分析を中断してもよい。
【0094】
このように、所定の時間区間Δl1を分析点Paに関して直近である最後の7点に限定することで、分析点Paから最後の点Pl7までの間に7点を超えて存在し得ることはなく、古すぎるとみなされる事象に関して1週間の最大値又は最小値を比較することが回避される。
【0095】
所定の時間区間Δl1の点Pl1からPl7は、いわゆる長期ベースラインLlと比較される。
【0096】
図3の例では、いわゆる長期ベースラインL
lは、点P
l7より前の点である、曲線C
mの正常とみなされる最後の28点に相当する。したがって、
図3の例におけるいわゆる長期ベースラインL
lは、点P
l7と点P
l35との間に構成される。
【0097】
本発明の一変形例では、いわゆる長期ベースラインLlは、少なくともいわゆる中期ベースラインLmよりも多くの点である、28点を超える、又は28点未満の点で構成され得る。
【0098】
一変形例では、いわゆる長期ベースラインLlは、古すぎるとみなされる事象を検討することを避けるため、56点を超える点から構成されることはない。
【0099】
「長期」と呼ばれる第3の時間スケールでの変動分析は、所定の時間区間Δl1において正常とみなされる点の最大値、最小値又は平均値と、長期ベースラインLl又は所定の時間区間Δl3において正常とみなされる点の最大値、最小値又は平均値との間で行われる。所定の時間区間Δl1に含まれる曲線Cmの点と、所定の時間区間Δl2又はΔl3に含まれる曲線Cmの点とを比較する。
【0100】
所定の時間区間Δ
l2は、P
l7からP
lnの間の点を含み、P
lnはP
aに対して最も古い点に相当する。
図3のΔ
l2は、P
l7とP
lnとの間の56点を含む区間を表す。
【0101】
所定の時間区間Δ
l3は、長期ベースラインの最も古い点である点P
l35を起点とする曲線C
m上で正常とみなされる最も古い7点を含む。
図3の例では、このように所定の時間区間Δ
l3は、点P
l28から点P
l35を含む。
【0102】
図3の例のように曲線C
mが下降している場合、所定の時間区間Δ
l1の点P
l1からP
l7の最小値を、所定の時間区間Δ
l3の点P
l28からP
l35の最大値と比較することができる。
【0103】
一変形例では、所定の時間区間Δl1の点Pl1からPl7の平均値を、所定の時間区間Δl3の点Pl28からPl35の平均値と比較してもよい。
【0104】
図4a及び
図4bは、本発明による3つの異なる時間スケールでの変動及び閾値の分析を表すフローチャート100を示す。フローチャート100は、図面を分かりやすくするためにのみ
図4a及び
図4bの2つの図に示されている。
図4bは、
図4aに示したステップの続きを示す。
図4aのステップ114に続いて、
図4bに示すステップ116が行われる。
【0105】
フローチャート100は、上述した埋込み型能動心臓装置1のリードの動作を監視する装置4の処理部2によって実施されるステップを含む。そのため、埋込み型リード7を特徴付ける1つのパラメータの値の変動分析を含む。その結果、
図1から
図3の説明のために既に使用された同じ参照符号が付された要素の詳細な説明は繰り返さず、上述の説明を参照されたい。
【0106】
変動分析の最初のステップ102では、処理部2によって分析点Paが検討される。
【0107】
ステップ104では、分析点Paの値が使用可能な値に相当するか否かが判定される。分析点Paの値が予め定義された限界値を超えた場合、「不使用点」、つまり、値が使用可能な範囲外である、又は値が使用できない点として認定される。この場合、ステップ105で分析は中断される。続いて、ステップ130で次の点が分析点Paとして検討される。
【0108】
分析点Paの値が使用可能と判断された場合、分析を継続する。
【0109】
ステップ106では、分析点Paの値が「正常値」とみなせる値に相当するか否かが判定される。この目的のために、分析点の値は、予め定義された限界、最大又は最小の閾値と比較される。分析点Paの値が予め定義された最大又は最小の閾値を超えた場合、分析点Paの値が異常であるとみなされる。この場合、ステップ107で閾値を超えたことを示す通知を出し、その後、次の点が分析点Paとして検討される。
【0110】
分析点Paの値が正常であるとみなされた場合、ステップ130で分析を継続する。
【0111】
ステップ108では、第1の時間スケールでの変動が、所定の閾値限界、要は変動限界を超えているか否かが判定される。第1の時間スケールは、1日を指してもよい。第1の時間スケールでの変動は、同じ日の最大点と最小点との間の変動に対応する。
【0112】
第1の時間スケールについて所定の閾値を実際に超えた場合、ステップ109において、変動に関して超えたことを示す通知が発行される。
【0113】
ステップ108で第1の時間スケールについて所定の閾値を超えたか否かにかかわらず、ステップ110では、第2の時間スケールでのベースラインが定められる。この第2の時間スケールは、第1の時間スケールとは異なる。第2の時間スケールは、1週間に関してもよい。
【0114】
ステップ112では、分析点P
aと第2のいわゆる「中期」スケール(
図2参照)のベースラインL
mの最も新しい点P
m1との間の日数が、予め定義された時間区間Δ
m1内に含まれているか否かが判定される。好ましくは、Δ
m1は7日間に等しい。
【0115】
含まれない場合は、ステップ113で分析は中断される。続いて、ステップ130で次の点が分析点Paとして検討される。
【0116】
それ以外の場合は、分析を続行する。
【0117】
ステップ114では、第2のいわゆる「中期」スケール(
図2参照)のベースラインL
mの最も新しい点P
m1と最も古い点P
mとの間の日数が、予め定義された時間区間Δ
m2内に含まれているか否かが判定される。好ましくは、Δ
m2は14日間に等しい。
【0118】
含まれない場合は、ステップ115で分析は中断される。続いて、ステップ130で次の点が分析点Paとして検討される。
【0119】
それ以外の場合は、分析を続行する。
【0120】
ステップ116では、第2の時間スケールでの変動が、所定の閾値限界、要は変動限界を超えているか否かが判定される。
【0121】
第2の時間スケールについて所定の閾値を実際に超えた場合、ステップ117において、変動に関して超えたことを示す通知が発行される。
【0122】
ステップ116で第2の時間スケールについて所定の閾値を超えたか否かにかかわらず、ステップ118では、第3の時間スケールでのベースラインが定められる。この第3の時間スケールは、第1及び第2の時間スケールとは異なる。第3の時間スケールは、1ヶ月に関してもよく、「長期」とみなされる。
【0123】
ステップ120において、いわゆる長期ベースラインL
lの最も古い7点の平均値(いわゆる長期ベースラインL
lの最も古い点を起点とした7点の平均値(
図3参照))が決定される。一変形例において、ステップ120では、いわゆる長期ベースラインL
lの最も古い7点の最大点又は最小点が決定されてもよい。
【0124】
ステップ122では、最も新しい点P
l1に対応する分析点P
aと第3の時間スケール(
図3参照)での分析のために検討された最も古い点P
l7との間の日数が、予め定義された時間区間Δ
l1内に含まれているか否かが判定される。好ましくは、Δ
l1は7日間に等しい。
【0125】
含まれない場合は、ステップ123で分析は中断される。続いて、ステップ130で次の点が分析点Paとして検討される。
【0126】
それ以外の場合は、分析を続行する。
【0127】
ステップ124では、いわゆる「長期」第3のスケール(
図3参照)のベースラインL
lの最も新しい点P
I7と最も古い点P
l35との間の日数が、予め定義された時間区間Δ
l2内に含まれているか否かが判定される。好ましくは、Δ
l2は56日間に等しい。
【0128】
含まれない場合は、ステップ125で分析は中断される。次に、ステップ130で分析点Paとして次の点が検討される。
【0129】
それ以外の場合は、分析を続行する。
【0130】
ステップ126では、第3の時間スケールでの変動が、所定の閾値限界、要は変動限界を超えているか否かが判定される。
【0131】
第3の時間スケールについて所定の閾値を実際に超えた場合、ステップ127において、変動に関して超えたことを示す通知が発行される。
【0132】
そうでない場合は、ステップ128で通知は行われない。
【0133】
いずれの場合も、所定の閾値を超えたか否かにかかわらず、ステップ130では、分析点Paとして次の点を検討することによって分析を継続する。
【0134】
したがって、フローチャート100によって示される変動分析は、最も短い時間スケールから最も長い時間スケールまで、異なる時間スケールでの連続した変動分析を含む。
【0135】
図5は、フローチャート100のステップ107、109、117、127で発行された通知に応じて、警報の始動に関連するフローチャート300を示す。
【0136】
フローチャート300は、上述した埋込み型能動心臓装置1のリードの動作を監視する装置4の処理部2によって実施されるステップを含む。その結果、
図1から
図4の説明のために既に使用された同じ参照符号が付された要素の詳細な説明は繰り返さず、上述の説明を参照されたい。
【0137】
フローチャート300は、医師に送られる警報の感度及び特異性を最適化するために、フローチャート100のステップ107、109、117、127で先に発行された各種通知がどのように組み合わされるかを示すものである。つまり、正当な警報のみを始動させる目的である。
【0138】
本発明によれば、通知は、警報とは異なる。警報は、リードの故障の可能性を示すために、例えば、視覚的又は聴覚的なメッセージによって、最初から医師に伝えられる。通知は、必ずしも医師に伝達されるとは限らない。ただし、以下に説明するように、通知の併行発生によって警報を始動させることができる。
【0139】
このように、ある閾値限界を上回る、又は下回る値の分析によって、即座に警報を発せられる(例えばインピーダンスや導通性の場合)のに対し、同じパラメータの変動分析の場合は、通知ステップを経る必要がある。
【0140】
本発明の監視装置4の処理部2によって、2種類の通知、すなわち、変動の通知(ステップ301)と閾値の通知(ステップ302)を検討することができる。
【0141】
図4aのステップ107を参照して説明したように、閾値の通知は、分析点P
aの値が閾値限界を超えたことに対応する。
【0142】
図4aのステップ109と
図4bのステップ117及び127を参照して説明したように、変動の通知は、埋込み型リード7を特徴付けるパラメータの値の時間スケールに応じた変動によって閾値限界を超えることに対応する。
【0143】
埋込み型リード7を特徴付ける各パラメータについて、少なくとも1つの閾値限界が決定される。
【0144】
同じパラメータに対して、複数の閾値限界を決定することができる。このように、パラメータは、超えると通知が発行される第1の閾値限界と、超えると警報が発せられる第2の閾値限界とを有する。
【0145】
本発明によれば、リードを特徴付けるパラメータの閾値限界は、2つのグループに分類することができる。
【0146】
第1のグループは、1つのパラメータの閾値限界を超えた場合に警報を発するように監視装置4の警報部が構成されている閾値限界をまとめたものである。例えば、リードのインピーダンス、リードの導通性、及び総期外収縮の数に関する閾値は、第1のグループに属する。
【0147】
第2のグループは、少なくとも2つの異なるパラメータの閾値限界を併行して超えた場合に警報を発するように監視装置4の警報部が構成されている閾値限界をまとめたものである。例として、検出信号の振幅、検出割合、ペーシング閾値、孤立性期外収縮の数、治療された心室細動の数、持続性だが未治療の心室細動の数、及び非持続性心室細動の数に関する閾値限界は、第2のグループに属する。
【0148】
なお、第2グループに割り当てられたパラメータの閾値限界を所定回数連続して超えた場合に、この閾値限界を第1グループに移行することができる。
【0149】
また、それ自体で警報を発するための閾値限界は、変化し得ることに留意すべきである。例えば、左心室リードのインピーダンスの場合、ユニポーラベクトルについてはバイポーラベクトルより低い閾値限界で通知を発行可能である。
【0150】
図5に示されるように、フローチャート300のステップ302で閾値通知が発行されたことが検出された場合(フローチャート100のステップ107)、ステップ304では、発行された閾値通知が第1のグループに分類されたパラメータの値に関するものか否かが判定される。
【0151】
仮にそうであった場合、この条件は、ステップ306で監視装置4の警報部によって警報が発せられるのに十分である。第1グループの閾値限界について先に説明したように、閾値限界を超えた値を分析することで、(例えば、インピーダンスや導通性の場合)即座に警報を発することができる。このように、あるパラメータの値が非常に高い、又は非常に低い(例えば、リードのインピーダンスが2000オームを超える)ことは、(例えば破断のように、)リードに問題があることを示す特徴となる。そのため、この要因だけで、リード故障の可能性があることを示す警報を始動させるのに十分であると言える。
【0152】
そうでない場合は、ステップ308において、発行された閾値の通知が、第2の閾値限界を含むパラメータに関するか否かが確認され、その閾値限界を超えると警報を始動させる可能性がある。実際、上記で説明したように、一部のパラメータ(例えば、総期外収縮)は、超えると通知が発行される第1の閾値限界と、超えると警報が発せられる第2の閾値限界とを有する。この場合、ステップ310において、分析点の値が第2の閾値限界を超えるか否かが確認される。超える場合、ステップ306で警報を始動させる。
【0153】
上述の通知以外のケースで、単独で警報を発することができるケースについて、以下に説明する。
【0154】
フローチャート300によって示されるように、ステップ301において、1つのパラメータの変動の通知は、それ自体では警報を発するのに十分ではない。
【0155】
したがって、このパラメータは、警報を始動させるために、少なくとも併行して第2のパラメータを有する必要がある。
【0156】
こうして、ステップ312において、ステップ301の通知に併行して、第2のパラメータに関する通知が検出されたか否かが判定される。この第2のパラメータも、同じ問題(例えば、検出割合と検出の振幅)を反映している場合、十分でない場合がある。その場合、第1パラメータと第2パラメータとが「リンク」しているとされる。
【0157】
このため、ステップ314では、第1のパラメータと第2のパラメータとがリンクしているか否かが判定される。
【0158】
それらが互いにリンクされていない場合、第1のパラメータに関する通知と、第2のパラメータに関する通知(第2のパラメータは第1のパラメータにリンクされていない)とが併行していることにより、ステップ306で警報を始動させる。
【0159】
したがって、例えば1日当たりの心室細動のエピソード数やペーシング閾値など、警報を発するための、リンクされていない少なくとも1つの第2のパラメータが必要である。
【0160】
リードを特徴付けるパラメータの組のうち、「リンク」しているために警報を始動させるには互いに不十分なパラメータの組は、
図6において斜線のボックスによって図示されており、以下でさらに説明する。
【0161】
このように、3組の「リンク」されたパラメータが定義されている。第1の組は、1日当たりの検出と波の振幅に対応している。第2の組は、持続的なエピソードと未治療のエピソードに対応している。さらに、第3の組は、孤立性期外収縮と総期外収縮に対応している。
【0162】
フローチャート300のステップ314において2つのパラメータがリンクしていると判定された場合、又はステップ312において第2のパラメータ通知が併行して検出されていなかった場合も、ステップ316において、第1のパラメータに関する通知(ステップ301のもの)が毎日始動させられるか否かが判定される。
【0163】
このため、第1のパラメータに関する通知は、処理部2のメモリ部に保存される。
【0164】
なお、異なるパラメータの分析は同時に行われる。パラメータの1つが通知を発すると、その通知は所定の期間、例えば7日間有効である。
【0165】
通知が数日連続して発せられた場合、その終了から7日間は続けて有効である。
【0166】
異なるパラメータの複数の通知が同時に(つまり併行して)有効である場合、これによって警報が作動することがある。
【0167】
この併行警報の仕組みにより、異なる時期に異なる方法で発生する可能性のある故障を検出することが可能になる。
【0168】
ステップ318では、通知が7日より前に始動させられたか否かが判定される。7日より前である場合、ステップ320において、この通知を無効に(消滅)する。そうでないは、ステップ322で分析を継続して次の点を検討する。
【0169】
【0170】
特にフローチャート300のステップ314において、通知相互の充足度を計算するために、組ごとの重み付けスキームが実施される。
【0171】
1日に表示されるリードを特徴付けるパラメータに関するすべての通知は、アルファベット順に分類される。
【0172】
図6のハッチングされたボックスは1つの通知を表し、同じパラメータの2つの異なるスケールでの変動のような、同じパラメータから発せられた2つの通知ではない。
【0173】
表中の各組に割り当てられた「重み付け」を加算する。この加算結果が3より大きく、かつ3とは異なる場合、フローチャート300のステップ306(
図5参照)で警報を発する。
【0174】
さらに、第1パラメータの行まで進み、形成された組のそれぞれの重み付けを第1パラメータのそれぞれの重み付け(ハッチングされたボックスで示される)に加算する必要がある。以下に例を挙げる。
【0175】
第1の例では、第1のパラメータはインピーダンスに対応し、第2のパラメータはペーシング閾値に対応する。第1の例では、まずインピーダンスの行に進み、インピーダンスのそれぞれの重み付け(2(ハッチングされたボックスを参照))とペーシング閾値で形成された組の重み付け(4)を加算する必要がある。加算の結果である6が3より大きいため、警報が発せられる。
【0176】
第2の例では、第1のパラメータは信号の振幅に対応し、第2のパラメータは検出された信号の1日の割合、すなわち自発的なリズムの信号の1日の割合に対応する。したがって、第2の例では、波の振幅の行に進み、波の振幅のそれぞれの重み付け(2(ハッチングされたボックスを参照))と1日当たりの検出で形成された組の重み付け(1)を加算する必要がある。加算の結果が3に等しいため、警報は発せられない。
【0177】
本発明の一実施形態では、リードの動作を監視する装置は、リードを特徴付ける少なくとも2つの異なるパラメータを検討する。
【0178】
本発明の別の実施形態では、リードの動作を監視する装置は、リードを特徴付ける少なくとも3つの異なるパラメータを検討する。このように、3つの異なるパラメータを検討する第3の例を以下に説明する。
【0179】
第3の例では、第1のパラメータが波の振幅に対応し、第2のパラメータが1日当たりの検出に対応し、第3のパラメータが導通性に対応する。したがって、第3の例では、波の振幅の行に進み、波の振幅のそれぞれの重み付け(2(ハッチングされたボックスを参照))、1日当たりの検出で形成された組の重み付け(1)と、導通性で形成された組の重み付け(4)とを加算する必要がある。加算の結果が7に等しい、つまり3より大きいため、警報が発せられる。
【0180】
このように、本発明では、埋込み型リードの故障をよりよく予測するために、この埋込み型リードに特徴的な複数の(電気的及びリズム的)パラメータを異なる時間スケールで検討することができる。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【
図2】「中期」と呼ばれる第2の時間スケールでのパラメータの変動分析を示す。
【
図3】「長期」と呼ばれる第3の時間スケールでのパラメータの変動分析を示す。
【
図4a】本発明による3つの異なる時間スケールでのパラメータの値の変動分析と、通知に関するフローチャートの第1の部分を示す。
【
図4b】
図4aに示したフローチャートの第2部分を示す。
【
図5】本発明による通知の機能としての警報の始動に関するフローチャートである。
【
図6】通知相互の充足度を重み付けするための表を示す。
【国際調査報告】