(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】航空機構造
(51)【国際特許分類】
B64C 39/08 20060101AFI20231005BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20231005BHJP
B64C 27/28 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B64C39/08
B64D27/24
B64C27/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023517869
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 AU2021051078
(87)【国際公開番号】W WO2022056597
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520097618
【氏名又は名称】エーエムエスエル イノベーションズ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AMSL INNOVATIONS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】42 Stafford Street, Stanmore, New South Wales 2048, Australia
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,アンドリュー ダドリー
(72)【発明者】
【氏名】スワロー,アルフレッド レオナール
(57)【要約】
胴体(24)と、胴体(24)の対向する側に取り付けられ、かつ/またはそこから伸びる第1および第2の前方翼(20、22)と、第1および第2の後方翼(30、32)ならびに中央固定接続部(36)を画定する連続後方翼幅(34)と、第1の前方翼(20)と第1の後方翼(30)との間に伸びる第1の翼接続部材(42)と、第2の前方翼(22)と第2の後方翼(32)との間に伸びる第2の翼接続部材(42)とを備える航空機構造(10)であって、後方翼幅(34)は、第1および第2の角度をなして傾斜したアーム(100、110)によって画定された、中央に位置するV尾翼接合部によって支持され、回転翼を各々有する第1および第2の電動モータが、各翼(20、22、30、32)に取り付けられ、各回転翼は、垂直飛行のための第1の構成と前方飛行のための第2の構成との間で回動する、航空機構造(10)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、
前記胴体の対向する側に取り付けられ、かつ/またはそこから伸びる第1および第2の前方翼と、
第1および第2の後方翼ならびに中央固定接続部を画定する連続後方翼幅と、
前記第1の前方翼と前記第1の後方翼との間に伸びる第1の翼接続部材と、
前記第2の前方翼と前記第2の後方翼との間に伸びる第2の翼接続部材と
を備える航空機構造であって、
前記後方翼幅は、第1および第2の角度をなして傾斜したアームによって画定された、中央に位置するV尾翼接合部によって支持され、
回転翼を各々有する第1および第2の電動モータが、各翼に取り付けられ、各回転翼は、垂直飛行のための第1の構成と前方飛行のための第2の構成との間で回動する、
航空機構造。
【請求項2】
前記第1および第2の角度をなして傾斜したアームの各々は、前記胴体に固定された近位端と、前記後方翼幅の前記中央固定接続部に固定された遠位端とを有する、請求項1に記載の航空機構造。
【請求項3】
前記第1および第2の角度をなして傾斜したアームの各々は、共通の後方翼支持体に固定された近位端であって、前記後方翼支持体は前記胴体に固定されている、近位端と、前記後方翼幅に固定された遠位端とを有する、請求項1に記載の航空機構造。
【請求項4】
前記翼幅比は、
【数1】
の比と定義され、約0.088~0.105の範囲である、先行する請求項のいずれか一項に記載の航空機構造。
【請求項5】
前記第1および第2の角度をなして傾斜したアームは、約19~26度で互いに対して角度的にオフセットされる、先行する請求項のいずれか一項に記載の航空機。
【請求項6】
各翼は、固定前縁と回動後縁操縦翼面とを有する、先行する請求項のいずれか一項に記載の航空機構造。
【請求項7】
前記第1および第2の角度をなして傾斜したアームは、前記胴体の後方隔壁に取り付けられ、尾翼コーンが、前記後方隔壁に取り付けられ、前記尾翼コーンは、各アームの少なくとも最下部を覆う、先行する請求項のいずれか一項に記載の航空機構造。
【請求項8】
各アームは、前記尾翼コーン内に位置する近位取り付け部と、前記尾翼コーンの上に伸びる遠位露出部とを有する、請求項7に記載の航空機構造。
【請求項9】
前記遠位露出部は、前縁に空気力学的フェアリングを有する、請求項8に記載の航空機構造。
【請求項10】
空気力学的シールドが、各アームの前記遠位露出部が前記胴体を越えて上方に伸びる交差部に設置される、請求項9に記載の航空機構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機構造に関する。特に本発明は、箱型翼航空機、より具体的には垂直離着陸(VTOL)箱型翼航空機のための改善された構造に関する。しかし当然のことながら、本明細書で開示される改善された構造は、他の航空機の種類に適用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
空力弾性は、流体流に曝される弾性体に作用する慣性力、弾性力、および空気力の間の相互作用に関係する。空力弾性の1つの特定の側面は、「フラッタ」と呼ばれる。フラッタは、航空機の破壊をもたらし得る非拘束振動に関係する。航空機構造を設計する際、フラッタを考慮しなければならない。
【0003】
フラッタは、物体のたわみと流体流によって加えられる力との間のフィードバックによって引き起こされる、流体流内の弾性構造体の動的不安定性に関係する。線形系では、「フラッタ点」は、構造体が単振動-正味の減衰がゼロ-を経験する点であり、正味の減衰のさらなる減少は、自励振動および最終的な破損もたらすことになる。
【0004】
翼およびエアロフォイルを含む、空気力に曝される構造体は、フラッタを回避するために既知のパラメータ内で注意深く設計されなければならない。航空機の質量分布またはある部品の剛性を変化させることは、一見関係のない空力部品にフラッタを誘発し得る。フラッタは、制御不能に発達し得、航空機の深刻な損傷または破壊を引き起こし得る。
【0005】
質量分布および局所構造剛性の変更は、フラッタ点に到達する航空機の飛行速度を変化させるのに利用され得る。実際、航空機は、フラッタ点またはその付近で航空機が動作しないような方法で設計されなければならない。
【0006】
しかしながら、フラッタによる破滅的破損を回避するように航空機を設計することは、1つのパラメータに対する小さな変更が、航空機構造が異なる飛行速度および条件で反応する方法に重要な影響を及ぼし得るため、困難であり得る。
【0007】
フラッタ点破損のリスクを減らすための1つの方法は、フラッタ点に遭遇する速度より著しく低いレベルに最高飛行速度を制限することである。しかしながら、これは非現実的であり得、実際にこれは、望ましくない最高速度制限によって、所与の航空機設計の商業的実現可能性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0008】
フラッタ速度またはその付近で航空機を動作させるリスクを減らす別の手段は、胴体および特に翼の剛性を高めることである。そのような剛性の増加は、航空機がフラッタ点に到達することなく安全に動作することができる最高動作速度を高める可能性があるが、欠点は、剛性の増加が一般に重量の増加を伴うことである。これは、航空機が運ぶことができる最大ペイロードを減らすという欠点を有し、これは残念ながら、輸送することができる人数または貨物重量を減少させる。再び、ペイロードのこの減少は望ましくなく、提案された航空機設計の全体的な商業的実現可能性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0009】
箱型翼航空機すなわち閉鎖翼航空機は、典型的には、航空機の両側に、互いに接続されている2つの翼が存在し、ストラット/ブレースまたは各翼端もしくはその付近のウィングレットを有し、その結果、航空機の両側に、前方および後方(あるいは、上方および下方)翼が、(胴体への接続に加えて)互いに機械的接続で固定されている、航空機の特定の種類である。
【0010】
箱型翼構造は、さらなる翼剛性を提供し得、これはフラッタに対して有益である。しかしながら、箱型翼航空機に関連する特定の問題および課題が存在する。
【0011】
箱型翼航空機が各翼に取り付けられた回転翼を有する場合、前方翼に取り付けられた回転翼を通る空気流は、後方回転翼を有効に通る前方回転翼の航跡により、後方翼に取り付けられた回転翼に悪影響を及ぼし得るという問題がある。したがって、前方翼および後方翼の回転翼の掃引領域間の垂直方向の重なりは、騒音を出し得、また空気力学的に非効率的であり得る。
【0012】
ある箱型翼航空機では、後方翼は、航空機の胴体に直接取り付けられる。この構成は後方翼の剛性を改善し、これはフラッタ点を高めるのに好ましい。しかしながら、この取り付け構成はしばしば、前方翼と後方翼との間の垂直方向の間隔を減らし、前方翼および後方翼の回転翼の掃引領域間の前述の望ましくない重なりをもたらす可能性がある。さらに、胴体への後方翼の取り付け構成は、揚力を発生させるのに利用可能な翼の長さが減ることにより、空気力学的に非効率的な合計後方翼幅の中央部分をもたらす。
【0013】
上記の欠点に取り組むために、後方翼を胴体から物理的に垂直に分離する垂直「T字型」接続で、後方翼を胴体に固定することが知られている。これは、後方翼を高くし、したがって、前方翼と後方翼との間の垂直方向の間隔を増加させるのを支援する。これはまた、揚力を発生させるために使用可能な翼の空気力学的長さを増加させる。しかしながら、T字型接続は、後方翼取り付けの剛性がこの構成では減少するため、フラッタのためには最適ではない。したがって、航空機がフラッタ点未満で動作することができる最高速度を望ましくなく低下させ得る、前述のフラッタ問題が、この構成では問題になり得る。
【0014】
WO 2019/211875は、ハイブリッド垂直離着陸航空機を開示する。その公報に開示されている航空機には、異なる飛行状態、例えば離陸および前方飛行のための別々の回転翼が存在し、その結果、回転翼のうちの10個は垂直離着陸のために固定され、回転翼のうちの2個は巡航/前方飛行のために傾く。
【0015】
WO 2019/211875は、2つの角度的にオフセットされたアームで胴体の後部に取り付けられている、後方翼幅に関するV尾翼取り付け構成を開示する。そのシステムを用いる1つの欠点は、後方翼の翼幅が連続的ではなく、胴体へのV尾翼接続のために短くなることであり、これは、後方翼幅の中央部分がなく、後方翼幅が2つの独立した翼で構成されるため、揚力を発生させるのに利用可能な翼の長さが減るので、望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、上記欠点の1つ以上を実質的に克服するか少なくとも改善すること、または有用な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、
胴体と、
胴体の対向する側に取り付けられ、かつ/またはそこから伸びる第1および第2の前方翼と、
第1および第2の後方翼ならびに中央固定接続部を画定する連続後方翼幅と、
第1の前方翼と第1の後方翼との間に伸びる第1の翼接続部材と、
第2の前方翼と第2の後方翼との間に伸びる第2の翼接続部材と
を備える航空機構造を提供し、
後方翼幅は、第1および第2の角度をなして傾斜したアームによって画定された、中央に位置するV尾翼接合部によって支持され、
回転翼を各々有する第1および第2の電動モータが、各翼に取り付けられ、各回転翼は、垂直飛行のための第1の構成と前方飛行のための第2の構成との間で回動する。
【0018】
第1および第2の角度をなして傾斜したアームの各々は、好ましくは、胴体に固定された近位端と、後方翼幅に固定された遠位端とを有する。
【0019】
第1および第2の角度をなして傾斜したアームの各々は、好ましくは、共通の後方翼支持体に固定された近位端であって、後方翼支持体は胴体に固定されている、近位端と、後方翼幅に固定された遠位端とを有する。
【0020】
翼幅比は、
【数1】
の比と定義され、好ましくは、約0.088~0.105の範囲である。
【0021】
第1および第2の角度をなして傾斜したアームは、好ましくは、胴体の後方隔壁に取り付けられ、尾翼コーンが、後方隔壁に取り付けられ、尾翼コーンは、各アームの少なくとも最下部を覆う。
【0022】
各アームは、好ましくは、尾翼コーン内に位置する近位取り付け部と、尾翼コーンの上に伸びる遠位露出部とを有する。
【0023】
遠位露出部は、好ましくは、前縁に空気力学的フェアリングを有する。
【0024】
空気力学的シールドが、好ましくは、各アームの遠位露出部が胴体を越えて上方に伸びる交差部に設置される。
【0025】
次に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら具体例により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】V尾翼アセンブリと胴体との交差を示す斜視部分詳細図である。
【
図4】一実施形態による航空機の主な空力部品の概略分解図である。
【
図5】さらなる実施形態によるV尾翼を示す背面図である。
【
図7】尾翼コーンが取り付けられた
図5および
図6のV尾翼を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
垂直離着陸(VTOL)箱型翼航空機10が開示される。しかし当然のことながら、本発明は、従来の箱型翼航空機または他の種類の航空機構造に適用されてもよい。
【0028】
好ましい実施形態では、図面に示されているように、航空機10は、2対の翼、すなわち前方翼20、22および後方翼30、32を有する。前方翼20、22の各々は、胴体24の側方の対向する領域に取り付けられているか、あるいは胴体24を貫通して、単一の前方翼幅を画定する。後方翼30、32は、後述するような2つのアームで胴体24に取り付けられている、連続的に伸びる翼幅34により画定される。
【0029】
図面に示されている実施形態では、航空機10は、シングルシートまたはダブルシート航空機10として示されている。しかしながら、より大きい多人数用実施形態も想定される。航空機10は、パイロットによって中から制御されてもよく、あるいは遠隔制御されてもよい。
【0030】
図面に示されている実施形態では、前方翼20、22および後方翼30、32の遠位部は、2対の翼20、22、30、32が箱型翼すなわち閉鎖翼構造を画定するように、翼接続部材すなわちウェブ42により接続されている。
【0031】
翼接続部材42は、バッテリ、燃料タンク、水素タンク、またはさらには貨物室を格納するのに使用され得る。バッテリなどの質量を翼接続部材42に設置することにより、質量配置は最適になり、フラッタ安定性を改善し、フラッタ速度を高め得る。
【0032】
接続部材42に格納された燃料/エネルギー/貨物は、以下の利点を提供する:
・他の航空機構造に対する最小限の複雑化を伴う構成変化、
・バッテリ技術改善または水素を含む他のエネルギー源の単純な実装、
・バッテリホットスワップを含む他の動作上の利点、
・翼面および乗員室からの分離による改善された安全性、
・(翼端上の)冗長性バッテリ格納領域間の大きな分離による改善された損傷許容性。
【0033】
さらに、翼端接続部材42にバッテリを配置することは、(バッテリが翼の中に格納される場合)翼が体積効率とは対照的に空気力学的効率について最適化されることを可能とする。
【0034】
別の実施形態(図示せず)では、前方翼20、22および後方翼30、32は、タイバーまたはストラットにより接続されたストラットブレース付き翼であってもよい。ストラットブレース付き翼は、一般に従来の片持ち翼より軽量である。
【0035】
本明細書に記載されている航空機10は、箱型翼航空機またはストラットブレース付き航空機10であるが、航空機10は、前方翼20、22および後方翼30、32が別個であり、かつ相互接続されていない従来の片持ち翼航空機であってもよいことを、当業者なら理解するであろう。
【0036】
図面を参照すると、前方翼20、22が後方翼30、32の下に垂直に配置されるように、前方翼20、22および後方翼30、32は垂直に分離されている。垂直分離は、前方回転翼および後方回転翼によって掃引される直径が垂直方向に重ならないように、回転翼の1つの直径に少なくとも等しく、好ましくはそれより大きい。一実施形態では、後方翼は、接続部材42からの間隔を確保するために、1回転翼半径より大きく分離される。騒音低減が明確な目標である実施形態では、垂直分離は、後方翼30、32に設置された回転翼70が、前方翼20、22に設置された回転翼70の航跡を通らないようなものである。これは、翼の垂直分離が少なくとも1回転翼直径に等しいことを意味する。
【0037】
好ましくは、2つの回転翼70が各翼に存在し、その結果、合計前方翼幅に沿って設置された4つの回転翼、および全後方翼幅に沿って設置された4つの回転翼70が存在する。各回転翼70は、略垂直軸離/着陸構成と略水平軸前方飛行構成との間で回動する。
【0038】
前方翼20、22および後方翼30、32の各々は、固定前縁25、35を有する。前縁25、35は、エアロフォイル部分の形状において、湾曲したプロファイルを有する。前縁25、35は、回転しないか、またはその他の方法で胴体24に対して動かない。
【0039】
後方翼30、32は、胴体の上に連続的に伸びる連続翼幅によって画定される。
【0040】
(VTOL)箱型翼航空機10は、翼端渦の影響を減らすために箱型翼設計を利用する。さらに:
【0041】
それは、翼端(または翼端付近)に取り付けられた回転翼70を使用して、翼端渦の生成を能動的に抑え、箱型翼の自然な空気力学的効果を改善する。
【0042】
それは、箱型翼の後部の垂直空力断面を使用して、方向安定性を高める。
【0043】
各固定前縁25、35の後ろ側に、前方翼20、22および/または後方翼30、32は、回動可能に取り付けられた補助翼または操縦翼面50を有する。各操縦翼面50は、離着陸のための略垂直構成と前方飛行のための略水平構成との間で回動する(
図1および
図2に示されている)。
【0044】
好ましい実施形態では、操縦翼面50は、前方翼20、22の全長(または全長の少なくとも大部分)に沿って連続的に伸びる単一の表面である。あるいは、操縦翼面50が、他の操縦翼面50から独立して前縁25、35の周りで回動することができるように、各翼20、22、30、32は、1つ以上の独立して回動可能な操縦翼面50を有していてもよい。例えば、後方翼幅34は、2つの操縦翼面50を有する。
【0045】
好ましい実施形態では、各後方翼30、32は、単一の操縦翼面50を有し、胴体の上に位置する、2つの翼30、32の間の中央領域は、固定される。
【0046】
垂直離着陸(VTOL)航空機10は、複数の電動モータ60を含む。各モータ60は、プロペラすなわち回転翼70を有する。各モータ60の本体部分62は、一般に固定前縁25、35の前方であって、可動操縦翼面50の上面または下面(図示)に隣接して取り付けられる。操縦翼面50は、水平飛行モードおよび垂直飛行モードの両方のために、約80~100度の範囲、好ましくは約90度で回転することができる。
【0047】
回転翼ブレードが後方に折り畳まれて翼構造から離れたままにすることができるように、モータ60は固定前縁25、35の十分前方に取り付けられてもよい。しかしながら、好ましい実施形態は、可変ピッチ機構を有する非折り畳み式回転翼70を使用する。固定ピッチブレードも使用されてよい。
【0048】
モータ60および操縦翼面50のために2つの可能な取り付け構成が存在し、
a)各モータ60は、固定前縁25、35の1つに回動可能に接続されていてもよく、操縦翼面50は、モータ60の本体部分62に固定されている、または
b)操縦翼面50は、固定前縁25、35の1つに回動可能に接続されていてもよく、操縦翼面は、モータ60の本体部分62に固定されている。
【0049】
電動モータ60は、操縦翼面50とともに、各モータ60の回転翼が略垂直回転軸を有する第1の位置と、各モータ60の各回転翼が略水平回転軸を有する第2の位置との間で、前縁25、35の周りに各々回動する。
【0050】
全ての回転翼70は、可動式であり、固定されておらず、離着陸のための略垂直回転軸と前方飛行のための略水平回転軸との間で動くことができることを意味する。したがって、巡航動作モード中に冗長である固定回転翼は存在しない。
【0051】
したがって、(VTOL)箱型翼航空機10は、冗長回転翼などの、不必要な抗力を作り出す、巡航飛行で使用されない外部特徴を有さない。したがって、(VTOL)箱型翼航空機10は、前方飛行において、その最も空気力学的な構成で動作する。
【0052】
各翼面上の回転翼70は、モータの回転軸が角度的にオフセットされるように、互いに対して非平面である。このように、隣接するモータの回転軸は、翼を傾けて異なる推力を使用することができるように平行ではない。
【0053】
これは、ティルトウィングアクチュエータが必要とする正味トルクを減らす。これはまた、ティルトウィング機構にモーメントを発生させることによって翼が傾くことを支援し、ティルトウィング動作に冗長性のさらなる層を提供する。
【0054】
(VTOL)箱型翼航空機10は、吹出し揚力現象を使用および最大化し、それにより:
回転翼からの推力は、翼からの揚力係数を増加させ、
分裂ティルトウィング構成は、高迎角で翼の揚力係数を最大化する。
【0055】
(VTOL)箱型翼航空機10は、垂直飛行および前方飛行を通してずっと三重冗長で動作する。典型的には、推力および飛行制御のために8つの回転翼を使用するので、前方飛行では、複数の回転翼が破損しても動作することができる。
【0056】
航空機10は、後方翼幅34を取り付けるためにV尾翼構成を有する。具体的には、後方翼幅34の中央固定部材36は、互いに対して角度をなして分離した2つのアーム100、110で胴体24に取り付けられる。V尾翼構成は、剛性を高め、それによりフラッタ点を高めることによって航空機10の空力弾性性能を改善し、航空機10がより高い飛行速度で安全に動作できるようにする。2つのアーム100、110の各々は、胴体24の上の後方翼幅34を垂直に支持することに加えて、ある程度の斜材を提供する。
【0057】
航空機10は、連続全幅後方翼構造に取り付けられたV尾翼部分を利用する。(連続全幅翼構造を有する)V尾翼設計は、空力弾性挙動を改善し、航空機10がより高い巡航速度で動作できるようにする。
【0058】
アーム100、110は、好ましくは、約19度~約26度の角度で互いに対して角度をなして分離している。
【0059】
最適なジオメトリは、アーム100、110と後方翼幅34との間の接合部の剛性の固有の増加を可能とし、最終的には箱型翼航空機におけるフラッタの発生を遅らせる。フラッタの発生をより高い速度へ遅らせるジオメトリの使用は、より軽量の航空機およびより速い巡航速度の両方を可能とする。
【0060】
可能な修正または改善は、そのフラッタ速度に関連して、箱型翼航空機の剛性に影響する可能性のあるさらなる幾何学的感度解析を含み得る。1つのそのような解析は、高さ対翼幅比または翼掃引角度の解析を含み得る。類似の幾何学的解析が、航空機の他の構成に適用され得る。
【0061】
本発明の他の可能な発展は、方法論を含むフロチャートのセットとともに、箱型翼航空機の将来の設計プロセスにおけるこの種の解析を含み得る。
【0062】
図1に示すように、後方翼幅34は、2つの後方翼30、32の間に位置する、中央に配置された固定部材36を含む。固定部材36は、エアロフォイルの断面プロファイルを有するが、エアロフォイルの後端領域は、可動ではない。
【0063】
航空機10の後方翼幅34は、固定部材36の下側でV尾翼アーム100、110の先端に取り付けられている。
【0064】
アーム100、110の各々は、独立して、胴体24の後方隔壁に締結具で固定されるか、接着されるか、もしくは溶接されてもよく、または1つ以上の締結技術の組み合わせで固定されてもよい。あるいは、アーム100、110は、胴体24の別の部分に固定されてもよい。
【0065】
代替の実施形態では、2つのアーム100、110は、一体に形成されるかまたは互いに固定されて単一の後方翼支持体120を画定し、ウィッシュボーンまたはY字型の部品によって画定され、後方翼支持体120を胴体24に固定するための単一の取り付け点(または取り付け点の群)を有する。
【0066】
尾翼コーン140は、アーム100、110が、胴体24の上部から、尾翼コーン140と胴体24との間の界面の間に伸びるように、胴体24の後部に固定される。
【0067】
アーム100、110は、より大きい空力弾性剛性を可能とする可能な翼幅比(後方翼幅34の長さに対するV尾翼の各アーム100、110の遠位端間の距離の比)のセットに基づいて、固定部材36に固定されてもよい。
【0068】
航空機10は、従来の構成および垂直離着陸構成を含む任意の箱型翼航空機で使用され得る。それは、航空機の後方翼幅34が胴体23よりも高くなることを可能とするV尾翼尾部を有する箱型翼構成で構成される。
【0069】
V尾翼構成が後方翼幅34に加える追加の剛性を使用して、感度解析が出願人によって行われ、V尾翼の角度がシステムの剛性、したがってフラッタ速度に及ぼす幾何学的影響を決定した。後方翼幅34とV尾翼アーム100、110との間には、固定された接続が仮定された。様々なV尾翼幅比が解析されて、最高のフラッタ速度を提供する0.088~0.105の最適な範囲が示された。0.105超のV尾翼幅比では、フラッタ速度は大幅に低下する。以下の図は、解析の全結果を示す。
【表1】
【0070】
これらの大きな低下の理由は、支配的なフラッタモードの変化に起因する。これは、構造の基本固有モードの形状、周波数、および減衰をわずかに変化させるジオメトリの変化によるものである。
【0071】
この航空機10は、V尾翼のジオメトリを利用して、航空機の空力弾性性能を改善する。
【0072】
図4の実施形態では、V尾翼アーム100、110は、近位下端で接合されてもよい。あるいは、アーム100、110は、別々に形成されるが、近位端で当接またはほぼ当接して設置されてもよい。
【0073】
図5~7に示す代替の実施形態では、アーム100、110はともに、Y字型尾翼支持体を提供し、アーム100、110は、近位取り付け部115および遠位露出部125によって各々画定される。取り付け部115は、胴体24の後方隔壁に取り付けられるように構成される。2つの取り付け部115は、互いに略平行に伸び、互いに当接して配置される。このように、2つの取り付け部115は、さらなる剛性のために、後方隔壁に固定されることに加えて互いに固定され得る。
【0074】
各アーム100、110の遠位露出部125は、尾翼コーン140の上に伸び、飛行中、空気流に曝される。遠位露出部125は、
図3に示すように、前縁に空気力学的フェアリング150を有する。遠位露出部125の最上部は、後方翼幅34に取り付けられる。
【0075】
再び
図3を参照すると、空気力学的シールド160が、各アーム100、110の遠位露出部125が胴体24を越えて伸びる交差部に設置される。シールド160は、締結、接着、または締結と接着との組み合わせ、またはその他の方法で胴体24に固定されてよい。
【0076】
各アーム100、110の遠位露出部125は、
図3に示すように、(前方飛行の方向で測定される)厚さが後方翼幅34との界面付近で最も狭くなるテーパー状であってもよい。あるいは、各アーム100、110の遠位露出部125は、非テーパー状であってもよく、略均一な厚さを有してもよい。
【0077】
右側アーム100の断面は、先端から胴体24に向かって移動するにつれて、上から見てわずかに時計回りに回転する。言い換えれば、プロファイルは、翼への接合部で流れと整列し、後縁は、胴体24に向かって内側に回転する。同様に、左側アーム110の断面は、先端から胴体24に向かって移動するにつれて、上から見てわずかに反時計回りに回転する。
【0078】
有利には、航空機10のアーム100、110は、V尾翼の角度が、フラッタ不安定性に対して有効量の剛性を提供することを確実にする。
【0079】
具体例を参照しながら本発明について説明してきたが、本発明は多くの他の形態で具体化できることを当業者なら理解するであろう。
【国際調査報告】