IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インモーティブ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-伝動装置 図1
  • 特表-伝動装置 図2
  • 特表-伝動装置 図3
  • 特表-伝動装置 図4
  • 特表-伝動装置 図5
  • 特表-伝動装置 図6
  • 特表-伝動装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20231005BHJP
   F16H 9/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16H7/12 A
F16H9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518511
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 CA2021051322
(87)【国際公開番号】W WO2022061457
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/081,379
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520355323
【氏名又は名称】インモーティブ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスワフ・ルトスワフスキ
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ジーン・フォンディガ
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ・モルド
【テーマコード(参考)】
3J049
3J050
【Fターム(参考)】
3J049AA03
3J049AB05
3J049BA05
3J049BA07
3J049BB05
3J049BB14
3J049BB22
3J049BC03
3J049CA04
3J049CA10
3J050AA04
3J050BA11
3J050CC02
3J050DA02
(57)【要約】
第1の軸を中心に回転可能な第1のプーリ組立体と、第2の軸を中心に回転可能な第2のプーリ組立体と、第1のプーリ組立体と第2のプーリ組立体を結合するエンドレス部材と、エンドレス部材に係合し、アイドラー軸を中心に回転可能なアイドラープーリであって、第1の位置と第2の位置との間で可動であるアイドラープーリと、アイドラープーリに結合され、エンドレス部材内の張力を制御するように構成されたテンショナー組立体であって、ばね軸を有しアイドラープーリを第2の位置に向けて付勢するテンショナーばねと、テンショナー軸を中心に回転可能であり、テンショナーばねをアイドラープーリに結合するテンショナーアームであって、テンショナー軸と、ばね結合地点との間に延在するばねリンク機構を画定するテンショナーアームとを備え、ばね軸とばねリンク機構との間にばね角が画定される、テンショナー組立体とを備える伝動装置が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸を中心に回転可能な第1のプーリ組立体と、
前記第1のプーリ組立体から離間されており、第2の軸を中心に回転可能な第2のプーリ組立体と、
前記第1のプーリ組立体と前記第2のプーリ組立体との間に延在し、それらの間を回転式に結合するエンドレス部材と、
前記エンドレス部材に係合し、アイドラー軸を中心に回転可能なアイドラープーリであって、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で可動であるアイドラープーリと、
前記アイドラープーリに結合され、前記エンドレス部材内の張力を制御するように構成されたテンショナー組立体であって、
ばね軸を有し前記アイドラープーリを前記第2の位置に向けて付勢するテンショナーばねと、
テンショナー軸を中心に回転可能であり、前記テンショナーばねを前記アイドラープーリに結合するテンショナーアームであって、前記テンショナー軸と、前記テンショナーばねが前記テンショナーアームに結合されるばね結合地点との間に延在するばねリンク機構を画定し、前記テンショナー軸と、前記アイドラープーリが前記テンショナーアームに結合されるアイドラー結合地点との間に延在するアイドラーリンク機構をさらに画定するテンショナーアームとを備え、
前記ばね軸と前記ばねリンク機構との間にばね角が画定される、テンショナー組立体とを備える、伝動装置。
【請求項2】
前記テンショナー組立体は、前記アイドラープーリが前記第2の位置と前記第1の位置との間を移動するとき、前記エンドレス部材内に概ね一定の張力を提供するように構成される、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項3】
前記テンショナー組立体は、前記アイドラープーリが前記第2の位置から前記第1の位置に移動するとき、前記エンドレス部材内に減少した張力を提供するように構成される、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項4】
前記テンショナーばねによって前記テンショナーアームに加えられるばね力は、前記アイドラープーリが前記第2の位置から前記第1の位置に移動するときに変化し、前記ばね角が、前記アイドラープーリが前記第2の位置から前記第1の位置に移動するときに、変化することで、前記ばね力の変化を少なくとも部分的に打ち消す、請求項1から3のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項5】
前記テンショナーばねによって前記テンショナーアームに加えられるばね力は、前記アイドラープーリが前記第2の位置から前記第1の位置に移動するときに増大し、前記ばね角が、前記アイドラープーリが前記第2の位置から前記第1の位置に移動するときに、平行に近づくことで、前記ばね力の増大を少なくとも部分的に打ち消す、請求項1から3のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項6】
前記ばね角は、前記アイドラープーリが前記第2の位置から前記第1の位置に移動するとき増大することによって平行に近づく、請求項5に記載の伝動装置。
【請求項7】
前記テンショナーばねは、前記アイドラープーリが前記第2の位置から前記第1の位置に移動するときに前記ばね力を増大させるために圧縮されるコイルばねである、請求項4から6のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項8】
前記ばね角は、前記アイドラープーリが前記第1の位置にあるとき約150度から約185度の範囲内であり、前記アイドラープーリが前記第2の位置にあるとき、約110度から約140度の範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項9】
前記ばね角は、前記アイドラープーリが前記第1の位置にあるとき、約160度から約170度の範囲内であり、前記アイドラープーリが前記第2の位置にあるとき、約120度から約130度の範囲内である、請求項1から7のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項10】
前記ばね角は、前記アイドラープーリが前記第1の位置にあるとき、約165度であり、前記アイドラープーリが前記第2の位置にあるとき、約125度である、請求項1から7のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項11】
前記テンショナーアームは、剛性であり、前記ばねリンク機構と前記アイドラーリンク機構との間に画定されるアーム角は固定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項12】
前記テンショナーアームは、概ねL字型であり、前記アイドラー結合地点は、前記L字型の一端に位置しており、前記ばね結合地点は、前記L字型の他端に位置しており、前記テンショナー軸は、前記L字型の肘の部分に位置している、請求項1から11のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項13】
前記アイドラーリンク機構は、前記ばねリンク機構より長い、請求項1から12のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項14】
アンロック位置とロック位置との間で可動であるアイドラーロックをさらに備え、前記アイドラーロックは、前記アイドラーロックが前記ロック位置にあるとき、前記アイドラープーリを前記第2の位置に固定し、前記アイドラーロックは、前記アイドラーロックが前記アンロック位置にあるとき、前記アイドラープーリを前記第2の位置に固定しない、請求項1から13のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項15】
前記アイドラーロックは、前記エンドレス部材内の張力が閾値を超えたとき、前記アイドラープーリを自動的に解放するように構成される、請求項14に記載の伝動装置。
【請求項16】
前記アイドラーロックは、前記アイドラープーリが前記第2の位置にあるとき前記アイドラープーリに係合するためのロック面を備え、前記アイドラーロックを前記ロック位置に向けて付勢するアイドラーロックばねをさらに備える、請求項14または15に記載の伝動装置。
【請求項17】
前記ロック面は、前記アイドラーリンク機構に対して角度Ωを形成する平面によって画定され、前記角度Ωおよび前記アイドラーロックばねは、前記エンドレス部材内の張力が閾値を超えたとき、前記アイドラープーリを自動的に解放するように構成される、請求項16に記載の伝動装置。
【請求項18】
前記アイドラーロックは、前記アイドラープーリが前記第1の位置から前記第2の位置に移動するとき前記アイドラープーリに係合し、前記アイドラーロックを前記ロック位置から出るように偏向させるカム面を備える、請求項14から17のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項19】
前記ロック位置と前記アンロック位置との間で前記アイドラーロックを選択的に移動させるためにアイドラーロックアクチュエータをさらに備える、請求項14から18のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項20】
第1の軸を中心に回転可能な第1のプーリ組立体と、
前記第1のプーリ組立体から離間されており、第2の軸を中心に回転可能な第2のプーリ組立体と、
前記第1のプーリ組立体と前記第2のプーリ組立体との間に延在し、それらの間を回転式に結合するエンドレス部材と、
前記エンドレス部材に係合し、アイドラー軸を中心に回転可能なアイドラープーリであって、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で可動であるアイドラープーリと、
アンロック位置とロック位置との間で可動であるアイドラーロックであって、前記アイドラーロックが前記ロック位置にあるとき前記アイドラープーリを前記第2の位置に固定し、前記アイドラーロックが前記アンロック位置にあるとき前記アイドラープーリを前記第2の位置に固定しないアイドラーロックとを備える、伝動装置。
【請求項21】
前記アイドラーロックは、前記アイドラープーリが前記第2の位置にあるとき前記アイドラープーリに係合するためのロック面を備え、前記アイドラーロックを前記ロック位置に向けて付勢するアイドラーロックばねをさらに備える、請求項20に記載の伝動装置。
【請求項22】
前記アイドラーロックは、前記エンドレス部材内の張力が閾値を超えたとき、前記アイドラープーリを自動的に解放するように構成される、請求項21に記載の伝動装置。
【請求項23】
前記ロック面は、角度Ωのところで平面によって画定され、前記角度Ωおよび前記アイドラーロックばねは、前記エンドレス部材内の張力が前記閾値を超えたとき、前記アイドラープーリを自動的に解放するように構成される、請求項22に記載の伝動装置。
【請求項24】
前記アイドラープーリに結合され、前記エンドレス部材内の張力を制御するように構成されたテンショナー組立体であって、
前記アイドラープーリを前記第2の位置に向けて付勢するテンショナーばねと、
テンショナー軸を中心に回転可能であり、前記テンショナーばねを前記アイドラープーリに結合するテンショナーアームであって、前記テンショナー軸と、前記テンショナーばねが前記テンショナーアームに結合されるばね結合地点との間に延在するばねリンク機構を画定し、前記テンショナー軸と、前記アイドラープーリが前記テンショナーアームに結合されるアイドラー結合地点との間に延在するアイドラーリンク機構をさらに画定するテンショナーアームとを備えるテンショナー組立体をさらに備える、請求項23に記載の伝動装置。
【請求項25】
前記ロック面の前記平面と前記アイドラーリンク機構との間に前記角度Ωが画定される、請求項24に記載の伝動装置。
【請求項26】
前記アイドラープーリに結合され、前記アイドラープーリを前記第2の位置に向けて付勢するように構成されたテンショナー組立体をさらに備える、請求項20から23のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項27】
前記アイドラーロックは、前記アイドラープーリが前記第1の位置から前記第2の位置に移動するとき、前記アイドラープーリに係合し、前記アイドラーロックを前記ロック位置から出るように偏向させるカム面を備える、請求項20から26のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項28】
前記アイドラーロックを前記ロック位置と前記アンロック位置との間で選択的に移動させるためにアイドラーロックアクチュエータをさらに備える、請求項20から27のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項29】
前記アイドラープーリが前記第1の位置に達したとき、前記アイドラープーリの移動を阻むためのアイドラー停止具をさらに備える、請求項1から28のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項30】
前記アイドラー停止具は、前記アイドラープーリが前記第1の位置に達したときに前記アイドラープーリに当接する係合面を備え、前記係合面は、前記アイドラープーリが前記第1の位置にあるとき、テンショナー軸から離れるように前記アイドラープーリを付勢する、請求項29に記載の伝動装置。
【請求項31】
前記第2のプーリ組立体は、内側プーリと、前記内側プーリを同心円状に取り囲む少なくとも1つのセグメント化されたプーリとを備える、請求項1から30のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項32】
前記第1のプーリ組立体は、単一の固定プーリである、請求項1から31のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項33】
前記第1のプーリ組立体、前記第2のプーリ組立体、前記エンドレス部材、前記アイドラープーリ、テンショナー組立体およびアイドラーロックのうちの1つまたは複数を少なくとも部分的に支持する筐体をさらに備える、請求項1から32のいずれか一項に記載の伝動装置。
【請求項34】
前記筐体は、ケーシングおよび支持構造のうちの1つである、請求項33に記載の伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月22日に出願された「TRANSMISSION」と題する米国仮特許出願第63/081,379号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は一般に、伝動装置に関し、より詳細には、テンショナー組立体および/またはアイドラーロックを備えた伝動装置に関する。
【背景技術】
【0003】
伝動装置は、よく知られており、回転要素間の比率を変更するのに使用することができる。伝動装置のための潜在的な用途は数多くあり、自動車、人力車両、船舶および重機、例えばポンプ、タービン、ミキサー、ウインチ、遠心分離機およびシュレッダーなどを含む。
【0004】
クラッチレス多重比率伝動装置は、伝動装置が負荷を受けている間に、回転要素間の比率を変更することを可能にする。その広範な利用を制限する特定の機械的問題がクラッチレス多重比率伝動装置に影響を及ぼす場合があり、具体的には、そのような伝動装置システムの、高速での、またはかなりの負荷を受けた状態での実際の利用において効果的かつ効率的に機能する能力に影響を及ぼす可能性がある。加えて、歯止め、滑り量および緊張力問題が、その信頼性を低下させ、その効率を低下させ、摩耗を増大させることによってそのような伝動装置の商業的な実行可能性を制限する場合がある。したがって、このような機械的問題の少なくとも一部を低減させる、または緩和させるために、同期されたセグメント状に交互になるプーリ伝動装置システム(SSIPTS)が開発されてきた。
【0005】
例えば、Wong等に対する特許文献1は、SSIPTSを開示しており、そこではプーリ組立体が車軸上に設置されている。プーリ組立体は、その周辺面上に第1のセットの合致機構を有するコアプーリと、プーリ組立体内に摺動可能に設置され、コアプーリと同心のリング内に配置されたいくつかのプーリセグメントを備えるプーリセグメントセットとを含む。プーリセグメントは、プーリ組立体の内外で個別に作動可能である。プーリセグメントは、第1のセットの合致機構に合致する周辺面上の第2のセットの合致機構を有する。エンドレス駆動部材は、係合位置においてコアプーリの第1のセットの合致機構および第2のセットの合致機構とプーリセグメントに係合するために、内面上に対応する合致機構を有する。エンドレス駆動部材とコアプーリとの接触は、接触ゾーンを画定する。アクチュエータは、プーリセグメントが接触ゾーンの外にあるとき、係合位置と非係合位置との間でプーリセグメントを作動させる。
【0006】
Wongに対する特許文献2は、エンドレス部材に係合するために、プーリセグメントセット内の最初または最後のいずれかであるSSIPTSのためのキープーリセグメントを開示する。エンドレス部材に係合する、または係合から外れるための最初のまたは最後のキーセグメント歯はそれぞれ短くされる、または完全に取り除かれ、キーセグメントに隣接するプーリセグメントは、歯の輪郭の一部がキーセグメントに向かって延びるように細長くなっている。短くなった1つの歯または複数の歯、および細長くなった隣接するセグメントが一緒になって、多くのプーリセグメントがキーセグメントとして設計されることを可能にする。完全に取り除かれた歯は、キーセグメント上にエンドレス部材のための支持面を形成するように工学設計されてよい。細長くなった隣接するセグメントは、キーセグメントの支持面と摺動可能に合致する伸張部分を有してよく、これにより、そこから半径方向の支持を受け取ってよい。異なるプーリセグメントセットからの多数のプーリセグメントは、一体化したスタックで一緒に移動するように接続または構築されてよい。一体化したスタックは、カムまたはローラカムシステムを介して移動されてよい。シャシ搭載カムは、接触ゾーンの外側でローラに係合し、ローラアームを介して、一体化したスタックの個々のセグメントが、係合するように、または係合から外れるように移動される。ローラは、一列に固定式に設置された電磁石によってカムと係合するように、または係合から外れるように作動されてよい。
【0007】
Wongに対する特許文献3は、エンドレス部材に係合するためのプーリ組立体を開示する。プーリ組立体は、第1のプーリと、第2のプーリと、係合領域と非係合領域との間で独立して移動可能であることで、第1のプーリと第2のプーリとの間でエンドレス部材を移行させる、1つまたは複数の移行セグメントを備える少なくとも1つの移行セグメントセットとを含む。アクチュエータシステムも開示される。アクチュエータシステムは、支持構造と、支持構造に固定されたアクチュエータサブ組立体と、ステータとを含む。アクチュエータサブ組立体は、従動子とスレッドとを含み、これは、ステータによってスレッド上に生成された電動力に応答して、進行した位置と後退した位置との間で円周方向に可動である。従動子は、スレッドのカム面に係合することで、スレッドが進行位置と後退位置との間を移動するとき、伸張位置と収縮位置との間で軸方向に移動する。
【0008】
既知のセグメント化されたプーリ伝動装置の貢献は賞賛に値するが、改良および代替物が一般に望まれている。したがって新規のプーリ伝動装置を提供することが目的である。
【0009】
この背景技術は、当業者が、以下の詳細な記載をよりよく理解することを可能にするための背景を単に設定するような役割をする。上記の考察のいずれも、この考察が現況技術の一部である、または共通の一般的な知識であるという認識として必ずしもみなされるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第8,753,236号
【特許文献2】米国特許第9,816,598号
【特許文献3】PCT国際出願公開第2019/173896号
【特許文献4】PCT国際出願第PCT/CA2018/051475号
【特許文献5】PCT国際出願第PCT/CA2019/051712号
【特許文献6】PCT国際出願第PCT/CA2019/051713号
【特許文献7】PCT国際出願第PCT/CA2019/051714号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この概要は、実施形態の詳細な記載において以下でさらに説明される概念の選択を取り入れるために提供されていることを理解すべきである。この概要は、特許請求の範囲に記載される主題の範囲を限定するために使用されることは意図されていない。
【0012】
したがって、一態様において、第1の軸を中心に回転可能な第1のプーリ組立体と、第1のプーリ組立体から離間されており、第2の軸を中心に回転可能な第2のプーリ組立体と、第1のプーリ組立体と第2のプーリ組立体との間に延在し、それらの間を回転式に結合するエンドレス部材と、エンドレス部材に係合し、アイドラー軸を中心に回転可能なアイドラープーリであって、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で可動であるアイドラープーリと、アイドラープーリに結合され、エンドレス部材内の張力を制御するように構成されたテンショナー組立体であって、ばね軸を有しアイドラープーリを第2の位置に向けて付勢するテンショナーばねと、テンショナー軸を中心に回転可能であり、テンショナーばねをアイドラープーリに結合するテンショナーアームであって、テンショナー軸と、テンショナーばねがテンショナーアームに結合されるばね結合地点との間に延在するばねリンク機構を画定し、テンショナー軸と、アイドラープーリがテンショナーアームに結合されるアイドラー結合地点との間に延在するアイドラーリンク機構をさらに画定するテンショナーアームとを備え、ばね軸とばねリンク機構との間にばね角が画定される、テンショナー組立体とを備える、伝動装置が提供される。
【0013】
1つまたは複数の実施形態において、テンショナー組立体は、アイドラープーリが第2の位置と第1の位置との間を移動するとき、エンドレス部材内に概ね一定の張力を提供するように構成することができる。あるいは、テンショナー組立体は、アイドラープーリが第2の位置から第1の位置に移動するとき、エンドレス部材内に減少した張力を提供するように構成することもできる。
【0014】
1つまたは複数の実施形態において、テンショナーばねによってテンショナーアームに加えられるばね力は、アイドラープーリが第2の位置から第1の位置に移動するときに変化することができ、ばね角が、アイドラープーリが第2の位置から第1の位置に移動するときに、変化することで、ばね力の変化を少なくとも部分的に打ち消すことができる。
【0015】
1つまたは複数の実施形態において、テンショナーばねによってテンショナーアームに加えられるばね力は、アイドラープーリが第2の位置から第1の位置に移動するときに増大することができ、ばね角が、アイドラープーリが第2の位置から第1の位置に移動するときに、平行に近づくことで、ばね力の増大を少なくとも部分的に打ち消すことができる。ばね角は、アイドラープーリが第2の位置から第1の位置に移動するときに拡大することによって平行に近づくことができる。テンショナーばねは、アイドラープーリが第2の位置から第1の位置に移動するときにばね力を増大させるために圧縮されるコイルばねであり得る。
【0016】
1つまたは複数の実施形態において、ばね角は、アイドラープーリが第1の位置にあるとき約150度から約185度の範囲内であってよく、アイドラープーリが第2の位置にあるとき、約110度から約140度の範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、ばね角は、アイドラープーリが第1の位置にあるとき、約160度から約170度の範囲内であってよく、アイドラープーリが第2の位置にあるとき、約120度から約130度の範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、ばね角は、アイドラープーリが第1の位置にあるとき、約165度であってよく、アイドラープーリが第2の位置にあるとき、約125度であり得る。
【0017】
1つまたは複数の実施形態において、テンショナーアームは、剛性であってよく、ばねリンク機構とアイドラーリンク機構との間に画定されるアーム角は固定することができる。テンショナーアームは、概ねL字型であってよく、アイドラー結合地点は、L字型の一端に位置しており、ばね結合地点は、L字型の他端に位置しており、テンショナー軸は、L字型の肘の部分に位置している。アイドラーリンク機構は、ばねリンク機構より長くすることができる。
【0018】
1つまたは複数の実施形態において、伝動装置は、アンロック位置とロック位置との間で可動であるアイドラーロックをさらに備えることができ、アイドラーロックは、アイドラーロックがロック位置にあるとき、アイドラープーリを第2の位置に固定し、アイドラーロックは、アイドラーロックがアンロック位置にあるとき、アイドラープーリを第2の位置に固定しない。アイドラーロックは、エンドレス部材内の張力が閾値を超えたとき、アイドラープーリを自動的に解放するように構成することができる。アイドラーロックは、アイドラープーリが第2の位置にあるときアイドラープーリに係合するためのロック面を備えることができ、アイドラーロックをロック位置に向けて付勢するアイドラーロックばねをさらに備えることができる。ロック面は、アイドラーリンク機構に対して角度Ωを形成する平面によって画定することができ、角度Ωおよびアイドラーロックばねは、エンドレス部材内の張力が閾値を超えたとき、アイドラープーリを自動的に解放するように構成することができる。アイドラーロックは、アイドラープーリが第1の位置から第2の位置に移動するときアイドラープーリに係合し、アイドラーロックをロック位置から出るように偏向させるカム面を備えることができる。伝動装置は、ロック位置とアンロック位置との間でアイドラーロックを選択的に移動させるためにアイドラーロックアクチュエータをさらに備えることができる。
【0019】
別の態様において、第1の軸を中心に回転可能な第1のプーリ組立体と、第1のプーリ組立体から離間されており、第2の軸を中心に回転可能な第2のプーリ組立体と、第1のプーリ組立体と第2のプーリ組立体との間に延在し、それらの間を回転式に結合するエンドレス部材と、エンドレス部材に係合し、アイドラー軸を中心に回転可能なアイドラープーリであって、少なくとも第1の位置と第2の位置との間で可動であるアイドラープーリと、アンロック位置とロック位置との間で可動であるアイドラーロックであって、アイドラーロックがロック位置にあるときアイドラープーリを第2の位置に固定し、アイドラーロックがアンロック位置にあるときアイドラープーリを第2の位置に固定しないアイドラーロックとを備える、伝動装置が提供される。
【0020】
1つまたは複数の実施形態において、アイドラーロックは、アイドラープーリが第2の位置にあるときアイドラープーリに係合するためのロック面を備えることができ、アイドラーロックをロック位置に向けて付勢するアイドラーロックばねをさらに備えることができる。アイドラーロックは、エンドレス部材内の張力が閾値を超えたとき、アイドラープーリを自動的に解放するように構成することができる。ロック面は、角度Ωのところで平面によって画定することができ、角度Ωおよびアイドラーロックばねは、エンドレス部材内の張力が閾値を超えたとき、アイドラープーリを自動的に解放するように構成することができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、伝動装置は、アイドラープーリに結合され、エンドレス部材内の張力を制御するように構成されたテンショナー組立体であって、アイドラープーリを第2の位置に向けて付勢するテンショナーばねと、テンショナー軸を中心に回転可能であり、テンショナーばねをアイドラープーリに結合するテンショナーアームであって、テンショナー軸と、テンショナーばねがテンショナーアームに結合されるばね結合地点との間に延在するばねリンク機構を画定し、テンショナー軸と、アイドラープーリがテンショナーアームに結合されるアイドラー結合地点との間に延在するアイドラーリンク機構をさらに画定するテンショナーアームとを備えるテンショナー組立体をさらに備えることができる。ロック面の平面とアイドラーリンク機構との間に角度Ωが画定され得る。他の実施形態では、伝動装置は、アイドラープーリに結合され、アイドラープーリを第2の位置に向けて付勢するように構成されたテンショナー組立体を備えることができる。
【0022】
1つまたは複数の実施形態において、アイドラーロックは、アイドラープーリが第1の位置から第2の位置に移動するとき、アイドラープーリに係合し、アイドラーロックをロック位置から出るように偏向させるカム面を備えることができる。
【0023】
1つまたは複数の実施形態において、伝動装置は、アイドラーロックをロック位置とアンロック位置との間で選択的に移動させるためにアイドラーロックアクチュエータをさらに備えることができる。
【0024】
1つまたは複数の実施形態において、伝動装置は、アイドラープーリが第1の位置に達したとき、アイドラープーリの移動を阻むためのアイドラー停止具をさらに備えることができる。アイドラー停止具は、アイドラープーリが第1の位置に達したときにアイドラープーリに当接する係合面を備えることができ、係合面は、アイドラープーリが第1の位置にあるとき、テンショナー軸から離れるようにアイドラープーリを付勢することができる。
【0025】
1つまたは複数の実施形態において、第2のプーリ組立体は、内側プーリと、内側プーリを同心円状に取り囲む少なくとも1つのセグメント化されたプーリとを備えることができる。第1のプーリ組立体は、単一の固定プーリであり得る。
【0026】
1つまたは複数の実施形態において、伝動装置は、第1のプーリ組立体、第2のプーリ組立体、エンドレス部材、アイドラープーリ、テンショナー組立体およびアイドラーロックのうちの1つまたは複数を少なくとも部分的に支持する筐体をさらに備えることができ、筐体は、ケーシングおよび支持構造のうちの1つであり得る。
【0027】
実施形態を次に、添付の図面を参照してより十分に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の歯車における伝動装置の断面不等角投影図である。
図2】第2の歯車における、図1の伝動装置の断面不等角投影図である。
図3】第1の歯車における、図1の伝動装置の簡素化された前方図である。
図4】第1の歯車から第2の歯車への移行における、図1の伝動装置の簡素化された前方図である。
図5】第2の歯車における、図1の伝動装置の簡素化された前方図である。
図6】第2の歯車から第1の歯車への移行における、図1の伝動装置の簡素化された前方図である。
図7図1の伝動装置のテンショナー組立体、アイドラープーリおよびアイドラーロックの簡素化された詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上述の概要ならびに特定の実施形態の以下の詳細な記載は、添付の図面と併せて読んだときよりよく理解されるであろう。本明細書で使用される際、単数で記載され、単語「1つの(a)」または「1つの(an)」が前に付く要素または機構は、複数の要素または機構を必ずしも除外しないものと理解すべきである。さらに、「一実施例」または「一実施形態」への言及は、その一実施例または一実施形態の記載される要素または機構を同様に組み込む追加の実施例または実施形態の存在を除外するように解釈されることは意図されていない。さらに、反対のことが明白に提示されていなければ、特定の特性を有する要素または機構あるいは複数の要素または機構を「備える(comprising)」、「有する(having)」または「含む(including)」実施例または実施形態は、その特定の特性を持たない追加の要素または機構をさらに含む場合がある。また、用語「備える(comprises)」、「有する(has)」および「含む(includes)」は、「これに限定するものではないが含む」を意味しており、用語「備える(comprising)」、「有する(having)」および「含む(including)」は等価な意味を有することを理解されたい。
【0030】
本明細書で使用される際、用語「および/または」は、関連付けられリストアップされた要素または機構のうちの1つまたは複数のいずれかまたは全ての組合せを含むことができる。
【0031】
要素または機構が、別の要素または機構の「上にある」、「装着された」、「接続された」、「結合された」、「接触している」などとして言及される場合、その要素または機構は、他の要素または機構の上に直接ある、直接装着された、直接接続された、直接結合された、または直接接触している場合がある、あるいは介在する要素が存在する場合もあることを理解されたい。反対に、要素または機構が、例えば別の要素または機構の「上に直接ある」、「直接装着された」、「直接接続された」、「直接結合された」、または「直接接触している」として言及される場合、介在する要素は存在しない。
【0032】
空間的な相対語「下」、「真下」、「下方」、「覆って」、「より上」、「上方」、「前方」、「後方」などは、図面に描かれるような、要素または機構の別の要素または機構に対する関係性を容易に記載するために本明細書では使用されてよい。しかしながら、空間的な相対語は、図面に描かれる配向に加えて、使用中または動作中の異なる配向も包含することができる。
【0033】
「実施例」に対するここでの参照は、この実施例に関連して記載される1つまたは複数の機構、構造、要素、構成要素、特徴および/または動作ステップが、本開示による主題の少なくとも1つの実施形態および/または実装形態に含まれることを意味する。よって、本開示を通しての語句「一実施例」、「別の実施例」および同様の言葉は、必須ではないが、同じ実施例を参照する。さらに、任意の1つの実施例を特徴付けている主題は、必須ではないが、任意の他の実施例を特徴付けている主題を含んでよい。
【0034】
ここでの「構成される」という言及は、要素または機構に基本的に結び付く構成の実際の状態あるいは「~するように構成される」という語句の前にある要素または機構の物理的特徴を示す。よって「構成される」とは、要素または機構が、所与の機能を実行するように設計および/または意図されており、所与の要素または機構が所与の機能を実行することが単に可能であることを意味するように解釈するべきではない。
【0035】
そうでないことが指摘されなければ、用語「第1の」、「第2の」などは、標識として単に本明細書では使用されており、これらの用語が言及する製品に対する順序、位置または履歴要件を課すことは意図されていない。さらに、「第2の」に対する言及は、より下位に番号付けされた製品(例えば「第1の」製品)および/またはより上位に番号付けされた製品(例えば「第3の」製品)の存在を必要としない、または排除しない。
【0036】
本明細書で使用される際、「おおよそ」、「実質的に」、「概ね」および「約」は、所望の機能が果たされる、または所望の結果が達成されることになる一定の量または条件に近い量または条件を表す。例えば用語「おおよそ」、「実質的に」、「概ね」および「約」は、当業者によって容易に理解される正確な値または指定された条件に対する工学技術的な公差の範囲内である量を指す場合もある。
【0037】
図1から図6は、参照符号120によって全体的に識別される伝動装置を示す。本実施形態では、伝動装置120は、セグメント化されたプーリ伝動装置であり、より詳細には、同期されたセグメント状に交互になるプーリ伝動装置システム(SSIPTS)である。理解されるように、伝動装置120の筐体の一部は、伝動装置120の内部が見えるように図1および図2では省略されており、伝動装置120の簡素化された図を提供するために別の要素が図3から図6では省略されている。いくつかの実施形態において、伝動装置120は、特許文献4、特許文献5、特許文献6および/または特許文献7に示され記載される要素を含んでよく、これらの全ての関連する部分は参照により本明細書に組み込まれている。
【0038】
伝動装置120は、第1の回転要素および第2の回転要素(いずれも示されていない)を回転式に結合するように構成され、第1の回転要素と第2の回転要素との間の回転比率を変更するように構成される。いくつかの実施形態において、第1の回転要素は、パワートレインの駆動車軸であってよく、第2の回転要素は、従動車軸であってよい、またはその逆も同様である。伝動装置120は、第1のプーリ組立体122と、第2のプーリ組立体124と、エンドレス部材126と、アイドラープーリ128と、テンショナー組立体130と、筐体132とを備える。伝動装置120は、アイドラーロック134とアイドラー停止具136とをさらに備える。いくつかの実施形態において、伝動装置120は、本明細書に記載されるように、係合領域と非係合領域との間でセグメント化されたプーリのセグメントを移動させるために、特許文献4および/または特許文献6に記載されるアクチュエータなどのアクチュエータ(図示せず)をさらに備えてよく、これらは共に関連する部分が参照により本明細書に組み込まれている。
【0039】
簡単に言えば、第1のプーリ組立体122は、第2のプーリ組立体124から離間されている。エンドレス部材126は、第1のプーリ組立体122および第2のプーリ組立体124に回転式に結合する。アイドラープーリ128は、エンドレス部材126に係合し、テンショナー組立体130は、アイドラープーリ128に結合し、これを移動させてエンドレス部材126内の張力を制御する。筐体132は、第1のプーリ組立体122、第2のプーリ組立体124、エンドレス部材126、アイドラープーリ128およびテンショナー組立体130のうちの1つまたは複数を少なくとも部分的に取り囲み、これを支持する。伝動装置120の動作中、第1のプーリ組立体122は、第1の回転要素に結合され、第2のプーリ組立体124は、第2の回転要素に結合されることで、第1の回転要素の回転は、伝動装置の回転比率で第2の回転要素の回転を引き起こす、または逆もまた同様であり、この回転比率は本明細書に記載されるように調節することができる。第1の回転要素が駆動車軸であり、第2の回転要素が従動車軸である実施形態では、第1のプーリ組立体122は、駆動プーリ組立体として記載することができ、第2のプーリ組立体124は従動プーリ組立体として記載することができる。本実施形態では、第1のプーリ組立体122、第2のプーリ組立体124およびアイドラープーリ128は全て、伝動装置120の順方向の動作中、図1から図6で見たとき反時計周りの方向に回転する。本実施形態での伝動装置120の逆の動作中、第1のプーリ組立体122、第2のプーリ組立体124およびアイドラープーリ128は全て図1から図6で見たとき時計周りの方向に回転する。
【0040】
第1のプーリ組立体122は、ねじ、ボルト、スロット付きシャフト、キーとキー溝または他の好適な結合機構などによって、第1の回転要素(図示せず)に結合されるように構成される。第1のプーリ組立体122は、伝動装置120の動作中回転するように構成される。第1のプーリ組立体122は、第1の軸140(図3に示される)と同心であり、この軸を中心に回転可能である。第1のプーリ組立体122は、単一の固定プーリ142を備える。固定プーリ142は、エンドレス部材126に係合するために外側周辺面144を含む。外側周辺面144は、概ね円形であり、エンドレス部材126上の対応する合致機構に係合するために歯などの複数の合致機構146を含んでよい。
【0041】
第2のプーリ組立体124は、第2の回転要素(図示せず)に結合されるように構成される。第2のプーリ組立体124は、伝動装置120の動作中回転するように構成される。第2のプーリ組立体124は、第1のプーリ組立体122から離間されており、第2の軸150(図3に示される)を中心に回転可能である。第2のプーリ組立体124は、内側プーリ152と、外側のセグメント化されたプーリ154とを備える。セグメント化されたプーリ154は、内側プーリ152と同心である。セグメント化されたプーリ154は、伝動装置120の動作中内側プーリ152を選択的に取り囲むことで、エンドレス部材126に係合し、伝動装置120の回転比率を変更することができる。
【0042】
内側プーリ152は、ねじ、ボルト、スロット付きシャフト、キーとキー溝または他の好適な結合機構などによって、第2の回転要素に結合されるように構成される。内側プーリ152は、第2の軸150を中心に回転可能であり、これと同心である。内側プーリ152は、エンドレス部材126に係合するように構成される。内側プーリ152は、エンドレス部材126に係合するために外側周辺面156を含む。外側周辺面156は、概ね円形であり、エンドレス部材126上の対応する合致機構に係合するために歯などの複数の合致機構158を含んでよい。内側プーリ152は、第2のプーリ組立体124のコアプーリである。すなわち内側プーリ152は、第2のプーリ組立体124において最も中心または最も小さい直径のプーリである。
【0043】
セグメント化されたプーリ154は、特許文献4、特許文献5、特許文献6および/または特許文献7に記載されるものなど、接続ロッド、支持板、ハブ、アクチュエータおよび他の好適な結合機構のうちの少なくとも1つを介して第2の回転要素に結合されるように構成され、これらの全ての関連する部分は、参照により本明細書に組み込まれている。セグメント化されたプーリ154は、第2の軸150を中心に回転可能であり、これと同心である。セグメント化されたプーリ154は、エンドレス部材126に係合するように構成される。セグメント化されたプーリ154は、エンドレス部材126に係合するために外側周辺面160を含む。外側周辺面160は、概ね円形であり、エンドレス部材126上の対応する合致機構に係合するために歯などの複数の合致機構162を含んでよい。セグメント化されたプーリ154は、複数のプーリセグメント164を備える。複数のプーリセグメント164は、セグメント化されたプーリ154を形成するために円形に配置される。
【0044】
複数のプーリセグメント164は、エンドレス部材126に係合するように構成される。プーリセグメント164の各々は、セグメント化されたプーリ154の外側周辺面160の一部を画定する本体を含む。複数のプーリセグメント164は、PCT国際出願第PCT/CA2019/051712号に記載されるものと同じであってよく、この関連する部分は、参照により本明細書に組み込まれている。複数のプーリセグメント164は、係合領域と非係合領域との間で順を追って可動であることで、エンドレス部材126を内側プーリ152とセグメント化されたプーリ154との間で移行させるように構成される。本実施形態では、複数のプーリセグメント164は、係合領域と非係合領域との間で個別に可動である。複数のプーリセグメント164は、特許文献4および/または特許文献6に記載されるものなど、1つまたは複数のアクチュエータによって係合領域と非係合領域との間で移動させることができ、これら2つの関連する部分は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0045】
本開示の文脈において、「係合領域」は、第2のプーリ組立体124の要素が、伝動装置120の他の要素によって取り囲まれない、または伝動装置120の他の要素によってエンドレス部材126から保護されないとき、それらの要素が、第2のプーリ組立体124の回転動作中にエンドレス部材126に係合する領域である。対照的に、「非係合領域」は、第2のプーリ組立体124の要素が、その露出または伝動装置120の他の要素の位置にも関わらず、第2のプーリ組立体124の回転動作中にエンドレス部材126に係合しない領域である。本実施形態では、内側プーリ152は、内側プーリ152がセグメント化されたプーリ154の複数のプーリセグメント164によって取り囲まれない、または保護されないとき、エンドレス部材126に常に係合しているため、内側プーリ152は、係合領域内に永続的に位置することを理解されたい。対照的に、複数のプーリセグメント164は、エンドレス部材126によって画定される平面に移動したときのみ、係合領域内に位置する。プーリセグメント164の全てがひとたび係合領域内に移動すると、セグメント化されたプーリ154は、内側プーリ152を取り囲み、内側プーリ152をエンドレス部材126から保護することで、エンドレス部材126は、第2のプーリ組立体124の回転動作中、セグメント化されたプーリ154に係合し、内側プーリ152には係合しない。
【0046】
エンドレス部材126は、第1のプーリ組立体122および第2のプーリ組立体124を回転式に結合するように構成される。エンドレス部材126は、第1のプーリ組立体122と第2のプーリ組立体124との間に延在する。エンドレス部材126は、少なくとも第1のプーリ組立体122および第2のプーリ組立体124に係合するように構成された内面166を含む。図1から図6では、エンドレス部材126は、合致機構なしで概略的表現として示される。しかしながら、理解されるように、エンドレス部材126は、第1のプーリ組立体122および第2のプーリ組立体124の合致機構146、158、162に係合するために、相補的な歯および/または穴など、対応する合致機構を含むことができる。理解されるように、エンドレス部材126は、チェーン、ベルトまたは他の好適なタイプのエンドレス部材を備えてもよい。
【0047】
アイドラープーリ128は、アイドラー軸170を中心に回転可能である。アイドラープーリ128は、エンドレス部材126に係合するように構成される。アイドラープーリ128は、エンドレス部材126に係合するために外側周辺面172を含む。外側周辺面172は概ね円形であり、エンドレス部材126上の対応する合致機構に係合するために歯などの複数の合致機構174を含んでよい。アイドラープーリ128は、第1の位置180(図3に示される)と第2の位置182(図5に示される)との間で可動である。
【0048】
テンショナー組立体130は、アイドラープーリ128を第1の位置180と第2の位置182との間で移動させるように構成される。アイドラープーリ128を第1の位置180と第2の位置182との間で移動させることを利用して、以下で記載されるようにエンドレス部材126内の張力を制御することができる。テンショナー組立体130は、アイドラープーリ128を第2の位置182に向けて付勢する。テンショナー組立体130は、テンショナーばね184と、テンショナーアーム186とを備える。
【0049】
テンショナーアーム186は、テンショナー軸188を中心に回転可能である。テンショナーアーム186は、テンショナーばね184をアイドラープーリ128に結合する。テンショナーアーム186は、ばねリンク機構190を画定する。ばねリンク機構190は、テンショナー軸188と、テンショナーばね184がテンショナーアーム186に結合されるばね結合地点191との間に延在する。テンショナーアーム186は、アイドラーリンク機構192をさらに画定する。アイドラーリンク機構192は、テンショナー軸188と、アイドラープーリ128がテンショナーアーム186に結合されるアイドラー結合地点193との間に延在する。アイドラーリンク機構192は、図3に示されるようにばねリンク機構190より長くてよい。テンショナーアーム186は、実質的に剛性であり、ばねリンク機構190とアイドラーリンク機構192との間に固定アーム角θを画定する。テンショナーアーム186は、概ねL字型である。ばね結合地点191は、L字型の一端、例えばL字型の短い端部に位置している。アイドラー結合地点193は、L字型の他端、例えばL字型の長い端部に位置している。テンショナー軸188は、ばねリンク機構190とアイドラーリンク機構192との間の、L字型の肘に位置している。
【0050】
テンショナーばね184は、テンショナーアーム186を介してアイドラープーリ128を第2の位置182に向けて付勢するように構成される。図3に示されるように、テンショナーばね184は、テンショナーアーム186に対して時計周りのトルクを生成するばね力をテンショナーアーム186に加え、アイドラープーリ128を第2の位置182(図5に示される)に向けて付勢する。テンショナーばね184は、圧縮を受けてばね力を生成する。テンショナーばね184は、ばね力の方向に延在するばね軸194を画定する。本実施形態では、ばね軸194は、テンショナーばね184の長手方向軸である。テンショナーばね184は、テンショナーアーム186に結合される近位端196から、筐体132に結合される対向する遠位端198まで延在するコイルばねである。本実施形態では、テンショナーばね184の遠位端198は、筐体132の一部を形成する調節ねじ199に結合される。
【0051】
ばね角βが、ばね軸194とばねリンク機構190との間に画定される。図3から図5に見ることができるように、ばね角βは、アイドラープーリ128が第1の位置180と第2の位置182との間で移動するときに変化する。ばね角βが直角に近づくとき、すなわち90度に近づくとき、テンショナーアーム186に対する時計周りのトルクに寄与するばね力の成分が増大する。よって、ばね角βが直角に近づくとき、アイドラープーリ128を第2の位置182に付勢するのに寄与するばね力の成分が増大する。反対に、ばね角βが平行に近づくとき、すなわち180度に近づくとき、テンショナーアーム186に対する時計周りのトルクに寄与するばね力の成分が減少する。よって、ばね角βが平行に近づくとき、アイドラープーリ128を第2の位置182に付勢するのに寄与するばね力の成分は減少する。図3から図5に示されるように、ばね角βは、アイドラープーリ128が第1の位置180から第2の位置182に移動するとき直角に近づき、ばね角βは、アイドラープーリ128が第2の位置182から第1の位置180に移動するとき平行に近づく。すなわち、本実施形態では、ばね角βは、アイドラープーリ128が第1の位置180から第2の位置182に移動するとき縮小する。反対に、本実施形態では、ばね角βは、アイドラープーリ128が第2の位置182から第1の位置180に移動するとき拡大する。本実施形態では、ばね角βは、アイドラープーリ128が第1の位置180にあるとき約165度であり、ばね角βは、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき約125度である。他の実施形態において、ばね角βは、アイドラープーリ128が第1の位置180にあるとき約150度から約185度の範囲内であってよく、ばね角βは、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき約110度から約140度の範囲内であってよい。他の実施形態において、ばね角βは、アイドラープーリ128が第1の位置180にあるとき約160度から約170度の範囲内であってよく、ばね角βは、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき約120度から約130度の範囲内であってよい。
【0052】
筐体132は、第1のプーリ組立体122、第2のプーリ組立体124、エンドレス部材126、アイドラープーリ128およびテンショナー組立体130のうちの1つまたは複数を直接、または間接的に、少なくとも部分的に取り囲み、かつ少なくとも部分的に支持する。本実施形態では、筐体132は、全体的に閉鎖されたケーシングである。但し他の実施形態では、筐体132は、支持フレームなどの全体的に開放した支持構造である場合もある。
【0053】
伝動装置120の動作中、エンドレス部材126は、接触ゾーンとして画定された角度領域内で第2のプーリ組立体124に接触し、これと係合する。反対に、エンドレス部材126は、非接触ゾーン(図5に「NCZ」と示される)として画定された角度領域内では第2のプーリ組立体124に接触せず、これと係合しない。したがって、セグメント化されたプーリ154のプーリセグメント164は、エンドレス部材126と干渉せず、かつ伝動装置120の負荷を軽減せずに、非接触ゾーンに位置決めされる間、係合領域内に移動させたり、係合領域から外に移動させたりすることができる。理解されるように、非接触ゾーンは、もしあるとすればどのプーリセグメント164がエンドレス部材126と係合されるかに応じて変化する。
【0054】
非接触ゾーンに位置決めされる間、プーリセグメント164を順を追って係合領域内に移動させたり、係合領域から外に移動させたりすることによって、エンドレス部材126は、第2のプーリ組立体124の内側プーリ152との係合から、第2のプーリ組立体124のセグメント化されたプーリ154との係合に移行させることができ、その逆も同様である。エンドレス部材126の内側プーリ152とセグメント化されたプーリ154との間の移行は、「シフト」または「シフト事象」と呼ばれる。エンドレス部材126を内側プーリ152との係合からセグメント化されたプーリ154との係合に移行させるための順番のさらなる記載は、特許文献4、特許文献5および/または特許文献6に見いだすことができ、これらの全ての関連する部分は、参照により本明細書に組み込まれている。本実施形態において、伝動装置120は、エンドレス部材126がセグメント化されたプーリ154と係合されるとき第1の歯車(「LO歯車」)にあり、エンドレス部材126が内側プーリ152と係合されるとき第2の歯車(「HI歯車」)にある。
【0055】
伝動装置120が第1の歯車から第2の歯車にシフトする際、制御されなければ、エンドレス部材126内で弛みが生じることになる。すなわちエンドレス部材126が、セグメント化されたプーリ154との係合から内側プーリ152との係合に移行するとき、エンドレス部材126内の張力は、プーリ152、154の直径の縮小により減少し、巻き取られなければ、弛みが生じることになる。過剰な弛みが生じた場合、エンドレス部材126は、第1のプーリ組立体122、第2のプーリ組立体124および/またはアイドラープーリ128との位置合わせが狂うようになる可能性があり、これは、伝動装置120の効率など伝動装置120の性能を低下させる可能性がある。したがって、伝動装置120の所望の性能を維持するために、張力は、伝動装置120が第1の歯車から第2の歯車にシフトする際、エンドレス部材126内で張力を制御する必要がある。理解されるように、エンドレス部材126内の張力と弛みは相関している。したがって、エンドレス部材126内の弛みを巻き取る、および/またはエンドレス部材126に弛みを与えることを利用して、エンドレス部材126内の張力を制御することができる。本実施形態では、張力を維持するために、弛みは、伝動装置120が第1の歯車から第2の歯車にシフトする際に巻き取られる必要がある。逆に、伝動装置120が第2の歯車から第1の歯車に移行する際、張力を維持するために、エンドレス部材126に弛みを与える必要がある。
【0056】
図3から図5に示されるように、テンショナー組立体130は、伝動装置120が第1の歯車と第2の歯車との間でシフトするとき、アイドラープーリ128を第1の位置180と第2の位置182との間で移動させる。理解されるように、テンショナー組立体130は、第1の歯車から第2の歯車へのシフト中、アイドラープーリ128を第2の位置182に向けて付勢し、このことは、シフト中、アイドラープーリ128を第1の位置180から第2の位置182に移動させる。第2の歯車から第1の歯車へのシフト中、エンドレス部材126によってアイドラープーリ128に対して生成される力は、テンショナー組立体130の付勢に打ち勝って、アイドラープーリ128を第2の位置182から第1の位置180に移動させる。アイドラープーリ128の第1の位置180から第2の位置182への移動経路、およびその逆の移動経路も同様に、テンショナー軸188の位置およびアイドラーリンク機構192の長さに基づいてテンショナー組立体130によって決定される。アイドラープーリ128の第1の位置180から第2の位置182への移動は、エンドレス部材126内の弛みを巻き取る。逆に、アイドラープーリ128の第2の位置182から第1の位置180への移動は、エンドレス部材126に弛みを与える。したがって、テンショナー組立体130は、アイドラープーリ128を第1の位置180から第2の位置182に移動させることによってエンドレス部材126内の張力を制御するのを助けることができる。いくつかの実施形態において、テンショナー組立体130は、エンドレス部材126がセグメント化されたプーリ154との係合から内側プーリ152との係合に移行する際(すなわち第1の歯車から第2の歯車への移行)、エンドレス部材126内で少なくとも最低限許容可能な張力を維持し、その逆も同様である。
【0057】
テンショナー組立体130によってエンドレス部材126内に生成される張力は、アイドラープーリ128に対してテンショナー組立体130によって及ぼされる付勢力に依存する。付勢力は、アイドラープーリ128を第2の位置182に向けて付勢する。アイドラープーリ128は、この付勢力をエンドレス部材126に伝達し、結果としてエンドレス部材126内に張力が生じることになる。付勢力は、ばねリンク機構190の長さ、アイドラーリンク機構192の長さ、ばね角βおよびテンショナーばね184によって生成されるばね力に依存する。本実施形態では、ばねリンク機構190の長さおよびアイドラーリンク機構192の長さは固定される。したがってテンショナー組立体130によってエンドレス部材126内に生成される張力は、ばね角βおよびテンショナーばね184によって生成されるばね力に依存する。
【0058】
テンショナーばね184によって生成されるばね力は、テンショナーばね184が圧縮されるとき増大する。図3から図5に示されるように、テンショナーばね184は、アイドラープーリ128が、第2の位置182から第1の位置180に移動するとき(すなわち図3から図5におけるテンショナーアーム186の反時計周りの回転)圧縮する。したがって、ばね角βが一定である場合、テンショナーばね184によって生成されるばね力は、アイドラープーリ128が第2の位置182から第1の位置180に移動するとき増大し、結果として、テンショナー組立体130によってエンドレス部材126内に生成される張力は、アイドラープーリ128が第2の位置182から第1の位置180に移動するとき増大する。しかしながら、アイドラープーリ128が第1の位置180と第2の位置182との間で移動するとき(シフト事象中など)、エンドレス部材126内により一貫した張力を与えることが望ましい場合もある。
【0059】
したがって、テンショナーばね184が圧縮するときにばね力の増大を少なくとも部分的に打ち消すために、ばね角βは、アイドラープーリ128が第2の位置182から第1の位置180に移動するときに拡大する。ばね角βを拡大することは、ばね力によってテンショナーアーム186に対して生成されるトルクを減少させ、結果として、テンショナー組立体130によってアイドラープーリ128に及ぼされる付勢力を減少させるように作用する。ばね力の増大によって生じた付勢力の増大を、ばね角βの拡大によって生じた付勢力の減少と均衡させることによって、アイドラープーリ128が第2の位置182から第1の位置180に移動するとき、およびその逆も同様に、エンドレス部材126内に概ね一定の張力を提供することが可能である。
【0060】
別の方法で述べると、ばね角βは、アイドラープーリ128が第1の位置180に向けて移動するとき平行に近づき、アイドラープーリ128が第2の位置182に向けて移動するときに直角に近づく。上記に記載したように、ばね角βが平行に近づくとき、アイドラープーリ128を第2の位置182に向けて付勢するのに寄与するばね力の成分は減少する。よって、ばね角βが平行に近づくとき、エンドレス部材126内に張力をかけるのに寄与するばね力の成分は減少する。したがって、本明細書に記載されるようにばね角βを変えることによって、テンショナー組立体130によってアイドラープーリ128に及ぼされる付勢力(およびエンドレス部材126内に生成される結果としての張力)は、ばね角βが一定である場合よりもより不変であり得る。いくつかの実施形態において、テンショナー組立体130によってアイドラープーリ128に及ぼされる付勢力(およびテンショナー組立体130によってエンドレス部材126内に生成される結果としての張力)は、アイドラープーリ128が第1の位置180と第2の位置182との間を移動するとき概ね一定であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、アイドラープーリ128が第2の位置182から第1の位置180に移動するとき、エンドレス部材126内の張力を減少させることが望ましい場合がある。そのような実施形態では、テンショナー組立体130は、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき、エンドレス部材126内により高い張力を生成し、アイドラープーリ128が第1の位置180にあるとき、エンドレス部材126内により低い張力を生成する。いくつかの実施形態において、より低い張力は、エンドレス部材126内の最低限の張力であり得る。アイドラープーリ128が第1の位置180にあるときエンドレス部材126内に最低限の張力を提供することは、伝動装置の効率を改善し得る。アイドラープーリ128が第2の位置182にあるときエンドレス部材126内により高い張力を提供することは、エンドレス部材126の滑りを回避するのに必須であり得る。エンドレス部材126の滑りは、伝動装置の効率を下げ、そのノイズを増大させる可能性がある。
【0062】
ばね力の増大によって生じた付勢力の増大を、ばね角βの拡大によって生じた付勢力の減少によって過剰に補償することによって、アイドラープーリ128が第2の位置182から第1の位置180に移動するとき、テンショナー組立体130が、エンドレス部材126内に減少した張力を提供することが可能である。別の方法で述べると、アイドラープーリ128が第1の位置180にあるとき、ばね角βが平行に近づくようにそれを調節することによって、テンショナー組立体130は、アイドラープーリ128が第1の位置180にあるとき、エンドレス部材126内により低い張力を生成することができる。同様に、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき、ばね角βが直角に近づくようにそれを調節することによって、テンショナー組立体130は、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき、エンドレス部材126内により高い張力を生成することができる。
【0063】
上記に記載したように、伝動装置120はアイドラーロック134を備える。アイドラーロック134は、アンロック位置(図6に示される)とロック位置(図5に示される)との間で可動である。アイドラーロック134は、アイドラーロック134がロック位置にあるとき、アイドラープーリ128を第2の位置182に固定する。アイドラーロック134は、アイドラーロック134がアンロック位置にあるときアイドラープーリ128を第2の位置182に固定しない。アイドラーロック134は、アイドラーロック134をロック位置に向けて付勢するアイドラーロックばね176を備える。本実施形態では、アイドラーロックばね176は、ねじりばねである。他の実施形態では、アイドラーロックばねは、圧縮ばね、コイルばねまたは磁気ばねなどの他のタイプの好適なばねであってよい。いくつかの実施形態において、アイドラーロック134は、アイドラーロック134をロック位置とアンロック位置との間で選択的に移動させるために、サーボモータまたは他の好適なアクチュエータなどのアイドラーロックアクチュエータ(図示せず)を備えてもよい。アイドラーロック134は、ロック面200と、カム面202(共に図3に示される)をさらに備える。
【0064】
カム面202は、アイドラープーリ128が第1の位置180から第2の位置182に移動するときアイドラープーリ128に係合するように構成される。カム面202は、アイドラープーリ128が第1の位置180から第2の位置182に移動するとき、ロック位置から出るようにアイドラーロック134を偏向させる。したがってアイドラーロック134は、アイドラーロック134が最初はロック位置にあったとしても、アイドラープーリ128の第1の位置180から第2の位置182への移動に実質的に抵抗しない。いくつかの実施形態において、カム面202は、アイドラープーリ128が第1の位置180にあるとき、カム面202とアイドラープーリ128との間の接触が維持されるように拡大することができる。いくつかの実施形態において、カム面202は、アイドラーロック134の先端における傾斜路面である。
【0065】
ロック面200は、アイドラーロック134がロック位置にあり、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき、アイドラープーリ128に係合し、アイドラープーリ128の第1の位置180に向かう動きに抵抗する。本実施形態では、ロック面200は、それぞれアイドラーロック134がロック位置にあり、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき、アイドラープーリ128のシャフトに係合する。ロック面200は、アイドラーロック134がアンロック位置にあるとき、アイドラープーリ128に係合せず、アイドラープーリ128の第1の位置180に向かう動きに抵抗しない。
【0066】
本実施形態では、アイドラーロック134は、エンドレス部材内の張力が閾値を超えたとき、アイドラープーリ128を自動的に解放するようにさらに構成される。アイドラーロック134は、アイドラープーリ128が第2の位置182にあるとき、アンロック位置に移動することによって、アイドラープーリ128を解放する。閾値は、最大許容可能な張力であってよく、エンドレス部材126内のこれを超える張力は、伝動装置120を損傷させる可能性がある。図7に示されるように、アイドラーロック134のロック面200は、平面206によって画定される。平面206は、アイドラーリンク機構192によって画定される軸から角度Ωのところにある。角度Ωは、90度未満である。いくつかの実施形態において、角度Ωは、10度から45度の間である。いくつかの実施形態において、角度Ωは15度から20度の間である。
【0067】
エンドレス部材126内の張力が増大するとき、アイドラープーリ128は、第1の位置180に向けて引っ張られる。アイドラーロック134がロック位置にあるとき、ロック面200は、アイドラープーリ128の第1の位置に向かう引っ張りに抵抗し、これはロック面200に対してアンロック力を生成する。このアンロック力は、概ね直角に、かつロック面200内に入るように作用する。結果として、アンロック力の成分はアイドラーロック134に対するアンロックトルクを生成する。このアンロックトルクがアイドラーロック134をアンロック位置に向けて(図7で見たとき、反時計周りに)押す。アンロックトルクを生成するアンロック力の成分は角度Ωの関数である。角度Ωが拡大するとき、アンロック力によって生成されたアンロックトルクは増大する。アンロックトルクは、アイドラーロックばね176によって抵抗される。アイドラーロックばね176は、アイドラーロックばね176の強度に基づいてロックトルクを生成する。このロックトルクは、アイドラーロック134をロック位置に向けて(図7で見たとき時計周り)に押す。角度Ωおよびアイドラーロックばね176の強度を調節することによって、アイドラーロック134をロック位置からアンロック位置に移動させるのに必要とされるアンロック力を制御することが可能である。したがって、アイドラーロック134は、エンドレス部材126内の張力が閾値に達したとき、アンロック位置に自動的に移動し、これによりアイドラープーリ128を解放するように構成することができる。同様に、アイドラーロック134は、エンドレス部材126内の張力が閾値を下回るとき、ロック位置に留まり、これによりアイドラープーリ128を自動的に解放しないように構成することができる。例えば、閾値は、伝動装置120の通常の動作中エンドレス部材126内の予測される張力より高くすることができ、そのためアイドラーロック134は、通常の動作中アイドラープーリ128を解放することはない。いくつかの実施形態において、閾値は、通常の動作中に予測される張力より高くなり得る、伝動装置120の逆動作中エンドレス部材126内の予測される張力より高くすることができる。
【0068】
上記に記載したように、伝動装置120はアイドラー停止具136を備える。アイドラー停止具136は、第1の位置180に隣接して固定される。アイドラー停止具136は、筐体132に直接固定される。アイドラー停止具136は、アイドラープーリ128が第1の位置180に達したとき、アイドラープーリ128の移動を阻むように構成される。アイドラー停止具136は、アイドラープーリ128が第1の位置180に達したとき、アイドラープーリ128に当接する係合面204(図5に示される)を備える。いくつかの実施形態において、係合面204は、アイドラープーリ128が第1の位置180にあるとき、テンショナーアーム186のテンショナー軸188から離れるようにアイドラープーリ128を付勢するように角度が付けられる。アイドラープーリ128をテンショナー軸188から離れるように付勢することは、テンショナーアーム186内の正の張力を維持することを助けることができ、これは、テンショナーアーム186が伝動装置120の動作中の座屈によって故障するのを阻止するのを助けることができる。
【0069】
伝動装置120が、アイドラーロック134およびアイドラー停止具136を備えるように本明細書に示され記載されてきたが、他の実施形態では、アイドラーロックおよび/またはアイドラー停止具は省略される場合もあることを理解されたい。いくつかの実施形態において、伝動装置は、アイドラーロックおよびアイドラー停止具のうちの一方のみを備える場合もある。
【0070】
アイドラーロック134は、テンショナー組立体130を含む伝動装置120上に示され記載されてきたが、他の実施形態では、アイドラーロック134は、上記に記載されるテンショナー組立体130を含まない伝動装置上に設けられてもよいことを理解されたい。そのような実施形態では、アイドラープーリは、別の好適なテンショナー組立体(電磁石ばね、空気圧式ばね、および/または直線レール、曲線レール、マルチバーリンク機構および/または可撓性部材などのアイドラープーリのためのガイドと併せた油圧式および/または機械式アクチュエータなど)によって第1の位置から第2の位置に移動させることができる。いくつかの実施形態において、アイドラープーリは、それらの間にテンショナーアームなしで、アイドラープーリに対して作用するテンショナーばねを備えるテンショナー組立体によって第2の位置に向けて付勢させることができる。そのような実施形態では、平面206と、アイドラーロックの回転の中心からアイドラープーリがロック面を縮小させる地点まで延在する軸に垂直な平面との間に角度Ωが画定される。
【0071】
テンショナーばね184が圧縮するとき増大するばね力と、ばね力の増大を打ち消すために平行に近づくばね角βを有する、テンショナー組立体130が上記に示され記載されてきたが、他の実施形態では、テンショナーアーム186の配向が反転される場合もあり、テンショナーばねがばね力の減少を打ち消すために圧縮するとき、ばね角βが垂直に近づくように、テンショナーばね184を位置決めすることができ、テンショナーばねが圧縮するとき減少するばね力を有するテンショナーばねで置き換えることができることは当業者によって理解される。
【0072】
実施形態が上記に記載され、添付の図面に示されているが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような範囲から逸脱することなく、変形および変更が行われてよく、特許請求の範囲は、全体として明細書と一致する最も広い解釈を与えられるべきであることは当業者によって理解されるであろう。
【符号の説明】
【0073】
120 伝動装置
122 第1のプーリ組立体
124 第2のプーリ組立体
126 エンドレス部材
128 アイドラープーリ
130 テンショナー組立体
132 筐体
134 アイドラーロック
136 アイドラー停止具
140 第1の軸
142 固定プーリ
144 外側周辺面
146 合致機構
150 第2の軸
152 内側プーリ
154 セグメント化されたプーリ
156 外側周辺面
158 合致機構
160 外側周辺面
162 合致機構
164 プーリセグメント
170 アイドラー軸
172 外側周辺面
176 アイドラーロックばね
180 第1の位置
182 第2の位置
184 テンショナーばね
186 テンショナーアーム
188 テンショナー軸
190 ばねリンク機構
191 ばね結合地点
192 アイドラーリンク機構
193 アイドラー結合地点
194 ばね軸
196 近位端
198 遠位端
199 調節ねじ
200 ロック面
202 カム面
204 係合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】