(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】オゾンスクラバ及びオゾンスクラビング方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/66 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B01D53/66 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518543
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2021076018
(87)【国際公開番号】W WO2022063807
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518155247
【氏名又は名称】スエズ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウッティンガー,ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ハイニガー,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ムリーリョ,アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ラモイノ,ルカ
【テーマコード(参考)】
4D002
【Fターム(参考)】
4D002AA11
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA06
4D002CA01
4D002CA02
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4D002DA70
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4D002FA08
4D002FA10
4D002GA02
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB06
4D002GB09
4D002GB20
(57)【要約】
オゾンを含む入口ガスに還元液(15)を接触させるように適合された気液接触装置(20)を備えるオゾンスクラバ(10)においてオゾンをスクラビングする方法であって、°この方法は、入口ガスを気液接触装置20に供給する工程と、°新しい還元液を気液接触装置(20)に供給する工程であって、新しい還元液は還元剤の水溶液を含む、工程と、°酸性pH条件下で還元液との還元反応によって入口ガスのオゾンをスクラビングする工程と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンを含む入口ガスに還元液(15)を接触させるように適合された気液接触装置(20)を備えるオゾンスクラバ(10)内でオゾンをスクラビングする方法であって、
前記入口ガスを前記気液接触装置(20)に供給する工程と、
新しい還元液を前記気液接触装置(20)に供給する工程であって、前記新しい還元液は還元剤の水溶液を含む、工程と、
酸性pH条件下で、前記還元液との還元反応によって前記入口ガスのオゾンをスクラビングする工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記還元剤は、前記スクラビング工程の前記還元反応によって酸性反応生成物が生成されるように選択され、前記酸性反応生成物は前記酸性条件の少なくとも一部に寄与する、請求項1に記載のオゾンをスクラビングする方法。
【請求項3】
前記還元剤が硫黄又はリン化合物に基づく、請求項1又は2に記載のオゾンをスクラビングする方法。
【請求項4】
前記還元剤が、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩及び/又はチオ硫酸塩を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のオゾンをスクラビングする方法。
【請求項5】
前記スクラビング工程中に、前記還元液(15)の少なくとも一部を前記気液接触装置(20)全体に再循環させる工程を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のオゾンをスクラビングする方法。
【請求項6】
前記新しい還元液を前記気液接触装置(20)内に供給する工程において、前記新しい還元液の流量を制御することによって前記気液接触装置(20)内の酸性pH条件を維持する工程を含む、請求項2及び請求項2に従属する場合の請求項3~5に記載のオゾンをスクラビングする方法。
【請求項7】
前記酸性pH条件を維持する工程の間、一定のpHが維持される、請求項6に記載のオゾンをスクラビングする方法。
【請求項8】
前記酸性反応生成物が硫酸及び/又は硫酸水素ナトリウムである、請求項2又は請求項2に従属する場合の請求項3~7のいずれか一項に記載のオゾンをスクラビングする方法。
【請求項9】
前記還元反応によって酸化反応生成物が更に生成され、前記方法が、
前記還元反応後に、前記還元液の少なくとも一部をタンク(30)内又は前記気液接触装置のタンク部内に一時的に貯留する工程と、
前記タンク(30)内及び/又は前記気液接触装置(20)内に真水を供給する工程と、
前記タンク(30)又はタンク部の前記還元液(15)の一部を排出する工程と、
前記供給される水及び/又は前記排出される還元液の流量に作用することによって、前記還元液(15)中の前記酸化反応生成物の濃度を制御する工程と、を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のオゾンをスクラビングする方法。
【請求項10】
気液接触装置(20)と、
前記入口ガスを供給するように適合されたガス入口供給部(31)と、
前記新しい還元液を供給するように適合された新液供給部(50)と、を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のオゾンをスクラビングする方法を実行するように適合されたオゾンスクラバ(10)であって、
前記還元液(15)の少なくとも一部を前記気液接触装置(20)全体に再循環させるように構成された再循環手段(40)を備える、オゾンスクラバ(10)。
【請求項11】
前記オゾンスクラバ(10)が、前記新液供給部(50)の流量を制御することによって、前記気液接触装置(20)内及び/又は前記再循環手段(40)内の酸性pH条件を維持するように構成されたpH制御装置(70)を更に備える、請求項10に記載のオゾンスクラバ(10)。
【請求項12】
前記オゾンスクラバ(10)が、
前記気液接触装置(20)内での循環後かつ再循環前に還元液(15)を一時的に貯留するように適合されたタンク(30)又は前記気液接触装置(20)のタンク部と、
前記気液接触装置(20)内又は前記タンク(30)内に水を供給するように適合された水供給部(60)と、
前記タンク(30)又は前記タンク部から前記還元液(15)の一部を排出するように適合された液体排出部(32)と、
前記供給される水(60)の流量を制御することによって、及び/又は前記排出される還元液(32)の流量を制御することによって、前記還元液(15)中の酸化反応生成物の濃度を制御するように適合された反応生成物制御装置(80)と、を更に備える、請求項10又は11に記載のオゾンスクラバ(10)。
【請求項13】
前記気液接触装置(20)がプレートカラムである、請求項10~12のいずれか一項に記載のオゾンスクラバ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流中に存在するオゾンをスクラビング又は分解(destroy)するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン(O3)は、殺菌、害虫駆除、洗浄及び漂白といった様々な特性で知られている。そのため、例えば水処理、農業、工業食品、ヘルスケア及び製紙分野など、多くの産業で広く使用されている。
【0003】
オゾンはまた、生物圏における汚染物質と考えられており、環境へ放出する前に分解されなければならない。その目的のために、オゾン熱分解器及びオゾン触媒分解器が提案されてきた。
【0004】
オゾン熱分解器は、オゾンが不安定であり、温度が上昇すると半減期が極めて急速に減少するという事実に依存している。分解すべき残留オゾンを含有するガス流を、加熱器を備えた反応器に通す。ガスは、オゾンの半減期が極めて短くなるように、数百℃まで加熱される。反応器は、動作温度でのオゾン半減期を基準に、ガス流を反応器内に十分長時間滞留させ、オゾンを減少させるように設計されている。
【0005】
この方法は、ガス流中の残留オゾン濃度が非常に低い場合でもガス流全体を加熱しなければならないため、エネルギー的に高価であるという欠点を有する。エネルギー消費を削減するために、熱回収システム、すなわち、分解器出口における高温ガスと分解器入口における低温ガスとの間で熱を伝達する熱交換器を使用することが可能である。このような解決策は、エネルギー運転費用を削減するのに非常に効果的であるが、熱交換器は比較的高価であり、オゾン解決策全体(オゾン発生器及びオゾン分解器)の投資費用を増加させる。更に、他の化学物質がオゾン入口ガス中に存在する可能性があり、熱分解器に、例えば腐食を引き起こすなどの損傷を与える可能性がある。
【0006】
オゾン触媒分解器では、反応器に粒状物形態の触媒が充填される。オゾン入口ガスは、オゾン分解を誘発する触媒粒状物を通って流れる。このようなオゾン触媒分解器の運転費用は、オゾン熱分解器の運転費用と比べて低い。
【0007】
しかしながら、オゾン触媒分解器は、数種類の化学物質(例えば硫黄化合物)に敏感な、被毒しやすい可能性のある触媒を使用するという欠点を有し、これは、触媒の頻繁な交換につながり、それゆえ運転費用が高く、環境への影響が大きくなり得る。そのため、全ての工業プロセスでオゾン触媒分解器を使用することはできない。
【0008】
最後に、国際公開第93/18226号は、溶解した有機物質を含有するアルカリ性液体でガス流をスクラビングする工程を含むオゾン分解方法を開示しており、アルカリ性液体は、例えば製紙プロセスから入手可能である。
【0009】
しかしながら、本発明者らは、アルカリ性液体とオゾンとの反応の選択性は、アルカリ性液体と酸素との競合反応と比べてそれほど高くなく、したがって、上記の従来技術のプロセスでは、オゾンを効率的に分解すること、及びプロセス後のガス中のオゾン含有量を非常に低下させることはできないと判断した。
【0010】
したがって、オゾンを含有する工業用ガスを高効率かつ低運転費用で処理することができるオゾン分解器又はオゾンスクラバが必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
この目的は、本発明の第1の態様において、オゾンを含む入口ガスに還元液を接触させるように適合された気液接触装置を備えるオゾンスクラバ内で、オゾンをスクラビングする方法によって達成され、この方法は、
a)入口ガスを気液接触装置に供給する工程と、
b)新しい還元液を気液接触装置に供給する工程であって、新しい還元液は還元剤の水溶液を含む、工程と、
c)酸性pH条件下で、還元液との還元反応によって入口ガスのオゾンをスクラビングする工程と、を含む。
【0012】
酸性pH条件の選択により、オゾンの分解収率を高く、すなわち入口ガスのオゾンの大部分又は全てを分解するための還元剤の消費を少なくすることができる。したがって、本方法は費用効率が高い。気液接触装置内に供給される酸性液体によって、及び/又は還元反応の酸性反応生成物から、酸性pH条件を得ることができる。また、加熱を回避することができ、還元反応を室温で行うことができる。例えば、気液接触装置には触媒は使用されない。上記の工程は、好ましくは連続的プロセスで同時に行われる。あるいは、バッチプロセスを考慮することができる。最後に、新しい還元液は、入口ガスに対して向流で供給されることが好ましい。
【0013】
有利には、還元剤は、スクラビング工程の還元反応によって酸性反応生成物が生成されるように選択され、この酸性反応生成物は、酸性条件の少なくとも一部に寄与する。
【0014】
したがって、酸性pH条件は、酸性液体又は試薬を限られた量で添加して、又は添加せずに、気液接触装置において維持され得る。これは、本方法の高いオゾン分解収率及び高い費用効率に寄与する。好ましくは、還元反応において、オゾン及び還元剤以外の他の試薬を添加しない。
【0015】
有利には、還元剤は硫黄及び/又はリン化合物に基づく。そのような還元剤は容易に入手可能であり、酸性反応生成物をもたらすことができる。
【0016】
有利には、還元剤は、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩及び又はチオ硫酸塩を含む。このような還元剤は、製紙パルプ製造などの産業プロセスの廃液に含まれてもよく、これは本プロセスの費用効率に更に寄与する。好ましくは、還元剤は亜硫酸塩であるか又は亜硫酸塩を含む。
【0017】
有利には、本発明の方法は、スクラビング工程中に、還元液の少なくとも一部を気液接触装置全体に再循環させる工程を含む。その結果、酸性反応生成物は、より効率的に酸性反応条件に貢献することができ、これはオゾン分解収率及び費用効率の点で好ましい。
【0018】
新しい還元液を気液接触装置内に供給する工程において、新しい還元液の流量を制御することによって気液接触装置内の酸性pH条件を維持する工程が有利である。その結果、酸性反応生成物は、より効率的に酸性反応条件に貢献することができ、これは、オゾン分解収率及び費用効率の点で好ましい。例えば、pHは6以下、好ましくは5以下、又は好ましくは4未満、更に好ましくは3未満であり得る。pHは、0超、又は1若しくは2以上であり得る。
【0019】
有利には、酸性pH条件を維持する工程の間、一定のpHが維持され、これはオゾン分解収率に関して最良の結果をもたらす。例えば、一定のpHは2.5であり得る。
【0020】
有利には、酸性反応生成物は硫酸及び/又は硫酸水素ナトリウムである。このような酸性反応生成物は、特に亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、メタ重亜硫酸塩及び/又はチオ硫酸塩を含む還元液から容易に得ることができる。それらは、還元反応の酸性pH条件に、重大な副反応なしに貢献することができる。還元反応において、4以下、3以下、好ましくは2.5のpHを維持することができる。
【0021】
有利には、還元反応によって酸化反応生成物が更に生成され、本方法は、
d)還元反応後、すなわち気液接触装置内での循環後に、還元液の少なくとも一部をタンク又は気液接触装置のタンク部内に一時的に貯留する工程と、
e)タンク内及び/又は気液接触装置内に真水を供給する工程と、
f)タンク又はタンク部の還元液の一部を排出する工程と、
g)供給される水及び/又は排出される還元液の流量に作用することによって、還元液中の酸化反応生成物の濃度を制御する工程と、を更に含む。
【0022】
そのような追加の特徴によって、オゾンスクラバ内の酸化反応生成物の沈殿を防止し、連続的なオゾン分解を持続させることを可能にし得る。酸化反応生成物は、酸性反応生成物から形成されてもよく、又は酸性反応生成物と平衡状態にあってもよい。例えば、酸化反応生成物は硫酸ナトリウムである。水道水、工業用水又は真水などの水を、還元液と同時に供給してもよい。
【0023】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様によるオゾンをスクラビングする方法を実行するように適合されたオゾンスクラバであって、オゾンスクラバは、
a)気液接触装置と、
b)入口ガスを供給するように適合されたガス入口供給部と、
c)新しい還元液を供給するように適合された新液供給部と、を備え、
オゾンスクラバは、還元液の少なくとも一部を気液接触装置全体に再循環させるように構成された再循環手段を備える。
【0024】
このようなオゾンスクラバは、本方法に特に適合しており、高いオゾン分解収率及び高い費用効率を得ることを可能にする。
【0025】
有利には、オゾンスクラバは、新液供給部の流量を制御することによって、気液接触装置内及び/又は再循環手段内の酸性pH条件を維持するように構成されたpH制御装置を更に備える。換言すれば、pH制御装置は、還元反応の間、一定の酸性pH条件を維持することができる。
【0026】
有利には、オゾンスクラバは、
d)気液接触装置内での循環後かつ再循環前に還元液を一時的に貯留するように適合されたタンク又は気液接触装置のタンク部と、
e)気液接触装置内又はタンク内に水を供給するように適合された水供給部と、
f)タンク又はタンク部から還元液の一部を排出するように適合された液体排出部と、
g)供給される水の流量を制御することによって、及び/又は排出される還元液の流量を制御することによって、還元液中の酸化反応生成物の濃度を制御するように適合された反応生成物制御装置と、を更に備える。
【0027】
有利には、気液接触装置は、プレートカラムである。このような気液接触装置により、オゾン分解を最適化することができる。あるいは、他の気液接触装置を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の更なる利点及び好ましい実施形態は、以下の詳細な説明及び図面から明らかになるであろう。
【0029】
【
図1】本発明の一態様によるオゾンスクラバの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本オゾンスクラバ及び本オゾンスクラビング方法は、例えば、水処理、食品消毒又は製紙などの工業プロセスから排出される入口ガス中のオゾンをスクラビング又は分解することを意図している。
オゾンスクラバ
【0031】
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるオゾンスクラバ10は、例えば多孔板21が設けられたプレートカラムの形態の気液接触装置20を備える。気液接触装置20には、ガス出口22を備える頂部が設けられている。気液接触装置20の基部には、タンク30が接続されている。タンク30には、オゾンを含む入口ガスを供給するように適合されたガス入口供給部31と、タンク30から液体を排出又は放出するように適合された液体排出部32と、液体再循環出口41とが設けられている。
【0032】
再循環出口41は、気液接触装置20に設けられた液体供給部44に向かって還元液15を再循環管43内へ送出するように適合されたポンプ42などの圧送手段に流体接続されている。液体供給部44は、好ましくは、気液接触装置内の、タンク30に接続した部分と反対側の部分、又は少なくともガス入口供給部31と反対側の部分に液体を供給するように配置される。
図1の好ましい実施形態では、ガス入口供給部は、オゾンスクラバ10の底部のタンク30内に配置され、液体供給部44は、オゾンスクラバ10の頂部、すなわち気液接触装置20の頂部に配置される。再循環出口41、ポンプ42、再循環管43及び液体供給部44は、再循環手段40を画定する。
【0033】
その結果、
図1の好ましい実施形態では、オゾンを含む入口ガスは、
図1の上向き矢印に従い、タンク30から多孔板21を通って気液接触装置20の頂部に向かって上昇する。還元液15は、
図1の下向き矢印に従って下降し、その下向きの流れは多孔板21によって制限される。
【0034】
また、再循環管43には、新液供給部50及び水供給部60が設けられる。新液供給部50は、オゾンとの反応によって酸性反応生成物が生成されるように選択された新しい還元液を供給するように適合される。水供給部は、真水、又は気液供給部で行われる反応に適した、例えば酸性化合物を含む水性流出物などの水を、オゾンスクラバ10に供給するように適合される。
【0035】
更に、本オゾンスクラバは、pH制御装置70及び反応生成物制御装置80を備えてもよい。pH制御装置70は、新液供給部50の弁と、
図1のタンク30に設けられた1つ又は複数のpHセンサとに接続されている。pH制御装置70は、代替的に又は組み合わせて、気液接触装置20及び/又は再循環管43に設けられた1つ又は複数のpHセンサに接続されてもよく、少なくとも酸性pH、例えば6.5未満、好ましくはより低いpHを維持するようにプログラムされる。
【0036】
反応生成物制御装置80は、水供給部60の弁と、液体排出部32の弁と、還元液15中の酸化反応生成物の濃度を検出又は測定するように適合された酸化反応生成物センサとに接続されてもよい。反応生成物センサは、例えばレドックスセンサであり、
図1のようにタンク30内に設けられてもよく、及び/又は気液接触装置20若しくは再循環管43内に設けられてもよい。
【0037】
ポンプ42は、液体、特に酸性及び/又は還元液を移動させるように適合されたいかなる種類のポンプであってもよい。これには、遠心ポンプ、蠕動ポンプ、ギアポンプ、スクリューポンプ及びルートローブポンプが含まれる。ポンプ42によって再循環される還元液の圧送速度及び/又は流量は、例えばガス入口31におけるガス入口流量に基づき、及び又はガス出口22におけるオゾン濃度に基づき制御することができる。好ましくは、ガス出口22におけるオゾン濃度は、現地の規制に従って、100ppb以下であり得る。
【0038】
他の実施形態では、新液供給部は、気液接触装置の、例えば頂部及び/又はタンクに設けられた新液入口に接続されてもよい。同様に、水供給部は、新液供給部に接続されてもよく、又は気液接触装置の、例えば、頂部及び/又はタンクに設けられた水供給入口に接続されてもよい。
【0039】
図1の気液接触装置20はプレートカラムであるが、どのような気液接触装置を使用してもよい。例えば、気液接触装置は、薄膜流下塔、充填塔、気泡塔、噴霧塔、気液撹拌容器、回転ディスク接触器又はベンチュリ管であり得る。
【0040】
気液接触装置の種類及び特定のプロセスに応じて、タンクは、タンク部の形態で気液接触装置に一体化されてもよい。例えば、気液接触装置の底部に還元液を充填してタンク部として機能させ、そのような気液接触装置のタンク部に再循環出口を配置してもよい。液体排出部は、タンク部に配置されてもよく、及び/又は再循環出口若しくは再循環管から派生したものであってもよい。最後に、ガス入口は、気液接触装置のタンク部又は底部に設けられてもよい。
【0041】
本オゾンスクラバ10は、当業者に知られているように、規制及び/又は適正な製造慣行によって必要とされる全ての弁、配管、センサ及び安全手段を備える。
オゾンスクラビング方法
【0042】
ここで、オゾンスクラバ10を用いたオゾンスクラビング方法について開示する。例えば5~15%、例えば約10%v/vのオゾンを含む入口ガスを、気液接触装置20に供給する。この入口ガスは、例えば紙パルプ製造のオゾンを含む工業プロセスから生じたものであってもよく、安全性及び環境上の理由から、環境へ放出される前に分解されなければならない。
【0043】
新しい還元液を気液接触装置20に供給する。この新しい還元液は、好ましくは、オゾンとの反応によって酸性反応生成物が生成されるように選択される。例えば、新しい還元液は、1つ又は複数の酸性反応生成物を生成するためにオゾンと反応する、1種又は複数の還元剤を含む。
【0044】
オゾンスクラバ10に入っている還元液15の少なくとも一部は、入口ガスとの接触後に気液接触装置20全体に再循環される。この再循環は、再循環手段40によって実行されてもよく、入口ガスと還元液15との接触時間を最適化し、気液接触装置20及び還元液15に酸性pH条件を提供することを意図している。再循環は、還元反応のための酸性pH条件を維持するのに寄与し得る。
【0045】
更に、気液接触装置内への新しい還元液の供給を制御するpH制御装置70によって、気液接触装置内で酸性pH条件を維持することができる。実際、還元液は酸性でなくてもよく、中性又は塩基性であってもよいため、新しい還元液供給の流量を調節又は制御して、気液接触装置内(すなわち還元液中)の酸性pH条件を維持することが好ましい。好ましくは、新しい還元液の供給は、気液接触装置内で一定の酸性pHが維持されるように制御される。
【0046】
この還元反応により、酸化反応生成物が生成され得る。この酸化反応生成物は、酸性反応生成物から形成されてもよく、及び/又は酸性反応生成物と平衡状態にあってもよい。あるいは、酸化反応生成物のみが形成され、酸性反応生成物は形成されなくてもよい。好ましくは、酸化反応生成物の濃度は以下のように制御され得る。
【0047】
還元液15の少なくとも一部は、タンク30又は気液接触装置20のタンク部内でオゾンと反応した後、例えば気液接触装置20全体へ還元液15を再循環させる前に、貯留される。
【0048】
タンク30内又は気液接触装置20内に真水が供給され、タンク30又は気液接触装置20のタンク部から還元液15の一部が排出される。
【0049】
このように、還元液15中の酸化反応生成物の濃度は、真水供給部60及び/又は液体排出部32の流量に作用する反応生成物制御装置80によって制御される。これにより、気液接触装置20で起こり得る望ましくない副反応及び/又は酸化反応生成物の沈殿を回避することができる。
化学的詳細
【0050】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、オゾンは、本方法によって酸素へ還元することにより分解することができる。そして、還元剤を酸化及び/又は加水分解して酸性反応生成物にすることができる。
【0051】
オゾンを含む入口ガスは、通常、強力な酸化剤である酸素も含む。本発明者らは、酸性条件下において、還元剤とオゾンとの反応の選択性は、還元剤と酸素との反応に比べて良好であると判断した。言い換えれば、酸性pH条件において、還元剤は、酸素よりもオゾンと速く反応する。
【0052】
例えば、還元液は、溶媒として水又は少なくともアルコールなどのプロトン性溶媒を含み、還元剤は、亜硫酸カリウム若しくは亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、亜硫酸水素カリウム若しくは亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)、メタ重亜硫酸カリウム若しくはメタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、チオ硫酸カリウム若しくはチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンなどの水溶性有機リン、システイン塩、亜硝酸カリウム若しくは亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩(NaNO2)、エチレンジアミン四酢酸の水溶性塩(そのEDTA塩)、ホスフィン酸塩及び/又は亜リン酸塩から選択することができる。
【0053】
好ましくは、還元剤は、亜硫酸カリウム又は亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、亜硫酸水素カリウム又は亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)、メタ重亜硫酸カリウム又はメタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、チオ硫酸カリウム又はチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)などの硫黄還元剤であるか、又はそれを含む。好ましくは、還元液は、少なくとも亜硫酸カリウム又は亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)を含む。
【0054】
亜硫酸塩又は亜硫酸水素塩を基にした還元剤の場合、水中において、亜硫酸、亜硫酸水素塩及び亜硫酸塩の間でそれぞれ以下の平衡が生じる。H2O,SO2⇔HSO3
-⇔SO3
2-。
【0055】
これらの還元剤とオゾンとの間で多数の反応が起こり得るが、最も有意な反応は以下の通りである。
H2O+SO3
2-+O3→SO4
2-+H+
H2O+HSO3
-+O3→SO4
2-+H+
H2O+H2O,SO2
2-+O3→SO4
2-+H+
【0056】
その結果、還元剤とオゾンとの反応により、酸性反応生成物として硫酸及び/又は亜硫酸水素塩が生成される。硫黄還元剤を含む還元液は、気液接触装置への導入前は中性又はアルカリ性であってもよいが、酸性反応生成物の生成及び還元液の再循環により酸性になる。実際、還元液が気液接触装置内でより多く再循環されるほど、還元液中の酸性反応生成物濃度が上昇し、還元液がより酸性になる、すなわち、pHがより低下する。
【0057】
このように、硫黄還元剤とオゾンとの反応の副生成物であるこの酸性反応生成物を本発明に使用することにより、気液接触装置内の酸性pH条件を促進することができる。また、亜硫酸ナトリウムの形態の酸化反応生成物が、酸性反応生成物及び/又は還元反応から形成され得る。知られているように、このような酸化反応生成物は、還元液体中で特定の濃度を超えると沈殿する可能性がある。
【0058】
更に、本発明者らは、気液接触装置内の酸性反応条件は、酸素との競合反応と比べて、還元剤とオゾンとの反応に有利であることを実証した。
実験
【0059】
10段カラムを備え、約2Lの総容積を有する上記のオゾンスクラバ10を設置した。オゾンスクラバに、ガス入口供給部31から標準温度及び標準圧力下で180g/m3のオゾンを含む200L/hの入口ガスを、そして新液供給部50から濃度200g/L及びアルカリ性pH8~10の亜硫酸塩水溶液を供給した。ポンプ42を起動し、還元液の流量25L/h、オゾンスクラバ10内の総容積5Lで、還元液の再循環を行った。新液供給部50における還元液の流量を制御することにより、pHを様々な値に制御した。ガス出口の濃度を100ppb未満となるように監視し、室温で実験を行った。
【0060】
還元剤の消費を様々なpH濃度で追跡したところ、結果は以下の通りである。
【0061】
【0062】
その結果、最も低いpH、すなわち2.5では、亜硫酸塩の消費が最も少なかった一方、pH=9のアルカリ性条件では、亜硫酸塩の消費が多く非効率である。
【0063】
このように、本発明により、還元剤の使用を最適化してオゾンを分解することができ、それゆえに本オゾンスクラビングプロセスの運転費用を制限することができる。
【0064】
本発明を詳細に説明及び例示してきたが、これは例解及び例示に過ぎず、限定として解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されることが明確に理解される。
【国際調査報告】