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  • 特表-負極および前記負極を含む二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】負極および前記負極を含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20231005BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231005BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231005BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/1393
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518863
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 KR2022006059
(87)【国際公開番号】W WO2022231325
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】10-2021-0056905
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イル・ジェ・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ハ・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ソ・ユン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050DA10
5H050DA18
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA12
(57)【要約】
本発明は、負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、導電材、および分散剤を含み、前記導電材は複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは1μm~20μmであり、下記式1によるQBRが1~1.75である負極に関する。
[式1]
QBR=Bs/Bf
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、
前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質層を含み、
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、導電材、および分散剤を含み、
前記導電材は、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、
前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは1μm~20μmであり、
下記式1によるQBRが1~1.75である、負極。
[式1]
QBR=Bs/Bf
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、
前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値である。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ構造体は、前記負極活物質層内に0.005重量%~0.2重量%含まれる、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ構造体の平均直径は、5nm~100nmである、請求項1に記載の負極。
【請求項4】
前記分散剤は、アミンを含有する高分子分散剤および芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物を含む、請求項1に記載の負極。
【請求項5】
前記アミンを含有する高分子分散剤は、ポリビニルピロリドンを含む、請求項4に記載の負極。
【請求項6】
前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物は、タンニン酸を含む、請求項4に記載の負極。
【請求項7】
前記アミンを含有する高分子分散剤および芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物の重量比は、5:1~1:1である、請求項4に記載の負極。
【請求項8】
前記分散剤は、前記負極内に前記カーボンナノチューブ構造体100重量部に対して50重量部~200重量部含まれる、請求項1に記載の負極。
【請求項9】
前記導電材は、点型導電材をさらに含む、請求項1に記載の負極。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブ構造体と前記点型導電材の重量比は、1:5~1:70である、請求項9に記載の負極。
【請求項11】
前記負極活物質は、黒鉛を含む、請求項1に記載の負極。
【請求項12】
導電材分散液を準備するステップ(S1)と、前記導電材分散液、負極活物質、バインダー、および分散剤を含む負極スラリーを形成するステップ(S2)とを含み、前記導電材分散液を準備するステップ(S1)は、分散媒、分散剤、およびバンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが含まれた混合液を準備するステップ(S1-1)と、高圧均質機を介して前記混合液にせん断力を加え、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブを分散させて、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を形成するステップ(S1-2)とを含み、前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは1μm~20μmであり、下記式1によるQBRが1~1.75である、負極の製造方法:
[式1]
QBR=Bs/Bf
前記負極は、前記負極スラリーから形成された負極活物質層を含み、
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値である。
【請求項13】
請求項1に記載の負極を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年4月30日付けの韓国特許出願第10-2021-0056905号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、負極および前記負極を含む二次電池に関し、前記負極は、バインダーマイグレーション(binder migration)問題を最小化することができる負極を意味する。
【背景技術】
【0003】
最近、モバイル機器に関する技術の開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての電池の需要が急激に増加しており、それに伴い、様々なニーズに応えることができる電池に関する様々な研究が行われている。特に、このような装置の電源として、高いエネルギー密度を有するとともに、優れた寿命およびサイクル特性を有するリチウム二次電池に関する研究が活発に行われている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入/脱離が可能な正極活物質を含んでいる正極と、リチウムイオンの挿入/脱離が可能な負極活物質を含んでいる負極と、前記正極と負極との間に微細多孔性セパレータが介在された電極組立体にリチウムイオンを含有する非水電解質が含まれている電池を意味する。前記負極活物質は、前記負極内の負極活物質層に含まれる。前記負極活物質としては、黒鉛が主に使用される。具体的には、前記負極活物質のほとんどが黒鉛に該当することができ、より具体的には、前記負極活物質として黒鉛のみを使用することもできる。
【0005】
一方、前記負極活物質層内に存在するバインダーが負極の製造工程過程で前記負極活物質層の上部に移動し、集電体と接する前記負極活物質層の下部には、相対的に少ない含量のバインダーが存在する。そのため、前記負極活物質層と前記集電体との接着力(以下、負極接着力)が低くなる問題がある。
【0006】
これを解決するために、負極活物質層を多数の層で形成するなどの技術が紹介されてはいるが、多数の層を形成するためには、さらなる工程が必要となり、工程が複雑になる問題がある。また、従来、接着力が強いバインダーを使用したり、負極の乾燥条件を調節する技術も使用されているが、製造コストが増加し、生産性が低下する欠点がある。
【0007】
したがって、上述のバインダーマイグレーション問題を解決することができる新たな技術が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする一課題は、負極接着力が改善した負極を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記負極を含む二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によると、負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、導電材、および分散剤を含み、前記導電材は、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは1μm~20μmであり、下記式1によるQBRが1~1.75である負極が提供される。
[式1]
QBR=Bs/Bf
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値である。
【0011】
本発明の他の実施形態によると、前記負極を含む二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明による負極は、負極内でロープ(rope)状のカーボンナノチューブ構造体(長い繊維状)が互いに連結されて網(network)構造をなしており、前記カーボンナノチューブ構造体の形成および分散において、2種の分散剤が使用される。前記カーボンナノチューブ構造体は、導電材分散液内に存在し、前記導電材分散液を介して電極スラリーを形成する。この際、前記2種の分散剤は、前記導電材分散液内に適正な直径を有するカーボンナノチューブ構造体が形成されるようにし、且つ前記電極スラリーを製造する過程で、前記カーボンナノチューブ構造体の再凝集を抑制する役割を果たすことができる。これにより、前記カーボンナノチューブ構造体が前記負極スラリー内に均一に分散して効果的なネットワークを形成し、且つ負極スラリーのゼロせん断粘度(Zero-shear viscosity)を増加させる。したがって、前記カーボンナノチューブ構造体によるネットワークによってバインダーマイグレーションが抑制されることができる。また、前記負極スラリーが集電体上にコーティングされても、ゼロせん断粘度により、負極スラリー内部のバインダーマイグレーションがさらに抑制されることがある。結果、負極活物質層の下部に十分な量のバインダーが存在することができる。したがって、負極接着力を改善することができ、電池の寿命性能を改善することができる。また、負極活物質層のコーティング速度を増加させても、負極接着力が低下しないため、負極の生産性が改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書の式1の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0015】
本明細書で使用されている用語は、単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含む。
【0016】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素またはこれらの組み合わせが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせなどの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0017】
本明細書において、「比表面積」は、BET法によって測定したものであり、具体的には、BEL Japan社製のBELSORP-mini IIを用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出されることができる。
【0018】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に該当する粒径と定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザ回折法は、一般的に、サブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性および高分解性の結果を得ることができる。
【0019】
本明細書において、QBRは、Zeol社製のSEM(Jeol 7900f)により確認することができる。
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0021】
負極
本発明による負極は、負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、導電材、および分散剤を含み、前記導電材は、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは1μm~20μmであり、下記式1によるQBRが1~1.75である負極が提供される。
[式1]
QBR=Bs/Bf
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値である。
【0022】
前記負極は、負極活物質層を含むことができ、より具体的には、前記負極は、集電体および前記集電体上に配置された負極活物質層を含むことができる。ただし、前記負極が、集電体なしに負極活物質層のみからなる、いわゆる「自立型負極」を排除するものではない。
【0023】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであればよく、特に制限されるものではない。例えば、前記集電体としては、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。具体的には、銅、ニッケルのような炭素をよく吸着する遷移金属を集電体として使用することができる。
【0024】
前記負極活物質層は、前記集電体の片面または両面に配置されることができる。前記自立型負極の場合、前記負極活物質層は、集電体なしにそのものが負極になり得ることは言うまでもない。
【0025】
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、導電材、および分散剤を含むことができる。
【0026】
前記負極活物質は、黒鉛を含むことができ、より具体的には、前記負極活物質は、前記黒鉛であることができる。すなわち、前記負極活物質として前記黒鉛のみが使用されることもできる。この場合、電池の初期効率および寿命特性が改善することができる。前記黒鉛は、人造黒鉛および天然黒鉛のうち少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0027】
前記黒鉛は、前記負極活物質層内に80重量%~99重量%含まれることができ、具体的には90重量%~98重量%含まれることができる。前記黒鉛が前記負極活物質層のほとんどをなしている場合、一般的にバインダーマイグレーションによる負極接着力の減少現象がより激しい。本発明は、前記黒鉛が前記負極活物質層のほとんどをなしている場合においても、バインダーマイグレーションを抑制できることを示す。
【0028】
前記バインダーは、負極活物質の間または負極活物質と集電体との接着力を確保するためのものであり、当該技術分野において使用される一般的なバインダーが使用されることができ、その種類が特に限定されるものではない。前記バインダーとしては、例えば、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose:CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。
【0029】
前記バインダーは、電極活物質層の全重量に対して0.1重量%~10重量%含まれることができ、具体的には0.5重量%~5重量%含まれることができる。バインダーの含量が前記範囲を満たす場合、負極抵抗増加を最小化し、且つ優れた負極接着力を実現することができる。
【0030】
前記導電材は、カーボンナノチューブ構造体を含むことができる。
【0031】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体を含むことができる。具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体は複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに並行して結合したものであることができる。前記カーボンナノチューブ構造体内で前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して配列されて結合し(単位体の長軸が互いに並行して結合して柔軟性を有する円筒状の構造)、前記カーボンナノチューブ構造体を形成することができる。前記電極内で前記カーボンナノチューブ構造体は、互いに連結されて網(network)構造を示すことができる。
【0032】
前記カーボンナノチューブ構造体は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに並行して結合したカーボンナノチューブ構造体であることができ、より具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体は、2個~4,500個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体であることができる。さらに具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体の分散性と電極の耐久性を考慮して、前記カーボンナノチューブ構造体は、2個~50個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体であることが最も好ましい。
【0033】
カーボンナノチューブを含む従来の電極は、一般的にバンドル型(bundle type)または絡み合い型(entangled type)カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ単位体またはマルチウォールカーボンナノチューブ単位体が互いにくっついているか絡み合っている形態)を分散媒で分散させて導電材分散液を製造した後、前記導電材分散液を使用して製造される。ここで、従来の導電材分散液内で前記カーボンナノチューブは完全に分散し、一本鎖状のカーボンナノチューブ単位体が分散した導電材分散液として存在する。前記従来の導電材分散液は、過剰な分散工程によって、前記カーボンナノチューブ単位体が簡単に切断されて、初期に比べて短い長さを有する。また、負極の圧延工程過程でも、前記カーボンナノチューブ単位体が容易に切断されることができ、電池の駆動時に、負極活物質の過剰な体積変化に応じて、前記カーボンナノチューブ単位体(特に、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体)が切断される問題がさらに発生する。そのため、負極の導電性が低下し、電池の寿命特性が低下する問題がある。さらに、マルチウォールカーボンナノチューブ単位体の場合、節成長(滑らかな直鎖状ではなく成長過程で発生する欠陥によって節が存在)するメカニズムによって構造の欠陥が高い。したがって、分散過程中に、前記マルチウォールカーボンナノチューブ単位体は、より簡単に切断され、前記単位体の炭素によるπ-πスタッキング(stacking)によって短く切断されたマルチウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに凝集(aggregation)しやすい。そのため、負極スラリー内でより一層均一に分散して存在することが難しい。
【0034】
これとは異なり、本発明の負極に含まれたカーボンナノチューブ構造体の場合、相対的に構造的欠陥なしに高い結晶性を維持する複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに並行して結合したロープ状を有しているため、負極活物質の過剰な体積変化にも切断されず、長さをスムーズに維持することができ、負極の導電性を維持することができる。また、高い結晶性を有するシングルウォールカーボンナノチューブ単位体の高い導電性により、電極の導電性を高めて、電池の入力特性、出力特性および寿命特性を大きく改善することができる。また、前記電極内で前記カーボンナノチューブ構造体は、互いに連結されて網構造を有することができ、負極活物質の過剰な体積変化を抑制してクラックの発生を防止し、且つ強い導電性ネットワークを確保することができる。
【0035】
また、カーボンナノチューブ構造体が簡単に切断されず長い形状を維持することができ、負極活物質層の全般にわたり導電性ネットワークを強化することができる。また、負極活物質の脱離が抑制されて、負極接着力を大きく向上することができる。
【0036】
一方、前記カーボンナノチューブ構造体は、バインダーマイグレーションを抑制する役割を果たすことができる。具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体は、長いロープ状を有し、バインダーと一つのネットワークをなすことができ、負極スラリーのゼロせん断粘度を増加させる。これにより、負極スラリー内でバインダーの移動が抑制されることができ、負極スラリーの乾燥時に、バインダーマイグレーションが抑制されることができ、負極接着力が改善することができる。
【0037】
前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは、1μm~20μmであることができ、具体的には1μm~10μmであることができ、より具体的には2μm~7μmであることができ、例えば、3μm~7μmであることができる。前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さが1μm未満の場合、負極内で導電性網構造が効果的に形成されることができないため、バインダーマイグレーションが抑制されることができず、負極接着力が低下し、負極抵抗が増加する。逆に、前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さが20μmを超える場合、同含量のカーボンナノチューブ構造体を使用する時に、カーボンナノチューブ構造体の数が減少し、負極内で広く均一なネットワークが形成され難い。そのため、負極接着力が低下し、負極接着力および抵抗の均一性が低下する問題がある。前記平均長さは、製造された電極をSEMにより観察した時に、平均長さが大きい上位100個のカーボンナノチューブ構造体と下位100個のカーボンナノチューブ構造体の直径の平均値に該当する。
【0038】
前記カーボンナノチューブ構造体の平均直径は、5nm~100nmであることができ、具体的には5nm~30nmであることができ、より具体的には5nm~20nmであることができる。前記カーボンナノチューブ構造体の平均直径が前記範囲を満たす場合、導電性ネットワークが効果的に形成されて負極接着力が改善し、負極抵抗および電池抵抗が減少する効果がある。前記平均直径は、製造された負極をSEMにより観察した時に、平均直径が大きい上位100個のカーボンナノチューブ構造体と下位100個のカーボンナノチューブ構造体の直径の平均値に該当する。
【0039】
前記カーボンナノチューブ構造体は、前記負極活物質層内に0.005重量%~0.2重量%含まれることができ、具体的には0.01重量%~0.1重量%含まれることができ、より具体的には0.015重量%~0.075重量%含まれることができる。前記範囲を満たす時に、負極の導電性経路が確保されて電極抵抗が低い水準を維持し、且つ電池の寿命特性を改善することができる。導電材分散液の製造時に、バンドル型カーボンナノチューブを完全に分散(一般的な分散方法として、できるだけ一本鎖のカーボンナノチューブ単位体が互いに離れるように分散)する場合には、前記カーボンナノチューブ構造体が発生しないか、意に反して発生しても、非常に少ない量(例えば、0.0005重量%)が発生する。すなわち、前記含量の範囲は、一般的な方法では決して達成されることができない。
【0040】
負極がマルチウォールカーボンナノチューブ単位体を含む従来技術の場合、マルチウォールカーボンナノチューブ単位体の低い導電性を補完するために、高い含量(例えば、0.5重量%超)のマルチウォールカーボンナノチューブ単位体を使用しなければならななかった。また、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が完全に分散された導電材分散液を介して負極を製造する場合にも、前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が切断される問題によって、前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体を低い含量で使用することができなかった。
【0041】
一方、本発明の負極に含まれるカーボンナノチューブ構造体は、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに並行して結合した形態を有している。したがって、負極活物質の過剰な体積変化にも、前記カーボンナノチューブ構造体は、切断されずに長さをスムーズに維持することができる。したがって、負極の導電性が維持されることができ、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が有する高い導電性により、負極の導電性がスムーズに確保されることができる。これにより、負極内でカーボンナノチューブ構造体の含量が低い水準であっても、電池の寿命特性に優れることができる。
【0042】
一方、場合に応じて、前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体は、分散剤との親和性を向上させるために、酸化処理または窒化処理などにより表面処理されてもよい。
【0043】
前記導電材は、点型導電材をさらに含むことができる。前記点型導電材は、カーボンブラックを含むことができる。前記カーボンブラックは、高い分散性と導電性を有し、負極内部の負極活物質の間の大きい気孔を充填することができ、カーボンナノチューブ構造体と併用する時に、バインダーマイグレーションがより効果的に抑制されることができる。前記カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、およびファーネスブラックからなる群から選択される少なくともいずれか一つであることができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記カーボンナノチューブ構造体と前記点型導電材の重量比は、1:5~1:70であることができ、具体的には1:5~1:35であることができる。前記範囲を満たす時に、カーボンナノチューブ構造体による長い導電性ネットワークの形成が可能であり、前記点型導電材が導電性ネットワークの中でハブの役割を果たし、導電性ネットワークの均一性がより改善することができる。また、点型導電材によって負極活物質の間の気孔が充填されることができ、負極接着力が改善することができ、電池の出力特性、貯蔵特性、寿命特性が改善することができる。
【0045】
前記分散剤は、アミンを含有する高分子分散剤と芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物を含むことができ、具体的には、アミンを含有する高分子分散剤と芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物からなることができる。前記2種の分散剤を使用する場合、負極内で前記カーボンナノチューブ構造体が効果的に分散して存在し、長いネットワークを形成することができ、バインダーマイグレーションが効果的に抑制されることができる。
【0046】
具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体は、導電材分散液内に存在し、前記導電材分散液を介して電極スラリーを形成するが、前記2種の分散剤は、前記導電材分散液内に適正な直径を有するカーボンナノチューブ構造体が形成されるようにし、且つ前記電極スラリーを製造する過程で、前記カーボンナノチューブ構造体の再凝集を抑制する役割を果たすことができる。これにより、前記カーボンナノチューブ構造体が前記負極スラリー内に均一に分散して効果的なネットワークを形成し、且つ負極スラリーのゼロせん断粘度を増加させる。したがって、前記カーボンナノチューブ構造体によるネットワークにより、バインダーマイグレーションが抑制されることができる。また、前記負極スラリーが集電体上にコーティングされても、ゼロせん断粘度により、負極スラリー内部のバインダーマイグレーションがさらに抑制されることができる。結果、負極活物質層の下部に十分な量のバインダーが存在することができる。したがって、負極接着力を改善することができ、電池の寿命性能を改善することができる。また、負極活物質層のコーティング速度を増加させても負極接着力が低下しないため、負極生産性を改善することができる。
【0047】
前記アミンを含有する高分子分散剤は、例えば、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリアクリル酸ヒドラジド(polyacrylic acid hydrazide)、ポリ-N-ビニル-5-メトキサゾリドン(poly-N-vinyl-5-methoxazolidon)、N-アルキルポリイミン(N-alkyl polyimine)、N-アセチルポリイミン(N-acetyl polyimine)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリ-L-リシンヒドロブロミド(poly-L-lysine hydrobromide)、ベンジル-ドデシル-ジメチルアンモニウムクロライド(benzyl-dodecyl-dimethylammoniumchloride)、およびポリエチレンイミン(polyethylenimine)からなる群から選択される1種以上であることができる。前記のように高分子構造内にアミンを含有する特定の高分子分散剤が適用される場合に、カーボンナノチューブ構造体が負極内に効果的に分散することができる。より具体的には、前記アミンを含有する高分子分散剤は、ポリビニルピロリドンであることができる。
【0048】
次に、前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物は、2個以上の芳香族環によって発生するバルキー(bulky)な構造およびフェノール基に含まれたヒドロキシ基の影響によって、カーボンナノチューブ分散液、特に、水系カーボンナノチューブ分散液の粘度を減少させ、時間の経過による粘度の増加を著しく改善することができる。芳香族環を1個だけ含むフェノール化合物(例えば、ドーパミン、没食子酸、ピロガロール、カテコールなど)を使用する場合には、分散液の粘度の改善効果および粘度の経時変化の抑制効果が十分ではなかった。
【0049】
好ましくは、前記フェノール系化合物は、前記芳香族環のうち1以上のフェノール構造、カテコール構造、ガロール構造およびナフトール構造からなる群から選択される1以上の構造を含むことができ、具体的には、前記芳香族環のうち1以上にカテコール構造およびガロール構造からなる群から選択される1以上の構造を含むことができる。前記フェノール構造は、ベンゼン環にヒドロキシ基が1個結合した構造であり、前記カテコール構造は、ベンゼン環にヒドロキシ基が2個結合した構造であり、前記ガロール構造は、ベンゼン環にヒドロキシ基が3個結合した構造であり、前記ナフトール構造は、ナフタレンにヒドロキシ基が1個結合した構造である。
【0050】
前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物が前記構造を含む場合、カーボンナノチューブ分散液の中で、前記芳香族環とカーボンナノチューブとの相互作用と、前記フェノール系化合物の-OHと前記高分子分散剤との水素結合による相互作用が適切にバランスを取ることで、前記導電材分散液の粘度減少および経時変化による粘度上昇の抑制効果を発揮することができる。
【0051】
前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物の具体的な例としては、バイカリン、ルテオリン、タキシフォリン、ミリセチン、クェルセチン、ルチン、カテキン、エピガロカテキンガレート、ブテイン(butein)、ピセアタンノールおよびタンニン酸からなる群から選択される1種以上であることができ、好ましくは、タンニン酸、クェルセチン、エピガロカテキンガレート、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0052】
本発明の一例において、前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物が含む前記芳香族環は、他の芳香族環と縮合(fused)しない一つの芳香族環または2個の芳香族環が互いに縮合した構造であることができ、3個以上の芳香族環が互いに縮合した構造は含まれないこともある。
【0053】
すなわち、前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物の範囲には、分子構造内に3個以上の芳香族環が縮合した構造を含むものは除外され得る。
【0054】
前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物が分子構造内に3個以上の芳香族環が縮合(fused)した構造を含む場合、前記3個以上の芳香族環が縮合した構造がカーボンナノチューブ分散液内でカーボンナノチューブと適正程度以上の強い結合力を発揮して、カーボンナノチューブの間の凝集を誘導することができるため、カーボンナノチューブの分散性の向上には適切でないこともある。また、上述の前記カーボンナノチューブ分散液の中での前記芳香族環とカーボンナノチューブとの相互作用と、前記フェノール系化合物の-OHと前記高分子分散剤との水素結合による相互作用のバランスが崩れることで、適切な前記カーボンナノチューブ分散液の粘度減少効果および経時変化による粘度上昇の抑制効果が発揮され難いことがある。
【0055】
具体的には、前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物は、タンニン酸であることができる。この場合、導電材分散液の製造時に、バンドル型カーボンナノチューブをスムーズに分散させることができる。
【0056】
前記アミンを含有する高分子分散剤と前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物の重量比は、5:1~1:1であることができ、具体的には4:1~2:1であることができ、より具体的には3.5:1~2.5:1であることができる。前記範囲を満たす時に、カーボンナノチューブ構造体の分散性が改善し、前記カーボンナノチューブ分散液の粘度減少の効果がある。
【0057】
前記分散剤は、前記アミンを含有する高分子分散剤としてポリビニルピロリドンを、前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物としてタンニン酸を含むことができる。前記ポリビニルピロリドンと前記タンニン酸を併用する場合、カーボンナノチューブ構造体の分散性と分散安定性、カーボンナノチューブ構造体の粘度減少の効果を同時に得ることができる。
【0058】
前記分散剤は、前記負極活物質層内に0.005重量%~0.5重量%含まれることができ、具体的には0.02重量%~0.3重量%含まれることができる。前記範囲を満たす場合、カーボンナノチューブ構造体がスムーズに分散して導電性ネットワークがスムーズに発達することができ、バインダーマイグレーションが抑制されることができ、負極接着力およびセル寿命性能を改善することができる。
【0059】
前記分散剤は、前記負極内に前記カーボンナノチューブ構造体100重量部に対して50重量部~200重量部含まれることができ、具体的には80重量部~170重量部含まれることができる。前記範囲を満たす時に、カーボンナノチューブ構造体の分散性が改善し、分散液の粘度が低くなって経時変化が改善することができる。
【0060】
前記負極において、下記式1によるQBRが1~1.75であることができ、具体的には1~1.65であることができ、より具体的には1~1.60であることができる。
【0061】
[式1]
QBR=Bs/Bf
【0062】
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲(上部範囲)で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲(下部範囲)で測定された前記バインダーの個数の平均値である。図1を参照すると、集電体100上に負極活物質層200が配置されており、前記方向Dとは、前記負極活物質層200の上部表面200aまたは下部表面200bに垂直な方向として、前記負極活物質層200の厚さ方向を意味する。具体的には、前記それぞれの範囲とは、前記負極活物質層200の全厚の15%に該当する厚さと当該倍率(例:400倍)での横の長さの乗算を意味し、前記横の長さは、200μm~500μmであることができ、具体的には300μmであることができる。なお、前記バインダーの個数は、前記負極活物質層内のバインダーをOsOで染色した後、前記負極活物質層の断面に対して、SEM-EDS Mapping分析を行って、上部範囲および下部範囲それぞれから確認されたOsOのSignalをカウント(counting)して確認することができる。一方、前記平均値とは、上記のような測定方法で100回測定したバインダーの個数を加算して100回で除したものを意味する。
【0063】
前記QBRが1未満である場合、負極活物質層の下部(集電体に近い方)のみにバインダーが集中して分布するため、界面抵抗が増加し、負極活物質層の抵抗不均一によって電池抵抗が増加し、寿命特性が低下する。逆に、前記QBRが1.75超である場合、負極活物質層の上部にバインダーが過剰に多く分布して、負極接着力が低下し、電池の寿命特性が劣る。
【0064】
一方、本発明では、特定の物性のカーボンナノチューブ構造体が導電材として適切な水準で使用され、2種の分散剤を使用し、特定の製造方法が適用されることから、前記バインダーマイグレーション現象を最小化することができ、これにより、前記QBRが1~1.75を満たすことができる。
【0065】
負極の製造方法
次に、本発明の電極の製造方法について説明する。
【0066】
本発明の負極の製造方法は、導電材分散液を準備するステップ(S1)と、前記導電材分散液、負極活物質、バインダー、および分散剤を含む負極スラリーを形成するステップ(S2)とを含み、前記導電材分散液を準備するステップ(S1)は、分散媒、分散剤、およびバンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが含まれた混合液を準備するステップ(S1-1)と、高圧均質機を介して前記混合液にせん断力を加え、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブを分散させて、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を形成するステップ(S1-2)とを含み、前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは1μm~20μmであり、下記式1によるQBRが1~1.75であることができる。
【0067】
[式1]
QBR=Bs/Bf
【0068】
前記負極は、前記負極スラリーから形成された負極活物質層を含み、
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値である。
【0069】
前記方法により、上述の実施形態の負極が製造されることができる。前記負極活物質、前記バインダー、前記分散剤、前記カーボンナノチューブ構造体は、上述の実施形態で説明した負極活物質、バインダー、分散剤、カーボンナノチューブ構造体と同一である。
【0070】
(1)導電材分散液を準備するステップ(S1)
前記導電材分散液を準備するステップ(S1)は、分散媒、分散剤、およびバンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが含まれた混合液を準備するステップ(S1-1)と、高圧均質機を介して前記混合液にせん断力を加え、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブを分散させて、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を形成するステップ(S1-2)とを含むことができる。
【0071】
前記S1-1ステップにおいて、前記混合液は、バンドル型カーボンナノチューブおよび分散剤を分散媒に投入して製造されることができる。前記バンドル型カーボンナノチューブは、上述のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が結合して束状で存在し、例えば、5,000個以上のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体を含む。
【0072】
前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブは、前記混合液内に0.01重量%~0.1重量%含まれることができる。前記範囲を満たす時に、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが適当な水準に分散し、適切水準のカーボンナノチューブ構造体が形成されることができ、分散安定性が改善することができる。
【0073】
前記分散媒としては、例えば、水(HO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド系極性有機溶媒;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール(N-ブタノール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブタノール)、2-ブタノール(sec-ブタノール)、1-メチル-2-プロパノール(tert-ブタノール)、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールまたはオクタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、またはヘキシレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、またはソルビトールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、またはテトラエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、またはシクロペンタノンなどのケトン類;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、およびε-プロピオラクトンなどのエステル類などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができるが、これに限定されるものではない。より具体的には、前記分散媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であることができる。
【0074】
前記分散剤については、上述の実施形態の分散剤に関する内容と同一であるため同じ説明は省略する。前記分散剤が使用されることで、カーボンナノチューブ構造体の分散性を改善することができ、負極スラリーの製造のための分散液の粘度が減少し、分散安定性が向上することができる。これにより、バインダーマイグレーションが効果的に抑制されることができる。
【0075】
前記導電材分散液内で、前記バンドル型カーボンナノチューブと前記分散剤の重量比は、1:0.1~1:10であることができ、具体的には1:1~1:10であることができる。前記範囲を満たす場合、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが適当な水準で分散し、適切水準のカーボンナノチューブ構造体が形成されることができ、分散安定性が改善することができる。
【0076】
前記混合液内で、固形分含量は、0.1重量%~20重量%であることができ、具体的には1重量%~10重量%であることができる。前記範囲を満たす場合、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが適当な水準で分散し、適切水準のカーボンナノチューブ構造体が形成されることができ、分散安定性を改善することができる。また、負極スラリーが電極製造工程に適する粘度と弾性を有することができ、負極スラリーの固形分含量を高めることにも役立つ。
【0077】
前記S1-2ステップにおいて、前記混合液は、高圧均質機を介して撹拌されることができ、この過程で、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが分散し、カーボンナノチューブ構造体が形成されることができる。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したものであり、上述の実施形態の負極に関して説明したカーボンナノチューブ構造体と同一である。
【0078】
前記高圧均質機は、一次ノズルと二次ノズルを含むことができる。前記混合液に圧力が加えられて、前記混合液は、前記一次ノズルと前記二次ノズルを順に通過する。前記二次ノズルの直径が前記一次ノズルの直径より小さいため、前記混合液が前記ノズルを通過しながらせん断力を受け、この時にバンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが分散する。
【0079】
前記一次ノズルの直径は、100mm~500mmであることができ、具体的には150mm~300mmであることができ、より具体的には150nm~250mmであることができる。前記二次ノズルは、100μm~1000μmであることができ、具体的には200μm~800μmであることができ、より具体的には200μm~650μmである。また、前記圧力は、500Bar~1800Barであることができ、具体的には5000Bar~1600Barであることができ、より具体的には800Bar~1600Barであることができる。前記圧力が1800Bar以上であると、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが完全に分散し、カーボンナノチューブ構造体がスムーズに形成されることができない。
【0080】
前記混合液を高圧均質機に通過させることは、5回~10回行われることができ、これにより、前記カーボンナノチューブ構造体の直径は1nm~30nmであることができる。
【0081】
S1ステップでは、バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブを完全に分散させる通常の方法とは異なり、高圧均質機適用の条件(ノズルサイズ、圧力など)、使用されるバンドル型シングルウォールカーボンナノチューブの物性、使用された分散剤などの条件を適切に組み合わせて、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブを完全に分散させずに適正水準で分散させる。これによって形成された導電材分散液内には、一本鎖状に独立して存在するシングルウォールカーボンナノチューブ単位体がないか、ほとんど存在せず、ほとんどが上述のカーボンナノチューブ構造体として存在し得る。
【0082】
(2)前記導電材分散液、負極活物質、バインダー、および分散剤を含む負極スラリーを形成するステップ(S2)
S2ステップは、活物質、バインダー、および溶媒を含む活物質溶液を撹拌するステップ(S2-1)と、前記撹拌された活物質溶液に前記導電材分散液を投入するステップ(S2-2)とを含むことができる。
【0083】
前記活物質溶液は、前記負極活物質、前記バインダー、前記溶液を含むことができる。
【0084】
ここで、前記負極活物質としては、上述の実施形態の負極活物質が使用されることができる。前記バインダーとしては、上述の実施形態のバインダーが使用されることができる。前記溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド系極性有機溶媒;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール(N-ブタノール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブタノール)、2-ブタノール(sec-ブタノール)、1-メチル-2-プロパノール(tert-ブタノール)、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールまたはオクタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、またはヘキシレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、またはソルビトールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、またはテトラエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、またはシクロペンタノンなどのケトン類;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、およびε-プロピオラクトンなどのエステル類などが挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができるが、これに限定されるものではない。前記溶媒は、先分散液に使用された分散媒と同一もしくは相違していてもよく、好ましくは、N-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)であることができる。
【0085】
前記S2-1ステップにより、負極活物質が効果的に分散し、カーボンナノチューブ構造体による導電性ネットワークがスムーズに形成されることができる。すなわち、前記S2-1ステップは、下記式1によるQBRが1~1.75である構成が導き出されることができる主な要因の一つである。
【0086】
前記S2-1ステップにおいて、前記撹拌は、強いせん断力が活物質溶液に伝わることを含む。この際、前記せん断力は、PRIMIX社製のHIVIS MIX Planetary mixer/Kneaderを介して加えられることができる。
【0087】
前記S2-1ステップで使用されるバインダーは、カルボキシメチルセルロースであることができる。その場合、前記S2-1ステップで使用されるカルボキシメチルセルロースの重量は、負極活物質層に含まれるようになる全体のカルボキシメチルセルロースの重量の30%~70%、具体的には40%~60%であることができる。この場合、活物質溶液にせん断力が効果的に加えられることができ、負極活物質が活物質溶液でより効果的に分散することができ、負極活物質層の接着力が改善することができる。
【0088】
前記S2-2ステップでは、S1ステップで製造された導電材分散液を撹拌された活物質溶液に投入することができる。さらに、前記導電材分散液を前記活物質溶液に投入した後、撹拌して負極スラリーを製造することができる。また、S2-2ステップでは、バインダーがさらに投入されることができる。
【0089】
前記負極活物質は黒鉛を含み、前記黒鉛は、前記負極スラリー内の全体固形分含量に対して80重量%~99重量%、好ましくは90重量%~98重量%含まれることができる。
【0090】
前記負極スラリー内で固形分の含量は、40重量%~80重量%であることができ、具体的には40重量%~60重量%であることができる。前記範囲を満たす場合、負極スラリーを塗布してから乾燥する時に、溶媒の蒸発による導電材、バインダーのマイグレーション(migration)が抑制されることができ、電極接着力と電気伝導度に優れた負極が製造されることができる。さらに、圧延時に、負極の変形が少ない高品質の負極が製造されることができる。
【0091】
前記カーボンナノチューブ構造体は、前記負極スラリーの固形分内に0.005重量%~0.2重量%含まれることができ、具体的には0.01重量%~0.1重量%含まれることができ、より具体的には0.015重量%~0.075重量%含まれることができる。前記範囲を満たす時に、電極の導電性経路が確保されて、電極抵抗が低い水準を維持し、且つ電池の寿命特性が改善することができる。
【0092】
次に、前記のように製造された負極スラリーを乾燥して負極活物質層を形成する。具体的には、前記負極活物質層は、電極集電体上に負極スラリーを塗布した後、乾燥する方法、または負極スラリーを別の支持体上に塗布した後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートする方法により形成することができる。必要に応じて、前記のような方法により負極活物質層を形成した後、圧延する工程をさらに実施することができる。ここで、乾燥および圧延を、最終的に製造しようとする電極の物性を考慮して、適切な条件で行うことができ、特に限定されない。前記カーボンナノチューブ構造体は、前記負極活物質層内に0.005重量%~0.2重量%含まれることができる。
【0093】
二次電池
次に、本発明のさらに他の実施形態による二次電池について説明する。
【0094】
本発明のさらに他の実施形態による二次電池は、上述の実施形態の負極を含むことができる。
【0095】
具体的には、前記二次電池は、前記負極と、正極と、前記正極と負極との間に介在されたセパレータと、電解質とを含むことができ、前記負極は、上述の実施形態の負極と同一である。前記負極については上述したため、具体的な説明は省略する。
【0096】
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層とを含むことができる。
【0097】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0098】
前記正極活物質は、通常使用される正極活物質であることができる。具体的には、前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物であるか1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;LiFeなどのリチウム鉄酸化物;化学式Li1+c1Mn2-c1(0≦c1≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-c2Mc(ここで、Mは、Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BおよびGaからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、0.01≦c2≦0.3を満たす)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-c3c3(ここで、Mは、Co、Ni、Fe、Cr、ZnおよびTaからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、0.01≦c3≦0.1を満たす)またはLiMnMO(ここで、Mは、Fe、Co、Ni、CuおよびZnからなる群から選択される少なくともいずれか一つである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMnなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。前記正極は、Li-金属(metal)であり得る。
【0099】
前記正極活物質層は、上述の正極活物質とともに、正極導電材および正極バインダーを含むことができる。
【0100】
ここで、前記正極導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。
【0101】
また、前記正極バインダーは、正極活物質粒子同士の付着および正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。
【0102】
セパレータとしては、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものとして、通常、二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0103】
前記電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0104】
具体的には、前記電解質は、非水系有機溶媒と金属塩を含むことができる。
【0105】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、 テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用されることができる。
【0106】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒として誘電率が高いことからリチウム塩をよく解離させるため好ましく使用されることができ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の直鎖状カーボネートを適当な割合で混合して使用すると、高い電気伝導率を有する電解質を製造することができ、より好ましく使用されることができる。
【0107】
前記金属塩は、リチウム塩を使用することができ、前記リチウム塩は、前記非水電解液に溶解されやすい物質であり、例えば、前記リチウム塩のアニオンとしては、F、Cl、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCNおよび(CFCFSOからなる群から選択される1種を使用することができる。
【0108】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。
【0109】
本発明のさらに他の実施形態によると、前記二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックを提供する。前記電池モジュールおよび電池パックは、高容量、高い律速特性およびサイクル特性を有する前記二次電池を含むことから、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ-インハイブリッド電気自動車および電力貯蔵用システムからなる群から選択される中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0110】
以下、具体的な実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0111】
製造例1-1:導電材分散液の製造
平均直径が1.5nmであり、平均長さが5μmであるシングルウォールカーボンナノチューブ単位体からなるバンドル型カーボンナノチューブ(比表面積が650m/g)0.8重量部、分散剤1.2重量部を分散媒のN-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)98重量部に混合して、固形分が1.0重量%になるように混合液を製造した。前記混合液を高圧均質機に投入した後、前記混合液に1000Barの圧力を加え、直径が200mmである一次ノズルと直径が500μmである二次ノズルに前記混合液を順に総6回通過させた。
【0112】
前記分散剤としては、ポリビニルピロリドンとタンニン酸が3:1の重量比で使用された。
【0113】
製造例2-1:導電材分散液の製造
平均直径が10nmであり、平均長さが1μmであるマルチウォールカーボンナノチューブ単位体からなるバンドル型カーボンナノチューブ(比表面積が185m/g)7.0重量部と分散剤1.4重量部を分散媒のN-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)91.6重量部に混合して、固形分が8.4重量%になるように混合液を製造した。前記混合液を高圧均質機に投入した後、前記混合液に1000Barの圧力を加え、直径が200mmである一次ノズルと直径が500μmである二次ノズルに前記混合液を順に総7回通過させた。
【0114】
前記分散剤としては、ポリビニルピロリドンとタンニン酸が3:1の重量比で使用された。
【0115】
製造例2-2:導電材分散液の製造
分散剤としてポリビニルピロリドンのみを使用した以外は、製造例1-1と同じ方法で導電材分散液を製造した。
【0116】
製造例2-3:導電材分散液の製造
分散剤としてタンニン酸のみを使用した以外は、製造例1-1と同じ方法で導電材分散液を製造した。
【0117】
製造例2-4:導電材分散液の製造
前記混合液を高圧均質機に総7回ではなく、総4回通過させた以外は、製造例1-1と同様に分散液を製造した。
【0118】
製造例2-5:導電材分散液の製造
前記混合液を高圧均質機に総7回ではなく、総13回通過させた以外は、製造例1-1と同様に分散液を製造した。
【0119】
実施例および比較例
実施例1:負極の製造
(1)活物質溶液の製造および撹拌
負極活物質として平均粒径(D50)が15μmである人造黒鉛を使用した。前記負極活物質とカルボキシメチルセルロース水溶液を混合した。ここで、カルボキシメチルセルロース水溶液にはカルボキシメチルセルロースが1重量%溶解されており、カルボキシメチルセルロース(CMC)の重量平均分子量は100,000g/mol、置換度は1.0であった。使用されたカルボキシメチルセルロースの重量は、負極活物質層に最終的に含まれるカルボキシメチルセルロース重量の50%であった。
【0120】
前記混合物をプラネタリーミキサー(Planetary mixer)を介して強いせん断力を加えて撹拌させた(Kneading)。これにより、活物質溶液を製造した。
【0121】
(2)負極スラリーの製造
前記活物質溶液とバインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)(重量平均分子量:100,000g/mol、置換度:1.0)、製造例1の導電材分散液を混合して負極スラリーを準備した(溶媒:HO)。前記負極活物質、前記バインダー、前記カーボンナノチューブ構造体、前記分散剤の重量比は96.925:3.0:0.03:0.045であった。前記SBRとCMCの重量比は2.0:1.0であった。
【0122】
前記負極スラリーそれぞれを厚さ20μmの負極集電体である銅(Cu)金属薄膜に300mg/25cmのローディング量で塗布、乾燥した。この時に循環される空気の温度は70℃であった。次いで、前記スラリーが塗布、乾燥された負極集電体を圧延(roll press)し、130℃の真空オーブンで8時間乾燥して、負極活物質層を含む負極を製造した。
【0123】
実施例2および比較例1~5:負極の製造
以下の表1のように条件を変更した以外は、実施例1と同じ方法で負極を製造した。
【0124】
比較例6:負極の製造
負極活物質で平均粒径(D50)が15μmである人造黒鉛を使用した。前記負極活物質とバインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)(重量平均分子量:100,000g/mol、置換度:1.0)、製造例1の導電材分散液、溶媒である水を一括的に撹拌機に投入し、前記負極活物質、バインダー、導電材分散液を同時に混合して負極スラリーを製造した。前記負極活物質、前記バインダー、前記カーボンナノチューブ構造体、前記分散剤の重量比は96.925:3.0:0.03:0.045であった。前記SBRとCMCの重量比は2.0:1.0であった。
【0125】
前記負極スラリーそれぞれを厚さ20μmの負極集電体である銅(Cu)金属薄膜に300mg/25cmのローディング量で塗布、乾燥した。この時に循環される空気の温度は70℃であった。次いで、前記スラリーが塗布、乾燥した負極集電体を圧延(roll press)し、130℃の真空オーブンで8時間乾燥して、負極活物質層を含む負極を製造した。
【0126】
【表1】
【0127】
前記平均長さにおよび平均直径は、SEMにより確認した。具体的には、平均長さ(または平均直径)が大きい上位100個のカーボンナノチューブ構造体(またはマルチウォールカーボンナノチューブ単位体)と下位100個のカーボンナノチューブ構造体(またはマルチウォールカーボンナノチューブ単位体)の平均値で評価した。
【0128】
実験例1:バインダーマイグレーション程度の評価(QBR)
実施例および比較例の負極それぞれに対して、式1のQBR数値を確認した。
【0129】
[式1]
QBR=Bs/Bf
【0130】
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲(上部範囲)で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲(下部範囲)で測定された前記バインダーの個数の平均値である。前記範囲とは、前記負極活物質層の全厚の15%に該当する厚さと長さ300μmの乗算を意味する。なお、前記バインダーの個数は、前記負極活物質層内のバインダーをOsOで染色した後、前記負極活物質層の断面に対して、SEM-EDS Mapping分析(倍率:400倍)を行って、上部範囲および下部範囲それぞれで確認されたOsOのSignalをカウント(counting)して確認した。このような測定を100回行って、その平均値でQBR数値を決定した。
【0131】
実験例2:負極接着力の評価
幅20mm、長さ15cmに打ち抜いた負極を両面テープ(tape)でスライドガラスに付着した後、一定な圧力で前記負極を押圧した。具体的には、90゜ピールテスト(peel test)を行って、gf/20mm単位の負極接着力を確認した。
【0132】
【表2】
【0133】
前記表2を参照すると、実施例1、2の場合、比較例に比べてQBR数値が低いため、バインダーマイグレーション現象の発生が少ないことが分かり、これにより、負極接着力数値が高いことを確認することができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活物質層を含み、
前記負極活物質層は、負極活物質、バインダー、導電材、および分散剤を含み、
前記導電材は、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、
前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは1μm~20μmであり、
下記式1によるQBRが1~1.75である、負極。
[式1]
QBR=Bs/Bf
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、
前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値である。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ構造体は、前記負極活物質層内に0.005重量%~0.2重量%含まれる、請求項1に記載の負極。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ構造体の平均直径は、5nm~100nmである、請求項1に記載の負極。
【請求項4】
前記分散剤は、アミンを含有する高分子分散剤および芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物を含む、請求項1に記載の負極。
【請求項5】
前記アミンを含有する高分子分散剤は、ポリビニルピロリドンを含む、請求項4に記載の負極。
【請求項6】
前記芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物は、タンニン酸を含む、請求項4に記載の負極。
【請求項7】
前記アミンを含有する高分子分散剤および芳香族環を2個以上含むフェノール系化合物の重量比は、5:1~1:1である、請求項4に記載の負極。
【請求項8】
前記分散剤は、前記負極内に前記カーボンナノチューブ構造体100重量部に対して50重量部~200重量部含まれる、請求項1に記載の負極。
【請求項9】
前記導電材は、点型導電材をさらに含む、請求項1に記載の負極。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブ構造体と前記点型導電材の重量比は、1:5~1:70である、請求項9に記載の負極。
【請求項11】
前記負極活物質は、黒鉛を含む、請求項1に記載の負極。
【請求項12】
導電材分散液を準備するステップ(S1)と、前記導電材分散液、負極活物質、バインダー、および分散剤を含む負極スラリーを形成するステップ(S2)とを含み、前記導電材分散液を準備するステップ(S1)は、分散媒、分散剤、およびバンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが含まれた混合液を準備するステップ(S1-1)と、高圧均質機を介して前記混合液にせん断力を加え、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブを分散させて、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体を形成するステップ(S1-2)とを含み、前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは1μm~20μmであり、下記式1によるQBRが1~1.75である、負極の製造方法:
[式1]
QBR=Bs/Bf
前記負極は、前記負極スラリーから形成された負極活物質層を含み、
前記Bsは、前記負極活物質層の上部表面から前記負極活物質層の下部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値であり、前記Bfは、前記負極活物質層の下部表面から前記負極活物質層の上部表面に向かう方向に前記負極活物質層の全厚の15%に該当する距離までの範囲で測定された前記バインダーの個数の平均値である。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の負極を含む、二次電池。
【国際調査報告】