(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ヘッジホッグシグナル伝達経路の活性化のための強力な結合剤
(51)【国際特許分類】
C07K 14/435 20060101AFI20231005BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231005BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231005BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231005BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231005BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231005BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231005BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20231005BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231005BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231005BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20231005BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231005BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20231005BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/16
A61K48/00
A61P43/00 111
A61P1/02
A61P1/04
A61P13/08
A61P19/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519101
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 US2021052192
(87)【国際公開番号】W WO2022067178
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ビーチー,フィリップ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ユンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】マングリック,アーシッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ワン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シュオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
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4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
(57)【要約】
ナノボディの形態で提供され得る、ヘッジホッグ受容体Patched1に特異的なコンフォメーション特異的抗原結合ドメイン(ABD)が提供される。このナノボディは、Patched1「スイッチヘリックス」の代替コンフォメーションを安定させることによって、インビトロ及びインビボでヘッジホッグ経路を強力に活性化する。このABD又はナノボディは、水溶性であり、すなわち、その活性のための脂質修飾を必要とせず、ヘッジホッグ経路活性化及び治療的使用の機械的研究を容易にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
優先的に特定のヒトPTCH1コンフォメーションに結合し、特定のヒトPTCH1コンフォメーションを安定させる抗原結合ドメイン(ABD)を含んでおり、ヘッジホッグシグナル伝達経路を活性化するポリペプチド。
【請求項2】
前記ABDが、単一可変領域配列である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ABDが、ナノボディである、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ABDが、配列番号10のアミノ酸配列、又はそのバリアントを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
配列番号24のアミノ酸配列、QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVA[G/A/S/T/D]IDIGGNTNYADSVKGRFTISRDNAKN[T/N]VYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVP[Y/I]RY[H/R][G/R]YWGQGTQVTVSSを含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項6】
配列番号23のアミノ酸配列、QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVATIDIGGNTNYADSVKGRFTISRDNAKNNVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVPIRYRRYWGQGTQVTVSSを含む、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項7】
ヒトFc配列に連結された、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項8】
標的化部分に連結された、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記標的化部分が、リンカー配列を介して任意選択で連結されたコラーゲン結合配列を含む、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記コラーゲン結合配列が、配列番号26、LRELHLNNNを含む、請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記標的化部分が、リンカー配列を介して任意選択で連結された繊毛局在化配列及び膜貫通ドメインを含む、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記繊毛局在化配列が、配列番号29、LSYRFKQGFRRILLRPSRRIRSQEPGSGPPEKTEEEEDEEEEERREEEERRMQRG QE MNGRLSQIAQAGTSGQQPRPCTGTAKEQQLLPQEATAGDKASTLSHLを含む、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクター、又は請求項13に記載の核酸を含む、細胞。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項14に記載の核酸ベクター、又は請求項13に記載の核酸を含む、医薬製剤。
【請求項17】
単位用量処方中の、請求項16に記載の医薬製剤。
【請求項18】
ヘッジホッグシグナル伝達の欠損を治療する方法であって、
それを必要とする個体に、請求項16又は17に記載の医薬製剤の有効用量を投与することを含む、方法。
【請求項19】
治療が、舌の味覚受容体細胞の再生を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
治療が、大腸炎の治療を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
治療が、前立腺肥大における組織の過剰増殖の低減を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
治療が、糖尿病における骨治癒の加速を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
請求項18~22のいずれか一項に記載の方法で使用するための、キット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヘッジホッグのシグナル伝達は、胚組織のパターン化及び組織の恒常性及び再生の胚後調節において機能する。ヘッジホッグ経路の胎児期後の再生活性は、経路活性化の潜在的な治療上の利点を明確に示唆している。
【0002】
しかしながら、臨床的に試験された経路調節の唯一のモダリティは阻害であり、その開始及び成長が、髄芽細胞腫及び基底細胞がんなどの腫瘍の原発細胞における経路活性化変異に依存する悪性腫瘍に罹患している患者にとって明らかな利益を有する。
【0003】
強力な小分子経路活性化剤の利用可能性にもかかわらず、経路活性化療法に対する臨床的関心の欠如は、そのような全身治療が、間葉の過剰増殖及び複数の臓器における線維症の潜在的な開始又は増悪を引き起こし得るという期待に起因し得る。
【0004】
これらの危険な副作用は、経路活性化を特定の細胞型に制限することによって回避することができる。
【0005】
標的化剤にコンジュゲートされた経路アゴニストは、この目的を果たすが、天然のヘッジホッグタンパク質は、細胞型特異性について操作することが困難である。成熟ヘッジホッグタンパク質は、そのカルボキシ末端上のコレステリル部分、及びそのアミノ末端上のパルミトイル付加物を含む2つの脂質修飾を含有し、これはシグナル伝達活性にとって特に重要である。
【0006】
シグナル伝達における脂質修飾の要件は、組織標的化の大規模な産生、貯蔵、及び更なる誘導体化に課題をもたらす。標的化剤に容易にコンジュゲートされ得る他の合成又は遺伝子コードされたペプチドは、現在欠如している。
【発明の概要】
【0007】
ヘッジホッグシグナル伝達経路を活性化する、優先的に特定のヒトPTCH1コンフォメーションに結合し、PTCH1コンフォメーションを安定させる抗原結合ドメイン(ABD)に関する組成物及び方法が提供される。ABDは、PTCH1に特異的に結合し、PTCH1を安定させる1つ以上の可変領域ポリペプチドから構成される。一実施形態では、ABDは、配列番号24のポリペプチド、例えば、配列番号18~配列番号23を含むが、これらに限定されないナノボディとして提供される。配列番号23のナノボディは、特別な目的の対象である。他の実施形態では、この配列は、配列番号1~17のうちのいずれかに記載のポリペプチドを含む。
【0008】
ABDは、様々なエフェクターポリペプチドに連結、例えば、コンジュゲート又は融合されてもよく、これには、ナノボディ、抗体、並びにその断片及び誘導体が含まれるが、これらに限定されない。実施形態は、ABDをコードするポリヌクレオチド、ABDをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、ABDを発現するように操作された細胞、及びABDを発現するように操作された細胞を含む医薬製剤を含む。ABDは、組織又は細胞型特異性を有する抗体又は他の薬剤への融合による標的化のために操作することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、ABDは、任意のアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAなどのFc配列、例えばヒト免疫グロブリン定常領域、又は単一可変領域ドメイン、例えばナノボディなどを含む、例えばscFvとして、免疫グロブリンエフェクター配列に連結された、例えばコンジュゲート又は融合されたポリペプチドとして提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるナノボディは、例えば、標的化部分にコンジュゲート又は融合される。標的化部分は、リンカー配列、例えば、ポリペプチドリンカー配列を介してナノボディに連結され得る。この部分は、ナノボディを、特定の臓器、組織、組織コンパートメント、及び目的の細胞型に標的化する。
【0011】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、コラーゲン結合ペプチドを含む。多くのコラーゲン結合配列が、当該技術分野において知られており、この目的のための使用を見出す。いくつかの実施形態では、コラーゲンは、コラーゲンIである。いくつかの実施形態では、標的化部分は、配列番号25を含む。この配列は、ナノボディを間葉系組織に局在させることが示されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、ナノボディを一次繊毛の膜に固定する細胞質尾部を含み、標的化部分は、膜貫通ドメインに連結され得る。繊毛は、スムースンド(Smoothened)を抑制する際の局在化及びパッチド(Patched)作用の主要な部位であるため、この標的化により、ナノボディはHh経路の特に強力な活性化因子となる。膜繋ぎ止め(tethering)は更に、(一般的に拡散可能である代わりに)それが発現される細胞にその作用を制限する。これは、ナノボディの発現のために特異的に標的化され得る任意の細胞型、例えば、特定の細胞型への傾向を有するウイルス、又は細胞型特異的プロモーターの制御下での発現によって制限される経路活性化を可能にする。
【0013】
いくつかの実施形態では、ABDは、提供される配列のCDRのうちの1つ以上、すなわち配列番号1~23のアミノ酸配列バリアントを含み、配列番号10及びそのバリアント、すなわち配列番号18~23を含むが、これらに限定されない。バリアントは、CDR残基の中又は隣接する1つ以上のアミノ酸挿入、及び/又はCDR残基の中又は隣接する欠失、及び/又はCDR残基の置換(置換は、そのようなバリアントを生成するための好ましいタイプのアミノ酸改変である)を含み得る。そのようなバリアントは、通常、結合親和性又はより高い親和性、並びに配列番号23のエピトープ特異性を有する。特に、配列番号24に記載されている変異についての残基は、ABDの親和性を増加させるために有用であることが示されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、治療方法が提供される。経路活性化は、化学療法患者において失われるか又は減少することが多い舌の味覚受容体細胞の再生、大腸炎などの疾患の保護又は回復、前立腺肥大における組織の過剰増殖の低減、糖尿病における骨治癒の加速などにおいて治療上の利点を与える。方法は、本明細書に開示されるABDポリペプチド、例えば配列番号23を含むナノボディを、必要とするレシピエントに導入することを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるABDを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターが提供され、例えば、配列番号23を含むナノボディをコードし、コード配列は、所望の細胞において活性なプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的又は誘導性であってもよい。様々なベクターは、当該技術分野において既知であり、例えば、ウイルスベクター、プラスミドベクター、標的細胞ゲノムに組み込まれることができるか、又はエピソーム的に維持されることができるミニサークルベクターなど、この目的のために使用することができる。ベクター及び/又はポリペプチドは、キットにて提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むと最もよく理解される。慣例に従って、図面の様々な特徴が縮尺通りでないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小されている。図面には、以下の図が含まれる。
【0017】
【
図1-1】コンフォメーション選択的ナノボディの選択を示す。(A)異なるRNDトランスポーターからの膜貫通4(上から下へ配列番号31~34)及び10(上から下へ配列番号35~38)のアライメントである。荷電残基はアスタリスクで示されている。(B)ナノボディ選択のための工程のフローチャートである。酵母ライブラリを、最初に、PTCH1-NNQバリアントに結合するクローンについてのMACSで濃縮し、次いで、NNQバリアントを好む集団を、異なる蛍光標識を有するPTCH1-NNQ及びPTCH1-WTを使用して、FACS中で選択した。(C)PTCH1-NNQ(FITC標識)及びPTCH1-WT(Alexa 647標識)で染色された酵母細胞をFACSプロットに示す。右下の象限は、WTバリアントよりもNNQバリアントを好む細胞である。FITCフルオロフォアよりもAlexa 647フルオロフォアへの非特異的な結合により、二重陽性集団は左上象限に向かってシフトする。(D)E.coliで発現し、精製したナノボディを、Gli依存性ルシフェラーゼレポーターを用いて、ヘッジホッグ応答性3T3細胞上で試験した。経路アンタゴニストであるGDC-0449は、ナノボディ17、20及び23がこのアッセイにおいて弱い活性化を示すことを示す対照である。(E)クローン17、20及び23の初期ナノボディ配列を変異誘発し、酵母ディスプレイにおいて選択して、より高い親和性クローン(親和性成熟)を得た。2ラウンドの親和性成熟後、TI23と名付けられた新しいナノボディバリアントは、天然のヘッジホッグリガンドのそれに近い、3T3細胞中で8.6nMのEC50を示す。
【
図1-2】コンフォメーション選択的ナノボディの選択を示す。(F)2ラウンドの親和性成熟から得られたTI23クローンは、PTCH1-NNQバリアントへの結合の好みを示した。Nb23、T23又はTI23を発現する酵母細胞を、1:1のPTCH1-WTタグ付きタンパク質Cと1D4のPTCH1-NNQタグ付きタンパク質との混合物とともにインキュベートし、次いで、タンパク質Cタグ又は1D4タグに対する抗体で染色した。これらのビーズは、カッパ鎖の定常領域に結合し、染色に使用される異なる抗体を区別しないため、OneCompビーズを非選択的結合の対照として使用した。(G)ヒト間葉系細胞株HEPMにおいて、TI23は、qPCRによってアッセイするように、ヘッジホッグ応答を活性化し、経路標的、GLI1(EC
50=16.0nM)及びPTCH1(EC
50=18.5nM)の転写を誘導した。(H)NIH-3T3細胞において、ShhNp及びTI23は、Gli-ルシフェラーゼアッセイで滴定される。ShhNp及びTI23のEC
50は、それぞれ1.4nM及び6.9nMであることが決定される。誤差バーは標準偏差を表し、全てのデータポイントは3重の平均値を表す。
【
図2】マウスPTCH1::TI23複合体構造の概要を示す。(A)PTCH1::TI23複合体のクライオ(cryo-)EMマップは、タンパク質の明確な特徴を示す。PTCH1、バイオレット;TI23、黄色である。(B)Aと同様に着色したPTCH1及びTI23を有する複合体のタンパク質モデルを示す。マップに見られる脂質様密度は、部位I~IVにおいてモデル化された。(C)TI23の二次構造要素及び相対位置及び脂質様密度を示すPTCH1の概略図である。コンフォメーション変化に関与する主要なヘリックスは、「スイッチヘリックス」として強調表示されている。(D)PTCH1上のTI23の結合部位は、SHH(ティール(teal))の結合部位と重なり合う。バイオレットで強調表示されているスイッチヘリックスは、TI23のCDR1及びCDR3によって挟まれている。(E、F)TI23 CDRとPTCH1との間の相互作用を詳細に示す。CDR1はオレンジ色、CDR3は緑色、スイッチヘリックスはバイオレットで着色されている。CDR1からの疎水性相互作用は、eの膜の上から見られるが、CDR3からの水素結合相互作用は、FのようにPTCH1タンパク質のECD2側から見られる。
【
図3】TI23によって誘導されるコンフォメーション変化を示す。(A)マウスPTCH1単独(PDB ID:6mg8)又はTI23と複合体中の構造のオーバーレイは、細胞外ドメインにおける2つの主要な変化を示す。TM7とTM8との間の細胞外ドメイン2は、膜貫通ドメインへのその接続で約5度回転する。細胞外ドメイン1の短いヘリックス(スイッチヘリックス)は、膜に向かって約32度回転する。PTCH1単独及び複合体中のコンフォメーションは、それぞれポーズ1及び2と称される。(B)他の公表されたPTCH1構造も、また、ポーズ1及び2カテゴリに分類される。他のPTCH1構造のこのオーバーレイでは、ポーズ1様構造が赤の色合いで示され、ポーズ2様構造が青の色合いで示される。(C)スイッチヘリックスの回転は、細胞外ドメイン内の空洞の形状を変化させる。PTCH1構造では、点線(…)によって示されるように、導管は末端にキャップされるが、TI23構造では、導管の末端は外側に対して広く開放され、下部は破線(---)によって示されるようにスロットルされる。(D)導管に沿った異なる点における半径がここにプロットされ、変更された部分が2つの垂直線でマークされる。TI23結合は、導管の上端を開くが、脂質部位Iの下部を閉じる。(E)部位Iにおける脂質様密度の位置は、TI23結合とともに変化する。スイッチヘリックスの回転は、結合基質を外側に押し出しながら、侵入経路を閉じている。(F)PTCH1でトランスフェクションしたPtch1
-/-MEFでは、精製TI23、又はヘッジホッグリガンド(ShhN)を添加した直後に、形質膜内葉(IPM)コレステロール活性が増加した。ヘッジホッグリガンドは、IPMコレステロール活性のわずかに速い増加を引き起こし、約6分後に停滞した。これは、TI23が、Gli依存性ルシフェラーゼアッセイにおける飽和濃度で約75%の最大経路活性を誘導するため、これら2つのリガンドの有効性の差を反映し得る。対照条件において、コレステロール活性は、アッセイの期間にわたって変化しなかった。終点(t=10)では、TI23又はShhN群におけるコレステロール活性は、緩衝液処置群よりも有意に高い(多重比較のための1-Za/ANOVA ZLWK DXQQeWs補正、p<0.0001)。誤差バーは標準偏差を表す。ShhN又はTI23の場合、n=10であり、バッファ制御のみの場合、n=5である。
【
図4-1】皮膚におけるTI23活性の検証を示す。(A)マウスにAAV-DJを注射するか、又は組織学的分析のために皮膚を採取する前に、小分子SAG21kで2週間処理した。(Hprt1に対する)Gli1発現は、TI23、ShhN又は小分子SAG21kを受けた動物の背側皮膚において活性化され、TI23が皮膚内のヘッジホッグ経路を活性化したことを示唆した。平均値及び平均値の標準誤差をプロットした。(B)背側皮膚の組織学は、対照群の毛包が静止休止期にあることを示唆しているが、毛包は成長し、TI23、ShhN、又はSAG21k処置で脂肪細胞層に侵入し、成長期の誘導を示す。(C)ウイルス注射の2週間後に観察される毛の再生は、対照群と比較してTI23又はShhN処置動物ではるかに加速され、これらの毛包が活性な成長期にあることを示唆している。
【
図4-2】皮膚におけるTI23活性の検証を示す。(D)背面舌表面の概略図である。生理学的条件下での活動的なヘッジホッグ経路応答を有する細胞は、主に、RNAScopeを用いたインサイツハイブリダイゼーションによって示されるように、茸状乳頭(E)TI23誘導Gli1発現内の茸状及び糸状乳頭に位置する舌上皮細胞内に位置する。対照ナノボディ(Nb4)、TI23又はShhNをコードするAAV-DJを受けた動物を、注射の2週間後に屠殺した。経路アゴニストTI23、ShhN、又は小分子SAG21kでは、挿入パネルに示すように、味覚受容体細胞(Ck8
+、赤色)を含有する茸状乳頭及び糸状乳頭の両方で、Gli1の発現が増加した。各群について、n=4である。(F)Gli1の平均蛍光強度は、茸状及び糸状乳頭の領域間で比較される。Tukeyの多重比較を用いた一元配置分散分析(ANOVA)は、TI23、ShhN、又は小分子SAG21K、GLI1の発現が、対照条件と比較してレベルを上昇させたことを示唆している。*、p<0.05、**、p<0.005、***;p<0.0005、****;p<0.0001である。茸状領域については、それぞれNb4、TI23、ShhN、SAG21kについて、n=5、3、4、4である。糸状領域については、それぞれNb4、TI23、ShhN、SAG21kについて、n=5、4、3、5である。
【
図5-1】ナノボディの選択を示す。(A)最初のクローンを発現する酵母細胞を、FACS中に使用した抗体で染色して、ナノボディがPTCH1タンパク質に直接結合することを確実にした。(B)に要約されるように、クローン4、9、及び15は、抗体への強い結合を示し、したがって、選択中に偽陽性クローンである。次いで、他の全てのクローンを精製し、細菌から発現又は精製することができなかったクローン13を除いて、細胞上での活性について試験した。(C)親和性成熟の第1ラウンドのフローチャートである。クローン17、20、及び23からのナノボディ配列を、エラーを起こしやすいPCRで変異誘発し、酵母に形質転換した。MACSでPTCH1結合クローンを濃縮した後、酵母細胞をFACS中で選択する。最終FACS工程において、細胞をPTCH1とともに最初にインキュベートして、ナノボディが結合することを可能にし、洗浄後、細胞を親ナノボディタンパク質とともにインキュベートして、細胞表面からPTCH1と競合させた。競合追跡の前及び後のFACSプロットを(D)に示す。PTCH1への結合を保持する細胞をFACSによって選択した。
【
図5-2】ナノボディの選択を示す。(E)親和性成熟の第2ラウンドのフローチャートである。この配列をワンポット変異誘発で変異誘発し、酵母に形質転換した。ナノボディを発現する酵母細胞を、同様の競合追跡を用いてFACS中で選択した。競合の前後のFACSプロットを(F)に示した。(G)ラウンド2親和性成熟ライブラリのアミノ酸配列をMiSeqで決定し、ここにプロットする。選択は、T77N及びY102Iバリアントに対して濃縮された。(H)Nb23、T23、又はTI23を発現する酵母細胞は、PTCH1-NNQよりもPTCH1-WTに優先的に結合する。全ての抗体に等しくよく結合するOneCompビーズを対照として使用した。
【
図6-1】クライオEMデータ検証を示す。(A)タンパク質粒子は、生のクライオEM顕微鏡写真ではっきりと見える。(B)コントラスト伝達関数(CTF)のパラメータは、このデータセットに対して適切に適合されている。(C)2D分類は、PTCH1-TI23複合体の明確な見解を明らかにした。(D)クライオEMデータ処理は、こちらのフローチャートに示す。cisTEMで行った最後の局所的詳細化工程を除いて、全てのステップをcryoSPARCで実施した。
【
図6-2】クライオEMデータ検証を示す。(E)粒子の配向は、ここの球形ヒストグラムに示す。ほとんどの粒子は、タンパク質の赤道に沿って配向される。(F)最終的詳細化のFSC曲線をここにプロットした。最終マップの分解度は、0.143ゴールドスタンダードのFSCによると3.4Åと推定されている。(G)最終的な再構成の局所解像度は、cryoSPARCで推定され、ここで3Dモデルで示された。ナノボディの一部を除いて、ほとんどの領域は十分に解決された。
【
図7】タンパク質モデルの特徴を示す。(A)タンパク質モデルは、クライオEMによく適合する。高品質のマップは、アルファヘリカル構造だけでなく、細胞外ドメイン内のベータ鎖の確実なモデリングを可能にする。主要な膜貫通ヘリックス4及び10における透明な側鎖密度の存在は、主要な荷電トライアド(triad)の相互作用のモデリングを可能にする。(B)細胞外ドメインに存在する大きな密度は、GDNによく適合するため、結合したGDN分子である可能性が高い。(C)モデルは、モデルマップFSC曲線によって示されるように、クライオEMマップによく適合する。(D)TM4とTM10との間の相互作用は、TI23結合マウスPTCH1構造(左)と、SHH結合ヒトPTCH1構造(右、H1099、E1095、及びD513は、マウス残基H1085、E1081、及びD499に対応する)との間で異なる。
【
図8】AcrBとPTCH1構造変化の比較を示す。(A)2つの異なる部位(三角形で示され、1つの下部部位は膜面に近く、1つの上部部位は細胞外ドメインの上部出口に近い)は、AcrBの3つの異なる構造で交互に開閉する(PDB ID:2gif、A鎖に示されるL状態、B鎖に示されるT状態、C鎖に示されるO状態)。(B)膜の遠位にある単一の部位は、既知のPTCH1構造におけるコンフォメーションを変化させる。PTCH1:TI23及びPTCH1単独(6mg8)を例としてここに示す。
【
図9】(A)TI23コラーゲン1(配列番号26)の構築設計を示し、SP:シグナルペプチドであり、(B)上皮及び間葉区画が示された背舌の図表を示す。(C及びD)Hprtハウスキーピング遺伝子に正規化されたGli1の相対発現のqPCR結果を示す。AAVをAAV-DJに包装し、7~8週齢のFVBマウスに軌道後注射によって送達した。なお、コラーゲン1標的配列がないTI23は、Ti23Col1及びNB4よりも11.7倍及び13.5倍高い力価で注射した。ウイルス力価は、マウス1匹当たり注射されたウイルスゲノム(vg)として示される。NB4コラーゲン1の場合は7.1e+010vg/マウス(陰性対照)、TI23コラーゲン1の場合は8.2e+010vg/マウス、TI23の場合は9.57e+011vg/マウスである。
【
図10】上部は、繊毛膜繋ぎ止めTI23ナノボディの設計を示す。シグナルペプチド(SP)は、分泌経路標的化のためにTI23ナノボディのN末端に融合され、CD8(CD8TM)の膜貫通ドメインは、ナノボディの細胞表面ディスプレイに使用される。繊毛標的化は、Sstr3からの繊毛局在化配列をCD8膜貫通ドメインのC末端に融合することによって達成される。下部は、繊毛膜繋ぎ止めTI23の局在化及び活性の検証を示す。繊毛膜繋ぎ止めTI23をコードするプラスミドは、経路が活性化されたときにGliプロモーター下でH2B-シトリンレポーターを発現するヘッジホッグ経路活性レポーター細胞株にトランスフェクトした。mCherryシグナルは、TI23の繊毛局在化を示し、これは、繊毛マーカーアセチル化チューブリンとの共局在化によって証明される。シトリンレポーターは、TI23(矢印)を発現する細胞でのみ発現するが、隣接する非トランスフェクト細胞(矢印)では発現せず、繊毛膜繋ぎ止めTI23による経路活性化が細胞自律的であることを実証する。スケールバー、20μmである。
【
図11】NIH3T3細胞における二重ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用した、繊毛膜繋ぎ止めTI23よる経路活性化の検証を示す。構築物1~4を、Gli-Firefly/SV40-Renillaルシフェラーゼ二重レポータープラスミドと別々に共トランスフェクトした。ホタル/Renillaルシフェラーゼの相対比は、ヘッジホッグ経路活性化を反映する。繊毛膜繋ぎ止めTI23(構築物2)は、陰性対照GFPナノボディ(構築物1)と比較して堅牢な活性化を示す。SAG21kは、小分子経路アゴニストである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施形態について更に記載する前に、本開示は、記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって無論変動し得ることが理解されるものである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみについて記載することを目的とし、本開示の範囲が、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを意図するものではないことが理解されるものである。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。また、本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料は、本開示の類似の実践又は実施形態の試験に使用することができる。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「化合物」への参照は、単一の化合物だけでなく、2つ以上の化合物の組み合わせも含み、「置換基」への参照は、単一の置換基並びに2つ以上の置換基などを含む。
【0021】
本発明の説明及び特許請求の範囲において、特定の用語は、以下に記載される定義に従って使用される。本明細書で提供される定義は、互いに排他的であることを意図するものではないことが理解される。したがって、いくつかの化学部分は、2つ以上の用語の定義内に含まれ得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「など」、又は「含む」という語句は、より一般的な主題を更に明確にする例を導入することを意味する。これらの例は、本開示を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる様式においても限定を意味するものではない。
【0023】
一般に、タンパク質合成、組換え細胞培養及びタンパク質単離、並びに当該技術分野内の組換えDNA技術の従来の方法が、本発明で採用される。このような技術は、文献で完全に説明されており、例えば、Maniatis,Fritsch & Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、Sambrook,Russell and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2001)、Harlow,Lane and Harlow,Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol No.I,Cold Spring Harbor Laboratory(1998)、及びHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory;(1988)を参照されたい。
【0024】
「含む」とは、列挙された要素が組成物/方法/キットにおいて必要であるが、他の要素が、特許請求の範囲内で組成物/方法/キットなどを形成するために含まれ得ることを意味する。
【0025】
「から本質的になる」とは、主題の発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない特定の材料又は工程に記載される組成物又は方法の範囲の限定を意味する。
【0026】
「からなる」とは、特許請求の範囲に特定されていない任意の要素、工程、又は成分の組成物、方法、又はキットからの除外を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ナノボディ」は、抗原に選択的に結合することができる単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である、sdAbと称され得る単一ドメイン抗体を指す。ナノボディは、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを含み得る。具体的には、本開示のナノボディは、重鎖可変ドメインを含む。ナノボディは、ラクダ科(VHH断片)又は軟骨魚(VNAR断片)に由来し得る。代替的には、ナノボディは、IgGからモノマーに二量体可変ドメインを分割することに由来し得る。
【0028】
ナノボディは、主に抗原認識及び結合に関与する可変領域と、フレームワーク領域とを含む。「相補性決定領域」(CDR)とも呼ばれる「可変領域」は、抗原認識に基づいてサイズ及び配列が大きく異なるループを含む。CDRは、一般に、ナノボディの結合特異性に関与する。CDRとの違いは、フレームワーク領域である。フレームワーク領域は比較的保存されており、全体的なタンパク質構造を支援する。フレームワーク領域は、βシート及びループ構造からなる大きな溶媒曝露表面を含み得る。当該技術分野において既知であるように、シグナル配列を含むことができ、これは次いで、成熟ナノボディから切断される。
【0029】
本開示は、パッチドに結合し、ヘッジホッグシグナル伝達経路を活性化するナノボディを提供する。ナノボディは、単一可変領域抗原結合ドメイン(ABD)を含む。本明細書で使用される場合、「ABD」という用語は、所望の抗原に特異的に結合する可変領域ポリペプチドを指す。ABDは、本発明において、単一のポリペプチドとして、完全な抗原認識部位及び結合部位を含有する最小断片である。この構造においては、可変ドメインのCDRは、ドメインの表面上の抗原結合部位を定義する。ナノボディの例としては、配列番号10、及び配列番号18~23、特に配列番号23を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載されるものが挙げられる。
【0030】
抗原に対する親和性の決定は、当該技術分野で既知の方法、例えば、ビアコア測定値などを使用して行うことができる。ナノボディファミリーのメンバーは、約10-7~約10-10、約10-7~約10-9、約10-7~約10-8、約10-8~約10-11、約10-8~約10-10、約10-8~約10-9、約10-9~約10-11、約10-9~約10-10、又はこれらの範囲内の任意の値が含まれるが、これらに限定されない約10-7~約10-11のKdを有する同族抗原に対する親和性を有し得る。親和性選択は、例えば、インビトロ又は前臨床モデルにおける活性の生物学的評価、及び潜在的な毒性の評価によって確認され得る。
【0031】
目的の抗原に「結合する」ナノボディ又はABDは、ナノボディ又は結合分子が、抗原を標的とする際の診断剤及び/又は治療剤として有用であり、他のタンパク質と有意に交差反応しないように、十分な親和性で抗原に結合するものである。このような実施形態では、ナノボディ又は他の結合分子の非標的化抗原への結合の程度は、通常、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析又は放射免疫沈降(RIA)によって決定されるように、10%以下である。
【0032】
「機能的」又は「生物学的に活性な」ナノボディ又は抗原結合分子は、構造的、調節的、生化学的又は生物物理的事象において、その天然活性のうちの1つ以上を発揮することができるものである。例えば、機能的ナノボディ又は他の結合分子は、抗原に特異的に結合する能力を有し得、結合は、次に、シグナル伝達又は酵素活性などの細胞又は分子事象を誘発又は変更し得る。
【0033】
「可変」という用語は、可変ドメインの特定の部分で、配列が大きく異なり、その特定の抗原に対する各特定の可変ドメインの結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、可変ドメイン全体に均等に分布しているわけではない。それは超可変領域に集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与するアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」若しくは「CDR」からのアミノ酸残基、及び/又は「超可変ループ」からのそれらの残基を含み得る。「フレームワーク領域」又は「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0035】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、それらが望ましい生物学的活性を示す限り、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノマー、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、重鎖のみの抗体、3つの鎖抗体、単鎖Fv、ナノボディなどを包含し、また、抗体断片を含む(Miller et al(2003)Jour.of Immunology 170:4854-4861)。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種に由来し得る。抗体という用語は、全長の重鎖、全長の軽鎖、インタクトな免疫グロブリン分子、又はこれらのポリペプチドのいずれかの免疫学的に活性な部分、すなわち、目的の標的の抗原又はその一部に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含むポリペプチドを指し得る。免疫グロブリンは、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)、分類(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又は免疫グロブリン分子のサブ分類(低減又は増強されたエフェクター細胞活性を提供する、改変されたFc部分を有する操作されたサブ分類を含む)であり得る。免疫グロブリンは、任意の種に由来し得る。一態様では、免疫グロブリンは、主にヒト由来である。
【0036】
特に反対に示されない限り、本明細書に記載され、特許請求される「コンジュゲート」という用語は、ポリマー分子、標識、細胞傷害性薬剤、標的部分などの1つ以上の追加の分子への1つ以上のナノボディ断片の共有結合によって形成される不均一分子として定義される。例えば、ポリマーは、水溶性であってもよく、すなわち、血液などの生理学的流体に可溶性であり、不均一分子は、任意の構造化凝集体を含まない。目的のコンジュゲートは、PEGである。本明細書で使用される場合、「標識」という用語は、ナノボディに直接的又は間接的にコンジュゲートされる検出可能な化合物又は組成物を指す。標識は、それ自体で検出可能であり得る(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、又は酵素標識の場合、検出可能である基質化合物又は組成物の化学変化を触媒し得る。
【0037】
リンカー。タンパク質のドメインは、リンカー、例えば、ポリペプチドリンカー、又は非ペプチドリンカーなどによって分離され得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、剛性リンカーであり、他の実施形態では、リンカーは、可撓性リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカー部分は、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、2~100個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99個であるが、100個以下のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、5~75、5~50、5~25、5~20、5~15、5~10、又は5~9個のアミノ酸長である。例示的なリンカーとしては、Gly-Gly、Gly-Ala-Gly、Gly-Pro-Ala、Gly-Gly-Gly-Serなどの少なくとも2つのアミノ酸残基を有する直鎖ペプチドが挙げられる。好適な直鎖ペプチドとしては、ポリグリシン、ポリセリン、ポリプロリン、ポリアラニン、並びにアラニル及び/又はセリニル及び/又はプロリニル及び/又はグリシルアミノ酸残基からなるオリゴペプチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、Gly9、Glu9、Ser9、Gly5-Cys-Pro2-Cys、(Gly4-Ser)3、Ser-Cys-Val-Pro-Leu-Met-Arg-Cys-Cys-Asn、Pro-Ser-Cys-Val-Pro-Leu-Met-Arg-Cys-Gly-Gly-Cys-Cys-Asn、Gly-Asp-Leu-Ile-Tyr-Arg-Asn-Gln-Lys、及びGly9-Pro-Ser-Cys-Val-Pro-Leu-Met-Arg-Cys-Gly-Gly-Cys-Cys-Asnからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列GSTSGSGKSSEGKG、又は(GGGGS)nを含み、式中、nは、1、2、3、4、5などであるが、多くのそのようなリンカーは、当該技術分野で知られ、使用され、この目的に役立ち得る。
【0038】
結合ドメインの連結に使用される化学基としては、当該技術分野で既知のように、カルバミン酸、アミド(アミン+カルボン酸)、エステル(アルコール+カルボン酸)、チオエーテル(ハロアルカン+スルフヒドリル、マレイミド+スルフヒドリル)、シフ塩基(アミン+アルデヒド)、尿素(アミン+イソシアネート)、チオ尿素(アミン+イソチオシアネート)、スルホンアミド(アミン+塩化スルホニル)、ジスルフィド、脂質などが挙げられる。
【0039】
膜貫通ドメイン。本開示のタンパク質は、表面ドメインを細胞内細胞質ドメインと結合する膜貫通ドメインを含み得る。膜貫通ドメインは、真核細胞膜内で熱力学的に安定な任意のポリペプチド配列から構成される。膜貫通スパニングドメインは、天然に生じる膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインに由来し得るか、又は合成され得る。合成膜貫通ドメインの設計においては、アルファヘリカル構造に有利なアミノ酸が好ましい。膜貫通ドメインは、アルファヘリカル二次構造を有する形成に有利な約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、22、23、24、又はそれ以上のアミノ酸から構成され得る。アルファヘリカルコンフォメーションに有利なアミノ酸は、当該技術分野において周知である。例えば、Pace,et al.(1998)Biophysical Journal 75:422-427を参照されたい。アルファヘリカルコンフォメーションで特に有利なアミノ酸としては、メチオニン、アラニン、ロイシン、グルタメート、及びリジンが挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、限定されないが、配列番号28を含むCD3ζ、CD4、CD8、CD28などのI型膜貫通タンパク質由来の膜貫通ドメインに由来し得る。
【0040】
本明細書で使用される「標的化部分」は、治療の意図された標的に結合することができる、すなわち、「の結合パートナー」に結合することができ、目的の細胞又は組織に局在することができる任意の部分などである。例えば、標的化部分は、標的が細胞受容体である場合には、受容体リガンドであり得る。いくつかの実施形態では、標的化部分は、抗原結合ドメインであり、他の実施形態では、より短いポリペプチド配列が好ましく、標的化部分の他の例は、当該技術分野において知られており、アプタマー、アビマー、受容体結合リガンド、核酸、ビオチン-アビジン結合対、結合ペプチド又はタンパク質などのように、使用され得る。いくつかの実施形態では、標的化部分は、リンカーペプチドを介して本明細書に開示されるナノボディに連結される。
【0041】
標的化部分は、コラーゲン結合ペプチド、RGDモチーフを有するインテグリン結合ペプチド、繊毛局在化配列(配列番号29)などを含むがこれらに限定されない、目的の細胞表面分子に結合するペプチドであり得る。コラーゲン結合ペプチドとしては、例えば、(配列番号26)、CQDSETRTFY(配列番号30)などのフィブロネクチンコラーゲン結合配列、又は当該技術分野で既知の他のものが挙げられ、例えば、参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Farndale(2019)Essays Biochem 63(3):337-348を参照されたい。いくつかの実施形態では、標的化部分は、それ自体が、所望の細胞型又は細胞外区画に結合するナノボディ又は一本鎖抗体である。
【0042】
2つの配列間の「相同性」は、配列同一性によって決定される。互いに比較される2つの配列が長さが異なる場合、配列同一性は、好ましくは、より長い配列のヌクレオチド残基と同一である、より短い配列のヌクレオチド残基のパーセンテージに関する。配列同一性は、従来、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive Madison,Wis.53711)などのコンピュータプログラムを使用して決定することができる。Bestfitは、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2(1981),482-489の局所ホモロジーアルゴリズムを利用して、2つの配列間で最も高い配列同一性を有する断片を見つける。特定の配列が例えば本発明の参照配列と95%の同一性を有するか否かを決定するために、Bestfit又は別の配列アラインメントプログラムを使用する場合、パラメータは、好ましくは、同一性のパーセンテージが参照配列の全長にわたって計算され、参照配列中のヌクレオチドの総数の最大5%の相同性ギャップが許可されるように調整される。Bestfitを使用する場合、いわゆるオプションパラメータは、プリセット(「デフォルト」)値のままであることが好ましい。本発明の所与の配列と上記の配列との比較において現れる偏差は、例えば、付加、欠失、置換、挿入、又は組換えによって引き起こされ得る。このような配列比較は、好ましくは、プログラム「fasta20u66」(version 2.0u66,September 1998 by William R. Pearson and the University of Virginia、W.R.Pearson (1990),Methods in Enzymology 183,63-98、追加された実施例及びhttp://workbench.sdsc.edu/も参照のこと)を用いて実施することもできる。この目的のために、「デフォルト」パラメータ設定が使用され得る。
【0043】
「バリアント」は、天然配列ポリペプチドとある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。通常、アミノ酸配列バリアントは、少なくとも約80%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも約90%、少なくとも95%、少なくとも99%の相同性を配列によって有し、例えば、参照アミノ酸配列内のある特定の位置で1、2、3、4、又はそれ以上のアミノ酸置換、付加、又は欠失を有する。
【0044】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すことが意図されている。1つのタイプのベクターは、「プラスミド」であり、これは、追加のDNA断片がライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNA断片は、ウイルスゲノム内にライゲーションされてもよい。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると、宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。更に、特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を誘導することができる。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「組換えベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術における有用性の発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、互換的に使用され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」(又は「組換え宿主細胞」)という用語は、組換えプラスミド又はベクターなどの外因性ポリヌクレオチドの導入によって遺伝的に改変された、又は遺伝的に改変され得る細胞を指すことが意図される。そのような用語は、本発明の特定の細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されていることを理解されたい。ある特定の修飾は、変異又は環境の影響のいずれかのために後続の世代で発生し得るため、このような子孫は、実際には、親細胞と同一ではなくてもよいが、依然として、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0046】
「結合親和性」は、概して、分子(例えば、ナノボディ又は他の結合分子)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば、抗原又は受容体)との間の非共有結合性相互作用の合計の強さを指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定され得る。低親和性抗体は、抗原(又は受容体)に弱く結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は、抗原(又は受容体)により強く結合し、より長く結合したままである。
【0047】
一実施形態では、親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)、例えば、ビアコアシステムによって使用されるものによって決定される。別の分子に対する1つの分子の親和性は、相互作用の結合動態を、例えば、25℃で測定することによって決定される。
【0048】
「活性剤」、「アンタゴニスト」、「阻害剤」、「薬物」、及び「薬理学的に活性な薬剤」という用語は、生物(ヒト又は動物)に投与されると、局所及び/又は全身作用によって所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘導する化学物質又は化合物を指すために本明細書で互換的に使用される。
【0049】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」などの用語は、所望される薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に又は部分的に予防するという点では予防的であり得、かつ/あるいは疾患及び/若しくは疾患に起因する有害作用に対する部分的又は完全な治癒という点では治療的であり得る。「治療」は、本明細書で使用される場合、哺乳類、特にヒトにおける疾患の任意の治療をカバーし、(a)疾患又は疾患の症状が疾患の素因であり得るが、それを有するとまだ診断されていない対象(例えば、原発性疾患に関連付けられ得るか又はそれによって引き起こされ得る疾患を含む)において発生することを防止することと、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発達を阻止することと、(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすこととを含む。
【0050】
「個体」、「宿主」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、限定されないが、サル及びヒトを含むヒト及び非ヒト霊長類、ラット及びマウスを含むげっ歯類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、鳥類などを含む動物を指す。「哺乳類」は、任意の哺乳類種の1つ又は複数のメンバーを意味し、例として、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、げっ歯類など、並びに霊長類、例えば非ヒト霊長類及びヒトを含む。非ヒト動物モデル、例えば、哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、ネズミ科、ウサギ目などが、実験的調査に使用され得る。
【0051】
本明細書で使用される場合、「決定する」、「測定する」、「評価する」、及び「アッセイする」という用語は、互換的に使用され、定量的及び定性的決定の両方を含む。
【0052】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、コードされた及びコードされていないアミノ酸、化学的若しくは生化学的に修飾された、又は誘導されたアミノ酸、並びに修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことができる。この用語は、異種のアミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有する、又は有さない、異種及び天然のリーダー配列を有する融合、免疫学的にタグ付けされたタンパク質、検出可能な融合パートナー、例えば、蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを含む、融合パートナーを有する融合タンパク質などを含むが、これらに限定されない、融合タンパク質を含む。
【0053】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、又はそのアナログのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得、既知又は未知の任意の機能を実行し得る。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転写RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、制御領域、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマーが挙げられる。核酸分子は、直鎖状であっても環状であってもよい。
【0054】
「治療有効量」又は「有効量」は、疾患、状態、又は障害を治療するために哺乳類又は他の対象に投与されると、疾患、状態、又は障害に対するそのような治療に効果を与えるために十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重などに応じて変動する。
【0055】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒト及び動物対象のための単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位が、薬学的に許容される希釈剤、担体、又はビヒクルと関連して所望の効果を生じるために十分な量で計算された所定の量の化合物を含有する。単位剤形の仕様は、使用される特定の化合物及び達成される効果、並びに宿主内の各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0056】
「薬学的に許容される賦形剤」、「薬学的に許容される希釈剤」、「薬学的に許容される担体」、及び「薬学的に許容されるアジュバント」は、薬学的組成物の調製において有用であり、一般に安全であり、非毒性であり、生物学的にもその他においても望ましい、賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを意味し、獣医学的使用並びにヒト薬学的使用において許容される賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントを含む。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバント」は、1つの、及び2つ以上のそのような賦形剤、希釈剤、担体、及びアジュバントの両方を含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」は、哺乳類、特にヒトなどの対象への投与に好適な組成物を包含することを意味する。概して、「薬学的組成物」は、無菌であり、好ましくは、対象内で望ましくない応答を誘発することが可能な汚染物質を含まない(例えば、薬学的組成物中の化合物は、医薬グレードである)。薬学的組成物は、経口、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内、筋肉内、皮下などを含むいくつかの異なる投与経路を介して、治療を必要とする対象又は患者への投与のために設計され得る。
【0058】
使用方法
ナノボディは、予防的及び治療的目的の両方に有用である。したがって、本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、疾患の予防、及び既存の状態の治療の両方を指すために使用される。特定の例では、予防は、疾患又は状態を発症するリスクがあると特定された患者における、疾患又は状態の発症の阻害又は遅延を示す。患者の臨床症状を安定化させるか又は改善するための、進行中の疾患の治療は、本発明によって提供される特に重要な利益である。そのような治療は、罹患組織における機能喪失の前に行われることが望ましく、その結果、本発明によって提供される予防的治療的利益もまた重要である。治療効果の証拠は、疾患の重症度の任意の減少であり得る。治療効果は、臨床成績の観点から測定することができるか、又は免疫学的又は生化学的試験によって決定することができる。治療のための患者は、哺乳動物、例えば、ヒトを含む霊長類であってもよく、実験動物、例えば、ウサギ、ラット、マウスなどであってもよく、特に、治療法、ウマ、イヌ、ネコ、農場動物などの評価のためであってもよい。
【0059】
治療製剤、例えば、薬学的組成物の投薬量は、状態の性質、投与頻度、投与方法、宿主からの薬剤のクリアランスなどに応じて大きく異なる。特定の実施形態では、初回用量は、より多い維持用量、続いて、より少ない維持用量であってもよい。ある特定の実施形態では、用量は、有効な用量レベルを維持するために必要に応じて、毎週又は隔週、又はより頻繁により少ない用量に分画して投与し、毎日、半週、又は他の方法で投与することができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、ナノボディを含む組成物又は製剤の投与は、局所投与によって行われる。本明細書で使用される場合、局所投与は、局所投与を指し得るが、治療部位での体内への注射又は他の導入も指す。このような投与の例としては、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射などが挙げられる。他の実施形態では、ナノボディを含む組成物又は製剤は、全身的に、例えば、経口的に又は静脈内に投与される。一実施形態では、ナノボディを含む製剤の組成物は、注入、例えば、一定期間、例えば、10分、20分、3分、1時間、2時間、3時間、4時間以上にわたる連続注入によって投与される。味覚受容体細胞の再生のために、更に、舌への局所適用、例えば、マウスウォッシュ、舌上に配置されるフィルムへの組み込みなどがあり得る。大腸炎の治療には、例えば、坐剤法があり得る。前立腺の過成長のために、例えば、経尿道送達、前立腺組織への注射などがあり得る。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物又は製剤は、活性の急速で有意な増加を得るために、短期間、例えば、1回の投与、又は一連の投与、例えば、1、2、3日以上、最大1又は2週間にわたって実施される。投与される用量の大きさは、医師によって決定されなければならず、疾患の性質及び重症度、患者の年齢及び健康状態、並びに薬物自体に対する患者の耐性などのいくつかの要因に依存する。
【0062】
本発明のある特定の方法において、ナノボディを含む組成物の有効量は、例えば、所望の効果を達成するために、細胞をその組成物の有効量と接触させることによって、細胞に提供される。特定の実施形態では、接触は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで生じる。特定の実施形態では、細胞は、増加したヘッジホッグシグナル伝達を必要とする対象に由来するか、又はそれに存在する。
【0063】
他の実施形態では、本明細書に開示されるナノボディをコードする核酸組成物は、所望の細胞内でポリヌクレオチドを発現するために、例えば、ウイルスベクター、プラスミドベクター、CRISPR標的化などを使用して、細胞に提供される。
【0064】
本発明のいくつかの方法では、細胞内のヘッジホッグシグナル伝達を増強するために、有効量の本発明の組成物が提供される。生化学的に言えば、ナノボディの有効量又は有効用量は、ナノボディの非存在下でのシグナル伝達と比較して、細胞内のヘッジホッグシグナル伝達を、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%増加させる量である。細胞の活性の調節の量は、当業者に既知のいくつかの方法によって決定され得る。
【0065】
臨床的意味では、ナノボディ組成物の有効用量は、対象に好適な期間、例えば、少なくとも約1週間、場合によっては約2週間、又はそれ以上、最大約4週間、8週間、又はそれ以上の期間投与されると、シグナル伝達の欠如に関連する症状の変化を証拠とする用量である。いくつかの実施形態では、有効用量は、疾患状態の進行を遅らせる又は停止させるだけでなく、状態の逆転を誘発し得る。当業者は、初回用量がそのような期間にわたって投与されてもよく、続いて維持用量が投与されてもよく、維持用量は、場合によっては、減少した用量で投与されることを理解する。
【0066】
投与されるナノボディ組成物の有効量又は有効用量の計算は、当業者の技術範囲内であり、当業者には日常的である。言うまでもなく、投与される最終量は、投与経路及び治療される障害又は状態の性質に依存する。
【0067】
主題の方法で使用するために好適な細胞は、1つ以上のFzd受容体を含む細胞である。接触させる細胞は、インビトロ、すなわち、培養中であってもよく、又はインビボ、すなわち、対象中であってもよい。細胞は、任意の生物に由来してもよく、好ましくは、ヒト、家畜及び農場動物、並びにイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、カエル、ゼブラフィッシュ、フルーツフライ、ワームなどの動物園の動物、実験室の動物、又はペット動物を含む哺乳類に由来する。好ましくは、哺乳類は、ヒトである。細胞は、任意の組織由来であり得る。細胞は、凍結され得るか、又はそれらは、新鮮であり得る。それらは、初代細胞であり得るか、又は細胞株であり得る。多くの場合、細胞は、レシピエントに導入する前に、インビボで使用されるか、又はエクスビボで処理される初代細胞である。
【0068】
インビトロでの細胞は、当該技術分野でいくつかの周知の方法のうちのいずれかによって、ナノボディを含む組成物と接触させてもよい。例えば、組成物は、本発明の細胞が培養されている培地中の細胞に提供され得る。ナノボディをコードする核酸は、それらの取り込み、例えば、エレクトロポレーション、塩化カルシウムトランスフェクション、及びリポフェクションを促進するための当該技術分野において周知の条件下で、主題細胞又はベクター上で主題細胞と共培養された細胞に提供され得る。代替的には、ナノボディをコードする核酸は、本発明の細胞に、又はウイルスを介して本発明の細胞と共培養された細胞に提供され得る、すなわち、細胞は、ポリペプチドをコードする核酸を含むウイルス粒子と接触される。レトロウイルス、例えば、レンチウイルスは、非分裂細胞をトランスフェクトするために使用することができるため、本発明の方法に特に好適である(例えば、Uchida et al.(1998)P.N.A.S.95(20):11939-44を参照されたい)。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは、「欠陥」であり、すなわち、生産的な感染に必要なウイルスタンパク質を産生することができない。むしろ、ベクターの複製は、パッケージング細胞株における成長を必要とする。
【0069】
治療用量は、少なくとも約1μg/kg体重、少なくとも約5μg/kg体重、少なくとも約10μg/kg体重、少なくとも約50μg/kg体重、少なくとも約100μg/kg体重、少なくとも約250μg/kg体重、少なくとも約500μg/kg体重、及び約10mg/kg体重以下であり得る。当業者は、このようなガイドラインが、活性剤の分子量、例えば、タンパク質コンジュゲート、例えば、ペグ化タンパク質の使用に合わせて調整されることを理解する。投薬量は、局所投与、例えば、鼻腔内、吸入など、又は全身投与、例えば、i.m.、i.p.、i.v.などによっても変化し得る。
【0070】
同様に、細胞は、対象へのペプチド、低分子、又は核酸の投与のための当該技術分野におけるいくつかの周知の方法のうちのいずれかによって、本発明のナノボディ組成物とインビボで接触させてもよい。ナノボディ組成物は、天然のヘッジホッグタンパク質の製剤化に必要とされるように、いくつかの実施形態では、洗剤、リポソームなどの非存在下で製剤化される様々な製剤又は薬学的組成物に組み込むことができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、病気の若しくは損傷した組織の治療に使用するために、組織再生に使用するために、かつ細胞成長及び増殖に使用するために、かつ/又は組織工学に使用するために投与される。特に、本発明は、組織の再生若しくは修復、又は他の病理学的状態で使用するための、本発明によるポリヌクレオチドをコードするナノボディ又はナノボディを提供する。
【0072】
本発明の組成物による治療のための目的の条件としては、再生細胞成長が所望されるいくつかの条件が挙げられるが、これらに限定されない。そのような状態には、例えば、骨の成長又は再生、例えば、骨の再生、骨移植片、骨折の治癒など、味覚受容体の再生、大腸炎又は粘膜炎の治療などが含まれ得る。
【0073】
強化された骨の成長が所望される条件としては、骨折、移植片、人工装具周辺の内向性増殖などが挙げられ得るが、これらに限定されない。ナノボディは、骨の治癒の増強において用途を見出す。多くの臨床状況では、骨修復状態は、骨形成細胞の活性の低下、例えば、高齢者、外傷後、骨形成不完全性などのために理想的ではない。様々な骨及び軟骨障害が高齢者に影響を及ぼす。このような組織は、通常、間葉系幹細胞によって再生される。このような状態には、変形性関節症が含まれる。骨修復を加速する方法において、本発明の薬学的組成物は、骨への損傷、例えば、外傷に続く損傷に罹患している患者に投与される。製剤は、好ましくは、骨再生を必要とする損傷の後、外傷部位又はその付近で投与される。代替的方法では、骨への損傷に罹患している患者に、骨髄細胞、例えば、間葉系幹細胞、骨髄細胞に分化することができる骨髄細胞などを含む組成物を提供する。骨髄細胞は、再生を増強するために十分な用量で、薬学的組成物又はタンパク質でエクスビボで処理されてもよい。
【0074】
他の実施形態では、本発明の組成物は、味覚受容体組織の再生に使用される。本発明の組成物は、例えば、注入、マトリックス又は他のデポシステム、又は再生の増強のための舌への他の局所適用において使用することができる。
【0075】
様々な表皮症状は、例えば、胃腸管を覆う急速に分裂した上皮細胞の破壊があり、組織を潰瘍化及び感染にさらされ、例えば、大腸炎、粘膜炎などにつながる場合など、本発明の化合物による治療が有益である。粘膜又は粘膜(mucous membrane)としても知られる粘膜組織は、呼吸器及び消化管などの空気と通信する全ての身体通路を並べ、粘液を分泌する細胞及び関連腺を有する。口腔粘膜と呼ばれる、口を覆うこのライニングの部分は、体の最も敏感な部分のうちの1つであり、特に化学療法及び放射線に対して脆弱である。
【0076】
いくつかの実施形態では、毛髪再生を促進するための経路活性化を伴う、脱毛の治療方法が提供され(例えば、Paladini et al.J Invest Dermatol 125:638-646,2005を参照されたい)、そのような実施形態では、送達は、例えば、経皮パッチ又はマイクロニードル送達によって達成され得る。
【0077】
非侵襲性高リスク膀胱がんの治療では、BCG(Bacillus Calmette-Guerin,bovine TB)の膀胱への注入方法が知られている。いくつかの実施形態では、本発明のABDのコード配列は、発現及び分泌のために、これらの細菌に導入される。Hh経路活性化は、非侵襲的形態から致死的侵襲的形態への膀胱がんの進行を抑制する(例えば、Shin et al.Cancer Cell 14、Roberts et al.Cancer Cell 17を参照されたい)。
【0078】
患者は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むがこれらに限定されない、任意の動物(例えば、哺乳類)であり得る。典型的には、患者は、ヒトである。本発明の代替物又は本発明の代替物を含む化合物若しくは組成物の治療方法及び医療用途は、組織再生を促進する。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明は、前述のように、2つ以上のナノボディが動物又は患者に同時に、連続して、又は別々に投与される、治療方法及び医療用途を提供する。
【0080】
いくつかの実施形態では、本発明は、前述のような治療方法及び医療用途を提供し、本発明の1つ以上のナノボディは、1つ以上の更なる化合物又は薬物と組み合わせて動物又は患者に投与され、該ナノボディ及び該更なる化合物若しくは薬物は、同時に、連続して、又は別々に投与される。
【0081】
本発明のナノボディは、また、非治療的方法、例えば、インビトロ研究方法において広範な用途を有する。
【0082】
発現の構築物。本発明の方法では、ナノボディは、組換え方法によって産生され得る。アミノ酸配列バリアントは、DNAコード配列に適切なヌクレオチド変化を導入することによって調製される。シグナル配列は、ナノボディの分泌のために含まれ得る。このようなバリアントは、アミノ酸配列の一方又は両方の末端内の、又はその末端で、残基の挿入、置換、及び/又は指定された欠失を表す。挿入、置換、及び/又は指定された欠失を任意に組み合わせて、最終構築物に到達するが、最終構築物は、本明細書に定義される所望の生物学的活性を有することを条件とする。アミノ酸の変化は、また、グリコシル化部位の数又は位置の変化、膜固定特性の変化、及び/又はポリペプチドのリーダー配列の挿入、欠失、又はそれ以外の方法での影響を受けることによって、ポリペプチドの翻訳後プロセスを変更し得る。
【0083】
発現のために、ナノボディをコードする核酸を複製可能なベクターに挿入することができる。多くのそのようなベクターが利用可能である。ベクター成分としては、一般に、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
発現ベクターは、宿主生物によって認識され、ナノボディコード配列に作動可能に連結されるプロモーターを含有する。プロモーターは、それらが作動可能に連結される特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)に位置する非翻訳配列である(一般に、約100~1000bp以内)。そのようなプロモーターは、典型的には、誘導性及び構成性の2つの分類に分類される。誘導性プロモーターは、培養条件のいくらかの変化、例えば、栄養素の有無又は温度の変化に応答して、それらの制御下のDNAから増加したレベルの転写を開始するプロモーターである。
【0085】
原核宿主との使用に好適なプロモーターとしては、β-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、並びにtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも好適である。そのようなヌクレオチド配列が公開されており、それによって、当業者がそれらをDNAコード配列に作動可能にライゲーションすることを可能にする。細菌系で使用するためのプロモーターは、また、コード配列に作動可能に連結されたシャインダルガルノ(S.D.)配列を含有する。
【0086】
プロモーター配列は、真核生物について知られている。酵母宿主とともに使用するための好適な促進配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ、又はエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセラート変異酵素、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼなどの他の糖酵素のプロモーターが挙げられる。増殖条件によって制御される転写の更なる利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、アイソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトース利用に関与する酵素のプロモーター領域である。酵母発現で使用するための好適なベクター及びプロモーターは、EP73,657に更に記載されている。酵母エンハンサーは、また、酵母プロモーターと有利に使用される。
【0087】
哺乳類宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鳥痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシ乳頭腫ウイルス、鳥肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス(マウス幹細胞ウイルスなど)、B型肝炎ウイルス、及び最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られたプロモーターによって、異種哺乳類プロモーター、例えばアクチンプロモーター、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)又は免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから制御され得るが、このようなプロモーターは宿主細胞系と互換性がある。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの即時初期プロモーターは、HindIII E制限断片として好都合に得られる。
【0088】
高等真核生物による転写は、しばしば、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。エンハンサーは、通常約10~300bpのDNAのシス作用エレメントであり、プロモーターに作用して、その転写を増加させる。エンハンサーは、イントロン内、並びにコード配列自体内で、転写単位に対して5’及び3’であることが見出されているため、相対的に配向及び位置に依存しない。現在、多くのエンハンサー配列が、哺乳類遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリン)から知られている。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用する。例えば、複製起点の後期側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、コード配列に5’又は3’の位置で発現ベクターにスプライシングされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’の部位に位置する。
【0089】
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の核細胞)で使用される発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含有し得る。このような配列は、真核生物又はウイルスDNA若しくはcDNAの5’及び場合によっては3’の非翻訳領域から一般的に入手可能である。
【0090】
上記の構成要素のうちの1つ以上を含有する好適なベクターの構築は、標準的な技術を用いる。単離されたプラスミド又はDNA断片を、所望の形態で切断、調整、及び再ライゲーションして、必要なプラスミドを生成することができる。構築されたプラスミドにおける正しい配列を確認するための分析のために、ライゲーション混合物を使用して宿主細胞、必要に応じてアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって選択される成功した形質転換体を形質転換する。形質転換体からのプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化によって分析し、及び/又は配列決定する。
【0091】
本明細書のベクターにおけるDNAのクローニング又は発現に好適な宿主細胞は、上記の原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的のための好適な原核生物としては、例えば、Gram-negative又はGram-positive organismsなどのeubacteria、例えば、EscherichiaなどのEnterobacteriaceae、例えば、E. coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescans、及びShigella、並びにB.subtilis及びB.licheniformisなどのBacilli、P.aeruginosaなどのPseudomonas、及びStreptomycesが挙げられる。これらの例は、限定ではなく例示である。
【0092】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物は、好適な発現宿主である。Saccharomyces cerevisiae、又は一般的なパン酵母は、下部真核生物宿主微生物の間で最も一般的に使用される。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe、K.lactis、K.fragilisなどのKluyveromyces宿主、Pichia pastoris、Candida、Neurospora crassa、Schwanniomyces occidentalisなどのSchwanniomyces、及びPenicillium、Tolypocladium、及びA.nidulan、及びA.nigerなどのAspergillusホストなどの糸状菌などの多数の他の属、種、及び株が、本明細書で一般的に入手可能であり、有用である。
【0093】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養物を宿主として利用することができる。典型的には、植物細胞は、ある種の細菌Agrobacterium tumefaciensとのインキュベーションによってトランスフェクトされる。そのような植物細胞培養物のインキュベーション中に、DNAコード配列は、それがトランスフェクトされるように植物細胞宿主に移され、適切な条件下でDNAを発現する。加えて、ノパリンシンターゼプロモーター及びポリアデニル化シグナル配列などの植物細胞に適合した調節配列及びシグナル配列が利用可能である。
【0094】
有用な哺乳類宿主細胞株の例は、マウスL細胞(L-M[TK-]、ATCC番号CRL-2648)、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚性腎臓株(浮遊培養における増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO)、マウスセルトリ細胞(TM4)、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファロー肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞、MRC 5細胞、FS4細胞、及びヒト肝細胞(Hep G2)である。
【0095】
宿主細胞は、ナノボディ産生のための上記の発現ベクターでトランスフェクトされ、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に修飾された従来の栄養培地中で培養される。哺乳類宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。ハムのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI 1640(Sigma)、及びダルベッコの改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に好適である。これらの培地のうちのいずれかに、必要に応じて、ホルモン及び/若しくは他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質、微量元素、並びにグルコース又は同等のエネルギー源を補充してもよい。任意の他の必要な補充物も、また、当業者に既知の適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞とともにこれまでに使用されているものであり、当業者には明らかである。
【0096】
本発明は、完全に説明されているが、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることは、当業者には明らかである。
【0097】
実験
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、発明者が発明とみなす範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われる全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。別様に示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0098】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
本発明は、本発明の実施のための好ましいモードを含むように、本発明者によって見出されるか、又は提供される特定の実施形態に関して説明されている。当業者は、本開示に照らして、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態で多数の修正及び変更を行うことができることを理解されたい。例えば、コドン冗長性のために、タンパク質配列に影響を与えることなく、基礎を成すDNA配列に変更を行うことができる。生物学的機能等価性の考慮によって、種類又は量で生物学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造に変更を行うことができる。このような修正は全て、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0100】
実施例1
パッチドステロール導管のナノボディ媒介コンフォメーション遮断によるヘッジホッグ経路活性化
ヘッジホッグ経路の活性化は、改善された骨治癒、味覚受容体細胞再生、及び大腸炎又は他の状態の緩和のための治療的価値を有する。しかしながら、全身経路活性化は有害であり得、治療的適用のための組織標的化に適した薬剤が欠如している。我々は、ヘッジホッグ受容体Patched1に対するコンフォメーション特異的ナノボディである新規アゴニストを開発した。このナノボディは、我々のクライオEM構造で明らかになったように、Patched1「スイッチヘリックス」の代替コンフォメーションを安定させることによって、インビトロ及びインビボでヘッジホッグ経路を強力に活性化する。ナノボディ結合は、その輸送サイクルの一段階でPatchedを捕捉しやすいため、Patched1ステロール導管を通る基質の移動を防止する。天然のヘッジホッグリガンドとは異なり、このナノボディは、その活性のために脂質修飾を必要とせず、ヘッジホッグ経路活性化の機械的研究及び治療的使用のための経路活性化剤の操作を容易にする。我々のコンフォメーション選択的ナノボディアプローチは、一般に、他のPTCH1相同体の研究に適用可能である。
【0101】
ヘッジホッグの主な受容体は、Patched1(PTCH1)であり、下流のGタンパク質共役受容体(GPCR)様タンパク質であるスムースンド(SMO)を抑制することによって経路静止を維持する。ヘッジホッグに結合すると、PTCH1は不活性化され、SMOが活性化し、下流のシグナル伝達事象を作動することを可能にする。機械的には、SMOの活性化にはステロールの結合が必要であり、おそらく、形質膜内葉から7TMバンドルに入る。PTCH1は、形質膜内葉からステロールを輸送することによってSMO活性化を防止し、それによってSMOの活性化ステロールへのアクセスを制限することが提案されている。この輸送活性には、PTCH1細胞外ドメインを通る疎水性導管が必要であり、ヘッジホッグはこの導管を遮断し、その必須アミノ末端パルミトイル付加物を挿入することによってPTCH1を不活性化する。トランスポーターは、典型的には、コンフォメーション変化の繰り返しのサイクルを通過することによって作用する。PTCH1輸送機能がそのような立体構造サイクルを用いる場合、優先的に特定のPTCH1コンフォメーションに結合し、PTCH1コンフォメーションを安定させる薬剤は、その立体構造サイクル及び輸送活性を破壊することが期待され、したがって、SMOの活性化を可能にする。したがって、このような薬剤は、脂質修飾を省略可能にし、PTCH1作業サイクル中に生じるコンフォメーション変化に光を当てることができる経路調節物質として機能し得る。
【0102】
結果
経路を活性化するコンフォメーション特異的ナノボディの開発。ナノボディは、特定のGPCRタンパク質コンフォメーションを安定させるために使用されている一本鎖抗体断片であり、遺伝子工学に適している。我々は、PTCH1に対するコンフォメーション特異的ナノボディを選択するための合成酵母ディスプレイライブラリを出発点として選択した。コンフォメーション特異的ナノボディを選択するために、我々はまず、その膜貫通ドメイン内に埋め込まれた3つの酸性残基(D499N、D500N、E1081Q、PTCH1-NNQと称される)を改変することによって、PTCH1にコンフォメーションバイアスを導入した。これらの酸性残基は、RNDトランスポーターファミリー内で保存され、ステロール輸送及びSMO調節におけるPTCH1活性に必要であり、カチオン流入に応答してRNDトランスポーターのコンフォメーション変化を駆動することがより一般的に提案されている(
図1A)。したがって、我々は、PTCH1中のこれらの残基の変化が、その立体配座状態の相対的表現に影響を与える可能性があると推論した。
【0103】
酵母ディスプレイライブラリからのナノボディクローンの選択のために精製されたPTCH1-NNQ変異型タンパク質を使用した。PTCH1-NNQ結合酵母クローンの数ラウンドの濃縮の後、FACS(蛍光活性化細胞選別)、並びに異なる蛍光団に結合した抗体で標識された野生型及びNNQ PTCH1タンパク質を使用して、優先的にPTCH1-NNQに結合するナノボディを選択した(
図1B)。優先的に結合したナノボディを発現する酵母細胞は、FACSプロットの対角線外に集団を形成する(
図1C)。NNQを好む集団においてナノボディ発現酵母細胞を選択した後、15個の独自のクローンをシークエンシングによって同定し、そのうちの3個は、選択中に使用される抗体に直接結合するために廃棄された(
図5A、B)。PTCH1及びPTCH1-NNQは、膜貫通ドメイン内の酸性残基においてのみ異なるため、ナノボディ結合の差異は、PTCH1とPTCH1-NNQとの間のコンフォメーション状態の差異に起因する可能性が最も高い。
【0104】
特定のPTCH1コンフォメーションの安定化は、その輸送活性を不活性化し、ヘッジホッグ経路における下流応答を可能にすると予測される。したがって、我々は、Gli依存性ルシフェラーゼアッセイを使用して、3T3-Light2細胞上で精製されたナノボディタンパク質の活性を試験した。クローン17、20、及び23は、弱い活性化効果を示した(
図1D)。我々は、最初に、エラーが起こりやすいPCRライブラリ(
図5C、D)から選択し、次いで、ワンポット変異誘発(
図5E、F)を使用して、相補性決定領域(CDR)を標的とするライブラリから選択することによって、2ラウンドの親和性成熟を通じてシグナル伝達力を増強した。親和性成熟の第1ラウンドでは、クローン23(配列番号10)(「NB23」)に由来する一連のナノボディクローンが得られ、CDR3中のH105R、G106R置換、及びCDR2中のG50でのいくつかのバリアント残基が得られた。これらのバリアントのうち、G50T置換(T23と名付けられた)のみが、E.coliからの精製のために発現され得る。T23は、そのNb23親よりもGli依存性ルシフェラーゼアッセイにおいて優れた効力を示し(
図1E)、全てのCDR残基がワンポット変異誘発において系統的にランダム化された、親和性成熟の第2ラウンドの開始配列として使用された。PTCH1結合に基づく選択後、CDR3中のY102Iを濃縮し、意図しない置換であるT77Nを濃縮した(
図5G)。「TI23」(配列番号23)と名付けられたこのバリアントは、更なる特性評価のために精製され、T23親よりも経路活性化に大きな効力を示した(
図1E)。これらのバリアントを発現する酵母細胞の2色染色によって明らかにされるように、ナノボディバリアントの全ては、PTCH1-NNQに対する優先的な結合を示した(
図1F、
図5H)。TI23は、また、ヒト胚性口蓋間葉系(HEPM)に由来する細胞株で試験したときに、低ナノモル濃度でGLI1及びPTCH1を標的とするヒトヘッジホッグ経路を強く活性化した(
図1G)。ShhNpと比較して、TI23は、同様の効力を示したが、一貫して、より低い有効性を示した。TI23によって誘導される最大応答は、ShhNp由来の最大応答の約75%であり、それが部分アゴニストであることを示唆する(
図1H)。
【0105】
PTCH1::TI23複合体の構造。PTCH1へのTI23結合のコンフォメーション効果を決定するために、我々は、クライオEMによる構造決定のためにPTCH1::TI23複合体を調製した。複合体を、適切にフィットした造影剤移動関数パラメータ(CTF、
図6B)及び2D分類平均(
図6C)を用いて、クライオEM顕微鏡写真(
図6A)で明確に可視化した。クライオEMデータセットの3D再構築は、3.4Åの分解度で高品質のマップ(
図2A、
図6Dの手順)をもたらした(
図6F)。12個の膜貫通(TM)ヘリックス及び2つの主要な細胞外ドメイン(ECD)を全て分解し(
図2A)、PTCH1::TI23複合体の原子モデルを、このマップ及び以前に決定されたマウスPTCH1構造に基づいて構築した(24)。細胞内配列の大部分は、TM1及びTM7の前の2つの横ヘリックスを除いて、未分解であり、モデル化されていなかった(
図2B)。
【0106】
ステロール様密度は、複数の部位で同定され、1つは、ECD1の遠位先端(膜から最も遠い、密度I)のポケット内にあり、1つは、輸送導管(II)の一部として提案された空洞内にあり、2つは、膜貫通ドメイン(III及びIV)の周辺にある(
図2B)。部位IIにおける密度は特によく分解されており、その異常な「Y」形状は、ステロール様密度もGDNである可能性が最も高いが、GDNのステロイド部分、ジジトゲニンのみが分解され、モデル化されたことを強く示唆している。
【0107】
概略図(
図2C)に示すように、ナノボディは、PTCH1のECD1とのみ相互作用する。TI23の結合部位は、SHHの結合部位と重なり合うが、SHHは、ECD1及びECD2の両方と相互作用する(
図2D)。TI23ナノボディのCDR1及びCDR3ループは、異なる角度からPTCH1 ECD1内の短いヘリックス(
図2Cで強調されている「スイッチヘリックス」)に接触する。CDR1は、疎水性残基I28及びF29を脂質部位I(
図2E)の疎水性ポケットに挿入することによってPTCH1と相互作用するが、CDR3は、PTCH1の表面上の他の残基と主に水素結合ネットワークを形成する(
図2F)。
【0108】
TI23は、ECD1とのみ相互作用するが、我々は、膜貫通ドメイン内の側鎖の分解能における有意な改善に留意した。特に興味深いことに、TI23の選択のために変更されたTM4及びTM10内の荷電残基トライアドは、他の公開されたPTCH1構造のほとんどにおいてよりも良好に分解される。したがって、PTCH1::TI23複合体中のTM4及びTM10は、H1085とD499との間の塩架橋を介して互いに会合するが、SHH結合PTCH1構造では、この相互作用が中断されることに留意されたい(
図7D)。膜貫通ドメイン側鎖相互作用におけるこのナノボディ関連変化は、ECDと膜貫通ドメインとの間の潜在的なアロステリーを示唆する。
【0109】
PTCH1::TI23複合体の全体的な構造は、非結合マウスのPTCH1構造に類似しており、910個の残基上のCa炭素原子の根平均平方偏差は0.955Aである。ECD1及びECD2の両方は、複合体内でいくつかの立体構造の差異を示す。1つのわずかな違いは、PTCH1単独と比較して、ECD1の方向への約5度のTMドメインへの接続の周りのECD2の回転である(
図3A)。より顕著な違いは、反転スイッチを示唆する方法で、ECD1内の「スイッチヘリックス」の遠位端を膜に向かって約32度回転させることである(
図3A、挿入図)。PTCH1単独及びPTCH1::TI23複合体におけるスイッチヘリックスのコンフォメーションをそれぞれポーズ1及び2として参照する(
図3A、挿入図)。スイッチヘリックスのこれら2つの代替ポーズは存在するが、様々な条件下で決定されたPTCH1の他の構造ではほとんど目立たなくなっている。例えば、2つのヒトPTCH1分子(23)に結合した単一の天然Shhリガンドの三元複合体では、A鎖のPTCH1、すなわち、SHHリガンドのN末端パルミトイル部分との相互作用によってステロール導管が閉塞されている分子は、ポーズ2を採用し、一方、B鎖のPTCH1は、ポーズ1を採用する。実際、PTCH1の全ての公開された構造において、スイッチヘリックスは、これら2つのポーズの一方又は他方を採用し、それらが、PTCH1活性サイクル内に優先的に充填される個別の代替構造を表すことを示唆する(
図3B)。最も分解度が高いSHH-PTCH1構造では、細胞外ドメイン内のスイッチヘリックスがポーズ1を採用し、膜貫通ドメイン内のH1085とD499との間の塩架橋が破損していることは注目に値する。対照的に、PTCH1::TI23複合体は、これらの両方の部位において代替コンフォメーションを採用する(
図7)。これらの変化は、膜貫通ドメイン内の荷電残基と細胞外ドメイン内のスイッチヘリックスとの間のアロステリーと一致する。他のPTCH1構造のいずれも、TM4及びTM10中の荷電残基の側鎖を明確に分解しておらず、更なる比較を排除している。
【0110】
ステロール導管へのスイッチヘリックスの影響。これらの構造再構成は、Caverプログラムによって評価されるように、輸送導管の形状を変化させる(
図3C)。したがって、マウスPTCH1のステロールIを包含する導管の領域は、PTCH1::TI23複合体の導管内で劇的に収縮していると見られ、PTCH1::TI23複合体の導管は、外部への遠位開口部も取得する(
図3D)。この導管形状の変化と並行して、結合したステロール様密度は、より近位側の密閉空洞から、外部への開口部を有するより遠位側の位置にシフトする(
図3E)。この協調した近位側の収縮及び遠位側の膨張は、主にスイッチヘリックスの回転に起因する。PTCH1活性が、他のRNDファミリーメンバーと同様に、化学浸透勾配によって駆動される場合、本明細書で同定されるコンフォメーション変化は、基質導管に影響を与える輸送導管コンフォメーション遷移内の基質の方向性移動をもたらす定義された配列の一部を形成し得、原理的には、PTCH1のものとは詳細には異なるが、同様である。Caverプログラムを用いた分析により、AcrBの下部及び上部部位は、代替的に、基質の方向性移動を実施するために開閉する(
図8A)(34)が、一方、PTCH1構造からは、単一の上部部位のみが同定されている(
図8B)。
【0111】
TI23ナノボディは、PTCH1スイッチヘリックスのポーズ2を安定させるように見える。内葉から離れたステロールのPTCH1媒介輸送が、スイッチヘリックス移動に関連する導管の形状の動的変化に実際に依存する場合、TI23結合は、PTCH1をステロール移動と互換性がない状態にロックし得る。このアイデアを試験するために、我々は、細胞にマイクロインジェクションされたソルバトクロミック蛍光ステロールセンサを利用して、膜の内葉内のセンサ結合に利用可能なステロールの比率測定を可能にした(35)。このセンサは以前、利用可能なステロールがPTCH1活性とともに急激に減少し、ShhリガンドによるPTCH1不活性化が正常なステロール利用可能性に戻ることを明らかにした(24)。Shhリガンド添加の効果と同様に、TI23添加は、PTCH1媒介性コレステロール活性の低減を逆転させることに注目した(
図3F)。
【0112】
ヘッジホッグ経路のインビボ活性化。ナノボディ(約12kDa)などの小さなタンパク質は、優れた組織浸透度を示し、ほとんどの組織の細胞に容易にアクセス可能であることが期待され得る。我々は、それを発現するように操作されたアデノ随伴ウイルス(AAV)をマウスに静脈内注射することによって、TI23の活性を試験した。この実験は、AAV感染が数週間にわたって維持されるため、持続的なナノボディ曝露によって引き起こされる生物学的効果の観察を可能にするはずである。舌上皮及び皮膚を監視した。これらの組織は、ヘッジホッグ経路活性化に対する十分に特徴付けられた応答を示す。
【0113】
TI23ナノボディは、Gli1 RNAレベルの6倍の増加によって示されるように、背側皮膚におけるヘッジホッグ経路活性を増強した(
図4A)。TI23からの効果は、ShhN又はSAG21kよりも弱く、TI23がインビトロで部分アゴニストとして機能するという観察と一致する。また、TI23又はShhNをコードするAAVに感染したが、対照ナノボディ(Nb4)ではないマウスにおける背側皮膚の組織学的検査時に皮膚脂肪層への毛包の拡張を指摘し、毛包が毛周期の成長期への侵入を示す(
図4B)。成長期への加速された侵入と一致して、我々は、剃った後の背側皮膚のより速い毛の再成長を観察した(
図4C)。
【0114】
また、舌上皮における経路活性化の指標として、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)によるGli1 mRNAを調べた。ヘッジホッグ経路活性は、未処理動物におけるCK8
+味覚受容体細胞を取り囲む細胞に限定される(
図4D)。ShhN又はTI23ウイルス注射マウスにおいて、Gli1発現によって示されるように、ヘッジホッグ経路活性の範囲は、対照ウイルスを受けた動物と比較して劇的に拡大した(
図4E、F)。SAG21k(
図4E、F)、SMOを活性化する小分子ヘッジホッグアゴニストを投与したマウスにおいても、Gli1発現の同様の拡張が観察された。
【0115】
ヘッジホッグ経路調節の治療的適用は、主に経路アンタゴニストに焦点を当てており、ヘッジホッグ経路の阻害は、腫瘍の原発細胞における過剰なヘッジホッグ経路活性によって直接駆動されるがんの治療において有効であることが証明されている。しかしながら、腫瘍増殖を促進することとは対照的に、最近、経路活性は、それが原発細胞ではなく間質細胞、特に膀胱がん、並びに結腸及び膵臓腺がんなどの内胚葉臓器のがんにおいて生じるとき、がんの成長及び進行を抑制することが見出されている。経路活性化は、また、化学療法患者において失われるか又は減少することが多い舌の味覚受容体細胞の再生、大腸炎などの疾患の保護又は回復、前立腺肥大における組織の過剰増殖の低減、又は糖尿病における骨治癒の加速における治療上の利点を付与し得る。
【0116】
これらの潜在的な利点にもかかわらず、臨床環境における経路活性化は、特定の組織を標的とする手段の欠如によって妨げられている。利用可能なヘッジホッグ経路アゴニストは、SAGファミリーの小分子メンバー、特定のオキシステロール、及びPTCH1を標的とする脂質修飾ヘッジホッグタンパク質又はその誘導体を含む、本質的に全て疎水性である。コンフォメーション選択的PTCH1指向性ナノボディTI23(配列番号23)は、天然のヘッジホッグタンパク質とは異なり、活性のための疎水性修飾を必要としない、強力でより親水性が高いアゴニストの新しい分類を表す。更に、TI23は、組織又は細胞型特異性を有する抗体又は他の薬剤への融合による標的化のために操作される可能性を有する。これらの操作されたバリアントは、全身経路活性化からの多面的効果を回避し、臨床応用により適している可能性がある。
【0117】
TI23は、更なる医薬品開発に有用であり、PTCH1輸送機構への洞察も提供する。トランスポータータンパク質を通る基質の方向移動は、コンフォメーション変化を意味するが、トランスポーターのためのそのようなコンフォメーション遷移の同定は、非自明の課題である。私たちのコンフォメーション特異的ナノボディアプローチにより、PTCH1スイッチヘリックスのポーズ1及び2に関連する2つの異なるコンフォメーションを同定することができた。これらのポーズに関連する輸送導管の形状の変化は、蠕動運動を、指向性基質移動のための潜在的なメカニズムとして示唆する。PTCH1は、好ましい基質及び細胞外ドメイン構造の両方において、十分に特徴付けられたRNDトランスポーターAcrBとは異なるため、これらのタンパク質の立体構造遷移が異なることは驚くことではない。実際、これらの違いを考えると、両方のタンパク質における基質導管の蠕動運動の明らかな類似性は非常に顕著に思われる。
【0118】
PTCH1へのTI23結合は、PTCH1-NNQと同様のコンフォメーション変化を誘導すると予測される。NNQ中の改変された残基が膜貫通ドメインに埋め込まれていることに対し、TI23は細胞外ドメインに結合するので、最も軽微な説明は、2つのドメイン間のアロステリーである。細菌輸送体では、TM4及びTM10の荷電トライアドが膜を横切ってプロトンを導き、化学浸透勾配からエネルギーを抽出する。PTCH1では、この荷電残基のトライアドの2つの異なる状態が現在観察されている。SHH結合構造では、D513及びE1095は互いに近接しており、それらの負電荷は結合カチオンによって安定化され得るが、TI23結合構造では、これらの2つの残基は遠く離れており、いかなるカチオンとも相互作用しない可能性が高い。この差は、PTCH1-NNQにおける電荷中和の欠如がカチオン相互作用を著しく弱めると予想されるため、カチオン結合に対するNNQ改変の潜在的効果と一致する。
【0119】
TI23ナノボディの興味深い側面は、それが部分的なアゴニストとして機能することに対し、PTCH1-NNQバリアントは、細胞においてほとんど活性を示さないことである。この違いの1つの説明は、ナノボディが少量のコンフォメーション柔軟性を許容し、したがって、低レベルのPTCH1輸送活性を可能にすることであり得る。実際、局所分解度マップでは、ナノボディ領域の分解度は、タンパク質の残りの部分よりもはるかに悪く、実質的な構造的不均一性を示唆している。
【0120】
ナノボディの構造安定性を改善するための更なるインビトロ進化は、経路を活性化するためのその有効性を増強し得る。我々のコンフォメーション選択的ナノボディアプローチは、他のトランスポーター、特にRNDファミリーの他のメンバーの研究に一般化可能である。哺乳類では、このファミリーには、NPC1コレステロール輸送タンパク質、及びPTCHD1などの他のPTCH様タンパク質が含まれ、その破壊は自閉症と強く関連している。他のトランスポーターについては、機能を破壊する変異は、任意の1つのコンフォメーションを一意に安定させることなく、通常のコンフォメーションランドスケープをバイアスすることによってそうすることができる。そのような変異体に優先的に結合するナノボディの選択は、まばらに集積されているが重要なコンフォメーションの捕捉を可能にし、構造的及び機能的研究のための実験的にアクセス可能な状態のレパートリーを拡大し、特定の細胞型又は組織コンパートメントを標的にする可能性を有する薬理学的薬剤を提供し得る。
【0121】
材料及び方法
細胞培養。Sf9及び293T細胞を、以前に公開された条件に従って培養中に維持した。293-Freestyle細胞を、1%ウシ胎児血清(Gemini Bio)を補充したFreestyle 293発現培地(Life Technologies)を使用して、振盪プラットフォームを装備した8%CO2インキュベーター内で浮遊培養中に維持した。Sf9細胞におけるバキュロウイルス産生及び組換えバキュロウイルスによる懸濁液293培養物の感染(BacMam発現)を、前述のように実施した。
【0122】
分子クローニング。全ての構築物をGibsonアセンブリでクローニングした。BacMam発現に関して、PTCH1バリアントをpVLAD6ベクターにクローニングした。酵母選択のために、Ptch1-C及びPtch1-C-NNQバリアントを使用した。Ptch1-Cは、アミノ酸1173で切断され、619-711で欠失し、C1167Yで改変されたマウスPTCH1である。選択のためのPtch1-Cの使用は、細胞内配列の広範な欠失に起因して、PTCH1細胞内ドメインに結合するナノボディを得る可能性を最小限に抑えた。構造決定及び細胞生物学実験には、先に報告されたPtch1-Bを使用した。ルシフェラーゼアッセイ及び細胞表面結合実験のために、PTCH1バリアントをpcDNA-h(ネオマイシン耐性カセットを除去したpcDNA3ベクター)にクローニングした。
【0123】
酵母ディスプレイ選択。合成ナノボディライブラリを、SDCAA培地中で30℃で、約1×108/mlの細胞密度まで成長させた。初期多様性(5×108多様性、5×109細胞)の約10倍をカバーする細胞を、20℃でSGCAA培地に移して、細胞表面上のナノボディの発現を誘導した。選択のために、7.5×109個の細胞を遠心分離によってペレット化し、選択緩衝液(20mMのHEPES、pH7.5、150mMのNaCl、0.5mg/mlのBSA、0.1%のDDM、0.02%のCHS)中に再懸濁した。次いで、細胞を100nMの1D4タグ付きPtch1-C NNQとともにインキュベートし、スピンダウンして選択緩衝液で洗浄し、次いでFITC標識された1D4抗体、次いで100μLの抗FITC MACSビーズで洗浄した。ビーズ結合細胞を磁気マニホールドにロードし、選択緩衝液で広範囲に洗浄した後、結合細胞を溶出し、SDCAA培地中で培養し、SGCAA培地中でナノボディ発現のために誘導した。次いで、これらの細胞上で第2ラウンドの選択を行い、まず、抗体結合細胞を反射選択するために、Alexa647標識された1d4抗体のみを用いて、次いで、100nMの1D4タグ付けされたPtch1-C NNQを用いて実施した。選択した細胞をSDCAAで増殖させ、再びSGCAAで誘導し、次いで100nMのMycタグ付きPtch1-C及び100nMの1D4タグ付きPtch1-C-NNQとともにインキュベートし、抗Myc Alexa 647及び抗1D4 FITCで染色し、FACS上により強いFITCシグナルを示す細胞を選択した。同じFACS選択を繰り返し、選択した細胞を増殖させ、希釈プレートした。プラスミドを単一コロニーから調製し、ローリングサイクル増幅(RCA)後に配列決定した。24個のコロニーから15個のユニークな配列を回収した。次いで、これらのナノボディ配列を有する酵母細胞を、抗1D4抗体及びPtch1-C-NNQへの結合について試験した。15個のうち3つ、クローン#4、#9、及び#15は、1D4抗体に直接結合する。クローン4を、活性特性決定における対照ナノボディとして使用した。残りの配列を、 E.coliからの発現及び精製のためにpET26bベクターにクローニングした。
【0124】
ナノボディ精製。ナノボディ配列を含有するpET26bベクターを、E.coli BL21(DE3)株に形質転換した。細菌を、37℃~0.8のOD600までのTerrificブロス培地中で増殖させ、次いで0.2mMのIPTGで誘導し、20℃に移した。一晩発現した後、細胞を8,000gで遠心分離することによって採取した。細胞ペレットを、5mlの緩衝液/1gのペレットの比で、SET緩衝液(500mMのスクロース、0.5mMのEDTA、pH8.0、200mMのTris、pH8.0)に再懸濁した。室温で30分間撹拌した後、2体積の水を添加した。追加で45分間撹拌した後、MgCl2を2mM及びベンゾナーゼに1:100,000で添加した。5分間のインキュベーション後、NaClを150mMに添加し、イミダゾールを20mMに添加し、混合物全体を20,000gで15分間、4℃で遠心分離した。次に、上清をNi-NTAカラムにロードし、氷冷緩衝液(20mMのHEPES pH7.5、500mMのNaCl、20mMのイミダゾール)で洗浄し、次いで、20mMのHEPES pH7.5、150mMのNaCl、250mMのイミダゾールで溶出した。次いで、溶出したタンパク質を、20mMのHEPES pH7.5、150mMのNaCl中で4℃で一晩透析した。クローン13を除く全ての最初のヒットを発現させ、精製することができる。次いで、クローン13を分析から除外した。
【0125】
親和性成熟。第1ラウンド親和性成熟ライブラリは、エラーが起こりやすいPCRを用いて作製した。この選択の出発点として、ナノボディクローン17、20、及び23を選択した。ナノボディ配列を含有する10ngのプラスミドを鋳型(ナノボディ配列の約1ngのDNAに相当する)として使用し、PCRをMutazymeキットで増幅した。PCR生成物をゲル精製し、次いで、次のPCRラウンドの鋳型として10ngを使用した。合計4ラウンドのPCRを実施した。次いで、最終生成物をフュージョンポリメラーゼで増幅して、酵母形質転換のための十分な量を得た。合計約100μgのDNAを、約2μgのエラーが起こりやすいPCR生成物を使用して、各親配列について精製した。次いで、DNA断片を、pYDS2.0プラスミド骨格とともに酵母に形質転換した。3つの異なる親配列からのDNA、及び3つの混合物を酵母細胞に別々にエレクトロポレーションしたが、エレクトロポレーション後の回収のために細胞をYPD中にプールした。連続希釈及びめっきにより、このライブラリについて1×109独立形質転換体の推定値が得られた。次いで、形質転換酵母細胞を、100μg/mlの硫酸ノルセオトリシンを用いたYPD培地中で増殖させ、次いで、同じ抗生物質を用いてYPG培地中で誘導した。100nM、5nM、0.8nMの1D4タグ付きPtch1-C NNQの濃度を使用して、MACS選択によるPTCH1結合について酵母細胞を濃縮した。次いで、ナノボディを発現する細胞をPtch1-C NNQとともに0.6nMでインキュベートした。選択緩衝液中で洗浄した後、細胞を、1μMの親17、20、23ナノボディタンパク質とともに各々、室温で170分間インキュベートした。次いで、細胞をFITC標識されたHA抗体で染色してナノボディ発現レベルをマークし、Alexa 647標識された抗1D4抗体で染色してPTCH1結合をマークした。高いPTCH1結合を維持する細胞をFACSから選択した。64個のクローンを配列決定して、繰り返す変化を同定した。
【0126】
親和性成熟の第2ラウンドは、ワンポット変異誘発法を使用して相補性決定領域(CDR)を標的とするライブラリを用いて実施した。CDR領域内の各コドンを置換するNNKを有するDNAオリゴのプールを、CDRのワンポット変異誘発のために使用したので、理論的には、各位置の全ての20個のアミノ酸がこのライブラリに表された。次いで、ワンポット変異誘発由来のDNA生成物をQ5ポリメラーゼで増幅し、ゲル抽出で精製した。最終生成物約5μgのDNAを酵母形質転換のために使用した。形質転換された細胞を、100μg/mlの硫酸ノルセオトリシンを含有するYPD培地中で成長させ、同じ抗生物質を含有するYPG培地中で誘導した。次いで、10nMのタンパク質Cタグ付きPtch1-Cとともにインキュベートし、選択緩衝液中で洗浄し、次いで1μMの23T(第1ラウンドの親和性成熟からのコンセンサス配列を有する精製ナノボディタンパク質)とともに1日間インキュベートした。次いで、FITC標識されたHA及びAlexa 647標識された抗タンパク質C抗体で細胞を染色し、PTCH1-高細胞をFACS中で選択した。細胞をYPD中で増殖させ、再び誘導した。集団を更に精製するために、同じFACS選択手順を繰り返した。次いで、最初の酵母ライブラリ及び最終選択ライブラリから調製したプラスミドからのナノボディ配列をQ5ポリメラーゼで増幅し、MGH配列決定コアでアンプリコン配列決定のために送った。
【0127】
PTCH1精製。PTCH1の精製を、前述のように、わずかな変化を伴って実施した。懸濁液293細胞を1.2~1.6×106/mlの密度まで増殖させ、10mMの酪酸ナトリウムを補充し、高力価のPtch1-SBPバキュロウイルスに40~48時間感染させた。細胞ペレットを-80℃で保管した。ペレットを、プロテアーゼ阻害剤及びベンゾナーゼを補充した低張性緩衝液(20mMのHEPES pH7.5、10mMのMgCl2、10mMのKCl、0.25Mのスクロース)中に解凍した。粗膜を、遠心分離(100,000×g、30分、4℃)でペレット化した。ペレットを、プロテアーゼ阻害剤で溶解緩衝液(300mMのNaCl、20mMのHEPES pH7.5、2mg/mlヨードアセトアミド、1%DDM/0.2%CHS)中に再懸濁し、穏やかな回転で4℃で1時間可溶化した。遠心分離(100,000×g、30分、4℃)後、上清を、穏やかに回転させながら、4℃で2~3時間、バッチモードでストレプトアビジン-アガロース親和性樹脂とともにインキュベートした。樹脂を使い捨てカラムに充填し、20~30カラム体積の緩衝液(20mMのHEPES pH7.5、300mMのNaCl、0.03%のDDM/0.006%のCHS)で洗浄した。タンパク質を、2.5mMのビオチンを補充した同じ緩衝液中で溶出した。
【0128】
クライオEMデータの取得。溶出したPtch1-Bタンパク質を、TI23と1:1.1の比で混合し、次いで、SEC緩衝液(20mMのHEPES、pH8、150mMのNaCl、0.02%GDN)で予め平衡化したSuperdex 200カラム上にロードした。ピーク画分を収集し、100kDa~A280~4.5の分子量カットオフを有するAmiconフィルターで濃縮した。2.5μLの試料を、vitrobot上の発光放電量子箔グリッドに適用した。試料チャンバを100%相対湿度で維持した。グリッドを10秒間ブロットし、液体窒素によって冷却された液体エタン浴中に沈めた。300kVで動作するTitan Krios 2電子顕微鏡で、クライオグリッドを撮像した。GIF前のK2カメラ上で、1.059Å(1超分解画素当たり0.5295Å)のピクセルサイズに対応する22.5kの公称倍率で、用量分画モードで画像を撮影した。線量率は約8e/ピクセル/秒であり、総露光時間は、0.2s/フレームのフレームレートで12sであった。デフォーカス範囲は-1μm~-3μmで、SerialEMを用いて全自動データ収集を実施した。ゲイン参照は、データ収集の開始時に取得され、後でデータ処理に適用された。
【0129】
画像処理。合計7,046本のムービースタックが収集された。ムービースタックは、ゲイン参照によって補正され、2回ビニングされ、MotionCor2を使用してビーム誘導運動について補正された。CTFは、cryoSPARC2で提供されるラッパーを使用して、用量重み付けを行わずに、動き補正された合計からCTFFIND4で決定された。以下の全ての処理工程に用量加重合計を使用した。粒子は、cryoSPARC2を自動ピックした。タンパク質分子に対応する粒子を2D分類から選択した。次いで、これらの粒子は最初から再構成され、次いで、最初のモデルとして最後の工程から生成されたマップの2つのコピーと1つのジャンクマップとを使用して、3つの分類に不均一な詳細化で分類された。最良の分類は、均質な詳細化のために選択され、次いで、不均一詳細化のために、4.1Åのマップを得るために選択された。次いで、粒子を3D変動解析ツールで分析し、第1の固有ベクトルの2つの極端を更なる3D分類の基礎として使用した。最終的な3D分類は、3.7Åの分解能まで不均一詳細化で洗練された。次いで、pyEM中のスクリプトを使用して、粒子スタックをcisTEMにエクスポートした。洗剤ミセルを除いたマスクを用いて局所的詳細化を1回繰り返した後、3.4Åのマップを報告した。鋭利化後の最終マップをモデル構築に使用した。
【0130】
タンパク質モデル構築。鋳型構造として4mqtB及び5m30Fを使用して、rosettaCMでナノボディTI23構造を生成した。生成された構造及び以前に決定されたPTCH1構造(6mg8)を、クライオEMマップにドッキングし、モーフィングによりphenix.real_space_refineで洗練した。次に、洗練されたモデルをクート(coot)で手動で編集して、現在新しい構造及び低分子で分解されている残基中に添加した。小分子の制約は、PRODRGサーバ上で生成された。次いで、構造全体がphenix.real_space_refineで洗練された。
【0131】
FACSベースのShhN結合アッセイ。293細胞を、GFPタグ付きPtch1構築物で一過的にトランスフェクトした。24時間後、細胞を、10mMのEDTAを使用して解離させ、HPBS0.5mMのCa2+で洗浄し、遠心分離によってペレット化した。次いで、細胞を結合緩衝液(HPBS、0.5mMのCa2+、0.5mg/mlのBSA)中に再懸濁し、精製したShhN-ビオチン(1:400希釈)とともに4℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞を結合緩衝液中で遠心分離によって3回洗浄し、その後、Alexa Fluor 647ストレプトアビジンコンジュゲート(Invitrogen)とともに4℃で15分間インキュベートした。次いで、洗浄緩衝液(結合緩衝液+1mMビオチン)中での遠心分離によって細胞を3回洗浄し、ShhNによって結合した細胞のパーセンテージを、PTCH1-GFP発現のゲーティング後のフローサイトメトリーによって定量した(BD FACSAria II,Stanford Stem Cell Institute FACS Core)。
【0132】
Gli依存性ルシフェラーゼアッセイ。ルシフェラーゼアッセイを、前述のように、Ptch1-/-MEFで実施した。Ptch1-/-MEFを24ウェルプレートに播種し、次いで、8xGliホタルルシフェラーゼ及びSV40-レニラ(renilla)ルシフェラーゼプラスミドを含有する混合物とともに、様々なプラスミドでトランスフェクトした。各ウェルについて、Ptch1-Bバリアントをコードする2ng(0.4%)のプラスミド、又は全長PTCH1をコードする5ng(1%)のプラスミドを使用した。細胞をコンフルエントさせたとき、それらを、ShhN調節培地又は対照培地を含有する0.5%の血清を含むDMEMに移し、48時間インキュベートした。次いで、ルシフェラーゼ活性を、Berthold Centro XS3光度計を使用して測定した。ShhN条件化培地は、Shhのアミノシグナル伝達ドメインを発現するプラスミドでトランスフェクションした293細胞から調製した。要するに、293細胞を、リポフェクタミン2000でShhN発現プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの12時間後、培養培地を2%FBS低血清培地に置き換えた。次いで、培地変化の48時間後に条件化培地を回収し、1:10でルシフェラーゼアッセイに使用した。
【0133】
細胞コレステロールの測定。Perfringolysin O D4ドメイン(a.a.391-500)及び変異体は、E.coli BL21 RILコドンプラス(Stratagene)細胞においてHis6タグ付きタンパク質として発現し、His6親和性樹脂(GenScript)を使用して精製した。これらのタンパク質を、単一のCys部位(C459)で、ソルバトクロミックフルオロフォアによって標識して、比率センサを生成した。Ptch1-/-MEFを50mmの円形ガラス底プレート(MatTek)に播種し、10%(v/v)の致死性ウシ血清(FBS)、100U/mlのペニシリンG、及び100μg/mlのストレプトマイシン硫酸塩(Life technologhs)を補充した、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)(Life Techonologies)中の95%の空気及び5%のCO2の加湿雰囲気中で、37℃で増殖させた。培養容器に結合した後(約24時間)、製造業者のプロトコルに従って、jetPRIMEトランスフェクション試薬(Polyplusトランスフェクション)を使用して、Ptch1-Bバリアントをコードするプラスミドで細胞を一過的にトランスフェクトした。各トランスフェクションに1μgのプラスミドを使用した。いくつかの修正を加えて、前述のようにコレステロールセンサを使用して、形質膜の内(IPM)葉中のコレステロールを定量化した。具体的には、(2Z,3E)-3-((アクリロイルオキシ)イミノ)-2-((7-(ジエチルアミノ)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)メチレン)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-オン(WCR)で標識されたD4ドメインのY415A/D434W/A463W(YDA)変異体を、IPMコレステロール([Chol]i)の定量のためにマイクロインジェクションにより細胞内に送達した。全てのセンサ較正、顕微鏡測定、及び比率測定画像データ分析を、記載の通りに実施した。
【0134】
マウス。全ての手順を、スタンフォード大学の動物実験委員会(IACUC)承認プロトコルに従って実施した。野生型FVB/NCrl(207)マウスをCharles Riverから購入した。7週齢の雄マウスを、所定の試料サイズの群にランダムに割り付けた。直接比較を伴う全ての実験を並行して実施し、変動を最小限に抑えた。ヘッジホッグアゴニストSAG21kを、2mg/kg/日の用量で2週間にわたって浸透圧ポンプ(Alzet)によって送達した。
【0135】
アデノ随伴ウイルス(AAV)の産生。全てのAAVプラスミドの骨格は、bGHに置き換えられたポリ(A)シグナルを有するpAAV-EF1a-Cre(Addgene、55636)に基づいた。感染細胞で発現するために、ナノボディ配列をベクターにクローニングした。HEK293T細胞内でAAVを生成し、説明されるように、イオジキサノール(Optiprep、Sigma、D1556)工程勾配によって精製した。ウイルス力価は、DNase I耐性ウイルスゲノムを、直鎖化ウイルスゲノムプラスミドを標準として使用してqPCRで定量化することによって測定した。精製したウイルスを、マウス1匹当たり1×1011μg又は他の具体的に示された力価で、眼窩後洞を介して麻酔したマウスに静脈内注射した。
【0136】
組織学。動物を安楽死させ、背部皮膚をRNA抽出のために切除した。次いで、マウスにPBS及び4%パラホルムアルデヒド(PFA)をPBS中に灌流し、舌及び背側皮膚を4%PFA中に24時間固定した。マウスGli1プローブ(311001)を使用して、RNAScope多重蛍光キット(ACDシステム)に従って、舌をインサイツハイブリダイゼーションのために処理し、続いて記載されるように免疫染色を行った。免疫蛍光イメージングを、レーザー走査共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 800)で実施した。皮膚は、スタンフォード大学の動物組織学サービスによって標準的なH&E染色のために処理された。
【0137】
RNA抽出及びqRT-PCR。皮膚試料を均質化し、TRIzolを使用してRNA用に抽出し、続いてRNeasyミニキット(QIAGEN)及びDNaseセット(QIAGEN)を抽出した。Gli1及びHprt1レベルは、TaqMan遺伝子発現アッセイ(Gli1、Mm00494654_m1、Hprt、Mm00446968_m1、Thermo Fisher)を用いたSuperScript III白金ワンステップシステムを使用して、ABI7900HT器具上の1ステップ定量的逆転写酵素PCR(qRT-PCR)によって決定した。対照群との相対的な正規化発現レベルを、通常の一元配置分散分析ANOVA検定とダネットの多重比較補正とを使用して比較した。
【0138】
【0139】
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【0140】
実施例2
ヘッジホッグ経路の全身経路活性化は、望ましくない効果を有し得、治療的適用は、組織標的化に適した経路活性化剤の欠如のために困難であった。単一ドメインタンパク質として、本明細書に開示されるナノボディは、工学に適しており、ヘッジホッグ経路活性の正確な制御のために、特定の組織区画を標的にすることができる。
【0141】
最近の研究は、増殖性及び分化性の手がかりの同時産生を通じた上皮臓器の維持及び再生のための間葉系の鋳型としての間葉系のニッチの役割に新たな光をもたらした。間葉区画における優先的なヘッジホッグ経路活性化を達成するために、コラーゲンI型結合ペプチド(配列番号26、LRELHLNNN)をTI23配列に付加し、このバリアントTI23
コラーゲンI、又はTI23
Col1と名付けた(
図9A)。成熟タンパク質は、配列番号25に示される。I型コラーゲンは、間葉区画では広く発現するが、上皮では発現しないため、我々は、TI23
Col1が、間葉におけるヘッジホッグ経路に集中し、効率的に活性化することを期待した。舌上皮は、ディスパーゼ処理後に間葉から容易に分離することができ、組織標的化を実証するために舌を使用した(
図9B)。TI23
Col1ウイルスを受けた動物において、間葉系Gli1の発現は、TI23ウイルスを受けた動物と同様のレベルで約11.7倍高い力価で観察された(
図9C)。したがって、類似のレベルの間葉系発現のために、TI23
Col1ウイルスの力価の約8.5%のみがTI23ウイルスと比較して必要とされる。対照的に、上皮におけるGli1発現は、対照動物におけるレベルと同様に、TI23
Col1を受けた動物において最小であり(
図9D)、TI23
Col1が間葉におけるヘッジホッグ経路を優先的に活性化することを示すことに留意されたい。
【0142】
ペプチド又はナノボディ又は他の標的化配列を融合する類似の戦略を使用して、ヘッジホッグ経路の活性化を他の特定の区画に制限することができる。
【0143】
実施例3
完全に遺伝的にコード可能なヘッジホッグタンパク質模倣物であるTI23は、また、前例がない特性を有する多様な経路アゴニストの組のタンパク質工学を可能にする。例えば、現在、天然又は合成分子は、細胞自律型又は細胞型特異的な方法で、Patched1を阻害し、Hh経路活性を刺激することができない。これは、配列番号27に示す、ナノボディを発現する細胞内で特異的に繊毛膜上のPatched1を不活性化する、繊毛膜繋ぎ止めTI23(
図A及びB)を操作することによって達成することができる。
【0144】
そのような操作されたTI23の有用性は、数倍である。1.細胞又は組織型特異的プロモーターと組み合わせる場合、そのような構築物は、遺伝的に定義された細胞サブ集団においてHh経路を活性化する有望なモダリティを提供する。2.この繊毛膜繋ぎ止めTI23の発現は、また、制御された経路活性化のために、特定の化学的又は物理的(光学的、磁気的、音響的、温度など)刺激に応答する誘導性プロモーターの制御下にあることができる。3.加えて、TI23の発現レベル及びナノボディとPatched1との間の親和性の両方が微調整され得るので、Hh経路活性化の程度は、そのようなアプローチを使用して正確に調節され得る。
【0145】
配列
>10(配列番号1)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGTIFLSHYMGWYRQAPGKERELVAAINFGTSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAAFTPIFHHLYWGQGTQVTVSS
>12(配列番号2)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGSIFLPYYMGWYRQAPGKERELVASIDQGGNTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVAYTPEVYHIYWGQGTQVTVSS
>13(配列番号3)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGSISDTGDMGWYRQAPGKERELVASIGGGTSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAALRNYGIFYVSKYSYWGQGTQVTVSS
>15(配列番号4)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFDDGNMGWYRQAPGKEREFVAAIAYGSSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAYFPDNPPYYYWGQGTQVTVSS
>17(配列番号5)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFDGNLMGWYRQAPGKEREFVAAITGGASTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAGWLYTPVFYYWGQGTQVTVSS
>19(配列番号6)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGYIFWYVNMGWYRQAPGKERELVAGIDHGTNTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAGKGYRYGFQYWGQGTQVTVSS
>1(配列番号7)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGTIFYLYYMGWYRQAPGKEREFVAGIGEGGTTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAVINVLGHHGYWGQGTQVTVSS
>20(配列番号8)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFLWESMGWYRQAPGKEREFVASINTGSSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVRVISWYNFRYWGQGTQVTVSS
>22(配列番号9)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGTIFQAGGMGWYRQAPGKEREFVATIGHGSSTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAWWDLRHEYWGQGTQVTVSS
>23(配列番号10)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVAGIDIGGNTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVPYRYHGYWGQGTQVTVSS
>2(配列番号11)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGTISTATQMGWYRQAPGKEREFVAAIAYGGITYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAALPDYYHYHVYWGQGTQVTVSS
>3(配列番号12)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGSISTIQQMGWYRQAPGKEREFVAAIGFGTITYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAQWTIWDAHTYWGQGTQVTVSS
>6(配列番号13)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGYIFADQGMGWYRQAPGKERELVATIDVGATTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVGITINGVIYVPHGYWGQGTQVTVSS
>10(配列番号14)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGTIFLSHYMGWYRQAPGKERELVAAINFGTSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAAFTPIFHHLYWGQGTQVTVSS
>12(配列番号15)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGSIFLPYYMGWYRQAPGKERELVASIDQGGNTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVAYTPEVYHIYWGQGTQVTVSS
>13(配列番号16)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGSISDTGDMGWYRQAPGKERELVASIGGGTSTNYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAALRNYGIFYVSKYSYWGQGTQVTVSS
>17(配列番号17)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFDGNLMGWYRQAPGKEREFVAAITGGASTYYADSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAAGWLYTPVFYYWGQGTQVTVSS
配列番号10の既知の配列変異
配列番号10のバリエーションは、活性において配列番号10を維持するか、又はそれを上回ることが観察されている。活性に影響を与える配列のいくつかの重要な位置を以下に示す。
(配列番号24)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVA[G/A/S/T/D]IDIGGNTNYADSVKGRFTISRDNAKN[T/N]VYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVP[Y/I]RY[H/R][G/R]YWGQGTQVTVSS
ナノボディ配列としては、以下が挙げられる。
>10-1(配列番号18)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVAGIDIGGNTNYA
DSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVPYRYHRYWGQGTQVTVSS
>10-2(配列番号19)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVASIDIGGSTNYA
DSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYHCVVQAVPYRYRGYWGQGTQVTVSS
>10-3(配列番号20)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVAAIDIGGNTNYA
DSVKGRFTVSRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYGAVQAVPYRYHRYWGQGTQVTVSS
>10-4(配列番号21)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVADIDIGGNTNYA
DSVKGRFTISRDNTKNNVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVPYRYHGYWGQGTQVTVSS
>10-5(配列番号22)
QVQLQESGGGLVQAGGNLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVATIDIGSNTNYA
DSVKGRFNISRDNAKNIVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVPYRYRRYWGQGTQVTVSS
>10-6(配列番号23)
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVATIDIGGNTNYA
DSVKGRFTISRDNAKNNVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVPIRYRRYWGQGTQVTVSS
配列番号25、リンカーを介して末端に融合されたCOL1結合配列(配列番号25)を含むTI23Col1タンパク質。
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVATIDIGGNTNYADSVKGRFTISRDNAKNNVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVPIRYRRYWGQGTQVTVSSYPYDVPDYAGSGLRELHLNNN
配列番号26
LRELHLNNN
配列番号27、成熟TI23ナノボディを、CD8(配列番号27)の膜貫通ドメイン及び繊毛局在化配列(配列番号28)に融合させる。
QVQLQESGGGLVQAGGSLRLSCAASGNIFAYYIMGWYRQAPGKERELVATIDIGGNTNYADSVKGRFTISRDNAKNNVYLQMNSLKPEDTAVYYCAVQAVPIRYRRYWGQGTQVTVSSGSQFRVSPLDRTWNLGETVELKCQVLLSNPTSGCSWLFQPRGAAASPTFLLYLSQNKPKAAEGLDTQRFSGKRLGDTFVLTLSDFRRENEGYYFCSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCLSYRFKQGFRRILLRPSRRIRSQEPGSGPPEKTEEEEDEEEEERREEEERRMQRGQEMNGRLSQIAQAGTSGQQPRPCTGTAKEQQLLPQEATAGDKASTLSHL
配列番号28CD8a膜貫通ドメイン
SQFRVSPLDRTWNLGETVELKCQVLLSNPTSGCSWLFQPRGAAASPTFLLYLSQNKPKAAEGLDTQRFSGKRLGDTFVLTLSDFRRENEGYYFCSALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC
配列番号29繊毛局在化配列、Sstr3 CLS(元のタンパク質由来のaa 325-428)
LSYRFKQGFRRILLRPSRRIRSQEPGSGPPEKTEEEEDEEEEERREEEERRMQRGQEMNGRLSQIAQAGTSGQQPRPCTGTAKEQQLLPQEATAGDKASTLSHL
【0146】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月25日に出願された米国仮特許出願第63/083,544号の利益及び優先権を主張し、その開示全体が本明細書に記載されている。
【0147】
連邦政府による資金提供の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された契約GM102498下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0148】
テキストファイルとして提供される配列表の参照による組み込み
配列表は、2021年9月27日に作成され、45000バイトのサイズを有するテキストファイル(STAN-1688WO_SEQLIST_ST25.txt)で本明細書とともに提供される。テキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】