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特表2023-543241分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/40 20210101AFI20231005BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M50/40
H01M50/489
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/414
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/403 D
H01M50/491
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519126
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 KR2022004989
(87)【国際公開番号】W WO2022216063
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0044855
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-シク・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ホ-スン・カン
(72)【発明者】
【氏名】イェルン-スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ-ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ソブ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヨン・ファン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021BB20
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE21
5H021HH00
(57)【要約】
良品または不良品を検出するため、多数の気孔を有する多孔性高分子基材を選定する段階と、前記選定された多孔性高分子基材を電子顕微鏡で観察して前記多孔性高分子基材のイメージを取得する段階と、前記取得された多孔性高分子基材のイメージを用いて気孔分布均一度指数(PDI)の平均値を定量化する段階と、前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値を求める段階と、前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下であるか否かを確認する段階と、前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下と確認された場合は良品に分類し、前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.超過と確認された場合は不良品に分類する段階と、を含む、分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法が提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
良品または不良品を検出するため、多数の気孔を有する多孔性高分子基材を選定する段階と、
前記選定された多孔性高分子基材を電子顕微鏡で観察して前記多孔性高分子基材のイメージを取得する段階と、
前記取得された多孔性高分子基材のイメージを用いて気孔分布均一度指数(PDI)の平均値を定量化する段階と、
前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値を求める段階と、
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下であるか否かを確認する段階と、
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下と確認された場合は良品に分類し、前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u超過と確認された場合は不良品に分類する段階と、を含む、分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法。
【請求項2】
前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階が、電子顕微鏡で測定した前記多孔性高分子基材のイメージを数学的理論(ユークリッド距離測定法)とコンピュータ工学的アルゴリズムを通じて定量化する段階である、請求項1に記載の分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法。
【請求項3】
前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階が、電子顕微鏡で測定した前記多孔性高分子基材のイメージから気孔間距離及び気孔サイズを計算する段階を含む、請求項2に記載の分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法。
【請求項4】
前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階が、
電子顕微鏡で測定した前記多孔性高分子基材のローイメージのピクセルを、互いに隣接するか又は交わる複数の高分子フィブリル領域を表すピクセルと、前記複数の高分子フィブリル同士の間に形成された気孔領域を表すピクセルとに領域を分割した2次元バイナリイメージを取得する段階と、
前記2次元バイナリイメージをコンピュータユークリッド距離変換方式を用いて距離変換する段階と、
前記距離変換されたイメージにローカルマキシマ演算を適用して前記イメージの全体ピクセルの距離変換数値を抽出し統計処理する段階と、を含む、請求項2に記載の分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法。
【請求項5】
前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)を求める段階が、下記の数式1で計算される、請求項1に記載の分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法。
[数式1]
補正平均PDI=補正前平均PDI×(1/η)
数式1において、ηは補正因子であって、η=(高分子フィブリルピクセルの数)/(全体イメージピクセルの数)で定義される。
【請求項6】
前記良品に分類された多孔性基材の少なくとも一面上に、無機物粒子、バインダー高分子、及び分散媒を含むスラリーを塗布及び乾燥して有機-無機複合多孔性層を形成させて得た分離膜が、600秒/100cc以下の通気度を有する、請求項1から5の何れか一項に記載の分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法。
【請求項7】
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が40a.u.以下と確認された場合は良品に分類し、前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が40a.u.超過と確認された場合は不良品に分類する、請求項1に記載の分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法に関する。
【0002】
本出願は、2021年4月6日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0044855号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が益々高まっている。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、電気化学素子の研究と開発に対する努力が益々具体化されている。電気化学素子はこのような面から最も注目されている分野であり、なかでも充放電可能な二次電池の開発には関心が集まっている。近年はこのような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるために新たな電極と電池の設計に関連する研究開発が行われている。
【0004】
現在適用されている二次電池のうち1990年代初頭に開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの従来の電池に比べて、作動電圧が高くてエネルギー密度が格段に高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
このようなリチウム二次電池は、正極、負極、電解液、分離膜を含み、そのうちの分離膜には、正極と負極とを分離して電気的に絶縁させるための絶縁性、及び高い気孔度に基づいてリチウムイオンの透過性を高めるための高いイオン伝導度が要求される。
【0006】
このような分離膜は、一般に、ポリオレフィンのような高分子と希釈剤とを混練し、押出、延伸してフィルムを形成した後、希釈剤を溶媒などを用いて抽出して気孔を形成する方式で製造された多孔性高分子基材の形態で適用され得、このような多孔性高分子基材の少なくとも一面上に、バインダー高分子及び無機物粒子を含む有機-無機複合多孔性層が備えられた複合分離膜の形態も適用され得る。
【0007】
このとき、二次電子用分離膜に適用される多孔性高分子基材は、製造時の工程条件によって物性を多様に調整可能である。特に、リチウムイオンの通路である多孔性高分子基材の気孔構造も工程条件によって多様に変わり得る。
【0008】
特に、延伸工程中に過度な熱が加えられた場合、最終的に得られる多孔性高分子基材の気孔サイズが大きくなるか、多孔性高分子基材の表面モルフォロジー(morphology)が不均一になるか、それとも、多孔性高分子基材に含まれる高分子のフィブリル(fibril)が太く形成されるなどのイシューが発生し得る。このようなイシューは、多孔性高分子基材を複合分離膜の形態で適用する場合、有機-無機複合多孔性層の形成後に分離膜の通気時間が過剰に増加するという問題を有する。
【0009】
これは、分離膜の通気時間など単品の物性を測定することでは観察されず、特に、キャピラリー・フロー・ポロメーター(Capillary Flow Porometer)を用いて気孔サイズを測定する場合は、測定位置(site)毎に測定値が相違して品質管理の面で不利である。
【0010】
したがって、分離膜素材である多孔性高分子基材の品質を管理するため、気孔サイズ不良品(モルフォロジー不均一)を容易に確認できる方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、品質を管理するため、分離膜の外観不良を容易に確認することができる分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、下記具現例による分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法を提供する。
【0013】
第1具現例によれば、
良品または不良品を検出するため、多数の気孔を有する多孔性高分子基材を選定する段階と、
前記選定された多孔性高分子基材を電子顕微鏡(SEM)で観察して前記多孔性高分子基材のイメージを取得する段階と、
前記取得された多孔性高分子基材のイメージを用いて気孔分布均一度指数(pore distribution index(PDI))の平均値を定量化する段階と、
前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値を求める段階と、
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.(arbitrary unit(任意単位))以下であるか否かを確認する段階と、
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下と確認された場合は良品に分類し、前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.超過と確認された場合は不良品に分類する段階と、を含む、分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法が提供される。
【0014】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階が、電子顕微鏡(SEM)で測定した前記多孔性高分子基材のイメージを数学的理論(ユークリッド距離測定法)とコンピュータ工学的アルゴリズムを通じて定量化する段階であり得る。
【0015】
第3具現例によれば、第2具現例において、
前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階が、電子顕微鏡(SEM)で測定した前記多孔性高分子基材のイメージから気孔間距離及び気孔サイズを計算する段階を含み得る。
【0016】
第4具現例によれば、第2具現例または第3具現例において、
前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階が、
電子顕微鏡(SEM)で測定した前記多孔性高分子基材のローイメージ(raw image)のピクセルを、互いに隣接するか又は交わる複数の高分子フィブリル領域を表すピクセルと、前記複数の高分子フィブリル同士の間に形成された気孔領域を表すピクセルとに領域を分割した2次元バイナリイメージ(2-D binary image)を取得する段階と、
前記2次元バイナリイメージをコンピュータユークリッド距離変換方式を用いて距離変換する段階と、
前記距離変換されたイメージにローカルマキシマ(local maxima)演算を適用して前記イメージの全体ピクセルの距離変換数値を抽出し統計処理する段階と、を含み得る。
【0017】
第5具現例によれば、第1具現例~第4具現例のうちの一具現例において、
前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)を求める段階が、下記の数式1で計算され得る。
[数式1]
補正平均PDI=補正前平均PDI×(1/η)
数式1において、ηは補正因子であって、η=(高分子フィブリルピクセルの数)/(全体イメージピクセルの数)で定義される。
【0018】
第6具現例によれば、第1具現例~第5具現例のうちの一具現例において、
前記良品に分類された多孔性基材の少なくとも一面上に、無機物粒子、バインダー高分子、及び分散媒を含むスラリーを塗布及び乾燥して有機-無機複合多孔性層を形成させて得た分離膜が、600秒/100cc以下の通気度を有し得る。
【0019】
第7具現例によれば、第1具現例~第6具現例のうちの一具現例において、
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が40a.u.以下と確認された場合は良品に分類し、前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が40a.u.超過と確認された場合は不良品に分類し得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一具現例による分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法は、多孔性高分子基材の少なくとも一面上に有機-無機複合多孔性層を備えた分離膜を最終的に製造した後に分離膜の通気度特性などの不良品を確認する従来の方法と比べて、有機-無機複合多孔性層を形成する前に、分離膜素材である多孔性高分子基材の段階において多孔性高分子基材のイメージ上の相違点を用いて明確に不良品を検出することができる。すなわち、電子顕微鏡(SEM)で観察して得た多孔性高分子基材のイメージを用いて気孔分布均一度指数(PDI)の平均値を定量化し、補正して得た結果値と所定基準値との大小比較を通じて多孔性高分子基材の良品及び不良品を検出できるため、従来の分離膜段階で不良品を確認する方法に比べて時間及びコストを著しく節減することができる。
【0021】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1a】製造例1で製造された多孔性ポリオレフィン基材のSEMイメージである。
図1b】製造例1で製造された多孔性ポリオレフィン基材の距離変換結果を示したイメージである。
図1c】製造例1で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)、及び補正された気孔分布均一度指数のグラフを示した図である。
図2a】製造例2で製造された多孔性ポリオレフィン基材のSEMイメージである。
図2b】製造例2で製造された多孔性ポリオレフィン基材の距離変換結果を示したイメージである。
図2c】製造例2で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)、及び補正された気孔分布均一度指数のグラフを示した図である。
図3a】製造例3で製造された多孔性ポリオレフィン基材のSEMイメージである。
図3b】製造例3で製造された多孔性ポリオレフィン基材の距離変換結果を示したイメージである。
図3c】製造例3で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)、及び補正された気孔分布均一度指数のグラフを示した図である。
図4a】製造例4で製造された多孔性ポリオレフィン基材のSEMイメージである。
図4b】製造例4で製造された多孔性ポリオレフィン基材の距離変換結果を示したイメージである。
図4c】製造例4で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)、及び補正された気孔分布均一度指数のグラフを示した図である。
図5a】製造例5で製造された多孔性ポリオレフィン基材のSEMイメージである。
図5b】製造例5で製造された多孔性ポリオレフィン基材の距離変換結果を示したイメージである。
図5c】製造例5で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)、及び補正された気孔分布均一度指数のグラフを示した図である。
図6a】製造例1で製造された多孔性ポリオレフィン基材のローイメージである。
図6b】製造例1で製造された多孔性ポリオレフィン基材の2次元バイナリイメージである。
図6c】製造例1で製造された多孔性ポリオレフィン基材の定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)グラフである。
図6d】製造例1で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)グラフである。
図7a】製造例4で製造された多孔性ポリオレフィン基材のローイメージである。
図7b】製造例4で製造された多孔性ポリオレフィン基材の2次元バイナリイメージである。
図7c】製造例4で製造された多孔性ポリオレフィン基材の定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)グラフである。
図7d】製造例4で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)グラフである。
図8】ローイメージから気孔分布均一度指数の平均値を定量化する一連の段階の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲において使われた用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0024】
本発明の一実施形態による分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法は、
良品または不良品を検出するため、多数の気孔を有する多孔性高分子基材を選定する段階と、
前記選定された多孔性高分子基材を電子顕微鏡(SEM)で観察して前記多孔性高分子基材のイメージを取得する段階と、
前記取得された多孔性高分子基材のイメージを用いて気孔分布均一度指数(pore distribution index(PDI))の平均値を定量化する段階と、
前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値を求める段階と、
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下であるか否かを確認する段階と、
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下と確認された場合は良品に分類し、前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.超過と確認された場合は不良品に分類する段階と、を含む。
【0025】
まず、良品または不良品を検出するため、多数の気孔を有する多孔性高分子基材を選定する。
【0026】
ここで、多孔性高分子基材とは、有機-無機複合多孔層を備えた分離膜において、有機-無機複合多孔層が形成される前の分離膜素材を称する。前記多孔性高分子基材は、複数の高分子繊維が互いに平行にまたは互いに交わって配列され、前記複数の高分子繊維同士の間に形成された多数の気孔を含んでおり、繊維領域と気孔領域とを含み得る。
【0027】
前記多孔性高分子基材は、具体的には、多孔性高分子フィルム基材または多孔性高分子不織布基材であり得る。
【0028】
前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンからなる多孔性高分子フィルムであり得、このようなポリオレフィン多孔性高分子フィルム基材は、例えば80~130℃の温度でシャットダウン(shut-down)機能を発現する。
【0029】
このとき、ポリオレフィン多孔性高分子フィルムは、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独でまたはこれらの2種以上を混合して形成し得る。
【0030】
また、前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリオレフィンの他にポリエステルなどの多様な高分子を用いてフィルム状に成形して製造してもよい。また、前記多孔性高分子フィルム基材は、2層以上のフィルム層が積層された構造で形成され得、各フィルム層は上述したポリオレフィン、ポリエステルなどの高分子を単独でまたはこれらを2種以上混合した高分子から形成され得る。
【0031】
また、前記多孔性高分子フィルム基材及び多孔性不織布基材は、ポリオレフィン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイドなどをそれぞれ単独でまたはこれらを混合した高分子から形成され得る。
【0032】
前記多孔性高分子基材の厚さは、特に制限されないが、詳しくは1~100μm、より詳しくは5~50μmであり、多孔性高分子基材に存在する気孔サイズ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.01~50μm及び10~95%であり得る。
【0033】
前記多孔性高分子基材としては、多孔性ポリオレフィン基材が特に使用され得、このとき、ポリオレフィンは、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリヘキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4-メチルペンテン、ヘキセン、及びオクテンのうちの2種以上の共重合体;またはこれらの混合物を含み得る。
【0034】
特に、前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などがあり、中でも結晶度が高くて樹脂の溶融点が高い高密度ポリエチレンが主に使用され得る。
【0035】
本発明の一具現例において、前記ポリオレフィンの重量平均分子量は200,000~1,500,000、220,000~1,000,000、または250,000~800,000であり得る。本発明では、200,000~1,000,000の重量平均分子量を有する高分子量のポリオレフィンを分離膜製造の出発物質として使用することで、分離膜の均一性及び製膜工程性を確保しながら、最終的に強度及び耐熱性に優れた分離膜を得ることができる。
【0036】
次いで、前記選定された多孔性高分子基材を電子顕微鏡(SEM)で観察して前記多孔性高分子基材のイメージを取得する。
【0037】
本発明の一具現例によれば、電子顕微鏡(SEM)を用いて5kV、10μAの条件、20,000倍率で前記多孔性高分子基材のイメージが得られる。
【0038】
前記取得された多孔性高分子基材のイメージを用いて気孔分布均一度指数(PDI)の平均値を定量化する。
【0039】
前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階では、電子顕微鏡(SEM)で測定した前記多孔性高分子基材のイメージを数学的理論(ユークリッド距離測定法)とコンピュータ工学的アルゴリズムを通じて定量化し得る。
【0040】
前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階は、電子顕微鏡(SEM)で測定した前記多孔性高分子基材のイメージから気孔間距離及び気孔サイズ(面積比)を計算する段階を含み得る。
【0041】
本発明の一具現例によれば、前記気孔分布均一度指数の平均値を定量化する段階は、電子顕微鏡(SEM)で測定した前記多孔性高分子基材のローイメージ(raw image)のピクセルを、互いに隣接するか又は交わる複数の高分子フィブリル領域を表すピクセルと、前記複数の高分子フィブリル同士の間に形成された気孔領域を表すピクセルとに領域を分割した2次元バイナリイメージ(2-D binary image)を取得する段階と、前記2次元バイナリイメージをコンピュータユークリッド距離変換方式を用いて距離変換する段階と、前記距離変換されたイメージにローカルマキシマ演算を適用して前記イメージの全体ピクセルの距離変換数値を抽出し統計処理する段階と、を含み得る。
【0042】
このとき、前記距離変換されたイメージにローカルマキシマ演算を適用して前記イメージの全体ピクセルの距離変換数値を抽出し統計処理する段階は、前記距離変換されたイメージを距離変換数値のローカルミニマ(local minima)を境界にしてセグメント分離する段階と、前記分離されたセグメントの距離変換数値のローカルマキシマ(local maxima)を前記分離されたセグメントの全体ピクセルの距離変換数値で満たし、各ピクセルの全体距離変換数値を抽出し統計処理する段階と、を含み得る。
【0043】
このようなローイメージから気孔分布均一度指数の平均値を定量化する一連の段階の例が図8に示されている。
【0044】
その後、前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値を求める。
【0045】
多孔性高分子基材は、それを構成する高分子フィブリルの配列、及び隣接する複数の高分子フィブリル同士の間に形成される気孔から構成され、このとき、気孔領域の分布と面積によって多孔性高分子基材の通気度などの分離膜素材として求められる物性に影響を与え得る。
【0046】
すなわち、定量化された気孔分布均一度指数の平均値が同一な多孔性高分子基材であっても、その多孔性高分子基材内に形成された気孔領域の面積によって、多孔性高分子基材の物性が相異なり得るため、本発明ではこのように定量化された気孔分布均一度指数の平均値を補正する。
【0047】
具体的には、定量化された気孔分布均一度指数は、フィブリルに該当するピクセルを基準にして気孔との距離を計算するため、気孔の面積特性を反映できないという限界がある。全体イメージピクセルの数に対する高分子フィブリルピクセルの数の比を補正因子(η)として定義し、気孔分布均一度指数の平均値を補正因子で分けることで、気孔が大きくて多い場合、気孔分布均一度指数の平均値をより大きくして気孔領域の影響を反映することができる。
【0048】
前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)を求める段階は、下記の数式1で計算され得る。
【0049】
[数式1]
補正平均PDI=補正前平均PDI×(1/η)
数式1において、ηは補正因子であって、η=(高分子フィブリルピクセルの数)/(全体イメージピクセルの数)で定義される。
【0050】
前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下であるか否かを確認する。このとき、前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下と確認された場合は良品に分類し、前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.超過と確認された場合は不良品に分類する。
【0051】
本発明の一具現例によれば、前記補正された気孔分布均一度指数の平均値が40a.u.以下であるか否かを多孔性高分子基材の良品及び不良品可否を選定する基準にし得る。
【0052】
補正後の気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下を満足する多孔性高分子基材の場合、補正後の気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.を超過する多孔性高分子基材に比べて、有機-無機複合多孔性層形成前の多孔性高分子基材の通気時間は同じ水準であり得るが、有機-無機複合多孔性層を形成した後に得られた分離膜の通気時間は、補正後の気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下を満足する多孔性高分子基材が、補正後の気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.を超過する多孔性高分子基材に比べて、著しく優れた通気度特性を発揮するようになる。すなわち、補正後の気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下を満足する多孔性高分子基材は、多孔性高分子基材内に位置する気孔がより均一な面積で均一に分布しているため、多孔性高分子基材の少なくとも一面上に有機-無機複合多孔性層が導入されて通気性の維持に苛酷な条件になる場合にも、通気度特性が大幅に劣化することなく、二次電池用分離膜への適用に適した性能を発揮することを確認できる。
【0053】
本発明において、不良品如何を検出する対象になる多孔性高分子基材は、それ自体でも分離膜として適用可能であるが、熱的安定性をさらに要求する分野では、有機-無機複合多孔性層を少なくとも一面上に設けて安定性が強化された分離膜として製造し得る。
【0054】
このように有機-無機複合多孔性層を少なくとも一面上に設けて安定性が強化された分離膜は、多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置し、多数の無機物粒子、前記無機物粒子の表面の一部または全部に位置して前記無機物粒子同士の間を連結及び固定させるバインダー高分子を含む有機-無機複合多孔性層を含む。
【0055】
前記バインダー高分子としては、当業界で有機-無機複合多孔性層の形成に通常使われる高分子を使用し得る。特に、ガラス転移温度(glass transition temperature、T)が-200~200℃である高分子を使用し得るが、これは最終的に形成される有機-無機複合多孔性層の柔軟性及び弾性などのような機械的物性を向上できるためである。このようなバインダー高分子は、無機物粒子同士の間を連結及び安定的に固定するバインダーの役割を充実に果たすことで、有機-無機複合多孔性層が導入された分離膜の機械的物性の低下防止に寄与する。
【0056】
また、前記バインダー高分子は、イオン伝導能力を必ずしも有する必要はないが、イオン伝導能力を有する高分子を使用する場合、電気化学素子の性能をさらに向上させることができる。したがって、前記バインダー高分子はできるだけ高い誘電率定数を有するものを使用し得る。実際、電解液における塩の解離度は電解液溶媒の誘電率定数に依存するため、前記バインダー高分子の誘電率定数が高いほど電解質における塩解離度を向上させることができる。このようなバインダー高分子の誘電率定数は1.0~100(測定周波数=1kHz)の範囲が使用可能であり、特に10以上であり得る。
【0057】
上述した機能の他に、前記バインダー高分子は、液体電解液の含浸時にゲル化することで高い電解液膨潤度(degree of swelling)を示す特徴を有し得る。そのため、前記バインダー高分子の溶解度指数、すなわちヒルデブラント溶解度指数(Hildebrand solubility parameter)は15~45MPa1/2、15~25MPa1/2または30~45MPa1/2の範囲である。したがって、ポリオレフィン類のような疎水性高分子よりは極性基を多く有する親水性高分子をより望ましく使用し得る。前記溶解度指数が15MPa1/2未満または45MPa1/2超過の場合、通常の電池用液体電解液によって膨潤(swelling)され難いおそれがあるためである。
【0058】
このようなバインダー高分子の非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、及びカルボキシメチルセルロースなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0059】
前記無機物粒子の非制限的な例としては、誘電率定数が5以上、詳しくは10以上の高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
前記誘電率定数が5以上である無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiC、AlO(OH)、Al・HO、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0061】
本明細書において、「リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子」とは、リチウム元素を含むもののリチウムを貯蔵せず、リチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を称し、その非制限的な例としては、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14LiO-9Al-38TiO-39Pなどのような(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.75などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LiNなどのようなリチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、LiPO-LiS-SiSなどのようなSiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-LiS-PなどのようなP系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0062】
本発明の一具現例によれば、前記有機-無機複合多孔性層は、有機系スラリーを用いた有機系コーティング層または水系スラリーを用いた水系コーティング層であり得、中でも水系コーティング層の場合、薄膜コーティングに有利であって、分離膜の抵抗が減少するという面でさらに有利である。
【0063】
多孔性高分子基材の少なくとも一面上に有機-無機複合多孔性層を備えた安定性が強化された分離膜は、具体的には、下記のように製造され得る。
【0064】
まず、前記有機-無機複合多孔性層を形成するため、バインダー高分子を分散媒に溶解または分散させた後、無機物粒子を添加し、それを分散させて有機-無機複合多孔性層形成用組成物(スラリー)を用意する。無機物粒子は、予め所定の平均粒径を有するように破砕された状態で添加し得、または、バインダー高分子と分散媒との混合物に無機物粒子を添加した後、無機物粒子をボールミル法などを用いて所定の平均粒径を有するように制御しながら破砕して分散させてもよい。
【0065】
前記有機-無機複合多孔性層形成用組成物を前記多孔性高分子基材にコーティングする。コーティング方法は、特に限定しないが、スロットコーティングやディップコーティング方法を使用することが望ましい。スロットコーティングは、スロットダイを通じて供給された組成物が基材の全面に塗布される方式であって、定量ポンプから供給される流量によってコーティング層の厚さを調節可能である。また、ディップコーティングは、組成物で満たされたタンクに基材を浸漬してコーティングする方法であって、組成物の濃度及び組成物タンクから基材を引き上げる速度によってコーティング層の厚さを調節可能である。より正確にコーティング厚さを制御するため、浸漬した後、マイヤーバー(Mayer bar)などを用いて後計量してもよい。
【0066】
このように有機-無機複合多孔性層形成用組成物がコーティングされた多孔性高分子基材をオーブンのような乾燥器を用いて乾燥することで、多孔性高分子基材の少なくとも一面上に形成された有機-無機複合多孔性層を形成する。
【0067】
本発明の一具現例において、前記バインダー高分子は、無機物粒子同士が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(すなわち、バインダー高分子が無機物粒子同士の間を連結及び固定)し得、また前記バインダー高分子によって無機物粒子と多孔性高分子基材とが結着した状態を維持できる。前記有機-無機複合多孔性層の無機物粒子は、実質的に互いに接触した状態でインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)を形成し得、このとき、インタースティシャル・ボリュームとは、無機物粒子による充填構造(closely packed or densely packed)で実質的に接触する無機物粒子によって限定される空間を意味する。前記無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリュームは空き空間になって有機-無機複合多孔性層の気孔を形成することができる。
【0068】
このとき使用される分散媒の非制限的な例としては、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、及び水から選択された1種の化合物または2種以上の混合物があり得る。
【0069】
また、本発明の一具現例においては、前記有機-無機複合多孔性層形成用組成物を前記多孔性高分子基材にコーティングした後、相対湿度30~80%または50~80%の条件で、20~70℃または23~60℃の温度で1分~2時間、5分~1時間、または10分~1時間乾燥して溶媒を除去し、最終的に有機-無機複合多孔性層を少なくとも一面上に含んで安定性が強化された分離膜を製造することができる。
【0070】
前記良品に分類された多孔性基材の少なくとも一面上に、無機物粒子、バインダー高分子、及び分散媒を含むスラリーを塗布及び乾燥して有機-無機複合多孔性層を形成させて得た分離膜は、600秒/100cc以下の優れた通気度特性を有し得る。
【0071】
本発明の一具現例による分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法を適用した場合、多孔性高分子基材の状態で補正後の気孔分布均一度指数の平均値を求めて基準値と比べた結果として得られた良品/不良品の事前検出結果は、最終的に有機-無機複合多孔性層を備えた分離膜の通気度特性と完全に対応することができる。
【0072】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0073】
製造例1
(1)多孔性高分子基材の製造
押出機に、ポリオレフィンとして重量平均分子量350,000の高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH035)を9.0kg/hrで、希釈剤として液体パラフィンオイル(極東油化製、LP350F、68cSt)を21.0kg/hrで投入し混合した。
【0074】
このとき、前記押出機は、ポリオレフィン及び希釈剤を投入するホッパー(hopper)、投入された物質を移送しながら混合する混練部(kneading section)、及び混合された物質を押出するダイ出口を備える二軸押出機である。
【0075】
押出機によって押出されたポリエチレン組成物をT-ダイと冷却キャスティングロールを経てシート状に成形した後、MD延伸(機械方向延伸、縦延伸)後TD延伸(横方向延伸)のテンター型逐次延伸機で二軸延伸した。MD延伸比とTD延伸比はいずれも7.0倍にした。延伸温度はMDで110℃、TDで125℃であった。
【0076】
延伸されたシートから塩化メチレンで希釈剤を抽出し、126℃の温度条件で希釈剤が抽出されたシートを熱固定する段階を経てポリオレフィン分離膜を製造した。このとき、熱固定段階は、シートの横方向(Transverse direction )において、前記熱固定段階に導入するシートの幅の40%まで延伸した後、15%に緩和し、多孔性ポリオレフィン基材(多孔性高分子基材)を製造した。このとき、製造された多孔性ポリオレフィン基材の厚さは8.6μmであった。
【0077】
(2)有機-無機複合多孔性層を備えた分離膜の製造
バインダー高分子としてPVdF-HFP(重量平均分子量390,000、HFP含量8重量%)及びPVDF-CTFE(ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体)(重量平均分子量450,000、CTFE含量20重量%)、分散剤(バインダー高分子の役割もする)としてシアノエチルビニルアルコールをアセトンに添加し、50℃で約12時間以上溶解させてバインダー高分子溶液を用意した。製造されたバインダー高分子溶液に、無機物粒子としてアルミナ(Al、平均粒径500nm)粒子を添加し、分散して有機-無機複合多孔性層用スラリーを製造した。このとき、PVdF-HFP、PVDF-CTFE、分散剤、カップリング剤、及び無機物粒子の重量比は21:7:1:1:70であった。
【0078】
このように製造された有機-無機複合多孔性層用スラリーをディップコーティング法で、用意しておいた多孔性ポリオレフィン基材の両面にコーティングし、相対湿度50%の条件で23℃で10分間乾燥して、両面に有機-無機複合多孔性層(両面の総厚さ約6μm)を備える分離膜を製造した。
【0079】
製造例2
押出機に、ポリオレフィンとして重量平均分子量350,000の高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH035)及び重量平均分子量600,000の高密度ポリエチレン(大韓油化製、VH150U)をそれぞれ7.0kg/hr及び2kg/hrで投入した点を除き、製造例1と同様の方法で多孔性ポリオレフィン基材を製造した。このとき、製造された多孔性ポリオレフィン基材の厚さは9.0μmであった。
【0080】
また、このように製造された多孔性ポリオレフィン基材を用いた点を除き、製造例1と同様の方法で両面に有機-無機複合多孔性層(両面の総厚さ約6μm)を備える分離膜を製造した。
【0081】
製造例3
TD延伸温度を130℃に調節した点を除き、製造例1と同様の方法で多孔性ポリオレフィン基材を製造した。このとき、製造された多孔性ポリオレフィン基材の厚さは9.1μmであった。ここで、TD延伸温度130℃は、量産工程中、TD延伸部において吸排気モータ、ヒータ、フィルタなどの問題によって工程温度が多少上昇した時の現象をシミュレーションしたものである。
【0082】
また、このように製造された多孔性ポリオレフィン基材を用いた点を除き、製造例1と同様の方法で両面に有機-無機複合多孔性層(両面の総厚さ6μm)を備える分離膜を製造した。
【0083】
製造例4
リチウム二次電池用分離膜ではなく、プロセスフィルタ用分離膜を用いて補正後の平均PDIを確認した。この製品は、平均気孔が120nm、最大気孔が140nmと気孔が大き過ぎるため、二次電池用分離膜として使用が不可能であった。
【0084】
前記プロセスフィルタ用分離膜は、下記の工程で製造した。
【0085】
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂650J(登録商標、MCF社製)100重量部に対して潤潤滑剤(Isopar H、エクソン社製)22重量部を混合してフッ素系樹脂含有組成物を製造した後、38℃で24時間エージングした。次いで、4MPaの圧力を印加してプリフォームブロック(preform block)を製造し、ペースト(paste)押出装置を用いて厚さ1mmのシート状に押出した後、カレンダリング(calendering)を通じて厚さ300μmに圧延してPTFEフィルムを製造した。製造したPTFEフィルムを200℃の加熱オーブンでロール・ツー・ロール(roll to roll)工程で熱処理して潤滑剤を完全に除去した。
【0086】
熱処理されたPTFEフィルムを300℃でロール速度差を用いて縦方向で3倍延伸を行った後、310℃でMD方向の収縮が10%発生するようにロール速度を落として緩和(relaxation)工程を行った。
【0087】
その後、280℃でロール速度差を用いて横方向に10倍延伸し、フィルムを加熱ロールを用いて370℃で9秒間熱固定してプロセスフィルタ用分離膜であるPTFE多孔性膜を製造した。
【0088】
製造例5
熱固定時に発生する温度問題をシミュレーションするため、熱固定温度を135℃に上昇させた点を除き、製造例1と同様の方法で多孔性ポリオレフィン基材を製造した。このとき、製造された多孔性ポリオレフィン基材の厚さは8.7μmであった。この分離膜は通気時間が長過ぎて二次電池用として使用できなかった。
【0089】
多孔性ポリオレフィン基材の不良品事前検出
製造例1~5で製造された多孔性ポリオレフィン基材に対し、まず、電子顕微鏡(SEM)(製造社:日立、製品名:S-4800)で5kV、10μA、20,000倍率の条件で観察して多孔性高分子基材のイメージを取得した。製造例1~5で製造された多孔性ポリオレフィン基材のSEMイメージを図1a、図2a、図3a、図4a、及び図5aにそれぞれ示した。
【0090】
前記取得された多孔性高分子基材のイメージを用いて気孔分布均一度指数(PDI)の平均値を定量化した。このとき、定量化段階において、電子顕微鏡(SEM)で測定した前記多孔性高分子基材のローイメージ(raw image)のピクセルを、互いに隣接するか又は交わる複数の高分子フィブリル領域を表すピクセルと、前記複数の高分子フィブリル同士の間に形成された気孔領域を表すピクセルとに領域を分割した2次元バイナリイメージ(2-D binary image)を取得し、前記2次元バイナリイメージをコンピュータユークリッド距離変換方式を用いて距離変換した。このように製造例1~5で製造された多孔性ポリオレフィン基材の距離変換の結果を図1b、図2b、図3b、図4b、及び図5bにそれぞれ示した。
【0091】
前記距離変換されたイメージにローカルマキシマ演算を適用して前記イメージの全体ピクセルの距離変換数値を抽出し、統計処理して定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)を取得した。
【0092】
その後、前記定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)を補正し、補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)を求めた。
【0093】
[数式1]
補正平均PDI=補正前平均PDI×(1/η)
(数式1において、ηは補正因子であって、η=(高分子フィブリルピクセルの数)/(全体イメージピクセルの数)で定義される。)
【0094】
製造例1~5で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)、及び補正された気孔分布均一度指数のグラフを図1c、図2c、図3c、図4c、及び図5cにそれぞれ示した。
【0095】
具体的には、図6a~図6dに、製造例1で製造された多孔性ポリオレフィン基材のローイメージ、2次元バイナリイメージ、定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)グラフ、及び補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)グラフをそれぞれ示した。図7a~図7dに、製造例4で製造された多孔性ポリオレフィン基材のローイメージ、2次元バイナリイメージ、定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)グラフ、及び補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)グラフをそれぞれ示した。
【0096】
図6a~図6d及び図7a~図7dにおいて、製造例1と製造例4の多孔性ポリオレフィン基材のローイメージと2次元バイナリイメージを比べると、製造例1が製造例4に比べて気孔領域(2次元バイナリイメージで黒い色の領域)が一定の大きさで均一に分散していることが分かる。しかし、補正前平均PDIは、製造例1及び製造例4ともに約38a.u.と類似の値を示した。その後、補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)では、製造例1の多孔性ポリオレフィン基材が39.46a.u.、製造例4の多孔性ポリオレフィン基材が70.14a.u.と確実な差を見せた。
【0097】
これは、図6a~図6d及び図7a~図7dを参照すると、製造例1の場合、2次元バイナリイメージにおける白い領域(繊維)の面積比が製造例4の白い領域の面積比よりも大きいため、全体イメージピクセル数に対する繊維(白い領域)ピクセル数の割合である補正因子(η)も、製造例1の補正因子(0.914)が製造例4の補正因子(0.667)よりも大きい値を有するためである。
【0098】
表1に、製造例1~5で製造された多孔性ポリオレフィン基材の定量化された気孔分布均一度指数の平均値(補正前平均PDI)、補正因子、及び補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)をそれぞれ示した。
【0099】
このように得られた、製造例1~5で製造された多孔性ポリオレフィン基材の補正された気孔分布均一度指数の平均値(補正平均PDI)が60a.u.以下であるか否かを確認して、60a.u.以下と確認された場合は良品に分類し、60a.u.超過と確認された場合は不良品に分類した。その結果も表1にそれぞれ示した。
【0100】
通気度(通気時間)の評価方法
製造例1~5で製造された多孔性高分子基材、及び有機-無機複合多孔性層を備える分離膜の通気度(ガーレー)をASTM D726-94方法によってそれぞれ測定し、その結果を表1に示した。ここで使用されたガーレー(Gurley)は、空気の流れに対する抵抗であって、ガーレー透気度試験機(gurley densometer)によって測定した。ここで説明された通気度値は、100ccの空気が12.2 in HOの圧力下で、多孔性高分子基材または分離膜の1inの断面を通過するのにかかる時間(秒)、すなわち通気時間で定義した。
【0101】
【表1】
【0102】
表1を参照すると、製造例1及び2の多孔性高分子基材は、補正後の気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.以下を満足した。それにより、補正後の気孔分布均一度指数の平均値が60a.u.を超過する製造例3と有機-無機複合多孔性層形成前の多孔性高分子基材の通気時間は類似の値を示したが、有機-無機複合多孔性層の形成後に得られた分離膜の通気時間は約210~220秒/100ccの値を見せ、製造例3の多孔性高分子基材を用いた有機-無機複合多孔性層形成後の分離膜の通気時間に比べて30%程度減少した優れた通気度特性を発揮することが分かる。このことから、本発明の一具現例による分離膜用多孔性高分子基材の不良品事前検出方法を適用した場合、多孔性高分子基材の状態で補正後の気孔分布均一度指数の平均値を求め、基準値と比較して得られた良品/不良品の事前検出結果が、最終的に有機-無機複合多孔性層を備えた分離膜の通気度特性と完全に対応することが確認できた。したがって、有機-無機複合多孔性層を備えた分離膜を製造した後、通気度を評価して不良品を分類し廃棄する従来の方式に比べて、本発明の事前検出方法によれば、多孔性高分子基材の段階で不良品を予め検出することができるため、時間的及びコスト的に著しく有利である。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
【国際調査報告】