(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料、負極シート及びリチウム電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20231005BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231005BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20231005BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231005BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/131
H01M10/0566
H01M10/0562
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519147
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2021078603
(87)【国際公開番号】W WO2022062319
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202011031904.2
(32)【優先日】2020-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520464393
【氏名又は名称】▲リー▼陽天目先導電池材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】TIANMULAKE EXCELLENT ANODE MATERIALS CO, LTD.
【住所又は居所原語表記】3/F,Office Building 15,No.87 ShangShang Road,Kunlun Street Liyang,Jiangsu 213330 China
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】殷 ▲營▼▲營▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 柏男
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼ ▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】李 泓
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AM02
5H029AM12
5H029AM16
5H029BJ13
5H029DJ16
5H029EJ04
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ13
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050EA01
5H050EA08
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】 ケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料、負極シート及びリチウム電池を提供することを課題とする。
【解決手段】 ケイ素系負極材料は、内部にケイ酸塩材料が分散分布された改質一酸化ケイ素材料を含み、前記内部にケイ酸塩材料が分散分布された改質一酸化ケイ素材料の一般式はM
xSiO
yであり、ここで1≦x<6,3≦y<6、元素MはMg、Ni、Cu、Zn、Al、Na、Ca、K、Li、Fe、Coのうちの1種又は複数種を含み、結晶粒サイズは、0.5nm~100nmであり、前記改質一酸化ケイ素材料において、前記ケイ酸塩材料の含有量は改質一酸化ケイ素材料の総質量の5%~60%を占め、分散分布された前記ケイ酸塩材料は、前記ケイ素系負極材料の骨格構造を構成し、サイクル過程中に、ケイ素系負極材料のリチウム脱挿入に伴って物理的及び化学的反応が起こることはなく、複数回のサイクル後も元の構造を維持したままである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料であって、前記ケイ素系負極材料は内部にケイ酸塩材料が分散分布された改質一酸化ケイ素材料を含み、
前記内部にケイ酸塩材料が分散分布された改質一酸化ケイ素材料の一般式はM
xSiO
yであり、ここで1≦x<6,3≦y<6、元素MはMg、Ni、Cu、Zn、Al、Na、Ca、K、Li、Fe、Coのうちの1種又は複数種を含み、前記改質一酸化ケイ素材料の結晶粒サイズは、0.5nm~100nmであり、前記改質一酸化ケイ素材料において、前記ケイ酸塩材料の含有量は改質一酸化ケイ素材料の総質量の5%~60%を占め、
分散分布された前記ケイ酸塩材料は、前記ケイ素系負極材料の骨格構造を構成し、サイクル過程中に、ケイ素系負極材料のリチウム脱挿入に伴って物理的及び化学的反応が起こることはなく、複数回のサイクル後も元の構造を維持したままであることを特徴とする、ケイ素系負極材料。
【請求項2】
前記ケイ素系負極材料は、炭素被覆層をさらに含み、
前記炭素被覆層は、前記改質一酸化ケイ素材料の外側を覆い、厚さは1nm~100nmであることを特徴とする、請求項1に記載のケイ素系負極材料。
【請求項3】
前記改質一酸化ケイ素材料の結晶粒サイズは、2nm~30nmであり、前記改質一酸化ケイ素材料において、前記ケイ酸塩材料の含有量は改質一酸化ケイ素材料の総質量の10%~30%を占めることを特徴とする、請求項1に記載のケイ素系負極材料。
【請求項4】
前記ケイ素系負極材料の平均粒径(D
50)は、0.1~40μm、比表面積は0.5m
2/g~40m
2/gであることを特徴とする、請求項1に記載のケイ素系負極材料。
【請求項5】
前記ケイ素系負極材料の平均粒径(D
50)は、2~15μm、比表面積は1m
2/g~10m
2/gであることを特徴とする、請求項4に記載のケイ素系負極材料。
【請求項6】
前記元素MがMgの場合、対応するケイ酸塩は、MgSiO
3及び/又はMg
2SiO
4であり、前記MgSiO
3のXRD最強回折ピークは、28.1度、31.1度、34.8度、34.9度、36.9度のうちの1つ又は複数に位置し、前記Mg
2SiO
4のXRD最強回折ピークは36.5度に位置し、
前記元素MがNiの場合、対応するケイ酸塩は、NiSiO
4であり、前記NiSiO
4のXRD最強回折ピークは、37.0度に位置し、
前記元素MがCuの場合、対応するケイ酸塩は、CuSiO
3であり、前記CuSiO
3のXRD最強回折ピークは、12.2度に位置し、
前記元素MがZnの場合、対応するケイ酸塩は、ZnSiO
3及び/又はZn
2SiO
4であり、前記ZnSiO
3のXRD最強回折ピークは、31.0度及び/又は34.0度に位置し、前記Zn
2SiO
4のXRD最強回折ピークは(31.0度及び34.0度)、31.5度、31.7度、33.1度、36.5度、37.0度のうちの1つ又は複数に位置し、
前記元素MがAlの場合、対応するケイ酸塩は、Al
2SiO
5であり、前記Al
2SiO
5のXRD最強回折ピークは、26.1度及び/又は28.0度に位置し、
前記元素MがNaの場合、対応するケイ酸塩は、Na
2SiO
3及び/又はNa
4SiO
4であり、前記Na
2SiO
3のXRD最強回折ピークは、29.4度に位置し、前記Na
4SiO
4のXRD最強回折ピークは13.0度及び23.2度に位置し、
前記元素MがCaの場合、対応するケイ酸塩は、CaSiO
3及び/又はCa
2SiO
4であり、前記CaSiO
3のXRD最強回折ピークは、25.3度及び/又は30.0度に位置し、前記Ca
2SiO
4のXRD最強回折ピークは32.0度、32.1度、32.5度、32.7度、32.8度、33.0度、33.2度のうちの1つ又は複数に位置し、
前記元素MがKの場合、対応するケイ酸塩は、K
4SiO
4であり、前記K
4SiO
4のXRD最強回折ピークは、30.4度及び37.8度に位置し、
前記元素MがLiの場合、対応するケイ酸塩は、Li
2SiO
3及び/又はLi
4SiO
4であり、前記Li
2SiO
3のXRD最強回折ピークは、18.9度及び/又は27.0度に位置し、前記Li
4SiO
4のXRD最強回折ピークは(22.2度及び33.8度)及び/又は34.9度に位置し、
前記元素MがFeの場合、対応するケイ酸塩は、FeSiO
3及び/又はFe
2SiO
4であり、前記FeSiO
3のXRD最強回折ピークは、32.7度に位置し、前記Fe
2SiO
4のXRD最強回折ピークは63.8度に位置し、
前記元素MがCoの場合、対応するケイ酸塩は、Co
2SiO
4であり、前記Co
2SiO
4のXRD最強回折ピークは、36.4度、36.5度、36.6度のうちの1つ又は複数に位置することを特徴とする、請求項1に記載のケイ素系負極材料。
【請求項7】
負極シートであって、請求項1~6のいずれか一項に記載のケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料を包括することを特徴とする、負極シート。
【請求項8】
リチウム電池であって、請求項1~6のいずれか一項に記載のケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料を包括することを特徴とする、リチウム電池。
【請求項9】
前記リチウム電池として、具体的に液体型リチウムイオン電池、半固体リチウムイオン電池、全固体イオン電池又はリチウム硫黄電池が挙げられることを特徴とする、請求項8に記載のリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「ケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料、負極シート及びリチウム電池」と題し、2020年09月27日に出願された中国特許出願番号第202011031904.2号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、二次電池材料の技術分野に関し、特に、ケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料、負極シート及びリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0003】
新エネルギー自動車は、長い航続距離を追求するため、電池のエネルギー密度に対してより高い要件を求めている。電気自動車のコストパフォーマンスを最高に達させるため、単電池のエネルギー密度が350Wh/Kg(750Wh/L)に達する必要がある。電池のエネルギー密度を向上させるため、国内外の電池材料メーカーは容量密度のより高い正極・負極活物質の開発に取り組んでいる。
【0004】
ケイ素系負極は、現在商業上で主に研究開発されている高エネルギー密度の負極材料である。金属シリコンの理論容量は、4200mAh/gと高いであるが、リチウムをインターカレーションしてLi22Si5合金を形成する過程中で300%程度の体積膨張を伴い場合、電極材料構造が崩壊し、固体電解質界面(SEI)が再生成過程を継続的に破壊し、金属シリコンのサイクル特性は特に劣っている。
【0005】
一酸化ケイ素(SiOx)は、ケイ素によりも容量が小さいが、体積膨張を緩和し、電池のサイクル寿命が良くなるという明らかな利点がある。理想的なSiOxは、ケイ素のナノクラスターがSiO2マトリックス中に均一に分散された構造を持ち、初回サイクルのリチウムインターカレーション時、リチウムと二酸化ケイ素の反応により、様々な不可逆的リチウム酸化物を生成し、これらの不可逆的生成物は、ケイ素の体積膨張の緩衝帯として、ケイ素の体積膨張を抑制する。しかし、緩衝帯の作用は限定的であり、SiOxのサイクル特性を実用的な基準に到達させることはできない。
【0006】
ケイ素系負極の膨張を減らすため、国内外の研究者は、活物質のナノ化、多孔質構造の設計、ドーピングなどを通じて研究と探究を行ってきた。特許CN103682287Aは、ナノシリコン粒子が中空黒鉛の内層内に埋め込まれた構造を設計し、ナノ化と中空構造の設計を通じてケイ素負極のサイクル特性を向上させる。文献1(Zhaolin,Li,Haileiら著、Watermelon‐Like Structured SiOx-TiO2@C Nanocomposite as a High‐Performance Lithium‐Ion Battery Anode[J]. Advanced Functional Materials, 2016.)では、コアシェル構造を有する一酸化ケイ素-二酸化チタン@炭素(SiOx-TiO2@C)複合ナノ材料は、TiO2がリチウムの脱挿入時体積変化が小さく、それをSiOxマトリックス中に分布させる場合、ピン止め効果を発揮し、SiOx粒子の構造安定性を向上し、高電流密度の充放電下でのSiOx材料のサイクル特性を効果的に改善できることが報告されている。
【0007】
しかし、現在では、ケイ素系負極システムの性能改善は、やはりナノ粒子の大規模な調製と分散、多孔質構造安定性の設計、ドーピングの安定性などの困難に直面している。ケイ素系負極の体積膨張が大きく、サイクル特性が悪い問題は、本当に効果的に解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許第CN103682287A号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Zhaolin,Li,Haileiら著、Watermelon‐Like Structured SiOx-TiO2@C Nanocomposite as a High‐Performance Lithium‐Ion Battery Anode[J]. Advanced Functional Materials, 2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施例は、ケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料、負極シート及びリチウム電池を提供する。ケイ酸塩材料を従来の一酸化ケイ素材料の中に導入して分散分布させることにより、一酸化ケイ素材料をケイ素系負極材料として改質し、分散分布されたケイ酸塩材料はケイ素系負極材料の骨格構造を構成し、ケイ素系負極の体積膨張に対して、ケイ酸塩骨格はピン止め効果を発揮し、体積変化に伴う応力を緩和し、材料のサイクル特性の向上に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本発明の実施例は、ケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料を提供し、前記ケイ素系負極材料は内部にケイ酸塩材料が分散分布された改質一酸化ケイ素材料を含み、
前記内部にケイ酸塩材料が分散分布された改質一酸化ケイ素材料の一般式はMxSiOyであり、ここで1≦x<6,3≦y<6、元素MはMg、Ni、Cu、Zn、Al、Na、Ca、K、Li、Fe、Coのうちの1種又は複数種を含み、
前記改質一酸化ケイ素材料の結晶粒サイズは、0.5nm~100nmであり、前記改質一酸化ケイ素材料において、前記ケイ酸塩材料の含有量は改質一酸化ケイ素材料の総質量の5%~60%を占め、
分散分布された前記ケイ酸塩材料は、前記ケイ素系負極材料の骨格構造を構成し、サイクル過程中に、ケイ素系負極材料のリチウム脱挿入に伴って物理的及び化学的反応が起こることはなく、複数回のサイクル後も元の構造を維持したままである。
【0012】
好ましくは、前記ケイ素系負極材料は、炭素被覆層をさらに含み、
前記炭素被覆層は、前記改質一酸化ケイ素材料の外側を覆い、厚さは1nm~100nmである。
【0013】
好ましくは、前記改質一酸化ケイ素材料の結晶粒サイズは、2nm~30nmであり、前記改質一酸化ケイ素材料において、前記ケイ酸塩材料の含有量は改質一酸化ケイ素材料の総質量の10%~30%を占める。
【0014】
好ましくは、前記ケイ素系負極材料の平均粒径(D50)は、0.1~40μm、比表面積は0.5m2/g~40m2/gである。
【0015】
より好ましくは、前記ケイ素系負極材料の平均粒径(D50)は、2~15μm、比表面積は1m2/g~10m2/gである。
【0016】
好ましくは、前記元素MがMgの場合、対応するケイ酸塩は、MgSiO3及び/又はMg2SiO4であり、前記MgSiO3のXRD最強回折ピークは、28.1度、31.1度、34.8度、34.9度、36.9度のうちの1つ又は複数に位置し、前記Mg2SiO4のXRD最強回折ピークは36.5度に位置し、
前記元素MがNiの場合、対応するケイ酸塩は、NiSiO4であり、前記NiSiO4のXRD最強回折ピークは、37.0度に位置し、
前記元素MがCuの場合、対応するケイ酸塩は、CuSiO3であり、前記CuSiO3のXRD最強回折ピークは、12.2度に位置し、
前記元素MがZnの場合、対応するケイ酸塩は、ZnSiO3及び/又はZn2SiO4であり、前記ZnSiO3のXRD最強回折ピークは、31.0度及び/又は34.0度に位置し、前記Zn2SiO4のXRD最強回折ピークは(31.0度及び34.0度)、31.5度、31.7度、33.1度、36.5度、37.0度のうちの1つ又は複数に位置し、
前記元素MがAlの場合、対応するケイ酸塩は、Al2SiO5であり、前記Al2SiO5のXRD最強回折ピークは、26.1度及び/又は28.0度に位置し、
前記元素MがNaの場合、対応するケイ酸塩は、Na2SiO3及び/又はNa4SiO4であり、前記Na2SiO3のXRD最強回折ピークは、29.4度に位置し、前記Na4SiO4のXRD最強回折ピークは13.0度及び23.2度に位置し、
前記元素MがCaの場合、対応するケイ酸塩は、CaSiO3及び/又はCa2SiO4であり、前記CaSiO3のXRD最強回折ピークは、25.3度及び/又は30.0度に位置し、前記Ca2SiO4のXRD最強回折ピークは32.0度、32.1度、32.5度、32.7度、32.8度、33.0度、33.2度のうちの1つ又は複数に位置し、
前記元素MがKの場合、対応するケイ酸塩は、K4SiO4であり、前記K4SiO4のXRD最強回折ピークは、30.4度及び37.8度に位置し、
前記元素MがLiの場合、対応するケイ酸塩は、Li2SiO3及び/又はLi4SiO4であり、前記Li2SiO3のXRD最強回折ピークは、18.9度及び/又は27.0度に位置し、前記Li4SiO4のXRD最強回折ピークは(22.2度及び33.8度)及び/又は34.9度に位置し、
前記元素MがFeの場合、対応するケイ酸塩は、FeSiO3及び/又はFe2SiO4であり、前記FeSiO3のXRD最強回折ピークは、32.7度に位置し、前記Fe2SiO4のXRD最強回折ピークは63.8度に位置し、
前記元素MがCoの場合、対応するケイ酸塩は、Co2SiO4であり、前記Co2SiO4のXRD最強回折ピークは、36.4度、36.5度、36.6度のうちの1つ又は複数に位置する。
【0017】
第2の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載のケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料を備える負極シートを提供する。
【0018】
第3の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載のケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料を備えるリチウム電池を提供する。
【0019】
好ましくは、前記負極シートは、上記第1の態様に記載のケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料を包括する。
【0020】
本発明により提供されるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料は、ケイ酸塩材料を従来の一酸化ケイ素材料の中に導入して分散分布させることにより、一酸化ケイ素材料を改質し、改質後の材料をケイ素系負極材料として使用させることができる。分散分布されたケイ酸塩材料は、安定した構造と性能を持ち、材料のリチウム脱挿入に伴って物理的及び化学的反応が起こることはなく、ケイ酸塩材料はケイ素系負極材料の骨格構造を構成し、ケイ素系負極の体積膨張に対し、ケイ酸塩骨格がピン止め効果を発揮し、体積変化に伴う応力を緩和し、材料のサイクル特性を向上させるのに有利である。
【0021】
以下、添付の図面及び実施例を参照しつつ、本発明の実施例の技術的手段をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1で提供されるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極の1サイクル後のX線回折(XRD)パターンである。
【
図2】本発明の実施例1で提供されるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極の50サイクル後のXRDパターンである。
【
図3】本発明の実施例1で提供されるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極粒子の走査電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図4】本発明の実施例2で提供されるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極の1サイクル後のXRDパターンである。
【
図5】本発明の実施例2で提供されるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極の50サイクル後のXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面及び具体的実施例を参照しつつ、本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明を解釈することのみに使われており、いかなる形態で本発明を限定するものと理解してはならず、すなわち、本発明の保護範囲の限定を意図しないことを理解されたい。
【0024】
本発明により提供されるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料は、内部にケイ酸塩材料が分散分布された改質一酸化ケイ素材料を含み、
内部にケイ酸塩材料が分散分布された改質一酸化ケイ素材料の一般式はMxSiOyであり、ここで1≦x<6,3≦y<6、元素MはMg、Ni、Cu、Zn、Al、Na、Ca、K、Li、Fe、Coのうちの1種又は複数種を含み、
改質一酸化ケイ素材料の結晶粒サイズは、0.5nm~100nm、好ましくは2nm~30nmであり、改質一酸化ケイ素材料において、前記ケイ酸塩材料の含有量は改質一酸化ケイ素材料の総質量の5%~60%を占め、好ましくは10%~30%を占める。
【0025】
分散分布されたケイ酸塩材料は、ケイ素系負極材料の骨格構造を構成し、サイクル過程中に、ケイ素系負極材料のリチウム脱挿入に伴って物理的及び化学的反応が起こることはなく、複数回のサイクル後も元の構造を維持したままである。
【0026】
さらに、ケイ素系負極材料は、炭素被覆層をさらに含み、炭素被覆層は、改質一酸化ケイ素材料の外側を覆い、厚さは1nm~100nmである。
【0027】
本発明のケイ素系負極材料の平均粒径(D50)は、0.1~40μm、比表面積は0.5m2/g~40m2/gである。好ましい実施例において、平均粒径(D50)は、2~15μm、比表面積は1m2/g~10m2/gである
【0028】
異なるケイ酸塩の分散分布については、得られたケイ素系負極材料の内部分子の構造、形態が異なる。
【0029】
元素MがMgの場合、対応するケイ酸塩は、MgSiO3及び/又はMg2SiO4であり、MgSiO3のXRD最強回折ピークは、28.1度、31.1度、34.8度、34.9度、36.9度のうちの1つ又は複数に位置し、Mg2SiO4のXRD最強回折ピークは36.5度に位置し、
元素MがNiの場合、対応するケイ酸塩は、NiSiO4であり、NiSiO4のXRD最強回折ピークは、37.0度に位置し、
元素MがCuの場合、対応するケイ酸塩は、CuSiO3であり、CuSiO3のXRD最強回折ピークは、12.2度に位置し、
元素MがZnの場合、対応するケイ酸塩は、ZnSiO3及び/又はZn2SiO4であり、ZnSiO3のXRD最強回折ピークは、31.0度及び/又は34.0度に位置し、Zn2SiO4のXRD最強回折ピークは(31.0度及び34.0度)、31.5度、31.7度、33.1度、36.5度、37.0度のうちの1つ又は複数に位置し、
元素MがAlの場合、対応するケイ酸塩は、Al2SiO5であり、Al2SiO5のXRD最強回折ピークは、26.1度及び/又は28.0度に位置し、
元素MがNaの場合、対応するケイ酸塩は、Na2SiO3及び/又はNa4SiO4であり、Na2SiO3のXRD最強回折ピークは、29.4度に位置し、Na4SiO4のXRD最強回折ピークは13.0度及び23.2度に位置し、
元素MがCaの場合、対応するケイ酸塩は、CaSiO3及び/又はCa2SiO4であり、CaSiO3のXRD最強回折ピークは、25.3度及び/又は30.0度に位置し、Ca2SiO4のXRD最強回折ピークは32.0度、32.1度、32.5度、32.7度、32.8度、33.0度、33.2度のうちの1つ又は複数に位置し、
元素MがKの場合、対応するケイ酸塩は、K4SiO4であり、K4SiO4のXRD最強回折ピークは、30.4度及び37.8度に位置し、
元素MがLiの場合、対応するケイ酸塩は、Li2SiO3及び/又はLi4SiO4であり、Li2SiO3のXRD最強回折ピークは、18.9度及び/又は27.0度に位置し、Li4SiO4のXRD最強回折ピークは(22.2度及び33.8度)及び/又は34.9度に位置し、
元素MがFeの場合、対応するケイ酸塩は、FeSiO3及び/又はFe2SiO4であり、FeSiO3のXRD最強回折ピークは、32.7度に位置し、Fe2SiO4のXRD最強回折ピークは63.8度に位置し、
元素MがCoの場合、対応するケイ酸塩は、Co2SiO4であり、Co2SiO4のXRD最強回折ピークは、36.4度、36.5度、36.6度のうちの1つ又は複数に位置する。
【0030】
以上で提案されるケイ素系負極材料は、負極シート及び液体型リチウムイオン電池、半固体リチウムイオン電池、全固体イオン電池又はリチウム硫黄電池などのリチウムイオン電池に使用することができ、実用において、負極材料としてその他の材料と併用することもできる。
【0031】
本発明により提供されるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料は、ケイ酸塩材料を従来の一酸化ケイ素材料の中に導入して分散分布させることにより、一酸化ケイ素材料を改質し、改質後の材料をケイ素系負極材料として使用させることができる。分散分布されたケイ酸塩材料は、安定した構造と性能を持ち、材料のリチウム脱挿入に伴って物理的及び化学的反応が起こることはなく、ケイ酸塩材料はケイ素系負極材料の骨格構造を構成し、ケイ素系負極の体積膨張に対し、ケイ酸塩骨格がピン止め効果を発揮し、体積変化に伴う応力を緩和し、材料のサイクル特性を向上させるのに有利である。
【0032】
本発明により提供される技術的手段をよりよく理解するため、以下にいくつかの具体的実施例を挙げて異なるケイ酸塩骨格を含むケイ素系負極材料及びリチウムイオン電池に応用される方法及び電池特性を説明する。
【実施例1】
【0033】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸マグネシウム粉末、ケイ酸マグネシウム粉末を質量比3:0.3:0.7で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料と石油アスファルトを質量比20:1で混合し、高温炉に入れ、900℃の窒素雰囲気下で2時間熱処理して、メタケイ酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウム骨格を含むケイ素系負極を得、
本発明で用いられる固体-固体混合物において、ケイ酸塩はまず一酸化ケイ素粒子の表面に付着し、その後高温処理し、自身の濃度差に駆動されてケイ酸塩は一酸化ケイ素粒子の内部に急速に拡散して骨格構造を形成でき、
(4)タケイ酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウム骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、三元系正極材ニッケルコバルトマンガン酸リチウムNCM 333を対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示し、
(5)1サイクル、50サイクル放電した電池をそれぞれ分解し、負極シートをジメチルカーボネート(DMC)溶媒に浸漬してすすぎ、乾燥後、電極シート材料を掻き取り、XRD試験を行い、得られたXRDパターンをそれぞれ
図1、
図2に示す。図から材料の中にMgSiO
3及びMg
2SiO
4を含み、メインピークがそれぞれ31.1度及び36.5度に位置し、かつ50サイクル後、ケイ酸塩骨格MgSiO
3及びMg
2SiO
4のXRDピークが変化していないことが明確に分かり、
(6)本実施例で得られた炭素層被覆を有し、メタケイ酸マグネシウム及びケイ酸マグネシウム粉末骨格を含むケイ素系負極粒子のSEM像を
図3に示す。
【実施例2】
【0034】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸マグネシウム粉末を質量比3:1で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料を回転炉に入れ、1000℃で体積比3:1のアルゴンとメタンの混合ガスを吹き込み、2時間保温して、メタケイ酸マグネシウム骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)タケイ酸マグネシウム骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、正極材リチウムコバルト酸化物(LCO)を対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示し、
(5)1サイクル、50サイクル放電した電池をそれぞれ分解し、DMC溶媒に浸漬してすすぎ、乾燥後、電極シート材料を掻き取り、XRD試験を行い、得られたXRDパターンをそれぞれ
図4、
図5に示す。図から材料の中にMgSiO
3を含み、メインピークが31.1度に位置し、かつ50サイクル後、ケイ酸塩骨格MgSiO
3のXRDピークが変化していないことがはっきりと分かる。
【実施例3】
【0035】
(1)一酸化ケイ素粉末、ケイ酸ニッケル粉末を質量比3:1で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料を回転炉に入れ、950℃で体積比2:1のアルゴンとアセチレンの混合ガスを吹き込み、2時間保温して、ケイ酸ニッケル骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)ケイ酸ニッケル骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、三元系正極材ニッケルコバルトマンガン酸リチウムNCM 523を対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例4】
【0036】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸銅粉末を質量比3:1で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料とフェノール樹脂を20:1の比率でアルコール溶媒に溶解し、6時間攪拌して均一なスラリーを形成し、
(4)上記スラリーを直接乾燥させ、
(5)乾燥後のスラリーを高温炉に入れ、900℃の窒素保護雰囲気下で混合物を2時間焼結し、冷却後、粉砕、ふるい分けし、メタケイ酸銅骨格を含むケイ素系負極を得、
(6)メタケイ酸銅骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、三元系正極材ニッケルコバルトアルミン酸リチウムNCAを対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例5】
【0037】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸亜鉛粉末、ケイ酸亜鉛粉末を質量比3:0.3:0.7で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料とグルコース粉末を20:1の比率で均一に混合し、高温炉に入れ、900℃のアルゴン保護雰囲気下で混合物を2時間焼結して、メタケイ酸亜鉛及びケイ酸亜鉛骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)タケイ酸亜鉛及びケイ酸亜鉛骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、正極材料リチウムマンガン酸化物(LMO)を対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例6】
【0038】
(1)一酸化ケイ素粉末、ケイ酸アルミニウム粉末を質量比3:1で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料とポリフッ化ビニリデン(PVDF)を20:1の比率でN,N-ジメチルホルムアミド (DMF)溶媒に溶解し、6時間攪拌して均一なスラリーを形成し、
(4)上記スラリーを直接乾燥させ、
(5)乾燥後のスラリーを高温炉に入れ、900℃のアルゴン保護雰囲気下で混合物を2時間焼結し、冷却後、粉砕、ふるい分けし、ケイ酸アルミニウム骨格を含むケイ素系負極を得、
(6)ケイ酸アルミニウム骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、三元系正極材NCM 811を対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例7】
【0039】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸ナトリウム粉末、ケイ酸ナトリウム粉末を質量比3:0.3:0.7で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料を回転炉に入れ、950℃で体積比2:1のアルゴンとアセチレンの混合ガスを吹き込み、2時間保温して、メタケイ酸ナトリウム骨格、ケイ酸ナトリウム骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)メタケイ酸ナトリウム骨格、ケイ酸ナトリウム骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、正極材リチウムコバルト酸化物LCOを対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例8】
【0040】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸カルシウム粉末、ケイ酸カルシウム粉末を質量比3:0.3:0.7で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料を回転炉に入れ、1000℃で体積比3:1のアルゴンとメタンの混合ガスを吹き込み、2時間保温して、メタケイ酸カルシウム骨格、ケイ酸カルシウム骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)メタケイ酸カルシウム骨格、ケイ酸カルシウム骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、正極材リチウムコバルト酸化物LCOを対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例9】
【0041】
(1)一酸化ケイ素粉末、ケイ酸カリウム粉末を質量比3:1で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料と石油アスファルトを質量比20:1で混合し、高温炉に入れ、900℃の窒素雰囲気下で2時間熱処理して、ケイ酸カリウム骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)ケイ酸カリウム骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、三元系正極材ニッケルコバルトマンガン酸リチウムNCM 333を対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例10】
【0042】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸リチウム粉末、ケイ酸リチウム粉末を質量比3:0.3:0.7で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料と石油アスファルトを質量比20:1で混合し、高温炉に入れ、900℃の窒素雰囲気下で2時間熱処理して、メタケイ酸リチウム骨格、ケイ酸リチウム骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)メタケイ酸リチウム骨格、ケイ酸リチウム骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、三元系正極材ニッケルコバルトマンガン酸リチウムNCM 333を対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例11】
【0043】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸鉄粉末、ケイ酸鉄粉末を質量比3:0.3:0.7で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料を回転炉に入れ、1000℃で体積比3:1のアルゴンとメタンの混合ガスを吹き込み、2時間保温して、メタケイ酸鉄骨格、ケイ酸鉄骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)メタケイ酸鉄骨格、ケイ酸鉄骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、正極材リチウムコバルト酸化物LCOを対極、ガーネット型Li7La3Zr2O12(LLZO)を固体電解質とし、グローブボックス内で固体ボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【実施例12】
【0044】
(1)一酸化ケイ素粉末、メタケイ酸コバルト粉末、ケイ酸コバルト粉末を質量比3:0.3:0.7で均一に混合し、真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料を回転炉に入れ、1000℃で体積比3:1のアルゴンとメタンの混合ガスを吹き込み、2時間保温して、ケイ酸コバルト骨格を含むケイ素系負極を得、
(4)ケイ酸コバルト骨格を含むケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、正極材リチウムコバルト酸化物LCOを対極、ポリオレフィン系ゲル高分子電解質膜を半固体電解質とし、グローブボックス内で半固体ボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【0045】
説明の便宜上、本発明は比較例も提供する。
【0046】
(比較例1)
(1)一酸化ケイ素粉末を真空炉に入れ、
(2)混合物を真空下、1400℃で2時間熱処理し、冷却後、粉砕し、ふるい分けし、
(3)ふるい分け後の試料と石油アスファルトを質量比20:1で混合し、高温炉に入れ、900℃の窒素雰囲気下で2時間熱処理し、
(4)調製されたケイ素系負極とカーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を7:2:1の比率で配合して負極スラリーを調製し、塗布、乾燥を経た後負極シートを作製し、三元系正極材ニッケルコバルトマンガン酸リチウムNCM 333を対極とし、グローブボックス内でボタン電池を組み立て、充放電試験を実施して、サイクル特性を評価し、結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
上記表1は、実施例1~12と比較例1で調製されたリチウム二次電池の電気化学サイクル特性の比較である。比較を介して実施例において、リン酸塩がケイ素系負極マトリックス中に分散し、骨格を支える効果を発揮し、電気化学的なリチウム脱挿入過程中で物理的及び化学的反応が発生していないことが分かる。このような安定した構造は、ケイ素系負極の骨格を支え、体積膨張による応力と歪みを緩和し、各実施例の50サイクルの容量維持率は比較例に比べて大幅に向上し、すなわち、ケイ素系負極のサイクル特性を向上する。
【0049】
上記の具体的実施形態は、本発明の目的、技術的手段及び有利な効果をさらに詳細に説明してきたが、上記の説明は本発明の具体的実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。本発明の精神及び原則の範囲内で行われた多種多様な修正、均等物による置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれる。
【国際調査報告】