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特表2023-543261ツカチニブを抗HER2抗体と組み合わせて用いてHER2変化により駆動される固形腫瘍を処置する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ツカチニブを抗HER2抗体と組み合わせて用いてHER2変化により駆動される固形腫瘍を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20231005BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20231005BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
A61K31/517
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61P15/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P35/04
A61K38/46
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519178
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 US2021071606
(87)【国際公開番号】W WO2022067347
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/084,481
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/113,245
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/222,335
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503188759
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】クルキアン,アニタ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC22
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体、例えば、トラスツズマブ、又はトラスツズマブ及びペルツズマブとの組み合わせを用いて、固形腫瘍、例えばHER2変化を有する固形腫瘍、例えば、HER2が増幅/過剰発現又は突然変異している固形腫瘍を処置する方法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有する、方法。
【請求項2】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1ヶ月の無増悪生存期間(PFS)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2ヶ月の全生存(OS)を示す、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの10%超の低下を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの25%超の低下を示す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの30%超の低下を示す、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの10%超の低下を示す、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの25%超の低下を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの30%超の低下を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後9ヶ月、20%超の推定PFS率を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
対象が、30%超の推定PFS率を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対象が、40%超の推定PFS率を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
対象が、45%超の推定PFS率を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後12ヶ月、15%超の推定PFS率を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
対象が、20%超の推定PFS率を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
対象が、30%超の推定PFS率を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
対象が、40%超の推定PFS率を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後15ヶ月、15%超の推定PFS率を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
対象が、20%超の推定PFS率を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象が、25%超の推定PFS率を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
対象が、30%超の推定PFS率を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後24ヶ月、25%超の推定OS率を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
対象が、35%超の推定OS率を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象が、40%超の推定OS率を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後30ヶ月、20%超の推定OS率を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
対象が、25%超の推定OS率を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
対象が、30%超の推定OS率を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体が、21日の処置サイクルで対象に投与される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの抗HER2抗体が、21日の処置サイクルの1日目に対象に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つの抗HER2抗体が、約3週毎に1回投与される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物が、対象に1日2回投与される、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
1つ以上のHER2変化がHER2突然変異であり、HER2突然変異が、配列番号1のアミノ酸配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
HER2突然変異が、活性化突然変異である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
HER2突然変異が、細胞外ドメイン、キナーゼドメイン若しくは膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異、又はその任意の組み合わせである、請求項32又は請求項33に記載の方法。
【請求項35】
HER2突然変異が、G309A、G309E、S310F、S310Y、C311R、C311S、及びC334Sからなる群から選択される、細胞外ドメイン中の突然変異である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
HER2突然変異が、Y772、G776、G778、及びT798からなる群から選択されるアミノ酸残基における、キナーゼドメイン中の突然変異である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
HER2突然変異が、G776 YVMA挿入である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
HER2突然変異が、T733I、L755P、L755S、I767M、L768S、D769N、D769Y、D769H、V777L、V777M、L841V、V842I、N857S、T862A、L869R、H878Y、及びR896Cからなる群から選択される、キナーゼドメイン中の突然変異である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
HER2突然変異が、アミノ酸残基V697における、キナーゼドメイン中の突然変異である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
HER2突然変異が、S653C、I655V、V659E、G660D、及びR678Qからなる群から選択される、膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
HER2突然変異が、次世代シーケンシング(NGS)を使用することによって決定される、請求項32~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
1つ以上のHER2変化が、HER2過剰発現/増幅である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
HER2過剰発現が、免疫組織化学(IHC)によって決定される3+過剰発現である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
HER2増幅が、in situハイブリダイゼーションアッセイによって決定される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
in situハイブリダイゼーションアッセイが、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
in situハイブリダイゼーションアッセイが、発色in situハイブリダイゼーションである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
HER2増幅が、NGSにより組織中で決定される、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
HER2増幅が、血液ベースのNGSアッセイにより循環腫瘍DNA(ctDNA)において決定される、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
固形腫瘍が、HER2+固形腫瘍である、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
固形腫瘍が転移性固形腫瘍である、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
固形腫瘍が局所進行性である、請求項1~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
固形腫瘍が切除不能である、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
固形腫瘍が、子宮頸がん、子宮がん、胆嚢がん、胆管細胞がん、尿路上皮がん、肺がん、乳がん、胃食道がん、及び結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
固形腫瘍が胆嚢がんであり、対象が、胆嚢がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前治療ラインが、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
固形腫瘍が胆管細胞がんであり、対象が、胆管細胞がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前治療ラインが、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
肺がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
NSCLCが、非扁平NSCLCである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
対象が、標準治療から再発している、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
対象が、標準治療に対して抵抗性である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
対象に利用可能な標準治療がない、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
固形腫瘍が乳がんである、請求項53に記載の方法。
【請求項64】
対象が、乳がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前治療ラインが、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
乳がんが、ホルモン受容体陽性(HR+)乳がんである、請求項63~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
乳がんが、転移した乳がんである、請求項63~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物及び少なくとも1つの抗HER2抗体と組み合わせてフルベストラントを投与される、請求項66又は請求項67に記載の方法。
【請求項69】
フルベストラントが、500mgの用量で投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
フルベストラントの投与経路が、筋肉内投与(IM)である、請求項68又は請求項69に記載の方法。
【請求項71】
フルベストラントが、最初の21日の処置サイクルの1日目に投与される、請求項68~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
フルベストラントが、約4週毎に1回投与される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
フルベストラントが、最初の21日の処置サイクルの15日目にさらに投与される、請求項71又は請求項72に記載の方法。
【請求項74】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物が、約150mg~約650mgの用量で対象に投与される、請求項1~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物が、約300mgの用量で対象に投与される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物が、対象に経口投与される、請求項1~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
少なくとも1つの抗HER2抗体が、約4mg/kg~約10mg/kgの用量で対象に投与される、請求項1~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
少なくとも1つの抗HER2抗体が、対象の体重1kg当たり約6mgの用量で対象に投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
少なくとも1つの抗HER2抗体が、対象の体重1kg当たり約8mgの用量で対象に投与される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
少なくとも1つの抗HER2抗体が、約8mg/kgの約初期用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで対象に投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
最初の21日の処置サイクル中に投与される少なくとも1つの抗HER2抗体の用量が、対象の体重1kg当たり8mgであり、その後の21日の処置サイクル中に投与される用量が、対象の体重1kg当たり6mgである、請求項77に記載の方法。
【請求項82】
少なくとも1つの抗HER2抗体が静脈内投与される、請求項1~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
少なくとも1つの抗HER2抗体が1つの抗HER2抗体を含む、請求項1~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
少なくとも1つの抗HER2抗体が、トラスツズマブ、又はそのバイオシミラーである、請求項1~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
少なくとも1つの抗HER2抗体がトラスツズマブである、請求項1~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
少なくとも1つの抗HER2抗体が、第1の抗HER2抗体及び第2の抗HER2抗体を含む、請求項1~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
第1の抗HER2抗体が、約4mg/kg~約10mg/kgの用量で対象に投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
第1の抗HER2抗体が、対象の体重1kg当たり約6mgの用量で対象に投与される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
第1の抗HER2抗体が、約200mg~約1,000mgの用量で投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項90】
第1の抗HER2抗体が、約600mgの用量で投与される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
第2の抗HER2抗体が、約200mg~約1,000mgの用量で対象に投与される、請求項86~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
第2の抗HER2抗体が、約420mgの用量で投与される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
第2の抗HER2抗体が、約600mgの用量で投与される、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
第1の抗HER2抗体が約6mg/kgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体が約420mgの用量で投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項95】
第1の抗HER2抗体が静脈内投与される、請求項86~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
第1の抗HER2抗体が皮下投与される、請求項86~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
第2の抗HER2抗体が静脈内投与される、請求項86~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
第2の抗HER2抗体が皮下投与される、請求項86~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
第1の抗HER2抗体が、6mg/kgの用量で静脈内投与されるか又は約600mgの用量で皮下投与され;第2の抗HER2抗体が、約420mgの用量で静脈内投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項100】
第1の抗HER2抗体及び第2の抗HER2抗体が、約600mgの第1の抗HER2抗体と600mgの第2の抗HER2抗体とを含む医薬組成物において投与され;医薬組成物は皮下投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項101】
医薬組成物が、ヒアルロニダーゼをさらに含む、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
医薬組成物が、約20,000単位のヒアルロニダーゼを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
第1の抗HER2抗体が、トラスツズマブ、又はそのバイオシミラーである、請求項86~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
第2の抗HER2抗体が、ペルツズマブ、又はそのバイオシミラーである、請求項86~103のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
第1の抗HER2抗体が、約3週毎に1回投与される、請求項86~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
第2の抗HER2抗体が、約3週毎に1回投与される、請求項86~105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
対象の処置が、少なくとも約85%の腫瘍増殖阻害(TGI)指数をもたらす、請求項1~106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
対象の処置が、約100%のTGI指数をもたらす、請求項1~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
対象における1つ以上の治療効果が、ベースラインと比較して、対象へのツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後に改善される、請求項1~108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
1つ以上の治療効果が、固形腫瘍に由来する腫瘍のサイズ、客観的奏効率、奏効期間、奏効までの時間、無増悪生存期間及び全生存からなる群から選択される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
固形腫瘍に由来する腫瘍のサイズが、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与前の固形腫瘍に由来する腫瘍のサイズと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%減少する、請求項1~110のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
客観的奏効率が、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%である、請求項1~111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年の無増悪生存期間を示す、請求項1~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年の全生存を示す、請求項1~113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
ツカチニブに対する奏効期間が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年である、請求項1~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる、請求項1~115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる、方法。
【請求項118】
固形腫瘍におけるHER2の総量が、ウエスタンブロット解析によって決定される、請求項116又は117に記載の方法。
【請求項119】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる、請求項1~118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる、方法。
【請求項121】
固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量が、定量的蛍光活性化セルソーティング(qFACS)によって決定される、請求項119又は120に記載の方法。
【請求項122】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる、請求項1~121のいずれか1項に記載の方法。
【請求項123】
固形腫瘍の細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる、方法。
【請求項124】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞膜結合HER2の内在化を増加させる、請求項1~123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
固形腫瘍における細胞膜結合HER2の内在化を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が細胞膜結合HER2の内在化を増加させる、方法。
【請求項126】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、HER2のリソソーム分解を増加させる、請求項1~125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
固形腫瘍におけるHER2のリソソーム分解を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、HER2のリソソーム分解を増加させる、方法。
【請求項128】
対象がヒトである、請求項1~127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
(a) ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物;
(b) 少なくとも1つの抗HER2抗体;及び
(c) 請求項1~125のいずれか1項に記載の方法におけるキットを使用するための指示書
を含むキット。
【請求項130】
少なくとも1つの抗HER2抗体がトラスツズマブを含む、請求項129に記載のキット。
【請求項131】
少なくとも1つの抗HER2抗体がペルツズマブを含む、請求項129又は請求項130に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月28日に出願された米国仮特許出願第63/084,481号、2020年11月13日に出願された米国仮特許出願第63/113,245号、及び2021年7月15日に出願された米国仮特許出願第63/222,335号の優先権の利益を主張し、それらの開示は、それぞれが参照によりあらゆる目的のため本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体、例えばトラスツズマブとの組み合わせを用いて、固形腫瘍、例えばHER2変化を有する固形腫瘍、例えば、HER2が増幅/過剰発現又は突然変異している固形腫瘍を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ERBB2遺伝子によりコードされるヒト上皮成長因子受容体2(HER2)は、HER1(上皮成長因子受容体[EGFR]としても知られる)、HER2、HER3、及びHER4を含む4つの関連する受容体型チロシンキナーゼのファミリーの一部である。HER1-4は、細胞外リガンド結合領域及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む1回膜貫通糖タンパク質受容体である。HER2は既知のリガンドを有していないが、これは他のHERファミリー受容体に対する好ましい二量体化パートナーである。腫瘍において過剰発現された場合、HER2は、自己リン酸化するリガンド非依存性ホモ二量体複合体を形成する。HER2のホモ又はヘテロ二量体化は、例えばRas/Raf/MEK/MAPK経路、PI3K/AKT経路、Src経路、及びSTAT経路などの複数のシグナル伝達カスケードの活性化をもたらす。これらのシグナル伝達経路は、細胞増殖、アポトーシスの阻害、及び転移をもたらす。
【0004】
HER2は、複数の固形腫瘍における検証された標的であり、HER2過剰発現/増幅の乳がん及び胃がんを有する患者のために抗HER2のバイオ医薬品及び低分子薬が承認されている。HER2遺伝子の増幅又はそのタンパク質の過剰発現は、乳がんの約15%~20%において生じる。
【0005】
乳がん、胃がん、及び結腸直腸がんなどの典型的なHER2+がんにおいては、HER2の増幅は、別のErbBファミリーメンバーとのホモ二量体化又はヘテロ二量体化を介して強力なシグナル伝達をもたらす。これは、MAPキナーゼと、ホスファチジルイノシトール-3(PI3)キナーゼ経路との両方の下流の活性化をもたらし、次いで、分裂促進性及び生存を増強する。
【0006】
しかしながら、一部のがんではHER2発現は増幅されず、むしろHER2はキナーゼドメイン中に活性化突然変異を含有し得、これもシグナル伝達及び分裂促進性の増加をもたらす。WO2018/200505を参照されたい。HER2活性化突然変異は、様々ながんの型において発がん性ドライバーとして作用し得る。WO2018/200505を参照されたい。これらのHER2変異がんの大部分は、同時発生的なHER2遺伝子の増幅を伴っておらず、その結果、HER2変化したがんの重要なサブグループは、免疫組織化学(IHC)法又はin situハイブリダイゼーション(ISH)法によっては検出されない。診療所では、それらを、腫瘍生検又は循環無細胞DNA(cfDNA)のいずれかにおける次世代シーケンシング(NGS)によって同定することができる。Annals of Oncol 28:136-141 (2017)。前臨床データは、HER2の「ホットスポット」突然変異が、構成的に活性であり得、in vitro及びin vivoで形質転換能を有し、抗HER2ベースの療法に対する可変的な感受性を示し得ることを示す。J Mol Diagn, 17(5):487-495 (2015)、Nat Gen 51, 207-216 (2019)。最近の臨床試験は、HER2突然変異を担持する様々な腫瘍に対するHER2標的薬の潜在的な活性も示した。HER2標的剤は、潜在的には、これらの活性化突然変異を担持するがんの処置にとって有用であり得る。ESMO Open 2017; 2: e000279。しかしながら、HER2突然変異を有するがんを標的とする努力は、おそらくは、その低い頻度、これらの突然変異の生物学的活性の不十分な理解、及びパッセンジャー突然変異からドライバーを分離することの困難性のため、臨床的成功が限られてきた。The Oncologist 24(12):e1303-e1314 (2019)。これらのHER2変異がんにおけるHER2指向性療法の役割は、活発な探索の対象である。
【0007】
ツカチニブ((N4-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-3-メチルフェニル)-N6-(4,4-ジメチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)キナゾリン-4,6-ジアミン)(TUKYSA(商標);以前はARRY-380及びONT-380として公知)は、経口的に(PO)投与される、HER2の強力で高選択的な低分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。ツカチニブは、in vitroではHER2の強力な阻害剤であり、細胞シグナル伝達アッセイにおいては、近縁関係にあるキナーゼEGFRと比較して、HER2に対して>1000倍より選択的である。HER2に対するツカチニブの選択性は、HER2/EGFR二重阻害剤を用いた場合にみられ得るEGFR関連毒性の可能性を低下させる。ツカチニブは、HER2駆動型分裂促進因子活性化タンパク質及びPI3キナーゼシグナル伝達経路を阻害し、腫瘍細胞増殖、生存、及び転移の阻害をもたらす。
【0008】
ツカチニブは、トラスツズマブ及びカペシタビンと組み合わせて、以前に処置された、進行性の切除不能な又は転移性のHER2+乳がんを有する患者における使用のために、オーストラリア、カナダ、シンガポール、スイス及び米国において承認されている。
【0009】
HER2細胞外ドメインに結合するヒト化抗HER2抗体であるトラスツズマブは、HER2+乳がんの処置における使用のために承認されており、通常はタキサンと組み合わせて、周術期及び転移状態における治療のバックボーンのままである。ペルツズマブは、別の承認された抗HER2モノクローナル抗体であり、これは、トラスツズマブとは異なる部位でHER2受容体に結合する。
【0010】
特許出願、特許刊行物、及び科学文献を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、あたかもそれぞれ個々の参考文献が具体的かつ個別的に参照により組み込まれると示されたかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 2018/200505
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Annals of Oncol 28:136-141 (2017)
【非特許文献2】J Mol Diagn, 17(5):487-495 (2015)
【非特許文献3】Nat Gen 51, 207-216 (2019)
【非特許文献4】ESMO Open 2017;2: e000279
【非特許文献5】The Oncologist 24(12):e1303-e1314 (2019)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
概要
対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有する、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1ヶ月の無増悪生存期間(PFS)を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2ヶ月の全生存(OS)を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの10%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの25%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの30%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの10%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの25%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの30%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後9ヶ月、20%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、40%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、45%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後12ヶ月、15%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、20%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、40%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後15ヶ月、15%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、20%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、25%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後24ヶ月、25%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、35%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、40%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後30ヶ月、20%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、25%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体は、21日の処置サイクルで対象に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、21日の処置サイクルの1日目に対象に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、約3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、対象に1日2回投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上のHER2変化はHER2突然変異であり、HER2突然変異は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を含む。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、活性化突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、細胞外ドメイン、キナーゼドメイン、又は膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異、又はその任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、G309A、G309E、S310F、S310Y、C311R、C311S、及びC334Sからなる群から選択される、細胞外ドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、Y772、G776、G778、及びT798からなる群から選択されるアミノ酸残基における、キナーゼドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、G776 YVMA挿入である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、T733I、L755P、L755S、I767M、L768S、D769N、D769Y、D769H、V777L、V777M、L841V、V842I、N857S、T862A、L869R、H878Y、及びR896Cからなる群から選択される、キナーゼドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、アミノ酸残基V697における、キナーゼドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、S653C、I655V、V659E、G660D、及びR678Qからなる群から選択される膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、次世代シーケンシング(NGS)を使用することによって決定される。いくつかの実施形態では、1つ以上のHER2変化は、HER2過剰発現/増幅である。いくつかの実施形態では、HER2過剰発現は、免疫組織化学(IHC)によって決定される3+過剰発現である。いくつかの実施形態では、HER2増幅は、in situハイブリダイゼーションアッセイによって決定される。いくつかの実施形態では、in situハイブリダイゼーションアッセイは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイである。
いくつかの実施形態では、in situハイブリダイゼーションアッセイは、発色in situハイブリダイゼーションである。いくつかの実施形態では、HER2増幅は、NGSにより組織中で決定される。いくつかの実施形態では、HER2増幅は、血液ベースのNGSアッセイにより循環腫瘍DNA(ctDNA)において決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、HER2+固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は局所進行性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は切除不能である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、子宮頸がん、子宮がん、胆嚢がん、胆管細胞がん、尿路上皮がん、肺がん、乳がん、胃食道がん、及び結腸直腸がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胆嚢がんであり、対象は、胆嚢がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している。いくつかの実施形態では、前治療ラインは、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胆管細胞がんであり、対象は、胆管細胞がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している。いくつかの実施形態では、前治療ラインは、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、NSCLCは、非扁平NSCLCである。いくつかの実施形態では、対象は、標準治療から再発している。いくつかの実施形態では、対象は、標準治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、対象に利用可能な標準治療はない。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は乳がんである。いくつかの実施形態では、対象は、乳がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している。いくつかの実施形態では、前治療ラインは、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、乳がんは、ホルモン受容体陽性(HR+)乳がんである。いくつかの実施形態では、乳がんは、転移した乳がんである。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体と組み合わせて、フルベストラントを投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、500mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントの投与経路は、筋肉内投与(IM)である。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、最初の21日の処置サイクルの1日目に投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、約4週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、最初の21日の処置サイクルの15日目にさらに投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、約150mg~約650mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、約300mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、対象に経口投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、約4mg/kg~約10mg/kgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、対象の体重1kg当たり約6mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、対象の体重1kg当たり約8mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、約8mg/kgの約初期用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで対象に投与される。いくつかの実施形態では、最初の21日の処置サイクル中に投与される少なくとも1つの抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり8mgであり、その後の21日の処置サイクル中に投与される用量は、対象の体重1kg当たり6mgである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、1つの抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、1を超えない抗HER2抗体である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブ、又はそのバイオシミラーである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、第1の抗HER2抗体と第2の抗HER2抗体とを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約4mg/kg~約10mg/kgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、対象の体重1kg当たり約6mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約200mg~約1,000mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約200mg~約1,000mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約420mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約6mg/kgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は、約420mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、6mg/kgの用量で静脈内投与されるか、又は約600mgの用量で皮下投与され;第2の抗HER2抗体は、約420mgの用量で静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体及び第2の抗HER2抗体は、約600mgの第1の抗HER2抗体と600mgの第2の抗HER2抗体とを含む医薬組成物において投与され;医薬組成物は皮下投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ヒアルロニダーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20,000単位のヒアルロニダーゼを含む。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、トラスツズマブ、又はそのバイオシミラーである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、ペルツズマブ、又はそのバイオシミラーである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、対象の処置は、少なくとも約85%の腫瘍増殖阻害(TGI)指数をもたらす。いくつかの実施形態では、対象の処置は、約100%のTGI指数をもたらす。いくつかの実施形態では、対象における1つ以上の治療効果が、ベースラインと比較して、対象へのツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後に改善される。いくつかの実施形態では、1つ以上の治療効果は、固形腫瘍に由来する腫瘍のサイズ、客観的奏効率、奏効期間、奏効までの時間、無増悪生存期間及び全生存からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍に由来する腫瘍のサイズは、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与前の固形腫瘍に由来する腫瘍のサイズと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%減少する。いくつかの実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%である。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、ツカチニブに対する奏効期間は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年である。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の総量は、ウエスタンブロット解析によって決定される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる。いくつかの実施形態では、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量は、定量的蛍光活性化セルソーティング(qFACS)によって決定される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、細胞膜結合HER2の内在化を増加させる。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、HER2のリソソーム分解を増加させる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0014】
固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる、方法も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の総量は、ウエスタンブロット解析によって決定される。
【0015】
固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる、方法も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量は、定量的蛍光活性化セルソーティング(qFACS)によって決定される。
【0016】
固形腫瘍の細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる、方法も本明細書で提供される。
【0017】
固形腫瘍における細胞膜結合HER2の内在化を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞膜結合HER2の内在化を増加させる、方法も本明細書で提供される。
【0018】
固形腫瘍におけるHER2のリソソーム分解を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、HER2のリソソーム分解を増加させる、方法も本明細書で提供される。
【0019】
ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物、少なくとも1つの抗HER2抗体、及び本明細書における実施形態のいずれかに記載のキットを使用するための指示書を含むキットも本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、ペルツズマブを含む。
【0020】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性の1つ、いくつか、又は全部を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成させることができることが理解されるべきである。本発明のこれらの態様及び他の態様は、当業者には明らかとなるであろう。本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は、以下の詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1-1】図1A~1Hは、BT-474細胞株、SK-BR-3細胞株、HCC-1419細胞株、及びUACC-893細胞株において、ツカチニブを30nM又は100nMのいずれかの用量で24時間及び48時間の期間用いた処置後に、ツカチニブを用いた処置が、全体的な細胞膜結合HER2レベルを増加させたことを示す一連のグラフである。
図1-2】図1A~1Hは、BT-474細胞株、SK-BR-3細胞株、HCC-1419細胞株、及びUACC-893細胞株において、ツカチニブを30nM又は100nMのいずれかの用量で24時間及び48時間の期間用いた処置後に、ツカチニブを用いた処置が、全体的な細胞膜結合HER2レベルを増加させたことを示す一連のグラフである。
図1-3】図1A~1Hは、BT-474細胞株、SK-BR-3細胞株、HCC-1419細胞株、及びUACC-893細胞株において、ツカチニブを30nM又は100nMのいずれかの用量で24時間及び48時間の期間用いた処置後に、ツカチニブを用いた処置が、全体的な細胞膜結合HER2レベルを増加させたことを示す一連のグラフである。
図1-4】図1A~1Hは、BT-474細胞株、SK-BR-3細胞株、HCC-1419細胞株、及びUACC-893細胞株において、ツカチニブを30nM又は100nMのいずれかの用量で24時間及び48時間の期間用いた処置後に、ツカチニブを用いた処置が、全体的な細胞膜結合HER2レベルを増加させたことを示す一連のグラフである。
図2A図2A~2Dは、ツカチニブを用いた処置が、細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させ、その後HER2が急速に内在化され、リソソームプロセシングを受けることを示す一連の模式図及び画像である。図2Aは、Trastuzumab-AF488を用いたHER2内在化アッセイの模式図を示す。
図2B図2Bは、Trastuzumab-AF488を用いたHER2内在化アッセイの結果を示す。
図2C図2Cは、Trastuzumab-QFを用いたHER2内在化アッセイの模式図を示す。
図2D図2Dは、Trastuzumab-QFを用いたHER2内在化アッセイの結果を示す(角の小さな囲みは、DAPIを用いた細胞の染色を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
I.定義
本開示をより容易に理解することができるようにするために、特定の用語を最初に定義する。本出願で使用される場合、本明細書で別段に明示的に提供される場合を除いて、以下の用語はそれぞれ、以下に記載される意味を有する。さらなる定義は、本出願全体を通して記載される。
【0023】
本明細書で使用される用語「a」、「an」又は「the」は、1つのメンバーを含む態様だけでなく、2つ以上のメンバーを含む態様も含む。例えば、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段に指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「細胞(a cell)」との言及は、複数のこのような細胞を含み、「薬剤(the agent)」との言及は、当業者には公知の1つ以上の薬剤に対する言及を含む、などである。
【0024】
本明細書で使用される用語「又は」は、一般的には、非排他的であると解釈されるべきである。例えば、「A又はBを含む組成物」に対する特許請求は、典型的には、AとBの両方を含む組成物を含む態様を示すであろう。しかしながら、「又は」は、矛盾なく組み合わせることができないことが示される態様(例えば、9~10又は7~8である組成物pH)を除外すると解釈されるべきである。
【0025】
群「A又はB」は、典型的には、「A及びBからなる群から選択される」群と同等である。
【0026】
本明細書で使用される用語「及び/又は」は、他方を含む、又は含まない、2つの特定された特徴又は成分のそれぞれの特定の開示と解されるべきである。従って、本明細書で「A及び/又はB」などの語句において使用される用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A(のみ)」、及び「B(のみ)」を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの語句において使用される用語「及び/又は」は、以下の態様のそれぞれ:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(のみ);B(のみ);及びC(のみ)を包含することが意図される。
【0027】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態は、「含む(comprising)」、「からなる(consisting)」及び「本質的にからなる(consisting essentially of)」態様及び実施形態を含むことが理解される。
【0028】
本明細書で使用される用語「約」及び「およそ」は、一般的には、測定値の性質又は精度を考慮して測定された量に関する許容される程度の誤差を意味するものとする。典型的な、例示的な誤差の程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。「約X」との言及はいずれも、具体的には、少なくとも値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X、及び1.05Xを示す。従って、「約X」は、例えば「0.98X」との請求項の限定に対する文書の記載による裏付けを教示及び提供することが意図される。特に、所与の量に対する言及における用語「約」及び「およそ」は、所与の量自体を包含し且つ記載する。
【0029】
あるいは、生物系においては、用語「約」及び「およそ」は、所与の値の1桁以内、好ましくは、5倍以内、より好ましくは、2倍以内の値を意味し得る。本明細書で示される数量は、別段に記載されない限り、近似であり、明示的に記載されない場合、用語「約」又は「およそ」を推測し得ることを意味する。
【0030】
「約」が数値範囲の先頭に適用される場合、それは当該範囲の両端に適用される。従って、「約5~20%」は、「約5%~約20%」に等しい。「約」が値のセットの最初の値に適用される場合、それはそのセット中の全ての値に適用される。従って、「約7、9、又は11mg/kg」は、「約7、約9、又は約11mg/kg」に等しい。
【0031】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は、一般的には、さらなる成分を除外しないと解釈されるべきである。例えば、「Aを含む組成物」に対する特許請求は、A及びB;A、B、及びC;A、B、C、及びD;A、B、C、D、及びEなどを含む組成物を包含するであろう。
【0032】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本開示が関連する技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed. 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed. 1999, Academic Press; 及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、当業者に、本開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を提供する。
【0033】
単位、接頭辞、及び記号は、それらの国際単位系(SI)で許容される形態で示される。数値範囲は、その範囲を規定する数を含む。本明細書で提供される見出しは、本明細書を全体として参照することにより得ることができる本開示の様々な態様の限定ではない。従って、直下で定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0034】
本明細書で使用される用語「共投与(co-administering)」は、2つ以上の構造的に異なる化合物の連続投与又は同時投与を含む。例えば、2つ以上の構造的に異なる薬学活性化合物を、2つ以上の構造的に異なる活性な薬学活性化合物を含有する、経口投与に適合させた医薬組成物を投与することによって共投与することができる。別の例として、2つ以上の構造的に異なる化合物を、一方の化合物を投与し、その後、他方の化合物を投与することによって共投与することができる。2つ以上の構造的に異なる化合物は、抗HER2抗体とツカチニブとで構成され得る。いくつかの例では、共投与される化合物は、同じ経路によって投与される。他の例では、共投与される化合物は、異なる経路によって投与される。例えば、一方の化合物を経口投与し、他方の化合物を、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、又は腹腔内注射によって、連続的に又は同時に投与することができる。同時に又は連続的に投与される化合物又は組成物は、抗HER2抗体とツカチニブとが、対象又は細胞において有効濃度で同時に存在するように投与することができる。
【0035】
「がん(癌)」とは、体内の異常な細胞の制御されない増殖を特徴とする様々な疾患の広い群を指す。「がん」又は「がん組織」は、腫瘍を含み得る。無秩序な細胞分裂及び増殖は、隣接する組織に侵入し、またリンパ系又は血流を介して身体の遠位部分に転移することも可能な、悪性腫瘍の形成をもたらす。転移の後、その遠位腫瘍は、転移前の腫瘍「に由来する」と言うことができる。例えば、乳がん「に由来する腫瘍」とは、転移した乳がんの結果である腫瘍を指す。
【0036】
がんの文脈では、用語「ステージ」とは、がんの程度の分類を指す。がんのステージングの場合に考慮される因子としては、限定するものではないが、腫瘍サイズ、隣接組織の腫瘍侵入、及び腫瘍が他の部位に転移したか否かが挙げられる。あるステージと別のステージとを区別するための具体的な基準及びパラメータは、がんの種類に応じて異なり得る。がんのステージングは、例えば、予後を決定するか、又は最も適切な処置選択肢(1つ又は複数)を同定するのを補助するために使用される。
【0037】
がんステージングシステムの1つの非限定な例は、「TNM」システムと呼ばれる。TNMシステムにおいて、「T」は、主要腫瘍のサイズ及び程度を指し、「N」は、がんが拡散した隣接するリンパ節の数を指し、「M」は、がんが転移したか否かを指す。「TX」は、主要腫瘍を測定することができないことを示し、「T0」は、主要腫瘍を見出すことができないことを示し、「T1」、「T2」、「T3」及び「T4」は、主要腫瘍のサイズ又は程度を示し、ここで、数が大きいほど、より大きな腫瘍、又は隣接組織中に増殖した腫瘍に対応する。「NX」は、隣接するリンパ節中のがんを測定することができないことを示し、「N0」は、隣接するリンパ節中にがんが存在しないことを示し、「N1」、「N2」、「N3」及び「N4」は、がんが拡散したリンパ節の数及び位置を示し、数が大きいほど、がんを含有するリンパ節の数がより多いことに対応する。「MX」は、転移を測定することができないことを示し、「M0」は転移が生じていないことを示し、「M1」は、がんが身体の他の部分に転移したことを示す。
【0038】
がんステージングシステムの別の非限定な例として、がんは、5つのステージ:「ステージ0」、「ステージI」、「ステージII」、「ステージIII」又は「ステージIV」のうちの1つを有すると分類されるか又は段階分けされる。ステージ0は、異常な細胞が存在するが、隣接組織に拡散していないことを示す。これは、一般的には、in situのがん(CIS)とも呼ばれる。CISはがんではないが、後でがんに発達し得る。ステージI、II、及びIIIは、がんが存在することを示す。数が多いほど、より大きな腫瘍サイズ又は隣接組織に拡散した腫瘍に対応する。ステージIVは、がんが転移したことを示す。当業者であれば、様々ながんステージングシステムに精通し、それらを容易に適用又は解釈することができるであろう。
【0039】
用語「HER2」(HER2/neu、ERBB2、CD340、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-2、プロトオンコジーンNeu、及びヒト上皮成長因子受容体2としても知られる)は、受容体型チロシンキナーゼのヒト上皮成長因子受容体(HER/EGFR/ERBB)ファミリーのメンバーを指す。HER2の増幅又は過剰発現は、結腸直腸がん、胃がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、胆管がん(例えば、胆管細胞がん(cholangiocarcinoma)、胆嚢がん)、膀胱がん、食道がん、メラノーマ、卵巣がん、肝臓がん、前立腺がん、膵がん、小腸がん、頭頸部がん、子宮がん、子宮頸がん、及び乳がんなどの、特定の侵攻性のがんの発症及び進行において重要な役割を果たす。HER2ヌクレオチド配列の非限定な例は、GenBank参照番号NP_001005862、NP_001289936、NP_001289937、NP_001289938、及びNP_004448に記載されている。HER2ペプチド配列の非限定な例は、GenBank参照番号NP_001005862、NP_001276865、NP_001276866、NP_001276867、及びNP_004439に記載されている。
【0040】
HER2が細胞中又は細胞上で増幅され又は過剰発現されている場合、その細胞は「HER2陽性」であると呼ばれる。HER2陽性細胞中でのHER2の増幅又は過剰発現のレベルは、一般的に、0~3の範囲のスコア(すなわち、HER2 0、HER2 1+、HER2 2+、又はHER2 3+)として表され、スコアが高いほど、より高い程度の発現に対応する。Mol Biol Int. 2014:852748 (2014)。スコア化法は、免疫組織化学により決定される細胞膜染色パターンに基づくものであってもよく、これは以下のとおりである:
i. 3+:陽性HER2発現、侵襲性腫瘍細胞の30%超の均一な強い膜染色;
ii. 2+:HER2タンパク質発現についてははっきりしない、完全な膜染色であって強度が不均一又は弱いが、少なくとも10%の細胞で外周部分に分布している;
iii. 0又は1+:HER2タンパク質発現については陰性。
【0041】
ONT-380及びARRY-380としても知られる用語「ツカチニブ」は、HER2活性化を抑制するか又は遮断する低分子チロシンキナーゼ阻害剤を指す。ツカチニブは、以下の構造を有する:
【0042】
【化1】
【0043】
用語「抗HER2抗体」は、HER2タンパク質に結合する抗体を指す。がんの処置のために使用される抗HER2抗体は、典型的にはモノクローナルであるが、ポリクローナル抗体はこの用語により除外されない。抗HER2抗体は、様々な機構によってHER2活性化又は下流のシグナル伝達を阻害する。非限定な例として、抗HER2抗体は、リガンド結合、受容体活性化若しくは受容体シグナル伝播を防止し、HER2の発現若しくは細胞表面への局在化の低下をもたらし、HER2切断を阻害するか、又は抗体媒介性細胞傷害を誘導することができる。本発明の方法及び組成物における使用に好適な抗HER2抗体の非限定な例としては、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン(T-DM1としても知られる)、マルゲツキシマブ、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0044】
用語「化学療法剤」は、がん又はその症状の処置又は改善において有用な一群の化合物を指す。いくつかの実施形態では、化学療法剤として、アルキル化抗悪性腫瘍薬(例えば、メクロレタミン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、及びシクロホスファミドなどのナイトロジェンマスタード類;ブスルファンなどのアルキルスルホネート類;ストレプトゾシン、カルムスチン、及びロムスチンなどのニトロソウレア類;ダカルバジン及びテモゾロミドなどのトリアジン類;並びにチオテパ及びアルトレタミンなどのエチレンイミン類)、代謝拮抗薬(以下参照)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、及びバルルビシンなどのアントラサイクリン類;ブレオマイシン類;マイトマイシンC、ミトキサントロン、及びアクチノマイシン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、エキセメスタンなどのステロイド系阻害剤;並びにアナストロゾール及びレトロゾールなどの非ステロイド系阻害剤)、キナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、スニチニブ、及びソラフェニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤;並びに、例えばボスチニブ、ネラチニブ、バタラニブ、及びトセラニブ)、mTor阻害剤(例えば、ラパマイシン及びその類似体、例えばテムシロリムス、エベロリムス、及びリダフォロリムスなど;二重PIcK/mTOR阻害剤;並びにサパニセルチブなどのATP-競合mTOR阻害剤)、レチノイド類(例えば、トレチノイン、アリトレチノイン、ベキサロテン、及びイソトレチノイン)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、ドキソルビシン、エトポシド、テニポシド、ミトキサントロン、ノボビオシン、メルバロン、アクラルビシン、カンプトテシン、並びにカンプトテシンのプロドラッグ類又は誘導体類、例えばイリノテカン及びトポテカンなど)、及び植物アルカロイド類(例えば、ビンカアルカロイド類のビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、及びビンデシン;ドセタキセル及びパクリタキセルなどのタキサン類)などが挙げられる。
【0045】
用語「腫瘍増殖阻害(TGI)指数」とは、薬剤(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の抗HER2抗体、又はその組み合わせ)が、未処置の対照と比較した場合に腫瘍の増殖を阻害する程度を表すのに使用される値を指す。TGI指数は、以下の式:
【0046】
【数1】
(式中、「Tx 0日目」は、処置が投与される最初の日(すなわち、実験療法又は対照療法(例えば、ビヒクルのみ)が投与される最初の日)を示し、「Tx X日目」は、0日目の後の日数Xを示す)に従って、特定の時点(例えば、実験又は臨床試験中の特定の日数)について算出される。典型的には、処置群及び対照群の平均容積が用いられる。非限定例として、試験0日目が「Tx 0日目」に対応し、TGI指数が試験28日目(すなわち、「Tx 28日目」)に算出される実験においては、試験0日目の両群の平均腫瘍容積が250mm3であり、実験群及び対照群の平均腫瘍容積が、それぞれ125mm3及び750mm3である場合、28日目のTGI指数は、125%である。
【0047】
本明細書で使用される用語「相乗的」又は「相乗作用」とは、成分又は薬剤の組合せ(例えば、ツカチニブと少なくとも1つの抗HER2抗体との組合せ)の投与が、個々の成分の付加的な特性又は効果に基づいて予想される効果よりも高い効果(例えば、腫瘍増殖の阻害、生存時間の延長)をもたらす場合に観察される結果を指す。いくつかの実施形態では、相乗効果は、Bliss分析(例えば、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Foucquierら、Pharmacol. Res. Perspect. (2015) 3(3):e00149を参照されたい)を行うことによって決定される。Bliss Independenceモデルは、薬物の効果が確率的プロセスの結果であると仮定し、薬物は完全に独立して作用する(すなわち、薬物は互いに干渉しない(例えば、薬物が異なる作用部位を有する)が、それぞれが共通の結果に寄与する)と仮定する。Bliss Independenceモデルによれば、2つの薬物の組合せの予測される効果は、式:
【0048】
【数2】
(式中、EA及びEBは、それぞれ、薬物A及びBの効果を表し、EABは、薬物AとBの組合せの効果を表す)を使用して算出される。組合せの観察される効果が予測される効果EABよりも大きい場合、2つの薬物の組合せは、相乗的であると考えられる。組合せの観察される効果がEABと等しい場合、2つの薬物の組合せの効果は、付加的であると考えられる。あるいは、組合せの観察される効果がEABよりも小さい場合、2つの薬物の組合せは拮抗的であると考えられる。
【0049】
薬物の組合せの観察される効果は、例えば、TGI指数、腫瘍サイズ(例えば、容積、質量)、2つ以上の時点間(例えば、処置が投与される第1日と、処置が最初に投与された後の特定の日数との間)の腫瘍サイズ(例えば、容積、質量)の絶対的変化、2つ以上の時点間(例えば、処置が投与される第1日と、処置が最初に投与された後の特定の日数との間)の腫瘍サイズ(例えば、容積、質量)の変化の速度、又は対象若しくは対象集団の生存時間に基づき得る。TGI指数が薬物の組合せの観察される効果の尺度としてとられる場合、TGI指数を、1つ以上の時点で決定することができる。TGI指数が2つ以上の時点で決定される場合、いくつかの例では、複数のTGI指数の平均値又は中央値を、観察される効果の尺度として使用することができる。さらに、TGI指数を、単一の対象又は対象集団において決定することができる。TGI指数が集団において決定される場合、(例えば、1つ以上の時点での)集団における平均又は中央TGI指数を、観察される効果の尺度として使用することができる。腫瘍サイズ又は腫瘍増殖の速度が観察される効果の尺度として使用される場合、腫瘍サイズ又は腫瘍増殖の速度を、対象又は対象集団において測定することができる。いくつかの例では、腫瘍サイズ又は腫瘍増殖の速度の平均値若しくは中央値は、2つ以上の時点での対象について、又は1つ以上の時点での対象集団の間で決定される。生存時間が集団において測定される場合、平均又は中央生存時間を、観察される効果の尺度として使用することができる
【0050】
予測される組合せ効果EABは、組合せを構成する薬物(例えば、ツカチニブと少なくとも1つの抗HER2抗体)の単回用量又は複数回用量のいずれかを使用して算出することができる。いくつかの実施形態では、予測される組合せ効果EABは、それぞれの薬物A及びB(例えば、ツカチニブ及び少なくとも1つの抗HER2抗体)の単回用量のみを使用して算出され、EA及びEBの値は、単一の薬剤として投与される場合のそれぞれの薬物の観察される効果に基づく。EA及びEBの値が、単一の薬剤として薬物A及びBを投与することの観察される効果に基づく場合、EA及びEBは、例えば、TGI指数、1つ以上の時点で測定される腫瘍サイズ(例えば、容積、質量)、2つ以上の時点間(例えば、処置が投与される第1日と、処置が最初に投与された後の特定の日数との間)の腫瘍サイズ(例えば、容積、質量)の絶対変化、2つ以上の時点間(例えば、処置が投与される第1日と、処置が最初に投与された後の特定の日数との間)の腫瘍サイズ(例えば、容積、質量)の変化の速度、又はそれぞれの処置群における対象若しくは対象集団の生存時間に基づき得る。
【0051】
TGI指数が観察される効果の尺度としてとられる場合、TGI指数を、1つ以上の時点で決定することができる。TGI指数が2つ以上の時点で決定される場合、いくつかの例では、平均値又は中央値を、観察される効果の尺度として使用することができる。さらに、TGI指数を、それぞれの処置群の単一の対象又は対象集団において決定することができる。TGI指数が対象集団において決定される場合、それぞれの集団における平均又は中央TGI指数(例えば、1つ以上の時点での)を、観察される効果の尺度として使用することができる。腫瘍サイズ又は腫瘍増殖の速度が観察される効果の尺度として使用される場合、腫瘍サイズ又は腫瘍増殖の速度を、それぞれの処置群の対象又は対象集団において測定することができる。いくつかの例では、腫瘍サイズ又は腫瘍増殖の速度の平均値又は中央値は、2つ以上の時点での対象について、又は1つ以上の時点での対象集団の間で決定される。生存時間が集団において測定される場合、平均又は中央生存時間を、観察される効果の尺度として使用することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、予測される組合せ効果EABは、用量範囲を使用して算出される(すなわち、単一の薬剤として投与される場合のそれぞれの薬物の効果が、複数の用量で観察され、複数の用量での観察される効果が、特定の用量での予測される組合せ効果を決定するために使用される)。非限定な例として、EABを、以下の式:
【0053】
【数3】
(式中、EAmax及びEBmaxは、それぞれ、薬物A及びBの最大効果であり、A50及びB50は、それぞれ、薬物A及びBの半数最大効果用量であり、a及びbは、それぞれ、薬物A及びBの投与用量であり、p及びqは、それぞれ、薬物A及びBについての用量応答曲線の形状に由来する係数である(例えば、Foucquierら、Pharmacol. Res. Perspect. (2015) 3(3):e00149を参照されたい))に従って算出されるEA及びEBの値を使用して算出することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、2つ以上の薬物の組合せは、その組合せが薬物の組合せについて予測されるTGI指数より大きい観察されるTGI指数をもたらす場合(例えば、予測されるTGI指数が、薬物が付加的な組合せ効果をもたらしたとの仮定に基づく場合)に相乗的であると考えられる。いくつかの例では、組合せは、観察されるTGI指数が、薬物の組合せについて予測されるTGI指数よりも少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%大きい場合、相乗的であると考えられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、腫瘍増殖の速度(例えば、腫瘍のサイズ(例えば、容積、質量)の変化の速度)が、薬物の組合せが相乗的であるか否かを決定するために使用される(例えば、薬物の組合せは、腫瘍増殖の速度が、薬物の組合せが付加的効果をもたらした場合に予想されるものよりも遅い場合、相乗的である)。他の実施形態では、生存時間が、薬物の組合せが相乗的であるか否かを決定するために使用される(例えば、対象又は対象集団の生存時間が、薬物の組合せが付加的効果をもたらした場合に予想されるものよりも長い場合、薬物の組合せは相乗的である)。
【0056】
対象の「処置」又は「療法」とは、疾患と関連する症状、合併症、状態、又は生化学的指標の発生、進行、発達、重症度、又は再発を逆転させる、軽減する、改善する、阻害する、減速させる、又は防止する目的で、対象に対して実施される任意のタイプの介入若しくはプロセス、又は対象への活性薬剤の投与を指す。いくつかの実施形態では、疾患は、がんである。
【0057】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」としては、限定するものではないが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、並びにマウス、ラット、及びモルモットなどのげっ歯類などの脊椎動物が挙げられる。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。用語「対象」及び「患者」及び「個体」は、本明細書では互換的に使用される。
【0058】
薬物又は治療剤の「有効量」又は「治療有効量(治療上有効な量)」又は「治療有効用量」は、単独で、又は別の治療剤と組み合わせて使用される場合、疾患の発症から対象を保護する、又は疾患症状の重症度の低下、疾患症状がない期間の頻度及び持続時間の増大、若しくは疾患の苦痛に起因する機能障害若しくは身体障害の防止によって証明される疾患退縮を促進する薬物の任意の量である。治療剤が疾患退縮を促進する能力を、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系において、又はin vitroアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによるなどの、当業者に公知の様々な方法を使用して評価することができる。
【0059】
例として、腫瘍の処置のため、治療有効量の抗がん剤は、細胞増殖又は腫瘍増殖を、未処置の対象(例えば、1以上の未処置の対象)と比較して、処置された対象(例えば、1以上の処置された対象)において、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%阻害する。いくつかの実施形態では、治療有効量の抗がん剤は、細胞増殖又は腫瘍増殖を、未処置の対象(例えば、1以上の未処置の対象)と比較して、処置された対象(例えば、1以上の処置された対象)において100%阻害する。
【0060】
本開示の他の実施形態では、腫瘍退縮を観察することが可能であり、それは少なくとも約20日、少なくとも約30日、少なくとも約40日、少なくとも約50日、又は少なくとも約60日の期間にわたって継続する。
【0061】
治療有効量の薬物(例えば、ツカチニブ)は、がんを発症するリスクがある対象(例えば、前がん状態を有する対象)又はがんの再発に罹患している対象に、単独で、又は抗がん剤と組み合わせて投与した場合、がんの発症又は再発を阻害する薬物の任意の量である、「予防有効量」を含む。いくつかの実施形態では、予防有効量は、がんの発症又は再発を完全に防止する。がんの発症又は再発を「阻害すること」は、がんの発症若しくは再発の可能性を低下させること、又はがんの発症若しくは再発を完全に防止することを意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「治療量以下の用量(subtherapeutic dose)」は、過増殖性疾患(例えば、がん)の処置のために単独で投与される場合の治療化合物の通常の、又は典型的な用量よりも低い治療化合物(例えば、ツカチニブ)の用量を意味する。
【0063】
例として、「抗がん剤」は、対象におけるがん退縮を促進する。いくつかの実施形態では、治療有効量の薬物は、がんを除去する点までがん退縮を促進する。「がん退縮を促進すること」は、単独での、又は抗がん剤と組み合わせた、有効量の薬物の投与が、腫瘍増殖若しくはサイズの低減、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度の低下、疾患症状がない期間の頻度及び持続時間の増大、又は疾患の苦痛に起因する機能障害若しくは身体障害の防止をもたらすことを意味する。さらに、処置に関する用語「有効」及び「有効性」は、薬理学的有効性と、生理学的安全性との両方を含む。薬理学的有効性とは、患者におけるがん退縮を促進する薬物の能力を指す。生理学的安全性とは、薬物の投与から生じる、細胞、臓器及び/又は生物レベルでの毒性のレベル又は他の有害な生理学的効果(有害作用)を指す。
【0064】
「持続的応答」とは、処置の停止後に腫瘍増殖を低減させる持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与段階の開始時のサイズと比較して同じであるか、又はより小さいままであってもよい。いくつかの実施形態では、持続的応答は、処置期間と少なくとも同じである、又は処置期間よりも少なくとも1.5、2.0、2.5、若しくは3倍長い持続時間を有する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「完全奏効」又は「CR」とは、全ての標的病変の消失を指す;「部分奏効」又は「PR」とは、標的病変のベースラインの最長直径の合計(SLD)を参照として取る、標的病変のSLDの少なくとも30%の減少を指す;「安定疾患」又は「SD」とは、処置が開始して以降の最小のSLDを参照として取る、PRと認定されるほどの標的病変の十分な縮小でもなく、PDと認定されるほど十分な増加でもないことを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」又は「PFS」とは、処置される疾患(例えば、癌)が悪化しない処置中及び処置後の時間の長さを指す。無増悪生存期間は、患者が完全奏効又は部分奏効を経験した時間量、並びに患者が安定疾患を経験した時間量を含み得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「客観的奏効率」又は「ORR」とは、完全奏効(CR)率と部分奏効(PR)率との和を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「全生存」又は「OS」とは、特定の期間後に生存している可能性が高い群中の個体のパーセンテージを指す。
【0069】
本明細書で言及される用語「重量ベースの用量」とは、対象に投与される用量が、対象の重量に基づいて算出されることを意味する。例えば、60kg体重の対象が、6.0mg/kgの、トラスツズマブなどの薬剤を必要とする場合、当業者であれば、前記対象への投与のための薬剤の適切な量(すなわち、360mg)を計算し、使用することができる。
【0070】
本開示の方法に関する用語「固定用量」の使用は、2つ以上の異なる薬剤(例えば、ツカチニブと抗HER2抗体)が、互いに特定の(固定)比で対象に投与されることを意味する。いくつかの実施形態では、固定用量は、薬剤の量(例えば、mg)に基づく。特定の実施形態では、固定用量は、薬剤の濃度(例えば、mg/ml)に基づく。例えば、対象に投与されるツカチニブの抗HER2抗体に対する1:2の比は、約300mgのツカチニブと約600mgの少なくとも1つの抗HER2抗体又は約3mg/mlのツカチニブと約6mg/mlの少なくとも1つの抗HER2抗体が対象に投与されることを意味し得る。
【0071】
本開示の方法及び用量に関する用語「一律用量」の使用は、対象の重量又は体表面積(BSA)に関係なく対象に投与される用量を意味する。一律用量は、したがって、mg/kg用量として提供されないが、むしろ、薬剤(例えば、ツカチニブ又は抗HER2抗体)の絶対量として提供される。例えば、60kg体重の対象及び100kg体重の対象は、同じ用量(例えば、300mg)のツカチニブを受けるであろう。
【0072】
語句「薬学的に許容される」は、物質又は組成物が、製剤を含む他の成分及び/又はそれを用いて処置される哺乳動物と、化学的及び/若しくは毒性的に適合しなければならないことを示す。
【0073】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」とは、活性薬剤の細胞、生物、又は対象への投与を補助する物質を指す。「薬学的に許容される担体」とは、本発明の組成物中に含有させることができ、対象に対して著しい有害毒性効果を引き起こさない担体又は賦形剤を指す。薬学的に許容される担体の非限定な例としては、水、NaCl、生理食塩水、乳酸加リンゲル液、ノーマルスクロース、ノーマルグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、香料及び着色料、リポソーム、分散媒体、マイクロカプセル、カチオン性脂質担体、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。担体はまた、製剤に安定性、無菌性及び等張性を提供するための物質(例えば、抗微生物保存剤、酸化防止剤、キレート剤及び緩衝剤)、微生物の作用を防止するための物質(例えば、抗微生物剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など)、又は製剤に食用の香味等を提供するための物質であってもよい。いくつかの例では、担体は、標的細胞又は組織への低分子薬物又は抗体の送達を容易にする薬剤である。当業者であれば、他の薬学的担体が本発明において有用であることを認識するであろう。
【0074】
本明細書で使用される語句「薬学的に許容される塩」とは、本発明の化合物の薬学的に許容される有機塩又は無機塩を指す。例示的な塩としては、限定するものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、過クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、「メシレート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち、4,4'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸塩)塩、アルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、並びにアンモニウム塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオンなどの別の分子の含有を含み得る。対イオンは、親化合物の電荷を安定化する任意の有機部分又は無機部分であり得る。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造中に2つ以上の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である例は、複数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、1以上の荷電原子及び/又は1以上の対イオンを有し得る。
【0075】
「投与すること」又は「投与」とは、当業者には公知の様々な方法及び送達系のいずれかを使用する、対象への治療剤の物理的導入を指す。例示的な投与経路としては、経口、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄又は他の非経口投与経路、例えば、注射若しくは注入(infusion)(例えば、静脈内注入)が挙げられる。本明細書で使用される語句「非経口投与」は、通常は注射による、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を意味し、限定するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入、並びにin vivoでのエレクトロポレーションが挙げられる。治療剤を、非経口経路により、又は経口的に投与することができる。他の非経口経路としては、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣内、直腸、舌下又は局所が挙げられる。投与を、例えば、1回、複数回、及び/又は1以上の延長期間にわたって実施することもできる。
【0076】
本明細書で互換的に使用される用語「ベースライン」又は「ベースライン値」は、療法の投与前、又は療法の投与の開始時の症状の測定値又は特徴を指し得る。本明細書で想定される疾患(例えば、がん)の症状の低減又は改善を判定するために、ベースライン値を参照値と比較することができる。本明細書で互換的に使用される用語「参照」又は「参照値」は、療法の投与後の症状の測定値又は特徴を指し得る。参照値を、投薬レジメン若しくは処置サイクルの間に1回以上、又は投薬レジメン若しくは処置サイクルの完了時に測定することができる。「参照値」は、絶対値;相対値;上限及び/若しくは下限を有する値;値の範囲;平均値(average);中央値;平均値(算術平均値、mean);又はベースライン値と比較した値であり得る。
【0077】
同様に、「ベースライン値」は、絶対値;相対値;上限及び/若しくは下限を有する値;値の範囲;平均値(average);中央値;平均値(算術平均値、mean);又は参照値と比較した値であり得る。参照値及び/又はベースライン値は、1つの個体から、2つの異なる個体から、又は個体群(例えば、2、3、4、5以上の個体の群)から得ることができる。
【0078】
本明細書で使用される用語「単剤療法」は、ツカチニブ、又はその塩若しくは溶媒和物が、処置サイクルの間に対象に投与される唯一の抗がん剤であることを意味する。しかしながら、他の治療剤を対象に投与してもよい。例えば、炎症、疼痛、体重減少、及び全身倦怠感などの、根底にあるがん自体ではなくがんと関連する症状を処置するために、例えば、がんを有する対象に投与される抗炎症剤又は他の薬剤を、単剤療法の期間中に投与することができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「有害事象」(AE)は、医学的処置の使用と関連する、任意の好ましくない、一般的には意図しない、又は望ましくない兆候(異常な検査所見を含む)、症状、又は疾患である。医学的処置は、1つ以上の関連するAEを有し得、それぞれのAEは同じか又は異なるレベルの重症度を有し得る。「有害事象を変化させる」ことができる方法に対する言及は、異なる処置レジメンの使用と関連する1つ以上のAEの発生率及び/又は重症度を低下させる処置レジメンを意味する。
【0080】
本明細書で使用される場合、「重篤有害事象」又は「SAE」は、以下の基準のうちの1つを満たす有害事象である:
・致死的、又は生命を脅かすものである(重篤有害事象の定義で使用されるように、「生命を脅かす」とは、患者が事象の時点で死亡のリスクがあった事象を指し;仮にその事象がより重篤であったとした場合に死亡を引き起こしたかもしれない事象を指すものではない)。
・永続的又は有意な身体障害/無能力をもたらす。
・先天異常/出生異常である。
・医学的に重大である、すなわち、患者を危険にさらすか、又は上に列挙された転帰の1つを防止するために内科的介入若しくは外科的介入を必要とし得る事象として定義される。医学的及び科学的判断は、AEが「医学的に重大」であるか否かを決定する際に行う必要がある。
・以下:
1)状態の悪化と全く関連しない、基礎疾患の日常的な処置又はモニタリング;2)試験中の症状(indication)とは無関係の、インフォームドコンセントに署名してから悪化していない、既往症の選択的処置又は予め計画された処置;及び 3)患者の全身状態の任意の悪化の不存在下での社会的理由及びレスパイトケア
を除き、院内入院又は現行の入院の延長を必要とする。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「約毎週1回」、「約2週毎に1回」又は任意の他の類似する投薬間隔の用語は、近似数を意味する。「約毎週1回」は、7日±1日毎、すなわち、6日毎~8日毎を含み得る。「約2週毎に1回」は、14日±2日毎、すなわち、12日毎~16日毎を含み得る。「約3週毎に1回」は、21日±3日毎、すなわち、18日毎~24日毎を含み得る。同様の近似は、例えば、約4週毎に1回、約5週毎に1回、約6週毎に1回、及び約12週毎に1回にも適用される。いくつかの実施形態では、約6週毎に1回、又は約12週毎に1回の投薬間隔は、第1の用量を、第1週の任意の日に投与し、その後、次の用量を、それぞれ、第6週又は第12週の任意の日に投与することができることを意味する。他の実施形態では、約6週毎に1回、又は約12週毎に1回の投薬間隔は、第1の用量が第1週の特定の日(例えば、月曜日)に投与され、その後、次の用量が、それぞれ、第6週又は第12週の同じ日(すなわち、月曜日)に投与されることを意味する。
【0082】
本明細書に記載される、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比範囲、又は整数範囲は、記載される範囲内の任意の整数の値を含むことが理解されるべきであり、また適切な場合、別段に示されない限り、その分数(整数の1/10及び1/100など)を含む。
【0083】
本開示の様々な態様は、以下の小節でさらに詳細に説明される。
II. 実施形態の説明
A. ツカチニブ及び少なくとも1つの抗HER2抗体を用いて固形腫瘍を処置するための方法
【0084】
一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有する、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含む、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1ヶ月の無増悪生存期間(PFS)を示す、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1ヶ月の無増悪生存期間(PFS)を示す、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも3ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも4ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも5ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも6ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも7ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも8ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも9ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも10ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも11ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも12ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも15ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも18ヶ月のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2年のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも3年のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも4年のPFSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも5年のPFSを示す。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2ヶ月の全生存(OS)を示す、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、対象が、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2ヶ月の全生存(OS)を示す、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも3ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも4ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも5ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも6ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも7ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも8ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも9ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも10ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも11ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも12ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも15ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも18ヶ月のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2年のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも3年のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも4年のOSを示す。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも5年のOSを示す。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの10%超の低下を示す、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの10%超の低下を示す、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの15%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの20%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの25%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの30%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの35%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの40%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの45%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの55%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの60%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの65%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの70%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの75%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、疾患進行のリスクの80%超の低下を示す。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの10%超の低下を示す、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、対象が、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの10%超の低下を示す、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの15%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの20%超の低下を示す。
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの25%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの30%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの35%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの40%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの45%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの50%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの55%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの60%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの65%超の低下を示す。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗HER2抗体のみを投与された対象と比較して、死亡リスクの70%超の低下を示す。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後9ヶ月、対象が20%超の推定PFS率を有する、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後9ヶ月、対象が20%超の推定PFS率を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、25%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、35%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、40%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、45%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、50%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、55%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、60%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、65%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、70%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、75%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、80%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、85%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、85%超の推定PFS率を有する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後12ヶ月、対象が15%超の推定PFS率を有する、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後12ヶ月、対象が15%超の推定PFS率を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、20%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、25%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、35%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、40%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、45%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、50%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、55%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、60%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、65%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、70%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、75%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、80%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、85%超の推定PFS率を有する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後15ヶ月、対象が15%超の推定PFS率を有する、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後15ヶ月、対象が15%超の推定PFS率を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、20%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、25%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、35%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、40%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、45%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、50%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、55%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、60%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、65%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、70%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、75%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、80%超の推定PFS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、85%超の推定PFS率を有する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後24ヶ月、対象が25%超の推定OS率を有する、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後24ヶ月、対象が25%超の推定OS率を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、35%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、40%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、45%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、50%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、55%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、60%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、65%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、70%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、75%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、80%超の推定OS率を有する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍がHER2変化を含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後30ヶ月、対象が20%超の推定OS率を有する、方法を提供する。一態様では、本発明は、対象における固形腫瘍を処置するための方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体との組み合わせを対象に投与することを含み、固形腫瘍が1つ以上のHER2変化を有し、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後30ヶ月、対象が20%超の推定OS率を有する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、25%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、30%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、35%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、40%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、45%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、50%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、55%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、60%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、65%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、70%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、75%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、対象は、80%超の推定OS率を有する。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる。一態様では、本発明は、固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が固形腫瘍におけるHER2の総量を増加させる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、ウエスタンブロット解析によって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、免疫組織化学によって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、質量分析によって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、ELISAによって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、リアルタイム定量的PCR(qRT-PCR)によって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、マイクロアレイ解析によって決定される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる。一態様では、本発明は、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量を増加させる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量は、定量的蛍光活性化セルソーティング(qFACS)によって決定される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる。一態様では、
本発明は、固形腫瘍の細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、細胞膜結合HER2の内在化を増加させる。一態様では、本発明は、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の内在化を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、細胞膜結合HER2の内在化を増加させる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与は、HER2のリソソーム分解を増加させる。一態様では、本発明は、固形腫瘍におけるHER2のリソソーム分解を増加させる方法であって、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物を対象に投与することを含み、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与が、HER2のリソソーム分解を増加させる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0085】
いくつかの実施形態では、1つ以上のHER2変化は、HER2突然変異である。いくつかでは、ヒト野生型HER2アミノ酸配列と比較して、少なくとも1個のアミノ酸置換、挿入、又は欠失。いくつかの実施形態では、ヒト野生型HER2は、以下のアミノ酸配列を含む:
【0086】
いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、活性化突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、構成的なHER2キナーゼドメイン活性化をもたらす。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、細胞外ドメイン、キナーゼドメイン、又は膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異、又はその任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、細胞外ドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、G309A、G309E、S310F、S310Y、C311R、C311S、及びC334Sからなる群から選択される、細胞外ドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン中の突然変異は、G309Aである。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン中の突然変異は、G309Eである。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン中の突然変異は、S310Fである。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン中の突然変異は、S310Yである。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン中の突然変異は、C311Rである。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン中の突然変異は、C311Sである。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン中の突然変異は、C334Sである。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、キナーゼドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、Y772、G776、G778、及びT798からなる群から選択されるアミノ酸残基における、キナーゼドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、Y772にある。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、G776にある。いくつかの実施形態では、G776における突然変異は、G776 YVMA挿入(G776 ins YVMA)である。HER2のG776 ins YVMA突然変異型は、HER2タンパク質の772位~775位のアミノ酸配列であるYVMA(チロシン、バリン、メチオニン、アラニン)が1回繰り返される突然変異体である(「Y772_A775dup」又は「A775_G776insYVMA」とも呼ばれる)。Nature. 2004 Sep 30;431 (7008): 525-6、及びCancer Res. 2005 Mar 1;65 (5):1642-6。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、G778にある。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、T798にある。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、T733I、L755P、L755S、I767M、L768S、D769N、D769Y、D769H、V777L、V777M、L841V、V842I、N857S、T862A、L869R、H878Y、及びR896Cからなる群から選択される、キナーゼドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、T733Iである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、L755Pである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、L755Sである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、I767Mである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、L768Sである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、D769Nである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、D769Yである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、D769Hである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、V777Lである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、V777Mである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、L841Vである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、V842Iである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、N857Sである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、T862Aである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、L869Rである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、H878Yである。いくつかの実施形態では、キナーゼドメイン中の突然変異は、R896Cである。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、アミノ酸残基V697における、キナーゼドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、S653C、I655V、
V659E、G660D、及びR678Qからなる群から選択される、膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異である。いくつかの実施形態では、膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異は、S653Cである。いくつかの実施形態では、膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異は、I655Vである。いくつかの実施形態では、膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異は、V659Eである。いくつかの実施形態では、膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異は、G660Dである。いくつかの実施形態では、膜貫通/膜近傍ドメイン中の突然変異は、R678Qである。いくつかの実施形態では、がんは、HER2増幅を有さない。いくつかの実施形態では、がんは、HER2増幅を含まないと決定されている。いくつかの実施形態では、HER2増幅は、IHCによって決定される。いくつかの実施形態では、がんは、0のHER2増幅スコアを有し、HER2増幅スコアは、IHCによって決定される。いくつかの実施形態では、がんは、1+のHER2増幅スコアを有し、HER2増幅スコアは、IHCによって決定される。いくつかの実施形態では、がんは、0又は1+のHER2増幅スコアを有し、HER2増幅スコアは、IHCによって決定される。いくつかの実施形態では、HER2は、がんがIHCによって決定された場合に0のスコアを有する場合、増幅されていない。いくつかの実施形態では、HER2は、がんがIHCによって決定された場合に1+のスコアを有する場合、増幅されていない。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、DNA配列決定によって決定される。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、RNA配列決定によって決定される。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、次世代シーケンシング(NGS)を使用することによって決定される。いくつかの実施形態では、HER2突然変異は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって決定される。
【0087】
いくつかの実施形態では、1つ以上のHER2変化は、HER2過剰発現/増幅である。いくつかの実施形態では、がんは、2+のHER2増幅スコアを有し、HER2増幅スコアは、免疫組織化学(IHC)によって決定される。いくつかの実施形態では、がんは、3+のHER2増幅スコアを有し、HER2増幅スコアは、IHCによって決定される。いくつかの実施形態では、HER2は、がんがIHCによって決定された場合に2+のスコアを有する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんがIHCによって決定された場合に3+のスコアを有する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約125%、約150%、約175%、約200%、約250%、約300%、約350%、約400%、約450%、又は、約500%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも50%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも75%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも100%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも150%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも200%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも250%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも300%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも400%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、それが、がんにおいて少なくとも500%過剰発現されている場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの、少なくとも約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、又は、約100倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約1.5倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約2倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約3倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約4倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約5倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約10倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約15倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約20倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約25倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約30倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約40倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、HER2タンパク質レベルの少なくとも約50倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約60倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約70倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約80倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約90倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2は、がんにおけるHER2タンパク質レベルの少なくとも約100倍の増加が存在する場合、増幅されている。いくつかの実施形態では、HER2過剰発現は、免疫組織化学(IHC)によって決定される3+過剰発現である。いくつかの実施形態では、HER2増幅は、in situハイブリダイゼーションアッセイによって決定される。いくつかの実施形態では、in situハイブリダイゼーションアッセイは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイである。いくつかの実施形態では、in situハイブリダイゼーションアッセイは、発色in situハイブリダイゼーションである。いくつかの実施形態では、HER2増幅は、NGSにより組織中で決定される。いくつかの実施形態では、HER2増幅は、血液ベースのNGSアッセイにより循環腫瘍DNA(ctDNA)中で決定される。
【0088】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、HER2+固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、転移性固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、局所進行性である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、切除不能である。いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍のための1つ以上のさらなる治療剤で以前に処置されたことがある。いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍のための1つ以上のさらなる治療剤で以前に処置されたことがあり、その処置に応答しなかった。いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍のための1つ以上のさらなる治療剤で以前に処置されたことがあり、その処置の後に再発した。いくつかの実施形態では、対象は、固形腫瘍のための1つ以上のさらなる治療剤で以前に処置されたことがあり、その処置の間に疾患進行を経験した。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、子宮頸がん、子宮がん、胆嚢がん、胆管細胞がん、尿路上皮がん、肺がん、乳がん、胃食道がん、及び結腸直腸がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は子宮頸がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は子宮がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、胆道がん、例えば、胆嚢がん又は胆管細胞がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胆道がんであり、対象は、胆嚢がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している。いくつかの実施形態では、前治療ラインは、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胆嚢がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胆嚢がんであり、対象は、胆嚢がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している。いくつかの実施形態では、前治療ラインは、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胆管細胞がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胆管細胞がんであり、対象は、胆管細胞がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している。いくつかの実施形態では、前治療ラインは、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は尿路上皮がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は肺がんである。いくつかの実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、NSCLCは、非扁平NSCLCである。いくつかの実施形態では、NSCLCは非扁平NSCLCであり、対象は、標準治療から再発した。いくつかの実施形態では、NSCLCは非扁平NSCLCであり、対象は、標準治療に対して抵抗性である。いくつかの実施形態では、NSCLCは非扁平NSCLCであり、対象に利用可能な標準治療はない。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は乳がんである。いくつかの実施形態では、対象は、乳がんに対する少なくとも1つの前治療ラインを完了している。いくつかの実施形態では、前治療ラインは、化学療法、内分泌療法、及び標的療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、乳がんは、ホルモン受容体陽性(HR+)乳がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胃食道がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は結腸直腸がんである。
【0089】
いくつかの実施形態では、サンプル細胞のHER2状態が決定される。決定は、処置(すなわち、ツカチニブの投与)が始まる前、処置中、又は処置が完了した後に行うことができる。いくつかの例では、HER2状態の決定は、療法を変更する決定(例えば、抗HER2抗体を処置レジメンに加えること、ツカチニブの使用を中止すること、療法を完全に中止すること、又は別の処置方法から本発明の方法に切り替えること)をもたらす。
【0090】
いくつかの実施形態では、サンプル細胞は、がん細胞である。いくつかの例では、サンプル細胞は、がんを有する対象から得られる。サンプル細胞を、生検標本として、外科的切除により、又は微細針吸引(FNA)として取得ことができる。いくつかの実施形態では、サンプル細胞は、循環腫瘍細胞(CTC)である。
【0091】
HER2発現を、参照細胞と比較することができる。いくつかの実施形態では、参照細胞は、サンプル細胞と同じ対象から得られる非がん細胞である。他の実施形態では、参照細胞は、異なる対象又は対象集団から得られる非がん細胞である。いくつかの実施形態では、HER2の発現の測定は、例えば、HER2遺伝子コピー数若しくは増幅の決定、核酸配列決定(例えば、ゲノムDNA若しくはcDNAの配列決定又はRNA配列決定)、mRNA発現の測定、タンパク質存在量の測定、又はその組合せを含む。HER2検査法としては、免疫組織化学(IHC)、in situハイブリダイゼーション、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)、ELISA、並びにRT-PCR及びマイクロアレイ解析などの技術を使用するRNA定量(例えば、HER2発現の)が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態では、HER2突然変異の存在又は非存在は、例えば、がん患者から腫瘍組織を収集すること、及びリアルタイム定量的PCR(qRT-PCR)又はマイクロアレイ解析などの方法を実施することによって確認される。いくつかの実施形態では、腫瘍組織は、ホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE)である。いくつかの実施形態では、HER2突然変異の存在又は非存在は、がん患者から無細胞循環腫瘍DNA(ctDNA)を収集すること、及び次世代シーケンシング(NGS)などの方法を実施することによって確認される(J Clin Oncol 2013; 31: 1997-2003、Clin Cancer Res 2012; 18: 4910-8、J Thorac Oncol 2012; 7: 85-9、Lung Cancer 2011; 74: 139-44、Cancer Res 2005; 65: 1642-6、Cancer Sci 2006; 97: 753-9、及びESMO Open 2017; 2: e000279)。
【0093】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいてHER2突然変異を検出するために使用される核酸としては、ゲノムDNA、ゲノムDNAから転写されるRNA、及びRNAから生成されるcDNAが挙げられる。核酸は、脊椎動物、例えば、哺乳動物に由来し得る。核酸は、それが特定の供給源に見出される核酸のコピーである場合、特定の供給源に直接由来するか、又は特定の供給源「に由来する」と言われる。
【0094】
特定の実施形態では、核酸は、核酸のコピー、例えば、増幅の結果得られるコピーを含む。例えば、突然変異を検出するために所望の量の材料を得るための増幅が、特定の例において望ましい場合がある。次いで、アンプリコンは、突然変異がアンプリコン中に存在するかどうかを決定するために、以下に記載のものなどの、突然変異検出方法を受けてもよい。
【0095】
体細胞突然変異又は変異は、当業者に公知の特定の方法によって検出することができる。このような方法としては、限定するものではないが、DNA配列決定、体細胞突然変異特異的ヌクレオチド組込みアッセイ及び体細胞突然変異特異的プライマー伸長アッセイ(例えば、体細胞突然変異特異的PCR、体細胞突然変異特異的ライゲーション連鎖反応(LCR)、及びギャップLCR伸長アッセイ)を含むプライマー、突然変異特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ)、切断剤からの保護が核酸二重鎖中のフッ素化塩基を検出するために使用される切断保護アッセイ、変異体及び野生型核酸分子の移動度を比較する電気泳動分析、変性勾配ゲル電気泳動(例えば、Myersら(1985) Nature 313: 495に記載されるようなDGGE)、非インチ(uninched)塩基対上でのRNase切断の分析、ヘテロ二重鎖DNAの化学的又は酵素的切断の分析、質量分析(例えば、MALDI-TOF);遺伝子ビット分析(GBA)、5’ヌクレアーゼアッセイ(例えば、TaqManTm)、及び分子経路標識を使用するアッセイなどが挙げられる。
【0096】
標的核酸における変異の検出は、当技術分野で周知の技術を使用する標的核酸の分子クローニング及び配列決定によって達成することができる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅技術を使用して、腫瘍組織に由来するゲノムDNA調製物から直接的に標的核酸配列を増幅することができる。次いで、増幅した配列の核酸配列を決定し、その核酸配列から変異を同定することができる。増幅技術は当技術分野で周知であり、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応は、Saikiら、Science 239: 487, 1988; 米国特許第4,683,203号及び第4,683,195号に記載されている。
【0097】
当技術分野で公知のリガーゼ連鎖反応を使用して、標的核酸配列を増幅することもできる。例えば、Wuら、Genomics 4: 560-569 (1989)を参照されたい。また、対立遺伝子特異的PCRとして公知の技術を使用して、体細胞突然変異(例えば、置換)を検出することもできる。例えば、Ruano及びKidd (1989) Nucleic Acids Research 17: 8392; McClay ら(2002) Analytical Biochem.301: 200-206を参照されたい。この技術の特定の実施形態では、プライマーの3’末端ヌクレオチドは、標的核酸の特定の変異と相補的である(すなわち、それと塩基対を特異的に形成する)。突然変異特異的プライマーが使用される。特異的突然変異が存在しない場合、増幅産物は観察されない。増幅抵抗性突然変異システム(ARMS)を使用して、変異(例えば、置換)を検出することもできる。ARMSは、例えば、欧州特許出願公開第0332435号、及びNewtonら、Nucleic Acids Research, 17: 7, 1989に記載されている。
【0098】
変異(例えば、置換)を検出するために有用な他の方法としては、限定するものではないが、(1) 単一塩基伸長アッセイなどの突然変異特異的ヌクレオチド組込みアッセイ(例えば、Chenら(2000) Genome Res. 10: 549-557を参照されたい);(2) 突然変異特異的プライマー伸長アッセイ(例えば、Yeら(2001) Hum. Mut. 17: 305-316を参照されたい);(3) 5'ヌクレアーゼアッセイ(例えば、De La Vegaら (2002) BioTechniques 32: S48-S54(TaqMan(登録商標)アッセイについて記載している)を参照されたい);(4) 分子経路標識を使用するアッセイ(例えば、Tyagiら(1998) Nature Biotech. 16: 49-53を参照されたい);(5) オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(例えば、Grossmanら(1994) Nuc. Acids Res. 22: 4527-4534を参照されたい)及び(6) 対立遺伝子特異的PCRなどが挙げられる。
【0099】
変異(バリエーション)を、ミスマッチ検出法によって検出することもできる。ミスマッチは、100%相補的ではないハイブリダイズした核酸二重鎖である。完全な相補性の欠如は、欠失、挿入、逆位、又は置換に起因し得る。ミスマッチ検出法の一例は、例えば、Fahamら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 14717-14722 (2005)に記載されているミスマッチ修復検出(MRD)アッセイである。ミスマッチ切断技術の別の例は、Myersら、Science 230: 1242, 1985に詳細に記載されているRNase保護法である。例えば、変異を検出するために使用される方法は、ヒト野生型標的核酸と相補的な標識リボプローブの使用を含み得る。リボプローブと、組織サンプルに由来する標的核酸とを一緒にアニーリング(ハイブリダイズ)させた後、酵素RNase Aで消化し、二重鎖RNA構造中のいくつかのミスマッチを検出することができる。RNase Aによりミスマッチが検出された場合、それはミスマッチ部位で切断される。従って、アニーリングしたRNA調製物を電気泳動ゲルマトリックス上で分離する時、RNase Aによりミスマッチが検出され、切断される場合は、DNA及びリボプローブに対するmRNA又は完全長二重鎖RNAよりも小さなRNA産物が観察される。リボプローブは標的核酸の完全長である必要はないが、それが突然変異を有することが疑われる位置を含む限り、標的核酸の一部であってもよい。
【0100】
同様に、DNAプローブを使用して、例えば、酵素的又は化学的切断を介して、ミスマッチを検出することができる。例えば、Cottonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 4397, 1988。あるいは、ミスマッチ二重鎖のマッチ二重鎖への電気泳動移動度の移行により、相違を検出することができる。例えば、Cariello, Human Genetics, 42: 726, 1988を参照されたい。リボプローブ又はDNAプローブを用いて、突然変異を含むことが疑われる標的核酸を、ハイブリダイゼーションの前に増幅させることができる。特に、変化が欠失及び挿入などの重大な再配列である場合、標的核酸の変化を、サザンハイブリダイゼーションを使用して検出することもできる。
【0101】
標的核酸又は周囲のマーカー遺伝子に対する制限断片長多型(RFLP)プローブを使用して、変異、例えば、挿入又は欠失を検出することができる。挿入及び欠失は、標的核酸のクローニング、配列決定及び増幅によって検出することもできる。一本鎖多型(SSCP)アッセイを使用して、対立遺伝子の変異体を変化させる塩基を検出することもできる。SSCPを、ErbB2体細胞突然変異の検出のために改変することができる。SSCPは、一本鎖PCR産物の電気泳動シフトの変化に起因して塩基の差異を同定する。一本鎖PCR産物は、二本鎖PCR産物を加熱するか、あるいは変性させることによって生成することができる。一本鎖核酸は、塩基配列に部分的に依存する二次構造を形成するか、又はリフォールディングすることができる。一本鎖増幅産物の異なる電気泳動移動度は、SNP位置での塩基配列の差異と関連する。変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)は、多型DNAに固有の異なる配列依存的安定性及び融解特性、並びに変性勾配ゲルにおける電気泳動移動パターンの対応する差異に基づいて、SNP対立遺伝子を識別する。
【0102】
体細胞突然変異又は改変は、マイクロアレイを使用して検出することもできる。マイクロアレイは、典型的には、高ストリンジェンシー条件下で、例えばcDNA又はcRNAサンプルとハイブリダイズするように配置された数千個の核酸プローブを使用する多重技術である。プローブ-標的ハイブリダイゼーションは、典型的には、標的における核酸配列の相対的存在量を決定するためのフルオロフォア、銀、又は化学発光標識された標的の検出により検出及び定量される。典型的なマイクロアレイでは、プローブは、化学的マトリックスへの共有結合によって硬表面に結合される(エポキシ-シラン、アミノ-シラン、リジン、ポリアクリルアミドなどを介して)。硬表面は、例えば、ガラス、シリコンチップ、又は顕微鏡的ビーズである。
【0103】
体細胞突然変異の検出のための別の方法は、質量分析に基づくものである。質量分析は、DNAの4種のヌクレオチドのそれぞれの固有の質量を使用する。潜在的な突然変異を含有するErbB2核酸を、体細胞突然変異を有する核酸の質量の差異を測定することによる質量分析によって明確に分析することができる。MALDI-TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化-タイムアウト)質量分析技術は、体細胞突然変異を含む核酸などの分子量の極めて正確な決定にとって有用である。核酸分析のための多数の手法が、質量分析に基づいて開発されている。例示的な質量分析に基づく方法は、伝統的なゲルに基づく形式及びマイクロアレイなどの他の手法と組み合わせて使用することができるプライマー伸長アッセイも含む。
【0104】
配列特異的リボザイム(米国特許第5,498,531号)を使用して、リボザイム切断部位の発生又は喪失に基づいて体細胞突然変異を検出することもできる。ヌクレアーゼ切断消化アッセイ又は融解温度の差異により、完全にマッチした配列を、ミスマッチした配列から区別することができる。突然変異が制限酵素切断部位に影響を及ぼす場合、その突然変異を、制限酵素消化パターンの変化及びゲル電気泳動によって決定される対応する核酸断片長の変化によって同定することができる。
【0105】
本開示の特定の実施形態では、本明細書に開示される遺伝子変異を有する遺伝子によってコードされる変異体タンパク質を検出するために、タンパク質に基づく検出技術が使用される。変異型のタンパク質の存在の決定は、当技術分野で公知の任意の好適な技術、例えば、電気泳動(例えば、変性又は非修飾ポリアクリルアミドゲル電気泳動、二次元ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動)によって行うことができる。電気泳動、及び等電点電気泳動、クロマトグラフィー(例えば、サイジングクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び陽イオン交換HPLC)、質量分析(例えば、MALDI-TOF質量分析、エレクトロスプレー)、イオン化(ESI)質量分析、及びタンデム質量分析)。例えば、Ahrer及びJungabauer (2006) J. Chromatog. B. Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. 841: 110-122を参照されたい。好適な技術は、検出される変異の性質に部分的に基づいて選択することができる。例えば、置換されたアミノ酸が、元のアミノ酸とは異なる電荷を有するアミノ酸置換をもたらす変異を、等電点電気泳動によって検出することができる。高電圧でのpH勾配を有するゲルを介したポリペプチドの等電点電気泳動は、その等電点(pi)によってタンパク質を分離する。pH勾配ゲルを、野生型タンパク質を含有する同時操作されたゲルと比較することができる。突然変異が、新たなタンパク質切断部位の生成又は既存のタンパク質切断部位の消滅をもたらす例では、タンパク質消化、次いで、適切な電気泳動、クロマトグラフィー、又は質量分析技術を使用して、サンプルをペプチドマッピングすることができる。変異の存在を、エドマン分解などのタンパク質配列決定技術又は特定の形態の質量分析を使用して検出することもできる。
【0106】
これらの技術の組合せを使用する当技術分野で公知の方法を使用することもできる。例えば、HPLC-顕微鏡タンデム質量分析技術では、タンパク質消化を、タンパク質上で実施し、得られたペプチド混合物を、逆相クロマトグラフィー分離によって分離する。次いで、タンデム質量分析を実施し、それから収集されたデータを分析する。別の例では、非修飾ゲル電気泳動を、MALDI質量分析と組み合わせる。
【0107】
特定の実施形態では、あるタンパク質を、そのタンパク質に特異的に結合する抗体又はペプチドなどの試薬を使用してサンプルから単離し、その後、上に開示された技術のいずれかを使用してさらに分析し、遺伝子変異を提示することができる。
【0108】
あるいは、サンプル中の変異体タンパク質の存在を、遺伝子変異を有するタンパク質に特異的な抗体、すなわち、突然変異を有するタンパク質には特異的に結合するが、突然変異を有しないタンパク質には結合しない抗体に指向させることができる。それを、免疫親和性アッセイによって検出することができる。このような抗体は、当技術分野で公知の任意の好適な技術によって生産することができる。抗体を使用して、溶液サンプルから特定のタンパク質を免疫沈降させるか、又は、例えばポリアクリルアミドゲルにより分離されたタンパク質をイムノブロットすることができる。免疫細胞化学的方法を使用して、組織又は細胞中の特異的タンパク質変異体を検出することもできる。例えば、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を使用する、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射定量測定法(IRMA)及びサンドイッチアッセイなどの、免疫酵素アッセイ(IEMA)がある。
【0109】
B. ツカチニブの用量及び投与
いくつかの実施形態では、ツカチニブの用量は、対象の体重1kg当たり約0.1mg~10mg(例えば、対象の体重1kg当たり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10mg)である。他の実施形態では、ツカチニブの用量は、対象の体重1kg当たり約10mg~100mg(例えば、対象の体重1kg当たり約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg)である。いくつかの実施形態では、ツカチニブの用量は、対象の体重1kg当たり少なくとも約100mg~500mg(例えば、対象の体重1kg当たり少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、又は500mg)である。特定の実施形態では、ツカチニブの用量は、対象の体重1kg当たり約1mg~50mg(例えば、対象の体重1kg当たり約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50mg)である。いくつかの例では、ツカチニブの用量は、対象の体重1kg当たり約50mgである。
【0110】
いくつかの実施形態では、ツカチニブの用量は、約1mg~100mg(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg)のツカチニブを含む。他の実施形態では、ツカチニブの用量は、約100mg~1,000mg(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、又は1,000mg)のツカチニブを含む。特定の実施形態では、ツカチニブの用量は、約300mg(例えば、1日2回投与する場合)である。
【0111】
いくつかの実施形態では、ツカチニブの用量は、少なくとも約1,000mg~10,000mg(例えば、少なくとも約1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900、3,000、3,100、3,200、3,300、3,400、3,500、3,600、3,700、3,800、3,900、4,000、4,100、4,200、4,300、4,400、4,500、4,600、4,700、4,800、4,900、5,000、5,100、5,200、5,300、5,400、5,500、5,600、5,700、5,800、5,900、6,000、6,100、6,200、6,300、6,400、6,500、6,600、6,700、6,800、6,900、7,000、7,100、7,200、7,300、7,400、7,500、7,600、7,700、7,800、7,900、8,000、8,100、8,200、8,300、8,400、8,500、8,600、8,700、8,800、8,900、9,000、9,100、9,200、9,300、9,400、9,500、9,600、9,700、9,800、9,900、10,000mg以上)のツカチニブを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、ツカチニブ、又はその塩若しくは溶媒和物の用量は、治療有効量のツカチニブ、又はその塩若しくは溶媒和物を含有する。他の実施形態では、ツカチニブ、又はその塩若しくは溶媒和物の用量は、治療有効量未満のツカチニブ、又はその塩若しくは溶媒和物を含有する( 例えば、所望の臨床又は治療効果を達成するために、複数回用量が投与される場合)。
【0113】
ツカチニブ、又はその塩若しくは溶媒和物は、任意の好適な経路及び様式によって投与することができる。本発明の抗体及び/又は抗体薬物複合体(抗体薬物コンジュゲート)を投与する好適な経路は、当技術分野で周知であり、当業者により選択され得る。一実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、非経口的に投与される。非経口投与とは、通常は注射による、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を指し、例えば、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入が挙げられる。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与経路は、静脈内注射又は注入である。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与経路は、静脈内注入である。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与経路は、静脈内注射又は注入である。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、静脈内注入である。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物の投与経路は、経口である。
【0114】
本明細書で提供される方法又は使用又は使用のための生成物の一実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、毎日、1日2回、1日3回又は1日4回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、2日に1回、約毎週1回、又は約3週毎に1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日2回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日2回、約300mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日2回、300mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日1回、約600mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日1回、600mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、21日の処置サイクルのそれぞれの日に、1日2回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、対象に経口投与される。
【0115】
C. 抗HER2抗体の用量及び投与
いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約0.1mg~10mg(例えば、対象の体重1kg当たり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10mg)である。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約4mg~10mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり4mg~10mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約6mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約8mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象に投与される抗HER2抗体の第1の用量については、対象の体重1kg当たり約8mgであり、その後の用量については、対象の体重1kg当たり約6mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり6mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり8mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象に投与される抗HER2抗体の第1の用量については、対象の体重1kg当たり8mgであり、その後の用量については、対象の体重1kg当たり6mgである。他の実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約10mg~100mg(例えば、対象の体重1kg当たり約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg)である。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり少なくとも約100mg~500mg(例えば、対象の体重1kg当たり少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500mg以上)である。いくつかの例では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約6mgである。他の例では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約8mgである。いくつかの他の例では、抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約20mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、約1mg~100mg(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg)の抗HER2抗体を含む。他の実施形態では、抗HER2抗体の用量は、約100mg~1,000mg(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、又は1,000mg)の抗HER2抗体を含む。特定の実施形態では、抗HER2抗体の用量は、約100mg~400mg(例えば、約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、又は400mg)の抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、約400mg~800mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、400mg~800mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、約600mgである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、600mgである。非限定的な例として、6mg/kgの用量を使用する場合、50kgの対象のための用量は、約300mgとなるであろう。別の非限定的な例として、8mg/kgの用量を使用する場合、50kgの対象のための用量は、約400mgとなるであろう。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、少なくとも約1,000mg~10,000mg(例えば、少なくとも約1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900、3,000、3,100、3,200、3,300、3,400、3,500、3,600、3,700、3,800、3,900、4,000、4,100、4,200、4,300、4,400、4,500、4,600、4,700、4,800、4,900、5,000、5,100、5,200、5,300、5,400、5,500、5,600、5,700、5,800、5,900、6,000、6,100、6,200、6,300、6,400、6,500、6,600、6,700、6,800、6,900、7,000、7,100、7,200、7,300、7,400、7,500、7,600、7,700、7,800、7,900、8,000、8,100、8,200、8,300、8,400、8,500、8,600、8,700、8,800、8,900、9,000、9,100、9,200、9,300、9,400、9,500、9,600、9,700、9,800、9,900、10,000mg以上)の抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体の用量は、治療有効量の抗HER2抗体を含有する。他の実施形態では、抗HER2抗体の用量は、治療有効量未満の抗HER2抗体を含有する(例えば、所望の臨床効果又は治療効果を達成するために複数回用量が与えられる場合)。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、約1~4週毎に1回、対象に投与される。特定の実施形態では、抗HER2抗体は、約1週毎に1回、約2週毎に1回、約3週毎に1回、又は約4週毎に1回投与される。一実施形態では、抗HER2抗体は、約3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、1~4週毎に1回、対象に投与される。特定の実施形態では、抗HER2抗体は、1週毎に1回、約2週毎に1回、約3週毎に1回、
又は約4週毎に1回投与される。一実施形態では、抗HER2抗体は、3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、対象に皮下投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は対象に腹腔内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、対象に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、1つの抗HER2抗体である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、2つの抗HER2抗体の組み合わせである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、3つの抗HER2抗体の組み合わせである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、4つの抗HER2抗体の組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、マルゲツキシマブ、及びその組合せからなる群から選択される。いくつかの例では、抗HER2抗体は、トラスツズマブとペルツズマブとの組合せである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はペルツズマブである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約600mgの用量で投与され、抗HER2抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、3週毎に1回、600mgの用量で投与され、抗HER2抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、約600mgの用量で投与され、トラスツズマブは皮下投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、600mgの用量で投与され、トラスツズマブは皮下投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約8mg/kgの用量で投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、約3週毎に1回、対象に投与される抗HER2抗体の第1の用量については約8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、3週毎に1回、6mg/kgの用量で投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、3週毎に1回、8mg/kgの用量で投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、3週毎に1回、対象に投与される抗HER2抗体の第1の用量については8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については6mg/kgで投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、約8mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、対象に投与されるトラスツズマブの第1の用量については約8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで投与され、トラスツズマブは、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、6mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、8mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、対象に投与されるトラスツズマブの第1の用量については8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については6mg/kgで投与され、トラスツズマブは、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、21日の処置サイクルで対象に投与され、処置サイクルあたり1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、21日の処置サイクルの1日目に対象に投与され、処置サイクル当たり1回、対象に投与される。
【0116】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、第1の抗HER2抗体及び第2の抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約0.1mg~10mg(例えば、対象の体重1kg当たり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10mg)である。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約4mg~10mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり4mg~10mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約6mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約8mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象に投与される第1の抗HER2抗体の第1の用量については、対象の体重1kg当たり約8mgであり、その後の用量については、対象の体重1kg当たり約6mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり6mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり8mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象に投与される第1の抗HER2抗体の第1の用量については、対象の体重1kg当たり8mgであり、その後の用量については、対象の体重1kg当たり6mgである。他の実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約10mg~100mg(例えば、対象の体重1kg当たり約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg)である。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり少なくとも約100mg~500mg(例えば、対象の体重1kg当たり少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、又は500mg以上)である。いくつかの例では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約6mgである。他の例では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約8mgである。いくつかの他の例では、第1の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約20mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、約1mg~100mg(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg)の第1の抗HER2抗体を含む。他の実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、約100mg~1,000mg(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、又は1,000mg)の第1の抗HER2抗体を含む。特定の実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、約100mg~400mg(例えば、約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、又は400mg)の第1の抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、約400mg~800mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、400mg~800mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、約600mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、600mgである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、少なくとも約1,000mg~10,000mg(例えば、少なくとも約1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900、3,000、3,100、3,200、3,300、3,400、3,500、3,600、3,700、3,800、3,900、4,000、4,100、4,200、4,300、4,400、4,500、4,600、4,700、4,800、4,900、5,000、5,100、5,200、5,300、5,400、5,500、5,600、5,700、5,800、5,900、6,000、6,100、6,200、6,300、6,400、6,500、6,600、6,700、6,800、6,900、7,000、7,100、7,200、7,300、7,400、7,500、7,600、7,700、7,800、7,900、8,000、8,100、8,200、8,300、8,400、8,500、8,600、8,700、8,800、8,900、9,000、9,100、9,200、9,300、9,400、9,500、9,600、9,700、9,800、9,900、10,000mg以上)の第1の抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、治療有効量の第1の抗HER2抗体を含有する。他の実施形態では、第1の抗HER2抗体の用量は、治療有効量未満の第1の抗HER2抗体(例えば、所望の臨床効果又は治療効果を達成するために複数回用量が与えられる場合)を含有する。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約1~4週毎に1回、対象に投与される。特定の実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約1週毎に1回、約2週毎に1回、約3週毎に1回、又は約4週毎に1回投与される。一実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、1~4週毎に1回、対象に投与される。特定の実施形態では、第1の抗HER2抗体は、1週毎に1回、約2週毎に1回、約3週毎に1回、又は約4週毎に1回投与される。一実施形態では、第1の抗HER2抗体は、3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、対象に皮下投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、対象に腹腔内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、対象に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、及びマルゲツキシマブからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブである。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約600mgの用量で投与され、第1の抗HER2抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、3週毎に1回、600mgの用量で投与され、第1の抗HER2抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、約600mgの用量で投与され、トラスツズマブは皮下投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、600mgの用量で投与され、トラスツズマブは皮下投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、第1の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約8mg/kgの用量で投与され、第1の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、対象に投与される第1の抗HER2抗体の第1の用量については約8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで投与され、第1の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、3週毎に1回、6mg/kgの用量で投与され、第1の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、3週毎に1回、8mg/kgの用量で投与され、第1の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、3週毎に1回、対象に投与される第1の抗HER2抗体の第1の用量については8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については6mg/kgで投与され、第1の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では
、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、約8mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、対象に投与されるトラスツズマブの第1の用量については約8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、6mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、8mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、対象に投与されるトラスツズマブの第1の用量については8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については6mg/kgで投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、21日の処置サイクルで対象に投与され、処置サイクル当たり1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、21日の処置サイクルの1日目に対象に投与され、処置サイクル当たり1回、対象に投与される。
【0117】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、第1の抗HER2抗体及び第2の抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約0.1mg~10mg(例えば、対象の体重1kg当たり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10mg)である。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約4mg~10mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり4mg~10mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約6mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約8mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象に投与される第2の抗HER2抗体の第1の用量については対象の体重1kg当たり約8mgであり、その後の用量については、対象の体重1kg当たり約6mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり6mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり8mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象に投与される第2の抗HER2抗体の第1の用量については対象の体重1kg当たり8mgであり、その後の用量については、対象の体重1kg当たり6mgである。他の実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約10mg~100mg(例えば、対象の体重1kg当たり約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg)である。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり少なくとも約100mg~500mg(例えば、対象の体重1kg当たり少なくとも約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、又は500mg以上)である。いくつかの例では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約6mgである。他の例では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約8mgである。いくつかの他の例では、第2の抗HER2抗体の用量は、対象の体重1kg当たり約20mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、約1mg~100mg(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100mg)の第2の抗HER2抗体を含む。他の実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、約100mg~1,000mg(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、又は1,000mg)の第2の抗HER2抗体を含む。特定の実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、約100mg~400mg(例えば、約100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、又は400mg)の第2の抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、約400mg~800mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、400mg~800mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、約600mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、600mgである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、少なくとも約1,000mg~10,000mg(例えば、少なくとも約1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900、3,000、3,100、3,200、3,300、3,400、3,500、3,600、3,700、3,800、3,900、4,000、4,100、4,200、4,300、4,400、4,500、4,600、4,700、4,800、4,900、5,000、5,100、5,200、5,300、5,400、5,500、5,600、5,700、5,800、5,900、6,000、6,100、6,200、6,300、6,400、6,500、6,600、6,700、6,800、6,900、7,000、7,100、7,200、7,300、7,400、7,500、7,600、7,700、7,800、7,900、8,000、8,100、8,200、8,300、8,400、8,500、8,600、8,700、8,800、8,900、9,000、9,100、9,200、9,300、9,400、9,500、9,600、9,700、9,800、9,900、10,000mg以上)の第2の抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、治療有効量の第2の抗HER2抗体を含有する。他の実施形態では、第2の抗HER2抗体の用量は、治療有効量未満の第2の抗HER2抗体を含有する(例えば、所望の臨床効果又は治療効果を達成するために複数回用量が与えられる場合)。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約1~4週毎に1回、対象に投与される。特定の実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約1週毎に1回、約2週毎に1回、約3週毎に1回、又は約4週毎に1回投与される。一実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、1~4週毎に1回、対象に投与される。特定の実施形態では、第2の抗HER2抗体は、1週毎に1回、約2週毎に1回、約3週毎に1回、又は約4週毎に1回投与される。一実施形態では、第2の抗HER2抗体は、3週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、対象に皮下投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、対象に腹腔内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、対象に静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、及びマルゲツキシマブからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブである。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約600mgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、3週毎に1回、600mgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、約3週毎に1回、約600mgの用量で投与され、ペルツズマブは皮下投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、3週毎に1回、600mgの用量で投与され、ペルツズマブは皮下投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約8mg/kgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、対象に投与される第2の抗HER2抗体の第1の用量については約8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで投与され、第2の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、3週毎に1回、6mg/kgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、3週毎に1回、8mg/kgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、3週毎に1回、対象に投与される第2の抗HER2抗体の第1の用量については8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については6mg/kgで投与され、第2の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HE
R2抗体はペルツズマブであり、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、ペルツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、約3週毎に1回、約8mg/kgの用量で投与され、ペルツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、約3週毎に1回、対象に投与されるペルツズマブの第1の用量については約8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで投与され、ペルツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、3週毎に1回、6mg/kgの用量で投与され、ペルツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、3週毎に1回、8mg/kgの用量で投与され、ペルツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、3週毎に1回、対象に投与されるペルツズマブの第1の用量については8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については6mg/kgで投与され、ペルツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、21日の処置サイクルで対象に投与され、処置サイクル当たり1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体はペルツズマブであり、21日の処置サイクルの1日目に対象に投与され、処置サイクル当たり1回、対象に投与される。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、対象に、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と、トラスツズマブとを投与することを含む。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と、トラスツズマブとは、21日の処置サイクルで対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日2回、約300mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日2回、300mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日1回、約600mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日1回、600mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、21日の処置サイクルのそれぞれの日に、1日2回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、対象に経口投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約8mg/kgの用量で投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、約3週毎に1回、対象に投与される抗HER2抗体の第1の用量については約8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、3週毎に1回、6mg/kgの用量で投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、3週毎に1回、8mg/kgの用量で投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体は、3週毎に1回、対象に投与される抗HER2抗体の第1の用量については8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については6mg/kgで投与され、抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、約8mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、約3週毎に1回、対象に投与されるトラスツズマブの第1の用量については約8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については約6mg/kgで投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、6mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、8mg/kgの用量で投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、3週毎に1回、対象に投与されるトラスツズマブの第1の用量については8mg/kgの用量で、次いで、その後の用量については6mg/kgで投与され、トラスツズマブは静脈内投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、21日の処置サイクルで対象に投与され、処置サイクル当たり1回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体はトラスツズマブであり、21日の処置サイクルの1日目に対象に投与され、処置サイクル当たり1回、対象に投与される。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、対象に、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体とを投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、対象に、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物と少なくとも1つの抗HER2抗体とを投与することを含み、少なくとも1つの抗HER2抗体は、第1の抗HER2抗体及び第2の抗HER2抗体を含み、第1の抗HER2抗体はトラスツズマブであり、第2の抗HER2抗体はペルツズマブである。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物、トラスツズマブ、及びペルツズマブは、21日の処置サイクルで対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日2回、約300mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日2回、300mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日1回、約600mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、1日1回、600mgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、21日の処置サイクルのそれぞれの日に、1日2回、対象に投与される。いくつかの実施形態では、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物は、対象に経口投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で投与され、第1の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約600mgの用量で投与され、第1の抗HER2抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約420mgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、第2の抗HER2抗体は、約3週毎に1回、約600mgの用量で投与され、第2の抗HER2抗体は皮下投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体及び第2の抗HER2抗体は、医薬組成物として一緒に投与される。いくつかの実施形態では、第1の抗HER2抗体及び第2の抗HER2抗体は、約600mgの第1の抗HER2抗体と約600mgの第2の抗HER2抗体とを含む医薬組成物として一緒に投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ヒアルロニダーゼをさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約20,000単位のヒアルロニダーゼを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は皮下投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約3週毎に1回皮下投与される。
【0120】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、トラスツズマブを、約3週毎に1回、約6mg/kgの用量で静脈内投与し、ペルツズマブを、約3週毎に1回、約420mgの用量で静脈内投与することを含む。
【0121】
例示的実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、トラスツズマブを、約3週毎に1回、約600mgの用量で皮下投与し、ペルツズマブを、約3週毎に1回、約420mgの用量で静脈内投与することを含む。
【0122】
例示的実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、約3週毎に1回、医薬組成物を皮下投与することを含み、医薬組成物は、約600mgのトラスツズマブと約600mgのペルツズマブとを含む。
【0123】
例示的実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、約3週毎に1回、医薬組成物を皮下投与することを含み、医薬組成物は、約600mgのトラスツズマブ、約600mgのペルツズマブ、及び約20,000単位のヒアルロニダーゼを含む。
【0124】
D. フルベストラントの用量及び投与
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の処置方法は、対象における乳がんを処置する方法である。いくつかの実施形態では、乳がんは、ホルモン受容体(HR)陽性(HR+)乳がんである。いくつかの実施形態では、HR+乳がんは、HER2突然変異型乳がんである。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載されるツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物及び本明細書に記載される少なくとも1つの抗HER2抗体と組み合わせて、フルベストラントを投与される。フルベストラント(Faslodex(登録商標))は、抗エストロゲン療法後の疾患進行を伴う閉経後の女性におけるホルモン受容体(HR)陽性(HR+)転移性乳がん(mBC)の処置における使用について承認された、エストロゲン受容体(ER)アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、対象は、ツカチニブ又はその塩若しくは溶媒和物及びトラスツズマブと組み合わせて、フルベストラントを投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、約100mg~1,000mg(例えば、約100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、又は1,000mg)のフルベストラントの用量で投与される。一実施形態では、フルベストラントは、約500mgの用量で投与される。一実施形態では、フルベストラントは、500mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、約4週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、4週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、最初の21日の処置サイクルの1日目に開始して、4週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、最初の21日の処置サイクルの1日目は、トラスツズマブの初回投与日である。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、最初の21日の処置サイクルの1日目、並びに最初の21日の処置サイクルの15日目に開始して、4週毎に1回投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、最初の21日の処置サイクルの1日目、並びに最初の21日の処置サイクルの15日目に開始して、4週毎に1回、500mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは筋肉内に投与される。いくつかの実施形態では、フルベストラントは、最初の21日の処置サイクルの1日目、並びに最初の21日の処置サイクルの15日目に開始して、4週毎に1回、500mgの用量で筋肉内に投与される。
【0125】
E. 処置の転帰
いくつかの実施形態では、対象の処置は、がん細胞成長の阻害、がん細胞増殖の阻害、がん細胞移動の阻害、がん細胞侵入の阻害、がんの1つ以上の兆候若しくは症状の減少若しくは除去、がん腫瘍のサイズ(例えば、容積)の低減、がん腫瘍数の低減、がん細胞数の低減、がん細胞の壊死、ピロトーシス、オンコーシス、アポトーシス、オートファジー、若しくは他の細胞死の誘導、対象の生存時間の増大、又は別の薬物若しくは療法の治療効果の増強を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される対象の処置は、約10%~70%(例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、又は70%)である腫瘍増殖阻害(TGI)指数をもたらす。好ましくは、対象の処置は、少なくとも約70%(例えば、約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)であるTGI指数をもたらす。より好ましくは、対象の処置は、少なくとも約85%(例えば、約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)であるTGI指数をもたらす。さらにより好ましくは、対象の処置は、少なくとも約95%(例えば、約95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)であるTGI指数をもたらす。最も好ましくは、対象の処置は、約100%以上(例えば、約100%、101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、111%、112%、113%、114%、115%、116%、117%、118%、119%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%以上)であるTGI指数をもたらす。
【0127】
特定の実施形態では、ツカチニブ及びトラスツズマブを用いた対象の処置は、ツカチニブ又はトラスツズマブを単独で使用する場合に観察されるTGI指数よりも大きいTGI指数をもたらす。いくつかの例では、対象の処置は、ツカチニブを単独で使用する場合に観察されるTGI指数よりも大きいTGI指数をもたらす。他の例では、対象の処置は、トラスツズマブを単独で使用する場合に観察されるTGI指数よりも大きいTGI指数をもたらす。いくつかの実施形態では、対象の処置は、ツカチニブ又はトラスツズマブを単独で使用する場合に観察されるTGI指数よりも少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%大きいTGI指数をもたらす。
【0128】
いくつかの実施形態では、ツカチニブとトラスツズマブとの組合せは、相乗的(synergistic)である。特定の実施形態では、相乗的組合せに関して、対象の処置は、ツカチニブとトラスツズマブとの組合せが相加効果をもたらした場合に予想されるTGI指数よりも大きいTGI指数をもたらす。いくつかの例では、ツカチニブとトラスツズマブとの組合せが投与される場合に観察されるTGI指数は、ツカチニブとトラスツズマブとの組合せが相加効果(additive effect)をもたらした場合に予想されるTGI指数よりも少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%大きい。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される対象の処置は、固形腫瘍におけるHER2の総量の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、ウエスタンブロット解析によって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、免疫組織化学によって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、質量分析によって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、ELISAによって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、リアルタイム定量的PCR(qRT-PCR)によって決定される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍におけるHER2の量は、マイクロアレイ解析によって決定される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される対象の処置は、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、固形腫瘍における細胞膜結合HER2の量は、定量的蛍光活性化セルソーティング(qFACS)によって決定される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される対象の処置は、細胞表面におけるHER2の滞留時間の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される対象の処置は、細胞膜結合HER2の内在化の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される対象の処置は、HER2のリソソーム分解の増加をもたらす。
【0130】
一態様では、本明細書に記載されるツカチニブと本明細書に記載される少なくとも1つの抗HER2抗体とを用いてがんを処置する方法は、ベースラインと比較して、本明細書に記載されるツカチニブと本明細書に記載される少なくとも1つの抗HER2抗体との投与後の対象において1つ以上の治療効果の改善をもたらす。いくつかの実施形態では、1つ以上の治療効果は、固形腫瘍に由来する腫瘍のサイズ、客観的奏効率、奏効期間、奏効までの時間、無増悪生存期間、全生存、又はその任意の組合せである。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、固形腫瘍に由来する腫瘍のサイズである。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、腫瘍サイズの減少である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、安定疾患である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、部分奏効である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、完全奏効である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、客観的奏効率である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、奏効期間である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、奏効までの時間である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、無増悪生存期間である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、全生存である。一実施形態では、1つ以上の治療効果は、がん退縮である。
【0131】
本明細書で提供される方法又は使用又は使用のための生成物の一実施形態では、本明細書に記載されるツカチニブと本明細書に記載される少なくとも1つの抗HER2抗体とを用いた処置に対する奏効は、以下の基準(RECIST基準1.1)を含み得る。
【0132】
【表1】
【0133】
本明細書で提供される方法又は使用又は使用のための生成物の一実施形態では、本明細書に記載のツカチニブと本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体とを用いた処置の有効性は、客観的奏効率を測定することによって評価される。いくつかの実施形態では、客観的奏効率は、所定量の、かつ最小の期間にわたる腫瘍サイズ低減を有する患者の割合である。いくつかの実施形態では、客観的奏効率は、RECIST v1.1に基づく。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約20%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約30%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約40%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約50%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約60%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約70%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約85%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約90%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約95%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約98%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも約99%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも20%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも30%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも40%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも50%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも60%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも70%~80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも80%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも85%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも90%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも95%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも98%である。一実施形態では、客観的奏効率は、少なくとも99%である。一実施形態では、客観的奏効率は、100%である。
【0134】
本明細書で提供される方法又は使用又は使用のための生成物の一実施形態では、本明細書に記載のツカチニブと本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体とを用いた処置に対する奏効は、本明細書に記載のがん(例えば、固形腫瘍)に由来する腫瘍のサイズを測定することによって評価される。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与前のがんに由来する腫瘍のサイズと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約10%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約20%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約30%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約40%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約50%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約60%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約70%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約85%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約90%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約95%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約98%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも約99%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与前のがんに由来する腫瘍のサイズと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも約45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも10%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも20%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも30%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも40%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも50%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも60%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも70%~80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも80%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも85%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも90%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも95%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも98%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、少なくとも99%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、100%減少する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、磁気共鳴画像法(MRI)によって測定される。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、コンピュータ断層撮影法(CT)によって測定される。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、陽電子放出断層撮影法(PET)によって測定される。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、マンモグラフィーによって測定される。一実施形態では、がんに由来する腫瘍のサイズは、超音波検査(ソノグラフィー)によって測定される。Gruberら、2013, BMC Cancer. 13:328を参照されたい。
【0135】
本明細書で提供される方法又は使用又は使用のための生成物の一実施形態では、本明細書に記載のツカチニブと本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体とを用いた処置に対する奏効は、本明細書に記載のがん(例えば、固形腫瘍)に由来する腫瘍の退縮を促進する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の抗HER2抗体の投与前のがんに由来する腫瘍のサイズと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約10%~約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約20%~約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約30%~約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約40%~約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約50%~約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約60%~約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約70%~約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約85%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約90%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約95%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約98%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも約99%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与前のがんに由来する腫瘍のサイズと比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも10%~80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも20%~80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも30%~80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも40%~80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも50%~80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも60%~80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも70%~80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも80%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも85%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも90%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも95%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも98%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、少なくとも99%退縮する。一実施形態では、がんに由来する腫瘍は、100%退縮する。一実施形態では、腫瘍の退縮は、磁気共鳴画像法(MRI)によって測定される。一実施形態では、腫瘍の退縮は、コンピュータ断層撮影法(CT)によって測定される。一実施形態では、腫瘍の退縮は、陽電子放出断層撮影法(PET)によって測定される。一実施形態では、腫瘍の退縮は、マンモグラフィーによって測定される。一実施形態では、腫瘍の退縮は、超音波検査(ソノグラフィー)によって測定される。Gruberら、2013, BMC Cancer. 13:328を参照されたい。
【0136】
本明細書に記載の方法又は使用又は使用のための生成物の一実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体を用いた処置に対する応答は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後の無増悪生存期間の時間を測定することによって評価される。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約6ヶ月の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約1年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約2年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約3年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約4年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約5年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、又は少なくとも5年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも6ヶ月の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも3年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも4年の無増悪生存期間を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも5年の無増悪生存期間を示す。
【0137】
本明細書に記載の方法又は使用又は使用のための生成物の一実施形態では、本明細書に記載のツカチニブと本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体とを用いた処置に対する応答は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後の全生存の時間を測定することによって評価される。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約6ヶ月の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約1年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約2年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約3年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約4年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約5年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、又は少なくとも5年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも6ヶ月の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも3年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも4年の全生存を示す。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも5年の全生存を示す。
【0138】
本明細書に記載の方法又は使用又は使用のための生成物の一実施形態では、本明細書に記載のツカチニブと本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体とを用いた処置に対する応答は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の抗HER2抗体の投与後の、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間を測定することによって評価される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約7ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約9ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約11ヶ月、少なくとも約12ヶ月、少なくとも約18ヶ月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、又は少なくとも約5年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約6ヶ月である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約1年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約2年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約3年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約4年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも約5年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、又は少なくとも5年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも6ヶ月である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも1年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも2年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも3年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも4年である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブ及び本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体に対する奏効期間は、本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の投与後、少なくとも5年である。
【0139】
F. 組成物
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のツカチニブと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。別の態様では、本発明は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。別の態様では、本発明は、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、マルゲツキシマブ、及びその組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。いくつかの例では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブとペルツズマブとの組合せである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブである。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のツカチニブは、約0.1nM~10nM(例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5 0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10nM)の濃度で存在する。他の実施形態では、本明細書に記載のツカチニブは、約10nM~100nM(例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100nM)の濃度で存在する。いくつかの他の実施形態では、本明細書に記載のツカチニブは、約100nM~1,000nM(例えば、約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1,000nM)の濃度で存在する。さらに他の実施形態では、本明細書に記載のツカチニブは、少なくとも約1,000nM~10,000nM(例えば、少なくとも約1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900、3,000、3,100、3,200、3,300、3,400、3,500、3,600、3,700、3,800、3,900、4,000、4,100、4,200、4,300、4,400、4,500、4,600、4,700、4,800、4,900、5,000、5,100、5,200、5,300、5,400、5,500、5,600、5,700、5,800、5,900、6,000、6,100、6,200、6,300、6,400、6,500、6,600、6,700、6,800、6,900、7,000、7,100、7,200、7,300、7,400、7,500、7,600、7,700、7,800、7,900、8,000、8,100、8,200、8,300、8,400、8,500、8,600、8,700、8,800、8,900、9,000、9,100、9,200、9,300、9,400、9,500、9,600、9,700、9,800、9,900、10,000nM以上)の濃度で存在する。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体は、約0.1nM~10nM(例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5 0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10nM)の濃度で存在する。他の実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体は、約10nM~100nM(例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100nM)の濃度で存在する。いくつかの他の実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、約100nM~1,000nM(例えば、約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1,000nM)の濃度で存在する。さらに他の実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、少なくとも約1,000nM~10,000nM(例えば、少なくとも約1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900、3,000、3,100、3,200、3,300、3,400、3,500、3,600、3,700、3,800、3,900、4,000、4,100、4,200、4,300、4,400、4,500、4,600、4,700、4,800、4,900、5,000、5,100、5,200、5,300、5,400、5,500、5,600、5,700、5,800、5,900、6,000、6,100、6,200、6,300、6,400、6,500、6,600、6,700、6,800、6,900、7,000、7,100、7,200、7,300、7,400、7,500、7,600、7,700、7,800、7,900、8,000、8,100、8,200、8,300、8,400、8,500、8,600、8,700、8,800、8,900、9,000、9,100、9,200、9,300、9,400、9,500、9,600、9,700、9,800、9,900、10,000nM以上)の濃度で存在する。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体を含む医薬組成物が存在し、少なくとも1つの抗HER2抗体は、第1の抗HER2抗体と第2の抗HER2抗体とを含み、第1の抗HER2抗体と第2の抗HER2抗体のそれぞれは、約0.1nM~10nM(例えば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5 0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10nM)の濃度で存在する。他の実施形態では、本明細書に記載の第1の抗HER2抗体と第2の抗HER2抗体のそれぞれは、約10nM~100nM(例えば、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100nM)の濃度で存在する。いくつかの他の実施形態では、第1の抗HER2抗体と第2の抗HER2抗体のそれぞれは、約100nM~1,000nM(例えば、約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1,000nM)の濃度で存在する。さらに他の実施形態では、第1の抗HER2抗体と第2の抗HER2抗体のそれぞれは、少なくとも約1,000nM~10,000nM(例えば、少なくとも約1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,100、2,200、2,300、2,400、2,500、2,600、2,700、2,800、2,900、3,000、3,100、3,200、3,300、3,400、3,500、3,600、3,700、3,800、3,900、4,000、4,100、4,200、4,300、4,400、4,500、4,600、4,700、4,800、4,900、5,000、5,100、5,200、5,300、5,400、5,500、5,600、5,700、5,800、5,900、6,000、6,100、6,200、6,300、6,400、6,500、6,600、6,700、6,800、6,900、7,000、7,100、7,200、7,300、7,400、7,500、7,600、7,700、7,800、7,900、8,000、8,100、8,200、8,300、8,400、8,500、8,600、8,700、8,800、8,900、9,000、9,100、9,200、9,300、9,400、9,500、9,600、9,700、9,800、9,900、10,000nM以上)の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は皮下投与用である。いくつかの実施形態では、医薬組成物はヒアルロニダーゼを含む。
【0143】
本発明の医薬組成物は、製薬業界で周知の任意の方法によって調製することができる。本発明と共に使用するのに好適な薬学的に許容される担体としては、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、及びエマルジョン(例えば、油/水又は水/油エマルジョン)、並びに様々なタイプの湿潤剤又はアジュバントなどの標準的な薬学的担体、緩衝剤及び賦形剤のいずれかが挙げられる。好適な薬学的担体及びその製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co., Easton, 19th ed. 1995)に記載されている。好ましい薬学的担体は、活性薬剤の意図される投与様式に依存する。
【0144】
本発明の医薬組成物は、活性成分としての、薬物の組合せ(例えば、本明細書に記載のツカチニブと本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体)、又はその任意の薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体又は賦形剤又は希釈剤とを含み得る。医薬組成物は、場合により、他の治療成分を含有してもよい。
【0145】
組成物(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組み合わせを含む)を、従来の医薬品調合技術に従って、緊密な混合物中の活性成分として、好適な薬学的担体又は賦形剤と組み合わせることができる。投与に望ましい調製物の形態に好適な任意の担体又は賦形剤が、本明細書に開示される化合物と共に使用するために想定される。
【0146】
医薬組成物としては、経口、局所、非経口、経肺、経鼻、又は直腸投与に好適な医薬組成物が挙げられる。任意の所与の例における最も好適な投与経路は、部分的には、がんの状態の性質及び重症度により、また場合によりがんのHER2状態又はステージによっても決まる。
【0147】
他の医薬組成物としては、全身(例えば、腸又は非経口)投与に好適な医薬組成物が挙げられる。全身投与としては、経口、直腸、舌下、又は唇下投与が挙げられる。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、及び頭蓋内が挙げられる。他の送達様式としては、限定するものではないが、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチ等が挙げられる。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を、腫瘍内投与することができる。
【0148】
経肺投与用の組成物としては、限定するものではないが、本明細書に記載の化合物(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組み合わせ)、又はその塩の粉末と、好適な担体又は滑沢剤の粉末とからなる乾燥粉末組成物が挙げられる。経肺投与用の組成物は、当業者に公知の任意の好適な乾燥粉末吸入デバイスから吸入することができる。
【0149】
全身投与用の組成物としては、限定するものではないが、本明細書に記載の組成物(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組み合わせ)と、好適な担体又は賦形剤の粉末とからなる乾燥粉末組成物が挙げられる。全身投与用の組成物は、限定するものではないが、錠剤、カプセル剤、丸剤、シロップ剤、溶液剤及び懸濁液剤によって代表され得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、組成物(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組み合わせ)は、薬学的界面活性剤をさらに含む。他の実施形態では、組成物は、凍結保護剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、凍結保護剤は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、グルタミン酸ナトリウム、PVP、HPβCD、CD、グリセロール、マルトース、マンニトール、及びサッカロースからなる群から選択される。
【0151】
本発明における使用のための医薬組成物又は薬剤を、1つ以上の生理学的に許容される担体又は賦形剤を使用する標準的な技術によって製剤化することができる。好適な薬学的担体は、本明細書及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., University of the Sciences in Philadelphia, Lippencott Williams & Wilkins (2005)に記載されている。
【0152】
組成物(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組み合わせ)の制御放出非経口製剤は、埋込錠(implant)、油性注射液、又は粒子系として作製することができる。送達系の広範な概説については、参照により本明細書に組み込まれる、Banga, A.J., Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, PA, (1995)を参照されたい。粒子系としては、ミクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子が挙げられる。
【0153】
ポリマーを、本発明の組成物のイオン制御放出のために使用することができる。制御薬物送達における使用のための様々な分解性及び非分解性ポリマーマトリックスが当技術分野で公知である(Langer R., Accounts Chem. Res., 26:537-542 (1993))。例えば、ブロックコポリマー、ポロキサマー407は、低温ではは粘性であるが、流動性の液体として存在するが、体温では半固体のゲルを形成する。それは、組換えインターロイキン2及びウレアーゼの製剤及び持続的送達のための有効なビヒクルであることが示されている(Johnstonら、Pharm. Res., 9:425-434 (1992); 及びPec et al., J. Parent. Sci. Tech., 44(2):58 65 (1990))。あるいは、ヒドロキシアパタイトが、タンパク質の制御放出のための微小担体として使用されている(Ijntemaら、Int. J. Pharm., 112:215-224 (1994))。さらに別の態様では、脂質カプセル化薬物の制御放出並びに薬物標的化のために、リポソームが使用される(Betageriら、LIPOSOME DRUG DELIVERY SYSTEMS, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA (1993))。治療タンパク質の制御送達のための多数のさらなるシステムが公知である。例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,055,303号、第5,188,837号、第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、第4,957,735号及び第5,019,369号、第5,055,303号;第5,514,670号;第5,413,797号;第5,268,164号;第5,004,697号;第4,902,505号;第5,506,206号、第5,271,961号;第5,254,342及び第5,534,496号を参照されたい。
【0154】
本明細書に記載のツカチニブ及び/又は本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体の組み合わせの組合せの経口投与のため、医薬組成物又は薬剤は、例えば、薬学的に許容される賦形剤と共に従来の手段により調製される錠剤又はカプセル剤の形態をとり得る。本発明は、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、若しくはその組み合わせ、又はこれらの薬物の乾燥固体粉末を、(a) 希釈剤若しくは充填剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース(例えば、エチルセルロース、微結晶性セルロース)、グリシン、ペクチン、ポリアクリレート若しくはリン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、(b) 滑沢剤、例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、マグネシウム塩若しくはカルシウム塩、ステアリン酸金属塩、コロイド性二酸化ケイ素、水添植物油、コーンスターチ、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム若しくはポリエチレングリコールと一緒に含む;錠剤については、(c) 結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロース;所望の場合、(d) 崩壊剤、例えば、デンプン(例えば、ジャガイモデンプン若しくはナトリウムデンプン)、グリコール酸、寒天、アルギン酸若しくはそのナトリウム塩、又は発泡性混合物;(e) 湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、又は(f) 吸収剤、着色剤、香料及び甘味料も一緒に含む、錠剤及びゼラチンカプセル剤を提供する。
【0155】
錠剤は、当技術分野で公知の方法に従って、フィルムコーティングされていてもよく、又は腸溶コーティングされていてもよい。経口投与用の液体調製物は、例えば、溶液剤、シロップ剤、若しくは懸濁液剤の形態をとり得るか、又はそれらを、使用前に水若しくは他の好適なビヒクルと共に構成するための乾燥製品として提供することができる。このような液体調製物は、薬学的に許容される添加剤、例えば、懸濁化剤、例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化食用脂;乳化剤、例えば、レシチン又はアカシア;非水性ビヒクル、例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は分画植物油;及び保存剤、例えば、メチル又はプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸又はソルビン酸を用いて、従来の手段によって調製することができる。調製物はまた、必要に応じて、緩衝塩、香味剤、着色剤、又は甘味剤も含有し得る。所望の場合、経口投与用の調製物を、活性化合物(1つ又は複数)の制御放出を与えるために好適に製剤化することができる。
【0156】
本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組合せの局所投与のための典型的な製剤としては、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、ローション剤、及びパッチ剤が挙げられる。しかしながら、医薬組成物を、任意のタイプの投与、例えば、シリンジ又は他のデバイスを用いた、皮内、真皮下、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、大脳内、気管内、動脈内、腹腔内、膀胱内、胸膜内、冠動脈内又は腫瘍内注射のために製剤化することができる。吸入(例えば、エアロゾル)による投与、又は経口若しくは直腸投与のための製剤も想定される。
【0157】
経皮適用のための好適な製剤は、本明細書に記載の1つ以上の化合物の有効量を、場合により、担体と共に含む。好ましい担体としては、宿主の皮膚の通過を補助するための吸収性の薬理学的に許容される溶媒が挙げられる。例えば、経皮デバイスは、バッキングメンバー、場合により担体と共に化合物を含有するリザーバー、場合により、長期間にわたり制御された所定の速度で化合物を宿主の皮膚に送達するための速度制御バリア、及びデバイスを皮膚に固定するための手段を含むバンデージ(bandage)の形態である。マトリックス経皮製剤を使用することもできる。
【0158】
本明細書に記載される組成物及び製剤(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組み合わせ)は、注射による、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射のための製剤を、添加された保存剤と共に、単位剤形として、例えば、アンプル中又は複数用量容器中で提供することができる。注射可能組成物は、好ましくは、水性の等張溶液又は懸濁液であり、坐剤は、好ましくは、脂肪エマルジョン又は懸濁液から調製される。組成物は、滅菌され得るか、又は保存剤、安定剤、湿潤剤又は乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩又は緩衝剤などのアジュバントを含有し得る。あるいは、活性成分(1つ又は複数)は、使用前に好適なビヒクル、例えば、滅菌発熱性物質不含水と共に構成するための粉末形態であってもよい。さらに、それらは、他の治療的に有用な物質も含有し得る。組成物は、従来の混合法、顆粒化法又はコーティング法にそれぞれ従って調製される。
【0159】
吸入による投与のため、組成物(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組み合わせを含む)は、好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適なガスを使用して、加圧パック又はネブライザーから、エアロゾルスプレー提示物の形態で好都合に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するためのバルブを提供することにより、用量単位を決定することができる。化合物(1種又は複数種)と、好適な粉末基剤、例えば、ラクトース又はデンプンとの粉末混合物を含有する、例えば、吸入器又はインサフレーターにおける使用のためのゼラチンのカプセル及びカートリッジを製剤化することができる。
【0160】
組成物(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組み合わせを含む)を、例えば、従来の坐剤基剤、例えば、ココアバター又は他のグリセリドを含有する、直腸組成物、例えば、坐剤又は停留浣腸に製剤化することもできる。
【0161】
さらに、活性成分(1つ又は複数)を、デポー調製物として製剤化することができる。このような長期作用製剤は、埋め込み(例えば、皮下若しくは筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与することができる。従って、例えば、本明細書に記載の1つ以上の化合物を、好適なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に、又はやや溶けにくい誘導体として、例えば、やや溶けにくい塩として製剤化することができる。
【0162】
G. 製品及びキット
別の態様では、本発明は、対象における乳がんの影響を処置又は改善するための製品又はキットであって、本発明の医薬組成物(例えば、本明細書に記載のツカチニブ、本明細書に記載の少なくとも1つの抗HER2抗体、又はその組合せを含む医薬組成物)を含む、製品又はキットを提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アド-トラスツズマブエムタンシン、マルゲツキシマブ、又はその組合せである。いくつかの例では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブとペルツズマブとの組合せである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗HER2抗体は、トラスツズマブである。
【0163】
製品又はキットは、がん、特に、HER2の突然変異型を発現することが決定された固形腫瘍の影響を処置する、又は改善するのに好適である。いくつかの実施形態では、がんは、進行がんである。
【0164】
本発明の様々な方法を実施するための材料及び試薬は、その方法の実行を容易にするために、製品又はキットで提供することができる。本明細書で使用される用語「キット」は、プロセス、アッセイ、分析、又は操作を容易にする物品の組合せを含む。特に、本発明のキットは、例えば、診断、予後診断、療法などの広範な用途において有用である。
【0165】
製品又はキットは、化学試薬並びに他の成分を含有し得る。さらに、本発明の製品又はキットは、限定するものではないが、ユーザーに対する使用説明書、本明細書に記載のツカチニブと本明細書に記載の抗HER2抗体との組み合わせ又はその医薬組成物を投与するための装置及び試薬、サンプルチューブ、ホルダー、トレイ、ラック、ディッシュ、プレート、溶液剤、緩衝剤、又は他の化学試薬を含み得る。いくつかの実施形態では、製品又はキットは、遺伝子(例えば、KRAS、NRAS、BRAF)の遺伝子型を決定するため、又はサンプル中のHER2の発現を決定するための使用説明書、装置、又は試薬を含有する。本発明の製品又はキットを、都合のよい保存及び安全な配送のために、例えば、フタ付きの箱にパッケージすることもできる。
【0166】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解されるであろう。しかしながら、以下の実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示目的に過ぎず、それを考慮した様々な改変又は変更が当業者に提案され、本出願の精神及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることが理解される。
【実施例
【0167】
実施例1:以前に処置された、HER2変化により駆動される局所進行性で切除不能又は転移性の固形腫瘍を有する対象における、トラスツズマブと組み合わせたツカチニブの第II相バスケット試験
このマルチコホート、オープンラベル、多施設、国際第2相臨床試験は、選択されたHER2変化を有する固形腫瘍の処置についての、トラスツズマブと組み合わせたツカチニブの活性、安全性、及び忍容性を評価するように設計される。対象は、腫瘍組織学及びHER2変化状態に基づいて、別々のコホートに登録される。
【0168】
HER2過剰発現/増幅を有する5つの腫瘍特異的コホート(子宮頸がん[コホート1]、子宮がん[コホート2]、胆道がん[コホート3]、尿路上皮がん[コホート4]、及び非扁平非小細胞肺がん[NSCLC][コホート5])、HER2突然変異を有する2つの腫瘍特異的コホート(非扁平NSCLC[コホート7]及び乳がん[コホート8])、並びに他の全てのHER2増幅/過剰発現固形腫瘍型を登録する2つのコホート(乳腺腺がん、胃腺がん又は胃食道接合部腺がん[GEC]、及び結腸直腸がん[CRC]を除く)、又はHER2突然変異固形腫瘍型(それぞれコホート6及び9)が存在する。
【0169】
十分数の、特定の腫瘍型を有する対象がコホート6又は9に登録されている場合、治験依頼者(sponsor)は、オプショナルコホート10~15から選ばれる別のコホートにおいてその腫瘍型を評価することができる。任意のオプショナルコホートがオープンしている場合、該当する腫瘍型を有するコホート6又は9に登録されている対象は全て、新たな腫瘍特異的コホートに再割り当てされ;これらの対象は、コホート6及び9において置き換えられる。
【0170】
ステージ1においては、約12人までの奏効評価可能な対象を、コホート1~5、及び7のそれぞれに登録することができる。特定のコホートについて、ステージ1で十分な活性が観察される場合、所与の疾患及びHER2変化型における試験レジメンの活性及び安全性をさらに特徴付けるために、合計30人までの奏効評価可能な対象がそのコホートに登録される(ステージ2拡張)。コホート6、8、及び9は、12人の対象におけるステージ1評価を経ることなく、30人までの奏効評価可能な対象を登録する。奏効評価可能ではない対象は置き換えられる。以下の表は、コホートの定義を示す。
【0171】
【表2】
【0172】
試験処置は、サイクル1の1日目のトラスツズマブ8mg/kgの静脈内投与(IV)、その後のサイクル2の1日目から開始して21日毎の6mg/kgと組み合わせた、経口投与(PO)によるツカチニブ300mg、1日2回(BID)で構成される。ホルモン受容体(HR)陽性(HR+)、HER2突然変異乳がんを有する対象は、ツカチニブ及びトラスツズマブと組み合わせて、サイクル1の1日目から開始して4週毎に1回、並びにサイクル1の15日目にフルベストラント500mg筋肉内投与(IM)も受ける。安全性モニタリング委員会(SMC)は、試験中の対象の安全性の一定間隔でのモニタリングに対して責任を負う。対象は、検査での進行又は臨床的進行、許容できない毒性、同意の撤回、死亡、又は試験終了の発生まで試験処置を継続する。処置中止の後で、疾患進行、さらなる抗がん療法、及び生存状態は、同意の撤回、死亡、又は試験終了までモニターされる。この試験は、最後の対象が登録された後約3年、又は長期追跡調査に対象が残っていないときの、いずれか先に起きた方で終了する。さらに、治験依頼者はいつでも試験を終了させることができる。
【0173】
試験集団
選択基準
全ての対象は、登録のため以下の適格基準を満たさなければならない:
1. 組織学的に又は細胞学的に確認された、局所進行性の切除不能な又は転移性の固形腫瘍(原発性脳腫瘍を含む)の診断
2. 乳がん、胆道がん、及び非扁平NSCLC以外の疾患型を有する対象:局所進行性の切除不能な又は転移性の疾患に対する最も最近の全身療法の最中又はその後の疾患進行
3. 任意の乳がんのサブタイプを有する対象:
a. HER2過剰発現/増幅を示さないHER2突然変異疾患を有していなければならない
b. 局所進行性の切除不能な又は転移性の乳がんに対する≧1の前治療ライン(化学療法、内分泌療法、又は標的療法)を完了していなければならない
4. 胆道がんを有する対象:≧1の前治療ライン(化学療法、内分泌療法、又は標的療法)を完了していなければならない
5. 非扁平NSCLCを有する対象:標準治療から再発したか若しくは標準治療に対して抵抗性であるか、又はそれに対して利用可能な標準治療が存在しない
6. 以下のうちの1つにより、臨床検査室改善修正法(Clinical Laboratory Improvement Amendments)(CLIA)又は国際標準化機構(International Organization for Standardization)(ISO)の公認検査室において行われる地域検査又は中央検査により決定された、HER2変化(過剰発現/増幅又はHER2活性化突然変異)を示す疾患:
a. 乳がん、GEC、又はCRC以外の腫瘍型を有する対象において、以下の検査のうちの1つを利用して新鮮な若しくは保存された腫瘍組織又は血液から得られたHER2過剰発現/増幅
i. HER2過剰発現(3+免疫組織化学(IHC))(乳がん又は胃がんアルゴリズム)
ii. in situハイブリダイゼーションアッセイによるHER2増幅(蛍光in situハイブリダイゼーション[FISH]又は発色in situハイブリダイゼーションのシグナル比≧2.0又は遺伝子コピー数>6)
iii. 次世代シーケンシング(NGS)アッセイによる組織中のHER2増幅
iv. 血液ベースのNGSアッセイによる循環腫瘍DNA(ctDNA)中のHER2増幅
b. NGSアッセイにより、新鮮な若しくは保存された腫瘍組織又は血液中で検出された既知の活性化HER2突然変異、例えば以下のものなど:
- 細胞外ドメイン:G309A/E;S310F/Y;C311R/S;C334S
- キナーゼドメイン:T733I;L755P/S;I767M;L768S;D769N/Y/H;Y772;A775;G776;V777L/M;G778;T798;L841V、V842I;N857S、T862A、L869R、H878Y、R896C
- 膜貫通/膜近傍ドメイン:S653C、I655V;V659E;G660D;R678Q;V697。
- 列挙されていない他の突然変異は、メディカルモニターによる承認により適格となり得る。
7. 治験責任医師の評価により、RECIST v1.1基準で測定可能な疾患を有する
8. 同意時に18歳以上であるか、又は地方条例により成人とみなされる。
9. 米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)パフォーマンスステータス0又は1を有する
10. 治験責任医師の見解では少なくとも3ヶ月の平均余命を有する
11. 以下により規定される適切な肝機能を有する:
a. アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦3×正常上限(ULN)(肝転移が存在する場合は≦5×ULN)
b. 総ビリルビン≦1.5×ULN。例外:ジルベール症候群の既知の病歴と、正常な直接ビリルビン、AST、及びALTとを有する対象は適格とする
12. 以下により規定される適切なベースラインの血液学的パラメータを有する:
a. 絶対好中球数(ANC)≧1.0 × 109/L
b. 血小板数≧100×109/L;75~100×109/Lの安定した血小板数を有する対象は、メディカルモニターからの承認により包含され得る
c. ヘモグロビン≧9.0g/dL;ヘモグロビン≧8及び<9g/dLを有する対象は、メディカルモニターからの承認により包含され得る
d. 試験参加前に輸血された対象においては、輸血支援に依存せずに適切な血液学的パラメータを確立するため、輸血は療法の開始前≧14日でなければならない
13. 腎臓病食の修正(MDRD)試験式を使用した、推定糸球体濾過率(GFR)≧30mL/分/1.73m2
14. 国際標準比(INR)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)≦1.5×ULN (INR及びaPTTを変化させることが既知の投薬を受けない限り)
15. 試験処置の初回投与前≦28日以内に文書で記録された心エコー図又はマルチゲート収集スキャン(MUGA)により評価される、左室駆出率(LVEF)≧50%
16. 出産可能な対象については、以下の規定を適用する:
a. 試験処置の初回投与前7日以内に、陰性の血清妊娠検査(ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン[β-hCG]の25 mIU/mLの最小感度又は等価単位)結果を有していなければならない。偽陽性結果及び対象が妊娠していないことの文書による検証を有する対象は参加に適格とする。
b. 試験中及び任意の試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間、また該当する場合は、フルベストラントの最終投与後少なくとも2年間、妊娠しないようにすることに同意しなければならない。
c. インフォームドコンセントの時点で開始して、任意の試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間、また該当する場合は、フルベストラントの最終投与後少なくとも2年間を通して継続して、授乳又は卵子提供を行わないことに同意しなければならない。
d. 妊娠につながり得るような方法で性的に活発な場合、インフォームドコンセントの時点で開始して、試験全体を通して及び任意の試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間、また該当する場合は、フルベストラントの最終投与後少なくとも2年間継続して、2つの極めて有効な避妊法を一貫して使用しなければならない。
17. 子供の父親となり得る対象については、以下の規定を適用する:
a. インフォームドコンセントの時点から開始して、試験期間全体を通して及び任意の試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間、また該当する場合は、フルベストラントの最終投与後少なくとも2年間継続して、精子提供しないことに同意しなければならない。
b. 妊娠につながり得るような方法で出産可能な人と性的に活発な場合、インフォームドコンセントの時点から開始して、試験全体を通して及び任意の試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間、また該当する場合は、フルベストラントの最終投与後少なくとも2年間継続して、2つの極めて有効な避妊法を一貫して使用しなければならない。
c. 妊娠しているか又は授乳している人と性的に活発な場合、インフォームドコンセントの時点から開始して、試験全体を通して及び任意の試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間、また該当する場合は、フルベストラントの最終投与後少なくとも2年間継続して、2つの避妊法のうちの1つを一貫して使用しなければならない。
18. 対象は、対象の疾患の標準治療の一部ではない任意の試験関連の検査又は手順の開始の前に、施設内審査委員会/独立倫理委員会(IRB/IEC)により承認された、署名済のインフォームドコンセントを提出しなければならない。
19. 対象は、試験手順を順守する意思を有し、且つ順守することが可能でなればならない。
【0174】
除外基準
1. その疾患がHER2増幅/過剰発現を示す、乳がん、GEC又はCRCを有する対象。
2. HER2指向療法による以前の処置;子宮漿液性がん(uterine serous carcinoma)を有する対象は、以前のトラスツズマブを受けていてもよい
3. HR+HER2突然変異乳がんを有する対象における、ツカチニブ若しくはトラスツズマブの製剤の任意の成分(原薬、賦形剤、マウスタンパク質)、又はフルベストラントの製剤の任意の成分に対する既知の過敏症
4. 360mg/m2ドキソルビシン等価累積用量のアントラサイクリンに対する曝露歴
5. 試験処置の初回投与の≦3週間以内の、任意の全身抗がん療法、放射線療法、又は実験的薬剤による処置、別の介入性の臨床試験に現在参加中。
6. ≦グレード1まで解消していない以前のがん療法に関連する任意の毒性を有する、以下は例外とする:
a. 脱毛症
b. 発症の時点で重症度≦グレード1でなければならず、且つ完全に解消していなければならない鬱血性心不全(CHF)、及び
c. ≦グレード2まで解消していなければならない、貧血
7. 以下のような臨床的に重大な心肺疾患を有する:
a. 治療を必要とする心室性不整脈
b. 治験責任医師により決定される、症候性高血圧又はコントロール不良の高血圧
c. 任意の症候性CHF歴
d. 進行性悪性腫瘍の合併症に起因する、安静時の重度の呼吸困難(米国国立がん研究所有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Event)[NCI CTCAE]グレード3以上)
e. 追加の酸素療法を必要とする低酸素症、ただし酸素療法が閉塞性睡眠時無呼吸についてのみ必要とされる場合を除く
8. 試験処置の初回投与前6ヶ月以内に既知の心筋梗塞又は不安定狭心症を有する
9. 表面抗原発現によりB型肝炎について陽性であることが既知である。C型肝炎感染症について陽性であることが既知である(ポリメラーゼ連鎖反応により陽性)。C型肝炎感染症のために処置を受けた対象は、12週間の持続的なウイルス学的応答が文書で記録されている場合、許容される。
10. 既知の慢性肝臓疾患の存在
11. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)について陽性であることが既知の対象は、以下の基準のいずれかを満たす場合、除外される:
- <350細胞/μLのCD4+ T細胞計数
- 検出可能なHIVウイルス量
- 過去12ヶ月以内の日和見感染症歴
- <4週間、安定した抗レトロウイルス療法中
12. インフォームドコンセント時から任意の試験薬の最終投与後7ヶ月まで、また該当する場合は、フルベストラントの最終投与後少なくとも2年間、妊娠中、授乳中、又は妊娠を計画中である
13. 丸剤の嚥下不能
14. 強力なシトクロムP450(CYP)2C8阻害剤を、その阻害剤の5半減期以内に使用していた、又は処置の開始前5日以内に強力なCYP3A4若しくはCYP2C8誘導剤を使用していた
15. 治験責任医師の見解では、安全性又は試験手順の順守に影響を与え得る、任意の他の医学的、社会的、又は心理社会的因子を有する
16. スクリーニング前2年以内の別の悪性腫瘍歴、以下は例外とする:転移又は死亡のリスクを無視できる悪性腫瘍(例えば、≧90%の5年OS)、例えば、適切に処置された子宮頸部上皮内がん、非メラノーマ皮膚がん、限局性前立腺がん、非浸潤性乳管がん、又はステージI子宮がん
17. 既知の中枢神経系(CNS)病変を有する対象は、以下のいずれも有していてはならない:
a. メディカルモニターが承認しない限り、サイズが>2.0cmの任意の未処置の脳病変
b. 1日総量>2mgのデキサメタゾン(又は当量)での、脳病変の症状の抑制のための全身性コルチコステロイドの継続使用。しかし、1日総量≦2mgのデキサメタゾン(又は当量)の長期にわたる安定投与を受けている対象は、メディカルモニターによる承認に従って、適格となり得る。
c. 即時の局所療法を必要とすると考えられる任意の脳病変、例えば(限定するものではないが)、サイズの増加又は可能性のある処置関連浮腫が対象にリスクをもたらす可能性がある解剖学的部位における病変(例えば、脳幹病変)など。脳磁気共鳴画像法(MRI)をスクリーニングすることにより同定されるこのような病変に対する局所処置を受ける対象は、依然としてCNS選択基準bの下に記載される基準に基づいて、試験に適格であり得る。
d. 治験責任医師により文書で記録された、既知の又は疑わしい軟膜疾患
e. コントロール不良(>1/週)の全身発作若しくは複雑部分発作を有するか、又はCNS指向療法にもかかわらず脳病変に起因する神経学的増悪を示す
【0175】
予定対象数
約162~270人の対象を試験に登録することができる。これは、コホート1~5及びコホート7のそれぞれにおける約12~30人までの対象と、コホート6、8、及び9のそれぞれにおける約30人までの対象で構成される。オプショナルコホート10~15のいずれかがオープンしている場合は、追加の対象を登録することができる。最初にコホート6又は9に登録された対象であって、オプショナルコホートに再割り当てされた者は、置き換えられる。
【0176】
治験薬、用量、及び投与様式
対象は、治験薬であるツカチニブとトラスツズマブの併用療法を受ける。試験処置は21日サイクルで、ツカチニブは毎日、トラスツズマブは1日目に与えられる。ツカチニブ300mgは、サイクル1の1日目から開始して以降継続的に、1日2回(BID)、経口(PO)投与される。トラスツズマブ8mg/kgは、サイクル1の1日目にIV投与され、その後、サイクル2の1日目に開始して21日毎に6mg/kgで投与される。しかし、処置開始前4週間以内にトラスツズマブIVが投与された場合は、サイクル1の1日目にトラスツズマブ6mg/kg IVを投与するべきである。フルベストラント500mgは、サイクル1の1日目から開始して4週毎に1回、並びにサイクル1の15日目に筋肉内(IM)投与される。サイクルはトラスツズマブの投与により規定され、新たなサイクルは、トラスツズマブの1日目の注入が投与されるときはいつでも開始する。トラスツズマブが中止される場合、サイクルは、トラスツズマブの最後の1日目投与から21日毎に生じると規定される。
【0177】
【表3】
【0178】
処置期間
試験処置は、許容できない毒性、X線検査での進行又は臨床的進行の発生、同意の撤回、死亡、又は試験終了まで継続する。ある試験薬(ツカチニブ、トラスツズマブ、又はフルベストラント)が中止される場合、残りの試験薬(1つ又は複数)を用いて試験処置を継続することができる。
【0179】
有効性評価
疾患の奏効は、RECIST v1.1に従って、治験責任医師により評価される。処置決定は、X線スキャンの局所評価に基づいて行われる。X線疾患評価は、全ての既知の疾患部位を、好ましくは(経口造影剤及び/又はIV造影剤による)高品質スパイラル造影コンピュータ断層撮影法(CT)を使用して評価し、最小限、胸部、腹部、及び骨盤を網羅する。またポジトロン放出断層撮影-CTスキャン(高品質CTスキャンが含まれる場合)及び/又はMRIスキャンを、任意の他の既知の疾患部位のさらなる画像化として、必要に応じて使用してもよい。乳がん又は肺がんを有する対象においては、スクリーニングの際に、脳の造影MRIスキャンを行うべきである。既知の又は疑わしい脳病変を有する対象は、他の疾患評価と同じ評価スケジュールに従って、処置及び追跡調査中に脳MRIを受けるべきである。造影剤が禁忌である(すなわち、造影剤アレルギー又は腎クリアランス低下を有する対象における)場合、代わりに胸部の非造影CTスキャンを、腹部及び骨盤のMRIスキャンと共に行うことができる。各対象について、別段に臨床的に示されない限り、試験全体を通して、スクリーニング/ベースラインにおいて使用されるものと同じ画像診断法が使用されるべきである。画像は、可能性のあるさらなる分析のため、独立中央判定(ICR)施設により収集される。疾患評価は、投与の中断に関わらず、スクリーニング/ベースラインにおいて、及び最初の24週間については6週毎に、次いで12週毎に行われる。
【0180】
奏効(完全奏効又は部分奏効(CR又はPR))は、奏効の最初の文書による記録の少なくとも4週間後の反復スキャンにより確認される。奏効評価のスケジュールは、確認スキャン後に調整されるべきではない(例えば、6週目にCR、10~12週目に確認スキャン、次の評価は12週目に予定される)。腫瘍イメージングも、疾患進行が疑われる場合はいつでも行うべきである。
【0181】
対象は、(1) ベースラインの疾患評価を有していた、(2) 試験処置を受けた、及び(3) ベースライン後の疾患評価を有していたか又は文書で記録された疾患進行又は臨床的進行により処置を中止した場合は、奏効について評価可能とみなされる。
【0182】
文書で記録された進行性疾患又は死亡以外の理由で試験処置を中止する対象は、処置開始後24週まで6週(±1週)毎に、次いで、文書で記録されたRECIST v1.1に基づく疾患進行、死亡、同意の撤回、追跡不能、又は試験終了の発生まで12週(±1週)毎に、疾患評価を受け続ける。
【0183】
生存及びその後の抗がん療法の追跡調査は、約12週毎に行われ、死亡、同意の撤回、追跡不能、又は試験終了まで継続する。
【0184】
薬物動態評価
ツカチニブのトラフ薬物レベルのPK評価のための血液サンプルは、全ての対象において、サイクル3~6の1日目に、ツカチニブの投与前に収集される。サイクル3の1日目には、ツカチニブのピークレベルのPK評価は、ツカチニブの投与の1~4時間後に行われる。ツカチニブの血漿濃度は、検証された液体クロマトグラフィー(LC)-質量分析(MS)/MS法を使用して決定される。PKパラメータは、記述統計学を用いてまとめられる。
【0185】
適格性及びバイオマーカー評価のためのHER2検査
HER2過剰発現/増幅疾患及びHER2突然変異疾患についての試験適格性要件は、試験前に行われるアッセイ(任意の試験関連活性物質の前に行われる評価)により、又はプレスクリーニングにおいて行われるアッセイにより満たされなければならず、その要件は以下のとおりである:
1. 以前に確立されたHER2変化:HER2適格性は、試験に登録する前にCLIA-又はISO認定検査室において地域的に実施された、腫瘍組織のIHC/ISHアッセイにおけるHER2過剰発現若しくは増幅、又はctDNA若しくは腫瘍組織のNGSアッセイにおけるHER2増幅若しくは活性化突然変異により示すことができる。
2. HER2変化についてのプレスクリーニング:試験前評価においてHER2変化が検出されなかった場合、HER2適格性は、プレスクリーニング中に、スクリーニング訪問前3ヶ月以内に、HER2増幅又は突然変異の存在を評価するctDNAの次世代シーケンシング(NGS)アッセイにより、代替的に確立することができる。
3. 探索的解析のための追加サンプル:探索的解析のため、全ての対象は、ctDNAのNGSアッセイのための血液サンプル、及び保存腫瘍組織、若しくは入手可能な場合は新たな腫瘍生検を、プレスクリーニングにおいて、又はプレスクリーニングを行わなかった場合はスクリーニング訪問時に提供する。しかし、以前の治療の終了以降に、治験依頼者により以前に血液サンプルが得られた場合は、血液サンプルを引き出す必要はない。この追加検査の結果は、適格性を決定するためには使用されない。
【0186】
保存腫瘍組織サンプルは、利用可能な最も最近の組織サンプルであるべきである。保存サンプルを利用することができない場合、対象が利用可能な腫瘍病変を有し且つ生検に同意する場合は、プレスクリーニング時又はスクリーニング訪問時に新たな生検が行われる。保存組織を有しておらず、且つその腫瘍が到達可能ではないか又は生検に適していないと考えられる対象は、メディカルモニターによる承認に従って、登録に適格とする。
【0187】
さらなるバイオマーカー評価としては、HER2突然変異、又は奏効の潜在的なバイオマーカーとしての他の突然変異の探索的評価を挙げることができる。さらなる探索的解析、例えば限定するものではないが、IHC解析及びNGS解析などを行って、腫瘍増殖、生存、及び標的療法に対する抵抗性に関連するバイオマーカーを調べることができる。この評価は、さらなるバイオマーカーと処置の転帰との相関を可能とし得、最終的には、将来的にツカチニブレジメンを腫瘍表現型/遺伝子型により良く適合させるための患者選択戦略を導くか又は改善することができる。
【0188】
安全性評価
安全性評価は、重篤有害事象(SAE)及び特に注目すべき有害事象(AESI)を含む有害事象(AE)の監視及び記録、身体検査所見、バイタルサイン、12誘導心電図、同時投薬、妊娠検査、及び検査室検査を含む。心駆出率の評価は、MUGAスキャン又は心エコー図を使用して行われる。進行中の、対象の安全性及びSAEのリアルタイムレビューは、治験依頼者の薬物安全対策部(Drug Safety Department)により行われる。SMCは、試験における対象の安全性を一定間隔でモニタリングすることに対して責任を負う。AE及び検査所見の異常の重症度は、米国国立がん研究所有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)、バージョン5を用いて段階分けされる。
【0189】
統計的方法
安全性及び有効性は、観測値、平均値、中央値、標準偏差、連続変数の最小値及び最大値の数字、並びにカテゴリー変数についてはカテゴリー毎の(非欠損の)数字及びパーセンテージを含む記述統計学を用いて評価される。治験責任医師による確認客観的奏効率(ORR)は、RECIST v1.1に基づく確認CR又はPRを有する対象の割合として定義される。奏効率については、Clopper-Pearson法を用いた両側90%正確信頼区間(CI)が算出される。
【0190】
試験の一次解析は、各コホートにおける30人の奏効評価可能な対象が、少なくとも12週間追跡調査されたか、又は疾患進行が文書で記録された場合に行われる。RECIST v1.1に基づく確認ORRの主要有効性評価項目は、任意の量の試験処置を受けた、奏効について評価可能とみなされる全ての対象を含む奏効評価可能なセットに基づいて、各コホートについて推定される。Clopper-Pearson法を用いた90%正確CIが提供される。確認ORRは、同じ疾患型を有するコホートを組み合わせてまとめられていてもよい。
【0191】
中間無益性解析は、所与のコホートの約12人の対象(ステージ1)が処置を受け、且つ少なくとも2回のベースライン後の奏効評価を有したか又は疾患進行を有した後に、コホート1~5及び7について別々に行われる。
【0192】
無益性基準を決定するために、ベイジアン予測確率アプローチが使用される。各中間解析の時点で、成功の予測確率(PPoS)が算出される。PPoS<20%は、中間結果を考慮すると、試験終了時にORRが現在の標準治療の奏効率よりも良好となる可能性が低いことを示す。PPoSと共に、活性及び安全性データに基づいて、治験依頼者は、あるコホートを早期に中止することができる。無益性についての中間解析を成功裏に通過するコホートは、治験依頼者の決定で、各腫瘍コホートについて、追加で18人までの奏効評価可能な対象、合計30人までの奏効評価可能な対象の登録を続けることができる。12人の対象の前に無益性規則がクリアされる場合、言い換えれば、12人未満の対象において最小限の必要奏効が観察される場合、コホートをより早期にステージ2へと拡張することができる。
【0193】
安全性測定値は、安全性解析セットに基づいて、記述統計学によりまとめられる。安全性解析セットは、任意の量の試験処置を受けた全ての対象を包含する。
【0194】
ステージ2に拡張されるコホートについては、各コホートにおいて、合計30人の対象(2つのステージを合わせた)が、各コホートにおいて処置される。30人の対象のサンプルサイズについては、確認ORRが10%~30%であると仮定すると、両側90%正確CIは以下にまとめられる:
【0195】
【表4】
【0196】
治験薬
ツカチニブ製剤は、150mg用量強度のコーティングされた黄色の楕円形錠剤と、50mg用量強度のコーティングされた黄色の丸凸状錠剤の両方で供給される。これらの錠剤は、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー中のツカチニブの製剤中間体の非晶質分散体から製造され、次いで、これを薬学的賦形剤(微結晶性セルロース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウム、二酸化ケイ素、クロスポビドン、及びステアリン酸マグネシウム)と合わせて、錠剤に圧縮する。
【0197】
トラスツズマブは、HER2の細胞外ドメインに結合するヒト化免疫グロブリンG1(IgG1)カッパモノクローナル抗体であり;HER2タンパク質を過剰発現する細胞の増殖を阻害することにより、抗体依存性細胞傷害性を媒介する。トラスツズマブは、転移性疾患のための1つ以上の化学療法レジメンを受けた患者においては、HER2過剰発現乳がんの治療のための単剤としてのHER2過剰発現mBCのファーストライン治療用のパクリタキセルと組み合わせて、またHER2過剰発現転移性GECを有する患者であって転移性疾患のための前治療を受けていない者の治療については、シスプラチン及びカペシタビン又は5-フルオロウラシルと組み合わせて、HER2過剰発現リンパ節陽性又はリンパ節陰性乳がんのアジュバント治療に適応される。
【0198】
再構成用の凍結乾燥滅菌粉末としての単一用量バイアル(150mg/バイアル)は市販されており、投与指示のためのトラスツズマブの添付文書における指示に従って、調製及び投与されるべきである。トラスツズマブは、治験責任医師の指導下でIV投与される。
【0199】
フルベストラントは、抗エストロゲン療法後に疾患進行を有する閉経後の女性におけるHR+mBCの処置における使用について承認されたERアンタゴニストである。
【0200】
フルベストラントの投与は、HR+ HER2突然変異体乳がんを有する患者において必要とされる。
【0201】
用量調整
ツカチニブ
3回までのツカチニブの用量減量が許容される。150mg BID未満までの用量減量を必要とする可能性がある対象は、ツカチニブによる処置を中止すべきである。記載される間隔よりも大きい間隔の用量減量は、メディカルモニターによる承認と共に、治験責任医師の裁量で行うことが可能である。
【0202】
【表5】
【0203】
トラスツズマブ
グレード≧3のトラスツズマブ関連AEの事象においては、そのAEがグレード≦1又は処置前のレベルに解消するまでトラスツズマブを保留する。トラスツズマブは同じ用量で再開し;トラスツズマブ用量を減量することはできない。トラスツズマブの1日目投与を>1週間遅らせる場合、承認された服用指示により、8mg/kgのIVローディング用量を与えるべきである。トラスツズマブの投与を>3週間保留する場合、トラスツズマブを再開する前に、メディカルモニターの承認が必要である。
【0204】
フルベストラント
試験時に中程度の肝障害(チャイルド・ピュー分類B)を発症する対象については、メディカルモニターとの話し合いが必要とされる。メディカルモニターにより対象が試験を継続することが承認される場合、フルベストラント250mgまでの用量減量が必要とされる。
【0205】
目的
この試験は、HER2変化を示す固形腫瘍を有する対象における、トラスツズマブと組み合わせたツカチニブの有効性、安全性、及び薬物動態(PK)を評価する。試験についての具体的な目的及び対応する評価項目は以下にまとめられる:
【0206】
【表6】
【0207】
試験処置の中止
対象の試験処置は、以下の理由のいずれかにより中止することができる:
- 進行性疾患
- AE
- 試験中の妊娠又は授乳の開始
- 治験責任医師の決定(臨床的進行に起因する)
- 治験責任医師の決定(その他)
- 対象の決定、非AE
注記:「AEを理由として」処置を中止することを決定する対象は、確実にこの理由付けに含められないようにすること
- 治験依頼者による試験終了
- その他、非AE
【0208】
試験薬(ツカチニブ、トラスツズマブ、又はフルベストラント)が中止される場合、残りの試験薬(1つ又は複数)を用いて試験処置を継続することができる。文書で記録された進行性疾患又は死亡以外の理由で試験処置を中止する対象は、処置開始後24週まで6週間(±1週間)毎に、次いで、RECIST v1.1に基づく疾患進行、死亡、同意の撤回、追跡不能、又は試験終了の発生まで12週間(±1週間)毎に疾患評価を継続する。
【0209】
生存及びその後の抗がん療法の追跡調査は、約12週間毎に行い、死亡、同意の撤回、追跡不能、又は試験終了まで継続する。
【0210】
いつでも可能な限り、疾患進行(RECIST 1.1による)を確認するためにあらゆる努力を行うべきである。しかしながら、X線検査による評価を受けることができないか又は実現可能ではない患者が進行性症状を有すると考えられる例では、治験責任医師は、「臨床的進行による医師の決定」により、その患者を試験処置から外すことができる。このような患者を試験処置から外すためのこの理由の使用は、患者がさらなるX線検査による評価を受けることが臨床的に適切ではない場合、及び画像診断による確認の不存在下でがん進行の臨床的確信が存在する場合に制限されるべきである。これらの場合、他の可能性のある理由、特にAEが、試験薬中止の理由のより正確な説明ではないことを確実にするために、特別な考慮がなされるべきである。
【0211】
試験からの対象の離脱
いずれの対象も、以下の理由のいずれかにより試験から中止することができる:
- 対象による同意の撤回
- 治験依頼者による試験の終了
- 追跡不能
- 死亡
- その他
【0212】
実施例2:ツカチニブによる処置は、総HER2レベル及び細胞膜結合HER2レベルを増加させる
この試験は、30nMツカチニブ又は100nMツカチニブが、いずれかの用量でのツカチニブによる処置後24時間及び48時間の期間中、4つの異なるHER2増幅乳がん細胞株(BT-474、SK-BR-3、HCC-1419、及びUACC-893)において、総HER2タンパク質レベル又は細胞膜結合HER2タンパク質レベルに与える効果を示した。タンパク質溶解物を、各時点で収集した細胞から作成した。HER2の総タンパク質レベルを、WESシステムを用いたウエスタンブロット解析によって決定し、ローディングコントロールとしてのGAPDHレベルに対して正規化した。図1A~1Dに示されるとおり、試験した4つの細胞株全てにおいて、HER2総タンパク質レベルは、ツカチニブによる処置後に、未処置の細胞株と比較して増加した。総HER2タンパク質レベルは、未処置の細胞の総HER2タンパク質レベルのパーセンテージとして示される。HER2の細胞膜結合レベルは、死細胞の除去後の定量的FACS(qFACS)分析により決定される。図1E~1Hに示されるとおり、30nM又は100nMのいずれかによる処置は、未処置の細胞株と比較して、4つの細胞株全てにおいて細胞膜結合HER2タンパク質レベルを増加させた。細胞膜結合HER2タンパク質レベルは、未処置の細胞の細胞膜結合HER2タンパク質レベルのパーセンテージとして示される。
【0213】
実施例3:ツカチニブによる処置は、細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させ、その後急速な内在化及びリソソームプロセシングが続いた
ツカチニブ(100nM)の存在下又は非存在下で抗体治療薬に結合した際の細胞表面におけるHER2の動態を調べるため、SK-BR-3細胞を、蛍光標識したトラスツズマブ(Trastuzumab-AF488)と共にインキュベートし、細胞表面のHER2を標識した。過剰な抗体を洗い流した。細胞を72時間にわたる時点で画像化し、表面結合抗体の内在化を観察した。図2Aは、Trastuzumab-AF488を用いたHER2内在化アッセイの模式図を示す。図2Bは、Trastuzumab-AF488を用いたHER2内在化アッセイの結果を示す。リソソームプロセシングの際に蛍光を発し、抗体異化の代理の役割を果たすことが可能なクエンチされたフルオロフォアであるクロロキンの存在下に、QFで標識したトラスツズマブ(Trastuzumab-QF)を用いて、同時実験を行った。図2Cは、Trastuzumab-QFを用いたHER2内在化アッセイの模式図を示す。図2Dは、Trastuzumab-QFを用いたHER2内在化アッセイの結果を示す。これらの実験は、ツカチニブによる処置が細胞表面におけるHER2の滞留時間を増加させ(図2B)、その後急速な内在化及びリソソームプロセシングが続いた(図2D)ことを示す。
【0214】
いかなる理論に拘束されるものではないが、実施例2に示されるような、ツカチニブに応答した総HER2レベル及び細胞膜局在HER2レベルの増加、及び、現実施例に示される、ツカチニブに応答した細胞表面におけるHER2の滞留時間の初期増加は、ツカチニブの抗HER2抗体との共投与が相乗効果を有し得る理由についての機構的な理論的根拠を提供し得る。ツカチニブの投与は、抗HER2抗体治療薬の受容体結合の増加を媒介しうる。
【0215】
実施例4:転移性HER2+乳がんの維持療法としての、トラスツズマブ及びペルツズマブと組み合わせたツカチニブ又はプラセボの無作為化、二重盲検、第3相試験
この実施例には、タキサン、トラスツズマブ、及びペルツズマブによる以前の処置を受けていた対象を含む、進行性HER2+乳がんを有する対象における維持療法としてのトラスツズマブ及びペルツズマブと組み合わせたツカチニブの有効性及び安全性を評価するように設計された、無作為化、二重盲検、プラセボ制御、国際的、多施設、第3相試験を説明する。対象は、トラスツズマブ及びペルツズマブと組み合わせたツカチニブ又はトラスツズマブ及びペルツズマブと組み合わせたプラセボのいずれかの21日サイクルを受けるように1:1の比に無作為化される。無作為化は、診断(de novo対再発)、ホルモン受容体状態(陽性対陰性)、及び脳転移の存在又は履歴(はい対いいえ)の存在により階層化される。
【0216】
試験は、進行性HER2+乳がんを有する対象における維持療法としての、トラスツズマブ及びペルツズマブと組み合わせたツカチニブの有効性、安全性、及び薬物動態(PK)を評価する。試験のための具体的な目的及び対応する評価項目は、以下の表にまとめられる。
【0217】
【表7】
【0218】
対象は、以下の2つの処置群のうちの1つの処置の21日サイクルを受けるように1:1の比に無作為化される:(1) 対照アーム:PO BIDで与えられるプラセボと21日毎のトラスツズマブ及びペルツズマブ;(2) 実験アーム:ツカチニブ300mg PO BIDと21日毎のトラスツズマブ及びペルツズマブ。
【0219】
トラスツズマブ及びペルツズマブは、以下のとおりに投与される:トラスツズマブは、6mg/kgの用量で静脈内(IV)に、又は600mgの固定用量で皮下(SC)に、21日毎に与えられ、かつ、ペルツズマブは420mgでIVに21日毎に与えられる。別の方法では、トラスツズマブ及びペルツズマブを個別に与える代わりに、600mgペルツズマブ、600mgトラスツズマブ、及び20,000単位のヒアルロニダーゼの固定用量組み合わせが、21日毎に1回SCで与えられる。IVトラスツズマブについては、トラスツズマブの投与が>4週間保留されていた場合、8mg/kgのIVローディング用量が与えられる。IVペルツズマブについては、ペルツズマブの投与が少なくとも6週間保留されていた場合、840mgのIVローディング用量が与えられる。
【0220】
ツカチニブ又はプラセボは、二重盲検様式で対象に投与される。サイクルは、21日間の長さとなるように計画され、ツカチニブ又はプラセボの投与は、各サイクルの1日目に計画される。試験処置は、許容できない毒性、疾患進行(理想的にはRECIST v1.1に基づいてX線検査により検証される)、同意の撤回、又は試験終了まで継続する。プラセボからツカチニブへのクロスオーバーは許容されない。ツカチニブ及びプラセボは、PO経路により投与され;サイクル1の1日目以降、PO BIDで300mgが投与される。ツカチニブ又はプラセボは、同一暦日中に投与の間が約8~12時間で、朝1回、夜1回服用される(PO BID)。ツカチニブ又はプラセボの用量調整を指図することができる。3回までのツカチニブ又はプラセボの用量減量は許容されるが、150mg BID未満までの用量減量は許容されない。治験責任医師の見解において、150mg BID未満までの用量減量を必要とし得る対象、又は可能性のあるツカチニブの4回目の用量減量を必要とし得る対象は、中止すべきである。推奨される用量減量は、250mg PO BID、200mg PO BID、また最終的には150mg PO BIDである。予定された用量が欠落し、且つ予定された投薬時間から6時間未満が経過していた場合は、対象は、その用量を速やかに服用することが推奨される。6時間超が経過していた場合、対象はその用量をスキップし、次の定期的に予定される用量を待つことが推奨される。ツカチニブ又はプラセボは、食べ物と一緒に服用してもよく、又は食べ物なしで服用してもよい。
【0221】
ツカチニブ又はプラセボの用量減量は許容される。対象の安全性のために必要とされる、ツカチニブ若しくはプラセボ、トラスツズマブ、及び/又はペルツズマブの用量の保留又は中止も許容される。進行の非存在下では、薬物関連毒性に起因してトラスツズマブ及びペルツズマブを中止する対象は、ツカチニブ/プラセボのみを受け続けることが可能であり、ツカチニブ/プラセボを中止する対象は、トラスツズマブ及びペルツズマブを受け続けることができる。対象がトラスツズマブ又はペルツズマブを中止する場合、その対象は、両方を中止することが求められる。安全性は、試験全体を通して、進行中の盲検ベースでモニターされる。
【0222】
RECIST v1.1に基づく疾患奏効が評価される。処置決定は、局所的なX線検査による評価に基づいて行われる。各対象についての奏効評価は、RECIST v1.1に基づく疾患進行が文書で記録されたか、又は処置の終了(EOT)のいずれか遅い方まで継続する。生存及び他の追跡調査の評価は、試験終了又は同意の撤回まで継続する。
【0223】
ツカチニブのトラフ薬物レベルのPK評価のための血液サンプルは、全ての対象において、サイクル2~6の1日目に、ツカチニブの投与前に収集される。サイクル3の1日目には、血液サンプルは、ツカチニブの投与後1~4時間のツカチニブのピークレベルのPK評価のため、投与後にも収集される。ツカチニブの血漿濃度は、検証された液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)/MS法を使用して決定される。PKパラメータは、記述統計学を用いてまとめられる。健康関連QoLは、欧州生活の質5次元5レベル(EQ 5D 5L)計測法及び欧州がん研究治療機関(EORTC) QLQ C30などの標準化された評価ツールを使用して、プロトコルで特定された時点で評価される。
【0224】
試験集団は、適格となるための登録基準の全てを満たさなければならない対象を含む。選択基準は以下のとおりである:
1. 中央施設で確認された、2018年米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncologists)(ASCO)-米国病理医協会(College of American Pathologists)(CAP)ガイドラインに基づくHER2+乳がんを有する。
a. 無作為化の前に、治験依頼者が指定した中央検査機関に組織ブロック又はスライドを提出し、HER2+であることが確認されなければならない。
2. 切除不能な局所進行性又は転移性の(以降「進行性」と呼ばれる)疾患を有し;再発([ネオ]アジュバント療法後)である場合、初期乳がんの設定において受けた任意のトラスツズマブ又はペルツズマブから進行性HER2+疾患の診断まで、最低限6ヶ月間の無処置間隔がなければならない。初期乳がんに対する以前の標準治療は許容される(例えば、以前のT-DM1);しかし、除外基準1に留意すべきである。
3. 疾患進行の証拠(治験責任医師の判断に基づく)がない進行性HER2+乳がんに対するファーストライン療法としての、トラスツズマブ、ペルツズマブ、及びタキサンによる以前の処置の4~8サイクル(21日サイクル)を受けていた
a. <6サイクル(すなわち、4~5サイクル)のタキサンを受けている対象は、タキサンが、許容できない毒性(例えば、文書で記録された神経障害に影響を及ぼす作用)により早期に中止された場合にのみ適格とする
b. 対象は、スクリーニング手順を完了することができるように、スクリーニング中に、トラスツズマブ及びペルツズマブを(化学療法完了後)追加で1サイクル受けることが許容される。試験処置は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、及び化学療法の最終サイクルの開始から6週間(±3日間)以内に開始するべきである
c. スクリーニング中に無症候性脳転移を有することが新たに認められ、且つ局所CNS指向療法による処置を受けた対象は、必須のウォッシュアウト期間を設けるために、トラスツズマブ及びペルツズマブを(化学療法完了後)追加で2サイクルまで受けることが許容される(選択基準15及び除外基準14を参照)。試験処置は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、及び化学療法の最終サイクルの開始から9週間(±3日間)以内に開始するべきである。
4. ホルモン受容体状態が既知である(地域ガイドラインに基づく;ホルモン受容体陽性[HR+]であってもよく、陰性[HR-]であってもよい)
5. 同意時に18歳以上であり、法的に成人である
6. 米国東海岸がん臨床試験グループパフォーマンスステータス(Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status)(ECOG PS)が0又は1である
7. 以下に規定する適切な肝機能を有する:
a. 総ビリルビン≦1.5 X正常上限(ULN)、ただしジルベール病が既知の対象は抱合型ビリルビンが≦1.5 X ULNである場合は登録可能
b. トランスアミナーゼ(AST/血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ[SGOT]及びALT/血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ[SGPT])≦3 X ULN (肝転移が存在する場合≦5 X ULN)
8. 以下に規定する適切なベースライン血液学的パラメータ:
a. 絶対好中球数(ANC)≧1x103/μL
b. 血小板数≧100 x 103/μL
c. ヘモグロビン≧9g/dL
d. 試験参加前に任意の輸血を受けている対象においては、上記の血液学的パラメータは、前≧14日間の期間の任意の輸血の非存在下で満たされなければならない。
e. 試験参加前に成長因子を受けている対象においては、上記の血液学的パラメータは、前≧14日間の期間の関連する成長因子の使用の非存在下で満たされなければならない。
9. 血清又は血漿クレアチニン≦1.5 X 組織ULNを有する。
10. 試験処置の初回投与前4週間以内に文書で記録された心エコー図(ECHO)又はマルチゲート取得スキャン(MUGA)により評価される左室駆出率(LVEF)≧50%を有する
11. 出産可能な対象については、以下の規定を適用する:
a. 試験処置の初回投与前7日以内の陰性の血清又は尿妊娠検査(ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン[β-hCG]の25mIU/mLの最小感度又は等価単位)の結果を有していなければならない。偽陽性結果及び対象が妊娠していないことの文書による検証を有する対象は、参加に適格である。
b. 試験中及び試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間、妊娠しないようにすることに同意しなければならない
c. インフォームドコンセントの時点で開始して、試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間を通して継続して、授乳又は卵子提供を行わないことに同意しなければならない
d. 妊娠につながり得るような方法で性的に活発である場合、インフォームドコンセントの時点で開始して、試験中を通して及び試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間継続して、2つの極めて有効な避妊法を一貫して使用しなければならない。
12. 男性の対象については、以下の規定を適用する:
a. インフォームドコンセントの時点で開始して、試験期間中を通して及び試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間継続して、精子を提供しないことに同意しなければならない
b. 子供の父親になることが可能であり、且つ出産可能な人と妊娠につながり得るような方法で性的に活発である場合、インフォームドコンセントの時点で開始して、試験中を通して及び試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間継続して、2つの極めて有効な避妊法を一貫して使用しなければならない
c. 妊娠しているか又は授乳している人と性的に活発な男性の対象は、インフォームドコンセントの時点で開始し、試験中を通して、また試験薬の最終投与後少なくとも7ヶ月間継続して、男性用コンドームを一貫して使用しなければならない
13. 対象の疾患に対する標準治療の一部ではない任意の試験関連の検査又は手順の開始の前に、施設内審査委員会又は独立倫理委員会(IRB/IEC)により承認された同意書に基づく署名済のインフォームドコンセントを提出する
14. 試験手順を順守する意思を有し、且つ順守することが可能である
15. CNS選択基準 - スクリーニング造影脳磁気共鳴画像法(MRI)に基づいて、対象は以下のいずれかを有し得る:
a. 脳転移の証拠なし
b. 無症候性であり、以前の脳画像診断で同定された場合、トラスツズマブ、ペルツズマブ、及びタキサンによるファーストライン導入療法を開始して以降の進行の証拠を有さない未処置の脳転移
c. 以前に処置された無症候性の脳転移
i. 局所療法により以前に処置された脳転移は、処置以降に進行していてはならない
a. 全脳放射線療法(WBRT)以降の時間は、試験処置の初回投与前≧14日間であり、定位的放射線治療(SRS)以降の時間は、試験処置の初回投与前≧7日間であり、又は外科的切除以降の時間は、試験処置の初回投与前≧28日間である
ii.、標的病変と非標的病変の分類を可能とするために、任意のCNS処置の関連の記録が入手可能でなければならない。
【0225】
除外基準としては、以下が挙げられる:
1. ピロチニブ、ラパチニブ、ツカチニブ、ネラチニブ、及びアファチニブ(拡張されたアジュバント設定においてネラチニブが与えられ、且つ最後のネラチニブ投与から試験薬の開始まで少なくとも12ヶ月が経過した場合、ネラチニブを除く)を含む任意の抗HER2及び/又は抗上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ阻害剤により以前に処置されているか、又は現在別の介入性の臨床試験に参加している
2. 任意の理由で脳の造影MRIを受けることができない
3. トラスツズマブ、ペルツズマブ、又は化学的又は生物学的にツカチニブに類似する化合物に対するアレルギー反応歴、以下を除く:成功裏に管理されたトラスツズマブに対するグレード1又は2の注入関連反応(IRR)、試験薬における賦形剤の1つに対する既知のアレルギー、又はマウスタンパク質に対する過敏症
4. 表面抗原発現によりB型肝炎について陽性、C型肝炎感染症について陽性、又は既知の慢性肝臓疾患の存在。C型肝炎感染症に対して処置された対象は、少なくとも12週間の持続的なウイルス学的応答が文書で記録された場合に許容される。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるB型肝炎DNAレベルの検査に関しては、最新の地域ガイドラインに従うべきである。ヌクレオシド類似体又は他の療法を必要とするPCRによるB型肝炎DNAレベルを有する対象は、この試験に適格ではない。
5. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)について陽性であることが既知の対象は、以下の基準のいずれかを満たす場合、除外される:
a. <350細胞/μLのCD4+T細胞計数
b. 検出可能なHIVウイルス量
c. 過去12ヶ月以内の日和見感染症歴
d. <4週間の安定した抗レトロウイルス療法中である
6. インフォームドコンセント時点から試験薬の最終投与後7ヶ月まで、妊娠中、授乳中、又は妊娠を計画中である
7. 丸剤の嚥下不能か、又は薬剤の適切な経口吸収を妨げ得る重大なGI疾患又は手術を有する
8. 強力なCYP2C8阻害剤を、その阻害剤の5半減期以内に使用していたか、又は試験処置の初回投与前5日間以内に強力なCYP3A4又はCYP2C8誘導剤を使用していた。
9. 現在、症候性鬱血性心不全、不安定狭心症、管理不良高血圧、又は心不整脈の状態を有するか、又は無作為化前6ヶ月以内に心筋梗塞歴を有する
10. 治験責任医師の見解では試験手順の安全性又は順守に影響を与え得る、任意の他の医学的、社会的、又は心理社会的因子を有する
11. 試験処置の開始の2年以内の、全身処置を必要とする別の悪性腫瘍の証拠を有する
12. ファーストライン導入療法(すなわち、トラスツズマブ、ペルツズマブ、及びタキサン)に由来する進行中の≧グレード2の毒性を有する、以下を除く:脱毛症、神経障害、及び爪毒性
13. 進行中の≧グレード2の下痢を有する
14. CNS除外基準 - 脳MRI及び臨床的評価のスクリーニングに基づいて、対象は以下のいずれも有していてはならない:
a. 症候性脳転移
b. ファーストラインのトラスツズマブ、ペルツズマブ、及びタキサンを開始して以降の脳転移の進行
c. 全身コルチコステロイドの、>2mgのデキサメタゾン(又は当量)の1日総量での継続使用。併存疾患(例えば、喘息又は自己免疫疾患)の抑制のために全身ステロイドを必要とする対象については、1日用量は、2mgデキサメタゾン(又は当量)を超えてはならない。
d. 対象にリスクをもたらし得る、解剖学的部位における任意の未処置の脳病変(例えば、脳幹病変)。このような病変に対する局所処置を成功裏に受ける対象は、脳病変がなければ適格である場合、メディカルモニターとの話し合い及び該メディカルモニターによる承認後に、再審査することが許可され得る。
e. 治験責任医師により文書で記録された既知の又は疑わしい軟膜疾患(LMD)
f. 脳転移に対するCNS指向療法にもかかわらず、コントロール不良の(>1/週)発作、又は他の持続性の神経学的症状。
【0226】
対象の試験処置は、以下の理由のいずれかにより中止することができる:
- 進行性疾患(CNSのみの進行性疾患は許容される)
- 有害事象(AE)
- 妊娠
- 治験責任医師の決定(非AE)
- 対象の決定(非AE)
- 治験依頼者による試験終了
- その他(非AE)
進行の非存在下では:
- 薬物関連毒性によりトラスツズマブ及びペルツズマブを中止する対象は、ツカチニブ/プラセボのみは受け続けてもよい。
- ツカチニブ/プラセボを中止する対象は、トラスツズマブ及びペルツズマブは受け続けてもよい。
- 対象がトラスツズマブ又はペルツズマブを中止する場合、両方を中止することが求められる。
【0227】
ツカチニブのトラフ薬物レベルのPK評価のための血液サンプルは、全ての対象において、サイクル2~6の1日目(ツカチニブの投与前)及び処置の終了(EOT)時に収集される。サイクル3の1日目には、ツカチニブのピークレベルのPK評価は、ツカチニブの投与の1~4時間後に行われる。ツカチニブの血漿濃度は、検証されたLC-MS/MS法を使用して決定される。
【0228】
バイオマーカーパラメータ(例えば、ベースライン値、ベースラインからの絶対的変化及び相対的変化)と、有効性、安全性及びPKパラメータとの関係は、末梢血及び腫瘍組織において探索することができる。奏効及び/又は抵抗性の観測値と関連する探索的、予測的、及び予後的バイオマーカーは、ツカチニブによる処置の前及び後にモニターすることができる。標的-奏効の関係、予測的/予後的バイオマーカー、MOA、抵抗性機構、及び薬力学のより優れた理解を得るために、相関性研究を行うことができる。
【0229】
対象は、登録前のサンプルにおける免疫組織化学(IHC)及び蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって決定されるHER2状態を有する。バイオマーカー評価は、奏効の潜在的なバイオマーカーとしての突然変異の探索的評価を含み得る。さらなる解析、例えば、限定するものではないが、IHC又は次世代シーケンシング(NGS)などを行って、腫瘍増殖、生存、及び標的療法に対する抵抗性に関連するバイオマーカーを調べることができる。この評価は、さらなるバイオマーカーと処置転帰との相関を可能とし得、最終的には、将来的にツカチニブレジメンを腫瘍表現型/遺伝子型により良く適合させるための対象選択戦略を導くか又は改善することができる。
【0230】
臨床的活性の探索的バイオマーカーは、スクリーニング時及びEOT時に収集された血液サンプル中で評価することができる。無細胞ctDNAのシーケンシングなどのレトロスペクティブ探索的解析を行って(遺伝子解析に同意した対象において)、可能性のある処置に対する抵抗性の機構との関連性及び試験処置に関連する動態変化を調査することができる。
【0231】
奏効は、固形腫瘍における奏効を評価するための標準化された基準であるRECIST v1.1に従って評価される。腫瘍のためのスケジュールは、腫瘍抑制の測定(また従って、試験処置を継続することの適切性)と、画像診断の負担とのバランスをとる。この試験において使用される安全対策は、試験薬の潜在的な有害作用を評価するための標準的な手順であると考えられる。臨床的に適切であれば、さらなる安全性評価を行うことができる。AE及び臨床検査室データは、腫瘍学のための標準化された基準(NCI CTCAE version 5.0)を用いて段階分けされる。薬物動態評価は、用量-曝露-応答関係の特徴付けを補助するための臨床研究において一般的である。EQ-5D-5Lは、HRQoLの尺度として使用するための検証された手段である。このPROは、対象におけるHRQoLを定量することを目的とする先の臨床試験に組み込まれている。QLQ-C30(Version 3.0)は、がん対象のQoLを評価するために欧州がん研究治療機関(EORTC)により開発された検証された質問票である。これらのPROは、対象におけるQoLを定量することを目的とする先の臨床試験に組み込まれている。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2A
図2B
図2C
図2D
【配列表】
2023543261000001.app
【国際調査報告】