(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】車両による熱中症又は低体温症を回避するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01V 8/12 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01V8/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519286
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2020077018
(87)【国際公開番号】W WO2022063414
(87)【国際公開日】2022-03-31
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523108452
【氏名又は名称】プフェッファー・リヒャルト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】プフェッファー・リヒャルト
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105DD02
2G105EE06
2G105HH01
(57)【要約】
車両の内部空間を監視するための方法であって、当該方法は、以下の、
-前記車両の内部空間内に生体が居ることを少なくとも1つの赤外線センサによって自動的に認識する方法ステップと、前記内部空間に居る前記生体の体温を前記赤外線センサによって1つの時間間隔内に自動的に複数回計測する方法ステップと、当該計測された体温の値に基づいて危険を自動的に認識する方法ステップと、危険が認識されたときに、措置を自動的に開始する方法ステップとを有し、当該居ることの認識、当該体温の計測、当該危険の認識及び当該措置の開始が、前記車両のデータ処理装置によって実行され、このデータ処理装置は、赤外線センサ信号又は赤外線センサデータを前記赤外線センサから受信し処理する当該方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内部空間を監視するための方法であって、当該方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
-前記車両(1)の内部空間(2)内に生体が居ることを少なくとも1つの赤外線センサ(9A-11B)によって自動的に認識する方法ステップ(II)と、
-前記内部空間(2)に居る前記生体の体温を前記赤外線センサ(9A-11B)によって1つの時間間隔内に自動的に複数回計測する方法ステップ(III)と、
-当該計測された体温の値に基づいて危険を自動的に認識する方法ステップ(IV)と、
-危険が認識されたときに、措置を自動的に開始する方法ステップ(V)とを有し、
当該居ることの認識(II)、当該体温の計測(III)、当該危険の認識(IV)及び当該措置の開始(V)が、前記車両(1)のデータ処理装置(12)によって実行され、このデータ処理装置(12)は、赤外線センサ信号又は赤外線センサデータを前記赤外線センサ(9A-11B)から受信し処理する当該方法。
【請求項2】
前記赤外線センサ(9A-11B)は、前記赤外線センサ(9A-11B)の検出範囲内の複数の温度帯を識別することを可能にする赤外線センサ信号又は赤外線センサデータを送信する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データ処理装置(12)は、少なくとも1つの固有の温度帯パターン及び/又は特に固有の温度帯パターンの固有の変化を検出することによって、生体が、前記車両(1)の内部空間(2)に居ることを認識し、特に前記温度帯パターン及び/又は前記温度帯パターンの変化に基づいて動物又は人を識別する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記データ処理装置(12)は、前記生体を認識した赤外線センサ信号又は赤外線センサデータごとに前記生体の体温をこれらの赤外線センサデータから算出する請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
当該算出された体温の複数の値のうちの少なくとも1つの値が、閾値を超えることによって、又は、当該算出された体温の値の傾向が、危険な兆候を呈することによって、前記データ処理装置(12)は、危険を当該算出された体温の値に基づいて確認する請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記赤外線センサ(9A-11B)は、前記内部空間(2)の連続する複数の熱画像の静止画又は熱画像の動画を送信するように使用される赤外線カメラとして実現されていて、
前記複数の熱画像の静止画又は前記熱画像の動画は、前記赤外線センサ信号又は前記赤外線センサデータによって表示されている請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの赤外線センサ(9A-11B)の検出範囲が、前記車両(1)の乗客輸送用に割り当てられた客室の内部空間(2)の座席領域と足元領域とを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの赤外線センサ(9A-11B)の検出範囲が、前記車両(1)の動物輸送、荷物輸送及び/又は貨物輸送用に割り当てられた内部空間(2)を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの赤外線センサ(9A-11B)又は複数の赤外線センサ(9A-11B)が、前記車両のAピラー(6)及び/又はBピラー(7)及び/又はCピラー内と、トランクルームリッド内とに設置されていて、前記赤外線センサ(9A-11B)の検出範囲によって前記車両の内部空間(2)を検出する請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
-前記車両(1)の外側の外気温度を外気温度センサ(15A)によって自動的に外気温度検出し、
-前記車両(1)の内部空間(2)内の内部温度を内部温度センサ(15B,15C)によって自動的に内部温度検出し、
-前記データ処理装置(12)は、外部温度センサ信号又は外部温度センサデータを前記外部温度センサ(15A)から受信し、内部温度センサ信号又は内部温度センサデータを前記内部温度センサ(15B,15C)から受信し、前記車両(1)の内部空間(2)内の温度推移を当該信号又はデータから予測し、前記内部温度推移のこの予測を前記危険の認識(IV)に織り込む請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記データ処理装置(12)は、前記車両(1)の移動通信装置(14)を使用して現在の気象状態及び/又は将来の気象状態に関する気象データを気象サービスセンターから問い合わせ、前記車両(1)の内部空間(2)内の温度推移を当該気象データから予測し、前記内部温度推移のこの予測を前記危険の認識(IV)に織り込む請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記内部温度推移の予測は、前記車両(1)の内部空間(2)に対する前記温度推移の一般的なデジタルモデル又は前記車両(1)の内部空間(2)の前記温度推移の種類に固有の若しくはパターンに固有のデジタルモデルに基づいて実行され、前記内部温度の時間推移を予測するため、前記データ処理装置(12)が、当該それぞれのモデルをデジタル記憶し、当該予測のために使用する請求項10~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記データ処理装置(12)による前記措置の開始(V)には、以下に挙げられたグループ、すなわち、
-特に既定のメッセージを受信装置、特に前記車両(1)のユーザ又は所有者に割り当てられた携帯機器、特に好ましくはスマートフォンに無線送信することと、
-特に、車両窓を少なくとも部分的に自動的に開放若しくは開くことによって、又は車両ドア又はトランクルームリッド若しくはトランクルームドアを自動的に開くか又は開錠することによって、前記車両(1)の内部空間(2)を開くことと、
-窓ガラス又はドアを閉めること又は閉めたままにすることと、
-前記車両(1)の内部空間(2)を換気するための換気システムを作動させることと、
-前記車両(1)の内部空間(2)を暖房するか又は暖房を維持するための前記車両(1)の暖房システムを作動させることと、
-前記車両(1)の音響警報を作動させることと、
-位置データを前記車両(1)の測位システムによって検出し、当該位置データを受信装置に無線送信することと、
-緊急通報センターとの無線通信接続を構築することと、
-状況に固有の情報又はデータをデータサーバ、特に緊急通報センターのデータサーバに無線送信することと、
のうちの少なくとも1つの動作がある請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記状況に固有の情報又はデータには、以下に挙げられたグループ、すなわち、
-前記車両(1)の内部空間(2)内の認識された生体の数と、
-前記車両(1)の内部空間(2)内の認識された生体の位置情報と、
-前記車両(1)の内部空間(2)内に居る期間と、
-前記車両(1)の内部空間温度と、
-前記車両(1)の外気温度と、
-当該認識された生体の体温と、
-緊急医への通報の必要性に関する自動判定と、
-前記車両(1)の位置データと、
-前記車両を確認するための情報データと、
-前記少なくとも1つの赤外線センサ(9A-11B)の赤外線センサ信号又はデータを示すリアルタイムデータと、
のうちの少なくとも1つの要素がある請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のうちのいずれか1項に記載の方法を実行するために構成されている、車両の内部空間を監視するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内の内部空間を監視するための方法及びこのような方法を実行するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
統計は、車両内の生体の過度の体温上昇による死亡の危険が看過できない事態であることを証明している。すなわち、例えばアメリカ合衆国では、1998年~2020年の期間に、約855人の人が、車両内の温度上昇の影響によって死亡している。子供が、特に被害を受けやすい。例えば、子供が、車両内に故意に置き去りにされるか若しくは単に忘れられるか、子供自身が、車両内に入り込むときに、当該子供の体温が、大人に比べて非常に早く過度に上昇する(例えば、Pediatric Vehicular Heatstroke Report, Kids in Hot Cars,National Safety Council|1121 Spring Lake Drive|Itasca,IL 60143-3201|(800)723-3643|nsc.org参照)。
【0003】
このような死亡を回避するため、幾つかの特別な措置が、従来から既に講じられている。すなわち、例えば、
-独国実用新案登録第202015000305号明細書は、幼児用シート用の後付け可能な電子安全システムを開示する。この場合、幼児用シートに取り付けられた送信機とハンディアプリ(Handy-App)とから成る組み合わせが使用される。
-独国特許出願公開第102012206535号明細書は、車両内に取り付けられた子供乗車感知システム及び注意喚起システムを開示する。この場合、モーションセンサが監視され、このモーションセンサが起動されると、このモーションセンサは、車両内に配置されているチャイルドシート内の子供の存在を表示(指示)する。
-独国特許出願公開第102014216569号明細書は、人又は動物が自動車内に居るときに、停止しているこの自動車から離れる運転者に警告するための方法を開示する。
-独国実用新案登録第202013103689号明細書は、子供を自動車内に置き去ることを回避するためのシステムを開示する。この場合、セキュリティーモジュールが、携帯電話に接続されていて、この携帯電話が、このセキュリティーモジュールから遠く離れたときに、警報が発せられる。
-独国実用新案登録第202019005079号明細書は、子供を自動車内に置き去ることを回避するためのセキュリティーシステムを開示する。この場合、シートパッドとして構成されていて、警報用の起動スイッチとして使用される存在感知センサが使用される。
-独国特許出願公開第102018000689号明細書は、警報方法を開示する。この警報方法の場合、車両の使用されている後部座席が認識され、且つさらなる条件が満たされているときに、警報情報が、移動端末装置に出力される。
【0004】
これらの全ての措置が、潜在的な危険状況の非常に限定された検出を利用するか又は潜在的な危険状況を確定するための間接的な兆候を警報するための根拠として利用する点で、これらの全ての措置は共通する。
【0005】
それ故に、この公知の措置の適用の下では、生体が車両内に居るのに、警報が発せられないことが起こり得る。しかしながら、これは、当該適用される措置によって認識されない。したがって、この公知の措置でも、最悪の場合に過度な体温上昇による死亡さえも引き起こす、生命を脅かす状況を依然として排除することができない。しかしながら、この公知の措置を適用することによって、誤報も発せられ得る。その結果、この公知の措置は、公共の救命装置を起動させることを依然として阻害していた。何故なら、比較的高い頻度の誤報が、一方では緊急隊員を拘束し、他方ではコストも上昇させるからである。また、この措置を故意に無視することもでき、又は、この措置に過失で気づかないこともある。これにより、当該警報システムは機能しないままであり、生命を脅かす状況が全く把握され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国実用新案登録第202015000305号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102012206535号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102014216569号明細書
【特許文献4】独国実用新案登録第202013103689号明細書
【特許文献5】独国実用新案登録第202019005079号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102018000689号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、上記の課題が回避されるように、改良された方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。
【0009】
それ故に、この発明の対象は、車両の内部空間を監視するための方法である。この場合、当該方法は、以下の方法ステップ、すなわち、当該車両の内部空間内に生体が居ることを少なくとも1つの赤外線センサによって自動的に認識する方法ステップと、当該内部空間に居る当該生体の体温を当該赤外線センサによって1つの時間間隔内に自動的に複数回計測する方法ステップと、当該計測された体温の値に基づいて危険を自動的に認識する方法ステップと、危険が認識されたときに、措置を自動的に開始する方法ステップとを有する。この場合、当該居ることの認識、当該体温の計測、当該危険の認識及び当該措置の開始が、当該車両のデータ処理装置によって実行され、このデータ処理装置は、赤外線センサ信号又は赤外線センサデータを当該赤外線センサから受信し処理する。
【0010】
さらに、この課題は、請求項15に記載のシステムによって解決される。それ故に、この発明の対象は、本発明の方法を実行するために構成されている、車両の内部空間を監視するためのシステムである。
【0011】
本発明の措置には、潜在的な危険状況の限定された(例えば、シートベルトに固定された心拍センサによる)検出が頻繁に使用され、他方では潜在的な危険状況を(シートパッド又は座席の使用の監視によって)確定するための間接的な兆候が頻繁に使用される公知の措置とは違って、的確である一方で直接的な主パラメータ、すなわち生体の体温に完全に適合された本発明の方法又はシステムが使用されるという利点がある。
【0012】
すなわち、生体の体温は、まず生体が車両の内部空間内に居ることを直接に識別するための主パラメータとして使用される。続いて、体温の主パラメータを使用した危険の認識又は危険のが、車両内に居ることが1つの時間間隔にわたって識別された当該生体の体温を観察することによって実行される。
【0013】
したがって、当該危険の認識又は危険のは、生体が車両の内部空間内に居ることを認識するために利用されることもある体温の直接的な主パラメータによって実行され得る。すなわち、当該主パラメータは二重に利用される。
【0014】
これは、例えば座席が使用されていること又は呼吸周期のような、公知の措置において一方では当該居ることを認識するために使用され、他方では別のバイタルパラメータを評価するために、すなわち車両の内部空間内の生体の体温を間接的に評価するために使用される間接的なパラメータによる誤った解釈を完全に排除することができることを意味する。それ故に、車両の内部空間内に居る生体の身体の気づかない過度な体温上昇及び過度な体温低下が完全に排除され得る。
【0015】
本発明の別の特に好適な実施の形態及び別の構成は、従属請求項及び以下の説明に記載されている。或るカテゴリーの請求項に関して記載された利点及び作用は、それぞれのカテゴリーの請求項で適切に適合された別のカテゴリーの請求項に記載の手段に対しても存在することが、異なるカテゴリーの請求項に関して言える。
【0016】
しかしながら、主パラメータに基づく危険の認識又は危険は、別の副パラメータを使用して補足又は改良され得る。車内の生体の体温の時間推移、すなわち主パラメータに直接に影響するパラメータが、当該副パラメータに属する。それ故に、当該副パラメータとして、例えば、車両の外側の外気温度、車両内の内部温度又は車両の存在地点の気象状態に関する気象データを挙げることができる。全てのこれらの副パラメータは、車両の内部空間の温度推移に影響し、したがって生体の体温の時間推移に直接に影響する。以下に、当該副パラメータの内容を共通の記載の適切な箇所でさらに詳しく説明する。
【0017】
しかしながら、当該副パラメータに関して留意すべきは、当該副パラメータは、複数の主パラメータを複数の副パラメータと任意に組み合わせて使用され得るか、又は一群の複数の異なる副パラメータを1つの主パラメータと組み合わせることによって使用され得る点である。
【0018】
この特許出願に関しては、車両の用語は、広く解釈され得て、したがって、例えば飛行機又はヘリコプターのような航空機、鉄道車両、道路車両、船舶、ゴンドラ等と解釈され得る。したがって、例えば道路車両では、一般に、リムジン、ステーションワゴン、バン若しくはSUV等として構成された自家用自動車(PKW)又はトレーラを有する若しくはトレーラを有しない貨物自動車(LKW)を挙げることができる。
【0019】
一般的に且つ包括的に言うと、このような車両は、生体が規則通りに得るか又は潜在的に予測不能に得る様々な内部空間領域、内部空間区間又は内部空間部分に分類され得る内部空間を有する。したがって、例えばリムジンの形態の自動車では、客室の内部空間領域内の例えば4~5の人が、これらの人のために設けられている座席上でスペースを規則通りに占有する。しかしながら、例えば(例えば犬、猫又は例えばハムスターのような小動物のような)ペットが意図的に、大抵は規則通りにトランクルームの内部空間領域内に運び込まれることは排除することができない。また、子供が、駐車された自動車内で遊んでいるときに、後部座席の中央の座席開口部を腹ばいになって通過してトランクルーム内に侵入するか又は座席をよじ登って当該トランクルームに予測不能にることも起こり得る。自動車ドアが、チャイルドロックによって内部空間から開けられないようにロックされているので、自力で車両から出ることは事実上不可能である。
【0020】
一方で、本発明の措置によれば、上記のように様々な内部空間領域、内部空間区間又は内部空間部分に分類され得る車両の内部空間内の全ての生体を追跡すること、及び当該生体の体温をほぼ自動的に連続して監視することが容易である。それ故に、様々な形態で市場において入手可能である上記の赤外線センサが主に使用される。好ましくは、少なくとも1つの赤外線センサが、車両のそれぞれの内部空間領域ごとに使用される。当該赤外線センサは、当該それぞれの内部空間領域をその検出範囲によって完全に検出できる。これが保証されない場合は、(例えば、検出すべき内部空間領域に対してそれぞれ最適化されている様々な検出範囲を有する)複数の赤外線センサが、車両の内部空間内で使用されてもよい。これは、例えば、客室の複数の座席のそれぞれの座席領域が1つの赤外線センサによって良好に検出可能であるが、例えば、当該それぞれの座席領域に対応する足元領域が検出し難いか又は全然検出できない場合に有益であり得る。同じことが、例えば、人の輸送に直接使用されない一般的な自動車のトランクルーム(総称して収納空間)に対して成立し、場合によってはエンジンルームに対しても成立する。それ故に、バス又は貨物自動車又は一般的な別の車両では、ここで最終的に挙げられなかった上記の赤外線センサを備える別の内部空間領域が考慮されてもよい。
【0021】
これに関連して、赤外線センサが、複数の温度帯を識別することを可能にする赤外線センサ信号又は赤外線センサデータを送信することが有益であると実証されている。したがって、当該赤外線センサは、その検出範囲の画素分解能を提供できる。例えば、当該赤外線センサの検出範囲が、例えば60°~例えば180°の範囲内、好ましくは例えば90°~120°の範囲内の開口角を成す円錐形を描くように、当該赤外線センサの検出範囲が構成(すなわち、形成又は設計)され得る。また、例えば様々な内部空間領域の状況に適応する別の検出範囲が規定されてもよい。したがって、内部空間の内壁に対して適切に位置決めした場合に、例えば、客室の座席列の全体が検出され得るか又は車両の別の内部空間領域の該当する内部空間の下にある内壁も検出され得る。異なる表面パラメータを有する複数の物体が、当該画素分解能によって互いに識別又は区別され得る。したがって、例えば、太陽光が直接に入射するときの客室の窓の温度は、当該客室又は当該客室に配置されたアセンブリの別の内壁領域よりも遥かに高くなり得る。これに対して、外気温度が低いときの窓の温度は、例えば温められた座席面よりも著しく低い。また、当該例示された複数の物体は、少なくとも窓が閉められていて且つドアが閉められている場合は当該赤外線センサに対して常に互いに一定の位置に存在する。これは、これらの物体の一義的な認識を可能にする。したがって、生体が、当該例示された赤外線センサの検出範囲内の複数の物体とは違って出現する固有の熱特性を引き起こすので、当該生体も、明確に認識され得る。一般に、生体は、客室の内部空間の包囲している内壁の温度よりも高いか又は低い平均温度推移又は平均温度値を呈する熱特性を有し、当該生体は、当該生体の身体によって当該客室内の別の物体(例えば、座席面)と当該客室、すなわち当該内部空間の外部境界(例えば、窓、床、ルーフ、...)とをマスクする。その結果、当該生体は、良好に識別可能である。一般に、当該生体は、均一で且つ背景に対して多くの場合に良好に区別された熱特性を有する移動領域として出現する。したがって、当該赤外線センサは、当該内部空間の生体に隣接した検出可能な物体又は当該内部空間の境界(当該物体及び当該境界は、ほぼ一定の位置で検出され、当該物体及び当該境界の構成は変化しないで、当該赤外線センサから見て当該生体によってマスクされるにすぎないか又は当該生体の影で覆われるにすぎない)に対するものとは違う固有の赤外線センサ信号又は赤外線センサデータを、当該生体の検出範囲内の当該生体に対して送信する。温度の固有の数値範囲内で変動する熱特性を除いて、生体が、眠っていないか又は意識を失っていない限り、一般に、当該生体の熱特性は、少なくとも部分的に又は特定の場所で変動する。当該赤外線センサは、例えば一群の個別センサとして構成され得て、アナログ赤外線センサ信号を送信できる。しかしながら、好ましくは、当該赤外線センサは、複数のセンサ素子から成るアレイを有する半導体集積センサとして構成されていて、デジタル赤外線センサデータを出力することを可能にさせるただ1つの信号処理部を有する。
【0022】
当該赤外線センサから出力される赤外線センサ信号又は赤外線センサデータは、車両内でデータ処理装置によって処理される。当該処理は、対応する別のアナログ電子部品又はデジタル電子部品を備え、ソフトウェアが処理されるマイクロコンピュータによって実行され得る。好ましくは、マイクロコントローラ又は特定用途向け集積回路(ASIC)が使用される。また、独立したデータ処理装置の代わりに、以下で説明する機能が、車両の車載コンピュータによって提供されてもよい。その結果、ここで説明されているデータ処理装置が、この車載コンピュータによって実現可能である。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの固有の温度帯パターン及び/又は特に固有の温度帯パターンの固有の変化を検出することによって、生体が、当該車両の内部空間にることを認識し、特に当該温度帯パターン及び/又は当該温度帯パターンの変化に基づいて動物と人とをするように、当該データ処理装置は、対応するソフトウェアプログラミング又はハードウェア実装によって構成されている。このため、当該データ処理装置は、赤外線センサ信号又は赤外線センサデータを分析し、様々な温度帯パターンをし、1つの生体又はこの生体に固有の運動に適合するパターンを認識するため、当該された温度帯パターンを記憶されたパターン又は運動パターンと比較する。特に、人と動物とが、当該パターンの異なる形によって、そして異なる運動推移又は当該パターンにおける変化によってされ得る。
【0024】
データ処理装置が、生体の存在を確認すると、当該生体を認識した赤外線センサ信号又は赤外線センサデータに対して、当該生体の体温が、このデータ処理装置によって当該赤外線センサデータから算出される。当該体温を当該赤外線センサデータから算出するため、このデータ処理装置は、当該生体のパターンから当該生体を自動的に推測する。このため、当該赤外線信号又は当該赤外線センサデータの値と当該温度との関係が、例えばケルビン、華氏又は摂氏のようなその都度対象となる単位でこのデータ処理装置内に事前に記憶されている。生体を示すパターンの限界未満の温度の値を平均することによって、当該(表面)温度が、当該生体の体温に対する少なくとも1つの兆候として直接に算定され得る。
【0025】
引き続き、当該体温の算出された複数の値のうちの少なくとも1つの値が閾値を超えることによって、又は、当該体温の算出されたこれらの値の傾向が危険特性を呈することによって、危険が、当該体温の算出されたこれらの値に基づいてこのデータ処理装置によって識別される。この閾値は、例えば39℃のような既定の最大温度値でもよく、又は医学で規定された別の値でもよい。同じことが、既定の最小温度に対しても同様に成立する。当該傾向の危険特性、すなわち当該体温の変化又は変化率は、例えば、より高い値又はより低い値に向かう体温の変化速度でもよく、特に単位時間あたりに限界値又は閾値に接近する速度でもよく、又は当該温度の曲線形状でもよく、当該曲線の一次微分、すなわち勾配でもよく、又は将来に対して予測される推移でもよい。このような曲線形状は、1つの当該温度又は複数の当該温度の複数の測定値から直接に生成され得る。しかしながら、これらの測定値が、基本的に公知の様々な数学的方法によって最初に適合されることが有益であり得る。すなわち、当該数学的方法は平滑曲線でもよい。その結果、この平滑曲線の微分が、特定の期間にわたる温度勾配を推測し、統計上の(Ausreissern)による誤った解釈が排除されている。また、この場合、異なる複数の危険レベルを既定し、これに応じて段階的な動作の開始を実行するため、段階的な複数の閾値又は段階的な複数の特性が使用されてもよい。また、当該複数の閾値又は当該複数の危険特性は、動作中に例えばソフトウェアを更新することによって適合され得る。
【0026】
特に好ましくは、赤外線センサは、当該内部空間の連続する複数の熱画像の静止画又は熱画像の動画を送信するように使用される赤外線カメラとして実現されている。この場合、当該複数の熱画像の静止画又は当該熱画像の動画(すなわち、ビデオシーケンス又は連続する映像)は、当該赤外線センサ信号又は当該赤外線センサデータによって表示されている。特に、この種類のサーモグラフィ表示は、こうして得られた車両の内部空間の画像のさらなる使用に関してデータ処理装置によるより詳しい分析を可能にする。したがって、これらの画像では、生体自体が識別され、その体温自体が算定され得るだけではなくて、当該画像シーケンスを分析することによって、当該生体が、例えば、パニックを起こしているか、又は活動していないか、又は場合によってはそれどころか既に完全に意識を失っているかも推測され得る。
【0027】
上記のように、少なくとも1つの赤外線センサの検出範囲は、当該車両の乗客輸送用に割り当てられた客室の内部空間の座席領域と足元領域とを含むことが利点である。したがって、座席面上に居なくて、-何らかの理由で-それぞれの座席又は座席列の足元領域内に居るより小さい動物又は子供も検出され得る。これは、客室の高さの全体及び容積の全体の検出を可能にし、したがって車両の客室の収納空間の高さの全体及び容積の全体の検出も可能にする。
【0028】
上記のように、車両の内部空間は、さらに別の領域又は区域も客室として含み得る。それ故に、当該少なくとも1つの赤外線センサの検出範囲が、当該車両の動物輸送、荷物輸送及び/又は貨物輸送用に割り当てられた内部空間を含むことが利点である。当該内部空間は、トレーラの貨物用スペースでもよい。この場合、該当する赤外線センサの赤外線センサ信号又は赤外線センサデータにアクセスするため、当該赤外線センサは、有線式に又は無線式に当該車両自体内に存在するデータ処理装置に接続される必要がある。また、この内部空間を検出するため、当該赤外線センサは、当該車両のトランクルーム内に取り付けられ得る。場合によっては起こり得る積み荷によって遮られることの危険が可能な限り低減されるように、特にトランクルーム内では、それぞれ1つの赤外線センサが、左側と右側とに取り付けられていることが有益であり得る。トランクルームリッド又はトランクルームドアの蓋領域も、センサを設置するために適している。
【0029】
車両の内部空間としての客室に関しては、少なくとも1つの赤外線センサ又は複数の赤外線センサが、Aピラー及び/又はBピラー及び/又はCピラー及び/又はDピラー内と、当該車両のトランクルームリッド内とに設置されていて、当該赤外線センサの検出範囲によって当該車両の内部空間を検出することが有益であると実証されている。したがって、内部空間内での検出を不可能にする検出の遮りが、それぞれの検出範囲の適切な位置決めと適合と限定とによって、ほぼ完全に、少なくとも要求される範囲内で、確実に回避され得る。
【0030】
上記のように、複数の赤外線カメラが設けられ得る。また、複数の赤外線センサが、それらの検出範囲に関するグループごとに部分的に重なっていてもよい。また、個々の赤外線センサ信号又は赤外線センサデータを互に比較することで、誤った解釈又は誤った警報を回避するため、多数の赤外線センサが使用されてもよい。
【0031】
外気温度も、また多くの場合に外気温度と車両の内部温度との差も、危険を確認するときに重要な役割を果たすので、すなわち内部空間の温度上昇状況及び温度低下状況が、これらの両パラメータに依存するので、当該車両の外側の外気温度を外気温度センサによって自動的に外気温度を検出し、当該車両の内部空間内の内部温度を内部温度センサによって自動的に内部温度検出し、当該データ処理装置は、外部温度センサ信号又は外部温度センサデータを当該外部温度センサから受信し、内部温度センサ信号又は内部温度センサデータを当該内部温度センサから受信し、当該車両の内部空間内の温度推移を当該信号又はデータから予測し、当該内部温度推移のこの予測を当該危険の認識に織り込むことがさらに有益であると実証されている。
【0032】
また、当該データ処理装置は、当該車両の移動通信装置を使用し得て、(当該車両の現在位置又は移動中の現在位置の推移を考慮した当該車両の将来の現在位置での)現在の気象状態及び/又は将来の気象状態に関する気象データを気象サービスセンターから得て、当該車両の内部空間内の温度推移を当該気象データから予測し得て、当該内部温度推移のこの予測を当該危険の認識に織り込み得る。
【0033】
車両の内部空間内の予測された温度推移は、上記のように幾つかの環境パラメータに依存する。しかしながら、当該内部空間内の温度が、どのように実際に推移するかは、構造及び車両の特徴も関与する。したがって、太陽光が、強く入射する場合でも、例えば、客室の断熱又は断熱ガラス又は内部のブラインド等が、内部空間の非常に急激な温度上昇を阻止できる。それ故に、当該内部温度推移の予測が、当該車両の内部空間用の当該温度推移の一般的なデジタルモデル又は当該車両の内部空間の当該温度推移の装置に固有の若しくは特別仕様のデジタルモデルに基づいて実行され、当該内部温度の時間推移を予測するため、当該データ処理装置が、当該それぞれのモデルをデジタル記憶し、当該予測のために使用することが有益であり得る。その結果、当該内部温度の推移が、どの時点で危険を認識しなければならない危険要因になるかを正確に予測することが可能になる。これらのモデルは、コンピュータシミュレーションによって、又は実際の車両での測定によって作成され得る。
【0034】
生体に対する危険が、当該データ処理装置によって識別又は予測的に予測されると、当該生体に対する危険又は当該危険の結末を回避するため、措置が、当該データ処理装置によって実行される。この場合、当該データ処理装置による当該措置の開始には、以下に挙げられたグループのうちの少なくとも1つのがある。すなわち:
-特に既定のメッセージを受信装置、特に当該車両のユーザ又は所有者に割り当てられた携帯機器、特に好ましくはスマートフォンに無線送信すること。この場合、車両のデータ処理装置に接続された移動無線通信モジュール(例えば、GSM、UMTS、LTE、LTE+又は5Gモジュール等)が使用され得る(GSMは、「Global System for Mobile Communications(汎欧州デジタル移動電話方式)」を示し、UMTSは、「Universal Mobile Telecommunications System(ユニバーサル移動体通信システム)」を示し、LTEは、「Long Term Evolution(ロング・ターム・エヴォリューション)」を示す)。当該移動無線通信モジュールは、当該メッセージを受信者に送信する。
-特に、車両窓を少なくとも部分的に自動的に開放若しくは開くことによって、又は車両ドア又はトランクルームリッド若しくはトランクルームドアを自動的に開くか又は開錠することによって、当該車両の内部空間を開くこと。このため、対応する電子制御信号が、当該動作を実行するそれぞれの電動アクチュエータに送信される。車両ドア又はトランクルームリッドの開錠時に、開錠が実行されたことを乗員に知らせる光学情報又は音響情報が続く。
-窓ガラス又はドアを閉めること又は閉めたままにすること。これは、寒さによって引き起こされる過度の体温低下の危険の場合に有益であり得る。
-当該車両の内部空間を換気するための換気システムを作動させること。当該作動は、当該内部空間に流れる空気を制御する換気システム(例えば、送風機又は空調機)の制御装置又は調整装置への作動信号によって実行される。当該空調機は、認識された危険に応じて冷房又は暖房できる。
-当該車両の内部空間を暖房するか又は暖房を維持するための当該車両の暖房システムを作動させること。特に寒い日には、当該車両内の生体の過度な体温低下を回避するため、例えばブロックヒーターが、この状況において作動され得る。
-当該車両の音響警報を作動させること。このため、警音器(シグナルホーン)が、適切な制御信号によって自動的に起動され得るか、又は当該車両の警報装置も起動され得て、例えば、特別な注意を起こさせる音響信号が生成され得る。
-位置データを当該車両の測位システムによって検出し、当該位置データを受信装置に無線送信すること。このため、地理座標(GPS座標)が、当該車両のGPSシステム(GPSは、「Global Positioning System(全地球測位システム)」を示す)によって要求され、例えば、当該車両の移動無線通信モジュールを介して受信者に送信される。
-緊急通報センターとの無線通信接続をすること。このため、同様に、上記の車両の移動無線通信モジュールが使用され、例えば、当該内部空間内の人の状態を問い合わせるため、又は、当該内部空間内の人に話しかけて緊張を和らげるため、例えば、当該車両の内部空間と緊急通報センターとの間の音声電話の電話接続又はIP電話接続がされる。
-状況に固有の情報又はデータをデータサーバ、特に緊急通報センターのデータサーバに無線送信すること。
【0035】
当該状況に固有の情報又はデータには、以下に挙げられたグループ、すなわち、
-当該車両の内部空間内の認識された生体の数と、
-当該車両の内部空間内の認識された生体の位置情報と、
-当該車両の内部空間内に居る期間と、
-当該車両の内部空間温度と、
-当該車両の外気温度と、
-当該認識された生体の体温と、
-緊急医への通報の必要性に関する自動判定と、
-当該車両の位置データと、
-例えばマーク、型式、登録標識、初登録年日などの、当該車両をするための情報データと、
-当該少なくとも1つの赤外線センサの赤外線センサ信号又はデータを示すリアルタイムデータと、
のうちの少なくとも1つの要素があり得る。
【0036】
全てのこれらの状況に固有の情報又はデータは、当該緊急通報センターを状況に合わせて対応させること、特に状況に合った適正な緊急隊員(消防隊員だけ、消防隊員及びレスキュー隊員、消防隊員及びレスキュー隊員及び緊急医等)を現場へ向かわせること、及び関連情報を当該現場に向かわせた緊急隊員に既に事前に提供することを可能にする。十分に拡張されたバリエーションでは、赤外線カメラの生配信が、該当する車両から救助に向かう緊急車両内に、又は緊急隊員及び/又は緊急通報センターの移動端末装置(ラップトップ、タブレットコンピュータ、スマートフォン等)に直接に確立されてもよい。したがって、緊急隊員は、現場への当該緊急隊員の到着前に既に当該車両の内部空間内の生体のその都度の状況の完全な画像を入手し、当該現場に到着したときに直ちに且つ的確に救助に当たり得る。同様に、当該現場での実際に必要な応急手当又は緊急治療も、事前に決定され計画され得て、当該現場への到着時と生体の救助又はレスキュー後とに即座に実行され得る。また、緊急隊員は、何人の人が事故の時点で当該車両内に居るかを容易に確認でき、事故に合った人が、その事故後に行方不明になっているか否かを容易に確認できる。何故なら、当該事故に合った人は、例えば、アドレナリンの分泌によるショック状態で逃げ出すか又は気が動転してさまようからである。
【0037】
さらに、救助サービスプロバイダによるクラウドベースの全自動的な措置の場合、上記の内部空間を監視するためのシステムを所持する車両の所有者は、その車両を当該救助サービスプロバイダで登録でき、その後は、状況に固有の情報又はデータに基づいて、緊急隊員による活動及び緊急隊員の指示を全自動的な処理で受けることができる点に言及する。
【0038】
場合によっては時間推移中に複数の固有の温度パターンを判断又は比較するため、場合によっては体温及び別の変数の複数の値の傾向に対する複数の危険特性を判断又は比較するため、自動学習が、当該システムで使用されてもよい。このため、対応するデータ又は情報が、進行する作動中に収集され、さらなる進行中に当該自動学習のために使用されてもよい。すなわち、当該システムは、継続して改良され得る。代わりに、所定の特徴又は基準が、パターン又は傾向等を認識するためにプログラミングされてもよい。
【0039】
これらの措置の組み合わせも可能である。したがって、例えば、所定のパターン又は傾向が既定されていて、変更できないように、当該方法は構成されてもよい。その結果、既知の危険状況が、あらゆる状況で認識され得る一方で、判断が、自動学習にしたがって支援され得て、別の状況をより良好に評価することができる。
【0040】
本発明のこれらの観点及び別の観点は、以下で説明されている図に示されている。
【0041】
以下に、本発明を、添付図を参照して実施の形態に基づいて再度詳しく説明する。しかしながら、本発明は、当該実施の形態に限定されない。この場合、同じ構成要素は、異なる図ごとに同じ符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】内部空間を監視するための本発明のシステムを有する車両のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1には、車両1が、本発明を検討するために必要な構成要素まで減らして長方形として示されている。車両1の内部空間2は、3つの内部空間領域、すなわち前方座席列3と後方座席列4とトランクルーム5とに分割されている。ここでは、車両1に関連して自動車について説明されているが、別の車両の内部空間領域3-5は、3つよりも多くてもよい。したがって、例えば、乗合バスが、必要に応じて複数の座席の下の複数の収納コンパートメントをさらに増設した複数の座席列によって発生する複数の内部空間領域を有し得る。
【0044】
さらに、左Aピラー及び右Aピラー6と、左Bピラー及び右Bピラー7と、トランクルームの左側壁及び右側壁8とが視覚化されている。当然に、本発明に関連して使用される2つ又は3つよりも多いピラーが設けられてもよい。
【0045】
この車両1は、以下の複数のシステム構成要素を有する、内部空間を監視するためのシステムを備える。
【0046】
左Aピラー及び右Aピラー6は、第1座席列3の座席面の上方の空間領域を検出するそれぞれ1つの小型の第1赤外線カメラ9Aを有する。さらに、左Aピラー及び右Aピラー6は、第1座席列3の座席面の下方の空間領域、すなわち第1座席列3の足元領域を検出するそれぞれ1つの小型の第2赤外線カメラ9Bを有する。明らかに、両赤外線カメラ9Bは、客室のフロントパネルの適切な位置又は前ドアに設置されてもよい。センターコンソールが存在するならば、第1座席列3の足元領域を検出するため、このセンターコンソールの左側と右側とに位置決めも可能である。当然に、ここでは(それぞれのピラーごとに)、それぞれ2つよりも多いグループ化された赤外線カメラが使用されてもよい。
【0047】
左Bピラー及び右Bピラー7は、第2座席列4の座席面の上方の空間領域を検出するそれぞれ1つの小型の第3赤外線カメラ10Aを有する。さらに、左Bピラー及び右Bピラー7は、第2座席列4の座席面の下方の空間領域、すなわち第2座席列4の足元領域を検出するそれぞれ1つの小型の第2赤外線カメラ10Bを有する。両赤外線カメラ10Bは、両後ドアに設置されてもよい。センターコンソールが存在するならば、第2座席列4の足元領域を検出するため、このセンターコンソールの左側と右側とに位置決めも可能である。
【0048】
内部空間2を上から可能な限り完全に検出するため、十分な数の赤外線カメラをルーフのライニング部内に組み込むことも可能である。当該上からの検出のため、別の赤外線カメラ11Bが、例えばトランクルームリッド又は必要に応じていわゆる網棚16に設置されてもよい。
【0049】
さらに、トランクルームの左側壁8と右側壁8とは、それぞれ1つの小型の第5赤外線カメラ11を有する。その結果、トランクルーム5の内部空間が、左右から検出されるか、又は必要に応じて上からも検出される。
【0050】
説明した赤外線カメラ9A-11Bは、システムの赤外線センサを構成する。
【0051】
さらに、車両1は、車両1のコンピュータによって実現されたデータ処理装置12を有する。データ処理装置12は、カメラデータバス13を介して赤外線カメラ9A-11Bに接続されていて、赤外線カメラ9A-11Bによって生成されたそれぞれの検出範囲の赤外線画像をデジタルデータストリームとして受信する。
【0052】
さらに、データサービス及び音声通信をLTE移動無線通信モジュール14によって利用するため、データ処理装置12は、通信バス13Bを介して車両1の移動無線通信モジュール14(例えば、当該LTE移動無線通信モジュール)に接続されている。
【0053】
さらに、第1温度センサ15Aによって、車両1の外側の外気温度を検出し、第2温度センサ15Bによって、第1座席列3と第2座席列4とから成る客室内の内部空間温度を検出し、第3温度センサ15Cによって、トランクルーム5内の内部空間温度を検出するため、データ処理装置12は、センサ線13Cを介して3つの温度センサ15A-15Cに接続されている。
【0054】
上記のシステムは、その稼働中に車両1の内部空間を監視するための方法を実行する。この方法は、
図2によって視覚化されていて、以下で説明する。
【0055】
連続する内部空間監視を保証するため、車両1が駐車され、運転者が車両1から離れたことの認識後に(例えば、キーが車両内にもはや存在しないことを理由に)必要に応じて、当該方法が、ブロックIで開始し、例えば駐車された車両の場合の規則にしたがって、引き続き実行される。
【0056】
次いで、ブロックIIで、生体が車両1の内部空間2にことを、赤外線カメラ9A-11Bから提供されたデータが示唆しているか否かが、データ処理装置12によって検査される。
【0057】
車両1の内部空間2に生体が居る手がかりが確認されると、検査が、即座に又は特定の期間後に繰り返される。当該検査同士の期間及び当該検査自体の期間は可変でもよい。したがって、生体が車両1の内部空間2に居ることを、赤外線カメラ9A-11Bから提供されたデータが示唆しているか否かを、データ処理装置12は、運転者が車両1から離れた後の最初の数分を検査する。このとき、当該検査同士の次の期間は、例えば何時でも延長できる一方で、当該検査のフェーズ(期間)は、最小に短縮できる。これにより、システムの電力消費が最小にされる一方で、車両1の内部空間2の生体が見落とされないことが保証される。バッテリレベルのような更に別の変数、又は特に電気自動車の場合は車両が現在充電中か若しくは車両バッテリだけから給電されているかの問い合わせも、インタラクションの回数と、それぞれの時間間隔の長さとに影響し得る。
【0058】
生体が内部空間2にことがされると、ブロックIIIで1つの時間間隔内に少なくとも2回、当該生体の体温が、異なる2つの時点に検出される。しかしながら、好ましくは、当該体温は、赤外線カメラから提供された画像レートにしたがってほぼ連続して検出される。
【0059】
さらに、ここでは、外気温度も、第1温度センサ15Aによって検出され得て、同様に2つの内部空間温度も、第2温度センサ15Bと第3温度センサ15Cとによって検出され得る。当該検出も、時間間隔ごとに又は同様にほぼ連続して実行され得る。さらに、ここでは、気象データが、この時点で移動無線通信モジュール14によって問い合わせされてもよい。
【0060】
当該検出された体温の値に基づいて、必要に応じて、測定された外気温度及び内部空間温度及び/又は取得した気象データも考慮しつつ、ブロックIVで、生体の身体及び生命に対する危険が識別可能であるか否かが、基本的に規則にしたがって検査される。この場合、体温の値の傾向又は体温の絶対値が利用され、当該体温の推移が、測定された外気温度及び測定された内部空間温度を考慮して又は考慮しないで、必要に応じて気象データも考慮して将来にわたって予測される。
【0061】
したがって、当該気象データは、例えば、現在の太陽放射線が多いものの、その後の15分以内に曇り及び発生する風を予測することができ、その結果として低下する外気温度を予測することができるデータである。この場合、或る期間(例えば長期間(例えば約60分))内の体温の実際の値自体は、過度な体温上昇の危険を認識させるものの、措置は即座に講じられない。むしろ、例えば当該期間の半分の期間(例えば、追加の30分)のような当該期間の一部の期間に、周囲の影響に起因して、当該体温が安定化するか又はそれどころか再び低下し始めるか否かが静観される。しかしその代わりに、生体が車両内に置き去られた可能性があるという警報が、当該車両の所有者のスマートフォンに送信されてもよい。
【0062】
これとは反対の状況では、身体及び生命に対する危険な状況が非常に直ぐに発生し得ることを示す気象データが送信されてもよい。
【0063】
同じことが、過度な体温低下の危険の状況に対しても同様に適切に成立する。
【0064】
さらに、車両内に置き去られた生体が小さい生体であるという状況では、措置が即座に講じられてもよい。何故なら、この場合、当該小さい生体は、子供又は動物である可能性があるからである。危険が、ブロックIVで確認されない場合は、ブロックIIIに分岐され、測定データ(すなわち、ブロックIIIで既に説明したように、体温)が新たに測定され、説明されているように処理又は検査される。危険が確認されるまで、これらのブロックが連続して実行され、したがって新しいデータが連続して測定され検査されるように、当該測定と当該処理と起こり得る危険の確認とが同時に進行し得る。
【0065】
ブロックIVで、措置を必要とする危険がされるか、又は危険の時間推移若しくは危険の経時が措置を要求すると、ブロックVに分岐され、包括的に説明したように、措置が、有益に改良された形態で自動的に実行される。したがって、車両の所有者が直接に介入できるように、当該された危険が、例えば電子情報によってこの所有者にその現在地で知らされ、窓開けと、必要に応じてドア開けと、内部空間2の換気の始動と、さらに続く音響式警報器の起動と、救急業務の最終的に自動化された始動とが阻止されてもよい。
【0066】
当該方法は、危険が排除されたことをデータ処理装置12に知らせるユーザインタラクションを受信することによって(例えば、車両に居るこの車両の所有者自身の入力によって)ブロックVIで終了する。
【0067】
しかしながら、車両が、依然として駐車状態にあると、ブロックIの場合の冒頭で述べたように、当該車両が、もはや駐車状態にないまで、必要に応じて、運転者が、車両1内に明らかに再び居るまで(これは、例えば、車両1内のその運転者の(無線)キーの存在によって確認され得る)、当該方法は、例えば既定の期間の経過後にブロックIで新たに開始され繰り返し処理される。
【0068】
しかしながら、この方法によって、温度による危険が最小になるだけではなくて、車両1内の生体を保護する一般的な警報システムも提供される。したがって、例えば快適な気象条件又は温度条件の場合でも、駐車された車両1内の生体が、ブロックIIで認識される。体温が、ブロックIIIにしたがって測定され得ないように、この生体が、突然に予想外に視野から消えると、この状況は、ブロックIVで危険と解釈され得る。その結果、措置が、ブロックVにしたがって実行される。したがって、例えば、車両1内で最初に確認された子供が、目視可能でない領域内に移動したので(例えば、当該領域が、車両1内の別の物体によって遮蔽されているので)、又は、当該子供が、許可なく車両1から離れたので、当該子供が、測定可能な領域から突然に消えたことを、運転者が、当該方法によって知らされ得る。
【0069】
既に複数回説明したように、当該方法及び当該システムは、生体を車両1内の過度な温度上昇から保護するためだけに使用され得るのではなくて、生体を車両1内の過度な温度低下から保護するためにも使用され得る。しかしながら、車両1内の生体の体温を低下させ得る措置とは違って、車両1内の生体の体温を上昇させるか又は当該体温を維持するために使用される措置が適用される。
【0070】
また、当該方法又は当該システムは、車両1内への人(又は一般に、例えば窃盗犯等のような人)の不正な侵入を認識し警報を発する警報システムとして使用され得る。
【0071】
さらに、車両1の周りに居る生体の数及び位置に関する正確な情報を緊急隊員に提供するため、当該方法又は当該システムは、自動認識された事故でも使用され得る。したがって、車両1内に居る生体に対する炎若しくは高温ガスによる加熱作用又は例えばひび割れした窓ガラスによる冷却作用のような影響が、正確に検出され得て、救助活動をより良好に計画し展開するための重要なパラメータとして当該緊急隊員に伝達され得る。これは、最終的に生命を救うことに寄与し得る。
【0072】
また、車両1内に置き去りにされた対象物(例えば、電子機器)を熱による損傷から保護するため、上記の赤外線センサ、特に赤外線カメラによる車両1の内部空間の熱監視が利用され得る。
【0073】
自動車市場における技術の広範囲の普及にしたがって、室温の自動的に検出された温度データ又は外気温度が、移動無線通信モジュールを介して(例えば、GSM、UMTS、LTE等を介して)それぞれの車両1から気象サービスセンターに伝達され得る。その結果、当該温度データは、中央で処理され得て、温度の正確で、特に場所を特定した出力が可能である。この場合、複数の車両用センサを有する多数の車両1が、必要に応じて非常に局所的な地域用の温度マップを作成するために配備された複数のセンサからネットワークを構築する。当該ネットワークの構築は、特に車両1内の予想される温度に関する、当該車両1の温度予測のような気象モデルをさらに改良することをアシストできる。しかしながら、これに関連して、当該システムは、車両1内で予防のために使用可能であることにも言及する。この場合、当該システムは、X°-Y°の範囲内の温度を警報として気象サービスセンター又は公共の情報サービスセンターに伝達する。この場合、積極的な警報を該当する地域内の車両又は車両の所有者若しくは車両のユーザのスマートフォンに送信するため、当該情報サービスセンター自体が、当該データを使用できる。したがって、例えば、保険会社から顧客のスマートフォンへの荒天警報の伝達と同様に、車両1内の生体の過度な体温上昇又は過度な体温低下の潜在的なリスクを伴う車両1内の危険な温度に関する警報が、積極的な措置として自動的に伝達されてもよい。
【0074】
しかしながら、車両1のセンサは、本発明に関連して様々な他の用途に対して使用されてもよい。
【0075】
例えば、降雨警報又は荒天警報が、車両に送信されると、気象情報との比較が、車両内の降雨センサによって実行され得る。降雨及び荒天時に、当該システムは、窓及び/又はサンルーフが開いているか否かを検査する。この検査が、肯定的な結果で終了すると、開いている内部空間に関するメッセージが、スマートフォンに通知される。当該通知と同時に、すなわち時間的に並行して、生体が、車両1内に居るか否かが検査される。生体が、当該車両内に居ない場合は、窓及びサンルーフが開いているときに、当該窓及び当該サンルーフが閉じられる。生体が、車両1内に居る場合は、当該窓を閉じるため、最初に、確認が、スマートフォンによって実行される。この確認が取れない場合は、当該窓は、自動的に閉じられず、したがって開いたままである。
【0076】
さらに、例えば、1つ又は複数の水位センサ又は湿度センサが、危険を認識するための別の措置として車両内で使用されてもよい。車両1が、交通事故時に水中に落下し、水が、車両1内に侵入した直後に、当該浸水が、水センサによって認識される。このとき、当該システムは、座標、乗員の情報及び浸水の原因を緊急隊員に通知し、他の措置が拒否される。代わりに、侵入する水の温度分布又は温度帯パターンが、データ処理装置によって認識され得るように、赤外線センサが、赤外線カメラとして構成されてもよい。その結果、特に車両内の、特に追加の水位センサ又は湿度センサなしでも、水中への落下が検出可能であり、対応する措置が講じられ得る。
【0077】
また、当該システム又は当該方法は、密入国者を自動的に認識するために適している。この場合、非常に多い人が、国境の、例えばトレーラ又はコンテナ内に居るときに、監視員が、例えば自動的に知らされ得る。当該監視員は、当該トレーラ内の生体の数に関して自動的に通知される。また、(赤外線)センサが、停止、除去又は取り外されたときに、自動的な通知が実行され得る。
【0078】
また、当該システム及び当該方法は、COVIDパンデミックを除去又は検査するために使用され得る。すなわち、車両1の内部空間に居る全ての人に対して、体温が、継続して測定され得る。(必要に応じて、当該内部空間の暖房又は冷房による暖房効果又は冷房効果を除いた)平均体温も、体温の長時間の観察によって算出され得て、したがって、人が、その人の体温に基づいて潜在的に病気にかかっているか、又は健康な水準にあるかが判別され得る。したがって、体温計による国境での手動の体温測定は不必要である。また、自動的に取得された測定データはより正確である。また、該当する人の移動を示す自動的に記録されたGPSデータが、パンデミックの危険のある地域内で管理又は評価され得る。
【0079】
最後に、上記の詳しく説明されている図面は、本発明の範囲から外れることなしに当業者によって様々に変更され得る例示にすぎない点をさらに指摘する。完全を期すため、不定冠詞「1つ」の使用は、該当する特徴が複数存在し得ることを排除しないことも指摘する。
【符号の説明】
【0080】
1 車両
2 内部空間
3 前方座席列、内部空間領域
4 後方座席列、内部空間領域
5 トランクルーム、内部空間領域
6 Aピラー
7 Bピラー
8 トランクルームの側壁
9A 赤外線カメラ
9B 赤外線カメラ
10A 赤外線カメラ
10B 赤外線カメラ
11A 赤外線カメラ
11B 赤外線カメラ
12 データ処理装置
13A カメラデータバス
13B 通信バス
13C センサ線
14 移動無線通信モジュール、移動無線通信装置
15B 温度センサ、内部温度センサ
15C 温度センサ、内部温度センサ
16 荷物棚
【国際調査報告】