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特表2023-543281アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、およびその製造方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/94 20060101AFI20231005BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C07D239/94 CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K31/517
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519337
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 CN2021120328
(87)【国際公開番号】W WO2022063229
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202011022290.1
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523109275
【氏名又は名称】石▲薬▼集▲團▼中奇制▲薬▼技▲術▼(石家庄)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】周 付▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】赫 玉霞
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲顔▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ 健
(72)【発明者】
【氏名】史 ▲凱▼
(72)【発明者】
【氏名】底 ▲輝▼▲鋒▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 欣欣
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 静
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC45
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、および製造方法と使用を提供する。本発明で調製された塩は、結晶性が良好であり、遊離型化合物と比較して、水への溶解度は有意に改善され、特にその塩型および結晶型が安定的に存在することができるため、遊離型化合物または他の塩よりも優れた創薬可能性を有する。
[化1]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式2:
【化1】
[式中、HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸またはマレイン酸であり、
nは、1/2-2の整数または半整数であり、および
HAが塩酸である場合、nは0.5、1.5または2である。]で表される、
アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物。
【請求項2】
前記塩、その溶媒和物または水和物は、以下の式3’:
【化2】
[式中、nは1~2の整数であり、mは0~4の整数または半整数であり、nが1である場合、mは1~4の整数または半整数である。]で表される塩酸塩またはその水和物であり、
好ましくは、前記塩、その溶媒和物または水和物は、以下の式3’’:
【化3】
[式中、mは0~4の整数または半整数である。]で表される二塩酸塩またはその水和物であり、
さらに好ましくは、前記塩、その溶媒和物または水和物は、以下の式3-1:
【化4】
で表される二塩酸塩、または以下の式3-2:
【化5】
で表される二塩酸塩四水和物である、
請求項1に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物。
【請求項3】
前記塩は、以下の式4で表される硫酸塩であり、
【化6】
[式中、nは1~2の整数または半整数である。]
好ましくは、前記塩は、以下の式4-1で表される硫酸塩である、
【化7】
請求項1に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物。
【請求項4】
前記塩は、以下の式5で表されるマレイン酸塩であり、
【化8】
[式中、nは1~2の整数または半整数である。]
好ましくは、前記塩は、以下の式5-1
【化9】
で表されるマレイン酸塩である、
請求項1に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物。
【請求項5】
前記塩は、以下の式6で表されるシュウ酸塩であり、
【化10】
[式中、nは0.5~2の整数または半整数である。]
好ましくは、前記塩は、以下の式6-1
【化11】
で表されるシュウ酸塩である、
請求項1に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物。
【請求項6】
以下の式2:
【化12】
[式中、HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸またはマレイン酸であり、
nは、1/2-2の整数または半整数であり、および
HAが塩酸である場合、nは0.5、1.5または2である。]で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形であって、
好ましくは、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、以下の式3:
【化13】
[式中、nは0.5、1.5または2である。]で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形であり、
さらに好ましくは、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、以下の式3-1:
【化14】
で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である、
アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形。
【請求項7】
前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩の結晶形は、前記式3-1で表される二塩酸塩の結晶形Iであり、そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される12.4±0.2°、18.8±0.2°、20.3±0.2°、24.6±0.2°の位置に特徴的なピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される9.8±0.2°、12.4±0.2°、18.8±0.2°、20.3±0.2°、24.6±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた実質的に図1で示されるような粉末X線回折パターンを有する、
請求項6に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形。
【請求項8】
前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩の結晶形は、前記式3-2で表される二塩酸塩四水和物の結晶であり、そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、26.0±0.2°の位置に特徴的なピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°、24.4±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた実質的に図2または図19で示されるような粉末X線回折パターンを有する、
請求項6に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形。
【請求項9】
前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩の結晶形は、前記式4-1で表される硫酸塩の結晶であり、そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される12.4±0.2°、15.5±0.2°、24.8±0.2°、25.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.8±0.2°、8.5±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、24.8±0.2°、25.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.8±0.2°、8.5±0.2°、12.4±0.2°、13.6±0.2°、15.5±0.2°、24.8±0.2°、25.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた実質的に図3で示されるような粉末X線回折パターンを有する、
請求項6に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形。
【請求項10】
前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩の結晶形は、前記式5-1で表されるマレイン酸塩の結晶であり、そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.9±0.2°、7.6±0.2°、16.7±0.2°、24.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.4±0.2°、4.9±0.2°、7.6±0.2°、16.7±0.2°、20.6±0.2°、24.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.4±0.2°、4.9±0.2°、7.6±0.2°、13.3±0.2°、16.7±0.2°、19.6±0.2°、20.6±0.2°、24.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた実質的に図4で示されるような粉末X線回折パターンを有する、
請求項6に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形。
【請求項11】
前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩の結晶形は、前記式6-1で表されるシュウ酸塩の結晶であり、そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、17.5±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°の位置に特徴的なピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、17.5±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°、23.0±0.2°、25.5±0.2°の位置に特徴的なピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°、23.0±0.2°、24.4±0.2°、25.5±0.2°の位置に特徴的なピークを有し、あるいは
そのCu-Kα放射線を用いた実質的に図7で示されるような粉末X線回折パターンを有する、
請求項6に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか1項に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、あるいは請求項6~11のいずれか1項に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、ならびに1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、あるいは請求項6~11のいずれか1項に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは請求項12に記載の医薬組成物の、受容体チロシンキナーゼ阻害剤薬の調製における使用であって、
前記受容体チロシンキナーゼは、好ましくは、VEGFR、FLT、FGFR、RET、EGFRおよびそれらの突然変異体のうちの1つもしくは複数であり、
好ましくは、前記受容体チロシンキナーゼ阻害剤薬は、抗腫瘍薬であり、好ましくは、前記腫瘍は、甲状腺癌、胆道癌、非小細胞肺癌、類表皮癌、黒色腫、結腸直腸癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌または卵巣癌を含む、使用。
【請求項14】
請求項1に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の製造方法であって、
以下の式1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物とHAとを溶媒中で反応させ、分離して以下の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物を得るステップを含む、製造方法。
【化15】
[式中、
HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸またはマレイン酸であり、
nは、1/2-2の整数または半整数であり、および
HAが塩酸である場合、nは0.5、1.5または2である。]。
【請求項15】
前記式1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物とHAとのモル比は、1:1~2.5であり、好ましくは1:1~2であり、ならびに/あるいは
反応温度は、10~90℃であり、好ましくは40~70℃であり、ならびに/あるいは
反応溶媒は、アルコール類、ケトン類、ニトリル類、水またはヘテロシクロアルカン類の溶媒のうちの1つもしくは2つの組み合わせから選ばれ、好ましくは、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、DMF、NMP、イソプロパノール、n-プロパノール、DMA、ジオキサンのうちの1つもしくは2つの組み合わせであり、さらに好ましくは酢酸エチル、メタノールまたは水である、
請求項14に記載のアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年9月25日に中国国家知識産権局に出願された出願番号がCN202011022290.1である中国特許出願に基づく優先権および利益を主張し、当該中国特許出願の内容の全てを本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、医薬品化学の分野に関し、具体的には、アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、およびその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0003】
プロテインチロシンキナーゼ(Protein tyrosine kinases:PTKs)は、プロテインキナーゼファミリーの非常に重要なメンバーであり、PTKsは、アデノシン三リン酸のγ-リン酸基を基質のプロテインチロシン残基に転移し、フェノール性水酸基をリン酸化することで細胞間の情報伝達を行い、細胞の発達、調節および腫瘍細胞の分化、遊走、アポトーシス等のプロセスで非常に重要な役割を果たす。調節プロセス中にPTKs制御不能になると、その下流のシグナル伝達経路の正しい活性化に影響を与え、細胞増殖調節機能不全を引き起こし、チロシンキナーゼの過剰な活性による受容体リン酸化、さらなる下流シグナルの活性化のような多くの疾患を引き起こす可能性があり、細胞の過剰な形質転換、増殖、アポトーシスへの耐性、細胞生存の促進、悪性腫瘍の形成につながる。従って、チロシンキナーゼを新しい標的として当該タイプのキナーゼ阻害剤を開発してチロシンキナーゼの過剰発現を阻害し、その生理学的バランスを回復することは、分子標的抗腫瘍の分野における研究のホットスポットとなり、大きな発展の見込みがある。
【0004】
上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Recepto、EGFR)、線維芽細胞成長因子受容体(Fibroblast Growth Factor Receptors、FGFRs)、血小板由来増殖因子受容体(Platelet-derived Growth Factor Receptor、PDGFR)、トランスフェクション中再構成(Rearranged during Transfection、RET)のがん原遺伝子によってコードされるRETタンパク質などは、PTKsの重要なメンバーであり、腫瘍治療の重要な標的である。
【0005】
EGFRは、受容体チロシンキナーゼに結合できる細胞増殖因子であり、EGFR(ErbB-1)、ヒト上皮成長因子受容体2型HER2(ErbB-2)、ヒト上皮成長因子受容体3型HER3(ErbB-3)およびヒト上皮成長因子受容体4型HER4(ErbB-4)を含み、ここで、EGFRおよびHER2は、EGFRファミリーのメンバーの中で腫瘍に最も関連するターゲットである。研究によると、EGFRは、肺癌、胃癌、類表皮癌、腎臓癌、卵巣癌等の様々な腫瘍で、過剰発現、遺伝子突然変異または遺伝子融合を現れることを示す。
【0006】
FGFRは、主にFGFR1/2/3/4の四つのサブタイプを含み、それらは、遺伝子増幅、突然変異、融合またはリガンド誘導等の方法によって過剰発現または過剰活性化され、腫瘍細胞の増殖、浸潤および遊走、ならびに腫瘍血管新生において重要な役割を果たす。研究によると、FGFRsは、非小細胞肺癌、胃癌、結腸直腸癌、食道癌、肝臓癌、胆道がん等の様々な腫瘍で過剰発現または過剰活性化を現れることが分かる。
【0007】
RETの正常な生理学的機能は、腎臓の発達、神経系の発達、精子幹細胞の維持と更新、骨髄単核細胞の分化、リンパ組織の形成等を含み、ヒト腸管神経節細胞、神経芽細胞腫、褐色細胞腫、甲状腺髄様癌、甲状腺C細胞および黒色腫等の細胞で発現される。近年、RETに関する詳細な研究を通じて、腫瘍におけるRETの過剰な活性化は、様々な腫瘍の増殖、生存、浸潤、転移および腫瘍の炎症等に有意な促進作用を有し、RETは、甲状腺癌(例えば、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭がん)、結腸直腸癌、膵臓癌、黒色腫等で過剰な発現を表されることが分かる。
【0008】
化学名が4-(4-ブロモ-2-フルオロアニリノ)-6-メトキシ-7-[(4-N,N-ジメチルアミノ)ブトキシ]キナゾリンである化合物1は、RET、VEGFR(血管内増殖因子受容体(Vascular endothelial growth factor receptor、VEGFR))、FGFR、EGFR、FLT(FMS様チロシンキナーゼ(Fms-like tyrosine kinaseまたはFms Related Receptor Tyrosine Kinase))等の阻害活性を有するマルチターゲット阻害剤である。
【化1】
WO2016023330A1では、チロシンキナーゼ阻害剤としてのアリールアミノキナゾリン含有化合物に関し、化合物1およびその類似体、製造方法と医学的使用について説明した。
【発明の概要】
【0009】
本発明人らは、化合物1が水への溶解度が非常に低く、固形経口剤形の薬物溶解度の一般的要件(0.1g/Lを超えるべきである)を満たすことができず、ましてや他の医薬剤形(例えば、注射剤、溶液剤)の開発ができず、また、薬物の水への溶解度は、薬物の溶出、吸収、および薬物動態特性に影響を与える主な要因でもあるため、化合物1を修飾して、その物理的および化学的性質を最適化し、その創薬可能性を向上させる必要がある。
【0010】
一態様によれば、本発明は、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物を提供する。
【化2】
[式中、
HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸またはマレイン酸であり、
nは、1/2-2の整数または半整数であり、および
HAが塩酸である場合、nは0.5、1.5または2である。]
【0011】
別の態様によれば、本発明は、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形を提供し、
【化3】
[式中、HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸またはマレイン酸であり、
nは、1/2-2の整数または半整数であり、および
HAが塩酸である場合、nは0.5、1.5または2である。]
【0012】
別の態様によれば、本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物または式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、ならびに1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
別の様態によれば、本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物の、受容体チロシンキナーゼ阻害剤としての薬物の調製における使用を提供する。
【0014】
本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物の、抗腫瘍薬の調製における使用をさらに提供する。
【0015】
また、別の様態によれば、本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物の、受容体チロシンキナーゼ関連疾患を治療するための使用をさらに提供する。
【0016】
本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物の、腫瘍を治療するための使用をさらに提供する。
【0017】
別の様態によれば、本発明は、治療有効量の前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物を患者に投与するステップを含む、患者の受容体チロシンキナーゼ関連疾患を治療するための方法をさらに提供する。
【0018】
本発明は、治療有効量の前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物を患者に投与するステップを含む患者の腫瘍疾患を治療するための方法をさらに提供する。
【0019】
別の様態によれば、本発明は、受容体チロシンキナーゼ関連疾患の治療に使用される、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物をさらに提供する。
【0020】
さらに別の様態によれば、本発明は、腫瘍疾患の治療に使用される、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物をさらに提供する。
【0021】
別の様態によれば、本発明は、式1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物と酸(HA)と適切な溶媒で反応させ、分離して式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物を得るステップを含む、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の製造方法を提供する。
【化4】
[式中、HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸またはマレイン酸であり、
nは、1/2-2の整数または半整数であり、および
HAが塩酸である場合、nは0.5、1.5または2である。]
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IのXRPDパターンである。
図2】実施例2で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IIのXRPDパターンである。
図3】実施例3で得られた化合物1の硫酸塩のXRPDパターンである。
図4】実施例4で得られた化合物1のマレイン酸塩のXRPDパターンである。
図5】比較例1で得られた化合物1の一塩酸塩のXRPDパターンである。
図6】比較例2で得られた化合物1のリンゴ酸塩のXRPDパターンである。
図7】実施例9で得られた化合物1のシュウ酸塩のXRPDパターンである。
図8】実施例1で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IのDSC-TGA図である。
図9】実施例2で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IIの熱重量分析(TGA)図である。
図10】実施例1で得られた二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形Iの長期安定性試験後のXRPDパターンである。
図11】実施例5で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IIIのXRPDパターンである。
図12】実施例5で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IIIのDSC-TGA図である。
図13】実施例6で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IVのXRPDパターンである。
図14】実施例6で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IVのDSC-TGA図である。
図15】実施例7で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形VのXRPDパターンである。
図16】実施例7で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形VのDSC-TGA図である。
図17】実施例8で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形VIIのXRPDパターンである。
図18】実施例8で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形VIIのDSC-TGA図である。
図19】実施例10で得られた化合物1の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形IIのXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一態様によれば、本発明は、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物を提供する。
【化5】
[式中、HAは、酸であり、
nは、1/2-2の整数または半整数であり、すなわち、nは0.5、1、1.5または2である。]
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸、マレイン酸または苹果酸である。本発明のいくつかの実施形態において、HAは、塩酸、硫酸またはマレイン酸である。本発明のいくつかの実施形態において、HAは、塩酸である。
本発明のいくつかの実施形態において、HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸またはマレイン酸であり、nは、1/2-2の整数または半整数であり、すなわち、nは0.5、1、1.5または2であり、HAが塩酸である場合、nは0.5、1.5または2である。本発明のいくつかの実施形態において、nは、1または2である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物は、式3で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩酸塩、その溶媒和物または水和物である。
【化6】
[式中、nは0.5、1.5または2である。]
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、前記溶媒和物は、アセトニトリル/水溶媒和物およびエタノール溶媒和物から選ばれる。
本発明のいくつかの実施形態において、前記水和物は、半水和物、一水和物および四水和物から選ばれる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物は、式3’で表される塩酸塩またはその水和物である。
【化7】
[式中、nは1~2の整数であり、mは0~4の整数または半整数であり、すなわち、mは、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5または4であり、nが1である場合、mは1~4の整数または半整数であり、すなわち、mは、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5または4である。本発明のいくつかの実施形態において、nは、2であり、且つmは、0、0.5、1または4である。本発明のいくつかの実施形態において、nは、2であり、且つmは、0または4である。]
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物は、式3’’で表される二塩酸塩またはその水和物である。
【化8】
[式中、mは0~4の整数または半整数であり、すなわち、mは、0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5または4である。]
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物は、式3-1で表される二塩酸塩である。
【化9】
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物は、式3-2で表される二塩酸塩四水和物である。
【化10】
【0031】
別の態様によれば、本発明は、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形を提供する。
【化11】
[式中、HAは、酸であり、
nは、1/2-2の整数または半整数であり、すなわち、nは0.5、1、1.5または2である。]
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸、マレイン酸または苹果酸である。本発明のいくつかの実施形態において、HAは、塩酸、硫酸またはマレイン酸である。本発明のいくつかの実施形態において、HAは、塩酸である。
本発明のいくつかの実施形態において、HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸またはマレイン酸であり、nは、1/2-2の整数または半整数であり、すなわち、nは0.5、1、1.5または2であり、HAが塩酸である場合、nは0.5、1.5または2である。本発明のいくつかの実施形態において、nは、1または2である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、式3で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である。
【化12】
[式中、nは0.5、1.5または2である。]
【0034】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である。
【化13】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形V、結晶形VIIのうちの1つもしくは複数の種から選ばれる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、前記結晶形Iは、式3-1で表される二塩酸塩の結晶形である。
【化14】
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、前記結晶形IIは、式3-2で表される二塩酸塩四水和物の結晶形である。
【化15】
【0037】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される12.4±0.2°、18.8±0.2°、20.3±0.2°、24.6±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される9.8±0.2°、12.4±0.2°、18.8±0.2°、20.3±0.2°、24.6±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される8.1±0.2°、9.8±0.2°、12.4±0.2°、18.8±0.2°、20.3±0.2°、24.6±0.2°、29.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される8.1±0.2°、9.8±0.2°、12.4±0.2°、18.8±0.2°、19.3±0.2°、20.3±0.2°、24.6±0.2°、28.6±0.2°、29.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される8.1±0.2°、9.8±0.2°、12.4±0.2°、16.1±0.2°、18.8±0.2°、19.3±0.2°、20.3±0.2°、24.6±0.2°、28.6±0.2°、29.9±0.2°、30.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0038】
好ましくは、上記の特徴的なピークの相対強度は、次のとおりである。
【表1】
【0039】
好ましくは、上記の特徴的なピークの相対強度は、次のとおりである。
【表2】
【0040】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表3】
【0041】
好ましくは、上記の回折ピークの相対強度は、次のとおりである。
【表4】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図1で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)は、DSC-TGAを使用して測定し、そのDSC図は、200~320℃の範囲内で2つの明らかな吸熱ピークを有し、前記吸熱ピークの開始点は、それぞれ219.1±3℃および235.1±3℃に現れ、ピーク値は、それぞれ231.0±3℃および284.2±3℃に現れ、当該塩酸塩のTGA図は、205.6±3℃で分解が起こり始めることを示すか、または、前記式3-1で表される二塩酸塩の結晶形Iは、実質的に図8で示されるようなDSC-TGA図を有する。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)では、そのDSC図は、231.0±5℃および284.2±5℃にそれぞれ吸熱ピークを有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)では、そのTGA図は、205.6±5℃に分解が起こり始める。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)は、実質的に図8で示されるようなDSC図を有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)は、実質的に図8で示されるようなTGA図を有する。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形II)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、26.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、26.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°、24.4±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°、22.7±0.2°、24.4±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0046】
【表5】
【0047】
好ましくは、前記特徴的なピークの相対強度は、次のとおりである。
【表6】
【0048】
好ましくは、前記特徴的なピークの相対強度は、次のとおりである。
【表7】
【0049】
好ましくは、前記特徴的なピークの相対強度は、次のとおりである。
【表8】
【0050】
あるいは、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形II)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.0±0.2°、6.8±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、18.0±0.2°、20.5±0.2°、22.7±0.2°、24.4±0.2°、25.4±0.2°、26.0±0.2°、27.5±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0051】
あるいは、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形II)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表9】
【0052】
好ましくは、上記の回折ピークの相対ピーク強度は、次のとおりである。
【表10】
【0053】
好ましくは、上記の回折ピークの相対ピーク強度は、次のとおりである。
【表11】
【0054】
あるいは、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形II)は、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図2または図19で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形II)は、TGAを使用して測定し、そのTGA図は、50~140℃範囲で12.24±0.20%の重量減少を示す。
あるいは、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形II)は、実質的に図9で示されるようなTGA図を有する。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形III)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される12.7±0.2°、13.3±0.2°、23.3±0.2°、29.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される12.7±0.2°、13.3±0.2°、17.2±0.2°、23.3±0.2°、29.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される11.5±0.2°、11.9±0.2°、12.7±0.2°、13.3±0.2°、17.2±0.2°、23.3±0.2°、29.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される11.5±0.2°、11.9±0.2°、12.2±0.2°、12.7±0.2°、13.3±0.2°、17.2±0.2°、23.3±0.2°、29.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される11.5±0.2°、11.9±0.2°、12.2±0.2°、12.7±0.2°、13.3±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、23.0±0.2°、23.3±0.2°、29.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される8.4±0.2°、11.5±0.2°、11.9±0.2°、12.2±0.2°、12.7±0.2°、13.3±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、23.0±0.2°、23.3±0.2°、24.6±0.2°、29.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される8.4±0.2°、11.5±0.2°、11.9±0.2°、12.2±0.2°、12.7±0.2°、13.3±0.2°、17.2±0.2°、17.6±0.2°、23.0±0.2°、23.3±0.2°、24.6±0.2°、28.8±0.2°、29.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0056】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表12】
【0057】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図11で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形III)は、DSCを使用して測定し、そのDSC図は、101.52±5℃および183.70±5℃にそれぞれ吸熱ピークを有する。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形III)は、TGAを使用して測定し、そのTGA図は、室温~120℃範囲で6.3±0.20%の重量減少を示す。
あるいは、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形III)は、実質的に図12で示されるようなDSC-TGA図を有する。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形IV)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.4±0.2°、8.2±0.2°、13.0±0.2°、16.5±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.4±0.2°、8.2±0.2°、12.0±0.2°、13.0±0.2°、16.5±0.2°、22.8±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.4±0.2°、8.2±0.2°、12.0±0.2°、13.0±0.2°、16.5±0.2°、17.8±0.2°、22.8±0.2°、29.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.4±0.2°、8.2±0.2°、11.3±0.2°、12.0±0.2°、13.0±0.2°、16.5±0.2°、17.8±0.2°、19.4±0.2°、22.8±0.2°、29.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.4±0.2°、6.4±0.2°、7.4±0.2°、8.2±0.2°、11.3±0.2°、12.0±0.2°、13.0±0.2°、16.5±0.2°、17.8±0.2°、19.4±0.2°、22.8±0.2°、29.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.4±0.2°、6.4±0.2°、7.4±0.2°、8.2±0.2°、10.8±0.2°、11.3±0.2°、12.0±0.2°、13.0±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、17.8±0.2°、19.4±0.2°、22.8±0.2°、29.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.4±0.2°、6.4±0.2°、7.4±0.2°、8.2±0.2°、10.8±0.2°、11.3±0.2°、12.0±0.2°、13.0±0.2°、14.2±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、16.9±0.2°、17.8±0.2°、19.4±0.2°、22.8±0.2°、29.0±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0060】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表13】
【0061】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図13で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形IV)は、DSCを使用して測定し、そのDSC図は、68.81±5℃および177.55±5℃にそれぞれ吸熱ピークを有する。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形IV)は、TGAを使用して測定し、そのTGA図は、室温~150℃範囲で3.9±0.20%の重量減少を示す。
あるいは、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形IV)は、実質的に図14で示されるようなDSC-TGA図を有する。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形V)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される8.4±0.2°、9.6±0.2°、19.8±0.2°、29.2±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される8.4±0.2°、9.6±0.2°、10.5±0.2°、19.3±0.2°、19.8±0.2°、29.2±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.2±0.2°、6.4±0.2°、8.4±0.2°、9.6±0.2°、10.5±0.2°、19.3±0.2°、19.8±0.2°、29.2±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.2±0.2°、6.4±0.2°、8.4±0.2°、9.6±0.2°、10.5±0.2°、15.1±0.2°、19.3±0.2°、19.8±0.2°、21.2±0.2°、29.2±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.2±0.2°、6.4±0.2°、8.4±0.2°、9.6±0.2°、10.5±0.2°、15.1±0.2°、16.9±0.2°、19.3±0.2°、19.8±0.2°、21.2±0.2°、24.6±0.2°、29.2±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.2±0.2°、6.4±0.2°、8.4±0.2°、9.6±0.2°、10.5±0.2°、15.1±0.2°、16.9±0.2°、19.3±0.2°、19.8±0.2°、21.2±0.2°、24.6±0.2°、28.9±0.2°、29.2±0.2°、29.5±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0064】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表14】
【0065】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図15で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形V)は、DSCを使用して測定し、そのDSC図は、48.29±5℃、153.99±5℃および190.59±5℃にそれぞれ吸熱ピークを有する。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形V)は、TGAを使用して測定し、そのTGA図は、室温~200℃の範囲で7.3±0.20%の重量減少を示す。
あるいは、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形V)は、実質的に図16で示されるようなDSC-TGA図を有する。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形VII)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される8.3±0.2°、11.9±0.2°、12.9±0.2°、14.6±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.5±0.2°、8.3±0.2°、11.9±0.2°、12.9±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.5±0.2°、8.3±0.2°、11.9±0.2°、12.9±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、17.6±0.2°、24.4±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.5±0.2°、8.3±0.2°、11.9±0.2°、12.9±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、17.6±0.2°、24.4±0.2°、24.8±0.2°、29.6±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.5±0.2°、8.3±0.2°、11.9±0.2°、12.9±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、17.6±0.2°、18.8±0.2°、20.4±0.2°、24.4±0.2°、24.8±0.2°、29.6±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.5±0.2°、8.3±0.2°、11.9±0.2°、12.9±0.2°、14.6±0.2°、16.5±0.2°、17.6±0.2°、18.8±0.2°、20.4±0.2°、22.2±0.2°、23.6±0.2°、24.4±0.2°、24.8±0.2°、29.6±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0068】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表15】
【0069】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図17で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形VII)は、DSCを使用して測定し、そのDSC図は、87.64±5℃および182.15±5℃にそれぞれ吸熱ピークを有する。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形VII)は、TGAを使用して測定し、そのTGA図は、室温~120℃の範囲で1.4±0.20%の重量減少を示す。
あるいは、前記式3-1で表される二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形VII)は、実質的に図18で示されるようなDSC-TGA図を有する。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物は、式4で表される硫酸塩である。
【化16】
[式中、nは1~2の整数または半整数であり、すなわち、nは、1、1.5または2である。]
【0072】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩は、式4-1で表される硫酸塩である。
【化17】
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物的的結晶形は、式4で表される硫酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である。
【化18】
[式中、nは1~2の整数または半整数であり、すなわち、nは、1、1.5または2である。]
【0074】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン的化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、式4-1で表される硫酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である。
【化19】
【0075】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式4-1で表される硫酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、その結晶形Iである。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式4-1で表される硫酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される12.4±0.2°、15.5±0.2°、24.8±0.2°、25.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.8±0.2°、8.5±0.2°、12.4±0.2°、15.5±0.2°、24.8±0.2°、25.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.8±0.2°、8.5±0.2°、12.4±0.2°、13.6±0.2°、15.5±0.2°、24.8±0.2°、25.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される6.8±0.2°、8.5±0.2°、12.4±0.2°、13.6±0.2°、15.5±0.2°、17.9±0.2°、19.6±0.2°、24.8±0.2°、25.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0077】
好ましくは、前記特徴的なピークの相対強度は、次のとおりである。
【表16】
【0078】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表17】
【0079】
好ましくは、上記の回折ピークの相対ピーク強度は、次のとおりである。
【表18】
【0080】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図3で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物は、式5で表されるマレイン酸塩である。
【化20】
[式中、nは1~2の整数または半整数であり、すなわち、nは、1、1.5または2である。]
【0081】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩は、式5-1で表されるマレイン酸塩である。
【化21】
【0082】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、式5で表されるマレイン酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である。
【化22】
[式中、nは1~2の整数または半整数であり、すなわち、nは、1、1.5または2である。]
【0083】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、式5-1で表されるマレイン酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である。
【化23】
【0084】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式5-1で表されるマレイン酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、その結晶形Iである。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式5-1で表されるマレイン酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.9±0.2°、7.6±0.2°、16.7±0.2°、24.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.4±0.2°、4.9±0.2°、7.6±0.2°、16.7±0.2°、20.6±0.2°、24.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.4±0.2°、4.9±0.2°、7.6±0.2°、13.3±0.2°、16.7±0.2°、19.6±0.2°、20.6±0.2°、24.9±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.4±0.2°、4.9±0.2°、7.6±0.2°、13.3±0.2°、16.7±0.2°、18.9±0.2°、19.6±0.2°、20.6±0.2°、24.9±0.2°、26.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される4.4±0.2°、4.9±0.2°、7.6±0.2°、11.4±0.2°、13.3±0.2°、14.2±0.2°、16.7±0.2°、18.9±0.2°、19.6±0.2°、20.6±0.2°、24.9±0.2°、26.3±0.2°の位置に特徴的な回折ピークを有する。
【0086】
好ましくは、前記特徴的なピークの相対強度は、次のとおりである。
【表19】
【0087】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表20】
【0088】
好ましくは、上記の回折ピークの相対ピーク強度は、次のとおりである。
【表21】
【0089】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図4で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物は、式6で表されるシュウ酸塩である。
【化24】
[式中、nは0.5~2の整数または半整数であり、すなわち、nは0.5、1、1.5または2である。]
【0090】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩は、式6-1で表されるシュウ酸塩である。
【化25】
【0091】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、式6で表されるシュウ酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である。
【化26】
[式中、nは0.5~2の整数または半整数であり、すなわち、nは0.5、1、1.5または2である。]
【0092】
本発明のいくつかの実施形態において、前記アリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、式6-1で表されるシュウ酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形である。
【化27】
【0093】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式6-1で表されるシュウ酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形は、その結晶形Iである。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式6-1で表されるシュウ酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形(結晶形I)は、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、17.5±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、17.5±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°、23.0±0.2°、25.5±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°、23.0±0.2°、24.4±0.2°、25.5±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°、23.0±0.2°、23.5±0.2°、24.4±0.2°、25.5±0.2°、26.6±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、10.7±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°、23.0±0.2°、23.5±0.2°、24.4±0.2°、25.5±0.2°、26.6±0.2°、27.3±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される5.9±0.2°、9.9±0.2°、10.7±0.2°、17.5±0.2°、18.4±0.2°、21.5±0.2°、19.8±0.2°、20.3±0.2°、23.0±0.2°、23.5±0.2°、24.4±0.2°、25.5±0.2°、26.6±0.2°、27.3±0.2°、27.9±0.2°の位置に特徴的なピークを有する。
【0095】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた粉末X線回折パターンにおいて、2θ角度(°)で表される次のような位置に回折ピークを有する。
【表22】
あるいは、Cu-Kα放射線を用いた実質的に図7で示されるような粉末X線回折パターンを有する。
【0096】
別の態様によれば、本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物を含む、医薬組成物を提供する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形を含む。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前記の式3-1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形を含む。
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前記の式3-1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形Vまたは結晶形VIIのうちの1つもしくは複数の種を含む。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、および1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む。
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、ならびに1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前記の式3-1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、ならびに1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む。
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前記の式3-1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の二塩酸塩、その溶媒和物または水和物の結晶形I、結晶形II、結晶形III、結晶形IV、結晶形Vまたは結晶形VIIから選ばれる1つもしくは複数の結晶形、ならびに1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、治療有効量の前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、および1つもしくは複数の薬学的に許容される担体を含む。
本発明に係る医薬組成物は、当技術分野における従来の方法によって調製されることができ、例えば、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物と1つもしくは複数の薬学的に許容される担体とを混合して調製される。
【0101】
別の様態によれば、本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物の、受容体チロシンキナーゼ阻害剤としての薬物の調製における使用を提供する。
本発明のいくつかの実施形態において、前記受容体チロシンキナーゼは、VEGFR、FLT、FGFR、RET、EGFRおよびそれらの突然変異体のうちの1つもしくは複数である。
【0102】
別の様態によれば、本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物の、受容体チロシンキナーゼ関連疾患を治療するための使用をさらに提供する。
【0103】
別の様態によれば、本発明は、治療有効量の前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物を患者に投与するステップを含む、患者の受容体チロシンキナーゼ関連疾患を治療するための方法をさらに提供する。
【0104】
別の様態によれば、本発明は、受容体チロシンキナーゼ関連疾患を治療するための前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物をさらに提供する。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態において、上記の各態様に記載の受容体チロシンキナーゼ関連疾患は、VEGFR、FLT、FGFR、RET、EGFRおよびそれらの突然変異体のうちの1つもしくは複数の種によって引き起こされる疾患である。本発明のいくつかの実施形態において、前記疾患は、細胞増殖性疾患である。本発明のいくつかの実施形態において、前記疾患は、VEGFR、FLT、FGFR、RETおよびEGFRのうちの1つもしくは複数のタンパク質の発現、レベルまたは活性における障害に関する。本発明のいくつかの実施形態において、前記細胞増殖性疾患は、腫瘍または癌である。本発明のいくつかの実施形態において、前記腫瘍は、甲状腺癌、胆道癌、類表皮癌、黒色腫、結腸直腸癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌または卵巣癌を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記甲状腺癌は、甲状腺髄様癌であり、前記肺癌は、非小細胞肺癌である。本発明のいくつかの実施形態において、前記非小細胞肺癌は、RET融合型非小細胞肺癌である。
【0106】
別の様態によれば、本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物の、抗腫瘍薬の調製における使用をさらに提供する。
別の様態によれば、本発明は、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物の、腫瘍の治療における使用をさらに提供する。
【0107】
別の様態によれば、本発明は、治療有効量の前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物を投与するステップを含む、患者の腫瘍疾患を患者に治療するための方法をさらに提供する。
【0108】
さらに別の態様によれば、本発明は、腫瘍疾患を治療するための前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、前記の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形、あるいは前記医薬組成物をさらに提供する。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態において、上記の各態様に記載の腫瘍または腫瘍疾患は、甲状腺癌、胆道癌、類表皮癌、黒色腫、結腸直腸癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌または卵巣癌を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記甲状腺癌は、甲状腺髄様癌であり、前記肺癌は、非小細胞肺癌である。本発明のいくつかの実施形態において、前記非小細胞肺癌は、RET融合型非小細胞肺癌である。本発明のいくつかの実施形態において、前記腫瘍または腫瘍疾患は、VEGFR、FLT、FGFR、RET、EGFRおよびそれらの突然変異体のうちの1つもしくは複数の種によって引き起こされる腫瘍または腫瘍疾患である。本発明のいくつかの実施形態において、前記腫瘍または腫瘍疾患は、VEGFR、FLT、FGFR、RETおよびEGFRのうちの1つもしくは複数のタンパク質の発現、レベルまたは活性における障害に関する。
【0110】
上記の「患者」は、哺乳類(例えば、マウス、ラット、ネコ、サル、イヌ、ブタ等)およびヒトを含むがこれらに限定されない、動物界のすべてのメンバーを含む。
【0111】
別の様態によれば、本発明は、式1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物と酸(HA)とを適切な溶媒で反応させ、分離して式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物を得るステップを含む、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の製造方法を提供する。
【化28】
[式中、HAは酸であり、nは1/2-2の整数または半整数である。]
【0112】
本発明のいくつかの実施形態において、前記HAは、塩酸、硫酸、シュウ酸、マレイン酸または苹果酸である。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態において、前記式1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物と酸とのモル比は、1:1~2.5であり、好ましくは1:1~2である。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態において、反応温度は、10~90℃であり、好ましくは40~70℃である。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態において、反応溶媒は、アルコール類、ケトン類、ニトリル類、水またはヘテロシクロアルカン類の溶媒のうちの1つもしくは2つの組み合わせから選ばれ、好ましくは、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、DMF、NMP、イソプロパノール、n-プロパノール、DMA、ジオキサンのうちの1つもしくは2つの組み合わせであり、さらに好ましくは酢酸エチル、メタノールまたは水である。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態において、反応溶媒は、メタノールおよび酢酸エチルの組み合わせである。本発明のいくつかの実施形態において、反応溶媒は、水である。本発明のいくつかの実施形態において、反応溶媒は、メタノールおよびアセトニトリルの組み合わせである。本発明のいくつかの実施形態において、反応溶媒は、水およびアセトニトリルの組み合わせである。本発明のいくつかの実施形態において、反応溶媒は、エタノールである。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態において、上記の反応溶媒が2つの種類の組み合わせである場合、それらは、それぞれ加えることができ、すなわち、最初に良溶媒を加え、次に貧溶媒を加えることができる。
本発明のいくつかの実施形態において、分離して、結晶形の式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物を得る。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態において、前記反応の終了後、冷却結晶化温度は、-5~35℃、好ましくは0~25℃であり、0.5~24時間撹拌結晶化し、固体を分離し、乾燥させ、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩を得る。好ましくは、塩を回収する温度は、10℃であり、結晶化時間は、0.5~12時間である。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態において、前記分離ステップは、ろ過、遠心分離等の適切な方法を使用し、得られた式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩を結晶化液から分離するステップを含む。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態において、前記乾燥方法は、周知の任意の適切な方法を採用することができるが、乾燥することが好ましい。具体的な乾燥条件としては、例えば、真空乾燥炉を使用し、温度は、好ましくは30~65℃、より好ましくは40~55℃であり、乾燥時間は、好ましくは1~50時間、より好ましくは1~16時間、さらに好ましくは3~6時間である。どのような乾燥方法を使用しても、得られた製品の溶媒残渣の量が質量基準を満たしていることが望ましいい。
【0121】
式1で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物は、WO2016023330A1に記載された方法のような、先行技術に開示された方法を参照することによって調製されることができ、上記の文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
〔定義および説明〕
特に明記しない限り、本明細書で使用される以下の用語およびフレーズは、次の意味を有することを意図する。1つの特定のフレーズまたは用語は、特に定義されていない場合、不確定または不明確と見なされるべきではなく、その一般的な意味に従って理解されるべきである。当本明細書に商品名が現れる場合、その対応する商品名またはその有効成分を指すことを意図する。
【0123】
「溶媒化物」または「溶媒和物」という用語は、水分子および1つもしくは複数の他の溶媒分子を同時に含有する会合物(会合体)を含む、1つもしくは複数の溶媒分子と本発明に係る式2で表される化合物とで形成された会合物を指す。
【0124】
「水和物」という用語は、1つもしくは複数の水分子と本発明に係る式2で表される化合物とで形成される会合物を指す。本出願における水和物は、式3-2で表される化合物の二塩酸塩四水和物を含む。
【0125】
特に明記しない限り、本明細書に記載の「2θ」、「2θ角」または「2θ角度」は、回折角を指し、単位は、「°」または「度」であり、2θの誤差範囲は、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2または±0.1°であり得る。
【0126】
特に明記しない限り、本出願に記載の「加熱温度」、「冷却温度」または「結晶化温度」の単位は、℃または摂氏温度であり、誤差範囲は、±10、±5、±4、±3、±2または±1℃であり得る。
【0127】
「実質的に図で示されるように」という用語は、粉末X線回折パターンまたはDSCパターンまたはTGAパターンにおけるピークの少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%がその図で示されることを意味する。さらに、製品中のある結晶形の含有量が徐々に低下する場合、その粉末X線回折パターン中のいくつかの当該結晶形に属する回折ピークは、機器の検出感度の要素により減少する可能性がある。
【0128】
「特徴的な回折ピーク」という用語は、粉末X線回折パターンにおいて、当該結晶形を表すために使用できる回折ピークを指し、それは、回折ピークのピーク位置、ピーク形状および相対ピーク強度に関連し、例えば、小角ピーク、鋭いピーク形状、相対ピーク強度が少なくとも3%以上、または少なくとも5%以上、または少なくとも10%以上、または少なくとも20%以上、または少なくとも30%以上、または少なくとも40%以上、または少なくとも50%以上、または少なくとも60%以上、または少なくとも70%以上、または少なくとも75%以上の回折ピークに関連する。
【0129】
「細胞増殖性疾患」という用語は、そのうちの細胞集団の成長率が所与の生理学的状態および条件で予想される速度よりも低いか、または高い病症を指す。
「腫瘍」という用語は、良性腫瘍、悪性腫瘍および境界腫瘍を含み、ここで、悪性腫瘍は、統合的に癌と呼ばれる。
【0130】
「治療」という用語は、一般に、疾患の部分的または完全な安定化または治愈および/または疾患に起因する効果を含む、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。本明細書で使用される「治療」は、(a)疾患の症状を阻害すること、すなわち、その発展を阻止すること、または(b)疾患の症状を緩和すること、すなわち、疾患または症状の退行を引き起こすことを含む、患者における任意の治療を含む。
【0131】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、(i)特定の疾患を治療する、または(ii)特定の疾患の1つもしくは複数の症状を軽減、改善または排除する、本発明に係る化合物の用量を指す。「治療有効量」という用語は、疾患を治療するために化合物が患者に投与される場合、当該疾患の治療を行うのに十分な量を指す。「治療有効量」を構成する本発明に係る化合物の量は、当該化合物、疾患状態およびその重症度、投与方法および治療される哺乳類の年齢に応じて変動するが、当業者は、自身の知識および本開示に基づいて例示的に決定することができる。
「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される助剤」という用語は、生体に対して明らかな刺激効果がなく、活性化合物の生物活性および性能を損なわないそれらの担体を指す。
【0132】
本発明に係る化合物は、以下に挙げられる具体的な実施形態、それを他の化学合成法の組み合わせによって形成される実施形態、ならびに当業者に知られている同等の置換法を含む、当業者に周知の様々な合成方法によって調製されることができ、好ましい実施形態は、本発明に係る実施例を含むが、これらに限定されない。
【0133】
本発明の具体的な実施形態における化学反応は、適切な溶媒で完了し、前記溶媒は、本発明に係る化学変化およびそれに必要な試薬または材料に適していなければならない。本発明に係る化合物を得るために、当業者が既存の実施形態に基づいて合成ステップまたは反応プロセスを変更または選択することが時々必要である。
【0134】
以下、実施例により本出願を具体的に説明するが、これらの実施例は、本出願を限定するものではない。
本出願で使用されるすべての溶媒は、すべて市販され、さらに精製せずに使用することができる。
本出願で使用される下記の略語:
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、
NMP:N-メチルピロリドン、
DMA:N,N-ジメチルアニリン。
【0135】
発明の効果
本発明は、式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、および式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の結晶形を提供し、それらは、1つもしくは複数の次のような有益な効果を有する。
式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物の固体特性は良好であり、さらに、結晶性状は、良好であり、特に二塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、一塩酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、およびその溶媒和物または水和物の結晶特性は良好である。
【0136】
二塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、およびその溶媒和物または水和物、特に二塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、およびその溶媒和物または水和物は、水または水性溶液への溶解度が有意に改善される。
【0137】
さらに、塩およびその結晶形(例えば、二塩酸塩、二塩酸塩四水和物、硫酸塩、マレイン酸塩およびその結晶形)は、優れた貯蔵安定性、化学的安定性、熱安定性および/または機械的安定性を有することが好ましい。
【0138】
本発明に係る式2で表されるアリールアミノキナゾリン含有化合物の塩、その溶媒和物または水和物、特に二塩酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、およびその溶媒和物または水和物、より特に二塩酸塩およびその溶媒和物または水和物は、より優れた創薬可能性を有し、原薬(原料薬)としての貯蔵に適し、臨床的必要に応じて様々な医薬経済に開発されることができる。
【0139】
具体的な実施形態
以下、具体的な実施例に組み合わせて、本発明に係る技術的解決策をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、本出願を例示的に説明および解釈するためだけのものであり、本発明に係る保護範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本発明に係る上記の内容に基づいて実装されるすべての技術は、本出願が意図する保護の範囲内に含まれる。
特に明記しない限り、以下の実施例で使用される原薬および試薬は、すべて市販される製品であるか、または既知の方法によって調製されることができる。
【0140】
以下の実施例において、分析および検出条件は、次のとおりである。
1.含有量
検出機器:Agilent 1260(LC1260-3-DAD)高速液体クロマトグラフィー
カラム:C18 4.6×250mm、5μm
試験条件:波長252nm、カラム温度45℃
【0141】
2.溶解度(水およびpH2.0緩衝液)
検出機器::Agilent 1260高速液体クロマトグラフィー
検出媒体:精製水、pH2.0リン酸-リン酸二ナトリウム緩衝液
参照物質溶液の調製:適切な量の式1の化合物参照物質を取り、精密に秤量し、溶媒を加えて完全に溶解させ、100μg/mLの溶液に希釈し、10uLを正確に量り、HPLCを使用して参照物質溶液における化合物1の含有量を測定する。
【0142】
3.粉末X線回折(X-Ray Powder Diffraction、XRPD)
(1)検出機器:Bruker D2 PHASER型粉末X線回折計
試験条件:
ライトチューブタイプ:Cuターゲット、セラミックXライトチューブ、
X線波長:CuKα、K(Å):1.5406、
電圧および電流:30kV、10mA、
スキャン範囲:3~40°2θ、
合計スキャン時間:40分間、
スキャン速度:0.5秒/ステップ、
サンプル用量:3mg(実施例1~4)
採集ソフトウェア:Diffrac Plus XRD Commander
分析ソフトウェア:MDI Jade 6.0
(2)検出機器:Bruker D8 Advance型粉末X線回折計
試験条件:
ライトチューブタイプ:Cuターゲット、セラミックXライトチューブ、
X線波長:CuKα、K(Å):1.5418、
電圧および電流:40kV、40mA、
スキャン範囲:3~40°2θ、
スキャン速度:0.2秒/ステップ、
サンプル用量:5-10mg(実施例5-8)。
【0143】
4.熱重量分析(Thermogravimetric Analysis、TGA)
(1)検出機器:METTLERおよびSDT Q600熱重量分析計
試験方法:5mgのサンプル(実施例1~4)を秤量し、TGA白金ポットに入れて試験を行い、40mL/minの乾燥窒素ガス条件下で、5K/minの昇温速度で、サンプルを40℃から300℃に加熱する。
【0144】
機器制御ソフトウェア:NETZSCH-proteus-6
分析ソフトウェア:Proteus Analysis
(2)検出機器:Discovery TGA 55型熱重量分析計(TA Instruments、US)
試験方法:皮をむいた開口アルミニウム皿に約2~5mgサンプル(実施例5-8)を入れ、機器は、自動的に重量を秤量および記録する。その後サンプルを加熱炉で10℃/minの昇温速度で、室温から最終温度に加熱する。ガスは、Nであり、流速は、それぞれ40mL/min(サンプルチャンバー)および25mL/min(平衡チャンバー)である。
【0145】
5.示差走査熱量-熱重量分析(Differential Scanning Calorimetry-Thermogravimetric Analysis、DSC-TGA)
検出機器:NETZSCH STA449F3同期熱分析計
試験方法:サンプル(約3mg)を秤量し、酸化アルミニウムるつぼに入れて試験を行い、20mL/minの乾燥窒素ガス(保護ガス)条件下で、10K/minの昇温速度で、サンプルを20℃から340℃に加熱する。
機器制御ソフトウェア:NETZSCH-proteus
分析ソフトウェア:Proteus Analysis
【0146】
6.示差走査熱量分析(Differential Scanning Calorimetry、DSC)
検出機器:Discovery DSC 250型示差走査熱量計(TA Instruments、US)
試験方法:2~5mgのサンプル(実施例5-8)を秤量し、穴付き密閉アルミニウム皿に入れ、サンプル量を正確に記録する。次いでサンプルを10℃/minの昇温速度で、25℃から最終温度に加熱する。ガスは、N2であり、流速は、50mL/minである。
【0147】
7.塩化物
検出機器:DIONEX ICS-900イオンクロマトグラフィー
カラム:Dionex Ion Pac AS11-HC陰イオンクロマトグラフィーカラム(仕様:4×250mm)
実験操作:
被験品溶液の調製:適切な量の被験品を取り、正確に秤量し、溶離液(12.5mmol/Lの水酸化ナトリウム溶液)で溶解させ、且つ1mLあたりに約0.5mgの被験品を含む溶液に定量希釈し、均等に振り混ぜ、被験品溶液とする。
参照物質溶液の調製:適切な量の塩化ナトリウム(塩素イオン18mgに相当する)を取り、正確に秤量し、250mLのメスフラスコに入れ、溶離液で溶解させ且つ定容し、均等に振り混ぜ、参照物質溶液とする。
測定法:それぞれ10μLの参照物質溶液および被験品溶液を正確に秤量し、それぞれイオンクロマトグラフィーを注入し、クロマトグラフを記録し、外部標準法によりピーク面積から塩素イオン含有量を計算する。
【0148】
8.プロトン核磁気共鳴スペクトル
機器モデル:Bruker Advance 600型核磁気共鳴分光計
測定条件:DMSO-d6を溶媒としてし、室温(~25℃)で試験を行う
【0149】
9.生物溶媒への溶解度の測定
溶解度測定に使用される生物溶媒の媒体(SGF、FeSSIFおよびFaSSIF)の調製プロセスは、次の表に示される。
【0150】
【表23】
【0151】
試験方法:被験サンプルを生物溶媒の媒体に加え、目標濃度10mg/mLになる溶液または混濁液を調製する。得られた溶液または混濁液を37℃条件下で200rpmの速度で連続的に振とうした。0.5時間の時に混濁液をろ過し、HPLCを使用してろ液中の化合物濃度を測定した。
【0152】
製造例1:化合物1の製造
【化29】
WO2016023330A1の特許文献における実施例22に記載の方法を参照して製造して、薄茶色固体の式1で表される化合物を得た。
【0153】
H-NMR(600MHz,DMSO-d6)δ:9.53(s,1H),8.36(s,1H),7.80(s,1H),7.66(dd, J=10.2Hz,J=2.4Hz,1H),7.54(t, J=8.4Hz,1H),7.47(dd, J=8.4Hz, J=2.4Hz,1H),7.19(s,1H),4.15(t, J=6.6Hz,2H),3.95(s,3H),2.29-2.26(m,2H),2.14(s,6H),1.82-1.79(m,2H),1.59-1.57(m,2H)。
【実施例1】
【0154】
化合物1の二塩酸塩の製造
【化30】
製造例1で得られた化合物1(10g、21.58mmol)をナス型フラスコに秤量し、メタノール溶媒(110mL)を加え、55±5℃に昇温させ、溶液が清澄化になるまで撹拌し、塩酸(3.7mL、44.4mmol)を滴下し、20分間撹拌し、200mLの酢酸エチルを徐々に加え、5±5℃に冷却し、2±1時間撹拌し、吸引ろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル(20mL)で洗浄して、白色の二塩酸塩(11g)を得、収率は94.8%であった。
【0155】
H-NMR(600MHz,DMSO-d6)δ:15.41(s,1H),11.78(s,1H),10.44(s,1H),8.80(s,1H),8.42(s,1H),7.78(dd, J=9.6Hz,J=2.4Hz,1H),7.58-7.52(m,2H),7.47(s,1H),4.24(t, J=6Hz,2H),4.03(s,3H),3.15-3.14(m,2H),2.76-2.75(m,6H),1.90-1.88(m,4H)。
【0156】
イオンクロマトグラフィーにより塩素イオンの含有量を測定し、当該塩酸塩の化学量論比を計算し(以下の表を参照する)、当該塩酸塩の塩基/酸比が1:2であると推定できる。
【0157】
【表24】
【0158】
得られた塩酸塩サンプルを取り、粉末X線回折を行ったところ、それは、良好な結晶性を示し、二塩酸塩の結晶形Iと名付けられ、そのXRPD特性スペクトルを図1に示し、主な回折ピークデータを表1に示す。サンプルを取り、DSC-TGA試験を行ったところ、2つの吸熱ピークを有し、吸熱ピーク1は219.1℃に吸熱ピークの開始点を有し、231.0℃付近でピーク値に達し、吸熱ピーク2は235.1℃に吸熱ピークの開始点を有し、284.2℃付近にピーク値に達し、約205℃で分解が発生した(図8を参照する)。PLM図は、その結晶粒子が規則的な形状であることを示す。
【0159】
【表25】
【実施例2】
【0160】
化合物1の二塩酸塩四水和物の製造
【化31】
製造例1で得られた化合物1(5g、10.8mmol)をナス型フラスコに秤量し、精製水(20mL)を加え、濃塩酸(2.0mL、24mmol)を滴下し、撹拌し、完全に溶解したまで80±5℃に昇温させ、滴下完了後、室温に徐々に冷却し、吸引ろ過し、フィルターケーキを少量の精製水で洗浄して白色固体状の二塩酸塩四水和物(2.82g)を得、収率は、43%であった。プロトン核磁気共鳴スペクトルにより、塩をすでに形成していることが確認された。
【0161】
HPLCにより遊離塩基含有量を計算し(以下の表を参照する)、当該塩酸塩水和物の塩基/酸比が1:2であること推定できる。
【表26】
さらにTGAにより実施例2の塩酸塩水和物の結晶水含有量を補助的に検出し、重量減少は、12.24%であり、当該塩酸塩水和物の塩基/結晶水比が1:4であると推定でき、そのTGA試験スペクトルを図9に示す。
【0162】
得られた二塩酸塩四水和物サンプルを取り、粉末X線回折を行うと、得られた固体は、良好な結晶性を示し、結晶形IIと名付けられ、そのXRPD特性スペクトルを図2に示し、主な回折ピークデータを表2に示す。
【0163】
【表27】
【実施例3】
【0164】
化合物1の硫酸塩の製造
【化32】
製造例1で得られた化合物1(4g、8.6mmol)をナス型フラスコに秤量し、メタノール(10mL)を加え、60±5℃に昇温させ、溶液が清澄化になるまで撹拌し、50%硫酸(1.0mL、8.6mmol)を滴下し、10分間撹拌し、30mLの酢酸エチルを徐々に加え、室温まで冷却し、撹拌しながら1時間反応させ、吸引ろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル(20mL)で洗浄して、白色の硫酸塩(4.13g)を得、収率は85.2%であり、融点は164~168℃である。プロトン核磁気共鳴スペクトルにより、塩をすでに形成していることを確認した。
【0165】
HPLCによって遊離塩基含有量を計算し(以下の表を参照する)、当該硫酸塩の塩基/酸比が1:1であると推定できる。
【表28】
得られた硫酸塩サンプルを取り、粉末X線回折を行うと、得られた硫酸塩は、良好な結晶性を示し、硫酸塩の結晶形Iと名付けられ、そのXRPD特性スペクトルを図3に示し、主な回折ピークデータを表3に示す。
【0166】
【表29】
【実施例4】
【0167】
化合物1のマレイン酸塩の製造
【化33】
製造例1で得られた化合物1(5g、10.8mmol)、マレイン酸(1.5g、13.0mmol)およびメタノール(10mL)を反応フラスコに秤量し、55±5℃に昇温させ、溶液が清澄化になるまで撹拌し、次に酢酸エチル(30mL)を加え、室温まで冷却し、2時間撹拌し続け、吸引ろ過し、フィルターケーキを酢酸エチル(30mL)で洗浄して、白色のマレイン酸塩(2.22g)を得、収率は、35.5%であり、融点:138-142℃である。プロトン核磁気共鳴スペクトルにより、塩をすでに形成していることを確認した。
【0168】
HPLCによって遊離塩基含有量を計算し(以下の表を参照する)、当該マレイン酸塩の塩基/酸比が1:1であると推定できる。
【表30】
得られたマレイン酸塩サンプルを取り、粉末X線回折を行うと、得られたマレイン酸塩は、良好な結晶性を示し、マレイン酸塩の結晶形Iと名付けられ、そのXRPD特性スペクトルを図4に示し、主な回折ピークデータを表4に示す。
【0169】
【表31】
【実施例5】
【0170】
化合物1の二塩酸塩の結晶形IIIの製造
実施例1のサンプル(約7mg)を秤量し、メタノール(0.2mL)に溶解させ、ろ過し、ろ液を回収し、次いでろ液にアセトニトリル(1mL)を加え、一晩撹拌し、吸引ろ過して白色固体を得た。得られた固体を取り、粉末X線回折を行ったところ、それは結晶形であり、二塩酸塩の結晶形IIIと名付けられ、そのXRPD特性スペクトルを図11に示し、主な回折ピークデータを表5に示す。サンプルを取り、DSC-TGA試験を行ったところ、2つの吸熱ピークを有し、吸熱ピーク1は72.28℃に吸熱ピークの開始点を有し、101.52℃付近にピーク値に達し、吸熱ピーク2は172.06℃に吸熱ピークの開始点を有し、183.70℃付近にピーク値に達し、室温~120℃の間の重量減少は、6.2684%であり、約225℃に分解が発生した(図12を参照する)。
【0171】
【表32】
【実施例6】
【0172】
化合物1の二塩酸塩の結晶形IVの製造
実施例1のサンプル(約7mg)を秤量し、水(0.2mL)に溶解させ、ろ過し、且つろ液を回収し、次いでろ液にアセトニトリル(7mL)を加え、24時間撹拌し、吸引ろ過して白色固体を得た。得られた固体を取り、粉末X線回折を行ったところ、それは結晶形であり、二塩酸塩の結晶形IVと名付けられ、そのXRPD特性スペクトルを図13に示し、主な回折ピークデータを表6に示す。サンプルを取り、DSC-TGA試験を行ったところ、2つの吸熱ピークを有し、吸熱ピーク1は49.50℃に吸熱ピークの開始点を有し、68.81℃付近にピーク値に達し、吸熱ピーク2は164.55℃に吸熱ピークの開始点を有し、177.55℃付近にピーク値に達し、室温~150℃の間の重量減少は、3.9478%であり、約215℃に分解が発生した(図14を参照する)。
【0173】
【表33】
【実施例7】
【0174】
化合物1の二塩酸塩エタノール溶媒化物(結晶形V)の製造
実施例1のサンプル(約30mg)を秤量し、エタノール(1mL)に溶解させ、50℃条件下で30分間撹拌した後に熱いうちにろ過し、ろ液を室温まで冷却し、3日間撹拌し続け、吸引ろ過して白色固体を得た。得られた固体に対して粉末X線回折を行ったところ、それは結晶形であり、結晶形V(エタノール溶媒化物、1:1)と名付けられ、そのXRPD特性スペクトルを図15に示し、主な回折ピークデータを表7に示す。サンプルを取り、DSC-TGA試験を行ったところ、3つの吸熱ピークを有し、吸熱ピーク1は28.37℃に吸熱ピークの開始点を有し、48.29℃付近にピーク値に達し、吸熱ピーク2は114.96℃に吸熱ピークの開始点を有し、153.99℃付近にピーク値に達し、吸熱ピーク3:179.32℃に吸熱ピークの開始点を有し、190.59℃付近にピーク値に達し、室温~200℃の間の重量減少は、7.2663%であった(図16を参照する)。
【0175】
【表34】
【実施例8】
【0176】
化合物1の二塩酸塩の結晶形VIIの製造
実施例5で得られた結晶形IIIを取り、130℃に加熱した後にサンプルを回収して白色固体を得た。得られた固体を取り、粉末X線回折を行ったところ、それは結晶形であり、二塩酸塩の結晶形VIIと名付けられ、そのXRPD特性スペクトルを図17に示し、主な回折ピークデータを表8に示す。サンプルを取り、DSC-TGA試験を行ったところ、2つの吸熱ピークを有し、吸熱ピーク1は66.54℃に吸熱ピークの開始点を有し、87.64℃付近にピーク値に達し、吸熱ピーク2は169.59℃に吸熱ピークの開始点を有し、182.15℃付近にピーク値に達し、室温~120℃の間の重量減少は、1.3751%であった(図18を参照する)。
【0177】
【表35】
【0178】
比較例1~2:化合物1の一塩酸塩およびリンゴ酸塩の製造
【実施例9】
【0179】
化合物1のシュウ酸塩の製造
3部の製造例1のサンプル(5g、10.8mmol)を取って反応フラスコに入れ、以下の表の反応条件に従い、式3-3で表される一塩酸塩、式7-1で表されるリンゴ酸塩および式6-1で表されるシュウ酸塩を製造し、操作プロセスは、実施例3と同様であり、結果を表9に示す。プロトン核磁気共鳴スペクトルにより、塩をすでに形成していることを確認した。
【化34】
【0180】
【表36】
注:(1)比較例1の塩基/酸比の確認方法は、塩素イオン含有量を測定する。(2)比較例2および実施例9の塩基/酸比の確認方法は、プロトン核磁気共鳴スペクトル、および遊離塩基含有量を測定する。
【実施例10】
【0181】
二塩酸塩四水和物の製造
実施例1のサンプル(約369mg)を秤量し、水/アセトン(1:1、v/v、合計5mL)に加え、室温条件下で一晩撹拌した。ろ過し回収して白色固体を得、50℃の真空下で一晩乾燥させた。検出により、それは、二塩酸塩四水和物であり、得られた固体を取り、粉末X線回折を行ったところ、それは結晶形であり、そのXRPD特性スペクトルを図19に示す。
【0182】
試験例1 溶解度試験
製造例1、実施例1~4および9ならびに比較例1~2で得られた塩を、水中およびpH2.0緩衝液中に溶解度試験を行い、試験結果を次の表に示す。
【表37】
注:「/」は未検出(検出されていないこと)を意味する。
【0183】
結果:製造例1と比較して、実施例1~4および実施例9のサンプルは、いずれも水への溶解度の向上を実現し、実施例1~4のサンプルは、いずれも水への溶解度が少なくとも100倍の向上を達成しており、ここで、二塩酸塩の溶解度が最も良好であった。一塩酸塩およびリンゴ酸塩のサンプルを水に溶解させた後、系がゼリー状になっており、これは水中でサンプルの結晶形変化が起こり、溶解効果が悪くなることで系が非溶液状態となった可能性がある。
【0184】
さらに、溶解度がより高かった(>10mg/mL)実施例1~4を選択し、製造例1を対照として使用し、pH2.0緩衝液中のサンプルの溶解度を検出し、上記の結果から分かるように、酸性条件下で、製造例1の溶解度は、明らかに向上し、実施例1および実施例4の溶解度は、依然として製造例1の溶解度よりもわずかに良好であり、実施例2および実施例3の溶解度は、製造例1よりもやや低かった。模擬胃液の環境下では、実施例1および実施例4の溶解度は低下したが、依然として製造例1の遊離塩基化合物よりも優れていた。
【0185】
また、原薬の溶解度に関する医薬剤形の一般的な要件によれば、固形の経口剤形は、薬物の水への溶解度が0.1g/Lを超える必要があり、注射剤または経口液などの溶液製剤では、薬物の溶解度が10g/L以上である必要があり、さらに重要なことには、薬物の溶解度は、臨床的に必要な投与量濃度を満たす必要がある。表10の溶解度の結果に基づき、実施例1~4および実施例9では、固形の経口剤形を製造するために考慮され得、実施例1~4では、注射剤または経口液等の溶液製剤を製造するためにさらに考慮され得る。
【0186】
試験例2 生物溶媒への溶解度試験
実施例1および実施例10のサンプル(各20mg)を秤量し、異なる生物溶媒(2mL)を加え、溶解度試験を行い、結果を表11に示す。
【0187】
【表38】
結果:実施例1および実施例10で得られたサンプルは、様々なpHの生物溶媒で、良好な溶解速度を維持でき、溶解速度は比較的速かった。
【0188】
試験例3 長期安定性試験
適切な量の実施例1~4、9で得られた塩サンプルを取り、40±2℃、75%±5%RH条件下で、ポリエチレン膜で密封して5ヶ月置き、長期試験を行い、結果は次のとおりである。
【0189】
【表39】
【0190】
【表40】
実施例1で得られた化合物1の二塩酸塩の結晶形Iは、長期安定性試験後のXRPDパターンを図10に示す。
【0191】
結果:5ヶ月置いた後、実施例1~4、9塩の結晶サンプルは、それぞれ安定的に存在でき、製品の純度は明らかに低下せず、各サンプルの結晶形は変化しなかった。
【0192】
試験例4 固体安定性試験
実施例1の二塩酸塩、実施例2および実施例10の二塩酸塩四水和物を取り、それぞれ40℃/75%RH(開口)条件下で7日間置き、安定性試験を行い、結果を表14に示す。
【0193】
【表41】
結果:40℃/75%RH(開口)条件下で7日間置くと、実施例1~2および実施例10で得られた化合物1の二塩酸塩および二塩酸塩四水和物は、すべて化学的安定性を維持し、結晶形が安定し、従って実施例1~2および実施例10で得られたサンプルは、良好な熱安定性を有し、原薬としての貯蔵の要件を満たす。
【0194】
試験例5 機械的安定性試験
適切な量の実施例1の二塩酸塩を取り、5分間機械粉砕した後、粉末X線回折を行ったところ、結晶形が変化しなかった。
【0195】
試験例6 従来の有機溶媒中の溶解度試験
中国薬局方(第2部の一般規則)に記載の方法を使用し、異なる有機溶媒中での製造例1のサンプルの溶解度試験を実施し、重量法を使用して異なる有機溶媒中の実施例1のサンプルの溶解度を推定し、結果を表15に示す。
【0196】
【表42】
注:実施例1のサンプル(~15mg)を取り、0.5mLの表15に挙げられる様々な溶媒に加え、室温および50℃条件下でスラリー化(叩解)し、ろ過後のサンプルを取り、粉末X線回折を行い、結晶形は実施例1で得られた二塩酸塩と一致した。
【0197】
結果:製造例1は、様々な従来の有機溶媒に対して良好な溶解度を示し(いずれも>10mg/mL)、実施例1の二塩酸塩は、メタノールのみに対して良好な溶解度を示し、残りの7つの従来の有機溶媒に対して溶解度が非常に低く、従って、適切な従来の有機溶媒を採用すると、二塩酸塩の製造を実現でき、(完全に反応していない)遊離塩基および二塩酸塩の完全な分離を実現でき、より高い収率で(有機溶媒で溶解による質量損失が低い)および高純度で二塩酸塩を得た。
【0198】
また、上記の従来の有機溶媒中にスラリー化したところ、いずれも実施例1の二塩酸塩に対応する結晶形を得、当該結晶形が従来の有機溶媒中で比較的に安定であることを示す。
【0199】
試験例7 ヒト黒色腫A375ヌードマウス移植腫瘍モデルの薬効実験
成長が良好なヒト黒色腫A375細胞懸濁液を、nu/nuメスヌードマウスの前肢腋窩皮下組織に接種し、接種体積は0.1mLであり、腫瘍細胞は約1×10個を含む。腫瘍体積が100mm以上に成長する場合、腫瘍の成長が良好なマウスを選択し、腫瘍体積に応じてそれぞれブランク対照群、バンデタニブ12.5mg/kg群、バンデタニブ25mg/kg群、実施例1のサンプル12.5mg/kg群および実施例1のサンプル25mg/kg等の5つの群に、動物を均等に分け、各群に6匹の動物であった。ブランク対照群は、蒸留水を経口投与し、残りの群は、対応する被験薬を経口投与し、投与体積は、20mL/kgであり、1日1回であり、20日間連続して投与した。投与後、動物を正常に飼育し、腫瘍径を測定する方法を使用し、被験薬の抗腫瘍効果を動的に観察し、試験終了後(21日目)に動物を犠牲死させ、腫瘍を剥がし、秤量し、腫瘍阻害率を算出した。
【化35】
【0200】
【表43】
注:**ブランク対照群と比較した場合、p<0.01、#同用量のバンデタニブ群と比較した場合、p<0.05であった。
【0201】
結果:ブランク対照群と比較した場合、実施例1のサンプルは、用量依存的に、腫瘍の成長を有意に阻害し、対照薬物バンデタニブと比較した場合、より優れた腫瘍阻害効果を有する。
【0202】
ヒトと動物の体表面積の換算係数(『薬理実験方法学』、編集長:徐叔雲(Shu-yun Xu))により、マウスモデルの実行用量を成人の等価用量に換算すると、マウスモデルの実行用量12.5mg/kgおよび25mg/kgは、それぞれ成人(70kg)の等価用量1.37mg/kgおよび2.74mg/kgに相当し、成人(70kg)の経口単回投与量は、95.9mgおよび191.8mgである。小さな仕様の注射剤または溶液剤(5mL)に調製すると、薬物の溶解度は、それぞれ11.51mg/mLおよび23.02mg/mL以上に達する必要があり(動物の薬物動態実験では、イヌおよびサルの絶対的なバイオアベイラビリティは、すべて約60%であり、従って、ここでのヒトの経口アベイラビリティは、60%として計算される)、同様に、より小さな仕様(5mL未満)の液体製剤では、薬物の溶解度を高くする必要がある。表10の溶解度検出結果と組み合わせると、5mLの液体製剤の使用に基づき、投与量が1.37mg/kgである場合、実施例1、実施例2および実施例4は、溶解度要件を満たすことができ、投与量が2.74mg/kgである場合、実施例1および実施例2は、溶解度要件を満たすことができる。
【0203】
以上のことから、発明者らは、化合物1の塩型に対してスクリーニングおよび模索した後、化合物1と比較して、二塩酸塩、硫酸塩およびマレイン酸塩の溶解度が有意に向上し、原薬の溶解度に関する固体製剤および液体製剤の一般的な要件を満たし、得られた塩の結晶形は、より優れた安定性を有することを見出した。ここで、二塩酸塩が最高の性能を表し、溶解度に対する小さな仕様の液体製剤の要件を満たし、良好なインビボ抗腫瘍効果を有し、様々な剤形や様々な使用の医薬品に開発される可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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【国際調査報告】