(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】腫瘍治療電場を形成するための植込み可能アレイ
(51)【国際特許分類】
A61N 1/40 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61N1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519529
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 IB2021059013
(87)【国際公開番号】W WO2022070139
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリステン・カールソン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053LL07
4C053LL13
(57)【要約】
植込み可能装置が、患者の体内に位置決めされ得る。この植込み可能装置は、複数の刺激ゾーンを備えることが可能であり、これらの複数の刺激ゾーンは、1つまたは複数のシーケンスで標的部位に対して腫瘍治療電場を形成するように構成される。この腫瘍治療電場は、体内の標的領域に対して種々の刺激振幅および電場方向を適用するものであり、それによって充実性腫瘍内の腫瘍細胞または腫瘍を囲む周辺領域内の浮遊腫瘍細胞を死滅させる治療効果を最適化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍治療電場(TTフィールド)を形成するための植込み可能装置であって、
支持構造部と、
前記支持構造部上に配設された少なくとも1つの電極アレイと
を備え、
各電極アレイは、複数の電極を備える、植込み可能装置。
【請求項2】
前記支持構造部は、収縮構成から拡張構成へと膨張可能である、請求項1に記載の植込み可能装置。
【請求項3】
前記植込み可能装置の前記支持構造部は、内部を画成し、前記植込み可能装置は、前記支持構造部の前記内部と流体連通状態にある導管をさらに備え、前記導管は、前記支持構造部を膨張させるためにそこを通る流体を受けるように構成される、請求項2に記載の植込み可能装置。
【請求項4】
複数のリード線をさらに備え、前記複数のリード線の各リード線は、各電極アレイの中の前記複数の電極の中の各電極が、各電極アレイの中の前記複数の電極の中の他の各電極とは無関係に電荷を受けるように構成されるように、各電極に結合される、請求項1に記載の植込み可能装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電極アレイは、複数の電極アレイからなり、前記複数の電極アレイの各電極アレイが、前記各電極アレイの前記複数の電極が上に配設されたパッチを備える、請求項1に記載の植込み可能装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電極アレイは、複数の電極アレイからなり、前記拡張構成において、前記支持構造部は、第1の部分および対向側の第2の部分を有し、前記複数の電極アレイは、前記支持構造部の前記第1の部分の上に配設された第1の電極アレイと、前記支持構造部の前記第2の部分の上に配設された第2の電極アレイとを備え、前記第1の電極アレイおよび前記第2の電極アレイは、第1の方向に整列される、請求項2に記載の植込み可能装置。
【請求項7】
前記拡張構成において、前記支持構造部は、第3の部分および対向側の第4の部分を有し、前記複数の電極アレイは、前記支持構造部の前記第3の部分の上に配設された第3の電極アレイと、前記支持構造部の前記第4の部分の上に配設された第4の電極アレイとを備え、前記第3の電極アレイおよび前記第4の電極アレイは、前記第1の方向とは異なる第2の方向に整列される、請求項6に記載の植込み可能装置。
【請求項8】
前記支持構造部は、実質的に球形または卵形である、請求項1に記載の植込み可能装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電極アレイは、複数の電極アレイからなり、前記複数の電極アレイの中の少なくとも1つの電極アレイが、中央電極と、中央電極の周囲に離間された複数の周囲電極とを備える、請求項1に記載の植込み可能装置。
【請求項10】
前記複数の電極アレイの各電極アレイが、奇数個の電極を備える、請求項1に記載の植込み可能装置。
【請求項11】
前記拡張構成において、前記支持構造部は、第5の部分および対向側の第6の部分を有し、前記複数の電極アレイは、前記支持構造部の前記第5の部分の上に配設された第5の電極アレイと、前記支持構造部の前記第6の部分の上に配設された第6の電極アレイとを備え、前記第5の電極アレイおよび前記第6の電極アレイは、前記第1の方向および前記第2の方向とは異なる第3の方向に整列される、請求項7に記載の植込み可能装置。
【請求項12】
標的部位の近傍に位置する患者内のある位置に請求項1に記載の前記植込み可能装置を挿入するステップと、
前記植込み可能装置を用いて前記標的部位中にTTフィールドを発生させるステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記植込み可能装置は、第1のTTフィールド刺激装置であり、
前記第1のTTフィールド刺激装置と第2のTTフィールド刺激装置との間に前記標的部位が配設されるように前記第2のTTフィールド刺激装置を位置決めするステップであって、前記植込み可能装置を用いて前記標的部位中にTTフィールドを発生させる前記ステップは、前記第1のTTフィールド刺激装置と前記第2のTTフィールド刺激装置との間にTTフィールドを発生させるステップを含む、位置決めするステップ
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のTTフィールド刺激装置は、患者の身体の外部上に位置決めされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のTTフィールド刺激装置は、請求項1に記載の植込み可能装置からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記植込み可能装置を用いて前記標的部位中にTTフィールドを発生させる前記ステップは、同一の電極アレイの中の少なくとも2つの電極間に電場を発生させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記植込み可能装置の前記少なくとも1つの電極アレイは、複数の電極アレイからなり、前記植込み可能装置を用いて前記標的部位中にTTフィールドを発生させる前記ステップは、前記複数の電極アレイの中の2つの異なる電極アレイの中の少なくとも2つの電極間に電場を発生させるステップを含み、前記2つの異なる電極アレイは、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイからなる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の刺激電極アレイおよび前記第2の刺激電極アレイの前記少なくとも2つの電極間に電場を発生させることを停止するステップと、
前記複数の電極アレイの中の2つの異なる電極アレイの中の少なくとも2つの電極間に電場を発生させるステップであって、前記2つの異なる電極アレイは、第3の刺激電極アレイおよび第4の刺激電極アレイからなり、前記第3の刺激電極アレイおよび前記第4の刺激電極アレイは、前記第1の刺激電極アレイおよび前記第2の刺激電極アレイとは異なる、前記電場を発生させるステップと
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の刺激電極アレイおよび前記第2の刺激電極アレイは、第1の軸と一致する方向に整列され、前記第3の刺激電極アレイおよび第4の刺激電極アレイは、第2の軸と一致する方向に整列され、前記第1の軸は、前記第2の軸に対して直交方向をなす、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記標的部位は、患者の胴体内または患者の脳内に位置する、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記植込み可能装置を挿入する前記ステップは、切除空洞内に前記植込み可能装置を挿入するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記植込み可能装置を用いて前記標的部位中にTTフィールドを発生させる前記ステップは、
TTフィールドを第1の方向に発生させるステップと、
TTフィールドを前記第1の方向とは異なる第2の方向に発生させるステップと
を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/085,603号の出願日に基づき優先権および利益を主張する。この仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、一般的には腫瘍治療電場を形成するための装置および方法に関し、詳細には腫瘍治療電場を形成するために患者内に電極を植え込むための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍治療電場すなわちTTフィールドは、中間周波数範囲内(例えば50~500kHz)の低強度(例えば1~6V/cm)の交流電場である。これまで、この非侵襲治療は、充実性腫瘍を対象としており、米国特許第7,565,205号に記載されている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。TTフィールドは、有糸分裂の最中に重要な分子と物理的に相互作用することにより細胞分裂を阻害する。TTフィールド療法は、再発性膠芽腫に対する承認済みの単独治療であり、また新規診断患者に対する化学療法と組み合わされる承認済みの併用療法でもある。従来、これらの電場は、患者の頭皮上に直接配置されたトランスデューサアレイ(すなわち電極アレイ)によって非侵襲的に誘発される。また、TTフィールドは、身体の多くの他の部分の多数の腫瘍細胞タイプを治療するのに有利であることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,565,205号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0162228号明細書
【特許文献3】米国特許第7,917,227号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書においては、様々な態様において、腫瘍治療電場(TTフィールド)を形成するための植込み可能装置が説明される。この植込み可能装置は、支持構造部と、この支持構造部の上に配設された少なくとも1つの電極アレイ(任意には複数の電極アレイ)とを備え得る。各電極アレイは、複数の電極を備え得る。腫瘍細胞を死滅させるために必要とされる十分な強度および方向変化を伴って腫瘍領域をカバーする電場を成形するために使用され得る、電極の個数、電極の構成、または活性化パターンに関して、制限はない。
【0006】
少なくとも1つの態様によれば、植込み可能装置は、標的部位の近傍に位置する患者内のある位置に挿入され得る。次いで、TTフィールドが、植込み可能装置により標的部位中に発生され得る。
【0007】
少なくとも1つの態様によれば、植込み可能装置は、第1のTTフィールド刺激装置であることが可能であり、第2のTTフィールド刺激装置は、この第1のTTフィールド刺激装置と第2のTTフィールド刺激装置との間に標的部位が配設されるように位置決めされ得る。TTフィールドは、第1のTTフィールド刺激装置と第2のTTフィールド刺激装置との間において発生され得る。
【0008】
少なくとも1つの態様によれば、TTフィールドは、同一の電極アレイの中の少なくとも2つの電極間に電場を発生させることにより、植込み可能装置によって標的部位中に発生され得る。
【0009】
少なくとも1つの態様によれば、TTフィールドは、複数の電極アレイの中の2つの異なる電極アレイの少なくとも2つの電極間において電場を発生させることにより、植込み可能装置によって標的部位中に発生され得る。
【0010】
本発明のさらなる利点が、以下の説明の中で部分的に示され、その説明から部分的に明らかになろう、または本発明の実施により理解されよう。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲内において実際的に指摘される要素および組合せによって実現および達成される。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は共に、例示および説明を目的とするものにすぎず、特許請求されるような本発明を限定するものではない点を理解されたい。
【0011】
本発明の好ましい実施形態のこれらのおよび他の特徴は、添付の図面を参照とする詳細な説明においてさらに明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書において開示されるような植込み可能装置およびシステムを使用して腫瘍治療電場を送達するためのシステムのブロック図である。
【
図2】本明細書において開示される実施形態による、TTフィールドを形成するための植込み可能装置の側面図である。
【
図3】本明細書において開示されるような植込み可能装置の電極アレイの概略図である。
【
図4】一態様による、電極アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、様々な期間における電極アレイの複数の概略図である。
【
図5】別の態様による、電極アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、様々な期間における電極アレイの複数の概略図である。
【
図6A】一態様による、第1の刺激電極アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、第1の刺激電極アレイの概略図である。
【
図6B】一態様による、第2の刺激電極アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、第2の刺激電極アレイの概略図である。
【
図7A】他の態様による、第1の刺激電極アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、第1の刺激電極アレイの概略図である。
【
図7B】他の態様による、第2の刺激電極アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、第2の刺激電極アレイの概略図である。
【
図8A】少なくとも1つの態様による、各アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、刺激電極アレイの概略図である。
【
図8B】別の態様による、各アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、刺激電極アレイの概略図である。
【
図8C】さらに他の態様による、各アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、刺激電極アレイの概略図である。
【
図8D】さらに他の態様による、各アレイの各電極のそれぞれの極性を示す、刺激電極アレイの概略図である。
【
図9】本明細書において開示されるような植込み可能装置により発生されるような、組織中に伝播するTTフィールドのモデルを示す図である。
【
図10】本明細書において開示されるような植込み可能装置により発生されるような、組織中に伝播するTTフィールドのモデルを示す図である。
【
図11】本明細書において開示されるような植込み可能装置により発生されるような、組織中に伝播するTTフィールドのモデルを示す図である。
【
図12】頭蓋骨内に植込み可能装置が配設され、頭蓋骨外に経頭蓋刺激デバイスが配設された患者の概略図である。標的部位は、植込み可能装置と経頭蓋刺激デバイスとの間に位置決めされている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示のシステムおよび方法は、特定の実施形態およびそこに含まれる例に関する以下の詳細な説明と、図面ならびにその上記および下記の説明とを参照とすることによりさらに容易に理解されよう。
【0014】
本明細書において使用される術語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される点を理解されたい。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、「1つの(a、an)」および「その(the)」という単数形は、文脈により別様のことが明示されない限り、複数の言及対象を含む点に留意されたい。したがって、例えば「1つの電極(an electrode)」という言及は、1つまたは複数のかかる電極を含む、等となる。
【0016】
「任意の」または「任意に」は、それに続けて説明される事象、状況、または材料が発生もしくは存在してもよくまたは発生もしくは存在しなくてもよいことを意味し、説明は、その事象、状況、または材料が発生もしくは存在する場合と、発生もしくは存在しない場合とを含むことを意味する。
【0017】
本明細書において、範囲が、「約」ある特定の数値から、および/または「約」他の特定の数値までとして表現される場合がある。かかる範囲が表現される場合に、文脈により別様のことが明示されない限り、このある特定の数値からおよび/または他の特定の数値までの範囲もまた、具体的に予期されるおよび開示されたものとみなされる。同様に、数値が「約」という先行語の使用により近似値として表現される場合に、この特定の数値は、文脈により別様のことが明示されない限り、開示されたものとしてみなされるべき他の具体的に予期される実施形態を構成するものとして理解されよう。さらに、これらの範囲のそれぞれの端点は、文脈により別様のことが明示されない限り、他の端点との関係においておよび他の端点とは無関係においての両方において重要であることが理解されよう。最後に、文脈により別様のことが明示されない限り、明確に開示された範囲内に含まれる個別の数値および下位数値範囲のすべてもまた、具体的に予期され、開示されたものとみなされるべきである点を理解されたい。前述の内容は、特定の例においてこれらの実施形態の一部またはすべてが明確に開示された否かにかかわらず適用される。
【0018】
任意には、いくつかの態様において、数値が「約」、「実質的に」、または「一般的に」という先行語の使用により近似値表現される場合には、その具体的に述べられた数値または特徴の最大で15%の範囲内、最大で10%の範囲内、最大で5%の範囲内、または最大で1%の範囲内(上または下に)の数値が、これらの態様の範囲内に含まれ得ることが予期される。
【0019】
別様のことが定義されない限り、本明細書において使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、本開示の装置、システム、および方法が属する技術分野における当業者が通常理解するような意味と同一の意味を有する。
【0020】
本明細書において、「患者」という用語は、本開示のシステムおよびデバイスを使用した治療を必要とするヒトまたは動物の被験体を示す。
【0021】
本明細書において、「電極」という用語は、本明細書においてさらに開示されるような電位、電流、または電場の発生を可能にする任意の構造体を示す。任意には、電極はトランスデューサからなり得る。任意には、電極は導電性要素の非絶縁部分からなり得る。
【0022】
本明細書の本記載および特許請求の範囲の全体にわたり、「備える、からなる(comprise)」という語ならびに例えば「備えている、からなっている(comprising)」および「備える、からなる(comprises)」などのこの語の変異体は、「含むがそれに限定されない」を意味し、例えば他の付加物、構成要素、完全体、またはステップなどを排除するようには意図されない。具体的には、1つまたは複数のステップまたは動作を含むものとして述べられた方法においては、各ステップが、列挙されているものを含むことが具体的に予期され(そのステップが「のみからなる(consisting of)」などの限定用語を含む場合を除く)、すなわち各ステップが、例えばステップ内に列挙されない他の付加物、構成要素、完全体、またはステップなどを排除するようには意図されないことを意味する。
【0023】
別様のことが明示されない限り、本明細書において示される方法または態様はいずれも、そのステップがある特定の順序で実施されることを必要とするようにみなされることを意図するものではない。したがって、特許請求の範囲または本記載において、ある方法クレームのステップがある特定の順序に限定されるべきであると明言されていない場合には、いかなる点においても、ある順序が推断されることを意図しない。これは、ステップ構成もしくは動作フローに関する論理的事項、文法構成もしくは句読点から導き出される平易な意味、または本明細書において説明される実施形態の個数もしくはタイプを含む、あらゆる可能な明示されていない解釈基準について当てはまる。
【0024】
本発明は、様々な形態において具現化することが可能であるが、複数の実施形態に関する以下の説明は、本開示が、本発明の事例としてみなされるべきものであり、示される具体的な実施形態に本発明を限定するように意図されたものではないという理解の下においてなされるものである。見出しは、便宜上の理由のみにより提示されるものであり、本発明をいかなる意味においても限定するように意図したものではない。いずれの見出しの下に示されるまたは本開示のいずれの部分に示される実施形態も、本開示の同一のまたは任意の他の見出しまたは他の部分に示される実施形態と組み合わせることができる。
【0025】
本明細書において別様のことが示されるかまたは文脈により別様のことが明示されない限り、本明細書に記載される要素のあらゆる可能なバリエーションでのあらゆる組合せが、本発明に包含される。
【0026】
図1は、電気療法治療のための一例の装置10を示す。一般的には、装置10は、可搬式バッテリによりまたは電源により動作するデバイスであってもよく、このデバイスは、トランスデューサアレイまたは他の電極により体内に交流電場を生成する。装置10は、電場発生器12と、1つまたは複数の電極(例えばトランスデューサ)アレイ104とを備え、各電極アレイ104は、複数の電極106を備え得る。装置10は、電場発生器12を介して腫瘍治療電場(TTフィールド)(例えばある腫瘍細胞タイプの場合には150kHzの、またはある別の腫瘍細胞タイプの場合には300kHzの)を発生させ、1つまたは複数の電極アレイ104を介して身体のある領域にTTフィールドを送達するように構成され得る。電場発生器12は、バッテリおよび/または電源により動作するデバイスであり得る。
【0027】
電場発生器12は、信号発生器18と通信状態にあるプロセッサ16を備え得る。電場発生器12は、プロセッサ16および信号発生器18のパフォーマンスを制御するように構成された制御ソフトウェア20を備え得る。
【0028】
信号発生器18は、波形またはパルス列の形態で1つまたは複数の電気信号を発生し得る。信号発生器18は、約50kHz~約500kHzの(好ましくは約100kHz~約300kHzの)範囲内の周波数にて交流電圧波形を発生させるように構成され得る(例えばTTフィールド)。これらの電圧は、治療対象の組織における電場強度が典型的には約0.1V/cm~約10V/cmの範囲内になるような電圧である。
【0029】
電場発生器12の1つまたは複数の出力24は、1つまたは複数の導電リード線22に結合され得、これらの導電リード線22は、それらの一方の端部にて信号発生器18に装着される。これらの導電リード線22の他方の端部は、1つまたは複数の電極アレイ104に接続され、これらの電極アレイ104は、電気信号(例えば波形)により活性化される。導電リード線22は、可撓性金属シールドを有する標準的な絶縁導体からなるものであってもよく、導電リード線22により発生した電場の拡散を防止するために接地されてもよい。1つまたは複数の出力24は、順次動作され得る。信号発生器18の出力パラメータには、例えば電場強度、周波数(例えば治療周波数)、および1つまたは複数の電極アレイ104の最高許容温度などが含まれ得る。これらの出力パラメータは、プロセッサ16との組合せにおいて制御ソフトウェア20によって設定および/または決定され得る。所望の(例えば最適な)治療周波数の決定後に、制御ソフトウェア20は、プロセッサ16に、信号発生器18に対して制御信号を送信させ得る。これにより、信号発生器18は、1つまたは複数の電極アレイ104に対して所望の治療周波数を出力する。さらには、制御ソフトウェア20が、プロセッサ16に、TTフィールドの方向を変更させ得るか、または本明細書においてさらに開示される様式にてTTフィールドの特性を他の方法で調節させ得ることが予期される。
【0030】
1つまたは複数の電極アレイ104は、治療を集中させるために標的体積に所望の構成、方向、および強度の電場を発生させるように様々な形状および位置にて構成され得る。任意には、1つまたは複数の電極アレイ104は、関心体積中において2つの電場を2つの異なる方向に送達するか、またはさらには3つの電場を3つの異なる方向に送達するように構成され得る。任意には、1つまたは複数の電極アレイ104は、関心体積中において2つの垂直な電場方向にまたはさらには3つの直交する電場方向に送達を行うように構成され得る。
【0031】
かかる電気療法システムの使用を対象とするさらなる開示が、2021年6月3日に公開されたUrmanらの米国特許出願公開第2021/0162228号に提示されている。この出願公開の全開示が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
トランスデューサは、従来的には患者の上の外部に位置決めされるが、本開示は、患者の体内に電極を位置決めすることにより腫瘍部位に局所的な電場が形成される点に利点が存在すると認識している。
【0033】
使用において、TTフィールドにより発生する電場が細胞膜および分子に対して配向される方向を変更することにより、殺腫瘍効果の改善が可能となることが予期される。より多くの方向変更が適用されることにより、標的構造物ごとに見た場合の電場強度の変動が小さくなり、したがって有効閾値未満の弱い電場強度を受ける構造物の数がより削減される。
【0034】
TTフィールドは、脳腫瘍(例えばグリア芽細胞腫)の治療向けにFDA認可されたものである。しかし、経皮アレイを介して脳内の標的領域へTTフィールドを送達することは、主としては頭蓋の抵抗率が高いことが原因となりとりわけ困難となり得る。さらに、このアレイにとって好ましい頭蓋上の位置は、耳によって部分的に妨げられる場合がある。本発明は、頭蓋内に1つまたは複数のアレイを配置することにより、頭蓋の高抵抗率の問題を回避し、皮膚表面上の障害物を免れる。腫瘍の切除(除去)が、TTフィールドによる治療前にしばしば行われるため、本装置は、切除により形成された空部スペースに挿入され得ることになり、いくつかの実施形態では、この空部スペースを塞ぐように膨張され得る。後者のアプローチは、切除を免れたものなどの浮遊癌細胞またはクラスターの近傍に1つまたは複数のアレイを配置するというさらなる利点を有し、この利点は、ヒト(哺乳類)の身体の他の部分の癌に対してまで範囲が及ぶ。
【0035】
本明細書においては、様々な態様においておよび
図2および
図3を参照として、TTフィールドを形成するための植込み可能装置100を開示する。この植込み可能装置100は、支持構造部102(例えば装置の本体または主要構造部)と、この支持構造部上に配設された(およびこの支持構造部により支持された)少なくとも1つの電極アレイ(任意には複数の電極アレイ)104とを備え得る。各電極アレイが、複数の電極106を備え得る。電極アレイ104は、所望の用途および効果に応じて、支持構造部の周囲に均等に(例えば等間隔で)または不均一な分布で分散され得る。
【0036】
任意には、支持構造部102は、収縮構成から拡張構成へ膨張可能であり得る。したがって、支持構造部102は、被験者の体内におけるまたは身体に対する電極アレイ104の位置決めを調節するために選択的に膨張または収縮され得るバルーンとして機能し得ることが予期される。例えば、支持構造部102は、導管107と流体連通状態にあり得る内部103を画成し得る。この導管107は、支持構造部102を膨張させるためにそこを通る流体を受けるように構成され得る。前記流体の実施形態は、その流体が例えば抗菌性を有する、腫瘍破壊性を有する、生体適合性を有する、または不活性であるなどの生物学的特性を有する場合に望ましいものとなり得る。また、かかる流体の実施形態は、その流体が例えば伝熱性または吸熱性などの熱力学的特性を有する場合にも望ましいものとなり得る。また、この流体の実施形態は、流体が例えば電場を反射、遮蔽、伝達、または誘導する能力などの電気的特性を有することにより、腫瘍の近傍により強力かつより効果的な電場を発生させることを可能にする場合にも望ましいものとなり得る。この流体は、導電性を有してもよく、または非導電性を有してもよい。したがって、この流体は、その所望の生物学的特性、熱力学的特性、および/または電気的特性に基づいて選択することが可能である。このようにすることで、支持構造部102は、収縮構成から拡張構成へと膨張されるように構成され得る。いくつかの態様では、支持構造部102は、拡張構成にある場合に、球形状、卵形状、円筒形状、偏長形状、細長形状、平坦形状、湾曲形状、非結晶形状、または任意の適切な形状を有することが可能である。任意には、支持構造部102は、支持構造部102の内部103内における流体圧力によって拡張するように構成され得る少なくとも1つの可撓性壁部を備えることが可能である。
【0037】
例示の態様では、および
図2を参照すると、この少なくとも1つの電極アレイは、複数の電極アレイ104からなり得る。いくつかの任意の態様では、植込み可能装置100は、支持構造部102の第1の部分120上に配設された第1の電極アレイ104aと、支持構造部の第2の部分122上に配設された第2の電極アレイ104bとを備え得る。任意には、支持構造部102の第1の部分120および第2の部分122は、支持構造部の両側において中心に位置決めされ得るまたはほぼ中心に位置決めされ得る。任意の態様では、植込み可能装置100は、支持構造部102の第3の部分124上に配設された第3の電極アレイ104cと、支持構造部の第4の部分126上に配設された第4の電極アレイ104dとをさらに備え得る。任意には、支持構造部102の第3の部分124および第4の部分126は、支持構造部の両側において中心に位置決めされ得るまたはほぼ中心に位置決めされ得る。さらに他の任意の態様では、植込み可能装置100は、支持構造部102の第5の部分128上に配設された第5の電極アレイ104eと、支持構造部の第6の部分(図示せず)の上に配設された第6の電極アレイ104fとを備え得る。任意には、支持構造部102の第5の部分128および第6の部分は、支持構造部の両側において中心に位置決めされ得るまたはほぼ中心に位置決めされ得る。したがって、任意には、いくつかの態様において、植込み可能装置100は、支持構造部102の周囲に離間された6個の電極アレイ104を備え得る。しかし、例えば1個、2個、3個、4個、5個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、または16個の電極アレイを含む、任意の所望の個数の電極アレイをこの支持構造部に関連づけ得ることが予期される。有利には、本明細書において開示される例示の電極アレイは、標的領域中の腫瘍細胞を死滅させるために適用可能である電場パターン数を最大化させ得ることが、当業者には理解されよう。しかし、これらの例示のアレイは、非限定的な例として理解されるべきであり、本開示の範囲および特許請求の範囲は、本明細書に示される例に限定されない点が予期される。さらに、ある電極構成および設計は現行の製造技術により制約されるが、将来的には他の製造技術により異なる電極構成が可能になる点が、当業者には理解されよう。
【0038】
例示の態様では、および上記でさらに説明したように、この複数の電極アレイ104は、支持構造部102の第1の部分120上に配設された第1の電極アレイ104aと、支持構造部の第2の部分122上に配設された第2の電極アレイ104bとを備え得る。これらの態様では、拡張構成において、第1の電極アレイ104aおよび第2の電極アレイ104bは、第1の方向に整列され得る。例示の態様では、この第1の方向は、第1の電極アレイ104aおよび第2の電極アレイ104bのそれぞれの図心125同士の間に延在する第1の軸110と一致し得る。本明細書において、「図心」という用語は、所与の物体または構造物が占める領域の幾何学的中心を示し得る。
【0039】
さらなる任意の態様では、および上記でさらに説明したように、これらの複数の電極アレイ104は、支持構造部102の第3の部分124上に配設された第3の電極アレイ104cと、支持構造部の第4の部分126の上に配設された第4の電極アレイ104dとをさらに備え得る。拡張構成において、第3の電極アレイ104cおよび第4の電極アレイ104dは、第1の方向とは異なる第2の方向に整列され得る。例示の態様では、第2の方向は、第3の電極アレイ104cおよび第4の電極アレイ104dのそれぞれの図心125同士の間に延在する第2の軸112と一致し得る。任意には、これらの態様において、第1の軸110および第2の軸112は、交差しないことが予期される。さらなる態様では、第1の軸110および第2の軸112は交差し得ることが予期される。任意には、これらの態様において、第2の軸112は、第1の軸110に対して直交方向(例えば垂直方向)である、または第1の軸110に対する直交方向もしくは垂直方向から1度、5度、10度、もしくは15度の範囲内であることが可能であることが予期される。
【0040】
さらに他の任意の態様では、および上記でさらに説明したように、この複数の電極アレイ104は、支持構造部102の第5の部分128上に配設された第5の電極アレイ104eと、支持構造部の第6の部分上に配設された第6の電極アレイ104fとを備え得る。拡張構成において、第5の電極アレイ104eおよび第6の電極アレイ104fは、第1の方向および第2の方向とは異なる第3の方向に整列され得る。例示の態様では、第2の方向は、第5の電極アレイ104eおよび第6の電極アレイ104fのそれぞれの図心125同士の間に延在する(および
図2のページの内外方向に延在する)第3の軸114と一致し得る。任意には、これらの態様において、第3の軸114は、第1の軸110および第2の軸112と交差しないことが予期される。さらなる態様では、第3の軸114は、第1の軸110または第2の軸112の一方のみと交差することが予期される。これらの態様において、第3の軸114は、第1の軸110もしくは第2の軸112の前記一方に対して直交方向(例えば垂直方向)であるか、または第1の軸110もしくは第2の軸112の前記一方に対する直交方向もしくは垂直方向から1度、5度、10度、もしくは15度の範囲内であることが可能であることが予期される。さらなる態様では、第1の軸110、第2の軸112、および第3の軸114は、相互に交差し得ることが予期される。任意には、これらの態様において、第3の軸114は、第1の軸110に対して直交方向(例えば垂直方向)であるか、または第1の軸110に対する直交方向もしくは垂直方向から1度、5度、10度、もしくは15度の範囲内であることが可能であることが予期され、さらに、第3の軸114は、第2の軸112に対して直交方向(例えば垂直方向)であるか、または第2の軸112に対する直交方向もしくは垂直方向から1度、5度、10度、もしくは15度の範囲内であることが可能であることが予期される。
【0041】
いくつかの任意の態様では、拡張構成において、第1の軸110、第2の軸112、および第3の軸114のそれぞれが、支持構造部102の図心(例えば3次元中心点)を通過し得ることが予期される。さらなる態様では、第1の軸110、第2の軸112、および第3の軸114の中の少なくとも2つ(任意には2つのみ)が、支持構造部102の図心を通過し得ることが予期される。さらに他の態様では、第1の軸110、第2の軸112、および第3の軸114の中の少なくとも1つ(任意には1つのみ)が、支持構造部102の図心を通過し得ることが予期される。さらに他の態様では、第1の軸110、第2の軸112、および第3の軸114のいずれもが、支持構造部102の図心を通過しないことが予期される。さらに一般的には、複数の電極アレイの中の各電極アレイ104は、ある特定のTTフィールド分布もしくはTTフィールド配向を実現するために、支持構造部102の図心を通過する軸に沿ってまたは支持構造部の図心から選択された離間距離を有する軸に沿って、複数の電極アレイの中の他の電極アレイと整列され得ることが予期される。例えば、いくつかの例示の態様では、複数の電極アレイ104が、ある特定の様式でTTフィールドを集中させるために支持構造部の一方の側(例えば卵形支持構造部の一方の半球)に集中され得る。
【0042】
本明細書において支持構造部102の部分を説明するために用いられる場合に、「部分」という用語は、ある特定の構造物を必要とはしない。支持構造部の「部分」の例としては、平坦状プロファイル、弓状プロファイル、可変プロファイル、またはそれらの組合せを有することが可能である。例えば、
図2に示すように、各部分120、122、124、126、128は、球形状または卵形状の一部分に相当し得る。
【0043】
任意には、電極アレイ104は、電極106が上に配設されたパッチ140を備えることが可能である。任意には、このパッチは、可撓性および弾性の材料からなり得る。これらの電極との電気的接続部は、パッチが拡張しても、収縮しても、撓曲しても、または他の様式で形状変化しても、影響を被らずにとどまり得ることが予期される。一例の実施形態では、このパッチは、パッチの材料が拡張、収縮、または形状変化しても破壊されない電気的接続部を有する電極を有する。このパッチのために可撓性および拡張性を有する導電性材料を形成する一例の方法としては、WISE Srl(Milan、Italy)により提供される超音波クラスタービームインプランテーション(SCBI、supersonic cluster beam implantation)が含まれる。さらなる態様では、可撓性導体が、屈曲/波形/蛇行経路によって分離されたおよび可撓性材料中に埋入された端部により形成され得る。これらの端部は、パッチ構造体の一部分を画定し得るか、またはパッチ構造体に組み込まれ得る。このようにすることで、これらの導体は、前記端部同士の間に拡張可能な長さを有することが可能となり、パッチの可撓性材料の伸張を可能にし得る。例示の態様では、これらのパッチ140の中の1つまたは複数が、WISE Cortical Strip(WCS)(WISE Srl、Milan、Italy)として、または電極が軟質の可撓性フィルム(例えばシリコーン薄膜)内に埋入される同様の構造物として、用意され得る。
【0044】
さらなる態様では、電極106は、支持構造部102上に直接的に配設され得ることが予期される。本明細書において、これらの電極は、複数の電極アレイとして構成されるものとして説明されるが、所与の電極アレイの電極同士の間において物理的な関係づけがなされる必要はない。例えば、支持構造部102は、複数の個別にアドレス指定可能な電極が上に配設され得ることが予期され、支持構造部上のある特定の領域に関連づけられた個別の電極は、ある特定のアレイに関連づけられることが理解され得る。様々な態様において、各電極は、選択的かつ個別に極性を与えることが可能となるようにそれぞれのリード線に結合され得る。
【0045】
任意には、これらの電極アレイは、奇数個の電極106を備えることが可能である。例えば、いくつかの態様では、電極アレイは、3個、5個、7個、9個、またはそれより多くの個数の電極を備え得る。少なくとも1つの態様において、これらの電極アレイの中の1つまたは複数(任意にはすべて)が、中央電極106aと、この中央電極の周囲において離間された複数の周囲電極106bとを備え得る。任意には、様々な態様において、各電極アレイが、植込み可能装置100の他の電極アレイと同一個数の電極を備え得る。他の態様では、少なくとも1つの電極アレイが、植込み可能装置100の少なくとも1つの他の電極アレイとは異なる個数の電極を有し得る。さらに他の態様では、植込み可能装置100の各電極アレイが、それぞれ異なる個数の電極を有し得る。さらなる任意の態様では、電極アレイのそれぞれが、偶数個の電極(例えば2個、4個、6個、8個、またはそれより多くの個数の電極)を備え得る。
【0046】
植込み可能装置の使用
本明細書において開示されるように、植込み可能装置100は、様々な組織中の腫瘍を治療するために使用することが可能である。いくつかの態様では、例えば、植込み可能装置100は、脳腫瘍(例えばグリア芽細胞腫)の治療において特に有益なものとなり得る。例えば、経皮アレイを介して脳内の標的領域へTTフィールドを送達することは、主としては頭蓋の抵抗率が高いことが原因となりとりわけ困難となり得る。さらに、TTフィールドは、脳腫瘍の治療向けにFDA認可されたものである。したがって、いくつかの態様では、TTフィールドの形成対象となる標的部位は、患者の脳内に位置することになり得る。さらなる態様では、この標的部位は、患者の胴体内に位置し得る。典型的には、栄養不足により細胞が死滅した「壊死」領域を囲む、連続した癌細胞または癌細胞シェルからなる解剖学的に輪郭の明確な塊が存在する。しばしば、かかる腫瘍は、外科的に除去(「切除」)され、脳脊髄液で充填される。この脳脊髄液は、導電性を有し、この領域に印加される電場に大きな影響を及ぼす。典型的には、腫瘍の近傍に位置する浮遊癌細胞の範囲は、腫瘍細胞タイプと、個別性の高い各患者の病歴、解剖学的構造、免疫系等とにより左右されるため、腫瘍または切除空洞は、浮遊癌細胞を含む解剖学的に不明確なまたは大まかに画定された領域によって包囲されている。本明細書においては、浮遊する非連続的な癌細胞を含むこの領域は、「腫瘍周囲領域」と呼ばれる。任意には、この標的部位は、腫瘍を、およびいくつかの態様では腫瘍を囲む腫瘍周囲領域を含み得る。さらなる態様では、腫瘍の充実性部分は、外科的アクセス性、組織に対する損傷回避等に応じて可能な限り切除され、腫瘍周囲領域が、標的部位となり得る。腫瘍の内方部分(例えば壊死性コア)が切除され、腫瘍の外方部分が残される場合には、標的部位は、腫瘍の外方部分を含み得る。腫瘍全体が切除されるさらなる態様では、腫瘍周囲領域が標的部位になり得る。
【0047】
有利には、TTフィールドの方向を変更することにより、治療効果が向上し得ることが予期される。いくつかの態様では、TTフィールドは、少なくとも2つの直交方向(あるいは任意には3つの直交方向、または直交方向もしくは斜め方向であり得る複数の方向)に形成され、これにより電気反応性の細胞膜および分子に対して腫瘍および腫瘍周囲の標的領域の全体にわたり最大電場強度を行き渡らせる(sweep)ことができる。電場により影響される、およびいくつかの例では電場強度を増大または集中させてそれにより殺腫瘍効果を高める細胞の構造および特性の例としては、以下のものがある、すなわち連続的な細胞同士の間の接触点、細胞の形状(特に楕円形と球形との対比、なぜならば楕円形状は不均質な電場を生成し、したがって電場が一部の領域において集中するため)、細胞膜の厚さ、内方および外方のミトコンドリア細胞膜の厚さおよびこれらの細胞膜間の離間距離、細胞またはミトコンドリア膜イオンチャネルの時間定数および電気反応性成分、有糸分裂の最中における細胞溝、有糸分裂の最中における微小管、アクチンフィラメント、およびセプチンポリマーの配向、他の誘電泳動性の分極可能な細胞分子または細胞器官の配向、ならびに組織または細胞の中に誘導される分極可能ナノ粒子の配向である。電場方向により影響を被る細胞以下の構造物の例としては、電場と整列された場合に電流を最大限に伝える微小管、セプチン(細胞周期のそれぞれ異なる時点にて、細胞軸と整列されるかまたは直交方向になるかのいずれかとなる)、形状および特性に応じて誘電性を有する(およびしたがって有糸分裂の最中に細胞溝内に追いやられやすく、それにより細胞泡状突起形成または他の有害な影響を引き起こす)様々な細胞器官、ならびに重合の最中における微小管の「陽極」端部に対する配向が電場によって変更可能であり、したがって重合が失速するチューブリン二量体がある。任意には、TTフィールドは、周期的に発生させることが可能であり、任意にはそれによって各周期ごとに方向を変更する。いくつかの態様では、Yoram Paltiの米国特許第7,917,227号に記載されるように、TTフィールド方向の変更は、少なくとも2Hz、少なくとも15Hz、少なくとも20Hz、または少なくとも50Hzにて(例えば約15Hz~約50Hz、約20Hz~約50Hz、または約2Hz~約50Hzにて)実施され得る。前出の米国特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。有利には、本明細書において開示される実施形態は、標的領域中において発生する電場方向を迅速かつ正確に変更することが可能であり得ることが予期される。例えば、この電極構成により、臨床医が望むように電場を発生させる自由度を与えることができる。したがって、電場は、様々な(例えばランダムな)配向で位置決めされた腫瘍細胞を治療するように構成することができる。
【0048】
いくつかの態様では、植込み可能装置100は、標的部位の近傍に位置する患者内の位置に挿入され得る。例えば、いくつかの任意の態様では、植込み可能装置100は、支持構造部102が標的部位から0.5~10cm(例えば標的部位から0.5~5cm、0.5~3cm、1~10cm、1~5cm、または1~3cmなど)離間されるように位置決めすることが可能である。さらなる態様では、植込み可能装置100は、腫瘍周囲領域内(例えば腫瘍切除空洞内)に位置決めすることが可能であり、この腫瘍周囲領域が標的部位となり得る。したがって、いくつかの態様では、腫瘍の少なくとも一部分が切除されて(例えば任意には、腫瘍の壊死性コアまたは腫瘍の全体が除去されて)、切除空洞を形成することが可能であり、次いで植込み可能装置100が、この切除空洞内に位置決めされ得る。壊死性コア切除により形成された切除空洞内に植込み可能装置100を植え込むことにより、切除手技によって影響を被った健康な脳組織の最大量を保護することが可能になることが予期される。次いで、植込み可能装置100は、標的部位中にTTフィールドを発生させるために使用することが可能となる。
【0049】
いくつかの態様では、TTフィールドは、同一の電極アレイ104の中の少なくとも2つの電極間で発生され得る。
図4を参照すると、任意には、中央電極106aは、第1の極性150を帯び、周囲電極106bは、第2の逆の極性152を順次帯び得る。例えば、少なくとも1つの態様では、電位が、中央電極の周囲を周方向に移動するように、中央電極と隣接する各周囲電極との間において順次形成され得る。別の態様では、電位が、中央電極と隣接しない周囲電極との間で順次形成され得る。したがって、電極106は、
図4に示すシーケンスで、または
図4に示すシーケンスとは無関係なシーケンスで極性を与えられ得ることが予期される。標的位置が正確に認識される場合には(例えば浮遊癌細胞から成長した新規の二次腫瘍のMRIなど)、中央電極および周囲電極のサブセットの活性化により、アレイの位置を所与として、電場を腫瘍に向けて最適に配向し、腫瘍に対して電場方向を最適に変更することができる。標的位置が明確には認識されていない場合には、中央電極との組合せにおける周囲電極の逐次的活性化またはランダム活性化により、電場を腫瘍周囲領域中に最適に「行き渡らせ」、腫瘍周囲領域内の細胞に対して電場方向を最適に変更することができる。
【0050】
さらに、標的領域における組織タイプ(例えば灰白質、白質、脳脊髄液で満たされた脳室、およびそれらの腫瘍細胞等)の正確な性質、組成、およびジオメトリが、認識されていない場合がある。そのような場合には、純粋にランダムな電極活性化パターンにより、標的領域の全体にわたり最適な電場強度を発生させてもよい。
【0051】
図5を参照すると、さらなる態様では、電位が、中央電極106aの両側の対の周囲電極106b間において順次形成され得る。いくつかの態様では、順次対になる周方向に離間された電極が、
図5に順次示すように、シーケンスにおいて直前に極性を与えられた各電極対のアノードおよびカソードの隣のアノードおよびカソードを構成する。さらなる態様では、順次対になる周方向に離間された電極は、シーケンスにおいて直前に極性を与えられた各電極対のアノードおよびカソードの隣以外のアノードおよびカソードを構成する。したがって、電極106は、
図5に示すシーケンスで、または
図5に示すシーケンスとは無関係なシーケンスで極性を与えられ得ることが予期される。
【0052】
さらなる態様では、TTフィールドは、複数の電極アレイの中の2つの異なる電極アレイの中の少なくとも2つの電極間において電場を発生させることにより、標的部位中に発生され得る。したがって、2つの異なる電極アレイが、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイとして機能し得る。様々な態様において、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、隣接して位置し得る(例えば支持構造部102の隣接し合うまたは近傍に位置し合う部分の上に位置決めされ得る)。さらなる態様では、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、支持構造部102の両側すなわち対向側に位置し合う部分の上に位置し得る。さらに、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイの活性化が、TTフィールドを可変方向に発生させるために交番され得ることが予期される。例えば、
図2を参照すると、初めに、第1の期間の間において、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、第1の電極アレイ104aおよび第2の電極アレイ104bのそれぞれとなり得る。次いで、第2の期間において、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、第3の電極アレイ104cおよび第4の電極アレイ104dのそれぞれとなり得る。このようにすることで、電場が、2つの直交方向に発生され、それにより有利には方向の変更を実現し、電場強度を標的領域の全体にわたり行き渡らせることが可能となる。任意には、その後に第3の期間の間において、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、第5の電極アレイ104eおよび第6の電極アレイ104fのそれぞれとなり得る。したがって、いくつかの態様では、電場が、3つの直交方向に発生され、それにより有利には方向の実現することが可能になり得る。任意には、次いで、これらの極性が反転されることにより、電場を逆方向に形成することが可能となる。例えば、第4の期間の間において、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、最初に第1の電極アレイ104aおよび第2の電極アレイ104bのそれぞれとなり得、その極性は、第1の期間の間に与えられた極性とは逆方向のものとなり得る。第5の期間の間において、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、最初に第3の電極アレイ104cおよび第4の電極アレイ104dのそれぞれとなり得るが、その極性は、第2の期間の間に与えられた極性とは逆方向のものとなり得る。第6の期間の間において、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、最初に第5の電極アレイ104eおよび第6の電極アレイ104fのそれぞれとなり得、その極性は、第3の期間の間に与えられた極性とは逆方向のものとなり得る。
【0053】
図6Aおよび
図6Bを参照すると、任意には、第1の刺激電極アレイのすべての電極が(
図6A)、カソードまたはアノードのいずれか一方となり(すなわち第1の極性170を帯び)、第2の刺激電極アレイのすべての電極が(
図6B)、カソードまたはアノードの他方となる(すなわち第2の逆の極性172を帯びる)。この構成は、単一パッチ(例えば
図9~
図11に示すように構成された単一パッチなど)のアレイ内のみにおいて実現される活性化パターンよりもさらに広い領域にわたって前記第1の刺激電極アレイと前記第2の刺激電極アレイとの間に最大電場強度を発生させることが可能となることが予期される。
【0054】
図7Aおよび
図7Bを参照すると、さらなる任意の態様では、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイのそれぞれについて、中央電極106aは、各周囲電極106bの極性とは逆の極性を有する。したがって、第1の刺激アレイ(
図7A)は、中央電極106aにおいて第1の極性170を有し、各周囲電極106bにおいて第2の極性172を有し、第2の刺激アレイ(
図7B)は、中央電極106aにおいて第2の極性172を有し、各周囲電極106bにおいて第1の極性170を有し得る。例えば「厳重警備(heavily guarded)」アノードまたはカソードなどと呼ばれるこのような構成は、各アレイのすべての電極が同一の極性を帯びる場合と比較して、組織中に電流を付勢することにより比較的深い貫通深度を、およびしたがってより強力かつより効果的な電場を実現し得ることが予期される。いくつかの実施形態では、第1のアレイに対面するように整列された第2のアレイが、第1のアレイとは正反対の極性を有し得る。さらなる態様では、警備されたアノード構成または警備されたカソード構成の使用は、電場をある特定の方向により確実に集中させ得ることが予期される。電場位置に関してこのように確実性が追加されることにより、同時的または順次実施される医用撮像手技(例えばMRI)の焦点が、電場が位置することになる(または位置していた)特定の領域に置かれ、それによりかかる医用撮像の有効性および有用性を改善することが可能となることが予期される。
【0055】
図8A~
図8Dを参照すると、さらなる任意の態様では、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイのそれぞれの電極が、様々なパターンで極性を与えられ得る。
図8A~
図8Dは、第1の刺激電極アレイまたは第2の刺激電極アレイのいずれかについて実現され得る種々の極性パターンを示す。例えば、任意の個数(例えば1個、2個、3個、4個、またはそれより多くの個数)の電極が、第1の極性170を有し、残りの電極の中のいくつか、すべて、または0個が、逆の第2の極性172を与えられ得る。第1の電極アレイおよび第2の電極アレイの極性パターンは、相互に逆になる(例えば同一パターンであるが極性が反転されているなど)必要はないが、相互に逆であってもよい点を理解されたい。本明細書において開示されるような植込み可能装置は、事実上において無限の電極活性化の組合せを実現することが可能であり、それにより標的中における電場方向の変更を最大化することができる。任意には、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイのそれぞれの各電極が、カソードまたはアノードになるようにランダムに選択され得る。さらなる任意の態様では、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイのそれぞれの各電極が、カソード、アノード、または無変更になるようにランダムに選択される。使用時には、これらの電極アレイの極性パターンをランダムに変更することにより、パターンが設定された場合に可能となるものに比べてより良好でより均一な標的領域カバーの実現を助長することが可能となることが予期される。
【0056】
図9、
図10、および
図11は、シミュレートされた腫瘍/腫瘍周囲領域に適用されたTTフィールドの有限要素計算モデルによって生成されたものである。これらの図は、3次元モデルのx-z軸に沿った2次元断面プロットである。周縁部にバルーン電極アレイを収容した腫瘍切除空洞は、中央の透明な円形エリアであり、腫瘍周囲領域は、その周囲のカラーエリアである。このプロットは、このプロットにおいて「12時」の位置(すなわち上側の位置)に位置するカソードとして活性化されたパッチアレイ(支持構造部の部分104cに位置決めされた電極アレイ、
図2を参照)の全体と、このプロットにおいて「3時」の位置(すなわち右側の位置)に位置するアノードとして活性化されたパッチ(支持構造部の部分104bに位置決めされた電極アレイ、
図2を参照)の全体とにより発生した、腫瘍周囲領域内の電場強度の静的スナップショットを示す。すなわち、電極アレイ104cのすべての電極106(
図1)が、負電荷を帯び、電極アレイ104bのすべての電極106が、正電荷を帯びる。赤色エリアおよびそのすぐ隣のカラーは、有効な殺腫瘍電場強度を示唆した。凡例バーは、有効電場強度の割合を示す(凡例バーの数字×100%)。
図9および
図10は、20センチメートルの半径を有する同一サイズの腫瘍周囲領域を示すが、
図9よりも
図10の電極により多くの電流が印加されている。
図11は、25センチメートルの半径を有するより大きな腫瘍周囲領域を示し、
図9と同一の電流が電極に流れている。このパッチアレイ設計により、これらの電極に対する印加電流を増大させることによって(
図9と比較して
図10にて)、効果的な電場強度で所与の腫瘍周囲領域をカバーすることが可能となることが分かるが、この電流の規模は、例えば健康な組織に不利な損傷を与えるのに十分な化学反応または加熱効果を生じさせる恐れのある電極の電流密度などの、安全上の考慮要件によって制約を受け得る。典型的には、これらの潜在的損傷効果は、様々な組織の成分およびジオメトリに印加される電場の数値モデリングによって予測することが可能である。
図11は、電場強度が腫瘍周囲領域の外縁まで自動的には及ばず、距離依存的なものとなることを示す。
【0057】
さらに他の態様では、植込み可能デバイス100は、損傷限界を意図的に超過することによって腫瘍細胞を熱により死滅させるように構成され得ることが予期される。このようにすることで、熱アブレーションおよびTTフィールドは、単一の装置によって提供されて、追加的な機器を植え込む必要から生じる損傷を最小限に抑えることが可能となる。任意には、TTフィールドは、熱アブレーションと同時に提供され得る。さらに他の態様では、植込み可能デバイスは、化学療法薬剤を送達するように構成された出口を備え得る。任意には、このデバイスは、化学療法およびTTフィールドを同時に提供するために使用され得る。バルーン材料により、補充可能でありながら、制御流量にて腫瘍周囲領域に化学療法薬剤を潅流させることが可能となり得る。いくつかの態様では、TTフィールドは、潅流流量を調整するために使用され得る。
【0058】
使用時に、標的が2つのパッチアレイ間に位置することが認識されている場合には、TTフィールドは、この標的領域に局所的に印加され得る。より一般的には、標的は、輪郭があまり明確ではなく例えば浮遊癌細胞などであり、電場は、腫瘍周囲領域全体にわたり直交方向に行き渡らせられる。このプロトコルは、例えば時計回り方向などにy軸(
図9~
図11のプロットの左下角に記載の軸を参照)を中心として、次いでx軸を中心として、および次いでz軸を中心として円形にプロットを回転させ、それにより腫瘍周囲領域の大部分を有効電場強度でおよび様々な方向からカバーすることによって、予見することができる。さらに、パッチ電極アレイパターンの変更は、明確な標的に対して電場を成形するためには有用となり得るが、当技術で知られるような数値モデリングを用いずに予測することは困難になり得ることが予期される。
【0059】
したがって、第1のアレイのすべての電極を用いて第1の極性を発生させ、第2のアレイのすべての電極については第2の逆の極性を発生させることが、電場カバー領域を最大化するために望ましいものとなり得ることが予期される。これは、腫瘍細胞の正確な位置が認識されていない場合に有益であり得る。さらに、標的部位が正確に認識されている場合には、同一アレイ上の電極間に電場を発生させることが有利となり得ることが予期される。例えば、
図4および
図5を参照すると、正確な標的領域が認識されている場合には、中央電極において第1の極性を発生させ、周囲電極において第2の逆の極性を発生させることが望ましいものとなり得る。
【0060】
図12を参照すると、任意には、植込み可能装置100は、第1のTTフィールド刺激装置であることが可能であり、第2のTTフィールド刺激装置は、標的部位180が第1のTTフィールド刺激装置と第2のTTフィールド刺激装置との間に配設されるように位置決めされ得る。例えば、第2のTTフィールド刺激装置は、患者の頭蓋182に対接して位置決めされ得る経頭蓋刺激装置200からなることが可能である。この場合に、TTフィールドは、第1のTTフィールド刺激装置と第2のTTフィールド刺激装置との間において発生され得る。複数の経頭蓋部位によって、標的領域において見た電場方向の変更を実現することが可能となり得る。より一般的には、様々な態様において、第2のTTフィールド刺激装置は、患者の身体外部上に少なくとも部分的に(任意には全体的に)位置決めされ得ることが予期される。
【0061】
態様例
以下、既述の製品、システム、および方法、ならびにそれらのバリエーションを鑑みて、本発明のいくつかのより具体的に記述した態様を説明する。しかし、具体的に挙げるこれらの態様は、本明細書において説明される種々のもしくはより一般的な教示を包含する種々の請求項に対して限定効果を有するものとしても、またはこれらの「具体的な」態様が本明細書において文言通りに用いられる表現の固有の意味以外に何らかの点において幾分限定的なものであるとも解釈されるべきでない。
【0062】
態様1:腫瘍治療電場(TTフィールド)を形成するための植込み可能装置であって、支持構造部と、支持構造部上に配設された少なくとも1つの電極アレイ(任意には複数の電極アレイ)とを備え、各電極アレイは、複数の電極を備える、植込み可能装置。
【0063】
態様2:支持構造部が、収縮構成から拡張構成へと膨張可能である、態様1に記載の植込み可能装置。
【0064】
態様3:植込み可能装置の支持構造部が、内部を画成し、植込み可能装置が、支持構造部の内部と流体連通状態にある導管をさらに備え、導管は、支持構造部を膨張させるためにそこを通る流体を受けるように構成される、態様2に記載の植込み可能装置。
【0065】
態様4:複数のリード線をさらに備え、これらの複数のリード線の各リード線は、各電極アレイの中の複数の電極の中の各電極が、各電極アレイの中の複数の電極の中の他の各電極とは無関係に電荷を受けるように構成されるように、各電極に結合される、前出の態様の中のいずれか1つに記載の植込み可能装置。
【0066】
態様5:複数の電極アレイの中の各電極アレイが、電極アレイの複数の電極が上に配設されたパッチを備える、前出の態様の中のいずれか1つに記載の植込み可能装置。
【0067】
態様6:拡張構成において、支持構造部は、第1の部分および対向側の第2の部分を有し、複数の電極アレイは、支持構造部の第1の部分の上に配設された第1の電極アレイと、支持構造部の第2の部分の上に配設された第2の電極アレイとを備え、第1の電極アレイおよび第2の電極アレイは、第1の軸に沿って離間される、態様2から態様5のいずれか1つに記載の植込み可能装置。
【0068】
態様7:拡張構成において、支持構造部は、第3の部分および対向側の第4の部分を有し、複数の電極アレイは、支持構造部の第3の部分の上に配設された第3の電極アレイと、支持構造部の第4の部分の上に配設された第4の電極アレイとを備え、第3の電極アレイおよび第4の電極アレイは、第1の軸に対して垂直な第2の軸に沿って離間される、態様6に記載の植込み可能装置。
【0069】
態様8:拡張構成において、支持構造部は、第5の部分および対向側の第6の部分を有し、複数の電極アレイは、支持構造部の第5の部分の上に配設された第5の電極アレイと、支持構造部の第6の部分の上に配設された第6の電極アレイとを備え、第5の電極アレイおよび第6の電極アレイは、第1の軸および第2の軸のそれぞれに対して垂直な第3の軸に沿って離間される、態様7に記載の植込み可能装置。
【0070】
態様9:支持構造部は、実質的に球形または卵形である、前出の態様の中のいずれか1つに記載の植込み可能装置。
【0071】
態様10:複数の電極アレイの各電極アレイが、奇数個の電極を備える、前出の態様の中のいずれか1つに記載の植込み可能装置。
【0072】
態様11:複数の電極アレイの各電極アレイが、中央電極と、中央電極の周囲に離間された複数の周囲電極とを備える、態様10に記載の植込み可能装置。
【0073】
態様12:複数の電極アレイの中の少なくとも1つの電極アレイが、中央電極と、中央電極の周囲に離間された複数の周囲電極とを備える、前出の態様の中のいずれか1つに記載の植込み可能装置。
【0074】
態様13:標的部位の近傍に位置する患者内のある位置に態様1から態様12のいずれか1つに記載の植込み可能装置を挿入することと、植込み可能装置を用いて標的部位中にTTフィールドを発生させることとを含む、方法。
【0075】
態様14:植込み可能装置が第1のTTフィールド刺激装置であり、方法が、この第1のTTフィールド刺激装置と第2のTTフィールド刺激装置との間に標的部位が配設されるように第2のTTフィールド刺激装置を位置決めすることをさらに含み、植込み可能装置を用いて標的部位中にTTフィールドを発生させることは、第1のTTフィールド刺激装置と第2のTTフィールド刺激装置との間にTTフィールドを発生させることを含む、態様13に記載の方法。
【0076】
態様15:第2のTTフィールド刺激装置は、経頭蓋装置である、態様14に記載の方法。
【0077】
態様15A:第2のTTフィールド刺激装置は、患者の身体の外部上に位置決めされる、態様14に記載の方法。
【0078】
態様16:第2のTTフィールド刺激装置は、態様1から態様10のいずれか1つに記載の植込み可能装置を備える、態様14に記載の方法。
【0079】
態様17:植込み可能装置を用いて標的部位中にTTフィールドを発生させることは、同一の電極アレイの中の少なくとも2つの電極間に電場を発生させることを含む、態様13に記載の方法。
【0080】
態様18:植込み可能装置は、態様11または態様12に記載の植込み可能装置であり、この植込み可能装置を用いて標的部位中にTTフィールドを発生させることは、複数の電極アレイの中の少なくとも1つの電極アレイの中央電極と隣接する各周囲電極との間において電位を順次形成することを含む、態様17に記載の方法。
【0081】
態様19:植込み可能装置は、態様11または態様12の植込み可能装置であり、この植込み可能装置を用いて標的部位中にTTフィールドを発生させることは、複数の電極アレイの中の少なくとも1つの電極アレイの中央電極と隣接しない周囲電極との間において電位を順次形成することを含む、態様17に記載の方法。
【0082】
態様20:植込み可能装置は、態様11または態様12の植込み可能装置であり、この植込み可能装置を用いて標的部位中にTTフィールドを発生させることは、複数の電極アレイの中の少なくとも1つの電極アレイの中央電極の両側に位置する周囲電極の対間に電位を順次形成することを含む、態様17に記載の方法。
【0083】
態様21:順次対になる周方向に離間された電極が、隣のアノードおよびカソードを構成する、態様20に記載の方法。
【0084】
態様22:順次対になる周方向に離間された電極の対が、隣以外のアノードおよびカソードを構成する、態様20に記載の方法。
【0085】
態様23:植込み可能装置は、態様1から態様12のいずれか1つに記載の植込み可能装置であり、この植込み可能装置を用いて標的部位中にTTフィールドを発生させることは、複数の電極アレイの中の2つの異なる電極アレイの少なくとも2つの電極間に電場を発生させることを含み、これら2つの異なる電極アレイは、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイからなる、態様13に記載の方法。
【0086】
態様24:第1の刺激電極アレイの中のすべての電極が、カソードおよびアノードの一方であり、第2の刺激電極アレイの中のすべての電極が、カソードおよびアノードの他方である、態様23に記載の方法。
【0087】
態様25:第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイのそれぞれの電極が、中央電極と、中央電極の周囲に離間された複数の周囲電極とを備え、第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイのそれぞれについて、中央電極は、各周囲電極とは逆の極性を有する、態様23に記載の方法。
【0088】
態様26:第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイのそれぞれの電極が、カソード、アノード、または無変更になるようにランダムに選択される、態様23に記載の方法。
【0089】
態様27:第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、植込み可能装置の支持構造部の両側に位置する、態様20から態様26のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
態様28:第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイの少なくとも2つの電極間に電場を発生させることを停止することと、複数の電極アレイの中の2つの異なる電極アレイの中の少なくとも2つの電極間に電場を発生させることであって、これらの2つの異なる電極アレイが、第3の刺激電極アレイおよび第4の刺激電極アレイからなり、第3の刺激電極アレイおよび第4の刺激電極アレイは、第1の刺激アレイおよび第2の刺激アレイとは異なる、電場を発生させることとをさらに含む、態様20から態様27のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
態様29:第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、第1の軸に対して離間され、第3の刺激電極アレイおよび第4の刺激電極アレイは、第2の軸に対して離間され、第1の軸は、第2の軸に対して直交方向をなす、態様28に記載の方法。
【0092】
態様30:第3の刺激電極アレイおよび第4の刺激電極アレイの中の少なくとも2つの電極間に電場を発生させること停止することと、複数の電極アレイの中の2つの異なる電極アレイの中の少なくとも2つの電極間に電場を発生させることであって、これらの2つの異なる電極アレイが、第5の刺激電極アレイおよび第6の刺激電極アレイからなり、第5の刺激電極アレイおよび第6の刺激電極アレイは、第1の刺激アレイ、第2の刺激アレイ、第3の刺激アレイ、および第4の刺激アレイとはいずれも異なる、電場を発生させることとをさらに含む、態様28または態様29に記載の方法。
【0093】
態様31:第5の刺激電極アレイおよび第6の刺激電極アレイは、第3の軸に対して離間され、第3の軸は、第1の軸および第2の軸のそれぞれに対して直交方向をなす、態様30に記載の方法。
【0094】
態様32:標的部位は、患者の胴体内に位置する、態様13から態様31のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
態様33:標的部位は、患者の脳内に位置する、態様13から態様31のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
態様34:標的部位中に発生されたTTフィールドは、植込み可能装置の支持構造部から1~3cm離間された腫瘍周囲領域内に送達される、態様13から態様33のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
態様35:植込み可能装置を挿入することは、切除空洞内に植込み可能装置を挿入することを含む、態様13から態様34のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
態様36:植込み可能装置を用いて標的部位中にTTフィールドを発生させることは、第1の方向にTTフィールドを発生させることと、第1の方向とは異なる第2の方向にTTフィールドを発生させることとを、ならびに任意には第1の方向および第2の方向とは異なる第3の方向にTTフィールドを発生させることを含む、態様13から態様35のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
態様37:拡張構成において、支持構造部は、第1の部分および対向側の第2の部分を有し、複数の電極アレイは、支持構造部の第1の部分上に配設された第1の電極アレイと、支持構造部の第2の部分上に配設された第2の電極アレイとを備え、第1の電極アレイおよび第2の電極アレイは、第1の方向に整列される、態様2から態様12のいずれか1つに記載の植込み可能装置。
【0100】
態様38:拡張構成において、支持構造部は、第3の部分および対向側の第4の部分を有し、複数の電極アレイは、支持構造部の第3の部分上に配設された第3の電極アレイと、支持構造部の第4の部分上に配設された第4の電極アレイとを備え、第3の電極アレイおよび第4の電極アレイは、第1の方向とは異なる第2の方向に整列される、態様37に記載の植込み可能装置。
【0101】
態様38A:拡張構成において、支持構造部は、第5の部分および対向側の第6の部分を有し、複数の電極アレイは、支持構造部の第5の部分上に配設された第5の電極アレイと、支持構造部の第6の部分上に配設された第6の電極アレイとを備え、第5の電極アレイおよび第6の電極アレイは、第1の方向および第2の方向のいずれとも異なる第3の方向に整列される、態様38に記載の植込み可能装置。
【0102】
態様39:第1の刺激電極アレイおよび第2の刺激電極アレイは、第1の軸と一致する方向に整列され、第3の刺激電極アレイおよび第4の刺激電極アレイは、第2の軸と一致する方向に整列され、第1の軸は、第2の軸に対して直交方向をなす(または直交方向から15度、10度、5度、もしくは1度の範囲内である)、態様28に記載の方法。
【0103】
明快な理解を目的として例示および実施例を用いて上記で本発明をある程度詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲内においていくつかの変更および修正が行われてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 装置
12 電場発生器
16 プロセッサ
18 信号発生器
20 制御ソフトウェア
22 導電リード線
24 出力
100 植込み可能装置、植込み可能デバイス
102 支持構造部
103 内部
104 電極アレイ
104a 第1の電極アレイ
104b 第2の電極アレイ、部分
104c 第3の電極アレイ、部分
104d 第4の電極アレイ
104e 第5の電極アレイ
104f 第6の電極アレイ
106 電極
106a 中央電極
106b 周囲電極
107 導管
110 第1の軸
112 第2の軸
114 第3の軸
120 第1の部分
122 第2の部分
124 第3の部分
125 図心
126 第4の部分
128 第5の部分
140 パッチ
150 第1の極性
152 第2の極性
170 第1の極性
172 第2の極性
180 標的部位
182 頭蓋
200 経頭蓋刺激装置
【国際調査報告】