(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】プラスチック製の蓋付容器およびプラスチック製の蓋付容器のマーキング方法
(51)【国際特許分類】
B65D 51/24 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B65D51/24 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519539
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2021076327
(87)【国際公開番号】W WO2022069360
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ エスイー
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, 22339 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】ゲルケ・ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ホール・カイ
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084EC03
3E084FA03
3E084FC01
3E084GA06
3E084GB06
3E084HB02
3E084HC03
3E084JA20
3E084LB02
(57)【要約】
・管状容器本体と、底部の容器床と、上部の容器開口部と、容器開口部上または容器開口部付近にある円周方向の第1のシール領域とを有する容器と、
・蓋床と、第1のシール領域に対してシールするための円周方向の第2のシール領域とを有する蓋と、
・第1のシール領域が第2のシール領域とシール接触しているときに蓋を容器に解放可能に取り付けるための少なくとも1つの装置と
を備え、
・蓋が、上側に、蓋付き容器内の試料を処理するための実験装置内の蓋付き容器の位置合わせをマーキングするため、および/または蓋付き容器内に充填された試料を表す分割をマーキングするため、および/または蓋付き容器内の試料の処理工程を表す分割をマーキングするための、容器の中心軸の周りに延びる一連の分割を有する、
実験室で試料を処理するためのプラスチック製の蓋付き容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験室で試料を処理するためのプラスチック製の蓋付き容器であって、
・管状容器本体(2)と、底部の容器床(3)と、上部の容器開口部(4)と、前記容器開口部(4)上または前記容器開口部(4)の付近にある円周方向の第1のシール領域(5)とを有する容器(1)と、
・蓋床(7)と、前記第1のシール領域(5)に対してシールするための円周方向の第2のシール領域(10)とを有する蓋(6)と、
・前記第1のシール領域(5)が前記第2のシール領域(10)とシール接触しているときに前記蓋(6)を前記容器(1)に解放可能に取り付けるための少なくとも1つの装置(15)と
を備え、
・前記蓋(6)が、上側に、前記蓋付き容器内の試料を処理するための実験装置内の前記蓋付き容器の位置合わせをマーキングするため、および/または前記蓋付き容器に充填された試料を表す分割(16)をマーキングするため、および/または前記蓋付き容器内の試料の処理工程を表す分割(16)をマーキングするための、前記容器(1)の中心軸の周りに延びる一連の分割(16)を有することを特徴とする、蓋付き容器。
【請求項2】
前記分割(16)が、前記容器(1)の前記中心軸の周りに延びる目盛(21)および/または数字(17)、文字(19)、記号(18)、または上述のしるし(22)の組み合わせの一連の目盛線(20)である、請求項1に記載の蓋付き容器。
【請求項3】
前記蓋(6)の前記上側が、インクまたは染料または塗料またはレーザビームによって前記分割(16)でマーキングされ得る、請求項1または2に記載の蓋付き容器。
【請求項4】
前記分割(16)が、以下の手段、すなわち、前記蓋(6)の前記上側の窪みと、前記蓋(6)の前記上側の隆起と、前記蓋(6)の前記上側の印刷と、前記蓋(6)にクリップ留めされたまたは前記蓋上にクリップ留めされたクリップと、前記蓋の少なくとも1つのプラグ構造に栓をして接続された少なくとも1つのプラグ要素と、折り曲げられ得るまたは破断され得る前記蓋の複数の構造要素とのうちの1つまたは複数で前記蓋(6)の前記上側に設計される、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項5】
以下の特徴、すなわち、
・前記蓋(6)が、前記蓋床(7)の下側から突出して、前記蓋(6)を前記管状容器(1)に解放可能に取り付けることができるプラグ(8)および/またはカラーを有する、
・前記蓋付き容器が、クランプされた蓋付き容器またはねじ込み式蓋付き容器である、
・前記蓋付き容器がスナップ式蓋付き容器である、
・前記蓋が、ヒンジ(11)によって前記容器に接続される、
・前記第1のシール領域(5)が前記容器本体(2)の内周に配置され、前記第2のシール領域(10)が前記プラグ(8)の外周に配置される、かつ/または前記第1のシール領域(5)が前記容器本体(2)の上縁部の前記容器開口部(4)の周りに配置され、前記第2のシール領域(10)が前記蓋床(7)の下側に配置される、かつ/または前記第1のシール領域(5)が前記カラーの内周に配置され、前記第2のシール領域が前記容器本体(2)の外周に配置される、
・前記第1のシール領域(5)が前記第2のシール領域(10)とシール接触しているときに前記蓋(6)を前記容器(1)に解放可能に取り付けるための装置(15)が、前記蓋の前記シール領域と前記容器との間の摩擦接続、および/または前記蓋(6)と前記容器(1)との間のスナップ接続(14)、および/または前記蓋(6)と前記容器(1)との間のねじ込み接続である、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項6】
前記数字(17)、文字(19)、記号(18)、または前記上述のしるし(22)の組み合わせが、前記目盛(21)の前記目盛線(20)のところ、前記目盛線の上、または前記目盛線の間で前記容器(1)の前記中心軸の周りに連続して前記蓋(6)の前記上側に配置される、請求項2~5のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項7】
前記しるし(22)が、前記蓋の前記上側が垂直に位置合わせされ、前記ヒンジ(11)が上向きに配置されたとき、または前記蓋の前記上側が別の規定された位置合わせで配置されたときに、直立するように位置合わせされる、請求項2~6のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項8】
前記目盛(18)が、目盛線(20)が前記ヒンジ(11)の中央に位置合わせされるか、または2本の目盛線(20)が前記ヒンジ(11)の中央の両側に対称的に配置されるように設計される、請求項2~7のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項9】
前記容器(1)が、前記外周に少なくとも1つのマーキングを有し、前記蓋(6)が、前記マーキングと位置合わせされた特定の分割(16)で前記容器(1)に解放可能かつ密封的に取り付けられ得る、請求項1~8のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項10】
前記分割(16)が、前記容器(1)の前記中心軸の周りに均一に分布し、好ましくは合計4分割、10分割、または12分割が存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の蓋付き容器。
【請求項11】
実験室で試料を処理するときにプラスチック製の蓋付き容器をマーキングする方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の蓋付き容器が試料で充填され、前記蓋が前記容器に解放可能に取り付けられ、前記蓋付き容器が実験装置に挿入され、分割が前記実験装置の基準点と位置合わせされ、前記基準点と位置合わせされた前記蓋付き容器の前記分割が、前記蓋付き容器が前記実験装置に挿入される前または後、および/または前記蓋付き容器が異なる蓋付き容器内の複数の試料を処理するためにユーザによって選択された特定の分割を用いて前記実験装置の基準点と位置合わせされる前または後にマーキングされ、前記蓋付き容器内の試料が前記実験容器による処理に供される、方法。
【請求項12】
前記蓋上の特定の分割が前記容器のマーキングと位置合わせされ、この状態で、前記蓋付き容器が前記実験装置に挿入され、分割が前記実験装置の基準点と位置合わせされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
実験室で試料を処理するときにプラスチック製の蓋付き容器をマーキングする方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の蓋付き容器が試料で充填され、前記蓋が前記容器に解放可能に取り付けられ、前記蓋付き容器に充填された前記試料を表す分割が、前記試料が前記蓋付き容器に充填される前または後、および/または少なくとも1つの処理工程が実行される前または後にマーキングされ、それぞれの処理工程を表す分割が、前記処理工程の前、後、または間に前記蓋の上側にマーキングされる、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法と組み合わせた、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記蓋の前記上側の少なくとも1つの窪みがインクもしくは染料もしくは塗料で完全にもしくは部分的に充填される、および/または前記蓋の前記上側の少なくとも一つの隆起が完全にもしくは部分的に破壊される、および/または前記蓋の前記上側の少なくとも1つの印刷がインクもしくは染料もしくは塗料でマーキングされ、または完全にもしくは部分的に破壊されるという点で、分割がマーキングされる、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験室で試料を処理するためのプラスチック製の蓋付き容器、および実験室で試料を処理するときにプラスチック製の蓋付き容器をマーキングする方法に関する。そのような蓋付き容器は、「反応容器」または試料体積がマイクロリットル範囲内にある場合には「マイクロ反応容器」とも呼ばれる。蓋付き容器は、特に、試料を処理するための医療、分子生物学および医薬用途の分野の科学および工業研究所で利用される。
【背景技術】
【0002】
試料処理では、明確な試料追跡のために蓋付き容器にマーキングすることが多い。スペースの欠如および時間的理由により、マーキングはコードの形態で行われることが多い。これは、特に、容器が「移行容器」として利用される場合、すなわち、複数の処理工程の部分的な実行に過ぎない場合に生じる。したがって、そのような蓋付き容器の場合、しばしば単純な一連の数字のみが使用され、完全な試料情報は実験室ログ、PC、またはその他で記録される。多段階処理では、そのような「移行容器」は、試料が別の容器に移送される前に、単一の作業工程にのみ使用されることが多い。
【0003】
さらに、容器の位置合わせは、特に遠心分離中に重要であり、これは試料調製用の蓋付き容器の主な用途の1つである。ユーザは、遠心分離によって濃縮された試料成分の位置の可能な限り正確に把握することによって、例えば遠心分離後に上清が除去されたときに、損失を可能な限り最小限にしたい。
【0004】
現在、手動のラベリングは、迅速かつ短期間の試料マーキングに使用されている。これは時間がかかり、手書きは非常に個性的であり、多くの場合、後にまたは異なる人によってうまく読むことができない(またはもはや読むことができない)ため、可読性の欠如に悩まされることが多い。これは、試料の混同のリスクをもたらす。特に0.5、1.5または2.0mlの小容量の蓋付き容器の蓋では、空間が少ないことも不利であり、迅速かつ読み取り可能なラベリングを困難にする。ラベル付きステッカーによるマーキングも時間がかかり、蓋付き容器へのステッカーの接着に関して問題があることが多い。
【0005】
欧州特許出願公開第2085462号明細書は、基部の側壁が1から12の数字の形態の第1のマーキングを有し、上部が文字の形態の第2のマーキングを有するカバー壁および定規を有する細胞培養皿を記載している。マーキングは、皿上の細胞の位置を記述するのに役立つ。
【0006】
欧州特許出願公開第3130659号明細書は、平面を有する八角形の角柱形状の細胞培養容器を有する細胞培養容器を記載しており、2つの対向する表面は互いに平行である。それらの表面の結果として、細胞の開始数が少ない場合でも、適切な細胞培養条件が作り出されるはずである。細胞培養容器は、一方の表面の外側に目盛およびマーキングを有するべきである。目盛は、細胞培地の量および細胞培養容器内の細胞の量を目視検査によって推定することを可能にすべきであり、マーキングは、それぞれの表面の区別を可能にすべきである。
【0007】
独国特許出願公開第102017114251号明細書は、細胞培養培地を受け入れるための容器と、容器のキャップ首部に取り付けられたキャップとを有する細胞培養ボトルを記載している。キャップには、外周に突起が設けられている。容器は、キャップの周りに基準マーキングを有する。基準マーキングに対するマーキングの位置は、キャップが正しく閉じられているかどうかを示す。
【0008】
独国特許出願公開第102017009526号明細書は、液体を受け入れるための包装と、包装を閉じるためのクロージャとを含む、貯蔵期限が制限された液体用の容器を記載している。クロージャの外向きの表面および/または容器の外面には、少なくとも1つの数字でそれぞれマーキングされ、包装が開封された日を表示する目的で個別にマーキングすることができるフィールドが配置されている。少なくとも1つの数字でマーキングされたフィールドの各々は、スクラッチおよび/またはスコアリングによるフィールドの手動マーキングに適した紙材料および/またはプラスチックから少なくとも部分的に構成される。
【0009】
米国特許第2,739,564号明細書は、用量-時間表示手段を備えた医療用カプセル、丸薬などのための二部構成の容器を記載している。この目的のために、容器は、ボトル首部に隣接する時間を示す数字および目盛線と、数字および目盛線に合わせて調整するためのカラー上の矢印または凹部を有するクロージャとを有する。逆に、クロージャが数字および目盛線を有することもでき、容器は数字および目盛線に合わせるための矢印を有することができる。
【0010】
欧州特許出願公開第2449505号明細書は、円筒形の本体およびその上に取り付けられた金属キャップを有する薬剤容器を記載している。金属キャップは前面にバーコードを有し、バーコードは中心点を囲み、それにより、バーコードによって符号化された情報を、中心点を囲む閉じた線に沿って読み取ることができる。バーコードは、収容された薬剤に関する特定の情報を符号化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2085462号明細
【特許文献2】欧州特許出願公開第3130659号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102017114251号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102017009526号明細書
【特許文献5】米国特許第2,739,564号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2449505号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このことから出発して、本発明の目的は、実験室で試料を処理するためのプラスチック製の蓋付き容器、および実験室で試料を処理するときにプラスチック製の蓋付き容器をマーキングする方法を提供することであり、これにより、試料および処理工程のより迅速で、より明確で、より確実なマーキング、および実験装置における蓋付き容器のより正確な位置合わせが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の特徴を有する蓋付き容器によって達成される。さらに、この目的は、請求項11の特徴を有する方法および請求項13の特徴を有する方法によって達成される。蓋付き容器の有利な実施形態および方法の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0014】
実験室で試料を処理するためのプラスチック製の本発明による蓋付き容器は、
・管状容器本体と、底部の容器床と、上部の容器開口部と、容器開口部上または容器開口部付近にある円周方向の第1のシール領域とを有する容器と、
・蓋床と、第1のシール領域に対してシールするための円周方向の第2のシール領域とを有する蓋と、
・第1のシール領域が第2のシール領域とシール接触しているときに蓋を容器に解放可能に取り付けるための少なくとも1つの装置と
を備え、
・蓋は、上側に、蓋付き容器内の試料を処理するための実験装置内の蓋付き容器の位置合わせをマーキングするため、および/または蓋付き容器内に充填された試料を表す分割をマーキングするため、および/または蓋付き容器内の試料の処理工程を表す分割をマーキングするための、容器の中心軸の周りに延びる一連の分割を有することを特徴とする。
【0015】
実験室で試料を処理するときにプラスチック製の蓋付き容器をマーキングするための本発明による方法では、前述のタイプの蓋付き容器は試料で充填され、蓋は容器に解放可能に取り付けられ、蓋付き容器は実験装置に挿入され、分割は実験装置の基準点と位置合わせされ、基準点と位置合わせされた蓋付き容器の分割は、蓋付き容器が実験装置に挿入される前または後、および/または蓋付き容器が異なる蓋付き容器内の試料の複数の処理のためにユーザによって選択された特定の分割で実験装置の基準点に位置合わせされる前または後にマーキングされ、蓋付き容器内の試料は実験装置による処理を受ける。
【0016】
実験室で試料を処理するときにプラスチック製の蓋付き容器をマーキングするための本発明によるさらなる方法によれば、前述のタイプの蓋付き容器は試料で充填され、蓋は容器に解放可能に取り付けられ、蓋付き容器に充填された試料を表す分割は、試料が蓋付き容器に充填される前または後、および/または少なくとも1つの処理工程が実行される前または後にマーキングされ、それぞれの処理工程を表す分割は、処理工程の前、後、または間に蓋の上側にマーキングされる。
【0017】
本発明によれば、蓋付き容器は、容器の中心軸の周りに延びる一連の分割を有する蓋床の上側に設けられる。一実施形態によれば、分割は、目盛の目盛線および/または数字、文字、記号、または前述のしるしの組み合わせである。一実施形態は、例えば、文字盤と同様に、目盛線のみ、数字のみ、または目盛線と数字の組み合わせのいずれかで設計される。分割は既に蓋上に存在するため、ユーザは、分割を簡単かつ迅速にマーキングすることによって、蓋付き容器内の試料を明確にマーキングすることができる。ユーザは、これを使用して、実験装置内の蓋付き容器の位置合わせをマーキングし、それによって試料に対する実験装置の効果をマーキングすることができる。さらに、ユーザは、分割にマーキングすることによって、蓋付き容器に充填された試料にマーキングすることができる。最後に、ユーザは、分割にマーキングすることによって、蓋付き容器内の試料で実行される処理工程にマーキングすることができる。
【0018】
ユーザは、実験装置内の任意の位置合わせで簡単かつ迅速に、試料が充填された蓋付き容器を位置決めすることができる。これは、例えば、遠心分離によって蓋付き容器内の特定の位置に濃縮された試料成分からなるペレットを形成するために、追加の処理工程を実行するためにユーザが好む位置合わせであり得、これはユーザによる上清の除去を容易にする。例えば、これが蓋付き容器の最適な位置合わせである場合、ユーザは、遠心分離中に蓋付き容器の外側として「3時の位置」を使用することができる。この場合、蓋付き容器は、「3時の位置」をとる分割が遠心力の方向の外側を向くように位置合わせされる。任意の他の位置合わせも、追加のラベリングなしで同様に行うことができる。特に、ユーザが異なる蓋付き容器内の複数の試料を処理するために常に同じ好ましい位置合わせを選択する場合、この位置合わせのために選択された分割のマーキングも省略することができる。さらに、ユーザは、分割を位置合わせすることなく、蓋付き容器を実験装置内に配置し、実験装置内の位置合わせを記録することができる。この目的のために、ユーザは、例えば、実験装置内の1つまたは複数の蓋付き容器の上側の写真を撮るか、または各蓋付き容器の位置合わせを書き留めることができる。ユーザはまた、例えば、前述の方法の1つで、選択した実験装置内の蓋付き容器の位置合わせを記録することができる。さらに、実験装置内の1つまたは複数の蓋付き容器の位置決めは、カメラによって自動的に記録することができる。
【0019】
本発明は、手動のラベリングまたはステッカー貼付よりも簡単で迅速なマーキングを可能にする。マーキングはまた、不十分な手動ラベリングによる試料混同のリスクを回避することができるため、より明確である。遠心分離機ロータ内の試料の位置合わせも、より簡単、迅速、かつ明確な方法で行うことができる。さらなる利点は、文字盤または同様のものとしての実施形態が、ユーザによって直観的に、さらなる説明なしに実施され得ることである。技術的実施は、生産努力を増加させることなく、対応して適合された射出成形ツールを用いて行うことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、分割は、容器の中心軸の周りに延びる目盛および/または数字、文字、記号、または上述のしるしの組み合わせの一連の目盛線である。目盛線および/またはしるしによって、容器の位置合わせを特に良好にマーキングすることができる。目盛線はまた、特に異なる目盛線の位置が異なる試料に割り当てられるという点で、各々の場合に充填された試料をマーキングするために使用することができる。目盛線の位置は、蓋付き容器の特定の基準位置に関連して、特に蓋と容器との間のヒンジ、蓋と容器との間のスナップ接続、または容器もしくは蓋上の追加のマーキングに関連して確立することができる。別の実施形態によれば、基準位置は、他の分割とは異なる特定の分割、例えば、より長い目盛線またはより大きい数字である。好ましくは、数字、文字または記号は、充填された試料または処理工程をマーキングするために使用される。
【0021】
別の実施形態によれば、蓋の上側は、インクまたは染料または塗料またはレーザビームによって分割部分にマーキングされ得る。この目的のために、容器の蓋は、プラスチックから構成されるか、表面テクスチャを有するか、またはインク、染料もしくは塗料がよく付着するコーティングを有することができる。別の実施形態によれば、蓋は、蓋の上側の残りの領域よりも分割部において大きな粗さを有する。分割部の粗さの増加は、インク、染料、または塗料による永久マーキングに有利である。
【0022】
別の実施形態によれば、分割は、以下の手段、すなわち、蓋の上側の窪みと、蓋の上側の隆起、蓋の上側の印刷と、蓋にクリップ留めされたまたは蓋上にクリップ留めされた少なくとも1つのクリップと、蓋の少なくとも1つのプラグ構造に接続された少なくとも1つのプラグ要素と、折り曲げられ得るまたは破断され得る蓋の複数の構造要素とのうちの1つまたは複数で蓋の上側に設計される。窪みは、実験用手袋が引き裂かれない滑らかな表面を可能にするという利点を有する。さらに、インク、染料、または塗料は、例えば、意図せずに拭き取られないように保護された方法で、フェルトペンで窪みをたどることによって、窪みに導入することができる。蓋の上側の隆起部は、隆起部を完全にまたは部分的に破壊することによって、例えばレーザビームによって隆起部を引っ掻いたり削ったり除去したりすることによってマーキングを可能にする。さらに、隆起部は、インク、染料、または塗料でマーキングすることもできる。印刷は、掻き取り、こすり落とし、もしくは他の破壊によって、または筆記用具もしくはレーザビームによる打撃、下線、丸つけ、もしくは他の加工によってマーキングすることができる。クリップは、マーキングの目的で、蓋にクリップ留めされ得るか、または様々な位置で蓋上にクリップ留めされ得る。クリップは、例えば、蓋の縁部にクランプするか、または蓋の開口部にクランプすることができるクランプまたはブラケットである。プラグ要素は、例えば、蓋の異なる位置でプラグ開口部に選択的に差し込まれ得るか、または突出したプラグペグに差し込まれ得る、ピンまたはスリーブである。この場合、プラグ開口部またはプラグペグは、蓋のプラグ構造である。さらに、プラグ要素は、特定の位置または複数の異なる位置で蓋のプラグレセプタクルにクランプすることができる分割を有するディスクとすることができる。さらに、プラグ要素は、位置マークを有するか、または複数の分割を有するリングであってもよく、このリングは、特定の位置または様々な回転位置で蓋の上側の環状溝に差し込むことができ、または下側に少なくとも1つのピンもしくは別のプラグ要素を有し、これにより、特定の位置または様々な位置で1つまたは複数のプラグ開口部に差し込むことができる。さらに、分割は、蓋の上側の複数の構造要素によって形成することができ、これは、手で、または例えば筆記装置によって、曲げたり、破断したり、破壊したりすることができる。構造要素は、例えば、蓋から垂直上方または半径方向外側に突出するペグまたは小プレート(フラッグ)であり得る。さらに、構造要素は、蓋の上側の1つまたは複数の溝を横切って横方向に延在するバーとすることができ、例えば筆記装置によって、破壊することができる。
【0023】
別の実施形態によれば、曲げられ得る、または破断され得る、または破壊され得る構造は、所定の屈曲点または所定の破断点を介して蓋に接続される。所定の屈曲点または所定の破断点は、設計によって提供される接続構造の弱化であり、構造要素の屈曲または破断を容易にする。
【0024】
窪みは、射出成形中に射出成形ツールの成形面の隆起によって蓋の上側に形成することができ、および/または隆起は、射出成形ツールの成形面の窪みによって蓋の上側に形成することができる。
【0025】
別の実施形態によれば、蓋は、蓋床の下側から突出するプラグおよび/またはカラーを有し、それによって蓋を管状容器に解放可能に取り付けることができる。この場合、蓋は、全体的にプラグ状および/またはキャップ状の形状で設計することができる。
【0026】
別の実施形態によれば、蓋付き容器は、クランプされた蓋付き容器またはねじ込み式蓋付き容器である。クランプされた蓋付き容器としての実施形態では、蓋はクランプによって容器に取り付けられる。クランプは、第1のシール領域と第2のシール領域との間の摩擦接続によって行うことができる。ねじ込み式蓋付き容器としての実施形態では、蓋および容器は、蓋および容器を互いにねじ込むことを可能にする対応するねじ山を有する。
【0027】
別の実施形態によれば、蓋付き容器はスナップ式蓋付き容器である。この場合、蓋および容器は、蓋と容器との間のスナップ接続を可能にするスナップ要素を有する。
【0028】
別の実施形態によれば、蓋は、ヒンジによって容器に接続される。クランプされた蓋付き容器またはスナップ式蓋付き容器の場合、ヒンジは、蓋および容器に一体的に接続することができる。ねじ込み式蓋付き容器の場合、ヒンジは、蓋または容器に一体的に接続され、リングによってそれぞれの他方に接続されて、蓋を容器にねじ込むことを可能にすることができる。
【0029】
別の実施形態によれば、第1のシール領域は、容器本体の内周に配置され、第2のシール領域は、プラグの外周に配置される。別の実施形態によれば、第1のシール領域は、容器開口部の周りの容器本体の上縁部に配置され、第2のシール領域は、蓋床の下側に配置される。別の実施形態によれば、第1のシール領域は、カラーの内周に配置され、第2のシール領域は、容器本体の外周に配置される。
【0030】
別の実施形態によれば、第1のシール領域が第2のシール領域とシール接触しているときに蓋を容器に解放可能に取り付けるための装置は、蓋のシール領域と容器との間の摩擦接続、および/または蓋と容器との間のスナップ接続、および/または蓋と容器との間のねじ込み接続である。
【0031】
別の実施形態によれば、数字、文字、記号、または上述のしるしの組み合わせは、目盛の目盛線のところ、目盛線の上、または目盛線の間で容器の中心軸の周りに連続して蓋の上側に配置される。これにより、充填された試料および処理工程のための実験装置内の蓋付き容器の位置合わせのための単純で正確で明白なマーキングが可能になる。
【0032】
別の実施形態によれば、しるしは、蓋の上側が垂直に位置合わせされ、ヒンジが上向きに配置されたとき、または蓋の上側が別の規定された位置合わせで配置されたときに、直立するように位置合わせされる。これにより、ユーザによるしるしの記録およびマーキングが容易になる。
【0033】
別の実施形態によれば、目盛は、目盛線がヒンジの中心に位置合わせされるか、または2本の目盛線がヒンジの中央の両側に対称的に配置されるように設計される。この場合、異なる目盛線の基準位置としてヒンジを用いることができる。
【0034】
別の実施形態によれば、容器は、外周に少なくとも1つのマーキングを有し、蓋は、マーキングと位置合わせされた特定の分割で容器に解放可能かつ密封的に取り付けることができる。分割をマーキングと位置合わせすることによって、蓋は容器に対して規定の位置にもたらされる。容器に対する分割の規定された位置合わせを確実にするために様々な位置で閉じることができ、分割をマーキングに使用することができる、ねじ込み式蓋付き容器、クランプ式蓋付き容器、またはスナップ式蓋付き容器の場合に、これは特に有利である。
【0035】
別の実施形態によれば、分割は、容器の中心軸の周りに均一に分布し、好ましくは合計4分割、10分割、または12分割が存在する。
【0036】
本発明による方法の一実施形態では、蓋上の特定の分割が容器のマーキングと位置合わせされ、この状態で、蓋付き容器が実験装置に挿入され、分割が実験装置の基準点と位置合わせされる。その結果、蓋を異なる閉鎖位置で容器に取り付けることができる蓋付き容器において、蓋を容器と規定の位置合わせにすることができる。
【0037】
別の実施形態によれば、蓋の上側の少なくとも1つの窪みにおいて、インクまたは染料または塗料がレーザビームによって導入またはマーキングされる、および/または蓋の上側の少なくとも1つの隆起部が完全または部分的に破壊される、および/または蓋の上側の少なくとも1つの印刷が、インクまたは染料または塗料によって、またはレーザビームによってマーキングされるかまたは完全または部分的に破壊される、および/または曲げまたは分離することができる構造要素が曲げられるまたは分離されるという点で、分割がマーキングされる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明は、例示的な実施形態の添付の図面に基づいて以下により詳細に説明される。
【0039】
【
図1】数字および記号を有する蓋付き容器の蓋が開いた状態での正面図(
図1a)、左側からの図(
図1b)、右側からの図(
図1c)、平面図(
図1d)である。
【
図2】同じ蓋付き容器の数字のみを有する代替的な蓋を、すべての主図で、正面から斜めの斜視図で、および側面から示す(
図2a~
図2g)。
【
図3】同じ蓋付き容器の数字および文字を有する代替的な蓋を、すべての主図で、正面から斜めの斜視図で、および側面から示す(
図3a~
図3g)。
【
図4】目盛の目盛線を有する第2の蓋付き容器の蓋が開いた状態での正面図(
図4a)、左側からの図(
図4b)、右側からの図(
図4c)、
図4cの線d-dに沿った断面図(
図4d)、平面図(
図4e)である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本出願において、「垂直」および「水平」、「上」および「下」という呼称、それらに由来する「上側」および「下側」などの呼称は、蓋が閉じられた蓋付き容器を指し、管状容器本体の軸は垂直に位置合わせされ、容器床は蓋床の下に配置されている。
【0041】
例示的な実施形態では、蓋付き容器は、底部に容器床3を有する管状容器本体2と、上部に容器開口部4と、容器開口部4のやや下の内周に帯状の円周方向の第1のシール領域5とを有する容器1を有する。
【0042】
さらに、蓋付き容器は、蓋床7と蓋床7の下側から突出する中空プラグ8とを有する、蓋6を備える。プラグ8は、外周に、第2のシール領域10を形成する円周方向シールビード9を有する。
【0043】
蓋6と容器1は、帯状のヒンジ11を介して縁部で互いに一体に連結される。
【0044】
ヒンジ11とは反対側に、容器1は、第1のスナップ要素12を有し、蓋6は、蓋6と容器1との間のスナップ接続14の第2のスナップ要素13を有する。第1のスナップ要素12および第2のスナップ要素13が互いにスナップ留めされると、第1のシール領域5は、第2のシール領域10とシール接触して配置される。同時に、スナップ接続14は、蓋6を容器1に解放可能に取り付けるための装置15である。
【0045】
円周方向の一連の分割部16が、蓋6の上側に各々の場合に配置され、これらの分割は、例えば窪みとして設計される。分割16は、1から9までの数字17と、3つの異なる記号18(四角、丸、三角)とを備え、これらは各々、蓋6の上側が垂直に位置合わせされ、かつヒンジ11が上向きに配置されたときに、直立するように位置合わせされる。
【0046】
図2の例示的な実施形態では、分割16は、
図1との単一の違いにおいて、1から12までの数字17としてのみ設計されている。
【0047】
図3の例示的な実施形態では、分割16は、1から9までの一連の数字17、およびAからCまでの文字19として設計されている。
【0048】
図4の例示的な実施形態では、分割16は各々、容器1の中心軸に対して半径方向に延在する目盛21の直線目盛線20を備える。目盛線20は、2本の目盛線20がヒンジ11の中央の両側に対称に配置されるように配置される。さらに、分割16は、1から9までの数字17と、記号18(四角、丸、三角)とを備え、これらは各々、時計の文字盤上のように、2つの隣接する目盛線20の間に配置される。
【0049】
一連の数字17は、ヒンジ11の数字1で始まり、時計回りに続く。記号18はまた、容器1の中心軸の中心の周りに時計回りに配置され、最後の記号18(三角)は12時の位置に位置する。
【0050】
分割16のうちの1つは、異なる例示的な実施形態において、実験装置内の基準点への位置合わせに使用することができる。
図1~
図5の例示的な実施形態では数字17の1つ、
図1~
図4の例示的な実施形態では記号18の1つ、
図3の例示的な実施形態では文字の1つ、
図4の例示的な実施形態では目盛線20の1つを使用することができる。隣接する数字17または文字19それぞれの間の各目盛線20の明確な配置は、それぞれの目盛線20の明確な割り当てを容易にする。さらに、位置合わせのために各々の場合に使用される分割16は、例えば、フェルトペンでたどることによってマーキングすることができる。あるいは、ユーザは、選択された分割16をマーキングすることなく、異なる蓋付き容器内の異なる試料を処理するときに、基準点との位置合わせのために同じ特定の選択された分割16を使用する。
【0051】
特に、数字17、記号18または文字19をそれぞれ使用して、受けた試料および/または実施された処理工程をマーキングすることができる。
図2の例示的な実施形態では、特定の数字17は、特定の試料および/または特定の処理工程をマーキングすることができる。
図3の例示的な実施形態では、特定の数字17は処理工程を指し、特定の文字19は使用される試料を指すことができ、またはその逆も可能である。それぞれのしるし22(例えば、数字17、文字19、記号18、または組み合わせ)は、フェルトペンでたどることによってマーキングすることもできる。あるいは、特に目盛線20およびしるし22が蓋6の上側の隆起として設計されている場合、目盛線20またはしるし22は、少なくとも部分的にそれを破壊することによってマーキングすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 容器
2 容器本体
3 容器床
4 容器開口部
5 第1のシール領域
6 蓋
7 蓋床
8 プラグ
9 シールビード
10 第2のシール領域
11 ヒンジ
12 第1のスナップ要素
13 第2のスナップ要素
14 スナップ接続
15 取り付け
16 分割
17 数字
18 記号
19 文字
20 目盛線
21 目盛
22 しるし
【国際調査報告】