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特表2023-543304セパレータ及びそれを含む電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】セパレータ及びそれを含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/446 20210101AFI20231005BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20231005BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20231005BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M50/417
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/414
H01G11/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519542
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2021014760
(87)【国際公開番号】W WO2022086193
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0136313
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】テ-スン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】サン-ジュン・イ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB01
5E078CA02
5E078CA06
5E078CA07
5E078CA09
5E078CA10
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE09
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
多孔性高分子基材と、前記多孔性基材の少なくとも一面に位置しており、複数の無機物粒子、及び前記無機物粒子の表面の一部または全部に位置し、前記無機物粒子同士を連結及び固定するバインダー高分子を含む多孔性コーティング層と、を含み、前記バインダー高分子が、コア部及び前記コア部を囲むシェル部を有するコア-シェル型高分子粒子を含み、前記コア部に含まれるコア部高分子と前記シェル部に含まれるシェル部高分子のガラス転移温度が相異なり、前記シェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされていることを特徴とするセパレータ、及びこれを含む電気化学素子が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性高分子基材と、
前記多孔性高分子基材の少なくとも一面に位置しており、複数の無機物粒子と、前記無機物粒子の表面の一部または全部に位置し、前記無機物粒子同士を連結及び固定するバインダー高分子と、を含む多孔性コーティング層と、を含み、
前記バインダー高分子が、コア部及び前記コア部を囲むシェル部を有するコア-シェル型高分子粒子を含み、
前記コア部に含まれるコア部高分子と前記シェル部に含まれるシェル部高分子のガラス転移温度が相異なり、
前記シェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされていることを特徴とする、セパレータ。
【請求項2】
前記コア部高分子が、前記シェル部高分子より高いガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記コア部高分子のガラス転移温度が85℃以上であり、前記シェル部高分子のガラス転移温度が-100~20℃であることを特徴とする請求項2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記コア部高分子が、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート共重合体、ポリアミド系高分子、またはこれらの二種以上を含み、前記シェル部高分子が、アクリレート系高分子、ラバー系高分子、ウレタン系高分子、シリコン系高分子、またはこれらの二種以上を含むことを特徴とする、請求項2または3に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記コア部高分子が、前記シェル部高分子より低いガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記コア部高分子のガラス転移温度が-100~20℃であり、前記シェル部高分子のガラス転移温度が85℃以上であることを特徴とする、請求項5に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記コア部高分子が、アクリレート系高分子、ラバー系高分子、ウレタン系高分子、シリコン系高分子、またはこれらの二種以上を含み、前記シェル部高分子が、ポリスチレン系高分子、ポリ(メタ)アクリレート系高分子、ポリアミド系高分子、またはこれらの二種以上を含むことを特徴とする、請求項5または6に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記コア-シェル型高分子粒子が、100nm~1μmの平均粒径を有する球状であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径に対するコア部の平均粒径の割合が、50%~90%であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記コア-シェル型高分子粒子が、100重量部のコア部及び10~300重量部のシェル部を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記グラフトされた高分子が、ポリビニルアルコール(PVA)またはその共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその共重合体、ポリプロピレングリコール(PPG)またはその共重合体、ポリビニルアセテート(PVAc)またはその共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)またはその共重合体、またはこれらの二種以上を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記グラフトされた高分子の含量が、前記コア-シェル型高分子粒子の全体重量に対して、1~30重量%であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記コア-シェル型高分子粒子が、前記コア部高分子より高いガラス転移温度を有するシェル部高分子を備えるコア-シェル型高分子粒子;前記コア部高分子より低いガラス転移温度を有するシェル部高分子を備えるコア-シェル型高分子粒子;またはこれらのコア-シェル型高分子粒子を共に含むことを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記多孔性高分子基材が、ポリオレフィン系多孔性高分子基材であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のセパレータ。
【請求項15】
カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間に介在されたセパレータと、を含む電気化学素子であって、
前記セパレータが、請求項1から14のいずれか一項に記載のセパレータであることを特徴とする、電気化学素子。
【請求項16】
前記電気化学素子が、リチウム二次電池であることを特徴とする、請求項15に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ及びそれを含む電気化学素子に関し、より詳しくは、電解液内における電極との接着力が改善されたセパレータ及びそれを含む電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2020年10月20日出願の韓国特許出願第10-2020-0136313号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術に関する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー及びノートブックPC、延いては、電気自動車のエネルギーにまで適用分野が拡がり、二次電池の研究及び開発に対する努力が徐々に具体化している。二次電池は、このような面から最も注目されている分野であって、その中でも、充放電が可能な二次電池の開発は、関心の焦点となっている。最近は、このような電池の開発に際し、容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新しい電極と電池の設計に関する研究開発へ進みつつある。
【0004】
現在、適用されている二次電池のうち、1990年代初めに開発されたリチウム二次電池は、水溶性電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの在来式電池に比べ、作動電圧が高く、エネルギー密度が遥かに高いという長所から脚光を浴びている。しかし、このようなリチウムイオン電池は、有機電解液を用いることに伴う発火及び爆発などの安全問題が存在し、製造が複雑であるという短所がある。
【0005】
最近のリチウムイオン高分子電池は、このようなリチウムイオン電池の弱点を改善して次世代電池の一つとして挙げられているが、未だに電池の容量がリチウムイオン電池に比べ相対的に低く、特に、低温における放電容量が不十分であり、これに対する改善が至急に求められている。
【0006】
このような電気化学素子は、多くのメーカで生産されているが、それらの安全性特性はそれぞれ異なる様相を示す。このような電気化学素子の安全性の評価及び確保は、非常に重要である。最も重要な考慮事項は、電気化学素子の誤作動時、使用者に傷害を加えてはいけないという点であり、かかる目的から安全規格において電気化学素子内の発火及び発煙などを厳格に規制している。電気化学素子の安全性特性において、電気化学素子が過熱して熱暴走するか、セパレータが貫通される場合は、爆発を起こす恐れが大きい。特に、電気化学素子のセパレータとして通常使用されるポリオレフィン系多孔性高分子基材は、材料的特性と延伸を含む製造工程上の特性によって、100℃以上の温度で激しい熱収縮挙動を示し、カソードとアノードとの短絡を起こした。
【0007】
このような電気化学素子の安全性問題を解決するために、複数の気孔を有する多孔性高分子基材の少なくとも一面に、過量の無機物粒子とバインダー高分子との混合物をコーティングして多孔性有機-無機コーティング層を形成したセパレータが提案された。
【0008】
前記多孔性有機-無機コーティング層に使用されるバインダー高分子としては、コーティング層形成用組成物の分散媒の種類によって油系バインダーと水系バインダーに分けられる。従来には、油系分散媒と油系バインダーが主に使用されたが、最近には環境問題などの論点によって、水系分散媒と水系バインダーに対して関心が高くなりつつある。
【0009】
この際、油系バインダーと比較して水系バインダーが解決すべき技術的課題の一つは、湿潤(wet)接着力及び長期的な接着力の確保である。
【0010】
油系バインダーは、接着後に時間が経過するほどバインダー分子が基材に染み込んで接着力が次第に増加するため、電解液湿潤状態でサイクル中に電極の膨張/収縮があるとしても接着力維持に容易であり得る。
【0011】
これに対し、水系バインダーは、電解液に溶けず、絡み合い(entanglement)効果がないため、経時による接着力の増加がほとんどない。したがって、水系バインダーは、電解液湿潤状態及びサイクル中における電極の膨張/収縮時、接着力不足によって界面剥離による電池寿命特性の低下が発生する可能性が高い。
【0012】
これを補完するために、電解液から溶出されて絡み合い効果を奏する添加剤を多孔性コーティング層形成用の組成物に加える方法も検討されているが、当該添加剤による多孔性高分子基材の気孔閉塞現象などの副作用があり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電解液中における電極との接着力が改善されたセパレータを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記セパレータを備える電気化学素子を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を達成するため、本発明の一面によると、下記の具現例のセパレータが提供される。
【0016】
第1具現例によると、
多孔性高分子基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一面に位置し、複数の無機物粒子と、前記無機物粒子の表面の一部または全部に位置し、前記無機物粒子同士を連結及び固定するバインダー高分子と、を含む多孔性コーティング層と、を含み、
前記バインダー高分子が、コア部及び前記コア部を囲むシェル部を有するコア-シェル型高分子粒子を含み、
前記コア部に含まれるコア部高分子と、前記シェル部に含まれるシェル部高分子のガラス転移温度が相異なり、
前記シェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされていることを特徴とするセパレータが提供される。
【0017】
第2具現例によると、第1具現例において、
前記コア部高分子が、前記シェル部高分子より高いガラス転移温度を有し得る。
【0018】
第3具現例によると、第2具現例において、
前記コア部高分子のガラス転移温度が85℃以上であり、前記シェル部高分子のガラス転移温度が-100~20℃であり得る。
【0019】
第4具現例によると、第2具現例または第3具現例において、
前記コア部高分子が、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート共重合体、ポリアミド系高分子、またはこれらの二種以上を含み、前記シェル部高分子が、アクリレート系高分子、ラバー系高分子、ウレタン系高分子、シリコン系高分子、またはこれらの二種以上を含み得る。
【0020】
第5具現例によると、第1具現例において、
前記コア部高分子が、前記シェル部高分子より低いガラス転移温度を有し得る。
【0021】
第6具現例によると、第5具現例において、
前記コア部高分子のガラス転移温度が-100~20℃であり、前記シェル部高分子のガラス転移温度が85℃以上であり得る。
【0022】
第7具現例によると、第5具現例または第6具現例において、
前記コア部高分子が、アクリレート系高分子、ラバー系高分子、ウレタン系高分子、シリコン系高分子、またはこれらの二種以上を含み、前記シェル部高分子がポリスチレン系高分子、ポリ(メタ)アクリレート系高分子、ポリアミド系高分子、またはこれらの二種以上を含み得る。
【0023】
第8具現例によると、第1具現例から第7具現例のいずれか一具現例において、
前記コア-シェル型高分子粒子が、100nm~1μmの平均粒径を有する球状であり得る。
【0024】
第9具現例によると、第1具現例から第8具現例のいずれか一具現例において、
前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径に対するコア部の平均粒径の割合が、50%~90%であり得る。
【0025】
第10具現例によると、第1具現例から第9具現例のいずれか一具現例において、
前記コア-シェル型高分子粒子が、100重量部のコア部及び10~300重量部のシェル部を含み得る。
【0026】
第11具現例によると、第1具現例から第10具現例のいずれか一具現例において、
前記グラフトされた高分子が、ポリビニルアルコール(PVA)またはその共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその共重合体、ポリプロピレングリコール(PPG)またはその共重合体、ポリビニルアセテート(PVAc)またはその共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)またはその共重合体、またはこれらの二種以上を含み得る。
【0027】
第12具現例によると、第1具現例から第11具現例のいずれか一具現例において、
前記グラフトされた高分子の含量は、前記コア-シェル型高分子粒子の全体重量に対して、1~30重量%であり得る。
【0028】
第13具現例によると、第1具現例から第12具現例のいずれか一具現例において、
前記コア-シェル型高分子粒子は、前記コア部高分子より高いガラス転移温度を有するシェル部高分子を備えるコア-シェル型高分子粒子;前記コア部高分子より低いガラス転移温度を有するシェル部高分子を備えるコア-シェル型高分子粒子;またはこれらのコア-シェル型高分子粒子を共に含み得る。
【0029】
第14具現例によると、第1具現例から第13具現例のいずれか一具現例において、
前記多孔性高分子基材が、ポリオレフィン系多孔性高分子基材であり得る。
【0030】
第15具現例によると、カソードと、アノードと、前記カソードとアノードとの間に介在されたセパレータと、を含む電気化学素子であって、前記セパレータが、第1具現例から第14具現例のいずれか一具現例によるセパレータであることを特徴とする電気化学素子が提供される。
【0031】
第16具現例によると、第15具現例において、
前記電気化学素子が、リチウム二次電池であり得る。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一具現例によると、セパレータの多孔性コーティング層に使用される前記バインダー高分子がコア部及び前記コア部を囲むシェル部を有するコア-シェル型高分子粒子を含み、前記シェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされることで、グラフトされた鎖と電解液との絡み合い(entanglement)現象によってセパレータと電極との電解液中における湿潤接着力及び界面維持力が向上して、このようなセパレータを採用した電気化学素子の長期寿命特性が向上できる。
【0033】
また、前記コア-シェル型高分子粒子のコア部に含まれるコア部高分子とシェル部に含まれるシェル部高分子のガラス転移温度が相違するように制御することで、シェル部にガラス転移温度が低いソフトな高分子を採用し、コア部にガラス転移温度が高いハードな高分子を採用した場合には、水系バインダーが有している電解液のバインダー高分子界面への浸透能力が低下する短所を克服して、電解液湿潤状態におけるセパレータと電極との接着力が大幅増加できる。さらに、シェル部にガラス転移温度が高いハードな高分子を採用し、コア部にガラス転移温度が低いソフトな高分子を採用した場合には、コア部のソフトな高分子が電解液に含浸されて過度にスウェリングされる場合、これを抑制してコア-シェル型高分子粒子の膨張による多孔性コーティング層の気孔の減少または閉塞を防止して通気度を確保し、抵抗上昇の問題を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0035】
本発明の一面によるセパレータは、多孔性高分子基材と、
前記多孔性基材の少なくとも一面に位置し、複数の無機物粒子と、前記無機物粒子の表面の一部または全部に位置し、前記無機物粒子同士を連結及び固定するバインダー高分子と、を含む多孔性コーティング層と、を含み、
前記バインダー高分子が、コア部及び前記コア部を囲むシェル部を有するコア-シェル型高分子粒子を含み、
前記コア部に含まれるコア部高分子と前記シェル部に含まれるシェル部高分子のガラス転移温度が相異なり、
前記シェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされていることを特徴とする。
【0036】
本発明の一具現例によると、前記コア部高分子は、前記シェル部高分子より高いガラス転移温度を有し得る。
【0037】
この際、前記コア部高分子のガラス転移温度は、85℃以上、または85~150℃、または85~100℃であり得る。前記シェル部高分子のガラス転移温度は、-100~20℃、または-70~20℃、または-40~20℃であり得る。
【0038】
前記コア部高分子の例には、ポリスチレン系高分子、ポリ(メタ)アクリレート系高分子、ポリアミド系高分子、またはこれらの二種以上を含み得る。前記シェル部高分子の例には、アクリレート系高分子、ラバー系高分子、ウレタン系高分子、シリコン高分子、またはこれらの二種以上を含み得る。
【0039】
前記ポリ(メタ)アクリレート系高分子としては、より具体的には、ポリ(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、アルキルアクリレート-アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリエステルの単独重合体または共重合体、またはこれらの二種以上を含み得る。ここで、アルキルは、例えば、C1~C30アルキル、C1~C15アルキル、C1~C10アルキル、またはC1~C5アルキルであり得る。
【0040】
例えば、ポリスチレン分子のような高分子は、常温では固体状であり、その結果、このような高分子は常温ではガラス状であって、弱い。高分子温度を高めながらポリスチレン高分子を観察する場合、ある特定の温度で凍結している分子主鎖がブラウン運動(分子内における結合の回転による分子内運動、分子全体がその位置を変えるぐらい大きくは動かない。)を開始し、その結果、比容積が急増すると共に性状がゴム状に変わる。このような状態の変化、即ち、ガラス状からゴム状への変化をガラス転移といい、このような状態の変化が起こる温度をガラス転移温度、T(TはTemperature、gはglassの頭文字)という。この温度を前後にして高分子の材料が硬くなるか、または軟らかくなるため、Tは高分子物性の中で重要視される。また、ブラウン運動が開始された温度、即ち、Tで、機械的強度、寸法などが変化するため、機械部品に樹脂を使用する場合には、その使用条件とTに注意を払わなければならない。高分子の種類によるTの差は、高分子の構造や組成の差に起因する。
【0041】
本発明の一具現例によると、前記ガラス転移温度は、DSC装置などを用いて測定し得る。このようなDSC装置としては、DSC(DSC823,METTLER TOLEDO)装置、DSC(TA Instrument)装置などがある。
【0042】
前記コア部及び前記コア部を囲むシェル部を有するコア-シェル型高分子粒子において、前記コア部のTが前記シェル部のTよりも大きくなると、即ち、セパレータと電極との接着力の向上のために前記コア-シェル型高分子粒子の表面部に位置するシェル部のTを低くしても、コア部のTが高いため粒子の形態を維持することができ、セパレータの抵抗が上昇しないようになる。これによって、抵抗の上昇を最小化し、ひいては電極接着力を増加させることができる。
【0043】
本発明の一具現例によると、前記コア-シェル型高分子粒子のコア部のTとシェル部のTとの差が、10~200℃、または15~180℃、または20~160℃、または20~80℃であり得る。
【0044】
前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径に対するコア部の平均粒径の割合が、50%~90%、または60%~90%、または70%~90%、または80%~90%、または80%~85%であり得る。前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径に対するコア部の平均粒径の割合がこのような範囲を満たす場合、コア部の形態維持と共にシェル部の接着力の向上が効率的に作用し、改善されたセパレータ性能が維持できる。
【0045】
本発明において、前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径、無機物粒子の平均粒径、及びコア部の平均粒径は、粒子サイズ測定器機(マルバーン社のレーザー粒度分析機)を使用して測定し、例えば、コアを合成した後にコア部の平均粒径を測定し、シェルまでを合成した後に全体粒子の平均粒径を測定し得る。
【0046】
前記コア-シェル型高分子粒子は、100重量部のコア部及び10~300重量部、または10~250重量部、または80~250重量部、または120~250重量部、または200~250重量部、または80~120重量部のシェル部を含み得る。前記コア部とシェル部の重量比がこのような範囲を満たす場合に、ウェット(wet)接着特性が向上すると共に、通気度の向上による電池抵抗の増加程度を調節することができる。
【0047】
本発明の一具現例によると、前記コア部高分子は、前記シェル部高分子より低いガラス転移温度を有し得る。即ち、シェル部高分子が前記コア部高分子より高いガラス転移温度を有し得る。
【0048】
この際、前記シェル部高分子のガラス転移温度は、85℃以上、または85~150℃、または85~100℃であり得る。前記コア部高分子のガラス転移温度は、-100~20℃、または-70~20℃、または-40~20℃であり得る。
【0049】
前記シェル部高分子の例には、ポリスチレン系高分子、ポリ(メタ)アクリレート系高分子、ポリアミド系高分子、またはこれらの二種以上を含み得る。
【0050】
前記コア部高分子の例としては、アクリレート系高分子、ラバー系高分子、ウレタン系高分子、シリコン系高分子、またはこれらの二種以上を含み得る。
【0051】
前記ポリ(メタ)アクリレート系高分子としては、より具体的には、ポリ(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、アルキルアクリレート-アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリフルオロアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体または共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリエステルの単独重合体または共重合体、またはこれらの二種以上を含み得る。ここで、アルキルは、例えば、C1~C30アルキル、C1~C15アルキル、C1~C10アルキル、またはC1~C5アルキルであり得る。
【0052】
前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径に対するコア部の平均粒径の割合が、50%~90%、または60%~90%、または70%~90%、または80%~90%、または80%~85%であり得る。前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径に対するコア部の平均粒径の割合がこのような範囲を満たす場合、コア部の接着力を維持すると共に、シェル部がコア部の膨潤を効率的に抑制して、改善されたセパレータ性能が維持できる。
【0053】
本発明のコア-シェル型高分子粒子においては、前記シェル部の表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされた形態で存在する。
【0054】
ここで「電解液溶出可能な成分の高分子」とは、電解液と親和性のある化学構造を高分子の主鎖及び側鎖の一方以上に備え、電解液と混合されるとき、高分子と電解液とが相分離されない性質を有する高分子を意味する。
【0055】
本発明の一具現例によると、前記グラフトされた高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)またはその共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)またはその共重合体、ポリプロピレングリコール(PPG)またはその共重合体、ポリビニルアセテート(PVAc)またはその共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)またはその共重合体、またはこれらの二種以上を含み得る。
【0056】
前記グラフトされた高分子の含量は、コア-シェル型高分子粒子の全体重量に対して、1~30重量%、または1~25重量%、または1~20重量%であり得る。前記グラフトされた高分子の含量がこのような範囲を満たす場合に、電解液との絡み合い現象によって電解液中におけるセパレータと電極との接着力が改善され、セパレータと電極との界面維持力が向上することによって、このようなセパレータを採用した電気化学素子の長期寿命特性が大幅改善され、セル安定性に寄与できる。
【0057】
本発明の一具現例によると、前記コア-シェル型高分子粒子のシェル部の表面に電解液溶出が可能な成分の高分子をグラフトする方法は、(1)溶媒に分散されたコア-シェル型高分子粒子と、溶媒に分散された電解液溶出可能な高分子(例えば、カップリング剤が処理されて架橋活性が高い状態の高分子)を混合する段階、(2)ソニフィケーション(sonification,超音波破砕)処理をする段階、(3)遠心分離によって未反応物を除去する段階、(4)残余物質を真空乾燥する段階を経て行われ得る。
【0058】
前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径は、100nm~1μm、または300nm~1μm、または300nm~800nmであり得る。前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径がこのような範囲を満たす場合、多孔性コーティング層を薄膜化することができ、多孔性コーティング層に無機物粒子をさらに含む場合、無機物粒子と均一に混合可能であるという点で有利である。
【0059】
本発明の一具現例によると、前記コア-シェル型高分子粒子が、前記コア部高分子より高いガラス転移温度を有するシェル部高分子を備えるコア-シェル型高分子粒子;前記コア部高分子より低いガラス転移温度を有するシェル部高分子を備えるコア-シェル型高分子粒子;またはこれらのコア-シェル型高分子粒子を共に含み得る。
【0060】
具体的には、前記コア-シェル型高分子粒子としては、前記コア部高分子が前記シェル部高分子より高いガラス転移温度を有する粒子を単独で使用してもよく、前記コア部高分子が前記シェル部高分子より低いガラス転移温度を有する粒子を単独で使用してもよく、またはこれらの前記コア部高分子が前記シェル部高分子より高いガラス転移温度を有する粒子と、前記コア部高分子が前記シェル部高分子より低いガラス転移温度を有する粒子二種を共に使用してもよい。これらの粒子二種を共に使用する場合には、前記コア部高分子が前記シェル部高分子より高いガラス転移温度を有する粒子と前記コア部高分子が前記シェル部高分子より低いガラス転移温度を有する粒子の重量比は、9:1~1:9、または7:3~3:7、または7:3~5:5、または5:5~7:3であり得る。
【0061】
本発明において、コア-シェル型高分子粒子及び後述する無機物粒子の平均粒径D50は、粒径分布の50%基準における粒径として定義し得る。本発明において、コア-シェル型高分子粒子及び無機物粒子の平均粒径D50は、例えば、走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy,SEM)または電界放射型走査電子顕微鏡(field emission scanning electron microscopy,FE-SEM)などを用いた電子顕微鏡観察や、またはレーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定し得る。レーザー回折法による測定時、より具体的には、コア-シェル型高分子粒子または無機物粒子を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT3000)に導入し、約28kHzの超音波を60Wの出力で照射した後、測定装置において粒径分布50%基準における平均粒径D50を算出し得る。
【0062】
前記多孔性高分子基材は、具体的には、多孔性高分子フィルム基材または多孔性高分子不織布基材であり得る。
【0063】
前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィンからなる多孔性高分子フィルムであり得、このようなポリオレフィン系多孔性高分子フィルム基材は、例えば、80~130℃の温度でシャットダウン機能を発現する。
【0064】
この際、ポリオレフィン系多孔性高分子フィルムは、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子を各々単独でまたはこれらの二種以上を混合して形成され得る。
【0065】
また、前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリオレフィンの外に、ポリエステルなどの多様な高分子を用いてフィルム状に成形して製造され得る。また、前記多孔性高分子フィルム基材は、二層以上のフィルム層が積層された構造に形成され得、各フィルム層は前述したポリオレフィン、ポリエステルなどの高分子を単独でまたはこれらの二種以上を混合して形成され得る。
【0066】
また、前記多孔性高分子フィルム基材及び多孔性不織布基材は、前記のようなポリオレフィン系の外に、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルファイド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)などを各々単独でまたはこれらを混合した高分子から形成され得る。
【0067】
前記多孔性高分子基材の厚さは特に制限されないが、詳しくは1~100μm、より詳しくは5~50μmであり、前記多孔性高分子基材に存在する気孔サイズ及び気孔度も特に制限されないが、各々0.01~50μm及び10~95%であることが望ましい。
【0068】
前記多孔性コーティング層に含まれる無機物粒子の非制限的な例としては、誘電率定数が5以上、詳しくは10以上である高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子またはこれらの混合物が挙げられる。
【0069】
前記誘電率定数が5以上である無機物粒子の非制限的な例には、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)、P(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiC、AlO(OH)、Al・HO、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0070】
本明細書において、「リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子」とは、リチウム元素を含みながらもリチウムを保存せず、かつリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子をいい、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例には、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14LiO-9Al-38TiO-39Pなどのような(LiAlTiP)系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.75などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、LiNなどのようなリチウムニトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、LiPO-LiS-SiSなどのようなSiS系ガラス(LiSi、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-LiS-PなどのようなP系ガラス(Li、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらの混合物などがある。
【0071】
また、前記無機物粒子の平均粒径に対する前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径の割合が80%~200%であり、本発明の一具現例によると、80%~190%、または84%~188%であり得る。前記無機物粒子の平均粒径に対する前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径の割合が80%~200%である場合に、セパレータの表面にコア-シェル型高分子粒子が分布可能であり、電極とセパレータが接着される有利な効果が発揮される。
【0072】
前記多孔性コーティング層の厚さは特に制限されないが、詳しくは、1~10μm、より詳しくは、1.5~6μmであり、前記多孔性コーティング層の気孔度も特に制限されないが、35~65%であることが望ましい。
【0073】
前記コア-シェル型高分子粒子及び無機物粒子の重量比は、5:95~80:20、または20:80~80:20、または50:50~80:20であり得る。前記重量比がこのような範囲を満たす場合、多孔性コーティング層の耐熱特性を確保すると共に、前記コア-シェル型高分子粒子によって電池安定性を改善することができる。
【0074】
本発明の一面によるセパレータは、多孔性コーティング層成分としてその他の添加剤をさらに含み得る。
【0075】
本発明の一具現例によると、前記多孔性コーティング層は、水系スラリーを用いた水系コーティング層であってもよく、水系コーティング層の場合、薄膜コーティングに有利であり、セパレータの抵抗が減少するという面でより有利であり得る。
【0076】
本発明の一具現例によるセパレータの製造方法は、以下のようである。
【0077】
前記多孔性コーティング層を形成するために、水系分散媒に無機物粒子及びコア-シェル型高分子粒子を添加し、これを分散させて、多孔性コーティング層形成用の組成物を製造し得る。無機物粒子は、予め所定の平均粒径を有するように破砕された状態で添加してもよく、またはコア-シェル型高分子粒子を添加した後に無機物粒子をボールミル法などを用いて所定の平均粒径を有するように制御しながら破砕して分散させてもよい。
【0078】
前記コア-シェル型高分子粒子は、乳化重合(emulsion polymerization)、懸濁重合(suspension polymerization)、塊状重合(massive polymerization)、溶液重合(solution polymerization)、またはバルク重合(bulk polymerization)などの公知の多様な方法によって製造可能であり、一例で乳化重合方法によって製造され得る。
【0079】
前記多孔性コーティング層形成用の組成物を前記多孔性高分子基材にコーティングする方法は特に限定されないが、スロットコーティングやディップコーティング方法を用いることが望ましい。スロットコーティングとは、スロットダイを介して供給された組成物が基材の表面に塗布される方式であって、定量ポンプから供給される流量によってコーティング層の厚さを調節することができる。また、ディップコーティングとは、組成物が満たされているタンクに基材を浸漬してコーティングする方法であって、組成物の濃度及び組成物タンクから基材を取り出す速度によってコーティング層の厚さの調節が可能であり、より正確なコーティング厚さの制御のために、浸漬後、メイヤーバーなどで後計量することができる。
【0080】
このように多孔性コーティング層形成用の組成物がコーティングされた多孔性高分子基材をオーブンのような乾燥機を用いて乾燥することで多孔性高分子基材の少なくとも一面上に多孔性コーティング層を形成するようになる。
【0081】
前記多孔性コーティング層形成用の組成物を前記多孔性高分子基材にコーティングした後、90~180℃、より詳しくは100~150℃で乾燥して分散媒を除去し得る。
【0082】
本発明の具体的な一実施様態で、前記多孔性コーティング層のコア-シェル型高分子粒子が、無機物粒子が互いに結着した状態を維持できるようにこれらを互いに付着(即ち、無機物粒子同士を連結及び固定)することができ、また前記コア-シェル型高分子粒子が、無機物粒子と多孔性高分子基材の結着状態を維持させ得る。前記多孔性コーティング層の無機物粒子及びコア-シェル型高分子粒子は、実質的に互いに接触した状態でインタースティシャルボリューム(interstitial volume)を形成し得る。この際、インタースティシャルボリュームとは、無機物粒子及びコア-シェル型高分子粒子による充填構造(closed packed or densely packed)において実質的に接触する無機物粒子及びコア-シェル型高分子粒子によって限定される空間を意味する。前記無機物粒子とコア-シェル型高分子粒子との間のインタースティシャルボリュームは、空き空間になって多孔性コーティング層の気孔を形成し得る。この際、前記コア-シェル型高分子粒子は、乾燥過程でシェル部に含まれる高分子がバインダー高分子の役割を果たし、コア-シェル型高分子粒子のシェル部同士を互いに連結及び固定し、多孔性高分子基材とコア-シェル型高分子粒子を互いに連結するようにして多孔性コーティング層を形成し得る。
【0083】
この際に使用される分散媒の非制限的な例には、水を単独で使用するか、または水の外に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、水より選択された一種の化合物との混合物であり得る。
【0084】
本発明の一面による電気化学素子は、カソード、アノード、前記カソードとアノードとの間に介在されたセパレータを含み、前記セパレータが前述した本発明の一具現例によるセパレータである。
【0085】
このような電気化学素子は、電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的には、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシター素子のようなキャパシタなどが挙げられる。特に、前記二次電池のうちリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が望ましい。
【0086】
本発明のセパレータと共に適用されるカソードとアノードの両電極としては特に制限されず、当業界に知られた通常の方法によって電極活物質を電極電流集電体に結着して製造することができる。前記電極活物質のうちカソード活物質の非制限的な例には、従来の電気化学素子のカソードに使用される通常のカソード活物質が使用可能であり、特に、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を用いることが望ましい。アノード活物質の非制限的な例には、従来の電気化学素子のアノードに使用される通常のアノード活物質が使用可能であり、特に、リチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コーク(petroleum coke)、活性炭(activated carbon)、グラファイト(graphite)またはその他の炭素類などのようなリチウム吸着物質などが望ましい。カソード電流集電体の非制限的な例には、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、アノード電流集電体の非制限的な例には、銅、金、ニッケルまたは銅合金またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどが挙げられる。
【0087】
本発明の電気化学素子において使用可能な電解液は、Aのような構造の塩であって、Aは、Li、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、Bは、PF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトンまたはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものが挙げられるが、これらに限定されることではない。
【0088】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池の製造工程における適切な段階で行われ得る。即ち、電池の組立ての前、または電池の組立ての最終段階などに適用することができる。
【0089】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0090】
実施例1
平均粒径D50が500nmであるアルミナ(Al)とシェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされているコア-シェル型高分子粒子(CSG1)を8:2の重量比で水に混合し、この混合物をペイントシェーカー(paint shaker)としてビードと共に2時間分散処理して多孔性コーティング層用のスラリーを製造した。この際、前記コア-シェル型高分子粒子のコア部はポリスチレン(T:100℃)からなり、シェル部はポリウレタン(T:-30℃)からなり、グラフトされた高分子はポリビニルアルコールであった。前記グラフトされた高分子の含量は、前記コア-シェル型高分子粒子の全体重量に対して10重量%であった。前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径D50は300nmであった。前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径に対するコア部の平均粒径の割合は80%であった。
【0091】
このように製造されたスラリーをディップコーティング法で、ポリエチレン多孔性フィルム(厚さ12μm)の両面にコーティングし、85℃の温度で2時間乾燥して両面に各々多孔性コーティング層(厚さ1.5μm)を備えるセパレータ(総厚さ15μm)を製造した。
【0092】
実施例2
平均粒径D50が500nmであるアルミナ(Al)とシェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされているコア-シェル型高分子粒子(CSG2)を8:2の重量比で水に混合し、この混合物をペイントシェーカーとしてビードと共に2時間分散処理して多孔性コーティング層用のスラリーを製造した。この際、前記コア-シェル型高分子粒子のコア部はポリウレタン(T:-30℃)からなり、シェル部はポリスチレン(T:100℃)からなり、グラフトされた高分子はポリビニルアルコールであった。前記グラフトされた高分子の含量は、前記コア-シェル型高分子粒子の全体重量に対して10重量%であった。前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径D50は300nmであった。前記コア-シェル型高分子粒子の平均粒径に対するコア部の平均粒径の割合は80%であった。
【0093】
このように製造されたスラリーをディップコーティング法で、ポリエチレン多孔性フィルム(厚さ12μm)の両面にコーティングし、85℃の温度で2時間乾燥して両面に各々多孔性コーティング層(厚さ1.5μm)を備えるセパレータ(総厚さ15μm)を製造した。
【0094】
実施例3
平均粒径(D50)が500nmであるアルミナ(Al)と、実施例1で使われたシェルの表面に高分子がグラフトされているコア-シェル型高分子粒子(CSG1)と、実施例2で使用されたシェルの表面に高分子がグラフトされているコア-シェル型高分子粒子(CSG2)とを、8:1:1の重量比で水に混合し、この混合物をペイントシェーカーとしてビードと共に2時間分散処理して多孔性コーティング層用のスラリーを製造した。
【0095】
このように製造されたスラリーをディップコーティング法で、ポリエチレン多孔性フィルム(厚さ12μm)の両面にコーティングし、85℃の温度で2時間乾燥して、両面に各々多孔性コーティング層(厚さ1.5μm)を備えるセパレータ(総厚さ15μm)を製造した。
【0096】
比較例1
平均粒径(D50)が500nmであるアルミナ(Al)とバインダー高分子としてポリウレタン(T:-30℃)を8:2の重量比で水に混合し、この混合物をペイントシェーカーでビードと共に2時間分散処理して多孔性コーティング層用スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0097】
比較例2
シェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされていないコア-シェル型高分子粒子を使用して多孔性コーティング層用スラリーを製造したことを除いては、実施例1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0098】
この際、前記コア-シェル型高分子粒子のコア部は、ポリスチレン(T:100℃)からなり、シェル部は、ポリウレタン(T:-30℃)からなっている。
【0099】
比較例3
シェルの表面に化学的結合で連結された電解液溶出可能な成分の高分子がグラフトされていないコア-シェル型高分子粒子を使用して多孔性コーティング層用スラリーを製造したことを除いては、実施例2と同様の方法でセパレータを製造した。
【0100】
この際、前記コア-シェル型高分子粒子のコア部は、ポリウレタン(T:-30℃)からなり、シェル部は、ポリスチレン(T:100℃)からなっている。
【0101】
評価方法及び結果
ガラス転移温度の測定方法
実施例1~3及び比較例1~3のコア-シェル型高分子粒子のコア部及びシェル部のガラス転移温度Tは、DSC(DSC823,METTLER TOLEDO)装置で測定した。
【0102】
平均粒径(D50)
実施例1~3及び比較例1~3のコア-シェル型高分子粒子または無機物粒子を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(Microtrac MT3000)に導入して、約28kHzの超音波を60Wの出力で照射した後、測定装置において粒径分布の50%基準における平均粒径D50を算出した。コア-シェル型高分子粒子のコア部の平均粒径は、シェル部を形成する前のコア部粒子に対し、前記と同様の方法で平均粒径を算出した。
【0103】
通気度(ガーレー)
実施例1~3及び比較例1~3で製造されたセパレータの通気度は、ASTM D726-94方法によって測定し、その結果を表1に示した。ここで使用されたガーレーは、空気の流れに対する抵抗であって、ガーレーデンソメーター(densometer)によって測定された。ここで説明された通気度値は、100ccの空気が12.2inHOの圧力下で、実施例1~3及び比較例1~3で製造されたセパレータ1inの断面を通過するのにかかる時間(秒)、即ち、通気時間で示した。
【0104】
電気抵抗(ER)
実施例1~3及び比較例1~3で製造されたセパレータを電解液(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=3:7、LiPF 1.0M)に含浸した後にAC抵抗を測定し、その結果を下記の表1に示した。この際、AC抵抗は、Hioki社製で1KHzにおける抵抗を測定した値である。
【0105】
電解液含浸条件における電極接着力
-測定装置:UTM(LLOYD INSTRUMENT LS 1)
-試片製作及び測定方法
リチウムコバルト系複合酸化物:導電材(Denka black):バインダー(PVdF)の量が、95:2.5:2.5の重量比になるように計量した後、N-メチルピロリドン(NMP)に入れて混合(mixing)して正極合剤を製造し、20μmの厚さのアルミニウムホイルに前記正極合剤を200μmの厚さでコーティングした後、圧延及び乾燥して正極を製造した。
【0106】
電解液としては、エチルカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比が1:1である混合溶液にLiPFが1モル溶解されているカーボネート系電解液を製造した。
【0107】
その後、1)製造された正極及びセパレータを裁断(20×60mm)し、2)裁断された正極とセパレートを介在し、これをアルミニウム(Al)パウチに挿入し、この際、アルミニウムパウチは200×80mmに裁断した後、100×80mmに折って側面を封止した。3)前記製造された電解液1gをパウチ内に注液して真空封止し、4)封止されたパウチ電池を一日間プレエージングした。5)プレエージングされたパウチ電池を固定するジグを用いて前記プレエージングされたパウチ電池を60℃及び5kgf/cmで10分間加熱/加圧し、6)前記加熱/加圧されたパウチ電池を開封して濡れた(wet)状態の接合された正極とセパレータを取り出し、7)取り出し次第、両面テープを用いてガラス板に固定し、この際、正極がスライドガラスに対面するように配置した。8)試片のセパレータ部分を25℃で200mm/秒の速度で90゜の角度に剥離し、この際の強度を正極とセパレータとの接着力として測定した(測定開始点と終了点を除き、接着力測定領域の30~70%範囲の平均値を測定した)。
【0108】
電池の寿命特性
<二次電池の製造>
リチウムコバルト系複合酸化物:導電材(Denka black):バインダー(PVdF)の量が、95:2.5:2.5の重量比になるように計量した後、N-メチルピロリドン(NMP)に入れて混合(mixing)して正極合剤を製造し、20μmの厚さのアルミニウムホイルに前記正極合剤を200μmの厚さでコーティングした後、圧延及び乾燥して正極を製造した。
【0109】
負極はLi金属を使用し、電解液としては、エチルカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比が1:1である混合溶液にLiPFが1モル溶解されているカーボネート系電解液を製造した。
【0110】
実施例1~3及び比較例1~3で製造されたセパレータを前記正極及び負極との間に介在してパウチケースに入れた後、前記電解液を注入して封止することでリチウム二次電池を製造した。
【0111】
<測定方法>
製造されたリチウム二次電池を25℃のチャンバで、3.0V~4.4Vの電圧領域で0.1Cで1回充放電した後、1.0C充電、1.0C放電を行い、300回の寿命特性を測定した。この際、寿命特性は、一回目の放電容量に対する300サイクル後の放電容量の比を計算して容量維持率として示した。その結果を下記の表1に示した。
【0112】
【表1】
【0113】
表1を参照すると、バインダー高分子として、ガラス転移温度が相異なるコア部及びシェル部を有し、シェルの表面にグラフトされた高分子を備えたコア-シェル型高分子粒子を使用した実施例1~3のセパレータを使用した場合、比較例1~3のセパレータと比較して二次電池の寿命特性及び電解液含浸条件における電極(正極)との接着力が共に大幅向上したことが分かる。
【国際調査報告】