IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧 ▶ ローム アンド ハース カンパニーの特許一覧

特表2023-543325モノテルペンを含む溶媒安定性スリップ添加剤組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-13
(54)【発明の名称】モノテルペンを含む溶媒安定性スリップ添加剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20231005BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20231005BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L71/02
C08L83/04
C08L91/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524867
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 US2021054341
(87)【国際公開番号】W WO2022103537
(87)【国際公開日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】63/107,246
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】フライフォーグル、パトリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クック、ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル、ティム
(72)【発明者】
【氏名】リュー、イーハン
(72)【発明者】
【氏名】ビーソン、レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコ、ミロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ミケイラ ティ.
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス、ブラッド ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE053
4J002CH051
4J002CP032
4J002CP062
4J002CP092
4J002CP102
4J002CP132
4J002CP181
4J002GH00
4J002HA01
(57)【要約】
分散液は、(a)0.5~20マイクロメートルの粒子として分散された、少なくとも90モル%のジメチルD単位及び1kPas以上の粘度を有するポリオルガノシロキサンと、(b)(i)以下の組成:(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2(式中、aは、0.30~0.60であり、bは、0.40~0.70であり、cは、0.05~0.20であり、a+bは1であり、Rは、水素、C1~30アルキル基、及びアリール基から選択され、Zは、H及びCvsアルキルから選択される)を有するポリシロキサン樹脂(Mw4,500~50,000)、及び(ii)以下の組成:A-O-(CO)(CO)-A’(式中、e/pは1~9であり、A及びA’は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基から選択され、A及びA’のうちの少なくとも1つはHである)を有するポリオキシアルキレンポリマー(Mn4,000~50,000)の縮合生成物と、(c)(a)と混和性である非水性流体担体と、(d)モノテルペンと、を含有し、(c)の(b)に対する重量比は、0.5~10であり、(b)及び(c)の(a)に対する重量比は、0.01~0.50であり、組成物は、1ppm未満の芳香族溶媒を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散液を含む組成物であって、
(a)少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、25℃で1キロパスカル秒以上の粘度を有し、0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有する粒子の形態であるポリオルガノシロキサンと、
(b)
(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成:
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
(式中、下付き文字a、b、及びcは、関連する分子単位のモル当量であり、aは、0.30~0.60であり、下付き文字bは、0.40~0.70であり、下付き文字cは、0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、Rは、出現ごとに独立して、水素、C1-30アルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、Zは、出現ごとに独立して、H及びC~Cアルキルからなる群から選択される)を有するポリシロキサン樹脂、及び
(ii)4,500ダルトン以上、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:
A-O-(CO)(CO)-A’
(式中、比e/pは、1超9未満であり、A及びA’は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から選択され、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つはHである)を有するポリオキシアルキレンポリマー
の縮合生成物と、
(c)前記ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアと、
(d)モノテルペンと、
を含み、
非水性流体キャリア(c)の縮合生成物(b)に対する重量比が、0.5以上10以下であり、縮合生成物(b)及び非水性流体キャリア(c)の組み合わせの、ポリオルガノシロキサン(a)に対する重量比は、0.01以上0.50以下であり、前記組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する、組成物。
【請求項2】
前記モノテルペンが、組成物の重量に基づいて3重量パーセント以下の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記モノテルペンが、D-リモネン、3-カレン、カンフェン、γ-テルピネン、及びα-ピネンからなる群から選択される2つ以上のモノテルペンの任意の1つ又は任意の組み合わせである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記縮合生成物(b)及び前記組成物の両方が、スズ触媒を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
バインダーを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオルガノシロキサンが、末端アミン官能基を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を調製する方法であって、
(a)モノテルペン反応溶媒中で縮合反応を行うことによって縮合生成物を調製する工程であって、前記縮合反応が、1重量パーセント未満の芳香族溶媒の存在下で行われ、前記縮合反応が、
(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成:
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
(式中、下付き文字a、b、及びcは、関連する分子単位のモル当量であり、aは、0.30~0.60であり、下付き文字bは、0.40~0.70であり、下付き文字cは、0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、Rは、出現ごとに、水素、C1-30アルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、Zは、出現ごとに、H及びC~Cアルキルからなる群から選択される)を有するポリシロキサン樹脂、及び
(ii)4,500ダルトン以上、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:
A-O-(CO)(CO)-A’
(式中、e/pの値は1超9未満であり、A及びA’は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から独立して選択され、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つがHである)を有するポリオキシアルキレンポリマーの間のものである、調製する工程と、
(b)前記縮合生成物に、前記ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアを添加して、混合物を形成する工程と、
(c)工程(a)の後かつ工程(d)の前に、縮合反応生成物の重量に対して10重量パーセント未満の濃度になるようにモノテルペン反応溶媒を除去する工程と、
(d)工程(c)の前記混合物に、少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、剪断下25℃で1キロパスカル秒以上の粘度を有するポリオルガノシロキサンを分散させて、工程(c)の前記混合物中に分散した0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有するポリオルガノシロキサン粒子の分散液を生成して、組成物を形成する工程と、
を含み、
工程(b)で添加された非水性流体キャリアの、工程(a)で調製された縮合生成物に対する重量比は、0.5以上10以下であり、工程(a)で調製された縮合生成物と工程(b)で添加された非水性流体キャリアとの組み合わせの、工程(d)で分散させたポリオルガノシロキサンに対する重量比が、0.01以上0.5以下であり、組成物が、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有し、前記組成物が、モノテルペンを含む、方法。
【請求項8】
前記縮合反応が、ポリシロキサン樹脂、ポリオキシアルキレンポリマー、及びモノテルペン反応溶媒の合計重量100万重量部当たり5重量部未満の芳香族溶媒の存在下で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)における前記モノテルペン反応溶媒が、ポリシロキサン樹脂、ポリオキシアルキレンポリマー、及びモノテルペン反応溶媒の合計重量に基づいて50重量パーセント以上の濃度で存在する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記モノテルペン反応溶媒が、1つ又は2つ以上のモノテルペンと、モノテルペン反応溶媒の重量に基づいて最大25重量パーセントの非芳香族炭化水素とを含み、前記非芳香族炭化水素が、101キロパスカルの圧力で前記モノテルペン成分単独よりも低い沸点を有するモノテルペン反応溶媒を提供するように選択される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア流体中に分散したポリシロキサンガムを含むスリップ添加剤組成物、及びモノテルペン反応溶媒を使用したそのようなスリップ添加剤組成物の調製に関する。
【0002】
序論
スリップ添加剤は、コーティングに耐摩耗性を付与するためにコーティングで一般的に使用される。スリップ添加剤は、物体とコーティングの表面との間の摩擦係数を低減する。コーティングの表面上を滑動する物体との間の摩擦係数が低下すると、望ましいことに、物体が表面上をより自由に滑動することが可能になり、その結果、擦傷及びブロッキング(物体が滑動したときにきしり音を生じさせる)などの望ましくない影響が少なくなる。
【0003】
スリップ添加剤の1つの種類、そして、本発明の主題である種類は、キャリア流体中のポリシロキサンガムの分散液である。そのようなスリップ添加剤は、望ましいことに、水性コーティング配合物中で安定であり、コーティング配合物中に存在することが多い合体助剤などの有機溶媒の存在下でも安定である。「安定である」とは、分散相がキャリア相から容易には相分離しないという点で分散体として安定であることを指す。スリップ添加剤がコーティング配合物中で安定していない場合、相分離が起こり、配合物の均質性が失われる。魅力的なコーティングには均質性が必要である。以下で使用するとき「スリップ添加剤」は、キャリア流体中のポリシロキサンガムの分散液であるスリップ添加剤を指す。
【0004】
コーティング配合物中の芳香族溶媒の量を低減しようという動きがある。ベンゼン、エチルベンゼン、トルエン、及びキシレンなどの芳香族溶媒は、有機化合物及びシリコーン化合物の合成に使用されることが多く、コーティング成分中の不純物としてこれら化合物と共に、得られるコーティング配合物に持ち越される。有機化合物及びシリコーン化合物の合成中、芳香族溶媒は、成分の溶解度を高め、溶媒還流条件下で水を追い出して反応の効率を高めるために望ましい。芳香族溶媒はまた、コーティングの乾燥中及びコーティング成分の合体を誘導するためにも有用である。しかし、環境上の理由から、業界では芳香族溶媒の使用を削減したいと考えている。一度存在した芳香族溶媒をスリップ添加剤組成物から除去することは容易ではない。したがって、スリップ添加剤中の芳香族溶媒の量を低減するには、芳香族溶媒をほとんど又は全く使用せずにスリップ添加剤を形成する方法を特定する必要がある。
【0005】
水性コーティング配合物中で及び有機溶媒の存在下で安定であり、同時にスリップ添加剤100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有するスリップ添加剤は、当該技術分野を進歩させ、コーティング産業にとって望ましいものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、水性コーティング配合物中で及び有機溶媒の存在下で安定であり、同時にスリップ添加剤100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有するスリップ添加剤を提供する。
【0007】
本発明は、驚くべきことに、(a)モノテルペン反応溶媒中でポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂乳化剤系を調製することができ、官能化MQ樹脂乳化剤系は、ポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂反応生成物100万重量部当たり5重量部未満の芳香族溶媒を含有し得ること、及び(b)そのようなポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂乳化剤系は、ポリオルガノシロキサンガムを0.5~20マイクロメートルの粒径になるように極性媒体中に好適に分散させて、水及び有機溶媒の存在下で安定であり、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有するスリップ添加剤組成物を形成できることを見出した結果である。
【0008】
同時に、驚くべきことに、ポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂乳化剤系を生成するための縮合反応のための縮合反応溶媒としてモノテルペンを使用できることも見出された。この知見は、反応物がモノテルペン中で最小の共溶解度を有するという事実を考慮すると、特に驚くべきことである。縮合反応生成物は、モノテルペン中の反応物のための溶解度向上剤として作用するので、反応が進行するにつれて、残りの反応物がモノテルペン中で次第に可溶性になることも見出された。この現象は、芳香族反応溶媒でも他の既知の反応溶媒でも明らかではない。縮合反応は、反応物及びモノテルペン反応溶媒の重量に基づいて10重量パーセントを超える反応物(ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマー)濃度を使用して、モノテルペン反応溶媒中で行うことができる。
【0009】
モノテルペン反応溶媒は、反応中に水及びモノテルペン反応溶媒を共蒸留することによって、縮合反応の水副生成物の除去を容易にすることができる。水は、縮合反応中に副生成物として生成され、濃度を上昇させた場合、反応を減速させ、縮合生成物の収率を制限することがある。反応溶媒を還流させると、反応混合物から水を追い出し、その相がモノテルペン反応溶媒から分離して、モノテルペン反応溶媒を水副生成物なしに反応混合物に再利用することが可能になる。これは、反応の収率をより高くするのに役立つ。
【0010】
加えて、摂氏105度(℃)、真空下(1キロパスカル以下、10水銀柱ミリメートル未満の圧力)のかなり穏和な条件下で、縮合反応生成物からモノテルペン反応溶媒の大部分を除去することができる(モノテルペン反応溶媒の少なくとも97重量パーセントを除去することができる)。高温(200℃よりも高い)は反応生成物の分解を引き起こし得るので、これは望ましい。
【0011】
更により驚くべきことに、モノテルペン反応溶媒を反応物及び反応溶媒の重量の50重量%以上、好ましくは60重量%以上、又は更には70重量%以上の濃度で使用した場合、モノテルペン反応溶媒中で生成される縮合反応生成物は、透明な(透過率>70%)溶液であり、相分離に対して安定である。これは、いずれも79重量%以上の反応溶媒の濃度で調製された場合であっても経時的に沈降する濁った分散液が生じる、芳香族溶媒又は他の非芳香族溶媒中で行われる縮合反応の生成物とは対照的である。したがって、本発明の方法によって生成される縮合反応生成物は、相分離に悩まされることなく溶媒を除去する前に濃縮物として保管又は輸送することができる。
【0012】
本発明は、スズ化合物を更に含まないことが可能である。ポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂乳化剤は、縮合反応によって作製される。スズ触媒は、縮合反応において一般的であるが、最終的なコーティングでは望ましくない。ポリオキシアルキレン官能化MQ樹脂乳化剤系を調製するために使用される本発明の縮合反応は、スズ触媒の非存在下で実行して、スズ触媒を含まないスリップ添加剤を生成することができる。
【0013】
最終スリップ添加剤組成物に至る縮合反応のフィンガープリントは、モノテルペンの存在である。縮合反応のための反応溶媒中で使用されるモノテルペンは、特に反応生成物の完全性を維持するのに望ましい穏和な条件下では、反応生成物から完全に除去することが困難である。したがって、モノテルペンは、本発明の方法及び組成物中に存在する。
【0014】
第1の態様では、本発明は、分散液を含む組成物であって、(a)少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、25℃で1キロパスカル秒以上の粘度を有し、0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有する粒子の形態であるポリオルガノシロキサンと、(b)(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2(式中、下付き文字a、b、及びcは、関連する分子単位のモル当量であり、aは、0.30~0.60であり、下付き文字bは、0.40~0.70であり、下付き文字cは、0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、Rは、出現ごとに独立して、水素、C1~30アルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、Zは、出現ごとに独立して、H及びC~Cアルキルからなる群から選択される)を有するポリシロキサン樹脂、及び(ii)4,500ダルトン以上、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:A-O-(CO)(CO)-A’(式中、比e/pは、1超9未満であり、A及びA’は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から選択され、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つはHである)を有するポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物と、(c)当該ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアと、(d)モノテルペンと、を含み、非水性流体キャリア(c)の縮合生成物(b)に対する重量比が、0.5以上10以下であり、縮合生成物(b)及び非水性流体キャリア(c)の組み合わせの、ポリオルガノシロキサン(a)に対する重量比は、0.01以上0.50以下であり、組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する、組成物である。
【0015】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の組成物を調製する方法であって、(a)モノテルペン反応溶媒中で縮合反応を行うことによって縮合生成物を調製する工程であって、当該縮合反応が、1重量パーセント未満の芳香族溶媒の存在下で行われ、当該縮合反応が、(b)(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2(式中、下付き文字a、b、及びcは、関連する分子単位のモル当量であり、aは、0.30~0.60であり、下付き文字bは、0.40~0.70であり、下付き文字cは、0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、Rは、出現ごとに、水素、C1~30アルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、Zは、出現ごとに、H及びC~Cアルキルからなる群から選択される)を有するポリシロキサン樹脂、及び(ii)4,500ダルトン以上、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:A-O-(CO)(CO)-A’(式中、e/pの値は、1超9未満であり、A及びA’は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から選択され、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つはHである)を有するポリオキシアルキレンポリマーの間のものである、調製する工程と、(b)縮合生成物に、ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアを添加して、混合物を形成する工程と、(c)工程(a)の後かつ工程(d)の前に、縮合反応生成物の重量に対して10重量パーセント未満の濃度になるようにモノテルペン反応溶媒を除去する工程と、(d)工程(c)の混合物に、少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、剪断下25℃で1キロパスカル秒以上の粘度を有するポリオルガノシロキサンを分散させて、当該工程(c)の混合物中に分散した0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有するポリオルガノシロキサン粒子の分散液を生成して、組成物を形成する工程と、を含み、工程(b)で添加された非水性流体キャリアの、工程(a)で調製された縮合生成物に対する重量比は、0.5以上10以下であり、工程(a)で調製された縮合生成物と工程(b)で添加された非水性流体キャリアとの組み合わせの、工程(d)で分散させたポリオルガノシロキサンに対する重量比が、0.01以上0.5以下であり、組成物が、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有し、当該組成物が、モノテルペンを含む、方法である。
【0016】
本発明の組成物は、コーティング配合物においてスリップ添加剤として有用である。本発明の方法は、本発明の組成物の調製に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1(a)】ポリシロキサン樹脂(MQ樹脂)、ポリオキシアルキレンポリマー(POA)、及び反応溶媒の混合物についての相図を示す。図1(a)は、反応溶媒としてD-リモネンを使用する。図1(b)は、反応溶媒としてキシレンを使用する。図1(c)は、反応溶媒としてn-酢酸ブチルとヘプタンとの5:1ブレンドを使用する(米国仮特許出願第62/838354号で使用されているものなど)。より濃いパターン化領域は、成分が単相を形成する(すなわち、互いに可溶性である)領域を示し、一方、より薄いパターン化領域は、成分が多相を形成する(すなわち、互いに可溶性ではない)領域である。
図1(b)】ポリシロキサン樹脂(MQ樹脂)、ポリオキシアルキレンポリマー(POA)、及び反応溶媒の混合物についての相図を示す。図1(a)は、反応溶媒としてD-リモネンを使用する。図1(b)は、反応溶媒としてキシレンを使用する。図1(c)は、反応溶媒としてn-酢酸ブチルとヘプタンとの5:1ブレンドを使用する(米国仮特許出願第62/838354号で使用されているものなど)。より濃いパターン化領域は、成分が単相を形成する(すなわち、互いに可溶性である)領域を示し、一方、より薄いパターン化領域は、成分が多相を形成する(すなわち、互いに可溶性ではない)領域である。
図1(c)】ポリシロキサン樹脂(MQ樹脂)、ポリオキシアルキレンポリマー(POA)、及び反応溶媒の混合物についての相図を示す。図1(a)は、反応溶媒としてD-リモネンを使用する。図1(b)は、反応溶媒としてキシレンを使用する。図1(c)は、反応溶媒としてn-酢酸ブチルとヘプタンとの5:1ブレンドを使用する(米国仮特許出願第62/838354号で使用されているものなど)。より濃いパターン化領域は、成分が単相を形成する(すなわち、互いに可溶性である)領域を示し、一方、より薄いパターン化領域は、成分が多相を形成する(すなわち、互いに可溶性ではない)領域である。
図2(a)】同様の初期濃度の反応物を用い、同様の時間還流させることによって反応を行った後の、MQ樹脂とPOAとの縮合反応生成物の存在下における、ポリシロキサン樹脂(MQ樹脂)、ポリオキシアルキレンポリマー(POA)、及び反応溶媒の混合物についての相図を示す。図2(a)は、反応溶媒としてD-リモネンを使用する。図2(b)は、反応溶媒としてキシレンを使用する。図2(c)は、反応溶媒としてn-酢酸ブチルとヘプタンとの5:1(質量)ブレンドを使用する。より濃いパターン化領域は、成分が単相を形成する(すなわち、互いに可溶性である)領域を示し、一方、より薄いパターン化領域は、成分が多相を形成する(すなわち、互いに可溶性ではない)領域である。
図2(b)】同様の初期濃度の反応物を用い、同様の時間還流させることによって反応を行った後の、MQ樹脂とPOAとの縮合反応生成物の存在下における、ポリシロキサン樹脂(MQ樹脂)、ポリオキシアルキレンポリマー(POA)、及び反応溶媒の混合物についての相図を示す。図2(a)は、反応溶媒としてD-リモネンを使用する。図2(b)は、反応溶媒としてキシレンを使用する。図2(c)は、反応溶媒としてn-酢酸ブチルとヘプタンとの5:1(質量)ブレンドを使用する。より濃いパターン化領域は、成分が単相を形成する(すなわち、互いに可溶性である)領域を示し、一方、より薄いパターン化領域は、成分が多相を形成する(すなわち、互いに可溶性ではない)領域である。
図2(c)】同様の初期濃度の反応物を用い、同様の時間還流させることによって反応を行った後の、MQ樹脂とPOAとの縮合反応生成物の存在下における、ポリシロキサン樹脂(MQ樹脂)、ポリオキシアルキレンポリマー(POA)、及び反応溶媒の混合物についての相図を示す。図2(a)は、反応溶媒としてD-リモネンを使用する。図2(b)は、反応溶媒としてキシレンを使用する。図2(c)は、反応溶媒としてn-酢酸ブチルとヘプタンとの5:1(質量)ブレンドを使用する。より濃いパターン化領域は、成分が単相を形成する(すなわち、互いに可溶性である)領域を示し、一方、より薄いパターン化領域は、成分が多相を形成する(すなわち、互いに可溶性ではない)領域である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、VDAは、自動車工業会(Verband der Automobilindustrie)を指す。
【0019】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。商品名で識別される製品は、本明細書に別途記載のない限り、本文書の優先日において、それらの商品名でサプライヤーから入手可能な組成物を指す。
【0020】
「アルキル」は、水素原子を除去することによってアルカンから誘導される炭化水素基である。「置換アルキル」は、少なくとも1つの炭素又は水素の代わりに炭素及び水素以外の原子を有するアルキルである。置換アルキルの例としては、アルキルアミン及びアルキルチオールが挙げられる。
【0021】
「アリール」は、水素原子を除去することによって芳香族炭化水素から誘導される基である。「置換アリール」は、少なくとも1つの炭素又は水素の代わりに炭素及び水素以外の原子を有するアリールである。
【0022】
「Cx~y」という種類の表記は、x個以上で同時にy個以下の炭素原子を有することを指す。
【0023】
本明細書の「混和性」成分は、肉眼で見たときに透明である混合物を形成する。
【0024】
「沸点」は、特に明記しない限り、101キロパスカル圧力での沸点を指す。
【0025】
シロキサン単位は、M、D、T及びQの表記によって特徴付けられる。Mは、式「(CHSiO1/2」を有するシロキサン単位、又は「トリメチルM単位」を指す。Dは、式「(CHSiO2/2」を有するシロキサン単位、又は「ジメチルD単位」を指す。Tは、式「(CH)SiO3/2」を有するシロキサン単位を指す。Qは、式「SiO4/2」を有するシロキサン単位を指す。M単位、D単位、及びT単位中のケイ素原子に結合した非酸素基は、別段の記載又は指示がない限り、メチル基である。接尾辞「型」が付いたシロキサン単位の表記への言及は、任意の1つ以上のメチル基が、実際には水素又はメチルを含む任意の炭素結合置換基であり得るシロキサン単位を指す。「炭素結合置換基」は、炭素原子を介してケイ素原子に結合している基である。例えば、「D型」シロキサン単位は、例えば、非酸素位置でケイ素原子に結合した水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、又は任意の他の炭素結合置換基を、任意の組み合わせで有し得る。特に、「1/2」の下付き文字の倍数を持つ酸素原子は、その酸素が指定された原子を第2の原子に架橋することを示し、第2の原子も「1/2」の倍数の下付き文字を持つ酸素で指定される。例えば、「(SiO4/2)(ZO1/2)」は、単一の酸素を介して「Z」基に結合したケイ素原子を有するQ型基を指す。
【0026】
「芳香族溶媒」は、101キロパスカルの圧力で23℃において液体であり、150℃未満の沸点を有し、本発明で特許請求される組成物の1つ又は2つ以上の成分と混和性である芳香族材料を指す。芳香族溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレンの異性体が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物
本発明は、ポリオルガノシロキサンと、ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物と、ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体と、モノテルペンと、を含む分散液を含む組成物を含む。分散液は、縮合生成物及び非水性流体キャリアを含有する連続相中に分散されたポリオルガノシロキサンポリマーの粒子を含む。分散液は、分散ポリオルガノシロキサンポリマー、連続相、又は分散ポリオルガノシロキサンポリマー及び連続相の両方に存在し得るモノテルペンを更に含む。
【0028】
組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有する。水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフィー(GC-FID)により、本組成物などの系中の芳香族溶媒の量を測定する。内部標準としてのオクタンと共に分散するまで振盪することにより、分析物(例えば、MQ樹脂)をn-ヘプタンで1:10(w/w)希釈する。以下の条件下でGC-FIDを使用して溶液を分析する:入口に1マイクロリットルの分析物溶液を注入し、ヘリウムキャリアガスを2.0ミリリットル/分で流しながら、50:1のスプリットで、摂氏280度(℃)の温度で維持する。分離は、DB-1 30メートル×0.25ミリメートル×1.0マイクロメートルのフィルムカラムで、30℃~300℃の範囲の温度勾配の下で、15℃/分の速度で発生する。水素炎イオン化検出器からのデータを解釈する。オクタン内部標準に対する芳香族含有量を定量する。
【0029】
ポリオルガノシロキサン
本発明のポリオルガノシロキサンは、望ましくは、1キロパスカル秒(kPas)以上、5kPas以上、10kPas以上、15kPas以上、20kPas以上、25kPas以上、30kPas以上、40kPas以上、50kPas以上、75kPas以上、更には100kPasの粘度を有する。本明細書では、直径25ミリメートルのコーン及びプレートの形状を備えた、TA Instruments Discovery Hybrid Rheometer(DHR)又はAnton Paar Modular Rheometer(MCR)のいずれかを用いて、0.0001~0.01s-1の剪断速度範囲で、摂氏25度(℃)での粘度を測定する。粘度値は、定常剪断粘度である。好ましくは、ポリオルガノシロキサンは「ガム」であり、これは、ASTM法926によって求められるウィリアム可塑度が、30以上、好ましくは50以上であることを意味する。ポリオルガノシロキサンは、少なくとも90モルパーセントのD単位を含む。
【0030】
概して、本発明のポリオルガノシロキサンは、望ましくは、以下の平均化学構造:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2
(式中、
は、各出現において独立して、アルキル基、アリール基、置換アルキル基、及び置換アリール基の群から選択され、式中、Rは、1個以上の炭素を有すると同時に、30個以下の炭素、好ましくは6個以下の炭素を有する)を有する。Rは、各出現においてメチルであり得る。
は、各出現において独立して、水素、ヒドロキシル、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリール基からなる群から選択され、式中、Rは炭素数30個以下、好ましくは炭素数6個以下である。好適なR基の例としては、C2~30アルキル(エチル、プロピル、n-ブチル及びt-ブチルなど)、フッ素化C2~30アルキル、シクロヘキシル、C2~4アルキルチオール、C2~4一級アルキルアミン、-C2nNR’C2mNR’(式中、R’はH又は-C2mCH(OH)CHOHのいずれかであり、m及びnは、2~4の範囲の整数から独立して選択される)、-C2nOCHCH(OH)CHN(CHCH(OH)CH(式中、nは、2~4の範囲から選択される整数である)、-C2nOCHCHOCH(式中、nは、2~4の範囲から選択される整数である)、-C2nC(O)OH(式中、nは、2~4の範囲から選択される整数である)、並びに-SCHC(O)OHが挙げられる。
は、各出現において独立して、R及びRの選択肢から選択される。
下付き文字x、y、z、u及びvは、分子中の下付き文字を伴う特定の分子単位の平均数を示し、xは、2~50の範囲から選択される整数であり、yは、1~10,000の範囲から選択される整数であり、zは、0~200の範囲から選択される整数であり、uは1~50の範囲から選択される整数であり、vは1~50の範囲から選択される整数であり、但し(x+y+z+u+v)は2,000以上であり、(u+v)/(x+y+z+u+v)は、0.4以下であり、z/yは0.05以下であり、x/(x+y+z+u+v)は0.6以下であること、及びポリオルガノシロキサンは少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を有すること、を条件とする。
【0031】
ポリオルガノシロキサンは、直鎖状又は「実質的に直鎖状」であり得る。直鎖状ポリオルガノシロキサンは、それに含まれる唯一のシロキサン単位がM型及びD型シロキサン単位であるという事実によって特徴付けられる。「実質的に直鎖状」ポリオルガノシロキサンは、それに含まれる唯一のシロキサン単位がM型及びD型シロキサン単位であり、総シロキサン単位100モル当たりのT型シロキサン単位とQ型シロキサン単位との合計が最大5モルであり、2つのT単位又はQ単位が分子内で互いに隣接していないという事実によって特徴付けられる。
【0032】
ポリオルガノシロキサンは、有利には、1つ以上の末端アミン官能基を有することができる。末端アミン官能基は、バインダー中に存在することが多いアクリレート及びイソシアネート官能基などの他の官能基と反応することができるため、望ましい。そのため、本発明の組成物が、コーティング配合物中にアクリレート官能化バインダーを含むか、又はそれと組み合わされると、ポリオルガノシロキサンの末端アミンは、反応してコーティングのバインダーに結合し、その結果、耐摩耗性及び耐汚れ性がより高いコーティングが得られる。
【0033】
好適なポリオルガノシロキサンの例としては、表1のものが挙げられる。XIAMETER(商標)及びSILASTIC(商標)は、Dow Corning Corporationの商標である。
【0034】
【表1】
【0035】
トリプル検出器(光散乱、屈折率、及び粘度検出器)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び単一のポリスチレン標準によって、ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の値を求める。
【0036】
ASTM法926に従ってポリオルガノシロキサンの可塑性を求める。
【0037】
本発明の方法では、ポリオルガノシロキサンは、縮合生成物及び非水性キャリア中に分散されて、ポリオルガノシロキサン粒子の分散液を形成する。本発明の組成物において、ポリオルガノシロキサンは、0.5マイクロメートル(μm)以上の平均粒径を有する分散粒子として存在し、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、4.0μm以上、5.0μm以上、更には10μm以上であると同時に、望ましくは20μm以下、好ましくは15μm以下、12μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、更には5μm以下であり得る。Malvern Instruments製のMastersizer(商標)3000レーザー回折粒径分析器を用いて、ポリオルガノシロキサンの粒径分布の体積加重中央値(Dv50)として平均粒径を測定する。
【0038】
縮合生成物
本発明の組成物は、(i)ポリシロキサン樹脂及び(ii)ポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物を含む。ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマーの縮合生成物は、未反応の出発材料及び縮合反応中に生成される材料を含む複数の成分の組み合わせである。各成分を単離及び特定することは、困難な作業である。更に、反応生成物のいずれか1つを除去すると、非水性流体中のポリオルガノシロキサン粒子を安定化させるための乳化剤としての縮合生成物の機能に影響を与えることがある。縮合反応の生成物は、反応生成物を互いに単離することなく、本反応の組成物に使用される。したがって、この成分は、反応から生じる複数の生成物が存在することを明らかにするために、これら2つの反応物の「縮合生成物」として記載される。
【0039】
本明細書において以下に記載するように、縮合反応は、モノテルペン反応溶媒中で行われる。モノテルペン反応溶媒の大部分は、縮合反応が完了した後に除去することができる。しかしながら、200℃未満の温度及び商業的に実現可能な除去時間(例えば、10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは3時間以下、最も好ましくは2時間以下)を維持しながら、モノテルペン反応溶媒の全てを縮合反応生成物から除去することができるわけではなく、したがって、若干のモノテルペン反応溶媒が縮合反応のフィンガープリントとして本発明の組成物中に持ち込まれる。
【0040】
縮合生成物は、後述するキャリア流体と共に、特許請求される粒径範囲内の粒子になるようにポリオルガノシロキサンを分散させ、安定化させることを可能にする乳化剤として機能する。モノテルペンの存在は、モノテルペン反応溶媒中で行われた縮合反応のフィンガープリントである。
【0041】
ポリシロキサン樹脂.ポリシロキサン樹脂は、望ましくは、重量平均分子量が4,000以上、6,000以上、8,000以上、10,000以上、12,000以上、14,000以上、16,000以上、18,000以上、20,000以上であり、同時に望ましくは、重量平均分子量が50,000以下、48,000以下、46,000以下、44,000以下、42,000以下、40,000以下、38,000以下、36,000以下、34,000以下、32,000以下、30,000以下、28,000以下、26,000以下、25,000以下、又は更には24,000以下である。トリプル検出器ゲル浸透クロマトグラフィ(光散乱、屈折率、及び粘度検出器)及び単一のポリスチレン標準を用いて、重量平均分子量をダルトン単位で測定する。
【0042】
ポリシロキサン樹脂は、以下の一般組成:
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
(式中、
下付き文字a、b、及びcは、下付き文字を伴う基の、分子中のケイ素原子の総モルに対する平均モル比を指す)を有するMQ樹脂である。下付き文字aは0.30~0.60の範囲の値、下付き文字bは0.40~0.70の範囲から選択された値、下付き文字cは0.05~0.20の範囲から選択された値である。必然的に、下付き文字a及びbの値の合計は1である。明確にするために、ZO1/2単位は、必ずポリシロキサン樹脂分子のQ単位に結合している。望ましくは、下付き文字aの下付き文字bに対する比は、0.4~1.5.の範囲から選択される値である。29Si、13C、及びH核磁気共鳴スペクトル法を用いて、下付き文字a、b及びcの値を求める(例えば、The Analytical Chemistry of Silicones,Smith,A.Lee,ed.,John Wiley&Sons:New York,1991,p.347ff.を参照されたい)。
Rは、出現ごとに独立して、水素、C1~30アルキル基、C1~30置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から選択される。典型的には、Rは、出現ごとに独立して、C1~30アルキル基及びアリール基、より典型的にはC1~6アルキル及びフェニル基からなる群から選択される。最も典型的には、Rは各出現において独立して、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基から選択される。
Zは各出現において独立して、H及びC1~8アルキルからなる群から選択される。典型的には、Zは各出現において独立して、H、メチル、エチル、プロピル及びブチルからなる群から選択される。好ましくは、Zは水素である。
【0043】
好適なポリシロキサン樹脂は、米国特許第2676182号、同第3627851号、同第3772247号、同第8017712号、及び同第5548053号に教示される合成方法によって得ることができる。好適な市販のポリシロキサン樹脂としては、DOWSIL(商標)MQ-1600樹脂(DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である)、SR-1000 MQ樹脂(a=0.43、b=0.57、c=0.11、R=メチル;Z=3H;Momentive製)、及びBELSIL(商標)TMS 803(a=0.41、b=0.59、c=0.08、R=メチル;Z=3:5モル比のH:エチル、BELSILは、Wacker Chemie AGの商標である)として市販されているものが挙げられる。
【0044】
好適なポリシロキサン樹脂の具体例としては、表2のものが挙げられる。ポリシロキサン樹脂の構造は、上記のように、以下の構造で提供される。
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
【0045】
【表2】
【0046】
ポリオキシアルキレンポリマー.ポリオキシアルキレンポリマーは、以下の組成:
A-O-(CO)(CO)-A’
(式中、
下付き文字e及びpは、それぞれ分子中のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド単位の平均数に対応する)を有する。比e/pは、望ましくは1以上であり、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上であり得、同時に、典型的には9以下であり、8以下、7以下、6以下、更には5以下であり得る。望ましくは、eとpの合計は100以上、好ましくは110以上、120以上、130以上、140以上であり、同時に、典型的には1000以下、750以下、更には500以下である。
13C-又はH-核磁気共鳴スペクトル法におけるピーク積分値の比から、e/pモル比(X)を求める。数平均分子量値からポリマー末端基の重量を除いた修正分子量値(Y)をMn-(M+MA’+16.00)(式中、Mnは数平均分子量、MはA末端基のモル質量、MA’はA’末端基のモル質量である)として算出する。「p」の値はY/(44.05X+58.08)である。「e」の値は、「p」の値にe/pモル比(X)を乗じたものである。13C-又はH-核磁気共鳴スペクトル法を用いてA及びA’の組成を最初に特定することによって、M及びMA’を求める。A及びA’のシグナルが低すぎて、e/p比を求めるのに十分な条件下で13C-又はH-核磁気共鳴スペクトル法によって構造を決定することができない場合、A及びA’の分子量は無視できるとみなして、M及びMA’の値にゼロを使用してもよい。
プロピレンオキシド成分は、得られる縮合生成物の可撓性を高めるために、ポリオキシアルキレンポリマーにおいて有用である。ポリオキシアルキレンポリマーは、ポリシロキサン樹脂分子に連結している。プロピレンオキシド成分は、ポリオキシアルキレン中の流動性を確保するために必要であるため、後者のポリオキシアルキレンは、取り扱いや混合が容易な液体である。エチレンオキシド及びプロピレンオキシド単位は、ポリオキシアルキレンポリマー内で、ブロック構成であり得る、ランダムに分布し得る、又は部分的にブロック構成かつ部分的にランダムであり得る。
A及びA’は、各出現において独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から選択され、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つが水素である。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルが挙げられる。望ましくは、A及びA’は両方とも水素である。
【0047】
ポリオキシアルキレンポリマーは、数平均分子量が4,500ダルトン(Da)以上、典型的には5,000Da以上、好ましくは10,000Da以上、より好ましくは12,500Da以上であると同時に、典型的には50,000Da以下、好ましくは30,000Da以下、更により好ましくは20,000Da以下である。1ミリリットル/分の流量のテトラヒドロフラン溶離剤、35℃の示差屈折率検出器、及び580Da~2,300,000Daの分子量範囲に及ぶ16種の狭いポリスチレン標準を用いて、Polymer Labs PLgel 5マイクロメートルガードカラム(50ミリメートル×7.5ミリメートル)、続いて、2本のPolymer Labs PLgel 5マイクロメートルMixed-Cカラム(300ミリメートル×7.5ミリメートル)に、15ミリグラム/ミリリットルの濃度のサンプルを100マイクロリットル注入することを用い、ゲル浸透クロマトグラフィによって数平均分子量を求める。
【0048】
好適なポリオキシアルキレンポリマーの具体例としては、表3のものが挙げられる。
【0049】
【表3】
【0050】
非水性流体キャリア(キャリア流体)
本発明の組成物は、縮合生成物のキャリア流体として機能し、ポリオルガノシロキサンが分散する連続相として機能する非水性流体を含む。非水性流体キャリアは、ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である。非水性流体キャリアは、非水性極性流体とも呼ばれる。
【0051】
非水性流体キャリアの縮合生成物に対する重量比は、0.5以上であり、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、更には8以上であり得、同時に、概ね10以下であり、9以下、8以下、7以下、6以下、更には5以下であり得る。
【0052】
縮合生成物と非水性流体キャリアとの合計重量の、ポリオルガノシロキサンの重量に対する比は、典型的には、0.01以上、0.05以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.35以上、0.40以上、更には0.45以上であると同時に、概ね0.50以下であり、0.45以下、0.40以下、0.35以下、0.30以下、0.25以下、0.20以下、0.15以下、0.10以下、更には0.05以下であり得る。
【0053】
本発明のための非水性流体キャリア(又は「キャリア流体」)として好適な材料の例としては、アルコールエトキシレート、シリコーンポリエーテル、及びポリグリコール(ジグリコール及び/又は3つ以上のグリコールのポリマーを含む)が挙げられる。好適な非水性キャリア流体の具体例としては、表4のものが挙げられる。
【0054】
【表4】
【0055】
モノテルペン
モノテルペンは、2つのイソプレン単位からなるテルペンのクラスであり、分子式C1016を有する。モノテルペンは、鎖状(非環式)であってもよく、環を含有していてよい(単環式及び二環式)。モノテルペンの例としては、リモネン(D-リモネン及び/又はL-リモネン)、3-カレン、カンフェン、γ-テルピネン、及びα-ピネンが挙げられる。本発明の組成物は、2つ以上のモノテルペンの任意の1つのモノテルペン又は任意の組み合わせを含んでいてよい。定義によれば、モノテルペンは、芳香族性を有しない(すなわち、モノテルペンは、非芳香族である)。望ましくは、組成物中に存在するモノテルペンは、190℃以下の沸点を有する。
【0056】
モノテルペンは、δについては15.0~22.6(MPa)1/2、δについては2.8~7.0(MPa)1/2、δについては4.0~7.5(MPa)1/2の範囲外の少なくとも1つのハンセン溶解度パラメータを有する。特に、モノテルペンのδパラメータは、ほぼ常に2.8(MPa)1/2未満であり、多くは4.0未満のδ値を有する。例えば、モノテルペンに関する表5のハンセン溶解度パラメータについて検討する(A.Filly et al,C.R.Chimie 17 (2014)1268-1275から得られた値):
【0057】
【表5】
【0058】
モノテルペンは、縮合生成物と共に組成物に入る。以下に更に記載するように、本発明の驚くべき特徴の1つは、縮合生成物を作製するために使用される縮合反応を、モノテルペン反応溶媒中で行うことができる点である。縮合反応が完了した後、モノテルペンの大部分は、反応生成物の完全性を保持するのに望ましい真空下(1キロパスカル以下、10水銀柱ミリメートル未満)、摂氏105度(℃)の穏和な条件下で除去することができる。しかしながら、縮合反応生成物からモノテルペン反応溶媒のモノテルペンを全て除去することは実現不可能であるので、若干は残存し、縮合生成物と共に本発明の組成物中に持ち越される。
【0059】
典型的には、本発明の組成物中のモノテルペンの濃度は、組成物の重量に基づいて、10重量パーセント(重量%)以下、5重量%以下、3重量%以下であり、2重量%以下、1重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、更には0.005重量%以下であってもよく、同時に、典型的には0.0001重量%以上、0.001重量%以上であり、0.005重量%以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上、更には0.1重量%以上であってもよい。
【0060】
水性液体
本発明の組成物は、他の成分と混合された水性液体を更に含み得る。水性液体、好ましくは水は、任意選択で、主に希釈液として含まれ、組成物が水性コーティング配合物の一部である場合に望ましいものである。水性液体の濃度は、ポリオルガノシロキサン100重量部当たり最大500重量部であり得る。
【0061】
バインダー
本発明の組成物は、1つ以上のバインダーを更に含み得る。本発明の組成物の分散液は、コーティング組成物などの組成物におけるスリップ助剤として有用である。コーティング組成物は、基材上にフィルムを形成するバインダーを含有する。本発明の組成物中に存在し得るバインダーの例としては、アクリル及び/又はポリウレタンバインダーが挙げられる。アクリルバインダーとしては、溶剤性アクリル、アクリルエマルジョン、純粋なアクリルコポリマーの水性アニオン性エマルジョン、水性アニオン性自己架橋スチレン-アクリルコポリマーエマルジョン、遊離ヒドロキシル基を含む水性アニオン性スチレン-アクリルエマルジョン、及び水性アニオン性自己架橋コポリマーエマルジョンが挙げられる。ポリウレタンバインダーとしては、脂肪族ポリカーボネートウレタンの水性アニオン性分散液、脂肪族ポリエーテルウレタンの水性無溶媒アニオン性分散液、脂肪族ポリエステルウレタンの水性非イオン性分散液、脂肪族ポリカーボネート-ポリエーテルウレタンの水性無溶媒アニオン性分散液が挙げられる。
【0062】
低濃度の芳香族溶媒
芳香族溶媒の濃度が極めて低いことは、モノテルペンの存在と共に、本発明の組成物の特徴である。芳香族溶媒の濃度は、組成物の重量部に対して、1重量百万分率(ppm)以下、好ましくは0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下、0.2ppm以下、0.1ppm以下、0.09ppm以下、0.08ppm以下、0.07ppm以下、0.06ppm以下、又は更には0.05ppm以下である(すなわち、ppmは、組成物百万重量部当たりの重量部である)。芳香族溶媒の濃度は、0ppmであってもよい。しかしながら、典型的には、他の成分のうちの1つの夾雑物質として少量の芳香族溶媒が存在する。芳香族溶媒の濃度を求めるために、上に既に記載した通りGC-FID法によって組成物中の芳香族溶媒をppmで求める。
【0063】
触媒
本発明の別の利点は、スズ触媒を含まないことが可能であることである。縮合反応の中には、スズ触媒の使用を必要とするものがあり、スズ触媒は、ポリオルガノシロキサンの分散液を調製する際に使用すると、最終組成物まで持ち越される。スズ触媒は、一部の用途では望ましくない。本発明の縮合生成物を調製するために使用される縮合反応は、スズ触媒なしで実行することができ、それによってスズ触媒の導入を回避することができる。このように、縮合反応生成物及び最終組成物は、スズ触媒を含まないことが可能である。
【0064】
本発明の方法
本発明は、本発明の組成物を調製するための方法を含む。本方法は、
(a)モノテルペン反応溶媒中で縮合反応を行うことによって縮合生成物を調製する工程であって、当該縮合反応が、1重量パーセント未満の芳香族溶媒の存在下で行われ、当該縮合反応が、
(i)4,000~50,000の重量平均分子量を有し、以下の組成:
(RSiO1/2(SiO4/2(ZO1/2
(式中、下付き文字a、b、及びcは、関連する分子単位のモル当量であり、aは、0.30~0.60であり、下付き文字bは、0.40~0.70であり、下付き文字cは、0.05~0.20であり、下付き文字a及びbの合計は1であり、Rは、出現ごとに、水素、C1-30アルキル基、及びアリール基からなる群から選択され、Zは、出現ごとに、H及びC~Cアルキルからなる群から選択される)
を有するポリシロキサン樹脂、及び
(ii)4,500ダルトン以上、同時に50,000ダルトン以下の数平均分子量を有し、以下の組成:
A-O-(CO)(CO)-A’
(式中、e/pの値は1超9未満であり、A及びA’は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリール基からなる群から独立して選択され、但し、A及びA’のうちの少なくとも1つがHである)を有するポリオキシアルキレンポリマーの間のものである、調製する工程と、
(b)当該縮合生成物に、当該ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアを添加して、混合物を形成する工程と、
(c)工程(a)の後かつ工程(d)の前に、当該縮合生成物100万重量部当たり5重量部未満の濃度になるように任意の芳香族溶媒を除去することを含む、縮合反応生成物の重量に対して10重量パーセント未満の濃度になるようにモノテルペン反応溶媒を除去する工程と、
(d)工程(c)の混合物に、少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、剪断下25℃で1キロパスカル秒以上の粘度を有するポリオルガノシロキサンを分散させて、工程(c)の当該混合物中に分散した0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有するポリオルガノシロキサン粒子の分散液を生成して、組成物を形成する工程と、
を含み、
工程(b)における非水性流体キャリアの(a)で調製された縮合生成物に対する重量比は、0.5以上、1.0以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0以上、更には8.0以上であり、同時に、典型的には10以下、9.0以下であり、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、4.0以下、3.0以下、2.0以下、更には1.0以下であってもよく、
工程(a)で調製された縮合生成物と工程(b)で添加された非水性流体キャリアとの組み合わせの、工程(d)で分散させたポリオルガノシロキサンに対する重量比は、0.01以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、0.3以上、又は更には0.4以上であるが、同時に、一般に0.5以下であり、0.4以下、0.3以下、0.2以下、更には0.1以下であってもよく、
当該組成物は、組成物100万重量部当たり1重量部未満の芳香族溶媒を含有し、
当該組成物は、モノテルペンを含む。
【0065】
ポリシロキサン樹脂、ポリオキシアルキレンポリマー、非水性キャリア流体、及びポリオルガノシロキサンは、本明細書において上に記載した通りである。
【0066】
モノテルペン反応溶媒は、本明細書において上に記載した2つ以上のモノテルペンの1つ又は組み合わせであってよい。モノテルペンは、望ましくは、穏和な条件下(真空(1キロパスカル以下の圧力)下で105℃)でモノテルペンの大部分を除去するのを容易にするために190℃以下の沸点を有する。あるいは、モノテルペン反応溶媒は、モノテルペン成分単独よりも低い沸点を有するモノテルペン反応溶媒を提供するように選択される、モノテルペン以外の非芳香族炭化水素を、最大25重量%、好ましくは最大20重量%、より好ましくは最大15重量%含有していてもよい。非芳香族炭化水素の重量%は、モノテルペン反応溶媒の重量(モノテルペン及び任意の非芳香族炭化水素の合計)に対するものである。このような非芳香族炭化水素は、典型的には、150℃以下、同時に50℃以上、好ましくは60℃以上、更には65℃以上の沸点を有する。モノテルペン以外の好適な非芳香族炭化水素の例としては、n-ヘキサン(沸点68.7℃)、n-ヘプタン(沸点98.4℃)、及びn-オクタン(沸点126℃)が挙げられる。
【0067】
モノテルペン反応溶媒中でポリシロキサン樹脂とポリオキシアルキレンポリマーとの縮合反応を行うことによって、縮合生成物を調製する。ポリシロキサン樹脂、ポリオキシアルキレンポリマー、及びモノテルペン反応溶媒が反応混合物を形成する。ポリシロキサン樹脂及びポリオキシアルキレンポリマー(反応物)は、望ましくは、反応混合物の10重量%以上の濃度で存在する。望ましくは、反応混合物は、反応混合物の重量に基づいて、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、更により好ましくは70重量%以上がモノテルペン反応溶媒であり、80重量%以上がモノテルペン反応溶媒であってもよく、その理由は、このレベルのモノテルペン反応溶媒を用いて反応を行うと、反応生成物が透明(本明細書において以下に記載する通り測定したときに、透過率>70%)になる傾向があるためである。
【0068】
反応は、ポリシロキサン樹脂、ポリオキシアルキレンポリマー、及びモノテルペン反応溶媒の総重量に基づいて、1重量%未満、好ましくは0.5重量%以下、0.25重量%以下、0.10重量%以下、0.09重量%以下、0.075重量%以下、0.01重量%以下、0.005重量%以下、0.001重量%以下、0.0005重量%(5ppm)以下、0.0001重量%(1ppm)以下の芳香族溶媒の存在下で、又は更には芳香族溶媒の非存在下で行われる。縮合反応は、スズ縮合触媒の存在下で行っても、スズ縮合触媒の非存在下で行ってもよい。
【0069】
概して、縮合反応は、最初にモノテルペン反応溶媒中ポリオルガノシロキサン樹脂の溶液を調製することによって行うことができる。ポリオキシアルキレンポリマー及び所望であれば縮合触媒を添加して、反応混合物を形成する。反応溶媒を反応混合物に戻しながら、好ましくはディーン-スタークトラップ又は水を反応溶媒から共蒸留及び分離するための他の手段を使用して、反応混合物を加熱還流する。激しい還流を維持して反応を行う。典型的には、還流は20時間以下維持され、反応物、触媒、及び所望の反応の程度に応じて10時間以下、更には5時間以下であってもよい。所望であれば、還流後に反応混合物を化学的に中和し、濾過する。所望であれば、5.0マイクロメートルの公称孔径を有するフィルターを用いて、反応混合物を濾過する。縮合反応が完了した後、キャリア流体を添加し、真空蒸留によって反応溶媒を除去することによって、反応溶媒の大部分をキャリア流体と交換することができる。縮合反応を行い、キャリア流体を反応溶媒と交換する方法の具体例は、以下の実施例の項にある。
【0070】
本発明の驚くべき態様は、モノテルペン反応溶媒中で行うことができることである。芳香族溶媒並びに酢酸n-ブチル及びヘプタンのような溶媒のブレンドとは異なり、縮合の反応物は、縮合反応が始まる前にモノテルペン中で特に乏しい共溶解性を有する。例えば、ポリシロキサン樹脂(DOWSIL(商標)MQ-1600 Solid Resin)、ポリオキシアルキレンポリマー(UCON(商標)Lubricant 75-H-90,000)、及びモノテルペン溶媒(D-リモネン)の相図を示す図1(a0-図1(c))を参照されたい。図1(a)は、溶媒としてD-リモネンを使用した図を示す。図1(b)は、溶媒としてキシレンを使用した図を示す。図1(c)は、酢酸n-ブチルとヘプタンとの5:1(重量比)混合物である溶媒を使用した図を示す。濃い領域は、成分が互いに可溶性であり、透明な溶液を形成する領域を示す。D-リモネンは、本発明の縮合反応のための反応物であるこれらの成分にとって貧溶媒であると思われる。それにもかかわらず、以下の実施例が示すように、D-リモネンは、驚くべきことに、縮合反応のための特に良好な反応溶媒であり、芳香族溶媒及び酢酸n-ブチル/ヘプタン溶媒とは異なり、透明な反応生成物をもたらす。
【0071】
おそらく、モノテルペンが本発明の縮合反応のための良好な縮合反応溶媒である理由の一部は、縮合反応が進行し、縮合生成物が形成されるにつれて、反応物の共溶解性が、キシレン又はn-酢酸ブチル/ヘプタン混合物のいずれよりも、モノテルペンにおいて劇的に、予想外かつ劇的に大きな程度まで、実際に増大するためである。図2(a)~図2(c)は、同じ初期反応物濃度を有し、同様の時間還流させた反応混合物から作製された縮合反応生成物の存在下における同じ相図を示す。濃い部分は、図1(a)(縮合生成物が存在しない同じ図)、又は図2(b)(反応生成物と共にキシレン溶媒)、又は図2(c)(縮合生成物と共にn-酢酸ブチル/ヘプタン溶媒)のいずれと比べても、リモネン溶媒を用いた図2(a)において劇的に広い。理論に束縛されるものではないが、モノテルペンのこの固有の溶解度挙動は、それが非芳香族であり、穏和な条件下でほとんど除去することができることは言うまでもなく、本発明のための特に良好な縮合反応溶媒であることに寄与すると予想される。
【0072】
縮合反応が完了し、縮合生成物が得られ、任意の所望の触媒中和及び濾過を行ってから、ポリオキシアルキレンポリマーと混和性である非水性流体キャリアを縮合生成物に添加して、混合物を形成する。非水性流体キャリアは、本発明の組成物の項に上記されている。本発明の組成物について記載した濃度を達成するような量の非水性担体を添加する。
【0073】
縮合反応の後かつ以下に記載する分散工程の前に、縮合反応生成物の重量に対して10重量%以下、好ましくは8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、好ましくは2重量%以下であり、1重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、更には0.005重量%以下であってもよく、同時に、典型的には0.0001重量%以上、0.001重量%以上であり、0.005重量%以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上、更には0.1重量%以上であってもよいモノテルペンの濃度を達成するように、モノテルペン反応溶媒を除去する。この時点で、芳香族溶媒は、望ましくは、縮合生成物の重量に基づいて5重量ppm以下の濃度である。
【0074】
モノテルペン反応溶媒の除去後に、非水性流体キャリアと縮合生成物とを組み合わせることによって得られる混合物中に、少なくとも90モルパーセントのジメチルD単位を含み、剪断下25℃で1キロパスカル秒以上の粘度を有するポリオルガノシロキサンを分散させて、混合物中に分散された0.5~20マイクロメートルの平均サイズを有するポリオルガノシロキサン粒子の分散液を生成し、組成物を形成する。ポリオルガノシロキサンは、本発明の組成物について既に記載した通りである。
【0075】
本発明の組成物は、例えば、コーティング用途のためのスリップ添加剤として有用である。組成物を含有するコーティングは、基材のための保護コーティングとして、特に基材をスカッフィング及び擦傷から保護するために有用であり得る。例えば、組成物は、剛性材料又は皮革などの柔軟性材料に有用なコーティングのためのスリップ添加剤で存在してよい。
【実施例
【0076】
表6に、以下のサンプルにおいて使用するための成分を明らかにする。「Me」は、メチル基を指す。DOWSIL(商標)は、The Dow Chemical Companyの商標である。XIAMETER(商標)及びSILASTIC(商標)は、Dow Corning Corporationの商標である。UCON(商標)及びTERGITOL(商標)は、Union Carbide Corporationの商標である。TYZOR(商標)は、E.I.Du Pont De Nemours and Companyの商標である。PERMUTEX(商標)は、Stahl International B.V.Companyの商標である。
【0077】
【表6】
【0078】
以下の方法でA2を調製する:
DAC 500 FVZ SpeedMixer(商標)カップに、401.44グラムのA1(XIAMETER(商標)RBG-0910 Gum)及び0.48グラムの1,2,2,4-テトラメチル-1-アザ-2-シラシクロペンタンを添加し、2350RPMで毎回30秒ずつ5回混合した。内容物を混合の間に15分間冷却した。混合後、内容物を70°℃のオーブン内に12時間入れた。
【0079】
以下の方法でP2を調製する:
500ミリリットル(mL)丸底フラスコに、233.58グラム(g)ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル、Aldrich、無水99.5%)、18.04gのトリエチレングリコールブチルエーテル、及び1.96gの50%水酸化カリウム水溶液を入れる。フラスコに、温度制御された加熱マントル、6枚プレートの真空ジャケット付き銀めっきOldershawカラム、及び水冷式の還流/蒸留ヘッドを取り付ける。ドライアイスで保護されたEdwards製真空ポンプを用いて真空を適用する。淡黄色の溶液を7トールの真空下で60~65℃のポット温度まで加熱して、30~52℃のヘッド温度で25.34gの留出物を回収する。真空下で溶液を冷却し、次いで窒素で真空を解いて、淡黄色の溶液を得る。
【0080】
コニカルボトム2リットル(L)Parr反応器に淡黄色の溶液を入れる。反応器を密閉し、圧力を確認し、窒素でパージした後、120℃に加熱する。204.5gのプロピレンオキシドと混合した618.6gのエチレンオキシドを、2グラム/分の添加速度で220分間添加し、次いで、1グラム/分で370分間添加する。混合物を120℃で一晩保持した後、60℃に冷却する。ヘッドスペースを15分間パージした後、1013.53gの反応生成物を取り出す。反応生成物を1.05gの酢酸と混合する。0.45マイクロメートルの公称粒径に生成物を濾過し、水銀柱5ミリメートルの減圧下で、120℃での回転蒸発によってジグリムから単離して、ポリオキシアルキレン「P2」を得る。
【0081】
縮合生成物の調製
表7に、縮合生成物B1~B16の各々を調製するために使用した成分を列挙する。表では、表中に別段の記載がない限り、使用した成分及び質量をグラム単位で列挙する。
【0082】
ガラス製の撹拌シャフトにおけるポリテトラフルオロエチレン製の撹拌パドル、熱電対、並びに水冷凝縮器及び窒素パージに接続された予め溶媒が充填されたDean Starkトラップを備えた3つ口丸底フラスコからなる反応器を使用して、縮合生成物B1~B16を調製する。反応溶媒(S成分)にポリシロキサン樹脂成分(R)を溶解させ、次いで、混合しながらポリオキシアルキレンポリマー(P)を添加する。10分後、反応触媒(Z)を添加する。加熱して激しく還流させ、Dean Starkトラップで水を回収する。所定の反応時間後、化学的中和によって触媒を失活させる。生成物を50℃未満に冷却し、次いで、5マイクロメートルの公称孔径を有するフィルターに通して濾過する。25℃に冷却する。
【0083】
580ナノメートルの波長に調整したMilton Roy Spectronic 21分光光度計を使用して、各縮合生成物の透過率(%T)を測定する。Milton Roy Spectronic 21分光光度計に適合するキュベット内で18.2メガオームセンチメートルの水からなるブランクサンプルを調製する。このブランクを使用して、分光光度計を100%透過率(100%T)に設定する。サンプルについては、キュベットの少なくとも80体積%に満たす。580ナノメートルにおける透過率測定値を収集して、サンプルの%Tを求める。各サンプル間で、ブランクサンプルを用いてベースライン透過率を調べ、必要に応じてベースラインを100%Tに調整する。
【0084】
組成物サンプル(スリップ添加剤)X1~X20の調製
表8に、成分及びその量(グラム(g))、調製方法、最終生成物中の芳香族溶媒の量(組成物重量に基づく重量百万分率(ppm))、並びに組成物中のポリオルガノシロキサンの平均粒径(マイクロメートル(μm)単位)と共に、組成物サンプルX1~X20の配合を列挙する。本明細書において既述した通り、組成物サンプルについての芳香族溶媒の量及び平均ポリオルガノシロキサン粒径を求める。
【0085】
組成物サンプルの調製における第1の工程は、指定の量の縮合生成物(B)及び非水性極性流体(C)をロータリーエバポレーターフラスコに仕込むことである。1.3キロパスカル(10水銀柱ミリメートル)未満の圧力、105℃で回転蒸発させることによって、混合物の重量に基づいて3重量%未満の濃度まで反応溶媒を除去する。指定の量の得られた混合物(「成分B+C」)を、表8で指定される以下の方法のうちの1つで使用する。
【0086】
方法1.FlackTek Inc.製のSpeedMixer(商標)DAC 150 FVZシリーズを使用して、組成物サンプルX1~X13及びX16~X20を調製する。DAC 150 FVZミキサで使用するのに適したMax-60カップに、指定の量のポリオルガノシロキサン(A)、Fisher Scientific製のガラスビーズ(11-312A)8g、及び直前に記載した通り調製した指定の量の縮合成分B+Cを添加する。カップにふたをし、ミキサ内のサンプルを3500回転/分(RPM)で2分間回転させる。サンプルを25℃に冷却し、次いで、再び3500RPMで1分間回転させる。11.5グラムの水を最大10段階で添加し、各添加後に、サンプルをミキサ内で30秒間回転させる。液相をデカントすることによってガラスビーズを分離して、組成物サンプルを得る。
【0087】
方法2.Charles Ross&Sons Company製のRoss VMC-1ミキサを使用して、組成物サンプルX15を調製する。ステンレス鋼容器に指定の量の成分B+Cを添加する。565gのポリオルガノシロキサン(A1)を添加する。内容物を、分散機の場合1020RPM、スクレーパの場合35RPMで10分間混合する。更に451gのポリオルガノシロキサン(A1)を添加し、続いて、同じ条件下で50分間混合する。618gの水を3段階で添加し、各添加後に、均質な分散液が得られるまで混合する。この均質な分散液が組成物サンプルX15である。
【0088】
方法3.Myers Mixers,LLC製の2枚のコールズ分散機混合ブレードを備えたMyers VL550 10リットルミキサを使用して、組成物サンプルX14を調製する。ステンレス鋼製の容器に、1460.0gの成分B+C及び2,260gのポリオルガノシロキサンA1を添加する。成分を、二重分散機の場合500RPM、スクレーパの場合60RPMで10分間混合する。更に1,808gのポリオルガノシロキサンA1を添加する。同じ条件下で90分間混合する。2,476gの水を500g/分の速度で添加し、続いて、均質な分散液が得られるまで(約40分間)混合する。この均質な分散液が組成物サンプルX14である。
【0089】
【表7】

B13の%Tは、サンプルが25℃では固体であるため、最初に55℃でサンプルを融解させることによって得た。他の%T値は、その温度で液体であるため、25℃で収集される。
【0090】
【表8】
【0091】
X1~X20中の残留モノテルペン
モノテルペンは、X1~X20の各々においてモノテルペンの臭いを感じる能力によって定性的に明らかになる通りに、X1~X20の各々に存在する。モノテルペンは、概ね、0.1~10ppm濃度の範囲の臭気閾値を有すると報告されている(例えば、H.Tamura et al.,Food Sci.Technol.Res.,7(1),72-77,2001;L.Molhave et al,Indoor Air 2000;10:315-318 (2000)を参照)。特に、リモネンは、0.20ppmの臭気閾値が報告されており、α-ピネンは、0.19ppmの臭気閾値が報告されている。3-カレンは、5.6ppmの臭気閾値が報告されている。カンフェンは、0.88ppmの臭気閾値が報告されている。γ-テルピネンは、0.26ppmの臭気閾値が報告されている。
【0092】
異なるモノテルペンの各々を含有する組成物サンプルについて、組成物サンプル中のモノテルペンの量を定量的に評価した。これらの組成物サンプルは、以下に論じるように意図的に高濃度のモノテルペンを有する組成物サンプルX20を除いて、同じモノテルペンを有する他の組成物サンプル中に存在するモノテルペンの量を代表すると予想される。組成物サンプル中のモノテルペンの量を評価するために、以下に述べるガスクロマトグラフィー法を使用して、組成物サンプルを作製するために使用された縮合生成物中のモノテルペンの量を測定し、次いで、測定された量を、組成物サンプル中の縮合生成物の量に応じた希釈係数で減少させる。結果を表9に示し、モノテルペンの濃度は、組成物サンプル百万重量部当たりのモノテルペンの重量部(ppm)で報告する。
【0093】
モノテルペンを測定するためのガスクロマトグラフィー法。質量分析及び水素炎イオン化二重検出によるガスクロマトグラフ(GC/MS)を使用する。分散するまで又は2時間が経過するまでのいずれか最初になった方まで25℃で振盪することによって、分析物を既知量のウンデカン内部標準を含むアセトンに1:4(w/w)希釈する。サンプルを遠心分離し、上側の透明な層を回収する。以下の条件下でGC-MSを使用して溶液を分析する:入口に1マイクロリットルの分析物溶液を注入し、250℃の温度で維持し、ヘリウムキャリアガスで1.5マイクロリットル/分で流しながら50:1の比に分割する。DB 1-30メートル×0.25ミリメートル×0.1マイクロメートルのフィルムカラムで、50℃~300℃の範囲の温度勾配の下において、15℃/分の速度で分離を行う。質量分析によって対象ピークを同定する。水素炎イオン化検出器からの対象ピークのデータを解明する。ウンデカン内部標準に対するモノテルペン含有量を定量する。
【0094】
【表9】

モノテルペンは、組成物サンプル中では臭いを感じることができたので臭気閾値以上で存在するが、組成物サンプルを作製するために使用した縮合生成物中ではガスクロマトグラフィーによって検出することができなかった。したがって、モノテルペンは、縮合生成物中に50ppmのGC検出閾値未満で存在し、これは、組成物サンプル中の10ppm未満と相関する。
【0095】
先行技術の組成物サンプル(スリップ添加剤)X21及びX22の調製
組成物サンプルX21及びX22は、先行技術文献からのポリオルガノシロキサンガムの分散液を示す。X21は、米国特許第8877923号の実施例2に相当する。組成物サンプルX22は、国際公開第2016014609号の実施例1に相当する。
【0096】
組成物X21.DAC 150 FVZ SpeedMixer(商標)(SpeedMixerは、FlackTek,Inc.の商標である)で使用するのに適したMax-100カップに、35gのポリオルガノシロキサンA1、16gの直径3ミリメートルの球状ガラスビーズ(Fisher Scientific)、及びBASF CorporationからPLURONIC(商標)F-108(PLURONICは、BASF Corporationの商標である)として入手可能な数平均分子量約14,600ダルトンの界面活性剤(ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール))7gを添加する。カップを閉じ、ミキサに入れ、3450RPMで3分間回転させる。カップを開き、内容物をスパチュラで撹拌する。カップを閉じ、ミキサで更に1分間、3450RPMで回転させる。得られた混合物を28gの脱イオン水で4回(3g、5g、8g、及び12g)で希釈し、各添加後、カップを3450RPMで30秒間回転させる。得られた混合物は、水中ポリオルガノシロキサンの水中油型エマルジョンからなり、全エマルジョン重量に対して50重量%のシリコーン含有量を有する。ポリオルガノシロキサンは、3.05マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0097】
組成物X22.DAC 150 FVZ SpeedMixer(商標)(SpeedMixerは、FlackTek,Inc.の登録商標である)で使用するのに適したMax-100カップに、50gのポリオルガノシロキサンA1及び公称式量28,000g/molの水溶性分岐シリコーンポリエーテル(The Dow Chemical Company製のDOWSIL(商標)OFX-5247 Fluid)10gを添加する。カップの内容物をミキサで60秒間、2500RPMで混合する。3000RPMで更に2回混合を繰り返す。40gの水を3回で添加し、各添加後に、同じミキサで、3000RPMで60秒間混合する。得られた混合物は、6.88マイクロメートルの平均ポリオルガノシロキサン粒径を有する、白色の水中油型エマルジョンである。
【0098】
化合物の溶媒安定性評価
以下の合体溶媒:プロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル(The Dow Chemical Company製のDOWANOL(商標)DPM Glycol Ether)、ブチルグリコール、プロピレングリコールn-ブチルエーテル(DOWANOL(商標)PnB Glycol Ether)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(The Dow Chemical Company製のDOWANOL(商標)DPnB Glycol Ether)、及びエステルアルコール(Eastman Chemical製のTEXANOL(商標)Ester Alcohol)の存在下で、溶媒安定性について化合物X1~X22を特性評価する。
【0099】
各溶媒について、5重量部の脱イオン水及び1重量部の溶媒をガラスバイアルに添加することによって、化合物X1~X22のサンプルを希釈する。バイアル瓶を振盪して内容物を混合する。1重量部の分散液を添加し、振盪して混合する。バイアルを24時間放置した後、バイアルの内容物を視覚的に観察し、分散液の状態を特性評価する。安定:目に見える相分離がない;相分離=エマルジョンから相分離したポリオルガノシロキサン塊が見える。
【0100】
注記:クリーミングは、特性評価中に発生することがあり、相分離とはみなされない。エマルジョンは、水及び溶媒中で粘性が低くなり、その結果、クリーミングが生じる場合がある。クリーミングは、エマルジョン液滴が重力の結果として混合物の上部に拡散することを指す。シリコーンは、水性溶媒溶液よりも低密度である。クリーミングは、液滴が互いに融合してより大きな液滴を形成することがないため、相分離とは異なる。エマルジョンから相分離する目に見えるポリオルガノシロキサン塊が存在しない限り、クリーミングが存在する場合であっても、溶媒安定性についての化合物の評価は「安定」である。
【0101】
結果:X1~X20の各々は、6つの溶媒の各々において安定である。X21は、ブチルグリコール中で相分離する。X22は、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、及びエステルアルコール中で相分離する。
【0102】
コーティングサンプル及び評価
1つはスリップ添加剤として作用する化合物を含まず(参照)、1つはX14を含み、1つはX15を含む、3つのコーティングを調製する。
【0103】
参照コーティングサンプルについては、コーティング組成物としてポリウレタン分散バインダー(V)を使用する。
【0104】
X14及びX15を含むコーティングサンプルについては、100mLのガラスビーカーに10gの脱イオン水及び5gのイソプロピルアルコールを合わせる。金属製のスパチュラを用いて混合する。250mLのビーカーに、50gのX14又はX15と35gの脱イオン水とを添加し、標準的な3枚の上部ピッチブレードを備えたIKA撹拌機を用いて、800RPMで5分間混合する。混合しながら、100mLのビーカーの内容物を250mLのビーカーに添加する。第3のビーカーである100mLのガラスビーカーに、18gのポリウレタン分散バインダー(V)及び250mLのビーカーからの内容物2gを添加する。第3のビーカーの内容物を木製スパチュラで適度に攪拌しながら1分間混合して、コーティング配合物を得る。
【0105】
コーティングサンプルの各々をポリエステル及び皮革基材の両方に適用する。ポリエステル基材については、BYK製のギャップアプリケーターを使用して、透明なポリエステルプラスチックフィルム上に60マイクロメートルの厚さのコーティングを適用する。80℃の通気オーブン内で2分間コーティングを乾燥させる。皮革基材については、BYK製のギャップアプリケーターを使用して、前処理した牛革(黒色、サイズA4、FILK GmbH製)上に各々厚さ34マイクロメートルの2つの層を適用する。通気オーブン内において80℃で2分間第1の層を乾燥させた後、第2の層を適用する。通気オーブン内において80℃で2分間、第2の層を乾燥させる。
【0106】
参照、X14、及びX15のコーティングを以下の評価で特性評価する。
外観。ポリエステルフィルム上のコーティングの外観から、ポリエステルフィルム上の化合物とバインダーとの適合性を評価する。外観に1~5の値を割り当て、1は欠陥なしであり、5はクレーターが原因で領域の約半分が欠陥ありであることに対応する。1~3の値が許容可能である。
耐摩耗性。ISO 17076-1:2012の方法に従って、1kgの重りを用いるテーブル法CS-10ホイールを使用して、皮革基材上のコーティングの耐摩耗性を特性評価する。目に見える摩耗が観察されるまでに革が耐えたサイクル数を報告する。数字が大きくなることは、耐摩耗性が高くなることに対応し、望ましい。
湿潤耐擦過性。ISO 26082-1の方法に従って、マーティンデール法を用いて皮革基材上のコーティングの湿潤耐擦過性を特性評価する。試験方法に従って、ΔΔEの値に数字を割り当てる。数字が小さくなることが望ましい。
摩擦係数(CoF)及びきしみ音防止測定。VDA 230-206の方法に従って、皮革基材のコーティングの摩擦係数及びきしみ音防止性能を求める。CoFについては、Ziegler Instruments製のSSP-04Test Benchを使用する。きしみ音防止については、1~3の値は、スティックスリップが発生せず、可聴ノイズが予想されないことを示す。4~5の値は、スティックスリップの問題が発生し得、可聴干渉を排除できないことを示す。6~10の値は、スティックスリップの問題が発生し、相対的な動きの際に可聴ノイズが予想されることを示す。CoF及びきしみ音防止のいずれも低い値が望ましい。
【0107】
表9は、3つのコーティング配合物についての結果を示す。
【0108】
【表10】
【0109】
データ解析
縮合生成物
縮合生成物B1、B3~B11、及びB13~B16は、様々なモノテルペン反応溶媒中で様々なポリオキシアルキレンポリマーを用いて首尾良く調製した縮合生成物を示し、各縮合生成物は透明である(%Tが70%を超える)。
【0110】
縮合生成物B2は、モノテルペンとn-ヘプタンとのブレンドである反応溶媒中で首尾良く調製した縮合生成物を示し、これも透明である。
【0111】
縮合生成物B12は、p-シメンの芳香族反応溶媒中で調製した縮合生成物を示し、これは、芳香環を有することを除いて、構造がγ-テルピネン(S4、B8で使用)と類似の化学構造を有する。モノテルペンと構造的に類似しているにもかかわらず、p-シメンからは、Tがわずか14%の濁った縮合生成物が生じた。
【0112】
B10及びB11は、高分子量及び低分子量ポリシロキサン樹脂を用いて作製され、樹脂のポリオキシアルキレンポリマーに対する比が典型的な比よりも低い典型的ではない縮合生成物を示す。
【0113】
B9は、二官能性ポリオキシアルキレンポリマーとは対照的に、一官能性ポリオキシアルキレンポリマーを用いて作製された縮合生成物を示す。
【0114】
B5及びB6は、類似の配合物を示し、一方は縮合触媒を使用しており、一方は縮合触媒を使用していない。
【0115】
B3及びB4は、異なる縮合触媒を使用して作製された類似の配合物を示す。
【0116】
組成物サンプル
組成物サンプルX1~X11及びX13~X20は、縮合生成物B1~B11及びB13~B16によって表される様々なモノテルペン反応溶媒中で作製された縮合生成物から本発明の組成物を作製できること、穏和な条件下で、縮合生成物及び非水性極性流体の重量に基づいて3重量%以下のモノテルペンレベルまでモノテルペン反応溶媒を除去できること、組成物が、組成物の重量に基づいて1ppm未満の芳香族溶媒を有すること、並びに、組成物が、0.5~20マイクロメートルの範囲の平均ポリオルガノシロキサン粒径を有することを、示す。
【0117】
組成物X20は、比較的高濃度のモノテルペンを有する組成物を示す。サンプルは、縮合生成物及び非水性流体の合計重量に基づいて約10重量%のモノテルペンを保持し、これは、組成物サンプルの重量に対して約1.8重量%に換算される。サンプルX20は、組成物サンプルの重量に基づいて1ppm未満の芳香族溶媒を依然として保持し、0.5~20マイクロメートルの範囲の平均ポリオルガノシロキサン粒径を有する。
【0118】
サンプルX12は、γ-テルピネンに類似する芳香族反応溶媒を使用すると、モノテルペン反応溶媒と同様に穏和にストリッピングしたときに、ほぼ40ppmの芳香族溶媒を有する組成物サンプルが生じることを明らかにし、これは、芳香族溶媒がモノテルペンと同様であると思われる場合であっても、芳香族溶媒を容易には除去することができないことを実証するものである。
【0119】
モノテルペン反応溶媒中で作製された縮合生成物を使用して作製された組成物サンプルの各々は、試験した6つ全ての溶媒に対して溶媒安定性を示した。対照的に、従来技術の組成物サンプルは、6つの溶媒全てにおいて溶媒安定性であることはない。
【0120】
コーティング配合物
本発明の組成物サンプルを使用して作製されたコーティング配合物は、本発明の組成物サンプルがコーティング配合物にスリップ添加剤として望ましい特性を付与することを示す。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
【国際調査報告】