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特表2023-543378α-アルミナ粒子を含む研磨材及びその製造方法
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  • 特表-α-アルミナ粒子を含む研磨材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】α-アルミナ粒子を含む研磨材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/32 20060101AFI20231006BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231006BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20231006BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
C01F7/32
B24B37/00 H
C03C19/00 Z
C09K3/14 550D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507259
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 KR2021012686
(87)【国際公開番号】W WO2022075625
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0129674
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315016549
【氏名又は名称】ティセラ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジン・ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン・ギュン
【テーマコード(参考)】
3C158
4G059
4G076
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158BA04
3C158BA05
3C158CA06
3C158CB01
3C158CB02
3C158DA02
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED04
3C158ED12
3C158ED22
3C158ED26
3C158ED28
4G059AA08
4G059AA20
4G059AC03
4G076AA02
4G076AB03
4G076AB09
4G076BA13
4G076BC02
4G076BC07
4G076BD02
4G076CA02
4G076CA26
4G076CA27
4G076CA29
4G076DA30
(57)【要約】
本発明は、多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子を含む研磨材であって、α-アルミナ粒子は、平均粒径(D50)が300nm~10μmであり、密度が0.2~0.5g/mlであり、α-アルミナ粒子は、結晶構造で[0001]面が全体結晶面面積を基準に10~20%を占め、α-アルミナ粒子の含量が、全体重量基準に85~100重量%である研磨材を提供する。本発明の研磨材は、多面体結晶構造を有しながら所定の粒子サイズと密度範囲とを満足するα-アルミナ粒子を含むことにより、研磨工程時に、スクラッチの発生を最小化しながら研磨スラリー内の分散性に優れて研磨速度を向上させうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子を含む研磨材であって、
前記α-アルミナ粒子は、平均粒径(D50)が300nm~10μmであり、密度が0.2~0.5g/mLであり、
前記α-アルミナ粒子は、前記結晶構造で[0001]面が全体結晶面面積を基準に10~20%を占め、
前記α-アルミナ粒子の含量が、全体重量基準に85~100重量%である、研磨材。
【請求項2】
前記α-アルミナ粒子の多面体結晶構造は、14面体結晶構造を含む、請求項1に記載の研磨材。
【請求項3】
前記α-アルミナ粒子の多面体結晶構造で[0001]面の比率が、全体結晶面面積の15~20%である、請求項1に記載の研磨材。
【請求項4】
請求項1に記載のα-アルミナ粒子を含む研磨材を製造する方法であって、
(ステップS1)1種以上のアルミニウム塩を含む水溶液とpH調節剤を含む水溶液とを混合して反応させ、生成物を濾過及び乾燥して、下記構造式1の前駆体粉末を収得する段階と、
(ステップS2)前記前駆体粉末をフッ素系鉱化剤と共に分散媒に添加して撹拌させる段階と、
(ステップS3)前記ステップS2の生成物を濾過及び乾燥した後、焼成して多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子の粉末を収得する段階と、を含む、製造方法:
[構造式1]
【請求項5】
前記ステップS1で使われたアルミニウム塩は、硫酸アルミニウム(Al(SO・4~18HO)、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)、酢酸アルミニウム(Al(CHCOO)OH)またはこれらの混合物を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS1で使われたpH調節剤は、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カルシウム(CaCO)またはこれらの混合物を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS1の混合反応は、常温ないし95℃の範囲で行われる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS2で前駆体粉末及びフッ素系鉱化剤は、100:0.1~100:2の重量比で使われる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップS2でフッ素系鉱化剤は、LiF,AlF,NaF,NaPF,KTiFまたはこれらの混合物を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップS2で分散媒は、エタノール,メタノール,アセトン,イソプロピルアルコールまたはこれらの混合物を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ステップS3で焼成は、3~15℃/minに昇温させた後、800~1000℃の温度で2~5時間保持して行われる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ステップS3で収得したα-アルミナ粒子の粉末は、XRF分析時に、98.5重量%以上のAl成分を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載のα-アルミナ粒子を含む研磨材を用いて電子機器の部品として使われる超薄膜ガラスを研磨することを含む、研磨方法。
【請求項14】
前記研磨は、研磨材を水分散スラリーの形態で150mL/minの速度で供給し、3.5psiの圧力で60秒間行われ、研磨前後の薄膜厚さの差で測定された研磨速度が4000~8000Å/minの範囲である、請求項13に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年10月7日付の韓国特許出願10-2020-0129674号に基づいた優先権の利益を主張し、該特許文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、研磨効率を向上させる多面体結晶構造のα-アルミナ粒子を含む研磨材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミナ(Al)は、耐磨耗性などの機械的強度、化学的安定性、熱伝導性、耐熱性などに優れて、研磨材,電子材料,放熱フィラー,光学材料,生体材料などの幅広い領域で用いられている。OLED,PDP,LCD,携帯電話などの電子機器の部品として使われる超薄膜ガラスの表面及び縁部を平坦化する研磨工程には、α-アルミナが主に使われるが、研磨速度を向上させるためには、研磨材として使われるα-アルミナの粒子状、サイズなどの物性を制御することが必要である。
【0004】
アルミナは、一般的にボーキサイトを原料として製造可能である。例えば、バイヤー法によれば、原料であるボーキサイトから水酸化アルミニウム(ギブサイト)または遷移アルミナを先に収得した後、それを大気中で焼成することにより、アルミナ粉末を製造する。しかし、バイヤー法で製造されるアルミナは、その粒子状及びサイズの制御が難しく、あらゆる用途に適しない。
【0005】
一方、韓国公開特許公報10-2014-0130049号公報(Merck Patent GMBH)は、アルミニウム塩の水溶液またはスラリーに鉱化剤(mineralizer)としてアルカリ金属塩(例:硫酸ナトリウム,硫酸カリウム)を添加して水酸化アルミニウム粒子を収得し、これにリン化合物及び任意のドーパントを添加した後、焼成することにより、α-Alフレークを製造し、前記α-Alフレークが、0.5μm未満の厚さ及び15~30μmのD50値を有することを特徴とする。このような粒子サイズ及び厚さの条件を有するα-アルミナは、縱横比(直径/厚さの比率)が大きな板状材の粒子であり、このような板状材の粒子は、研磨材として使われる場合、スクラッチの発生危険が大きく、スラリー内に沈み分散性が不良であって、超薄膜ガラスのような電子機器の部品の研磨工程に不適合である。
【0006】
したがって、アルミナ素材を薄膜などの研磨作業に使用するためには、スクラッチの発生を減らしうる粒子の形態及びサイズを具現しながら研磨スラリー内での分散性を向上させる技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許公報10-2014-0130049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、スクラッチの発生を最小化しながら研磨スラリー内の分散性に優れて研磨効率を向上させる結晶構造及び物性を有するα-アルミナ粒子が含まれた研磨材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子を含む研磨材であって、前記α-アルミナ粒子は、平均粒径(D50)が300nm~10μmであり、密度(bulk density)が0.2~0.5g/mlであり、前記α-アルミナ粒子は、前記結晶構造で[0001]面が全体結晶面面積を基準に10~20%を占め、前記α-アルミナ粒子の含量が、全体重量基準で85~100重量%である研磨材を提供する。
【0010】
本発明の他の側面は、前記α-アルミナ粒子を含む研磨材を製造する方法であって、
(ステップS1)1種以上のアルミニウム塩を含む水溶液とpH調節剤を含む水溶液とを混合して反応させ、生成物を濾過及び乾燥して、下記構造式1の前駆体粉末を収得する段階;
(ステップS2)前記前駆体粉末をフッ素系鉱化剤と共に分散媒に添加して撹拌させる段階;及び
(ステップS3)前記ステップS2の生成物を濾過及び乾燥した後、焼成して多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子の粉末を収得する段階;を含む製造方法を提供する:
【0011】
[構造式1]
【0012】
本発明のさらに他の側面は、前記α-アルミナ粒子を含む研磨材を用いて電子機器の部品として使われる超薄膜ガラスを研磨することを含む研磨方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の研磨材に含まれたα-アルミナ粒子は、構造式1の前駆体粉末から製造されて多面体結晶構造を有しながら所定の粒子サイズと密度範囲とを満足することにより、研磨工程時に、スクラッチの発生を最小化しながら研磨スラリー内の分散性に優れて研磨速度を向上させうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で製造したα-アルミナ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2】実施例1で製造したα-アルミナ粒子のX線回折分析(XRD)の結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明で具体的に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態にのみ限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする虞があると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0016】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
【0017】
本発明の一実施形態は、多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子を含む研磨材に関するものである。
【0018】
前記多面体結晶構造のα-アルミナ粒子は、球状に近い形態であって、例えば、結晶学的にC面である[0001]面に垂直である直径(D)と、これに平行な高さ(H)の比(D/H)が1に近いことを意味する。
【0019】
特に、本発明によるα-アルミナ粒子は、多面体結晶構造で[0001]面が全体結晶面面積を基準に10~20%、詳細には、15~20%を占める14面体結晶構造を有しうる。もし、[0001]面の面積が10%未満である場合には、ロッド(rod)状になり、20%を超過する場合には、板状に近い形態になる。このような球状に近い多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子は、研磨材として使われる時、板状または無定形粒子に比べてスクラッチの発生を最小化して研磨性能を向上させうる。前記「無定形」は、外形が一定ではない不規則な状態を示すものであって、本発明の結晶面が明確な多面体結晶構造であるものと区別される。
【0020】
また、前記多面体結晶構造のα-アルミナ粒子は、平均粒径(D50)が300nm~10μmであり、密度が0.2~0.5g/mlであることを特徴とする。
【0021】
前記D50は、当該分野に通常の方法、例えば、レーザ粒度分析器を用いて測定した粒子サイズの分布度で中央値を示すものであり、本発明において、前記α-アルミナ粒子のD50は、300nm~10μmであって、微細化されたレベルに研磨作業時にスクラッチの発生を最小化しながらも、所望のレベルの研磨速度を付与することにより、研磨効率を向上させうる。
【0022】
前記密度は、当該分野に通常の方法、例えば、メスシリンダーを使用して100mLの体積を満たすのに必要な質量として測定することができ、本発明において、前記α-アルミナ粒子の密度は、0.2~0.5g/mlを満足する時、研磨スラリー内で沈まず、均一に分散されて研磨効率を向上させうる。
【0023】
本発明による研磨材は、全体重量を基準に前記のような物性を示すα-アルミナ粒子を85重量%以上、すなわち、85~100重量%を含む。前記α-アルミナ粒子の含量が85重量%未満である場合には、研磨作業時に、所望のレベルの研磨速度を確保しにくい。
【0024】
また、本発明による研磨材は、水に分散された水分散スラリーの形態で研磨に使われる。前記研磨材が水分散されたスラリーは、粘度が1~10pcs、詳細には、1~5pcsの範囲であり、前記範囲を満足する時、研磨効率を向上させながらα-アルミナ粒子が均一に分散されるバランスを保持することができる。
【0025】
本発明の他の一実施形態は、前記多面体結晶構造のα-アルミナ粒子を含む研磨材の製造方法に関するものである。以下、前記方法を段階別に説明する。
【0026】
まず、1種以上のアルミニウム塩を含む水溶液とpH調節剤を含む水溶液とを混合して反応させる(ステップS1)。
【0027】
前記アルミニウム塩は、硫酸アルミニウム(Al(SO・4~18HO)、硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)、酢酸アルミニウム(Al(CHCOO)OH)またはこれらの混合物を含み、その完全な溶解のために加温された水(例えば、約60℃)に5~30%の濃度で溶解させて水溶液を準備する。
【0028】
前記pH調節剤は、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カルシウム(CaCO)またはこれらの混合物を含み、その完全な溶解のために加温された水(例えば、約40℃)に5~30%の濃度で溶解させて水溶液を準備する。
【0029】
前記アルミニウム塩水溶液及びpH調節剤水溶液は、常温ないし95℃の範囲で一定の速度(例えば、25mL/min)の速度で混合してゾルゲル反応を行うことができる。前記反応物のpHは、6~10の範囲である。
【0030】
前記反応を通じて下記構造式1の前駆体が生成される:
【0031】
[構造式1]
【0032】
前記構造式1の前駆体は、化学組成がAlO(OH)で表現されるシュードベーマイト(pseudo-boehmite)であって、8面体の単位セルに水(HO)が結合されており、水含量が高く、これにより、結晶サイズ(crystallite size)が小さい。
【0033】
このような前駆体は、既存のアルミナ製造時に、出発物質として主に使われた水酸化アルミニウム(Al(OH))に比べて低いpH条件で形成され、以後段階で高温の焼成過程を経てα-Alに変形される時、相対的に低い温度でシード(seed)による粒子凝集と相転移とが起こって多面体結晶構造を得るのに有利である。
【0034】
前記前駆体は、固形物が生成され、それを濾過、洗浄及び乾燥して粉末で収得する。
【0035】
さらに、収得された粉末は、粉砕過程を経て以後段階で使用することができる。前記粉砕は、ボールミル(ball-mill)乾式粉砕方式などで行われて300nm~20μmのサイズの粉末が得られる。
【0036】
引き続き、前記前駆体粉末をフッ素系鉱化剤と共に分散媒に添加して撹拌させる(ステップS2)。
【0037】
前記フッ素系鉱化剤は、α-アルミナ粒子の結晶を成長させるための添加剤であって、LiF,AlF,NaF,NaPF,KTiFまたはこれらの混合物が使われる。
【0038】
このようなフッ素系鉱化剤は、過量で使用時に、最終α-アルミナに残留するか、焼成過程で凝集体を形成することができ、そのような短所を最小化するために、前駆体粉末及びフッ素系鉱化剤を100:0.1~100:2、詳細には、100:0.5~100:1.5の重量比で使用することが有利である。
【0039】
前記分散媒は、前駆体粉末及びフッ素系鉱化剤の湿式分散のためのものであって、例えばエタノール,メタノール,アセトン,イソプロピルアルコールまたはこれらの混合物が使われる。前記湿式分散は、フッ素系鉱化剤の均一な分散を図り、前駆体(シュードベーマイト)粒子の凝集を最小化することによって、最終生成されるα-アルミナ粒子の多面体結晶構造に影響を及ぼす。
【0040】
前記分散媒は、前記前駆体粉末の重量に対して2~5倍の含量で使われるが、これに限定されるものではない。
【0041】
前記撹拌は、前駆体粉末及びフッ素系鉱化剤の均一な混合のために20~60分間行われる。
【0042】
撹拌後、生成物を濾過及び乾燥した後、焼成して多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子の粉末を収得する(ステップS3)。
【0043】
前記焼成は、前駆体粉末及びフッ素系鉱化剤からなる乾燥粉末を高温で熱処理して溶融合成する過程であって、高純度アルミナまたはジルコニア材の坩堝で行われる。
【0044】
具体的に、前記焼成は、3~15℃/minに昇温させた後、800~1000℃の温度で2~5時間保持して行われる。一方、焼成条件は、混合物の各材料と融点の差による反応と揮発性、合成に必要な熱量を考慮して適切に変更可能である。
【0045】
前記過程で、特に、構造式1のシュードベーマイト前駆体を使用して製造されたα-アルミナ粒子は、XRF(X-ray fluorescence)分析時に、98.5重量%以上のAl成分を含み、純度が高い。
【0046】
しかも、前記α-アルミナ粒子は、前述したように、[0001]面の比率が10~20%である多面体結晶構造を有しながら300nm~10μmの平均粒径(D50)及び0.2~0.5g/mLの密度を満足することによって、それを85重量%以上含む研磨材は、スクラッチの発生を最小化し、研磨スラリー内の分散性に優れて研磨効率を向上させうる。
【0047】
例えば、前記α-アルミナ粒子研磨材を水分散スラリーの形態で150mL/minの速度で供給し、電子機器の部品として使われる超薄膜ガラスを3.5psiの圧力で60秒間研磨する時、研磨前後の厚さの差で測定された研磨速度が4000~8000Å/minと高い。
【実施例
【0048】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明を具体的な実施例で詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1〕
Al(SO・14~18HO 199.8gを60℃で加熱された純水982.8gに完全に溶解させた水溶液(a)と、NaCO 95.4gを40℃で加熱された純水528gに完全に溶解させた水溶液(b)と、を準備した。水溶液(a)に水溶液(b)を25mL/minの速度で投入し、10分間撹拌して反応させた。反応生成物(pH7.3~7.8)を濾過、洗浄及び乾燥した後、粉砕してシュードベーマイトの前駆体粉末を収得した。
【0050】
前記前駆体粉末40g及びAlF 0.2gをエタノール120gに混合し、30分間撹拌した。
【0051】
以後、収得された生成物を濾過及び乾燥した後、1℃/minの昇温条件で900℃で5時間熱処理して焼成した。熱処理後、α-アルミナ粒子の粉末を最終的に収得した。
【0052】
〔実施例2〕
AlFを0.4gの含量で使用することを除いては、実施例1と同様の工程を行った。
【0053】
〔実施例3〕
AlFを0.6gの含量で使用することを除いては、実施例1と同様の工程を行った。
【0054】
〔比較例1〕
Al(OH)粉末40g及びAlF0.2gを乾式混合した。混合した粉末を10℃/minの昇温条件で900℃で5時間熱処理して焼成した。熱処理後、α-アルミナ粒子の粉末を最終的に収得した。
【0055】
〔比較例2〕
AlFを0.4gの含量で使用することを除いては、比較例1と同様の工程を行った。
【0056】
〔比較例3〕
AlFを0.8gの含量で使用することを除いては、比較例1と同様の工程を行った。
【0057】
〔比較例4〕
AlFを1.6gの含量で使用することを除いては、比較例1と同様の工程を行った。
【0058】
〔比較例5〕
Al(OH)粉末40g及びAlF0.2gをエタノール120gに混合し、30分間撹拌した。収得された生成物を濾過及び乾燥した後、10℃/minの昇温条件で900℃で5時間熱処理して焼成した。熱処理後、α-アルミナ粒子の粉末を最終的に収得した。
【0059】
〔比較例6〕
AlFを0.3gの含量で使用することを除いては、比較例5と同様の工程を行った。
【0060】
〔比較例7〕
AlFを2gの含量で使用することを除いては、比較例5と同様の工程を行った。
【0061】
〔実施例4〕
Al(SO・14~18HO 199.8gを60℃で加熱された純水982.8gに完全に溶解させた水溶液(a)と、NaOH 72gを40℃で加熱された純水528gに完全に溶解させた水溶液(b)と、を準備した。水溶液(a)に水溶液(b)を25mL/minの速度で投入し、10分間撹拌して反応させた。反応生成物(pH7.3~7.8)を濾過、洗浄及び乾燥した後、粉砕してシュードベーマイトの前駆体粉末を収得した。
【0062】
前記前駆体粉末40g及びAlF 0.2gをエタノール120gに混合し、30分間撹拌した。
【0063】
以後、収得された生成物を濾過及び乾燥した後、10℃/minの昇温条件で900℃で5時間熱処理して焼成した。熱処理後、α-アルミナ粒子の粉末を最終的に収得した。
【0064】
〔比較例8〕
Al(SO・14~18HO 199.8gを60℃で加熱された純水982.8gに完全に溶解させた水溶液(a)と、NaOH 72gを40℃で加熱された純水528gに完全に溶解させた水溶液(b)と、を準備した。水溶液(a)に水溶液(b)を25mL/minの速度で投入し、10分間撹拌して反応させた。反応生成物(pH7.3~7.8)を濾過、洗浄及び乾燥した後、粉砕してシュードベーマイトの前駆体粉末を収得した。
【0065】
前記前駆体粉末40g及びAlF 0.2gを乾式混合した。混合した粉末を10℃/minの昇温条件で900℃で5時間熱処理して焼成した。熱処理後、α-アルミナ粒子の粉末を最終的に収得した。
【0066】
〔比較例9〕
AlFを0.4gの含量で使用することを除いては、比較例8と同様の工程を行った。
【0067】
〔比較例10〕
AlFを0.8gの含量で使用することを除いては、比較例8と同様の工程を行った。
【0068】
〔比較例11〕
AlFを1.6gの含量で使用することを除いては、比較例8のような工程を行った。
【0069】
前記実施例及び比較例から製造されたα-アルミナ粒子の物性を測定して、下記表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1から分かるように、シュードベーマイトをフッ素系鉱化剤と湿式混合した後、焼成を経て製造されたα-アルミナ粒子は、D50及び厚さの比が1に近い多面体結晶構造を有しながら、300nm~10μmのD50及び0.2~0.5g/mlの密度を満足した。
【0072】
〔実験例1〕α-アルミナ粒子の結晶面及び純度評価
実施例1から製造された多面体結晶構造を有するα-アルミナ粒子に対して走査電子顕微鏡(SEM)観察を行って、図1に示した。
【0073】
図1のSEM写真から、実施例1のα-アルミナ粒子は、14面体結晶構造を示すことを確認することができる。さらに、前記SEM写真を映像分析した結果、前記結晶構造でc面(0001面)の面積が全体面積の15~20%であると確認された。
【0074】
また、実施例1のα-アルミナ粒子に対してX線回折分析(XRD)及びX線蛍光分析(XRF)を行って、その結果をそれぞれ図2及び表2に示した。
【0075】
【表2】
【0076】
表2及び図2から、実施例1のα-アルミナ粒子は、98.5重量%以上のAl成分を含んで純度が高いことを確認することができる。
【0077】
また、実施例1のα-アルミナ粒子に対してICP-OES(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectrometry)分析を行った結果を下記表3に示した。
【0078】
【表3】
【0079】
表3から、実施例1のα-アルミナ粒子が、高純度であることを確認することができる。
【0080】
〔実験例2〕研磨速度の評価
実施例1の14面体α-アルミナ粒子([0001]面15~20%)の研磨速度を他の形態を有する他社製品と比較する実験を行った。
【0081】
具体的に、比較しようとするそれぞれの研磨材を水に分散させたスラリー(固形分含量:40~45重量%)を製造し、8インチ用研摩機(AMAT社のMirraTM装備)を用いてガラス(超薄膜ガラス)基板の表面を3.5psiの圧力で60秒間研磨した。この際、研磨材スラリーは、150mL/minの速度で供給され、上定盤ウェーハヘッド(wafer head)の回転速度は100rpm、下定盤の回転速度は110rpmであった。また、パッドとして「IC1000/suba IV stacked pad」(Rodel社)を使用した。
【0082】
研磨後、研磨された膜の厚さを研磨前と比較して研磨速度(Å/min)を測定した。その結果を下記表4に示した。
【0083】
【表4】
【0084】
表4から、多面体結晶構造を有しながら300nm~10μmのD50及び0.2~0.5g/mLの密度を同時に満足する実施例1のα-アルミナ粒子は、最も優れた研磨速度を具現した。
【0085】
一方、実施例1の14面体α-アルミナ粒子([0001]面15~20%)が研磨材に含まれる比率による研磨速度を比較実験し、研磨工程は前述したように行った。その結果を下記表5に示した。
【0086】
【表5】
【0087】
表5から、[0001]面の面積が15~20%であるα-アルミナ粒子の比率が高いほど(全体研磨材の85%以上)研磨速度が向上することを確認することができる。
【0088】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
【国際調査報告】