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▶ ビック−ケミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ラダーコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 230/08 20060101AFI20231006BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231006BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20231006BHJP
   C09D 157/00 20060101ALI20231006BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20231006BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231006BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
C08F230/08
C09D5/00 D
C09D201/02
C09D157/00
B05D1/36 Z
B05D7/24 302G
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302R
B05D7/24 302U
B05D7/24 302X
B32B27/30 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023514776
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2021073874
(87)【国際公開番号】W WO2022049028
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】20194190.3
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596089399
【氏名又は名称】ビック-ケミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ゲルス-バルラグ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ヤウンキー
(72)【発明者】
【氏名】ビクトル フェルティヒ
(72)【発明者】
【氏名】マルク ヘーケレン
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ズーゼルベック
(72)【発明者】
【氏名】ナディーネ バシロブスキ
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
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4D075AE03
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4D075CA13
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4D075CA48
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(57)【要約】
【課題】所望の表面特性及び望ましくない表面特性をもたらすことの改善されたバランスを有する添加剤として適しているポリマーを提供する。
【解決手段】(a)少なくとも2つのポリマー骨格鎖、並びに(b)少なくとも2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分を有する少なくとも1つのポリマー性接続鎖、を含むポリマーであって、このポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有しており、かつ前記少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも1つが、前記ポリマー骨格鎖と前記ポリシロキサン部分との間に位置しており、前記少なくとも2つのポリマー骨格鎖が、前記少なくとも1つのポリマー性接続鎖によって連結している、ポリマーに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2つのポリマー骨格鎖、及び
(b)少なくとも2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分を有している少なくとも1つのポリマー性接続鎖であって、このポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有しており、かつ前記少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも1つが、前記ポリマー骨格鎖と前記ポリシロキサン部分との間に位置している、少なくとも1つのポリマー性接続鎖、
を有するポリマーであって、
前記少なくとも2つのポリマー骨格鎖が、前記少なくとも1つのポリマー性接続鎖によって連結している、
ポリマー。
【請求項2】
前記ポリマー骨格鎖のうちの少なくとも1つが、少なくとも2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分を有する少なくとも1つの側方ポリマー鎖を有し、前記ポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有しており、前記少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも1つが、前記ポリマー骨格鎖と前記ポリシロキサン部分との間に位置している、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリシロキサン部分が、900~4000g/molの範囲内の数平均分子量を有する、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマー骨格鎖が、重合性エチレン性不飽和モノマーの(コ)ポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリエーテル部分が、互いに独立に、88~3000g/molの範囲内の数平均分子量を有している、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリエーテル部分が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びこれらの組み合わせから選択されるアルキレンオキシドの重合された単位を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーが、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基、エーテル化アミノ基、アミド基、エポキシド基、及びアルコキシシリル基のうちの少なくとも1つを含む官能基をさらに有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
以下を含むモノマー混合物を重合することを含む、請求項4に記載のポリマーを調製する方法:
(a)少なくとも2つのポリエーテル部分及びこの少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも2つに結合した少なくとも2つの重合性エチレン性不飽和基、並びに1つのポリシロキサン部分、を有するポリエーテル修飾ポリシロキサンであって、前記ポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有しており、前記ポリシロキサン部分が、前記少なくとも2つのポリエーテル部分の間に配置されている、ポリエーテル修飾ポリシロキサン、並びに、
(b)1つの重合性エチレン性不飽和基を有する少なくとも1つの他のさらなるモノマー。
【請求項9】
前記モノマー混合物が、ポリエーテル修飾ポリシロキサンをさらに有しており、このポリエーテル修飾ポリシロキサンは、少なくとも2つのポリエーテル部分及びこの少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの1つに結合している1つの重合性エチレン性不飽和基、並びに1つのポリシロキサン部分を有し、
前記ポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有し、かつ前記ポリシロキサン部分が、前記少なくとも2つのポリエーテル部分の間に位置している、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記組成物の合計の不揮発性含有物に基づいて、0.01~15.00重量%の量での、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー、及び
(b)前記ポリマ(a)とは異なる、バインダ
を含む、組成物。
【請求項11】
前記組成物が、20℃の温度で液体であり、揮発性希釈剤を含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのアンダーコート層及び少なくとも1つのトップコート層を有する、基材上の複層コーティングシステムであって、少なくとも1つの層が、請求項10又は11に記載の組成物から形成されている、複層コーティングシステム。
【請求項13】
前記基材が、自動車又はその部品である、請求項12に記載の複層コーティングシステム。
【請求項14】
基材上の複層コーティングシステムを形成する方法であって、
(i)基材にコーティング組成物(a)を適用してコーティング層(a)を形成する工程、及び、
(ii)コーティング組成物(b)を適用して、コーティング層(a)の上にコーティング層(b)を形成する工程、
を含み、
コーティング組成物(a)又はコーティング組成物(b)のうちの少なくとも1つが、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマーを、前記コーティング組成物の合計の不揮発性含有物に基づいて、0.01~15.00重量%の量で含有する、
方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマーの、組成物中の添加剤としての使用であって、レベリング性、表面スリップ性、クレーター、テレグラフ性、オーバーコーティング性、ハジキ、開時間、汚れ接着性、自己洗浄性、空気通気感受性、曇り性、及び静電気特性から選択される、前記組成物の1又は複数の特性を制御するための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのポリマー骨格鎖及び少なくとも1つのポリマー性接続鎖を有するポリマーに関し、この少なくとも2つのポリマー骨格鎖は、この少なくとも1つのポリマー性接続鎖によって連結されている。本発明は、また、このポリマーを調製する方法、このポリマーを含有する組成物、この組成物から形成されるコーティングシステム(コーティング系)、及びこのポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2019/020542A1は、(a)ポリマー骨格、及び(b)このポリマー骨格に共有的に連結している1又は複数のポリマー性側鎖(b)を有するポリマーに関し、このポリマー性側鎖が、ポリエーテル部分及びポリシロキサン部分を有し、当該ポリシロキサン部分が、1050~6000の範囲内の数平均分子量を有し、当該ポリエーテル部分が、ポリマー骨格とポリシロキサン部分との間に位置している。この文献に記載されているポリマーは、コーティング組成物において、この組成物から調製されるコーティングの表面特性を変化させるために添加剤として用いることができる。
【0003】
US2019/0144588A1は、ポリシロキサンに結合している1超のビニル基を有するビニル末端ポリシロキサンA由来の部分、及びオレフィン性不飽和カルボン酸の2以上のアルキルエステルB由来の部分を有するコポリマーABに関し、少なくとも2つの異なるアルキルエステルB1及びB2が用いられ、オレフィン性不飽和カルボン酸の第1のアルキルエステルB1のアルキル基が、1~5の炭素原子を有し、オレフィン性不飽和カルボン酸の第2のアルキルエステルB2のアルキル基が、6~30の炭素原子を有し、かつ、オレフィン性不飽和カルボン酸の少なくとも1つのヒドロキシアルキルエステルB3由来の部分について、このエステルB3が、アルキル基中の少なくとも1つのヒドロキシル基を有し、アルキル基中の2~6の炭素原子を有する。この文献は、また、それらの調製方法に関し、かつ、コーティング組成物中における流れ調整剤としてのそれらの使用方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組成物の表面特性を制御するための改善された添加剤への要求が継続的に存在する。より特には、一方では、スリップ性、レベリング性、耐汚れ性、及び自己洗浄特性などの所望の表面特性と、他方では、望ましくない表面特性、例えば、不十分なオーバーコーティング性(上塗り適合性)並びに比較的劣るレベリング性及びクレータ(へこみ)などの表面欠陥といった望ましくない表面特性と、の間の微妙なバランスが存在する。多くの場合に、1又は複数の所望の表面特性を提供する添加剤は、望ましくない表面特性も引き起こす。本発明は、所望の表面特性をもたらすことと望ましくない表面特性をもたらすこととの改善されたバランスを有する添加剤として適切なポリマーを提供することを目標としている。さらには、添加剤として適切なポリマーは、他の特性、例えば機械特性、耐候性、及び腐食保護性を劣化させるべきではない。ポリマーは、好ましくは、少ない量で組成物に添加されたときに表面特性を制御する点で効果的である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(a)少なくとも2つのポリマー骨格鎖、及び
(b)少なくとも2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分を有する少なくとも1つのポリマー性接続鎖であって、このポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有し、かつ、少なくとも2つのポリエーテル部分の少なくとも1つが、ポリマー骨格鎖とポリシロキサン部分との間に位置している、ポリマー性接続鎖、
を有するポリマーであって、
少なくとも2つのポリマー骨格鎖が、少なくとも1つのポリマー性接続鎖によって連結されている、ポリマーを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明に係るポリマーは、所望の表面特性をもたらすことと望ましくない表面特性をもたらすこととの改善されたバランスを有する添加剤として適している。さらに、添加剤として適切な本ポリマーは、他の特性、例えば機械特性、耐候性、及び腐食保護性を劣化させない。さらに、本ポリマーは、少量で組成物中に添加されたときに表面特性を制御する点で効果的である。
【0007】
本発明のポリマーは、少なくとも2つのポリマー骨格鎖を有する。ポリマー骨格鎖は、繰り返し単位を有する直鎖又は分岐鎖のポリマーである。好ましくは、ポリマー骨格鎖が、実質的に又は全体的に直鎖構造である。一般に、ポリマー骨格鎖を形成するポリマーの種類は特に限定されず、当業者に公知のポリマーの種類から選択してよい。適切なポリマーの種類の例としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、並びに、重合性エチレン性不飽和モノマーのポリマ及びコポリマーが挙げられる。さらなる官能基を有する利用可能なエチレン性不飽和モノマーの広範囲な選択肢を考慮すると、そのようなモノマーの、ポリマー及びコポリマー(合わせて(コ)ポリマーとして言及される)が、ポリマー骨格として好ましい。適切なエチレン性不飽和モノマーの例は、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニル芳香族化合物、例えば、スチレン、アクリル酸及びメタクリル酸並びにそれらのエステル及びアミド、合わせて(メタ)アクリレートとして言及される、である。好ましい実施態様では、ポリマー骨格鎖が、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%の(メタ)アクリレートの重合単位(重合された単位)を、含む。
【0008】
本発明のポリマーは、一般に、2000~200000g/mol、好ましくは2500~150000g/mol、より好ましくは3000~100000g/mol、よりさらに好ましくは3500~75000g/mol、さらにより好ましくは4000~50000g/molの、さらにより好ましくは4250~25000g/molの、特には4500~15000g/molの、最も好ましくは5000~10000g/mol、の範囲内の重量平均分子量を有する。本発明のポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン標準及び溶出剤としてのテトラヒドロフランを用いてGPCによって決定できる。
【0009】
本発明のポリマーでは、少なくとも2つのポリマー骨格鎖が、少なくとも1つのポリマー性接続鎖によって連結されている。一般に、このポリマー性接続鎖は、ポリマー骨格鎖を共有結合的に連結させる。結果として生ずる構造は、ラダーポリマーとしても言及されうる。典型的には、2以上のポリマー性接続鎖が、ポリマー骨格に共有結合的に連結される。ポリマー性接続鎖は、少なくとも2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分を有する。少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも1つが、ポリマー骨格とポリシロキサン部分との間に位置する。1つの態様では、ポリマー性接続鎖が、本質的に、2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分からなる。別の実施態様では、この2つのポリエーテル部分が、ポリマー骨格とポリシロキサン部分との間に位置する。他の実施態様では、ポリマー性接続鎖が、さらなる部分を有してよい。さらなる部分の例としては、ポリエステル部分が挙げられる。1つの実施態様では、個々のポリマー性接続鎖が、同一タイプの部分を有する。別の実施態様では、異なるタイプの部分を有するポリマー性接続鎖が存在してよい。
【0010】
ポリマー性接続鎖のポリシロキサン部分は、400~6000g/mol、好ましくは900~4000g/mol、より好ましくは1000~3000g/molの範囲内の数平均分子量を有する。ポリシロキサン部分のこの数平均分子量範囲は、所望の表面特性と望ましくない表面特性との改善されたバランスをもたらすと考えられる。
【0011】
ポリシロキサン部分は、一般に、式-[OSiR]-の繰り返し単位を有する。繰り返し単位の数は、一般に、4~80の範囲内である。R及びRの群は、互いに独立に、炭素原子数1~8のアルキル基、フェニル及びアルキルフェニルから選択されるアリール基を表し、アルキルフェニルは、アルキル基中に1~9の炭素原子を有する。好ましい実施態様では、R及びRが、メチル基を表す。
【0012】
ポリエーテル部分は、一般に、88~3000g/molの範囲内の数平均分子量を有する。好ましい実施態様では、132~2000g/mol、より好ましくは132~1000g/molである。
【0013】
ポリエーテル部分は、一般に、アルキレンオキシドの重合単位(重合された単位)を含む。アルキレンオキシドは、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びこれらの組み合わせから選択される。特に好ましくは、ポリエーテル部分は、エチレンオキシドの重合単位を含み、又はそれからなる。ポリエーテル部分が1種超のアルキレンオキシドの重合単位を含む場合には、そのような単位は、統計的に(ランダムに)配置されてよく、グラジエントで配置されてよく、又はブロックで配置されてよい。ポリエーテル部分における重合されたアルキレンオキシドの数は、一般に、1~70の範囲内であり、例えば、3~45、又は5~22である。
【0014】
ポリシロキサン及びポリエーテルの部分の数平均分子量は、GPCを用いて決定できる。
【0015】
好ましい実施態様では、本発明のポリマーのポリマー骨格鎖の少なくとも1つが、少なくとも2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分を含む、少なくとも1つの側方ポリマー鎖を有し、このポリシロキサン部分は、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有し、上記少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも1つが、ポリマー骨格鎖とポリシロキサン部分との間に位置する。
【0016】
一般に、本発明のポリマーは、上記のような側方ポリマー鎖を2~4含む。
【0017】
いくつかの実施態様では、本発明のポリマーが、官能基を有し、特には、表面特性の向上のために本発明のポリマーが添加される組成物の硬化反応に関与することができる官能基を有する。官能基のタイプは特に限定されず、ポリマーが添加される組成物に存在しうる官能基に適合するように選択してよい。好ましい実施態様では、ポリマーが、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基、エーテル化アミノ基、アミド基、エポキシド基、及びアルコキシシリル基のうちの少なくとも1つを含む官能基を有する。
【0018】
好ましくは、本発明のポリマーは、分子当たり少なくとも1つのヒドロキシル基を有しておりかつ1~250mg KOH/g、好ましくは5~200mg KOH/g、より好ましくは10~100mg KOH/gの範囲内のヒドロキシル価を有する。
【0019】
本発明のポリマーのポリシロキサン含有量は、一般に、ポリマーの重量に基づいて計算して、0.5~5.0重量%の範囲内である。好ましい実施態様では、ポリシロキサン含有量が、1.0~4.5重量%の範囲内であり、より好ましくは1.5~4.0重量%の範囲内である。
【0020】
ポリマーの酸価は、一般に、0.0~30.0mg KOH/gの範囲内である。
【0021】
本発明のさらなる主題は:
(a)組成物の合計の不揮発性含有物に基づいて、0.01~15.00重量%の量での本発明に係るポリマー
(b)上記ポリマー(a)とは異なるバインダ
を含む組成物である。
【0022】
上記組成物は、好ましくは、それぞれ、組成物の不揮発性含有物の合計重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは0.20~8.00重量%、より好ましくは0.30~7.00重量%、又は0.30~6.00重量%若しくは0.30~5.00重量%、特には0.50~5.00重量%の量で、本発明のポリマーを含有する。
【0023】
本発明のポリマーは、組成物中で、100%物質として、溶液として、分散体として、又はエマルジョンとして、含有されてよい。
【0024】
組成物の特性、特にはコーティング組成物、成形組成物、及び化粧料配合物の特性は、ここで記載される本発明のポリマーの量によって阻害されない。これらのポリマーの存在又は使用は、悪影響を有さず、例えば、これらの組成物から得られるコーティングの腐食保護性、光沢保持性、耐候性、及び/又は機械強度の観点で悪影響を有しない。
【0025】
本発明のポリマーは、組成物、例えば、コーティング組成物、成形組成物、プレポリマー組成物、化粧料配合物など、における表面特性を制御することに非常に適している。したがって、本発明は、また、本発明に係るポリマーの、組成物における添加剤としての、レベリング性、表面スリップ性、クレーター(ヘコミ)、テレグラフ性、オーバーコーティング性(上塗り適合性)、ハジキ、開時間、汚れ接着、自己洗浄性、空気通気感受性、くもり特性、及び静電気特性から選択される、組成物の1又は複数の特性を制御するための使用にも関する。
【0026】
ハジキは、コーティング欠陥であり、これは、湿フィルムが滴状又は線状に集合し、表面の一部にコーティングがなく又は不完全に覆われることとして、定義されうる。コーティングされる表面は、基材の表面であってよく、又はすでに適用されたコーティング層の表面であってよい。ハジキは、有機溶媒系のコーティングで起こることがあり、水系コーティングでも起こることがある。
【0027】
したがって、本発明は、本発明に係るポリマーの、組成物における添加剤としての、レベリング性、表面スリップ性、クレーター(ヘコミ)、テレグラフ性、オーバーコーティング性(上塗り適合性)、ハジキ、開時間、汚れ接着、自己洗浄性、空気通気感受性、くもり特性、及び静電気特性から選択される、組成物の1又は複数の特性を制御するための使用にも関する。この使用は、また、組成物の上記の特性の1又は複数を制御する方法としても記述されることができ、この方法は、本発明に係るポリマーを組成物に添加することを含む。好ましい実施態様では、本発明のポリマーが、組成物の合計の不揮発性含有物に基づいて、0.01~15.00重量%の量で添加される。
【0028】
またさらなる態様では、本発明は、本発明のポリマーを調製する方法に関する。
【0029】
好ましい実施態様では、本発明のポリマーを調製する方法が、下記を含むモノマー混合物を重合することを含む:
(a)少なくとも2つのポリエーテル部分及びこの少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも2つに結合した少なくとも2つの重合性エチレン性不飽和基、並びに1つのポリシロキサン部分を有する、ポリエーテル修飾ポリシロキサンであって、上記ポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有し、上記ポリシロキサン部分が、上記少なくともポリエーテル部分の間に位置している、ポリエーテル修飾ポリシロキサン、
(b)1つの重合性エチレン性不飽和基を有する少なくとも1つの他のさらなるモノマー。
【0030】
少なくとも2つのポリエーテル部分及びこの少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも2つに結合した少なくとも2つの重合性エチレン性不飽和基を有するポリエーテル修飾ポリシロキサンは、下記によって適切に調製される:
(i)下記を提供すること:
(a)1つの重合性エチレン性不飽和基及びこの重合性エチレン性不飽和基とは異なる1つのさらなる官能基を有するモノマー、及び
(b)上記1つのさらなる官能基に対して反応性である2つの基、少なくとも2つのポリエーテル部分、及びポリシロキサン部分を有する分子、このポリシロキサン部分は、400~6000の範囲の数平均分子量を有し、このポリエーテル部分は、上記1つのさらなる官能基に対して反応性である基とポリシロキサン部分との間に位置する、
(ii)2つのさらなる官能基を、上記1つのさらなる官能基に対して反応性の基と反応させることによって、上記モノマー(a)と上記分子(b)との間に2つの共有結合を形成すること。
【0031】
さらなる実施態様では、少なくとも2つのポリエーテル部分及びこの少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも2つに結合している少なくとも2つの重合性エチレン性不飽和基を有する、ポリエーテル修飾ポリシロキサンを、下記によって調製する:
(i)下記を提供すること:
(a)1つの重合性エチレン性不飽和基、ポリエーテル部分、及びこの重合性エチレン性不飽和基とは異なる1つのさらなるエチレン性不飽和官能基を有しており、このポリエーテル部分が、この重合性エチレン性不飽和基とこのさらなるエチレン性不飽和官能基との間に位置している、モノマー、
(b)400~6000の範囲の数平均分子量及び少なくとも2つのSi-H基を有しているポリシロキサン部分を有する、分子、
(ii)上記さらなるエチレン性不飽和官能基におけるSi-H基のヒドロシリル化反応によって、上記モノマー(a)と上記分子(b)との間で供給結合を形成すること。
【0032】
このような方法のさらに詳細な記載に関しては、国際特許出願WO2017/036612、特にこの公報の13~48ページ目が参照される。
【0033】
本発明は、さらに、下記を含む組成物に関する:
(a)組成物の合計の不揮発性含有物に基づいて、0.01~15.00重量%の量での、本発明のポリマー
(b)このポリマ(a)とは異なる、バインダ。
【0034】
この組成物は、好ましくは、本発明に係るポリマーを、この組成物の不揮発性含有物の合計重量にそれぞれ基づいて、0.01~10.00重量%、好ましくは0.20~8.00重量%、より好ましくは0.30~7.00重量%、又は0.30~6.00重量%若しくは0.30~5.00重量%、特には0.50~5.00重量%の量で、含有する。
【0035】
本発明のポリマーは、100%物質として、溶液として、分散体として、又はエマルジョンとして、組成物中に含有されてよい。
【0036】
組成物の特性、特に、コーティング組成物、成形組成物、及び化粧料配合物の特性は、その中に存在する本発明のポリマーの量によって妨げられない。これらのポリマーの存在又は使用は、例えば、これらの組成物から得られるコーティングの、耐腐食性、光沢保持性、耐候性、及び/又は機械強度に関して、悪影響を有しない。
【0037】
典型的な実施態様では、本組成物は、周囲温度で液体であり、例えば20℃の温度で液体である。いくつかの実施態様では、本発明に係るポリマー及び/又は本組成物中に存在するバインダが、液体である。そのような場合には、本組成物は、液体揮発性希釈剤の必要なく、周囲温度で液体であってよい。他の実施態様では、揮発性希釈剤を含有させることによって、組成物を液体にすること、又は所望の粘性を達成することが、必要であることがあり、又は望ましいことがある。揮発性の希釈剤は、水若しくは有機溶媒、又はこれらの混合物であってよい。したがって、本組成物は、水性の組成物又は非水性の組成物であってよい。
【0038】
本発明の組成物は、少なくとも1つのバインダを含有する。当業者に知られているすべての慣用的なバインダが、本発明の組成物のバインダ要素として適している。本発明に従って用いられるバインダは、好ましくは、架橋性官能基を有する。当業者に知られている任意の慣用的な架橋性官能基が、ここで考慮される。より特には、この架橋性官能基は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボン酸基、及び不飽和炭素二重結合、イソシアナート、ポリイソシアナート、及びエポキシド、例えばエチレンオキシド、からなる群から選択される。バインダは、発熱的に又は吸熱的に架橋可能又は硬化可能であってよい。バインダは、好ましくは、―20℃~250℃の温度範囲内で、架橋可能又は硬化可能である。バインダは、好ましくは、エポキシド樹脂、ポリエステル類、ポリエステル類は不飽和であってよい、ビニルエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリイソシアナート、及びメラミンホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択される。これらのポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。これらの樹脂及びそれらの調製は、当業者に知られている。
【0039】
本発明の組成物は、1成分システムとして又は2成分システムとして提供されてよい。
【0040】
本発明の組成物は、好ましくは、バインダを、組成物の合計重量に基づいて、3~90重量%の量で、好ましくは5~80重量%の量で、より好ましくは10~75重量%の量で、含む。
【0041】
所望の用途に応じて、本発明の組成物は、成分として、1又は複数の慣用的に用いられる添加剤を有してよい。これらの添加剤は、好ましくは、乳化剤、流れ制御補助剤、可溶化剤、消泡剤、安定化剤(好ましくは、熱安定化剤、プロセス安定化剤、並びにUV及び/又は光安定化剤)、触媒、ワックス、柔軟化剤、難燃剤、反応性希釈剤、接着促進剤、100nm未満の粒子サイズを有する有機かつ/又は無機のナノ粒子、プロセス助剤、可塑剤、フィラー、ガラス繊維、補強材、追加の湿潤剤、及び分散剤、光安定化剤、耐経年劣化剤、並びに上記添加剤の混合物からなる群から選択される。本発明の組成物の上記添加剤の含有量は、意図される使用に応じて非常に広範囲にわたる種々の値であってよい。本発明の組成物の合計重量に基づいて、含有量は、組成物の合計重量に基づいて計算して、好ましくは0.01~10.00重量%、より好ましくは0.01~8.00重量%、非常に好ましくは0.01~6.00重量%、特に好ましくは0.01~4.00重量%、特には0.01~2.00重量%である。本発明の組成物は、顔料を有する形態又は顔料を有しない形態で用いられてよく、フィラー、例えばカルシウムカーボネート、アルミニウムヒドロキシド、を含んでもよく、補強繊維、例えばガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維を含んでもよい。
【0042】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、帯電防止コーティング、曇り防止コーティング、自己洗浄性ファサードコーティング、自動車コーティング、汚れ機器コーティング、海洋コーティング(耐汚れコーティング)、及びプライマーコーティングを製造するためのコーティング組成物である。コポリマーの顕著な適合性に起因して、それらは、また、透明コーティングを製造するためにも顕著に適している。
【0043】
本発明の組成物は、多数の基材に適用でき、例えば、木、紙、ガラス、セラミック、石こう、コンクリート及び金属に適用できる。複コーティングプロセスでは、コーティングを、プライマー、プライマー表面、又は下地コーティングに適用してもよい。組成物の硬化は、架橋の特定のタイプに依存し、広範囲の温度範囲内で起こってよく、例えば、-10℃~250℃で起こってよい。好ましい実施態様では、基材が、自動車又はその部品である。自動車の例は、乗用車、バス、トラック、列車、航空機、並びに、モーター駆動型の農業及び建築の装置である。
【0044】
好ましくはポリマー性である本発明の成形化合物は、好ましくは、ラッカー樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、PVC、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリビニルクロリド、又はこれらのポリマーの混合物、若しくはこれらの任意のコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0045】
本発明のポリマーを含有する組成物がコーティング組成物である場合には、コーティング組成物は、基材上に複層コーティング系(複層コーティングシステム)を調製するために非常に適している。複層コーティング系は、少なくとも1つのアンダーコート層及び少なくとも1つのトップコート層を含み、少なくとも1つの層が、本発明の組成物に基づいている。好ましい実施態様では、アンダーコート層及びトップコート層が、本発明の組成物に基づく。好ましくは、アンダーコート層及びトップコート層が、共通の層境界を有する。アンダーコート層及びトップコート層は、異なるコーティング組成物から調製してよく、例えば、アンダーコート層のための顔料に基づくコーティング組成物及びトップコート層のための顔料不含有クリアコート組成物から調製してよい。代替的には、アンダーコート層及びトップコート層は、同じコーティング組成物から調製されてよい。好ましい実施態様では、基材が、自動車又はその部品である。
【0046】
本発明のさらなる主題は、基材上に複層コーティング系を形成する方法であり、下記の工程を含む:
(i)コーティング組成物(a)を基材に適用して、コーティング層(a)を形成すること、及び、
(ii)コーティング組成物(b)を適用して、コーティング層(a)の上にコーティング層(b)を形成すること、
ここで、コーティング組成物(a)又はコーティング組成物(b)のうちの少なくとも1つが、コーティング組成物の合計の不揮発性含有物に基づいて、本発明のポリマーを、0.01~15.00重量%の量で含む。
【実施例
【0047】
原材料
イソブタノール(iBuOH)を、すべての重合のための溶媒として使用した。
【0048】
【表1】
【0049】
数平均分子量及び重量平均分子量並びに分子量分布は、DIN55672-1:2007-08に従って40℃で高圧液体クロマトグラフィーポンプ(WATERS600HPLCポンプ)及び屈折率検出器(Waters410)を用いて決定された。300mm×7.8mmID/カラムのサイズ、5μmの粒子サイズ及び孔サイズHR4、HR2及びHR1を有するWATERS製の3つのStyragelカラムの組み合わせを、分離カラムとして用いた。コポリマーのために用いられる溶出剤は、1ml/minの溶出速度で0.2μmメンブレンフィルターを通してフィルター処理されたテトラヒドロフランであった。慣用的な校正を、ポリスチレン標準を用いて行った。本記載で報告されかつ言及される分子量は、常に、単位g/molを有する。
【0050】
比較例C1及びC2の調製のための一般的な手順
溶媒及びモノマーの必要量を、表1に特定する。還流凝縮器、温度センサ、Nガス入口、及び滴下漏斗に接続された四つ口丸形ガラスフラスコ中で、イソブタノールを、一定Nガス流の下で加熱して還流した(約107℃)。モノマー及び開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(4部)を均一化し、3時間にわたって均一速度で反応混合物中に計量した。添加の完了の後で、0.5時間にわたって、反応温度を還流条件で維持した。その後に、2回、アゾビスイソブチロニトリル(0.1部)を1時間の間隔で添加した。1時間にわたって還流条件下で反応混合物を攪拌した後で、反応混合物を周囲条件にまで冷却した。生成物の特性を、ゲル浸透クロマトグラフィーで評価し、Mwを決定した(表1)。
【0051】
比較例C3の調製のための手順
還流凝縮器、温度センサ、Nガス入口、及び滴下漏斗に接続された四つ口丸形ガラスフラスコ中で、34.7部のイソブタノールを、一定Nガス流の下で加熱して還流した(約107℃)。24部の2-エチルヘキシルアクリレート、23部のブチルアクリレート、10.2部のヒドロキシエチルメタクリレート、及びラジカル開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(4部)を均一化し、3時間にわたって均一速度で反応混合物中に計量した。添加の完了の後で、0.5時間にわたって、反応温度を還流条件で維持した。その後に、2回、アゾビスイソブチロニトリル(0.1部)を1時間の間隔で添加した。1時間にわたって還流条件下で反応混合物を攪拌した後で、反応混合物を周囲条件にまで冷却した。4部のシリコーン成分2を添加し、混合物を5分間均一化した。生成物の特性を、ゲル浸透クロマトグラフィーで評価した(Mw=5595g/mol)。
【0052】
実施例E1~E3の調製のための一般的な手順
溶媒及びモノマーの必要量を、表1に特定する。還流凝縮器、温度センサ、Nガス入口、及び滴下漏斗に接続された四つ口丸形ガラスフラスコ中で、イソブタノールを、一定Nガス流の下で加熱して還流した(約107℃)。モノマー、連鎖移動剤(随意)、及び開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(4部)を均一化し、3時間にわたって均一速度で反応混合物中に計量した。添加の完了の後で、0.5時間にわたって、反応温度を還流条件で維持した。その後に、2回、アゾビスイソブチロニトリル(0.1部)を1時間の間隔で添加した。1時間にわたって還流条件下で反応混合物を攪拌した後で、反応混合物を周囲条件にまで冷却した。生成物の特性を、ゲル浸透クロマトグラフィーで評価し、Mwを決定した(表1)。
【0053】
【表2】
【0054】
溶剤型のクリアコートの調製は、より良い明確性のために、複数の工程に分けられる。
この工程は、
(a)液体配合物の調製
(b)適用、硬化、及び評価
である。
【0055】
溶剤型のクリアコートの液体配合物の調製
【0056】
【表3】
【0057】
表2に示されている材料を混合し均一化して、バインダ成分及び架橋成分を形成した。
【0058】
バインダ成分を、その後に、部分に取り分け、本発明の1つのポリマー又は比較例ポリマーの1つのポリマーを添加し混ぜ入れた。添加されたポリマーの量は、バインダ成分に基づいて計算して、添加ポリマー0.3重量%であった。
【0059】
バインダ成分と架橋成分とを2:1の重量比で混合することによって、クリアコート組成物を調製した。
【0060】
適用、硬化及び評価
クリアコート組成物を、鋼パネルに、スパイラルフィルムアプリケータを用いて、50μm厚の湿潤フィルムの形態で適用した。適用されたクリアコートを乾燥させ、室温で24時間にわたって硬化させた。
【0061】
摩擦係数(COF)を、500gの重り及び自己接着フェルトを用いてAltek計測装置で決定した。計測器の読みを0.02倍で乗じた。
【0062】
オーバーコーティング性(上塗り適合性)を、硬化した上記のクリアコートの上に第2のクリアコート層を適用することによって試験した。この第2のクリアコート層は、本発明のポリマー又は比較例のポリマーを含有していなかった。この第2のクリアコート層の流れ及びレベリング性を、1(非常に良好)~5(劣る)の評価基準で判断した。第1の層のレベリング性は、ウェーブスキャン装置ex BYK-Gardnerを用いて決定した。長波(LW)及び短波(SW)値を記録した。
【0063】
それぞれの層のクレータ形成を、視覚的に、1(クレータなし)~5(重度のクレータ形成)の評価基準で判断した。
【0064】
それぞれのコーティング層のヘイズを、視覚的に、1(ヘイズなし)~5(重度のヘイズ)の評価基準で判断した。
【0065】
クロスカット接着試験を、DIN EN ISO 2404に従って行った。結果を、1(剥離なし)~5(重度の剥離)の評価基準で報告する。
【0066】
結果を表3にまとめる。
【0067】
【表4】
【0068】
表3から、シリコーンなしの比較例ポリマーC1は、有利な効果を全く有しないことが結論できる。US2019/0144588Aに係る比較例ポリマーC2は、レベリング性に関して有益な効果を有する。しかしながら、クレータ形成の量が不十分である。また、第2層のレベリング性及びクロスカット接着性が不十分である。比較例ポリマーC3は、第2層の劣ったクロスカット接着性を生じる。
【0069】
本発明に係るポリマーE1及びE2は、向上した特性の非常に良好な全体的なバランスを示し、特に、第2層の、良好なレベリング性、クレータ形成がないこと、及び良好な接着性を示す。
【0070】
さらなる一連の試験を、プライマー処理された鋼パネルに無空気噴霧によって適用されたクリアコートを用いて行った。湿潤フィルム層厚は80μmであった。レベリング性を、Wavescan装置で決定した。短波及び長波の読みを記録した。結果を表4にまとめる。
【0071】
【表5】
【0072】
シリコーンを有しない比較例ポリマーC1は、Wavescan装置を用いて計測できないほどに非常に劣るレベリング性を有する表面を提供した。比較例ポリマーC2は、レベリング性に関してよい効果を有するが、短波計測において不十分であった。
【0073】
本発明に係るポリマーE1、E2及びE3は、全体的に向上したレベリング性をもたらす。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2つのポリマー骨格鎖、及び
(b)少なくとも2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分を有している少なくとも1つのポリマー性接続鎖であって、このポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有しており、かつ前記少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも1つが、前記ポリマー骨格鎖と前記ポリシロキサン部分との間に位置している、少なくとも1つのポリマー性接続鎖、
を有するポリマーであって、
前記少なくとも2つのポリマー骨格鎖が、前記少なくとも1つのポリマー性接続鎖によって連結しており、
前記ポリマーが、ポリスチレン標準及び溶出剤としてのテトラヒドロフランを用いてGPCによって決定される2000~200000g/molの範囲内の重量平均分子量を有する、
ポリマー。
【請求項2】
前記ポリマー骨格鎖のうちの少なくとも1つが、少なくとも2つのポリエーテル部分及び1つのポリシロキサン部分を有する少なくとも1つの側方ポリマー鎖を有し、前記ポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有しており、前記少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも1つが、前記ポリマー骨格鎖と前記ポリシロキサン部分との間に位置している、
請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記ポリシロキサン部分が、900~4000g/molの範囲内の数平均分子量を有する、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記ポリマー骨格鎖が、重合性エチレン性不飽和モノマーの(コ)ポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記ポリエーテル部分が、互いに独立に、88~3000g/molの範囲内の数平均分子量を有している、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリエーテル部分が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びこれらの組み合わせから選択されるアルキレンオキシドの重合された単位を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーが、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基、エーテル化アミノ基、アミド基、エポキシド基、及びアルコキシシリル基のうちの少なくとも1つを含む官能基をさらに有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
以下を含むモノマー混合物を重合することを含む、請求項4に記載のポリマーを調製する方法:
(a)少なくとも2つのポリエーテル部分及びこの少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの少なくとも2つに結合した少なくとも2つの重合性エチレン性不飽和基、並びに1つのポリシロキサン部分、を有するポリエーテル修飾ポリシロキサンであって、前記ポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有しており、前記ポリシロキサン部分が、前記少なくとも2つのポリエーテル部分の間に配置されている、ポリエーテル修飾ポリシロキサン、並びに、
(b)1つの重合性エチレン性不飽和基を有する少なくとも1つの他のさらなるモノマー。
【請求項9】
前記モノマー混合物が、ポリエーテル修飾ポリシロキサンをさらに有しており、このポリエーテル修飾ポリシロキサンは、少なくとも2つのポリエーテル部分及びこの少なくとも2つのポリエーテル部分のうちの1つに結合している1つの重合性エチレン性不飽和基、並びに1つのポリシロキサン部分を有し、
前記ポリシロキサン部分が、400~6000g/molの範囲内の数平均分子量を有し、かつ前記ポリシロキサン部分が、前記少なくとも2つのポリエーテル部分の間に位置している、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記組成物の合計の不揮発性含有物に基づいて、0.01~15.00重量%の量での、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー、及び
(b)前記ポリマ(a)とは異なる、バインダ
を含む、組成物。
【請求項11】
前記組成物が、20℃の温度で液体であり、揮発性希釈剤を含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのアンダーコート層及び少なくとも1つのトップコート層を有する、基材上の複層コーティングシステムであって、少なくとも1つの層が、請求項10又は11に記載の組成物から形成されている、複層コーティングシステム。
【請求項13】
前記基材が、自動車又はその部品である、請求項12に記載の複層コーティングシステム。
【請求項14】
基材上の複層コーティングシステムを形成する方法であって、
(i)基材にコーティング組成物(a)を適用してコーティング層(a)を形成する工程、及び、
(ii)コーティング組成物(b)を適用して、コーティング層(a)の上にコーティング層(b)を形成する工程、
を含み、
コーティング組成物(a)又はコーティング組成物(b)のうちの少なくとも1つが、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマーを、前記コーティング組成物の合計の不揮発性含有物に基づいて、0.01~15.00重量%の量で含有する、
方法。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマーの、組成物中の添加剤としての使用であって、レベリング性、表面スリップ性、クレーター、テレグラフ性、オーバーコーティング性、ハジキ、開時間、汚れ接着性、自己洗浄性、空気通気感受性、曇り性、及び静電気特性から選択される、前記組成物の1又は複数の特性を制御するための、使用。
【国際調査報告】