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特表2023-543409疼痛に対するLEPRアゴニストの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】疼痛に対するLEPRアゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20231006BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231006BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20231006BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20231006BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231006BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231006BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231006BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231006BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231006BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20231006BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231006BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231006BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P29/02
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/04
A61P1/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P1/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/06
A61K31/485
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516678
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 US2021050443
(87)【国際公開番号】W WO2022060827
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】63/078,687
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】オラル エリフ アリオグル
(72)【発明者】
【氏名】アキンジ バリス
(72)【発明者】
【氏名】フォス デ フレイタス マリア クリスティーナ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZA12
4C084ZC41
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB23
4C086NA20
4C086ZA08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA27
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態、例えば、脂肪異栄養症に苦しんでいる患者において、疼痛、オピオイドの使用および入院を低減するための方法を提供する。中枢神経系による疼痛の集中化または過敏化を伴う他の形態の慢性疼痛においても本発明の意義がありうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEPRアゴニストの有効量を患者に投与する段階を含む、その必要のある患者において疼痛、不安および/または抑うつを低減または予防するための方法。
【請求項2】
患者が、以下:
- 疼痛の低減、
- 鎮痛薬の使用の低減、
- 抗不安薬の使用の低減、
- 抗うつ薬の使用の低減、
- 鎮痛薬探索行動の低減、
- 鎮痛薬の必要に応じた(pro re nata)使用の低減、
- 鎮痛薬の過剰摂取の発生率の低減、および/または
- 鎮痛薬の乱用による死亡の発生率の低減
の1つまたは複数を達成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
鎮痛薬がオキシコドンである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
疼痛、不安および/または抑うつがレプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態と関連している、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
LEPRアゴニストの有効量を患者に投与する段階を含む、疼痛および/またはレプチン欠乏症もしくはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる、その必要のある患者において、以下:
- 疼痛、
- 鎮痛薬の使用、
- 抗不安薬の使用、
- 抗うつ薬の使用、
- 鎮痛薬探索行動、
- 鎮痛薬の必要に応じた使用、
- 鎮痛薬の過剰摂取、および/または
- 鎮痛薬の乱用による死亡の発生率
を低減するための、またはそれらの低減を維持するための方法。
【請求項6】
前記低減が、LEPRアゴニストの1回目の投与または2回目の投与から1日未満以内、1、2、3、4または5日以内である、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
疼痛が、全身性疼痛、腹痛、腎臓痛、肝臓痛、ならびに/または肝腫大、肝硬変および/もしくは膵炎による疼痛である、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
腹痛が、吐き気および/または嘔吐を伴う、請求項7記載の方法。
【請求項9】
疼痛が、神経障害性疼痛、関節炎性疼痛、慢性腰痛、線維筋痛症性疼痛、筋疾患性疼痛、中枢性疼痛、慢性中枢性疼痛、中枢神経系による疼痛の集中化および/もしくは過敏化によって引き起こされる疼痛、ならびに/または中枢性疼痛症候群性疼痛(central pain syndrome pain)である、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
鎮痛薬、抗不安薬および/または抗うつ薬の使用が、LEPRアゴニストの1回目の投与と同時にまたはその前に低減される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
患者が、鎮痛薬の一時的(episodic)使用を継続する、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
疼痛、鎮痛薬、抗不安薬および/または抗うつ薬の使用が慢性的である、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
疼痛、不安および/または抑うつの低減が、PHQ-9および/またはSF-36スコアによって測定される、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
鎮痛薬の必要に応じた使用の低減が、鎮痛薬の一時的使用を含まない、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
鎮痛薬の一時的使用が、最大5、6、7または8日間の鎮痛薬の使用を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
鎮痛薬が、オピオイド、非オピオイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、ゲパント、抗CGRPモノクローナル抗体、非ステロイド性抗炎症剤、サリチル酸塩、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、アルフェンタニル、アスピリン&クエン酸&重炭酸ナトリウム、ブロムフェナク、セレコキシブ、サリチル酸コリン&サリチル酸マグネシウム、コデイン、けしがらの濃縮物、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、ジクロフェナク、ジクロフェナク&ミソプロストール、ジフルニサル、ジフルニサル、ジヒドロコデイン、ジヒドロエトルフィン、ジフェノキシレート、エプチネズマブ、エレヌマブ、エソメプラゾール&ナプロキセン、エチルモルヒネ、エトドラク、エトルフィン、ファモチジン&イブプロフェン、フェノプロフェン、フェンタニル、フルルビプロフェン、フレマネズマブ、ガバペンチン、ガルカネズマブ、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、イブプロフェン、インドメタシン、ケタミン、ケトベミドン、ケトプロフェン、ケトロラク、レボルファノール、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸(meclofenamat)、メフェナム酸、メロキシカム、メサドン、メサドン、モルヒネ、モルヒネ-n-オキシド、ナブメトン、ナプロキセン、ニコモルヒネ、ノルコデイン、アヘン、オリパビン、オキサプロジン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペチジン、ペチジン中間体、フェニルブタゾン、フォルコジン、ピリトラミド、ピロキシカム、レミフェンタニル、硫酸リメゲパント、サルサレート、スフェンタニル、スリンダク、テバインまたはチリジン、トルメチン、ウブロゲパントまたはバルデコキシブである、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
鎮痛薬がオピオイドである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
鎮痛薬が非オピオイドではない、請求項16記載の方法。
【請求項19】
抗不安薬が、ベンゾジアゼピン、三環系抗うつ薬、アルプラゾラム、アルプラゾラム、メラトニン受容体のアゴニスト、麻酔薬、抗ヒスタミン薬、SNRI、SSRI、ブスピロン、クロナゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、エスゾピクロン、フルラゼパム、ロラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、ゾルピデムまたはゾピクロンである、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
抗うつ薬が、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ薬、アミトリプチリン、非定型抗うつ薬、ブプロピオン、シタロプラム、デシプラミン、デスベンラファキシンおよびレボミルナシプラン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、イミプラミン、イソカルボキサジド、ミルタザピン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン、セレギリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、ベンラファキシン、ビラゾドンまたはボルチオキセチンである、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
LEPRアゴニストの有効量を、その必要のある患者に投与する段階を含む、患者の疼痛による入院または緊急医療介入、ならびに/またはレプチン欠乏症もしくはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる患者の疼痛、不安および/もしくは抑うつによる入院または緊急医療介入を低減する方法。
【請求項22】
レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態が、単一遺伝子性肥満症、肥満症、メタボリックシンドローム、ダイエット誘発性食物渇望(diet-induced food craving)、機能性視床下部性無月経、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性、中和性の抗レプチン自己抗体の保有、インスリン受容体の変異による重度インスリン抵抗性を含む重度のインスリン抵抗性、インスリン受容体の変異に起因しない重度のインスリン抵抗性、下流のシグナル伝達経路の変異に起因する、もしくは他の原因により誘導される重度のインスリン抵抗性、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患、アルツハイマー病、レプチン欠乏症、レプチン抵抗性、脂肪異栄養症、レプレコーニズム/ドナヒュー症候群またはラブソン-メンデンホール症候群である、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態が、先天性全身脂肪異栄養症、後天性全身脂肪異栄養症、家族性部分的脂肪異栄養症、後天性部分的脂肪異栄養症、遠心性腹部脂肪異栄養症、環状脂肪組織萎縮症(lipoatrophia annularis)、局在性脂肪異栄養症およびHIV関連脂肪異栄養症である脂肪異栄養症である、請求項1~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
LEPRアゴニストが、LEPRに特異的に結合する単離されたアゴニスト抗体または抗原結合断片である、請求項1~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
LEPRアゴニストが、
(i) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 2に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(ii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(iii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 26に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(iv) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(v) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 42に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(vi) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 50に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(vii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 58に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(viii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 66に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(ix) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 74に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(x) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 82に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域;
(xi) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 98に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; または
(xii) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびに
SEQ ID NO: 106に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; あるいは
(i)~(xii)のいずれか1つもしくは複数と同じエピトープに結合する、および/または(i)~(xii)のいずれか1つもしくは複数とLEPRへの結合について競合する、抗体または抗原結合断片
を含む、LEPRに特異的に結合する単離されたアゴニスト抗体または抗原結合断片である、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
LEPRアゴニストが、
(i) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 2に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(ii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(iii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 26に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(iv) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(v) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 42に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(vi) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 50に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(vii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 58に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(viii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 66に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(ix) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 74に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(x) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 82に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
(xi) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 98に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
または
(xii) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; および
SEQ ID NO: 106に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;
あるいは
(i)~(xii)のいずれか1つもしくは複数と同じエピトープに結合する、および/または(i)~(xii)のいずれか1つもしくは複数とLEPRへの結合について競合する、抗体または抗原結合断片
を含む、LEPRに特異的に結合する単離されたアゴニスト抗体または抗原結合断片である、請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
LEPRアゴニストがミババデマブである、請求項1~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
LEPRアゴニストの有効量が、1回または複数回の約5 mg/kgの静脈内用量、およびその後1回または複数回の、週1回、約250~450 mgの皮下用量である、請求項1~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
250~450 mgが、300または450 mgである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
LEPRアゴニストの有効量が、1回の約5 mg/kgの静脈内用量、およびその後1回または複数回の、週1回、約300 mgまたは450 mgの皮下用量である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
さらなる治療剤を患者に投与する段階をさらに含む、請求項1~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
さらなる化学療法剤が、ヒトレプチン、メトレレプチン、PCSK9阻害剤、抗PCSK9抗体、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ、ラルパンシズマブ、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、エゼチミブ、インスリン、インスリン変種、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、スルホニル尿素、ナトリウムグルコース共輸送体2 (SGLT2)阻害剤、ダパグリホジン、カナグリホジン、エンパグリフロジン、MC4受容体の選択的アゴニスト、セトメラノチド、GLP-1アゴニストもしくは類似体、エクステンジン-4、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、グルカゴン(GCG)阻害剤、抗GCG抗体、グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤、抗GCGR抗体、低分子GCGRアンタゴニスト、GCGR特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗GCGRアプタマー、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤、抗ANGPTL3抗体、抗ANGPTL4抗体、抗ANGPTL8抗体、フェンテルミン、オルリスタット、トピラメート、ブプロピオン、トピラメートおよびフェンテルミン、ブプロピオンおよびナルトレキソン、ブプロピオンおよびゾニサミド、プラムリンチドおよびメトレレピン(metrelepin)、ロルカセリン、セチリスタット、テソフェンシンおよび/またはベルネペリットである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
患者が、以下:
- 体重の低減、
- 食物摂取量の低減、
- 脂肪症の低減、
- 肝臓硬さの低減
- 血糖管理の改善、
- インスリン感受性の改善、
- 脂質異常症の改善、
- 脂肪肝変性の改善、
- 肝腫大の改善、
- 膵炎の低減、
- 血清トリグリセリドレベルの低減、
- 血漿交換療法の頻度の低減、
- 総コレステロールレベルの低減、および/または
- 血清LDL-Cレベルの低減
の1つまたは複数をさらに達成する、請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
患者が、以下:
- 肥満症、
- 過食症、
- 過剰脂肪症、
- 肝臓硬さ、
- 低血糖、
- 糖尿病、
- インスリン抵抗性、
- 脂質異常症、
- 脂肪肝変性、
- 肝腫大、
- 膵炎、
- 血清トリグリセリドレベルの上昇、
- 総コレステロールレベルの上昇、および/もしくは
- 血清LDL-Cレベルの上昇;
に苦しんでおり、かつ/または定期的な血漿交換療法を受けている、請求項1~33のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年9月15日付で出願された米国仮特許出願第63/078,687号の恩典を主張するものであり、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願の配列表は、ファイル名「10823WO01_Sequence_Listing_ST25」、作成日2021年9月15日、およびサイズ48 KBのASCIIフォーマット配列表として電子的に提出される。提出されるこの配列表は本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本発明は、LEPRアゴニストを投与することにより、脂肪異栄養症および他のレプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態と関連する疼痛を処置または予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
レプチンは、代謝および神経内分泌機能だけでなく、エネルギーバランスを支配する脂肪組織ホルモンである。エネルギー不足の状態では、循環レプチンレベルが低いと、神経内分泌経路の調節による空腹感およびエネルギー保存の増加といった、適応反応が推進される。レプチンは、クラスIサイトカイン受容体ファミリー3のメンバーであるレプチン受容体(LEPR)に結合することにより、エネルギーおよび代謝バランスを調節する。LEPRは単一の遺伝子によりコードされており、選択的スプライシングにより、C末端配列が異なる複数のLEPRスプライスアイソフォームを生じる。これらのスプライスアイソフォームのうち、LEPR-bはレプチンの効果を媒介する主要なアイソフォームであり、JAK-STATシグナル伝達を刺激する唯一のアイソフォームである。
【0005】
Lep遺伝子の遺伝的機能喪失変異によるレプチン欠乏症は、マウスにおいて過食症、肥満症、インスリン抵抗性、脂質異常症および神経内分泌機能障害につながるが、これはレプチン処置によって元に戻る。臨床的には、レプチン類似体であるメトレレプチンは、レプチン欠乏症による単一遺伝子肥満症を有する患者において肥満症および代謝・生殖機能障害を回復させる。一次性レプチン欠乏症と同様に、二次性低レプチン血症の病態はグルコースおよび脂質の代謝機能障害に関連しており、レプチン処置によりこれを回復させることができる。先天性および後天性の全身脂肪異栄養症症候群は、脂肪組織の蓄積がほぼ完全に失われることを特徴とする、稀な、しかし重篤な疾患である。これらの患者では、循環レプチンレベルが非常に低いため、過食症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肝臓脂肪症、インスリン抵抗性および糖尿病の状態になる。
【0006】
疼痛は、一部のレプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態、例えば脂肪異栄養症(例えば、PLD)に関連している。例えば、一部の個体は、血漿中のカイロミクロンと呼ばれる脂肪滴の蓄積を特徴とする状態である、極度の高トリグリセリド血症およびカイロミクロン血症を経験しうる。場合によっては、これが膵臓の急性炎症(膵炎)のエピソードを引き起こすことがある。膵炎は腹痛、悪寒、黄疸、衰弱、発汗、嘔吐および体重減少を伴うことがある。脂肪織炎関連AGL (後天性全身脂肪異栄養症)を有する患者は、有痛性の皮下脂肪炎症に苦しむことがある。脂肪織炎関連AGLの脂肪減少は、身体の特定の部位に限局している場合がある。Ajluni et al., Spectrum of Disease Associated with Partial Lipodystrophy (PL): Lessons from a Trial Cohort, Clin. Endocrinol. (Oxf). 86(5): 698-707 (2017)(非特許文献1)。
【0007】
また、脂肪異栄養症を有する患者には、集中型慢性疼痛症候群の特徴もある。
【0008】
レプチン処置は、全身脂肪異栄養症に特徴的な脂肪蓄積のほぼ完全な喪失を発症するTg-aP2-nSrebp1cマウスにおいて過食症を軽減し、脂質異常症、肝臓脂肪症および血糖管理を改善する。これらの知見を臨床的に解釈すると、メトレレプチンは、全身脂肪異栄養症を有する患者において代謝機能障害を軽減する。現在、メトレレプチンは、米国では全身脂肪異栄養症を有する患者ならびに日本および欧州連合では全身性または部分性のいずれかの脂肪異栄養症を有する患者におけるレプチン欠乏症の合併症を処置するために承認されている。しかしながら、メトレレプチン治療では免疫原性が生じることが報告されており、中和抗メトレレプチン抗体が内因性レプチンと交差反応する可能性は不明である。稀ではあるが、この免疫原性応答の出現はメトレレプチンの有効性の低減と関連しており、メトレレプチン処置にはブラックボックス警告が伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ajluni et al., Spectrum of Disease Associated with Partial Lipodystrophy (PL): Lessons from a Trial Cohort, Clin. Endocrinol. (Oxf). 86(5): 698-707 (2017)
【発明の概要】
【0010】
本発明は、LEPRアゴニスト(例えば、REGN4461)の有効量を患者に投与する段階を含む、患者において、疼痛(例えば、腹痛(例えば、吐き気および/もしくは嘔吐を伴う)、肝臓痛および/もしくは膵炎による疼痛)、不安ならびに/または抑うつに関連する疼痛(例えば、これはレプチン欠乏症もしくはレプチン抵抗性状態(例えば、部分的脂肪異栄養症)である)を低減または予防するための方法を提供する。本発明の態様において、そのような疼痛、不安および/または抑うつは、LEPRアゴニストの1回目の投与から1日未満以内、1、2、3、4または5日以内に低減される。
【0011】
本発明は同様に、LEPRアゴニストの有効量を患者に投与する段階を含む、例えば、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる患者において、鎮痛薬(例えば、オピオイド)の使用(例えば、慢性使用)、抗不安薬の使用、抗うつ薬の使用、鎮痛薬(例えば、オピオイド)探索行動、鎮痛薬(例えば、オピオイド)の必要に応じた(pro re nata)もしくは必要な使用、鎮痛薬(例えば、オピオイド)の過剰摂取、および/または鎮痛薬(例えば、オピオイド)の乱用による死亡を低減するためのまたはその低減を維持するための方法を提供する。本発明の態様において、鎮痛薬、抗不安薬および/または抗うつ薬の使用は、LEPRアゴニストの1回目の投与と同時にまたはその前に低減される。例えば、本発明の態様において、処置医師は、LEPRアゴニスト(例えば、REGN4461)による処置の開始と同時にオピオイドなどの、鎮痛薬の常用の停止を命じ、そのような中止は鎮痛薬の一時的使用を除いて維持される。本発明の態様において、こうした使用、探索、過剰摂取または鎮痛薬の乱用による死亡の低減は、オピオイドのそれをいい、必ずしもパラセタモールなどの非オピオイドのそれをいうわけではない。
【0012】
本発明の態様において、鎮痛薬は、オピオイド、非オピオイド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、ゲパント、抗CGRPモノクローナル抗体、非ステロイド性抗炎症剤、サリチル酸塩、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、アルフェンタニル、アスピリン&クエン酸&重炭酸ナトリウム、ブロムフェナク、セレコキシブ、サリチル酸コリン&サリチル酸マグネシウム、コデイン、けしがらの濃縮物、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、ジクロフェナク、ジクロフェナク&ミソプロストール、ジフルニサル、ジヒドロコデイン、ジヒドロエトルフィン、ジフェノキシレート、エプチネズマブ、エレヌマブ、エソメプラゾール&ナプロキセン、エチルモルヒネ、エトドラク、エトルフィン、ファモチジン&イブプロフェン、フェノプロフェン、フェンタニル、フルルビプロフェン、フレマネズマブ、ガバペンチン、ガルカネズマブ、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、イブプロフェン、インドメタシン、ケタミン、ケトベミドン、ケトプロフェン、ケトロラク、レボルファノール、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸(meclofenamat)、メフェナム酸、メロキシカム、メサドン、メサドン、モルヒネ、モルヒネ-n-オキシド、ナブメトン、ナプロキセン、ニコモルヒネ、ノルコデイン、アヘン、オリパビン、オキサプロジン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペチジン、ペチジン中間体、フェニルブタゾン、フォルコジン、ピリトラミド、ピロキシカム、レミフェンタニル、硫酸リメゲパント、サルサレート、スフェンタニル、スリンダク、テバインまたはチリジン、トルメチン、ウブロゲパントまたはバルデコキシブである。
【0013】
本発明の態様において、抗不安薬は、ベンゾジアゼピン、三環系抗うつ薬、アルプラゾラム、アルプラゾラム、メラトニン受容体のアゴニスト、麻酔薬、抗ヒスタミン薬、SNRI、SSRI、ブスピロン、クロナゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、エスゾピクロン、フルラゼパム、ロラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、ザレプロン、ゾルピデムまたはゾピクロンである。
【0014】
本発明の態様において、抗うつ薬は、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ薬、アミトリプチリン、非定型抗うつ薬、ブプロピオン、シタロプラム、デシプラミン、デスベンラファキシンおよびレボミルナシプラン、ドキセピン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、イミプラミン、イソカルボキサジド、ミルタザピン、ノルトリプチリン、パロキセチン、フェネルジン、セレギリン、セルトラリン、トラニルシプロミン、トラゾドン、ベンラファキシン、ビラゾドンまたはボルチオキセチンである。
【0015】
本発明は、LEPRアゴニストの有効量を患者に投与する段階を含む、疼痛(例えば、腹痛(例えば、吐き気および/もしくは嘔吐を伴う)、肝臓痛および/もしくは膵炎による疼痛)、不安ならびに/または抑うつによるレプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる患者の入院を低減する方法を提供する。
【0016】
本発明の態様において、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態は、単一遺伝子性肥満症、肥満症、メタボリックシンドローム、ダイエット誘発性食物渇望(diet-induced food craving)、機能性視床下部性無月経、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性、中和性の抗レプチン自己抗体の保有、インスリン受容体の変異による重度インスリン抵抗性を含む重度のインスリン抵抗性、インスリン受容体の変異に起因しない重度のインスリン抵抗性、下流のシグナル伝達経路の変異に起因する、もしくは他の原因により誘導される重度のインスリン抵抗性、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患、アルツハイマー病、レプチン欠乏症、レプチン抵抗性、脂肪異栄養症(例えば、先天性全身脂肪異栄養症、後天性全身脂肪異栄養症、家族性部分的脂肪異栄養症、後天性部分的脂肪異栄養症、遠心性腹部脂肪異栄養症、環状脂肪組織萎縮症(lipoatrophia annularis)、局在性脂肪異栄養症およびHIV関連脂肪異栄養症)、レプレコーニズム/ドナヒュー症候群またはラブソン-メンデンホール症候群である。
【0017】
本発明の態様において、LEPRアゴニストは、例えば、(i) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 2に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (ii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (iii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 26に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (iv) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (v) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 42に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (vi) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 50に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (vii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 58に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (viii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 66に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (ix) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 74に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (x) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 82に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; (xi) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 98に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域; または(xii) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む、軽鎖可変領域; ならびにSEQ ID NO: 106に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む、重鎖可変領域を含む、LEPRに特異的に結合する単離された抗体または抗原結合断片である。本発明の態様において、LEPRに特異的に結合する単離された抗体または抗原結合断片は、(i) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 2に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (ii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (iii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 26に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (iv) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 34に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (v) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 42に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (vi) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 50に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (vii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 58に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (viii) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 66に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (ix) SEQ ID NO: 10に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 74に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (x) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 82に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; (xi) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 98に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域; または(xii) SEQ ID NO: 90に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域; およびSEQ ID NO: 106に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0018】
本発明の態様において、LEPRアゴニストの有効量は、1回または複数回の約5 mg/kgの静脈内用量、およびその後1回または複数回の、週1回、約250~300 mgの皮下用量である。
【0019】
本発明の態様において、患者には、さらなる治療剤、例えば、ヒトレプチン、メトレレプチン、PCSK9阻害剤、抗PCSK9アンタゴニスト抗体、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ、ラルパンシズマブ、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、エゼチミブ、インスリン、インスリン変種、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、スルホニル尿素、ナトリウムグルコース共輸送体2 (SGLT2)阻害剤、ダパグリホジン、カナグリホジン、エンパグリフロジン、MC4受容体の選択的アゴニスト、セトメラノチド、GLP-1アゴニストもしくは類似体、エクステンジン-4、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、グルカゴン(GCG)阻害剤、抗GCG抗体、グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤、抗GCGR抗体、低分子GCGRアンタゴニスト、GCGR特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗GCGRアプタマー、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤、抗ANGPTL3抗体、抗ANGPTL4抗体、抗ANGPTL8抗体、フェンテルミン、オルリスタット、トピラメート、ブプロピオン、トピラメートおよびフェンテルミン、ブプロピオンおよびナルトレキソン、ブプロピオンおよびゾニサミド、プラムリンチドおよびメトレレピン(metrelepin)、ロルカセリン、セチリスタット、テソフェンシンまたはベルネペリットも投与される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】部分的脂肪異栄養症(PLD)患者の経時的(年齢)な疾患の経過および異なる治療的介入中の代謝パラメータの概要。
図2】ベースラインからの患者の肝臓サイズの低減が、肝臓スパンの身体検査によって明らかであった、PLD患者の経時的な身体的外観。
図3】PLD患者の経時的な安静時エネルギー消費量(REE)。REEは総エネルギー消費量の約60%に相当し、ベースライン時の2599 kcalから1799 kcalに減少した。
図4】PLD患者の経時的な呼吸商(RQ)。RQはベースライン時の0.92から12週時の0.81および25週時の0.82に減少した。
図5】PLD患者の経時的なPHQ-9 スコア。スコアが高いほど、抑うつ症状が強いことを示す。
図6】PLD患者の経時的なSF-36スコア。スコアが高いほど、示された項目の改善に相当する。
図7】患者ごとの主な疼痛エピソードおよび薬物使用の概要。表1~3に記載されたデータの一部を反映している。PRNオキシコドンの使用(REGN4461の開始前)は、少なくとも12ヶ月の間、少なくとも2~3用量を、週に少なくとも3日間であった。二重の曲線は、時間軸が縮尺通りでないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、脂肪異栄養症に関連する疼痛を処置するための方法を含む。脂肪異栄養症状態に苦しんでいる患者は、通常、その状態に付随する身体的変化、例えば、膵炎、肥大肝によって引き起こされるさまざまなタイプの身体的疼痛に苦しんでいる。これらの身体的変化を緩和することで、ひいては、それらが引き起こす疼痛を低減することができるが、本明細書において記載される抗LEPR抗体は身体的疼痛の非常に急速な低減をもたらすことが観察されている。予想外なことに、この低減は、重大な身体的変化が起こる前に起こることが観察された。脳内のLEPR経路は、この経路が脳による疼痛知覚に関与している可能性があるため、より広範な慢性疼痛症候群に関与している可能性がある; したがって、本明細書において論じられる抗LEPR抗体を、そのような経路を調節するのに、および/またはそのような状態を処置もしくは予防するのに有用とする。
【0022】
LEPRアゴニスト
本発明は、例えば、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態(例えば、部分的脂肪異栄養症)に関連する、疼痛、不安および/または抑うつの処置のためにLEPRアゴニストを使用する方法を含む。LEPRアゴニストは、LEPRシグナル伝達(LEPRを発現する細胞においてレプチンとLEPRとの相互作用から通常生じる細胞内作用の刺激)を活性化する分子または物質をいう。ある種の態様において、LEPRシグナル伝達の活性化は、STAT3活性を直接的または間接的に測定または同定できる任意の方法を用いて、例えば、レポーター細胞株において発現されるSTAT3の標識化バージョンを用いて検出することができる、STAT3の転写活性化をいう。例えば、本発明は、例えば、WO2017/66204に記載の実施例7において定義される細胞に基づくアッセイ、または実質的に類似のアッセイを用いた、細胞に基づくレポーターアッセイにおける、LEPRシグナル伝達を活性化するLEPRアゴニストの使用を含む。WO2017/66204に記載の実施例7において記載されるアッセイなどの、LEPR活性化を検出する細胞に基づくレポーターアッセイは、EC50値(すなわち、半最大シグナル伝達を生じるのに必要なアゴニスト濃度)および/またはレプチンの存在下で観察される最大シグナル伝達のパーセンテージという点で示されうる検出可能なシグナルを生じることができる。本発明のある種の例示的な態様において、例えば、WO2017/66204に記載の実施例7において定義されるアッセイ形式、または実質的に類似のアッセイを用いて、細胞に基づくレポーターアッセイにおいて、約12.0 nM未満のEC50値でLEPRシグナル伝達を活性化するLEPRアゴニストが提供される。本発明のある種の例示的な態様において、LEPRアゴニストは、例えば、WO2017/66204に記載の実施例7において定義されるアッセイ形式、または実質的に類似のアッセイを用いて、細胞に基づくレポーターアッセイにおいて、約65%超のレプチンシグナル伝達に対して最大パーセント活性化でLEPRシグナル伝達を活性化する。LEPRアゴニストは、低分子と同様に、LEPRに特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。
【0023】
「抗体」という用語は、本明細書において用いられる場合、ジスルフィド結合によって相互に連結された2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)の4つのポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子(例えば、IgG)-REGN4461をいう。本発明の態様において、各抗体重鎖(HC)は、重鎖可変領域(「HCVR」または「VH」) (例えば、SEQ ID NO: : 2、18、26、34、42、50、58、66、74、82、98もしくは106またはその変種)および重鎖定常領域を含み; かつ各抗体軽鎖(LC)は、軽鎖可変領域(「LCVRまたは「VL」) (例えば、SEQ ID NO: 10もしくは90その変種)および軽鎖定常領域(CL)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が点在した、相補性決定領域(CDR)と称される、超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは3つのCDRを含む。
【0024】
本発明の態様において、各フレームワークまたはCDRドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat、ChothiaまたはAbmの定義にしたがう: 例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Kabat, et al.; National Institutes of Health, Bethesda, Md.; 5th ed.; NIH Publ. No. 91-3242 (1991); Kabat, The Structural Basis for Antibody Complementary, Adv. Prot. Chem. 32:1-75 (1978); Kabat, et al., Unusual distributions of amino acids in complementarity-determining (hypervariable) segments of heavy and light chains of immunoglobulins and their possible roles in specificity of antibody-combining sites, J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977); Chothia, et al., Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)またはChothia, et al., Conformations of immunoglobulin hypervariable regions, Nature 342:877-883 (1989)を参照されたい。したがって、本発明は、VHおよびVLが本明細書において記載のアミノ酸配列(またはその変種)を含み、CDRがKabatおよび/またはChothiaにしたがって定義される通りである、VHのCDRおよびVLのCDRを含む抗体および抗原結合断片を含む。同様に、Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol., Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins. 273: 927-48 (1997); Martin, et al., Modeling antibody hypervariable loops: a combined algorithm, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 9268-9272 (1989); Martin et al., Molecular modeling of antibody combining sites, Methods Enzymol., 203: 121-153 (1991); Pedersen et al., Antibody modeling: Beyond homology, Immunomethods 1(2): 126-136 (1992); およびRees et al., In Sternberg M. J. E. (ed.), Protein Structure Prediction. Oxford University Press, Oxford, 141-172. (1996))を参照されたい。
【0025】
本発明の態様において、抗LEPR抗体または抗原結合断片は、例えば、IgA (例えば、IgA1もしくはIgA2)型、IgD型、IgE型、IgG (例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4 (例えば、S228Pおよび/もしくはS108P変異を含む))型またはIgM型の、重鎖定常ドメインを含む。本発明の態様において、抗原結合タンパク質、例えば、抗体または抗原結合断片は、例えば、本明細書において記載される、κ型もしくはλ型またはその変種の、軽鎖定常ドメインを含む。本発明は、例えば、本明細書において記載される、重鎖および/または軽鎖定常ドメインに連結された、本明細書において記載される可変ドメインを含む抗体および抗原結合断片を含む。
【0026】
「単離された」抗体またはその抗原結合断片、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびベクターなどは、それらが産生された細胞または細胞培養物からの他の生物学的分子を少なくとも部分的に含まない。そのような生物学的分子は、核酸、タンパク質、他の抗体もしくは抗原結合断片、脂質、炭水化物、または細胞残屑および成長培地などの他の材料を含む。単離された抗原結合タンパク質はさらに、宿主細胞からのまたはその成長培地の生物学的分子などの発現系構成要素を少なくとも部分的に含まないことがある。一般に、「単離された」という用語は、そのような生物学的分子が完全に存在しないことをいうように意図されない(例えば、微量またはわずかな量の不純物が残存することがある)、あるいは水、緩衝液もしくは塩が存在しないこと、または抗体もしくは抗原結合断片を含む薬学的製剤の構成要素が存在しないことをいうように意図されない。
【0027】
抗LEPR抗原結合断片の非限定的な例としては、(i) Fab断片; (ii) F(ab')2断片; (iii) Fd断片; (iv) Fv断片; (v) 単鎖Fv (scFv)分子; (vi) dAb断片; および(vii) 抗体の超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、 CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール免疫医薬品(small modular immunopharmaceutical; SMIP)およびサメ可変IgNARドメインなどの、他の操作された分子も、本明細書において用いられる「抗原結合断片」という表現のなかに包含される。
【0028】
抗体の抗LEPR抗原結合断片は、通常、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のものであってよく、一般に、1つまたは複数のフレームワーク配列と隣接しているまたはフレーム内にある少なくとも1つのCDRを含むであろう。VLドメインに関連するVHドメインを有する抗原結合断片において、VHおよびVLドメインは、任意の適当な配置で互いに対して位置されうる。例えば、可変領域は二量体であってもよく、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含む。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VHまたはVLを含みうる。
【0029】
ある種の態様において、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含みうる。本発明の抗体の抗原結合断片内に見出されうる可変および定常ドメインの、非限定的で例示的な構成は、(i) VH-CH1; (ii) VH-CH2; (iii) VH-CH3; (iv) VH-CH1-CH2; (v) VH-CH1-CH2-CH3; (vi) VH-CH2-CH3; (vii) VH-CL; (viii) VL-CH1; (ix) VL-CH2; (x) VL-CH3; (xi) VL-CH1-CH2; (xii) VL-CH1-CH2-CH3; (xiii) VL-CH2-CH3; および(xiv) VL-CLを含む。上記の例示的な構成のいずれかを含む、可変および定常ドメインの任意の構成において、可変および定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよく、または完全もしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子中での隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可動性または半可動性の連結をもたらす少なくとも2個(例えば5、10、15、20、40、60個またはそれ以上)のアミノ酸からなりうる。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いとの非共有結合においておよび/または1つもしくは複数の単量体VHもしくはVLドメインとの非共有結合において(例えば、ジスルフィド結合によって)上記の可変および定常ドメインの構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含みうる。
【0030】
LEPRに特異的に結合する抗体および抗原結合断片は、「抗LEPR」といわれうる。抗体または断片がLEPRに特異的に結合するのは、単量体ヒトLEPRに結合する場合であり、そのような結合は、25℃または37℃での表面プラズモン共鳴により測定される約150 nM未満のKDによって特徴付けられる。
【0031】
(表A-1)抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列
【0032】
(表A-2)抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片のアミノ酸配列
国際特許出願番号PCT/US2016/056465; 公開番号WO2017/066204参照。
【0033】
例示的な抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片の重鎖および軽鎖可変領域は、以下に記載されている。
【0034】
本発明の態様において、LEPRアゴニストはミババデマブである。WHO Drug Information, Vol. 34, No. 4, 2020; Proposed INN: List 124。
【0035】
「H4H16650P2」、「H4H16679P2」、「H4H17319P2」、「H4H17321P2」、「H4H18417P2」、「H4H18438P2」、「H4H18445P2」、「H4H18446P2」、「H4H18449P2」、「H4H18482P2」、「H4H18487P2」および「H4H18492P2」は、上記表Aに記載される、SEQ ID NO: 2、18、26、34、42、50、58、66、74、82、98もしくは106 (もしくはその変種)の免疫グロブリン重鎖もしくはその可変領域(VH); および10もしくは90 (もしくはその変種)の免疫グロブリン軽鎖もしくはその可変領域(VL)を含み; あるいはそのCDR (CDR-H1 (もしくはその変種)、CDR-H2 (もしくはその変種)およびCDR-H3 (もしくはその変種))を含む重鎖もしくはVHおよび/またはそのCDR (CDR-L1 (もしくはその変種)、CDR-L2 (もしくはその変種)およびCDR-L3 (もしくはその変種))を含む軽鎖もしくはVLを含み、例えば、ここで免疫グロブリン鎖、可変領域および/またはCDRが、以下に記述される特定のアミノ酸配列を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片(多重特異性抗原結合タンパク質を含む)をいう。本発明の態様において、VHはIgG定常重鎖ドメイン(例えば、IgG1もしくはIgG4またはその変種)に連結され、および/またはVLはλもしくはκ定常軽鎖ドメイン(またはその変種)に連結される。
【0036】
免疫グロブリン鎖(例えば、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2およびH4H18492P2 VH、VL、HCまたはLCの)などの、ポリペプチドの「変種」は、アルゴリズムのパラメータが各参照配列の全長にわたって各配列間の最大マッチを与えるように選択される(例えば、期待閾値: 10; ワードサイズ: 3; クエリ範囲内の最大マッチ: 0; BLOSUM 62マトリックス; ギャップコスト: 存在11、拡張1; 条件付き構成スコアマトリックス調整) BLASTアルゴリズムにより比較が実施される場合、本明細書において記載される参照アミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO: 2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98または106のいずれか)と少なくとも約70~99.9% (例えば、70、72、74、75、76、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9%)同一または類似であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。変種は、本明細書において記載される参照アミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO: 2、10、18、26、34、42、50、58、66、74、82、90、98または106のいずれか)と同一または類似の、しかし1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の変異を有する、ポリペプチドを含みうる。変異は、保存的または非保存的なアミノ酸、置換、挿入または欠失である点突然変異を含むことができる。
【0037】
以下の参考文献は、配列分析に用いられることが多いBLASTアルゴリズムに関する: BLAST ALGORITHMS: Altschul et al. (2005) FEBS J. 272(20): 5101-5109; Altschul, S. F., et al., (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410; Gish, W., et al., (1993) Nature Genet. 3:266-272; Madden, T. L., et al., (1996) Meth. Enzymol. 266:131-141; Altschul, S. F., et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402; Zhang, J., et al., (1997) Genome Res. 7:649-656; Wootton, J. C., et al., (1993) Comput. Chem. 17:149-163; Hancock, J. M. et al., (1994) Comput. Appl. Biosci. 10:67-70; ALIGNMENT SCORING SYSTEMS: Dayhoff, M. O., et al., "A model of evolutionary change in proteins." in Atlas of Protein Sequence and Structure, (1978) vol. 5, suppl. 3. M. O. Dayhoff (ed.), pp. 345-352, Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.; Schwartz, R. M., et al., "Matrices for detecting distant relationships." in Atlas of Protein Sequence and Structure, (1978) vol. 5, suppl. 3.'' M. O. Dayhoff (ed.), pp. 353-358, Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.; Altschul, S. F., (1991) J. Mol. Biol. 219:555-565; States, D. J., et al., (1991) Methods 3:66-70; Henikoff, S., et al., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919; Altschul, S. F., et al., (1993) J. Mol. Evol. 36:290-300; ALIGNMENT STATISTICS: Karlin, S., et al., (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268; Karlin, S., et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877; Dembo, A., et al., (1994) Ann. Prob. 22:2022-2039; およびAltschul, S. F. "Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments." in Theoretical and Computational Methods in Genome Research (S. Suhai, ed.), (1997) pp. 1-14, Plenum, N.Y。
【0038】
本発明の方法において用いられる例示的な抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を、本明細書の表Aに記載する。表Aは、例示的な抗LEPRアゴニスト抗体および抗原結合断片の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、ならびに軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子を記載する。
【0039】
本発明は、表Aに記載されるHCVRアミノ酸配列のいずれか、またはその変種から選択されるアミノ酸配列を含むHCVRを含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0040】
本発明は同様に、表Aに記載されるLCVRアミノ酸配列のいずれか、またはその変種から選択されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0041】
本発明は同様に、表Aに記載されたLCVRアミノ酸配列のいずれか、またはその変種と対合された、表Aに記載されたHCVRアミノ酸配列のいずれか、またはその変種を含むHCVRおよびLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。ある種の態様によれば、本発明は、表Aに記載された例示的な抗体および断片のいずれか、またはその変種のなかに含まれるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を提供する。ある種の態様において、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、SEQ ID NO:. 2/10; 18/10; 26/10; 34/10; 42/10; 50/10; 58/10; 66/10; 74/10; 82/90; 98/90; および106/90からなる群より選択される。
【0042】
本発明は同様に、表Aに記載されるHCDR1アミノ酸配列のいずれか、またはその変種から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1 (HCDR1)を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0043】
本発明は同様に、表Aに記載されるHCDR2アミノ酸配列のいずれか、またはその変種から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2 (HCDR2)を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0044】
本発明は同様に、表Aに記載されるHCDR3アミノ酸配列のいずれか、またはその変種から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3 (HCDR3)を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0045】
本発明は同様に、表Aに記載されるLCDR1アミノ酸配列のいずれか、またはその変種から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1 (LCDR1)を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0046】
本発明は同様に、表Aに記載されるLCDR2アミノ酸配列のいずれか、またはその変種から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2 (LCDR2)を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0047】
本発明は同様に、表Aに記載されるLCDR3アミノ酸配列のいずれか、またはその変種から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3 (LCDR3)を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0048】
本発明は同様に、表Aに記載されたLCDR3アミノ酸配列のいずれか、またはその変種と対合された、表Aに記載されたHCDR3アミノ酸配列のいずれか、またはその変種を含むHCDR3およびLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。
【0049】
本発明は同様に、表Aに記載された例示的な抗LEPR抗体のいずれか、またはその変種のなかに含まれる6つのCDR (すなわち、HCVRのHCDR1、HCDR2およびHCDR3ならびにLCVRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3)のセットを含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。ある種の態様において、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列セットは、SEQ ID NO: 4/6/8/12/14/16; 20/22/24/12/14/16; 28/30/32/12/14/16; 36/38/40/12/14/16; 44/46/48/12/14/16; 52/54/56/12/14/16; 60/62/64/12/14/16; 68/70/72/12/14/16; 76/78/80/12/14/16; 84/86/88/92/94/96; 100/102/104/92/94/96; および108/110/112/92/94/96からなる群より選択される。
【0050】
関連する態様において、本発明は、表Aに記載された例示的な抗体および断片のいずれか、またはその変種によって定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対のなかに含まれる6つのCDR (すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のセットを含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を提供する。例えば、本発明は、SEQ ID NO: 2/10; 18/10; 26/10; 34/10; 42/10; 50/10; 58/10; 66/10; 74/10; 82/90; 98/90; および106/90からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対のなかに含まれるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3アミノ酸配列セットを含む、抗LEPRアゴニスト抗体およびその抗原結合断片を使用する方法を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法は、当技術分野において周知であり、本明細書において開示される指定されたHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために用いることができる。CDRの境界を同定するために用いることができる例示的なきまりは、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義(本明細書において論じられる)を含む。
【0051】
本発明は、本明細書において具体的に記載された抗体または断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)と同じエピトープに結合する抗体または抗原結合断片を使用する方法を含む。国際特許出願公開番号WO2017/66204を参照されたい。
【0052】
本発明は同様に、本明細書において具体的に記載されている抗体または抗原結合断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)とLEPRへの結合について競合する抗体および抗原結合断片を使用する方法を含む。本明細書において用いられる「競合する」という用語は、抗原(例えば、LEPR)に結合し、別の抗体または抗原結合断片の抗原への結合を阻害または遮断する、抗体または抗原結合断片をいう。この用語は同様に、例えば、第1の抗体が結合して第2の抗体の結合を遮断する場合およびその逆の場合など、両方向での、2つの抗体または抗原結合断片の間の競合も含む。ある種の態様において、第1の抗体または断片および第2の抗体または断片は、同じエピトープに結合してもよい。あるいは、第1および第2の抗体または断片は、異なるが、例えば重複するエピトープに結合してもよく、ここで一方の結合が、例えば立体障害を介して、第2の抗体または断片の結合を阻害または遮断する。抗体または断片間の競合は、当技術分野において公知の方法により、例えば、リアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイにより測定されうる。同様に、抗LEPR抗体または断片間の結合競合は、Octet RED384バイオセンサ(Pall ForteBio Corp.)でのリアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイを用いて判定することができる。国際特許出願公開番号WO2017/66204を参照されたい。
【0053】
Fc変種を含む抗LEPR抗体
本発明のある種の態様によれば、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体への抗体結合を増強または減弱する1つまたは複数の変異を含むFcドメインを含む、抗LEPR抗体および抗原結合断片を使用するための方法が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのCH2またはCH3領域に変異を含む抗LEPR抗体を含み、ここで変異は、酸性環境(例えば、pHが約5.5から約6.0の範囲にあるエンドソーム内)でFcRnへのFcドメインの親和性を増加させる。そのような変異は、動物への投与時に抗体の血清中半減期の増加をもたらしうる。そのようなFc修飾の非限定的な例としては、例えば、位置番号250での修飾(例えば、EもしくはQ); 250および428での修飾(例えば、LもしくはF); 252での修飾(例えば、L/Y/F/WもしくはT)、254での修飾(例えば、SもしくはT)および256での修飾(例えば、S/R/Q/E/DもしくはT); または位置番号428および/もしくは433での修飾(例えば、H/L/R/S/P/QもしくはK)および/もしくは434での修飾(例えば、H/FもしくはY); または位置番号250および/もしくは428での修飾; または位置番号307もしくは308での修飾(例えば、308F、V308F)および434での修飾が挙げられる。1つの態様において、修飾は、428L (例えば、M428L)および434S (例えば、N434S)修飾; 428L、259I (例えば、V259I)および308F (例えば、V308F)修飾; 433K (例えば、H433K)および434 (例えば、434Y)修飾; 252、254および256 (例えば、252Y、254Tおよび256E)修飾; 250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L); ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fまたは308P)を含む。
【0054】
例えば、本発明は、250Qおよび248L (例えば、T250QおよびM248L); 252Y、254Tおよび256E (例えば、M252Y、S254TおよびT256E); 428Lおよび434S (例えば、M428LおよびN434S); ならびに433Kおよび434F (例えば、H433KおよびN434F)からなる群より選択される変異の1つまたは複数の対または群を含むFcドメインを含む抗LEPR抗体および抗原結合断片を使用する方法を含む。前述のFcドメイン変異、および本明細書において開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせは、本発明の範囲内で企図される。
【0055】
本発明の方法において用いられうる抗LEPR抗体および抗原結合断片は、低減されたエフェクタ機能を有する修飾Fcドメインを含みうる。本明細書において用いられる場合、「低減されたエフェクタ機能を有する修飾Fcドメイン」とは、修飾Fcを含む分子が、野生型、天然版のFc部分を含む比較対象分子と比べて、細胞死滅化(例えば、ADCCおよび/またはCDC)、補体活性化、貪食およびオプソニン化からなる群より選択される少なくとも1つの作用の重度または程度の低減を示すような、野生型の天然Fcドメインと比べて、修飾され、変異され、切断されているなどの免疫グロブリンの任意のFc部分を意味する。ある種の態様において、「低減されたエフェクタ機能を有する修飾Fcドメイン」は、Fc受容体(例えば、FcγR)への結合が低下または減弱したFcドメインである。
【0056】
本発明のある種の態様において、修飾Fcドメインは、ヒンジ領域における置換を含む変種IgG1 Fcまたは変種IgG4 Fcである。例えば、本発明の文脈で用いるための修飾Fcは、IgG1 Fcヒンジ領域の少なくとも1つのアミノ酸が、IgG2 Fcヒンジ領域からの対応するアミノ酸で置換されている、変異型IgG1 Fcを含みうる。あるいは、本発明の文脈で用いるための修飾Fcは、IgG4 Fcヒンジ領域の少なくとも1つのアミノ酸がIgG2 Fcヒンジ領域からの対応するアミノ酸で置換されている、変種IgG4 Fcを含みうる。本発明の文脈において用いることができる非限定的な、例示となる修飾Fc領域は、米国特許出願公開第2014/0243504号に記載されている。
【0057】
本発明の文脈において用いることができる他の修飾FcドメインおよびFc修飾は、US 2014/0171623; US 8,697,396; US 2014/0134162; WO 2014/043361に記載されている修飾のいずれかを含む。本明細書において記述される修飾Fcドメインを含む抗体または他の抗原結合融合タンパク質を構築する方法は、当技術分野において公知である。
【0058】
ヒト抗体の調製
本発明の方法において用いられうる抗LEPR抗体および抗原結合断片は、完全ヒト抗体であることができる。完全ヒトモノクローナル抗体を含めて、モノクローナル抗体を作出するための方法は、当技術分野において公知である。そのような公知の方法はいずれも、ヒトLEPRに特異的に結合するヒト抗体を作出するために本発明の文脈において用いることができる。
【0059】
例えば、VELOCIMMUNE(商標)、または完全ヒトモノクローナル抗体を作出するための任意の他の類似した公知の方法を用いて、ヒト可変領域およびマウス定常領域を有する、LEPRに対する高親和性キメラ抗体を最初に単離する。以下の実験セクションのように、抗体は親和性、リガンド遮断活性、選択性、エピトープなどを含む、望ましい特徴について特徴付けられ、選択される。必要に応じて、マウス定常領域を所望のヒト定常領域、例えば野生型または修飾IgG1またはIgG4で置換して、完全ヒト抗LEPR抗体を作出する。選択される定常領域は特定の用途に応じて変動しうるが、高親和性の抗原結合および標的特異性の特徴は可変領域にある。ある種の例では、完全ヒト抗LEPR抗体は、抗原陽性B細胞から直接単離される。
【0060】
国際特許出願公開番号WO2017/066204を参照されたい。
【0061】
組み合わせおよび薬学的組成物
本発明は、抗LEPR抗体および抗原結合断片ならびに1つまたは複数の成分を含む組成物を使用するための方法を提供する。
【0062】
抗LEPR抗体およびその抗原結合断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の薬学的組成物を調製するために、該抗体または断片は薬学的に許容される担体または賦形剤と混和される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia: National Formulary, Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1984); Hardman, et al. (2001) Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, N.Y.; Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, N.Y.; Avis, et al. (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY; Weiner and Kotkoskie (2000) Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Yを参照されたい。本発明の態様において、薬学的組成物は無菌である。そのような組成物の使用は、本発明の一部である。
【0063】
本発明の方法で用いるための薬学的組成物は、例えば、水、緩衝剤、安定化剤、保存料、等張化剤、非イオン性界面活性剤、抗酸化物質および/または他の雑多な添加物などの、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤および/または安定剤を含む。
【0064】
本発明の範囲は、抗LEPR抗原結合タンパク質、例えば、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/もしくはH4H18492P2)を含む、乾燥された、例えば、凍結乾燥された組成物、または薬学的に許容される担体を含むが水を実質的に欠くその薬学的組成物を使用するための方法を含む。例えば、そのような乾燥組成物は、例えば、水で再構成し、その後、患者に投与することができる。
【0065】
本発明のさらなる態様において、さらなる治療剤が、抗LEPR抗体またはその抗原結合断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)と関連して患者に投与され、本明細書において開示されるものは、Physicians' Desk Reference 2003 (Thomson Healthcare; 57th edition (Nov. 1, 2002))にしたがって患者に投与される。
【0066】
抗体もしくはその抗原結合断片またはその組成物の投与様式は、さまざまであることができる。投与経路は、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口; 筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、眼内、吸入、吹送、局所、皮膚、経皮または動脈内を含む。本発明の方法は、LEPRアゴニストが任意のそのような経路によって患者に投与される用途を含む。
【0067】
本発明は、抗LEPRアゴニスト抗体またはその抗原結合断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)を患者に投与する段階を、該抗体もしくは断片または薬学的組成物あるいはそれらの組み合わせを患者の体内に導入する段階を含めて、含む使用の方法を提供する。例えば、本発明の態様において、本方法は、患者の身体に、例えば注射器の針で穴を開ける段階、および抗原結合タンパク質もしくは薬学的組成物またはその組み合わせを患者の身体に、例えば患者の静脈、動脈、腫瘍、筋肉組織または皮下組織に注射する段階を含む。
【0068】
本発明は、抗LEPRアゴニスト抗体またはその抗原結合断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)を、1つまたは複数のさらなる治療剤と関連して含む組み合わせを使用する方法を含む。LEPRアゴニスト(例えば、抗LEPRアゴニスト抗体および抗原結合断片)ならびにさらなる治療剤は、単一の組成物中または別個の組成物中であることができる。例えば、本発明の態様において、さらなる治療剤は、ヒトレプチン、メトレレプチン、PCSK9阻害剤(例えば、抗PCSK9抗体、例えば、アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブもしくはラルパンシズマブ)、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチンもしくはプラバスタチン)、エゼチミブ、インスリン、インスリン変種、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、スルホニル尿素、ナトリウムグルコース共輸送体2 (SGLT2)阻害剤(例えば、ダパグリホジン、カナグリホジン、エンパグリフロジン)、MC4受容体の選択的アゴニスト(例えば、セトメラノチド)、GLP-1アゴニストもしくは類似体(例えば、エクステンジン-4、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、アルビグルチドもしくはデュラグルチド)、グルカゴン(GCG)阻害剤(例えば、抗GCG抗体)、グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤(例えば、抗GCGR抗体、低分子GCGRアンタゴニスト、GCGR特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗GCGRアプタマー、例えば、シュピーゲルマー、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤(例えば、抗ANGPTL3抗体、抗ANGPTL4抗体、抗ANGPTL8抗体)、フェンテルミン、オルリスタット、トピラメート、ブプロピオン、トピラメートおよびフェンテルミン、ブプロピオンおよびナルトレキソン、ブプロピオンおよびゾニサミド、プラムリンチドおよびメトレレピン(metrelepin)、ロルカセリン、セチリスタット、テソフェンシンまたはベルネペリットである。本発明の態様において、さらなる治療剤は、鎮痛薬、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、コルチコステロイド、筋弛緩薬、COX2阻害剤、鎮痛薬、非オピオイド、抗うつ薬、抗不安薬、アセトアミノフェン、オピオイドまたはジクロフィナクである。
【0069】
「と関連して」という用語は、構成要素、本発明の抗LEPRアゴニスト抗体またはその抗原結合断片が、メトレレプチンなどの別の薬剤とともに、例えば同時送達のために、単一の組成物中に製剤化されてもよく、または2つもしくはそれ以上の組成物(例えば、同時送達のための各構成要素を含むキット)中に別々に製剤化されてもよいことを示す。各構成要素は、他の構成要素が投与される時とは異なる時点で患者に投与されてもよく; 例えば、各投与は、所定の期間にわたり間隔を置いて非同時に(例えば、別々にまたは逐次的に)与えられうる。さらに、別個の構成要素は、同じ経路によりまたは異なる経路により患者に投与されうる。
【0070】
処置および投与
LEPRアゴニスト(例えば、本明細書において記載される抗LEPRアゴニスト抗体および抗原結合断片)は、患者における、例えば、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態、例えば、脂肪異栄養症または肥満症と関連する疼痛および/またはオピオイドなどの鎮痛薬の使用を急速に低減するために用いることができる。そのような疼痛の低減は、オピオイドを含む鎮痛薬の使用の低減だけでなく、生活の質の改善にもつながる可能性がある。
【0071】
本発明は、抗LEPRアゴニスト抗体またはその抗原結合断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)などの、LEPRアゴニストの有効量を患者に投与する段階を含む、例えば、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態、例えば、脂肪異栄養症または肥満症に苦しんでいる患者において疼痛を処置または予防するための方法を含む。
【0072】
患者に投与されるLEPRアゴニストの有効量または用量は、患者の年齢および体格、標的疾患、状態、投与経路などに依って変動しうる。好ましい用量は、体重または体表面積にしたがって計算することができる。成人患者では、LEPRアゴニスト(例えば、抗LEPRアゴニスト抗体または抗原結合断片)を約0.01~約20 mg/kg体重の単回用量で静脈内投与することが有利でありうる。状態の重症度に依って、処置の頻度および期間を調整することができる。LEPRアゴニストを投与するための有効な投与量およびスケジュールは、経験的に決定されうる; 例えば、定期的な評価によって患者の進行状況をモニタリングし、それに応じて用量が調整されうる。さらに、投与量の種間スケーリングは、当技術分野において周知の方法を用いて実施することができる(例えば、Mordenti et al., Interspecies Scaling of Clearance and Volume of Distribution Data for Five Therapeutic Proteins, Pharmaceut. Res. 8:1351-1359 (1991)。
【0073】
本発明の態様において、観察される疼痛、不安および/または抑うつの低減は、患者において、例えば、静脈内に約5 mg/ml、およびその後皮下に300 mgである、LEPRアゴニスト(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の初回有効用量の、1日未満以内、1、2、3、4もしくは5日(またはそれ以下)以内に起こる。
【0074】
本発明は同様に、REGN4461などのLEPRアゴニストの有効量を投与することにより、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる患者において、鎮痛薬(例えば、オピオイド、例えば、オキシコドンまたはガバペンチン)の使用、抗不安薬の使用、抗うつ薬の使用、鎮痛探索行動、必要に応じた鎮痛薬の使用、鎮痛薬過剰摂取、および/または鎮痛薬の乱用による死亡を低減するための、またはその低減を維持するための方法を提供する。例えば、本発明の態様において、LEPRアゴニストによる処置の開始に非常に近い時期に、例えば、同時または1~2日以内に、患者が鎮痛薬(例えば、オピオイド、例えば、オキシコドンまたはガバペンチン)の定期的な使用を中止するか、担当医がその中止を命じる。本発明の別の態様において、LEPRアゴニストによる処置の開始に非常に近い時期に、例えば、同時または1~2日以内に、患者が鎮痛薬(例えば、オピオイド、例えば、オキシコドンまたはガバペンチン)の使用を低減する(例えば、投与量および/または投与の頻度を低減する)か、担当医がその使用の低減を命じる(例えば、投与量および/または投与の頻度を低減する)。鎮痛薬(例えば、オピオイド、例えば、オキシコドンまたはガバペンチン)の使用が低減もしくは中止されるか、または低減もしくは中止されるように命じられるそのような場合、そのような低減または中止は、特に痛みを伴う医学的問題(例えば、腹痛、肝臓痛または膵臓痛)を処置するために必要とされる鎮痛薬の一時的な使用(例えば、1、2もしくは3日またはそれ以下の間; あるいは1~3日間)がなければ、維持される(例えば、6ヶ月もしくは1年もしくは1年半もしくは2年またはそれ以上の間)。鎮痛薬(例えば、オピオイド、例えば、オキシコドンまたはガバペンチン)の使用が低減される(または医師によってそのように命じられる)場合、さらなる低減(例えば、最終的に中止に至る)が経時的に行われ、または命じられうる。例えば、本発明の態様において、鎮痛薬はオキシコドンなどのオピオイドであるが、患者は必要に応じて非オピオイド鎮痛薬(例えば、パラセタモール)を使用し続けることが許される。
【0075】
本発明はさらに、LEPRアゴニスト(例えば、REGN4461)の有効量を投与することにより、例えば、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態(例えば、PLDなどの脂肪異栄養症)に苦しんでいる患者の/患者による、疼痛に起因する(例えば、膵炎に起因する)、腹痛、膵炎、不安および/または抑うつ(例えば、本状態と関連している)に起因する、入院、緊急治療室の使用、または緊急医療処置もしくは往診の必要性、または診察の必要性を低減するための方法を提供する。
【0076】
本発明は同様に、中枢性疼痛または中枢性疼痛症候群(例えば、慢性中枢性疼痛)を処置または予防するための方法を提供する。中枢性疼痛症候群は、脳、脳幹および脊髄を含む中枢神経系(CNS)の損傷またはその機能不全によって引き起こされる神経学的状態である。この症候群は、脳卒中、多発性硬化症、腫瘍、てんかん、脳もしくは脊髄の外傷、またはパーキンソン病によって引き起こされうる。この症候群と関連する疼痛の特徴は、一つには潜在的な原因がさまざまであることもあり、個人間で大きく異なる。中枢性疼痛症候群は、身体の大部分に影響を与える場合もあれば、手または足などの、特定の領域にいっそう限定される場合もある。疼痛の程度は、通常、CNSの傷害または損傷の原因に関連している可能性がある。痛みは一定である場合もあれば、強度が中等度から重度の場合もあり、接触、動き、感情および気温の変化、例えば、低温によって悪化することも多い。個体は1種または複数種の痛覚を経験するが、最も顕著なのは灼熱感である。灼熱感に混じって、「しびれてピリピリする(pins and needles)」感覚; 押したり、裂いたり、またはうずくような痛み; および露出した神経に歯科用プローブを当てることによって引き起こされる痛みに似た、短くて耐えがたい急な鋭い痛みの感覚があるかもしれない。個体は、痛みの影響を受けた領域でしびれがあるかもしれない。灼熱感および触覚の喪失は、通常、足または手などの、身体の遠位部分で最も深刻である。中枢性疼痛症候群は、原因となる傷害または損傷の直後に始まることが多いが、特に脳卒中後の痛みに関連している場合は、数ヶ月または数年遅れることもありうる。したがって、本発明は、患者に抗LEPRアゴニスト抗体またはその抗原結合断片(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の有効量を投与する段階を含む、患者において(例えば、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態、例えば、脂肪異栄養症または肥満症に苦しんでいる患者において)中枢性疼痛、慢性中枢性疼痛、中枢神経系による疼痛の集中化および/もしくは過敏化を伴う疼痛の形態または中枢性疼痛症候群を処置または予防するための方法を提供する。
【0077】
本発明の態様において、LEPRアゴニスト(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の有効量は、アゴニストの血中濃度が約100 mg/リットル(またはそれ以上)である量である。
【0078】
本発明の態様において、LEPRアゴニスト(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の有効量は、1回もしくは複数回の約5 mg/kgの静脈内(IV)用量、およびその後1回もしくは複数回の、週1回、約250~300 mgの皮下(SC)用量(例えば、ここでは1回のIV用量が1日目に与えられ、SC投薬は5日目に開始され、その後毎週継続される)である。
【0079】
レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態は、例えば、単一遺伝子性肥満症、肥満症、甲状腺機能障害、早期発症型肥満症、脂質異常症、性腺機能低下症、生殖機能障害、過食症および満腹障害、免疫機能障害(例えば、CD4+数)、代謝機能障害、無月経または月経不順、メタボリックシンドローム、ダイエット誘発性食欲不振、機能性視床下部無月経、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン受容体の変異による重度インスリン抵抗性を含む重度のインスリン抵抗性、インスリン受容体の変異に起因しない重度のインスリン抵抗性、下流のシグナル伝達経路の変異に起因する、または他の原因により誘導される重度のインスリン抵抗性、非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患、アルツハイマー病、レプチン欠乏症、レプチン抵抗性、脂肪異栄養症、レプレコーニズム/ドナヒュー症候群ならびにラブソン-メンデンホール症候群を含む。
【0080】
別のレプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態は、中和性の抗レプチン自己抗体の保有を含む。
【0081】
別のレプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態は、低レプチン血症、女性不妊症、無月経、ホルモン周期異常、免疫機能障害または甲状腺機能低下症を含む。
【0082】
脂肪異栄養症は、例えば、部分的脂肪異栄養症(PLD)、先天性全身脂肪異栄養症、後天性全身脂肪異栄養症、家族性部分的脂肪異栄養症、後天性部分的脂肪異栄養症、遠心性腹部脂肪異栄養症、環状脂肪組織萎縮症(lipoatrophia annularis)、局在性脂肪異栄養症およびHIV関連脂肪異栄養症を含む。
【0083】
本発明の態様において、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる患者は、レプチンの存在下でシグナル伝達を示さないLEPR変異体(シグナル伝達欠損LEPR変異体)によって特徴付けられる遺伝子型を有する。例示的なシグナル伝達欠損LEPR変異は、LEPR-A409X、例えば、LEPR-A409Eである(Farooqi et al., Clinical and Molecular Genetic Spectrum of Congenital Deficiency of the Leptin Receptor, N Engl J Med 356(3): 237-247 (2007))。本発明の態様において、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる患者は、「シグナル伝達障害LEPR変異体」ともいわれうる、レプチンの存在下で(野生型LEPRと比較して)シグナル伝達の低減を示すLEPR変異体によって特徴付けられる遺伝子型を有する。例示的なシグナル伝達障害LEPR変異は、LEPR-P316X、例えば、LEPR-P316Tである(Mazen et al., Homozygosity for a novel missense mutation in the leptin receptor gene (P316T) in two Egyptian cousins with severe early onset obesity, Mol Genet Metab 102 (4):461-464 (2011))。本発明の態様において、LEPR変異はLEPR-L372X、例えば、LEPR-L372Aである。
【0084】
本発明の態様において、脂肪異栄養症(例えばPLD)などのレプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態を有する患者が被る疼痛は、急性疼痛、慢性疼痛、腹痛、肝臓痛、脂肪織炎型(1型)の後天性全身脂肪異栄養症と関連する有痛性皮下結節または丘疹病変、例えば、脂肪異栄養症に苦しんでいる患者の身体上のスポットでの過剰な脂肪沈着物の蓄積と関連する、背中、肩、腕および/または首における、限局性疼痛である。例えば、有痛性の「野牛肩」または首の背頸部脂肪体は、脂肪異栄養症に苦しんでいる一部において疼痛(例えば、首における、ならびに背中および肩における)の原因でありうる。本発明の態様において、疼痛の原因は、神経障害、関節炎、慢性腰痛、線維筋痛症または筋障害である。したがって、本発明は、本明細書において記載される任意のそのような疼痛、例えば筋障害疼痛(例えば、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる患者における)を処置または予防するための方法を含む。
【0085】
本発明の態様において、腹痛は右季肋部痛である。
【0086】
本発明の態様において、腹痛および/または背部痛(例えば、背部まで広がる腹痛もしくはその逆)を有する患者は、浮腫性膵臓、壊死性膵臓組織、回腸炎、胃腸炎、腎臓痛(左および/もしくは右)、膵炎(例えば、急性膵炎)、胆道痛、好酸球増加症、カイロミクロン血症、急性胆嚢炎、肝臓炎、肝硬変、肝不全、消化不良、肝臓痛、肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)および/または肝臓脂肪症に苦しむ。
【0087】
本発明の態様において、例えば、疼痛の低減のために、本発明によってLEPRアゴニストを投与された患者は、以下も示す:
・肝臓脂肪症の低減(例えば磁気共鳴画像プロトン密度脂肪分画測定(PDFF)によって推定される);
・血液中の肝酵素レベルの低減;
・肝臓サイズの低減(例えば、身体検査によって推定される)-例えば、右半身横隔膜の最上部から右葉の下端まで頭蓋垂直に測定した長手径;
・肝臓硬さの低減(例えば、肝臓エラストグラフィーによって測定される); および/または
・脾臓サイズの低減。
患者にLEPRアゴニストの有効量を投与することにより、患者(例えば、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる)において、任意のそのような低減を達成するための方法は、本発明の一部である。
【0088】
「患者」または「対象」は、哺乳動物(例えば、サル、ヒト以外の霊長類、マウス、ラットまたはウサギ)、好ましくはヒトである。本発明の態様において、患者は、脂肪異栄養症、部分的脂肪異栄養症および/または肥満症に苦しんでいる。本発明の態様において、患者または対象は、以下の特徴またはその病歴のいずれか1つまたは複数を有する:
・陽性の抗GAD65力価;
・異常な成長ホルモン分泌;
・約3.2 ng/mlのレプチン血中レベル;
・脂肪症;
・副腎皮質兆候発現;
・約80~120 IU/リットルのアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)血清レベル;
・約80~160 IU/リットルのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)血清レベル;
・約200~500 (200、300、400もしくは500) mg/dlの血中グルコース;
・成長の遅れ;
・思春期性成長スパートの遅れ;
・脂質異常症;
・HbA1cの上昇;
・約20 pg/ml未満のエストラジオールレベル(例えば、女性患者において);
・約1~2 mU/mlの卵胞刺激ホルモン(FSH)レベル(例えば、女性患者において);
・約9~10のHbA1cパーセンテージ;
・約30%の肝脂肪含有量(プロトン密度脂肪分画(PDFF)) (例えば、ディクソン(Dixon)法(Dixon, Simple proton spectroscopic imaging. Radiology 1984;153:189-194)によって測定される);
・肝腫大;
・高コレステロール血症;
・高血糖症;
・高インスリン血症;
・過食症;
・高トリグリセリド血症(例えば、約1200 mg/dlの血中レベル);
・インスリン抵抗性;
・例えば、約400~1600 (400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500もしくは1600)単位の日用量での、インスリン使用;
・乳房の発達の欠如;
・低骨塩量;
・低骨塩密度(もしくは低骨量);
・低い除脂肪体重;
・約0.1 pg/mlの黄体形成ホルモン(LH)レベル(例えば、女性患者において);
・メトレレプチンに対する中和抗体;
・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);
・肥満症;
・膵炎;
・血漿交換;
・抗レプチンもしくは抗メトレレプチン中和抗体の保有;
・約0.05 ng/ml未満のテストステロンレベル(例えば、女性患者において);
・ガバペンチン、オキシコドン、ベンラファキシン、ブスピロン、パラセタモール、ケタミン、ケトロラク、ロラゼパムおよび/もしくはモルヒネの使用; ならびに/あるいは
・メトレレプチンおよび/もしくはセトメラノチドの使用またはそのような使用の中止。
【0089】
鎮痛薬
鎮痛薬は、痛みの軽減のために用いられる薬剤である。レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態、例えば脂肪異栄養症に苦しんでいる患者は、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2などのLEPRアゴニストで処置される場合、鎮痛薬、例えば、オピオイドおよび非オピオイド、例えばCGRP阻害剤、COX-2阻害剤、サリチル酸塩、アセトアミノフェン(パラセタモール)ならびにNSAIDの使用を中止または低減することができる。
【0090】
本発明の態様において、レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態を有する患者が被る疼痛は「慢性」であり、オピオイドなどの鎮痛薬の慢性的な使用で処置されている。慢性疼痛または鎮痛薬などの治療法の慢性的な使用とは、長期間(例えば、1年またはそれ以上)、確定的な終点がなく、疼痛または治療法(例えば、鎮痛薬)の使用が繰り返されるまたは継続する事例をいう。
【0091】
偶発性(episodic)疼痛、または鎮痛薬などの治療法の一時的(episodic)使用とは、確定的な終点を意図した1日から数日の期間の単一の個別の事例のなかで起きる疼痛、またはそのような事例のなかで行われる治療用物質(例えば、鎮痛薬)の使用をいう。患者は所与の期間にわたって、複数の疼痛エピソードに苦しみ、複数エピソードの治療用物質(例えば、鎮痛薬)の使用を行いうる。
【0092】
本発明の態様において、疼痛は限局性疼痛、限局性腹痛、全身性疼痛または腹部全体痛である。腹部全体痛とは、患者が腹部の半分以上に痛みを感じることを意味する。
【0093】
オピオイド探索行動およびオピオイドの使用は、例えば、脂肪異栄養症の状態によって引き起こされる疼痛と関連している。オピオイドの使用は、過剰使用、過剰摂取および死亡につながる可能性がある。レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態に苦しんでいる患者における疼痛の軽減は、そのようなオピオイドの探索行動および使用の低減につながり、したがって過剰摂取および死亡の減少につながる可能性がある。したがって、本発明は、患者にLEPRアゴニスト(例えば、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2)の有効量を投与する段階を含む、患者(例えば、脂肪異栄養症または肥満症に苦しんでいる)において疼痛を処置または予防することを含むオピオイド探索行動および/またはオピオイドの使用、オピオイドの過剰使用、オピオイドの過剰投与、オピオイドへの中毒および/またはオピオイド使用によって引き起こされる死亡を低減するための方法を含む。
【0094】
オピオイドの化学構造は、
(i) モルヒネ
、コデイン、オキシモルフォン、オキシコドン、ブプレノルフィン、ヒドロモルフォンおよびヒドロコドンなどの4,5-エポキシモルフィナン環、
(ii) アルフェンタニル、フェンタニル
およびスフェンタニルなどのフェニルピペリジン、ならびに
(iii) メサドン
などのジフェニルヘプチルアミン
に基づくものに細分化される。例えば、Drewes, Br. J. Clin. Pharmacol. 75(1): 60-78 (2012)を参照されたい。これらの化合物は化学構造、物理化学的特性および薬物動態が異なるが、主要な標的としてのミュー(μ)オピオイド受容体とのその相互作用という、1つの共通の特徴を有する。本発明の態様において、オピオイドは、アルフェンタニル、コデイン、けしがらの濃縮物、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、ジヒドロコデイン、ジヒドロエトルフィン、ジフェノキシレート、エチルモルヒネ、エトルフィン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ケトベミドン、レボルファノール、メサドン、メサドン、モルヒネ、モルヒネ-n-オキシド、ニコモルヒネ、ノルコデイン、アヘン、オリパビン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペチジン、ペチジン中間体、フォルコジン、ピリトラミド、レミフェンタニル、スフェンタニル、テバインまたはチリジンである。
【0095】
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害剤は、頭頸部に供給される知覚神経に多く存在する小さなタンパク質であるCGRPの作用を阻害する。CGRPは痛みの伝達に関与しており、片頭痛の発作中にはレベルが上昇する。また、片頭痛発作の誘発において原因的な役割を果たしうる。CGRP阻害剤は片頭痛の管理に用いられる。2種類のCGRP阻害剤は、モノクローナル抗体(例えば、エプチネズマブ、ガルカネズマブ、エレヌマブおよびフレマネズマブ)およびCGRP受容体アンタゴニスト(ゲパント)を含む。ゲパントはCGRP受容体を遮断する低分子薬であり、片頭痛の緩和と予防の両方に有効である。ゲパントはウブロゲパントおよびリメゲパント硫酸塩を含む。
【0096】
シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)阻害剤は、COX-2酵素を特異的に遮断する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の一種である。COX-2阻害剤はバルデコキシブおよびセレコキシブを含む。
【0097】
サリチル酸塩は、サリチル酸の塩またはエステルである。サリチル酸塩は、一部の植物(白柳の樹皮および冬緑の葉などの)において自然に見出され、虫害および病気から植物を保護すると考えられている。アスピリンはサリチル酸の誘導体であり、アセチルサリチル酸としても知られている。サリチル酸塩は、サリチル酸マグネシウム、アスピリン、サリチル酸コリン&サリチル酸マグネシウム、ジフルニサル、サルサレートならびにアスピリン&クエン酸&重炭酸ナトリウムを含む。
【0098】
非ステロイド性抗炎症剤(通常NSAIDと略される)は、痛みや熱を和らげ、炎症を減らす一群の薬である。NSAIDは、メクロフェナメート(meclofenamat)、ケトプロフェン、フェノプロフェン、トルメチン、ジクロフェナク&ミソプロストール、ピロキシカム、インドメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、イブプロフェン、フルルビプロフェン、スリンダク、ケトロラク、ナプロキセン、ジフルニサル、ファモチジン&イブプロフェン、メロキシカム、オキサプロジン、エソメプラゾール&ナプロキセン、ナブメトン、メフェナム酸、ブロムフェナックおよびフェニルブタゾンを含む。他の鎮痛薬はアセトアミノフェンを含む。
【0099】
抗うつ薬
レプチン欠乏症またはレプチン抵抗性状態、例えば脂肪異栄養症に苦しんでいる患者は、REGN4461、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、H4H17321P2、H4H18417P2、H4H18438P2、H4H18445P2、H4H18446P2、H4H18449P2、H4H18482P2、H4H18487P2および/またはH4H18492P2などのLEPRアゴニストで処置される場合、抗うつ薬、例えば、SSRI、SNRI、非定型抗うつ薬、TCAおよびMAOIの使用を中止または低減することができる。
【0100】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、神経細胞へのセロトニンの再吸収(再取り込みと呼ばれる)を阻害する。この機構により、脳内の活性セロトニンのレベルが高くなる。SSRIはフルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラムおよびエスシタロプラムを含む。
【0101】
セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)は、抑うつを処置するために主に用いられる薬物のクラスであるが、ある種のSNRIは、糖尿病性神経障害および線維筋痛症と関連する不安および慢性疼痛の処置にも適応される。SNRIは、セロトニンおよびノルエピネフリンを放出した神経細胞へのセロトニンおよびノルエピネフリンの再吸収(または再取り込み)を遮断し、脳内の活性神経伝達物質のレベルを増加させることで作用する。SNRI薬の例としては、デュロキセチン、ベンラファキシン、デスベンラファキシンおよびレボミルナシプランが挙げられる。
【0102】
非定型抗うつ薬は、他の抗うつ薬のカテゴリーのいずれにもうまくあてはまらない。これらの抗うつ薬は、例えば、トラゾドン、ミルタザピン、ボルチオキセチン、ビラゾドンおよびブプロピオンを含む。
【0103】
三環系抗うつ薬(TCA)は、コアの3環化学構造によって特徴付けられる。通常、個々のTCAは、中央環の炭素または窒素の置換、およびアミン鎖のラジカルが異なる。TCAはイミプラミン、ノルトリプチリン、アミトリプチリン、ドキセピンおよびデシプラミンを含む。
【0104】
モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)は、脳細胞間で情報伝達するために用いられる化学伝達物質(神経伝達物質)に影響を与えることにより、抑うつを緩和する。モノアミンオキシダーゼと呼ばれる酵素は、神経伝達物質であるノルエピネフリン、セロトニンおよびドーパミンを脳から除去することに関与している。MAOIはこれが起こるのを防ぎ、これによりこれらの脳内化学物質をより多く利用できるようにして、抑うつによって影響を受けた細胞と回路の両方に変化をもたらす。MAOIはセレギリン、トラニルシプロミン、フェネルジンおよびイソカルボキサジドを含む。
【0105】
抗不安薬
抗不安薬は、中枢神経系に作用して不安を和らげ、睡眠を助け、または沈静効果を有する薬である。ベンゾジアゼピンおよびその誘導体の一部は、不安を処置するために用いることができる。ベンゾジアゼピンはアルプラゾラム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラムおよびアルプラゾラムを含む。全てのベンゾジアゼピンは、γ-アミノ酪酸(GABA)の阻害作用を増強することによって機能すると考えられている。不安を和らげるのに同様に効果的であると考えられている他の薬物クラスは、SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬およびブスピロンを含む。不安を処置するために用いられうる鎮静効果を有する他の薬物クラスは、第一世代の抗ヒスタミン薬、メラトニン受容体のアゴニスト、麻酔薬、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロンおよびいくつかの他のものを含む。
【実施例
【0106】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作成および使用するかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者がその発明として見なすものの範囲を限定することを意図していない。
【0107】
実施例1: LEPRアゴニストmAb処置は、部分的脂肪異栄養症を有する患者において、疼痛緩和、体重、血清トリグリセリドおよび肝臓脂肪症の低減に関連する。
本実施例では、部分的脂肪異栄養症(PLD)に苦しんでいる患者の事例をまとめた。患者は、REGN4461処置の開始時に中止されたオキシコドンの、必要に応じた(pro re nata; PRN)常用者であった。PRNオキシコドンの使用(REGN4461の開始前)は、少なくとも12ヶ月間、週に少なくとも3日間、少なくとも2~3用量であった。周期的な疼痛エピソードを別にすれば、定期的なオキシコドンの使用は成功裏に中止された。さらに、REGN4461処置の2日前に、痛みに対するガバペンチン処置の投与量を減らした。患者はガバペンチン投与量を6日後に減量し、7日目に再び減量し、この減量を維持することができた。患者のオピオイド使用の概要を図7に記載する。
【0108】
非典型的な部分的脂肪異栄養症かつ複雑な疾患経過を有する患者に対し、LEPRアゴニストREGN4461による特別な(compassionate)処置が模索された。簡単に説明すると、この患者は、非典型的な症状を伴う部分的脂肪異栄養症を有していた。非定型の特徴には、1型糖尿病、ステージ4の線維症を伴う早期発症の重症脂肪性肝炎、およびその後のさらなる自己免疫機能の発生が含まれていた。13歳時に、患者は臨床研究プロトコル(NCT01679197)の一環として、メトレレプチンを12ヶ月間投与された。その時点で、重篤な有害事象は認められなかった。患者は、以前に報告されたように臨床的利益が認められたため、延長プロトコル(NCT02654977)でメトレレプチンを継続した。治療18ヶ月前後で、患者の臨床状態は急激に悪化し、さらなる検査でメトレレプチンに対する中和抗体の存在が確認された。代謝性合併症と患者の重篤な疾患を修正することができないため、レプチンの作用とは無関係に効果を発揮する可能性のある代替処置戦略の探索が必要となった。セトメラノチド(クラス初のMC4Rアゴニスト)を用いた、この探究の最初の試みは、代謝上の利益をもたらすことはなかった。
【0109】
一つには、根底に重度の難治性高トリグリセリド血症および巨大な肝腫大があったことから、患者の状態は悪化し続け、膵炎と痛みのために入院を繰り返したため、治験責任医師主導のINDの下でLEPRアゴニストmAbであるREGN4461による特別な処置が模索された。
【0110】
REGN4461は、以下に記載される重鎖および軽鎖免疫グロブリンを含む。
【0111】
患者の初期の血液化学値を下記表1-1に記載する。
【0112】
(表1-1)初期評価期間時の臨床検査
【0113】
患者は、1週目の1日目にREGN4461の最初の静脈内注入を受け、1週目の5日目から始めて週単位で皮下注射を継続した。処置は、5 mg/kgの静脈内注入に続き、LEPRアゴニストREGN4461の300 mgを毎週皮下注射することからなった。このレジメンで投与されるSC投与量は82週目に450 mgに増量され、83週目には追加のIV負荷用量が投与された。結果判定法、評価およびイベントの詳細なスケジュールの詳細な説明は、表1-2において見出すことができる。
【0114】
(表1-2)処置期間1 (A)、期間2 (B)、および52週目までの延長処置期間(B)の評価スケジュール
(A)
(B)
【0115】
患者は、REGN4461処置前の1週目およびREGN4461処置開始後の2週目に2回の血漿交換療法を受けた。その後、定期的な血漿交換療法の臨床的必要性はなかった。4週目から始めて、患者のトリグリセリドレベルはベースラインと比べて減少し、6週目の測定時に500 mg/dLを下回った。その後、94週までのさまざまな時点で測定されたトリグリセリドレベルは、平均して約522 mg/dLであった。REGN4461による処置は、非定型の部分的脂肪異栄養症および中和レプチン抗体を有するこの患者において、ベースライン時の1288 mg/dLから12週目の426 mg/dL (66.93%減少)および25週目の231 mg/dL (82.07%減少)へのトリグリセリドの低減と関連していた。25週目に、患者は継続的な血漿交換療法を必要とせずに500 mg/dL未満の空腹時トリグリセリドレベルを達成するという、事前に設定された主要評価項目を達成した。
【0116】
REGN4461処置に付随して、患者は最初の8週間でベースラインから4.2キログラム減量し、残りの観察期間も低体重を維持した(25週目にベースラインから4.5 kg減少)。体重は68週目に0.2キログラムだけ、および94週目に0.9キログラムだけ増加した。
【0117】
体重の減少と並行して、ベースラインから25週目までの99 cmから90.5 cmへの胴囲の低減が観察された。
【0118】
LEPRアゴニスト処置は、疼痛および膵炎による入院の減少にも関連していた。LEPRアゴニストmAb処置開始前の12ヶ月間に、患者は計22回入院し、365日のうち64日を入院患者として過ごした。処置開始後、本明細書において論じられるSAEによる2回の入院を別にすれば、患者は入院患者の入院(in-patient hospitalization)を必要とせず、緊急治療室での診察を必要とする腹痛のエピソードは1回のみであった。患者はまた、疼痛のための定期的なオピオイド服薬を中止した。図1は、疾患の経時的な初期経過と、さまざまな治療介入中の患者の代謝パラメータをまとめたものである。
【0119】
処置計画の一環として、肝臓関連パラメータを評価した。磁気共鳴画像プロトン密度脂肪分画測定(PDFF)により推定される肝臓脂肪症は、ベースライン時の29.89% (SD: 7.85, ROI:14594 mm2)から12週目に16.63% (SD: 1.89, ROI: 2807 mm2)に減少し、これは25週目に12.52% (SD: 2.01, ROI: 2046 mm2)にさらに減少した。経時的に肝酵素のわずかな低減が観察された。ベースラインからの患者の肝臓サイズの低減は、肝臓スパンの身体検査によって明らかであった(図2)。それに応じて、右半身横隔膜の最上部から右葉の下端まで頭蓋垂直に測定した肝臓の長手径は、ベースライン時の352 mmから12週目の294 mmおよび25週目の270 mmに減少した。12週目の8.62 kPa (SD: 3.09)から25週目の6.57 kPa (SD: 1.90)への肝臓硬さの低減が認められた。肝臓硬さの測定の場合、ベースライン時の患者の激しい腹痛により、息止めやコイルの適切な位置を得ることができず、肝エラストグラフィーを完了できなかったため、ベースライン時の状態との比較は不可能であった。肝臓硬さは52週目で安定したままであった(5.9~7.7 kPa)。79週目(予定外の来院)の肝臓硬さの予備値は7.11 ± 3.12であった。患者の脾臓サイズも15.8 cmから12週目に14.1 cmおよび25週目に13.5 cmに減少した。
【0120】
血糖管理に関しては、REGN4461処置は、ベースライン時の9.5%から12週目の9.1%、および25週目の9.0%への、患者のHbA1cレベルのわずかな低減に関連していた。HbA1cレベルは25週目から79週目まで低下し、82週目および84週目には再び約10%まで上昇した。
【0121】
また、平均グルコース値と1日の総インスリン必要量も平行して低減した。-2週目から0週目の血中グルコースは255 mg/dLで、94週目まで平均約122.9の測定値であった。インスリン用量は、連続グルコースモニタリング(CGM)の読取値に基づいて調整された。患者はREGN4461処置中に低血糖を発症したため、低血糖イベントを防ぐためにインスリン用量の低減が必要とされた。しかしながら、全体として、脂肪異栄養症および1型糖尿病を有するこの複雑な患者では、血糖管理は最適ではないままであった。
【0122】
脂肪異栄養症患者におけるレプチン補充は、食後状態の自己申告による空腹感を軽減することから、REGN4461処置と空腹感との関連について調べた。空腹感スコアは、処置の最初の4週間中にわずかな一時的上昇を示し、その後ベースラインレベルに戻った。全体的空腹感アンケート(Global Hunger Questionnaire)によると、患者はベースライン時に中等度の空腹感を示し、12週目および25週目に軽度の空腹感を示した。主観的には、患者はベースライン時と比較して12週目には「かなり空腹感が少ない」、25週目には以前の週と比較して「やや空腹感が少ない」と感じていた。
【0123】
総エネルギー消費量のおよそ60%を占める安静時エネルギー消費量(REE)は、ベースライン時の2599 kcalから25週目に1799 kcalに減少し(図3)、25週目にも同じままであった。これは、全体的な食物摂取量の低減、または不安および疼痛の改善に関連したエネルギー消費量の変化に相当しうる可能性がある。また、呼吸商(RQ)はベースライン時の0.92から12週目に0.81および25週目に0.82に減少しており(図4)、これは炭水化物摂取量の減少、脂肪酸酸化の増加または新規脂質生成の低減に起因している可能性がある。
【0124】
患者は低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を呈していたため、LEPRアゴニストであるREGN4461による処置中、患者の思春期発育をモニタリングした。最初の25週間の処置期間中、患者のタナー段階はIVからV (生殖器)およびIIIからIV (乳房発育)へと進行した。25週目に、ベースラインからの増加が、卵胞刺激ホルモン(FSH; 1.4 mIU/mLから3.9および4.4 mIU/mLへの)、黄体形成ホルモン(LH; 0.2 mIU/mLから4.8および4.4 mIU/mLへの)、エストラジオール(20 pg/mL未満から29および64 pg/mLへの)、ならびにテストステロン(0.05 ng/mL未満から0.16および0.40 ng/mLへの)において観察された。25週目の時点で、患者は月経を開始していなかった。注目すべきは、患者の下垂体MRIは正常であった。
【0125】
患者の気分と日常活動への参加能力の大幅な改善が、REGN4461処置と関連していた。生活の質の主観的指標も改善を示した。抑うつのスクリーニング、診断、モニタリングおよび重症度測定のための多目的尺度であるPHQ-9 (患者健康アンケート(Patient Health Questionnaire)-9)スコアは、ベースライン時の13 (中等度の抑うつを示す)から4週目に4、16週目に4、その後25週目に2 (抑うつを示さない; 図5)に減少した。さらに、25週目にSF-36スコアの全ての要素で改善が観察された: 身体機能は85%から100%に、身体の健康による役割制限が25%から100%に、感情の問題による役割制限が67%から100%に、エネルギー/疲労が0%から50%に、精神的安定が24%から68%に、社会機能が50%から100%に、疼痛が37.5%から75%に、健康全般が25%から30%に、および健康変化が25%から100%に増加した(図6)。注目すべきは、治療中にベンラファキシンおよびブスピロンの用量がそれぞれ150 mgから75 mgに、および15 mgから2.5 mgに減量された。
【0126】
SF-36健康アンケートは、36項目の質問のみの多目的の短文式健康調査である。それにより、機能的な健康と幸福のスコア、ならびに心理測定に基づく身体的かつ精神的な健康の集約尺度、および嗜好に基づく健康効用指数の8尺度のプロファイルが得られる。これは、特定の年齢、疾患または処置群を標的とするものとは対照的に、一般的尺度である。
【0127】
全体として、REGN4461の忍容性は良好であった。注射部位からの軽度の出血を除き、注射部位反応は報告されなかった。初期の有害事象には、尿路感染、上気道感染、腹痛、下痢、嘔吐、吐き気、低血糖および高血糖が含まれた。これらの有害事象は、本薬物とは関係がないと考えられた。2例のSAEが記録された。低血糖および高血糖のエピソードは、それぞれREGN4461による処置後のインスリン感受性の変化および外因性インスリンの処方用量の減量に関連している可能性がある。
【0128】
(表1-3)疼痛および抑うつに対する薬物使用の記録(REGN4461の初回用量は0日目に投与)
^初回IV投薬日(0日目)から測定
処置医師によって正式に中止されたわけではないが、それ以上の定期的な投薬は必要とされなかった。患者によるオキシコドン使用の追加の例は、腎臓/肝臓の生検およびポート除去、ならびに尿路感染症に関連していた。
SAE = 重篤な有害事象
PO = 経口で(per os)
PRN = 必要に応じた、または必要な
PRNオキシコドンの使用(REGN4461の開始前)は、少なくとも12ヶ月間、週のうち少なくとも3日間、少なくとも2~3用量であった。
【0129】
339日目から704日目までの期間(最初のSC投薬日以降からAE日を含む)の有害事象(AE)の概要は以下の通りである:
・重篤でない有害事象: 432日目、副鼻腔感染症
・重篤でない有害事象: 507日目、尿路感染症
・重篤な有害事象(SAE): 536日目に、患者は腹痛を感じ始め、翌日にかけて悪化し、翌日地域の救急診療部に連れて行った。臨床検査では、上昇したトリグリセリド1103 mg/dL、ならびにAST 58 IU/LおよびALT 61 IU/Lが示された。造影剤による腹部および骨盤のCTスキャンを得たが、急性膵炎は明らかにならなかった。患者には、疼痛管理のためにオキシコドン、IVトラドール、およびIVケタミンが投与された。患者は高トリグリセリド血症と腹痛の懸念のために入院し、トリグリセリドを下げるためにIVインスリン点滴を受けた。トリグリセリドを繰り返し測定したところ537日目の夕方には586 mg/dL、538日目の朝には477 mg/dLであった。患者は538日目に疼痛管理のためにIVモルヒネを2回投薬された。患者の状態は改善し続け、539日目に退院した。
・重篤な有害事象(SAE): 628日目に患者が腹痛とそれに伴う吐き気を感じ始め、翌日にかけて悪化し、629日目に地域の救急診療部に連れて行った。臨床検査では、わずかに上昇したトリグリセリド332 mg/dL、AST 40 IU/L、およびALT 55 IU/Lが示された。629日目のリパーゼレベルは13で、正常範囲内であった。患者には、疼痛管理のためにオキシコドン、IVトラドール、およびIVケタミンが投与された。患者は高トリグリセリド血症と腹痛の懸念のために入院した。630日目の腹部超音波検査で正常な膵臓が示され、629日目のX線検査でイレウスまたは胃腸炎の懸念がある腸ガスパターンと大量の糞便量が示された。トリグリセリドを繰り返し測定したところ630日目の夕方には475 mg/dLであった。患者は依然として激しい腹痛を報告しており、疼痛管理のためにロキシコドン、炎症管理のためにトラドールを投与された。患者の状態は改善し、632日目に退院した。その後、患者は635日目にクリニックで試験担当医師の診察を受け、その時点で腹痛は完全に消失していた。
【0130】
どちらのSAEも、患者の病歴から予想されたことであり、REGN4461とは無関係であった。
【0131】
本明細書において引用される全ての参考文献は、各個々の刊行物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列もしくはGeneIDエントリ)、特許出願または特許が、参照により組み入れられるものと具体的かつ個別的に示されているのと同程度に、参照により組み入れられる。参照による組み入れに関するこの言明は出願人により、ありとあらゆる個々の刊行物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列もしくはGeneIDエントリ)、特許出願または特許に関連することが意図されており、それらの各々は、そのような引用が参照による組み入れに特化した言明に直接的に接していない場合であっても、明確に識別される。本明細書内の、もしあれば、参照による組み入れに特化した言明の包含は、参照による組み入れに関するこの一般的言明を何ら弱めるものではない。本明細書における参考文献の引用は、該参考文献が関連のある先行技術であることを認めると意図されるものではなく、これらの刊行物または書面の内容または日付に関していかなる承認を構成するものでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023543409000001.app
【国際調査報告】