(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】温室効果ガスの排出の削減のための循環資源を用いた無機化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 11/18 20060101AFI20231006BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20231006BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20231006BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20231006BHJP
B01D 53/80 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
C01F11/18 B
C04B14/28
C04B22/10
B01D53/62 ZAB
B01D53/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518270
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 KR2021012593
(87)【国際公開番号】W WO2022060086
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0121282
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513268690
【氏名又は名称】ヒュンダイ オイルバンク カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Hyundai Oilbank Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヨンクォン
(72)【発明者】
【氏名】スン,デジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョルヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヘウォン
【テーマコード(参考)】
4D002
4G076
4G112
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA01
4D002DA05
4D002DA11
4D002DA12
4D002FA02
4D002GA01
4D002GB08
4D002GB11
4G076AA16
4G076AB28
4G076BA30
4G076BC02
4G076BD02
4G076BE11
4G076CA02
4G112MB06
(57)【要約】
本発明は、温室効果ガスの排出の削減のための循環資源を用いた無機化合物の製造方法に関し、より詳細には、産業廃棄物である脱硫副産物を媒介体として、産業現場で発生する二酸化炭素を捕捉することにより、別途の乾燥工程及び炭酸化促進のためのpH調整のための添加剤を使用しなくても、連続的に炭酸化無機化合物を製造することができ、既存の工程に比べて温室効果ガスと工程コストを大幅に削減することができる無機化合物の製造方法に関するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硫石膏と水を混合して、脱硫石膏スラリーを製造するスラリー製造工程;及び
前記脱硫石膏スラリーに二酸化炭素含有ガスを供給し、二酸化炭素を炭酸化反応で捕捉して、無機化合物を製造する無機化合物製造工程;
を含み、
前記製造された無機化合物は、乾燥固体粉末の形態である循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【請求項2】
前記脱硫石膏は、CFBCボイラーで製造され、CaO 40~80重量%及びSO
3 15~35重量%を含む請求項1に記載の循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【請求項3】
前記スラリー製造工程の脱硫石膏と水は、25~45:55~75の重量比で混合される請求項1に記載の循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【請求項4】
前記スラリー製造工程において、pH調整のための添加剤を使用しない請求項1に記載の循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【請求項5】
前記二酸化炭素含有ガスは、循環流動層燃焼ボイラーの排出ガスである請求項1に記載の循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【請求項6】
前記無機化合物製造工程において、二酸化炭素含有ガスを熱源として用い、工程温度を100~150℃に維持する請求項1に記載の循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【請求項7】
前記無機化合物製造工程において、二酸化炭素含有ガスと脱硫石膏スラリーとをクロスフローで接触して炭酸化反応を行う請求項1に記載の循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【請求項8】
前記無機化合物製造工程において、二酸化炭素含有ガスと脱硫石膏スラリーとを同方向流で接触して炭酸化反応を行う請求項1に記載の循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【請求項9】
前記無機化合物は、石膏と炭酸カルシウムとを含む請求項1に記載の循環資源を用いた無機化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室効果ガスの排出の削減のための循環資源を用いた無機化合物の製造方法に関し、より詳細には、産業廃棄物である脱硫副産物を媒介体として、産業現場で発生する二酸化炭素を捕捉することにより、別途の乾燥工程及び炭酸化促進のためのpH調整のための添加剤を使用しなくても、連続的に炭酸化無機化合物を製造することができ、既存の工程に比べて温室効果ガスと工程コストを大幅に削減することができる無機化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内の温室効果ガス排出量は、2007年から2017年まで年間平均で6億62万トンのCO2eq.であり、エネルギー及び産業工程が94%以上を占めている。中でも二酸化炭素は、地球温暖化係数(GWP)が1と他の温室効果ガスに比べて低いものの、二酸化炭素の発生量は6億400万トンCO2eq.に達し、全発生量の91%以上を占め、地球温暖化に大きな影響を与えている。また、2017年は2007年に比べて発生量が23%増加し、時間の経過とともに深刻になっていた。
【0003】
産業現場では、工程のエネルギー源として電気及び蒸気を使用され、ボイラーは、このエネルギー源を生産するために稼動される。ボイラーは主に化石燃料を使用するが、化石燃料は硫黄が含まれているため、燃焼すると硫黄酸化物が生成される。大気中への硫黄酸化物の排出は厳格に管理されており、これらの規制を満たすために大気中に排出される前に捕捉される。一つ方法は、石灰石を使用して石膏に変換することである。
CaCO3(S)→CaO(S)+CO2(g)(>700℃)
CaO(S)+SO2(g)+1/2O2(g)→CaSO4(S)
【0004】
石灰石は、硫黄酸化物を捕捉し、大気への排出を抑制する。しかし、二酸化炭素を排出することで地球温暖化に寄与しており、その重要性が相殺されている。
一方、燃料の燃焼時に発生する硫黄酸化物は、生石灰粒子の外表面と激しく反応して石膏となり、粒子内部は生石灰のまま工程外に排出される。未反応の生石灰は、二酸化炭素を捕捉できる反応物になる。生石灰は、水との水和反応により消石灰となり、ボイラー排ガス中の二酸化炭素と反応して炭酸化された無機化合物として生成される。
CaO+H2O→Ca(OH)2
Ca(OH)2+CO2→CaCO2+H2O
【0005】
この無機化合物は、温室効果ガスの削減技術を応用した環境にやさしい素材であり、セメントやコンクリートの使用量の一部を置き換えることで産業現場で再使用できるなど付加価値の高いものである。
【0006】
カルシウムなどの炭酸化反応により二酸化炭素の排出を削減する従来技術としては、次のようなものがある。
【0007】
特許文献1は、廃コンクリート微粉末を活用した二酸化炭素を捕捉する方法に関するもので、D/L比率の低い反応器の底部に廃コンクリート微粉末スラリーと二酸化炭素を注入して湿式炭酸化反応を行い、反応終了物をスラリー状態で反応器上部から排出し、比重差による炭酸化物質分離工程を行う。この技術は連続反応であり、非連続反応に比べて生産量は多くなるが、二酸化炭素注入器で炭酸化が発生し、噴射ノズルが詰まるなど、不安定な動作につながる可能性があった。
【0008】
特許文献2は、湿式工程中の炭酸化ガス注入ノズルの目詰まりを抑制し、大容量の工程構成を可能にする連続炭炭酸化方法に関する。反応器に二酸化炭素を充填し、炭酸化対象溶液を反応器の上部から小滴にして落下させる方法に関するものである。しかし、炭酸化するカチオンを大量に注入して二酸化炭素の捕捉量を増やすと、二酸化炭素がHCO3
-に変化し、溶解度の高い重炭酸化合物(Ca(HCO3)2)が生成される。工程排出後に圧力を下げると、二酸化炭素が再び脱離し(Ca(HCO3)2→CaCO3+CO2+H2O)、再び二酸化炭素が発生するため、二酸化炭素の捕捉効率が低下する。これを防止するためには、pH調整のために塩基性添加剤を追加添加する必要があり、工程コストが上昇する。
【0009】
また、前記従来技術では生成物中に水分が含まれるのが一般的であるため、固体粉末として得る際には、ろ過及び乾燥工程が別途必要である。また、乾燥用熱源として燃料を再利用することで温室効果ガスが発生するため、温室効果ガス削減の価値が相殺されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国 特許第10-1777142号
【特許文献2】韓国 特許第10-1395796号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、前記した従来技術の問題点を解決するためのものであり、産業廃棄物である脱硫副産物を媒介体として、産業現場で発生する二酸化炭素を捕捉することにより、別途の乾燥工程及び炭酸化を促進するためのpH調整のための添加剤を使用しなくても、連続的に炭酸化無機化合物を製造することができ、既存の工程と比較して温室効果ガスと工程コストを劇的に削減することができる無機化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した技術的課題を達成するために、本発明は、脱硫石膏と水を混合して、脱硫石膏スラリーを製造するスラリー製造工程;及び前記脱硫石膏スラリーに二酸化炭素含有ガスを供給し、二酸化炭素を炭酸化反応で捕捉して、無機化合物を製造する無機化合物製造工程;を含み、前記製造された無機化合物は、乾燥固体粉末の形態である循環資源を用いた無機化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の循環資源を用いた無機化合物の製造方法によれば、炭酸化反応により生成された無機化合物が固体粉末として排出されるため、別途の乾燥工程や炭酸化を促進するためのpH調整のための添加剤の投入を必要としない。また、排出ガスの温度を利用して反応温度を維持するため、温室効果ガスの発生を最小限に抑えながら、既存の工程に比べて工程コストを最小限に抑えることができ、製品原単位を大幅に改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の無機化合物の製造方法を実験室規模で適用した実施例1の炭酸化反応器の模式図である。
【
図2】本発明の無機化合物の製造方法を商業工程規模で適用した実施例2の炭酸化反応器の模式図である。
【
図3】実験室規模で適用された比較例1の湿式炭酸化反応器の概略図である。
【
図6】実施例1の炭酸化反応後に得られた無機化合物のSEM/EDS分析結果である。
【
図7】実施例1の炭酸化反応後に得られた無機化合物のX線回折分析の結果である。
【
図8】実施例2の炭酸化反応後に得られた無機化合物のX線回折分析の結果である。
【
図9】比較例1の炭酸化反応後に得られた無機化合物のX線回折分析の結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本開示ついて詳細に説明する。
【0016】
本発明の循環資源を用いた無機化合物の製造方法は、脱硫石膏と水を混合して、脱硫石膏スラリーを製造するスラリー製造工程;及び前記脱硫石膏スラリーに二酸化炭素含有ガスを供給し、二酸化炭素を炭酸化反応で捕捉して、無機化合物を製造する無機化合物製造工程;を含み、前記製造された無機化合物は、乾燥固体粉末の形態である。
【0017】
本発明の無機化合物の製造方法は、脱硫石膏と水を混合して、脱硫石膏スラリーを製造するスラリー製造工程を含む。
【0018】
スラリー製造工程で使用される脱硫石膏は、産業副産物であり、一実施形態では、CFBC(circulating fluidized bed combustion、循環流動層燃焼)ボイラーで製造された脱硫石膏を使用することができる。
【0019】
特に限定されないが、前記脱硫石膏は、CaO 40重量%以上、例えば40~80重量%を含むことができ(ここで、CaOはCaSO4も含む)、SO3 15~35重量%を含むことができる。SO3を含むカルシウム化合物は、安定状態で炭酸化反応に関与せず、生石灰成分のみが炭酸化反応に関与する。
【0020】
前記スラリー製造工程における脱硫石膏と水は、25~45:55~75の重量比、例えば、28~42:58~72、30~40:60~70又は32~38:62~68の重量比で混合することができる。本発明の無機化合物の製造方法では、前記重量比で脱硫石膏スラリーを製造すると、二酸化炭素の捕捉効率が高いため、スラリー製造工程においてpH調整のための添加剤を用いない。重量比が前記範囲外であると、二酸化炭素と脱硫石膏スラリーとの炭酸化反応が円滑に進まず、無機化合物の製造や温室効果ガスの削減効果が低下する。
【0021】
本発明の無機化合物の製造方法は、前記脱硫石膏スラリーに二酸化炭素含有ガスを供給し炭酸化反応により二酸化炭素を捕捉して、無機化合物を製造する無機化合物製造工程を含む。
【0022】
前記無機化合物製造工程において、前記二酸化炭素含有ガスは、循環流動層燃焼ボイラーの排出ガスであってもよい。二酸化炭素含有ガスとして産業副産物である循環流動層燃焼ボイラーの排出ガスを使用することにより温室効果ガスを削減することができ、後述するように、工程中のガスの熱エネルギーを利用することにより、工程コストを最小限に抑えることができる。
【0023】
一実施形態において、ボイラー排出ガス組成は以下の通りである。二酸化炭素は、燃料の燃焼と脱硫反応のための石灰石から生成され、排出ガスの約15~20vol%である。窒素は、70~75vol%、水分と酸素は、それぞれ3~6vol%、2~5vol%である。SOx、NOxは、環境規制に基づきTMSで管理している。
【0024】
一実施形態において、前記無機化合物製造工程において、二酸化炭素含有ガスを熱源として使用して、工程温度を100~150℃に維持することができる。また、前記無機化合物製造工程では、二酸化炭素含有ガスと脱硫石膏スラリーが、クロスフローまたは同方向流で接触させることにより炭酸化反応を生じさせてもよい。
【0025】
本発明の無機化合物の製造方法において、前記無機化合物製造工程が行われる炭酸化反応器は、排煙脱硫(FGD)反応器の形態であり、クロスフローまたは同方向流構造の噴射方式であり、ボイラー排出ガスは、下から上に流れる(
図2参照)。反応温度は、排出ガスである二酸化炭素を含むガスによって100~150℃に維持されている。脱硫石膏スラリーは、撹拌機付き貯蔵タンクで混合され、炭酸化反応器に投入される前に、加熱することができる。脱硫石膏スラリーは、噴射ノズルを介して炭酸化反応器に噴射され、また、良好な噴射と小さな液滴が形成されるように、ノズルに霧化空気を注入することができる。
【0026】
無機化合物製造工程において、前記条件下で、脱硫石膏スラリーに含まれた消石灰が二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなり、注入された水分は、炭酸化反応の際に発生する熱と二酸化炭素含有ガス(ボイラー排出ガス)の熱により気化し、蒸気となって排出される。したがって、本発明で製造された無機化合物は、乾燥固体粉末の形態であり、別途の乾燥工程を必要としないため、従来の技術と比較して工程コストを低減させることができる。変換された無機化合物は、水分が除去された固体粉末の形態でバグハウスに貯蔵することができる。前記無機化合物は、石膏と炭酸カルシウムを含む。
【0027】
以下の実施例及び比較例を通じて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0028】
実施例
実施例1
実験室規模では、クロスフローノズル噴射型方式の円筒状の炭酸化反応器を使用して二酸化炭素を捕捉し、反応器に脱硫石膏スラリーとガスを注入した(
図1参照)。
【0029】
脱硫石膏スラリーは、脱硫石膏と水の重量比がそれぞれ25~45:55~75になるようにスラリータンク1で脱硫石膏と水混合して製造した。磁性撹拌機2を使用して、生石灰粒子が水と十分に混合され、水和反応が促進されるようにした。注入前に、スラリータンク窒素で1.5~2.0bar.gに加圧6し、反応器へのスラリーの注入による温度低下を抑えるために95℃に予熱した。スラリーは、円筒型反応器4の側面から噴霧状に注入した。
【0030】
二酸化炭素7を110~120℃に予熱3し、円筒型反応器の上部から3bar.gの圧力で注入した。
【0031】
炭酸化反応器は、熱ジャケット5と予熱された二酸化炭素ガスによって110~120℃に維持された。脱硫石膏スラリーと二酸化炭素を反応器に注入した後、生成物を反応器9の底に集めた。炭酸化反応器の上部8から二酸化炭素と蒸発水を排出した。
【0032】
脱硫石膏が炭酸化反応により二酸化炭素を捕捉するかどうかを確認するために、SEM/EDS、X線回折分析を行った(
図6及び
図7参照)。脱硫石膏のX線回折分析及びSEM/EDS分析結果(
図4及び
図5参照)を比較することにより、脱硫石膏中の生石灰が二酸化炭素を捕捉し、炭酸カルシウム(結晶形:方解石)が生成されたことが確認した。
【0033】
実施例2
二酸化炭素捕捉のための商業施設規模の操作では、同方向流のノズル噴射型の炭酸化反応器が使用され、脱硫石膏スラリーとガスを反応器に注入した(
図2参照)。
【0034】
脱硫石膏スラリータンク11に脱硫石膏と水を重量比25~45:55~75で加え、撹拌機12を使用して、脱硫石膏中の生石灰が水とよく接触させ、水和反応を生じさせた。水和反応により得られた消石灰を含む脱硫石膏スラリーを、ポンプ13により3~5bar.gの圧力でノズル14を介して炭酸化反応器15に移送しており、噴射角40~60゜であった。炭酸化反応器へのスラリーの均一な注入を確実にするために、噴霧空気18を2.5~4.5bar.gの圧力でノズルに注入した。
【0035】
反応温度は、CFBCボイラー排出ガス17の流れにより130~150℃に維持された。CFBCボイラー排出ガス内に含まれた二酸化炭素は、ノズルから噴射される脱硫石膏スラリーに含まれた消石灰との炭酸化反応により炭酸カルシウムに変換される。
【0036】
変換された炭酸カルシウムを含む無機化合物は、ボイラー排出ガス流19に沿って炭酸化反応器の上部で排出され、バグハウスに移送された。このうち、無機化合物を含む固形分は、バグハウスの下部20に排出され、反応後の排出ガスは上部21に排出され、煙突を介して大気に排出された。このとき、消石灰の製造に使用した水は、炭酸化反応中の反応器の温度により気化し、反応後の排出ガスに含まれて大気中に放出された。このように生成された無機化合物は、水分を含まない乾燥固体粉末として得ることができた。
【0037】
脱硫石膏中の生石灰が炭酸化反応器を通して二酸化炭素を捕捉しているかどうかを確認するために、X線回折分析を行った(
図8参照)。炭酸化反応後、生石灰に対応するピークが減少し、炭酸カルシウムのピークが大きく強化され、炭酸化反応が進行していることが確認された。
【0038】
比較例1
すでに一般的な工程である湿式工程を適用して、実験室規模の二酸化炭素捕捉実験を行った(
図3参照)。脱硫石膏スラリータンク36に脱硫石膏と水を重量比25~45:55~75で加え、磁性撹拌機35を使用して室温で撹拌し、脱硫石膏スラリー中にガス注入ノズル34を位置させて二酸化炭素37を注入した。この時点で、炭酸化反応を促進するために、湿式炭酸化反応器を0.8~1.2bar.gで加圧31、33し、二酸化炭素を注入したが、気体の出口を塞いで、炭酸化反応により消耗された二酸化炭素と同じ量の二炭酸化炭素を直ちに注入した。二酸化炭素の注入がなくなった時点で反応を停止し、ボールフローメータ32を使用して注入の程度を測定した。反応終了後、ろ過及び乾燥工程を経て生成物を固体粉末として得た。
【0039】
脱硫石膏が炭酸化反応により二酸化炭素を捕捉しているかどうかを確認するために、X線回折分析を行った(
図9参照)。炭酸化反応後、生石灰に対応するピークが除去され、炭酸カルシウムのピークが大きく強化され、炭酸化反応が進んでいることが確認された。
【0040】
以上の実験から明らかなように、本発明の無機化合物の製造方法では、乾燥された固体形態の無機化合物を製造できるため、別途の乾燥工程や炭酸化促進のためのpH調整のための添加剤を用いることなく、連続的に工程を行うことができる。この方法で無機化合物を製造することができ、既存の工程と比較して、工程コストを大幅に削減することができることを確認した。
【0041】
しかし、比較例1で行った従来の湿式法による無機化合物製造の場合、二酸化炭素の注入器で炭酸化が起こり、注入ノズルが詰まるため操業が不安定であった。また、別途のろ過・乾燥工程が必要である。このように、工程の経済性及び効率性が相対的に低下することが確認された。
【国際調査報告】