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特表2023-543436固定化活性媒体の高品質ブロックを調製するための方法及び押出機
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  • 特表-固定化活性媒体の高品質ブロックを調製するための方法及び押出機 図1
  • 特表-固定化活性媒体の高品質ブロックを調製するための方法及び押出機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】固定化活性媒体の高品質ブロックを調製するための方法及び押出機
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/68 20190101AFI20231006BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20231006BHJP
   B29C 48/80 20190101ALI20231006BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20231006BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20231006BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20231006BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
B29C48/68
B29C48/395
B29C48/80
B29C44/00 E
C08J5/00 CEW
C08L27/16
C08K3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518319
(86)(22)【出願日】2021-09-20
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 US2021051029
(87)【国際公開番号】W WO2022061206
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】20201095891.4
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】63/127,477
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チアリン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】アザーズ・エイ・バホラ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
4F214
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA26
4F071AB03
4F071AE22
4F071AH02
4F071BB06
4F071BC06
4F207AA16
4F207AB18
4F207AB24
4F207AE10
4F207AG20
4F207AH03
4F207AL01
4F207AR08
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA11
4F207KF12
4F207KK12
4F207KK43
4F207KK48
4F207KL33
4F207KM04
4F207KM14
4F214AA16
4F214AB18
4F214AB24
4F214AE10
4F214AG20
4F214AH03
4F214AL01
4F214AR08
4F214AR12
4F214UA11
4F214UA22
4F214UC02
4F214UC30
4F214UN12
4F214UN43
4F214UN48
4F214UP31
4J002BD141
4J002DA016
4J002GD00
4J002GQ00
(57)【要約】
バインダーとしてポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)と、活性炭などの吸着剤とを使用してカーボンブロックを製造するための方法及び押出機が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性媒体とPVDFポリマーバインダーとのブロックを作製するための押出機であって、飛行加熱帯及び非飛行成形帯を含む押出機バレルを備え、前記非飛行成形帯は冷却セクションを含み、
前記加熱帯は前記成形帯よりも長く、
前記押出機バレルの内径「D」は、前記非飛行成形帯でD1からD2に増加し、ここで、D1とD2との直径の変化は0.2%~1.0%の間であり、
前記成形帯の長さに対する前記加熱帯の長さの比は20:1~5:4である、
押出機。
【請求項2】
前記成形帯における直径D1からD2への増加は、0.2~0.9%、好ましくは0.35%~0.70%である、請求項1に記載の押出機。
【請求項3】
直径D1からD2への増加は0.4%~0.65%である、請求項2に記載の押出機。
【請求項4】
1からD2への直径の変化は、前記成形帯の長さの10%~100%、好ましくは30%~85%、好ましくは40%~75%にわたって存在する、請求項1に記載の押出機。
【請求項5】
前記成形帯の長さに対する前記加熱帯の長さの比は、好ましくは10:1~5:4である、請求項1に記載の押出機。
【請求項6】
前記加熱帯は長さ0.25~2.0メートル、好ましくは長さ0.5~1.5メートルであり、1~10個の加熱セクションを含む、請求項1に記載の押出機。
【請求項7】
前記成形帯の長さは0.01~1メートル、好ましくは0.02~0.5メートルである、請求項1に記載の押出機。
【請求項8】
前記成形帯の長さは0.05~0.2メートル、好ましくは0.05~0.15メートルである、請求項1に記載の押出機。
【請求項9】
前記冷却セクションの長さは0.01~1メートル、好ましくは0.02~0.5メートルである、請求項1に記載の押出機。
【請求項10】
前記冷却セクションの長さは0.05~0.2メートル、好ましくは0.05~0.15メートルである、請求項1に記載の押出機。
【請求項11】
前記冷却セクションは、長さで前記成形帯の20~100%、好ましくは50~99%を構成する、請求項1に記載の押出機。
【請求項12】
前記飛行帯における前記バレルの内径「D」は、1cm~50cm、より好ましくは3cm~25cmである、請求項1に記載の押出機。
【請求項13】
前記飛行帯における前記バレルの内径「D」は、1cm~25cm、好ましくは3cm~6cmである、請求項1に記載の押出機。
【請求項14】
前記押出機はフィーダーホッパーをさらに備え、前記フィーダーホッパーはオーガを含む、請求項1に記載の押出機。
【請求項15】
前記押出機は外部背圧装置をさらに備える、請求項1に記載の押出機。
【請求項16】
前記外部背圧装置は、プーラー、おもり、又は前記ブロックに取り付けられるスプリングとフィンガーで構成されるドーナツ装置からなる群から選択される、請求項15に記載の押出機。
【請求項17】
活性媒体とPVDFポリマーバインダーとのブロックの押出方法であって、PVDFポリマー及び活性媒体を含むPVDFポリマーバインダーを提供し、前記PVDFポリマーバインダー及び活性媒体を請求項1に記載の押出機に供給し、及び得られたPVDFポリマーバインダーと活性媒体とのブレンドを押し出して固定化媒体のブロックを形成することを含む、方法。
【請求項18】
カーボンブロックの押出方法であって、
PVDFポリマーバインダー及び活性媒体を提供し、
押出機バレルを備える押出機を提供し、ここで、前記押出機バレルは、飛行加熱帯及び非飛行成形帯を含み、前記成形帯は冷却セクションを含み、前記成形帯の長さに対する前記加熱帯の長さの比は20:1~5:4であり、前記押出機バレルの内径「D」は、前記成形帯でD1からD2に増加し、ここで、D1とD2との直径の変化は0.2%~0.9%の間であり、
前記PVDFポリマーバインダー及び活性媒体を押出機に供給し、
前記PVDFポリマーバインダーと活性媒体とのブレンドを押し出して固定化媒体のブロックを形成すること
を含む方法。
【請求項19】
PVDFポリマーを含むPVDFポリマーバインダー及び活性媒体が、前記押出機に供給される前にブレンドされている、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記加熱帯の温度は、前記バインダーの溶融温度より20℃低い温度から、バインダーの溶融温度より80℃高い温度までである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
前記加熱帯の温度は130~260℃、好ましくは170~230℃である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項22】
前記バインダーは、5~80kP、好ましくは15~50kPの溶融粘度を有するVDF/HFPコポリマーを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項23】
PVDFポリマーは、5重量%~20重量%のHFPを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項24】
活性媒体とポリマーバインダーとの組み合わせは、少なくとも2重量%以上の微粒子を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項25】
前記PVDFポリマーは、平均離散粒度として50~500nmのサイズの離散PVDFポリマー粒子及び前記離散ポリマー粒子の凝集体を含み、前記凝集体は、走査型電子顕微鏡で測定したときに、サイズが1~150マイクロメートル、好ましくは3~50マイクロメートルである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項26】
前記PVDFポリマーバインダーは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、最大100重量%の微粒子を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項27】
前記吸着剤は活性炭を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項28】
前記バインダーは、前記バインダーと前記吸着剤の総重量に基づいて、1~30重量パーセント、好ましくは1~10重量パーセントを占める、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項29】
活性媒体とPVDFポリマーバインダーとの前記ブロックは、0.95g/ccまで、好ましくは0.50~0.90g/cc、より好ましくは0.65~0.85g/ccの密度を有する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項30】
前記押出機は、活性媒体とPVDFポリマーバインダーとのブロックを、1分当たり0.5cm~50cmの押出ブロック、好ましくは0.5~30cm/分の速度で製造することができる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項31】
前記加熱帯の長さは0.25~2m、好ましくは0.5~1.5mであり、
前記成形帯の長さは0.075~0.20メートルであり、前記冷却セクションは前記成形帯の27~72%を構成し、前記押出機の前記バレルに沿ったD1からD2への膨張は0.3%~0.7%である、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項32】
押出ブロックに背圧を加えることをさらに含む、請求項17又は18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダーとしてポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)と、活性炭などの活性媒体を使用して、活性媒体のブロックを製造するための方法及び押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
固定化された活性媒体のブロックは、ブロック、カーボンブロック、又はモノリスとも呼ばれ、飲料水から、塩素、味、臭気、及び微生物や重金属などの他の浮遊又は溶解した汚染物質を除去するための水ろ過用途のフィルターとして確立されている。ブロックは、廃水のろ過、化学反応用の触媒、バッテリーやスーパーキャパシター用の電極、液体や気体の輸送、保管、分離、洗浄などの他の用途にも使用されている。
【0003】
ブロックは通常、活性炭、グラファイト、モレキュラーシーブ、金属及び誘導体、殺菌剤、重金属除去剤などの活性媒体粒子又は繊維でできている。ブロックには、活性媒体の粒子間の相互接続を可能にするポリマーバインダーなどの1つ以上のバインダーも含まれている。ポリマーバインダーは、以下を含むほぼあらゆる熱可塑性材料で構成できる:ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のポリビニル;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリアミドなど。これらの材料の中で、ポリエチレンとポリエステルが市場で最も広く使用されている。
【0004】
ブロックを作製するには主に2つの方法がある。1つは焼結・圧縮成形によるもの、もう1つは連続押出技術によるものである。押出は、ブロックを製造するためのよりコスト効率の高い方法であると考えられている。
【0005】
Arkema社は、PVDFポリマーバインダーのKyblock(登録商標)シリーズをブロック産業に導入し、バインダーの添加量の低減や、活性媒体粒子、特に微粒子への接着力の向上などの利点を実証した。水ろ過用途では、PVDFポリマーバインダーは塩素や重金属などの汚染物質の除去性能も向上させる。PVDFポリマーバインダーは、ガス輸送、保管、分離、洗浄などの他のブロック用途でも性能の向上をもたらす。
【0006】
本発明のブロックはPVDFポリマーバインダーを含む。PVDFポリマーバインダーには、単一のPVDFポリマー、2つ以上のPVDFポリマーのブレンド、並びにPVDFポリマーとポリエチレン、ポリエステル及びポリアミドなどの他のポリマーとのブレンドが含まれる。
【0007】
1つ以上のPVDFポリマーバインダーがブロックの組成物に配合される場合、それらは通常、ポリエチレン及びポリエステルバインダーで作られた従来のブロックに使用されるプロセス及び装置におけるドロップイン交換を可能にしない。したがって、エンドユーザーにとって、特に押出技術を使用してブロックを製造するエンドユーザーにとって、自社製品にPVDFポリマーバインダーを適用することは困難である。
【0008】
本発明は、活性炭やPVDFポリマーバインダーなどの活性媒体粒子を含むブロックを製造する際の押出の問題を解決し、押出プロセスの容易さとスループット、さらにはブロックの品質と性能を向上させるための独創的な押出機に関する。
【0009】
PVDFポリマーバインダーを使用したブロックの押出中に遭遇する一般的な問題には、1)活性媒体とPVDFバインダーの粒子ブレンドの押出機バレルへの供給、2)バインダーの不完全な硬化、3)押出機バレルの詰まり(ブロックがバレル内でロックされる)が含まれる。材料の微粒子ブレンドの供給に関する問題は、粉末材料の流れに大きく関係しており、PVDFバインダーはサブミクロンの離散粒度が小さいため、粉末ブレンド全体の流れを損なう傾向がある。
【0010】
ブロックの不完全な硬化は、典型的には、PVDFポリマーバインダーの溶融温度が、一般にPE及びポリエステルバインダーの溶融温度よりも高く、110℃~180℃の範囲であることに起因する。硬化とは、活性媒体粒子がバインダーによって結合されることを意味する。PVDFポリマーを使用して製造されたブロックは通常、押出機の加熱帯でのより高い温度及び/又はより長い滞留時間を必要とする。これにより、例えば、国際公開第1992/0173272号パンフレットに記載されているような、非飛行の短い加熱帯を有するタイプの押出機を使用する場合、部分的に硬化したブロックが得られる可能性がある。
【0011】
押出機バレルの詰まりの問題は通常、押出機バレルの壁に対するブロックの高い摩擦が原因である。この問題は特に、100ミクロン未満、好ましくは20ミクロン未満、最も好ましくは10ミクロン未満の小さな活性媒体粒子を含むブロックで発生する。PVDFポリマーバインダーは、このようなブロックに主に使用されている。例えば、重金属の除去に小さな活性媒体粒子を使用する健康強調表示フィルター用の活性炭ブロックの場合である。詰まりの問題は、バインダーの配合量が通常20%未満、好ましくは16%未満であるため、PVDFポリマーバインダーを含むブロックでも発生する。これは、ポリマーバインダーが潤滑剤として機能し、押出機の壁との摩擦を最小限に抑えるのに役立つためである。
【0012】
米国特許出願公開第2016/0121249号及び国際公開第2014/055473号は、活性炭ブロックフィルタの調製におけるバインダーとして熱可塑性バインダー(PVDF)を使用すること、及び圧縮成形/焼結技術又は押出によってそれを調製する方法を教示している。
【0013】
国際公開第1992/017327号は、固体複合物品を形成するために押出プロセスを使用することを記載している。活性炭とポリエチレンバインダーのブレンドからブロックを製造するための押出機が開示されている。PVDFはバインダーの候補としては言及されていない。Koslowは、バレル内に短い非飛行加熱帯を備えた押出機を教示しており、加熱帯はダイ(冷却)帯よりも短い。また、加熱帯を長くすると、押出機のバレル壁とブロックとの摩擦が大きくなり、バレルの詰まりを引き起こすため、機能しないことも教示している。
【0014】
国際公開第1992/017327号に記載されている押出機は、PVDFポリマーバインダーを含むブロックにはあまり適していない。PVDFポリマーの融解温度は110℃~180℃と比較的高いため、短くて飛行のない加熱帯では、通常、PVDFポリマーバインダーを含むブロックを完全に硬化させるのに十分な熱伝達が得られない。したがって、このような押出機の使用は非常に低い押出速度に限定される。
【0015】
PVDFポリマーバインダーを含むブロックの詰まり、すなわち固着の問題は、国際公開第92/17327号に記載されている押出機、及びより長い加熱帯及び/又は飛行加熱帯を備えた押出機設計を含むすべての既存の押出機設計で発生する傾向がある。PVDFポリマーバインダーを含むブロックの詰まりは、バインダーの配合量が30%未満、好ましくは18%未満、最も好ましくは12%未満であるために発生する可能性がある。なぜなら、バインダーの添加量が少ないと、活性媒体粒子の含有量が高くなり、押出機バレルとの摩擦が高くなるからである。さらに、ハイエンドのCTO浄水フィルターや健康強調表示浄水フィルターなどの多くの用途では、0.55g/cm3を超える、好ましくは0.65を超える、最も好ましくは0.75を超える高いブロック密度が必要である。さらに、そのようなブロックは、典型的には、100ミクロン未満、好ましくは50ミクロン未満、最も好ましくは10ミクロン未満の微細な活性媒体粒子を10%超、好ましくは20%超、より好ましくは30%超含む。より高いブロック密度と微細な活性媒体粒子の割合の両方も、押出機バレルとの摩擦の増加に寄与し、詰まりの問題を引き起こす可能性がある。
【0016】
図1に示すような標準的な押出機には、飛行供給帯があり、通常は重力を利用して材料をフィーダーホーパーからバレルに供給するフィーダーが装備されている。少なくとも2重量%の活性材料及び/又はポリマーバインダーの微粒子を含む、活性媒体とポリマーバインダーとの粒子ブレンドは、流動性が劣る傾向がある。流れが悪いと、押出機への供給が不均一になる。微粒子の粒度は、50ミクロン未満、好ましくは20ミクロン未満、最も好ましくは10ミクロン未満である(10ミクロン以上ではロータップふるい振動機によって試験され、10ミクロン未満ではマイクロトラック粒子分析器によって試験される)。PVDFバインダーは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、最大100%の微粒子を含むことができる。特に、媒体のアクセス可能な表面積を最大化することが重要であるハイエンドのろ過用途では、活性媒体粒子に微粒子が含まれ得る。活性媒体の典型的な微粒子には、「活性炭微粒子」、金属還元剤、殺菌剤などが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
PVDFポリマーバインダーを含むブロックの押出には依然として問題が残っており、既存のさまざまな押出装置を使用すると、活性媒体とPVDFバインダーのブレンドの連続供給が安定せず、ブロックが部分的にしか硬化しなかったり、ブロックが内部に閉じ込められて押出機のバレルが詰まったりする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
出願人らは、バレルと、飛行加熱帯、及びバレルの直径がその帯全体にわたって一定ではないように変更される成形帯とを組み合わせる、新規な押出機を設計した。このような新規な押出機設計により、PVDFポリマーバインダーを含むブロックを製造するプロセスが改善され、押出機バレルが詰まらない。
【0019】
本発明は、ポリ(フッ化ビニリデン)ポリマーバインダーと活性炭粒子などの活性媒体から作られる高品質ブロック製品を製造するための調製方法及び押出機、より具体的には、押出プロセス及び押出機に関する。
【0020】
本発明の態様
態様1.活性媒体とPVDFポリマーバインダーとのブロックを作製するための押出機であって、飛行加熱帯及び非飛行成形帯を含む押出機バレルを含み、前記非飛行成形帯は冷却セクションを含み、
前記加熱帯は前記成形帯よりも長く、
前記押出機バレルの内径「D」は、前記非飛行成形帯でD1からD2に増加し、ここで、D1とD2との直径の変化は0.2%~1.0%の間であり、
前記成形帯の長さに対する前記加熱帯の長さの比は20:1~5:4である、
押出機。
【0021】
態様2.前記成形帯における直径D1からD2への増加は、0.2~0.9%、好ましくは0.35%~0.70%である、態様1に記載の押出機。
【0022】
態様3.直径D1からD2への増加は0.4%~0.65%である、態様1に記載の押出機。
【0023】
態様4.D1からD2への直径の変化は、前記成形帯の長さの10%~100%、好ましくは30%~85%、好ましくは40%~75%にわたって存在する、態様1~3のいずれか1項に記載の押出機。
【0024】
態様5.前記成形帯の長さに対する前記加熱帯の長さの比は、好ましくは10:1~5:4である、態様1~4のいずれか1項に記載の押出機。
【0025】
態様6.前記加熱帯は長さ0.25~2.0メートル、好ましくは長さ0.5~1.5メートルであり、1~10個の加熱セクションを含む、態様1~6のいずれか1項に記載の押出機。
【0026】
態様7.前記成形帯の長さは0.01~1メートル、好ましくは0.02~0.5メートルである、態様1~7のいずれか1項に記載の押出機。
【0027】
態様8.前記成形帯の長さは0.05~0.2メートル、好ましくは0.05~0.15メートルである、態様1~7のいずれか1項に記載の押出機。
【0028】
態様.9前記冷却セクションの長さは0.01~1メートル、好ましくは0.02~0.5メートルである、態様1~8のいずれか1項に記載の押出機。
【0029】
態様10.前記冷却セクションの長さは0.05~0.2メートル、好ましくは0.05~0.15メートルである、態様1~8のいずれか1項に記載の押出機。
【0030】
態様11.前記冷却セクションは、長さで前記成形帯の20~100%、好ましくは50~99%を構成する、態様1~8のいずれか1項に記載の押出機。
【0031】
態様12.前記飛行帯における前記バレルの内径「D1」は、1cm~50cm、より好ましくは3cm~25cmである、態様1~11のいずれか1項に記載の押出機。
【0032】
態様13.前記飛行帯における前記バレルの内径「D1」は、1cm~25cm、好ましくは3cm~6cmである、態様1~11のいずれか1項に記載の押出機。
【0033】
態様14.前記押出機はさらにフィーダーホッパーを含み、前記フィーダーホッパーはオーガを含む、態様1~13のいずれか1項に記載の押出機。
【0034】
態様15.前記押出機はさらに外部背圧装置を含む、態様1~14のいずれか1項に記載の押出機。
【0035】
態様16.前記外部背圧装置は、プーラー、おもり、又は前記ブロックに取り付けられるスプリングとフィンガーで構成されるドーナツ装置からなる群から選択される、態様15に記載の押出機。
【0036】
態様17.活性媒体とPVDFポリマーバインダーとのブロックの押出方法であって、PVDFポリマー及び活性媒体を含むPVDFポリマーバインダーを提供し、当該PVDFポリマーバインダー及び活性媒体を態様1~14のいずれか1項に記載の押出機に供給し、及び得られたPVDFポリマーバインダーと活性媒体のブレンドを押し出して固定化媒体のブロックを形成することを含む、方法。
【0037】
態様18.カーボンブロックの押出方法であって、
a.PVDFポリマーバインダー及び活性媒体を提供し、
b.押出機バレルを備える押出機を提供し、ここで、前記押出機バレルは、飛行加熱帯及び非飛行成形帯を含み、前記成形帯は冷却セクションを含み、前記成形帯の長さに対する前記加熱帯の長さの比は20:1~5:4であり、前記押出機バレルの内径「D」は、前記成形帯でD1からD2に増加し、ここで、D1とD2との直径の変化は0.2%~0.9%の間であり、
c.前記PVDFポリマーバインダー及び前記活性媒体を押出機に供給し、
d.前記PVDFポリマーバインダーと前記活性媒体とのブレンドを押し出して固定化媒体のブロックを形成すること
を含む、方法。
【0038】
態様19.PVDFポリマーを含むPVDFポリマーバインダー及び活性媒体は、前記押出機に供給される前にブレンドされている、態様17又は18に記載の方法。
【0039】
態様20.前記加熱帯の温度は、前記バインダーの溶融温度より20℃低い温度から、バインダーの溶融温度より80℃高い温度までである、態様17~19のいずれか1項に記載の方法。
【0040】
態様21.前記加熱帯の温度は130~260℃、好ましくは170~230℃である、態様17~19のいずれか1項に記載の方法。
【0041】
態様22.前記バインダーは、5~80kP、好ましくは15~50kPの溶融粘度を有するVDF/HFPコポリマーを含む、態様17~21のいずれか1項に記載の方法。
【0042】
態様23.PVDFポリマーは、5重量%~20重量%のHFPを含む、態様17~22のいずれか1項に記載の方法。
【0043】
態様24.活性媒体とポリマーバインダーの組み合わせは、少なくとも2重量%以上の微粒子を含む、態様17~23のいずれか1項に記載の方法。
【0044】
態様25.前記PVDFポリマーは、平均離散粒度として50~500nmのサイズの離散PVDFポリマー粒子及び前記離散ポリマー粒子の凝集体を含み、前記凝集体は、走査型電子顕微鏡で測定したときに、サイズが1~150マイクロメートル、好ましくは3~50マイクロメートルである、態様17~24のいずれか1項に記載の方法。
【0045】
態様26.前記PVDFポリマーバインダーは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、最大100重量%の微粒子を含む、態様17~25のいずれか1項に記載の方法。
【0046】
態様27.前記吸着剤は活性炭を含む、態様17~26のいずれか1項に記載の方法。
【0047】
態様28.前記バインダーは、前記バインダーと前記吸着剤の総重量に基づいて、1~30重量パーセント、好ましくは1~10重量パーセントを占める、態様17~27のいずれか1項に記載の方法。
【0048】
態様29.活性媒体とPVDFポリマーバインダーとの前記ブロックは、0.95g/ccまで、好ましくは0.50~0.90g/cc、より好ましくは0.65~0.85g/ccの密度を有する、態様17~28のいずれか1項に記載の方法。
【0049】
態様30.前記押出機は、活性媒体とPVDFポリマーバインダーとのブロックを、1分当たり押出ブロックの0.5cm~50cmの速度、好ましくは0.5~30cm/分の速度で製造する、態様17~29のいずれか1項に記載の方法。
【0050】
態様31.前記加熱帯の長さは0.25~2m、好ましくは0.5~1.5mであり、
前記成形帯の長さは0.075~0.20メートルであり、前記冷却セクションは前記成形帯の27~72%を構成し、前記押出機の前記バレルに沿ったD1からD2への膨張は0.3%~0.7%である、態様17~30のいずれか1項に記載の方法。
【0051】
態様32.押出ブロックに背圧を加えることをさらに含む、態様17~31のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は既存の押出機バレルの図であり、任意に中空の円筒形ブロックを製造するための内部中実ロッドが装備されている。バレルは、供給帯、加熱帯、冷却セクションを含む成形帯の3つの帯で構成されている。供給帯は非加熱で飛行型であり、フィーダーのホッパーの真下に位置し、ホッパーの端で終わる。加熱帯は飛行型であり、非飛行の成形帯よりも長い。加熱帯は、供給ホッパーの端から始まり、飛行セクションの終わりまで続く。標準的な押出機では、供給、加熱、成形帯の直径はバレルの全長に沿って一定である。成形帯は非飛行であり、通常は加熱要素がない。成形帯は飛行セクションの端から始まり、バレルの端まで続く。成形帯には通常、冷却要素が使用される冷却セクションが含まれている。
図2図2は本発明の押出機バレルの図であり、任意選択で、中空の円筒形ブロックを製造するための内部中実ロッドが装備されている。バレルは、供給帯、加熱帯、冷却セクションを含む成形帯の3つの帯で構成されている。概略図は加熱帯と成形帯を示している。供給帯(図示せず)は非飛行であり、通常は加熱されないが、加熱することもできる。加熱帯は飛行型であり、加熱要素が装備されており、加熱要素はバレルの外面に配置されることが好ましい。成形帯は非飛行であり、通常は加熱されない。成形帯内の冷却セクションには冷却要素が装備されている。好ましくはバレルの外面に配置される。成形帯では、バレルの内径「D」がバレルの長さに沿って変更され、冷却セクションの出口での最終バレル内径(D2)が、非飛行の帯の始まりでの初期バレル内径(D1)よりも大きくなる。バレル内径「D」の変更は、非飛行帯の全長に沿って、漸進的に行うことも、段階的に行うこともできる。加熱帯はバレル内で最も長い帯である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本出願に列挙されたすべての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。別段の指示がない限り、組成物中のパーセントはすべて重量パーセントである。本明細書に記載されている異なる要素の組み合わせも本発明の一部とみなされる。
【0054】
本明細書で使用する「相互接続」とは、活性媒体粒子又は繊維が、それらの表面を完全にコーティングすることなくポリマーバインダー粒子によって永久的に結合されていることを意味する。「硬化」と呼ばれるプロセス中に、バインダーが軟化して活性媒体粒子を特定の離散点に付着させ、組織化された多孔質構造を生成する。本発明の方法により製造されたブロックは多孔質である。ブロックにより、流体が相互接続された粒子又は繊維を通過できるようになり、流体がそれらの表面に直接露出され、流体の成分が活性媒体に吸着しやすくなる。ポリマーバインダーは活性媒体粒子に離散点でのみ接着するため、完全な相互接続のために使用されるバインダーの量は、活性媒体上にコーティングされるバインダーと比較して少なくなる。
【0055】
活性媒体とPVDFバインダーのブロックを製造するための押出機が開示される。
【0056】
本発明の押出機を使用した活性媒体及びPVDFバインダーのブロックの押出方法が開示される。
【0057】
本発明は、バインダーとしてPVDFを利用して、活性炭などの活性媒体のブロックの押出を提供する。押出機は、ブロックの製造に使用される既存の押出機バレルと比較して変更された、新しいバレル設計を採用している。本発明の新規な押出機により、活性媒体とPVDFバインダーのブロックを首尾よく押し出すことができ、ブロックが詰まりの際にバレル内で固着することがない。
【0058】
本発明は、固定化活性媒体ブロックを押出するための押出機の改変を提供し、押出機バレルは成形帯において改変され、バレルの出口での変更された内径(D2)が、飛行帯又は非飛行帯の始まりの内径(D1)よりも大きくなる。
【0059】
押出装置
改変された押出機バレルは、3つの帯、1)供給帯、2)加熱帯、3)冷却セクションを含む成形帯を含む。
【0060】
供給帯は飛行型であり、通常は加熱されず、フィーダーから材料を受け取り、材料を加熱帯に運ぶ。加熱帯は飛行型であり、加熱要素があり、バレル内で最も長い帯であり、適切な熱伝達とブロックの完全な硬化を確保する。成形帯は非飛行であり、通常は加熱されないが、その一部は任意に加熱できる。成形帯内では、冷却セクションは非飛行であり、冷却要素が装備されている。図2に示すように、押出機バレルは成形帯で変更され、成形帯の終わりの変更された内径(D2)が成形帯の始まりの内径(D1)よりも大きくなる。加熱帯の長さ対成形帯の長さの比は、好ましくは20:1~5:4、好ましくは10:1~5:4、好ましくは8:1~6:4である。
【0061】
バレル及びバレル帯の絶対長さは、ブロックの厚さに依存する。例えば、中実シリンダーブロックの厚さはブロックの外径であり、中空シリンダーブロックの厚さはブロックの外径から内径を引いた差として定義される。
【0062】
供給帯の長さは0.1~1メートル、好ましくは0.2~0.5メートルとすることができる。
【0063】
加熱帯は成形帯よりも長く、0.25~2mの長さ、好ましくは0.5~1.5mの長さであり得る。1~10個の加熱要素、好ましくは3~5個の加熱要素が装備されている。加熱要素の温度は、室温から300℃までの間に設定でき、通常はバインダーの溶融温度より20℃低い温度から、バインダーの溶融温度より80℃高い温度までである。各要素の温度は独立して制御できる。
【0064】
成形帯の長さは、0.01~1メートル、又は0.02~0.7メートル、好ましくは0.05~0.5メートルとすることができる。成形帯内の冷却セクションの長さは、0.01~1メートル、好ましくは0.02~0.5メートル、又は0.05~0.20メートル、さらにより好ましくは0.05~0.15メートルとすることができる。冷却セクションには1つ以上の冷却要素が装備されている。冷却要素には、水や他の冷却剤などの冷却流体を含めることができ、必要に応じて冷却することができる。冷却流体の温度は、90℃~-20℃の間、好ましくは35℃~0℃の間とすることができる。
【0065】
成形帯では、バレル内径「D」が変更され、成形帯の終わりの最終バレル内径が、成形帯の開始時の初期バレル内径よりも1.002~1.01倍、又は1.002~1.009倍、好ましくは1.003~1.007倍、最も好ましくは1.004~1.007倍と大きくなる。バレル内直径Dの漸進的な変更は、成形帯でのみ存在し得る。変更は、成形帯の長さの10%~100%、好ましくは30%~85%、好ましくは40%~75%、より好ましくは50%~70%の長さにわたって存在し、また、連続的な方法で、又は1つ以上の段階的な変化で存在し得る。このパーセンテージは、成形帯(冷却セクションを含む)の全長に対する変更セクションの全長の比率として計算される。変更されたセクションの長さは、バレルの内径が成形帯で最初に変更される点から、冷却セクションの出口にあるバレルの端まで測定される。漸進的な変更により、ポリマーバインダーや押し出される活性媒体よりも収縮する金属合金が使用されているダイの収縮を補償することができ、ダイ内に蓄積された圧力を解放する。漸進的な変更が完了した後、成形帯の終わりの最終バレル内径(D2)は、成形帯の始まりの初期バレル内径(D1)よりも大きくなる。D1とD2の間のバレル内径の全体的な増加は、0.2%~1.0%、0.2%~0.9%、好ましくは0.35%~0.7%、最も好ましくは0.4%~0.65%である。増加率は次のように計算される:
Dの増加%=100×(D2-D1)/D1
【0066】
飛行帯のバレル内径D1は、好ましくは1cm~50cmの間、より好ましくは3cm~25cmの間である。D1は100cm以上に大きくなり得る。D1は1cm~25cm、又は3cm~6cm、又は4cm~5cmにすることができる。中空構造の場合、構造の中空の典型的な内径は0.5cm~45cmであり、より好ましくは1cm~15cm又は1cm~10cmである。
【0067】
例示的な一実施形態では、飛行帯のバレル内径D1は4.35cmであり、冷却セクションの出口でのバレル内径D2の4.372cmまで0.5%の増分漸進で変更される。
【0068】
さらに、このタイプの押出機には、ブロックが押出機から出るのを抵抗できる外部装置を装備することもできる。これは、ブロックを高密度化するための背圧を生成するのに役立つ。これは、プラスチック産業で使用される一般的なプーラーで、押出速度に抵抗すること、押出物の前に重りを置くこと、又は、バネとフィンガーで構成され、ブロックを掴み、バネのバネ定数に比例して圧力を加え単純な装置(別名ドーナツ)により達成できる。より高密度の炭素ブロックを生成するために本発明の押出機と併用することができる、ブロックの高密度化を助ける背圧を生成する他の手段が存在する。加熱帯の内径を変更して材料を蓄積させるなど、ブロックの密度を高めるために内部設計を変更することもできる。このような場合、加熱帯の終端におけるバレルの内径は、加熱帯の開始におけるバレルの内径よりも小さくなる。
【0069】
さらに、フィーダーとして知られる供給装置も押出機と組み合わせて使用されるのが一般的である。これらは、大量の材料を取り込み、材料を一定の速度で押出機に供給するホッパーで構成されている。しかし、典型的なフィーダーホッパーは、流動特性が悪いため、少なくとも2重量%以上の活性材料及び/又はポリマーバインダーの微粒子を含む活性媒体とポリマーバインダーの粒子ブレンドを一貫して供給することに問題がある。この問題は、フィーダーのホッパー内にオーガを追加することで解消され、粉末を撹拌して安定した供給を行うことができることがわかった。
【0070】
最後に、押出機は、押出されたブロックを特定の長さに切断するのに役立つインラインブロックカッターを備えてセットアップすることもできる。
【0071】
押出機の新規の独創的な設計により、PVDFポリマーバインダーを含むブロックを製造する際の詰まりの問題が解決される。新しい押出機の設計により、押出機バレル内での材料の連続供給の一貫性も向上し、ブロックの完全な硬化が保証される。したがって、本発明は、ブロック製造業者に、固定化活性媒体のブロックを調製するための生産性が高く一貫した方法を提供する。
【0072】
本発明の押出機は、活性媒体及びPVDFポリマーバインダーを含むブロックを押し出すように設計されている。
【0073】
バインダー
本発明の押出機を使用して製造されるブロック中のバインダーは、ポリ(フッ化ビニリデン)PVDFポリマーバインダーを含む。PVDFポリマーバインダーは、単一のPVDFポリマー、2つ以上のPVDFポリマーのブレンド、又はPVDFポリマーとポリエチレン、ポリエステルなどの他のポリマーとのブレンド、又は任意の他の熱可塑性ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、PVDFポリマーバインダーは、PVDFバインダーと他のポリマーとのブレンドであり、PVDFは、全バインダーの主成分であり、全ポリマーバインダーに基づいて50%を超えるPVDFポリマーを含む。いくつかの実施形態では、PVDFは主要成分ではなく、ブロックの全体のバインダー含有量の10%ほど低くてもよい。PVDFポリマーは、フッ化ビニリデンのホモポリマー、又はフッ化ビニリデンと1つ以上のコモノマーとのコポリマーである。コポリマーはホモポリマーと比較して融解温度が低く、弾性率が低くなる。バインダーの溶融温度が低いため、押出機のロックの問題が軽減される。
【0074】
好ましいPVDFコポリマーには、少なくとも50モルパーセント、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも80モル%、さらにより好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)と、以下からなる群から選択される1つ以上のコモノマーと共重合されたものが含まれる:テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、トリフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びフッ化ビニリデンと容易に共重合する他の任意のモノマー。コモノマーはヘキサフルオロプロペンであることが好ましい。
【0075】
一実施形態では、フッ化ビニリデンポリマーは、30重量%まで、好ましくは25%まで、より好ましくは15%までのHFP単位、及び70重量%以上、好ましくは75重量%以上、より好ましくは85重量%以上のVDF単位を含む。PVDFポリマーは、0~30重量%、好ましくは5~20重量%のHFP単位を有することができる。
【0076】
本発明で使用されるPVDFは、一般に、水性フリーラジカル乳化重合を使用する当技術分野で知られている手段によって調製されるが、懸濁、溶液及び超臨界CO2重合プロセスも使用され得る。好ましくは、PVDFは乳化重合によって製造される。
【0077】
重合に使用される界面活性剤は、過フッ素化、部分フッ素化、及び非フッ素化界面活性剤を含む、PVDF乳化重合に有用であることが当技術分野で知られている任意の界面活性剤であり得る。好ましくは、本発明のPVDFエマルジョンはフッ素系界面活性剤を含まず、重合のいかなる部分においてもフッ素系界面活性剤が使用されない。PVDFの重合に有用な非フッ素化界面活性剤は、イオン性と非イオン性の両方の性質を持つことができ、以下が挙げられるが、これらに限定されない:3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸及びそれらの塩、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール及びそれらのブロック共重合体、アルキルホスホネート及びシロキサンベースの界面活性剤。一実施形態では、乳化重合は界面活性剤の非存在下で行われる。
【0078】
ラテックスポリマーバインダーは一般に、噴霧乾燥、凝固、又は他の既知のプロセスによって粉末形態にまで減少され、乾燥粉末が生成される。粉末の形状及び粒度は、粉砕などの任意の既知のプロセスによって変更することができる。
【0079】
離散PVDFバインダー粒子は、平均離散粒度として、一般に5~700nm、好ましくは50~500nm、より好ましくは100~300nmのサイズである。場合によっては、離散のポリマー粒子が凝集して1~150マイクロメートルの集合体、3~50マイクロメートル、好ましくは5~15マイクロメートルの凝集体になることがある。これらの凝集体の一部は、物品への加工中に離散粒子又はフィブリルに分解される可能性があることが判明している。バインダー粒子の一部は離散粒子であり、形成されたブロック物品中に離散粒子として残存する。ブロック物品への加工中に、粒子は活性媒体に互いに隣接し、相互接続を提供する。
【0080】
活性材料を保持するために必要なだけバインダーを使用することが重要である。これにより、活性媒体の表面積がより多く露出され、ろ過や吸着プロセスなどで流体との相互作用に利用できるようになる。PVDFポリマーの1つの利点は、それらが少なくとも約1.75g/cc、好ましくは少なくとも約1.77g/ccという非常に高い比重を有することである。したがって、必要なバインダーの重量パーセントはさらに低くなり、体積パーセントはさらに低くなる。
【0081】
PVDFポリマーの分子量は特に限定されない。場合によっては、バインダーが活性媒体に流れ込まず、活性炭の高表面積を汚さないようにするために、分子量が高いことが好ましい。ポリマーの溶融粘度は、好ましくは1~100kPoise、好ましくは5~80kPoise、5~60kPa、最も好ましくは15~50kPoiseである。ポリマーの溶融粘度は、ASTM D3835に従って、キャピラリーレオメトリーにより232℃及び100s-1で測定される。
【0082】
活性媒体
使用される活性媒体は、ブロック製品で使用されることが知られているものである。ブロック製品は、水ろ過などのろ過に使用したり、適切な活性媒体を選択することで流体(気体又は液体)の輸送、保管、分離、洗浄に使用したりできる。活性媒体粒子は特に限定されない。活性媒体の例としては、活性炭、グラファイト、モレキュラーシーブ、金属及び誘導体、殺菌剤、重金属除去剤などの粉末粒子又は繊維、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つの好ましい活性媒体は活性炭である。
【0083】
本発明の活性媒体粒子は、一般に、直径0.1~3,000ミクロン、好ましくは1~500ミクロン、最も好ましくは5~100ミクロンのサイズ範囲にある。特定の実施形態では、活性媒体粒子は多峰性の粒度分布を有し、例えば、一部の粒子は100ミクロン未満の平均粒度を有し、一部の粒子は200ミクロンを超える平均粒度を有する。活性媒体粒子は、直径が0.1~250ミクロンで、長さと幅の比が本質的に無制限である繊維の形態であってもよい。繊維は、好ましくは長さ5mm以下に切断される。
【0084】
活性媒体繊維又は粉末は、粉末混合物の加熱を可能にするのに十分な熱伝導率を有していなければならない。さらに、押出成形プロセスでは、両方の物質が溶融して通常望ましい多相系ではなく連続溶融相が生成されるのを防ぐために、粒子と繊維の融点がPVDFポリマーバインダーの融点より十分に高い必要がある。
【0085】
プロセス
PVDFポリマーバインダーと活性媒体とは混合され、処理加工されてもよい。PVDFポリマーバインダーは通常粉末の形であり、活性媒体とドライブレンドできる。好ましくは、活性媒体とPVDFポリマーバインダーの総重量に基づいて、0.5~35、好ましくは1~30、より好ましくは3~25重量パーセントのPVDFポリマーバインダーがブロック製品中に使用される。PVDFの重量パーセントは、活性媒体とPVDFポリマーバインダーの総重量に基づいて、1~10重量パーセントであり得る。
【0086】
非常に緻密なブロックが必要な場合は、より高い圧力での押出加工を使用できる。押出プロセスは、ポリマーバインダー粒子を軟化させるが、他のポリマー粒子と接触して凝集体又は連続層を形成するまで溶融及び流動させない方法で実施される。意図された最終用途で効果的であるために、ポリマーバインダーは、良好な透過性を得るために活性媒体粒子を相互接続されたウェブに結合する離散のポリマー粒子として残る。本発明ではバインダーを溶解する溶剤は使用しない。なぜなら、溶媒系では、粒子が溶解して活性媒体粒子上に連続的なコーティングを形成するため、個々のポリマー粒子はもはや存在しないからである。連続コーティングにより、流体と活性粒子の相互作用に利用できる活性化表面積量が減少し、その全体的な有効性が低下する可能性がある。
【0087】
活性媒体及びポリマーバインダーは、押出プロセスでブロック物品に形成される。本発明のブロックは、押出成形プロセスによって形成される。カーボンブロックの一般的な押出プロセスは、米国特許第5,331,037号に記載されている。米国特許第5,331,037号には、短い非飛行加熱帯を有するバレルを備えた押出機を使用して、ポリエチレンバインダーで作られたブロックを押出成形することが記載されている。PVDFはバインダーの候補としては言及されていない。
【0088】
本発明のポリマーバインダー/活性媒体複合体は、一般に、必要に応じて加工助剤などの他の添加剤とドライブレンドされ、押出される。熱、圧力、せん断下での連続押出により、無限長の3次元多相プロファイル構造を生成できる。押出機の条件下で、バインダーと活性媒体粒子との強制点結合の連続ウェブが形成される。
【0089】
押出プロセスは、所望の任意の直径及び長さの連続ブロック構造を生成することができる。適切な製造装置を使用すれば、1cmから数百メートルまでの長さが可能である。次いで、連続した固体ブロックを所望の最終長さに切断することができる。ブロックは中実でも中空でもよい。ブロックの典型的な外径は、好ましくは1cm~50cm、より好ましくは3cm~25cmであり、ただし、適切なサイズのダイを使用すると、最大100cm以上のより大きな直径の構造を製造できる。中空構造の場合、典型的な内径は0.5cm~45cm、より好ましくは1cm~15cm、又は1cm~10cmである。
【0090】
単一の構造の代わりに、2つ以上の構造、すなわち中実のロッドと、一緒に入れ子になって大きな構造を形成するように設計された1つ以上の中空ブロックシリンダーを形成する方法がある。環状又は棒状の各ブロックコンポーネントが形成されたら、コンポーネントを入れ子にして、より大きな構造を作成できる。このプロセスには、単一の大きな構造を押し出す場合に比べて、いくつかの利点がある。断面直径が小さいブロックは、大型で固体のシングルパスブロックを製造するよりも速い速度で製造できる。冷却プロファイルは、断面の小さい部品ごとにより適切に制御できる。この概念のさらなる利点は、同心ブロック間の間隔がガスの急速な流れのためのチャネルとして機能する可能性があるため、モノリスを通るガス拡散経路の長さを短縮できることである。
【0091】
特性
本発明によって形成された物品は、高品質で堅牢な、活性媒体とバインダーのブロック構造である。ブロックの密度は微調整できる。例えば、ブロック効率を最大化するために、活性媒体の量を最大化するように密度を非常に高くすることができる。
【0092】
本発明の押出機は、最大0.95g/ccの密度を有するブロックを提供する。好ましくは、ブロック製品の密度は、0.50~0.90g/ccが可能であり、より好ましくは0.65~0.85g/ccである。
【0093】
本発明の押出機は、組成物粒子と押出機の壁との摩擦が減少するため、より高い生産性を提供する。本発明の押出機は、毎分最大0.5cm~50cm、好ましくは毎分1cm~30cmの押出ブロックの生産を提供することができる。
【0094】
加熱帯の温度は、一般にバインダーの軟化温度によって決まり、典型的にはバインダーの溶融温度より20℃低い温度から、バインダーの溶融温度より80℃高い温度までである。例えば、温度は一般に130℃~260℃であり、170℃~230℃でもよい。ポリマーバインダーに応じて、温度はこれらの例よりも低くても高くてもよい。
【0095】
この新規な押出機バレルは、従来の押出機を使用して経験する固着の問題を最小限に抑えながら、PVDFポリマーバインダーを使用して微粒子の連続押出を実現する。
【実施例
【0096】
例1
押出機バレルは、1mの飛行型加熱帯、0.23mの成形帯、0.115mの冷却セクションを含む。飛行帯の初期バレル内径はD1=4.35cmであり、押出機の出口における最終バレル内径はD2=4.372cm(0.5%変更)である。内径の変更は、非飛行の成形帯の長さの0.172mに沿って存在する。バレルには中空シリンダーブロックを押し出すための内部ロッドが装備されている。ロッドの直径は中空ブロックの内径と等しく、ID=1.9cmである。スレッドのギャップは4cmである。(CrMoAl製)。
【0097】
この配合物には、8%(重量)のバインダー(Kyblock(登録商標)FG-81)と92%(重量)のJaccobi製サイズ80×325の活性炭が含まれている。
【0098】
プロセス条件は以下の通りである。
A.バインダーとカーボンをロータリーミキサーで低速で1時間混合する。
B.押出条件:190℃、200℃、150℃、105℃(T1、T2、T3、及びT4)。
【0099】
得られたブロックは、0.75g/cm3の密度を有する(ブロックを冷却した後の重量/体積によって測定)。ブロックを製造するためのライン速度は8cm/分である。
【0100】
ブロック密度は機械的強度を示し、プロセスの安定性を示す。押出機は問題なく3時間稼働した(固着はなかった)。これは、同じブロック組成物を、一定の内径D1=4.35cmを有する非変更バレルを備えた押出機で実行した場合とは対照的である。非変更バレルの場合、押出機は最初の30分以内に固着し、ブロックがバレル内で詰まった。
【0101】
例2
押出機バレルは実施例1と同じである。
【0102】
この配合物には、25%(重量)のバインダー(Kyblock(登録商標)FG-415)と75%(重量)のJaccobi製サイズ80×325の活性炭が含まれている。
【0103】
プロセス条件は以下の通りである。
A.バインダーとカーボンをロータリーミキサーで低速で1時間混合する。
B.押出条件:4つの加熱帯:170℃、180℃、150℃、105℃(T1、T2、T3、及びT4)。
【0104】
得られたブロックは、0.8g/cm3の密度を有する(ブロックを冷却した後の重量/体積によって測定)。ブロックを製造するためのライン速度は8cm/分である。
【0105】
ブロック密度は機械的強度を示し、プロセスの安定性を示す。
【0106】
押出機は問題なく3時間稼働した(固着はなかった)。実施例1と同様に、これは、押出機の固着を引き起こした非変更バレルの場合とは対照的である。
【0107】
例3
8%(重量)のバインダー(Kyblock(登録商標)FG-81)と92%(重量)のJaccobi製サイズ80×325の活性炭を含む粉末ブレンドを、2つの異なるフィーダーを使用して押出機バレルに供給した。すべてのバインダーは微粒子であると考えられており、典型的なフィーダー装置における粉末ブレンド全体の流れを損なう傾向がある。単純なホッパー設計(オーガーなし)で作られた標準フィーダーを使用した比較例では、押出機バレルへの粉末ブレンドの供給に一貫性がなかった。粉末はホッパーの壁とそれ自体の両方に付着する傾向があり、その結果「ストップアンドゴー」の供給プロファイルが発生した。フィーダーのホッパーをオーガで変更したところ、粉末がムラなく一定速度で供給された。オーガで変更されたフィーダーのホッパーの使用は、2%以上の微粒子を含む配合物を押出機に一貫して供給できるようにするための鍵であった。高品質のカーボンブロック製品を製造するには、一貫した粉末供給と改良された押出機バレルの使用を組み合わせることが必要である。
図1
図2
【国際調査報告】