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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ガス排気を伴う医療用注入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519640
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021076464
(87)【国際公開番号】W WO2022069394
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20306133.8
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591052505
【氏名又は名称】ゲルベ
【氏名又は名称原語表記】GUERBET
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アラール,ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】カクリン,ジェローム
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC03
4C066DD12
4C066EE12
4C066LL09
4C066MM05
4C066QQ14
(57)【要約】
薬液を注入するための注入装置(1)は、上部空間(4b)及び下部空間(4a)の境界を定める内部空間(4)内に配置されたピストン(6)と、排気経路であって、内部空間の下部空間(4a)から上部空間(4b)にピストン(6)を横切る、排気経路と、ガスが通過することを選択的に可能にするように且つ薬液がセレクタ(24、50、60)を通過することを防止するように構成された、排気経路の下部分(17a)と中間部分(17b)との間のセレクタ(24)と、排気経路の中間部分(17b)と排気経路の上部分(17c)との間のパージ弁(22)であって、本体(2)の下端に向かって移動するピストン(6)によって生じる中間部分(17b)内の過剰圧力を必要とする通過構成と遮断構成との間で移動するように構成される、パージ弁(22)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液容器から医療用チューブに薬液を注入するための注入装置であって、
本体の上端と前記本体の下端との間に長手方向に延びる内部空間を画定する前記本体であって、前記本体の前記下端は、前記薬液が前記薬液容器から前記内部空間に入り込むことができ且つ前記医療用チューブに注入されるように前記内部空間から流出できる、医療用チューブインターフェースを含む、前記本体と、
前記内部空間内に配置されるとともに、前記内部空間内を前記長手方向に沿って移動するように構成される、ピストンであって、前記ピストンは、前記内部空間の上部空間及び下部空間の境界を定め、前記下部空間は、前記薬液を受け入れるように構成される、前記ピストンと、
排気経路であって、前記内部空間の前記下部空間から前記上部空間に前記長手方向に前記ピストンを横切る、前記排気経路と、
前記排気経路の下部分と前記排気経路の中間部分との間の前記排気経路内に配置されるセレクタであって、前記排気経路の前記下部分は、前記下部空間に接続され、前記セレクタは、ガスが前記セレクタを通過すること及び前記排気経路の前記下部分から前記中間部分に前記排気経路に沿って移動することを選択的に可能にするように構成され、前記セレクタは、前記薬液が前記セレクタを通過すること及び前記内部空間の前記下部空間から上部空間に前記排気経路に沿って移動することを選択的に防止するように構成される、前記セレクタと、
前記排気経路の前記中間部分と前記排気経路の上部分との間の前記排気経路内に配置されるとともに、パージ弁が前記排気経路を閉鎖する遮断構成と前記パージ弁が前記排気経路を開いた状態に保つ通過構成との間で移動するように構成される、前記パージ弁であって、前記パージ弁の前記通過構成は、前記本体の前記下端に向かって移動する前記ピストンによって生じる、前記排気経路の前記中間部分内の過剰圧力を必要とする、前記パージ弁と、を含む、
注入装置。
【請求項2】
前記パージ弁は、前記ピストンが前記本体の前記上端に向かって移動すると前記遮断構成になるように構成される、請求項1に記載の注入装置。
【請求項3】
前記排気経路の前記下部分は、薬液及びガスの両方を受け入れるように構成され、前記排気経路の前記中間部分及び前記上部分は、ガスのみを受け入れるように構成される、請求項1又は2に記載の注入装置。
【請求項4】
前記上部空間は、一定の基準圧力に保たれるように構成され、排気経路の前記中間部分内の前記過剰圧力は、前記基準圧力を上回るガス圧力に相当する、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の注入装置。
【請求項5】
前記ピストンは、前記内部空間の前記下部空間の境界を定める下部インターフェースを含み、前記下部インターフェースは、前記下部インターフェースの最も高い部分に開口する前記排気経路の入口を含む、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の注入装置。
【請求項6】
前記下部インターフェースは、前記内部空間の前記下部空間から見て凸面を有し、前記排気経路の前記入口は、前記下部インターフェースの中心に開口するか、又は前記下部インターフェースは、前記内部空間の前記下部空間から見て凹面を有し、前記排気経路の前記入口は、前記下部インターフェースの周縁に開口する、請求項5に記載の注入装置。
【請求項7】
前記セレクタは、前記薬液上に浮遊するように構成されるとともに、空洞内に配置される、フロートであり、前記空洞は、前記排気経路に属する通路を少なくとも含み、前記フロートは、前記フロートが前記通路を塞ぎ、それにより、前記排気経路を閉鎖する、遮断構成と、前記フロートが前記通路から離間して配置され、それにより、前記排気経路を開放させる開放構成との間で、前記長手方向に沿って前記空洞内を移動するように構成される、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の注入装置。
【請求項8】
前記フロートは、少なくとも1つの閉塞部及び浮遊部を有し、前記閉塞部は、前記通路を塞ぐように構成され、前記浮遊部は、前記閉塞部の最大幅部分に対する拡大した部分を有する、請求項7に記載の注入装置。
【請求項9】
前記フロートは、前記通路を画定する座部に接触する2つの別個の領域で前記通路を塞ぐように構成される、請求項7又は8に記載の注入装置。
【請求項10】
前記セレクタは、前記排気経路を横切って延びる膜であり、前記膜は、疎水性であり、前記ガスを通過させるように且つ前記薬液が通過することを防止するように構成される、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の注入装置。
【請求項11】
前記膜は、空洞内に配置され、支持器は、前記膜を機械的に支持するように前記膜の上側に接して前記空洞内に配置され、前記支持器は、前記ガスが前記膜を通過し且つ前記支持器を通過することを可能にする、請求項10に記載の注入装置。
【請求項12】
注入システムであって、
請求項1~11のうちのいずれか1項に記載の注入装置と、
薬液容器に接続されるように構成される第1のコネクタと、
前記薬液を当該注入システムに供給するために前記第1のコネクタを前記医療用チューブインターフェースに接続するように構成される薬液供給ラインと、
前記薬液を患者ラインに注入するために前記医療用チューブインターフェースと前記患者ラインとに接続されるように構成される共通ラインと、を含む、
注入システム。
【請求項13】
前記過剰圧力は、少なくとも第1の圧力閾値だけ前記上部空間内の基準圧力を超える前記排気経路の前記中間部分内の圧力に対応し、
前記共通ラインは、第2の圧力閾値を有する閾値弁を含み、
前記第1の圧力閾値は、前記第2の圧力閾値よりも低い、
請求項12に記載の注入システム。
【請求項14】
請求項1~11のうちのいずれか1項に記載の注入装置を動作させるための工程であって、
前記注入装置は、前記本体の前記上端を上にして且つ前記本体の前記下端を下にした状態で保持され、前記工程は、
前記ピストンが、前記本体の前記上端に向かって前記内部空間内を前記長手方向に沿って移動して、前記薬液容器からの前記薬液及びガスを、前記医療用チューブインターフェースを通じて前記内部空間に入り込ませ、前記パージ弁は、前記遮断構成にある、充填ステップと、
前記ピストンが、前記本体の前記下端に向かって前記内部空間内を前記長手方向に沿って移動し、前記セレクタが前記薬液を前記下部空間内に保持している間に、前記ガスが、前記ピストンを横切る前記排気経路を通じて、前記内部空間の前記下部空間から前記上部空間に排気され、前記パージ弁が前記通過構成にある、パージステップと
を含む、
工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療用流体の注入に関し、より詳細には、薬液容器から医療用チューブに薬液を注入するための注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
注入装置は、薬液容器から医療用チューブに薬液を注入するために一般的に使用される。例えば、ヨード造影剤などの薬液の注入は、CTスキャン診断症例の70%で必要とされる。この注入は、約70%の症例で、自動造影剤注入器を使用して実行される。自動注入器を患者に接続するのに注入用チューブが必要となる。
【0003】
米国特許出願公開第2012/0209111号明細書は、筒状本体と、キャップと液袋の組立体と、筒状本体内に配置されたプランジャ要素と、キャップと液袋の組立体を筒状本体に固定する取付組立体と含む、流体送達システム用の液袋シリンジを開示している。筒状本体は、遠位端と、近位端とを有し、貫通孔を画定する。キャップと液袋の組立体は、筒状本体の遠位端に接続するように適合され、キャップ本体と、液袋とを含む。キャップ本体は、内部空洞と、遠位吐出導管とを画定し、筒状本体の遠位端に係合するように適合される。円盤状の液袋は、内部空洞内に配置され、典型的には、中心の膜部分を含む。プランジャ要素は、筒状本体の貫通孔内に配置され、筒状本体内のキャップと液袋の組立体とプランジャ要素との間の空間の排気を可能にするためにガス抜きが行われる。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0249541号明細書は、流体を受け入れるためのボトルと、吐出チューブと、ボトルと吐出チューブとの間に連結された加圧装置であって、流体を加圧するための及び重力なしに吐出チューブを通して流体を強制的に流れさせるための加圧装置とを含む、流体投与装置を開示している。加圧装置は、ボトルと吐出チューブとの間に連結された容器と、容器内に摺動可能に受け入れられたピストンと、容器内でピストンを往復動作で移動させるための移動装置とを含む。例えば、モータは、容器内でピストンを往復動作で移動させるために、クランクを用いてピストンに連結される。
【0005】
米国特許出願公開第2005/0215850号明細書は、吐出ポートを有する本体内を摺動するプランジャを含むシリンジと、シリンジに連結された駆動機構であって、シャフトに装着されたピストンが内部を摺動するシリンダと、ピストンに付勢力を付与してピストンをシリンダ内で遠位側に駆動するように動作する付勢装置とを含む、駆動機構と、付勢装置がピストンを移動させることを最初に防止する安全止め具であって、付勢装置がピストンを移動させることを可能にするために取り外し可能である安全止め具とを含む、シリンジポンプを開示している。
【0006】
図1は、薬液容器104から共通ライン102に薬液を注入するための注入システム100の例を示す。当業者であれば、薬液容器104は、薬液を収容するように特に適合された任意の種類の容器、例えば、限定されるものではないが、バイアル、ボトル、プラスチック容器、及び薬液を収容するために製造された任意の種類の容器とすることができることを認識するであろう。注入システムは、薬液容器104に接続されるように構成された第1のコネクタ106と、医療用チューブインターフェース112を備えた注入装置110が取り付けられる注入器108と、薬液を注入装置110に供給するために第1のコネクタ106を医療用チューブインターフェース112に接続するように構成された薬液供給ライン114と、薬液を患者ライン116に注入するために医療用チューブインターフェース112と患者ライン116とに接続されるように構成された共通ライン102とを含む。より正確には、第1のチューブ弁130は、液体供給ライン114を共通ライン102に接続し、真空圧下で共通ライン102への通過のみを可能にする。共通ライン102は、第1のチューブ弁130の下流にある第2のチューブ弁140を含み、患者ライン102に向かう通過のみを許可する。注入装置110は、通常、内部空間を画定する本体と、プランジャロッドによって駆動されるピストンであって、内部空間に流体を送り込むか又は内部空間から流体を押し出すために内部空間内を移動するように構成されたピストンとを含む。
【0007】
図示の例では、2つの異なる種類の薬液が、患者に注入されることになり、その結果、注入システムは、2つの異なる第1のコネクタ106と2つの異なる薬液供給ライン114とを用いて、2つの薬液容器104に接続されるように構成されている。しかしながら、注入システムは、1つの薬液のみを注入するように構成されてもよい。2注入は記載した特徴を単に繰り返すことを伴うので、簡潔にするために、以下の説明は、1つの薬液のみが注入される構成を参照して行われる。ここでは「2注入(bi-injection)」は、2回の注入(two-injections)を意味すると理解される。
【0008】
経済的及び環境的な理由(プラスチックの使用量が少ない)から、複数患者の診療は、市場シェアを着実に獲得している。いわゆる複数患者の診療では、注入システム用のチューブは、非常に異なる2つの部分、すなわち、デイセット120と患者セット122とを備える。患者セット122は、患者ごとに変更される。患者セット122は、典型的には、連続する患者間の相互汚染のリスクを抑えるために使用され、したがって、デイセットを保護する。ひとたび設置され準備されると、デイセット120は、同じ医療用流体が注入される限り、数件の患者症例に対して電動注入器に接続されたままである。注入すべき医療用流体を変更する必要がある場合には、デイセット120が変更される。このデイセット120は、薬液容器104と共通ライン102とに接続される薬液供給ライン114を含む。患者セット122は、共通ライン102によって薬液が供給される患者ライン116であって、薬液を患者に注入するためのカテーテル又は針に接続される患者ライン116を含む。
【0009】
薬液を患者に注入するように注入システム100が設定されている場合、注入前にチューブ内にガスが存在しないことを確実にすることが重要である。患者の血管への空気などのガスの注入によって、ガス塞栓症、すなわち、循環系内の空気又は他のガスの1つ若しくは複数の気泡によって生じる血管閉塞が起こることがある。デイセット120又は患者セット116が適所に配置されたときに、チューブが空気で満たされる。それゆえ、注入前にチューブ内に存在するガスを排気する必要がある。チューブの長さに起因して、注入システム100から大量のガスが排気されることになる。
【0010】
注入前に存在する全てのガスを注入システム100からパージするために、注入装置110は、薬液容器104から薬液を引き寄せるか又は引き込み、それにより、薬液供給ライン114が満たされる。ここで、注入装置110は、薬液とガスとの混合物で満たされる。次いで、注入装置110は、前記医療用チューブインターフェース112にガスが集められるように、医療用チューブインターフェース112を上にした状態で位置決めされる。注入装置110への充填によって、薬液の乱流が生じ、薬液中に微小気泡が生成されることに留意すべきである。(特に造影剤用の)薬液の粘度が高いので、微小気泡が医療用チューブインターフェース112に達するのに数分かかることがある。それゆえ、医療用チューブインターフェース112を上にした状態で少なくとも2又は3分間待つのが通例である。次いで、ピストンを作動させることによって、ガスが、注入装置110から、依然として上にある医療用チューブインターフェース112を通して、共通ライン102内に排気される。その後、共通ライン102の外にガスを押し出すために薬液が共通ライン102に注入され、それにより、注入システム100からガスがパージされる。
【0011】
注入中に、ガスが注入装置110内に存在することがある。例えば、薬液の気化によってガスが発生することがある。また、注入システム100の初期充填中に生成された一部の気泡は、チューブ内で又は注入装置110の壁で遮断されることがあり、初期パージ中には排気されないことがある。結果として、注入中に、注入装置110は、医療用チューブインターフェース112を下にした状態で位置決めされるので、注入装置100内に存在するガスが、医療用チューブインターフェース112から離れた注入装置100内に閉じ込められ、共通ライン102内には注入されない。
【0012】
この手法には、いくつかの欠点がある。第1に、医療用チューブインターフェース112を上又は下にした状態で、注入装置110を対向する2つの位置の間で移動させなければならない。これには、注入器108が回転可能である必要がある。第2に、このパージにはかなりの時間がかかり、注入システム100は、パージ中に操作者によって監視されなければならない。操作者は、パージの品質と、パージが完了したか否かも評価しなければならない。人間とのあらゆる相互作用と同様に、操作者への依存は、ミスにつながる場合がある。第3に、ガスは、同じく注入システムから流出する薬液によって共通ライン102に沿って押し出される。これにより、この手法は、薬液の浪費を伴い、浪費された薬液を注入システム100の流出口で回収する必要があり、取り扱いミスを伴う可能性がある。
【0013】
また、ガスが注入装置110内に閉じ込められていても、パージ後に注入装置110内に依然として存在するガスによって、注入装置の動作が変更される場合がある。薬液の投与量は、通常、注入装置110のピストンの経路を通じて制御される。ガスは、圧縮性であり、従って、注入装置内の薬液量の変化が不正確になる。また、注入装置110内に閉じ込められるガスの量は少量でなければならず、さもなければ、共通ライン102に注入されるリスクがある。
【0014】
よって、操作者の関与を全く必要とせずに、ガスが注入装置内に存在する度にガスを迅速に排気できる注入システムが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
薬液容器から医療用チューブに薬液を注入するための注入装置であって、
本体の上端と本体の下端との間に長手方向に延びる内部空間を画定する本体であって、本体の下端は、薬液が薬液容器から内部空間に入り込むことができ且つ医療用チューブに注入されるように前記内部空間から流出できる、医療用チューブインターフェースを含む、本体と、
内部空間内に配置されるとともに、内部空間内を長手方向に沿って移動するように構成されたピストンであって、前記ピストンは、内部空間の上部空間及び下部空間の境界を定め、前記下部空間は、前記薬液を受け入れるように構成される、前記ピストンと、
排気経路であって、ピストンを内部空間の下部空間から上部空間に長手方向に横切る、前記排気経路と、
排気経路の下部分と排気経路の中間部分との間の排気経路内に配置されたセレクタであって、排気経路の前記下部分は、下部空間に接続され、セレクタは、ガスが前記セレクタを通過すること及び排気経路の下部分から中間部分に排気経路に沿って移動することを選択的に可能にするように構成され、前記セレクタは、薬液が前記セレクタを通過すること及び内部空間の下部空間から上部空間に排気経路に沿って移動することを選択的に防止するように構成される、セレクタと、
排気経路の中間部分と排気経路の上部分との間の排気経路内に配置されるとともに、パージ弁が排気経路を閉鎖する遮断構成とパージ弁が前記排気経路を開いた状態に保つ通過構成との間で移動するように構成されたパージ弁であって、パージ弁の通過構成は、本体の下端に向かって移動するピストンによって生じる、排気経路の中間部分内の過剰圧力を必要とする、パージ弁と
を含む、注入装置が提案される。
【0016】
本発明は、医療用流体を医療用チューブに押し込むためにピストンが移動する度に注入装置からガスを排気することを可能にする。それゆえ、パージは、操作者の介入を全く必要とせずに自動的に実行され、医療用チューブにガスが注入されないことを確実にする。
【0017】
非限定的であるが、本発明の他の好ましい態様は、以下の通りであるか、分離されているか、又は技術的に実現可能な組み合わせである。
パージ弁は、ピストンが本体の上端に向かって移動すると遮断構成になるように構成され、
排気経路の下部分は、薬液とガスの両方を受け入れるように構成され、排気経路の中間部分及び上部分は、ガスのみを受け入れるように構成され、
上部空間は、一定の基準圧力に保たれるように構成され、排気経路の中間部分内の過剰圧力は、基準圧力を上回るガス圧力に相当し、
ピストンは、内部空間の下部空間の境界を定める下部インターフェースを含み、前記下部インターフェースは、前記下部インターフェースの最も高い部分に開口する排気経路の入口を含み、
下部インターフェースは、内部空間の下部空間から見て凸面を有し、排気経路の入口は、前記下部インターフェースの中心に開口するか、又は下部インターフェースは、内部空間の下部空間から見て凹面を有し、排気経路の入口は、前記下部インターフェースの周縁に開口し、
セレクタは、薬液上に浮遊するように構成されるとともに空洞内に配置されたフロートであり、前記空洞は、排気経路に属する通路を少なくとも含み、前記フロートは、フロートが通路を塞ぎ、それにより、排気経路を閉鎖する遮断構成と、フロートが通路から離して配置され、それにより、排気経路を開放させる開放構成との間で、長手方向に沿って前記空洞内を移動するように構成され、
フロートは、少なくとも1つの閉塞部及び浮遊部を有し、前記閉塞部は、通路を塞ぐように構成され、浮遊部は、閉塞部の最大幅部分に対する拡大した部分を有し、
フロートは、通路を画定する座部に接触する2つの別個の領域で通路を塞ぐように構成され、
セレクタは、排気経路を横切って延びる膜であり、前記膜は、疎水性であり、ガスを通過させるように且つ薬液が通過することを防止するように構成され、
膜は、空洞内に配置され、支持器は、膜を機械的に支持するように膜の上側に接して前記空洞内に配置され、前記支持器は、ガスが膜を通過し且つ前記支持器を通過することを可能にする。
【0018】
本発明はまた、注入システムであって、
いずれかの実施形態に記載の注入装置と、
薬液容器に接続されるように構成された第1のコネクタと、
薬液を注入システムに供給するために第1のコネクタを医療用チューブインターフェースに接続するように構成された薬液供給ラインと、
薬液を患者ラインに注入するために医療用チューブインターフェースと患者ラインとに接続されるように構成された共通ラインと
を含む、注入システムに関する。
【0019】
好ましくは、過剰圧力は、少なくとも第1の圧力閾値だけ上部空間内の基準圧力を超える排気経路の中間部分内の圧力に対応し、
共通ラインは、第2の圧力閾値を有する閾値弁を含み、
第1の圧力閾値は、第2の圧力閾値よりも低い。
【0020】
本発明はまた、いずれかの実施形態に記載の注入装置を動作させるための工程であって、注入装置は、本体の上端を上にして本体の下端を下にした状態で保持され、工程は、
ピストンが、本体の上端に向かって内部空間内を長手方向に沿って移動し、薬液容器からの薬液とガスとを、医療用チューブインターフェースを通して内部空間に入り込ませ、パージ弁が遮断構成にある、充填ステップと、
ピストンが、本体の下端に向かって内部空間内を長手方向に沿って移動し、セレクタが薬液を下部空間内に保持している間に、ガスが、ピストンを横切る排気経路を通じて内部空間の下部空間から上部空間に排気され、パージ弁が通過構成にある、パージステップと
を含む、工程に関する。
【0021】
本発明の他の態様、目的、及び利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面を参照して作成された、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことで、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】2つの薬液容器が接続された注入システムの全体図である。
図2】パージ前の充填ステップ中に、セレクタがフロートである、可能な非限定的な実施形態による注入装置のピストンの断面図である。
図3】パージの開始中に、セレクタがフロートである、可能な非限定的な実施形態による注入装置のピストンの断面図である。
図4】パージの終了時に、セレクタがフロートである、可能な非限定的な実施形態による注入装置のピストンの断面図である。
図5】パージ後の注入ステップ中に、セレクタがフロートである、可能な非限定的な実施形態による注入装置のピストンの断面図である。
図6】可能な非限定的な実施形態による、セレクタとして機能するフロートの断面図である。
図7a】排気経路の2段階閉塞中における、可能な非限定的な実施形態による注入装置のフロートの断面図である。
図7b】排気経路の2段階閉塞中における、可能な非限定的な実施形態による注入装置のフロートの断面図である。
図7c】排気経路の2段階閉塞中における、可能な非限定的な実施形態による注入装置のフロートの断面図である。
図8】パージ前の充填ステップ中に、セレクタが膜である、可能な非限定的な実施形態による注入装置のピストンの断面図である。
図9】パージの開始中に、セレクタが膜である、可能な非限定的な実施形態による注入装置のピストンの断面図である。
図10】パージの終了時に、セレクタが膜である、可能な非限定的な実施形態による注入装置のピストンの断面図である。
図11】パージ後の注入ステップ中に、セレクタが膜である、可能な非限定的な実施形態による注入装置のピストンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の注入装置は、図1との関連で前述したように、注入システム100において使用することができる。注入装置1を除き、注入システム100についてはこれ以上説明しない。
【0024】
図2図5、及び図8図11を参照すると、注入装置110は、本体2の上端と本体2の下端との間に長手方向に延びる内部空間4を画定する本体2を含み、本体の下端は、医療用チューブインターフェース112を有し、薬液は、医療用インターフェース112を通って、薬液容器104から内部空間4に入り込むことができ、且つ共通ライン102に注入されるように前記内部空間4から流出できる。以前の注入装置とは対照的に、本発明による注入装置110は、医療用チューブインターフェース112を下にした状態で留まるように構成される。「下方」、「上方」、「下」、「上」、「より高い」、「最も高い」などの空間的用語は、鉛直方向、すなわち局地地球重力方向に対して一般的に認められる相対位置を定義するものとして理解されなければならない。これは、ガス及び薬液が重力を受けるためであり、本発明は適切なガス排気のために重力を利用する。その結果、使用時に、本体2の下端は、本体2の上端よりも下に位置する。本体2は、典型的には、例えばガラス又はプラスチック材料で作製された、バレルとも呼ばれる、中空筒状本体である。
【0025】
注入装置110は、内部空間4内に配置されるとともに、内部空間4内を、すなわち、本体2の上端と本体2の下端との間を長手方向に沿って移動するように構成されたピストン6も含む。ピストン6は、内部空間の上部空間4b及び下部空間4aの境界を定める。下部空間4aは、薬液を受け入れるように構成されるが、それに対して、上部空間4bは、液体を受け入れるようには意図されていない。ピストン6は、上部空間4bと下部空間4aとの間を気密封止する。この目的のために、ピストン6には、例えばゴムで作製された少なくとも1つの周縁シール8、10、好ましくは、長手方向に沿って異なる高さに2つの周縁シール8、10が設けられる。各周縁シール8、10は、本体2の壁に押し当てられて、密封を確保する。図示の例のように、周縁シール8、10は、クワッドリングとすることができるが、例えば、Oリングとすることもできる。
【0026】
ピストン6によってもたらされる密封に起因して、内部空間4の上部空間4bと下部空間4aとの間で圧力が大きく異なる可能性がある。上部空間4b内の圧力は、おおよそ一定であり、ピストン6の進行とは実質的に無関係である、基準圧力に保たれる。この基準圧力は、典型的には、大気圧、例えば、システムの環境の圧力である。好ましくは、本体2の上端は、ピストン6の進行に関係なく、上部空間4b内の圧力が大気圧と一致するように、少なくとも部分的に開いている。反対に、内部空間4の下部空間4a内の圧力は、前記下部空間4aの内容物とピストン6の進行とによって決まる。以下の説明において、過剰圧力は、基準圧力よりも高い圧力であり、真空圧は、基準圧力よりも低い圧力である。
【0027】
ピストン6は、例えば、ピストンロッド12内に係合されるピストン6の上部の突出部14によって、前記ピストンロッド12に取り付けられる。ピストンロッド14は、注入器108によって駆動され、ピストン6を内部空間4内で長手方向に沿って移動させる。ピストン6は、互いに組み付けられたいくつかの部分によって形成されることができる。図示の例では、ピストン6は、下部6aと、中間部6bと、上部6cとを有する。ピストンの部分を組み付けるために、ねじ16などのコネクタが使用されることがある。
【0028】
ピストン6は、ピストン6内に配置された排気経路を有する。経路は、ピストン6を内部空間4の下部空間4aから上部空間4bに長手方向に横切る。排気経路は、下部空間4a内に存在するガスを上部空間4b内に排気するように意図されている。典型的には、排気経路は、以下に説明するように、直線状ではなく、ピストン6の構成要素によって異なる箇所で開放又は閉鎖することができる。より具体的には、排気経路は、下部分17aと、中間部分17bと、上部分17cとを含む。排気経路の下部分17aは、下部空間4aに接続され、それに対して、排気経路の上部分17cは、上部空間4cに接続される。中間部分17bは、下部分17aと上部分との間にある。
【0029】
ピストン6は、内部空間4の下部空間4aの境界を定める下部インターフェース18を含み、前記下部インターフェース18は、排気経路の入口20を有する。好ましくは、入口20は、内部空間の下部空間4a内にガスが閉じ込められることなく、下部空間内に存在する全てのガスを適切に排気するために、下部インターフェース18に対して下部インターフェース18の最も高い部分に開口する。好ましくは、下部インターフェース18は、頂点が本体の上端の方を向いた表面を有し、排気経路の入口20は、前記頂点に開口する。例えば、下部インターフェース18は、内部空間の下部空間4aから見て凸面を有し、排気経路の入口20は、図示の例のように、前記下部インターフェース18の中心に開口する。例えば、下部インターフェース18の表面は、上向きの円錐、円錐台、又は角錐の表面に相当することがある。代替的に、下部インターフェース18は、内部空間の下部空間4aから見て凹面を有してよく、排気経路の入口20は、前記下部インターフェース18の周縁に開口する。例えば、下部インターフェース18は、下部インターフェース18の周縁に配置された溝を有してよく、排気経路の入口20は、前記溝に開口してよい。
【0030】
ピストン6は、排気経路の中間部分17bと排気経路の上部分17cとの間の排気経路内に配置されたパージ弁22を含む。パージ弁22は、パージ弁22が排気経路を閉鎖する遮断構成と、パージ弁22が前記排気経路を開いた状態に保つ通過構成との間で移動するように構成される。パージ弁22の通過構成は、本体2の下端に向かって移動するピストン6によって生じる、上部空間4b内の基準圧力に対する排気経路の中間部分17b内の過剰圧力を必要とする。上部空間4bは、基準圧力(例えば大気圧)にあるので、過剰圧力は、基準圧力を上回る圧力を意味する。より正確には、パージ弁22の通過構成に必要な過剰圧力は、少なくとも第1の圧力閾値だけ排気経路の上部空間4b及び上部分17c内の基準圧力を超える中間部分17b内の圧力に相当する。パージ弁22は、ピストン6が本体2の上端に向かって移動すると、遮断構成になるように構成される。なぜならば、上部空間4b内の基準圧力に対する過剰圧力が中間部分17a内に生じないが、代わりに、真空圧、すなわち、基準圧力よりも低い圧力が生じるからである。
【0031】
ピストン6は、排気経路の下部分17aと排気経路の中間部分17bとの間の排気経路内に配置されたセレクタ24、60も含む。セレクタ24、60は、ガスが前記セレクタ24、60を通過すること、及び排気経路の下部分17aから中間部分17bに排気経路に沿って移動することを、選択的に可能にするように構成される。セレクタ24、60は、薬液が前記セレクタ24、60を通過すること、及び排気経路の下部分17aから中間部分17bに排気経路に沿って移動すること、そして、その結果、内部空間の下部空間4aから上部空間4bに排気経路に沿って移動することを、選択的に防止するように構成される。結果として、排気経路の下部分17aは、薬液およびガスの両方を受け入れるように構成された混合部分であり、中間部分17b及び上部分17cは、ガスのみを受け入れるように構成されたガス部分である。
【0032】
パージ弁22は、内部空間の下部空間4aから上部空間4bまでの長手方向においてセレクタ24、60よりも上に配置される。したがって、パージ弁22は、排気経路のガス部分内に配置され、液体には全く接触しない。
【0033】
遮断構成では、パージ弁22は、排気経路の中間部分17bと上部分17cとの間の排気孔26を封止する。通過構成では、パージ弁22は、前記排気孔26を開放させる。図示の例では、排気経路の中間部分17bと上部分17cとの間に2つの排気孔26が見られる。パージ弁22によって排気孔26を封止可能である限り、より多い又は少ない排気孔26を設けることができる。
【0034】
好ましくは、図示の実施形態に示すように、パージ弁22は、ダイヤフラム形状の封止円盤22aと、ステム22bとを有する、アンブレラ弁である。ステム22bは、ピストン6の固定部に配置された孔28内に係合され、孔28の断面よりも大きな断面を有する拡大した下部分を呈し、それにより、パージ弁22を固定する。ダイヤフラム形状の封止円盤22aは、排気経路の一部であるとともに排気経路の上部分17cから中間部分17cの境界を定める少なくとも1つの排気孔26の上に配置される。アンブレラ弁は、(例えば、ステムの変形の故に)変形可能とすることができ、及び/又はピストン6の固定部に配置された孔28に沿って摺動可能に移動して構成を変更することができる。通過構成では、封止円盤22aは、中間部分17b内のより高いガス圧力のため、排気孔26から離れており、それにより、ガスが前記排気孔26を通過することを可能にする。遮断構成では、封止円盤22aは、排気経路の上部分17c内のより高いガス圧力のため、排気孔26に押し当てられ、それにより、前記排気孔26を封止して排気経路を閉鎖する。例えば、アンブレラ弁は、ゴムタイプのエラストマーで、又はシリコンで作製することができる。
【0035】
セレクタ24、60は、例えば、薬液又は疎水性膜60上に浮遊するように構成されたフロート24とすることができる。ここで、フロート24をセレクタとして備えた注入装置を動作させるための工程について、図2図7を参照して説明し、その後、膜60をセレクタとして備えた注入装置を動作させるための工程について、図8図11を参照して後述する。セレクタ24、60を除いて、注入装置110の特徴及び以下で説明する工程の特徴は、任意の実施形態に適用することができる。
【0036】
(セレクタはフロートである)
図2には、パージ前の、例えば、注入装置110が薬液と不要なガスとで満たされる充填ステップ中の、注入装置110が示されている。この充填ステップ中に、ピストンロッド12は、例えば、前記ピストンロッド12に作用する注入器108によって上方に駆動され、それにより、ピストン6を内部空間4内で長手方向に沿って本体2の上端に向けて、すなわち、上方に移動させる。下部空間4aが膨張し、その結果、前記下部空間4a内のガス圧力が上部空間4b内の基準ガス圧力、例えば、大気圧よりも低下する。
【0037】
セレクタ24は、排気経路の下部分17aから中間部分17bにガスが移動することを可能にするので、下部空間4a内の圧力低下は、排気経路の下部分17a及び中間部分17b内でも見られる。しかしながら、パージ弁22は、通過構成になるためには排気経路の中間部分17b内の過剰圧力を必要とするので、パージ弁22は、遮断構成で保持される。より正確には、パージ弁22が押し下げられて、排気孔26を封止し、それにより、遮断構成で排気経路を閉鎖する。
【0038】
パージ弁22による排気経路の閉鎖と組み合わされた下部空間4aの膨張によって、下部空間4a内の真空圧、すなわち、基準圧力よりも低い圧力が効果的に生じる。下部空間4a内の圧力は、例えば、基準圧力よりも0.2~0.5バール低い第1のチューブ弁130の開放圧力に達するまで低下する。第1のチューブ弁130の開放によって、下部空間4a内のこの真空圧を補償するために薬液の吸引が生じる。薬液は、薬液容器104に接続された充填ライン114を通って下部空間4aを満たす。チューブ内に存在するガスも、下部空間4a内に吸引される。
【0039】
次第に、下部空間4aが薬液及びガスで満たされるにつれて、下部空間4a内の圧力が上昇して大気圧に近づく。下部空間4a内の圧力が第1のチューブ弁130の閉鎖圧力(開放圧力と実質的に同様)に達すると、第1のチューブ弁130が閉鎖し、充填が停止される。充填ステップの終了時に、下部空間4aは、薬液34の量を上回る量のガス32で満たされる。真空圧が完全に補償される前に、第1のチューブ弁130の閉鎖によって圧力上昇が停止されたため、下部空間4a内のガス圧力は、まだ上部空間4b内のガス圧力よりも低い。その結果、パージ弁22は、遮断構成を維持する。
【0040】
上で説明したように、注入装置110への充填後、下部空間4a内のガスは、パージ中に排気されなければならない。このパージは、図3に示すように、ピストン6を下方に駆動することによって実行される。ピストン6は、本体2の下端に向かって内部空間4内を長手方向に沿って移動する。下部空間4aが収縮し、まだ下部空間4aと連通している中間部分17b内のガス圧力と上部空間4b内の基準ガス圧力との圧力差が、パージ弁22の開放圧力閾値よりも高くなるまで、すなわち、圧力差が第1の圧力閾値に達するまで、ガス圧力が下部空間4a内で上昇する。
【0041】
上述のように、パージ弁22は、パージ弁22の少なくとも開放圧力閾値だけ上部空間4b内の基準圧力を超える下部空間4a内の過剰圧力(例えば、過剰圧力と基準圧力との20~100ミリバールの圧力差)に応答して通過構成に移行するように構成される。それゆえ、パージ弁22が通過構成に移行し、それにより、排気経路が開放される。図示の例では、封止円盤22aが、排気孔26から離れる方向に移動し、それにより、前記排気孔26の封止が解除される。
【0042】
ガスは、内部空間4の下部空間4aから、ピストン6を横切る排気経路を通って、上部空間4bに排気される。より具体的には、ガスは、入口20を通って排気経路に流入し、次いで、排気経路の下部分17aに沿って移動し、その後、排気経路の中間部分17bに沿って、そして、排気孔26を通って、最終的に上部分17cに沿って移動し、上部空間に達する。これは、図3に点線矢印で示されている。
【0043】
ガスが排気経路を通って排気されている間に、ピストン6が下方に移動すると、ピストンは、下部空間4a内の薬液量に達する。より具体的には、下部インターフェース18は、薬液に接触し、入口20が前記下部インターフェース18の最も高い部分に開口しているので、ガスは、排気経路の入口20に向けて押し戻される。それゆえ、ガスは、薬液が排気経路の入口20に達する前に下部空間4aから排気される。全てのガスが排気されたときに、薬液がピストン6の下部インターフェース18の入口20から入り込み、排気経路の下部分17aを満たす。
【0044】
図示のように、排気経路の下部分17aは、セレクタ24が配置される空洞36を含むことができ、薬液は、空洞36を満たし始める。セレクタは、薬液上に浮遊するように構成されたフロート24であり、空洞36は、フロート24が空洞36内を長手方向に沿って上下に移動することを可能にするように構成される。空洞36は、排気経路の下部分17aと中間部分17bとの間の境界を形成する通路38を少なくとも含む。通路38は、空洞36の上部に配置される。フロート24は、フロート24が通路38を塞ぎ、それにより、排気経路を閉鎖する遮断構成と、フロート24が通路36から離して配置され、それにより、排気経路を開いた状態及び非遮断状態に保つ開放構成との間で、空洞36内を長手方向に沿って移動するように構成される。
【0045】
より正確には、空洞36がガス32で満たされると、フロート24は、空洞36の底部に留まり、通路38を開いた状態に保ち、それにより、排気経路を非遮断状態に保つ。薬液が空洞36に達すると、フロート24は、薬液上に浮遊し始めるので、薬液がフロートに及ぼす上向きの浮力(アルキメデスの原理)に従って薬液34によって運ばれ、上方に移動する。この力の下で、フロート24は、空洞36の上部に達して通路38を遮断するまで上方に移動する。
【0046】
通路38は、フロート24に面する、前記フロート24用の座部40を形成する周縁によって画定される。フロートは、座部に押し当たることによって通路38を塞ぐ。座部40は、例えば、金属で又は熱可塑性ポリウレタン、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックで作製される。有利には、座部40は、2500MPa(メガパスカル)よりも高い弾性率を有する材料から作製される。好ましくは、座部40は、排気経路の中間部分17bの方向に減少する断面を有し、例えば、座部40の形状は、少なくとも部分的に、中空円錐台である。ワッシャなどの、補強要素42は、特に前記座部が高度に変形可能な材料で作製される場合に、座部を補強するために座部40の上に設けることができる。
【0047】
図6の図示の例のように、フロート24は、通路38を塞ぐように構成された閉塞部24aを少なくとも有する。典型的には、通路38は、円形断面を有し、フロート24の閉塞部24aも、円形断面を有する。例えば、フロート10の閉塞部24aは、少なくとも部分的に楕円体形状、又は球形状若しくは松のような円錐形状を有してよい。例えば、フロート24は、単なるボールとすることができる。好ましくは、フロートの閉塞部24は、フロート24が座部40に押し当てられたときの通路38のより良好な封止のために変形可能な材料でコーティングされる。
【0048】
好ましくは、フロート24aは、閉塞部24aの最大幅部分に対する拡大した部分を備えた浮遊部24bを有し、前記浮遊部24bは、閉塞部24aを支持する。フロートは、図6のように2つの部分で構成することができ、又は閉塞部24aと浮遊部24bとを含む単一部片で構成することもできる。フロート24の閉塞部24aは、例えば、ボールである。フロート24の浮遊部24bは、フロートの閉塞部24a、すなわち、ボール部分の最大直径よりも大きな直径を有する。(長手方向に対して直交する)フロート24の浮遊部24bのより大きな直径は、薬液34がフロート24に及ぼす小さな力に対してフロート24をより応答性の高いものにする。この強化された応答によって、薬液がフロート24に達するとすぐにフロート24を押し上げることが可能となり、それゆえ、通路38がフロート24によって塞がれる前には薬液が前記通路に到達できないことが確実になる。
【0049】
薬液34が、フロート24、例えば、フロート24の浮遊部24bに接触すると、フロート24は、浮遊し始めるので、フロート24が座部40に達するまで上方に移動する。フロート24の形状及び座部40の形状は、フロート24が座部40を押圧したときに連続封止が形成されるように適合される。ここで、通路38は塞がれており、ガスも薬液も塞がれた通路38を通過することができない。少量のガスは、塞がれた通路38と薬液34の表面との間の空洞36内、すなわち、排気経路の下部分内に閉じ込められることがある。この少量のガスによって、座部を乾いた状態に保ち、座部40上の材料堆積を防ぐことが可能となる。少量は、例えば、大気圧で10ml未満の量であることがある。この少量の空気は、フロート24を乾燥させるのに十分な量であることがある。フロート24の密度、及び閉塞部24aと座部40との相補的な形状は、薬液の表面を座部40から離れた状態に保ちながら、閉じ込められる空気の量を最小限に抑えるように選択される。例えば、座部の断面は、排気経路の中間部分17bの方向に減少してよい。
【0050】
ひとたび通路38が塞がれると、ガスは、排気経路の下部分17a内の過剰圧力から逃れず中間部分17bに達しない。結果として、塞がれた通路38よりも上の中間部分17b内の圧力は、上部空間4bが前記基準圧力にあるので基準圧力よりも僅かに高い中間部分17b内の圧力と基準圧力との差がパージ弁22の閉鎖圧力閾値に達するまで、低下する。例えば、パージ弁22の閉鎖圧力閾値は、中間部分17b内の圧力と基準圧力との20~100ミリバールの正の圧力差に相当することができる。好ましくは、閉鎖圧力閾値及び開放閉鎖閾値は、実質的に同じであるが、異なることもできる。結果として、ここで、パージ弁22が遮断構成で閉鎖される(図5)。この例では、封止円盤22aが排気孔26を覆う。パージステップが終了する。残留過剰圧力(すなわち、基準圧力よりも僅かに高い)の少量のガス32が中間部分17b内に保持される。残留過剰圧力は、パージ弁22に排気孔26を開放させるほど十分に高くない。この残留過剰圧力は、上部空間4bから到来した大気圧の空気が排気経路の中間部分17bに入り込むことができないことを確実にし、したがって、薬液が循環する無菌領域に非無菌空気が流入することを防ぐ。
【0051】
工程は、パージステップの後であって注入ステップの前に発生する補完充填ステップを含むことがある。補完充填ステップは、下部空間4aを処方された正確な薬液量34で満たすことを可能にし、これは、(通常はピストン36の進行に基づく)不正確な量の測定の原因となったガス量32に起因して第1の充填ステップでは可能でなかった。
【0052】
工程は、ピストンが本体の下端に向かって内部空間内を長手方向に沿って移動し、薬液が医療用チューブに注入されるように内部空間の前記下部空間から流出する、注入ステップを含むことがある。排気経路が閉鎖されていると、ピストン6が押し下げられるときに下部空間4a内の圧力が上昇する。下部空間4a内の圧力が第2のチューブ弁140の開放圧力に達すると、第2のチューブ弁140が開放し、薬液34が下部空間4aから流出し、共通ライン102を移動して、患者ライン116に達することができる。したがって、ガスなしに薬液を注入することができる。注入中に、フロート24は薬液に接触する。
【0053】
ガスが排気されるときに、第2のチューブ弁140が開放する前にパージ弁22が開放するように、パージ弁22の開放圧力閾値(すなわち、第1の圧力閾値)が、第2のチューブ弁140の開放圧力閾値(第2の圧力閾値)よりも低いことに留意すべきである。しかしながら、この注入ステップ中に、セレクタ(フロート24)による通路38の閉塞は、下部空間4a内では圧力が上昇するが、排気経路の隔離された中間部分17b内では圧力が上昇しないことを意味する。したがって、パージ弁22は、遮断構成で保持される。
【0054】
図7a、図7b及び図7cに図示する変形例として、セレクタは、排気経路の2段階閉塞を伴うフロート50とすることができる。フロート50は、通路38を画定する座部40に接触する2つの別個の領域で通路38を塞ぐように構成される。この目的で、フロート50は、第1の閉塞部50aと、第2の閉塞部50bとを含み、第1の閉塞部50a及び第2の閉塞部50bは、フロート50が上昇して通路38を塞ぐと、先ず、第1の閉塞部50aが第1の座部40と協働して第1の封止を形成し、次いで、第2の閉塞部50bが座部40と協働して第2の封止を形成するように配置される。
【0055】
好ましくは、第1の閉塞部50aは、通路38に面し、それに対して、第2の閉塞部50bは、(長手方向に対して直交する平面における突起内において)第1の閉塞部50aを取り囲む座部40と協働するように構成された封止部分52を有する。その結果として、フロート50が上昇すると、第2の封止部が、第1の封止部を取り囲む。図示の例では、フロート50の第1の閉塞部50aは、既に説明した閉塞部のようなものとすることができ、図示のようにボールであってよい。フロート50の第2の閉塞部50bは、先に説明したフロートの浮遊部24bに対応することができる。第2の閉塞部50bは、第1の閉塞部50aに対して更に拡大させることができるが、ここでは、上部分の周囲で上方に突出する少なくとも1つの封止部分52も有する。好ましくは、封止部分52の最も高い箇所は、第1の閉塞部50aの最も高い箇所よりも下にあり、その結果、第1の封止が第2の封止よりも先に行われる。前述のように、フロート50は、2つの部片のフロートが図示されているが、1つの部片のフロートであり得ることに留意すべきである。
【0056】
座部40は、この種のフロート50に適合させることができる。座部40は、第1の座部40aと第2の座部40bとに対応する、通路38の2つの壁部分を画定することができる。第2の座部40bは、(長手方向に対して直交する平面における突起内において)第1の座部40aを取り囲む。好ましくは、第1の座部40aは、(例えば、20~30ShA(ショアAスケール)の硬さを有して変形可能であり、フロート50が第1の座部40aの変形後に第2の座部40bに接触できるように、フロート50が上昇し続けることを可能にする。
【0057】
図7aでは、フロート50は、座部40a、40bから離れており、通路38を塞いでいない。ガスは、上部空間4b内に排気されるように通路38を通過することができる。図7bでは、フロート50は、薬液上に浮遊し始めるので、座部40a、40bに向かって上方に移動する。フロートの第1の閉塞部50aは、上で説明したように、第1の座部40aに接触し、第1の封止を生じさせる。通路38は、第1の閉塞によって塞がれる。ピストン6が更に下方に移動すると、排気経路の下部分17aの空洞36内の圧力が上昇し、薬液が空洞36を満たす。フロート50は、フロート50が及ぼす力によって変形する、第1の座部40aに押し当たった状態を保っている。したがって、フロート50は上方に移動することができ、第2の閉塞部50bの封止部分52は、第2の座部40bに接触する。図7cに図示するように、第2の閉塞が行われる。
【0058】
この変形例では、大量のガスが、塞がれた通路の下に閉じ込められ、第2の封止は、乾いた状態に保たれて汚染が全くない、第1の閉塞部50aに薬液が触れないことを確実にする。第1の閉塞部50aは、清潔に保たれ、第1の封止が行われることを確実にする。
【0059】
(セレクタは膜である)
ここで、図8図11を参照して、膜60をセレクタとして備えた注入装置110を動作させるための工程を説明する。膜60は、排気経路を横切って延び、排気経路の下部分17a及び中間部分17bの境界を定める。膜60は、疎水性であり、薬液が通過することを防止する一方でガスが通過することを可能にするように構成される。この例では、膜60は、(長手方向に対して直交する)排気経路の入口20よりも大きな断面を有する空洞内に配置される。これは必須ではなく、入口20は、空洞36よりも大きな断面を有することができる。しかしながら、より大きな空洞は、ガスを通過させることができる膜60の表面を増加させるので、パージを加速させる。
【0060】
図8には、パージ前の、例えば、注入装置110が薬液と不要なガスとで満たされる充填ステップ中の、注入装置110が示されている。この充填ステップ中に、ピストンロッド12は、例えば、前記ピストンロッド12に作用する注入器108によって上方に駆動され、それにより、ピストン6を内部空間4内で長手方向に沿って本体2の上端に向けて、すなわち、上方に移動させる。下部空間4aが膨張し、その結果、前記下部空間4a内のガス圧力が、上部空間4b内のガス圧力、例えば、大気圧よりも低下する。
【0061】
膜60は、排気経路の下部分17aから中間部分17bにガスが移動することを可能にするので、下部空間4a内の圧力低下は、排気経路の下部分17a及び中間部分17b内でも見られる。しかしながら、パージ弁22は、通過構成になるためには排気経路の中間部分17b内の過剰圧力を必要とするので、パージ弁22は、遮断構成で保持される。より正確には、パージ弁22が押し下げられて、排気孔26を封止し、それにより、排気経路を閉鎖する。
【0062】
パージ弁22による排気経路の閉鎖と組み合わされた下部空間4aの膨張によって、下部空間4a内の真空圧、すなわち、基準圧力よりも低い圧力が効果的に生じる。圧力は、例えば、基準圧力よりも0.2~0.5バール低い第1のチューブ弁130の開放圧力に達するまで、低下する。第1のチューブ弁130の開放によって、下部空間4a内のこの真空圧を補償するために薬液の吸引が生じる。薬液は、薬液容器104に接続された充填ライン114を通って下部空間4aを満たす。チューブ内に存在するガスもまた、下部空間4a内に吸引される。
【0063】
次第に、下部空間4aが一定量の薬液34と一定量のガス32とで満たされるにつれて、下部空間4a内の圧力が上昇して大気圧に近づく。下部空間4a内の圧力が(開放圧力と実質的に類似する)第1のチューブ弁130の閉鎖圧力に達すると、第1のチューブ弁130が閉鎖し、充填が停止される。充填ステップの終了時に、下部空間4aは、薬液34の量を上回る量のガス32で満たされる。真空圧が完全に補償される前に、第1のチューブ弁130の閉鎖によって圧力上昇が停止されたため、下部空間4a内のガス圧力は、まだ上部空間4b内のガス圧力よりも低い。その結果、パージ弁22は、遮断構成を維持する。
【0064】
上で説明したように、注入装置110への充填後、下部空間4a内のガスは、パージ中に排気されなければならない。このパージは、図9に示すように、ピストン6を下方に駆動することによって実行される。ピストン6は、本体2の下端に向かって内部空間4内を長手方向に沿って移動する。下部空間4aが収縮し、まだ下部空間4aと連通している中間部分17b内のガス圧力と上部空間4b内のガス圧力との圧力差が、パージ弁22の開放圧力閾値よりも高くなるまで、すなわち、圧力差が第1の圧力閾値に達するまで、ガス圧力が下部空間4a内で上昇する。
【0065】
上述のように、パージ弁22は、パージ弁22の少なくとも開放圧力閾値だけ上部空間4b内の基準圧力を超える下部空間4a内の過剰圧力(例えば、過剰圧力と基準圧力との20~100ミリバールの圧力差)に応答して通過構成に移行するように構成される。それゆえ、パージ弁22が通過構成に移行し、それにより、排気経路が開放される。図示の例では、封止円盤22aが、排気孔26から離れる方向に移動し、それにより、前記排気孔26の封止が解除される。
【0066】
ガスは、内部空間4の下部空間4aから、ピストン6を横切る排気経路を通って、上部空間4bに排気される。より具体的には、ガスは、入口20を通って排気経路に流入し、次いで、排気経路の下部分17aに沿って移動し、膜60を通過し、その後、排気経路の中間部分17bに沿って、そして、排気孔26を通って、最終的に上部分17cに沿って移動し、上部空間4bに達する。これは、図9に点線矢印で示されている。
【0067】
ガスが排気経路を通して排気されている間に、ピストン6が下方に移動すると、ピストンは、下部空間4a内の薬液量に達する。より具体的には、下部インターフェース18は、薬液に接触し、入口20が前記下部インターフェース18の最も高い部分に開口しているので、ガスは、排気経路の入口20に向けて押し戻される。それゆえ、ガスは、薬液が排気経路の入口20に達する前に下部空間4aから排気される。全てのガスが排気されたときに、薬液が、ピストン6の下部インターフェース18の入口20から入り込み、排気経路の下部分17aを満たす。
【0068】
図示のように、膜60は、空洞36内に配置することができ、ガスが、排気経路の下部分17aに属する空洞36の下部から漏出して、排気経路の中間部分17bに属する空洞36の上部に達する間に、薬液は、空洞36を満たし始める。膜60は、薬液が通過することを防止する一方でガスが通過することを可能にするように構成される。膜60は、疎水性組織であり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PA(ポリアミド)、若しくは他のプラスチック材料、又は医療用ステンレス鋼から作製され得る。膜60は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)、又は他の疎水性原料でコーティングされてよい。
【0069】
膜60は、膜60の通気性と、膜60の細孔径とによって特徴付けられ得る。特に、膜60は、120Pa・s以下で5l/m/秒などの、非常に低い通気性を実現する。低い通気性によって、膜の細孔径を小さくすることが可能となる。例えば、膜60の細孔径は、約0.01~0.25ミクロンの範囲であり得る。任意選択的に、膜60は、0.07ミクロン以下の小さな細孔を有してよい。例えば、膜60の組織の厚さは、約200ミクロンであってよい。
【0070】
膜60は、薬液が膜60に接触したときに、薬液が通過することを防止し、排気経路の下部分17aに属する空洞36の下部において薬液が遮断される。ガスが、下部分17aから中間部分17b内にもはや到達しない一方で、まだ排気経路の前記中間部分17bから漏出して上部空間4bに達することができるので、排気経路の中間部分17b内の圧力は、上部空間4bが基準圧力にあるので、前記基準圧力よりも僅かに高い中間部分17b内の圧力と基準圧力との差がパージ弁22の閉鎖圧力閾値に達するまで低下する。例えば、パージ弁22の閉鎖圧力閾値は、中間部分17b内の圧力と基準圧力との20~100ミリバールの正の圧力差に相当することができる。好ましくは、閉鎖圧力閾値と開放閉鎖閾値は、実質的に同じであるが、異なることもできる。結果として、ここで、パージ弁22が閉鎖され(図11)、封止円盤22aが排気孔26を覆う。パージがここで終了する。
【0071】
工程は、パージステップの後であって注入ステップの前に発生する補完充填ステップを含むことがある。補完充填ステップは、下部空間4aを処方された正確な薬液量34で満たすことを可能にし、これは、(通常はピストン36の進行に基づく)不正確な量の測定の原因となったガス量32に起因して第1の充填ステップでは可能でなかった。
【0072】
工程は、ピストンが、本体の下端に向かって内部空間内を長手方向に沿って移動し、薬液が、医療用チューブに注入されるように内部空間の前記下部空間から流出する、注入ステップを含むことがある。排気経路が閉鎖されていると、ピストン6が押し下げられるときに下部空間4a内の圧力が上昇する。下部空間4a内の圧力が第2のチューブ弁140の開放圧力に達するときに、第2のチューブ弁140が開放し、薬液34が下部空間4aから流出し、共通ライン102を移動して、患者ライン116に達することができる。したがって、ガスなしに薬液を注入することができる。ガスが排気されるときに、第2のチューブ弁140が開放する前にパージ弁22が開放するように、パージ弁22の開放圧力閾値(すなわち、第1の圧力閾値)が、第2のチューブ弁140の開放圧力閾値(第2の圧力閾値)よりも低いことに留意すべきである。したがって、パージ弁22は、注入ステップの間、遮断構成で保持される。
【0073】
注入中に、膜60は、薬液に接触して、薬液との接触に起因して全注入圧を受ける。注入圧は、10cc/秒の注入速度に対して24バールなどの値に達し得る。膜60は、そのような高圧に耐えるように選択される。薬液が及ぼす機械的な力に膜60が耐えるのに役立つように、支持器を空洞36の上部内に、すなわち、排気経路の中間部分17b内に配置することができる。
【0074】
支持器は、膜60を機械的に支持するように膜60の上側に対して保持される。支持器は、ガス(例えば空気)に対して透過性があり、当然ながら、ガスが膜60を通過し且つ前記支持器を通過することを可能にする。支持体は、半硬質又は硬質フォームで作製されてよい。任意選択的には、支持体は、プラスチック製の多孔板又は微小孔を有する金属片であってよい。例えば、支持器は、好ましくは、金属で作製された、フォーム、メッシュ、又は格子とすることができる。しかしながら、支持器は、ガスが排気経路の中間部分17bを通過することを防止せずに、膜を機械的に支持する限り、任意の種類のものとすることができる。
【0075】
本発明を特定の好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明が、これらの実施形態に決して限定されないこと、及び本発明が、説明した手段及びこれらの組み合わせの全ての技術的均等物を包含することは明らかである。特に、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正が加えられ得ることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液容器から医療用チューブに薬液を注入するための注入装置であって、
本体の上端と前記本体の下端との間に長手方向に延びる内部空間を画定する前記本体であって、前記本体の前記下端は、前記薬液が前記薬液容器から前記内部空間に入り込むことができ且つ前記医療用チューブに注入されるように前記内部空間から流出できる、医療用チューブインターフェースを含む、前記本体と、
前記内部空間内に配置されるとともに、前記内部空間内を前記長手方向に沿って移動するように構成される、ピストンであって、前記ピストンは、前記内部空間の上部空間及び下部空間の境界を定め、前記下部空間は、前記薬液を受け入れるように構成される、前記ピストンと、
排気経路であって、前記内部空間の前記下部空間から前記上部空間に前記長手方向に前記ピストンを横切る、前記排気経路と、
前記排気経路の下部分と前記排気経路の中間部分との間の前記排気経路内に配置されるセレクタであって、前記排気経路の前記下部分は、前記下部空間に接続され、前記セレクタは、ガスが前記セレクタを通過すること及び前記排気経路の前記下部分から前記中間部分に前記排気経路に沿って移動することを選択的に可能にするように構成され、前記セレクタは、前記薬液が前記セレクタを通過すること及び前記内部空間の前記下部空間から上部空間に前記排気経路に沿って移動することを選択的に防止するように構成される、前記セレクタと、
前記排気経路の前記中間部分と前記排気経路の上部分との間の前記排気経路内に配置されるとともに、パージ弁が前記排気経路を閉鎖する遮断構成と前記パージ弁が前記排気経路を開いた状態に保つ通過構成との間で移動するように構成される、前記パージ弁であって、前記パージ弁の前記通過構成は、前記本体の前記下端に向かって移動する前記ピストンによって生じる、前記排気経路の前記中間部分内の過剰圧力を必要とする、前記パージ弁と、を含む、
注入装置。
【請求項2】
前記パージ弁は、前記ピストンが前記本体の前記上端に向かって移動すると前記遮断構成になるように構成される、請求項1に記載の注入装置。
【請求項3】
前記排気経路の前記下部分は、薬液及びガスの両方を受け入れるように構成され、前記排気経路の前記中間部分及び前記上部分は、ガスのみを受け入れるように構成される、請求項に記載の注入装置。
【請求項4】
前記上部空間は、一定の基準圧力に保たれるように構成され、排気経路の前記中間部分内の前記過剰圧力は、前記基準圧力を上回るガス圧力に相当する、請求項に記載の注入装置。
【請求項5】
前記ピストンは、前記内部空間の前記下部空間の境界を定める下部インターフェースを含み、前記下部インターフェースは、前記下部インターフェースの最も高い部分に開口する前記排気経路の入口を含む、請求項に記載の注入装置。
【請求項6】
前記下部インターフェースは、前記内部空間の前記下部空間から見て凸面を有し、前記排気経路の前記入口は、前記下部インターフェースの中心に開口するか、又は前記下部インターフェースは、前記内部空間の前記下部空間から見て凹面を有し、前記排気経路の前記入口は、前記下部インターフェースの周縁に開口する、請求項5に記載の注入装置。
【請求項7】
前記セレクタは、前記薬液上に浮遊するように構成されるとともに、空洞内に配置される、フロートであり、前記空洞は、前記排気経路に属する通路を少なくとも含み、前記フロートは、前記フロートが前記通路を塞ぎ、それにより、前記排気経路を閉鎖する、遮断構成と、前記フロートが前記通路から離間して配置され、それにより、前記排気経路を開放させる開放構成との間で、前記長手方向に沿って前記空洞内を移動するように構成される、請求項に記載の注入装置。
【請求項8】
前記フロートは、少なくとも1つの閉塞部及び浮遊部を有し、前記閉塞部は、前記通路を塞ぐように構成され、前記浮遊部は、前記閉塞部の最大幅部分に対する拡大した部分を有する、請求項7に記載の注入装置。
【請求項9】
前記フロートは、前記通路を画定する座部に接触する2つの別個の領域で前記通路を塞ぐように構成される、請求項に記載の注入装置。
【請求項10】
前記セレクタは、前記排気経路を横切って延びる膜であり、前記膜は、疎水性であり、前記ガスを通過させるように且つ前記薬液が通過することを防止するように構成される、請求項に記載の注入装置。
【請求項11】
前記膜は、空洞内に配置され、支持器は、前記膜を機械的に支持するように前記膜の上側に接して前記空洞内に配置され、前記支持器は、前記ガスが前記膜を通過し且つ前記支持器を通過することを可能にする、請求項10に記載の注入装置。
【請求項12】
注入システムであって、
請求項に記載の注入装置と、
薬液容器に接続されるように構成される第1のコネクタと、
前記薬液を当該注入システムに供給するために前記第1のコネクタを前記医療用チューブインターフェースに接続するように構成される薬液供給ラインと、
前記薬液を患者ラインに注入するために前記医療用チューブインターフェースと前記患者ラインとに接続されるように構成される共通ラインと、を含む、
注入システム。
【請求項13】
前記過剰圧力は、少なくとも第1の圧力閾値だけ前記上部空間内の基準圧力を超える前記排気経路の前記中間部分内の圧力に対応し、
前記共通ラインは、第2の圧力閾値を有する閾値弁を含み、
前記第1の圧力閾値は、前記第2の圧力閾値よりも低い、
請求項12に記載の注入システム。
【請求項14】
請求項に記載の注入装置を動作させるための工程であって、
前記注入装置は、前記本体の前記上端を上にして且つ前記本体の前記下端を下にした状態で保持され、前記工程は、
前記ピストンが、前記本体の前記上端に向かって前記内部空間内を前記長手方向に沿って移動して、前記薬液容器からの前記薬液及びガスを、前記医療用チューブインターフェースを通じて前記内部空間に入り込ませ、前記パージ弁は、前記遮断構成にある、充填ステップと、
前記ピストンが、前記本体の前記下端に向かって前記内部空間内を前記長手方向に沿って移動し、前記セレクタが前記薬液を前記下部空間内に保持している間に、前記ガスが、前記ピストンを横切る前記排気経路を通じて、前記内部空間の前記下部空間から前記上部空間に排気され、前記パージ弁が前記通過構成にある、パージステップと
を含む、
工程。
【国際調査報告】