(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】患者のニューロンを刺激してその病理学的同期活動を抑制するための医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519910
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2021077619
(87)【国際公開番号】W WO2022074080
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520398456
【氏名又は名称】グレタップ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Gretap AG
【住所又は居所原語表記】Baarerstrasse 55, Zug, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】タス,ペーター アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ13
4C053JJ21
4C053JJ33
4C053JJ34
4C053JJ36
(57)【要約】
本発明は、患者のニューロンを刺激してニューロンの病理学的同期活動を抑制するための医療デバイス(10)に関係する。前記医療デバイス(10)は、前記病理学的同期活動を抑制するべく構成された複数の刺激を患者の身体に与えるべく構成された非侵襲性治療刺激ユニット(12)と、前記患者の生理的活動または生理的サイクルに関係付けられた少なくとも1つの断続的または周期的クロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))を生成するべく構成されたクロック・ユニット(24)と、前記少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))に依存して前記医療デバイス(10)の動作をコントロールするべく構成されたコントロール・ユニット(18)と、を包含する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のニューロンを刺激して前記ニューロンの病理学的同期活動を抑制するための医療デバイス(10)であって、
前記病理学的同期活動を抑制するべく構成された複数の刺激を患者の身体に与えるべく構成された非侵襲性治療刺激ユニット(12)と、
前記患者の生理的活動または生理的サイクルに関係付けられた少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))を生成するべく構成されたクロック・ユニット(24)と、
前記少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))に依存して前記医療デバイス(10)の動作をコントロールするべく構成されたコントロール・ユニット(18)と、
を包含する、医療デバイス(10)。
【請求項2】
前記複数の刺激は、聴覚刺激、触覚刺激、振動刺激、振動触覚刺激、視覚刺激、電気刺激、および温度刺激のうちの少なくとも1つを包含し、それにおいて前記刺激ユニット(12)は、前記複数の刺激を選択的かつ間欠的に与えるべく構成される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))は、少なくとも2つの続いて生じるフェーズの反復するシーケンスを包含する、請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記クロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))の基礎となる前記生理的サイクルは、吸気フェーズ(A)、息こらえフェーズ(B)、呼気フェーズ(C)、および一時休止フェーズ(D)のうちの少なくとも1つを包含する呼吸サイクルである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記クロック・ユニット(24)は、前記患者の基準状態、特に基準生理的活動または基準生理的サイクルを参照する基準クロック信号(S(t))を生成するべく構成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
さらに、前記患者の生理的活動または生理的サイクルのためのガイダンスを提供するべく構成されたペーシング・ユニット(26)を包含し、それにおいて前記コントロール・ユニット(18)は、前記基準クロック信号(S(t))に依存して前記ペーシング・ユニット(26)を動作させるべく構成される、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記基準クロック信号(S(t))は、緩速呼吸範囲内、特に、0.07Hzから0.16Hzまでの範囲内のサイクル頻度を有する、請求項5または6に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記ペーシング・ユニット(26)は、前記患者の身体に前記患者の生理的活動または生理的サイクルについてのガイダンスを提供するための非侵襲性ガイダンス刺激、特に、視覚刺激、聴覚刺激、触覚刺激、振動刺激、振動触覚刺激、電気刺激、経皮電気刺激、経皮磁気刺激、経頭蓋電気刺激、経頭蓋磁気刺激、および電気舌刺激のうちの少なくとも1つを提供するべく構成され、それにおいて前記ガイダンス刺激は、前記患者に、生理的活動の実施をガイドまたは指示するべく構成される、請求項6または7に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記コントロール・ユニット(18)は、あらかじめ決定済みの、特に、前記基準クロック信号(S(t))に依存しない作動パターンに依存して前記刺激ユニット(12)を作動するべく構成される、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項10】
さらに、前記患者の実際の生理的活動または実際の生理的サイクルを監視するべく構成されたセンサ・ユニット(40)を包含し、それにおいて前記クロック・ユニット(24)は、前記センサ・ユニット(32)によって獲得された監視データに依存して前記実際の生理的活動または前記実際の生理的サイクルを示す記録クロック信号(S’(t))を生成するべく構成される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))に依存して、特に前記基準クロック信号(S(t))または前記記録クロック信号(S’(t))に依存して前記刺激ユニット(12)を作動するべく構成される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記刺激ユニット(12)を、前記クロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))の第1のフェーズの間においては第1の動作モードにおいて動作させ、かつ前記クロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))の第2のフェーズの間においては前記第1の動作モードとは異なる第2の動作モードにおいて動作させるべく構成され、それにおいて前記刺激ユニット(12)の前記第1の動作モードおよび前記第2の動作モードは、刺激モダリティ、与えられることになる前記刺激の頻度、作動される刺激エレメント、刺激の振幅、刺激パターン、前記刺激が与えられることになる前記患者の身体の刺激領域、および刺激の強度のうちの少なくとも1つにおいて異なる、請求項11に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記記録クロック信号(S’(t))に基づいて前記実際の生理的活動またはサイクルの特性を定量化するパラメータ(G)を決定するべく構成され、それにおいて前記コントロール・ユニット(18)は、前記パラメータ(G)とスレッショルドまたはスレッショルド範囲との比較に依存して前記医療デバイス(10)の動作をコントロールするべく構成される、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲に到達する場合には前記刺激ユニット(12)を作動し、かつ前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲の外側となる場合には前記刺激ユニット(12)の作動を停止するべく構成されるか、または、
前記コントロール・ユニット(18)は、前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲の外側となる場合にはあらかじめ定義済みの作動パターンに従って前記刺激ユニット(12)を作動し、かつ前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲に到達する場合には前記記録クロック信号(S’(t))に依存して前記刺激ユニット(12)を作動するべく構成される、
請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記決定されたパラメータ(G)と前記あらかじめ定義済みのスレッショルドとの前記比較の結果を示す情報を前記患者に提供するべく構成される、請求項13または14に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記ペーシング・ユニット(26)が前記基準クロック信号(S(t))に依存して作動され、かつ前記刺激ユニット(12)が前記複数の刺激の前記生成を停止するべくコントロールされるトレーニング動作モードにおいて前記医療デバイス(10)を動作させるべく構成され、それにおいて前記コントロール・ユニット(18)は、
前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲に到達するとき、前記医療デバイス(10)の前記動作モードを、それのトレーニング動作モードからガイド付き動作モードへ切り替え、前記ガイド付き動作モードにおける前記コントロール・ユニット(18)が、前記基準クロック信号(S(t))に依存して前記ペーシング・ユニット(26)を作動し、かつ前記記録クロック信号(S’(t))に依存して前記刺激ユニット(12)を作動するべく構成され、
前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲に到達しなくなったとき、前記医療デバイス(10)の前記動作モードをそれのガイド付き動作モードからそれのトレーニング動作モードへ切り替えるべく構成され、
前記医療デバイス(10)があらかじめ決定済みの時間期間にわたってそれのガイド付き動作モードにおいて動作されたときは、前記医療デバイス(10)の前記動作モードをそれのガイド付き動作モードからそれのガイドなし動作モードへ切り替え、かつ、
前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲に到達しなくなったとき、前記医療デバイス(10)の前記動作モードをそれのガイドなし動作モードからそれのガイド付き動作モードへ切り替えるべく構成される、
請求項13乃至15のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のニューロンを刺激してニューロンの病理学的同期活動を抑制するための医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病等のいくつかの脳障害は、ニューロン集団の異常に強い同期活動、すなわち強く同期されたニューロン発火またはバーストによって特徴付けられる。これは、パーキンソン病のほかに、たとえば本態性振戦、ジストニー、卒中後の機能障害、癲癇、うつ病、偏頭痛、緊張性頭痛、強迫性障害、過敏性腸症候群、慢性疼痛症候群、骨盤痛、耳鳴、境界性パーソナリティ障害における解離、および心的外傷後ストレス障害にも適用することができる。異常同期ニューロン活動は、それ自体、いくつかの神経的かつ精神的障害と大きく関連する。
【0003】
パーキンソン病の薬理学的処置、たとえばL-DOPAは、治療効果が限定的である可能性があり、またかなりの長期的な副作用を引き起こすことがある。パーキンソン病のための高頻度の脳深部刺激(DBS)は、疾患の進んだ段階における医学的な難治患者のための標準である。しかしながら、DBSは、かなりのリスクと関連付けされる外科手術を必要とする。たとえば、脳内の特定の標的領域における深部電極移植は、出血を引き起こす可能性がある。さらにまた、標準の連続高頻度DBSは、副作用を引き起こす可能性もある。
【0004】
さらに、振動触覚多チャンネル刺激を適用してパーキンソン病様の兆候またはそのほかの、異常同期ニューロン活動によって生じる神経的および精神的な障害を相殺する非侵襲性処置アプローチも周知である。特に、1つのアプローチによれば、異常同期活動によって影響を受けた患者のニューロンの少なくとも一部を選択的に活性化することが意図された断続的な刺激が患者に与えられる。この刺激は、患者に与えられる刺激の種類および時期を指定した比較的単純かつ反復的な作動パターンに従って実施することができる。さらなる周知のアプローチによれば、たとえば特許文献1および特許文献2に記述されているとおり、処置の間およびその合間に継続的に変化させることができる、より複雑な作動パターンに従って非侵襲性刺激を実行することができる。さらに、異常同期ニューラル・ネットワーク内の異なる亜集団に与えられる短い刺激の特徴シーケンスを適用する『協調リセット』(CR)と呼ばれる刺激テクニックが知られている。これらの刺激テクニックを適用することによって、標的ニューラル・ネットワークの脱同期を修復し、かつ維持することができる。
【0005】
通常、その種の異常同期ニューロン活動の処置のために、周知の非侵襲性刺激処置が頻繁に、たとえば、数週または数ヶ月の間にわたって、数時間のセッションが毎日適用される。しかしながら、異なる治療セッションの間において処置の効果の質が変化することがあり、それによって全体的な処置の効率が影響され得ることが明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/207247号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2019/243634号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの技術的な背景に鑑み、患者のニューロンの病理学的同期活動を抑制する効果的な治療処置を提供することを可能にする、患者のニューロンを刺激するための改良された非侵襲性医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項1の特徴を伴う医療デバイスによって解決される。
【0009】
したがって、患者のニューロンを刺激して前記ニューロンの病理学的同期活動を抑制するための医療デバイスが提供される。前記医療デバイスは、患者の身体に複数の刺激を与えるべく構成された非侵襲性治療刺激ユニットを包含する。前記複数の刺激は、前記患者の身体に与えられたときに前記病理学的同期活動を抑制するべく構成される。前記医療デバイスは、さらに、少なくとも1つのクロック信号、特に、前記患者の生理的活動または生理的サイクルに関係付けられた断続的または周期的なクロック信号を生成するべく構成されたクロック・ユニットと、前記少なくとも1つのクロック信号に依存して前記医療デバイスの動作をコントロールするべく構成されたコントロール・ユニットと、を包含する。
【0010】
提案されている医療デバイスは、治療および診断目的のために使用することができる。特に、提案されている医療デバイスは、神経的または精神的疾患、特にパーキンソン病、本態性振戦、ジストニー等々の処置のために使用されることが意図され得る。前記医療デバイスは、そのほかの、癲癇、多発性硬化症の結果としての振戦をはじめとするそのほかの病理学的振戦、うつ病、運動障害、小脳の疾患、強迫性障害、トゥレット症候群、卒中後の機能障害、痙攣、耳鳴、睡眠障害、統合失調症、過敏性腸症候群、嗜癖障害、パーソナリティ障害、注意欠陥障害、注意欠陥多動性症候群、ゲーム依存症、神経症、摂食障害、燃え尽き症候群、線維筋痛症、偏頭痛、群発性頭痛、一般的な頭痛、(頭部・顔面)神経痛、運動失調症、チック症または緊張亢進症、等の神経的または精神的疾患の処置のため、またそのほかの疾患の処置のために使用することもできる。
【0011】
上に述べられている疾患は、特定の回路内において互いに接続されている神経細胞群の生体電気通信の障害によって生じ得る。これによってニューロン集団が、連続的な病理学的ニューロン活動およびおそらくはそれらと関連付けされる病理学的連結性(網構造)を発生させる。これに関して言えば、多数のニューロンが同期活動ポテンシャルを形成し、このことは、関係のあるニューロンが過剰に同期して発火またはバーストすることを意味する。それに加えて、病理学的ニューロン集団が振動または間欠性ニューロン活動を有することがあり、このことは、それらのニューロンが律動的または間欠的に発火またはバーストすることを意味する。神経的または精神的疾患の場合においては、関係のあるニューロンのグループの病理学的な律動的活動の平均頻度を概略で1Hzから60Hzまでの範囲内、特に1Hzから30Hzまでの範囲内とすることができるが、これらの範囲の外側となることもある。それとは対照的に、健康な人のニューロンは、定性的に異なる態様で、たとえば相関性のない態様で発火またはバーストする。
【0012】
言い換えると、上に述べられている疾患のそれぞれは、患者の脳内または脊髄内の、病理学的同期ニューロン活動を有する少なくとも1つのニューロン集団によって特徴付けることができる。その種の病理学的同期活動を抑制するために、前記提案されている医療デバイスは、影響を受けているニューロン集団を刺激して、前記影響を受けているニューロン集団が相関性のない態様で、すなわち非同期的に発火またはバーストを生じさせるべく構成することができる。
【0013】
具体的に述べれば、前記医療デバイスは、非侵襲性治療処置デバイスである。このことは、前記医療デバイスが非侵襲性処置を展開して意図された治療効果を達成することを意味する。言い換えると、動作状態において前記医療デバイスが患者の身体内に移植されることはなく、したがって皮膚切開を必要としない。
【0014】
患者に作用させるため、したがって意図されている治療効果を達成するために、前記医療デバイスは、以下において『刺激ユニット』とも呼ばれる非侵襲性治療刺激ユニットを包含する。前記刺激ユニットは、患者の身体に対して複数の刺激を、すなわち異なる刺激を与えるか、または誘導するべく構成される。
【0015】
この開示の文脈においては、『刺激』および『(複数の)刺激』という用語が、前記刺激ユニットによって生成され、患者によって感じ取られる、すなわち患者の感覚によって記録されることが可能な任意の情報または事象を参照する。その種の刺激は、たとえば聴覚刺激、触覚刺激、振動刺激、振動触覚刺激、視覚刺激、電気刺激、特に電気舌刺激、および/または温度刺激のモダリティを有することができる。言い換えると、前記刺激ユニットによって生成される複数の刺激は、聴覚刺激、触覚刺激、振動刺激、振動触覚刺激、視覚刺激、電気刺激、特に電気舌刺激、および/または温度刺激のうちの少なくとも1つを包含することができる。これらの刺激は、患者の身体に与えられたときに、その刺激のモダリティに応じて患者の、たとえば眼、耳、および/または皮膚内の受容器によって感じ取られ、そこから患者の神経系へガイドされて、その患者の脳または脊髄内のニューロンの活性化または刺激を生じさせることができる。
【0016】
したがって、病理学的同期活動による影響を受けたニューロン集団を刺激するために、前記刺激ユニットは、それぞれの受容器によって検知されて前記患者の神経系へガイドされると、前記影響を受けたニューロン集団の少なくとも一部の活性化を生じさせる複数の刺激を患者の身体に与えるべく構成される。それを行うため、すなわち前記影響を受けたニューロン集団の刺激を生じさせるために、前記刺激ユニットによって生成される異なる刺激の特性を、選択的に、特にそれらのモダリティ、強度、振幅、頻度等といった点から設定することができる。
【0017】
前記刺激ユニットは、作動時に少なくとも1つの刺激を生成するべく構成された少なくとも1つの刺激エレメントを包含することができる。たとえば、前記刺激エレメントは、振動および/または触覚および/または振動触覚刺激を生成するべく構成することができる。それを行うために、前記刺激エレメントは、患者の皮膚に対して機械的に作用するべく構成されるロッド等の構成要素の運動に電気エネルギを変換するための電気機械アクチュエータを包含することができる。その種の構成においては、前記電気機械アクチュエータを、等電流モータ、ボイスコイル、電流の印加時に形状を変化させる電気活性ポリマから構成される圧電トランスデューサまたは変圧器の形式で提供することができる。
【0018】
それに代えて、またはそれに加えて、前記刺激ユニットは、聴覚刺激を生成するべく構成された少なくとも1つの刺激エレメントを包含することができる。たとえば、その種の刺激エレメントを、トーンを選択的に、かつ/または多様に、望ましい頻度および望ましい音量レベルにおいて発生するべく構成されたラウドスピーカの形式で備えることができる。1つの構成によれば、その種の聴覚刺激エレメントが装備された刺激ユニットは、患者用のヘッドフォンを包含するか、またはその形式で提供することができる。
【0019】
それに代えて、またはそれに加えて、前記刺激ユニットは、視覚または光学刺激を生成するべく構成された少なくとも1つの刺激エレメントを包含することができる。たとえば、その種の刺激エレメントは、望ましい頻度および望ましい強度レベルまたは輝度において選択的に光を発するべく構成された少なくとも1つの光源の形式、たとえば発光ダイオードの形式で提供されるか、またはそれを包含することができる。1つの構成によれば、前記刺激ユニットを、患者によって装着されるべく構成された眼鏡の中に統合することができる。これに関して言えば、前記刺激ユニットは、光に影響を及ぼして患者の眼内にそれをガイドし、異なる刺激を発生させるべく構成された刺激エレメントを包含することができる。前記刺激エレメントは、光を発するための光源および/またはシャッタ、フィルタ、および/または光に影響を及ぼして患者の眼内にそれをガイドするための偏光エレメントの形式で備えることができる。
【0020】
病理学的な影響を受けたニューロン集団の効果的な処置を可能にするために、前記刺激ユニットを、複数の刺激を選択的かつ間欠的に与えるべく構成することができる。したがって、定義済みの間隔および/または定義済みの部位において異なる刺激を発生させることができる。
【0021】
それに代えて、またはそれに加えて、前記刺激ユニットは、複数の刺激によって構成される断続的な刺激を与えるべく構成することができる。すなわち、前記刺激ユニットは、規則的かつ反復的な作動およびタイミング・パターンに従って複数の刺激を発生させるべく構成することができる。さらなる発展においては、ある作動およびタイミング・パターンに従って多様な組成、すなわち部位および量に関して多様な組成のニューロン亜集団の相互時間シフト作動をねらいとした異なる刺激を与えることができる。それを行うために、前記作動およびタイミング・パターンによって定義された作動シーケンスは、動作の間にわたって、たとえば、与えられることになる刺激の順序および特性、および/または同時に与えられることになる刺激の数および組み合わせという点から見て多様に調整することができる。
【0022】
患者のニューロンの病理学的同期活動を抑制するためのその種の刺激ユニットの一般的な機能および構造上の構成をはじめ、それの作動は、この分野の当業者によく知られており、したがって、この開示の中でさらに明細に述べることはしない。これに関して言えば、たとえば、その種の刺激ユニットの構造上の構成および作動が明細に述べられている国際公開第2019/243634号および同第2020/049004号に対する明示的な参照を行う。むしろ、以下においては、本発明と密接に関連し合う技術的特徴が、特に前記医療デバイスのクロック信号依存コントロールという点から見て明細に述べられる。
【0023】
上に示されているとおり、前記医療デバイスは、少なくとも1つのクロック信号、特に少なくとも1つの断続的または周期的なクロック信号を生成するべく構成されたクロック・ユニットを包含する。この開示の文脈においては、『断続的な信号』という用語が、推移または値が規則的な、特に実質的に規則的な時間間隔において反復、特に実質的に反復する信号のことを言う。さらに、『周期的な信号』という用語は、順序付けされた事象の反復、すなわち、同一の順序で規則的に、オプションとして規則的に反復する時間期間において反復する事象を包含する信号のことを言う。したがって、クロック信号は、続いて生じる少なくとも2つのフェーズの反復するシーケンスを包含するか、またはそれによって構成することができる。
【0024】
提案されている医療デバイスによれば、前記医療デバイスの動作のコントロールに使用される前記クロック信号が、患者の生理的活動または生理的サイクルと関係付けられる。この開示の文脈においては、『生理的活動』という用語が、患者の生理的状態の測定可能な変化を誘導する前記患者の活動のことを言う。さらに、『生理的サイクル』という用語は、患者の生理的状態または活動において規則的に反復する調節のシーケンスのことを言う。
【0025】
前記クロック信号は、生理的活動または生理的サイクルに関係付けられる。すなわち、前記クロック信号は、生理的活動および/または生理的サイクルと相関するか、またはそれを示すことができる。言い換えると、前記クロック信号に基づいて生理的活動または生理的サイクルの特性を導出することができる。たとえば、前記クロック信号は、基準生理的活動または基準生理的サイクルの特性および/または経時的な推移を示すことができる。この『基準生理的活動』および『基準生理的サイクル』という用語は、患者の基準状態、特に目標または望ましい基準状態、すなわち達成されるべき基準状態として役立つか、またはそれと関係付けられる事象のことを言う。それに代えて、またはそれに加えて、前記クロック信号は、実際の生理的活動または実際の生理的サイクルの特性および/または経時的な推移を示すことができる。したがって、『実際の生理的活動』および『実際の生理的サイクル』という用語は、患者の現在の、または支配的な状態のことを言う。
【0026】
前記コントロール・ユニットは、前記少なくとも1つのクロック信号に依存して前記医療デバイスの動作をコントロールするべく構成される。それを行うために、前記動作および作動が患者の生理的活動または生理的リズムにロックされた医療デバイスが提案される。したがって、生理的活動依存または生理的リズム依存の態様でコントロールされる医療デバイスが提供される。
【0027】
多様な、たとえば脳活動、代謝活動、および灌流に関する側面においては、患者または人間被験者の状態や体調が切れ目なく変化する。たとえば、塑性機構およびパラメータは、時間的に変化し得る。本発明に関して言えば、治療刺激の効果が患者の実際の状態および体調に依存し得ることが明らかになっている。したがって、治療刺激の有効性を改良するために、患者の生理的活動または生理的リズムに依存して、したがってロックされて作動される医療デバイスが提案される。それを行うために、前記提案されている医療デバイスは、前記少なくとも1つのクロック信号に依存して前記医療デバイスの動作をコントロールするべく構成された前記コントロール・ユニットを装備する。このようにして、提案されている解決策は、患者の状態依存態様で前記医療デバイスを作動することを可能にし、それによって、治療処置に好都合な患者の体調または状態が支配的であるとき、および/または治療処置の有意な成功を期待することが可能であるときに、影響を受けているニューロン集団の刺激を実行することを可能にする。
【0028】
1つの実施態様によれば、前記医療デバイスは、生理的活動に依存して、特に身体部分の運動に依存して作動されるように提供することができる。したがって、前記クロック・ユニットによって生成される前記クロック信号は、身体部分の運動と関係付けること、またはそれを示すことができる。その種の運動は、律動的および/または振動的および/または間欠的および/または偶発的な運動であり得る。したがって、前記クロック信号を生成するために、前記クロック・ユニットは、さらに進んだ説明を下に述べるとおり、身体部分の運動を測定するか、または決定するためのセンサ・ユニットを包含すること、またはそれと通信可能に接続することができる。
【0029】
前記提案されている医療デバイスは、比較的緩速の、たとえば、概略で0.03Hzから0.5Hzまで、特に0.1Hzから0.35Hzまでの範囲内の頻度を有する生理的リズムに対応する生理的サイクルに依存してロックされるか、または作動されるように提供することができる。緩速生理的リズムを伴う生理的サイクルは、治療処置効果にとって好都合なものとして識別されている。しかしながら、本発明およびそれと密接に関連し合う効果は、その種の緩速生理的サイクルに限定されない。
【0030】
具体的に述べれば、その種の緩速生理的サイクルを呼吸サイクルとすることができる。したがって、1つの実施態様によれば、前記クロック信号の基礎となる、すなわち前記クロック信号が関係付けられる前記生理的サイクルを、患者の、または患者のための呼吸サイクルとすることができる。具体的に述べれば、前記呼吸サイクルを、続いて生じる異なるフェーズ、好ましくは吸気フェーズ、息こらえフェーズ、および呼気フェーズのうちの少なくとも1つに分割することができる。さらなる発展においては、前記呼吸サイクルは、吸気フェーズ、息こらえフェーズ、呼気フェーズ、および一時休止フェーズからなる続いて生じるフェーズによって、特にこの順序で構成されるとすること、およびそれらに分割することができる。それに代えて、前記呼吸サイクルが、吸気フェーズおよび呼気フェーズからなる続いて生じるフェーズによって構成されるとすること、およびそれらに分割することができる。概して言えば、前記クロック信号を関係付けることができる前記生理的活動は、前記生理的サイクルの異なるフェーズのうちの少なくとも1つを参照することができる。
【0031】
それに代えて、またはそれに加えて、前記生理的サイクル、すなわち前記クロック信号が関係付けられるサイクルは、血圧および/または血液循環および/または皮膚微小循環サイクルであってもよい。具体的に述べれば、前記生理的サイクルは、組織層、特に毛細血管組織層内の血液量の変化サイクルと関係付けることができる。
【0032】
それに代えて、またはそれに加えて、前記生理的サイクル、すなわち前記クロック信号が関係付けられるサイクルを、皮膚微小循環の振動と関係付けることができる。その種の生理的サイクルは、たとえば約0.1Hzのサイクル頻度を有することができ、かつ光電式容積脈波記録法、特に赤外線光電式容積脈波記録法を用いて測定または記録することができる。
【0033】
前記クロック信号は、2セットの値、特に前記生理的活動または前記生理的サイクルの特性を定量化する第1のセットの値と時間に関係する第2のセットの値の間における関係を定義することができる。たとえば、前記第1のセットの値は、各値が前記生理的サイクルの1つのフェーズをそれぞれ参照できるように定義することができる。このようにして、前記クロック信号は、前記生理的サイクルのフェーズを時間におけるポイントに関連付けする対応するデータ・セットを定義することができる。このようにして、前記クロック信号は、前記生理的サイクルのいずれのフェーズがいずれの時間期間に関連付けされているかを示すことができる。
【0034】
それに代えて、第1のセットの値は、患者の肺に供給されるか、もしくは排出される気体の流量または患者の肺気量の変化等の前記生理的サイクルの生理的活動を示すパラメータまたは特性の振幅を定量化することができる。前記クロック信号は、それ自体、経時的な振幅の、すなわち考察されている前記生理的特性の推移を示すことができる。たとえば、前記振幅は、呼吸の流量、呼吸関連の胸壁の運動、および/またはパルスオキシメータによって照明され、測定される患者の皮膚の領域の光吸収における呼吸関連の変化を示すことができる。さらに、前記生理的サイクルが組織層内の血圧サイクルを参照するとき、前記振幅は、血圧サイクルおよび/または血液循環サイクルにより誘導された、パルスオキシメータによって照明され、測定され得る患者の皮膚の領域の光吸収における変化を示すことができる。前記クロック信号のセクション、すなわち経時的な前記振幅の推移は、前記生理的サイクルの個別のフェーズまたは個別の生理的活動と関連付けすることができる。言い換えると、あらかじめ決定済みのパターンに従うか、または一致するか、または類似する前記クロック信号のセクションまたは部分、特に経時的な前記振幅の推移におけるそれは、前記生理的サイクルの個別のフェーズおよび/または個別の生理的活動と関連付けすることができる。
【0035】
たとえば、あらかじめ決定済みの時間期間にわたって前記振幅が負の値を有するか、または前記振幅が負のスレッショルド値より下に維持される前記クロック信号のセクションを第1のフェーズと、特に、たとえば、前記クロック信号が前記患者の肺気量の変化を示すことができるときには前記呼気フェーズと関連付けすることができる。それに代えて、またはそれに加えて、あらかじめ決定済みの時間期間にわたって前記振幅が正の値を有するか、または前記振幅が正のスレッショルド値より上に維持される前記クロック信号のセクションを第2のフェーズと、特に吸気フェーズと関連付けすることができる。それに代えて、またはそれに加えて、あらかじめ決定済みの時間期間にわたって前記振幅がゼロ周りの範囲内、または前記負と前記正のスレッショルド値の間の範囲内に維持される前記クロック信号のセクションをさらなるフェーズ、特に前記息こらえフェーズおよび/または前記一時休止フェーズと関連付けすることができる。具体的に述べれば、前記振幅が前記正のスレッショルド値に等しい値から前記負のスレッショルド値に等しい値まで変化し、かつあらかじめ決定済みの時間期間にわたって前記振幅がゼロ周りの範囲内、または前記負と前記正のスレッショルド値の間の範囲内に維持される前記クロック信号のセクションを、第3のフェーズと、特に息こらえフェーズと関連付けすることができ、また前記振幅が前記負のスレッショルド値に等しい値から前記正のスレッショルド値に等しい値まで変化し、かつあらかじめ決定済みの時間期間にわたって前記振幅がゼロ周りの範囲内、または前記負と前記正のスレッショルド値の間の範囲内に維持される前記クロック信号のセクションを、第4のフェーズと、特に一時休止フェーズと関連付けすることができる。
【0036】
さらなる発展によれば、患者に前記医療デバイスを用いた処置を受けさせるとき、前記患者が基準の状態に置かれると好都合なことがあり得ることが明らかになった。実体に関して言えば、処置を受けさせる患者を基準状態に置くことによって、前記医療デバイスを前記基準の状態にあらかじめ調整できることから、支配的な生理的特性の監視または測定を必要とすることなく前記デバイスをより精密にその患者の前記生理的特性に適応させることができる。このようにして、前記意図された治療効果の再現性を確保することができる。さらにまた、前記基準の状態は、治療効果の増加または改善が期待される前記患者の状態を言うことができる。たとえば、その種の基準の状態は、信頼できる態様において好都合な状態を誘導することができる緩速深呼吸を患者が適用する状態を言うことができる。また前記基準の状態は、それ自体、前記患者のニューロンの前記病理学的同期活動に治療効果を有することができる。これは、患者が緩速深呼吸を適用しているとき特に該当することがあり、たとえばそれは、パーキンソン病またはそのほかの神経的かつ精神的障害に対していくつかの有益な効果を有することがある。
【0037】
前記基準の状態に患者を置くために、前記医療デバイスは、処置を受けさせる患者のためのガイダンスを提供するべく構成されたペーシング・ユニットを包含することができる。具体的に述べれば、前記ペーシング・ユニットは、意図された基準状態に達するためにどのように生理的活動を実施するかについて患者に指示することによって、前記患者にガイダンスを提供するべく構成することができる。言い換えると、前記ペーシング・ユニットは、患者を前記基準状態に置く患者の生理的活動または生理的サイクルについてのガイダンスを提供するべく構成することができる。それを行うために、前記医療デバイスの前記コントロール・ユニットは、指示クロック信号または目標クロック信号と呼ぶこともできる基準クロック信号に依存して前記ペーシング・ユニットの動作をコントロールするべく、すなわち前記ペーシング・ユニットを作動するべく構成することができる。前記基準クロック信号が、好ましくは前記基準生理的活動および/または基準生理的サイクルと関係付けられる。
【0038】
1つの実施態様によれば、前記ペーシング・ユニットは、患者に緩速深呼吸の実施を指示するべく構成することができる。したがって、前記コントロール・ユニットは、緩速呼吸サイクルと関係付けることができる基準クロック信号に依存して前記ペーシング・ユニットをコントロールするべく構成することができる。それを行うために、前記サイクルの長さおよびサイクルの頻度は、緩速呼吸の範囲内、たとえば、約0.07Hzから0.16Hzまでの範囲内にあるとすることができる。さらに、前記生理的サイクルの異なるフェーズの長さを、それぞれの緩速深呼吸に関係付けられた関連範囲内とすることができる。たとえば、前記吸気フェーズ、前記息こらえフェーズ、前記呼気フェーズ、および一時休止フェーズのうちの少なくとも1つのフェーズの長さを、それぞれ、2.5秒から5秒までの範囲、または1.8秒から3.6秒までの範囲内にあるとすることができる。前記サイクルの前記個別のフェーズは、互いに関するそれらの持続期間の点から見て異なることがあるか、または同一の持続期間または長さを有することがある。たとえば、1つの構成によれば、吸気フェーズと息こらえフェーズが、対応するか、またはまったく同一の持続期間を有することがある一方、呼気フェーズは、吸気フェーズの2倍の長さを有することがある。
【0039】
処置を受けさせる患者にガイダンスを提供するため、したがって指示を与えるために、前記ペーシング・ユニットは、前記患者に情報を提供するべく構成することができる。それを行うために、前記ペーシング・ユニットは、前記医療デバイスの前記クロック・ユニットによって、かつ/または前記コントロール・ユニットによって提供される情報を患者がより理解しやすい形式に変換するべく構成することができる。それを行うために、前記ペーシング・ユニットは、前記クロック信号から情報を抽出するか、またはそれを変換するべく構成することができ、その後それが、ディスプレイまたはラウドスピーカ等の出力デバイスによって患者に提示されるか、または提供される。
【0040】
具体的に述べれば、患者にガイダンスを提供するために、前記ペーシング・ユニットは、前記患者に対して非侵襲性のガイダンス刺激を提供するべく構成することができる。これらのガイダンス刺激は、病理学的同期ニューロン活動を抑制すると言うよりは、むしろ前記患者に情報を提供するべく構成することができる。しかしながら、いくつかの構成においては、前記ガイダンス刺激が前記ニューロンの病理学的同期活動の抑制に寄与することもできる。特に、ガイダンス刺激として、前記ペーシング・ユニットは、視覚刺激、聴覚刺激、触覚刺激、振動刺激、振動触覚刺激、電気刺激、経皮電気刺激、経皮磁気刺激、経頭蓋電気刺激、経頭蓋磁気刺激、および電気舌刺激のうちの少なくとも1つを提供するべく構成することができる。それを行うために、前記ペーシング・ユニット、特にそれの出力デバイスは、少なくとも1つの、たとえば、前記基準クロック信号を視覚化するためのディスプレイ・ユニットの形式で提供することができるさらなる刺激ユニットを包含すること、すなわち視覚刺激を提供することができる。前記ディスプレイ・ユニットは、スマートフォン等のモバイル・デバイスの一部とすることができる。
【0041】
それに代えて、またはそれに加えて、前記ペーシング・ユニットとは別の、またはそれに代わる非侵襲性治療刺激ユニットを、患者にガイダンスを提供するべく構成することもできる。それを行うために、前記刺激ユニットは、さらに、患者の生理的活動のためのガイダンスを提供する、したがって患者に指示を動作の間に与えるための、上に述べられているガイダンス刺激を生成するべく構成することができる。たとえば、前記医療デバイスは、前記刺激ユニットが作動される都度、すなわち患者の身体に刺激を与える都度、それに関係付けられた生理的活動を実施する指示が、たとえば吸気する指示が前記患者に与えられるように構成することができる。その種の構成により、前記刺激ユニットによって生成される刺激は、治療刺激、すなわちニューロンの病理学的同期活動の抑制に寄与する刺激および患者に指示を与えるためのガイド刺激の両方を構成することができる。このようにして、追加の刺激ユニットまたはペーシング・ユニットを医療デバイスに装備することを必要とせずに、患者にガイダンスを提供することができる。言い換えると、その種の構成においては、前記非侵襲性治療刺激ユニットがペーシング・ユニットを構成することもできる。したがって、前記刺激ユニットは、前記基準クロック信号に依存して前記コントロール・ユニットによって作動され得る。
【0042】
ガイダンス刺激は、患者の前記生理的サイクルの少なくとも1つのフェーズと関連付けすることができる。さらに、前記ガイダンス刺激は、生理的活動、特に前記関連付けされたフェーズに関係する生理的活動を実施させるよう患者をガイドするか、またはそれを指示するべく構成することができる。たとえば、前記ガイダンス刺激は、前記生理的サイクルの少なくとも1つのフェーズと関連付けすることができ、また前記関連付けされたフェーズまたは複数のフェーズの間における吸気の実施を患者に指示するべく構成することができる。
【0043】
1つの構成によれば、前記コントロール・ユニットは、あらかじめ決定済みの、特に、前記クロック・ユニットによって生成された前記クロック信号に依存しないとすることができる作動パターンに依存して前記刺激ユニットを作動するべく構成することができる。この構成においては、前記ペーシング・ユニットのみが、前記クロック信号に、すなわち前記基準クロック信号に依存してコントロールされ得る。言い換えると、前記刺激ユニットは、生理的サイクル非依存態様でコントロールされる。前記ペーシング・ユニットが処置を受けさせる患者に前記クロック信号に基づいてガイダンスを提供することから、前記医療デバイスは、前記患者が有利な基準状態に置かれることを確保し、それによって前記治療処置の効果的な実施を可能にすることができる。
【0044】
それに代えて、前記コントロール・ユニットは、前記クロック信号に依存して前記刺激ユニットを作動するべく構成することができる。1つの構成によれば、コントロール・ユニットは、前記基準クロック信号に依存して前記刺激ユニットを作動するべく構成することができる。このようにして、前記刺激ユニットは、前記基準生理的活動または前記基準生理的サイクルに依存する態様で作動することができる。
【0045】
さらなる発展においては、前記医療デバイスが、患者の実際の生理的活動または実際の生理的サイクルを監視するべく構成されたセンサ・ユニットを包含することができる。さらに、前記クロック・ユニットは、前記センサ・ユニットによって獲得された監視データに依存して前記クロック信号を生成するべく構成することができる。このようにして生成されたクロック信号を『記録クロック信号』と呼ぶこともある。前記記録クロック信号は、したがって、前記実際の生理的活動または前記実際の生理的サイクルを示すことができる。言い換えると前記クロック・ユニットは、前記センサ・ユニットによって獲得された前記監視データを、前記記録クロック信号を生成するための入力として使用するべく構成することができる。前記センサ・ユニットによって獲得された前記監視データは、無線またはケーブル接続を介して前記クロック・ユニットに送信することができる。
【0046】
前記センサ・ユニットに関して言えば、患者の生理的状態および/または生理的活動および/または生理的サイクルの変化を測定し、かつ監視することの可能な任意のセンサ・ユニットを使用することができる。たとえば、生理的活動および/または生理的サイクルが呼吸サイクルを参照する場合であれば、前記センサ・ユニットは、患者の肺へ向かう気体およびそこから排出される気体の流量の測定および監視を行うべく構成された流量計とすること、またはそれを包含することができる。それに代えて、またはそれに加えて、前記流量計は、前記患者の呼吸気体内の二酸化炭素の濃度または分圧の測定および監視を行うべく、たとえばカプノグラフィ・テクニックを用いて構成することができる。具体的に述べれば、前記流量計は、患者の頭部に解放可能に取り付けられるべく構成された前記センサ・ユニットのマスクに取り付けることができる。それに代えて、またはそれに加えて、前記センサ・ユニットは、呼吸関連の胸壁の運動を監視するべく構成することができる少なくとも1つの体表面センサとすること、またはそれを包含することができる。それを行うために、前記少なくとも1つの体表面センサは、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、歪みゲージ、伸張依存電気抵抗を伴う弾性バンド、および曲率依存光透過を伴う光ファイバのうちの少なくとも1つを装備することができる。それに代えて、またはそれに加えて、前記センサ・ユニットは、胸部の運動の速度および力の測定および監視を、たとえば2つ以上の心電図測定用電極の間の電気インピーダンスにおける変化を測定することによって行うべく構成された呼吸曲線記録器とすること、またはそれを包含することができる。それに代えて、またはそれに加えて、前記センサ・ユニットは、患者の胸部に取り付けられて、前記患者の胸部の運動の測定および監視を行うべく構成され得る少なくとも1つの圧電センサを包含することができる。
【0047】
それに代えて、またはそれに加えて、前記センサ・ユニットは、パルスオキシメータによって照明され、測定され得る患者の皮膚の領域の光吸収における変化を監視するべく構成された少なくとも1つのセンサを包含することができる。その種のセンサ・ユニットは、毛細血管組織層内における血液流量の変化を検出することを可能にするフォトプレチスモグラム(PPG)センサとすることができる。皮膚血流量が呼吸活動を示すことは明らかになっている。したがって、前記PPGセンサを呼吸の監視に使用することが可能である。したがって、患者の耳、指先、鼻中隔、または額に都合よく配置されたPPGセンサを使用して、前記患者の呼吸事象および呼吸リズムを測定することができる。それに代えて、またはそれに加えて、前記センサ・ユニットは、心血管の緩速振動を測定するべく構成されたレーザ・ドプラ流量計測センサを包含することができる。これに関して言えば、心血管の緩速振動が呼吸変調された皮膚血液灌流と関係付けられること、したがって、呼吸活動およびリズムを示すことが明らかになっている。
【0048】
それに代えて、またはそれに加えて、前記センサ・ユニットは、身体部分の運動の決定および/または定量化を行うべく構成することができ、それに基づいて前記クロック・ユニットが前記クロック信号を生成する。具体的に述べれば、前記センサ・ユニットは、身体部分の運動に関係付けられた量を測定するべく構成することができる。それを行うために、前記センサ・ユニットは、たとえば特に患者身体の2つの部位の間の角度を測定するべく構成できる少なくとも1つのゴニオメータを包含することができる。1つの構成においては、前記センサ・ユニットが少なくとも1つのゴニオメータを、特に、たとえば肘、膝等の身体の関節の領域に装着可能な電気ゴニオメータを包含することができる。それに代えて、またはそれに加えて、前記センサ・ユニットは、患者の身体、特に、運動が測定されることになる身体部分に取り付けられる少なくとも1つの加速度計を包含することができる。前記加速度計は、前記運動が監視されることになる前記身体部分の加速度に関係付けられる量を測定するべく構成することができる。それに代えて、またはそれに加えて、前記センサ・ユニットは、特に、運動が測定されることになる患者の身体部分に取り付けられる少なくとも1つのジャイロスコープを包含することができる。前記ジャイロスコープは、前記身体部分の角速度に関係付けられた量を測定するべく構成することができる。
【0049】
本発明のさらなる発展に関して言えば、生理的活動および/または生理的サイクルに対して治療刺激の引き渡しを適応させることが、前記医療デバイスによって提供される前記治療処置に好都合な効果を有し得ることが明らかになった。このことは、基準生理的活動および/またはサイクルをはじめ、実際の生理的活動および/またはサイクルの両方に適用される。
【0050】
したがって、患者の基準状態または実際の状態に対して治療刺激の引き渡しを適応させるために、前記コントロール・ユニットは、前記クロック・ユニットによって生成される前記少なくとも1つのクロック信号に依存して前記刺激ユニットを作動するべく構成することができる。より具体的に述べれば、前記コントロール・ユニットは、前記基準クロック信号に依存して前記刺激ユニットを作動して前記基準状態に対して刺激の引き渡しを適応させるか、かつ/または前記記録クロック信号に依存して患者の記録された、または実際の状態に対して刺激の引き渡しを適応させるべく構成することができる。このようにして、生理的状態依存刺激をもたらすことができる。さらなる発展においては、刺激パラメータ、たとえば前記複数の、強度、振動数、振幅等の刺激の特性が前記クロック信号に依存して調整され、かつコントロールされるように、前記刺激ユニットの動作をコントロールするべく前記コントロール・ユニットを構成することができる。
【0051】
さらに、前記コントロール・ユニットは、前記クロック信号に依存して、したがって前記生理的活動または前記生理的サイクルに依存して、特に前記生理的サイクルの少なくとも1つのフェーズに依存して前記医療デバイスの異なる動作モードを設定するべく構成することができる。すなわち、生理的活動または生理的サイクルの少なくとも1つのフェーズに依存して個別の動作モードをスケジュールするか、または活性化させることができる。具体的に述べれば、動作モードの開始および/または終了を、前記生理的活動または前記生理的サイクルのフェーズの開始および/または終了と一致させることができる。それに代えて、またはそれに加えて、動作モードの開始および/または終了を、前記生理的活動または前記生理的サイクルのフェーズの開始および/または終了に関して時間シフトさせることができる。それに代えて、またはそれに加えて、動作モードの持続期間を、生理的活動またはそれに関連付けされた生理的サイクルのフェーズの持続期間と等しくすることができる。それに代えて、またはそれに加えて、動作モードの持続期間を、生理的活動またはそれに関連付けされた生理的サイクルのフェーズの持続期間と相違させることができる。
【0052】
前記コントロール・ユニットは、前記周期的なクロック信号内の前記異なるフェーズを検出するべく構成することができる。それを行うために、前記コントロール・ユニットは、フィルタリング等の、特にバンドパス・フィルタリング、ヒルベルト変換、呼吸パターン円におけるクロック信号の変換、統計的評価、および/または線形もしくは非線形近似等のデータ解析の手段を適用することができる。さらに、前記コントロール・ユニットは、前記クロック信号と、すなわち経時的なそれの振幅の推移と、上に述べられているとおりの上側および下側スレッショルドとを比較し、前記クロック信号および前記生理的サイクルの異なるフェーズを識別するべく構成することができる。これに関して言えば、前記コントロール・ユニットは、前記振幅が前記上側スレッショルドを超えている間の前記クロック信号のセクションを第1のフェーズに、たとえば前記吸気または呼気フェーズに関連付けするか、かつ/または前記振幅が前記下側スレッショルドを下回っている間の前記クロック信号のセクションを第2のフェーズに、特に呼気または吸気フェーズに関連付けするか、かつ/または前記振幅がゼロ周りまたは前記上側と下側スレッショルドの間にある間の前記クロック信号のセクションをさらなるフェーズに、特に前記息こらえフェーズまたは一時休止フェーズに関連付けすることができる。
【0053】
さらに、前記コントロール・ユニットは、前記刺激ユニットを、前記クロック信号の、特に前記基準クロック信号または記録クロック信号の第1のフェーズの間においては第1の動作モードで、また前記クロック信号の第2のフェーズの間においては第2の動作モードで動作するべく構成することができる。このようにして、サイクル依存刺激を提供することができる。前記刺激ユニットの第1および第2の動作モードは、互いに異なるとすることができる。
【0054】
具体的に述べれば、前記第1と第2の動作モードは、それぞれの動作モードの間に与えられることになる刺激という点から見て相違させることができる。たとえば、前記第1と第2の動作モードは、刺激モダリティ、与えられることになる前記刺激の頻度、作動されることになる刺激エレメントのタイプおよび数、作動されることになる刺激エレメントが従う刺激パターン、刺激が与えられることになる患者の身体の刺激領域、刺激の振幅、刺激の強度等のうちの少なくとも1つにおいて互いに相違させることができる。1つの構成によれば、前記第1および第2の動作モードの間に生成される前記刺激の刺激モダリティは、たとえば、前記第1の動作モードの間においては振動または触覚または振動触覚刺激が生成され、前記第2の動作モードの間においては聴覚刺激が生成されるというように相違させることができる。さらに、前記第1の動作モードにおいて作動されることになる刺激エレメントが前記第2の動作モードと比較して相違するように、第1と第2の動作モードの間において刺激エレメントのタイプおよび数を多様にすることができる。それに代えて、またはそれに加えて、異なる動作モードの間において異なる刺激エレメントが作動されるか、または患者の身体の異なる領域が刺激されてもよい。たとえば、前記第1の動作モードにおいて患者の左手の指先を刺激し、前記第2の動作モードにおいて患者の右手の指先を刺激することができる。それに代えて、またはそれに加えて、前記刺激ユニットの異なる動作モードの間において、刺激のパラメータまたは特性を変化させることができる。たとえば、前記刺激ユニットによって提供される刺激が、前記第1の動作モードにおいては前記第2の動作モードと比較してより高い強度または振幅レベルにおいて提供されること、およびそれらの逆が行われるとすることができる。
【0055】
1つの構成によれば、前記コントロール・ユニットは、前記刺激ユニットをコントロールするように構成されて、前記第1の動作モードにおいては、患者の身体に与えられることになる複数の刺激をそれが生成し、前記第2の動作モードにおいては、それが前記複数の刺激の生成を停止する。言い換えると、前記第2の動作モードにおいては、前記刺激ユニットによって生成される刺激を患者が受けることを妨げ得る。したがって、前記刺激ユニットによって提供される治療刺激は、2つ以上の異なる動作モードのうちの一部においてのみ引き渡され得る。
【0056】
1つの構成によれば、前記クロック信号の前記第1のフェーズと前記第2のフェーズが、呼吸サイクルの異なるフェーズと関連付けされるか、または関係することができる。前記第1および前記第2のフェーズのそれぞれは、1つ以上の呼吸サイクルのフェーズと関係付けることができ、それにおいて前記第1のフェーズに関連付けされる前記1つ以上の呼吸サイクルのフェーズを、前記第2のフェーズに関連付けされるそれらと比較して相違させることができる。たとえば、前記第1のフェーズは、前記吸気フェーズまたは前記呼気フェーズを包含するか、またはそれと関係付けることができ、一方、前記第2のフェーズは、前記呼気フェーズまたは前記吸気フェーズを包含するか、またはそれと関係付けることができる。
【0057】
このようにして、治療刺激の吸気および呼気依存の引き渡しを提供することができ、これは特に、効果的な治療処置に寄与することができる。その理由は、人間の呼吸中枢が多くの脳領域を伴う広範囲にわたる求心性投射(シナプス結合)を形成することである。前記呼吸中枢は、それ自体、前記呼吸サイクルのフェーズに応じてこれらの脳領域の活動を変調する。たとえば、呼吸誘導変調効果は、多様な挙動、認識、および感情の状態に関係する、脳全体を通じて多様な明確に区別される脳領域に影響を及ぼすことがあり、かつ吸気フェーズと非吸気フェーズの間において明確に異なることがある。
【0058】
さらに、前記コントロール・ユニットは、前記記録クロック信号に基づいて、前記センサ・ユニットによって測定された実際の生理的活動または実際の生理的サイクルが、前記医療デバイスによる処置を提供するための望ましい状態に対応するか否かを評価するべく構成することができる。それを行うために、前記コントロール・ユニットは、前記記録クロック信号に基づいて、前記実際の生理的活動または実際の生理的サイクルを示すパラメータを決定するべく構成することができる。具体的に述べれば、前記パラメータは、前記実際の生理的活動またはサイクルの特性を定量化するべく提供することができる。さらに、前記コントロール・ユニットは、前記パラメータに依存して前記医療デバイスの動作をコントロールするべく構成することができる。具体的に述べれば、前記コントロール・ユニットは、このように決定されたパラメータと少なくとも1つの基準値、または少なくとも1つのスレッショルド、または少なくとも1つのスレッショルド範囲との比較に依存して前記医療デバイスの動作をコントロールするべく構成することができる。
【0059】
より具体的に述べれば、前記コントロール・ユニットは、前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲に到達するときには前記刺激ユニットを作動し、かつ前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲外となるときには前記刺激ユニットの作動を停止するべく構成することができる。それに代えて前記コントロール・ユニットは、前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲外となる場合に、あらかじめ定義済みの、特に、患者の前記生理的活動または生理的サイクルに依存しない作動パターンに依存して前記刺激ユニットを作動し、前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲に達する場合には、前記クロック信号、特に前記基準クロック信号または記録クロック信号に依存して前記刺激ユニットを作動するべく構成することができる。
【0060】
その種の構成によって、たとえば測定され、記録された呼吸サイクルのサイクル頻度または呼吸速度が緩速呼吸の範囲内にあるときにのみ、前記非侵襲性の刺激を活性化することによって、たとえば患者が緩速呼吸のための報奨を受けることができる。それを行うために、たとえば、前記コントロール・ユニットは、前記パラメータが前記生理的サイクルの特性を示すとき、多数の記録済みの先行する呼吸サイクルに基づいて、たとえば10個の先行する呼吸サイクルに基づいて呼吸速度または平均のサイクル頻度を決定するべく構成することができる。具体的に述べれば、前記コントロール・ユニットは、特に、それぞれの呼吸サイクルの完了後に前記パラメータを計算し、前記実際の病理学的サイクル状態が前記望ましい状態に対応するか否か、すなわち緩速呼吸状態にあるか否かを決定するためにそれと対応するスレッショルドまたはスレッショルド範囲を比較する。
【0061】
さらに、前記コントロール・ユニットは、特に前記ペーシング・ユニットを用いて、前記決定されたパラメータと前記あらかじめ定義済みのスレッショルドの比較の結果を示す情報を患者に提供するべく構成することができる。このようにして、前記医療デバイスは、意図された基準状態に達しているか否かについてのフィードバックを患者に提供することができる。たとえば、前記医療デバイスが患者を緩速呼吸の基準状態に置くことを意図している場合においては、前記医療デバイスが、患者に、その患者のブリーフィング・レートが高すぎるか否か、または低すぎるか否かについての情報を、たとえば視覚的および/または聴覚的フィードバック信号を用いて提供することができる。
【0062】
1つの構成によれば、前記コントロール・ユニットは、最初に、前記ペーシング・ユニットが前記基準クロック信号に依存して作動され、かつ前記刺激ユニットが前記複数の刺激の生成を停止するべくコントロールされるトレーニング動作モードにおいて、前記医療デバイスを動作させるべく構成することができる。したがって、このトレーニング動作モードにおいては、前記刺激ユニットから患者への刺激の引き渡しが妨げられ得る。
【0063】
さらに、この構成によれば、前記コントロール・ユニットは、前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲に到達するとき、前記医療デバイスの動作モードを、それのトレーニング動作モードからガイド付き動作モードへ切り替えるべく構成することができ、それにおいて、前記ガイド付き動作モードでは、前記コントロール・ユニットは、前記基準クロック信号に依存して前記ペーシング・ユニットを作動し、かつ前記記録クロック信号または前記基準クロック信号に依存して前記刺激ユニットを作動するべく構成することができる。さらに、前記コントロール・ユニットは、前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲に達しなくなるか、または前記スレッショルド範囲内でなくなったとき、すなわち前記スレッショルド範囲の外側となるとき、前記医療デバイスの動作モードを、それのガイド付き動作モードからそれのトレーニング動作モードへ切り替えるべく構成することができる。
【0064】
さらに、前記コントロール・ユニットは、前記医療デバイスがあらかじめ決定済みの時間期間にわたってそれのガイド付き動作モードにおいて動作したとき、特にその間に前記決定されたパラメータが継続的に前記スレッショルド範囲に到達していたとき、すなわちその間に前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲内にあったとき、前記医療デバイスの動作モードを、それのガイド付き動作モードからガイドなし動作モードへ切り替えるべく構成することができる。さらに、前記コントロール・ユニットは、前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲に到達しなくなったとき、前記医療デバイスの動作モードを、それのガイドなし動作モードからそれのガイド付き動作モードへ、特にあらかじめ決定済みの時間期間にわたって切り替えるべく構成することができる。
【0065】
この開示は、次に挙げる添付図面との関係から考察される以下の詳細な説明を参照することによってより容易に認識されることになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】患者のニューロンを刺激して病理学的同期ニューロン活動を抑制するための医療デバイスを略図的に図解したブロック図である。
【
図2】
図1に図示されている医療デバイスにおいて使用されるクロック信号を略図的に図解したグラフである。
【
図3】
図1に図示されている医療デバイスのペーシング・ユニットを略図的に示した正面図である。
【
図4】さらなる実施態様に従った医療デバイスを略図的に図解したブロック図である。
【
図5】さらなる実施態様に従った医療デバイスを略図的に図解したブロック図である。
【
図6】さらなる実施態様に従った医療デバイスを略図的に図解したブロック図である。
【
図7】さらなる実施態様に従った医療デバイスを略図的に図解したブロック図である。
【
図8】
図7に図示されている医療デバイスのペーシング・ユニットを略図的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの図面においては、類似する要素が同一の参照番号によって示されているが、それらの説明の反復は、冗長性を回避するために省略されることがある。
【0068】
図1は、病理学的同期ニューロン活動によってもたらされる神経的または精神的疾患の治療処置のために使用されることが意図された医療デバイス10を略図的に図示したブロック図である。具体的に述べれば、医療デバイス10は、病理学的同期活動を抑制するべく患者のニューロンを刺激するために構成されている。
【0069】
患者に作用を及ぼすために、医療デバイス10には、非侵襲性処置を展開して意図された治療効果を、すなわち患者のニューロンの病理学的同期ニューロン活動の抑制を達成するべく構成された非侵襲性治療刺激ユニット12が装備される。刺激ユニット12は、患者の身体に対して複数の異なる非侵襲性刺激を与えるべく構成される。複数の刺激は、患者に与えられたときに病理学的同期ニューロン活動を抑制するか、または抑制に寄与するべく構成される。医療デバイス10の適用および構成に依存して、即座に、すなわち複数の刺激のうちの最初のものを与えたときに、病理学的同期ニューロン活動を抑制するか、または抑制に寄与するべくそれらの複数の刺激を構成することができる。それに代えて複数の刺激は、複数の刺激の一部が与えられた後に意図された治療効果が展開されるべく構成されてもよい。
【0070】
具体的に述べれば、病理学的同期活動による影響を受けたニューロン集団を刺激するために、刺激ユニット12は、患者の身体のそれぞれの受容器によって検知され、前記患者の神経系へガイドされると、影響を受けたニューロン集団の刺激を少なくとも部分的に生じさせることができる複数の刺激を患者の身体に与えるべく構成される。それを行うために、すなわち影響を受けたニューロン集団を活性化させるために、複数の刺激のそれぞれのために、刺激モダリティ、刺激タイミング、刺激特性、たとえば強度および頻度等がそれぞれ設定される。
【0071】
示されている構成においては、刺激ユニット12が、4つの刺激エレメント14を包含するが、当然のことながらこの数に限定されることはなく、むしろ4つより多くの、またはそれより少ない刺激エレメント14を包含することは可能である。各刺激エレメント14は、多様な、刺激強度および刺激頻度といった刺激特性の刺激を生成するべく構成される。具体的に述べれば、各刺激エレメント14は、電気エネルギを患者の皮膚に機械的に作用するべく構成されたロッドの運動に変換し、それによって振動または触覚または振動触覚刺激を生成するための電気機械アクチュエータによって構成される。代替構成によれば、刺激エレメント14は、聴覚刺激、視覚刺激、電気刺激、電気舌刺激、温度刺激等の異なるモダリティの刺激を生成するべく構成することができる。
【0072】
刺激エレメント14は、患者身体の、特に患者の皮膚の標的領域に着脱可能に取り付けられるべく構成された担体構成要素16内に埋め込まれる。示されている構成においては、担体構成要素16が、患者の手への装着が可能になるように提供される。具体的に述べれば、担体構成要素16は、グローブの形式で提供することができる。それに代えて、患者身体の別の部分、たとえば、患者の頭部の領域または腹部の領域に装着する担体構成要素16が意図されてもよい。したがって、代替構成においては、異なる刺激エレメントを担持するヘッドバンドまたは胴バンドの形式で担体構成要素を設計することができる。簡潔性のため、
図1に図示されている医療デバイス10は、1つの単一の担体構成要素16を包含している。さらなる構成によれば、医療デバイス10は、1を超える数の担体バンド16を、たとえば別々の手または患者身体のほかの2つの部分に装着されることを意図し得る2つの担体バンド16を包含することができる。
【0073】
概して言えば、人間の皮膚は、刺激、すなわち触覚または振動刺激を検知する能力のある機械受容性求心性ユニットを包含し、これらは、2つの主要なカテゴリ、すなわち高速適応ユニット(FA)および低速適応ユニット(SA)に分類される。FAユニットは、運動刺激をはじめ、ステップ刺激の開始および除去に応答する。これに対して、SAユニットは、維持放電に応答する。それに加えて、それらの受容野の特性に基づいて、両方のカテゴリともに、さらに2つの異なるタイプに分類される。RA(迅速適応)ユニットとも呼ばれる高速適応タイプI(FA I)ユニットおよび低速適応タイプI(SA I)ユニットは、小さいが、明瞭に画定された受容野を皮膚表面上に形成する。これに対して、PC(パチーニ小体)ユニットとも呼ばれる高速適応タイプII(FA II)ユニットおよび低速適応タイプII(SA II)ユニットによって形成される受容野は、より広く、不明瞭な境界を有する。
【0074】
通常、異なるタイプの機械受容器の分布および密度は、人間の皮膚の位置に依存して異なる。たとえば、人間の手の無毛皮膚に関して言えば、指先の領域のFA Iユニットの密度が比較的高い。それとは対照的に、指および手の裏の領域では、FA IIユニットの密度が比較的高い。
【0075】
人間の皮膚の4つの異なるタイプの機械受容器は、定性的に異なる刺激に対して最適に応答する。具体的に述べれば、エッジ刺激および伸展刺激は、SA IおよびSA II機械受容器にとって、それぞれ最適である。SA Iユニットが、しばしば、どちらかと言うと不規則な維持放電を有する一方、SA IIユニットは、規則的な態様で放電するが、しばしば、触覚刺激がないときに自発性放電を呈する。FA Iユニットにとっては、約30Hzから約60Hzまでの間の範囲内の振動性垂直正弦波皮膚変位が最適刺激である一方、FA IIユニットにとっては、約100Hzから約300Hzまでの間の範囲内の振動刺激が最適刺激である。FA Iおよび、特にSA Iユニットは、明確なエッジ輪郭感度を有し、したがって、それらの応答は、刺激コンタクタ表面が受容野内に完全には含まれないとき、より強いものとなる。したがって、FA I応答を強化するために、刺激エレメントの平坦な空間的に均質なコンタクタ表面に代えて、空間的に不均質な凹みプロファイルを伴うコンタクタ表面を使用することが可能である。
【0076】
示されている実施態様においては、刺激エレメント14が、FA I、FA II、SA I、および/またはSA IIユニットの応答特性に適応された刺激を生成するべく設計され、構成されている。刺激エレメント14のそれぞれは、FA I、FA II、SA I、およびSA IIユニットのうちの少なくとも1つに対する応答に適応された刺激を生成するべく構成することができる。たとえば、医療デバイス10は、FA I、FA II、SA I、およびSA IIユニットのうちの1つだけを標的にする刺激を生成するべく構成された刺激エレメント14を包含することができる。言い換えると、これらの刺激エレメント14は、FA I、FA II、SA I、およびSA IIユニットのうちの1つの応答特性に適応された刺激を生成する。それに代えて、またはそれに加えて、医療デバイス10は、FA I、FA II、SA I、およびSA IIユニットのうちの2つ以上を標的とする刺激を生成するべく構成された刺激エレメント14を包含することができる。たとえば、その種の刺激エレメント14は、FA I、FA II、SA I、およびSA IIユニットのうちの2つ以上によって検知される刺激を生成するべく構成することができる。それに代えて、またはそれに加えて、その種の刺激エレメント14を、異なる動作モードにおいて動作するために構成することができ、それにおいては、異なるFA I、FA II、SA I、およびSA IIユニットの応答特性にそれぞれが適応された異なる刺激が生成される。
【0077】
具体的に述べれば、FA Iタイプの受容器を標的とするために、刺激エレメント14を、30Hzから60Hzまでの間の、すなわち30Hzの振動数および0.25mmの振動のピーク・トゥ・ピーク振幅を伴う振動刺激を生成するべく構成することができる。たとえば、この刺激エレメント14は、患者の指先に装着されることを意図したものとすることができる。さらに、FA IIタイプの受容器を標的とするために、刺激エレメント14を、100Hzから300Hzまでの間の、すなわち250Hzの振動数および2.0mmのピーク・トゥ・ピーク振幅を伴う振動刺激を生成するべく構成することができる。たとえば、この刺激エレメント14は、患者の指または手の裏に装着されることを意図したものとすることができる。さらに、充分に大きな振動のピーク・トゥ・ピーク振幅については、FA Iタイプの受容器を標的とする低周波振動が付加的にFA IIタイプの受容器を活性化すること、またその逆も言えることが明らかになっている。したがって、ピーク・トゥ・ピーク振幅を、たとえば3.0mmのピーク・トゥ・ピーク振幅まで増加することによって、上に述べられている刺激エレメント14のそれぞれは、FA IおよびFA IIタイプの受容器の両方の刺激に適応された振動刺激を生成することができる。
【0078】
医療デバイス10は、さらに、刺激ユニット12を選択的かつ間欠的に、すなわち異なる刺激エレメント14を作動するために構成されたコントロール・ユニット18を包含する。具体的に述べれば、コントロール・ユニット18は、接続線22を介して刺激エレメント14のそれぞれと接続される作動ユニット20を包含し、そのそれぞれを通して、望ましい作動パターンに従って異なる刺激エレメント14が作動されるように、電気エネルギまたはコントロール信号が選択的に刺激エレメント14にガイドされる。
【0079】
病理学的な影響を受けたニューロン集団の効果的な処置を可能にするために、コントロール・ユニット18は、刺激ユニット14が複数の刺激を選択的かつ間欠的に与えるようにそれをコントロールするべく構成される。具体的に述べれば、異なる刺激が、多様な、すなわち部位および量に関して多様な組成のニューロン亜集団の相互時間シフト作動をねらいとした作動およびタイミング・パターンに従って患者の身体に与えられる。それを行うために、作動およびタイミング・パターンによって定義された作動シーケンスを、動作の間にわたって、たとえば、与えられることになる刺激の順序、および/または同時に与えられることになる刺激の数および組み合わせという点から見て多様にコントロール・ユニット18によって調整することができる。
【0080】
さらに医療デバイス10は、少なくとも1つの断続的または周期的なクロック信号を生成するべく構成された、患者の生理的活動または生理的サイクルに関係付けられるクロック・ユニット24を包含する。具体的に述べれば、
図1に示されている構成においては、クロック信号が、参照記号『S(t)』によって示され、かつ基準呼吸サイクルの形式の基準生理的サイクルに関係する基準クロック信号である。基準呼吸サイクルと、したがってクロック信号S(t)もまた、
図2に図示されているとおり、また以下においてさらに説明するとおり、少なくとも3つの続いて生じるフェーズA-Cの反復シーケンスを包含する。代替実施態様によれば、生理的サイクル、特に呼吸サイクルは、3つより少ないか、またはそれより多くの続いて生じるフェーズを、特に、たとえば吸気フェーズおよび呼気フェーズによって構成され得る2つのフェーズを包含することができる。
【0081】
図2は、基準クロック信号S(t)の一部を例示的に図解したグラフを図示している。グラフの横座標は、時間を示し、グラフの縦座標は、基準呼吸サイクルに従った患者の生理的状態の変化を示すパラメータまたは特性の振幅を示す。例として述べれば、
図2において、患者の肺に供給されるか、またはそこから排出される気体の流量が、基準呼吸サイクルを示すパラメータとして図示されている。したがって、
図2において、基準クロック信号S(t)は、経時的な流量の推移を図示している。ここで指摘しておくが、呼吸関連の胸壁の運動を示すパラメータ等の呼吸サイクルの変化を示す任意のパラメータを、流量に代えて使用することができる。
【0082】
クロック信号S(t)は、吸気フェーズA、息こらえフェーズB、および呼気フェーズCによって構成される3つの続いて生じるフェーズの反復シーケンスを定義する。具体的に述べれば、吸気フェーズAは、正の流量によって特徴付けられる。呼気フェーズCは、負の流量によって特徴付けられる。息こらえフェーズBは、
図2から推測可能なとおり、ゼロ周りの流量によって特徴付けられる。具体的に述べれば、図示されている基準クロック信号S(t)は、約0.03から0.16Hzまでの範囲、たとえば0.07Hzから0.16Hzまでの範囲のサイクル頻度を有する緩速呼吸サイクルを参照する。その呼吸サイクル内において、異なるフェーズA-Cは、対応するフェーズ長を有することができる。したがって、呼吸サイクル内の異なるフェーズA-Cのうちのそれぞれは、2.1秒から4.8秒までの範囲のフェーズ長、すなわち持続期間を有することができる。それに代えて、呼気フェーズが、吸気フェーズおよび息こらえフェーズのそれぞれのフェーズ長の実質的に2倍のフェーズ長を有することができる。
【0083】
示されている構成においては、基準クロック信号S(t)が連続関数の形式で提供されるが、別の形式で提供されることもあり得る。具体的に述べれば、生理的活動または生理的サイクル、すなわち基準呼吸サイクルのそれぞれのフェーズを関連付けされた時間期間と関係付けることが可能な任意の関数またはデータ・セットは、クロック信号として適当であり得る。
【0084】
図1から推測可能なとおり、クロック・ユニット24は、コントロール・ユニット18の一体部分として提供される。それに代えて、クロック・ユニット24を、コントロール・ユニット18とは別に、すなわち構造的に別々の態様で提供することができる。
【0085】
コントロール・ユニット18は、クロック・ユニット24によって提供される基準クロック信号S(t)に依存して医療デバイス10の動作をコントロールするべく構成することができる。具体的に述べれば、コントロール・ユニット18は、基準クロック信号S(t)に依存して医療デバイス10のペーシング・ユニット26の動作をコントロールするべく構成される。ペーシング・ユニット26は、患者の生理的活動および生理的サイクルのためのガイダンスを提供するべく構成される。より具体的に述べれば、ペーシング・ユニット26は、患者が基準状態に、すなわち基準呼吸サイクルが参照する緩速深呼吸状態に置かれるように、患者に対して正しい呼吸の仕方を指示するべく構成される。それを行うために、コントロール・ユニット18は、
図1に破線矢印によって示されているとおり、基準クロック信号S(t)をペーシング・ユニット26に対して送信する。基準クロック信号S(t)の送信は、有線を介して、または無線で、たとえばブルートゥース(登録商標)等の周知の無線テクノロジ標準に従って実施することができる。
【0086】
ペーシング・ユニット26は、基準クロック信号S(t)を受信したとき、基準クロック信号S(t)からガイド情報を変換または抽出するべく構成される。ガイド情報の導出の意図は、患者にとってより理解しやすく、かつ追随容易な形式で基準クロック信号S(t)を患者に提供することにある。したがって、ペーシング・ユニット26によって提供される患者のためのガイダンスは、このガイド情報に基づいて生成される。
【0087】
示されている構成においては、導出されたガイド情報が、次のとおり、極座標系で定義される数学的関数Ψを包含する:
Ψ(t)=-(1/2)π-2πft (1)
これにおいて、fは、緩速呼吸サイクルのサイクル頻度を参照し、tは、時間を参照する変数である。
【0088】
さらに、導出されたガイド情報は、次に示す3つの極座標を包含する:
φ1=(1;-π/2) (2)
φ2=(1;-7π/6) (3)
φ3=(1;-11π/6) (4)
これにおいて、φ1は、呼気フェーズCと吸気フェーズAの間における遷移点を参照し、φ2は、吸気フェーズAと息こらえフェーズBの間における遷移点を参照し、φ3は、息こらえフェーズBと呼気フェーズCの間における遷移点を参照する。
【0089】
医療デバイス10の代替構成または代替動作モードによれば、次に示す極座標が導出され得るように基準クロック信号を提供することができる:
φ1’=(1;-π/2) (5)
φ2’=(1;-π) (6)
φ3’=(1;-3π/2) (7)
【0090】
その種の構成を用いた場合には、呼気フェーズCが、吸気フェーズAおよび息こらえフェーズBのそれぞれのフェーズ長の実質的に2倍のフェーズ長を有する。当然のことながら、任意のそのほかの適切な位置またはポイントφ1とφ3の間の距離を選択することはできる。
【0091】
上記の関数および座標を導出するために、ペーシング・ユニット26が、基準クロック信号S(t)内の呼吸サイクルの異なるフェーズA-Cを識別してそれらの個別の長さを決定するべく構成される。具体的に述べれば、ペーシング・ユニット26は、それを行うために、フィルタリング等の、特にバンドパス・フィルタリング、ヒルベルト変換、呼吸パターン円におけるクロック信号の変換、統計的評価、および/または線形もしくは非線形近似等のデータ解析の手段を適用するべく構成することができる。それに代えて、ペーシング・ユニット26を、クロック信号S(t)、すなわち経時的なそれの振幅の推移と、上側および下側スレッショルドとを比較するべく構成することができる。これに関して言えば、ペーシング・ユニット26は、クロック信号S(t)の振幅が上側スレッショルドを超えている間のセクションを吸気フェーズAに、振幅が下側スレッショルドを下回っている間のクロック信号のセクションを呼気フェーズCに、振幅がゼロ周りにあるか、または上側と下側スレッショルドの間にある間の前記クロック信号のセクションを息こらえフェーズBに関連付けることができる。
【0092】
さらに、ペーシング・ユニット26は、このようにして導出されたガイド情報を使用し、そのガイド情報を
図3に図示されているように視覚化することによって患者に指示するべく構成することができる。具体的に述べれば、ペーシング・ユニット26は、ディスプレイ・ユニット28のスクリーン上においてガイド情報を視覚化することによって非侵襲性刺激、すなわち視覚刺激を提供するべく構成されたディスプレイ・ユニット28を包含する。それを行うことによって、吸気、呼気、および息こらえが期待されているとき、医療デバイス10による処置を受ける患者にそれが通知される。
【0093】
より具体的に述べれば、ディスプレイ・ユニット28は、リングを表示し、その中を通ってボールの形式のペーシング・サイン30が一定の速度で、すなわち一定の角速度2πfでガイドされる。したがって、ペーシング・ボール30の移動が関数Ψ(t)によって定義され、それにおいてペーシング・ボール30は、位置φ1からスタートする。リングは、それぞれが呼吸サイクルのうちの1つのフェーズA-Cに関連付けされる3つの等しい長さのセクションに分割される。これらのセクションは、破線で図示される小さい円によって互いに関して区切られ、それにより上記の座標φ1からφ3までが視覚化される。したがって、ボール30の位置に応じて、患者に呼吸の吸気、呼気、または息こらえを行うことが指示される。このようにして医療デバイス10は、患者が治療処置を実施する間にわたって基準状態に置かれることを確保することができる。
【0094】
代替構成によれば、基準クロック信号S(t)は、さらに、呼気フェーズCと吸気フェーズAの間に配されて患者に息こらえが指示される一時休止フェーズを包含することができる。したがって、さらに、一時休止フェーズの識別および定量化を行い、かつ、それぞれが呼吸サイクルの1つのフェーズと関連付けされる4つのセクションを包含するリングが描かれるように、導出された情報の視覚化を適応させるべくペーシング・ユニット26を適応させることができる。
【0095】
上に示されているとおり、この構成に従ったペーシング・ユニット26によって、この開示においてガイダンス刺激とも呼ばれる視覚刺激が、患者にガイダンスを提供するために生成される。それに代えて、またはそれに加えて、患者にガイダンスを提供するために、聴覚刺激、振動触覚刺激、振動刺激、電気刺激、経皮電気刺激、経皮磁気刺激、経頭蓋電気刺激、および経頭蓋磁気刺激のうちの少なくとも1つを使用することができる。
【0096】
ここに示された構成においては、コントロール・ユニット18、すなわち作動ユニット20が、基準クロック信号S(t)に依存しないあらかじめ決定済みの作動パターンに依存して刺激ユニット12を作動するべく構成される。
【0097】
図4は、医療デバイス10のさらなる実施態様を示す。
図1乃至3に図示されている構成と比較すると、ここに示されている医療デバイス10のコントロール・ユニット18は、特に作動ユニット20は、
図4内にさらなる破線矢印によって図示されているとおり、基準クロック信号S(t)に依存して刺激ユニット12を作動するべく構成される。
【0098】
より具体的に述べれば、コントロール・ユニット18は、フェーズ依存態様で、すなわち、基準クロック信号S(t)内に組み込まれ、かつそれによって定義される異なる呼吸フェーズA-Cに依存して刺激ユニット12を作動するべく構成される。それを行うために、コントロール・ユニット18は、特に作動ユニット20は、ペーシング・ユニット26との関係で上に述べられている態様と類似する形で基準クロック信号S(t)内の異なるフェーズを検出するべく構成される。したがって、基準クロック信号S(t)内のフェーズまたはセクションの識別に関係し、かつペーシング・ユニット26との関係で述べられている技術的な特徴が、コントロール・ユニット18にも当て嵌まり、かつ関係することができる。
【0099】
コントロール・ユニット18は、特に作動ユニット20は、このように導出されたフェーズに基づいて、呼吸サイクルのいずれのフェーズがアクティブであるかに依存し、かつオプションとしてどの程度の長さでそのフェーズがアクティブであるかに依存して異なる動作モードにおいて刺激ユニット12が動作するように刺激ユニット12を動作させるべく構成される。言い替えると、吸気フェーズAがアクティブであれば、コントロール・ユニット18は、第1の動作モードにおいて刺激ユニット12を動作させ、息こらえフェーズBがアクティブであれば、コントロール・ユニット18は、第2の動作モードにおいて刺激ユニット12を動作させ、呼気フェーズCがアクティブであれば、コントロール・ユニット18は、第3の動作モードにおいて刺激ユニット12を動作させる。これら3つの動作モードのうちの少なくとも2つは、刺激モダリティ、与えられる刺激の頻度、その動作モードの間に作動される刺激エレメント、刺激のパターン、刺激が与えられる患者の身体の刺激領域、その動作モードの間に与えられる刺激の振幅および刺激の強度のうちの少なくとも1つにおいて互いに異なる。
【0100】
たとえば、コントロール・ユニット18は、吸気フェーズAおよび息こらえフェーズBの間に刺激ユニット12を作動し、呼気フェーズCの間に刺激ユニット12による刺激の引き渡しを停止するべく、またはその逆を行うべく構成することができる。それに代えて、コントロール・ユニット18は、吸気フェーズAおよび息こらえフェーズBの間に、呼気フェーズCと比較してより高い強度レベルにおいて刺激ユニット12を作動するべく、またはその逆を行うべく構成することができる。
【0101】
よりきめ細かい刺激ユニット12の作動を可能にするため、コントロール・ユニット18は、少なくとも1つの動作モードを参照する作動ウィンドウを定義することができ、それにおいて作動ウィンドウは、呼吸サイクルのフェーズに基づいてスケジュールし、適時的に配置することができるが、それらと一致しなくてもよい。言い換えると、作動ウィンドウは、呼吸サイクルのフェーズに対して時間シフトさせることができ、またそれらとオーバーラップさせることができる。さらに、呼吸サイクルのフェーズの間に1を超える数の作動ウィンドウをスケジュールすることができる。
【0102】
図5は、医療デバイス10のさらなる実施態様を示す。
図1乃至4に図示されている構成と比較すると、この医療デバイス10にはペーシング・ユニット26が装備されていない。しかしながら、この医療デバイス10は、患者の実際の生理的活動または実際の生理的サイクル、すなわち患者の実際の呼吸サイクルを監視するべく構成されたセンサ・ユニット32を包含する。具体的に述べれば、ここに示されている構成においては、センサ・ユニット32に、患者の呼吸サイクルにおける変化を測定し、記録するべく構成されたセンサが備えられる。それを行うために、センサ・ユニット32は、たとえば患者の肺へ向かう気体およびそこから排出される気体の流量の測定および監視を行うべく構成された流量計を包含することができる。その種の流量計は、患者の口を覆って置かれ、患者の口内へガイドされる気体またはそこから排出される気体の流量を測定するマスクを包含することができる。
【0103】
さらに、クロック・ユニット24が、参照記号『S’(t)』によって示され、かつ実際の生理的活動または実際の生理的サイクル、すなわち患者によって行われる呼吸サイクルを示す記録クロック信号を、センサ・ユニット32によって獲得される監視データに依存して生成するべく構成される。全般的な認識として、この開示の参照記号『S(t)』は、基準クロック信号を、したがって基準呼吸サイクルを参照するが、参照記号『S’(t)』は、記録クロック信号を、したがって患者によって実施された実際の呼吸サイクルを参照することに注意されたい。
【0104】
ここに示されている構成においては、記録クロック信号S’(t)を、
図2に図示されている基準クロック信号S’(t)と定性的に類似に提供することができる。
【0105】
このようにして生成された記録クロック信号S’(t)は、その後、
図5の破線矢印によって示されるとおり、コントロール・ユニット18へ、特に作動ユニット20へ送信される。コントロール・ユニット18は、特に作動ユニット20は、この記録クロック信号S’(t)に依存して刺激ユニット12を作動し、動作させるべく構成されている。作動ユニット20については、基準クロック信号S(t)または記録クロック信号S’(t)のいずれをそれが処理するかを相違させなくてもよい。したがって、作動ユニット20による記録クロック信号S’(t)のさらなる処理、したがってそれに基づく刺激ユニット12の作動に関しては、
図4に図示されている構成との関連から述べられている上記の説明を参照されるものとする。
【0106】
図6は、医療デバイス10のさらなる実施態様を示す。
図5に図示されている構成と比較すると、この医療デバイス10は、
図1乃至3に図示された構成との関連から説明されているペーシング・ユニット26と類似に設計され、かつ構成されるペーシング・ユニット26をさらに包含する。
【0107】
したがって、クロック・ユニット24は、さらに基準クロック信号S(t)を生成するべく構成され、それがペーシング・ユニット26へ転送され、ペーシング・ユニット26は、それに基づいて患者のためのガイダンスを提供する。トレーニング・モードとも呼ばれる医療デバイス10の1つの動作モードにおいては、コントロール・ユニット18が、基準クロック信号S(t)に基づいてペーシング・ユニット26を作動するが、刺激ユニット12はアクティブとならない。このモードにおいては、患者に緩速深呼吸でトレーニングさせることができる。刺激モードとも呼ばれる医療デバイス10のさらなる動作モードにおいては、コントロール・ユニットが、記録クロック信号S’(t)または基準クロック信号S(t)に基づいて刺激ユニット12を作動する。それに加えて、医療デバイス10は、さらに、コントロール・ユニット18がペーシング・ユニット26および刺激ユニット12の両方を作動する同時動作モードにおいて動作することができる。その種の構成によって、患者が基準呼吸サイクルに従った呼吸の指示を受けることができる一方、刺激ユニット12を、患者の実際の生理的活動および実際の生理的サイクル、すなわち実際の呼吸サイクルに依存して作動することができる。
【0108】
図7は、医療デバイス10のさらなる実施態様を示す。
図6に図示されている構成と比較すると、このコントロール・ユニット18は、特にクロック・ユニット24は、記録クロック信号S’(t)に基づいて、センサ・ユニット32によって測定された実際の生理的活動または実際の生理的サイクルが、医療デバイス10による処置の提供に望ましい状態に対応するか否かを評価するべく構成される。それを行うために、コントロール・ユニット18は、望ましい呼吸活動の実施を患者に指示し、かつパラメータGを決定するべく構成され、当該パラメータによって患者の実際の呼吸活動と望ましい呼吸活動とが比較される。パラメータGは、それ自体、実際の生理的活動または実際の生理的サイクルの特性を示す。患者のためのガイダンスを提供するために、コントロール・ユニット18は、さらに、基準状態、すなわち望ましい呼吸活動に関係する基準クロック信号S(t)に基づく緩速呼吸の実施を、ペーシング・ユニット26を用いて患者に指示するべく構成される。
【0109】
ここに示されている構成においては、パラメータGが、調速された呼吸の良好度を示し、患者が滑らかに緩速呼吸を実施しているか否かの定量化に使用される。パラメータGは、それぞれの実施された呼吸サイクル、すなわち患者が呼吸フェーズA-Cを続けて実施する毎に計算することができる。それを行うために、呼吸サイクルを、それぞれが次に示す長さまたは持続期間を有するM個のフェーズ・ビンに分割することができる:
ΔTM=TC/M (8)
これにおいて、ΔTMは、フェーズ・ビンの持続期間であり;Mは、呼吸サイクル当たりのビンの数を示す整数であり;TCは、1つの呼吸サイクルの全体の持続期間である。パラメータMは、たとえば、約10から1000までの範囲内とすることができる。特にパラメータMは、100であってもよい。
【0110】
これに基づいて、パラメータGを次のように計算することができる:
【数1】
これにおいて、iは、考察している呼吸サイクルを示し;jは、M個の異なるフェーズ・ビンのうちのj番目を示し;h
correct,jは、コントロール変数jによって参照される考察中のフェーズ・ビンにおいて、記録クロック信号S’(t)が基準クロック信号S(t)と充分に対応するか否かを示すパラメータである。考察中のフェーズ・ビンにおいて記録クロック信号S’(t)が基準クロック信号S(t)と充分に対応する場合には、パラメータh
correct,jが1の値を、それ以外の場合には0の値を有する。
【0111】
具体的に述べれば、パラメータhcorrect,jを評価するために、コントロール・ユニット18は、考察中の時間期間、すなわちフェーズ・ビンjの間における基準クロック信号S(t)と記録クロック信号S’(t)の間にフェーズの一致が存在するか否かを決定する。言い換えると、フェーズ・ビンjの間における基準クロック信号S(t)と記録クロック信号S’(t)が呼吸サイクルの同一のフェーズ、たとえば吸気フェーズAを示しているとコントロール・ユニット18が決定した場合に、コントロール・ユニット18は、hcorrect,jを1に設定する。しかしながら、コントロール・ユニット18が、フェーズ・ビンjの間における基準クロック信号S(t)と記録クロック信号S’(t)が呼吸サイクルの異なるフェーズを示していると決定した場合、たとえば基準クロック信号S(t)が息こらえフェーズBを示し、記録クロック信号S’(t)が吸気フェーズAを示していると決定した場合に、コントロール信号は、hcorrect,jを0に設定する。パラメータGは、したがって、0と1の間の値をとることができ、それにおいて0の値は、基準クロック信号S(t)と記録クロック信号S’(t)の間におけるフェーズの不一致を示し、1の値は、フェーズの完全一致を示す。
【0112】
コントロール・ユニット18は、
図7にさらなる破線矢印によって示されているとおり、決定したパラメータGをペーシング・ユニット26へ送信するべく構成されている。ペーシング・ユニット26は、このようにして決定されたパラメータGを示す情報を患者に提供するべく構成されている。具体的に述べれば、
図8は、ペーシング・ユニット26の例を図示しているが、これは、決定されたパラメータG、および
図8から推測可能なとおり、そのパラメータのための棒グラフ形式で図解されたスレッショルドTを示す情報を患者に提供するべく構成される。このようにして患者は、自分の調速された呼吸の良好度についての視覚的フィードバックを受け取る。それに代えて、ペーシング・ユニット26は、患者に対して聴覚フィードバックを提供するべく構成することができる。たとえば、決定されたパラメータGがあらかじめ決定済みのスレッショルド範囲の外側にあるときには患者に対して聴覚警告信号を提供するべくペーシング・ユニット26を構成することができる。好ましくは、このあらかじめ決定済みのスレッショルド範囲を0.7から1.0までの広がりとする。概して言えば、あらかじめ決定済みのスレッショルド範囲は、パラメータGのための望ましい、好ましくは、0.7から1.0の範囲内にある値に対応する値のセットを構成する。代替実施態様においては、あらかじめ決定済みのスレッショルド範囲を、たとえば0.8から1.0までの広がりとすることができる。Gがあらかじめ決定済みのスレッショルド範囲より下に減少するほど聴覚警告信号の音量をさらに増加することができる。それに代えて、またはそれに加えて、パラメータGがあらかじめ決定済みのスレッショルド範囲内にあると決定された場合には、リラックスする音等の聴覚情報信号を提供するべくペーシング・ユニット26を構成することができる。
【0113】
さらに、コントロール・ユニット18は、パラメータGに基づいて、先行するあらかじめ決定済みの数K個の呼吸サイクル、たとえば3つまたは5つまたは10個または20個の呼吸サイクルにわたるパラメータGの平均を示す呼吸良好度評価基準
【数2】
を決定するべく構成される。具体的に述べれば、呼吸良好度評価基準
【数3】
は、次式のとおりに計算することができる:
【数4】
これにおいてKは、評価基準の計算に使用される先行する呼吸サイクルの数を示す整数であり;kは、コントロール変数として使用される整数である。
【0114】
さらにコントロール・ユニット18は、パラメータGまたは評価基
【数5】
と基準値、すなわちスレッショルド範囲を参照するスレッショルド値との比較に依存して医療デバイス10の動作をコントロールするべく構成される。具体的に述べれば、基準値は、値、たとえば0.7を参照することができ、患者固有とすることができる。決定されたパラメータGまたは評価基準
【数6】
がスレッショルド値より上である限り、コントロール・ユニット18は、センサ・ユニット32によって測定された実際の生理的活動または実際の生理的サイクルが、治療処置を提供するための望ましい状態に対応していると評価することができる。
【0115】
具体的に述べれば、コントロール・ユニット18は、決定されたパラメータGまたは評価基準
【数7】
がスレッショルド範囲に達している場合には刺激ユニット12を作動し、決定されたパラメータGまたは評価基準
【数8】
がスレッショルド範囲の外側、すなわち0.7より下の範囲内にある場合には、刺激ユニット12の作動を停止するべく構成することができる。それに代えて、コントロール・ユニット18は、決定されたパラメータGまたは評価基準
【数9】
がスレッショルド範囲の外側、すなわち0.7より下にある場合にあらかじめ定義済みの作動パターンに従って刺激ユニット12を作動し、決定されたパラメータGまたは評価基準
【数10】
がスレッショルド範囲に達している場合、すなわち0.7以上である場合には、基準クロック信号S’(t)に依存して刺激ユニットを作動するべく構成することができる。
【0116】
さらなる発展においては、コントロール・ユニット18は、ペーシング・ユニット26が基準クロック信号S(t)に依存して作動され、かつ刺激ユニット12が複数の刺激の生成を停止するべくコントロールされるトレーニング動作モードにおいて医療デバイスを動作させるべく構成される。さらにコントロール・ユニット18は、医療デバイス10の動作モードを、それのトレーニング動作モードからガイド付き動作モードへ、決定されたパラメータGまたは評価基準
【数11】
がスレッショルド範囲に達したときに切り替えるべく構成される。ガイド付き動作モードにおいては、コントロール・ユニット18が、基準クロック信号S(t)に依存してペーシング・ユニット26を作動し、記録クロック信号S’(t)に依存して刺激ユニット12を作動するべく構成される。
【0117】
さらにコントロール・ユニット18は、決定されたパラメータGまたは評価基準
【数12】
がスレッショルド範囲に達しなくなったとき、医療デバイス10の動作モードを、それのガイド付き動作モードからそれのトレーニング動作モードへ切り替えるべく構成される。
【0118】
さらにコントロール・ユニット18は、医療デバイス10が、あらかじめ決定済みの時間期間にわたってそれのガイド付き動作モードにおいて動作されると、医療デバイス10の動作モードを、それのガイド付き動作モードからそれのガイドなし動作モードへ切り替えるべく構成される。
【0119】
さらにコントロール・ユニット18は、決定されたパラメータGまたは評価基準
【数13】
がスレッショルド範囲に達しなくなったとき、医療デバイス10の動作モードを、それのガイドなし動作モードからそれのガイド付き動作モードへ切り替えるべく構成される。
【0120】
さらなる実施態様によれば、コントロール・ユニット18は、皮膚微小循環の振動を参照する記録クロック信号S’(t)に依存して刺激ユニット12を作動するべく構成される。したがって、この構成においては、生理的サイクルが皮膚微小循環を参照する。それを行うために、センサ・ユニット32は、皮膚微小循環の振動を測定し、かつ記録するべく構成される。具体的に述べれば、センサ・ユニット32に、患者の皮膚に取り付けられて皮膚微小循環の変化を、すなわち振動を測定するべく構成された光電式容積脈波記録ユニット、特に赤外線光電式容積脈波記録ユニットが装備される。
【0121】
さらに、クロック・ユニット24が、このようにしてセンサ・ユニット32によって獲得されたデータに基づいて記録クロック信号S’(t)を導出するべく構成され、したがって、それは、皮膚微小循環の振動を参照する。その後、作動ユニット20が、このようにして生成された記録クロック信号S’(t)に基づいて、信号内の異なるフェーズを決定し、フェーズ依存態様で刺激ユニット12を作動する。この構成においては、クロック・ユニット24を、基準呼吸サイクルを参照する基準クロック信号S(t)を生成するべく構成することができる。それを行うことによって、クロック・ユニット24が、測定され、かつ記録された皮膚微小循環のサイクル頻度とは異なる基準呼吸サイクルのサイクル頻度を選択する。その後、コントロール・ユニット24が、このようにして生成された基準クロック信号S(t)をペーシング・ユニット26へ送信し、基準呼吸サイクルに従った呼吸を実施することを患者に指示する。
【0122】
さらなる発展においては、
図5および6に図示されている医療デバイス10を使用して、リハビリテーション・トレーニングと、医療デバイス10により提供される神経刺激とを組み合わせることによってリハビリテーション・トレーニングを強化することができる。これに関して言えば、医療デバイス10の動作および作動、特に刺激エレメント14によって生成される振動触覚刺激のトリガおよび変調が、実際の生理的活動に関係する、特に、身体部分の律動的な、または振動的な、または間欠的な運動のフェーズに関係するクロック信号S’(t)に依存してコントロールされた場合に、リハビリテーション・トレーニングが特に効果的となり得ることが明らかになっている。そのためにクロック・ユニット24は、運動に関係する、すなわち、特に身体部分の律動的な、または振動的な、または間欠的な運動のフェーズに関係するクロック信号S’(t)を生成することができる。具体的に述べれば、その種の運動に関係するクロック信号S’(t)は、リハビリテーション・トレーニングを受ける身体部分の振動運動に関係付けられる振動信号とすることができる。運動に関係するクロック信号S’(t)を生成するために、センサ・ユニット32は、その身体部分の運動を測定するべく構成することができる。たとえば、センサ・ユニット32は、肘の領域において患者の腕に取り付けられる少なくとも1つのゴニオメータを包含することができ、また肘の角度変化を測定するべく構成することができる。1つの構成において、センサ・ユニット32は、最大で2つの移動平面において身体部分の角度変化を測定するべく構成された少なくとも1つの2軸ゴニオメータを包含することができる。さらなる発展においては、ペーシング・ユニット26を使用して、患者にリハビリテーション・トレーニングの実施を指示し、かつリハビリテーション・トレーニングを通じて患者をガイドすることができる。
【0123】
この分野の当業者にとっては自明となろうが、これらの実施態様およびアイテムは、複数の可能性の中の例を示しているに過ぎない。したがって、ここに示されている実施態様がこれらの特徴および構成の限定を形成すると理解されるべきではない。説明した特徴の任意の可能性のある組み合わせおよび構成を、本発明の範囲に従って選択することが可能である。
【符号の説明】
【0124】
10 医療デバイス
12 刺激ユニット
14 刺激エレメント
16 担体構成要素
18 コントロール・ユニット
20 作動ユニット
22 接続線
24 クロック・ユニット
26 ペーシング・ユニット
28 ディスプレイ・ユニット
30 ペーシング・ボール
32 センサ・ユニット
A 吸気フェーズ
B 息こらえフェーズ
C 呼気フェーズ
G 調速された呼吸の良好度を示すパラメータ
T スレッショルド
【手続補正書】
【提出日】2023-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のニューロンを刺激して前記ニューロンの病理学的同期活動を抑制するための医療デバイス(10)であって、
前記病理学的同期活動を抑制するべく構成された複数の刺激を患者の身体に与えるべく構成された非侵襲性治療刺激ユニット(12)と、
前記患者の
生理的サイクルまたは前記患者の生理的状態の測定可能な変化を誘導する前記患者の活動に関係付けられた少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))を生成するべく構成されたクロック・ユニット(24)と、
前記少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))に依存して前記医療デバイス(10)の動作をコントロールするべく構成されたコントロール・ユニット(18)と、
を包含する、医療デバイス(10)。
【請求項2】
前記複数の刺激は、聴覚刺激、触覚刺激、振動刺激、振動触覚刺激、視覚刺激、電気刺激、および温度刺激のうちの少なくとも1つを包含し、それにおいて前記刺激ユニット(12)は、前記複数の刺激を選択的かつ間欠的に与えるべく構成される、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))は、少なくとも2つの続いて生じるフェーズの反復するシーケンスを包含する、請求項1または2に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記クロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))の基礎となる前記生理的サイクルは、吸気フェーズ(A)、息こらえフェーズ(B)、呼気フェーズ(C)、および一時休止フェーズ(D)のうちの少なくとも1つを包含する呼吸サイクルである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記クロック・ユニット(24)は、前記患者の基準状態、特に基準生理的活動または基準生理的サイクルを参照する基準クロック信号(S(t))を生成するべく構成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項6】
さらに、前記患者の生理的活動または生理的サイクルのためのガイダンスを提供するべく構成されたペーシング・ユニット(26)を包含し、それにおいて前記コントロール・ユニット(18)は、前記基準クロック信号(S(t))に依存して前記ペーシング・ユニット(26)を動作させるべく構成される、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記基準クロック信号(S(t))は、緩速呼吸範囲内、特に、0.07Hzから0.16Hzまでの範囲内のサイクル頻度を有する、請求項5または6に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記ペーシング・ユニット(26)は、前記患者の身体に前記患者の生理的活動または生理的サイクルについてのガイダンスを提供するための非侵襲性ガイダンス刺激、特に、視覚刺激、聴覚刺激、触覚刺激、振動刺激、振動触覚刺激、電気刺激、経皮電気刺激、経皮磁気刺激、経頭蓋電気刺激、経頭蓋磁気刺激、および電気舌刺激のうちの少なくとも1つを提供するべく構成され、それにおいて前記ガイダンス刺激は、前記患者に、生理的活動の実施をガイドまたは指示するべく構成される、請求項6または7に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記コントロール・ユニット(18)は、あらかじめ決定済みの、特に、前記基準クロック信号(S(t))に依存しない作動パターンに依存して前記刺激ユニット(12)を作動するべく構成される、請求項6乃至
8のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項10】
さらに、前記患者の実際の生理的活動または実際の生理的サイクルを監視するべく構成されたセンサ・ユニット(40)を包含し、それにおいて前記クロック・ユニット(24)は、前記センサ・ユニット(32)によって獲得された監視データに依存して前記実際の生理的活動または前記実際の生理的サイクルを示す記録クロック信号(S’(t))を生成するべく構成される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記少なくとも1つのクロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))に依存して、特に前記基準クロック信号(S(t))または前記記録クロック信号(S’(t))に依存して前記刺激ユニット(12)を作動するべく構成される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項12】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記刺激ユニット(12)を、前記クロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))の第1のフェーズの間においては第1の動作モードにおいて動作させ、かつ前記クロック信号(S(t);S’(t);S(t),S’(t))の第2のフェーズの間においては前記第1の動作モードとは異なる第2の動作モードにおいて動作させるべく構成され、それにおいて前記刺激ユニット(12)の前記第1の動作モードおよび前記第2の動作モードは、刺激モダリティ、与えられることになる前記刺激の頻度、作動される刺激エレメント、刺激の振幅、刺激パターン、前記刺激が与えられることになる前記患者の身体の刺激領域、および刺激の強度のうちの少なくとも1つにおいて異なる、請求項11に記載の医療デバイス。
【請求項13】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記記録クロック信号(S’(t))に基づいて前記実際の生理的活動またはサイクルの特性を定量化するパラメータ(G)を決定するべく構成され、それにおいて前記コントロール・ユニット(18)は、前記パラメータ(G)とスレッショルドまたはスレッショルド範囲との比較に依存して前記医療デバイス(10)の動作をコントロールするべく構成される、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【請求項14】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲に到達する場合には前記刺激ユニット(12)を作動し、かつ前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲の外側となる場合には前記刺激ユニット(12)の作動を停止するべく構成されるか、または、
前記コントロール・ユニット(18)は、前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲の外側となる場合にはあらかじめ定義済みの作動パターンに従って前記刺激ユニット(12)を作動し、かつ前記決定されたパラメータが前記スレッショルド範囲に到達する場合には前記記録クロック信号(S’(t))に依存して前記刺激ユニット(12)を作動するべく構成される、
請求項13に記載の医療デバイス。
【請求項15】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記決定されたパラメータ(G)と前記あらかじめ定義済みのスレッショルドとの前記比較の結果を示す情報を前記患者に提供するべく構成される、請求項13または14に記載の医療デバイス。
【請求項16】
前記コントロール・ユニット(18)は、前記ペーシング・ユニット(26)が前記基準クロック信号(S(t))に依存して作動され、かつ前記刺激ユニット(12)が前記複数の刺激の前記生成を停止するべくコントロールされるトレーニング動作モードにおいて前記医療デバイス(10)を動作させるべく構成され、それにおいて前記コントロール・ユニット(18)は、
前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲に到達するとき、前記医療デバイス(10)の前記動作モードを、それのトレーニング動作モードからガイド付き動作モードへ切り替え、前記ガイド付き動作モードにおける前記コントロール・ユニット(18)が、前記基準クロック信号(S(t))に依存して前記ペーシング・ユニット(26)を作動し、かつ前記記録クロック信号(S’(t))に依存して前記刺激ユニット(12)を作動するべく構成され、
前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲に到達しなくなったとき、前記医療デバイス(10)の前記動作モードをそれのガイド付き動作モードからそれのトレーニング動作モードへ切り替えるべく構成され、
前記医療デバイス(10)があらかじめ決定済みの時間期間にわたってそれのガイド付き動作モードにおいて動作されたときは、前記医療デバイス(10)の前記動作モードをそれのガイド付き動作モードからそれのガイドなし動作モードへ切り替え、かつ、
前記決定されたパラメータ(G)が前記スレッショルド範囲に到達しなくなったとき、前記医療デバイス(10)の前記動作モードをそれのガイドなし動作モードからそれのガイド付き動作モードへ切り替えるべく構成される、
請求項13乃至15のいずれか一項に記載の医療デバイス。
【国際調査報告】