(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】新規なキレート樹脂
(51)【国際特許分類】
C08F 12/28 20060101AFI20231006BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20231006BHJP
C08F 8/40 20060101ALI20231006BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20231006BHJP
B01J 39/12 20060101ALI20231006BHJP
B01J 39/20 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
C08F12/28
C08F8/30
C08F8/40
B01J45/00
B01J39/12
B01J39/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519936
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2021076453
(87)【国際公開番号】W WO2022069389
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・コープ
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・シュタインヒルバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・クラーリク
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB02P
4J100AB03P
4J100AB04P
4J100AB08P
4J100AB15Q
4J100AB16Q
4J100BA29H
4J100BA63H
4J100BC66H
4J100CA31
4J100EA06
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA21
4J100HA08
4J100HA11
4J100HA61
4J100HB25
4J100HB39
4J100HB43
4J100HB44
4J100HB45
4J100HB47
4J100HB52
4J100HB53
4J100HB54
4J100HB58
4J100HC17
4J100HC38
4J100HC63
4J100HC75
4J100JA15
4J100JA16
(57)【要約】
本発明は、アミノアルキルホスフィン酸誘導体を含むキレート樹脂、それらを調製するためのプロセス、並びに金属、好ましくは重金属、貴金属、及び希土類の回収及び精製におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂:
【化1】
[式(I)中、
【化2】
は、ポリスチレンコポリマー骨格であり、かつ
R
1及びR
2は、独立に、水素又は-CH
2-PO(OR
3)R
4であり、ここでR
1及びR
2の両方が同時に水素であることはなく、R
3は、水素又はC
1~C
15アルキルであり、R
4は、C
1~C
15アルキル、C
6~C
24アリール、C
7~C
15アリールアルキル、又はC
2~C
10アルケニルであり、それらのそれぞれが、C
1~C
8アルキルによって一置換又は多置換されていてもよい]。
【請求項2】
R
4が、C
1~C
15アルキル又はC
6~C
24アリールであり、それはC
1~C
8アルキルによって一置換又は多置換されていてもよいことを特徴とする、請求項1に記載の、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂。
【請求項3】
R
4が、C
1~C
6アルキル及びフェニルであり、それはメチル又はエチルによって一置換、二置換、又は三置換されていてもよいことを特徴とする、請求項1に記載の、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂。
【請求項4】
R
4が、エチル、2,4,4-トリメチルペンチル、2-メチルペンチル、ベンジル、及びフェニルであることを特徴とする、請求項1に記載の、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂。
【請求項5】
R
1及びR
2が、-CH
2-PO(OR
3)R
4であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂。
【請求項6】
R
3が、水素又はC
1~C
8アルキルであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂。
【請求項7】
請求項1に記載の、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂を調製するためのプロセスであって、
a)少なくとも1種のモノビニル芳香族化合物、及び少なくとも1種のポリビニル芳香族化合物、及び少なくとも1種の重合開始剤から構成される、モノマーの微小液滴を反応させる工程、
b)工程a)からの前記ポリマーを、フタルイミド又はその誘導体を用いて、フタルイミドメチル化させる工程、
c)工程b)からのフタルイミドメチル化ポリマーを、少なくとも1種の塩基又は少なくとも1種の酸と反応させる工程、及び
d)工程c)からのアミノメチル化ポリマーを、少なくとも1種の懸濁媒体、及び少なくとも1種の酸、及び少なくとも1種の下記式(II)の化合物又はその塩の存在下で、ホルムアルデヒド又はその誘導体と反応させることによって官能化させて、
【化3】
[式中、R
3及びR
4は、請求項1において与えられた定義を有する]、
式(I)の官能基を有するキレート樹脂を形成させる工程、
を特徴とするプロセス。
【請求項8】
プロセス工程d)において使用されるホルムアルデヒド又はその誘導体が、ホルマリンであることを特徴とする、請求項7に記載の、構造要素(I)の官能基を有するキレート樹脂を調製するためのプロセス。
【請求項9】
プロセス工程d)において、ホルムアルデヒド又はその誘導体及び工程c)からのアミノメチル化ポリマーを、アミノメチル基のモル量を基準にして2~8のモル比で使用することを特徴とする、請求項7又は8のいずれか1項に記載の、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂を調製するためのプロセス。
【請求項10】
プロセス工程d)において、アミノメチル化ポリマーのアミノメチル基の1モルあたり、2~12モルの無機酸を使用することを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載のキレート樹脂を調製するためのプロセス。
【請求項11】
プロセス工程d)において、使用される式(II)の化合物の、アミノメチル化ポリマーの中のアミノメチル基の量に対するモル比が、1~4であることを特徴とする、請求項7~10のいずれか1項に記載のキレート樹脂を調製するためのプロセス。
【請求項12】
金属、好ましくは重金属、貴金属、及び希土類を吸着させるための、請求項1に記載のキレート樹脂の使用。
【請求項13】
前記金属が、鉄、バナジウム、亜鉛、アルミニウム、コバルト、タングステン、銅、ニッケル、マンガン、マグネシウム、カルシウム、鉛、カドミウム、ウラン、水銀、スカンジウム、ランタン、イットリウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、白金族の元素、及び金又は銀、の群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記金属が、亜鉛、コバルト、及びニッケルの群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
ケイ素を調製及び精製するための、請求項1からの、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキルホスフィン酸誘導体を含むキレート樹脂、それらを調製するためのプロセス、及び金属、好ましくは重金属、貴金属、及び希土類を回収及び精製するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
新規なキレート樹脂の開発は、この研究分野では依然として重要であり続けている。前記のキレート樹脂は、金属の回収及び浄水の分野で、かなりの使用可能性を有することができる。特に、バッテリーのカソード材料を調製するためにニッケル電解質から亜鉛を除去することが、関連する主題として残っている。
【0003】
(特許文献1)及び(特許文献2)には、アミノアルキルホスホン酸基を含むキレート樹脂が開示されている。(特許文献1)には、特に、カルシウムを吸着させるためのそれらの樹脂の使用が記載されている。
【0004】
(特許文献3)には、クロロメチル化ポリスチレンコポリマーをポリアミンと反応させ、次いでそれらをホルマリン及び次亜リン酸塩と反応させることによる、アミノメチルヒドロキシメチルホスフィン酸基を含むキレート樹脂の調製法が記載されている。これらの樹脂は、タングステンイオンを除去するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第A102009047848号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第A1078690号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第A2848289号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それらの従来技術は、その使用可能なキレート樹脂の亜鉛容量が不十分である点で不利である。したがって、亜鉛を大量に吸着するキレート樹脂が依然として必要とされてきた。驚くべきことには、アミノメチルホスフィン酸誘導体を含む特定のキレート樹脂が、亜鉛を除去するのに特に適しているということを今や発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂を提供する。
【化1】
[式中、
【化2】
は、ポリスチレンコポリマー骨格であり、かつ
R
1及びR
2は、独立に、水素又は-CH
2-PO(OR
3)R
4であり、ここでR
1及びR
2の両方が同時に水素でなくてよく、かつ、R
3は、水素又はC
1~C
15アルキルであり、R
4は、C
1~C
15アルキル、C
6~C
24アリール、C
7~C
15アリールアルキル、又はC
2~C
10アルケニルであり、それらのそれぞれが、C
1~C
8アルキルによって一置換又は多置換されていてもよい]
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましくは、R1及びR2が、-CH2-PO(OR3)R4である。
【0009】
好ましくは、R3は、水素、及びC1~C8アルキルである。特に好ましくは、R3は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-、i-、s-、又はt-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ペンチル、及び水素である。さらに好ましくは、R3は水素である。
【0010】
好ましくは、R4は、C1~C15アルキル又はC6~C24アリールであり、それらは、C1~C8アルキルによって一置換又は多置換されていてもよい。特に好ましくは、R4は、C1~C6アルキル、フェニル、及びベンジルであり、それらは、1個、2個、又は3個のC1~C8アルキルによって置換されていてもよい。極めて特に好ましくは、R4は、C1~C6アルキル及びフェニルであり、それらは、メチル又はエチルによって一置換、二置換、又は三置換されていてもよい。さらに好ましくは、R4は、エチル、2,4,4-トリメチルペンチル、2-メチルペンチル、ベンジル、又はフェニルである。
【0011】
本発明との関連において、C1~C15アルキルは、1~15個の炭素原子(C1~C15)、好ましくは1~12個の炭素原子(C1~C12)、特に好ましくは1~8個の炭素原子(C1~C8)炭素原子、さらに好ましくは1~6個の炭素原子(C1~C6)を有する直鎖状、環状、又は分岐状のアルキル基である。好ましくは、C1~C15アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-、i-、s-、又はt-ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、シクロヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、及び2-メチルペンチルである。特に好ましくは、C1~C15アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-、i-、s-、又はt-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、及び2-メチルペンチルである。極めて特に好ましくは、C1~C15アルキル又はC1~C12アルキル又はC1~C8アルキル又はC1~C6アルキルは、エチル、2,4,4-トリメチルペンチル、及び2-メチルペンチルである。
【0012】
本発明との関連において、C6~C24アリールは、6~24個の骨格炭素原子を有する芳香族基であり、そのとき、環ひとつあたり0個、1個、2個、又は3個の骨格炭素原子、しかしながら分子全体の中で少なくとも1個の骨格炭素原子が、窒素、硫黄、又は酸素の群から選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよいが、6~24個の骨格炭素原子を有する炭素環の芳香族基であることが好ましい。同じことが、アリールアルキル基の芳香族の部分にもあてはまる。さらには、その炭素環芳香族基又はヘテロ芳香族基は、環一つあたり、最多で5個までの同一又は異なる、以下の群から選択される置換基によって置換されていてもよい:C1~C8アルキル、C2~C10アルケニル、及びC7~C15アリールアルキル。好ましいC6~C24アリールは、フェニル、o-、p-、m-トリル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、又はフルオレニルである。ひとつの環あたり1個、2個、又は3個の骨格炭素原子、しかし分子全体の中で少なくとも1個の骨格炭素原子が、窒素、硫黄、又は酸素の群から選択されるヘテロ原子によって置換されうる、好ましいヘテロ芳香族C6~C24アリールは、以下のものである:ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル若しくはイソオキサゾリル、インドリジニル、インドリル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、ナフチリジニル、キナゾリニル、ベンゾフラニル、又はジベンゾフラニル。
【0013】
C7~C15アリールアルキルは、それぞれの場合において、独立に、先に定義したとおりのアリール基によって、モノ置換、ポリ置換、又は完全置換された、先に定義された通りの直鎖状、環状、又は分岐状のC7~C15アルキル基を意味する。C7~C15アリールアルキルがベンジルである場合が好ましい。
【0014】
本発明との関連において、C2~C10アルケニルは、2~10個(C2~C10)、好ましくは2~6個(C2~C6)の炭素原子を有する、直鎖状、環状、又は分岐状のアルケニル基である。例として、また好ましくは、アルケニルは、ビニル、アリル、イソプロペニル、及びn-ブタ-2-エン-1-イルである。
【0015】
本発明の範囲には、上で及び以後で詳細に説明され、一般的な用語として又は好ましい範囲内として言及される、相互に、すなわちそれぞれの範囲と好ましい範囲との間の各種の組み合わせを含めた、基、パラメーター、及び説明のすべての定義が包含される。
【0016】
構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂において使用されるポリスチレンコポリマーは、好ましくは、スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、又はクロロメチルスチレン、並びにそれらのモノマーの混合物の群から選択されるモノビニル芳香族モノマーと、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及び/又はトリビニルナフタレンの群から選択されるポリビニル芳香族化合物(架橋剤)とのコポリマーである。
【0017】
使用されるポリスチレンコポリマー骨格は、特に好ましくは、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーである。スチレン/ジビニルベンゼンコポリマーは、ジビニルベンゼンを用いて架橋されたコポリマーである。そのキレート樹脂のポリマーが、球状の形態を有しているのが好ましい。
【0018】
そのポリスチレンコポリマー骨格中で、-CH2-NR1R2基が、フェニル基に結合されている。
【0019】
本発明にしたがって使用され、かつ、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂は、マクロポーラスな構造を有していることが好ましい。
【0020】
「ミクロポーラス」又は「ゲル形状の」/「マクロポーラス」という用語は、すでに、技術文献、たとえば、Seidl,Malinsky,Dusek,Heitz,Adv.Polymer Sci.,1967,Vol.5,pp.113~213の中で詳しく記述されている。多孔度を測定することが可能な方法、たとえば水銀多孔度測定法及びBET測定法も同様に、前記の文献の中に記載されている。本発明において使用され、構造要素(I)の官能基を含む、キレート樹脂のマクロポーラスポリマーの細孔は、一般的に且つ好ましくは、20nm~100nmの直径を有している。
【0021】
本発明にしたがって使用され、かつ、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂は、好ましくは、単分散な分布を有している。
【0022】
本出願においては、単分散物質とは、その粒子の少なくとも90容積%又は90質量%が、最多直径(most common diameter)から±10%のあいだに入る直径を有しているものである。
【0023】
たとえば、0.5mmの最多直径を有する物質の場合では、少なくとも90容積%又は90質量%が、0.45mm~0.55mmのあいだのサイズの中にあり;0.7mmの最多直径を有する物質の場合では、少なくとも90容積%又は90質量%が、0.77mm~0.63mmのあいだのサイズの中にある。
【0024】
構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂は、好ましくは、200~1500μmの直径を有している。
【0025】
本プロセスにおいて使用され、かつ、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂は、好ましくは、以下のプロセス工程:
a)少なくとも1種のモノビニル芳香族化合物、及び少なくとも1種のポリビニル芳香族化合物、及び少なくとも1種の重合開始剤から構成される、モノマーの微小液滴を反応させる工程;
b)フタルイミド又はその誘導体を用いて、工程a)からのポリマーをフタルイミドメチル化する工程;
c)工程b)からのフタルイミドメチル化ポリマーを、少なくとも1種の酸又は少なくとも1種の塩基と反応させる工程;及び
d)工程c)からのアミノメチル化ポリマーを、少なくとも1種の懸濁媒体、及び少なくとも1種の酸、及び少なくとも1種の下記式(II)の化合物、又はその塩の存在下で、ホルムアルデヒド又はその誘導体と反応させることによって官能化させる工程;
【化3】
[式中、R
3は、水素又はC
1~C
15アルキルであり、かつ、R
4は、C
1~C
15アルキル、C
6~C
24アリール、C
7~C
15アリールアルキル、又はC
2~C
10アルケニル(それらは、C
1~C
8アルキルによって一置換又は多置換されていてもよい)である]、
によって調製されて、式(I)の官能基を有するキレート樹脂が形成される。
【0026】
プロセス工程a)においては、少なくとも1種のモノビニル芳香族化合物及び少なくとも1種のポリビニル芳香族化合物を使用する。しかしながら、2種以上のモノビニル芳香族化合物の混合物、及び2種以上のポリビニル芳香族化合物の混合物を使用することも可能である。
【0027】
本発明との関連において、プロセス工程a)において使用されるモノビニル芳香族化合物は、好ましくは、スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、又はクロロメチルスチレンである。
【0028】
それらのモノビニル芳香族化合物は、好ましくは、モノマー又は、それとさらなるモノマーとの混合物を基準にして、50重量%より多い量、特に好ましくはモノマー又はそれとさらなるモノマーとの混合物を基準にして、55重量%~70重量%の間の量で使用される。
【0029】
スチレン、又は、スチレンと上述したモノマー、好ましくはエチルスチレンとの混合物を使用するのが特に好ましい。
【0030】
本発明との関連において、プロセス工程a)のために好ましいポリビニル芳香族化合物は、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、又はトリビニルナフタレン、特に好ましくはジビニルベンゼンである。
【0031】
ポリビニル芳香族化合物は、モノマー又は、それとさらなるモノマーとの混合物を基準にして、好ましくは1重量%~20重量%、特に好ましくは2重量%~12重量%、特に好ましくは4重量%~10重量%で使用される。ポリビニル芳香族化合物(架橋剤)のタイプは、そのポリマーの、後の用途に関連して選択される。ジビニルベンゼンを使用する場合には、ジビニルベンゼンの異性体だけではなく、エチルビニルベンゼンをも含む、市販のグレードのジビニルベンゼンで十分である。
【0032】
マクロポーラスなポリマーは、好ましくは、重合の際にそのポリマーの中にマクロポーラスな構造を作らせる目的で、モノマー混合物に対して、不活性物質、好ましくは少なくとも1種のポロゲンを添加することによって形成される。特に好ましいポロゲンは、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、イソドデカン、ペンタメチルヘプタン、メチルエチルケトン、ブタノール、又はオクタノール、及びそれらの異性体である。特に好適な有機物質は、モノマー中には溶解するが、ポリマーに対して貧溶媒又は貧膨潤剤(ポリマーに対する沈降剤)であるもの、たとえば脂肪族炭化水素である(Farbenfabriken Bayer、DBP1045102号明細書(1957);DBP1113570号明細書(1957))。
【0033】
米国特許第B4382124号明細書では、ポロゲンとして、4~10個の炭素原子を有するアルコールを使用しているが、このものは、本発明との関連においても同様に、スチレン/ジビニルベンゼンに基づくマクロポーラスなポリマーを調製するために好適に使用することができる。それに加えて、マクロポーラスなポリマーのための調製法が概説されている。
【0034】
ポロゲンは、有機相の量を基準にして、25重量%~45重量%の量で使用するのが好ましい。
【0035】
プロセス工程a)において、少なくとも1種のポロゲンを添加するのが好ましい。
【0036】
プロセス工程a)にしたがって調製されたポリマーは、ヘテロ分散(heterodisperse)又は単分散の形態で調製されてもよい。
【0037】
ヘテロ分散性ポリマーの調製は、当業者に公知の一般的なプロセス、たとえば懸濁重合を用いて実施される。
【0038】
プロセス工程a)において単分散性のポリマーを調製することが好ましい。
【0039】
本発明の好ましい実施態様においては、プロセス工程a)では、単分散性のポリマーの調製において、マイクロカプセル化されたモノマーの微小液滴が使用される。
【0040】
モノマーの微小液滴のマイクロカプセル化に有用な物質は、複合コアセルベートとしての使用が公知のもの、特にポリエステル、天然及び合成のポリアミド、ポリウレタン、又はポリウレアである。
【0041】
使用される天然ポリアミドは、好ましくは、ゼラチンである。このものは特に、コアセルベート及び複合コアセルベートとして採用される。本発明との関連においては、ゼラチン含有複合コアセルベートは、ゼラチンと合成高分子電解質との組合せを意味していることを特に理解されたい。好適な合成高分子電解質は、たとえば、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド及びメタクリルアミドの単位を組み込んだコポリマーである。アクリル酸及びアクリルアミドを使用することが、特に好ましい。ゼラチン含有カプセルは、慣用硬化剤、たとえばホルムアルデヒド又はグルタルジアルデヒドを使用して硬化させることができる。ゼラチン、ゼラチン含有コアセルベート及びゼラチン含有複合コアセルベートを用いてモノマーの微小液滴をカプセル化させることについては、欧州特許出願公開第A0 046 535号明細書に詳しい記述がある。合成ポリマーを使用してカプセル化するための方法は公知である。界面縮合が好ましく、界面縮合では、モノマー微小液滴の中に溶解させた反応性成分(特に、イソシアネート又は酸塩化物)が、水相中に溶解させた第二の反応性成分(特にアミン)と反応させられる。
【0042】
ヘテロ分散性、又は任意選択により場合によってはマイクロカプセル化された単分散性のモノマーの微小液滴は、重合の引き金となる、少なくとも1種の重合開始剤又は複数の重合開始剤の混合物(重合開始剤の組合せ)を含む。本発明によるプロセスに好適な重合開始剤は、ペルオキシ化合物、特に好ましくは、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(p-クロロベンゾイル)ペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルオクトエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、又はtert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサン、並びにアゾ化合物たとえば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)又は2,2’-アゾビス(2-メチルイソブチロニトリル)である。
【0043】
重合開始剤は、モノマー混合物を基準にして、好ましくは0.05重量%~2.5重量%、特に好ましくは0.1重量%~1.5重量%の量で使用される。
【0044】
場合によっては単分散性の、マイクロカプセル化されたモノマーの微小液滴は、場合によってはさらに、(モノマーを基準にして)最大30重量%までの架橋した又は非架橋のポリマーを含んでいてもよい。好ましいポリマーは、上述したモノマーから、特に好ましくはスチレンから誘導されたものである。
【0045】
プロセス工程a)における単分散のポリマーの調製において、その水相は、さらに好ましい実施態様において、溶解させた重合禁止剤を含んでいてもよい。この場合の有用な禁止剤としては、無機物質及び有機物質の両方が挙げられる。好ましい無機禁止剤は、窒素化合物、特に好ましくはヒドロキシルアミン、ヒドラジン、亜硝酸ナトリウム、及び亜硝酸カリウム、亜リン酸の塩類、たとえば亜リン酸水素ナトリウム、及び硫黄含有化合物、たとえば亜ジチオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、並びにチオシアン酸アンモニウムである。有機重合禁止剤の例は、フェノール系化合物、たとえば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、レゾルシノール、カテコール、tert-ブチルカテコール、ピロガロール、及びフェノール類とアルデヒド類の縮合反応生成物である。さらなる好適な有機重合禁止剤は、窒素含有化合物である。特に好ましいのは、ヒドロキシルアミン誘導体、たとえば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N-イソプロピルヒドロキシルアミン、及びスルホン化若しくはカルボキシル化N-アルキルヒドロキシルアミン、又はN,N-ジアルキルヒドロキシルアミン誘導体、ヒドラジン誘導体、たとえばN,N-ヒドラジノ二酢酸、ニトロソ化合物、たとえば、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩又はN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩である。重合禁止剤の濃度は、(水相を基準にして)5~1000ppm、好ましくは10~500ppm、特に好ましくは10~250ppmである。
【0046】
単分散のポリマーを得るための、任意選択により場合によってはマイクロカプセル化された単分散のモノマーの微小液滴の重合は、好ましくは、水相中の1種又は複数の保護コロイドの存在下で実施される。好適な保護コロイドは、天然若しくは合成の水溶性ポリマー、好ましくは、ゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又は(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルのコポリマーである。好ましいものとしてはさらに、セルロース誘導体、特にセルロースエステル及びセルロースエーテル、たとえば、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。ゼラチンが特に好ましい。保護コロイドの使用量は、水相を基準にして、通常は0.05重量%~1重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%である。
【0047】
また別の好ましい実施態様においては、単分散性のポリマーを得るための重合を、緩衝系(バッファーシステム)の存在下で実施することができる。重合の開始時において水相のpHを、14~6の間、好ましくは12~8の間の値に調節できる緩衝系が好ましい。それらの条件下では、カルボン酸基を有する保護コロイドが、全体的又は部分的に塩として存在する。このことが、保護コロイドの作用に対して好ましい効果を有している。特に好適な緩衝系は、リン酸又はホウ酸の塩を含む。本発明との関連では、「リン酸塩」及び「ホウ酸塩」は、相当する酸及び塩のオルト形の縮合生成物も包含する。水相中のリン酸塩又はホウ酸塩の濃度は、好ましくは0.5~500mmol/L、特に好ましくは2.5~100mmol/Lである。
【0048】
単分散性のポリマーを得るための重合における撹拌速度はあまり重要ではなく、慣用される重合の場合とは対照的に、粒径に影響をおよぼさない。懸濁されたモノマー微小液滴を懸濁液中に保持し、重合熱の除去を促進するのに十分である、低い攪拌機速度が採用される。この作業には、各種のタイプの攪拌機を使用することができる。特に好適な攪拌機は、軸方向作用(axial action)を有するゲート攪拌機(gate stirrer)である。
【0049】
カプセル化されたモノマーの微小液滴と水相との容積比は、好ましくは(1:0.75)~(1:20)、特に好ましくは(1:1)~(1:6)である。
【0050】
単分散性のポリマーを得るための重合温度は、使用した重合開始剤の分解温度によって決まる。それは、好ましくは50℃~180℃の間、特に好ましくは55℃~130℃の間である。その重合を、0.5時間~約20時間続けるのが好ましい。重合を低温、好ましくは60℃で開始し、重合の転化率が進むにつれて反応温度を上げていく温度プログラムを採用することが有用であることが判明した。このようにすると、たとえば反応の信頼できる進行及び高い重合転化率に対する要求が、極めて効果的に達成されうる。重合反応の後、慣用される方法、たとえば濾過法又はデカンテーション法によって単分散性のポリマーを単離し、さらに、任意選択によって洗浄してもよい。
【0051】
ジェット法又はシード-フィード法を用いて単分散性のポリマーを調製することは、従来技術からも公知であり、たとえば、米国特許第A4 444 961号明細書、欧州特許出願公開第A0 046 535号明細書、米国特許第4 419 245号明細書、又は国際公開第93/12167号パンフレットに記載されている。
【0052】
単分散ポリマーを、ジェット法又はシード-フィード法を使って調製するのが好ましい。
【0053】
マクロポーラスな単分散ポリマーを、プロセス工程a)において調製するのが好ましい。
【0054】
プロセス工程b)においては、最初に、アミドメチル化試薬を調製するのが好ましい。それが終わったら、フタルイミド又はフタルイミド誘導体を、好ましくは、溶媒中に溶かし、ホルムアルデヒド又はその誘導体と混合する。次いで、水を脱離させると、それからビス(フタルイミド)エーテルが形成される。本発明との関連において好適なフタルイミド誘導体は、フタルイミドそのもの、又は置換されたフタルイミド類たとえば、好ましくはメチルフタルイミドである。本発明との関連ではホルムアルデヒドの誘導体としてはさらに、例として且つ好ましくは、ホルムアルデヒドの水溶液が挙げられる。ホルムアルデヒドの水溶液は、好ましくはホルマリンである。ホルマリンは、好ましくはホルムアルデヒドの水溶液である。好ましいホルムアルデヒドの誘導体は、ホルマリン又はパラホルムアルデヒドである。したがって、プロセス工程b)において、パラホルムアルデヒドの存在下で、フタルイミド誘導体又はフタルイミドを、工程a)からのポリマーと反応させることもまた可能であろう。
【0055】
プロセス工程b)において、ポリマーに含まれるフタルイミド誘導体と芳香族基のモル比は、一般的には、(0.15:1)~(1.7:1)であるが、他のモル比を選択することもまた可能である。フタルイミド誘導体は、プロセス工程b)においてポリマー中に含まれる芳香族基に対して、(0.7:1)~(1.45:1)のモル比で使用するのが好ましい。
【0056】
ホルムアルデヒド又はその誘導体は、典型的には、フタルイミド誘導体を基準にして過剰量で使用されるが、異なる量で使用することもまた可能である。フタルイミド誘導体1モルあたり、1.01~1.2モルのホルムアルデヒド又はその誘導体を使用するのが好ましい。
【0057】
ポリマーを膨潤させるために好適な不活性溶媒、好ましくは塩素化炭化水素、特に好ましくは、ジクロロエタン又は塩化メチレンが、一般的に、プロセス工程b)において使用される。しかしながら、溶媒を使用することなく実施可能なプロセスもまた考えられる。
【0058】
プロセス工程b)において、そのポリマーは、フタルイミド又はその誘導体及びホルムアルデヒドと縮合される。不活性溶媒中で、それからフタルイミド誘導体のSO3アダクトを調製するために、ここで使用される触媒は、好ましくは、発煙硫酸、硫酸、又は三酸化硫黄である。プロセス工程b)において、その触媒は、典型的には、フタルイミド誘導体に対して不足量で(in deficiency)添加するが、もっと多くの量で使用することもまた可能である。触媒とフタルイミド誘導体とのモル比が、(0.1:1)~(0.45:1)であるのが好ましい。触媒とフタルイミド誘導体のモル比が、(0.2:1)~(0.4:1)であるのが、特に好ましい。
【0059】
プロセス工程b)は、好ましくは20℃~120℃、特に好ましくは60℃~90℃の温度において実施される。
【0060】
フタル酸基の開裂、したがってアミノメチル基の遊離は、プロセス工程c)において、少なくとも1種の塩基又は少なくとも1種の酸をも用いて処理することによって実施される。プロセス工程c)において使用される塩基は、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、又はヒドラジンである。プロセス工程c)において使用される酸は、好ましくは、硝酸、リン酸、硫酸、塩酸、亜硫酸、又は亜硝酸である。プロセス工程c)において、フタル酸基を開裂させるため、したがってアミノメチル基を遊離させるために、少なくとも1種の塩基を使用するのが好ましい。
【0061】
フタル酸基の開裂、したがってアミノメチル基の遊離を、プロセス工程c)において、フタルイミドメチル化ポリマーを、アルカリ金属水酸化物、たとえば好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液又はアルコール溶液を用いて、100℃~250℃、好ましくは120℃~190℃の温度において処理することによって実施するのが特に好ましい。その水酸化ナトリウム溶液の濃度は、水相を基準にして、20重量%~40重量%であるのが好ましい。このプロセスにより、アミノアルキル基含有ポリマー、好ましくはアミノメチル基含有ポリマーを調製することが可能となる。
【0062】
そのアミノメチル化されたポリマーを、一般的には、脱イオン水を用いて、アルカリ金属が無くなるまで洗浄する。しかしながら、後処理なしで、使用することもまた可能である。
【0063】
工程a)~c)で記載したプロセスは、フタルイミドプロセスとして公知である。そのフタルイミドプロセスとは別に、クロロメチル化プロセスを利用してアミノメチル化ポリマーを調製する選択肢も存在する。たとえば欧州特許出願公開第A1 568 660号明細書に記載されているクロロメチル化プロセスによれば、ポリマー(通常は、スチレン/ジビニルベンゼンに基づくもの)を、最初に調製し、クロロメチル化し、次いでアミンと反応させる(Helfferich,Ionenaustauscher[Ion Exchangers],pages 46-58,Verlag Chemie,Weinheim,1959)及び欧州特許出願公開第A0 481 603号明細書)。式(I)の官能基を有するキレート樹脂を含むイオン交換体は、フタルイミドプロセスによるか、又はクロロメチル化プロセスにより調製することができる。本発明によるイオン交換体は、フタルイミドプロセスにより、プロセス工程a)~c)に従って調製し、次いで、工程d)に従って官能化することによりキレート樹脂を得るのが好ましい。
【0064】
構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂を得るための、プロセス工程c)で得られたアミノメチル基含有ポリマーの反応は、プロセス工程d)において、少なくとも1種の懸濁媒体及び少なくとも1種の酸の存在下、少なくとも1種の式(II)の化合物又はその塩と組み合わせて、ホルムアルデヒド又はその誘導体を用いて実施される。
【化4】
[式中、R
3は、水素又はC
1~C
15アルキルであり、かつ、R
4は、C
1~C
15アルキル、C
6~C
24アリール、C
7~C
15アリールアルキル、又はC
2~C
10アルケニル(それらは、任意選択により場合によっては、C
1~C
8アルキルで多置換されていてもよい)である]
【0065】
プロセス工程d)において使用されるホルムアルデヒド又はその誘導体は、好ましくは、ホルムアルデヒド、ホルマリン、又はパラホルムアルデヒドである。ホルマリンが、プロセス工程d)において特に好ましく使用される。
【0066】
プロセス工程d)において使用される式(II)の化合物は、好ましくは、フェニルホスフィン酸、2,4,4-トリメチルペンチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、若しくは2-メチルペンチルホスフィン酸、又はそれらの化合物の混合物である。プロセス工程d)においては、式(II)の化合物を、塩の形態で使用することもまた可能である。使用される塩は、好ましくは、ナトリウム、カリウム、又はリチウムの塩である。
【0067】
式(II)の化合物は市販され入手可能である、或いは、当業者には公知のプロセスにより調製することができる。
【0068】
その反応は、プロセス工程d)において、懸濁媒体中で実施される。使用される懸濁媒体は、水、又はアルコール、又はそれらの溶媒の混合物である。使用されるアルコールは、好ましくは、メタノール、エタノール、又はプロパノールである。使用される酸は、好ましくは、無機酸である。別な方法として、有機酸を使用してもよい。使用される無機酸は、好ましくは、塩酸、硝酸、リン酸、若しくは硫酸、又はそれらの酸の混合物である。その無機酸は、好ましくは10%~90重量%、特に好ましくは40%~80重量%の濃度で使用される。
【0069】
プロセス工程d)においては、プロセス工程c)からのアミノメチル化ポリマーのアミノメチル基1モルあたり、1~4モルの式(II)の化合物を使用するのが好ましい。
【0070】
プロセス工程d)においては、プロセス工程c)からのアミノメチル化ポリマーのアミノメチル基1モルあたり、2~8モルのホルムアルデヒドを使用するのが好ましい。
【0071】
プロセス工程d)においては、プロセス工程c)からのアミノメチル化ポリマーのアミノメチル基1モルあたり、2~12モルの無機酸を使用するのが好ましい。
【0072】
プロセス工程d)において、構造要素(I)の官能基を含むキレート樹脂を得るためのアミノメチル基含有ポリマーの反応は、好ましくは70℃~120℃の範囲の温度、特に好ましくは85℃~110℃の間の範囲の温度で実施される。
【0073】
本発明の一つの実施態様においては、プロセス工程d)を、アミノメチル化ポリマー及び式(II)の化合物が、最初に水の中に仕込まれているようにして実施してもよい。次いで、ホルムアルデヒド又はその誘導体を、好ましくは撹拌しながら、添加する。次に、無機酸を添加する。次に、反応温度への加熱を実施する。反応の終了後、その反応混合物を冷却し、液相を分離し、好ましくは、樹脂を、脱イオン水を用いて洗浄する。
【0074】
本発明のさらなる実施態様においては、プロセス工程d)を、最初にアミノメチル化ポリマー、式(II)の化合物、及びホルムアルデヒド又はその誘導体を水の中に仕込み、次いで反応温度において無機酸を添加するようにして、実施する。反応が完了した後、その反応混合物を冷却し、液相を分離し、好ましくは、樹脂を、脱イオン水を用いて洗浄する。
【0075】
本発明のさらなる実施態様においては、プロセス工程d)は、最初にアミノメチル化ポリマー、無機酸、及びホルムアルデヒド又はその誘導体を水の中に仕込み、次いで反応温度において、式(II)の化合物を添加することを含む。反応が完了した後、その反応混合物を冷却し、その液相を分離し、好ましくは、樹脂を、脱イオン水を用いて洗浄する。
【0076】
本発明のさらなる実施態様においては、プロセス工程d)は、最初にアミノメチル化ポリマー、式(II)の化合物、ホルムアルデヒド又はその誘導体、及び無機酸を水の中に仕込み、次いで反応温度に加熱することを含む。反応が完了した後、その反応混合物を冷却し、その液相を分離し、好ましくは、樹脂を、脱イオン水を用いて洗浄する。
【0077】
好ましくは、本発明のすべての実施態様において、反応混合物を、反応温度において約3~15時間攪拌する。任意選択により場合によっては、プロセス工程d)において調製された樹脂を、塩の形態に変換することもまた可能である。これは、アルカリ金属水酸化物との反応により実施するのが好ましい。使用されるアルカリ金属水酸化物は、特に好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウム、及びその相当する水溶液である。
【0078】
本発明の好ましい実施態様においては、プロセス工程d)において、アミノメチル化ポリマーを水中に懸濁させる。この懸濁液に、式(II)の化合物及び無機酸を添加する。そのようにして得られた反応混合物を反応温度の加熱し、その温度において、撹拌しながら、ホルムアルデヒド又はその誘導体と徐々に混合する。ホルムアルデヒド又はその誘導体の添加が終了した後も、その反応混合物の撹拌を、その反応温度において約3~15時間続ける。次いで、その反応混合物を冷却し、その液相を分離し、その樹脂を、脱イオン水を用いて洗浄する。
【0079】
本発明によるキレート樹脂の平均置換度は、0~2であってよい。平均置換度は、その樹脂の中の、非置換、一置換、及び二置換のアミノメチル基のあいだの統計的なモル比を表している。置換度0では、置換がまったく起きておらず、構造要素(I)のアミノメチル基は、その樹脂中に一級アミノ基として存在しているであろう。置換度2では、その樹脂中の全部のアミノ基が、二置換された形態で存在しているであろう。置換度1では、本発明によるキレート樹脂中のすべてのアミノ基が、統計的にみて、一置換(モノ置換)された形態で存在しているであろう。
【0080】
構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂のアミノメチル基の平均置換度は、好ましくは0.5~2.0である。特に好ましくは、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂のアミン基の平均置換度は1.0~1.5である。
【0081】
構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂は、金属、好ましくは重金属、貴金属、及び希土類の回収及び精製に素晴らしく適している。
【0082】
本発明の特に好ましい実施態様においては、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂は、以下の群から選択される希土類を吸着させるために適している:スカンジウム、ランタン、イットリウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウム。本発明のさらなる実施態様においては、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂は、以下のものを吸着させるために適している:鉄、バナジウム、銅、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、マンガン、マグネシウム、カルシウム、鉛、カドミウム、ウラン、水銀、白金族の元素、及び金又は銀。
【0083】
極めて特に好ましくは、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂は、亜鉛、鉄、バナジウム、アルミニウム、タングステン、マンガン、マグネシウム、カルシウム、コバルト、及びニッケルを吸着させるために適している。さらに好ましくは、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂は、亜鉛、コバルト、及びニッケルを吸着させるために使用される。
【0084】
その吸着は、特に好ましくは、バッテリー用化学物質を精製するために、濃縮されたニッケル及びコバルト濃縮物の溶液から実施される。
【0085】
本発明のさらなる好ましい実施態様においては、本発明によるキレート樹脂は、無機酸を精製するために使用される。
【0086】
さらなる好ましい実施態様においては、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂は、水性ブライン、たとえばクロルアルカリ電気分解で使用されたものから、アルカリ土類金属、たとえば、カルシウム、マグネシウム、バリウム、又はストロンチウムを除去するために適している。
【0087】
さらなる好ましい実施態様においては、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂は、鉄(III)カチオンの吸着及び脱着のために適している。酸を使用することによって、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂から、鉄(III)カチオンを、再び大量に脱着させることできることが発見されている。
【0088】
本発明のさらなる好ましい実施態様においては、構造要素(I)の官能基を含む本発明によるキレート樹脂は、ケイ素、好ましくは99.99%よりも高い純度を有するケイ素を、調製及び精製するためのプロセスに適している。
【0089】
さらには、本発明によるキレート樹脂は、好ましくは、水の精製の目的のために、水から金属を除去するために使用しうる。
【0090】
本発明によるキレート樹脂は、金属のための良好な吸着特性、特に亜鉛イオンの吸着のための良好な吸着性能を有する新規な樹脂を提供する。
【0091】
<塩基性の基の量の測定>
突き固め容積計(tamping volumeter)の中に密充填(agitated down)させて100mLとしたアミノメチル化されたポリマーを、次に脱イオン水を用いて、ガラスカラムの中に、洗って流し込む。1000mLの2重量%の水酸化ナトリウム溶液を、1時間40分にわたって濾過させる。次いで、フェノールフタレインを添加した100mLの溶出液が、最大でも0.05mLの0.1N(0.1規定)塩酸の消費量を有するようになるまで、脱イオン水を濾過させる。
【0092】
50mLのこの樹脂を、ビーカー中で、50mLの脱イオン水及び100mLの1N塩酸と混合する。その懸濁液を30分間撹拌し、次にガラスカラムの中へと移す。液体は流出させる。さらなる100mLの1N塩酸を、その樹脂を通して20分間にわたり濾過させる。次いで、200mLのメタノールを、濾過させる。すべての溶出液を集め、一緒に合わせ、メチルオレンジ指示薬に対して、1N水酸化ナトリウム溶液で滴定する。
【0093】
1リットルのアミノメチル化樹脂中のアミノメチル基の量を、次式に従って計算する:(200-V)×20=樹脂1リットルあたりのアミノメチル基のモル量(ここで、Vは、滴定において消費された1N水酸化ナトリウム溶液の体積である)。
【0094】
その塩基性の基のモル量が、そのキレート樹脂中のアミノメチル基のモル量に相当する。
【0095】
<全Zn容量の決定>
突き固め容積計の中で密充填させて50mLとした樹脂を、脱イオン水を用いてガラスカラムの中に洗い入れる。次いで、滴下漏斗を使用して、150mLの5重量%の硫酸を、その樹脂に適用する。次に、その酸を、250mLの脱イオン水を用いて、フィルターから置き換える。500mLの酢酸亜鉛溶液(15gのZn(CH3COO)2を、950mLの脱イオン水の中に溶かし、濃酢酸を用いてpH=5に調節し、脱イオン水を用いて1000mLとしたもの)を、次に、その樹脂に適用し、250mLの脱イオン水ですすぐ。250mLの5重量%硫酸を用いて、吸着された亜鉛を溶出させる。200mLの脱イオン水を用いて、すすぎ洗いする。集めた溶出物を、500mLのメスフラスコの中に集め、必要であれば、脱イオン水を用いて、標線に達するようにする。ICP-OESによって、その500mLの酸溶出物からZn濃度を決定し、それを全Zn容量に変換する。
【実施例】
【0096】
実施例1
1a)スチレン、ジビニルベンゼン、及びエチルスチレンに基づく単分散のマクロポーラスポリマーの調製
10Lのガラス製反応器に、最初に、3000gの脱イオン水、並びに320gの脱イオン水中に10gのゼラチン、16gのリン酸水素二ナトリウム・十二水和物、及び0.73gのレソルシノールを溶かした溶液を仕込み、混合する。その混合物の温度を25℃に調節する。次に、撹拌しながら、3.1重量%のジビニルベンゼン及び0.6重量%のエチルスチレン(市販されている、ジビニルベンゼンとエチルスチレンの異性体混合物(80%ジビニルベンゼン)の形態で使用)、0.4重量%のジベンゾイルペルオキシド、58.4重量%のスチレン、及び37.5重量%のイソドデカン(ペンタメチルヘプタンの含量が高い工業グレードの異性体混合物)から構成された、狭い粒径分布を有するマイクロカプセル化されたモノマーの微小液滴の混合物3200gを添加し(ここで、そのマイクロカプセルはゼラチン及びアクリルアミドとアクリル酸のコポリマーを含むホルムアルデヒドで硬化させた複合コアセルベートから構成されている)、さらに、pH12を有する水相3200gを添加する。
【0097】
その混合物を撹拌し、25℃から始め、95℃で終わる温度プログラムに従って昇温させることによって重合を完結させる。その混合物を冷却し、32μmの篩を通して洗浄し、次に減圧下、80℃において乾燥させる。
【0098】
これにより、1893gの、単分散の粒径分布を有するポリマーが得られる。
【0099】
1b)アミドメチル化ポリマーの製造
1779gの1,2-ジクロロエタン、588.5gのフタルイミド、及び340.3gの36重量%ホルマリンを、最初に、室温において仕込む。その懸濁液のpHを、水酸化ナトリウム溶液を用いて5.5~6に調節する。次に、水を蒸留によって除去する。次に、43.2gの硫酸(98重量%)を計量仕込みする。生成した水を蒸留により除去する。その混合物を冷却する。30℃において、157.7gの65%発煙硫酸、次にプロセス工程1a)において調製した単分散ポリマー422.8gを計量仕込みする。その懸濁液を65℃に加熱し、その温度においてさらに6.5時間撹拌する。その反応液体を抜き出し、脱イオン水を量り込み、残存量の1,2-ジクロロエタンを蒸留により除去する。
アミドメチル化ポリマーの収量:1900mL
【0100】
1c)アミノメチル化ポリマーの製造
1b)からのアミドメチル化ポリマー1884mLの中に、904.3gの50重量%水酸化ナトリウム溶液及び1680mLの脱イオン水を、室温において量り込む。その懸濁液を、2時間かけて180℃に加熱し、その温度において8時間撹拌する。得られたポリマーを、脱イオン水を用いて洗浄する。
アミノメチル化ポリマーの収量:1760mL
塩基性の基の量の決定:2.05モル/樹脂1L
【0101】
1d)アミノメチル化樹脂とフェニルホスフィン酸の反応
最初に、反応器に、100mLの脱イオン水、及び実施例1からのアミノメチル化ポリマー(0.21モルのアミノメチル基)100mLを仕込む。次に、76.5gのフェニルホスフィン酸(99%、0.53モル)を少しずつ分けて添加し、次に、15分間攪拌する。164gの98%硫酸(1.64モル)を、2時間かけて滴下により添加し、次にその懸濁液を95℃に加熱する。この温度において、59.8gの36%ホルマリン溶液(0.72モル)を1時間かけて添加し、次に95℃において4時間攪拌する。冷却後、その樹脂を、ふるい上で、脱イオン水を用いて中性になるまで洗浄し、ガラスカラムの中へ移し、そして4%水酸化ナトリウム溶液を用いてそのNa形へと変える。
Na形の樹脂の収量:260mL
元素分析による組成(乾燥樹脂):
窒素=3.4%
リン=11%
窒素上での置換(元素分析から、P:N比)1.47
全Zn容量(H形):36.7g/L
【0102】
実施例2
<アミノメチル化樹脂とエチルホスフィン酸の反応>
最初に、反応器に、100mLの脱イオン水、及び実施例1c)からのアミノメチル化ポリマー(0.21モルのアミノメチル基)100mLを仕込む。次に、55.2gのエチルホスフィン酸(91%、0.53モル)を少しずつ分けて添加し、次に、15分間攪拌する。164gの98%硫酸(1.64モル)を、2時間かけて滴下により添加し、次にその懸濁液を95℃に加熱する。この温度において、59.8gの36%ホルマリン溶液(0.72モル)を1時間かけて添加し、次に95℃において4時間攪拌する。冷却後、その樹脂を、ふるい上で、脱イオン水を用いて中性になるまで洗浄し、ガラスカラムの中へ移し、そして4%水酸化ナトリウム溶液を用いてそのNa形へと変える。
Na形の樹脂の収量:216mL
元素分析による組成(乾燥樹脂):
窒素=4.2%
リン=11%
窒素上での置換(元素分析から、P:N比)1.19
全Zn容量(H形):32.8g/L
【0103】
実施例3
<アミノメチル化樹脂と2-メチルペンチルホスフィン酸の反応>
最初に、反応器に、40mLの脱イオン水、及び実施例1c)からのアミノメチル化ポリマー(0.08モルのアミノメチル基)40mLを仕込む。次に、34gの2-メチルペンチルホスフィン酸(94%、0.21モル)を、少しずつ分けて添加し、次に15分間攪拌する。66gの98%硫酸(0.66モル)を、2時間かけて滴下により添加し、次にその懸濁液を95℃に加熱する。この温度において、23.9gの36%ホルマリン溶液(0.29モル)を1時間かけて添加し、次に95℃において4時間攪拌する。冷却後、その樹脂を、ふるい上で、脱イオン水を用いて中性になるまで洗浄し、ガラスカラムの中へ移し、そして4%水酸化ナトリウム溶液を用いてそのNa形へと変える。
Na形の樹脂の収量:91mL
元素分析による組成(乾燥樹脂):
窒素=4.0%
リン=9.1%
窒素上での置換(元素分析から、P:N比)1.03
全Zn容量(H形):21.8g/L
【0104】
比較例(独国特許出願公開第A2848289号明細書に関連)
<アミノメチル化樹脂とホスフィン酸の反応>
最初に、反応器に、50mLの脱イオン水、及び実施例1c)からのアミノメチル化ポリマー(0.21モルのアミノメチル基)100mLを仕込む。次に、71.4gのホスフィン酸(水中50%、0.54モル)を少しずつ分けて添加し、次に15分間攪拌する。167gの98%硫酸(1.66モル)を、2時間かけて滴下により添加し、次にその懸濁液を95℃に加熱する。この温度において、60.7gの36%ホルマリン溶液(0.73モル)を1時間かけて添加し、次に95℃において4時間攪拌する。冷却後、その樹脂を、ふるい上で、脱イオン水を用いて中性になるまで洗浄し、ガラスカラムの中へ移し、そして4%水酸化ナトリウム溶液を用いてそのNa形へと変える。
Na形の樹脂の収量:130mL
元素分析による組成(乾燥樹脂):
窒素=6.7%
リン=10%
窒素上での置換(元素分析から、P:N比)0.68
全Zn容量(H形):15g/L
【0105】
結果
【0106】
【0107】
実施例1~3は、請求項に記載した化合物が、驚くべきことに、独国特許出願公開第A2848289号明細書から公知であり且つホスフィン酸を用いて調製した樹脂よりも、顕著に高い全Zn容量を有していることを示している。
【国際調査報告】