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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ヒートポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20231006BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20231006BHJP
   F25B 1/10 20060101ALI20231006BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
F25B47/02 530K
F25B13/00 351
F25B13/00 S
F25B13/00 341C
F25B1/10 Z
F25B1/00 311B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519990
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021076855
(87)【国際公開番号】W WO2022069581
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】2015531.3
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301008419
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ グラスゴー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チーピン・ユイ
【テーマコード(参考)】
3L092
【Fターム(参考)】
3L092AA09
3L092BA05
3L092BA17
3L092BA27
3L092TA10
3L092UA04
3L092UA31
3L092VA04
3L092WA02
3L092WA23
(57)【要約】
建物の内部温度を制御するためのヒートポンプシステム。前記システムは、冷媒の流れによって互いに流体結合されて冷媒回路を画定する、圧縮機、第1の熱交換器、膨張装置、及び第2の熱交換器と、前記冷媒と熱エネルギーを交換するために前記冷媒回路に熱的に結合可能である熱エネルギー貯蔵手段とを含む。前記ヒートポンプシステムは、通常加熱モードと除霜モードで動作できるように構成される。前記通常加熱モードでは、熱エネルギーは、前記第2の熱交換器から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記第1の熱交換器によって伝達されて前記建物を加熱する。前記除霜モードでは、熱エネルギーは、前記熱エネルギー貯蔵手段から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記第1の熱交換器によって伝達されて前記建物を加熱し、前記第2の熱交換器によって伝達されて前記第2の熱交換器を除霜する。前記ヒートポンプシステムは、前記通常加熱モード及び前記除霜モードを切り替えるように構成されたスイッチングアセンブリを含み、前記スイッチングアセンブリは、前記除霜モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記第1の熱交換器を出る冷媒を前記第2の熱交換器を通って流れるように導き、前記冷媒内の残留熱で前記第2の熱交換器を除霜するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内部温度を制御するヒートポンプシステムであって、前記システムは、
冷媒の流れによって互いに流体結合されて冷媒回路を画定する、圧縮機、第1の熱交換器、膨張装置、及び第2の熱交換器と、
前記冷媒と熱エネルギーを交換するために前記冷媒回路に熱的に結合可能である熱エネルギー貯蔵手段と
を含み、
前記ヒートポンプシステムは、通常加熱モード及び除霜モードで動作するように構成され、
前記通常加熱モードでは、熱エネルギーは、前記第2の熱交換器から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記第1の熱交換器によって伝達されて前記建物を加熱し、
前記除霜モードでは、熱エネルギーは、前記熱エネルギー貯蔵手段から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記第1の熱交換器によって伝達されて前記建物を加熱し、前記第2の熱交換器によって伝達されて前記第2の熱交換器を除霜し、
前記ヒートポンプシステムは、前記通常加熱モード及び前記除霜モードを切り替えるように構成されたスイッチングアセンブリを含み、前記スイッチングアセンブリは、前記除霜モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記第1の熱交換器を出る前記冷媒を前記第2の熱交換器を通って流れるように導き、前記冷媒内の残留熱で前記第2の熱交換器を除霜するように構成される、
ヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記スイッチングアセンブリは、前記ヒートポンプシステムを除霜モードで動作させるとき、前記第1の熱交換器を出る前記冷媒を、前記第2の熱交換器、前記膨張装置及び前記圧縮機に順次通すように構成される、請求項1に記載のヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記熱エネルギー貯蔵手段は、前記膨張装置と前記圧縮機との間の前記冷媒回路に結合される、請求項1又は2に記載のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記スイッチングアセンブリは、前記除霜モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記第1の熱交換器を前記第2の熱交換器に直接結合するように構成された四方弁を含む、請求項2又は3に記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記スイッチングアセンブリは、前記除霜モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記膨張装置を迂回し、前記第1の熱交換器を出る前記冷媒を、前記第2の膨張装置、前記熱エネルギー貯蔵手段、前記第2の熱交換器、及び前記圧縮機を順次通すように構成される、請求項1に記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記スイッチングアセンブリは、前記ヒートポンプシステムが前記除霜モードで動作しているときに、前記膨張装置を前記冷媒回路から隔離するように構成された第1のバイパスアセンブリを含む、請求項5に記載のヒートポンプシステム。
【請求項7】
前記熱エネルギー貯蔵手段は、前記第2の膨張装置と前記第2の熱交換器との間の前記冷媒回路に結合される請求項5又は6に記載のヒートポンプシステム。
【請求項8】
前記スイッチングアセンブリは、前記ヒートポンプシステムが前記除霜モードで動作しているときに、前記第2の膨張装置を前記第1の熱交換器と前記熱エネルギー貯蔵手段との前記間の冷媒回路に流体結合するように構成された第2のバイパスアセンブリを含む、請求項7に記載のヒートポンプシステム。
【請求項9】
前記ヒートポンプシステムは、熱エネルギーが前記冷媒から前記熱エネルギー貯蔵手段に伝達される熱充填モードで動作可能であり、前記スイッチングアセンブリは、前記熱充填モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記第2の膨張装置及び前記第1の熱交換器を迂回するように、前記圧縮機を出る冷媒を導くように構成される、請求項5~8のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項10】
前記ヒートポンプシステムは、熱エネルギーが前記熱エネルギー貯蔵手段から前記冷媒に伝達される補助加熱モードで動作可能であり、前記スイッチングアセンブリは、前記補助加熱モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記膨張装置及び前記第2の熱交換器を迂回するように構成される、請求項5~9のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項11】
前記熱エネルギー貯蔵手段は、相変化材料を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項12】
前記相変化材料は、前記冷媒回路の導管と直接熱的に接触するように配置される、請求項11に記載のヒートポンプシステム。
【請求項13】
前記相変化材料は、伝熱流体を含む回路によって前記冷媒回路の導管に熱的に結合される、請求項11に記載のヒートポンプシステム。
【請求項14】
前記冷媒回路は、相分離器によって互いに流体結合された高圧段及び低圧段を含み、前記高圧段は前記第1の熱交換器を含み、前記低圧段は前記第2の熱交換器を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項15】
前記熱エネルギー貯蔵手段は、前記相分離器に熱的に結合可能である、請求項14に記載のヒートポンプシステム。
【請求項16】
前記圧縮機は、前記高圧段に流体結合された第1の圧縮機と、前記低圧段に流体結合された第2の圧縮機とを含む、圧縮機アセンブリを画定する、請求項14又は15に記載のヒートポンプシステム。
【請求項17】
前記圧縮機は、前記冷媒回路の前記高圧段及び前記低圧段の両方に流体結合された蒸気噴射圧縮機を含む、請求項14又は15に記載のヒートポンプシステム。
【請求項18】
前記膨張装置は、前記高圧段に流体結合された第1の膨張装置と、前記低圧段に流体結合された第2の膨張装置とを含む、膨張装置アセンブリを画定する、請求項14~17のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項19】
前記スイッチングアセンブリは、前記除霜モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記第1の膨張装置を迂回し、前記第1の熱交換器を出る前記冷媒を、前記第2の膨張装置、前記第2の熱交換器、及び前記相分離器に順次通すように配置される、請求項18に記載のヒートポンプシステム。
【請求項20】
前記第2の熱交換器は第2の熱源に熱的に結合され、前記第1の熱交換器は前記建物のセントラルヒーティングシステムに熱的に結合される、請求項1~19のいずれか1項に記載のヒートポンプシステムを含む建物。
【請求項21】
建物の内部温度を制御するためにヒートポンプシステムを動作させる方法であって、前記システムは、
冷媒の流れによって互いに流体結合されて冷媒回路を画定する、圧縮機、第1の熱交換器、膨張装置、及び第2の熱交換器と、
前記冷媒と熱エネルギーを交換するために前記冷媒回路に熱的に結合可能である熱エネルギー貯蔵手段と
を含み、
前記ヒートポンプシステムは、通常加熱モード及び除霜モードで動作するように構成され、
前記通常加熱モードでは、熱エネルギーは、前記第2の熱交換器から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記第1の熱交換器によって伝達されて前記建物を加熱し、
前記除霜モードでは、熱エネルギーは、前記熱エネルギー貯蔵手段から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記第1の熱交換器によって伝達されて前記建物を加熱し、前記第2の熱交換器によって伝達されて前記第2の熱交換器を除霜し、
前記方法は、前記除霜モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記第1の熱交換器を出る前記冷媒を前記第2の熱交換器を通って流れるように導き、前記冷媒内の残留熱で前記第2の熱交換器を除霜するように構成される、
方法。
【請求項22】
冷蔵ユニットの内部温度を制御するためにヒートポンプシステムを動作させる方法であって、前記システムは、
冷媒の流れによって互いに流体結合されて冷媒回路を画定する、圧縮機、凝縮器、膨張装置、及び蒸発器と、
前記冷媒と熱エネルギーを交換するために前記冷媒回路に熱的に結合可能である熱エネルギー貯蔵手段と
を含み、
前記冷媒回路は、相分離器によって互いに流体結合された高圧段及び低圧段を含み、前記高圧段は前記凝縮器を含み、前記低圧段は前記蒸発器を含み、
前記ヒートポンプシステムは、冷却充填モード及び補助冷却モードで動作するように構成され、
前記冷却充填モードでは、熱エネルギーは、前記熱エネルギー貯蔵手段から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記凝縮器によって伝達されて外部周囲空気を加熱し、
前記補助冷却モードでは、熱エネルギーは、前記蒸発器から前記冷媒に伝達されて前記冷蔵ユニットの内部領域を冷却し、前記冷媒から前記熱エネルギー貯蔵手段に伝達され、
前記方法は、前記冷却充填モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記高圧段を隔離し、前記補助冷却モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記低圧段を隔離することを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプシステム、及びヒートポンプシステムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲の外気などの熱源から熱エネルギー(すなわち、熱)を抽出し、抽出した熱エネルギーを建物の内部などの密閉空間に放出するヒートポンプを提供することが知られている。絶対零度を超える温度の熱源には熱エネルギーが含まれており、これを利用して密閉空間の内部温度を上昇させることができる。
【0003】
知られているヒートポンプシステムの例は、空気源ヒートポンプ(air-source heat pump、ASHP)であり、これは典型的に蒸発器、圧縮機、凝縮器、及び膨張装置を含む。ASHPの構成要素は、流体導管によって流体接続され、冷媒回路を形成する。蒸発器及び凝縮器はそれぞれ、冷媒回路を通って流れる冷媒に、及び/又は冷媒から熱を伝達できるように構成された熱交換器を含む。蒸発器は、周囲の外気から熱を伝達できるように外部の場所に配置されるが、凝縮器は典型的に、建物のセントラルヒーティングシステムに結合される。
【0004】
冷蔵回路は圧縮機から始まり、気化した冷媒が圧縮されて高温の蒸気になる。高温の冷媒蒸気は凝縮器に導かれ、凝縮器は冷媒から熱の一部を伝達し、それによって蒸気を液体に凝縮する。液体冷媒の流れは膨張弁に進み、そこで膨張し、圧力と温度を下げる。低温の冷媒混合物は蒸発器に導かれ、外部空気から熱を伝達して冷媒を気化させる。次に、冷媒蒸気は圧縮機に戻され、冷媒回路が再び開始される。
【0005】
ASHPの既知の問題は、周囲の外気温度が低下すると、加熱能力と成績係数(coefficient of performance、COP)が劇的に低下することである。これは、建物の内部温度を上昇させるために熱の流入が最も必要なときに、ASHPのパフォーマンスが最低レベルに低下することを意味する。
【0006】
既知のASHPのさらなる問題は、外気温度が約6℃を下回ると、蒸発器のコイル又はフィンに霜や氷が形成される可能性があることである。氷が蓄積すると蒸発器の動作効率が低下し、ASHPが機能しなくなる可能性がある。特に寒くて湿気の多い気候では、この氷の蓄積を防ぐために蒸発器を定期的に除霜する必要がある。
【0007】
蒸発器を除霜する典型的な方法は、回路を通る冷媒の流れ方向を逆にして、圧縮機からの冷媒を蒸発器に導くことを含む。このいわゆる「逆循環方式」は、凝縮器から熱を抽出して蒸発器に蓄積した氷を溶かすようにASHPを構成することによって機能する。
【0008】
別のアプローチは、凝縮器を迂回しながら圧縮機の出力を蒸発器の入力に流体的に接続するように配置されたバイパス導管又はチャネルを冷媒回路に提供することである。この「ホットガスバイパス方式」は、圧縮機を構成して高温の気化冷媒を生成し、蒸発器に導き、形成された氷を溶かす。
【0009】
別の代替除霜方法では、蒸発器の外面を直接加熱して、寒くて湿気の多い状態で蓄積する霜や氷を溶かすように構成された別の電気ヒーターを使用する。この除霜方法は追加の電力を使用し、除霜プロセス中にASHPユニットのスイッチを切る必要があるため、建物の内部への熱供給が中断される。
【0010】
これらの除霜方法はいずれも、除霜動作中に建物の内部に熱を供給せずに電力を消費する。例えば、ホットガスバイパス方式では、圧縮機は高温の冷媒蒸気を供給するように動作するが、高温の蒸気は凝縮器から迂回されるため、建物のセントラルヒーティングシステムには熱が供給されない。あるいは、逆循環方式では、冷たい冷媒が凝縮器を通って蒸発器に流れる。これにより、凝縮器から熱が抽出され、建物内部の温度が低下する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの各除霜方法の操作中、蒸発器の除霜中に建物の内部を加熱するために、電気ヒーターやガスボイラーなどのバックアップ熱源を用意する必要がある。したがって、除霜方法のそれぞれは、ヒートポンプシステムの全体的な成績係数(COP)を大幅に低下させる。
【0012】
本開示は、既存のヒートポンプシステムに伴う上記の問題の1つ又は複数に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
最も広義には、本発明の態様は、除霜モードで動作するとき、除霜動作中に建物の内部を加熱するために、凝縮器からの残留熱エネルギーを蒸発器の除霜に導くと同時に、熱エネルギー貯蔵手段からの貯蔵熱エネルギーを凝縮器に導くように構成された、ヒートポンプシステムを提供する。本発明の態様は、凝縮器からの残留熱エネルギーを蒸発器の除霜に導き、貯蔵熱エネルギーを熱エネルギー貯蔵手段から凝縮器に導くことを含む、除霜モードでヒートポンプシステムを動作させる方法も提供する。
【0014】
本発明の第1の態様は、建物温度制御システム用のヒートポンプシステムを提供し、前記システムは、冷媒の流れによって互いに流体結合されて冷媒回路を画定する、圧縮機、第1の熱交換器、膨張装置、及び第2の熱交換器と、前記冷媒と熱エネルギーを交換するために前記冷媒回路に熱的に結合可能である熱エネルギー貯蔵手段とを含む。前記ヒートポンプシステムは、通常加熱モードと除霜モードで動作できるように構成される。前記通常加熱モードでは、熱エネルギーは、前記第2の熱交換器から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記第1の熱交換器によって伝達されて前記建物を加熱し、前記除霜モードでは、熱エネルギーは、前記熱エネルギー貯蔵手段から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記第1の熱交換器によって伝達されて前記建物を加熱し、前記第2の熱交換器によって伝達されて前記第2の熱交換器を除霜する。前記ヒートポンプシステムは、前記通常加熱モード及び前記除霜モードを切り替えるように構成されたスイッチングアセンブリを含み、前記スイッチングアセンブリは、前記除霜モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記第1の熱交換器を出る冷媒を前記第2の熱交換器を通って流れるように導き、前記冷媒内の残留熱で前記第2の熱交換器を除霜するように構成される。
【0015】
冷媒回路は、その外面に蓄積した氷を溶かすために、第1の熱交換器から出る冷媒の残留熱エネルギーが第2の熱交換器に導かれるように、スイッチングアセンブリによって構成可能である。
【0016】
第1の熱交換器からの残留熱は、第1の熱交換器によって建物のセントラルヒーティングシステムに伝達されなかった過剰な熱を表す。この「残留熱」は通常、既知のヒートポンプシステムでは無駄になる。除霜動作中、熱エネルギー貯蔵手段は、貯蔵された熱エネルギーを冷媒回路に伝達するように構成され、これにより、第1の熱交換器が建物のセントラルヒーティングシステムに熱を供給し続けることが可能になる。
【0017】
したがって、ヒートポンプシステムの除霜モードは、第2の熱交換器の除霜を建物の連続的(すなわち中断のない)加熱と組み合わせることができる。この機能により、バックアップヒーターが不要になり、ヒートポンプシステムの成績係数(COP)が大幅に向上し、運用コストが削減される。
【0018】
ここで、任意選択の機能を設定する。これらは、単独で適用することも、任意の態様と組み合わせて適用することもできる。
【0019】
「冷媒」という用語は、本明細書では、伝熱流体、例えば、気相と液相との間で遷移することができ、伝熱プロセスで使用できる流体を指すために使用されることを理解されたい。例えば、冷媒は、伝熱プロセスの一方の側で冷却の中間体として機能し、伝熱プロセスの他方の側で加熱し、プロセスの一方の側から他方の側に熱エネルギーを伝達することができる任意の伝熱流体を含むことができる。したがって、本明細書に記載の冷媒回路のそれぞれは、本開示による伝熱流体回路を画定することができる。
【0020】
第1及び第2の熱交換器は、内部及び外部熱交換器をそれぞれ画定することができる。すなわち、第1の熱交換器は、ヒートポンプシステムと建物の内部空間との間で熱エネルギーを伝達するように配置することができ、第2の熱交換器は、ヒートポンプシステムと外部環境との間で熱エネルギーを伝達するように配置することができる。したがって、第1及び第2の熱交換器は、それぞれ、ヒートポンプシステムの屋内及び屋外熱交換器(又はユニット)として定義することができる。第1の熱交換器は凝縮器であってもよい。第2の熱交換器は蒸発器であってもよい。膨張装置は、冷媒を膨張させるように適切に構成された任意の膨張装置を含むことができることが理解される。例えば、膨張装置は膨張弁を含むことができる。膨張装置は、いずれかの流れ方向で動作するように構成することができる。したがって、膨張装置は毛細管であってもよい。あるいは、膨張装置は、当業者に理解されるように、冷媒の流れをいずれかの方向に膨張させるように、切り替え可能な回路に配置された2つ以上の一方向膨張弁を含めてもよい。別の膨張装置は、2つの一方向弁で一緒に接続された2つの非対称膨張装置の配置を含むことができる。あるいは、当業者に理解されるように、膨張装置は、4つの制御弁によって冷媒回路に結合された単一の非対称膨張弁を含むことができる。
【0021】
スイッチングアセンブリは、除霜モードでヒートポンプシステムを動作させるとき、第1の熱交換器を出る冷媒を、第2の熱交換器、膨張装置、及び圧縮機に順次通すように構成することができる。このようにして、ヒートポンプシステムは、第1の熱交換器からの残留熱エネルギーを冷媒によって運ばせて、蒸発器を除霜するように構成することができる。したがって、スイッチングアセンブリは、第1の熱交換器の下流で圧縮機の上流に配置することができる。
【0022】
スイッチングアセンブリは、冷媒を第1の熱交換器から、熱エネルギー貯蔵手段、膨張装置、第2の熱交換器、及び圧縮機に順次通すように構成することができる。このように、熱エネルギー貯蔵装置は、通常加熱モード中に、凝縮器から出る温かい冷媒に存在する残留熱エネルギーの少なくとも一部が熱エネルギー貯蔵装置に伝達されるように構成することができる。したがって、通常加熱モードの間、熱エネルギー貯蔵装置は、凝縮器から出る温かい冷媒から残留熱エネルギーを回収するように構成され得る。
【0023】
熱エネルギー貯蔵手段は、冷媒によって運ばれる残留熱エネルギーを回収して貯蔵するために、膨張装置と圧縮機との間の冷媒回路に結合することができる。
【0024】
スイッチングアセンブリは、除霜モードでヒートポンプシステムを動作させるとき、第1の熱交換器を第2の熱交換器に直接結合するように構成できる四方弁を含むことができる。四方弁は、ヒートポンプシステムを通る冷媒の流れを変更する便利な手段を提供する。
【0025】
代替的に、スイッチングアセンブリは、任意の適切に構成された「四方」スイッチング手段(例えば、相互接続された4つの一方向弁のアセンブリ、又は相互接続された2つの双方向弁のアセンブリ)を含み得ることが理解される。
【0026】
スイッチングアセンブリは、除霜モードでヒートポンプシステムを動作させるとき、膨張装置(すなわち、第1の膨張装置)を迂回し、第1の熱交換器を出る冷媒を、第2の膨張装置、第2の熱交換器、及び圧縮機に順次通すように構成することができる。これにより、熱エネルギー貯蔵手段からの熱が冷媒によって伝達され、第2の熱交換器の除霜が可能になる。
【0027】
スイッチングアセンブリは、ヒートポンプシステムが除霜モードで動作し得るときに、膨張装置(すなわち、第1の膨張装置)を冷媒回路から隔離するように構成できる第1のバイパスアセンブリを含むことができる。この構成により、熱エネルギー貯蔵手段からの温かい冷媒が第2の熱交換器に達して、その上に蓄積した氷を溶かすことができる。
【0028】
実施形態では、熱エネルギー貯蔵手段は、第2の膨張装置と第2の熱交換器との間の冷媒回路に結合され得る。
【0029】
スイッチングアセンブリは、ヒートポンプシステムが除霜モードで動作し得るときに、第2の膨張装置を第1の熱交換器と熱エネルギー貯蔵手段との間の冷媒回路に流体結合するように構成され得る第2のバイパスアセンブリを含むことができる。これにより、第2の膨張装置は、冷媒が熱エネルギー貯蔵手段を通過する際に、熱エネルギー貯蔵手段に貯蔵された熱をより効率的に吸収できるように、冷媒の圧力を下げるように構成される。
【0030】
ヒートポンプシステムは、熱エネルギーが冷媒から熱エネルギー貯蔵手段に伝達され得る熱充填モードで動作可能であり得、スイッチングアセンブリは、熱充填モードでヒートポンプシステムを動作させるとき、第2の膨張装置及び第1の熱交換器を迂回するように、圧縮機を出る冷媒を導くように構成され得る。このモードでは、圧縮機からの熱エネルギーは、建物の居住者が熱を必要としないときに、熱エネルギー貯蔵手段に貯蔵されるように導かれる。
【0031】
ヒートポンプシステムは、熱エネルギーが熱エネルギー貯蔵手段から冷媒に伝達され得る補助加熱モードで動作可能であり得、スイッチングアセンブリは、補助加熱モードでヒートポンプシステムを動作させるとき、膨張装置及び第2の熱交換器を迂回するように構成され得る。したがって、熱エネルギー貯蔵手段に貯蔵された熱エネルギーは、第2の熱交換器(例えば、蒸発器)の除霜が必要ないときに、建物の内部に熱を供給するために使用され得る。
【0032】
熱エネルギー貯蔵手段は、相変化材料を含むことができる。相変化材料は、冷媒回路の導管と直接熱的に接触するように配置することができる。相変化材料は、ヒートポンプシステムの制御を改善する実質的に一定の温度で熱エネルギーを提供(及び貯蔵)するように構成することができる。相変化材料はまた、大量の熱エネルギーを比較的小さな容積に貯蔵するように構成することができ、これによりヒートポンプシステムのパッケージング効率が向上する。
【0033】
熱エネルギー貯蔵手段は、伝熱流体(例えば、水)を含む別個の流体回路によって冷媒回路の導管に熱的に結合され得る。別個の流体回路により、熱エネルギー貯蔵手段は、ヒートポンプシステムの残りの部分に対して外部に配置できる大容量を有することが可能になる。
【0034】
ヒートポンプシステムは、第1の熱交換器の出力に流体結合され得る冷媒貯蔵手段をさらに含み得る。冷媒貯蔵手段は、ヒートポンプシステムの動作中に冷媒回路を通って流れる冷媒の量の変動に適応するように構成され得る。
【0035】
ヒートポンプシステムは、望ましくない流体が圧縮機に入ることを防止するために、圧縮機の入力ポートに流体接続され得る相分離器をさらに含み得る。
【0036】
冷媒回路は、相分離器によって一緒に流体結合された高圧段及び低圧段を含むことができる。高圧段は、第1の熱交換器を含み得(すなわち、流体的に結合され得)、低圧段は、第2の熱交換器を含み得る(すなわち、流体的に結合され得る)。したがって、高圧段及び低圧段を含むヒートポンプシステムは、二段ヒートポンプシステムを画定することができる。
【0037】
高圧段及び低圧段の少なくとも1つ、又はそれぞれが、相分離器に流体結合され得る。高圧段は、相分離器のガス含有部分又はセクションに流体結合され得る。例えば、高圧段は、相分離器の気体含有部分から気体冷媒を受け取るように構成され得る。低圧段は、相分離器の液体含有部分に流体結合され得る。例えば、低圧段は、相分離器の液体含有部分から液体冷媒を受け取るように構成することができる。高圧段は、液体-ガス冷媒の混合物を相分離器に送達するように構成することができる。したがって、高圧段回路は、液体-ガス冷媒混合物を相分離器の液体含有部分に送達するように構成することができる。
【0038】
冷媒回路は、高圧段及び低圧段を含む冷媒回路アセンブリを画定することができる。高圧段と低圧段は、両方の段の周りを循環する同じ冷媒を共有できるという点で、互いに流体結合することができる。高圧段の冷媒は、平均して、低圧段の同等のセクションよりも高い圧力で保持され得る。低圧段は、冷媒の温度を低温(例えば、蒸発器における)から中間温度(例えば、相分離器における)まで上昇させるように構成することができる。高圧段は、冷媒の温度を中間温度(例えば相分離器内)から高温(例えば凝縮器内)に上昇させるように構成することができる。
【0039】
ヒートポンプシステムは、熱エネルギーが冷媒から熱エネルギー貯蔵手段に伝達されるように、通常加熱モードで(例えば、それに応じてスイッチングアセンブリを構成することによって)動作可能であり得る。例えば、これは、第1の熱交換器(例えば凝縮器)からの冷媒の流れを、熱エネルギー貯蔵手段に熱的に結合可能な冷媒サイクル内の位置に導くことを含み得、冷媒中の熱の少なくとも一部を相変化物質に伝達し、後で使用するために保存することができる。このように、ヒートポンプシステムは、熱エネルギー貯蔵装置を同時に充填しながら、建物の内部に熱を提供するように(すなわち、凝縮器を介して)構成することができる。この動作モードは、連続的な加熱及び充填モードを定義することができる。
【0040】
熱エネルギー貯蔵手段は、相分離器に熱的に結合可能であり得る。熱エネルギー貯蔵手段は、相分離器の液体含有部分又は相に熱的に結合可能であり得る。相変化材料は、伝熱流体又は冷媒を含む別個の回路によって、冷媒回路の相分離器に熱的に結合され得る。相変化材料は、相分離器内に配置することができる。別個の冷媒回路は、相分離器と熱エネルギー貯蔵装置との間の冷媒の流れ、したがって熱エネルギーを制御するように構成されたスイッチングアセンブリ及び/又はポンプを含むことができる。相変化材料は、相変化材料と相分離器内の冷媒との間の熱伝導を可能にするために、熱伝導性材料で形成されたケース内に封入されてもよい。
【0041】
圧縮機は、高圧段に流体結合された第1の圧縮機を含む圧縮機アセンブリを画定することができる。圧縮機アセンブリは、低圧段に流体結合された第2の圧縮機を含むことができる。
【0042】
圧縮機は、冷媒回路の高圧段と低圧段の両方に流体結合された蒸気噴射圧縮機を含むことができる。低圧段は、圧縮機の低圧吸入口に流体結合することができ、圧縮機の高圧出力は高圧段に流体結合することができる。中間吸入口は、相分離器に流体結合され得る。
【0043】
膨張装置は、高圧段に流体結合された第1の膨張装置を含む膨張装置アセンブリを画定することができる。膨張装置アセンブリは、低圧段に流体結合された第2の膨張装置を含むことができる。
【0044】
スイッチングアセンブリは、除霜モードでヒートポンプシステムを動作させるとき、第1の膨張装置を迂回し、第1の熱交換器を出る冷媒を、第2の膨張装置、第2の熱交換器、及び相分離器に順次通すように構成することができる。
【0045】
本開示の第2の態様は、前述の段落のいずれかによるヒートポンプシステムを含む建物を提供する。第2の熱交換器は外部熱源に熱的に結合され、第1の熱交換器は建物のセントラルヒーティングシステムに熱的に結合される。
【0046】
本開示の第3の態様は、前述の段落のいずれかによるヒートポンプシステムを動作させる方法を提供する。この方法は、建物の内部温度を制御するためのヒートポンプシステムを動作させることを目的としている。この方法は、除霜モードでヒートポンプシステムを動作させるとき、第1の熱交換器を出る冷媒を第2の熱交換器を通って流れるように導き、冷媒内の残留熱で第2の熱交換器を除霜することを含む。
【0047】
この方法は、通常加熱モードと、本発明による補助加熱モード及び除霜モードのうちの少なくとも1つとの間でヒートポンプシステムを切り替えることを含むことができる。
【0048】
実施形態では、この方法は、蒸発器に氷がない場合に、ヒートポンプシステムを通常加熱モードと除霜モードとの間で切り替えることを含むことができる。この方法は、ヒートポンプシステムを通常加熱モードと補助加熱モードとの間で切り替えることを含むことができる。この方法は、ヒートポンプシステムのCOPを高めるために、異なる動作モード間で周期的に切り替えることを含むことができる。
【0049】
上述の切り替え戦略のそれぞれに従って、ヒートポンプシステムは、単一の冷媒回路(すなわち、単段ヒートポンプの装置)のみを使用することによって、疑似二段ヒートポンプシステムとして機能するように構成され得る。このように、本発明によるヒートポンプシステムは、二段ヒートポンプシステムの複雑さやコストを必要とせずに、建物の内部に連続的に熱を供給することができる。
【0050】
実施形態では、この方法は、後で使用するために熱エネルギー貯蔵装置に熱エネルギーを貯蔵するために、オフピーク電力の期間中(すなわち、グリッド電力の価格が安いとき)、通常加熱モード及び熱充填モードのうちの少なくとも1つに従ってヒートポンプシステムを動作させることを含むことができる。このようにして、ヒートポンプシステムのCOPを高めることができる。
【0051】
本開示の第4の態様は、冷蔵ユニットの内部温度を制御するためのヒートポンプシステムを動作させる方法を提供する。前記システムは、冷媒の流れによって互いに流体結合されて冷媒回路を画定する、圧縮機、凝縮器、膨張装置、及び蒸発器と、前記冷媒と熱エネルギーを交換するために前記冷媒回路に熱的に結合可能である熱エネルギー貯蔵手段とを含み、前記冷媒回路は、相分離器によって互いに流体結合された高圧段及び低圧段を含み、前記高圧段は前記凝縮器を含み、前記低圧段は前記蒸発器を含み、前記ヒートポンプシステムは、冷却充填モード及び補助冷却モードで動作するように構成され、前記冷却充填モードでは、熱エネルギーは、前記熱エネルギー貯蔵手段から前記冷媒に伝達され、前記冷媒から前記凝縮器によって伝達されて外部周囲空気を加熱し、前記補助冷却モードでは、熱エネルギーは、前記蒸発器から前記冷媒に伝達されて前記冷蔵ユニットの内部領域を冷却し、前記冷媒から前記熱エネルギー貯蔵手段に伝達され、前記方法は、前記冷却充填モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記高圧段を隔離し、前記補助冷却モードで前記ヒートポンプシステムを動作させるとき、前記低圧段を隔離することを含む。
【0052】
本開示の第4の態様によれば、この方法は、二段ヒートポンプシステムを冷蔵システムとして動作させることを可能にする。特に、システムは、冷蔵ユニットの内部容積又は建物など、冷却を必要とする領域を冷却するように構成され得る。冷蔵(すなわち冷却)用途では、ヒートポンプシステムは加熱用途とは逆の配置で構成できることが理解される。例えば、凝縮器を周囲空気にさらすことができ(例えば、冷蔵エリアの外側)、蒸発器を負荷が必要な場所(例えば、冷蔵エリアの内側)に配置することができる。この場合、必要な負荷は、冷蔵領域の温度を下げるために使用される負の熱負荷(すなわち、低温)であり得る。したがって、ヒートポンプシステムを低温充填モードで動作させるとき、スイッチングアセンブリは、熱エネルギー貯蔵手段から熱エネルギー(すなわち、熱)を除去又は抽出するように構成され得る。これは、熱エネルギー貯蔵手段に「冷熱エネルギー」を「充填する」と見なすことができる。貯蔵された「冷熱エネルギー」は、ヒートポンプシステムを補助冷却モードで動作させるときに、蒸発器に流れる冷媒の温度を下げ(すなわち、冷媒から熱エネルギーを取り出し、それを熱エネルギー貯蔵手段に貯蔵することによる)、それによって冷蔵領域を冷却するために使用することができる。
【0053】
この方法は、外気温度が低い期間中(例えば、夕方など)、後で使用するために熱エネルギー貯蔵装置に冷熱エネルギーを貯蔵するために、冷却充填モードに従ってヒートポンプシステムを動作させることを含むことができる。そして、補助冷却モードでヒートポンプシステムを動作させると、熱エネルギー貯蔵装置に貯蔵された冷熱エネルギーを、冷蔵ユニットの内部容積を冷却するように導くことができる。このようにして、ヒートポンプシステムのCOPを高めることができる。
【0054】
本開示の第5の態様は、前述の段落のいずれかによるヒートポンプシステムを制御するためのコントローラ又は制御システムを提供する。コントローラは、前述の段落のいずれかによる方法を実行するように構成することができる。特に、コントローラは、複数の動作モードのうちの少なくとも1つでヒートポンプシステムを動作させるために、スイッチング手段を制御するように構成され得る。
【0055】
当業者に理解されるように、例示的なヒートポンプシステムのそれぞれは、空気源ヒートポンプシステム内に組み込むことができ、すなわち、周囲空気から熱エネルギーを抽出するように構成することができる。あるいは、上記のヒートポンプシステムのそれぞれは、水源ヒートポンプシステム及び/又は地中熱源ヒートポンプシステムで使用するように構成することができる。
【0056】
当業者は、相互に排他的である場合を除いて、上記の態様のいずれか1つに関して説明された特徴又はパラメータを他の態様に適用できることを理解できる。さらに、相互に排他的である場合を除き、本明細書に記載の特徴又はパラメータは、本明細書に記載の他の特徴又はパラメータと組み合わせることができる。
【0057】
ここで、本開示の態様及び実施形態を、添付の図面を参照して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本開示の第1の構成による単段ヒートポンプシステムの概略図であり、ヒートポンプシステムは通常加熱モードで動作するように構成されている。
図2図1に示すヒートポンプシステムの通常加熱モードに対応する圧力-エンタルピー曲線を示すグラフである。
図3】除霜モードで動作するように構成された、図1のヒートポンプの概略図である。
図4図3に示すヒートポンプシステムの除霜モードに対応する圧力-エンタルピー曲線を示すグラフである。
図5】本開示の第2の構成による単段ヒートポンプシステムの概略図であり、ヒートポンプシステムは、複数の異なる動作モードで動作するように構成可能である。
図6図5に示すヒートポンプシステムの異なる動作モードに対応する圧力-エンタルピー曲線を示すグラフである。
図7図1、3、又は5に示されるヒートポンプシステムの熱エネルギー貯蔵アセンブリの概略図である。
図8図1、3、又は5に示されるヒートポンプシステムを動作させる方法に対応する成績係数対時間を示すグラフである。
図9図5に示される単段ヒートポンプシステムの代替構成の概略図である。
図10】本開示の第3の構成による二段ヒートポンプシステムの概略図であり、ヒートポンプシステムは、複数の異なる動作モードで動作するように構成可能である。
図11】本開示の第4の構成による二段ヒートポンプシステムの概略図であり、ヒートポンプシステムは、複数の異なる動作モードで動作するように構成可能である。
図12図12~16は、図11に示すヒートポンプシステムの異なる動作モードに対応する圧力-エンタルピー曲線を示すグラフである。
図13図12~16は、図11に示すヒートポンプシステムの異なる動作モードに対応する圧力-エンタルピー曲線を示すグラフである。
図14図12~16は、図11に示すヒートポンプシステムの異なる動作モードに対応する圧力-エンタルピー曲線を示すグラフである。
図15図12~16は、図11に示すヒートポンプシステムの異なる動作モードに対応する圧力-エンタルピー曲線を示すグラフである。
図16図12~16は、図11に示すヒートポンプシステムの異なる動作モードに対応する圧力-エンタルピー曲線を示すグラフである。
図17図11に示す二段ヒートポンプシステムの代替構成の概略図である。
図18図10に示される二段ヒートポンプシステムの代替構成の概略図である。
図19図11に示す二段ヒートポンプシステムの代替構成の概略図である。
図20図10、11及び17から19に示されるヒートポンプシステムの代替の熱エネルギー貯蔵アセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
ここで、添付の図面を参照して、本開示の態様及び実施形態について説明する。さらなる態様及び実施形態は、当業者には明らかである。
【0060】
単段ヒートポンプシステム
ここで、本開示の第1の構成によるヒートポンプシステム10について、図1図4を参照して説明する。ヒートポンプシステム10は、建物(図示せず)の外側から内側に熱エネルギー(すなわち熱)を伝達するように構成された空気源ヒートポンプ(ASHP)の一部を形成する。
【0061】
ヒートポンプシステム10は、流体導管24によって流体接続されて冷媒回路26を画定する、圧縮機12、凝縮器14、熱エネルギー貯蔵装置16、膨張装置18、蒸発器20、及び任意選択の相分離器22を含む。流体導管24は、当業者には容易に理解されるように、ヒートポンプシステム10の構成要素間で冷媒が導かれる流体経路を画定する。したがって、ヒートポンプシステム10は、単一の冷媒回路26のみを含むので、単段ヒートポンプシステムを画定する。
【0062】
ヒートポンプシステム10は、熱エネルギーが、外部熱源から蒸発器20を介して冷媒に伝達され、冷媒から凝縮器14によって建物の内部に伝達される通常加熱モードで動作可能であるように構成される。
【0063】
ヒートポンプシステム10はまた、通常加熱モード(図1に示す)と除霜モード(図3に示す)との間で切り替えるように構成されたスイッチングアセンブリ40を含む。通常加熱モードでは、熱エネルギーは蒸発器20から冷媒に伝達され、次に凝縮器14に送られ、建物を加熱する一方、凝縮器からの残留熱エネルギーも熱エネルギー貯蔵装置16を加熱するように送られる。
【0064】
除霜モードでは、熱エネルギーが熱エネルギー貯蔵装置16から冷媒に伝達され、凝縮器14と蒸発器20の両方を加熱するように導かれる。このようにして、除霜モードの間、熱エネルギー貯蔵装置16に貯蔵された熱を熱源として使用することができる。したがって、ヒートポンプシステム10は、蒸発器20の除霜中に連続加熱を提供することができ、バックアップヒーターの必要性を排除する。
【0065】
ここで、特に図1及び図3を参照して、ヒートポンプシステム10の構成要素について説明する。冷媒は、冷媒回路26の異なる構成要素間で熱エネルギーを伝達できるように、熱エネルギーを吸収、保持、及び放出することができる伝熱流体である。実施形態では、冷媒は、わずかなオゾン破壊ポテンシャルを有するヒドロフルオロカーボン及びハロアルカン材料である1,1,1,2-テトラフルオロエタン(134a)を含む。その化学式はCF3CH2Fで、沸点は大気圧で-26.3℃である。代替の実施形態では、冷媒は、当業者には理解されるように、適切に構成された多数の伝熱流体のうちの1つであってもよい。
【0066】
気体状態の冷媒は圧縮機12によって加圧され、冷媒回路26を通って循環する。圧縮機12は、冷媒回路26内の冷媒の圧力を上昇させるように構成された電動機械装置である。使用中、圧縮機12は通常、入口から低圧の冷媒を受け取り、次に冷媒は圧縮機12によって加圧され、出口から冷媒回路26に放出される。冷媒の圧力を上昇させることにより、圧縮機12は冷媒の温度も上昇させ、その後冷媒回路26を循環する。
【0067】
蒸発器20及び凝縮器14はそれぞれ、冷媒回路26の導管24と直接熱的に接触するように配置された熱交換器を含む。したがって、蒸発器20及び凝縮器14のそれぞれは、冷媒回路26を通って流れる冷媒に、及び冷媒から、熱エネルギーを伝達できるように構成される。
【0068】
凝縮器14は、ヒートポンプシステム10の一次ヒートシンクを画定する。凝縮器14は、建物の内部に熱的に結合される。特に、凝縮器14は、冷媒回路26内の冷媒と建物内の周囲空気との間で熱エネルギーを伝達するように構成される。したがって、凝縮器14は、ヒートポンプシステム10の内部熱交換器14を画定する。凝縮器14は、建物のセントラルヒーティングシステムに熱的に結合され、冷媒回路26内の冷媒と、建物のセントラルヒーティングシステムを通って流れる別個の伝熱流体(例えば、水)との間で熱エネルギーを伝達するように構成される。そのようなセントラルヒーティングシステムは、凝縮器14から受け取った熱エネルギーを建物の異なる領域全体に分配するように構成することができる。次いで、当業者に容易に理解されるように、循環された熱エネルギーは、複数のラジエータ又は床下加熱アセンブリから放出される。
【0069】
凝縮器14は、熱生成温度(例えば、65℃)で建物内に熱エネルギーを伝達するように構成される。言い換えれば、凝縮器14は、高温(例えば、約91℃)の加圧蒸気冷媒を受け取るように構成されている。
【0070】
ヒートポンプシステム10の代替の例示的な構成では、建物のセントラルヒーティングシステムは、建物の内部(例えば、熱交換器)に露出された凝縮器14の表面(例えば、コイル又はフィン)を横切って空気の流れを導くために設けられた内部ファンを含む。このようにして、内部ファンは、凝縮器14の熱エネルギー交換効率を高めるように動作可能である。
【0071】
蒸発器20は、ヒートポンプシステム10の一次熱源を画定する。ヒートポンプシステム10が建物内に設置される場合、蒸発器20は、周囲の外気から熱を吸収し、それを冷媒回路26を通って流れる冷媒に移すことができるように、外部位置に配置される。このようにして、蒸発器20は、ヒートポンプシステム10の外部熱交換器20を画定する。外部ファン34は、蒸発器20の熱エネルギー交換効率を改善するために、蒸発器20の外部周囲空気にさらされる表面(例えば、コイル又はフィン)を横切って空気の流れを導くために設けられる。蒸発器20は、周囲外気温度が約0℃のときに外部環境から熱エネルギーを吸収するように構成される。
【0072】
熱エネルギー貯蔵装置16は、長期間にわたって熱エネルギーを保持するように構成された熱エネルギー貯蔵媒体を含む。ヒートポンプシステム10の例示的な構成によれば、熱エネルギー貯蔵媒体は、ハウジング30又はエンクロージャ内に収容された相変化材料を含み、これは、相変化材料内に蓄えられた熱を保持するために断熱されている。
【0073】
相変化材料は、ヒートポンプシステム10内の冷媒の有用な加熱及び/又は冷却を提供するために、材料の相転移で十分なエネルギーを放出及び吸収するように構成された物質である。ヒートポンプシステム10の代替構成では、当業者には容易に理解されるように、熱エネルギー貯蔵媒体は、水タンク内に保持することができる水などの伝熱流体を含むことができる。あるいは、熱エネルギー貯蔵媒体は、複数の加熱された石又は小石を含むことができ、これらは、当業者によって容易に理解されるように、熱エネルギーを冷媒回路に直接出し入れするか、又は別の伝熱流体回路を介して(例えば、導電性エレメントを介して)伝達するように構成されている。
【0074】
相変化材料は、25~30℃の温度で固体/液体の相変化を受けるように構成されている。したがって、相変化材料は、25~30℃の温度で冷媒に熱を吸収し、冷媒から熱を放出するように配置される。したがって、相変化材料は、実質的に一定の熱充填及び放出温度で構成され、冷媒回路26への熱エネルギーの回収及び放出の改善された制御を提供する。
【0075】
熱エネルギー貯蔵装置16の最適動作温度範囲は、少なくとも部分的に、熱源(例えば蒸発器)及びヒートシンク(例えば凝縮器)の動作温度に依存することを理解されたい。実施形態では、熱エネルギー貯蔵装置は、凝縮器の動作温度よりも低く、蒸発器の動作温度よりも高い中間温度で動作する(例えば、熱エネルギーを冷媒回路に出し入れする)ように構成される。
【0076】
相変化材料は、冷媒回路26の導管セクション28と直接熱接触するように配置される。導管セクション28は、図1に示すように、相変化材料と直接熱接触するように、ハウジング30の内部キャビティを通って延びるように配置される。導管セクション28は、相変化材料との接触面積を増加させるためにコイル状に構成されている。導管セクション28は、熱エネルギー貯蔵装置16内の冷媒と相変化材料との間の熱エネルギーの伝導を可能にするように構成された熱伝導性材料から、少なくとも部分的に形成される。したがって、熱エネルギー貯蔵装置16は、導管セクション28を通って流れる冷媒に熱エネルギーを伝達する(すなわち、吸収及び放出する)ように構成される。
【0077】
現在説明されている実施形態では、熱エネルギー貯蔵装置16は、相変化材料を通って延びるコイル状導管セクション28を有するものとして示されているが(例えば、図1)、この構成は、多くの可能な構成のうちの1つに過ぎないことを理解されたい。例えば、代替の例示的な構成では、相変化材料は、フィン付き熱交換器によって冷媒回路内の冷媒に熱的に結合され得る。ヒートポンプシステム10は、本開示の範囲から逸脱することなく、熱エネルギー貯蔵装置16の他の配置を含んでもよい。
【0078】
熱エネルギー貯蔵装置16は、相変化材料と冷媒回路26内の冷媒との間で熱エネルギーを受動的に伝達するように構成される。特に、熱エネルギー貯蔵装置16は、冷媒の温度が相変化材料の温度を下回ると、相変化材料に蓄えられた熱エネルギーが冷媒に放出されるように構成される。あるいは、冷媒の温度が相変化材料の温度よりも高い場合、冷媒内の潜熱エネルギーは、熱エネルギー貯蔵装置16内の相変化材料に放出され、相変化材料によって吸収される。
【0079】
特に図1及び図3を参照すると、熱エネルギー貯蔵装置16は、通常加熱動作モード中に凝縮器14から出る暖かい液体冷媒から熱を回収できるように、凝縮器14の下流に配置される。このようにして、熱エネルギー貯蔵装置16は、ヒートポンプシステム10の過冷却器として動作するように構成される。ヒートポンプシステム10の除霜モード中、相変化材料に蓄えられた回収熱は、その後の動作中に冷媒に放出することができる。したがって、熱エネルギー貯蔵装置16は、ヒートポンプシステム10の二次又は補助熱源として動作するように構成することもできる。
【0080】
膨張装置18は、冷媒の圧力を低下させて圧力及び温度を低下させ、続いて冷媒が蒸発器を通過するときに冷媒を蒸発させるように構成される。したがって、膨張装置18は、蒸発器20に放出される冷媒の量を制御するように構成される。このようにして、膨張弁18は、蒸発器20を出る蒸気の過熱を調節することを意図している。
【0081】
膨張装置18はオリフィスを含み、そこを通って冷媒が導かれる。オリフィスは、オリフィスを通って流れる冷媒の圧力を下げるように構成されており、関連する圧力降下により冷却される。したがって、膨張装置18は、冷媒から熱エネルギーを抽出しないように構成される。このようにして、膨張装置を流れる冷媒の膨張は、実質的に等エンタルピー過程により生じる。
【0082】
膨張装置18は、冷媒が冷媒回路を通っていずれかの流れ方向に流れるときに冷媒を膨張させるように構成された毛細管を含む。別の構成によれば、膨張装置18は、当業者に容易に理解されるように、バイパス回路に配置された2つの一方向膨張弁のアセンブリを含めてもよい。
【0083】
相分離器22は、冷媒回路26の上流構成要素で凝縮される液体冷媒を収集するように構成される二相気液分離器である。これは、例えば、冷媒の冷却又は減圧によって引き起こされ得る。相分離器22は圧縮機12の上流に配置され、それによって液体冷媒が圧縮機12に入ることを防止するように配置される。そうしないと、損傷を引き起こしたり、及び/又は動作が無効になったりする可能性がある。
【0084】
スイッチングアセンブリ40は、ヒートポンプシステム10の動作を通常加熱モードと除霜モードとの間で切り替えるように構成された四方弁42を含む。これは、冷媒回路26を通る冷媒の流れ方向を調整することによって達成される。
【0085】
ここで、ヒートポンプシステム10の動作モードをより詳細に説明する。上述のように、通常加熱モードは、建物の内部を加熱し、同時に熱エネルギー貯蔵装置16を充填する(すなわち、相変化材料内に熱エネルギーを貯蔵する)ように構成される。除霜モードは、建物の加熱と蒸発器20の除霜を同時に行うように構成されている。
【0086】
図1に示すように、ヒートポンプシステム10を通常加熱モードで動作させるとき、四方弁42は、凝縮器14を熱エネルギー貯蔵装置16に直接結合するように構成される。四方弁42はまた、蒸発器20を圧縮機12に結合するように構成される。特に、凝縮器14を出る冷媒の流れは、四方弁42を通って導かれ、次いで熱エネルギー貯蔵装置16、膨張装置18、蒸発器20を通って導かれ、次に相分離器22を介して圧縮機12に向かう途中で四方弁42を通って戻る。
【0087】
通常加熱モードの熱力学的サイクルは、圧縮機12が分離器22から蒸気を抽出し、その圧力及び温度を上昇させることから始まる。過熱された冷媒蒸気(例えば91℃)は凝縮器14に導かれ、そこで熱生成温度(例えば65℃)で建物に熱を伝達する。これにより、ガス状の冷媒が凝縮して高温(70℃など)の温かい液体になる。
【0088】
凝縮器14を出た後、暖かい液体冷媒は、熱エネルギー貯蔵装置16に送られ、そこに収容されている相変化材料に熱エネルギーを伝達する。これにより、液体冷媒が過冷却温度(例えば、約35℃)まで冷却され、これは、相変化材料の融解温度(すなわち、30℃)よりも数度高い温度である。
【0089】
熱エネルギー貯蔵装置16を出ると、ここで過冷却された液体冷媒は、蒸発器20を通って流れるように導かれる前に、膨張装置18を通過する。冷媒が蒸発器20を通過するとき、冷媒は外気(例えば、0℃)から熱エネルギーを吸収する。次に、冷媒は低温の低圧蒸気として蒸発器20を出る。最後に、冷媒は液体/蒸気分離器22に流れ、冷媒回路26の次のサイクルを開始する。通常加熱モードの間、内部ファン34及び外部ファン34のそれぞれは、それぞれの凝縮器14及び蒸発器20を通る伝熱の効率を高めるために電源が入れられる。
【0090】
通常加熱モードの熱力学的特性を、図2に示す圧力-エンタルピー曲線(p-h)を参照して説明する。ここで説明されているp-h曲線は、約0℃の外気温度、約65℃の熱生成温度(すなわち、セントラルヒーティングシステムの動作温度)、及び約30℃の融解温度を有する相変化材料に基づいている。
【0091】
通常加熱モードサイクルは、圧縮機12から出て(p-h曲線上の点Aによって示されるように)、約70℃の温度で凝縮器14に向かって流れる高温の冷媒蒸気で始まる。冷媒は凝縮器14によって凝縮されて液体になり、次に約70℃の温度で熱エネルギー貯蔵装置16に導かれる(B)。熱エネルギー貯蔵装置16は、冷媒から熱を回収し、それを約35℃(℃)の温度の過冷却液体に冷却する。膨張装置18内での冷媒の膨張後、冷媒は、約-10℃の温度で気体と液体との飽和混合物の形態を取る(D)。次に、冷媒は蒸発器20に入り、約0℃の温度の屋外空気から熱を吸収する。次に冷媒は、約-10℃で飽和蒸気に変わり、その後分離器22に入り、続いて圧縮機12に入る(E)。
【0092】
既知の単一冷媒回路ヒートポンプシステムでは、凝縮器からの「残留」熱エネルギーは、冷媒が膨張装置18を通過するように導かれ、膨張装置18によって「絞られる」ため、浪費される。本開示は、蒸発器20を除霜するために凝縮器14を出る冷媒から回収された熱を利用するので、除霜のために追加の電動ヒーターは必要ない。
【0093】
ここで、ヒートポンプシステム10の除霜モードについて、特に図3及び図4を参照して説明する。四方弁42は、蒸発器20の表面に氷が形成されたと判断すると、ヒートポンプシステムを除霜モードで動作するように切り替えるように構成される。スイッチングアセンブリ40は、凝縮器14を蒸発器20に直接結合し、熱エネルギー貯蔵装置16を圧縮機12に結合するように構成される。この構成によれば、凝縮器14を出る冷媒の流れは、四方弁42、蒸発器20、膨張装置18、熱エネルギー貯蔵装置16を順に通って導かれ、次に相分離器22を介して圧縮機12に向かう途中で四方弁42を通って戻る。このようにして、スイッチングアセンブリ40は、熱エネルギー貯蔵装置16、膨張装置18及び蒸発器20を通る冷媒の流れ方向を逆にするように構成される。したがって、ヒートポンプシステム10の通常加熱モードと除霜モードとの間で切り替えるとき、冷媒回路の関連する構成要素のそれぞれの入口及び出口が逆になることが理解される。
【0094】
通常加熱モードと同様に、除霜モードは、圧縮機12が液体/蒸気分離器22から蒸気を抽出することから始まり、その圧力と温度を上昇させる。過熱された冷媒蒸気は凝縮器14に導かれ、そこで熱生成温度(例えば、65℃)で熱を建物に伝達する。これにより、ガス状の冷媒が凝縮して温かい液体になり、残留温度が高くなる(例えば、約70℃)。
【0095】
凝縮器14を出た後、温かい液体冷媒は蒸発器20に導かれ、蒸発器20の外面上の氷を溶かす。その結果、暖かい液体冷媒は蒸発器20によって過冷却される。過冷却された液体冷媒は次に膨張装置18に送られ、膨張装置18はその温度と圧力をさらに低下させる。次に、冷媒は、熱エネルギー貯蔵装置16に送られ、そこで相変化材料から熱エネルギーを吸収し、過熱蒸気になる。この過熱蒸気冷媒は、最終的に、次の除霜モードサイクルを開始する前に分離器22に導かれる。除霜モードでは、蒸発器20が除霜されるの間、外部ファン34の電源が切られる。
【0096】
ヒートポンプシステム10の例示的な構成では、凝縮器14を横切って空気を導くために、内部ファンを設けることができる。内部ファンは、例えば、凝縮器14から建物内部への伝熱の効率を高めるために、除霜モードでヒートポンプシステム10を動作させるときに電源を入れることができる。
【0097】
除霜モードの熱力学的特性を、図4に示すp-h曲線を参照して説明する。除霜モードサイクルは、圧縮機12からの高温の冷媒蒸気(p-h曲線上の点Aによって示されるように)が約70℃の温度で凝縮器14内で凝縮することで始まる。冷媒は凝縮器14を出て、約70℃の温度で蒸発器20に入る(B)。この場合、蒸発器20は冷媒回路の過冷却器として機能し、そしてそれは暖かい液体冷媒から熱を吸収し、蒸発器20の温度よりも数度高い温度まで過冷却された液体に冷却し(例えば、約40℃)、氷が溶けるにつれて、除霜動作中に変化する。
【0098】
蒸発器20における冷媒の温度は、氷の量が減少するにつれて上昇し、氷がすべて溶けるまで(すなわち、蒸発器が完全に除霜されるまで)上昇する。過冷却された冷媒は、その後、膨張装置18を通るように導かれる。膨張装置18内で冷媒が膨張した後、冷媒は、30℃未満(例えば、約25℃)の温度で気体と液体の飽和混合物の形態を取る(D)。次に、冷媒は熱エネルギー貯蔵装置16に入り、そこで蒸発し、約25℃の温度まで過熱される。最後に、冷媒は分離器22を通って圧縮機12に向かって進み、そこでサイクルが再び開始される(E)。
【0099】
除霜モード中、通常加熱モード中に熱エネルギー貯蔵装置16によって回収される熱エネルギーは、建物に熱を供給するための熱源として使用されることが理解される。補助熱源としての熱エネルギー貯蔵装置16の使用は、ヒートポンプシステム10のCOPを増加させる。
【0100】
特に、除霜モードでヒートポンプシステム10を動作させるとき、ヒートポンプの温度上昇(すなわち、圧縮機12によって提供される冷媒温度の上昇)は、通常加熱モードの対応する温度上昇よりも小さい。これは、相変化材料の温度が約30℃であり、外気温約0℃よりもはるかに高いためである。その結果、除霜モード中のヒートポンプシステム10のCOPは、通常加熱モードのCOPよりも大幅に高くなる。これは、より高いCOPを達成するために、蒸発器20に氷がなくても、熱エネルギー貯蔵装置16が完全に充填されると、ヒートポンプシステム10を通常加熱モードから除霜モードに切り替えることができることを意味する。
【0101】
通常加熱モードと除霜モードの性能の違いを実証するために、市販のシミュレーションソフトウェアから取得したデータに基づいて、各モードの代表的なシミュレーションを実施した。
【0102】
通常加熱モードのシミュレーションでは、パラメータは次のように決定された:
・外気温度:0℃
・凝縮器の出力温度:65℃
・圧縮機の等エントロピー効率:75%
・相変化材料の融解温度:30℃
・凝縮器の接近温度差5℃(例えば、冷媒回路内の冷媒と建物のセントラルヒーティングシステム内の伝熱流体との間の最小温度差)。
・熱エネルギー貯蔵装置の接近温度差10℃(例えば、熱エネルギー貯蔵装置を熱源として使用する場合)。
【0103】
通常加熱モードのシミュレーションの結果は、次のように要約される:
・冷媒の質量流量:0.027kg/s
・蒸発圧力:2bar
・凝縮圧力:21.28bar
・圧縮機の消費電力:1.486kW(5348kJ/h)
・熱出力:4kW(=14500kJ/h)
・外気から抽出される熱:2.514kW(8182kJ/h)
・COP=14500/5348=2.7
・状態点Bでの冷媒のエンタルピー、hB=295.51kJ/kg
・状態点Cでの冷媒のエンタルピー、hC=248.77kJ/kg
・エンタルピー差:Δh=hB-hC=47kJ/kg
・熱エネルギー貯蔵装置によって回収される熱:m×(hB-hC)=0.027×47=1.26kW
【0104】
除霜モードのシミュレーションでは、パラメータは次のように決定された:
・熱エネルギー貯蔵装置温度:30℃
・凝縮器の出力温度:65℃
・圧縮機の等エントロピー効率:75%
・凝縮器内の接近温度差5℃
・熱エネルギー貯蔵装置の接近温度10℃(例えば、熱エネルギー貯蔵装置を熱源として使用した場合の差)。
【0105】
除霜加熱モードのシミュレーションの結果は、次のように要約される:
・冷媒の質量流量:0.029kg/s
・蒸発圧力:6.6bar
・凝縮圧力:21.28bar
・圧縮機の出力:0.92kW(3334kJ/h)
・凝縮器からの熱出力:4kW(=14400kJ/h)
・熱エネルギー貯蔵装置から取り出される熱:3.1kW(11200kJ/h)
・COP=14500/3334=4.35
【0106】
これらのシミュレーションの結果から、除霜モードCOP(4.35)が通常加熱モードCOP(2.7)よりも大幅に高いことが明確に実証されている。除霜モードのCOPが高いということは、熱エネルギー貯蔵装置16が完全に充填されると、ヒートポンプシステム10を通常加熱モードから除霜モードに優先的に切り替えることができることを意味する。特定の状況では、蒸発器20の外面上での霜又は氷の形成を防止するために、ヒートポンプシステム10を除霜モードで定期的かつ繰り返し動作するように構成することが有利であると考えられる。
【0107】
上記を考慮して、ヒートポンプシステム10を通常加熱及び/又は除霜モードで動作させる時間及び頻度を決定して、経時的にシステムの性能を最適化する必要がある。上記のシミュレーションによれば、熱エネルギー貯蔵装置16は、通常加熱モード中に1.26kWの速度で暖かい冷媒から熱を回収することができる。この回収された熱は、除霜モード中に、熱エネルギー貯蔵装置16から3.1kWの割合で冷媒に戻すことができる。
【0108】
熱エネルギー貯蔵装置16が完全に充填されるまで、ヒートポンプシステム10が通常加熱モードで動作し、その後、回収された熱を冷媒回路26に完全に放出するために除霜モードとするというシナリオが考えられる。システムにエネルギーバランスがあると仮定すると、通常加熱モード中に熱エネルギー貯蔵装置に伝達されるすべての熱は、除霜モード中に次のように放出できる:
充填時間×充填速度=放出時間×放出速度 (1)
次に、式(1)を次のように整理する:
充填時間/放出時間=放出速度/充填速度 (2)
=3.1/1.26=2.46
【0109】
式(2)によると、ヒートポンプシステム10は、熱エネルギー貯蔵装置を完全に充填するために、2.46単位の時間、通常加熱モードで動作しなければならない。そこで、熱エネルギー貯蔵装置16を完全に放出するのに1単位の時間がかかる。
【0110】
通常モード及び除霜モードのそれぞれで費やされる時間の特定の単位は、熱エネルギー貯蔵装置16の容量に依存すること、及び、時間の比率は、通常加熱モードで動作するときに回収できる熱エネルギーの量を決定する相変化材料の融解温度にも依存することが理解される。各動作モードで費やされる時間は、除霜モード中に熱エネルギー貯蔵装置から熱エネルギーを放出できる温度にも依存する。したがって、ヒートポンプシステムの最適な動作条件は、熱エネルギー貯蔵装置のこれら2つの構成の間のトレードオフ(すなわち、冷媒回路への熱エネルギーの移動及び冷媒回路からの熱エネルギーの移動)を考慮して決定される。
【0111】
図8に示すように、通常加熱モードと除霜モードを定期的に切り替えることが考えられ、これは、熱エネルギー貯蔵装置16によって回収される熱エネルギーをより効率的に使用するためであり、除霜モードのより高いCOPも利用する。式2から計算された時間比率を使用して、システムが除霜モードで動作し、より高いCOPの恩恵を受けることができる時間の割合を計算する。
1/(1+2.46)×100%=28.9% (3)
図8に示す動作期間の平均COPは、次のように計算される:
平均COP=(2.8×2.46+4.35×1)/(2.46+1)=3.24 (4)
【0112】
式4の結果を、通常加熱モードのみを使用する(すなわち、除霜モードを使用しない)別のシナリオと比較することにより、COP改善率は次のように計算できる:
(3.24-2.8)/2.8×100%=15.7% (5)
【0113】
したがって、通常加熱モードと除霜モードを定期的に切り替えることにより(図8に示すように)、凝縮器からの余熱を回収しないヒートポンプシステムと比較して、ヒートポンプシステム10のCOPを15.7%増加させることができる。
【0114】
要約すると、ヒートポンプシステム10は、除霜モードで動作するとき、著しく高いCOPを示す。さらに、通常加熱モードと除霜モードを定期的に切り替えることにより、(蒸発器20上に氷がない場合でも)ヒートポンプシステムの動作寿命のより大きな割合において、より高いシステムCOPを達成することが可能である。
【0115】
通常加熱モードの間、熱エネルギー貯蔵装置16による冷媒の過冷却は、膨張装置18を通って流れる冷媒によって引き起こされる不可逆的な絞り損失を減少させる。このようにして、エネルギー貯蔵装置16への熱の伝達は、ヒートポンプシステム10のCOPを増加させる。
【0116】
さらに、蒸発器を除霜するために追加の電動加熱を提供する必要がないことにより、本開示は、既知のヒートポンプシステムよりも5~10%の効率向上を達成する。
【0117】
また、定期的に除霜モードに切り替えて過冷却熱から回収した廃熱を利用することで、このケーススタディの圧縮機からの廃熱を回収しないヒートポンプと比較して、システムのCOPを15.7%向上させることができる。システムのCOPの変化は、システムの特定の構成及び動作条件に依存することを理解されたい。
【0118】
次に、図5から図8を参照して、本開示の第2の構成による代替のヒートポンプシステムについて説明する。
【0119】
簡潔にするために、図1及び3を参照して既に説明した特徴と同じ又は類似する図5の特徴及びその機能は、図1及び3と類似の参照番号が与えられているが、100増加している。また、必要に応じて、後の配置と区別するために接尾辞「a」を追加し、詳細については再度説明しない。
【0120】
ヒートポンプシステム110aは、新規の除霜メカニズムを利用し、それが設置される建物の連続加熱が可能な、フレキシブルなマルチモード空気源ヒートポンプを提供するように構成される。
【0121】
前述のシステムと同様に、図1及び3に示すように、ヒートポンプシステム110aは、流体導管124によって順に流体的に接続されて冷媒回路126を画定する、圧縮機112、凝縮器114、熱エネルギー貯蔵装置116、第1の膨張装置EV1(例えば、第1の膨張弁)、蒸発器120及び相分離器122を含む。蒸発器120の動作効率を改善するために、蒸発器120のコイル又はフィンを横切って空気の流れを導く外部ファン134が設けられている。
【0122】
ヒートポンプシステム110aは、凝縮器114と熱エネルギー貯蔵装置116との間に配置された冷媒貯蔵装置108をさらに含む。冷媒貯蔵装置108は、当業者に容易に理解されるように、一定量の冷媒を保持するように構成される容器又はタンクを含む。冷媒貯蔵装置108は、流体回路124内を流れる冷媒量の変動を補償するように構成される。例えば、ヒートポンプシステム110aは、除霜モードの間、蒸発器120内に一定量の冷媒を保持するように構成されている(以下に説明するように)。この状況では、冷媒貯蔵装置108は、回路内を循環する冷媒量の減少を補償するように構成される。
【0123】
熱エネルギー貯蔵装置116は、冷媒回路126の導管セクション128との直接的な熱接触を可能にするように構成されたケース130内に収容された相変化材料を含む。熱エネルギー貯蔵装置116は、相変化材料と冷媒回路126内の冷媒との間で熱エネルギーを受動的に伝達するように構成される。
【0124】
代替の例示的な配置によれば、図7に示されるように、熱エネルギー貯蔵装置116aは、相変化材料が伝熱流体回路136によって冷媒回路126の導管セクション128に熱的に結合されるように配置される。伝熱流体(例えば、水)は、機械的流体ポンプ146によって二次回路136を通って導かれ、熱交換器138によって第1の冷媒回路126内の第1の冷媒に熱的に結合される。熱エネルギー貯蔵装置116aは、図1及び5に示されるように、ポイントAA-BBの間の冷媒回路126に結合され得ることが理解される。
【0125】
熱エネルギー貯蔵装置116aは、当業者に理解されるように、ポンプ146の動作によって冷媒回路126への熱の移動を積極的に制御できるように構成されている。
【0126】
伝熱流体回路136は、ヒートポンプシステムの外側に配置することができる。そのため、(内部に配置された相変化材料の熱エネルギー貯蔵ユニットと比較して)大きな熱エネルギー貯蔵容量で構成することができる。伝熱流体回路136は、大気圧で動作するように構成されており、これは、製造及び制御が簡単な(例えば、低コストの)構成要素から作ることができることを意味する。
【0127】
ヒートポンプシステム110aは、通常加熱モード、除霜モード、補助加熱モード、熱充填モードと呼ばれる4つの異なる動作モードを有する。4つのモードは、以下の表1に示すように、それぞれモード1、2、3、及び4に対応する。
【0128】
【表1】
【0129】
ヒートポンプシステム110aは、ヒートポンプシステム110aの異なる動作モード間で切り替えるために、冷媒回路126の周りの冷媒の流れを制御するように構成されたスイッチングアセンブリ140aを含む。
【0130】
特に、スイッチングアセンブリは、必要な動作モードを達成するために独立して構成可能な6つの制御弁V1、V2、V3、V4、V5、V6を含む。スイッチングアセンブリ140aは、4つのバイパスアセンブリ又は流体導管144a、144b、144c、144dをさらに含む、必要な動作モードに従って冷媒回路126の異なる構成要素及びセクションをバイパスするように構成される。
【0131】
ヒートポンプシステム110bの別の例示的な構成によれば、図9に示すように、6つの二方向制御弁V1~6が、4つの三方向弁V10、V12、V14、V16に置き換えられ、これらは、システムのスイッチングアセンブリ140bを定義する。図9に示すヒートポンプシステム110bの動作は、図5の動作と実質的に同じであることが理解される。
【0132】
表1はまた、ヒートポンプシステム110aを4つの動作モードで構成するために必要とされる弁構成(すなわち、開/閉)の異なる組み合わせを概説している。表には、4つのシステム動作モードのそれぞれに対応する、外部ファン134の必要な動作状態(すなわち、オン/オフ)も含まれる。
【0133】
ヒートポンプシステム110aを通常加熱モード(すなわち、モード1)で動作させるとき、圧縮機112からの冷媒は、順次、第2の制御弁V2、熱エネルギー貯蔵装置116、第1の膨張弁EV1、第6の制御弁V6、蒸発器120、相分離器122を通るように導かれ、次に圧縮機112に戻り、新しいサイクルを開始する。このモードでは、ヒートポンプシステム110aは、通常の単段ヒートポンプとして動作し、屋外の空気から抽出された熱が凝縮器114によって建物内に放出される。熱エネルギー貯蔵装置116は、凝縮器114から出る温かい液体冷媒から熱を回収するための過冷却器として働く。副産物として、液体冷媒は、冷媒から熱エネルギー貯蔵装置116内の相変化材料への熱エネルギーの伝達によって過冷却される。回収された熱は、ヒートポンプシステム110aのその後の起動動作モードで使用できるように、相変化材料に蓄えられる。通常加熱モードに対応する熱力学的サイクルは、図6に示す圧力-エンタルピー(p-h)曲線に示すように、点「A-B-C-D-E-A」で表される。
【0134】
除霜モード(すなわちモード2)でヒートポンプシステム110aを動作させるとき、スイッチングアセンブリ140aは、前の実施形態に関して説明したように、熱エネルギーを蒸発器と凝縮器の両方に導くように構成される。これは、第2のバイパスアセンブリ144bによって、凝縮器114と熱エネルギー貯蔵装置116との間の冷媒回路126に流体結合された第2の膨張装置EV2(例えば、膨張弁)を通して冷媒を導くことによって達成される。スイッチングアセンブリ140aはまた、第1の膨張弁EV1を冷媒回路126から隔離するように構成された第1のバイパスアセンブリ144aを通して冷媒を転向させることによって、第1の膨張弁EV1をバイパスするように配置される。
【0135】
具体的には、圧縮機112を出る冷媒は、第1の制御弁V1、第2の膨張弁EV2を通って流れるように導かれ、そこで膨張し、それによって圧力及び温度を低下させる。したがって、膨張弁EV2は、冷媒の温度を熱エネルギー貯蔵装置116の動作温度未満に下げるように構成され、これにより、熱エネルギーが貯蔵装置116から冷媒に伝達されることが保証される。また、冷媒回路内の冷媒の圧力を均衡させるように構成されている。
【0136】
冷媒は、第2の膨張弁EV2に続いて、熱エネルギー貯蔵装置116を通るように導かれ、そこで過熱冷媒蒸気に変わる。このように、熱エネルギー貯蔵装置116は、蒸発器及び過熱器として機能する。熱エネルギー貯蔵装置116を出ると、冷媒は2つの流れに分割され、第1の流れは、順次、第4の制御弁V4、第3のバイパスアセンブリ144c、相分離器122、そして最後に圧縮機112を通って導かれる。
【0137】
第2の流れは、第5の制御弁V5、第2のバイパスアセンブリ144bを通って、蒸発器120に導かれる。ヒートポンプシステム110aの除霜モード構成によれば、熱エネルギー貯蔵装置116は、第2の膨張弁EV2と蒸発器120との間に位置する点で冷媒回路126に熱的に結合される。このようにして、熱エネルギー貯蔵装置116を通過して流れる冷媒蒸気は、その潜熱を放出させられて、蒸発器120の外面上の氷を溶かす。この凝縮プロセス中に形成された液体冷媒は、システムが通常加熱モードに切り替わるまで、蒸発器120内に一時的に保持される。
【0138】
熱エネルギー貯蔵装置116を出る冷媒の第1の流れは、建物に熱を供給するために凝縮器114に導かれ、一方、第2の冷媒の流れは、蒸発器120を除霜するために使用される。したがって、システムは、蒸発器の除霜プロセス中に建物の内部に連続的な熱を提供する。
【0139】
図6を参照すると、第1の冷媒の流れの連続加熱サイクルは、シーケンス「G-B-H-F-G」によって表され、第2の冷媒の流れは、シーケンス「G-B-H-F-I」によって表される。特に、シーケンス「F-I」は、第1のバイパスアセンブリ144aを介して蒸発器120に入るときに過熱冷媒蒸気の流れによって放出される熱を表す。
【0140】
除霜モードで動作するとき、スイッチングアセンブリ140aは、蒸発器120を除霜するための熱源として、凝縮器からの冷媒から回収される熱(通常は絞りプロセスで浪費される)を導く。これにより、蒸発器の除霜のために追加の熱エネルギーを投入する必要がなくなる。
【0141】
ヒートポンプシステムは、蒸発器120からの入力なしに、熱エネルギーが熱エネルギー貯蔵装置116から冷媒に伝達される補助加熱モードで動作可能である。これを達成するために、スイッチングアセンブリ140aは、膨張弁EV1及び蒸発器120をバイパスするように構成される。
【0142】
特に、圧縮機112からの冷媒は、順次、凝縮器114、第1の制御弁V1、第1の膨張弁EV1、熱エネルギー貯蔵装置116、第4の制御弁V4、第3のバイパスアセンブリ144c、相分離器122を通るように導かれ、最後に圧縮機112に戻り、新しいサイクルを開始する。このモードでは、熱エネルギー貯蔵装置116はシステムの蒸発器として動作し、熱エネルギー貯蔵装置116に貯蔵された熱は補助熱源として使用される。対応する熱力学的サイクルは、図6に示すように「F-G-B-H-F」で表される。
【0143】
本実施形態の補助加熱モードは、第1実施形態の除霜モード(図1図4参照)と同様に、通常加熱モードよりもCOPが高くなるように構成されている。例えば、ヒートポンプシステム110aの例示的な構成では、通常加熱モード及び補助加熱モードのCOP値は、それぞれ2.8及び4.35である。これは、補助加熱モードでは、熱エネルギー貯蔵装置116がシステムの主要な熱源として蒸発器120に取って代わるからである。相変化材料は、外気(~0℃)と比較してかなり高い温度(~30℃)で冷媒に熱を伝達し、(第1の実施形態を参照して説明したのと同じ理由で)より高いCOP評価につながる。
【0144】
ヒートポンプシステム110aの例示的な動作スキームは、図8に示されるように、2つの加熱モードの間で周期的かつ繰り返し切り替えることを伴う。各スイッチのタイミングと持続時間は、時間の28.9%が補助加熱モードで費やされるように決定され、これにより、通常加熱モードのみを使用する場合と比較してCOPが15.7%増加する。ヒートポンプシステム110aのさらなる利点は、スイッチングアセンブリ140aにより、冷媒回路126を通常加熱モード(例えば、熱エネルギー貯蔵器116を充填するため)と補助加熱モード(例えば、貯蔵された熱エネルギーを利用するため)との間で容易に切り替えることができることである。これにより、システムのフレキシビリティが向上する。
【0145】
ヒートポンプシステム110aは、熱エネルギーが冷媒から熱エネルギー貯蔵装置116に伝達される熱充填モード(すなわち、モード4)でも動作可能である。このモードでは、スイッチングアセンブリ140aは、圧縮機112を出る冷媒を導いて、第2の膨張弁EV2及び凝縮器114をバイパスするように構成される。
【0146】
熱充填モードで動作する場合、圧縮機からの冷媒は、順次、第3の制御弁V3、第4のバイパスアセンブリ144d、熱エネルギー貯蔵装置116、第1の膨張弁EV1、蒸発器120、相分離器122を通るように導かれ、次に圧縮機112に戻り、新しいサイクルを開始する。
【0147】
この熱充填モードでは、凝縮器114を停止し、熱エネルギー貯蔵装置116を二次凝縮器として使用することができる。この動作モードは、建物からの熱需要はないが屋外温度が高い状況で特に有利であり、熱を外部環境から効率的に抽出し、後で使用するために熱エネルギー貯蔵装置116に貯蔵することができる。このような状況は、例えば、日中に建物内に人がいない場合に発生し得る。対応する熱力学的サイクルは、図6に示すように「E-J-K-L-E」で表される。
【0148】
既知の単段ヒートポンプシステムでは、凝縮器の動作温度で熱が蓄えられる(すなわち、冷媒が圧縮機と凝縮器との間を流れる際に冷媒から熱を吸収することができる)。本開示による熱充填モードは、中間温度で熱エネルギー貯蔵装置116によって熱を吸収させる(すなわち、熱は凝縮器から流れるときに冷媒から伝達される)。ヒートポンプシステムをこのように構成及び動作させることにより、熱充填モードでは、凝縮器の動作温度を維持しながら、熱エネルギー貯蔵の容量を1/COP減少させる。したがって、ヒートポンプシステム110aは、比較的小さな熱エネルギー貯蔵容量で構成することができ、システムの複雑さ及びコストを低減する。上記の例示的なケーススタディによれば、熱充填モードのCOPは4.35である。したがって、熱エネルギー貯蔵容量は1/4.35=23%削減できる。
【0149】
代替の例示的な配置によれば、図7に示されるように、熱エネルギー貯蔵装置116aは、相変化材料が熱流体伝達回路136によって冷媒回路126の導管128に熱的に結合されるように配置される。水などの伝熱流体は、流体ポンプ146によって第2の回路136に導かれる。第2の冷媒回路136内の伝熱流体は、熱交換器138によって第1の冷媒回路126内の冷媒に熱的に結合される。
【0150】
熱エネルギー蓄積装置116aは、当業者に理解されるように、ポンプ146の動作によって冷媒回路126への熱の移動を積極的に制御できるように構成されている。これは例えば、熱エネルギー貯蔵装置116が冷媒回路126の内外にエネルギーを受動的に伝達するように構成されている図5に示される配置とは対照的である。
【0151】
有利には、熱エネルギー貯蔵装置116aは、ヒートポンプシステム110aの外側に配置することができ、したがって、より大きな熱容量(すなわち、より大きな体積の相変化材料)で構成することができる。大容量の熱エネルギー貯蔵装置116aは、オフピークの電気及び/又は暖かい空気がより自由に利用可能であるが、建物内の熱需要が低い場合に、熱を貯蔵するために使用することができる。
【0152】
二段ヒートポンプシステム
前述のヒートポンプシステム10、110a、110bは、それぞれ単一の冷媒回路26、126のみを含むため、すべて単段ヒートポンプシステムである。ここで、本開示の別の態様による複数の二段ヒートポンプシステム210a、210b、210cを、図10図17を参照して説明する。
【0153】
簡潔にするために、図1図9を参照して既に説明した特徴と同じ又は類似する図10~17の特徴及びその機能には、類似の参照番号が与えられているが、100だけ増加され、詳細については再度説明しない。
【0154】
図10を参照すると、ヒートポンプシステム210aは、流体導管224によって順に流体接続されて第1の冷媒回路226aを画定する、第1の圧縮機212a、凝縮器214、及び第1の膨張装置EV21(例えば、第1の膨張弁)を含む。ヒートポンプシステム210aはさらに、流体導管224によって順に流体接続されて第2の冷媒回路226bを画定する、第2の圧縮機212b、第2の膨張装置EV22、及び蒸発器220を含む。
【0155】
二相気液分離器222(例えば、フラッシュタンク)は、第1及び第2の冷媒回路226a、226bの間に流体連結される。第1の冷媒回路226aは、相分離器222のガス含有部分(例えば上部)に連結され、第2の冷媒回路226bは液体含有部分(例えば下部)に連結される。図10に示すように、相分離器222は、第1の圧縮機212bの上流、第1の膨張装置EV21の下流、第2の圧縮機212bの下流、及び第2の膨張装置EV22の上流に配置される。ヒートポンプシステム210aの動作中、膨張装置EV21の下流の導管は、冷媒の液体-気体混合物を含む。したがって、高圧段の出力は、相分離器222の液体含有部分又は気体含有部分のいずれかに流体結合され得る。高圧段の入力は、図10に示すように、ガス含有部分に流体結合される。
【0156】
ヒートポンプシステム210aの動作中、第1の回路226a内の冷媒は、第2の回路226b内の冷媒よりも高い圧力及び温度で循環される。したがって、第1及び第2の冷媒回路226a、226bは、ヒートポンプシステム210aの高圧/温度及び低圧/温度の段をそれぞれ表す。相分離器222は、ヒートポンプシステム210a内の中間圧力/温度状態を表す位置で、冷媒回路226a、226bの間で流体結合される。
【0157】
高圧段及び低圧段のそれぞれは、それぞれの冷媒回路226a、226b内で熱エネルギーをある位置から別の位置に伝達するように構成される。例えば、ヒートポンプシステム210aが加熱モードで動作しているとき、高圧段は熱を相分離器222から凝縮器214に伝達し、一方、低圧段は蒸発器220から相分離器222に熱を伝達する。したがって、第1及び第2の冷媒回路226a、226bは、相分離器222によって互いに結合された効果的な2つの単段ヒートポンプシステムである。
【0158】
二段ヒートポンプシステム210aは、屋外環境と屋内環境との間の温度差(すなわち、温度上昇)が大きい状況、例えば50℃~70℃の間で適応される。ヒートポンプシステム210aの例示的な動作条件によれば、周囲空気温度は、-10℃~10℃の範囲内(すなわち、蒸発器220において)であり得る。建物のセントラルヒーティングシステムでは、50℃~60℃の温度で(すなわち、凝縮器214において)熱を生成する必要がある場合がある。この状況では、相分離器222は、20℃~30℃の間の中間温度でヒートポンプシステム210a内に配置される。したがって、低圧段と高圧段のそれぞれによって提供される温度上昇は、約25℃~35℃である。
【0159】
二段ヒートポンプシステム216aはまた、同じ温度上昇で動作する同等の単段ヒートポンプシステムよりも高いCOPで動作するように構成される。例えば、二段ヒートポンプシステム210aは2つの圧縮機を有するため、単段ヒートポンプシステムにおける単一の圧縮機と比較して、各圧縮機における圧力差(すなわち、圧力比)を減少させることができる。相分離器222は、中間圧力で「フラッシュされた」ガスを除去するように構成されているため、ガスは蒸発圧力まで絞り込まれずに再圧縮され、それによって圧縮電力が節約される。相分離器222はまた、低圧段の圧縮機212bから出るガスに中間冷却を提供し、高圧段の圧縮機212aによって必要とされる圧縮動力をさらに減少させる。
【0160】
既知の単段ヒートポンプシステムの動作に伴う問題の少なくともいくつかは、既知の二段ヒートポンプシステムにも当てはまる。例えば、既知の二段ヒートポンプシステムは、室内熱交換器から熱を抽出する方法(リバースサイクル方式)、又は圧縮機で生成された高温蒸気を抽出する方法(ホットガスバイパス方式)により、屋外の熱交換器の除霜を行うように構成されている。
【0161】
これらの各除霜プロセスは、屋外熱交換器を完全に除霜するのに数分かかる場合がある。除霜中は、室内熱交換器が効果的にオフになるため、ヒートポンプからの継続的な加熱供給はない。このため、屋外熱交換器の除霜中に加熱を提供するためにバックアップ電気ヒーターが必要になることが多く、これによりヒートポンプシステムの年間平均COPが5~10%低下する可能性がある。
【0162】
本開示による二段ヒートポンプシステム210aは、図10に示されるように、相分離器222に熱的に結合された熱エネルギー貯蔵装置216aを含む。熱エネルギー貯蔵装置216aを相分離器222に熱的に結合することにより、ヒートポンプシステム210aをより効率的に動作させ、それによって既知の二段ヒートポンプシステムの問題に対処することができる。
【0163】
熱エネルギー貯蔵装置216は、ケース230内に収容される相変化材料を含む。相変化材料は、伝熱流体回路236によって相分離器222に熱的に結合される。伝熱流体(例えば、水)は、機械式流体ポンプ246によって伝熱流体回路236を通って導かれ、熱交換器238によって、相分離器222の液体含有部分に収容された液体冷媒に熱的に結合される。
【0164】
熱エネルギー貯蔵装置216は、ヒートポンプシステム216aの外部に配置される。そのため、(内部に配置された相変化材料の熱エネルギー貯蔵ユニットと比較して)大きな熱エネルギー貯蔵容量で構成することができる。また、熱エネルギー貯蔵器216をヒートポンプシステムの他の構成要素の外部に配置することによって、他の外部源から廃熱を回収する可能性を提供する。例えば、図10に示すように、浴槽又はシャワーからの温かい廃水は、熱エネルギー貯蔵器に熱的に結合された導管500を通って流すことができる。
【0165】
ヒートポンプシステム210a内の冷媒の流れを制御し、それによってシステムの動作モードを決定するために、スイッチングアセンブリ240aも提供される。スイッチングアセンブリ240aは、以下でより詳細に説明するように、ヒートポンプシステム210aの動作を異なる動作モード間で切り替えるように構成された一組の弁V21、V22、V23、V24を含む。
【0166】
図11は、本開示による別の二段ヒートポンプシステム210bを示す。ヒートポンプシステム210bは、図10に示されるヒートポンプシステム210aと実質的に同じ構成要素を含む。ただし、スイッチングアセンブリ240bは、以下でより詳細に説明されるように、ヒートポンプシステム210bが連続加熱及び除霜モードで動作することを可能にするように、異なる構成となっている。
【0167】
特に、スイッチングアセンブリ240bは、図11に示すように、凝縮器214のすぐ下流の位置で第1の冷媒回路226aを、第2の膨張弁EV22のすぐ上流の位置で第2の冷媒回路226bに流体連結する第1のバイパスアセンブリ244aを含む。したがって、第1のバイパスアセンブリ244aは、弁V21、V23、第1の膨張弁EV21、及び相分離器222をバイパスするように配置される。
【0168】
スイッチングアセンブリ240bはまた、図11に示すように、蒸発器220のすぐ下流の位置で第2の冷媒回路226bを、第1の膨張弁EV21のすぐ上流の位置で第1の冷媒回路226aに流体連結する第2のバイパスアセンブリ244bを含む。したがって、第2のバイパスアセンブリ244bは、第2の圧縮機212b及びスイッチング弁V24をバイパスするように配置される。第1及び第2のバイパスアセンブリ244a、244bをそれぞれ通る冷媒の流れを制御するために、スイッチング弁V25、V26が設けられている。
【0169】
ここで、ヒートポンプシステム210a、210bの動作を、図12~16に示される圧力-エンタルピー(p-h)曲線を参照して説明する。ヒートポンプシステム210aは、通常加熱モード、熱充填モード、補助加熱モード、加熱ブースタモードと呼ばれる4つの動作モードを有する。これらの4つの動作モードは、以下の表2に示すように、それぞれモード1、4、3、及び5に対応する。ヒートポンプシステム210bは、ヒートポンプシステム210aと同じ4つのモード(すなわち、モード1、4、3、及び5)を有し、以下の表2のモード2に対応する追加の除霜モードも有する。
【0170】
【表2】
【0171】
表2は、弁V21~V26(すなわち、開/閉)、ポンプ246(すなわち、オン/オフ)、及び圧縮機212a、212b(すなわち、オン/オフ)の異なる構成を概説する。これらは、ヒートポンプシステム210a、210bを異なるモードで動作させるために必要とされる。
【0172】
ヒートポンプシステム210a、210bを通常加熱モード(すなわちモード1)で動作する場合、圧縮機212a、212bのスイッチをオンにし、スイッチング弁V21~V24を開き、ポンプ246をオフにする。さらに、ヒートポンプシステム212bについては、弁V25、V26が閉じられる。したがって、高圧段の冷媒は、第1の圧縮機212aによって、順次、凝縮器214、第1弁V21、第1膨張弁EV21、相分離器222、第2弁V22を通るように導かれ、次に圧縮機212に戻り、新しいサイクルを開始する。同時に、低圧段の冷媒は、第2の圧縮機212bによって、順次、相分離器222、第3弁V23、第2膨張弁EV22、蒸発器220、第4弁V24を通るように導かれ、次に第2の圧縮機212bに戻り、新しいサイクルを開始する。このモードでは、ヒートポンプシステム110aは、通常の二段式ヒートポンプとして動作し、屋外の空気から抽出された熱が凝縮器214によって建物内に放出される。通常加熱モード中の高圧段と低圧段に対応する熱力学的サイクルを図12に示す。
【0173】
充填モード(すなわちモード4)の間、弁V21、V22、V25、V26は閉じられ、第1の圧縮機212aはオフにされる。このようにして、高圧段が停止する。その間、弁V23及びV24は開いたままであり、第2の圧縮機212bがオンにされる。さらに、ポンプ246のスイッチを入れて、相分離器222と熱エネルギー貯蔵装置216a、216bとの間で熱を導く。したがって、TES216a、216bと組み合わせた相分離器222は、事実上、ヒートポンプシステム210a、210bの低圧段のための凝縮器になる。これは、相分離器222内の圧力を制御することによって達成することができる。その結果、外気からの熱は、低圧段によって中間温度範囲に伝達され、熱エネルギー貯蔵装置216a、216bを充填するために使用される。熱充填モードに対応する熱力学的サイクルは、図13に示すように、点「H-I-J-G-H」で表される。
【0174】
この動作モードは、建物の居住者が不在であるが屋外温度が暖かい日中(すなわち、COPが高い状態)など、加熱が必要でない可能性がある条件に特に適している。熱エネルギー貯蔵装置216a、216bに収集された熱エネルギーは、後で(例えば、建物の居住者が夕方に戻ってきたとき、屋外温度が低く、熱需要が高いとき)使用するために貯蔵される。熱エネルギー貯蔵装置216a、216b内の相充填材料が完全に充填されると、第2の圧縮機212b及びポンプ246のスイッチングによって、低段も停止することができる。
【0175】
補助加熱モード(すなわち、モード3)の間、弁V21及びV22は開いており、弁V23、V24、V25及びV26は閉じている。第1の圧縮機212a及びポンプ246は両方ともオンにされ、第2の圧縮機212bはオフにされる。そのため、低圧段は非アクティブ化される。相分離器222内の圧力を低下させることによって、それはヒートポンプシステム210a、210bの高圧段のための蒸発器として効果的に動作する。熱は熱貯蔵装置216a、216bから抽出され、相分離器222内の冷媒に伝達され、そこで高圧段によって凝縮器214に循環される。補助加熱モードに対応する熱力学的サイクルは、図14に示すように、点「K-A-B-L-K」で表される。
【0176】
ヒートポンプシステム210a、210bは、熱エネルギー貯蔵装置216a、261bを熱源として使用して熱を提供する単段ヒートポンプシステムに効果的に変換される。熱エネルギー貯蔵装置216a、216bは、補助加熱モードで動作するとき、好ましくは完全に充填されることが理解される。補助加熱モードは、長い暖かい日に建物の居住者が不在で、システムが充填モードで動作した後の寒い夜の操作に特に適している。
【0177】
加熱ブースタモード(すなわちモード5)の間、弁V21~V24が開かれ、(システム216b内の)弁V25及びV26が閉じられる。圧縮機212a、212bの両方がオンにされ、ポンプ246もオンにされる。この動作モードでは、相分離器222内の圧力は、その温度が熱エネルギー貯蔵装置216a、216bの融解温度よりわずかに低くなるように減少される。したがって、熱エネルギー貯蔵装置216a、216bからの熱エネルギーは、相分離器222内の冷媒に導かれる。このように、相分離器222は、高圧段の相分離器及び蒸発器の両方として機能し、システムは、事実上、2つの蒸発器及び2つの圧縮機ヒートポンプシステムに変換される。加熱ブースタモードに対応する熱力学的サイクルは図15に示される。
【0178】
加熱ブースタモードで動作するとき、熱エネルギー貯蔵装置216a、216bからの熱及び外気からの熱(すなわち、蒸発器220によって吸収される)は両方とも熱源として同時に使用され、これによりヒートポンプシステム210a、210bの加熱能力を高める。したがって、このモードは、夜に熱需要がピークに達するが、屋外温度が低い条件に特に適している。
【0179】
ヒートポンプシステム216bのみに適用可能な除霜モード(すなわち、モード2)の間、弁V21、V22、V25、及びV26が開かれ、弁V23及びV24が閉じられる。第1の圧縮機212a及びポンプ246がオンにされ、第2の圧縮機212bがオフにされる。そのため、低圧段は非アクティブ化される。凝縮器214を出る温かい液体冷媒は、蒸発器220を通過するように導かれ、それによってその残りの熱を放出して、その上に形成された氷を溶かす。次に、冷媒は、第2のバイパスアセンブリ244bによって相分離器222に絞り込まれる。したがって、ヒートポンプシステム210bは、蒸発器220を除霜するために凝縮器214を出る温かい液体冷媒によって運ばれる過剰な熱を使用する。凝縮器214からの未使用の熱は廃熱源であり、したがって建物の内部を加熱する必要はない。除霜モードに対応する熱力学的サイクルは、図16に示すように、点「K-A-N-L-K」で表される。
【0180】
除霜モードの間、相分離器222は、高圧段のための蒸発器に変換される。熱エネルギー貯蔵装置216bに蓄えられた熱は抽出され、ヒートポンプ210aの高圧段を効率的に動作させるのに必要な温度まで相分離器222内の冷媒を加熱するために使用される。したがって、ヒートポンプシステム216bは、熱エネルギー貯蔵装置216bを熱源として使用して加熱を提供する単段システムに変換される。このようにして、凝縮器214への連続加熱供給を中断することなく、蒸発器220を除霜することができる。さらに、二段ヒートポンプシステムの従来の除霜モードとは異なり、蒸発器220の除霜に余分な電力は必要ない。除霜モードは、屋外の周囲温度が低く、霜が蒸発器220に蓄積し始める条件に特に適している。
【0181】
図17は、本開示による別の二段ヒートポンプシステム210cを示す。ヒートポンプシステム210cは、図10及び11にそれぞれ示されるように、ヒートポンプシステム210a及び210bと実質的に同じ構成要素を含む。ただし、そのスイッチングアセンブリ240cは、蒸発器220を除霜する代替手段を提供するように構成されている。
【0182】
スイッチングアセンブリ240cは、図17に示すように、相分離器222のすぐ下流の第1の位置、及び蒸発器220のすぐ上流の第2の位置で第2の冷媒回路226bに流体結合する第1のバイパスアセンブリ244cを含む。したがって、第1のバイパスアセンブリ244cは、第3の弁V23及び第2の膨張弁EV22をバイパスするように配置される。第2のバイパスアセンブリ244dは、蒸発器220のすぐ下流の第1の位置で、第2の冷媒回路226bと相分離器222の液体含有部分との間で流体結合する。したがって、第2のバイパスアセンブリ244dは、第2の圧縮機212b及び第4のスイッチング弁V24をバイパスするように配置される。スイッチング弁V27、V28はそれぞれ、第1及び第2のバイパスアセンブリ244c、244dを通る冷媒の流れを制御するために設けられている。伝熱流体回路236には、相分離器222と熱エネルギー貯蔵装置216bとの間の冷媒の流れを制御するための第1のポンプ246aが取り付けられ、第2のバイパスアセンブリ244dには、弁V28の下流に配置された第2のポンプ246bが設けられている。
【0183】
ヒートポンプシステム216cは、動作モード1、4、3、及び5の間、前述の二段ヒートポンプシステム216a、261bと同様に動作する。これらの動作モードの間、弁V27、V28は閉じられ、ポンプ246bはオフにされる。除霜モードで動作するとき、弁V23及びV24は閉じられ、弁V27、V28は開かれ、第2のポンプ246bがオンにされる。したがって、相分離器222からの暖かい冷媒は、バイパスアセンブリ244c、244dを通ってポンプで送られ、蒸発器220を通って導かれ、その上の氷を溶かす。ヒートポンプ216cのこの構成は、追加の流体ポンプ246bを必要とし、システムの複雑さとコストを増加させる可能性があることが理解される。図11に示すように、相分離器222内の液体冷媒は、凝縮器214を出る熱い液体冷媒(例えば、>65℃)よりも冷たい(例えば、25℃)ため、除霜時間は、ヒートポンプシステム216bより長い可能性がある。
【0184】
二段ヒートポンプシステム210a、210b、210cは、単段ヒートポンプシステム及び既知の二段ヒートポンプシステムと比較して動作のフレキシビリティを高める。例えば、それらは、熱が必要ではないが屋外温度が暖かい場合(例えば、日中)に熱エネルギー貯蔵装置216a、216bを充填するために、オフピーク電力及び/又は日中の暖かい屋外空気を利用するフレキシビリティを提供する。本開示の二段ヒートポンプシステムはまた、熱エネルギー貯蔵装置と外気の両方を熱源として使用することによって、熱需要がピークに達したときに熱生成を最大化する。さらに、ヒートポンプシステムは、中間温度で(すなわち、相分離器222において)熱を貯蔵することができ、これは、生成温度で(すなわち、凝縮器214において)熱を貯蔵するよりも必要とされる貯蔵サイズが小さい。例えば、中間圧熱エネルギー貯蔵装置(本開示による)は、同等の高圧熱エネルギー貯蔵装置よりも20~40%小さくても、同じ性能を維持することができる。サイズの縮小は、高圧段のCOP(例:1/COP)に関連している。例えば、高圧段が3のCOPを有する場合、中間熱エネルギー貯蔵装置のサイズ縮小は33%であり得る。
【0185】
さらに、ヒートポンプシステム216b、216cは、蒸発器220を除霜しながら凝縮器214に連続的な熱供給を提供することができる。システムは、蒸発器220を除霜するために冷媒サイクルを逆にする必要はない。また、システムは、除霜中に低圧段の圧縮機212bにおいて追加の電力を消費しない。
【0186】
さらに、高圧段は除霜モードの動作中に連続的な熱供給を提供するので、除霜のためのバックアップヒーターは必要でない。スイッチングアセンブリ240a、240b、240cは、設置及び制御が簡単な低コストの弁及びバイパスアセンブリに依存している。
【0187】
前述のヒートポンプシステム210a、210b、210cはそれぞれ、2つの別個の圧縮機212a、212b(すなわち、高圧段及び低圧段のそれぞれに対して1つの圧縮機)を含む。それぞれが本開示のさらなる態様による蒸気注入圧縮機312を含む、1対の代替の二段ヒートポンプシステム310a、310bを、図18及び19を参照して説明する。
【0188】
簡潔にするために、図10図17を参照して既に説明した特徴と同じ又は類似する図18及び図19の特徴及びその機能には、類似の参照番号が与えられているが、100だけ増加され、詳細については再度説明しない。
【0189】
図18を参照すると、ヒートポンプシステム310aは、別個の流体導管324によってシステムの凝縮器314、蒸発器320、及び相分離器322に流体結合された蒸気注入圧縮機312を含む。
【0190】
蒸気噴射圧縮機312は、蒸発器320から冷媒を受け取るための低圧入力、高圧冷媒を凝縮器314に出力するための高圧出力と、及び相分離器322のガス含有部分から冷媒を受け取るための中間圧力入力を有する。動作中、相分離器322から受け取った気化した冷媒は、蒸発器320を出る冷媒よりも高圧であるが、圧縮機312を出る冷媒よりも低い圧力である。相分離器322からの冷媒は、圧縮機312に「注入」され、それにより、圧縮機312の一部のみを通過しながら、通常の出力圧力(すなわち、凝縮器314に出力される高圧)まで圧縮される。
【0191】
ヒートポンプシステム310aはまた、凝縮器314と相分離器322との間に順に流体結合された第1の膨張装置EV31を含む。第2の膨張装置EV32は、図18に示されるように、相分離器322と蒸発器320との間に順番に配置される。当業者に理解されるように、第1及び第2の膨張装置EV31、EV32の少なくとも1つは、回路326内の冷媒の下流圧力を制御するように構成される。例えば、少なくとも1つの膨張装置は調節可能な膨張弁である。
【0192】
熱エネルギー貯蔵装置316は、ヒートポンプシステム210a、210b、210cに関して上述したのと同じ方法で、別個の冷媒回路336によって相分離器322に流体結合される。ヒートポンプシステム310aにはまた、弁V31、V32を含むスイッチングアセンブリ340aが設けられる。スイッチングアセンブリ340aは、以下でより詳細に説明されるように、異なる動作モード間でヒートポンプシステム310aの動作を切り替えるように構成される。
【0193】
相分離器322及び圧縮機312の配置は、ヒートポンプ310aが、前述の二段ヒートポンプシステム210a、210b、210cの場合のように、2つの別個の冷媒回路を含まないことを意味する。しかしながら、ヒートポンプ310aの低圧段は、相分離器322から順に第2の膨張装置EV32に流れ、蒸発器320を通って圧縮機312の低圧入力に至る冷媒によって画定される。同様に、ヒートポンプシステム310aの高圧段は、圧縮機312から順に、凝縮器314を通り、第1の膨張装置EV31を通り、相分離器322に至る冷媒の流れによって画定される。ヒートポンプシステムの中圧段は、例えば、相分離器322から圧縮機312の中圧入力への冷媒の流れによって画定される。
【0194】
図19は、本開示による蒸気注入圧縮機を同じく含む代替の二段ヒートポンプシステム310bを示す。ヒートポンプシステム310bは、図18に示されるヒートポンプシステム310aと実質的に同じ構成要素を含む。ただし、スイッチングアセンブリ340bは、以下でより詳細に説明されるように、ヒートポンプシステム310bが連続加熱及び除霜モードで動作することを可能にするように、異なる構成となっている。
【0195】
特に、スイッチングアセンブリ340bは、凝縮器314と第1の膨張弁EV31との間に順次配置された追加の弁V33を含む。アセンブリはまた、図19に示すように、凝縮器314のすぐ下流の位置で、冷媒回路326を、第2の膨張弁EV32のすぐ上流にある冷媒回路326上の位置に流体連結する第1のバイパスアセンブリ244aを含む。したがって、第1のバイパスアセンブリ344aは、弁V31、V33、第1の膨張弁EV31及び相分離器322をバイパスするように配置される。スイッチングアセンブリ240bはまた、図19に示されるように、蒸発器320のすぐ下流の位置で、冷媒回路326を、第1の膨張弁EV31のすぐ上流の位置に流体結合する第2のバイパスアセンブリ344bを含む。したがって、第2のバイパスアセンブリ344bは、圧縮機312、スイッチング弁V32、V33及び凝縮器314をバイパスする。スイッチング弁V34、V35はそれぞれ、第1及び第2のバイパスアセンブリ344a、344bを通る冷媒の流れを制御するために設けられる。
【0196】
ここで、ヒートポンプシステム310a、310bの動作について、以下の表3を参照して説明する。ヒートポンプシステム310aは、通常加熱モード、熱充填モード、加熱ブースタモード、補助加熱モードと呼ばれる4つの異なる動作モードを有する。これらの4つの動作モードは、表3に概説されるように、モード1、4、5、及び3にそれぞれ対応する。ヒートポンプシステム310bは、表3に概説されるように、モード2に対応する追加の除霜モードを有する。
【0197】
【表3】
【0198】
表3は、異なるモードでヒートポンプシステム310a、310bを動作させるために必要とされる弁V31~V36(すなわち開/閉)及びポンプ346(すなわちオン/オフ)の異なる構成を概説する。圧縮機312は、各動作モードを通して動作される。表は、熱エネルギー貯蔵装置316内の相変化材料の温度と比較した、相分離器322内の冷媒の相対温度も示す。
【0199】
表3に記載された番号付けされた動作モード(すなわち、1、4、5、3、及び2)のそれぞれは、上記の表2に概説されているヒートポンプシステム210a、210bのそれぞれ番号付けされた動作モードに対応することが理解される。
【0200】
したがって、通常加熱モード(すなわち、モード1)の間、ポンプ346は、熱エネルギー貯蔵装置316が相分離器322から分離されるようにオフにされる。また、弁V31、V32、V33は開かれ、ヒートポンプシステム310a、310bが従来の2段ヒートポンプとして動作できるようにする。
【0201】
充填モード(すなわちモード4)の間、弁V31、V32、及びV33が開かれ、弁V34、V35が閉じられる。ポンプ346のスイッチを入れて、熱エネルギー貯蔵システム316を相分離器322に結合する。充填モードの間、高圧段は凝縮器314に熱を供給するために動作される(通常加熱モードと同様)。しかしながら、通常加熱モードとは対照的に、充填モードの間、ポンプ346はオンに切り替えられ、それによって熱エネルギー貯蔵装置316を相分離器322に結合する。また、膨張装置EV31は、相分離器322内の圧力を制御して、冷媒の温度が熱エネルギー貯蔵装置316内の相変化材料の融解温度よりも数度高くなるように調整される。これにより、冷媒から熱が抽出され、熱エネルギー貯蔵装置316に貯蔵される。
【0202】
ヒートポンプシステム310a、310bがヒートポンプシステム210a、210b、210cと異なる点の1つは、充填モード(モード4)の間、ヒートポンプは凝縮器314に熱を供給し続けるが(すなわち、ヒートポンプシステム310a、310bの「充填モード」は、事実上、「連続加熱及び充填モード」である)、ヒートポンプシステム210a、210b、210cは、凝縮器214に熱を供給することなく、熱エネルギー貯蔵装置を充填するように動作できる(すなわち、ヒートポンプシステム210a、210b、210cの「充填モード」は、事実上「純粋な充填モード」である)点である。
【0203】
加熱ブースタモード(すなわちモード5)の間、弁V31、V32及びV33が開かれ、弁V34~V35が閉じられる。ポンプ346は、熱エネルギー貯蔵装置316と蒸発器320の両方が同時に熱源として使用され、ヒートポンプシステム316a、316bの加熱能力を高めるように動作される。この動作モードの間、相分離器322内の冷媒の圧力は、冷媒温度が熱エネルギー貯蔵装置316内の相変化材料の融点よりも低くなるように調整される。これにより、熱エネルギー貯蔵装置316からの熱が、相分離器322内の冷媒によって吸収される。
【0204】
補助加熱モード(すなわちモード3)の間、弁V31、V32、V34、V35が閉じられ、弁V33が開かれる。ポンプ346のスイッチを入れて、熱エネルギー貯蔵装置316から相分離器322内の冷媒への熱の移動を引き起こす。低圧段は非アクティブ化されるので、相分離器315は、熱エネルギー貯蔵装置316と共に、高圧段のための蒸発器として働く。モード5と同様に、相分離器322内の圧力は、冷媒の温度が熱エネルギー貯蔵装置316内の相変化材料の融解温度よりも低くなるように制御される。
【0205】
ヒートポンプシステム310bに適用可能な除霜及び連続加熱モード(すなわち、モード2)の間、弁V31、V32及びV33は閉じられ、弁V34及びV35は開かれる。凝縮器312を出る温かい液体冷媒は、蒸発器320を通過するように導かれ、蒸発器320上に形成された氷を溶かすために熱を放出する。次いで、冷却された冷媒は、相分離器322に入る前に、膨張弁EV31で絞られる。このモードの間、相分離器322は、熱エネルギー貯蔵装置316と共に、高圧段のための蒸発器に変換され、これにより、熱エネルギー貯蔵装置316に貯蔵された熱が抽出され、熱生成温度まで持ち上げられる。
【0206】
動作モード1、4、5、3、及び2のそれぞれは、好ましくは、二重圧縮機二段ヒートポンプシステム210a、210b、210cに関して上述したのと実質的に同じ条件で適用可能であることが理解される。さらに、蒸気注入圧縮機ヒートポンプシステム310a、310bは、必要な構成要素が少ないため(例えば、圧縮機が1つ少なく、流体導管セクションと弁が少ないなど)、建物のセントラルヒーティングシステム内でより容易にパッケージ化できるという追加の利点がある。
【0207】
図10、11、及び17から19に示すような、ヒートポンプシステム210a、210b、210c、310a、310bは、冷蔵用途(例えば、冷蔵庫、冷凍庫又は空調システム)にも適用することができる。冷蔵用途の場合、二段ヒートポンプシステムは逆に構成され、凝縮器は周囲空気にさらされ(すなわち、ヒートシンク)、蒸発器は負荷が必要な場所(例えば、冷蔵庫の内部)に配置されることを理解されたい。この場合、必要な負荷は、冷蔵領域の温度を下げる負の熱負荷(すなわち、低温)である。
【0208】
二段ヒートポンプシステム210a、210b、210c、310a、310bは、ヒートシンク温度(すなわち、周囲の屋外空気温度)が高すぎる、及び/又は所望の温度降下が大きすぎる状況で特に有益である。冷蔵用途で使用される二段ヒートポンプシステム210a、310aのうちの2つの動作を以下に説明する。
【0209】
冷蔵ヒートポンプシステムの例示的な動作条件によれば、周囲空気温度(すなわち凝縮器において)は30℃~40℃の間であり、冷却負荷温度は約-20℃である。熱エネルギー貯蔵装置は相分離器に熱的に結合されており、5℃~10℃の中間温度で動作する。したがって、合計温度降下は約55℃であり、低圧段及び高圧段のそれぞれによって提供される温度降下は約25℃から30℃である。
【0210】
ヒートポンプシステム210aは、図10に示すように、通常冷却モード、補助冷却モード、冷却充填モード及び冷却ブースタモードと呼ばれる4つの異なる冷却モードで動作することができる。以下の表4に示すように、4つのモードはそれぞれモード6、7、8、及び9に対応する。
【0211】
【表4】
【0212】
通常冷却モード(すなわち、モード6)の間、ポンプ246はオフにされ、弁V21~V24のそれぞれが開いており、ヒートポンプシステム210aは、ヒートポンプシステム210aは、蒸発器220から熱を吸収し、それを凝縮器214に伝達することによって、従来の二段冷蔵システムとして動作する。このように、ヒートポンプシステム210aは、ヒートシンクとして外気を(すなわち、蒸発器220で)使用する。
【0213】
補助冷却モードは、外気温度が高く、冷蔵システムの通常の動作効率が低下する場合に特に役立つ。補助冷却モード(すなわち、モード7)で動作するとき、ポンプ246のオンにされ、弁V21及びV22が閉じられ、第1の圧縮機212aはオフにされる。したがって、高圧段は停止され、低圧段は、熱を熱エネルギー貯蔵器216aに導くように構成される。これは、熱エネルギー貯蔵装置216aから冷却熱エネルギー(すなわち、エネルギーの「冷たさ」)を抽出し、それを相分離器222内の冷媒に導くことと同等である。このようにして、ヒートポンプは、熱エネルギー貯蔵装置216aを、蒸発器220から熱を放出するためのヒートシンクとして使用する。
【0214】
冷却充填モード(すなわち、モード8)の間、ポンプ246は動作しており、弁V21、V22は開いているが、弁V23、V24は閉じている。この構成は、外気(すなわち、凝縮器214において)をヒートシンクとして使用して、ヒートポンプを単段システムに効果的に変換する。ヒートポンプは、5℃~10℃の間の中間温度で、熱エネルギー貯蔵装置216aから相分離器222内の冷媒に、熱を抽出するように動作される。冷却充填モードは、冷却需要が低く、特に屋外の周囲温度も低い場合に特に有利である。
【0215】
冷却ブースタ動作モードは、冷却需要が高い場合に特に有利である。冷却ブースタモード(すなわち、モード9)で動作するとき、弁V21~V24のそれぞれが開いており、圧縮機212a、212b及びポンプ246がすべてオンにされる。高圧段と低圧段の両方が動作して、熱エネルギーを熱エネルギー貯蔵装置216a及び周囲空気に導く(すなわち、凝縮器214において)。熱エネルギー貯蔵装置216aを追加のヒートシンクとして使用することにより、ヒートポンプの冷却性能が向上する。
【0216】
蒸気注入圧縮機二段ヒートポンプシステム310aは、図18に示されるように、冷蔵システムとして動作することもできる。特に、ヒートポンプシステム310aは、通常冷却モード、冷却ブースタモード、冷却兼充填モード、及び冷却充填モードと呼ばれる4つの異なる冷蔵モードで動作することができる。この4つのモードは、以下の表5で概説するように、それぞれモード10、11、12、及び13に対応する。圧縮機312は、各動作モード中に起動される。
【0217】
【表5】
【0218】
通常冷却モード(すなわち、モード10)で動作するとき、弁V31、32は開かれ、ポンプ346はオフにされる。したがって、ヒートポンプシステム310aは、従来の二段冷却ヒートポンプシステムとして、すなわち、蒸発器320から熱を抽出し、それを凝縮器314に導くことによって動作し、熱エネルギー貯蔵装置316は停止される。
【0219】
冷却ブースタモード(すなわちモード11)の間、ポンプ346がオンにされ、弁V31、V32が開かれる。相分離器322内の圧力は、冷媒の温度が熱エネルギー貯蔵装置316a内の相変化材料の融解温度よりも高くなるように調整される。したがって、ヒートポンプは、熱エネルギー貯蔵装置316aを冷媒用の過冷却器として使用し、凝縮器214における周囲空気をヒートシンクとして使用する二段冷蔵システムとして動作する。
【0220】
冷却兼充填モード(すなわち、モード12)で動作する場合、弁V31及びV32が開かれ、ポンプ346が動作される。相分離器322内の冷媒の圧力は、冷媒温度が熱エネルギー貯蔵装置316内の相変化材料の融点よりも低くなるように調整される。これにより、熱エネルギー貯蔵装置316からの熱が相分離器322内の冷媒によって吸収され、冷却熱エネルギーが熱エネルギー貯蔵装置316内に効果的に貯蔵される。この動作モードは、熱エネルギー貯蔵装置316から熱を同時に抽出しながら、周囲空気がヒートシンクとして作用する二段システムとしてヒートポンプを動作させることができるので、周囲温度が比較的低い場合に特に適用可能である。
【0221】
冷却充填モード(すなわち、モード13)は、冷却が必要ない場合に有利に使用される。動作中、弁V31とV32が閉じられ、それによってヒートポンプが単段システムに変わる。再び、相分離器322内の冷媒の圧力は、冷媒温度が相変化材料の融点未満になるように調整される。したがって、後で使用するために(例えば、モード11の間)、約5℃~10℃の温度で熱エネルギー貯蔵装置316から熱が抽出され、ヒートシンクとして動作する凝縮器314に導かれる。
【0222】
図10及び18に示されるヒートポンプシステム210a、210b、210c、310a、310bは、加熱需要と冷却需要との間にミスマッチがある場合に、加熱及び冷却の複合動作にも適用することができる。この場合、熱エネルギーは熱エネルギー貯蔵装置内に中間温度で貯蔵することができ、システムは必要に応じて生成と需要を一致させることができる。
【0223】
二段ヒートポンプシステムのいずれかの代替の例示的な配置では、図20に示すように、熱エネルギー貯蔵装置を相分離器422内に配置することができる。熱エネルギー貯蔵装置416は、複数の個々の熱エネルギー貯蔵要素(例えば、球又はボール)を含む。エネルギー貯蔵要素のそれぞれは、ケース430内にカプセル化された相変化材料の体積を含む。上述のように、熱エネルギー貯蔵装置216、316とは対照的に、内部熱エネルギー貯蔵装置416は、ポンプ又は伝熱流体回路を含まない。代わりに、複数のエネルギー貯蔵要素の各ケース430は、内部に含まれる相変化材料と相分離器422内に含まれる冷媒との間で熱エネルギーが受動的に(例えば、熱伝導によって)流れることを可能にするように構成される。例えば、ケース430は、金属材料で形成されてもよい。複数のより小さなエネルギー貯蔵要素を提供することによって、これは、相分離器422内の冷媒と接触する相変化材料の表面積を増加させる。
【0224】
「内部的に」構成された熱エネルギー貯蔵装置416は、「外部的に」取り付けられた熱エネルギー貯蔵装置(図10に示される装置216など)よりも小さい容量を有し得ることが理解される。しかしながら、内部的熱エネルギー貯蔵装置416は、相分離器422のフットプリント内にパッケージ化できるので、ヒートポンプシステム内に収容するのがより容易である。さらに、受動内部的熱エネルギー貯蔵装置416は可動部品を持たないため、操作及び修理がより簡単かつ安価になる。
【0225】
ケーススタディ1-二段加熱システム
通常加熱モードと、加熱充填モード及び補助加熱モードの組み合わせとの性能の違いを示すために、市販のシミュレーションソフトウェアから得られたデータに基づいて、ヒートポンプシステムの代表的なシミュレーションを行った。
【0226】
動作条件は次のように決定される:
・外気温度は、1日を通して0℃~10℃の間で変化する。
・凝縮器の出力温度:65℃
・圧縮機の等エントロピー効率:70%
・相変化材料の融解温度:30℃
・蒸発器の接近温度10℃。
・凝縮器の接近温度3℃。
・熱エネルギー貯蔵装置の接近温度3℃。
・冷媒:R134a。
【0227】
以下の分析では、二段ヒートポンプシステムをベンチマークとして使用する。システムは、通常加熱モード(すなわち、モード1)で動作する場合、次の手順を実行する。
【0228】
80.3℃の高温の冷媒蒸気が凝縮器に入り、セントラルヒーティングシステムから水に熱を放出し、凝縮して70℃まで冷却される。セントラルヒーティングシステムからの水は40℃で戻り、凝縮器内で65℃まで加熱される。70℃及び21.28barの高温の液体冷媒は、第1の膨張装置を介して33℃及び8.39barに絞り込まれ、相分離器に入る。蒸気は高圧段の圧縮機によって除去され、液体冷媒はさらに第2の膨張装置によって-20℃及び1.33barまで絞り込まれる。その後、混合物は蒸発器に入り、0℃の周囲空気から熱を吸収し、-10℃まで冷却する。混合物は、-20℃で低圧飽和蒸気に完全に蒸発する。低圧段の圧縮機は、低圧の蒸気を抽出し、相分離器の中間圧力まで圧縮する。圧縮後、過熱蒸気は相分離器内の液体冷媒を通過して泡立ち、飽和蒸気まで冷却される。最初の絞りプロセスで生成された蒸気と一緒に、それは高圧段の圧縮機によって抽出及び圧縮され、新しいサイクルを開始する前に凝縮器の圧力に導かれる。
【0229】
通常加熱モード(すなわち、モード1)シミュレーションのパラメータ及び結果は、次のように要約される:
・外気温度:0℃
・蒸発圧力:1.33bar
・凝縮圧力:21.28bar
・低圧段の圧縮機の消費電力:0.905kW、
・低圧段の圧縮機の質量流量:0.017kg/s
・高圧段の圧縮機の消費電力:0.781kW。
・高圧段の圧縮機の質量流量:0.029kg/s
・65℃での凝縮器からの熱出力:4kW(=14400kJ/h)。
・0℃で外気から取り出される熱:2.314kW(=8330.4kJ/h)。
・通常加熱モード時のシステムのCOPは、4/(0.905+0.781)=2.37である。
【0230】
熱充填モード(すなわち、モード4)のシミュレーションの結果は、次のように要約される。
【0231】
充填モードは、熱需要が低く、日中の外気温度が高い場合(例:10℃)に使用される。このモードでは、高圧段が停止し、低圧段が隔離されて熱エネルギー貯蔵装置が充填される。蒸発器は周囲の空気から2.51kWの熱を抽出し、10℃から0℃に冷却する。相分離器の温度は33℃に保持され、熱エネルギー貯蔵装置内の相変化材料の温度は30℃である。相分離器と熱エネルギー貯蔵装置は、低圧段の凝縮器として効果的に機能する。熱は、熱エネルギー貯蔵装置内に3.25kWの割合で貯蔵される。低圧段の圧縮機は0.73kWを消費するため、ヒートポンプのCOPL4.45である。
【0232】
補助加熱モード(すなわち、モード3)のシミュレーションの結果は、次のように要約される。
【0233】
補助加熱モードの間、高圧段は隔離して動作され、相分離器を介して熱エネルギー貯蔵装置から熱が除去され、昇温されて加熱される。熱エネルギー貯蔵装置に貯蔵された熱は、3℃の接近温度で30℃であると決定されるので、相分離器の温度は27℃に維持される。相分離器と熱エネルギー貯蔵装置は、高圧段階の蒸発器として効果的に機能し、凝縮器で4kWの熱を生成する。高圧段の圧縮機は0.92kWを消費し、熱エネルギー貯蔵装置は30℃で3.08kWを放出する。したがって、隔離された高圧段の計算されたヒートポンプCOPH4.35である。
【0234】
熱充填モードと補助加熱モードの組み合わせを使用してヒートポンプシステム216aを動作させることにより、システムは、周囲温度が1日を通して変化する条件でより効率的に熱を供給することができる。ヒートポンプシステムの高圧段と低圧段のそれぞれが独立して互いに分離して動作できるため、2つの動作モードが可能になる。この効果を実証するために、ヒートポンプシステムの全体的なCOPは、上記で決定されたように、熱充填モードと補助加熱モードに対応するCOP値に基づいて計算できる。
【数1】
【0235】
計算された全体のCOPは2.48で、これは、0℃で空気から直接熱を抽出し、夕方に65℃で熱を生成するベンチマークケースよりも5%高くなる。
【0236】
ケーススタディ2-二段冷蔵システム。
通常冷却モードと、冷却充填モード及び補助冷却モードの組み合わせとの性能の違いを実証するために、市販のシミュレーションソフトウェアから取得したデータに基づいて、ヒートポンプシステムの代表的なシミュレーションを行った。
【0237】
動作条件は次のように決定される:
・外気温度は、1日を通して20℃~35℃の間で変化する。
・蒸発器の入力温度:-25℃
・圧縮機の等エントロピー効率:70%
・相変化材料の融解温度:5℃
・蒸発器の接近温度10℃。
・凝縮器の接近温度10℃。
・熱エネルギー貯蔵装置の接近温度3℃。
・冷媒:R134a。
【0238】
二段ヒートポンプシステム210aは、以下の分析のためのベンチマークとして使用される。通常冷却モード(モード6)で動作する場合、システムは次の手順を実行する。
【0239】
67.2℃の高温の冷媒蒸気が凝縮器に入り、そこで熱を35℃の周囲空気に放出する。55℃及び14.96barの高温の液体冷媒は、第1の膨張装置を介して8℃及び3.87barに絞り込まれ、相分離器に入る。蒸気は高圧段の圧縮機によって除去され、液体冷媒はさらに第2の膨張装置によって-25℃及び1.06barまで絞り込まれる。次に、混合物は蒸発器に入り、冷却負荷から熱を吸収する。混合物は、-25℃で最終的に低圧飽和蒸気に完全に蒸発する。低圧段の圧縮機は、低圧蒸気を抽出し、中間圧力(相分離器の圧力でもある)に圧縮する。圧縮後、過熱蒸気は相分離器内の液体冷媒を通過して泡立ち、飽和蒸気まで冷却される。最初の絞りプロセスで生成された蒸気と一緒に、それは高圧段の圧縮機によって抽出され、凝縮器の圧力まで圧縮される。
【0240】
通常冷却モード(すなわち、モード6)シミュレーションのパラメータ及び結果は、次のように要約される:
・外気温度:35℃
・蒸発圧力:1.06bar
・凝縮圧力:14.96bar
・低圧段の圧縮機の消費電力:0.821kW、
・低圧段の圧縮機の質量流量:0.023g/s
・高圧段の圧縮機の消費電力:1.479kW。
・高圧段の圧縮機の質量流量:0.039g/s
・55℃での凝縮器からの熱出力:6.34kW(=22840kJ/h)。
・-25℃での蒸発器での冷却負荷からの低温抽出:4.04kW(=14560kJ/h)。
・通常加熱モード時のシステムのCOPは、4.04/(0.821+1.479)=1.76である。
【0241】
冷蔵システムを動作させる例示的な方法によれば、周囲温度が低い夜間に、隔離された高圧段を使用して、最初に熱エネルギー貯蔵装置から熱を抽出することができ、したがって、COPは高くなり、枯渇した相変化材料は、翌日、周囲の屋外温度が高くなったときに熱エネルギーを吸収し、それによってシステムのCOPをさらに増加させる。このフレキシブルな運用戦略の潜在的なエネルギー節約を評価するために、夕方には冷却充填モード(すなわち、モード8)でヒートポンプを運転し、翌日は補助冷却モード(すなわち、モード7)でヒートポンプを運転するシミュレーションケースが考えられる。
【0242】
冷却充填モード(すなわち、モード8)のシミュレーションの結果は、次のように要約される:冷却充填モードでは、冷却需要が低く、外気温度も低いため(例:20℃)、高圧段は隔離され、熱エネルギー貯蔵装置から熱を抽出する。熱エネルギー貯蔵装置は5℃で、充填と放出の温度差は3℃である。したがって、相分離器の温度は2℃に保持される。相分離器と熱エネルギー貯蔵装置は、高圧段の蒸発器として機能する。ヒートポンプシステムは4.627kWの冷却能力を発揮し、熱エネルギー貯蔵装置に蓄えられ、高圧段の圧縮機は1.128kWを消費する。計算された冷却COPHは、隔離された高圧段で4.1である。
【0243】
補助冷却モード(すなわち、モード7)シミュレーションの結果は次のように要約される:熱エネルギー貯蔵装置は、日中高温になる外気の代わりにヒートシンクとして使用される。このシミュレーションでは、熱エネルギー貯蔵装置に貯蔵された冷却熱エネルギーは5℃で、熱伝達の接近温度は3℃であると想定され、相分離器は8℃に維持される。相分離器と熱エネルギー貯蔵装置は、4kWの速度で冷却を生成する低圧段の凝縮器として機能する。低圧段の圧縮機は0.87kWを消費する。したがって、低圧段の冷却COPLの計算値は4.6である。
【0244】
冷却システムの2つの隔離された段の計算されたCOP、この切り離された交互の動作戦略のエネルギーフローに基づいて、この動作の全体的なCOPは、次のように計算できる:
【数2】
【0245】
計算された全体的なCOPは1.94で、日中に-25℃で熱を直接抽出し、35℃で熱を空気に排出するベンチマークケースよりも10.5%高くなる。
【0246】
図1図20を参照して本明細書に記載されるいくつかの例示的なヒートポンプシステムは、類似の構造及び/又は機能を有する1つ又は複数の特徴を共有する。さらに、例示的なヒートポンプシステムのそれぞれは、それらが説明及び図示されている特定の構成に限定されないことが理解される。例えば、例示的なヒートポンプシステムの各々は、本開示の範囲から逸脱することなく、追加の機能を組み込むか、又は他のシステム(例えば、建物のヒーティングシステム)内に組み込むことができる。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、例示的なヒートポンプシステムの特徴のいずれか1つを他の例示的なヒートポンプシステムの特徴のいずれかと組み合わせることができることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】