IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

特表2023-543522ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット
<>
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図1
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図2
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図3
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図4
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図5
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図6
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図7
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図8
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図9
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図10
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図11
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図12
  • 特表-ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ワークピースを製造するための3D印刷システム及び方法、並びにワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセット
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/245 20170101AFI20231006BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231006BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20231006BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20231006BHJP
【FI】
B29C64/245
B33Y30/00
B29C64/393
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520000
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 IB2021058458
(87)【国際公開番号】W WO2022069987
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20199772.3
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】コルテン,マルテ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,アンドレアス ゲー.
(72)【発明者】
【氏名】キルヒナー,バスティアン ペー.
(72)【発明者】
【氏名】ライア,ジョアッキーノ
(72)【発明者】
【氏名】オベルペルティンガー,ダニエル デー.
(72)【発明者】
【氏名】リヒター,クリスティアン アー.
(72)【発明者】
【氏名】フリードリッヒ,アニア
(72)【発明者】
【氏名】レイビー,リチャード イー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレース,ディートマール
(72)【発明者】
【氏名】ペール,ラルフ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,トーマス カー.
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AJ06
4F213WA25
4F213WA97
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL55
4F213WL67
4F213WL73
4F213WL87
4F213WL96
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2つのワークピースを製造するための3D印刷デバイスを備える3D印刷システムに関する。本発明はまた、3D印刷システムを用いて少なくとも2つのワークピースを製造する方法にも関する。更に、本発明は、ワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのワークピースを製造するための3D印刷デバイスを備える3D印刷システムであって、前記3D印刷デバイスが、ビルドプレートを備え、前記3D印刷システムが、少なくとも2つのワークピースホルダを更に備え、各ワークピースホルダは、少なくとも1つのワークピースを積層造形することができる製造面と、前記ワークピースホルダを前記ビルドプレートに着脱可能に取り付けるための取付手段とを有し、前記取付手段が、前記ビルドプレートに着脱可能に取り付けられ、前記ワークピースホルダを前記ビルドプレートに着脱可能に取り付けるために前記ワークピースホルダの少なくとも一部分を着脱可能に受け入れるように構成されたアダプタを含み、前記アダプタが、前記ワークピースホルダの少なくとも一部分を摺動可能に受け入れるように構成された少なくとも1つの凹部を含む、3D印刷システム。
【請求項2】
各ワークピースホルダ及び/又は前記アダプタ及び/又は前記ビルドプレートが、その表面から延びている少なくとも1つの突出部を含み、各ワークピースホルダ及び/又は前記アダプタ及び/又は前記ビルドプレートが、前記少なくとも1つの突出部を受け入れて、各ワークピースホルダを前記ビルドプレートに着脱可能に取り付けるように構成された少なくとも1つの開口部を含み、好ましくは、前記突出部が、前記突出部の周囲の少なくとも一部分の周りに形成された少なくとも1つの凹部を含み、前記開口部が、前記突出部が前記開口部に受け入れられたときに前記凹部に係合して前記ワークピースホルダを保持するように構成された少なくとも1つの戻り止めを含む、請求項1に記載の3D印刷システム。
【請求項3】
前記ワークピースホルダ、前記アダプタ、及び前記ビルドプレートのうちの少なくとも1つが、前記ワークピースホルダを前記ビルドプレートに着脱可能に取り付けるための少なくとも1つの磁気要素を備え、好ましくは、前記ビルドプレートが、前記ビルドプレート上にグリッドパターンで配置された複数の磁気要素を備える、請求項1又は2に記載の3D印刷システム。
【請求項4】
前記ワークピースホルダが、連続的なレール形状のバーであり、各バーは、好ましくは実質的にI字形状又はL字形状の断面を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の3D印刷システム。
【請求項5】
前記アダプタが、複数の凹部を含み、各凹部は、前記アダプタの端面から前記アダプタの少なくとも一部分を通って延びており、前記複数の凹部が、互いに平行に配置され、各凹部は、前記少なくとも2つのワークピースホルダのうちの少なくとも1つの一部分を摺動可能に受け入れるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の3D印刷システム。
【請求項6】
前記少なくとも2つのワークピースホルダのうちの少なくとも1つの少なくとも前記製造面が、セラミック材料、好ましくはジルコニアを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の3D印刷システム。
【請求項7】
製造面にワークピースが取り付けられている前記ワークピースホルダを、前記ビルドプレートに平行に摺動させることによって前記アダプタから取り外すように構成された交換ツールを更に備え、好ましくは、前記交換ツールが、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダを前記アダプタ内に摺動させるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の3D印刷システム。
【請求項8】
硬化デバイス、マーキングデバイス、表面仕上げデバイス、熱成形デバイス、及び前記ワークピースから余分な材料を除去するためのデバイスのうちの少なくともいずれかを含む後処理デバイスを更に備え、前記ワークピースが積層造形された同じワークピースホルダに前記ワークピースが取り付けられた状態で個別の前記後処理デバイスによって前記ワークピースを後処理することができるように、前記少なくとも2つのワークピースホルダ及び前記個別の後処理デバイスが構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の3D印刷システム。
【請求項9】
製造対象の前記ワークピースに基づいて、異なるサイズ及び形状を有する複数のワークピースホルダから少なくとも1つのワークピースホルダを選択するように構成されたコントローラを更に備え、好ましくは、前記ワークピースホルダ上で必要最小限の面積を占有するように、前記コントローラが、前記ワークピースの外縁と前記ワークピースホルダの外縁との間の達成可能な最小距離に基づいて、前記複数のワークピースホルダから前記少なくとも1つのワークピースホルダを選択するように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の3D印刷システム。
【請求項10】
前記ワークピースホルダをハンドリングし、前記ワークピースホルダを前記ビルドプレートに取り付け、好ましくは更に前記ワークピースホルダを後処理デバイスに移動させるように構成された少なくとも1つのハンドリングロボットを更に備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の3D印刷システム。
【請求項11】
少なくとも1つのワークピースを製造するための3D印刷デバイスを備える3D印刷システムであって、前記3D印刷デバイスが、ビルドプレートを備え、前記3D印刷システムが、少なくとも1つのワークピースを積層造形することができる製造面を有する少なくとも1つのワークピースホルダと、前記ワークピースホルダを前記ビルドプレートに着脱可能に取り付けるための取付手段とを更に備え、前記取付手段が、前記ビルドプレートに着脱可能に取り付けられ、前記ワークピースホルダを前記ビルドプレートに着脱可能に取り付けるために前記ワークピースホルダの少なくとも一部分を着脱可能に受け入れるように構成されたアダプタを含み、前記アダプタが、前記ワークピースホルダの少なくとも一部分を摺動可能に受け入れるように構成された少なくとも1つの凹部を含み、前記ワークピースホルダが、連続的なレール形状のバーであり、各バーは、好ましくは実質的にI字形状又はL字形状の断面を有し、前記3D印刷システムが、前記製造面にワークピースが取り付けられている前記ワークピースホルダを、前記ビルドプレートに本質的に平行に摺動させることによって前記アダプタから取り外すように構成された交換ツールを更に備え、前記交換ツールが、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダを前記アダプタ内に摺動させるように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の3D印刷システム。
【請求項12】
ワークピースホルダを、3D印刷デバイス、好ましくは請求項1~11のいずれか一項に記載の3D印刷システムに取り付けるためのアダプタセットであって、
前記3D印刷デバイスのビルドプレートに取り付けられるように構成された少なくとも1つのアダプタと、
少なくとも2つのワークピースホルダであって、各ワークピースホルダは、前記アダプタによって着脱可能に受け入れられるように構成されており、各ワークピースホルダは、少なくとも1つのワークピースを積層造形することができる製造面を提供する、少なくとも2つのワークピースホルダと、を備える、アダプタセット。
【請求項13】
前記アダプタが、前記ワークピースホルダの少なくとも一部分を受け入れるように構成された少なくとも1つの凹部を含み、前記凹部が、前記アダプタの端面から前記アダプタの少なくとも一部分を通って延びている、請求項12に記載のアダプタセット。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の3D印刷システムを用いて少なくとも2つのワークピースを製造する方法であって、
a)前記少なくとも2つのワークピースホルダの少なくとも2つの製造面上に硬化性材料の複数の層を連続的に硬化させて、各製造面上に少なくとも1つのワークピースを形成するステップと、
b)前記ワークピースホルダに力を加えることによって、好ましくは、前記ビルドプレートに取り付けられたアダプタの端面から延びている凹部に受け入れられた前記ワークピースホルダの一部分を前記凹部に沿って前記凹部から出るように摺動させることによって、前記製造面に前記ワークピースが取り付けられた状態の前記少なくとも2つのワークピースホルダを前記3D印刷デバイスの前記ビルドプレートから取り外すステップと、を含む、方法。
【請求項15】
ステップb)の後に、
c)前記製造面に前記ワークピースが取り付けられた状態の前記ワークピースホルダを、前記ワークピースからの余分な材料の除去、硬化、表面仕上げ、及びマーキングのうちの少なくともいずれかを含む前記ワークピースの後処理段階に移動させるステップと、
d)ステップa)において前記ワークピースが形成された同じワークピースホルダの前記製造面に前記ワークピースが取り付けられた状態で、前記ワークピースからの余分な材料の除去、硬化、表面仕上げ、及びマーキングのうちの少なくともいずれかによって、前記ワークピースを後処理するステップと、を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近年、ワークピースを製造するための3D印刷システムによる積層造形の使用がより普及してきている。したがって、多くの産業部門は、3D印刷システムを使用して、日常家庭用品から医療用途の製品などのより高機能な製品まで広範囲に及ぶ製品を製造している。したがって、例えば、3D印刷システムは、歯科用クラウン及びブリッジなどの歯科用オブジェクト、並びにアライナ及びスプリングリテーナなどの歯科矯正装置を製造するために使用されることも多い。
【0002】
1つの利用可能な3D印刷システムは、熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling、FDM)と呼ばれ、プラスチックを軟化させる熱押出機を通して熱可塑性フィラメントを供給する。次に、軟化したプラスチックをプリントヘッドによって層状に配置して、3D印刷されたオブジェクトを作成する。
【0003】
より高い表面品質は、ステレオリソグラフィ(Stereolithography Apparatus、SLA)システムを含む樹脂ベースの3D印刷システムによって達成することができる。FDMシステムと同様に、SLAシステムは、積層法を使用して、材料をワークピースに層ごとに付加することによって物理オブジェクトを製造する。
【0004】
SLAシステムは、光モジュールからの光パターンを硬化性樹脂の層上に投影することによって、通常は液体樹脂である感光性ポリマー材料を硬化させるという概念に基づいている。光モジュールは、レーザ又はデジタルプロジェクタとすることができ、デジタルプロジェクタを使用するシステムは、多くの場合デジタル光処理(Digital Light Processing、DLP)システムと呼ばれる。
【0005】
マルチジェット印刷(Multijet Printing、MJP)は、ワークピースを製造するために使用される更なる3D印刷技術である。MJPシステムは、SLAと同様に、光(多くの場合UV光)を使用してフォトポリマーを架橋する。ただし、レーザを走査して層を硬化させるのではなく、プリンタヘッドが、フォトポリマーの液滴を第1の層の形状に噴射する。光源は、ほとんどの場合プリンタヘッドに取り付けられており、ポリマーを重合又は硬化させ、その層の形状を形成する。次に、ビルドプラットフォームがワークピースを移動させ、より多くの材料が前の層の上に堆積される。このプロセスは、その部品の印刷が完了するまで繰り返される。
【0006】
上述した3D印刷システムなどの3D印刷システムは、典型的には、ワークピースが印刷されるビルド面を有するビルドプレートを備える。ワークピースがビルドプレートのビルド面上に印刷されると、ワークピースは、典型的には、取り外しツールを用いて、例えばスパチュラを用いて、印刷されたワークピースをビルドプレートのビルド面から削り取ることによって、ビルドプレートから取り外される。したがって、取り外しツールは、典型的には、ユーザによって手動で取り扱われる。
【0007】
それによって、取り外しツールの先端は、典型的には、ビルドプレートのビルド面上に配置され、印刷されたワークピースに向かってビルド面に沿って取り外しツールに力が加えられて、ビルド面からワークピースを削り取る。
【0008】
ワークピースは、ビルドプレートから取り外されると、ほとんどの場合、ワークピースの製造プロセスを完了するために、清浄化段階及び/又は硬化段階及び/又は表面仕上げ段階などの後処理段階に移動される。したがって、ワークピースは、ビルドプレートからのワークピース取り外し時点では硬化されていないので、ワークピースは、ビルドプレートからの取り外し時に完全には固まっていないことが多い。
【0009】
したがって、例えば上述したように、取り外しツールによってビルドプレートからワークピースを機械的に取り外すことは、取り外しツールによってワークピースに加えられる力によりワークピースへの損傷につながる可能性がある。損傷としては、引っ掻き、擦れ、割れ、変形などが挙げられ得る。取り外し時に樹脂硬化が不完全な場合、ワークピースは、より軟らかく、曲げ、カール、又はねじれなどによってより容易に変形し得ることに留意されたい。これらの歪みは軽微な場合もあり、ワークピースをより完全に硬化させる後続の処理ステップを通して気付かれないこともある。完全に硬化すると、歪みは永久的になる。
【0010】
更に、取り外しプロセスは、冗長で時間のかかるプロセスであり、製造プロセスにおいてしばしば手作業の介入を必要とし、したがって生産性が制限される。
【0011】
それに加え、ビルドプレートからのワークピース取り外しプロセスでは、ビルドプレートからワークピースの材料の全てが完全に除去されないことが多く、したがって、ビルドプレートのビルド面上に残留材料が残る。これにより、ワークピースを取り外した後、ビルドプレート上に更なるワークピースが印刷できるようになる前に、ビルドプレートから残留印刷材料を除去することが必要となる。これは、製造プロセスへの更なる手作業の介入を必要とし、生産性が更に制限される。更に、ビルドプレート上の残留材料及び/又は洗浄流体は、ワークピースを製造するのに使用する樹脂材料の汚染を引き起こす可能性がある。
【0012】
米国特許出願公開第2020/238615号(Staalら)は、使用中に少なくとも1つの製品を保持又は支持するように構成されたモジュール式ビルドプラットフォームを備える積層造形デバイスに関し、ビルドプラットフォームは、複数の分離可能なモジュール式プラットフォームユニットのうちの少なくとも1つを備える。
【0013】
米国特許出願公開第2017/266890号(Volk)は、ビルドチャンバと、ビルドチャンバに調整可能に結合されたビルドプラットフォームとを有する積層造形デバイスについて記載している。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的は、3D印刷プロセスの生産性及び効率を向上させる3D印刷システムを提供することである。
【0015】
この目的は、少なくとも2つのワークピースを製造するための3D印刷デバイスを備える3D印刷システムによって達成される。3D印刷システムは、製造対象ワークピースが表面上に付加的に印刷される任意の印刷システムとして構成することができる。好ましくは、3D印刷システムは、冒頭に説明したように、SLA、MJP、又はFDMシステムとして構成することができる。3D印刷デバイスは、ビルドプレートを備える。ビルドプレートは、典型的には、従来技術から既知の従来の3D印刷システムにおいてワークピースが付加的に印刷される印刷面を提供する。
【0016】
ワークピースは、好ましくは、患者の口腔内で使用するための歯科用修復物のための歯科用オブジェクト、例えば、歯科用クラウン及び/又は歯科用ブリッジであり得る。ワークピースはまた、スプリングリテーナ及びアライナなどの歯科矯正装置であってもよい。更に、ワークピースは、患者の歯及び/又は上顎及び/又は下顎の模型であってもよく、例えば、その歯及び/又は上顎及び/又は下顎の所望の状態の模型として機能し、3D印刷システム又は他の製造手段によって、例えば、スプリント、ナイトガード、リテーナ及び他の歯科矯正装置を製造する補助となる。
【0017】
3D印刷システム及び3D印刷デバイスは、少なくとも2つのワークピースを同時に又は順次製造するように構成することができる。少なくとも2つのワークピースを順次製造する場合、少なくとも2つのワークピースは、製造プロセスに介入することなく1つの製造プロセスで製造することができる。したがって、1つのワークピースを製造することができ、次いで、更なるワークピースを製造することができ、その後、両方のワークピースを1つ以上の後処理段階に移動させることができる。
【0018】
3D印刷システムは、少なくとも2つのワークピースホルダを更に備える。各ワークピースホルダは、少なくとも1つのワークピースを積層造形することができる製造面を有する。各ワークピースホルダはまた、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるための取付手段を有する。
【0019】
このように、ビルドプレートのビルド面上にワークピースを印刷する代わりに、3D印刷システムは、別々のワークピースホルダ、すなわち少なくとも2つのワークピースホルダを備え、これらのワークピースホルダは、ワークピースを印刷することができる独自の製造面を有する。
【0020】
ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるための取付手段をワークピースホルダに設けることによって、ワークピースホルダに、押出力、すなわち、摺動運動、又は引張力を加えることなどにより、ワークピースホルダを、ビルドプレートから容易に取り外すことができ、次いで、3D印刷システムから例えば1つ以上の後処理段階に移動させることができる。
【0021】
ほとんどの場合、ワークピースに対して複数の後処理ステップを実行することができる。ワークピースが印刷された後、例えばワークピースを動かすことによって、ワークピースを、ワークピースから余分な材料を除去する段階に移動させ、それによって、ワークピースの表面上の望ましくない付着した余分な材料を除去するために、余分な材料に質量慣性力を発生させることができる。あるいは、余分な材料を除去するために、溶媒及び/又はエアジェット及び/又は研磨材料などの材料除去媒体をワークピースに適用してもよい。
【0022】
次いで、ワークピースは、例えばハンドリングロボットによって硬化段階に移動されることができ、硬化段階において、ワークピースは、硬化光、好ましくはUV光に曝露され、硬化光は、ワークピースの材料をより強くより堅くするために材料を硬化させることができる。
【0023】
次に、ワークピースを表面仕上げ段階に移動させることができ、表面仕上げ段階において、ワークピースの表面は、ワークピースをサンドブラストすることなどによって、必要な程度の表面品質に仕上げられる。
【0024】
更に、後処理は、個別のワークピースを、ポリマー及び/又は金属酸化物層などの材料でコーティングすることを含み、表面仕上げを改善する、水分を密封する、及び/又は抗菌シールとして作用させることができる。コーティングは、例えば化学蒸着法によって実行することができる。
【0025】
上述の後処理ステップは、単に例示的なものとして理解されるべきである。このように、ワークピースは、更なる後処理段階に、又は上述したものよりも少数の後処理段階に、移動させることができる。更に、ワークピースは、上述したものとは異なる順序で上述した後処理ステップに移動することができる。
【0026】
従来技術から既知の3D印刷システムでは、ワークピースは、後処理の前にビルドプレートから取り外され、その後、それぞれの後処理段階に移動される。したがって、ほとんどの場合、各後処理段階は、個別の後処理ステップ中にワークピースを定位置に固定するように構成された特有のインターフェースを備える。
【0027】
しかしながら、本発明の場合、ワークピースは、各印刷プロセスの後に、スパチュラを用いてビルドプレートのビルド面からワークピースを削り取ることなどによって、ビルドプレートのビルド面から取り外される必要はない。
【0028】
1つには、これにより、技術者などのユーザが一般にビルドプレートからワークピースを慎重に取り外し、その後ビルドプレートを清浄化する必要がある従来技術のシステムと比較して、3D印刷デバイスのダウンタイムが短縮される。ほとんどのワークピースは、この段階では硬化されていないので、ワークピース又はビルドプレートを損傷することなくビルドプレートからワークピースを取り外すことは、面倒で時間がかかる可能性がある。したがって、本発明は、その上にワークピースが印刷され、その上でワークピースを例えば後処理段階に移動することができる共通のインターフェースを使用することを提案しているので、製造の生産性及び効率を高めるために、ダウンタイムをなくすか又は少なくとも短縮することによって、ワークピースの製造速度を向上させることが可能である。
【0029】
このように、ワークピースを3D印刷システムに取り付けたり3D印刷システムから取り外したりするための化学結合インターフェースを、本開示において提案されるような機械的に取り付け可能かつ取り外し可能なインターフェースに置き換えることにより、ビルドプレートからのワークピースの迅速かつ容易な取り外しを可能にするより簡便な取り外し機構を提供する。
【0030】
更に、熱成形を介してトレイ又はクリアトレイアライナを作製するように構成された製造プロセスなど、一部の製造プロセスでは、ワークピースをそれらのそれぞれのワークピースホルダから分離することを、本明細書に開示される3D印刷システムにおいては完全に省略することができる。このように、例えば、低コストのワークピースホルダを製造することによりワークピースホルダのコストが無視できる場合、製造コストを更に大幅に低減することができる。
【0031】
更に、ビルドプレート上の残留材料をなくすか又は少なくとも低減することによって、例えば残留材料及び/又は洗浄材料による、ワークピースを製造するために使用される樹脂の汚染をなくすか又は少なくとも低減することができる。
【0032】
更に、ワークピースが、ビルドプレートからワークピースを取り外すための削り取り力などの物理的な力に晒されないので、ワークピースへの損傷も回避できるか又は少なくとも低減することができる。ワークピースは、全製造処理が完了した後、すなわち、硬化などの後処理の後、ワークピースホルダから取り外す必要がある場合がある。しかしながら、ワークピースは、後処理後には、具体的には硬化後には、より頑丈な状態及び/又は硬化した状態にあるので、後処理後にワークピースに加えられる物理的な力は、冒頭に説明した取り外しプロセスと比較して、ワークピースへの損傷を全く与えないか、又は少なくとも大幅に低減させることができる。
【0033】
したがって、製造されたワークピースの品質を向上させることができ、かつ/又はワークピースへの損傷を修復するための修復プロセスをなくすか若しくは少なくとも低減することができる。
【0034】
更に、ワークピースは様々に異なるワークピースホルダに配置することができるので、製造対象ワークピースに従って製造プロセスを個別化することができる。したがって、例えば、複数のワークピースをワークピースホルダに印刷した後、ワークピースのうちのいくらかが特定の後処理ステップを必要とする一方で、他のワークピース別の後処理ステップを必要とする場合がある。このように、ワークピースが、ワークピースの要件に従ってそれぞれのワークピースホルダ上で様々に異なる後処理段階に移動されることができるように、製造プロセスを柔軟に構成することができる。
【0035】
好ましくは、取付手段は、ビルドプレートに着脱可能に取り付けられ、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるためにワークピースホルダの少なくとも一部分を着脱可能に受け入れるように構成されたアダプタ含むことができる。
【0036】
このように、アダプタは、ワークピースホルダとビルドプレートとの間にインターフェースを提供することによって、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付ける補助となり得る。これにより、例えば、ワークピースホルダを既存の3D印刷デバイスの従来のビルドプレートに、ビルドプレートを変更することなく、又は最小限に変更するだけで、取り付けることが可能になる。
【0037】
更に、アダプタは、複数のワークピースホルダに対してビルドプレートへの共通の機械的接続インターフェースを提供することができ、したがって、ビルドプレートからアダプタを取り外すだけで、複数のワークピースをビルドプレートから取り外すことを可能にする。したがって、ひとつひとつのワークピースホルダを個別にビルドプレートから取り外すのではなく、アダプタを取り外すことによって、全て又は少なくとも複数のワークピースを担持したアダプタをビルドプレートから取り外すことができる。これにより、3D印刷デバイスのダウンタイムが更に短縮されるため、効率及び生産性が向上する。
【0038】
アダプタは、製造対象ワークピースに面するビルドプレートの表面、すなわち、従来の3D印刷システムにおいてワークピースが通常印刷されるビルドプレートの表面の大部分を覆うサイズにすることができる。アダプタは、好ましくは、ビルドプレートの表面の少なくとも40%、より好ましくはビルドプレートの表面の少なくとも50%、より好ましくはビルドプレートの表面の少なくとも60%、より好ましくはビルドプレートの表面の少なくとも70%、最も好ましくはビルドプレートの表面の少なくとも50%を覆うサイズにすることができる。好ましくは、アダプタは実質的に矩形形状とすることができる。しかしながら、他の多角形形状も実現可能である。
【0039】
好ましくは、ワークピースホルダの一部分はアダプタに受け入れられることができる一方で、ワークピースホルダの別の一部分は、ワークピースを硬化させるための光源に面するビルドプレートの表面を越えて延びることができる。
【0040】
好ましくは、アダプタは、ワークピースホルダの少なくとも一部分を摺動可能に受け入れるように構成された少なくとも1つの凹部を含むことができる。
【0041】
ワークピースホルダのその一部分は、ワークピースホルダを少なくとも1つの凹部内に実質的に並進移動させることによって、凹部内に摺動可能に受け入れられることができる。しかしながら、「摺動可能に受け入れる」という用語は、ワークピースホルダが凹部に受け入れられる際にワークピースホルダを実質的に回転させて凹部内に入れることによってワークピースホルダを移動させることも包含し得る。更に、バヨネットキャッチの場合のように、凹部内にワークピースホルダを受け入れるための並進運動と回転運動とを含む組み合わせ運動も、「摺動可能に受け入れる」という用語に含まれる。
【0042】
あるいは、ワークピースホルダは、ワークピースホルダのそれぞれの少なくとも一部分をアダプタの少なくとも一部分にねじ込むことによって、アダプタに取り付けられてもよい。この目的で、好ましくは、アダプタは、ワークピースホルダのそれぞれの一部分の上又は中に配置されたねじ山部と係合するように構成されたねじ山部を備えることができる。好ましくは、ワークピースホルダは、それぞれ雄ねじ山を備えることができ、アダプタは、ワークピースホルダの雄ねじ山に係合するように構成された対応する雌ねじ山を備えることができる。あるいは、ワークピースホルダは、それぞれ雌ねじ山を備えることができ、アダプタは、ワークピースホルダの雌ねじ山に係合するように構成された対応する雄ねじ山を備えることができる。
【0043】
凹部は、ワークピースホルダとアダプタとの間の接続部を提供するために、好ましくはL形状又はT形状のスロットとすることができる。
【0044】
ワークピースホルダの一部分を凹部内に固定しつつ、例えばワークピースホルダを位置決めするべく又はアダプタから取り外すべくワークピースホルダが凹部に沿って摺動することを可能にするために、凹部は、プレス嵌め、好ましくは、中間嵌めなどの軽微なプレス嵌めをもたらすように構成することもできる。
【0045】
好ましくは、凹部は、アダプタの端面からアダプタの少なくとも一部分を通って延びることができる。したがって、例えば、凹部に受け入れられるワークピースホルダの部分は、アダプタの端面において凹部に摺動させて、凹部内のある位置まで入れることができる。好ましくは、凹部は、アダプタの第1の端面から、第1の端面の反対側にあるアダプタの第2の端面まで延びることができる。したがって、ワークピースホルダは、第1の端面から摺動させて凹部に入れることができ、第2の端面から凹部から取り外すことができる。これにより、ワークピースホルダの効率的かつ迅速な装填及び取り外しプロセスが可能になる。
【0046】
好ましくは、各ワークピースホルダは、アダプタの凹部に受け入れられるように構成された受入部と、製造面を画定している製造部と、受入部が凹部に受け入れられたときに凹部から出るように延び、受入部を凹部の外に配置された製造部に接続するように構成された接続部と、を含むことができる。
【0047】
したがって、製造面を画定している製造部は、硬化性材料がビルドプレート及び/又はアダプタに付着するのを防止するために、画定された距離で凹部から出るように延びていてもよい。受入部、製造部、及び接続部は、1つの材料から作製された1つの構成要素として構成することができる。しかしながら、受入部、製造部、及び接続部はまた、別々の部品であってもよく、任意選択で、別々の材料で作製されてもよく、例えば、それらの部分のそれぞれの間に形状嵌合及び/又は摩擦接続及び/又は材料結合を提供することによって互いに接続されてもよい。
【0048】
ワークピースホルダ、したがってそのワークピースホルダの部分のうちの少なくともいくらかは、積層造形することもできる。したがって、ワークピースホルダは、低コストの使い捨て部品として製造することができる。部分のうちのいくらかは、非積層造形することができ、例えば、上述したような接続手段によって、積層造形された部分に接続することができる。
【0049】
好ましくは、少なくとも1つのワークピースホルダの第1の部分は、そのワークピースホルダの第2の部分に対して揺動可能及び/又は回転可能であり得る。
【0050】
好ましくは、製造部は、受入部に対して揺動可能及び/又は回転可能であり得る。
【0051】
このように、例えば、ワークピースに向けられる硬化光の方向に対する製造面の角度を調整するために、製造部を、受入部に対して揺動及び/又は回転させることができる。これは、製造対象ワークピースへの硬化光のアクセス可能性を増加させることによって、製造プロセスの柔軟性を向上させることができる。
【0052】
好ましくは、各ワークピースホルダ及び/又はアダプタ及び/又はビルドプレートは、その表面から延びている少なくとも1つの突出部を含むことができ、各ワークピースホルダ及び/又はアダプタ及び/又はビルドプレートは、少なくとも1つの突出部を受け入れて、各ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるように構成された少なくとも1つの開口部を含むことができる。
【0053】
ワークピースホルダの製造面上にワークピースを印刷するために、突出部と開口部を用いて、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付けることができる。ワークピースが製造面上に印刷されると、印刷されたワークピースを含むワークピースホルダは、例えばワークピースホルダ及び印刷されたワークピースを後処理段階に移動させるために、摩擦力及び/又は磁力を上回るための例えば引張力を用いて、ビルドプレートから取り外すことができる。3D印刷システムが上述のアダプタを含む場合、ワークピースホルダとビルドプレートとの間に配置されたアダプタからワークピースホルダを取り外すことによって、ワークピースホルダをビルドプレートから取り外すことができる。あるいは、ビルドプレートからアダプタ全体を取り外し、それによってワークピースホルダも取り外すことによって、ワークピースホルダをビルドプレートから取り外してもよい。
【0054】
好ましくは、突出部は、開口部に受け入れることができる円筒形ダウエルピンとすることができる。好ましくは、突出部及び開口部は、ワークピースホルダとビルドプレートとの間に固定手段を提供するためにプレス嵌めを形成することができる。あるいは、ダウエルピン又は少なくともその一部分は、純粋な円筒形ではなく、円錐形であってもよく、又は抜け勾配を組み込んでいてもよい。追加的又は任意選択的に、磁気接続力を提供するために磁気要素を設けることができる。
【0055】
「磁性要素」は、磁性になることが可能な、又は磁性であることが可能な要素である。磁性要素は、磁性を帯びると磁場を生成する。例としては、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、及びアルニコ、サマリウム-コバルト又はネオジム-鉄-ホウ素磁石などの磁性アロイが挙げられる。磁気要素は、永久磁石及び電磁石を含む。磁気接続力を確保するために、磁気要素は、典型的には、磁気要素の磁気接続力が及ぶ磁気対応物を必要とする。
【0056】
磁気要素は、ワークピースホルダ、アダプタ、又はビルドプレート内に個別に存在するか、あるいはワークピースホルダとアダプタ、又はワークピースホルダとビルドプレート、又はビルドプレートとアダプタ内に存在することができる。好ましくは、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付けるために、摩擦嵌め及び磁力を提供することができる。
【0057】
好ましくは、突出部は、突出部の周囲の少なくとも一部分の周りに形成された少なくとも1つの凹部を含むことができる。開口部は、突出部が開口部に受け入れられたときに凹部に係合してワークピースホルダを保持するように構成された少なくとも1つの戻り止めを更に含むことができる。
【0058】
したがって、戻り止めは、ワークピースホルダを定位置にロックするためのロック手段を提供することができる。戻り止めはまた、ワークピースホルダが所定の位置に適切にロックされたという肯定的な位置合わせを、音又は触覚フィードバックなどによって、ユーザ又はハンドリングロボットに提供することができる。これにより、ワークピースホルダ、特にその製造面が正しい位置にあることを確実にすることができる。したがって、これにより、製造対象ワークピースの高い印刷品質を達成するために、ワークピースホルダがビルドプレートに取り付けられると、ワークピースホルダ同士の製造面が実質的に1つの平面内に配置されることを、例えば取り付け位置合わせデバイスによって確実にすることができる。
【0059】
戻り止めは、好ましくは、突出部の長手方向軸に実質的に垂直な方向に撓み可能であることが好ましい。代替的又は追加的に、突出部はまた、好ましくは突出部の長手方向軸に実質的に垂直な方向に撓み可能であってもよい
好ましくは、凹部の周囲に配置された複数の戻り止めを設けることができる。
【0060】
好ましくは、ワークピースホルダ及び/又はアダプタ及び/又はビルドプレートは、ワークピースホルダ、特にその製造面が、実質的にビルドプレート上の所定の位置になるように、ワークピースホルダの十分な取り付け及び位置決めを識別するように構成された少なくとも1つの位置合わせセンサを備えることができる。例えば、位置合わせセンサは、ワークピースホルダ及び/又はアダプタ及び/又はビルドプレートの開口部に配置されたスイッチ又は光電バリアとすることができる。代替的又は追加的に、位置合わせセンサは、アダプタ及びビルドプレートの外側に、ワークピースホルダから離して配置してもよい。この場合、位置合わせセンサは、ワークピースホルダ同士が実質的に1つの平面内で所定の位置に配置されているかどうかを検出するように構成された、光電バリアなどの光学要素とすることができる。
【0061】
代替的に又は追加的に、3D印刷システムは、RFIDリーダなどのリーダを備えてもよく、ワークピースホルダはそれぞれ、RFIDタグなどの少なくとも1つの可読タグを備えてもよい。したがって、例えば、RFIDリーダは、個別のRFIDタグの検出を介してワークピースホルダの存在を検出し、ワークピースホルダの十分な取り付け及び位置決めを識別することができる。
【0062】
位置合わせセンサは、ワークピースホルダが所定の値及び/又は公差に従って位置決めされていない場合に警告を発するように構成することができる。
【0063】
好ましくは、ワークピースホルダ及び印刷されたワークピースを移動させるために、ハンドリングロボットを設けることができる。ハンドリングロボットは、好ましくは、ワークピースホルダをビルドプレートから取り外すためにワークピースホルダに引張力などの力を加えるべく、例えばワークピースホルダの縁部を把持することによってワークピースホルダを把持するように構成することができる。あるいは、ワークピースホルダは、ユーザによって手動で移動されてもよい。
【0064】
更に、ワークピースホルダは、1つ以上の更なる突出部又は開口部などである取り外し結合手段を含むことができ、この突出部又は開口部は、ワークピースホルダの表面から又は表面内に延びており、好ましくは、ハンドリングロボット又は手動係合ツールなどの他の取り外しツールが結合するために、製造面から及び/又は製造面に実質的に垂直なワークピースホルダの側面から延びている。このように、取り外し結合手段は、ハンドリングロボットが、例えば摩擦嵌め又は形状嵌めによってワークピースホルダに結合し、ワークピースホルダをビルドプレートから取り外すために引張力などの力をワークピースホルダに加え、好ましくはワークピースホルダ及び印刷されたワークピースを後処理段階に移動させるための結合手段を提供することができる。
【0065】
取り外し結合手段は、好ましくは、3D印刷システムによって、ワークピースホルダ上に、好ましくはワークピースの製造プロセス中に印刷された1つ以上の突出部などの構造物とすることができる。
【0066】
取り外し結合手段はまた、ワークピースホルダをハンドリングロボットと結合するために、電磁石又は永久磁石などの磁気要素を備えることができる。更に、ハンドリングロボットは磁気要素を含むことができ、ワークピースホルダは、ワークピースホルダをハンドリングロボットに結合するために鉄系材料を含むことができる。
【0067】
好ましくは、ワークピースホルダ、アダプタ、及びビルドプレートのうちの少なくとも1つは、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるための少なくとも1つの磁気要素を備えることができる。
【0068】
磁気要素は、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付けるために、磁気取付力を提供することができる。ワークピースが製造面上に印刷されると、印刷されたワークピースを含むワークピースホルダは、例えばワークピースホルダ及び印刷されたワークピースを後処理段階に移動させるために、ビルドプレートから取り外されることができる。
【0069】
磁気要素は永久磁石を含むことができる。代替的に又は追加的に、磁気要素は、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付けるための磁力が電流によって選択的に生成され得る電磁石であってもよい。
【0070】
一実施形態では、ビルドプレートは、ビルドプレート上にグリッドパターンで配置された複数の磁気要素を備えることができる。したがって、磁気要素をそのように配置することで、ビルドプレート上にワークピースホルダを取り付けることができる所定の位置を設けることができる。これは、3D印刷システムの製造品質及び製造速度を更に向上させる。
【0071】
好ましくは、ビルドプレートは、複数の磁気要素を備えることができ、各ワークピースホルダは、少なくとも1つの磁気要素を備えることができる。複数の磁気要素は、好ましくは、ワークピースホルダがビルドプレートに取り付けられると、ワークピースホルダの磁気要素に面した、ビルドプレート上に配置された少なくとも2つの磁気要素の端部同士が、別々の磁極を有するように、ビルドプレート上に配置することができる。
【0072】
好ましくは、ビルドプレート上に配置される磁気要素は、互いに隣接する少なくとも2つの磁気要素の端部(ワークピースホルダがビルドプレートに取り付けられると、ワークピースホルダの磁気要素に面する端部)が、互いに隣接する少なくとも2つの更なる磁気要素の端部とは異なる磁極を有するように、配置することができる。
【0073】
このようにして、磁極は、反対の磁極の取り付けのみを可能にするので、異なる磁極により、ワークピースホルダを取り付けることができるビルドプレート上の所定の位置を提供することができる。したがって、例えば、ビルドプレート上に配置された磁気要素の正極は、ワークピースホルダの磁気要素の正極に反発することになる。対照的に、ビルドプレート上に配置された磁気要素の負極は、ワークピースホルダの磁気要素の正極を引き付けることになる。したがって、ワークピースホルダは、ビルドプレート上に配置された磁気要素の負極にのみ取り付けられ得る。
【0074】
任意選択で、取付手段は、ビルドプレートに形成された少なくとも1つの開口部内で真空力を発生させ、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるように構成された真空発生器を含むことができる。好ましくは、ビルドプレートは、ビルドプレートの少なくとも一部分にわたって分散された複数の開口部を含むことができる。
【0075】
したがって、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付けるための吸引力を作動又は停止するべく真空発生器を作動又は停止させることによって、ワークピースホルダをビルドプレートに選択的に取り付けることができる。真空発生器としては、真空ポンプなどの真空源、例えば、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、又はロータリーベーンポンプを含むことができる。真空発生器はまた、真空源とビルドプレートとの間に配置され、ビルドプレートに吸引力が加えられることを選択的に可能にしたり無効にしたりする弁を含むことができる。
【0076】
好ましくは、ワークピースホルダは、連続的なレール形状のバーであってもよく、各バーは、好ましくは実質的にI字形状又はL字形状の断面を有する。したがって、連続的なレール形状のバーは、例えば、ワークピースホルダ上に複数のワークピースを印刷するために、及び/又は細長いワークピースを印刷するために、細長い製造面を提供することができる。
【0077】
I字形状又はL字形状の断面の場合、ワークピースホルダの互いに実質的に垂直な少なくとも2つの部分を設けることができ、一方の部分が、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付けるための取付部及び/又はワークピースホルダをガイドするためのガイド手段を提供することができる。取付部に垂直な部分は、ビルドプレートから離れるように延びていてもよく、印刷対象ワークピースのための製造面を提供することができる。
【0078】
しかしながら、別の形状のワークピースホルダも可能である。例えば、ワークピースホルダは、ダブテール接続によってワークピースをビルドプレートに取り付けるために、ダブテール形状の取付部を有することができる。
【0079】
一実施形態では、凹部に受け入れられた各ワークピースホルダのそれぞれの部分同士は、アダプタの少なくとも1つの凹部内で被押圧ユニットを形成するように構成することができる。
【0080】
被押圧ユニットは、少なくとも2つの隣接するワークピースホルダであると理解されるべきであり、ワークピースホルダ同士の少なくとも一部分が互いに当接している。ワークピースホルダのうちの1つに押出力を加えることによって、それらのワークピースホルダを凹部の中及び/又は外に移動させることができ、押出力は、当接部分を介して他のワークピースに伝達される。このように、少なくとも2つの隣接する当接したワークピースホルダ同士は、凹部内で1つのユニットとして移動される。
【0081】
これにより、例えば、ワークピースが製造面に印刷された後にアダプタの凹部からワークピースホルダを取り外すために、ワークピースホルダを移動させるための効率的かつ迅速な手段が可能になる。
【0082】
好ましくは、アダプタは、複数の凹部を含むことができ、各凹部は、アダプタの端面からアダプタの少なくとも一部分を通って延びている。好ましくは、複数の凹部は、互いに平行に配置することができ、各凹部は、少なくとも2つのワークピースホルダのうちの少なくとも1つの一部分を摺動可能に受け入れるように構成される。
【0083】
このように、複数のワークピースは、ワークピースホルダの一部分を摺動させて凹部のうちの1つに入れることによって、ビルドプレートに取り付けることができる。
【0084】
好ましくは、凹部は、アダプタの第1の端面から、第1の端面の反対側にあるアダプタの第2の端面まで延びることができる。したがって、ワークピースホルダは、第1の端面から摺動させて凹部に入れることができ、第2の端面から凹部から取り外すことができる。これにより、ワークピースホルダの効率的かつ迅速な装填及び取り外しプロセスが可能になる。
【0085】
好ましくは、製造面は、矩形、円形、アーチ形、又は馬蹄形の形状のいずれかを有することができる。様々な利用可能な形状を有する製造面を提供することによって、様々に異なる形状を有するワークピースをより容易かつ効率的に印刷することができる。
【0086】
このように、例えば、製造対象ワークピースの形状に合わせて調整されたワークピースホルダの形状を提供することによって、各ワークピースホルダがビルドプレート上で占有する面積が最小化され、その結果、例えば、製造プロセスごとにより多くのワークピースを製造することができる。
【0087】
したがって、ワークピースホルダは、好ましくは、個別の製造面上で製造されるワークピースの形状に応じて様々に異なる形状の製造面を有することができる。
【0088】
製造面はまた、製造対象ワークピースのサイズ及び個数に応じて様々に異なるサイズを有することができる。
【0089】
好ましくは、ワークピースホルダのうちの少なくとも1つは、積層造形によって製造することができる。
【0090】
好ましくは、少なくとも2つのワークピースホルダのうちの少なくとも1つの少なくとも製造面は、以下の材料:セラミック、好ましくはジルコニア、プラスチック、及び金属のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0091】
一実施形態では、アダプタは、クランプ機構によって、及び/又は磁気接続によってビルドプレートに取り付けることができる。磁気接続は、アダプタをビルドプレートに取り付けるための磁力を生成するように構成された電磁石を含むことができる。しかしながら、磁気接続は永久磁石を含むこともできる。
【0092】
クランプ機構は、アダプタとビルドプレートとの間にプレス嵌め又は形状嵌めを含むことができる。例えば、アダプタの一部分は、ビルドプレートの開口部に受け入れられてもよく、又はその逆であってもよく、プレス嵌め及び/又は形状嵌めを提供する。代替的又は追加的に、ねじクランプなどの別個の要素でアダプタをビルドプレートに取り付けてもよい。更に、アダプタは、アダプタ及び/又はビルドプレートの一部分がビルドプレート及びアダプタのうちの他方の一部分に摺動可能に受け入れられることなどによって、ビルドプレートに摺動可能に取り付けることができる。このように、アダプタは、ビルドプレートに着脱可能に取り付けることができる。
【0093】
したがって、アダプタに引張力及び/又は摺動力を加えることによって、アダプタをビルドプレートから解放することができる。したがって、例えば、アダプタからワークピースホルダを取り外すことによってビルドプレートからワークピースを取り外す代わりに、例えばワークピースを後処理段階に移動させるために、全て又は少なくとも複数のワークピースを担持したアダプタ全体をビルドプレートから解放することができる。
【0094】
好ましくは、3D印刷システムは、製造面にワークピースが取り付けられているワークピースホルダを、ビルドプレートに平行に摺動させることによってアダプタから取り外すように構成された交換ツールを更に備えることができる。
【0095】
好ましくは、交換ツールは、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダをアダプタ内に摺動させるように構成することができる。
【0096】
一実施形態では、交換ツールは、少なくとも1つの凹部を含むことができ、この凹部は、交換ツールの端面から交換ツールの少なくとも一部分を通って延びており、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダ及び/又は製造面にワークピースが取り付けられている少なくとも1つのワークピースホルダの一部分を摺動可能に受け入れるように構成されている。
【0097】
好ましくは、凹部は、交換ツールの第1の端面から、第1の端面の反対側にある交換ツールの第2の端面まで延びることができる。
【0098】
好ましくは、交換ツールは、複数の凹部を含むことができ、各凹部は、交換ツールの端面から交換ツールの少なくとも一部分を通って延びている。複数の凹部は、互いに平行に配置することができ、それぞれ、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダ及び/又は製造面にワークピースが取り付けられている少なくとも1つのワークピースホルダの一部分を摺動可能に受け入れるように構成することができる。
【0099】
好ましくは、凹部は、交換ツールの第1の端面から、第1の端面の反対側にある交換ツールの第2の端面まで延びることができる。
【0100】
好ましくは、交換ツールは、交換ツールの少なくとも1つの凹部をアダプタの少なくとも1つの凹部と整列させるように構成することができる。したがって、ワークピースを、交換ツールの1つ以上の凹部からアダプタの1つ以上の凹部内に摺動することができる。これにより、ワークピースホルダの迅速かつ効率的な装填及び取り外しプロセスが可能になる。
【0101】
好ましくは、交換ツールは、アダプタを少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部と、複数の凹部とを含むことができる。好ましくは、少なくとも1つの凹部は、開口部の両側に配置することができ、開口部の一方の側に配置された少なくとも1つの凹部は、開口部の反対側に配置された少なくとも1つの凹部と整列されている。
【0102】
一実施形態では、アダプタ及び/又はビルドプレートは、ワークピースホルダを定位置にロックするように構成されたロック要素を備えることができる。これにより、ワークピースホルダの動きを防止するか少なくとも最小限に抑えるために、製造プロセス中にワークピースホルダを固定することができる。
【0103】
一実施形態では、3D印刷システムは、ワークピースから余分な材料を除去するためのデバイス、硬化デバイス、表面仕上げデバイス、熱成形デバイス、及びマーキングデバイスのうちの少なくともいずれかを含む後処理デバイスを更に備えることができる。少なくとも2つのワークピースホルダ及び個別の後処理デバイスは、ワークピースが積層造形された同じワークピースホルダにそのワークピースが取り付けられた状態で個別の後処理デバイスによってワークピースを後処理することができるように構成することができる。
【0104】
好ましくは、ワークピースから余分な材料を除去するためのデバイスは、ワークピースを受け入れてワークピースの余分な材料に質量慣性力を発生させることによって、余分な材料からワークピースをきれいにするように構成されたロータを有する遠心分離機を備えることができる。
【0105】
好ましくは、表面仕上げデバイスは、サンドブラストをワークピースに方向付けるように構成されたサンドブラストステーションを備えることができる。あるいは、表面仕上げデバイスは、ガラスビーズ、破砕ガラス、プラスチック研磨剤及び/又は炭化ケイ素などの他の研磨媒体をワークピースに方向付けて、ワークピースの所望の表面品質を達成するように構成されてもよい。表面仕上げデバイスは、ワークピースホルダに取り付けられるように構成されたサンドブラストゲートなどのゲートを備えることができる。サンドブラストゲートは、研磨媒体がワークピースに到達することを可能にする開口部を有する構造を備えることができる。したがって、ゲートは、研磨媒体へのワークピースの露出をワークピースの所定の部分に制限することができ、かつ/又は研磨媒体をワークピースの少なくとも一部分に集中させることができる。
【0106】
好ましくは、熱成形デバイスは、例えば、トレイ又はトレイアライナなどの歯科矯正装置を製造するための真空成形又は正圧成形用に構成されることができる。したがって、例えば、患者の歯及び/又は下顎及び/又は上顎の模型を、3D印刷デバイスを用いて印刷することができる。この模型は、トレイ及び/又はトレイアライナを作製する材料を加熱し、その後、真空又は正圧を用いて模型の上にその材料を引き寄せることによって、トレイ及び/又はトレイアライナを形成するために使用されることができ、ここで、材料は、好ましくは、透明な熱可塑性材料であり得る。トレイ及び/又はトレイアライナが形成された後、トレイ及び/又はトレイアライナ並びに模型は、互いに分離することができる。その後、トレイ及び/又はトレイアライナを余分な材料を除去するためにトリミングすることができる。
【0107】
代替的に、熱成形デバイスの代わりに、又は熱成形デバイスに加えて、3D印刷システムは蒸着デバイスを更に含んでもよい。したがって、例えば、トレイ又はトレイアライナは、パリレンなどのポリマーなどの材料を、3D印刷デバイスによって印刷された患者の歯及び/又は下顎及び/又は上顎の模型上に堆積させることによって製造することができる。トレイ及び/又はトレイアライナが、蒸着デバイスによって模型上に形成された後、トレイ及び/又はトレイアライナと模型とは、互いに分離することができる。その後、トレイ及び/又はトレイアライナを余分な材料を除去するためにトリミングすることができる。
【0108】
代替的に、トレイ及び/又はトレイアライナなどの歯科矯正装置は、熱成形を必要とせずに3D印刷デバイスによって直接印刷されてもよい。
【0109】
3D印刷システムは、後処理デバイスとして、印刷されたワークピースを処理するためのCNCミリング加工ステーション又は研磨ステーションを含むこともできる。したがって、例えば、第1のステップにおいて、実質的に粗い表面を有するワークピースを積層造形することができる。CNCミリング加工ステーションにおけるCNCミリング加工ステップでは、粗いワークピースの表面をミリング加工して、ワークピースの必要な表面品質を達成することができる。したがって、ミリング加工ステップによって十分な表面品質を達成しつつ、積層造形ステップをより迅速に実行することができる。
【0110】
一実施形態では、3D印刷システムは、製造対象ワークピースに基づいて、異なるサイズ及び形状を有する複数のワークピースホルダから少なくとも1つのワークピースホルダを選択するように構成されたコントローラを更に備えることができる。
【0111】
例えば、各ワークピースホルダは、個別のワークピースホルダの製造面のサイズ及び形状など、個別のワークピースホルダのタイプを指定する識別子を含むことができる。識別子は、バーコード、QRコード、テキスト、カラーコード、又は任意の他の視覚的識別子とすることができる。更に、識別子は、追加的又は代替的に、RFIDタグを含んでもよい。したがって、個別のワークピースホルダのタイプを判断するために、各ワークピースホルダの識別子を、ユーザが手動で、又は例えば光学走査デバイスを用いて、読み取ることができる。
【0112】
これにより、ワークピースホルダの追跡もまた可能になる。したがって、例えば、ワークピースが対応する製造面に取り付けられた状態のワークピースホルダを、例えば処理又は後処理ステップを実行するために、別の工場などの別の場所に送ることができる。この場合、識別子により、ワークピースホルダを識別、追跡、及び/又は監視することが可能になる。
【0113】
更に、コントローラ又はそれに関連するソフトウェアは、印刷対象ワークピースに最も適したワークピースホルダを選択するように構成されたアルゴリズムを含むことができる。例えば、アルゴリズムは、利用可能なワークピースホルダに印刷されるワークピースのテスト嵌めをシミュレートし、ワークピースに最も適したワークピースホルダを選択するように構成することができる。
【0114】
好ましくは、ワークピースホルダ上で必要最小限の面積を占有するように、コントローラは、ワークピースの外縁とワークピースホルダの外縁との間の達成可能な最小距離に基づいて、複数のワークピースホルダから少なくとも1つのワークピースホルダを選択するように構成することができる。ある印刷対象ワークピースに対するワークピースホルダの適合性の基準を、ワークピースホルダ上で必要最小限の面積を占有するように、ワークピースの外縁とワークピースホルダの縁との間の最小距離に基づかせることにより、ビルドプレート上に高パッキング密度のワークピースを実現することができる。したがって、ワークピースの個数を増加させ及び製造速度を上げることができる。
【0115】
一実施形態では、3D印刷システムは、ワークピースホルダをハンドリングし、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付け、好ましくは更にワークピースホルダを後処理デバイスに移動させるように構成された少なくとも1つのハンドリングロボットを更に備えることができる。
【0116】
一実施形態では、3D印刷システムは、ビルドプレート上のワークピースホルダの位置を検出し、ビルドプレート上のワークピースホルダの所定の目標位置からの検出された位置の偏差を検出するように構成された位置検出デバイスを備えることができる。位置検出デバイスは、好ましくは、ハンドリングロボットによって後でビルドプレート上に後で配置される少なくとも1つの更なるワークピースホルダの位置決めを補正するために、ハンドリングロボットに補正係数を適用するように更に構成することができる。
【0117】
このように、ビルドプレート上のワークピースホルダの位置決めを最適化することができる。これにより、製造プロセスの品質、速度、及び効率が更に向上する。補正係数及び/又はビルドプレート上のワークピースの位置決めは、3D印刷システムによって提供されるメモリに記憶することができる。
【0118】
冒頭に述べた目的は、ワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセットによっても達成される。3D印刷システムに関連して説明した利点及び特徴は、以下に説明するアダプタにも適宜当てはまる。
【0119】
アダプタセットは、
a)3D印刷デバイスのビルドプレートに取り付けられるように構成された少なくとも1つのアダプタと、
b)少なくとも2つのワークピースホルダであって、各ワークピースホルダは、アダプタによって着脱可能に受け入れられるように構成されており、各ワークピースホルダは、少なくとも1つのワークピースを積層造形することができる製造面を提供する、少なくとも2つのワークピースホルダと、を備える。
【0120】
好ましくは、アダプタは、ワークピースホルダのそれぞれの少なくとも一部分を受け入れるように構成された少なくとも1つの凹部を含むことができる。
【0121】
好ましくは、凹部は、アダプタの端面からアダプタの少なくとも一部分を通って延びることができる。
【0122】
冒頭に述べた目的は、本明細書に開示される3D印刷システムのいずれかを用いて少なくとも2つのワークピースを製造する方法によっても達成される。3D印刷システムに関連して説明した利点及び特徴は、以下に説明する方法にも適宜当てはまる。
【0123】
方法は、
a)少なくとも2つのワークピースホルダの少なくとも2つの製造面上に硬化性材料の複数の層を連続的に硬化させて、各製造面上に少なくとも1つのワークピースを形成するステップと、
b)ワークピースホルダに力を加えることによって、製造面にワークピースが取り付けられた状態の少なくとも2つのワークピースホルダを3D印刷デバイスのビルドプレートから取り外すステップと、を含む。
【0124】
一実施形態では、ステップb)は、好ましくは、ビルドプレートに取り付けられたアダプタの端面から延びている凹部に受け入れられたワークピースホルダのそれぞれの一部分を、凹部に沿って凹部から出るように摺動させることによって実行することができる。
【0125】
好ましくは、被押圧ユニットを形成している少なくとも2つのワークピースホルダの部分は、凹部に沿って摺動し、凹部から出ることができる。
【0126】
好ましくは、ステップb)は、交換ツールを用いて実行することができる。交換ツールは、交換ツールの端面から交換ツールの少なくとも一部分を通って延びており、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダの少なくとも一部分を受け入れる少なくとも1つの凹部を有することができる。交換ツールの少なくとも1つの凹部は、アダプタの少なくとも1つの凹部と整列されることができ、空のワークピースホルダは、交換ツールの凹部に沿って摺動され交換ツールの凹部を出て、アダプタの凹部に入り、それによって、製造面にワークピースが取り付けられた状態のワークピースホルダを押してアダプタの凹部に沿って摺動させ、アダプタの凹部から出すことができる。
【0127】
好ましくは、ワークピースホルダは、印刷プロセス中に、例えば固定要素又はロック要素によって、定位置に固定することができる。
【0128】
一実施形態では、製造面にワークピースが取り付けられた状態の少なくとも1つのワークピースホルダが押されてアダプタの凹部に沿って摺動してアダプタの凹部から押し出された後に、製造面にワークピースが取り付けられた状態のその少なくとも1つのワークピースホルダが、交換ツールの少なくとも1つの更なる凹部に受け入れられることができる。
【0129】
好ましくは、ステップb)は、ワークピースホルダを引っ張ることによって、ビルドプレート及び/又はワークピースホルダの表面から延びている少なくとも1つの突出部を、ビルドプレート及び/又はワークピースホルダに形成された少なくとも1つの開口部から解放することによって実行することができる。
【0130】
好ましくは、ステップb)は、ワークピースホルダとビルドプレートとの間の磁気接続を上回るようにワークピースホルダを引っ張ることによって実行することができる。
【0131】
一実施形態では、方法は、ステップb)の後に、
c)製造面にワークピースが取り付けられた状態のワークピースホルダを、ワークピースからの余分な材料の除去、硬化、マーキング、及び表面仕上げのうちの少なくともいずれかを含むワークピースの後処理段階に移動させるステップと、
d)ステップa)においてワークピースが形成された同じワークピースホルダの製造面にそのワークピースが取り付けられた状態で、ワークピースからの余分な材料の除去、硬化、マーキング、及び表面仕上げのうちの少なくともいずれかによって、ワークピースを後処理するステップと、を含むことができる。
【0132】
好ましくは、ステップc)及びd)において、各ワークピースホルダの製造面に少なくとも1つのワークピースが取り付けられた少なくとも2つのワークピースホルダのうちの少なくとも一方を、別の後処理段階に移動させることができ、他方のワークピースホルダとは異なる個別の後処理段階において後処理することができる。
【0133】
好ましくは、ステップb)及び任意選択でステップc)もまた、ワークピースホルダをハンドリングするように構成された少なくとも1つのハンドリングロボットによって実行することができる。
【0134】
以下の態様のリストは、本発明の代替的特徴及び/又は更なる特徴を提供する。
【0135】
1. 少なくとも1つのワークピースを製造するための3D印刷デバイスを備える3D印刷システムであって、3D印刷デバイスが、ビルドプレートを備え、3D印刷システムが、少なくとも1つのワークピースを積層造形することができる製造面を有する少なくとも1つのワークピースホルダと、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるための取付手段とを更に備える、3D印刷システム。
【0136】
2. 少なくとも2つの別個のワークピースホルダを備え、各ワークピースホルダは、少なくとも1つのワークピースを積層造形することができる製造面と、ワークピースホルダのそれぞれをビルドプレートに着脱可能に取り付けるための取付手段とを有する、態様1に記載の3D印刷システム。
【0137】
3. 取付手段が、ビルドプレートに着脱可能に取り付けられ、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるためにワークピースホルダの少なくとも一部分を着脱可能に受け入れるように構成されたアダプタを含む、態様1又は2に記載の3D印刷システム。
【0138】
4. アダプタが、ワークピースホルダの少なくとも一部分を摺動可能に受け入れるように構成された少なくとも1つの凹部を含む、態様3に記載の3D印刷システム。
【0139】
5. 凹部が、アダプタの端面からアダプタの少なくとも一部分を通って延びている、態様4に記載の3D印刷システム。
【0140】
6. ワークピースホルダが、アダプタの凹部に受け入れられるように構成された受入部と、製造面を画定している製造部と、受入部が凹部に受け入れられたときに凹部から出るように延び、受入部を凹部の外に配置された製造部に接続するように構成された接続部と、を含む、態様4又は5に記載の3D印刷システム。
【0141】
7. ワークピースホルダの第1の部分が、ワークピースホルダの第2の部分に対して揺動可能及び/又は回転可能である、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0142】
8. 製造部が、受入部に対して揺動可能及び/又は回転可能である、態様7に記載の3D印刷システム。
【0143】
9. ワークピースホルダ及び/又はアダプタ及び/又はビルドプレートが、その表面から延びている少なくとも1つの突出部を含み、ワークピースホルダ及び/又はアダプタ及び/又はビルドプレートが、少なくとも1つの突出部を受け入れて、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるように構成された少なくとも1つの開口部を含む、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0144】
10. 突出部が、突出部の周囲の少なくとも一部分の周りに形成された少なくとも1つの凹部を含み、開口部が、突出部が開口部に受け入れられたときに凹部に係合してワークピースホルダを保持するように構成された少なくとも1つの戻り止めを含む、態様9に記載の3D印刷システム。
【0145】
11. ワークピースホルダ、アダプタ、及びビルドプレートのうちの少なくとも1つが、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるための少なくとも1つの磁気要素を備える、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0146】
12. ビルドプレートが、ビルドプレート上にグリッドパターンで配置された複数の磁気要素を備える、態様11に記載の3D印刷システム。
【0147】
13. ビルドプレートが複数の磁気要素を備え、ワークピースホルダが少なくとも1つの磁気要素を備え、ワークピースホルダがビルドプレートに取り付けられるとワークピースホルダの磁気要素に面したビルドプレート上に配置された少なくとも2つの磁気要素の端部同士が異なる磁極を有するように、複数の磁気要素がビルドプレート上に配置される、態様12に記載の3D印刷システム。
【0148】
14. ビルドプレート上に配置される磁気要素が、互いに隣接する少なくとも2つの磁気要素の端部同士、つまり、ワークピースホルダがビルドプレートに取り付けられるとワークピースホルダの磁気要素に面する端部同士が、互いに隣接する少なくとも2つの更なる磁気要素の端部とは異なる磁極を有するように、配置される、態様13に記載の3D印刷システム。
【0149】
15. ワークピースホルダが、連続的なレール形状のバーであり、各バーは、好ましくは実質的にI字形状又はL字形状の断面を有する、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0150】
16. アダプタが、複数の凹部を含み、各凹部は、アダプタの端面からアダプタの少なくとも一部分を通って延びており、複数の凹部が、互いに平行に配置され、各凹部は、ワークピースホルダの一部分を摺動可能に受け入れるように構成されている、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0151】
17. 製造面が、矩形、円形、アーチ形、又は馬蹄形の形状のいずれかを有する、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0152】
18. ワークピースホルダが、個別の製造面上で製造されるワークピースの形状に応じて異なる形状の製造面を有する、態様17に記載の3D印刷システム。
【0153】
19. ワークピースホルダ及び/又はアダプタが、積層造形によって製造される、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0154】
20. 少なくともワークピースホルダの製造面が、以下の材料:セラミック、好ましくはジルコニア、プラスチック、及び金属のうちの少なくとも1つを含む、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0155】
21. アダプタが、クランプ機構及び/又は磁気接続によってビルドプレートに取り付けられる、態様3~20のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0156】
22. 製造面にワークピースが取り付けられているワークピースホルダを、ビルドプレートに平行に摺動させることによって、アダプタから取り外すように構成された交換ツールを更に備える、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0157】
23. 交換ツールが、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダをアダプタ内に摺動させるように構成されている、態様22に記載の3D印刷システム。
【0158】
24. 交換ツールが少なくとも1つの凹部を含み、この凹部は、交換ツールの端面から交換ツールの少なくとも一部分を通って延びており、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダ及び/又は製造面にワークピースが取り付けられている少なくとも1つのワークピースホルダの一部分を摺動可能に受け入れるように構成されている、態様22又は23に記載の3D印刷システム。
【0159】
25. 交換ツールが複数の凹部を含み、各凹部は、交換ツールの端面から交換ツールの少なくとも一部分を通ってそれぞれ延びおり、複数の凹部が、互いに平行に配置され、それぞれ、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダ及び/又は製造面にワークピースが取り付けられている少なくとも1つのワークピースホルダの一部分を摺動可能に受け入れるように構成されている、態様22~24のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0160】
26. 交換ツールが、交換ツールの少なくとも1つの凹部をアダプタの少なくとも1つの凹部と整列させるように構成されている、態様24又は25に記載の3D印刷システム。
【0161】
27. 交換ツールが、アダプタを少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部と、複数の凹部とを備え、少なくとも1つの凹部が開口部の両側に配置され、開口部の一方の側に配置された少なくとも1つの凹部が、開口部の反対側に配置された少なくとも1つの凹部と整列されている、態様24~26のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0162】
28. アダプタ及び/又はビルドプレートが、ワークピースホルダを定位置にロックするように構成されたロック要素を備える、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0163】
29. 硬化デバイス、加熱デバイス、マーキングデバイス、ワークピースから余分な材料を除去するためのデバイス、表面仕上げデバイス、支持体除去デバイス、及び表面処理デバイスのうちの少なくとも1つを含む後処理デバイスを更に備え、ワークピースが積層造形された同じワークピースホルダにワークピースが取り付けられた状態で個別の後処理デバイスによってワークピースを後処理することができるように、ワークピースホルダ及び個別の後処理デバイスが構成されている、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0164】
30. 製造対象ワークピースに基づいて、異なるサイズ及び形状を有する複数のワークピースホルダから少なくとも1つのワークピースホルダを選択するように構成されたコントローラを更に備える、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0165】
31. ワークピースホルダ上で必要最小限の面積を占有するように、コントローラが、ワークピースの外縁とワークピースホルダの外縁との間の達成可能な最小距離に基づいて、複数のワークピースホルダから少なくとも1つのワークピースホルダを選択するように構成されている、態様30に記載の3D印刷システム。
【0166】
32. ワークピースホルダをハンドリングし、ワークピースホルダをビルドプレートに取り付け、好ましくは更にワークピースホルダを後処理デバイスに移動させるように構成された少なくとも1つのハンドリングロボットを更に備える、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0167】
33. ビルドプレート上のワークピースホルダの位置を検出し、ビルドプレート上のワークピースホルダの所定の目標位置からの検出された位置の偏差を検出するように構成された位置検出デバイスを更に備え、位置検出デバイスは、好ましくは、ハンドリングロボットによってビルドプレート上に後で配置される少なくとも1つの更なるワークピースホルダの位置決めを補正するために、ハンドリングロボットに補正係数を適用するように更に構成されている、態様32に記載の3D印刷システム。
【0168】
34. 取付手段が、ビルドプレートに形成された少なくとも1つの開口部内で真空力を発生させ、ワークピースホルダをビルドプレートに着脱可能に取り付けるように構成された真空発生器を含む、前述の態様のいずれかに記載の3D印刷システム。
【0169】
35. ワークピースホルダを3D印刷デバイスに取り付けるためのアダプタセットであって、
a)3D印刷デバイスのビルドプレートに取り付けられるように構成された少なくとも1つのアダプタと、
b)アダプタによって着脱可能に受け入れられるように構成された少なくとも1つのワークピースホルダであって、少なくとも1つのワークピースを積層造形することができる製造面を提供する、ワークピースホルダと、を備える、アダプタセット。
【0170】
36. 少なくとも2つの別個のワークピースホルダを備え、各ワークピースホルダは、アダプタによって着脱可能に受け入れられるように構成されており、各ワークピースホルダは、少なくとも1つのワークピースを製造することができる製造面を提供する、態様35に記載のアダプタセット。
【0171】
37. アダプタが、ワークピースホルダの少なくとも一部分を受け入れるように構成された少なくとも1つの凹部を含む、態様35又は36に記載のアダプタセット。
【0172】
38. 凹部が、アダプタの端面からアダプタの少なくとも一部分を通って延びている、態様37に記載のアダプタセット。
【0173】
39. 前述の態様のいずれかに記載された3D印刷システムを用いて少なくとも1つのワークピースを製造する方法であって、
a)少なくとも1つのワークピースホルダの製造面上に硬化性材料の複数の層を連続的に硬化させて、製造面上に少なくとも1つのワークピースを形成するステップと、
b)ワークピースホルダに力を加えることによって、製造面にワークピースが取り付けられた状態のワークピースホルダを3D印刷デバイスのビルドプレートから取り外すステップと、を含む、方法。
【0174】
40. ステップb)が、ビルドプレートに取り付けられたアダプタの端面から延びている凹部に受け入れられたワークピースホルダの一部分を、凹部に沿って凹部から出るように摺動させることによって実行される、態様39に記載の方法。
【0175】
41. ステップb)が、交換ツールを用いて実行され、この交換ツールは、交換ツールの端面から交換ツールの少なくとも一部分を通って延びており、製造面にワークピースが取り付けられていない少なくとも1つの空のワークピースホルダの少なくとも一部分を受け入れる少なくとも1つの凹部を有し、交換ツールの少なくとも1つの凹部が、アダプタの少なくとも1つの凹部と整列され、空のワークピースホルダが、交換ツールの凹部に沿って摺動され交換ツールの凹部を出て、アダプタの凹部に入り、それによって、製造面にワークピースが取り付けられた状態のワークピースホルダをアダプタの凹部に沿って押して摺動させ、アダプタの凹部から出す、態様40に記載の方法。
【0176】
42. 製造面にワークピースが取り付けられた状態の少なくとも1つのワークピースホルダがアダプタの凹部に沿って押されて摺動してアダプタの凹部から押し出された後に、製造面にワークピースが取り付けられた状態の少なくとも1つのワークピースホルダが、交換ツールの少なくとも1つの更なる凹部に受け入れられる、態様41に記載の方法。
【0177】
43. ステップb)は、ワークピースホルダを引っ張ることによって、ビルドプレート及び/又はワークピースホルダの表面から延びている少なくとも1つの突出部を、ビルドプレート及び/又はワークピースホルダに形成された少なくとも1つの開口部から解放することによって実行される、態様39に記載の方法。
【0178】
44. ステップb)が、ワークピースホルダとビルドプレートとの間の磁気接続を上回るようにワークピースホルダを引っ張ることによって実行される、態様39に記載の方法。
【0179】
45. ステップb)の後に、
c)製造面にワークピースが取り付けられた状態のワークピースホルダを、ワークピースからの余分な材料の除去、硬化、加熱、表面仕上げ、表面処理、支持体除去、及びマーキングのうちの少なくとも1つを含むワークピースの後処理段階に移動させるステップと、
d)ステップa)においてワークピースが形成された同じワークピースホルダの製造面にそのワークピースが取り付けられた状態で、ワークピースからの余分な材料の除去、硬化、表面仕上げ、及びマーキングのうちの少なくとも1つによって、ワークピースを後処理するステップと、を含む、態様39~44のいずれかに記載の方法。
【0180】
46. ステップd)の後に、
e)ワークピースホルダからワークピースを取り外し、任意選択で、ワークピースホルダから残留印刷材料を除去するステップを含む、態様45に記載の方法。
【0181】
47. ステップb)、並びに任意選択でステップc)及び/又はステップe)もまた、ワークピースホルダをハンドリングするように構成された少なくとも1つのハンドリングロボットによって実行される、態様39~46のいずれかに記載の方法。
【0182】
48. 少なくとも2つのワークピースが、3D印刷システムによって製造され、ステップa)~e)が、少なくとも2つのワークピースホルダを用いて、各ワークピースホルダの各製造面上に少なくとも1つのワークピースが形成されている状態で実行される、態様39~47のいずれかに記載の方法。
【0183】
49. ステップc)及びd)において、各ワークピースホルダの製造面に少なくとも1つのワークピースが取り付けられた状態の少なくとも2つのワークピースホルダのうちの少なくとも一方が、別の後処理段階に移動され、他方のワークピースホルダとは異なる個別の後処理段階において後処理される、態様45及び48に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0184】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について更に説明する。
【0185】
図1】本発明による実施形態の斜視図である。
図2】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
図3】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
図4】本発明の更なる実施形態による、取り外しツールの斜視図である。
図5図4の実施形態の更なる斜視図である。
図6図4の実施形態の更なる斜視図である。
図7図4の実施形態の更なる斜視図である。
図8】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
図9】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
図10】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
図11】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
図12】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
図13】本発明による更なる実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0186】
図1は、ビルドプラットフォーム15に取り付けられたビルドプレート13を有する3D印刷デバイス12を備える3D印刷システム10を示す。3D印刷システム10は、連続的なレール形状のバーとして構成された4つのワークピースホルダ14を備える。
【0187】
3D印刷システム10は、4つの凹部18が内部に形成されているアダプタ16を更に備える。凹部18は、アダプタ16の第1の端面20から、第1の端面20の反対側にあるアダプタ16の第2の端面22まで延びている。
【0188】
ワークピースホルダ14はそれぞれ、アダプタ16の凹部18に受け入れられる受入部24を有する。更に、ワークピースホルダ14はそれぞれ、ワークピースを印刷することができる製造面26を画定している。
【0189】
以下の図は、上述した各部を示し得るが、分かりやすくするために一部の参照符号を省略している。
【0190】
図2は、図1のアダプタ16を示す。アダプタ16は、アダプタ16に形成されたロック開口部30内に受け入れることができる2つのロック要素28を更に備える。ロック要素28は、ワークピースホルダ14を凹部18内に固定させることができる。
【0191】
アダプタ16は、アダプタ16をビルドプレート13に締結するように構成された締結要素32を更に備える。代替的に又は追加的に、アダプタ16及び/又はビルドプレート13は、アダプタ16をビルドプレート13に締結するために、電磁石又は永久磁石などの磁気要素を有してもよい。
【0192】
図3は、ワークピースホルダ14の製造面26上にワークピース34が印刷された図1の3D印刷システム10を示す。したがって、製造面26は、ワークピース34によって覆われているので、図3では見えない。
【0193】
図4は、製造面26にワークピース34が取り付けられているワークピースホルダ14をアダプタ16から取り外すように構成された取り外しツール36を示す。
【0194】
図4に示すように、取り外しツール36は、交換ツール36の第1の端面40から取り外しツール36の第2の端面41まで延びている4つの凹部38を含む。凹部38は、互いに平行に配置され、それぞれ、製造面26にワークピース34が取り付けられていない空のワークピースホルダ14の受入部24を摺動可能に受け入れるように構成される。
【0195】
交換ツール36は、アダプタ16を少なくとも部分的に受け入れるように構成された開口部42を更に備える。交換ツール36はまた、凹部38の反対側の開口部42の側面に配置された4つの更なる凹部44を含む。凹部44及び凹部38は、開口部42の両側で互いに整列される。
【0196】
図4に示すように、ワークピースホルダ14の受入部24は、凹部44に受け入れられる。したがって、製造面26にワークピース34が取り付けられた状態のワークピースホルダ14は、アダプタ16から取り外されている。
【0197】
したがって、ワークピース34が、3D印刷システム10によってワークピース34を印刷したのと同じワークピースホルダ14に取り付けられている間に、そのワークピースホルダ14を対応する後処理デバイスに装填するために、取り外しツール36を後処理段階に搬送することができる。
【0198】
図5図7は、図4の取り外しツール36による取り外しプロセスを3つの取り外しステップで示したものである。
【0199】
図5では、製造面26にワークピース34が取り付けられているワークピースホルダ14を備えたアダプタ16が、取り外しツール36の開口部42に受け入れられている。製造面26にワークピース34が取り付けられていない4つの空のワークピースホルダ14が、取り外しツール36に提供される。それによって、空のワークピースホルダ14は、図6に見られるように、凹部38内へ摺動される。
【0200】
次に、空のワークピースホルダ14は、図7に示すように、凹部38から、アダプタ16に形成された凹部18内に摺動される。それによって、製造面26にワークピース34が取り付けられているワークピースホルダ14は、アダプタ16に形成された凹部18から凹部44内に摺動される。
【0201】
このように、空のワークピースホルダ14がアダプタ16内に装填される一方、製造面26にワークピース34が取り付けられているワークピースホルダ14は、アダプタ16から取り外される。
【0202】
図8は、ワークピースホルダ14Aの代替構成を示す。図8に示すワークピースホルダ14Aの製造面26は、レール形状のバー構成ではなく、実質的に三角形状である。更に、ワークピースホルダ14Aは、3つの部分、すなわち、製造面26を画定している製造部46と、上述のように凹部18、38、44に受け入れられるように構成された受入部48と、製造部46を受入部48に接続している接続部50とを備える。
【0203】
好ましくは、製造部46は、受入部48に対して揺動可能及び/又は回転可能とすることができる。
【0204】
図9は、図7に関連して説明したように複数のワークピースホルダ14Aを有するアダプタ16を示す。それによって、ワークピースホルダ14Aの受入部48は、アダプタ16の凹部18に受け入れられる。
【0205】
図10は、ワークピースホルダ14Bの更なる代替構成を示す。ワークピースホルダ14Bは、図11に示すように、ビルドプレート13に形成された開口部54に受け入れられるように構成された突出部52を備える。
【0206】
図12は、ワークピースホルダ14Cの更なる代替構成を示す。ワークピースホルダ14Cは、突出部52の代わりに、ワークピースホルダ14Cをビルドプレート13に取り付けるための磁力を提供するために、ここでは永久磁石として構成される磁気要素56を備える。ビルドプレート13は、好ましくは、鉄系材料で作製される。
【0207】
図13は、ワークピースホルダ14Cに取り付けられた磁気要素56を介してビルドプレート13に取り付けられたワークピースホルダ14Cと、ビルドプレート13上に配置された更なる磁気要素58とを示す。代替的に、ビルドプレート13の磁気要素58は、省略されてもよい。この場合、ビルドプレート13は、鉄系材料で作製される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】