(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-17
(54)【発明の名称】内燃機関のピストン用オイルスクレーパリング
(51)【国際特許分類】
F16J 9/06 20060101AFI20231010BHJP
F16J 9/20 20060101ALI20231010BHJP
F02F 5/00 20060101ALI20231010BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
F16J9/06 B
F16J9/20
F02F5/00 B
F02F3/00 B
F02F5/00 301A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022581474
(86)(22)【出願日】2021-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021064540
(87)【国際公開番号】W WO2022022875
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】102020119789.6
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509340078
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル ブルシェイド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL BURSCHEID GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ミトラー
(72)【発明者】
【氏名】フェビアン ルーシュ
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA20
3J044BA03
3J044BA04
3J044CB02
3J044CB16
3J044CB24
3J044CB30
3J044DA09
3J044DA17
(57)【要約】
本開示は、内燃機関のピストン(2)用のオイルスクレーパリングに関し、ピストン(2)のオイルスクレーパリング溝(4)は、少なくとも1つの排油孔なしで配置され、オイルスクレーパリングは、上側リング側面(8)と、下側リング側面(10)と、リング内側(12)と、リング外側(14)と、2つの当接面(16,18)とを有するリング本体(6)を備え、軸線方向に互いに離間しつつ周方向に延在すると共に、リング外側(14)から半径方向外側に向けて延在する上側オイルスクレーパレール(20)及び下側オイルスクレーパレール(22)は、リング外側(14)に配置されている。半径方向に延在するオイル通路は、上側スクレーパレール(20)と下側スクレーパレール(22)との間の領域に配置されている。下側リング側面(10)上に、半径方向に延在する少なくとも1つの溝(26)が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のピストン(2)用のオイルスクレーパリングであって、前記ピストン(2)のオイルスクレーパリング溝(4)が、少なくとも1つの排油孔なしで配置され、前記オイルスクレーパリングが、
・上側リング側面(8)と、
・下側リング側面(10)と、
・リング内側(12)と、
・リング外側(14)と、
・2つの当接面(16,18)と、
を有するリング本体(6)を備え、軸線方向に互いに離間しつつ周方向に延在すると共に、前記リング外側(14)から半径方向外側に向けて延在する上側オイルスクレーパレール(20)及び下側オイルスクレーパレール(22)が、前記リング外側(14)上に配置され、半径方向に延在するオイル通路(24)が、前記上側スクレーパレール(20)と前記下側オイルスクレーパレール(22)との間の領域に配置され、前記下側リング側面(10)上に、半径方向に延在する少なくとも1つの溝(26)が形成されている、オイルスクレーパリング。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルスクレーパリングであって、前記少なくとも1つの溝(26)が、一定の深さ及び/又は一定の幅を有する、オイルスクレーパリング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイルスクレーパリングであって、前記少なくとも1つの溝(26)が、半径方向において内側から外側に向けて減少する深さ又は幅を有する、オイルスクレーパリング。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のオイルスクレーパリングであって、前記少なくとも1つの溝(26)が、半円形の断面を有する、オイルスクレーパリング。
【請求項5】
請求項1~3の何れか一項に記載のオイルスクレーパリングであって、前記少なくとも1つの溝(26)の溝底が、半円形に形成され、溝側面が、対向配置された溝側面と平行に整列されている、オイルスクレーパリング。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のオイルスクレーパリングであって、幾つかの溝(26)が設けられ、前記幾つかの溝(26)が、周方向において前記下側リング側面(10)上に等角度間隔で配置されている、オイルスクレーパリング。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のオイルスクレーパリングであって、溝(26)の数がn>1の場合、各溝(26)が、前記少なくとも1つの溝(26)の他の溝に対して360/(n+1)°の角度距離で配置され、また、オイルスクレーパリングギャップ(28)に最も近い位置にある溝(26)が、前記オイルスクレーパリングの中心点(30)を基準として、オイルスクレーパリング平面内又はオイルスクレーパリング投影面内の前記オイルスクレーパリングギャップからやはり360/(n+1)°の角度距離を有する、オイルスクレーパリング。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のオイルスクレーパリング(2)であって、6つの溝(26)が、前記オイルスクレーパリング上に配置され、前記6つの溝(26)が、前記中心点(30)を基準として、オイルスクレーパリング平面内又はオイルスクレーパリング投影面内にて、前記当接面(16)から又は前記当接面(18)からそれぞれ14.5°~30.5°、104.5°~120.5°、149.5°~165.5°、194.5°~210.5°、239.5°~255.5°、329.5°~345.5°、好適には、17.5°~27.5°、107.5°~117.5°、152.5°~162.5°、197.5°~207.5°、242.5°~252.5°、332.5°~342.5°、特に好適には、20.5°~24.5°、110.5°~114.5°、155.5°~159.5°、200.5°~204.5°、245.5°~249.5°、335.5°~339.5°の角度距離で配置されている、オイルスクレーパリング。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載のオイルスクレーパリングであって、該オイルスクレーパリングの前記内側(12)に、溝(32)が設けられ、該溝(32)が、周方向に延在すると共に、その内部にエキスパンダスプリング、好適には管状スプリングが挿入されている、オイルスクレーパリング。
【請求項10】
少なくとも1つのオイルスクレーパピストンリング溝(4)を備えるピストン(2)であって、前記ピストン(2)が、前記オイルスクレーパピストンリング溝(4)からクランクケース方向に排油開口を備えず、請求項1~9の何れか一項に記載のオイルスクレーパリングが、前記オイルスクレーパリング溝(4)内に配置され、前記ピストンが、スチール製又はアルミニウム製である、ピストン。
【請求項11】
請求項10に記載の少なくとも1個のピストン(2)を備える内燃機関。
【請求項12】
請求項11に記載の内燃機関であって、前記ピストンが、スチール製又はアルミニウム製である、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストン、特に排油孔を備えないピストン用のオイルスクレーパリングに関する。
【背景技術】
【0002】
オイルスクレーパリングは、シリンダ壁のオイルを周方向に分配すると共に、シリンダ壁から余分なオイルを掻き取るよう設計されている。シール機能及び掻き取り機能を高めるために、オイルスクレーパリングには通常、2個のスクレーパレールが設けられている。これら各レールは、シリンダ壁から余分なオイルを掻き取るものである。従って、リング領域から排出しなければならない一定量のオイルが、オイルスクレーパリングの下端のみならずレール間に蓄積する。特に、2ストロークエンジンの作動行程時、又は4ストロークエンジンの吸気行程及び作動行程時に、クランクケースに由来すると共に、上側レールによって掻き取られてレール間に蓄積するオイルは、その領域から排出されなければならない。なぜなら、場合によってそのオイルがオイルスクレーパリングを越え、第2シールリングによって掻き取られる必要が生じるからである。1ピース及び2ピース構造のオイルスクレーパリングには通常、リングレール間において半径方向に延在する長手方向のスリット又は孔が設けられており、これによりスクレーパレール間に位置する余分なオイルが内側に向けて排出可能である。ピストンの下降時に上側レールによって掻き取られたオイルは、リング本体に設けられたこれら開口を通ってリング裏側へとリングベース内に導かれる。掻き取られたオイルは、そこから異なる方法で排出される。オイルは通常、オイルスクレーパ溝の孔を介してピストン内側に導かれ、これによりそこからオイルパンに滴下して戻すことができる。また、ピストン外側におけるピストンボルト領域の凹部を介して、掻き取られたオイルをいわゆるカバースロットによって戻すことも可能である。ただし、両方の実施形態の組み合わせも適用される。
【0003】
レシプロピストンエンジン用のピストンは、主としてアルミニウム合金製であるが、鋳鉄製及びスチール製のものもある。この場合、アルミニウムのブランクは、金型で鋳造されるか又は鍛造される。その後、ジャケット面、バルブポケット、ピストンリング溝、並びにピストンボルト孔が機械的に加工される。
【0004】
これに対してスチール製のピストンがある。これらスチール製ピストンは、アルミニウム製ピストンと比べて約半分しか膨張しないため、アルミニウムハウジング内の遊びが小さくなり、従って摩擦が約40~50パーセント低減される。更に、熱力学的効率が向上する。なぜなら、スチールの熱伝導率はより小さいため、部品温度が上昇し、着火性能の向上及び燃焼時間の短縮がもたらされるからである。
【0005】
しかしながら、スチール製ピストンは大きな欠点を有する。なぜなら、オイルスクレーパ溝内におけるオイルを排出するためのダクトの製造に大きなコストがかかるからである。従って、スチール製ピストンにおいては、排出用のダクトをもはや設けない傾向があり、オイル消費の問題が生じることが多い。
【0006】
特許文献1から、レシプロピストン用のオイルスクレーパリングが既知である。このオイルスクレーパリングは、一対のレールを備え、これらレールは、距離を置いて保持されると共に、半径方向外側に向けて延在し、これによりばね圧を受ける唯一の部分としてシリンダ壁に接触する。レール間には、オイル収集溝が形成されている。この場合にリングは、ピストンヘッドとは反対の下側において、周方向に分布すると共に、距離をおいて保持された中間ピースを備える。これら中間ピースは、通路及び開口を介してピストン内部空間に連通するオイル収集チャンバがレールの下方に形成されるよう、半径方向に寸法決めされ、オイル収集溝は、そのオイル収集溝を形成するレール間にピストン内部空間への接続部を有さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、排油孔(オイルドレン孔)を備えないピストン用のオイルスクレーパリングが最適化されたオイル掻き取り効果を有し、従って油膜の弱体化又は引き裂きが回避されるようオイルスクレーパリングを形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1態様によれば、本発明は、内燃機関のピストン用のオイルスクレーパリングに関し、ピストンのオイルスクレーパリング溝は、少なくとも1つの排油孔なしで配置されている。オイルスクレーパリングは、上側リング側面と、下側リング側面と、リング内側と、リング外側と、2つの当接面とを有するリング本体を備える。軸線方向に互いに離間しつつ周方向に延在すると共に、リング外側から半径方向外側に向けて延在する上側オイルスクレーパレール及び下側オイルスクレーパレールは、リング外側に配置されている。更に、半径方向に延在するオイル通路は、上側スクレーパレールと下側スクレーパレールとの間の領域に配置されている。これに加えて、下側リング側面には、半径方向に延在する少なくとも1つの溝が形成されている。
【0010】
本発明に係るオイルスクレーパリングの利点は、掻き取られたオイルが、オイル収集溝からリング後方のオイル通路を通って流出し、そこから下側リング側面の少なくとも1つの溝を通ってピストンとシリンダとの間の隙間から流出できることである。この場合、ピストンにおけるオイルスクレーパリング溝には、いかなる排油孔も設ける必要がない。この実施形態において、オイルは、ピストンリング下方に運ばれるだけであるため、ピストンとシリンダとの間の油膜の弱体化及び引き裂きが生じないことが保証される。ピストンリング下方のオイル量がより多いため、潤滑不足を解消することができる。
【0011】
オイルスクレーパリングの例示的な実施形態において、少なくとも1つの溝は、一定の深さ及び/又は一定の幅を有する。このような形状の製造は、コスト効率が高い。このタイプの溝形状は、掻き取られたオイルの一定の排出を可能にする。
【0012】
オイルスクレーパリングの他の例示的な実施形態において、少なくとも1つの溝は、半径方向において内側から外側に向けて減少する深さ又は幅を有する。このような溝形状の利点は、オイルの流出をより容易に制御できることである。なぜなら、溝の最小断面積だけが流出量を決めるからである。更に、この溝形状により、半径方向において外側から内側に向けてオイルの流れが減少し、従って潤滑不足を回避することができる。
【0013】
オイルスクレーパリングの更なる実施形態において、少なくとも1つの溝は、半円形の断面を有する。半円形の断面は、技術的に有利に孔開け可能であると共に、妨害の影響を受けない流出形状を提供する。
【0014】
オイルスクレーパリングの更なる実施形態において、少なくとも1つの溝の溝底は、半円形に形成され、溝側面は、対向配置された溝側面と平行に整列されている。溝底における半円形の断面は、技術的に有利に孔開け可能であると共に、妨害の影響を受けないオイル流出表面を提供し、これにより後続する平行な溝側面がオイル流出量を増加させる。
【0015】
オイルスクレーパリングの更なる例示的な実施形態においては、幾つかの溝が設けられ、これら溝は、周方向において下側リング側面上に等角度間隔で配置されている。これにより、摺動面全体における潤滑不足を回避するために、一定のオイル流出が保証される。この場合、等角度間隔とは、周方向において隣接する2つの溝を指す。更に、リングギャップを各溝の1つとして見なすのが好適である。
【0016】
ピストンリングの一実施形態において、溝の数がn>1の場合、各溝は、少なくとも1つの溝の他の溝に対して360/(n+1)°の角度距離で配置され、また、オイルスクレーパリングギャップに最も近い位置にある溝は、オイルスクレーパリングの中心点を基準として、オイルスクレーパリング平面内又はオイルスクレーパリング投影面内のオイルスクレーパリングギャップからやはり360/(n+1)°の角度距離を有する。これら仕様は、最大で±3°の偏差を有することができる。溝のこの配置により、摺動面全体の全周における潤滑不足を回避するために、一定のオイル流出が保証される。対称的に配置された溝の製造は、有利に実現可能である。
【0017】
オイルスクレーパリングの他の例示的な実施形態において、6つの溝は、オイルスクレーパリング上に配置され、これら6つの溝は、中心点を基準として、オイルスクレーパリング平面内又はオイルスクレーパリング投影面内にて、当接面から又は当接面からそれぞれ14.5°~30.5°、104.5°~120.5°、149.5°~165.5°、194.5°~210.5°、239.5°~255.5°、329.5°~345.5°、好適には、17.5°~27.5°、107.5°~117.5°、152.5°~162.5°、197.5°~207.5°、242.5°~252.5°、332.5°~342.5°、特に好適には、20.5°~24.5°、110.5°~114.5°、155.5°~159.5°、200.5°~204.5°、245.5°~249.5°、335.5°~339.5°の角度距離で配置されている。溝の数が6つであるのが有利であり、これは6つの溝によって最適なオイル流出が保証され、従って摺動面全体における潤滑不足が回避されるからである。溝の位置の対称性は、技術的にコストが最適である。
【0018】
オイルスクレーパリングの更なる実施形態において、オイルスクレーパリングの内側には、溝が設けられ、その溝は、周方向に延在すると共に、その内部にエキスパンダスプリング、好適には管状スプリングが挿入されている。1ピース構造のオイルスクレーパリングと比べて、この2ピース構造のオイルスクレーパリングは、断面積が大幅に小さい。従って、リング本体は比較的柔軟であり、極めて良好な型充填能力を有する。リング内側の溝は、管状スプリングのスプリングベッドを形成し、その断面は、半円形又はV字形に形成されている。オイルスクレーパリングのスクレーパレールがシリンダ内側に対して押圧される力は、耐熱性ばね鋼で構成されたエキスパンダスプリング、好適には管状スプリングに由来する。作動中、スプリングは、リング本体の裏側にしっかりと当接し、リング本体と一緒にユニットを形成する。スプリングはリングに対して回転しないが、オイルスクレーパリング全体は、他のリングと同様に、作動中はピストンリング溝内で周方向に回転する。2ピース構造のオイルスクレーパリングの場合、コイルスプリングの全周に亘って接触圧力が均一に大きいため、半径方向の圧力分布は常に対称的である。
【0019】
本発明の更なる態様によれば、本発明は、少なくとも1つのオイルスクレーパピストンリング溝を備えるピストンに関し、そのピストンは、スクレーパピストンリング溝からクランクケース方向に排油開口を備えず、オイルスクレーパリングは、オイルスクレーパリング溝内に配置され、ピストンは、スチール製又はアルミニウム製である。
【0020】
排油開口を備えないアルミニウム製ピストン又はスチール製ピストンを提供することが想定されている。スチール製ピストンの場合、排油開口を設けることは特にコスト高である。しかしながら、スチール製ピストンの利点は、それがアルミニウム製ピストンの半分しか膨張しないことであり、従ってアルミニウムハウジング内におけるスチール製ピストンの遊びをより小さくすることができる。これにより、シリンダ内におけるピストンの有効な遊びが大きくなり、摩擦が低減される。
【0021】
スチール製ピストンは強度がより大きいため、作動時における摩擦の利点が更に実現されると共に、熱力学的効率が向上し、従って内燃機関がより高温で作動することができる。スチール製ピストンの全高は、アルミニウム製ピストンの場合よりも小さくすることができ、従ってエンジン全体をより小さく設計することができる。この場合、より小さな全高、従ってより平坦なエンジンブロックにより、従来の設計と比べて、軽量化及び/又は大きな点火圧力を実現することができる。上述したオイルスクレーパリングの使用により、オイルスクレーパリング溝からクランクケース方向に排油孔を有さないオイルスクレーパリング溝を使用することができる。
【0022】
更なる態様によれば、本発明は、上述したオイルスクレーパリングの1個が設けられた少なくとも1個のピストンを備える内燃機関に関する。
【0023】
更なる態様によれば、本発明は内燃機関に関し、そのピストンは、スチール製又はアルミニウム製である。
【0024】
排油孔を有さないピストンリング溝におけるスクレーパリングの使用可能性が、従来技術に対して区別されるものである。オイルスクレーパリングは、オイル通路に加えて、半径方向に延在する溝を備え、これら溝の形状的な組み合わせにより、最適なオイル掻き取り挙動が保証される。リング内側からクランクケース方向及びその反対方向への系統的なオイルの流れにより、油膜が切れるか又は薄くなり過ぎることが回避される。下側リング側面の支持面と溝の開口面の比率は、排油開口を備えないピストン、特に排油開口を備えないスチール製ピストンの場合、より大きな機械的な力及び温度によって更に有利である。なぜなら、支持面が比較的小さいとピストンの焼き付きが促進されるからである。
【0025】
以下、本発明の例示的な実施形態を概略的な図面を参照しつつ以下においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るオイルスクレーパリングを示す説明図である。
【
図2】オイルスクレーパリングにおける溝の配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、排油手段を備えないピストン2におけるオイルスクレーパピストンリング溝4に装着されたオイルスクレーパリングの断面図を示す。オイルスクレーパリングは、上側リング側面8、下側リング側面10、リング内側12、並びにリング外側14を備える。上側リング側面8は、燃焼室側に配置され、下側リング側面は、クランクケース側に配置されている。リング外側14には、2個のオイルスクレーパリングが間隔を置いて配置されている。上側オイルスクレーパレール20は、燃焼室側に配置され、下側オイルスクレーパレール22は、クランクケース側に配置されている。2個のオイルスクレーパレール20,22は、ピストンの摺動面(走行面)を形成するシリンダ内壁(図示せず)からオイルを掻き取る。
【0028】
リング本体6には、2種類のオイル通路が配置されている。一方のオイル通路24は、2個のオイルスクレーパレール20,22間に配置されると共に、半径方向においてリング内側に向けて延在している。2個のオイルスクレーパレール間に蓄積するオイルは、オイル通路24を通ってリング内側12に排出することができる。他方の溝26においては、下側リング側面10上に配置されると共に、オイルがリング内側12からリング外側14に向けてのみならずリング外側14からリング内側12に向けて流れることができる。オイル通路24及び溝26は、何れもリング本体6の半径方向に延在している。軸線方向は、ピストン2の長手方向軸線又はピストンの移動方向に対応しており、半径方向と直交している。
【0029】
図1は、内部にエキスパンダスプリング、好適には管状スプリングが延在する周方向の溝32を更に示す。エキスパンダスプリングは、円として図示されている。1ピース構造のオイルスクレーパリングと比べて、エキスパンダスプリングを備える2ピース構造のオイルスクレーパリングは、断面積が大幅に小さい。従って、リング本体6は比較的柔軟であり、エキスパンダスプリングと組み合わせて極めて良好な型充填能力を示す。オイルスクレーパリングは、主にエキスパンダスプリングによってシリンダ壁に対して押圧される。エキスパンダスプリングは、耐熱性ばね鋼で製造される。2ピース構造のオイルスクレーパリングの場合、コイルスプリングの全周に亘って接触圧力が均一に大きいため、半径方向の圧力分布は常にほぼ対称的である。寿命を延ばすために、エキスパンダスプリングの外径は、研磨されるか、当接面16、18上により強く巻かれるか、又はテフロンチューブで覆われる。これら措置により、支持面が拡大され、表面負荷が低減され、更にはリング本体6とエキスパンダスプリングとの間の摩擦や摩耗が低減される。リング本体6は、アルミニウム、ねずみ鋳鉄、又はスチールで製造される。
【0030】
図2は、リング本体6における軸線方向の平面図を示す。この場合、当接面16,18、オイルスクレーパギャップ28、並びにオイルスクレーパリングの中心点30が図示されている。
【符号の説明】
【0031】
2 ピストン
4 オイルスクレーパピストンリング溝
6 リング本体
8 上側リング側面
10 下側リング側面
12 リング内側
14 リング外側
16,18 当接面
20 上側オイルスクレーパレール
22 下側オイルスクレーパレール
24 オイル通路
26 溝
28 オイルスクレーパリングギャップ
30 オイルスクレーパリングの中心点
32 周方向に延在する溝
【手続補正書】
【提出日】2022-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の
オイルスクレーパピストンリング(2)であって、
ピストン(2)のオイルスクレーパ
ピストンリング溝(4)が、少なくとも1つの排油孔なしで配置され、前記オイルスクレーパ
ピストンリングが、
・上側リング側面(8)と、
・下側リング側面(10)と、
・リング内側(12)と、
・リング外側(14)と、
・2つの当接面(16,18)と、
を有するリング本体(6)を備え、
軸線方向に互いに離間しつつ周方向に延在すると共に、前記リング外側(14)から半径方向外側に向けて延在する上側オイルスクレーパレール(20)及び下側オイルスクレーパレール(22)が、前記リング外側(14)上に配置され、
半径方向に延在するオイル通路(24)が、前記上側スクレーパレール(20)と前記下側オイルスクレーパレール(22)との間の領域に配置され、
前記下側リング側面(10)上に、半径方向に延在する1つ以上の溝(26)が形成されている
オイルスクレーパピストンリングにおいて、
前記少なくとも1つの溝(26)が、半径方向において内側から外側に向けて減少する深さ又は幅を有し、前記オイルスクレーパリングの前記リング内側(12)に、溝(32)が設けられ、該溝(32)が、周方向に延在すると共に、その内部にエキスパンダスプリング、好適には管状スプリングが挿入されていることを特徴とするオイルスクレーパ
ピストンリング。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルスクレーパリングであって、前記
複数の溝(26)が、半円形の断面を有する、オイルスクレーパリング。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイルスクレーパリングであって、
前記幾つかの溝(26)が、周方向において前記下側リング側面(10)上に等角度間隔で配置されている、オイルスクレーパリング。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のオイルスクレーパリングであって、溝(26)の数がn>1の場合、各溝(26)が、前記少なくとも1つの溝(26)の他の溝に対して360/(n+1)°の角度距離で配置され、また、オイルスクレーパリングギャップ(28)に最も近い位置にある溝(26)が、前記オイルスクレーパリングの中心点(30)を基準として、オイルスクレーパリング平面内又はオイルスクレーパリング投影面内の前記オイルスクレーパリングギャップからやはり360/(n+1)°の角度距離を有する、オイルスクレーパリング。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか一項に記載のオイルスクレーパリング(2)であって、6つの溝(26)が、前記オイルスクレーパリング上に配置され、前記6つの溝(26)が、前記中心点(30)を基準として、オイルスクレーパリング平面内又はオイルスクレーパリング投影面内にて、前記当接面(16)から又は前記当接面(18)からそれぞれ14.5°~30.5°、104.5°~120.5°、149.5°~165.5°、194.5°~210.5°、239.5°~255.5°、329.5°~345.5°、好適には、17.5°~27.5°、107.5°~117.5°、152.5°~162.5°、197.5°~207.5°、242.5°~252.5°、332.5°~342.5°、特に好適には、20.5°~24.5°、110.5°~114.5°、155.5°~159.5°、200.5°~204.5°、245.5°~249.5°、335.5°~339.5°の角度距離で配置されている、オイルスクレーパリング。
【国際調査報告】