(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-17
(54)【発明の名称】電極および前記電極を含む二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20231010BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519386
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2022003846
(87)【国際公開番号】W WO2022197158
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036124
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】テ・ゴン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・クァク
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA22
5H050EA24
5H050FA16
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA11
(57)【要約】
本発明は、電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、電極活物質と、導電材と、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate))とを含み、前記導電材は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比は、1:3~1:30である電極およびこれを含む二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質層を含み、
前記電極活物質層は、
電極活物質と、
導電材と、
SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)とを含み、
前記導電材は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、
前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比は、1:3~1:30である、電極。
【請求項2】
前記SDSは、前記電極活物質層内に0.1重量%~5重量%含まれる、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ構造体は、前記電極活物質層内に0.01重量%~0.5重量%含まれる、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
前記電極内で、前記カーボンナノチューブ構造体は、互いに連結されて網構造を示す、請求項1から3の何れか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ構造体内で、
前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して配列されて結合している、請求項1から4の何れか一項に記載の電極。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブ構造体の平均直径は、2nm~200nmである、請求項1から5の何れか一項に記載の電極。
【請求項7】
前記電極活物質層は、ポリビニリデンフルオライドをさらに含む、請求項1から6の何れか一項に記載の電極。
【請求項8】
前記ポリビニリデンフルオライドの重量平均分子量は、10,000g/mol~1,000,000g/molである、請求項7に記載の電極。
【請求項9】
前記ポリビニリデンフルオライドは、酸官能基およびエステル官能基のうち少なくとも一つの官能基を含む変性ポリビニリデンフルオライドを含む、請求項7または8に記載の電極。
【請求項10】
前記官能基は、前記変性ポリビニリデンフルオライド内に0.1重量%~5重量%含まれる、請求項9に記載の電極。
【請求項11】
前記電極は、正極である、請求項1から10の何れか一項に記載の電極。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の電極を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年3月19日付けの韓国特許出願第10-2021-0036124号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、電極およびこれを含む二次電池に関し、電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、電極活物質と、導電材と、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate))とを含み、前記導電材は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比は、1:3~1:30であることができる。
【背景技術】
【0003】
電気化学的エネルギーを用いる電気化学素子の代表的な例として、二次電池が挙げられ、その使用領域が次第に拡大している傾向にある。最近、ポータブルコンピュータ、携帯電話、カメラなどのポータブル機器に関する技術の開発と需要が増加するに伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加しており、そのような二次電池のうち、高いエネルギー密度、すなわち、高容量のリチウム二次電池に関する多くの研究が行われており、また商用化され、広く使用されている。
【0004】
一般的に、二次電池は、正極、負極、電解質、およびセパレータで構成される。正極および負極は、一般的に、電極集電体と、電極集電体上に形成された電極活物質層からなり、前記電極活物質層は、電極活物質、導電材、バインダーなどを含む電極スラリー組成物を電極集電体上に塗布、乾燥した後、圧延する方式で製造される。
【0005】
一方、従来、二次電池用導電材として、カーボンブラックのような点型導電材が主に使用されていたが、このような点型導電材の場合、電気伝導性の向上効果が十分ではないという問題があった。このような問題を改善するために、カーボンナノチューブ(Carbon NanoTube、CNT)やカーボンナノファイバー(Carbon NanoFiber、CNF)のような線状導電材およびグラフェンのようなシート状導電材を適用する方法に関する研究が活発に行われている。
【0006】
しかし、グラフェンのようなシート状導電材は、電気伝導性には優れるが、薄い厚さを有する単層(single layer)のグラフェンは製造が難しいという問題があり、厚さが厚いグラフェンを使用する場合、電池効率が低下する問題がある。また、シート状導電材の場合、広いシート状接触によって電池内で電解液の移動性が制限を受けるという問題がある。
【0007】
一方、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーのような線状導電材の場合、電気伝導性には優れるが、バンドル型または絡み合い型に成長する素材自体の特性上、スラリー内での分散性が劣ってコーティング性および工程性が低下し、電極活物質層内で均一に分布しないという問題がある。このような問題点を改善するために、線状導電材に官能基などを導入して分散性を向上させようとする試みがあったが、この場合、官能基の存在によって表面副反応が発生し、電気化学特性が低下するという問題がある。
【0008】
また、カーボンナノチューブを用いるためには、バンドル型カーボンナノチューブを分散剤を使用して分散させた導電材分散液を使用することが一般的である。ただし、前記分散過程で、外力によってカーボンナノチューブの表面欠陥が多く発生し、カーボンナノチューブの機械的強度および電気伝導度が減少して、電極抵抗の増加、電池の寿命低下が発生する問題がある。また、分散したカーボンナノチューブのサイズも均一ではなく、電極接着力および電極寿命が低下する問題も発生する。
【0009】
したがって、表面欠陥を最小化することができ、比較的一定なサイズを有するカーボンナノチューブを含む電極の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする一課題は、表面欠陥を最小化することができ、比較的一定なサイズを有するカーボンナノチューブ構造体を含むことで、電極接着力、導電性、寿命特性が改善された電極を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記電極を含む二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によると、電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、電極活物質と、導電材と、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate))とを含み、前記導電材は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比は、1:3~1:30である電極が提供される。
【0013】
本発明の他の実施形態によると、前記電極を含む二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明による電極は、ロープ(rope)状のカーボンナノチューブ構造体(長い繊維状)が互いに連結されて網(network)構造を含むことから、電極内で導電性経路(path)の形成が効果的に行われることができる。これにより、極少量の導電材の含量でも電極内の電気伝導度を大きく改善することができる。また、前記網構造をなすカーボンナノチューブ構造体によって電極活物質層が強固に固定されて電極接着力が向上する効果を有する。また、前記電極内にSDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate))が含まれ、前記SDSがカーボンナノチューブ構造体の形成時に、カーボンナノチューブ構造体の表面に欠陥が生じることを最小化することから、電極の抵抗が減少し、電池の寿命を改善することができる。さらに、前記カーボンナノチューブ構造体の直径が所定の水準に形成されて、電極接着力および電池の寿命特性をより改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】サンプル1~5のカーボンナノチューブ構造体に対するXPS分析グラフである。
【
図2】製造例1のカーボンナノチューブ構造体分散液のSEM写真である。
【
図3】製造例3のカーボンナノチューブ構造体分散液のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0017】
本明細書で使用されている用語は、単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含む。
【0018】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、ステップ、構成要素またはこれらの組み合わせが存在することを脂定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、構成要素、またはこれらの組み合わせなどの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0019】
本明細書において、「%」は、明示的な他の表示がない限り、重量%を意味する。
【0020】
本明細書において、「比表面積」は、BET法によって測定したものであり、具体的には、BEL Japan社製のBELSORP-mini IIを用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出されることができる。
【0021】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0022】
電極
本発明による電極は、電極活物質層を含み、前記電極活物質層は、電極活物質と、導電材と、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate))とを含み、前記導電材は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体を含み、前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比は、1:3~1:30であることができる。
【0023】
前記電極は、電極活物質層を含むことができる。前記電極は、集電体をさらに含むことができ、そのような場合、前記電極活物質層は、前記集電体の片面または両面上に配置されることができる。
【0024】
前記集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有する素材であれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、これらの合金、これらの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものまたは焼成炭素などが使用されることができる。
【0025】
前記集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもできる。また、前記電極集電体は、例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0026】
前記電極活物質層は、電極活物質、導電材、およびSDSを含むことができる。
【0027】
前記電極活物質は、当該技術分野において一般的に使用される正極活物質または負極活物質であることができ、その種類が特に限定されるものではない。
【0028】
例えば、正極活物質としては、コバルト、マンガン、ニッケルまたはアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムを含むリチウム酸化物が使用されることができる。より具体的には、前記リチウム酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O、LiMnO3など)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoO2など)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiO2など)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-Y1MnY1O2(ここで、0<Y1<1)、LiNiZ1Mn2-Z1O4(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y2CoY2O2(ここで、0<Y2<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y3MnY3O2(ここで、0<Y3<1)、LiMn2-Z2CoZ2O4(ここで、0<Z2<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン系酸化物(例えば、Li(NiP1CoQ1MnR1)O2(ここで、0<P1<1,0<Q1<1,0<R1<1、P1+Q1+R1=1)またはLi(NiP2CoQ2MnR2)O4(ここで、0<P2<2、0<Q2<2、0<R2<2、P2+Q2+R2=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-その他の金属(M)酸化物(例えば、Li(NiP3CoQ3MnR3M1
S)O2(ここで、M1は、Al、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Ta、Nb、Mg、B、WおよびMoからなる群から選択され、P3、Q3、R3およびSは、それぞれ独立した元素の原子分率として、0<P3<1、0<Q3<1、0<R3<1、0<S<1、P3+Q3+R3+S=1である)など)などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の化合物が含まれることができる。
【0029】
一方、負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOv(0<v<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体、Ag-C複合体、またはSN-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。
【0030】
前記のような電極活物質は、電極活物質層の全重量に対して、70重量%~99.5重量%、好ましくは80重量%~99重量%含まれることができる。電極活物質の含量が前記範囲を満たすと、優れたエネルギー密度、電極接着力および電気伝導度を実現することができる。
【0031】
前記導電材は、カーボンナノチューブ構造体を含むことができる。
【0032】
前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体を含むことができる。具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体であることができ、より具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体は、2個~4,500個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体であることができる。さらに具体的には、前記カーボンナノチューブ構造体の分散性と電極の耐久性を考慮して、前記カーボンナノチューブ構造体は、2個~50個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体であることが最も好ましい。
【0033】
前記カーボンナノチューブ構造体内で前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して配列されて結合し(単位体の長軸が互いに平行に結合して柔軟性を有する円筒状の構造)、前記カーボンナノチューブ構造体を形成することができる。前記電極内で前記カーボンナノチューブ構造体は、互いに連結されて網(network)構造を示すことができる。
【0034】
カーボンナノチューブを含む従来の電極は、一般的に、バンドル型(bundle type)または絡み合い型(entangled type)カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ単位体またはマルチウォールカーボンナノチューブ単位体が互いにくっついているか絡み合っている形態)を分散媒で分散させて導電材分散液を製造した後、前記導電材分散液を使用して製造される。ここで、従来の導電材分散液内で前記カーボンナノチューブは完全に分散し、一本鎖状のカーボンナノチューブ単位体が分散した導電材分散液として存在する。前記従来の導電材分散液は、過剰な分散工程によって、前記カーボンナノチューブ単位体が容易に切断されて初期に比べて短い長さを有する。また、負極の圧延工程過程でも、前記カーボンナノチューブ単位体が容易に切断されることができ、電池の駆動時に、電極活物質の体積変化に応じて前記カーボンナノチューブ単位体が切断される問題がさらに発生する。そのため、電極の導電性が低下し、電池の入力特性、出力特性、および寿命特性が低下する問題がある。さらに、マルチウォールカーボンナノチューブ単位体の場合、節成長(滑らかな線状ではなく、成長過程で発生する欠陥によって節が存在)するメカニズムによって構造の欠陥率が高い。したがって、分散過程で、前記マルチウォールカーボンナノチューブ単位体は、より容易に切断され、前記単位体の炭素表面構造によるπ-πスタッキング(stacking)によって短く切断されたマルチウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに凝集(aggregation)しやすい。そのため、電極スラリー内でより均一に分散して存在することが難しい。
【0035】
これとは異なり、本発明の電極に含まれたカーボンナノチューブ構造体の場合、相対的に構造的欠陥なしに高い結晶性を維持するシングルウォールカーボンナノチューブ単位体2個~5,000個が互いに並行して結合した形態を有しているため、電池の駆動時にも切断されず、長さをスムーズに維持することができ、電極の導電性を維持することができる。また、高い結晶性を有するシングルウォールカーボンナノチューブ単位体の高い導電性により、電極の導電性を高めて、電池の入力特性、出力特性および寿命特性を大きく改善することができる。また、前記電極内で、前記カーボンナノチューブ構造体は、互いに連結されて網構造を有することができ、電極活物質の過剰な体積変化を抑制するとともに、強い導電性経路を確保することができ、電極活物質の脱離を抑制し、電極接着力が大きく向上することができる。
【0036】
前記カーボンナノチューブ構造体において、前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体の平均直径は、0.5nm~10nmであることができ、具体的には1nm~9nmであることができ、より具体的には1nm~6nmであることができる。前記平均直径を満たす時に、極少量の導電材の含量でも、電極内の導電性を極大化することができる効果がある。前記平均直径は、製造された電極を、TEMにより観察した時に、平均直径が大きい上位100個のシングルウォールカーボンナノチューブと下位100個のシングルウォールカーボンナノチューブの平均値に該当する。
【0037】
前記カーボンナノチューブ構造体において、前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体の平均長さは、1μm~100μmであることができ、具体的には5μm~50μmであることができる。前記平均長さを満たす時に、前記電極活物質の間の導電性連結のための長い導電性経路が形成されることができ、特有の網構造が形成されることができ、極少量の導電材の含量でも、電極内の導電性を極大化することができる効果がある。前記平均長さは、製造された電極を、TEMにより観察した時に、平均長さが大きい上位100個のシングルウォールカーボンナノチューブと下位100個のシングルウォールカーボンナノチューブの平均値に該当する。
【0038】
前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体の比表面積は、500m2/g~1,000m2/gであることができ、具体的には600m2/g~800m2/gであることができる。前記範囲を満たす時に、広い比表面積により、電極内の導電性経路がスムーズに確保されることができるため、極少量の導電材の含量でも、電極内の導電性を極大化することができる効果がある。前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体の比表面積は、具体的には、BEL Japan社製のBELSORP-mini IIを用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出されることができる。
【0039】
前記カーボンナノチューブ構造体の平均直径は、2nm~200nmであることができ、具体的には5nm~150nmであることができ、具体的には5nm~50nmであることができ、例えば、7nm~20nmである。前記範囲を満たすときに、導電性網構造(network)の形成に効果的であり、活物質の間の連結に有利であり、優れた電気伝導性を実現することができる。前記平均長さは、製造された電極を、SEMにより観察した時に、平均長さが大きい上位100個のカーボンナノチューブ構造体と下位100個のカーボンナノチューブ構造体の直径の平均値に該当する。
【0040】
前記カーボンナノチューブ構造体の平均長さは、1μm~500μmであることができ、具体的には5μm~300μmであることができ、具体的には5μm~150μmある。前記範囲を満たすときに、導電性網構造(network)の形成に効果的であり、活物質の間の連結に有利であり、優れた電気伝導性を実現することができる。前記平均長さは、製造された電極を、SEMにより観察した時に、平均長さが大きい上位100個のカーボンナノチューブ構造体と下位100個のカーボンナノチューブ構造体の長さの平均値に該当する。
【0041】
前記カーボンナノチューブ構造体は、前記電極活物質層内に0.01重量%~0.5重量%含まれることができ、具体的には0.01重量%~0.3重量%含まれることができる。前記範囲を満たす時に、電極の導電性経路が確保されて、電極抵抗が低い水準を維持し、且つ電池の寿命特性を改善することができる。導電材分散液の製造時に、バンドル型カーボンナノチューブを完全に分散(一般的な分散方法として、できるだけ一本鎖のカーボンナノチューブ単位体が互いに離れるように分散)する場合には、前記カーボンナノチューブ構造体が発生しないか、意に反して発生しても、非常に少ない量(例えば、0.0005重量%)で発生する。すなわち、前記含量範囲は、一般的な方法では決して達成することができない。
【0042】
電極がマルチウォールカーボンナノチューブ単位体を含む従来技術の場合、マルチウォールカーボンナノチューブ単位体の低い導電性を補完するために、高い含量(例えば、0.5重量%超)のマルチウォールカーボンナノチューブ単位体を使用しなければならなかった。また、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が完全に分散された導電材分散液を介して電極を製造する場合にも、前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が切断される問題によって、前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体を低い含量で使用することができなかった。
【0043】
一方、本発明の電極に含まれるカーボンナノチューブ構造体は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに並行して結合した形態を有している。したがって、電池の駆動時にも、切断されず、長さをスムーズに維持することができ、電極の導電性を維持することができ、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が有する高い導電性により電極の導電性がスムーズに確保されることができる。これにより、電極内でカーボンナノチューブ構造体の含量が低い水準であっても、電池の入力特性、出力特性、および寿命特性に優れることができる。
【0044】
一方、必須ではないが、前記シングルウォールカーボンナノチューブ単位体は、ポリビニリデンフルオライドの親和性の向上のために、酸化処理または窒化処理などにより表面処理されてもよい。
【0045】
前記SDSは、前記カーボンナノチューブ構造体上に配置されることができる。具体的には、前記SDSは、前記カーボンナノ構造体に含まれたシングルウォールカーボンナノチューブ単位体上に配置される。前記SDSは、前記カーボンナノ構造体上で前記カーボンナノチューブ構造体の表面欠陥が発生することを最小化する一種の「表面保護剤」の役割をする。また、前記カーボンナノチューブ構造体の形成時に、前記SDSは、一種の「分散安定剤」の役割をし、前記カーボンナノチューブ構造体がスムーズに分散するようにし、前記カーボンナノチューブ構造体の直径が一定な水準になるようにする役割をする。
【0046】
図1はサンプル1~5のカーボンナノチューブ構造体に対するXPS分析結果のグラフである(サンプル1~5は、順に(a)~(e)に対応する)。サンプル1は、カーボンナノチューブ構造体の表面に如何なる表面欠陥防止物質も配置されていないものであり、サンプル2~5は、カーボンナノチューブ構造体の表面にそれぞれPBA(ピレン酪酸(Pyrene Butyric Acid))、PSA(ピレンスルホン酸(Pyrene Sulfonic Acid))、PMA(ピレンメチルアミン(Pyrene Methyl-Amine))、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecyl-Sulfate))が配置されたものである。
図1を参照すると、SDSを使用したサンプル5以外は、機械的な外力による分散工程によってカーボンナノチューブの表面に欠陥が発生し、炭素と酸素の結合によって現れる微細なピーク(
図1の丸で表されている部分)が現れることが分かる。すなわち、線状の直鎖状分子構造末端にスルホネート(Sulfonate)アニオン官能基(SO
3
-)を含むSDSを使用する場合、SDSがカーボンナノチューブ構造体の表面を線状に包み、且つ分散過程でもカーボンナノチューブ構造体の欠陥を最小化することができる。SDSを使用する場合、
図1のXPS表面分析の結果から炭素と酸素の結合が全く観察されなかった。また、SDS末端のスルホネートアニオン官能基(SO
3
-)の反発力によってカーボンナノチューブ構造体の分散均一度が向上することができる。
【0047】
前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比は、1:3~1:30であることができ、具体的には1:3~1:20、より具体的には1:5~1:10であることができる。前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比が1:3~1:30から逸脱し、前記SDSの含量がより少なくなる場合、前記SDSによるカーボンナノチューブ構造体の表面欠陥の最小化効果が不十分になる問題がある。逆に、前記SDSの含量が1:3~1:30から逸脱し、より多い場合、電極での副反応の発生が激しく、電気伝導度が低下する問題がある。
【0048】
一方、最も好ましくは、前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比は、1:5~1:10であることができる。1:5~1:10の範囲を満たす場合、カーボンナノチューブ構造体の表面欠陥を最小化することができ、且つ原料であるバンドル型カーボンナノチューブの過剰な分散(debundling)が効果的に抑制されることができ、好ましい直径および長さのカーボンナノチューブ構造体が導き出されることができる。
【0049】
前記SDSは、前記電極活物質層内に0.1重量%~5重量%含まれることができ、具体的には0.1重量%~3重量%含まれることができ、より具体的には0.1重量%~1.5重量%、例えば、0.4重量%~1.0重量%含まれることができる。前記範囲を満たす場合、前記SDSにより、前記カーボンナノチューブ構造体の表面欠陥が効果的に防止されることができる。また、前記範囲は低い水準の含量であり、これは、前記SDSが、完全に分散したシングルウォールカーボンナノチューブ単位体上に配置されるものではなく、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体上に配置されるためである。具体的には、完全に分散したシングルウォールカーボンナノチューブ単位体ではなく、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合したカーボンナノチューブ構造体が形成される時には、バンドル型カーボンナノチューブが分離する程度が少ないため、これによってカーボンナノチューブ構造体の内部にあるシングルウォールカーボンナノチューブ単位体は直接せん断力を受けないため、相対的に表面欠陥が発生する可能性が少ない。したがって、少ない含量のSDS(0.1重量%~5重量%)でも、カーボンナノチューブ構造体の表面欠陥を最小化することができる。
【0050】
前記電極活物質層は、ポリビニリデンフルオライドをさらに含むことができる。前記ポリビニリデンフルオライドは、電極スラリーの製造に必要な導電材分散液から電極に含まれ始める物質であることができる(場合に応じて、電極スラリーの製造時にバインダーの役割を補強するためにさらに投入され得る)。前記ポリビニリデンフルオライドは、前記導電材分散液内でバンドル型のカーボンナノチューブの分散がスムーズに行われることを容易にする役割をする。
【0051】
前記ポリビニリデンフルオライドの重量平均分子量は、10,000g/mol~1,000,000g/molであることができ、具体的には100,000g/mol~900,000g/molであることができる。前記範囲を満たす場合、前記ポリビニリデンフルオライドがバンドル型のカーボンナノチューブ内のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体の間に容易に浸透し得るため、前記バンドル型カーボンナノチューブの適切な分散が可能であり、前記導電材分散液上の安定性を改善することができる。
【0052】
前記ポリビニリデンフルオライドは、前記電極活物質層内に0.1重量%~10.0重量%含まれることができ、具体的には0.2重量%~5.0重量%、より具体的には0.2重量%~2.5重量%含まれることができる。前記範囲を満たす場合、前記カーボンナノチューブ構造体が均一に分散し、電極のエネルギー密度が高く、電極接着力に優れることができる。
【0053】
前記ポリビニリデンフルオライドは、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体との親和性を向上させるために、親水性官能基に変性された変性ポリビニリデンフルオライドを含むことができる。具体的には、前記ポリビニリデンフルオライドは酸官能基およびエステル官能基のうち少なくとも一つの官能基を含む変性ポリビニリデンフルオライドを含むことができる。前記変性ポリビニリデンフルオライドの前記官能基は、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体と相互作用して、前記カーボンナノチューブ構造体の分散性を改善し、且つ電極接着力をより向上させることができる。
【0054】
前記官能基は、前記変性ポリビニリデンフルオライド内に0.1重量%~5重量%含まれることができ、具体的には0.3重量%~3重量%含まれることができる。前記範囲を満たす場合、前記カーボンナノチューブ構造体の分散性をより改善し、且つ電極接着力をより向上させることができる。
【0055】
前記変性ポリビニリデンフルオライドは、前記ポリビニリデンフルオライドの全重量に対して1重量%~100重量%含まれることができ、具体的には1重量%~50重量%含まれることができ、より具体的には1重量%~20重量%であることができる。前記範囲を満たす場合、前記カーボンナノチューブ構造体の分散性がより高くなって、電極接着力をより改善することができる。
【0056】
前記電極活物質層は、バインダーをさらに含むことができる。前記バインダーは、電極活物質の間または電極活物質と集電体との接着力を確保するためのものであり、当該技術分野において使用される一般的なバインダーが使用されることができ、その種類が特に限定されるものではない。前記バインダーとしては、例えば、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。
【0057】
前記バインダーは、電極活物質層の全重量に対して10重量%以下で含まれることができ、好ましくは0.1重量%~5重量%含まれることができる。バインダーの含量が前記範囲を満たす場合、電極抵抗増加を最小化し、且つ優れた電極接着力を実現することができる。
【0058】
電極の製造方法
次に、本発明の電極の製造方法について説明する。
【0059】
本発明の電極の製造方法は、(1)バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブおよびSDSを分散媒に投入し、超音波破砕法で第1処理して混合物を準備するステップと、(2)前記混合物にポリビニリデンフルオライドを追加し、超音波破砕法で第2処理して、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに結合したカーボンナノチューブ構造体を含む導電材分散液を製造するステップと、(3)前記導電材分散液および電極活物質を含む電極スラリーを形成するステップとを含み、前記カーボンナノチューブ構造体および前記SDSの重量比は、1:3~1:30であることができる。前記方法により、上述の実施形態の電極が製造されることができる。前記SDSおよびカーボンナノチューブ構造体は、上述の実施形態のそれらと同一であるため、説明を省略する。
【0060】
(1)混合物を準備するステップ
前記混合物は、バンドル型カーボンナノチューブおよびSDSを分散媒に投入した後、超音波破砕法で第1処理して製造されることができる。前記バンドル型カーボンナノチューブは、上述のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が結合して束状に存在するものであり、普通、2個以上、実質的には500個以上、例えば、5,000個以上のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体を含む。
【0061】
前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブは、前記混合物内に0.1重量%~1.0重量%含まれることができ、具体的には0.2重量%~0.5重量%含まれることができる。前記範囲を満たす時に、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが適当な水準で分散し、適切水準のカーボンナノチューブ構造体が形成されることができ、分散安定性を改善することができる。
【0062】
前記SDSは、前記混合物内に0.1重量%~20重量%含まれることができ、具体的には1重量%~10重量%含まれることができる。前記範囲を満たす場合、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが適当な水準で分散し、最終的にカーボンナノチューブ構造体が形成されることができ、前記カーボンナノチューブ構造体上に前記SDSが配置されて、表面保護剤としての役割を果たすことができる。これにより、カーボンナノチューブ構造体の表面欠陥が最小化することができる。
【0063】
前記分散媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド系極性有機溶媒;メタノール、エタノ-ル、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール(n-ブタノール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブタノール)、2-ブタノール(sec-ブタノール)、1-メチル-2-プロパノール(tert-ブタノール)、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールまたはオクタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、またはヘキシレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、またはソルビトールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、またはテトラエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、またはシクロペンタノンなどのケトン類;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、およびε-プロピオラクトンなどのエステル類などが挙げられ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができるが、これに限定されるものではない。より具体的には、前記分散媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であることができる。
【0064】
前記混合物内で、固形分含量は、0.1重量%~20重量%であることができ、具体的には1重量%~10重量%であることができる。前記範囲を満たす場合、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが適当な水準で分散し、適切水準のカーボンナノチューブ構造体が形成されることができ、分散安定性を改善することができる。また、電極スラリーが電極製造工程に適する粘度と弾性を有することができ、電極スラリーの固形分含量を高めることにも役立つ。
【0065】
前記混合物内で前記バンドル型カーボンナノチューブを分散させるための第1処理工程は、超音波破砕法(sonification)、ホモゲナイザー、ビーズミル、ボールミル、バスケットミル、アトリションミル、万能撹拌機、クリアミキサー、スパイクミルまたはTKミキサーなどの混合装置を用いて行われることができる。中でも、超音波破砕法が好ましい。超音波破砕法は、強い強度の超音波が溶液の中に放出される時に、極限振動によって多量の真空状態のバブル(bubble)が発生し、このようなバブルは、瞬間的に互いに絡み合ったりまたは大きくなったりするが、直ぐ後に続く振動によって激しく連鎖的に破砕する。このようにバブルの連続した破砕が行われる時に、溶液の激しい流れ、または渦現象によって力強い衝撃波が発生し、このような衝撃波のエネルギーにより、バンドル型カーボンナノチューブを分散(Debundling)させることができる。前記超音波破砕法は、バンドル型カーボンナノチューブ内のシングルウォールカーボンナノチューブの長さ方向の切断なく、ナノ水準の微細な分散を可能にする。このような理由で、超音波破砕法方式が好ましい。
【0066】
前記超音波破砕法は、以下のとおりである。前記混合物に対して超音波を加えて前記混合物内の固形分を分散させることができる。
【0067】
ここで、前記超音波破砕法が行われる条件は、以下のとおりである。
【0068】
前記超音波破砕は、800W~1,500Wの出力で行われることができ、具体的には800W~1,200Wの出力で行われることができる。前記超音波破砕は、0.5時間~5時間行われることができ、具体的には1時間~3時間行われることができる。前記範囲を満たす時に、前記バンドル型カーボンナノチューブが適正な水準で分離し、前記カーボンナノチューブ構造体が形成されることができる。前記実施時間は、超音波破砕が適用される総時間を意味するため、例えば、数回の超音波破砕を行った場合、その数回にわたる総時間を意味する。
【0069】
(2)導電材分散液を製造するステップ
前記混合物に前記ポリビニリデンフルオライドが追加され、超音波破砕法で第2処理が行われることができる。
【0070】
前記ポリビニリデンフルオライドは、前記混合物内に0.1重量%~20重量%含まれることができ、具体的には1重量%~10重量%含まれることができる。前記範囲を満たす時に、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが適当な水準で分散し、適切水準のカーボンナノチューブ構造体が形成されることができ、分散安定性を改善することができる。
【0071】
前記ポリビニリデンフルオライドは、上述の実施形態のポリビニリデンフルオライドと同一であるため、説明を省略する。
【0072】
前記導電材分散液内で、前記バンドル型カーボンナノチューブと前記ポリビニリデンフルオライドの重量比は、1:0.1~1:10であることができ、具体的には1:1~1:10であることができる。前記範囲を満たす場合、前記バンドル型シングルウォールカーボンナノチューブが適当な水準で分散し、適切水準のカーボンナノチューブ構造体が形成されることができ、分散安定性を改善することができる。
【0073】
前記第2処理で使用される超音波破砕法の条件は、以下のとおりである。
【0074】
前記超音波破砕は、800W~1,500Wの出力で行われることができ、具体的には800W~1,200Wの出力で行われることができる。前記超音波破砕は、0.5時間~5時間行われることができ、具体的には1時間~3時間行われることができる。前記範囲を満たす時に、前記バンドル型カーボンナノチューブが適正な水準で分離し、前記カーボンナノチューブ構造体が形成されることができる。前記実施時間は、超音波破砕が適用される総時間を意味するため、例えば数回の超音波破砕を行った場合、その数回にわたる総時間を意味する。
【0075】
前記条件は、前記バンドル型カーボンナノチューブが適切な水準で分散し、製造された導電材分散液内で2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が互いに並行して結合しているカーボンナノチューブ構造体を形成するためのものである。これは、混合物の組成、超音波破砕条件などが厳格に調節される場合のみに達成することができる。
【0076】
また、前記SDSは、前記カーボンナノチューブ構造体上に存在することができる。
【0077】
(3)電極スラリー形成ステップ
前記のような過程により導電材分散液が製造されると、前記導電材分散液に電極活物質を混合して電極スラリーを形成する。ここで、前記電極活物質としては、上述の電極活物質が使用されることができる。
【0078】
また、前記電極スラリーには、必要に応じて、バインダーおよび溶媒がさらに含まれることができる。ここで、前記バインダーとしては、上述の実施形態のバインダーが使用されることができる。前記溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド系極性有機溶媒;メタノール、エタノ-ル、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール(n-ブタノール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブタノール)、2-ブタノール(sec-ブタノール)、1-メチル-2-プロパノール(tert-ブタノール)、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールまたはオクタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、またはヘキシレングリコールなどのグリコール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、またはソルビトールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、またはテトラエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、またはシクロペンタノンなどのケトン類;酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、およびε-プロピオラクトンなどのエステル類などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができるが、これに限定されるものではない。前記溶媒は、先に分散液に使用された分散媒と同一もしくは相違していてもよく、好ましくは、N-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)であることができる。
【0079】
一方、ここで、前記電極活物質は、電極スラリー内の全固形分含量に対して70重量%~99.5重量%、好ましくは80重量%~99重量%含まれることができる。電極活物質の含量が前記範囲を満たす時に、優れたエネルギー密度、電極接着力および電気伝導度を実現することができる。
【0080】
また、バインダーがさらに含まれる場合、前記バインダーは電極スラリー内の全体固形分含量に対して10重量%以下、具体的には0.1重量%~5重量%含まれることができる。
【0081】
前記電極スラリー内で固形分含量は、60重量%~80重量%であることができ、具体的には65重量%~75重量%であることができる。前記範囲を満たす場合、電極スラリーを塗布してから乾燥する時に、溶媒の蒸発による導電材、バインダーのマイグレーション(migration)が抑制されることができ、電極接着力と電気伝導度に優れた電極が製造されることができる。さらに、圧延時に、電極の変形が少ない高品質の電極が製造されることができる。
【0082】
前記カーボンナノチューブ構造体は、前記電極スラリーの固形分内に0.01重量%~0.5重量%含まれることができ、具体的には0.02重量%~0.2重量%含まれることができる。前記範囲を満たす時に、電極の導電性経路が確保されて、電極抵抗が低い水準を維持し、且つ電池の寿命特性を改善することができる。
【0083】
次に、前記のように製造された電極スラリーを塗布し、乾燥して、電極活物質層を形成する。具体的には、前記電極活物質層は、電極集電体上に電極スラリーを塗布した後、乾燥する方法、または電極スラリーを別の支持体上に塗布した後、この支持体から剥離して得られたフィルムを電極集電体上にラミネートする方法により形成することができる。必要に応じて、前記のような方法により電極活物質層が形成した後、圧延する工程をさらに実施することができる。
【0084】
ここで、乾燥および圧延を、最終的に製造しようとする電極の物性を考慮して、適切な条件で行うことができ、特に限定されない。
【0085】
二次電池
次に、本発明による二次電池について説明する。
【0086】
本発明による二次電池は、上述の本発明の電極を含む。ここで、前記電極は、正極および負極のうち少なくとも一つであることができる。具体的には、本発明による二次電池は、正極と、負極と、前記正極と負極との間に配置されたセパレータと、電解質とを含むことができ、ここで、前記正極および負極のうち少なくとも一つ以上が上述の本発明の電極、すなわち、電極活物質およびカーボンナノチューブ構造体を含む電極活物質層を含む電極であることができる。好ましくは、本発明の電極は、正極であることができる。本発明による電極については上述したため、具体的な説明は省略し、以下では、残りの構成要素についてのみ説明する。
【0087】
前記セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記セパレータとして、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0088】
前記電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0089】
具体的には、前記電解質は、非水系有機溶媒と金属塩とを含むことができる。
【0090】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用されることができる。
【0091】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒として誘電率が高いことからリチウム塩をよく解離させるため好ましく使用されることができ、このような環状カーボネートにジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の直鎖状カーボネートを適当な割合で混合して使用すると、高い電気伝導率を有する電解質を製造することができ、より好ましく使用されることができる。
【0092】
前記金属塩は、リチウム塩を使用することができ、前記リチウム塩は、前記非水電解液に溶解されやすい物質であり、例えば、前記リチウム塩のアニオンとしては、F-、Cl-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-および(CF3CF2SO2)2N-からなる群から選択される1種を使用することができる。
【0093】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。
【0094】
前記のような本発明による二次電池は、従来の二次電池に比べて電極接着力に優れ、高温で優れた寿命特性を有する。
【0095】
以下、具体的な実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0096】
製造例1:導電材分散液の製造
平均直径が1.5nmであり、平均長さが5μmであるシングルウォールカーボンナノチューブ単位体からなるバンドル型カーボンナノチューブ(比表面積が650m2/g)0.4重量部、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate))2.0重量部、およびポリビニリデンフルオライド(重量平均分子量:685,000g/mol、標準ホモポリマー(Standard Homo-polymer))2.0重量部を準備した。
【0097】
分散媒であるN-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)に前記バンドル型カーボンナノチューブとSDSを投入した後、第1超音波破砕法を行って前記バンドル型カーボンナノチューブを分散させた混合物を製造した。前記超音波破砕は、1,000Wの出力で30分間行った。
【0098】
前記混合物にポリビニリデンフルオライドを追加した後、超音波破砕を行って(1,000Wの出力で30分)、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合した形態のカーボンナノチューブ構造体を含む導電材分散液(固形分4.4重量%)を製造した。
【0099】
前記導電材分散液内で、前記カーボンナノチューブ構造体は0.4重量%、前記SDSは2.0重量%、前記ポリビニリデンフルオライドは2.0重量%であった。
【0100】
製造例2:導電材分散液の製造
前記ポリビニリデンフルオライドが酸官能基を2.1重量%含む変性ポリビニリデンフルオライド(重量平均分子量880,000g/mol)である以外は、製造例1と同じ方法で導電材分散液を製造した。
【0101】
製造例3:導電材分散液の製造
平均直径が1.5nmであり、平均長さが5μmであるシングルウォールカーボンナノチューブ単位体からなるバンドル型カーボンナノチューブ(比表面積が650m2/g)0.4重量部およびポリビニリデンフルオライド(重量平均分子量:685,000g/mol、(標準ホモポリマー(Standard Homo-polymer))2.0重量部を分散媒であるN-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)に混合し、固形分が2.2重量%になるように混合物を製造した。
【0102】
前記混合物を超音波破砕方法で撹拌し、バンドル型カーボンナノチューブを分散媒内に分散させて導電材分散液を製造した。ここで、超音波破砕は、1,000Wの出力で1.5時間行われた。前記導電材分散液は、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合した形態のカーボンナノチューブ構造体を含んでいる。前記導電材分散液内で前記カーボンナノチューブ構造体は0.4重量%、前記ポリビニリデンフルオライドは2.0重量%であった。
【0103】
製造例4:導電材分散液の製造
平均直径が10nmであり、平均長さが1μmであるマルチウォールカーボンナノチューブ単位体からなるバンドル型カーボンナノチューブ(比表面積が185m2/g)4.0重量部、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate))1.0重量部、および酸官能基を2.1重量%含む変性ポリビニリデンフルオライド(重量平均分子量880,000g/mol)0.8重量部を準備した。
【0104】
分散媒であるN-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)に前記マルチウォールカーボンナノチューブ単位体からなるバンドル型カーボンナノチューブとSDSを投入した後、第1超音波破砕法を行って、前記バンドル型カーボンナノチューブを分散させた混合物を製造した。前記超音波破砕は、1,000Wの出力で30分間行った。
【0105】
前記混合物にポリビニリデンフルオライドを追加した後、超音波破砕を行って(1,000Wの出力で30分)、導電材分散液(固形分5.8重量%)を製造した。
【0106】
前記導電材分散液内で、前記マルチウォールカーボンナノチューブは4.0重量%、前記SDSは2.0重量%、前記ポリビニリデンフルオライドは0.8重量%であった。
【0107】
製造例5:導電材分散液の製造
平均直径が1.5nmであり、平均長さが5μmであるシングルウォールカーボンナノチューブ単位体からなるバンドル型カーボンナノチューブ(比表面積が650m2/g)0.4重量部、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate))0.5重量部、およびポリビニリデンフルオライド(重量平均分子量:685,000g/mol、標準ホモポリマー(Standard Homo-polymer))2.0重量部を準備した。
【0108】
分散媒であるN-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)に前記バンドル型カーボンナノチューブとSDSを投入した後、第1超音波破砕法を行って、前記バンドル型カーボンナノチューブを分散させた混合物を製造した。前記超音波破砕は、1,000Wの出力で30分間行った。
【0109】
前記混合物にポリビニリデンフルオライドを追加した後、超音波破砕を行って(1,000Wの出力で30分)、2個~5,000個のシングルウォールカーボンナノチューブ単位体が並行して結合した形態のカーボンナノチューブ構造体を含む導電材分散液(固形分4.4重量%)を製造した。
【0110】
前記導電材分散液内で、前記カーボンナノチューブ構造体は0.4重量%、前記SDSは0.5重量%、前記ポリビニリデンフルオライドは2.0重量%であった。
【0111】
図2を参照すると、製造例1の導電材分散液内では、カーボンナノチューブ構造体が比較的均一な直径を有して形成されていることが分かる。一方、
図3を参照すると、製造例3の導電材分散液内では、カーボンナノチューブ構造体の直径が均一でないことが分かる。
【0112】
実施例および比較例
実施例1:正極の製造
製造例1の導電材分散液にLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)、変性ポリビニリデンフルオライド(変性PVDF、KF9700、重量平均分子量:880,000g/mol、酸官能基を2.1重量%を含む)を投入し、N-メチルピロリドン(NMP、N-methylpyrrolidone)をさらに投入し、固形分含量が70.1重量%である正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ20μmのAl薄膜集電体上に塗布した後、130℃で乾燥し、圧延して、正極活物質層を含む正極を製造した。
【0113】
前記正極活物質層で、前記LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)は97.9重量%、前記ポリビニリデンフルオライドは1.8重量%、前記SDSは0.25重量%、前記カーボンナノチューブ構造体は0.05重量%含まれる。前記ポリビニリデンフルオライド全重量に対して前記変性ポリビニリデンフルオライドの含量は1.55重量%であった。
【0114】
実施例2:正極の製造
前記正極活物質層で、前記LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)は97.6重量%、前記ポリビニリデンフルオライドは1.8重量%、前記SDSは0.5重量%、前記カーボンナノチューブ構造体は0.1重量%含まれ、前記ポリビニリデンフルオライドの全重量に対して前記変性ポリビニリデンフルオライドの含量が1.30重量%である以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0115】
実施例3:正極の製造
製造例1の導電材分散液の代わりに、製造例2の導電材分散液を使用した以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0116】
比較例1:正極の製造
製造例1の導電材分散液の代わりに、製造例5の導電材分散液を使用した以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0117】
前記正極活物質層で、前記LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)は98.0875重量%、前記ポリビニリデンフルオライドは1.8重量%、前記SDSは0.0625重量%、前記カーボンナノチューブ構造体は0.05重量%含まれ、前記ポリビニリデンフルオライドの全重量に対して前記変性ポリビニリデンフルオライドの含量が1.55重量%である以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0118】
比較例2:正極の製造
製造例1の導電材分散液の代わりに、製造例3の導電材分散液を使用した以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0119】
比較例3:正極の製造
製造例1の導電材分散液の代わりに、製造例3の導電材分散液を使用した以外は、実施例2と同じ方法で正極を製造した。
【0120】
比較例4:正極の製造
製造例1の導電材分散液の代わりに、製造例4の導電材分散液を使用した以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。前記正極活物質層で、前記LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)は97.3重量%、前記ポリビニリデンフルオライドは1.8重量%、前記SDSは0.3重量%、前記マルチウォールカーボンナノチューブは0.6重量%含まれ、前記ポリビニリデンフルオライドの全重量に対して前記変性ポリビニリデンフルオライドの含量が1.68重量%である以外は、実施例1と同じ方法で正極を製造した。
【0121】
実験例1:XPS表面欠陥の分析
平均直径が1.5nmであり、平均長さが5μmであるシングルウォールカーボンナノチューブ単位体からなるバンドル型カーボンナノチューブ(比表面積が650m2/g)とPBA、PSA、PMA、SDSをそれぞれ準備した。前記バンドル型カーボンナノチューブと前記PBA、PSA、PMA、SDSのいずれか一つの添加剤を分散媒であるNMPに投入し、1,000Wの出力で30分間超音波破砕を行った後、150℃の真空オーブンで24時間乾燥して表面処理された粉体を製造した。
【0122】
サンプル1:添加剤使用せず
サンプル2:PBA使用
サンプル3:PSA使用
サンプル4:PMA使用
サンプル5:SDS使用
【0123】
次に、卓上型ボール-ミル(ball-mill)装置(SungHo SIGMA)を用いて、それぞれのサンプル500gをジルコニアボールと混合した後、1,000RPMで30分間ボール-ミル処理を施した後、XPS(JPS-9000MC、JEOL、JAPAN)装置により表面欠陥を分析した。
図1のXPSスペクトル(Spectra)から分かるように、SDSを使用したサンプル5以外の残りのサンプルでは、いずれも、バンドル型カーボンナノチューブの表面欠陥によって発生した酸素官能基に該当するピークが288eV~290eV領域で観察された。一方、サンプル5では、このようなピークが観察されなかったため、表面欠陥の発生が抑制されたことが分かる。
【0124】
実験例2:正極の観察
実施例1(
図4)および比較例1(
図5)によって製造された正極の活物質層を走査電子顕微鏡を介して観察した。
【0125】
図4の正極を見ると、シングルウォールカーボンナノチューブ単位体が2~10個ずつ並行して結合したカーボンナノチューブ構造体がロープ(rope)状を有しており、カーボンナノチューブ構造体の平均直径が10nm水準、平均長さは5.8μm水準であり、概して均一な直径を有していることが分かる。
【0126】
一方、
図5の正極を見ると、100nm水準の平均直径を有し、全体的に比較的均一ではない直径を有するカーボンナノチューブ構造体が観察された。
【0127】
実験例3:正極スラリーの粉体抵抗の測定
実施例1~3および比較例1~4の正極製造に使用された正極スラリーを130℃の温度で3時間真空乾燥した後、粉砕して粉末を製造した。次に、Mitsubishi Chem Analytic社製のLoresta GP装置を用いて、25℃、相対湿度50%の雰囲気で、荷重9.8MPaの条件でペレットで製造した。次に、4-プローブ(probe)法で粉体抵抗を測定した。測定結果は下記表1に示した。
【0128】
実験例4:正極接着力の測定
実施例1~3および比較例1~4の正極の接着力を90゜ピールテスト(Peel Test)方法で測定した。
【0129】
具体的には、スライドガラスに両面テープを貼り付け、その上に20mm×180mmで穴が開いた電極を載せて2kgローラで10回往復して接着させた後、UTM(TA社製)機器を用いて、200mm/minで引っ張り、スライドガラスから剥離される力を測定した。ここで、スライドガラスと電極の測定角度は90゜であった。測定結果は下記表1に示した。
【0130】
実験例5:電池寿命特性の評価
実施例1~3および比較例1~4の正極と、負極、厚さ15μmのポリエチレン系セパレータを組み合わせてモノセルを製造した。ここで、前記負極は、黒鉛とSBR/CMC、導電材を重量比96.5:2.5:1の割合で混合して負極スラリーを製造し、これを10μmの銅箔にコーティングし、100℃で乾燥して製造した。その後、ジメチルカーボネート(DEC)とエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒(DEC:EC=1:1)に1MのLIPF6を溶解させた電解液を注入し、リチウム二次電池を製作した。
【0131】
前記のように製造されたリチウム二次電池を45℃で、0.33C/0.33Cの条件で、60回充放電した後、測定された充放電効率で寿命特性を測定した。測定結果は下記表1に示した。
【0132】
【国際調査報告】