IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビルモラン エ コンパニーの特許一覧

<>
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図1
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図2
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図3
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図4
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図5
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図6
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図7
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図8
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図9
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図10
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図11
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図12
  • 特表-貯蔵寿命が延長されたメロン 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-17
(54)【発明の名称】貯蔵寿命が延長されたメロン
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/34 20180101AFI20231010BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20231010BHJP
   C12N 15/01 20060101ALI20231010BHJP
   A01H 3/04 20060101ALI20231010BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20231010BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20231010BHJP
   A01G 22/05 20180101ALI20231010BHJP
   C12N 15/29 20060101ALN20231010BHJP
【FI】
A01H6/34 ZNA
C12N15/09 100
C12N15/01 Z
A01H3/04
A01H1/00 A
A23L19/00 Z
A01G22/05 Z
C12N15/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519911
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2021077065
(87)【国際公開番号】W WO2022069693
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2020/000819
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518049164
【氏名又は名称】ビルモラン エ コンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ファニー フルカード
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー フォーブ
【テーマコード(参考)】
2B022
2B030
4B016
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB15
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD20
2B030CA01
2B030CA07
2B030CA08
2B030CA11
2B030CB02
2B030CD12
2B030CD17
2B030HA05
4B016LC03
4B016LC06
4B016LG01
4B016LP03
(57)【要約】
発明は、メロン(Cucumis melo)植物に関し、前記植物は、そのゲノム中に9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含み、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含み、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、前記突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子の非長期貯蔵寿命(非LSL)メロン植物と比較して、成熟時及び/又は収穫後の前記植物の果実に果皮の色の安定性を付与する。本発明はさらに、前記植物の部分、細胞、及び種子、並びに関連する方法及びプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メロン(Cucumis melo)植物であって、前記植物は、そのゲノム中に、9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含み、前記sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含み、前記sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、前記突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子の非長期貯蔵寿命(非LSL)メロン植物と比較して、成熟時及び/又は収穫後の前記植物の果実に果皮の色の安定性を付与する、メロン植物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの機能喪失突然変異が、ナンセンス突然変異、フレームワーク突然変異、又は欠陥スプライシング突然変異、特にスプライシング部位突然変異から選択される、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの機能喪失突然変異が、アラニンによる配列番号1の584位のグアニンの置換からなる、請求項2に記載の植物。
【請求項4】
前記植物の前記果実の成熟時の硬さ、成熟時の果柄の脱離の程度、及び/又はサイクルの長さが実質的に変化せず、特に、同じ成熟段階にあり、かつ、同じ環境条件で成長させた同質遺伝子植物の果実と比較して、20%未満で変化し、前記同質遺伝子植物が、そのゲノム中に、前記sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の植物。
【請求項5】
前記メロン植物が、同系交配メロン系統由来の植物であるか、又はF1ハイブリットメロン植物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の植物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のメロン植物の細胞、好ましくは、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、果実、種子、花、子葉、及び/又は胚軸に由来する細胞であって、前記細胞は、そのゲノム中に、9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子の突然変異対立遺伝子を含み、前記sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異をホモ接合で含む、細胞。
【請求項7】
請求項6に記載の少なくとも1つの細胞、好ましくは、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、果実、種子、花、子葉、及び/又は胚軸、特に果実を含む、メロン植物の植物部分。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のメロン植物に成長することができる、メロン種子。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載のメロン植物の再生可能な細胞のインビトロ細胞又は組織培養物であって、前記再生可能な細胞が、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、種子、花、子葉、及び/又は胚軸に由来する、インビトロ細胞又は組織培養物。
【請求項10】
貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を製造する方法であって、
(a)請求項1~5に記載の植物の部分を得ることと、
(b)前記植物の部分を栄養繁殖させて、前記植物の部分から植物を生成することと
を含む、方法。
【請求項11】
貯蔵寿命が延長された果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を製造する方法であって、非LSLのメロン植物のゲノム中の9番染色体上のsgr遺伝子に機能喪失突然変異を導入することを含み、前記突然変異は、突然変異誘発又はゲノム編集、特に、エチルメタンスルホン酸(EMS)突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発(oligonucleotide directed mutagenesis)(ODM)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casシステム、操作されたメガヌクレアーゼ、再操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(re-engineered homing endonucleases)、及びDNAガイド付きゲノム編集から選択される技術によって導入される、方法。
【請求項12】
貯蔵寿命が延長された果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を同定、検出、及び/又は選択する方法であって、前記植物のゲノム中の9番染色体上のsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を検出することを含み、前記突然変異対立遺伝子が、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含む、方法。
【請求項13】
前記機能喪失対立遺伝子が、ナンセンス突然変異、インデル突然変異、フレームワーク突然変異、又は欠陥スプライシング突然変異、特に、スプライシング部位突然変異から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
配列番号2に示される配列の検出を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
メロン果実の貯蔵寿命、メロン果実の市場性、及び/又はメロン生産収量を改善するための方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載のメロン植物を成長させることと、前記植物によって結実した果実を収穫することとを含む、方法。
【請求項16】
メロン果実を製造する方法であって、
d)請求項1~5のいずれか一項に記載のメロン植物を成長させることと、
e)前記植物が結実するのを可能にすることと、
f)前記植物の果実を、好ましくは成熟前又は成熟段階で収穫することと
を含む、方法。
【請求項17】
フレッシュカット市場(fresh cut market)又は食品加工のための請求項1~5のいずれか一項に記載のメロン植物又はその果実の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の非長期貯蔵寿命(non-LSL)種のメロンと比較して貯蔵寿命を延長しつつ、糖度、サイクルの長さ、香り、又は硬さなどの特性が非LSLメロンと同様のままである、メロン(Cucumis melo(C.melo))植物に関する。本発明はまた、そのような植物を作製する方法、並びにそのような植物を検出及び/又は選択する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
メロン(Cucumis melo L.)は、世界的に栽培されているウリ科の作物である。市販のメロンのほとんどは、Charentais、Cantaloupe、Piel de Sapo、Galia、Ananas、Honeydewなどとして既知である甘い果実を産生する。メロン果実は、通常、デザート果実として消費される。
【0003】
長期の貯蔵寿命と消費者にとっての望ましい味とを兼ね備えることは、メロン栽培者にとって常に課題であった。一方、貯蔵寿命は、メロン生産者及び小売業者にとって重要なパラメーターである。貯蔵寿命が延長された果実は、より長期間保存することができるため、商業的損失が低減し、収穫及び輸送の柔軟性が高まる。メロンの貯蔵寿命を改善するために多くの努力がなされてきた。1980年代まで、市販のメロンは主に伝統的な種類のメロンであり、貯蔵寿命が限られていた。伝統的なメロンは、呼吸の発生を伴う急激なエチレン生産によって成熟プロセスが引き起こされるクリマクテリック型果実である。次いで、これらの事象は、一般的には黄変である果皮の色の変化、メロンに風味付けする香りの発生、又は果実が徐々に軟かくなることなど、エチレンに依存する多くのプロセスを引き起こす。これらのプロセスは、メロンの貯蔵寿命に影響を与える。
【0004】
1990年代には、長期貯蔵寿命(LSL)種のメロンが導入され、次第に市場の大部分を占めるようになった。LSLメロンは、成熟時にクリマクテリック型メロンに典型的なエチレンの激増を生じない非クリマクテリック型メロンである。さらに、LSLメロンは緑色を長期間維持し、収穫後も硬さを保つ。貯蔵寿命の延長は、従来のメロンと比較して重要な利点を提供するが、LSLメロンは重大な欠点も有し、すなわち、LSLメロンは、香りがあまり発生せず、したがって、風味が消費者には否定的に認識されることが多い。LSLメロンの貯蔵寿命の延長に関与し得る候補となる突然変異、特にACCオキシダーゼ遺伝子における突然変異が同定されている(Ayub, Ricardo, et al.“Expression of ACC oxidase antisense gene inhibits ripening of cantaloupe melon fruits.”Nature biotechnology 14.7(1996):862-866)。
【0005】
最近では、中期貯蔵寿命(ISL)メロンが、LSLメロンよりも良好な味を有しつつ、許容可能な貯蔵寿命を提供するメロンを提供する試みとして取得及び販売された。しかしながら、複雑な特質間でのそのような妥協策は、栽培者にとって達成するのが難しい作業である。
【0006】
生産者及び消費者の需要を満たす新しいメロンの類型を提供し、改善された貯蔵寿命と良好な味及び他の商業的に重要な特性とを兼ね備える必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
本出願の発明者らは、例えばスプライシング部位突然変異により、9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子を不活性化することによって、非LSLメロン種に対する成熟時及び収穫後の果皮の色の安定性を付与しつつ、LSLメロンにおいて果皮の色への影響が観察されなかったことを発見した。この安定性は、次いで果実の貯蔵寿命の増加をもたらす。ACCオキシダーゼ(Ayub,Ricardo,et al.,1996)などの他の遺伝子が以前にメロンの貯蔵寿命の制御に関与していたが、sgr遺伝子は関与していなかったため、これは驚くべきことであった。驚くべきことに、本発明者らはまた、sgr突然変異体が、従来のメロンなどの非LSLメロンと同じか又は同等のままである多くの他の有利な特性を有することを発見した。これらの特性は、栽培者、小売業者、又は消費者にとって、サイクルの長さ、硬さ、可溶性固形分若しくはブリックス(すなわち甘さ)、又は果柄の脱離率のいくつかの関心を有する。したがって、本発明は、延長された貯蔵寿命と、サイクルの長さ、甘さ、果柄の脱離、及び成熟時の軟らかさなどの商業的に関心のある非LSL特性とを兼ね備えた、新しい類型のメロンを提供する。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、メロン(Cucumis melo)植物であって、前記植物は、そのゲノム中に、9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含み、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含み、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、前記突然変異対立遺伝子をホモ接合性状態で含まず、したがって機能的sgr遺伝子をヘテロ接合又はホモ接合で含む、同質遺伝子の非長期貯蔵寿命(非LSL)メロン植物と比較して、成熟時及び/又は成熟後の前記植物の果実に果皮の色の安定性を付与する、メロン植物に関する。
【0009】
本発明の別の目的は、本発明によるメロン植物の細胞、好ましくは胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、果実、種子、花、子葉、及び/又は胚軸に由来する細胞であって、前記細胞は、そのゲノム中に、9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含み、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異をホモ接合で含む、細胞に関する。
【0010】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つの細胞、好ましくは胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、果実、種子、花、子葉、及び/又は胚軸、特に果実を含む、メロン植物の植物部分に関する。
【0011】
本発明はさらに、本発明によるメロン植物に成長することができるメロン種子に関する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、本発明によるメロン植物の再生可能な細胞のインビトロ細胞又は組織培養物であって、再生可能な細胞は、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、種子、花、子葉、及び/又は胚軸に由来する、インビトロ細胞又は組織培養物に関する。
【0013】
本発明はまた、貯蔵寿命が延長された果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を製造する方法であって、
(a)本発明による植物の部分を得ることと、
(b)前記植物の部分を栄養繁殖させて、前記植物の部分から植物を生成することと
を含む、方法に関する。
【0014】
本発明はさらに、貯蔵寿命が延長された果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を製造する方法であって、非LSLのメロン植物のゲノム中の9番染色体上のsgr遺伝子(配列番号1)に機能喪失突然変異を導入することを含み、前記突然変異は、突然変異誘発又はゲノム編集、特に、エチルメタンスルホン酸(EMS)突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発(oligonucleotide directed mutagenesis)(ODM)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casシステム、操作されたメガヌクレアーゼ(engineered meganuclease)、再操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(re-engineered homing endonuclease)、及びDNAガイド付きゲノム編集(DNA guided genome editing)から選択される技術によって導入される、方法に関する。
【0015】
貯蔵寿命が延長された果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を同定、検出、及び/又は選択する方法であって、前記植物のゲノム中の9番染色体上のsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を検出することを含み、前記突然変異対立遺伝子が、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含む、方法がさらに提供される。
【0016】
本発明はさらに、メロン果実の貯蔵寿命、メロン果実の市場性、及び/又はメロン生産の収量を改善するための方法であって、本発明によるメロン植物を成長させることと、前記植物によって結実した果実を収穫することとを含む、方法に関する。
【0017】
メロン果実を製造する方法であって、
a)本発明によるメロン植物を成長させることと、
b)前記植物が結実するのを可能にすることと、
c)前記植物の果実を、好ましくは成熟前又は成熟段階で収穫することと
を含む、方法も提供される。
【0018】
本発明の別の目的は、フレッシュカット市場(fresh cut market)又は食品加工のための本発明によるメロン植物又はその果実の使用である。
【0019】
定義
メロンの種類は、収穫後の特性に応じて、伝統的、中期貯蔵寿命(ISL)、及び長期貯蔵寿命(LSL)の3つのグループに分類することができる。
【0020】
本明細書における「貯蔵寿命」という用語は、メロン果実が、販売又は消費に適さないとみなされる前の、収穫後に保存することができる期間に関する。貯蔵寿命は、保存中に評価することが好ましい。貯蔵寿命は、一般に、果皮の色、果肉の色、硬さ、香り、及び/又は糖度などの果実の様々な特徴を考慮に入れる。好ましくは、本発明によるメロンの貯蔵寿命の増加は、収穫時及び/又は収穫後の保存中の改善された色の安定性に基づいて評価される。特に、本発明によるメロンは、本発明の遺伝的特徴を有さないメロンと比較して、収穫後の保存中、より長期間にわたって未熟な色を保持する。
【0021】
「長期貯蔵寿命(LSL)」メロンは、典型的には、少なくとも10日、好ましくは少なくとも14日の貯蔵寿命を有する。より具体的には、LSLメロンは10日~21日の貯蔵寿命を有する。LSLメロンは、非クリマクテリック型である。特に、LSLメロンは、次の種類:LSL Charentais、LSL Italian netted、Harper、LSL Galia、Yellow Canary、Piel de Sapo、及びHoney Dewから選択してもよい。
【0022】
「伝統的な」メロンは、典型的には、5日未満の貯蔵寿命を有する。好ましくは、伝統的なメロンは、2~5日の貯蔵寿命を有する。典型的には、伝統的なメロンは、クリマクテリック型である。特に、伝統的なメロンは、次の種類:伝統的Charentais、伝統的Italian netted、Western Shipper、Eastern Shipper、伝統的Galia、伝統的Ananasから選択してもよい。
【0023】
「中期貯蔵寿命(ISL)」メロンは、伝統的なメロンの貯蔵寿命とLSLメロンの貯蔵寿命との間の貯蔵寿命を有するメロンである。好ましくは、ISLメロンは、7~14日の貯蔵寿命を有する。特に、ISLメロンは、次の種類:Charentais、Italian netted、Western Shipper、Eastern Shipper、Galia、Ananas、及びHoney Dewから選択してもよい。
【0024】
本明細書で使用される「非LSL」メロンという用語は、伝統的なメロン又はISLメロンに関する。従って、非LSLメロン又はメロン植物への言及は、伝統的なメロン及び/又はISLメロン若しくはメロン植物を示すものとして理解されるべきである。非LSLメロンは、典型的には、14日未満、好ましくは10日未満の貯蔵寿命を有する。特に、非LSLメロンは、次の種類:伝統的なCharentais、伝統的Italian netted、伝統的Galia、伝統的Ananas、ISL Charentais、ISL Italian netted、Western Shipper、Eastern Shipper、ISL Galia、ISL Ananas、及びISL Honey Dewから選択してもよい。
【0025】
「クリマクテリック型」種のメロンは、一般的には呼吸の増加を伴う、成熟時におけるエチレンの急速な自己触媒的生成によって特徴付けられる。クリマクテリック型の成熟には、果肉が軟らかくなること、香りの生成、急速な果皮の色の変化、及びつるからの脱離(すなわち果柄の脱離)など、いくつかのエチレン媒介性生理学的及び生化学的事象を伴う。果皮の色の変化は、メロンの種類によって異なる。Galia種メロンでは、果皮が濃い緑色から黄橙色に変化するが、Charentais種メロンの果皮は緑色又は灰色からクリーム色がかかった黄色に変化する。エチレンの自己触媒的生成は、メロンの空洞において時間の経過とともに指数関数的に増加するエチレン濃度として現れ、一般に無視し得るレベルから最大値までわずか数日で進行する。エチレンのピークレベルの絶対的な大きさは、クリマクテリック型メロン栽培品種間で異なるが、エチレン生合成が急速に誘導されることはこのような系統の特徴である。
【0026】
非クリマクテリック型種のメロンは、そのようなエチレンの自己触媒的生成を示さず、したがって、保存中の硬さが保持されること及び香りの生成が低減することによって、成熟時に果皮の色の変化が低減するか、又は色が変化しないという特徴があり、これはそのようなメロンの風味に悪影響を及ぼす。
【0027】
本明細書で使用する場合、「対立遺伝子」は、これが相同染色体中の同じ遺伝子座に位置するため、遺伝的形質(inheritance)について代替的である、遺伝子などの遺伝単位のいくつかの代替的形態又はバリアント形態のいずれかを指す。そのような代替的形態又はバリアント形態は、一塩基多型、挿入、逆位、転座、若しくは欠失の結果、又は例えば化学的若しくは構造的修飾、転写調節、若しくは翻訳後修飾/調節によって引き起こされる遺伝子調節の結果であってもよい。二倍体の細胞又は生物では、所与の遺伝子又は遺伝要素の2つの対立遺伝子は、典型的には、相同染色体の対における対応する遺伝子座を占める。
【0028】
本明細書で使用する場合、「交配」、「交配すること」、「他家受粉」、又は「交配育種(cross-breeding)」という用語は、ある植物のある花の花粉が別の植物の花の胚珠(柱頭)に(人工的に又は自然に)適用されるプロセスを指す。
【0029】
本明細書で使用される「遺伝子型」という用語は、個々の細胞、細胞培養物、組織、生物(例えば、植物)、又は生物群の遺伝子構造を指す。
【0030】
本明細書で使用される「ヘテロ接合体」という用語は、少なくとも1つの遺伝子座に存在する異なる対立遺伝子(所与の遺伝子、遺伝子決定基、又は遺伝子配列の形態)を有する二倍体又は倍数体の個々の細胞又は植物を指す。
【0031】
本明細書で使用する「ヘテロ接合性」という用語は、特定の遺伝子座に異なる対立遺伝子(所与の遺伝子、遺伝子決定基、又は遺伝子配列の形態)が存在することを指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「相同染色体」又は「相同体(homolog)」(若しくは相同体(homologue))という用語は、減数分裂中に互いに対をなす1つの母系染色体及び1つの父系染色体の組を指す。これらのコピーは、同じ遺伝子座及び同じセントロメア位置に同じ遺伝子を有する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「ホモ接合体」という用語は、すべての相同染色体上の1つ以上の遺伝子座に同じ対立遺伝子を有する個々の細胞又は植物を指す。
【0034】
本明細書で使用する場合、「ホモ接合性」という用語は、相同染色体セグメント中の1つ以上の遺伝子座に同一の対立遺伝子が存在することを指す。したがって、9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子の突然変異対立遺伝子をそのゲノム中にホモ接合で含む植物は、9番染色体上のsgr遺伝子のすべてのコピーにおいて、例えば、植物が二倍体であり、2つの相同な9番染色体の組を有する場合には2コピーにおいて、前記突然変異対立遺伝子を含む。
【0035】
本明細書で使用する場合、「ハイブリット」という用語は、1つ以上の遺伝子が異なる親間の交配から生じる任意の個々の細胞、組織、植物部分、又は植物を指す。F1ハイブリット(HF1)は、遺伝的に異なる2つの親品種又は系統の交配から生じる。本発明によるハイブリット植物は、それらのゲノム中の1つ又はいくつかの遺伝子についてはヘテロ接合性であるが、sgr遺伝子についてはホモ接合性であり、すなわち、それらのsgr対立遺伝子のすべて(すなわち、二倍体植物では2つ)が機能喪失突然変異対立遺伝子である。機能喪失突然変異は、sgr対立遺伝子ごとに同じであっても又は同じでなくてもよい。実施例2及び図1は、sgr突然変異対立遺伝子をホモ接合で含むHF1植物の生成のための技術を記載する。
【0036】
本明細書で使用する場合、2つの植物は、本発明ではsgr遺伝子の1つの遺伝子を除いて、染色体及び遺伝子の同じ又は本質的に同じ組を有する場合に「同質遺伝子」であると言われる。したがって、2つの同質遺伝子植物は、sgr遺伝子の異なる対立遺伝子を含む。2つの同質遺伝子植物の表現型を比較することにより、sgr遺伝子の対立遺伝子変異の影響を評価することができる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「機能喪失突然変異」又は「不活性化突然変異」は、低下した機能を有するか又は機能を全く有さない(部分的又は完全に不活性化された)遺伝子産物をもたらす突然変異である。対立遺伝子が完全に機能喪失している場合、ヌル(null)対立遺伝子とも呼ばれる。そのような突然変異に関連する表現型は、一般的に劣性である。
【0038】
本明細書で使用する場合、「分子マーカー」という用語は、核酸配列の特徴の違いを視覚化する方法で使用される指標を指す。このような指標の例は、制限断片長多型(RFLP)マーカー、増幅断片長多型(AFLP)マーカー、一塩基多型(SNP)、挿入突然変異、マイクロサテライトマーカー(SSR)、配列特性増幅領域(SCAR)、切断増幅多型配列(CAPS)マーカー若しくはアイソザイムマーカー、又は特定の遺伝的位置及び染色体位置を規定する本明細書に記載のマーカーの組み合わせである。対立遺伝子の近傍における分子マーカーのマッピングは、一般的な分子技術を使用して当業者によって非常に容易に行うことができる手順である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「プライマー」という用語は、増幅標的にアニーリングしてDNAポリメラーゼを結合し、それにより、プライマー伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼなどの重合剤の存在下並びに好適な温度及びpHに置かれた場合、DNA合成の開始点として機能することができるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、増幅効率を最大にするために、好ましくは一本鎖である。好ましくは、プライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、重合剤の存在下で伸長産物の合成を開始するのに十分な長さである必要がある。プライマーの正確な長さは、温度及びプライマーの組成(A/T及びG/C含有量)を含む多くの要因に依存する。一対の双方向プライマーは、PCR増幅などのDNA増幅の分野で一般的に使用されるように、1つのフォワードプライマー及び1つのリバースプライマーからなる。
【0040】
本明細書で使用する場合、一塩基多型(SNP)は、ゲノム(又は他の共有配列)中の一塩基(A、T、C、又はG)が生物種のメンバー間又は個体での対になった染色体間で異なる場合に生じるDNA配列変異である。例えば、異なる個体からの2つの配列決定されたDNA断片は、AAGCCTAからAAGCTTAへの一塩基の違いを含む。この場合、C及びTの2つの対立遺伝子がある。
【0041】
本明細書で使用する場合、「マーカーに基づく選択」又は「マーカー支援選択(MAS)」又は「マーカー支援育種(MAB)」は、植物からの1つ以上の核酸を検出するための遺伝子マーカーの使用を指し、核酸は、望ましい(又は望ましくない)形質の遺伝子を有する植物を同定するために所望の形質と関連付けられ、したがって、それらの植物を選択的育種プログラムで使用(又は回避)することができる。
【0042】
本明細書で使用する場合、「成熟度」は、メロン果実の発育段階である。最初の葉及び果実の巻きひげの老化は、クリマクテリック型メロン及び非クリマクテリック型メロンに共通する成熟度の指標である。
【0043】
クリマクテリック型メロンの追加の成熟度の指標は、果柄のひび割れ又は香りの放出である。Piel de Sapo又はYellow Canaryなどの非クリマクテリック型種のメロンでは、雌しべ領域の褐色化又は黄変及び果柄まで進行する着色によって成熟が示される。
【0044】
本明細書で使用する場合、「子孫(offspring)」又は「後代」という用語は、1つ以上の親植物又はその子孫(descendant)からの栄養生殖又は有性生殖から子孫として生じる任意の植物を指す。例えば、子孫植物は、親植物のクローニング若しくは自家受粉によって、又は2つの親植物を交配することによって得られ、自家受粉並びにF1若しくはF2又はなおさらなる世代を含んでもよい。F1は、形質のドナーとして初めて使用される少なくとも一方の親から生成された第1世代の子孫であり、第2世代(F2)又はそれ以降の世代(F3、F4など)の子孫は、F1、F2などの自家受粉から生成される標本である。
【0045】
したがって、F1は、2つの真の育種親(真の育種は形質についてホモ接合性である)の間の交配から生じるハイブリットであってもよく(通常そうである)、F2は、前記F1ハイブリッドの自家受粉から生じる子孫であってもよい(通常そうである)。
【0046】
本明細書で使用する場合、「メロン」という用語は、メロン(Cucumis melo)種の任意の種類、品種、栽培品種を意味する。本発明は、二倍体植物だけでなく、三倍体植物、四倍体植物などに関わらず、異なる倍数性レベルの植物を包含する。
【0047】
本明細書で使用する場合、「植物部分」という用語は、芽、根、茎、種子、果実、葉、花弁、花、胚珠、分枝、葉柄、節間、花粉、雄しべ、台木、穂木などを含むがこれらに限定されない、植物の任意の部分を指す。
【0048】
「抵抗性」という用語は、害虫又は病原体に対する植物の反応及び野菜種子産業の非生物的ストレスを説明するためにISF(国際種子連盟)の野菜及び観賞用作物セクションによって定義されている。具体的には、抵抗性とは、特定の害虫又は病原体の成長及び発育、並びに/又は同様の環境条件及び害虫又は病原体の圧力下で感受性である植物品種と比較した場合にそれらが引き起こす損害を制限する植物品種の能力を意味する。抵抗性品種は、害虫及び病原体の強い圧力下で、いくつかの病気の症状又は損傷を示してもよい。
【0049】
本明細書で使用する場合、「感受性の」という用語は、特定の害虫又は病原体の成長及び発育を制限することができない植物を指す。
【0050】
本明細書で使用する場合、「同系交配」又は「系統」という用語は、比較的真の育種系統を指す。
【0051】
本明細書で使用する場合、「表現型」という用語は、その個々の遺伝子構造(すなわち遺伝子型)と環境との間の相互作用から生じる個々の細胞、細胞培養物、生物(例えば植物)、又は生物群の観察可能な特徴を指す。
【0052】
本明細書で使用する場合、「遺伝子移入」、「遺伝子移入された」、及び「遺伝子移入する」という用語は、ある種、品種、又は栽培品種の遺伝子が、それらの種を交配することによって、別の種、品種、又は栽培品種のゲノムに移されるプロセスを指す。交配は、自然又は人工的でもよい。このプロセスは、反復親への戻し交配によって任意に完了することができ、この場合、遺伝子移入とは、種間ハイブリットをその親のうちの一方と反復戻し交配することによって、ある種の遺伝子が別の種の遺伝子プールに浸入することを指する。遺伝子移入はまた、レシピエント植物のゲノムに安定して組み込まれた異種遺伝物質として説明することができる。
【0053】
本明細書において、2つ以上のメロン植物又は果実間の比較、特に、本発明によるメロン植物と、9番染色体上のsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子メロンとの間の比較は、同じ環境条件で成長させた、同じ成熟段階又は同じ収穫後段階の植物又は果実間の比較であると理解されたい。
【0054】
配列表
配列番号1は、9番染色体上の野生型sgr遺伝子の配列を示す。
【0055】
配列番号2は、G584A突然変異を含む、sgr遺伝子のsgr-1対立遺伝子の配列を示す。
【0056】
配列番号3は、9番染色体上の野生型sgr遺伝子のコード配列を示す。
【0057】
配列番号4は、野生型SGRタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0058】
配列番号5は、sgr-1突然変異周辺のマーカーの開発のためのコンテキスト配列を示す。
【0059】
配列番号6は、sgr遺伝子の野生型対立遺伝子を検出するためのフォワードプライマーの配列を示す。
【0060】
配列番号7は、sgr遺伝子のsgr-1突然変異対立遺伝子を検出するためのフォワードプライマーの配列を示す。
【0061】
配列番号8は、sgr遺伝子のsgr-1及び野生型突然変異対立遺伝子を検出するための共通のリバースプライマーの配列を示す。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、HF1ハイブリットにsgr―1突然変異を導入するための育種スキームを示す。
図2図2は、野生型対立遺伝子の又はsgr―1突然変異を含むCharentais、Yellow Canary、及びGaliaメロンの葉の写真を示す。
図3図3は、CYSDV圧力下での、野生型対立遺伝子の又はsgr―1突然変異を含むItalian nettedメロンの葉の写真を示す。
図4図4は、野生型対立遺伝子の又はsgr―1突然変異を含む品種V1_Charentais及びV2―Yellow Canaryの葉の色のL値、a値、及びb値を示す。
図5図5は、3つの日付における葉の色のΔE値の変化を示し、E値は、品種V1_Charentais及びV2-Yellow Canaryのsgr―1突然変異メロンと対応する野生型(WT)メロンとの間のCIELAB色空間における葉の色差を反映している。
図6図6は、WT(パネルA)の又はsgr―1突然変異を有する(パネルB)7日間保存後の品種V2-ItalianNet_NLSLの果皮の写真を示す。
図7図7は、収穫日(上段パネル)又は7日間保存後(下部パネル)の品種V1_Charentais_LSL, V2_ItalianNet_NLSL、及びV3_ItalianNet_NLSLの果皮の色のL値、a値、b値を示す(各遺伝子型について左から右へ)。
図8図8は、品種V1_Charentais_LSL、V2_ItalianNet_NLSL and V3_ItalianNet_NLSLの2つの日付け(収穫日及び7日間保存後、左から右へ)におけるΔE値を示し、ΔE値は、sgr-1突然変異メロンと対応する野生型(WT)メロンとの間のCIELAB色空間における果皮の色差を反映している。
図9図9は、7日間保存後の野生型対立遺伝子の又はsgr―1突然変異を含む品種V1_Charentais_LSL、V2_ItalianNet_NLSL、及びV6_YellowC_LSLの果肉の色のL、a及びb値(各遺伝子型について左から右へ)を示す。
図10図10は、sgr―1突然変異又は野生型対立遺伝子のいずれかを含む異なるメロン品種(V2_ItalianNet_NLSL、V4_HD_NLSL、及びV5_Charentais_NLSL)のサイクルの長さの評価を示す。
図11図11は、sgr―1突然変異又は野生型対立遺伝子のいずれかを含む異なるメロン遺伝子型(V2_ItalianNet_NLSL、V4_HD_NLSL、及びV5_Charentais_NLSL)の果柄の脱離の評価を示す。
図12図12は、sgr―1突然変異又は野生型対立遺伝子のいずれかを含む異なるメロン遺伝子型(V2_ItalianNet_NLSL、V4_HD_NLSL、及びV5_Charentais_NLSL)のブリックスの測定値を示す。
図13図13は、sgr―1突然変異又は野生型対立遺伝子のいずれかを含む異なるメロン(V2_ItalianNet_NLSL、V4_HD_NLSL、及びV5_Charentais_NLSL)の硬さの測定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
詳細な説明
第1の態様によれば、本発明は、そのゲノム中に、9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含み、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含み、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、前記突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子の非長期貯蔵寿命(非LSL)メロン植物と比較して、成熟時及び/又は収穫後の前記植物の果実に果皮の色の安定性を付与する、メロン植物に関する。sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子(機能喪失型)をホモ接合で含むことにより、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子は9番染色体のすべての相同体に存在するが、すべての突然変異対立遺伝子は実際には機能喪失突然変異であることを条件に、必ずしも同じ突然変異対立遺伝子ではないことが理解されるべきである。
【0064】
一実施形態では、非LSL メロン植物は、伝統的なメロン植物である。そのような場合、対応する同質遺伝子突然変異植物は、ISLメロン種又はLSLメロン種である。一実施形態では、非LSL メロン植物は、ISL メロン植物である。そのような場合、対応する同質遺伝子突然変異植物は、LSLメロン種である。
【0065】
本発明のメロン植物は、ホモ接合で不活性化されたsgr遺伝子によって特徴付けられる。sgr遺伝子は、メロンゲノムの9番染色体にマッピングされている(NCBI遺伝子ID103482692)。sgr遺伝子の野生型対立遺伝子の配列は、配列番号1に示されている。sgr遺伝子の野生型対立遺伝子のコード配列は、配列番号3に示され、アクセッションXM_008438967でGenbankに寄託されており(2016年6月7日更新)、コード配列はヌクレオチド415~1188に位置する。翻訳された配列、すなわち、SGRタンパク質の野生型アミノ酸配列は、アクセッションXP_008437189.1でGenbankに寄託され(2016年6月7日更新)、配列番号4に示される通りである。
【0066】
一実施形態では、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子は、機能喪失対立遺伝子であり、すなわち、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含む。突然変異対立遺伝子の配列は、前記配列における少なくとも1つのヌクレオチドの置換、挿入、又は欠失によって野生型遺伝子配列と異なり得る。特に、突然変異は、一塩基多型(SNP)であり得る。sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子はまた、完全な遺伝子の欠失を含む、1つ以上の核酸セグメントの挿入又は欠失により、野生型sgr遺伝子配列と異なり得る。突然変異により、SGRタンパク質の配列において1つ以上のアミノ酸置換が誘導され、SGRタンパク質の機能が損なわれ得る。
【0067】
一実施形態では、sgr遺伝子の機能喪失突然変異は、ヌル突然変異である。ヌル突然変異は、活性なSGRタンパク質の発現を妨げる。前記突然変異は、mRNAのタンパク質への翻訳を時期尚早に停止させて切断型のSGRタンパク質の発現をもたらすナンセンス突然変異であり得る。あるいは、前記突然変異は、異常な一連のアミノ酸列をもたらすフレームワークシフトを引き起こすフレームワーク突然変異であり得る。あるいは、前記突然変異は、成熟mRNAへのプレmRNAのスプライシングにおいてエラーを引き起こす欠損スプライシング突然変異であり得る。前記突然変異は、スプライス部位突然変異、すなわち、遺伝子のスプライシング部位に位置する突然変異であり得、又はイントロンましくはエクソンのいずれかの任意のスプライシング調節配列に位置し得る。
【0068】
本発明において、ナンセンス突然変異、フレームワーク突然変異、又は欠損スプライシング突然変異は、最も頻繁に発現され、かつ、その活性が部分的に保持され得るミスセンス突然変異(単一アミノ酸置換)とは対照的に、機能性タンパク質発現の完全な欠如をもたらすという利点を有する。
【0069】
機能喪失突然変異は、sgr遺伝子の任意のエクソン又はイントロンに位置してもよい。特に、突然変異は、第1、第2、若しくは第3のエクソン又は第1、第2、若しくは第3のイントロンのうちの1つに位置してもよい。
【0070】
一態様によれば、突然変異は、第1のイントロンと第2のエクソンとの間のスプライシング部位におけるヌクレオチド置換である。一実施形態では、突然変異は、第1のイントロンの最後の位置におけるグアニンをアラニンで置換することからなる。このグアニンは、配列番号1の584位にある。sgr-1と呼ばれるこのスプライシング部位突然変異は、本発明者らによってEMS突然変異植物で同定され、異なる非LSL及びLSL遺伝子型に遺伝子移入された。sgr-1対立遺伝子の配列は、配列番号2に示されている。
【0071】
突然変異対立遺伝子及び対応するマーカーは、当該技術分野で既知の方法によって同定することができる。
【0072】
突然変異sgr対立遺伝子における突然変異は、突然変異誘発などの方法又は遺伝子操作によって誘導することができる。突然変異誘発方法及び遺伝子操作の方法は、当該技術分野で既知であり、以下により詳細に記載されている。
【0073】
したがって、本発明による植物は、異なるプロセスによって得てもよく、本質的に生物学的プロセスによって専ら得られるわけではない。
【0074】
本発明によるメロン果実は、本明細書で定義されるように、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子非LSL果実と比較して、成熟時及び収穫後の果皮の色の安定性が増大することを特徴とする。果皮の色の安定性は、成熟から、好ましくは収穫日から、収穫後、好ましくは収穫後7日~21日、特に、収穫後7日~14日、最も特に、収穫後7日又は14日の異なる時点での突然変異メロン及び同質遺伝子非突然変異メロンの果皮の色を比較することによって評価することができる。好ましくは、果皮の色の安定性は、4℃~15℃を含む温度での冷蔵保存条件で7~21日後に評価される。同じパラメーターが、本発明のメロン又はその同質遺伝子非突然変異対応物の任意の特性の測定に適用可能である。
【0075】
いくつかの実施形態では、メロンの果皮の色は、Konica Minolta CR400などの比色計又は果実の写真からの2D画像分析を使用する比色分析によって評価される。色の測定値は、CIELAB色空間(CIE Lとしても既知である)で表すことができる。CIELAB色空間は、1976年に国際照明委員会(CIE)によって定義された色空間である。これは、黒(0)から白(100)までの明度についてのL、緑(-)から赤(+)までのa、及び青(-)から黄色(+)までのbの3つの値で色を表す。CIELABは、これらの値における同じ量の数値変化が視覚的に認識される変化にほぼ対応するように設計された。この色空間では、より緑色に視覚的に認識されるメロン果実はより低いa値を有し、より黄色に視覚的に認識されるメロンはより高いb値を有する。
【0076】
一実施形態では、本発明によるメロン果実は、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子非LSLメロン果実と比較して、成熟時及び/又は収穫後におけるa値及び/又はb値がより低いことによって特徴付けられる。一実施形態では、本発明によるメロン果実とsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子非LSLメロン果実とのa値及び/又はb値の差は、統計的に有意である。一実施形態では、本発明のメロン果実のa*値及び/又はb値は、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子非LSLメロン果実のa値及び/又はb値より、それぞれ少なくとも10%、好ましくは20%、さらに好ましくは30%低い。
【0077】
CIELAB色空間の色差は、式
【数1】
によって評価することができ、色差は、ペアワイズ比較統計ツールによって評価される、非ヌルΔEによって反映される。一実施形態では、本発明によるメロン果実とsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子非LSLメロン果実との間の果皮の色のΔE値は、1より大きく、好ましくは2より大きく、さらに好ましくは10より大きく、より好ましくは50より大きい。
【0078】
一実施形態では、本発明によるメロン果実とsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子非LSLメロン果実との間の果皮の色差は、統計的に有意である。
【0079】
非突然変異メロンの果皮の色差はまた、色評価ツールなどを使用して肉眼で評価することができる。
【0080】
本発明によるメロンはまた、ブリックス、硬さ、果柄の脱離率及び香り、又は果肉の色など、非LSLメロンのいくつかの特性が変化しないか又は実質的に変化せずに保持されるという事実によって特徴づけられる。これらの非LSL様の特性は、生産者及び消費者にとって特に有利であり、したがって商業的に価値がある。
【0081】
一実施形態では、成熟時及び/又は収穫後の本発明によるメロン植物の果実のブリックス度は、同じ成熟段階であり、かつ、同じ環境条件で成長させた非LSL同質遺伝子植物の果実と比較して実質的に変化せず、前記同質遺伝子植物は、そのゲノム中にsgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない。
【0082】
特に、本発明によるメロン植物の果実のブリックス度は、同質遺伝子非突然変異植物の果実と比較して、20%未満、好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満で変化する。
【0083】
「ブリックス度」又は「ブリックス」という用語は、特に果汁の水溶液の可溶性固形分を示し、その大部分は糖である。これらは主に屈折計によって推定され、ブリックス度として測定される。度数が高いほど糖度が高い。ブリックスが低い、したがって、糖度が低い果実は消費者に感謝されないため、ブリックス測定はメロンの味を評価するのに重要である。ブリックスは、当業者に既知であるように、屈折計としても既知であるブリックスメーターで測定することができる。
【0084】
本発明によるメロンは、より長期の貯蔵寿命を有しつつ、非LSLメロン、特に、伝統的なメロンの甘さを蓄積するため、sgr突然変異を含まない非LSL同質遺伝子メロンと同じブリックス又は実質的に同じブリックスを保持することは特に有利である。したがって、本発明のメロンは、LSLメロンの典型的な欠点を回避し、ここで、貯蔵寿命の増加は一般的に風味の欠如に関連する。
【0085】
一実施形態では、成熟時及び/又は収穫後の本発明によるメロン植物の果実の硬さは、同じ成熟段階にあり、かつ、同じ環境条件で成長させた同質遺伝子植物の果実と比較して実質的に変化せず、前記同質遺伝子植物は、そのゲノム中にsgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない。
【0086】
特に、本発明によるメロン植物の果実の硬さは、同質遺伝子植物の果実と比較して、20%未満、好ましくは10%未満変化する。硬さは、当業者に既知であるように、針入度計によって測定することができる。
【0087】
非LSLメロンは、エチレンに依存するプロセスによって、成熟時に徐々に硬さを失う。本発明のメロンは、非LSLメロンと同様又は本質的に同様の硬さ特性を示し、したがって、成熟時に非LSLメロンと同様の様式で軟らかくなる傾向がある。
【0088】
一実施形態では、成熟時及び/又は収穫後の本発明によるメロン植物の果実の果柄の脱離の程度は、同じ成熟段階にあり、かつ、同じ環境条件で成長させた同質遺伝子植物の果実と比較して実質的に変化せず、前記同質遺伝子植物は、そのゲノム中にsgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない。
【0089】
特に、本発明によるメロン植物の果実の果柄の脱離の程度は、前記同質遺伝子植物の果実と比較して、20%未満、好ましくは10%未満で変化する。
【0090】
果柄の脱離は、成熟度の良い指標である。商業的な成熟度では、一般に、非LSLメロン種は果柄の付着部に脱離層を形成するが、LSLメロン種は脱離しない。この理由により、LSLメロンは、収穫するためにつるから切り取る必要があるため、抜け落ちない(non-slip)メロン果実とも呼ばれる。したがって、果柄の脱離層の存在は、生産者がいつメロンを収穫することができるかを判断するのに特に役立つ。本発明のメロンは、目に見える脱離層を有するという利点を有し、外見及び進展に関して、同質遺伝子非突然変異非LSL植物と同様であるか、又は本質的に同様である。
【0091】
果柄の脱離の段階は、1~9のスケールで視覚的に評価することができ、ここで、1は抜け落ち、9は抜け落ちないことである。
【0092】
一実施形態では、成熟時の本発明によるメロン植物の果実のサイクルの長さは、同じ環境条件で成長させた同質遺伝子植物の果実と比較して実質的に変化せず、前記同質遺伝子植物は、そのゲノム中にsgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない。
【0093】
特に、本発明による植物の果実のサイクルの長さは、前記同質遺伝子植物の果実と比較して、20%未満、好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満で変化する。サイクルの長さは、期間、例えば、植付け日から収穫日までの日数に対応する。非LSLメロンはLSLメロンよりも早く収穫可能になり、すなわち、そのサイクルの長さはLSLメロンに比較して短く、これによって収量の向上がもたらされるため、非LSL種のメロンと同様のサイクルの長さ、したがって、同じ収穫期間を維持することが望ましい。
【0094】
本発明によるメロン植物のsgr突然変異はまた、葉、より具体的には葉の色に影響を及ぼし得る。特に、本発明の植物は、葉の黄変及び壊死の減少を示す。
【0095】
一実施形態では、成熟時及び/又は収穫後の本発明によるメロン植物の果実の果肉の色は、同じ成熟段階にあり、かつ、同じ環境条件で成長させた同質遺伝子植物の果実と比較して実質的に変化せず、前記同質遺伝子植物は、そのゲノム中にsgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない。特に、本発明によるメロン植物の果実の果肉の色のa値及び/又はb値は、前記同質遺伝子植物の果実と比較して、20%未満、好ましくは10%未満で変化する。果肉の色差はまた、式ΔEによってCIELAB色空間で評価することができる。一実施形態では、本発明によるメロン果実と、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子をそのゲノム中にホモ接合で含まない同質遺伝子非LSLメロン果実との間の果肉の色のΔE値は、50未満であり、好ましくは10未満であり、さらに好ましくは2未満であり、より好ましくは1未満である。
【0096】
一実施形態では、本発明によるメロン植物の葉は、同質遺伝子非LSL植物と比較して減少した黄変を示し、前記同質遺伝子植物は、そのゲノム中にsgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない。
【0097】
葉の色は、肉眼で又は比色計を使用した比色分析によって評価することができる。特に、CIElab表色系を使用することができる。
【0098】
一実施形態では、本発明によるメロン植物の葉の色は、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子非LSL植物と比較して、より低いa*値及び/又はより低いb*値によって特徴付けられる。
【0099】
したがって、葉の色の評価は、目的の表現型、すなわち、成熟時及び/又は収穫後の果皮の色の安定性を示す非LSL植物の同定の代用として使用することができる。
【0100】
本発明の植物によって示される葉の黄変の減少は、抵抗性としても反映され、より具体的には、CYSDV(ウリ科黄色発育不全ウイルス(cucurbit yellow stunting disorder virus))などの黄変病に対する本発明の植物部分的な抵抗性としても反映される。
【0101】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明によるメロン植物は、CYSDV(ウリ黄色発育不全ウイルス)に対して抵抗性であり、そのような抵抗性は、sgr遺伝子の対立遺伝子突然変異によって提供される。特に、抵抗は、部分的な抵抗性である。
【0102】
CYSDVは、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)によって自然界で伝染するクロステロウイルスである。CYSDVは、成熟した葉に葉脈間の黄変斑を誘発し、これが拡大して最終的に融合し、緑色を維持したままの葉脈を除いて葉全体が黄変し得る。黄変症状は果実の収量及び品質の大幅な低下を伴い、したがって、このウイルスは経済的に重要性が高い。
【0103】
本発明によるメロン植物のsgr突然変異は、感染した植物におけるCYSDVの特定の症状、特に葉の黄変を隠すことによって、CYSDVによって引き起こされる損傷を低減することができる。CYSDVに対する抵抗性は、感受性の(市販の)系統と比較することによって有利に決定される。
【0104】
一実施形態では、本発明によるメロン植物は、同系交配メロン系統由来の植物である。
【0105】
好ましい実施形態では、本発明によるメロン植物は、F1ハイブリットメロン植物である。
【0106】
本発明はまた、本発明によるメロン植物の群に関し、前記集団は、少なくとも5つの植物、特に少なくとも10個の植物、より特に少なくとも20個の植物、さらにより特に少なくとも50個若しくは100個の植物、又はより特に少なくとも1000個の植物を含む。
【0107】
本発明はまた、以下に詳述するさらなる態様を対象とする。本発明の第1の態様に関連する上記のセクションで詳述したすべての実施形態はまた、本発明のこれらのさらなる態様による実施形態である。
【0108】
第2の態様によれば、本発明は、本発明によるメロン植物の細胞であって、前記細胞は、そのゲノム中に9番染色体上のstaygreen(sgr)遺伝子の突然変異対立遺伝子を含み、前記突然変異対立遺伝子は、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含む、細胞を対象とする。
【0109】
本発明の植物の細胞は、植物全体に再生される能力を有し得る。
【0110】
あるいは、本発明はまた、再生可能ではなく、したがって植物全体を生じさせることができない植物細胞を対象とする。
【0111】
一実施形態によれば、細胞は、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、果実、種子、花、子葉、及び/又は胚軸に由来する。
【0112】
一態様では、本発明は、本発明のメロン植物の植物部分を対象とする。本発明はまた、本発明による少なくとも1つの細胞を含むメロン植物の植物部分に関する。
【0113】
一実施形態によれば、植物部分は、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、果実、種子、花、子葉、及び/又は胚軸である。一実施形態では、植物部分は、本発明によるメロン植物の果実である。
【0114】
本発明の別の態様は、本発明に従ってメロン植物に成長することができるメロン種子に関する。したがって、そのような種子は、本発明の植物の種子、すなわち、本発明の植物を生じさせる種子である。本発明はまた、本発明の植物由来の種子、すなわち、自家受粉又は交配後にそのような植物から得られた種子に関するが、ただし、前記種子から得られた植物は、前記突然変異対立遺伝子を含まない同質遺伝子非LSL メロン植物と比較して、成熟時及び/又は収穫後の前記植物の果実に果皮の色の安定性を付与するsgr遺伝子の機能喪失突然変異対立遺伝子をホモ接合で含む。
【0115】
本発明はまた、本発明によるメロン種子群に関し、前記集団は、少なくとも2個の種子、特に少なくとも10個の種子、特に少なくとも100個の種子、さらにより特に少なくとも1000個の種子を含む。
【0116】
本発明の別の態様は、本発明によるメロン植物の再生可能な細胞のインビトロ細胞又は組織培養物である。好ましくは、再生可能な細胞は、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、茎、葉柄、根、根端、種子、花、子葉、及び/又は胚軸に由来する。前記再生可能な細胞は、そのゲノム中に、上記のsgr遺伝子の機能喪失突然変異対立遺伝子を含む。
【0117】
組織培養物は、好ましくは、前述のメロン植物の生理学的及び形態学的特徴を有する植物を再生することができ、前述のメロン植物と実質的に同じ遺伝子型を有する植物を再生することができる。本発明はまた、本発明の組織培養物から再生されたメロン植物を提供する。
【0118】
本発明はまた、上記で定義した植物のプロトプラスト又は上記で定義した組織培養由来のプロトプラストであって、上記のsgr遺伝子の機能喪失突然変異対立遺伝子をそのゲノム中に含む、プロトプラストを提供する。
【0119】
別の態様によれば、本発明はまた、貯蔵寿命が増加した、特に成熟時及び/又は収穫後の果皮の色の安定性が増加したメロン植物を得るための育種プログラムにおける育種パートナーとしての、本発明に従って詳述されるメロン植物の使用に関する。実際、第1の態様によるそのようなメロン植物は、成熟時及び/又は収穫後に果皮の色の安定性を付与する上記で定義したsgr遺伝子の機能喪失対立遺伝子をそのゲノム中に保有する。この植物を突然変異を含まない植物と交配することにより、所望の表現型を付与するこの対立遺伝子を子孫に伝達することが可能である。したがって、本発明による植物は、所望の表現型を付与する突然変異対立遺伝子をメロン植物又は生殖質に遺伝子移入するための育種パートナーとして使用することができる。
【0120】
そのような育種プログラムでは、所望の表現型を示すか又は所望の表現型に関連する配列を有する子孫の選択は、本明細書の上記で開示した対立遺伝子及び対応するマーカーに基づいて有利に行うことができる。
【0121】
本発明はまた、所望の表現型を付与する遺伝子配列を同定し、配列決定し、及び/又はクローニングすることを目的とするプログラムにおける前記植物の使用に関する。
【0122】
別の態様によれば、本発明はまた、貯蔵寿命が増加したメロン植物、特に商業的な植物を生産するための方法に関する。これらの特徴を有する植物を生産するための方法又はプロセスは、以下のステップ:
(a1)sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含む、本発明によるメロン植物(ここで、sgr遺伝子の前記突然変異対立遺伝子の配列は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含む)を前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない第2のメロン植物と交配し、したがって、F1集団を生成するステップと、
(a2)F1集団を進めてF2集団を作製するステップと、
(b)そのようにして得られた子孫において前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含む1つの植物を選択するステップと、
(c)任意選択で、ステップb)で得られた植物を1回又は数回自家受粉させるステップと、
(d)任意選択で、ステップb)又はc)で選択された植物を、前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まないメロン植物と戻し交配するステップと、
(e)前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含む植物を選択するステップであって、前記植物が貯蔵寿命が増加した果実を生産する、選択するステップと、
(f)任意選択で、選択された植物を、前記突然変異sgr対立遺伝子をホモ接合で含む異なるメロン植物と交配し、それによって、前記突然変異sgr対立遺伝子をホモ接合で含むハイブリットメロン植物を作製するステップと
を含む
【0123】
ステップe)で選択された植物又はステップ(f)で生産された植物は、好ましくは、商業的な品種、栽培品種、又は種類のメロンである。いくつかの実施形態では、選択された植物は、Charentais、Italian netted、Western Shipper、Eastern Shipper、Galia、Ananas、及びHoney Dew種のうちの1つに由来する。
【0124】
好ましくは、ステップc)及び/又はd)は、少なくとも2回、好ましくは3回繰り返されるが、必ずしも、前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない同じメロン植物を用いる必要はない。前記突然変異対立遺伝子をホモ接合で含まない前記メロン植物は、好ましくは育種系統である。
【0125】
自家受粉及び戻し交配のステップは、任意の順序で行ってもよく、間に挿入することができ、例えば、戻し交配は、1回又は数回の自家受粉の前及び後に行うことができ、自家受粉は1回又は数回の戻し交配の前及び後に行うことができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、そのような方法は、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含む植物を選択するために、ステップb)又はe)で行われる1つ以上の選択のために核酸マーカーを使用することによって有利に行われる。
【0127】
ステップb)又はe)で行われる選択は、任意の種類の遺伝子マーカー、特に、制限断片長多型(RFLP)、増幅断片長多型(AFLP)、単純配列反復(SSR)、単純配列長多型(SSLP)、一塩基多型(SNP)、挿入/欠失多型(インデル)、可変数タンデムリピート(VNTR)、及びランダム増幅多型DNA(RAPD)、アイソザイム、並びに当業者に既知である他のマーカーを使用して行うことができる。
【0128】
マーカー及び対立遺伝子の検出に使用される方法は、特定の染色体上のマーカーの2つの異なる対立遺伝子の区別を可能とする任意の技術に基づくことができる。多型の検出は、一本鎖コンフォメーション多型(Orita,et al.(1989)Genomics,8(2),271-278)、変性勾配ゲル電気泳動(Myers(1985)EPO0273085)、又は切断断片長多型(Life Technologies,Inc.,Gaithersburg,MD)を含む、ゲル電気泳動によって行うことができるが、DNA配列決定が広く利用可能になったことにより、しばしば、増幅産物を簡便に直接的に配列決定することがより容易になる。多型配列の違いが既知であれば、特定の対立遺伝子のPCR増幅(PASA;Sommer,et al.(1992)Biotechniques12(1),82-87)、又は複数の特定の対立遺伝子のPCR増幅(PAMSA;Dutton and Sommer(1991)Biotechniques,11(6),700-7002)のいくつかの形態を一般的に含む、多型を検出するための迅速なアッセイを子孫の試験のために設計することができる。特定の例では、PCR検出及び定量化は、2つの標識された蛍光発生オリゴヌクレオチドフォワードプライマー及び標識されていない共通リバースプライマー、例えば、KASPar(商標)(KBiosciences)を使用して行われる。多型の検出はまた、一本鎖コンフォメーション多型(Orita,et al.(1989)Genomics,8(2),271-278)、変性勾配ゲル電気泳動(Myers(1985)EPO0273085)、又は切断断片長多型(Life Technologies,Inc.,Gaithersburg,Md.)を含む、電気泳動技術によって行うことができる。DNA配列決定が広く利用可能になったことにより、増幅産物を直接的に配列決定することも可能になった。
【0129】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって得られる又は得ることができるメロン植物に関する。そのような植物は、実際、本発明の第1の態様に記載された特徴を有するメロン植物である。
【0130】
植物は、好ましくは、商業的な品種、栽培品種、又は種類のメロンである。植物は、好ましくはF1ハイブリットメロン植物である。いくつかの実施形態において、植物は、次の種類:Charentais、Italian netted、Western Shipper、Eastern Shipper、Galia、Ananas、及びHoney Dewのうちの1つである。
【0131】
メロ植物の種子を生産するための方法も提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本発明によるメロン植物をそれ自体又は別のメロン植物と交配することと、得られた種子を収穫することとを含む。
【0132】
本発明の方法で詳述するsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子の遺伝子移入に加えて、本発明の有利な特徴、特に、貯蔵寿命が増加した商業的なメロン植物を得るために、前記配列を遺伝子操作によってメロンバックグラウンドに導入することができる。所望の表現型を付与する遺伝子移入された突然変異対立遺伝子の同定及びクローニングは、当業者に日常的なことである。
【0133】
本発明の種子又は植物は、異なるプロセス、特に、突然変異誘発、例えば、化学的突然変異誘発若しくはUV突然変異誘発などの技術的プロセス、又はガイド付き組換え(guided recombination)若しくはゲノム編集などの遺伝子操作によって得てもよく、本質的に生物学的なプロセスによって専ら得られるものではないことに留意されたい。
【0134】
一実施形態では、本発明は、貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を製造する方法であって、非LSL メロン植物のゲノム中の9番染色体上のsgr遺伝子に機能喪失突然変異を導入することを含み、前記突然変異は、突然変異誘発又はゲノム編集、特に、エチルメタンスルホン酸(EMS)突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発(ODM)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casシステム、操作されたメガヌクレアーゼ、再操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ、及びDNAガイド付きゲノム編集から選択される技術によって導入される、方法に関する。好ましくは、機能喪失突然変異は、9番染色体上に存在するsgr遺伝子のすべてのコピーに導入される。
【0135】
特に、本発明の一実施形態は、貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物又はその種子を得るための方法であって、
a)修飾されるメロン植物、好ましくは非LSL メロン植物のM0種子を突然変異誘発剤で処理して、M1種子を得ることと、
b)そのようにして得られたM1種子から植物を成長させて、M1植物を得ることと、
c)M1植物の自家受精によってM2種子を生産することと、
d)任意選択で、ステップb)及びc)をn回繰り返して、M2+n種子を得ることと
を含む、方法に関する。
【0136】
この方法において、ステップa)のM1種子は、EMS突然変異誘発などの化学的突然変異誘発によって、又は硫酸ジエチル(des)、エチレンイミン(ei)、プロパンスルトン、N-メチル-N-ニトロソウレタン(mnu)、N-ニトロソ-N-メチル尿素(NMU)、N-エチル-N-ニトロソ尿素(enu)、及びアジ化ナトリウムを含むがこれらに限定されない任意の他の化学的突然変異誘発剤によって得ることができる。あるいは、突然変異は、例えばX線、高速中性子、UV線から選択される、照射によって誘導される。
【0137】
本発明の別の実施形態では、突然変異は、遺伝子操作によって誘導される。そのような突然変異には、本発明による突然変異植物の表現型、特に果皮の色の安定性を付与する配列の組み込み、及び本発明による突然変異植物の表現型、特に果皮の色の安定性を付与する代替配列による常在配列の置換も含まれる。
【0138】
使用することができる遺伝子工学操作手段には、標的化突然変異誘発、新しい遺伝子の標的化導入、又は遺伝子サイレンシング(RdDM)を目的として、遺伝的変異によって植物において新しい特性を作り出すために開発及び/又は使用される様々な新しい技術である新しい育種技術と呼ばれるすべてのそのような技術の使用が含まれる。そのような新しい育種技術の例は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)技術(ZFN―1、ZFN―2、及びZFN―3、米国特許第9,145,565号を参照のこと(参照によりその全体が組み込まれる))、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発(ODM)、シスジェネシス及びイントラジェネシス、RNA依存性DNAメチル化(RdDM、必ずしもヌクレオチド配列を変化させないが、配列の生物学的活性を変化させることができる)、接木(遺伝子組換え(GM)台木で)、逆育種、アグロインフィルトレーション(アグロインフィルトレーション「狭義のもの」、アグロイノキュレーション、フローラルディップ)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN、米国特許第8,586,363号及び第9,181,535号を参照(参照によりその全体が組み込まれる))、CRISPR/Casシステム(米国特許第8,697,359号、同8,771,945号、同8,795,965号、同8,865,406号、同8,871,445号、同8,889,356号、同8,895,308号、同8,906,616号、同8,932,814号、同8,945,839号、同8,993,233号、及び同8,999,641号を参照(これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる))、操作されたメガヌクレアーゼ、再操作ホーミングエンドヌクレアーゼ、DNAガイド付きゲノム編集(Gao et al.,Nature Biotechnology (2016),doi:10.1038/nbt.3547(参照によりその全体が組み込まれる)、及び合成5ゲノミクス(Synthetic 5 genomics)の使用によって促進される標的化配列の変化である。今日の標的化ゲノム編集(新しい育種技術の別称)の大部分は、修飾が意図されるゲノム中の選択された位置においてDNA二本鎖切断(DSB)を誘導する適用である。DSBの指向性修復により、標的化ゲノム編集が可能になる。このような適用を利用して、突然変異(標的化突然変異又は正確なネイティブ遺伝子編集など)及び遺伝子の正確な挿入(シスジェネシス、イントラジェネシス、トランスジェネシスなど)を生じさせることができる。突然変異をもたらす適用は、しばしば、部位特異的ヌクレアーゼ(SDN)技術、例えば、SDN1、SDN2、SDN3として同定される。SDN1の場合、結果は、標的化された非特異的な遺伝子欠失突然変異である。DNA DSBの位置は正確に選択されるが、宿主細胞によるDNA修復はランダムであり、小さなヌクレオチドの欠失、付加、又は置換をもたらす。SDN2の場合、SDNは、標的化されたDSBを生じさせるために使用され、DNA修復テンプレート(1つ又はいくつかのヌクレオチドの変化を除いて、標的化されたDSB DNA配列と同一の短いDNA配列)は、DSBを修復するために使用され、これにより、目的の所望の遺伝子における標的化された所定の点突然変異がもたらされる。SDN3に関しては、SDNは、新しいDNA配列(遺伝子など)を含むDNA修復テンプレートと共に使用される。この技術の結果は、そのDNA配列を植物ゲノムに組み込むことである。SDN3の使用を例示する最も可能性の高い適用は、選択したゲノム位置にシスジェニック、イントラジェニック、又はトランスジェニック発現カセットを挿入することである。これらの各技術の完全な説明は、欧州委員会共同研究センター(JRC)予測技術研究所によって2011年に作成され、「New plant breeding techniques-State-of-the-art and prospects for commercial development」という表題のレポート(参照によりその全体が組み込まれる)に見出すことができる。
【0139】
DNA編集技術は、特定の位置で標的化遺伝子を不活性化するためにメロンで成功裏に使用されている(Hooghvorst, et al.“Efficient knockout of phytoene desaturase gene using CRISPR/Cas9 in melon.”Scientific reports 9.1(2019):1-7)。
【0140】
本発明はまた、貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を同定、検出、及び/又は選択する方法であって、前記植物のゲノム中の9番染色体上のsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を検出することを含み、前記突然変異対立遺伝子は、野生型sgr対立遺伝子の配列(配列番号1)と比較して、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含む、方法を提供する。
【0141】
一実施形態では、前記機能喪失対立遺伝子は、ナンセンス突然変異、インデル突然変異、フレームワーク突然変異、又は欠損スプライシング突然変異、特にスプライシング部位突然変異から選択される。
【0142】
一実施形態では、前記方法は、配列番号1の584位におけるグアニンの置換、すなわち、sgr―1の配列が配列番号2に示される対立遺伝子sgr―1の検出を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、sgr遺伝子の突然変異対立遺伝子の検出は、例えば、KASPar(商標)(KBiosciences)技術を使用して、例えば、各マーカーについて、抵抗性対立遺伝子を増幅するために使用することができる1つのフォワードプライマー、感受性対立遺伝子を増幅するために使用することができる1つのフォワードプライマー、及び1つの共通のリバースプライマーを使用するPCRによる増幅によって行われる。特に、前記マーカーの各々を増幅するためのプライマーは、表1に記載の配列を有してもよい。
【0144】
好ましい実施形態において、増幅は、伸長及びアニーリングステップが単一ステップに組み込まれる、2ステップのタッチダウン法を使用して行われる。アニーリング段階で使用される温度は、反応の特異性を決定し、したがって、プライマーがDNAテンプレートにアニーリングする能力を決定する。タッチダウンPCRには、Taqポリメラーゼ活性化の第1のステップが含まれ、続いて、高いアニーリング温度を含み、各PCRサイクルでアニーリング温度を段階的に下げるタッチダウンステップと呼ばれる第2のステップ、及びDNA増幅の第3のステップが含まれる。タッチダウンの初期サイクルにおけるより高いアニーリング温度により、DNAとプライマー間とで非常に特異的な塩基対形成のみが生じることが保証され、したがって、増幅される最初の配列が目的の配列である可能性が最も高くなる。アニーリング温度を徐々に下げて、反応の効率を高める。非常に特異的な初期のタッチダウンサイクル中に最初に増幅された領域はさらに増幅され、より低温で生じ得る任意の非特異的な増幅をアウトコンピートする(outcompete)。
【0145】
別の実施形態では、SNPマーカーの増幅は、KASParアッセイにおいて推奨され、実施例(実施例1を参照)で例示するように行われる。
【0146】
さらなる態様によれば、本発明はまた、貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を同定するための1つ以上の分子マーカーであって、前記分子マーカーが、9番染色体上のsgr遺伝子における機能喪失突然変異を検出する、分子マーカーを提供する。
【0147】
貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物を検出するための1つ以上の分子マーカーの使用であって、前記分子マーカーが、9番染色体上のsgr遺伝子における機能喪失突然変異を検出する、使用がさらに提供される。
【0148】
本発明のこれらの態様によれば、分子マーカーは、sgr遺伝子又はsgr遺伝子と遺伝的に関係する染色体領域に位置してもよい。一実施形態では、前記分子マーカーは、アラニンによる配列番号1の584位におけるグアニンの置換を同定する。一実施形態では、前記分子マーカーは、配列番号5に示される配列内に位置する。
【0149】
本発明はまた、貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物の検出に好適な分子マーカーを同定するための方法であって、
(a)sgr遺伝子又はsgr遺伝子と遺伝的に関係する染色体領域における分子マーカーを同定することと、
(b)前記分子マーカーが、メロン果実の貯蔵寿命の増加、特に、成熟時及び/又は収穫後の果皮の色の安定性の増加の表現型に関連又は関係しているかどうかを決定することと
を含む、方法を対象とする。
【0150】
更なる態様では、本発明は、貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロンの小植物(plantlet)又は植物を生産するための方法であって、
i.本発明によるメロン植物の単離された細胞又は組織をインビトロで培養して、メロン微小植物を産生することと、
ii.メロン微小植物をインビボ培養期に供して、貯蔵寿命が増加した果実を生産する又はそれを生産しやすいメロン植物に発育させることと
を含む、方法を対象とする。
【0151】
微小植物を産生するために使用される単離された細胞又は組織は、繁殖させる本発明のメロン親植物から無菌条件下で得られる外植片である。外植片は、例えば、子葉、胚軸、茎組織、葉、胚、分裂組織、節芽(node bud)、茎頂、又はプロトプラストを含むか、又はそれらからなる。外植片は、微細繁殖(micropropagation)のための培養培地に入れる前に表面滅菌することができる。
【0152】
植物の微細繁殖に好適に使用することができる条件及び培養培地は、植物栽培の当業者に周知であり、例えば、「Plant Propagation by Tissue Culture, Handbook and Directory of Commercial Laboratories,eds. Edwin F George and Paul D Sherrington,Exegetics Ltd,1984」に記載されている。
【0153】
微細繁殖は、典型的には、以下を含む:
1.腋芽の生成:腋芽の増殖は、サイトカイニンを芽培養培地に添加することによって誘導され、好ましくは最小限のカルス形成を伴って、芽を生成させる;
ii.不定芽の生成:土壌に移すことができる小植物を生産するために、オーキシンを培地に添加することによって根の形成が誘導される。あるいは、根の形成を土壌中で直接誘導することができる。
【0154】
小植物はさらに、実験室条件下での土壌への培養、次いで自然気候への漸進的適応(progressive adaptation)によるインビボ培養期に供され、本発明によるメロン植物に発育させることができる。
【0155】
本発明のメロンによって示される葉の黄変の減少は、様々な生理学的若しくは病理学的状態、例えば、老化での葉の黄変、又はCYSDV感染などの黄変病の存在によって引き起こされる収量の損失を低減することを可能にする。したがって、本発明はまた、メロン植物の収量を改善するための方法又は収穫可能なメロン植物若しくは果実の数を増加させるための方法であって、染色体9上にsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含む、本発明によるメロン植物を成長させることを含み、前記突然変異対立遺伝子は、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含み、葉の黄変の減少をもたらす、方法を対象とする。一実施形態では、本発明によるメロン植物をCYSDVに感染した環境で成長させる。
【0156】
好ましくは、方法は、前記突然変異対立遺伝子を含むメロン植物を選別又は選択する第1のステップを含む。方法はまた、メロン畑、トンネル、若しくは温室の生産性を高める方法として、又はメロンの生産における化学薬品若しくは殺菌剤の使用の強度若しくは回数を減らす方法として定義することができる。
【0157】
本発明はまた、メロン産生の損失を低減するための方法であって、上記で定義されたメロン植物を成長させることを含む、方法を対象とする。特に、メロン植物をCYSDV感染の状態において成長させる。
【0158】
別の実施形態では、本発明は、メロン畑、トンネル、若しくは温室、又は任意の他の種類の植付けをCYSDV感染などの黄変病から保護するための方法、あるいは少なくとも感染のレベルを制限するか又は病気の蔓延を制限する方法を対象とする。そのような方法は、好ましくは、本発明の黄変病抵抗性植物、すなわち、9番染色体上にsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子を含む植物を成長させるステップを含み、前記突然変異対立遺伝子は、少なくとも1つの機能喪失突然変異を含む。
【0159】
本発明はまた、畑、トンネル、若しくは温室、又は他の植付けにおける、本発明による、CYSDVなどの黄変病に対して抵抗性の、特に部分的に抵抗性のメロン植物の使用に関する。
【0160】
本発明はまた、CYSDVが感染した環境においてメロン植物の収量を改善するための方法であって、
(a)CYSDVに対して抵抗性のメロン植物を同定することであって、前記植物が9番染色体上にsgr遺伝子の突然変異対立遺伝子をホモ接合で含み、前記突然変異対立遺伝子が少なくとも1つの機能喪失突然変異を含む、同定することと、
(b)前記感染した環境で前記抵抗性メロン植物を成長させることと
を含む、方法を対象とする。
【0161】
この方法により、メロン植物の収量が増加し、特に、より市場性のあるメロンを収穫することができ、又はより多くの商業的なメロンが産生され、又はより多くの種子が得られる。
【0162】
本発明はさらに、メロン果実の貯蔵寿命、メロン果実の市場性、及び/又はメロン生産の収量を改善するための方法であって、本発明によるメロン植物を成長させることと、前記植物によって結実した果実を収穫することとを含む、方法に関する。貯蔵寿命の増加により、本発明によるメロンは、既存の非LSLメロンよりも少ない頻度で、特に週に2~4回収穫することができる。したがって、本発明はまた、メロン収穫の柔軟性を高める方法であって、本発明によるメロン植物を成長させることと、前記植物によって結実した果実を収穫することとを含む、方法に関する。
【0163】
これらの方法の一実施形態では、前記果実は、収穫後少なくとも7日間、好ましくは7~21日間保存される。
【0164】
さらに別の態様では、本発明はまた、メロン果実を製造する方法であって、
(a)上記で定義した本発明のメロン植物を成長させることと、
(b)前記植物が結実するのを可能にすることと、
(c)前記植物の果実を、好ましくは成熟時及び/又は成熟前に収穫することと
を含む、方法に関する。
【0165】
メロン植物に関するすべての好ましい実施形態は、本発明の先の態様の文脈で既に開示されている。
【0166】
方法は、有利には、前記メロン植物を加工食品に加工するさらなるステップを含んでもよい。
【0167】
別の態様では、本発明は、フレッシュカット市場における又は食品加工のための本発明によるメロン植物又はその果実の使用に関する。
【0168】
本出願全体を通じて、「含む」という用語は、具体的に言及されたすべての特徴、並びに任意選択による、追加の、特定されていない特徴を包含すると解釈されるべきである。本明細書で使用する場合、「含む」という用語の使用はまた、具体的に言及された特徴以外の特徴が存在しない(すなわち、「からなる」)実施形態を開示する。
【実施例
【0169】
実施例1:EMS突然変異誘発による変異メロンの生成及び同定
クリマクテリック型のCharentais栽培品種からの成熟した種子を、1%~3%のエチルメタンスルホネート(EMS)に16時間浸漬し、続いて0.1M NaSOで洗浄することによって突然変異誘発を行った。次いで、種子をすすぎ、土壌中に播種した。M2種子をM1植物から収集した。ゲノムDNAをM2植物から抽出し、9番染色体上のsgr遺伝子におけるSNPを同定し、これは最初のイントロンの末端におけるスプライシング部位におけるG→A置換であった。この突然変異対立遺伝子をsgr-1と称する。その配列は配列番号2に示される。
【0170】
sgr-1突然変異は、2つの標識された蛍光発生オリゴヌクレオチドフォワードプライマー及び標識していない共通のリバースプライマーを使用したKASPar(商標)(KBiosciences)アッセイを使用して同定することができる(表1)。
【0171】
【表1】
【0172】
実施例2:sgr-1突然変異の遺伝子移入
sgr-1突然変異を異なるエリート遺伝子型に遺伝子移入した。EMS集団からのsgr-1突然変異は劣性であり、その影響は変異がホモ接合状態にある場合にのみ存在する。この影響を示すHF1ハイブリッドを産生するために、様々な親系統を変換した。親系統とsgr-1供給源との間の最初の交配の後、親系統においてsgr-1突然変異を数回、戻し交配した(図1)。得られた2つの変換された系統を一緒に交配し、sgr-1突然変異を欠くHF1に関してほぼ同質遺伝子系統(NIL)であるsgr-1突然変異についてホモ接合性のHF1ハイブリットを生成した。
【0173】
次の橙色の果肉の類型:Charentais、Italian netted、Western Shipper、Eastern Shipper、並びに次の白色及び緑色の果肉の類型:Yellow Canary、Piel de Sapo、Galia、及びHoney Dewを含むいくつかの遺伝子型をsgr-1突然変異を有して変換した。
【0174】
実施例3:葉に対するsgr-1突然変異の影響
葉の黄変及び壊死に対するsgr-1突然変異の影響を評価するために、本発明者らは、sgr-1突然変異を有する又は有しない異なるメロン遺伝子型の葉の色を評価した。葉の色は、植物の成長中の様々な時期、通常、果実の結実前の初期段階(date1)、果実の成熟中(date2)、及び果実の収穫中又は直後の後期段階(date3)に評価される。いくつかの植物を遺伝子型ごとに評価し(5~10の植物)、葉の色を肉眼によって及び比色計を使用して評価することができる。例えば、Konica Minolta CR400比色計を使用して葉の色を測定することができる。所与の日付について、2つの測定値を植物において取得した後、CIELAB色空間の3つの座標(L、a、及びb)について平均して植物平均値を得る。測定される葉は、植物を表す(若すぎず、古すぎない)ように選択される。次いで、すべての植物の値の平均を使用して、所与の日付について遺伝子型レベルで平均L、a、及びbを計算することができる。
【0175】
V1_Charentais及びV2_Yellow Canary系統では、葉の色に対する有意な影響が目に見えて観察された(図2)。
【0176】
色の進展及び色差をより正確に評価するために、比色計を使用して葉の色の測定を行った。sgr-1遺伝子型について観察されるより低いL、a、及びb値は、より濃くより緑色の葉の色を反映している。さらに、sgr-1データの分散が低減することは、葉の色の安定性がより高いことを示し、最初の遺伝子型と比較して、sgr-1突然変異による葉の黄変の減少を示す(図4)。
【0177】
ANOVA検定を使用してsgr-1変換系統と元の系統との平均を比較した場合、有意な影響が3つの座標(L、a、b)のうちの1つに少なくとも記録される(表2)。特に果実の成熟段階及び後期段階で、葉の色に対するsgr-1変異の有意な影響について明確に結論付けることができる。
【0178】
【表2】
【0179】
以下の式を使用した比色差ΔEの計算は、この結論を裏付けている。
【数2】
ΔEは、初期段階では低く、sgr-1と対応する野生型(WT)系統との間で葉の色が非常に類似していることを意味する。次いで、ΔEは時間とともに増加し、後期植物段階でより目に見える色差の進展を示す(図5)。
【0180】
通常の状態で目に見える葉に対するsgr-1の影響に加えて、sgrの強い影響がCYSDV圧力(ウイルスによって深刻な影響を受けた地域での自然感染)の下でも見られた。ウイルスは、sgr-1突然変異対立遺伝子を有する植物の葉にまだ存在するが、目に見える症状は見えなくなり、sgr-1突然変異対立遺伝子を有する植物は、対応する野生型対立遺伝子を有する植物よりも黄変が少ない。sgr-1突然変異は、CYSDVの黄変症状に対する興味深い部分的抵抗性を提供する(図3)。
【0181】
実施例4:果皮の色に対するsgr-1突然変異の影響
系統の変換の際に、本発明者らは、メロンの種類による果皮の色に対するsgr-1突然変異の影響を観察した。果実は、より緑色のままになる傾向がある。本発明者らは、収穫日及び保存から7日後の両方で、視覚的及び比色分析によってこの影響を評価した。観察及び測定は、異なるメロン遺伝子型、より具体的には次の3つの品種の橙色の果肉材料で行った:V1_Charentais_LSL、V2_ItalianNet_NLSL、V3_ItalianNet_NLSL。
【0182】
橙色の果肉材料では、収穫時にV2_ItalianNet_NLSL野生型とsgr-1変換品種との間で色差をはっきりと観察することができた。V2_Italian netted品種は非LSLであり、成熟時に黄色になる。しかしながら、sgr-1形態の果皮は緑色のままである。
【0183】
7日間の保存後、野生型(WT)V2_ItalianNet_NLSLの果実はますます黄橙色に変化するが、V2_ItalianNet_NLSL sgr-1の果実は外見上進展せず、緑色の果皮の色を保持する(図6)。図6のカラー版によって、果皮の色に対するsgr-1の影響が明らかとなる。図6を含む本出願のすべての図のカラー版は、本出願とともに提出され、要求に応じて入手可能である。
【0184】
成熟時に黄色に変わらないLSL遺伝子型であるV1_Charentais_LSLについても観察を行った。収穫時には、V1_Charentais_LSLのsgr-1と野生型との間に色差は見られなかった。これは、sgr-1遺伝子型がメロンのLSL遺伝子型の果皮の色に影響を与えないか、又はわずかな程度しか影響しないことを示している。
【0185】
さらに、sgr変異の劣性の影響が果皮の色についても確認された。V3_ItalianNet_NLSLの野生型とsgr-1のヘテロ接合体形態で違いは観察されなかった。
【0186】
sgr-1の影響がはっきりと見える場合でも、比色分析データを使用してそれを示すこともできる。果皮表面上の網状物(netting)の存在により、比色計ツールはそのような測定には適していなかった。代わりに、画像分析を使用して、果皮の色を抽出し、L、a、及びb値にアクセスすることができる。
【0187】
値及びb値について野生型と比較して、品種2の非LSL遺伝子型のsgr-1変異に有意な統計的影響が観察された(図7)。より高いL値は、より緑色であるsgr-1形態と比較して、野生型の果皮の色がより黄色であることを反映している。LSLである品種1のsgr-1と野生型との間に違いは見られない。非LSL品種3のヘテロ接合性sgr-1形態と野生型との間にも有意差は記録されなかった。果皮の色への影響を明らかにするために、変異は、ホモ接合状態であり、かつ、非LSLバックグラウンドである必要がある。
【0188】
sgr-1変換形態とWT対応系統との間のΔE式により、比色差を計算することができる。品種2に対するsgr-1変異の影響は、J0(収穫日)で明らかであり、J7(7日間の保存)でわずかに増加し、ΔEは10より大きい(それぞれ26.1及び30.7)が、他の品種のΔEは10未満である(図8)。
【0189】
実施例5:果肉の色に対するsgr-1突然変異の影響
本発明者らは、この果実の品質特性に対する潜在的な影響を制御するために、メロンの果肉の色に対するsgr-1突然変異の影響をさらに評価した。
【0190】
異なる遺伝子型のメロンの果肉の色は、14℃の冷蔵室で7日間保存した後、収穫後の段階で視覚的に観察され、比色分析によって測定された。2つのカテゴリのメロン:野生型(WT)及びsgr-1形態のそれぞれの形態について、品種V1_Charentais_LSL、V2_ItalianNet_NLSLの橙色の果肉材料、及び品種V6_YellowC_LSLの白色の果肉材料を評価した。
【0191】
遺伝子型ごとに10個の果実の果肉の色を評価した。比色計を使用して、果実の赤道スライス部分で測定を行う。果実ごとに直径方向に反対の2つの測定値を得て、次いで、平均値を計算して果実レベルでの色を得る。
【0192】
Tukeyの検定を用いたペアワイズ比較を使用して色差を評価し、橙色の果肉材料及び白色の果肉材料の両方においてsgr-1系統とその野生型との間に有意差は記録されなかった(図9)。
【0193】
同じ結果が緑色の果肉材料で観察される。
【0194】
実施例6:sgr-1変換品種の微細な表現型分析
WT対立遺伝子、V2_ItalianNet_NLSL、V4_HD_NLSL、V5_Charentais_NLSLを含む3つの品種、及びsgr-1変異についてそれらの対応する3つの変換品種について、いくつかの特質の微細な表現型分析を行った。遺伝子型ごとに合計14個の果実を収穫し、表現型分析を行い、非LSL種に関連する他の重要な特徴に対するsgr-1突然変異の影響を評価した。
【0195】
サイクルの長さは、植付け日から収穫日まで計算された日数に相当する。非LSL材料は、最も短いサイクルとして既知であり、植付けの55日後から果実を収穫することができるが、LSL材料はサイクルが長く、植付けから約90日後に果実を収穫することができる。実験では、すべての植物を同日(播種後約20日)に畑に植付けし、収穫した果実を収穫日とともに記録し、計算を行った。観察された異なる遺伝子型では、サイクルの長さについてsgr-1変換品種とそれに対応するWT品種との間に有意差はなかった(図10)。staygreen突然変異により、収穫時期は大幅に遅延しない。
【0196】
果柄の脱離は、果皮の色の進展又は最初の葉及び巻きひげの老化などの重要な成熟度の指標である。これらの指標のうちの1つ又はいくつかが変動するときに、果実が収穫される。したがって、果柄の脱離が果実の収穫日に観察され、1~9のスケールで評価した(1=完全に抜け落ちる、9=抜け落ちない)。sgr-1突然変異は、果柄の脱離である成熟度の指標にあまり影響を与えず、Tukeyの検定を用いたペアワイズ比較を使用して有意差は見出されない(図11)。抜け落ちた材料は抜け落ちたままであり、生産者による収穫を容易にする。
【0197】
電子屈折計を使用して各メロンの赤道スライス部分で収穫日に行ったブリックス測定でも、野生型と比較してsgr-1突然変異体のブリックスレベルの有意差は示されない。WT対立遺伝子を有する対応するメロンと比較して、sgr-1突然変異は糖レベルに影響を与えず、したがって甘さにも影響を与えない(図12)。
【0198】
収穫されたすべての果実の各赤道スライス部分において硬度も測定した。針入度計を使用して、赤道スライス部分の直径方向に反対の2点で測定を行った。次いで、2つの測定値の平均値を計算する。sgr-1遺伝子型とWT遺伝子型との間で統計的差異は観察することができなかった(図13)。
【0199】
結論として、非LSL遺伝子型として分類された元の品種(WT)と比較して、異なるsgr-1変換品種で行った観察は、sgr-1突然変異により、果皮の色の進展の安定性により貯蔵寿命が延長されたが果実の品質及び成熟度の指標には影響しない、メロンの新しい理想型がもたらされたことを示す。言い換えれば、収穫時期を延ばすことなく、より良好な畑の維持及び果実収穫の柔軟性を生産者にもたらす。保存中に果皮の色が進展しないことは、小売業者により多くの柔軟性をもたらす。最終消費者にとっては、生産物の最初の果実品質が維持される。
【0200】
異なるメロン類型由来の他のクリマクテリック型果実を評価したが、同じ結論が得られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023543614000001.app
【国際調査報告】