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特表2023-543626基材に浮き彫りを生成するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-17
(54)【発明の名称】基材に浮き彫りを生成するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/06 20060101AFI20231010BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20231010BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B41M3/06 C
B41M3/06 D
B41M1/30 B
B41J2/01 127
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520278
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 ES2021070697
(87)【国際公開番号】W WO2022069777
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】20382877.7
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516277439
【氏名又は名称】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
【Fターム(参考)】
2C056HA44
2H113AA01
2H113AA05
2H113BA00
2H113BA29
2H113BB07
2H113BB10
2H113BB18
2H113BC10
2H113DA53
2H113EA08
2H113EA10
2H113FA29
2H113FA43
2H113FA44
(57)【要約】
本発明は、基材(1)表面に浮き彫りを生成する方法及びシステムに関し、該方法は、互いに接触することとなるコーティング及び浮き彫り生成材の基材(1)表面への塗布と、浮き彫り生成材(3)の昇華とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング(2)及び浮き彫り生成材(3)を互いに接触させて、基材(1)に塗布することと、
前記浮き彫り生成材(3)を昇華させて、前記コーティング(2)と接触して前記浮き彫り生成材(3)によって先に占められていた領域に対応する空洞を前記コーティング(2)に残すことと
を含み、前記空洞が浮き彫りを定める、基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項2】
前記コーティング(2)が前記浮き彫り生成材(3)に塗布される、請求項1に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項3】
前記浮き彫り生成材(3)が前記コーティング(2)に塗布される、請求項1に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項4】
前記浮き彫り生成材を昇華させた後に、前記浮き彫り生成材の昇華によって影響を受けた前記コーティング及び/又は前記浮き彫り生成材の残留物を除去することを含む、請求項1から3のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項5】
前記浮き彫り生成材(3)は、デジタルインクジェット印刷によって塗布される、請求項1から4のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項6】
前記浮き彫り生成材(3)は、前記基材(1)での画像に合わせて塗布される、請求項1から5のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項7】
前記浮き彫り生成材(3)が透明である、請求項1から6のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項8】
前記コーティング(2)及び/又は前記浮き彫り生成材(3)は、前記基材(1)に液体形態で塗布される、請求項1から7のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項9】
前記コーティング(2)及び前記浮き彫り生成材(3)は、前記コーティング(2)が液体である時又は部分的に固化された時に互いに接触することとなる、請求項8に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項10】
前記コーティング(2)及び/又は前記浮き彫り生成材(3)が固化される、請求項1から9のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項11】
前記浮き彫り生成材(3)を昇華させる前に、前記コーティング(2)及び/又は前記浮き彫り生成材(3)は少なくとも部分的に固化される、請求項10に記載の基材(1)表面に浮き彫りを作製するための方法。
【請求項12】
前記コーティング(2)及び/又は前記浮き彫り生成材(3)の前記固化は硬化によって行われ、好ましくは電磁放射線、好ましくはUVによる硬化によって行われる、請求項10又は11に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項13】
前記コーティング(2)が前記浮き彫り生成材(3)よりも後に固化を終える、請求項10から12のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項14】
前記浮き彫り生成材及び前記コーティングを繰り返し塗布して、前記コーティング及び前記浮き彫り生成材の複数の層を得る、請求項1から13のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項15】
前記浮き彫り生成材(3)の昇華は、加熱によって、特に電磁放射源によって、より特にIRによって、熱対流要素によって、より特に熱風によって、又は熱伝導加熱要素によって行われる、請求項1から14のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項16】
前記浮き彫り生成材(3)は、昇華インクを使用することによって塗布される、請求項1から15のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項17】
前記浮き彫り生成材(3)及び/又は前記昇華インクは、前記コーティング(2)に混和性を有する、請求項1ないし16のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項18】
前記昇華インクは分散体であり、分散部分が前記浮き彫り生成材(3)を含む、請求項16又は17に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項19】
前記浮き彫り生成材が昇華性の固体粒子を含む、請求項1から18のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項20】
前記昇華性の固体粒子は、2000Å以下、好ましくは100Å以下、特に10Å以下のサイズ(D50)である、請求項19に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項21】
前記浮き彫り生成材(3)は、塗布される時に10重量%以下、好ましくは1重量%以下、特に0.1重量%以下の昇華インクの濃度を有する、請求項16から20のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項22】
前記昇華インクは、前記コーティング(2)及び/又は前記浮き彫り生成材(3)を硬化させるために、決まった波長で照射される電磁放射線のエネルギー、特に電磁放射線を十分に吸収して、前記エネルギーを熱に変換するように構成された電磁放射線吸収剤を含む、請求項16から21のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項23】
前記電磁放射線吸収剤がUV用であり、特に、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、オキサニリド系及びシアノアクリレート系からなる群から選択される、請求項22に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項24】
前記昇華インクは、熱を放出することによって前記コーティング(2)で反応するように構成された発熱化学反応促進剤を含む、請求項16から23のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項25】
前記昇華インクは、加熱によって活性化された時に前記コーティング(2)に臭いを付与するように構成された臭気剤を含む、請求項16から26のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するための方法。
【請求項26】
基材(1)表面に浮き彫りを生成するためのシステムであって、
前記基材(1)にコーティングを塗布する手段(70)と、
浮き彫り生成材(3)を塗布する手段(40)と、
前記浮き彫り生成材(3)を昇華させる手段(20)と、
前記コーティング(2)を塗布する手段、前記浮き彫り生成材(3)を塗布する手段、及び前記浮き彫り生成材(3)を昇華させる手段を制御する手段と、
を含み、前記システムは、請求項1から25のいずれかに記載の方法を実施するように構成される、基材(1)表面に浮き彫りを生成するためのシステム。
【請求項27】
前記浮き彫り生成材(3)を昇華させる手段(20)は、少なくとも1つの電磁放射加熱ランプ(21)、特にIR加熱ランプ、少なくとも1つの対流加熱要素、特に熱風送風機、及び/又は少なくとも1つの熱伝導加熱要素(22)、特にローラ(221)又はプレート(222)を含む、請求項26に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するためのシステム。
【請求項28】
前記コーティング(2)に面する昇華材料の受け取りストリップ(90)を含み、それにより前記浮き彫り生成材(3)が昇華された時に、前記浮き彫り生成材(3)の昇華によって影響を受けた前記コーティングによって形成された昇華材料及び/又は前記浮き彫り生成材(3)の残留物が受け取りストリップ表面に与えられるようにされる、請求項26又は27に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するためのシステム。
【請求項29】
前記熱伝導加熱要素(22)の表面又は昇華材料が与えられる前記受け取りストリップ(90)の表面を清掃する手段(50)、特に前記表面又は前記ストリップを掻くための掻き落としブレード(51)を含む、請求項27又は28に記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するためのシステム。
【請求項30】
前記浮き彫り生成材(3)の昇華によって影響を受けた前記コーティングによって形成された昇華材料を前記コーティング(2)から除去するための及び/又は前記浮き彫り生成材(3)の残留物を除去する手段(30)、特に少なくとも1つのブラシ、少なくとも1つの吸引機(31)及び/又は少なくとも1つの送風機の形態である前記手段(30)を含む、請求項27から29のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するためのシステム。
【請求項31】
前記浮き彫り生成材(3)の昇華からガスを取り出す手段(80)、特にガス取り出しフード(81)の形態である前記手段(80)、並びに/又は前記コーティング(2)及び/若しくは前記浮き彫り生成材(3)を少なくとも部分的に固めるための固化手段(10)、及び/又は前記方法を実施する間に前記基材(1)を運搬する基材運搬手段(60)を含む、請求項26から30のいずれかに記載の基材(1)表面に浮き彫りを生成するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にデジタルインクジェット印刷によって、基材に3D表面の浮き彫り又は構造を生成するための方法及びシステムに関する。
【0002】
本発明は、特に、家具、ドア及び床用のパネル、ドア及び窓枠用のプロファイル材などの建築及び家具用の製品の製造の分野において適用可能である。
【0003】
基材表面での浮き彫りの生成によって、基材表面に印刷された画像に対応して、木や石などの天然素材の触感や表面を再現することが可能となる。
【背景技術】
【0004】
現在、デジタルインクジェット印刷によって基材表面に浮き彫りを生成するための様々な技術が知られている。これらの技術は、彫刻や成形などの基材表面に浮き彫りを生成するための他の既知の技術と比較して、はるかに高い柔軟性と精度で浮き彫りを得ることができるという利点を有する。
【0005】
デジタルインクジェット印刷によって基材表面に浮き彫りを生成する既知の技術では、浮き彫り生成材の液滴がコーティングに印刷される。印刷された液滴は、浮き彫り生成材をコーティングに加えることによって、コーティングに凸形の表面又は突起を生成する。あるいは、液体コーティングに射出された浮き彫り生成材の液滴の衝撃、非混和性若しくは置き換えによって、又は浮き彫り生成材がコーティングと混合若しくは溶解し、混合した材料若しくは溶液を除去した際に、印刷された液滴がコーティングに凹形表面又は凹部を生成する。
【0006】
デジタルインクジェット印刷による凸形表面の生成は、得られた浮き彫りの耐摩耗性が限られるという欠点を有する。更に、デジタルインクジェット印刷による凹形表面の生成は、浮き彫り生成材の液滴とコーティングの間での相互作用の複雑な物理的及び化学的機構の存在によって、浮き彫りの十分な精細度を得るためのプロセス制御が困難であるという欠点を有する。これらの機構には、浮き彫り生成材又はコーティングの表面張力、密度及び粘度、並びに浮き彫り生成材の液滴の速度及び量などの様々な変数が関与している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在知られている方法を考慮して、本発明は、柔軟な方法で、十分な耐摩耗性及び精細度を有する浮き彫りを得ることができる、基材表面に浮き彫りを生成するための別の方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成し、これまでに議論された技術的問題を解決するために、更に後に導き出され得る追加の利点を提供するために、本発明は、コーティング及び浮き彫り生成材の基材表面への塗布と、コーティング及び浮き彫り生成材の互いの接触と、浮き彫り生成材の昇華とを含む、基材表面に浮き彫りを生成するための方法を提供する。
【0009】
全般的に、昇華の能力があるいずれの生産物も、浮き彫り生成材として使用されることができる。特に、スクリーン印刷などの他の既知の用途のために市販されている、いわゆる昇華インク又は昇華性インクを使用することができる。特に、浮き彫り生成材は透明であることが考えられ、これにより浮き彫り生成材の染色を除去する必要のない、きれいな仕上がりの人目を引く浮き彫りを得ることができる。
【0010】
固体状態の浮き彫り生成材は昇華され、コーティングと接触して浮き彫り生成材によって占有された領域に対応する空隙をコーティングに残し、この空隙が浮き彫りを定める。
【0011】
本発明によれば、コーティング及び/又は浮き彫り生成材は、液体状態で工程に供給され、工程中に固化されることが考えられる。本発明による浮き彫り生成材及び/又はコーティングの固化は、例えば硬化又は乾燥によって行われることができる。
【0012】
本発明によれば、浮き彫り生成材は、浮き彫り生成材の液滴の形態であるインクを射出するデジタルインクジェット印刷によって塗布されることができる。これにより、デジタルインクジェット印刷技術に特有の優れた柔軟性、速度、及び精細度で、浮き彫りを生成することができる。
【0013】
浮き彫り生成材が昇華を行う固体状態にあることを考えると、浮き彫りは昇華プロセス自体の変数によって、及び特に浮き彫り生成材がデジタルインクジェット印刷によって塗布される場合には、比較的程度は低いが、浮き彫り生成材とコーティングの間の上記の相互作用の様々な変数によって調整される。このようにして、制御された方法で高精細の浮き彫りを得ることが可能である。
【0014】
好ましくは、本発明によれば、コーティングと浮き彫り生成材とは、特に浮き彫り生成材がデジタルインクジェット印刷によって塗布される場合には、コーティングが液体である又は部分的に固化された時に、互いに接触する。これにより、例えば衝撃、非混和性若しくは置き換えによる、コーティングへの浮き彫り生成材の導入、又はコーティングでの浮き彫り生成材の混合若しくは希釈が容易になる。この観点で、本発明によれば、昇華によって浮き彫りを生成する能力は、既知の浮き彫り生成技術と互換性があり、そしてそれらと組み合わせて使用することが可能である。
【0015】
本発明は、昇華される浮き彫り生成材が少なくとも部分的にコーティングに覆われているか又はコーティングに埋め込まれていること、及び昇華される浮き彫り生成材が少なくとも部分的にコーティングと混合されていることの両方を想定する。浮き彫り生成材が昇華し、したがって固体から気体に変化すると、浮き彫り生成材はコーティングの外側に揮発する。
【0016】
昇華中に浮き彫り生成材のガスがコーティングを通り抜けると、コーティングに多孔質の又は空洞の体積が生じる。昇華の影響を受けたコーティングのこの多孔質の体積は、昇華した浮き彫り生成材のガスが侵入していないコーティングの体積に比べて脆弱であるため、容易に除去可能である。昇華の影響を受けたコーティング材料を除去することで、浮き彫りを得ることができる。また、昇華後に、特に昇華の影響を受けたコーティング材料と共に、浮き彫り生成材の残留物を除去することが考えられる。材料の除去は、例えばブラッシング又は吸引のような機械的手段及び/又は洗浄又はリンスのような化学的手段で行われることができる。
【0017】
好ましくは、本発明によれば、コーティングは、浮き彫り生成材よりも後に固化を終える。それにより、コーティングを通しての昇華した浮き彫り生成材のガスの排出を容易にする。浮き彫り生成材に対するコーティングの固化のその遅れを実現するために、浮き彫り生成材及び/又はコーティングの材料は、例えばその硬化又は乾燥に影響を与える、適切な組成で選択されることができる。
【0018】
本発明によれば、浮き彫りは、浮き彫りを生成する前又は後に基材に施される基材での画像に合わせて又は対応して塗布されることができる。浮き彫り及び対応する画像の生成は、浮き彫り及びその画像のデジタルインクジェット印刷によって、同期して行われることができる。
【0019】
好ましくは、本発明は、浮き彫り生成材がコーティングに塗布されること(すなわち、コーティングが塗布された後に)及びコーティングが浮き彫り生成材に塗布されること(すなわち、浮き彫り生成材が塗布された後に)の両方を想定する。しかしながら、例えば同時に塗布される、特に混合されて、1つの同じ塗布生産物を形成するなどの、浮き彫り生成材及びコーティングが基材表面で互いに接する他のいずれの態様も想定される。本発明によれば、コーティング及び/又は浮き彫り生成材は、少なくとも領域でそれが広がることによって、すなわち少なくとも部分的に又は部分的な領域で基材を覆うことによって、塗布されることができる。
【0020】
同様にして、本発明は、浮き彫り生成材及びコーティングを繰り返し塗布して、コーティング及び浮き彫り生成材の複数の層を得ることができ、それにより多層コーティングを形成することを想定する。この場合、浮き彫り生成材の昇華は、それぞれの層を塗布した後で次の層を塗布する前に、及び/又はすべての層を塗布した後に行われることができる。各層は、例えば層厚さ、浮き彫り生成材の量、昇華インクの液滴量などの異なるパラメータで構成されることができる。
【0021】
この点に関して、本発明は、少なくとも部分的に基材を覆って延在する他の層を追加で塗布することができることもまた想定しており、それにより少なくとも1つのコーティング及び浮き彫り生成材層、並びに例えば異なる光沢度又は異なる複数の深さの構造を有する、少なくとも別の装飾層又は機能層での多層コーティングを得ることができる。これらの別の層は、例えばコーティングと浮き彫り生成材の層の間及び/又はそれらの層の表面に塗布されることができる。同様にして、コーティング及び浮き彫り生成材の層自体が、少なくとも部分的に装飾的又は機能的特徴、例えば異なる光沢度又は異なる複数の深さの構造を、追加で備えることができる。
【0022】
このように、部分的な領域にコーティング及び/又は浮き彫り生成材を選択的に塗布すること、それらを繰り返し塗布すること、又は他の層を含むことによって、異なる光沢又は浮き彫りなどの異なる装飾的若しくは技術的効果が選択的に制御又は提供されることができる多層コーティングを得ることができる。
【0023】
本発明の関連では、したがって浮き彫り生成材は、本発明によればコーティングと接触して塗布され、少なくとも部分的に昇華された時にコーティングに浮き彫りを生成するように構成された生産物として理解されることができる。この観点で、塗布される浮き彫り生成材は、少なくとも部分的に昇華性の生産物、すなわち、本発明の方法によってコーティングに浮き彫りを生成するために少なくとも部分的に昇華される昇華性材料で作られた、昇華性の生産物を含む。
【0024】
本発明によれば、コーティング及び/又は浮き彫り生成材が、液体又は固体の状態で塗布されることが考えられる。固体状態の浮き彫り生成材は、例えば固体の浮き彫り生成材粉末を散布することによって塗布されることができる。固体状態の浮き彫り生成材は、例えば基材表面に広がる固体シートの形態で貼り付けられることができる。この観点で、本発明は、少なくとも部分的に液体又は固体状態の浮き彫り生成材及び/又はコーティングの使用に関して、あらゆる可能な組み合わせを想定する。
【0025】
好ましくは、浮き彫り生成材はデジタルインクジェット印刷によって液体形態で塗布され、例えば昇華インク、特に上述したように、本発明の方法に適したスクリーン印刷に使用される昇華インクを使用する。同様に、好ましくはコーティングは、ローラによって液体の形態で塗布される。しかし、コーティング、及び液体の浮き彫り生成材に含まれる昇華インク又は液体の両方は、インクジェット又はローラによる方法に加えて、スプレーなどの他のいずれかの方法によって塗布されることができることも考えられる。
【0026】
昇華は、浮き彫り生成材を加熱することによって、好ましくは大気圧で行われることが考えられる。好ましくは、浮き彫り生成材がインクジェット昇華インクによって塗布される場合、選択された昇華性の生産物の昇華温度は、使用されるインクジェットヘッドが適切な射出粘度を得るために加熱(典型的には約40℃に)されることを考慮し、最小閾値より高くなければならない。同様に、好ましくは昇華性の生産物は、例えばコーティングや基材などの本発明の方法に関与する材料の品質低下を防ぐために、その昇華温度が最大閾値、例えば200℃よりも低くなるように選択されなければならない。
【0027】
浮き彫り生成材の昇華は、放射線、対流又は熱伝導によって、特にそれぞれ電磁放射線源(例えばIRによる)、熱対流要素(例えば熱風)、及び/又は熱伝導要素(例えば加熱された要素)を用いて、いずれかの方法で加熱することによって行われることができる。特に、IRランプは、加熱のための電磁放射源として使用されることができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態によれば、昇華インク又は浮き彫り生成材を含む液体が分散体であり、分散部分が浮き彫り生成材を含むことが提供される。特に、分散部分は液体又は固体の形態であることができる。
【0029】
また好ましくは、浮き彫り生成材は、塗布される際の昇華インク又は浮き彫り生成材を塗布するための液体での濃度が、10重量%以下、好ましくは1重量%以下、特に0.1重量%以下である。これにより、比較的低濃度の浮き彫り生成材を用いて、コーティングで浮き彫りを定める十分な空洞を得ることができる。
【0030】
同様に、好ましくは、浮き彫り生成材は、昇華性の固体粒子、すなわち昇華性材料で作られた固体粒子を含む。通常は、昇華性の固体粒子はあらゆるサイズであることができる。有利には、約2000Å以下の粒子サイズ(D50)は、再循環を必要としないインクジェット印刷ヘッドでのその使用を可能にする。昇華性粒子のサイズが小さいほど、昇華されることができる材料の量は多くなり、約100Å以下の粒子サイズ(D50)が特に好適である。特に、約10Å以下の粒子径(D50)では、浮き彫り生成材を塗布するための、昇華インク又は液体での浮き彫り生成材の溶液を得ることができる。平均径とも呼ばれる粒子の平均サイズを定量化するための用語D50は、当業者に公知の方法で、すなわち、その値よりも大きい又は小さい直径の粒子の濃度が、サンプル中の全粒子分布の50%である粒子径値として定義される。
【0031】
前述のように、有利には浮き彫り生成材及び/若しくは昇華インク、又は塗布液が、コーティングに混和性を有することが考えられる。これにより、浮き彫り生成材又は昇華インクが塗布された時に、それらはコーティングに容易に取り込まれることができ、それは昇華で浮き彫りを定める空洞を生成する、互いの更なる接触を促進する。混和性に有利に働くように、昇華インクとコーティングは実質的に同じ極性を持つことが考えられ、特にコーティングと昇華インクの分散部分は、実質的に同じ組成を有することが考えられる。
【0032】
昇華インクとコーティングを混合する構成、特にインクジェットは、射出されたインクの液体によって(例えば、コーティング表面への液滴の衝突によって)浮き彫りの空洞を定めるコーティング液の変位が生じる他の既知の浮き彫り生成方法と比較して、浮き彫りのより高い精細度を得ることを可能にする。この得られるより高い精細度は、変位作用が、コーティングの空洞又は圧痕の周りの局所的な変形を伴い、そこではその空洞からずれた又は外れた液体が蓄積するのと異なり、混合物はそのような変位がなく、浮き彫り生成材がコーティングに組み込まれ、浮き彫りがその後のステップ又は工程でその混合物を取り除くことによって得られるという事実によることができる。
【0033】
更に、本発明は、昇華される浮き彫り生成材が固体状態にあり、それが昇華の際に浮き彫りを定める空洞を生成するので、液体とは異なり、浮き彫り生成材がそれ自身の固体状態によって閉じ込められるという事実の結果として、向上した精細度を提供する。これは、基材表面に浮き彫りを得るための他の既知の方法を補完する方法においても、本発明をその使用に特に適したものにする。
【0034】
好ましい実施形態によれば、浮き彫り生成材及び/若しくは昇華インク、又は浮き彫り生成材の塗布液は、電磁放射線吸収剤を含み、決まった波長で照射される電磁放射線のエネルギー、特にコーティング及び/又は浮き彫り生成材を硬化させるための電磁放射線を十分に吸収して、そのエネルギーを熱に変換するよう構成される。電磁UV放射線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、オキサニリド系及びシアノアクリレート系を使用することができる。特に、電磁放射線源として、LED型又はアーク放電のUVランプを使用することができる。
【0035】
別の好ましい実施形態によれば、浮き彫り生成材及び/若しくは昇華インク、又は浮き彫り生成材の塗布液は、熱を放出することによってコーティングで反応するように構成された、発熱化学反応促進剤を含むことができる。本発明のこれら2つの最後の実施形態では、昇華を生じさせるための加熱の効率が向上する。
【0036】
本発明はまた、昇華インク、又は浮き彫り生成材の塗布液が、例えば加熱によって活性化されると、コーティング(2)に臭いが浸透するように構成された臭気剤を含むことを想定する。浮き彫り生成材自体がその臭気剤を含むことができ、又は特にその臭気剤を構成することができる(例えば、ショウノウを昇華性であって匂いを放つ生産物として使用することができる)。昇華によって匂いを表面に引き出すことができ、同時に匂いがコーティングに保持されて、それを浸透させることが保証される。
【0037】
同様に、本発明によれば、昇華インクは、透明であるか又は顔料及び他の機能性粒子を含むことができる。顔料又は機能性粒子を昇華インク、又は塗布液に組み込むことによって、得られる浮き彫りの特徴を、各塗布箇所で、例えばインクジェットインク塗布の各液滴で、顔料又は機能性粒子によって提供される特徴と結び付けることができる。このようにして、昇華インク、又は塗布液の塗布と同じステップ又は工程で、得られる浮き彫りの、その顔料又は粒子によって提供される装飾又は機能効果との連携が達成される。
【0038】
上述のように、本発明によれば、コーティング及び/又は浮き彫り生成材は、浮き彫りを得るために固化されることができ、特に、浮き彫り生成材を昇華させる前に、少なくとも部分的に固化されることができる。好ましくは、コーティング及び/又は浮き彫り生成材の固化は、硬化又は重合によって、好ましくは電磁放射線によって、より好ましくはUVによって行われる。これを行うために、コーティング又は浮き彫り生成材は、硬化性又は重合性の材料で作られる。特に、電磁放射線源として、LED型又はアーク放電のUVランプを使用することができる。
【0039】
昇華の前のコーティングの部分的な固化、すなわち限定された程度の固化又は硬化は、浮き彫りを定める輪郭を特定の方法で固定して、昇華される浮き彫り生成材をその輪郭に保持することができるため、浮き彫りの高い精細度を得ることを可能にする。特に、コーティングは、浮き彫り生成材よりも後に固化を終える。これにより、浮き彫り生成材は閉じ込められなくなり、ガスが表面に排出できなくなることを防ぐ。
【0040】
また、上述したように、本発明の方法の一実施形態によれば、浮き彫りは浮き彫り生成材の昇華によって影響を受けたコーティング、及び/又は浮き彫り生成材の残留物を除去することによって得られる。この除去された材料は、昇華後にコーティングに残される空洞を定める。この観点で、本発明の関連では、浮き彫り生成材の残留物は、本発明の方法の昇華ステップを適用した後に変質した又は変質しない浮き彫り生成材、特に昇華ステップを適用した後に昇華しない浮き彫り生成材として理解されることができる。
【0041】
本発明の第2の側面は、基材表面に浮き彫りを生成するためのシステムを提供する。本発明によれば、そのシステムは、基材にコーティングを塗布する手段と、浮き彫り生成材を塗布する手段と、浮き彫り生成材を昇華させる手段と、コーティングを塗布する手段、浮き彫り生成材を塗布する手段、及び昇華させる手段を制御する手段とを含む。そのシステムは、上述された方法を実施するために構成される。
【0042】
上記システムは、浮き彫りを生成するために材料を除去する手段を含んでもよく、これは、例えばブラッシングや吸引などの機械的なもの及び/又は洗浄やリンスなどの化学的なものであってもよい。また、上記システムは、昇華中に発生する浮き彫り生成材のガスを吸引する手段を含むことも考えられる。
【0043】
同様に、上記システムは輸送手段を含むことができ、その輸送手段は、本発明の方法の対応するステップが上述のようにして実施される異なる工程間で基材を輸送するための、例えばコンベアベルトを含む。
【0044】
本発明による浮き彫り生成材を昇華させる手段は、好ましくは加熱によることが考えられる。これを行うために、例えば少なくとも1つの電磁放射加熱ランプ、特にIR加熱ランプを含む、熱放射加熱手段を使用することができる。代わりに又は補完して、熱対流加熱手段、例えば加熱された空気による、特に熱風送風機を用いた熱対流加熱手段が使用されることができる。やはり代わりに又は補完して、熱伝導加熱手段、例えば熱伝導加熱要素、特に加熱されたローラ又はプレートによる熱伝導加熱手段が使用されることができる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記システムはコーティングに面した、昇華材料のための、特に受け取りストリップの形態の受け取り要素を含み、それにより浮き彫り生成材が昇華された時に、浮き彫り生成材の昇華によって影響を受けたコーティングによって形成された昇華材料及び/又は浮き彫り生成材の残留物が受け取りストリップ表面に与えられるようにされる。この受け取り要素は、好ましくはストリップの形態であり、コーティングから移されて受け取り要素に付着した昇華材料がその後に容易に排出されることを可能にする。
【0046】
本発明によれば、上記システムはまた、昇華材料が与えられる熱伝導加熱要素の表面又は受け取り要素の表面を清掃する手段を含んでもよいこと、特にその表面又は受け取り要素を掻き落とすための掻き落としブレードを含むことが考えられる。
【0047】
同様に、上述したように、上記システムは、浮き彫りを生成するためにコーティングから昇華材料を除去する手段を含んでもよい。これらの手段は、特に少なくとも1つのブラシ、少なくとも1つの吸引機及び/又は少なくとも1つの送風機の形態であり得る。上記システムはまた、特にガス取り出しフードの形態である、浮き彫り生成材の昇華からガスを取り出す手段を含んでもよいことが考えられる。上記システムはまた、コーティング及び/又は浮き彫り生成材を少なくとも部分的に固化させるための固化手段を含んでもよいことが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明の様々な実際の実施形態を説明することを助ける以下の図が含まれ、それらは限定でなく例として以下で説明される。
図1】本発明の方法又はシステムの第1の実施形態によるステップ(A)~(C)における、浮き彫りが得られる基材の断面図を概略的に示す。
図2】本発明の方法又はシステムの第1の実施形態の第1の態様によるステップ(D)~(G)における、浮き彫りが得られる基材の断面図を概略的に示す。
図3】本発明の方法又はシステムの第1の実施形態の第2の態様によるステップ(D)~(G)における、浮き彫りが得られる基材の断面図を概略的に示す。
図4】本発明の方法又はシステムの第2の実施形態によるステップ(A)~(C)における、浮き彫りが得られる基材の断面図を概略的に示す。
図5】本発明の方法又はシステムの第2の実施形態の第1の態様によるステップ(D)~(G)における、浮き彫りが得られる基材の断面図を概略的に示す。
図6】本発明の方法又はシステムの第2の実施形態の第2の態様によるステップ(D)~(G)における、浮き彫りが得られる基材の断面図を概略的に示す。
図7】本発明による基材表面に浮き彫りを生成するための方法及びシステムの第1の例示の実施形態の概観図を示し、ここで基材はパネルの形態である。
図8】本発明による基材表面に浮き彫りを生成するための方法及びシステムの第2の例示の実施形態の概観図を示し、ここで基材は連続シートの形態である。
図9】本発明の方法及びシステムの昇華ステップ又は工程の一態様の詳細図を示す。
図10】本発明の方法及びシステムの昇華ステップ又は工程の更なる態様の詳細図を示す。
図11】本発明の方法及びシステムの昇華ステップ又は工程の更なる態様の詳細図を示す。
図12】本発明の方法及びシステムの昇華ステップ又は工程の更なる態様の詳細図を示す。
図13】本発明の方法及びシステムの昇華ステップ又は工程の更なる態様の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
基材(1)は、パネル又はプロファイル材の形で構成されることができる。基材(1)の材料は、例えば木材(チップボード、中密度繊維板「MDF」、高密度繊維板「HDF」又は合板)、プラスチック(PVC)、セルロース系材料(紙又はボール紙)又は金属から選択されることができる。
【0050】
コーティング(2)は、液体生産物を塗布するためのいずれかの方法、例えばローラ、散布、スプレー又はインクジェット印刷によって、液体状態で塗布されることができる。コーティング(2)の材料は、例えばワニス又は重合樹脂から選択されることができる。
【0051】
図示されて以下で詳細に説明される本発明の実施形態では、浮き彫り生成材(3)はデジタル的にインクジェット印刷され、昇華インクの液滴の形態で塗布される。
【0052】
図1~3に示される本発明の第1の実施形態によれば、基材から始まり(A)、その表面にコーティング(2)が塗布され(B)、浮き彫り生成材(3)は、コーティング(2)に塗布される(C)。
【0053】
図4~6に示される本発明の第2の実施形態によれば、基材から始まり(A)、浮き彫り生成材(3)が基材(1)表面に直接、塗布される(B、C)。
【0054】
図2を参照すると、図1~3に示される第1の実施形態の第1の態様では、浮き彫りを生成するために、コーティング(2)での浮き彫り生成材(3)の液滴の衝撃、非混和性又は置き換えがある。
【0055】
図3を参照すると、図1~3に示される第1の実施形態の第2の態様では、浮き彫りを生成するために、コーティング(2)での浮き彫り生成材(3)の液滴の混合又は希釈がある。
【0056】
図5を参照すると、図4~6に示される第2の実施形態の第1の態様では、浮き彫りを生成するために、コーティング(2)での浮き彫り生成材(3)の液滴の衝突、非混和性又は置き換えがある。
【0057】
図6を参照すると、図4~6に示される第2の実施形態の第2の態様では、浮き彫りを生成するために、コーティング(2)での浮き彫り生成材(3)の液滴の混合又は希釈がある。
【0058】
コーティング(2)が浮き彫り生成材(3)と接触(D)した後に、コーティング(2)及び浮き彫り生成材(3)は、一緒に又は別々に硬化され(E)、少なくとも浮き彫り生成材(3)の固化を得る。硬化には、例えば加熱ランプや、UV、IR又は電子放射光などの電磁放射線の放射である、従来の硬化手段(10)を用いることができる。
【0059】
浮き彫り生成材(3)は、固化したら昇華(F)される。昇華(F)には、加熱手段、特に熱風、又は加熱ランプ、例えばIR加熱ランプなどの従来の昇華手段(20)を用いることができる。また、昇華(F)は、浮き彫り生成材(3)を昇華活性化生産物と反応させることによって、例えば浮き彫り生成材(3)に昇華活性化生産物を塗布することによって、行うことができることも考えられる。昇華(F)は、例えばコーティングの固化と同時に行われることができる。
【0060】
最後に、昇華の影響を受けた領域でコーティング材料を除去(G)するために、材料を除去する手段(30)を使用することができる。これらの手段(30)は、例えば、ブラッシング又は吸引のような機械的手段、又はその領域の洗浄又はリンスのような化学的手段であり得る。
【0061】
図7は、パネルの形態の基材(1)表面に浮き彫り(7)を得るための、本発明の第1の好ましい例示の実施形態による加工ラインを示す。基材(1)は、コンベアベルト(63)によって搬送(60)されて、異なるステップ又は工程を進む。
【0062】
加工ラインの最初のステップ又は工程では、UV硬化型アクリルからなる液体コーティング(2)を、塗布ローラ(71)と添加ローラ(72)を用いるローラ(70)によってそれ自体は既知の方法で、基材(1)表面に塗布する。後続のステップ又は工程において、浮き彫り生成材(3)は、UV硬化型アクリルリキッド中に分散された浮き彫り生成材(3)を含む昇華インクを用いて、インクジェットデジタル印刷(40)によって、昇華インクの射出ヘッド(41)を通じてコーティング(2)に塗布される。
【0063】
この例示の実施形態では、昇華インクは、コーティング(2)がまだ液体である間にコーティング(2)に塗布され、これにより昇華インク、したがって浮き彫り生成材(3)のコーティング(2)への進入が容易になる。この第1の例示の実施形態の後続のステップ又は工程において、塗布されたコーティング(2)及び昇華インクのセットは、UV放射ランプ(11)によって部分的に硬化されて(10)、部分的に固化する。
【0064】
次に、後続のステップ又は工程では、浮き彫り生成材(3)の昇華(20)が行われる。これを行うために、コーティング(2)表面を転がる加熱ローラ(221)によって、熱伝導(22)により浮き彫り生成材(3)に熱が伝達される。この転がりは、好ましくは、加工ラインに沿った基材(1)の前進と同期され、それにより加熱ローラ(221)は、浮き彫り生成材(3)を昇華させるためにコーティング(2)表面を実質的に滑ることなく転がる。
【0065】
昇華(20)の間に、浮き彫り生成材(3)の昇華によって影響を受けたコーティングによって形成された昇華材料及び/又は浮き彫り生成材(3)の残留物が、加熱ローラ(221)の外周面に与えられる。この昇華材料は、それを掻き落とすための掻き落としブレード(51)によって、加熱ローラ(221)の外周面から除去される(50)。浮き彫り生成材(3)の昇華によるガスは、取り出しフード(81)によって取り出される(80)。
【0066】
次に、この第1の例示の実施形態の最終ステップ又は工程では、コーティングがUV放射ランプ(12)によって硬化されて、固化(10)を終える。その後に、浮き彫り生成材の昇華によって影響を受けたコーティング及び/又は浮き彫り生成材の残留物などの余分な材料を除去するためのステップ(30)が、例えばブラッシングによって適用されることができる。
【0067】
図8は、基材(1)表面に浮き彫り(7)を得るための、本発明の第2の好ましい例示の実施形態による加工ラインを示し、第1の例示の実施形態と異なり、基材(1)は連続シートの形態である。シートは、供給コイル(5)から連続的に供給され、回収コイル(6)までそのラインの異なる工程又はステップを通過し、シートはその流通又はその後の処理のために基材(1)表面に生成された浮き彫り(7)を伴って回収される。シートは、ガイド手段、例えばガイドローラによって、それ自体は既知の方法でそのラインに沿って移動する。
【0068】
図8が示すように、この第2の例示の実施形態の異なるステップ又は工程は、第1の例示の実施形態の工程又はステップと同様にして配置又は構成される。ローラ(70)によるコーティングの塗布のステップ又は工程では、コーティングの塗布ローラの対抗ローラ(71')が組み込まれ、そのローラでの反対圧力によって基材(1)を位置決めする。同様に、昇華(20)のステップ又は工程では、加熱ローラの対抗ローラ(221')が、加熱ローラでの反対圧力によって基材(1)を位置付けるために組み込まれている。
【0069】
図9は、昇華ステップ又は工程(20)の態様を示し、第1の例示の実施形態について示されるが、第2の例示の実施形態にも同様に適用可能である。この実施形態の態様では、図7及び図8に示される例とは異なり、昇華(20)の間に、浮き彫り生成材(3)の昇華によって影響を受けたコーティングによって形成された昇華材料及び/又は浮き彫り生成材(3)の残留物は、加熱ローラ(221)の表面に直接ではなく、受け取りストリップ(90)の形態の昇華材料受け取り要素に与えられる。受け取りストリップ(90)は供給コイル(93)から供給され、回収コイル(94)まで加熱ローラとコーティングの間を通るように案内され、それまでに堆積した昇華材料が、その外部処理、リサイクル又は除去のために回収される。
【0070】
図9は、加熱ローラ(221)システムの他の構成の詳細も示す。加熱ローラ(221)は、対抗ローラ(221')と協働してそのローラで反対圧力をかけることによって基材(1)を位置付けるために、垂直移動アクチュエータ(224)によって、塗布された浮き彫り生成材(3)をそこに備えたコーティング(2)に近づくための調整可能な方法で垂直方向に移動することができる。加熱ローラ(221)は回転アクチュエータ(223)を備え、加熱ローラ(221)及び受け取りストリップ(90)を、基材(1)の前進と同期させてコーティング(2)表面で回転させ、好ましくは実質的に滑らない回転を生じさせ、同時に加熱ローラ(221)とコーティング(2)の間に挟まれた受け取りストリップ(90)の前進は、昇華材料が受け取りストリップ(90)に移されながら生じる。基材(1)をその前進において搬送(60)するためにコンベヤベルト(63)が備えられ、コンベヤベルト(63)は、ガイドローラ(61、62)によって案内されて移動し、代表的な実施例ではガイドローラ(62)の1つを回転させるように作用する回転アクチュエータ(64)によって駆動される。
【0071】
図10は、昇華ステップ又は工程(20)の別の態様を示し、それは第1の例示の実施形態について同じく示されるが、第2の例示の実施形態にも同様に適用されることができる。この実施形態の態様では、図9に示した態様とは異なり、受け取りストリップ(90)は、ガイドローラ(91)によって案内される閉じた経路で連続的に供給される。ガイドローラ(91)は、コーティング(2)に面するガイドローラ(91)の位置を調整するために、垂直移動アクチュエータ(95)によって垂直方向に移動することができ、基材(1)がこのガイドローラ(91)と対抗ローラ(91')の間を進むことを可能にする。受け取りストリップ(90)は、回転アクチュエータ(92)によって、例えばコーティング(2)に面するそのガイドローラ(91)を回転させて、移動される。
【0072】
図9に示される態様と同様に、図10の態様では昇華材料が受け取りストリップ(90)に移されるが、この態様では受け取りストリップ(90)は、それに前に堆積した昇華材料の清掃(50)がされると再供給される。その清掃(50)は、例えば図10が示すように、受け取りストリップ(90)、すなわち昇華材料がそれに移された時に受け取りストリップ(90)のコーティング(2)との接触面を掻き落とすための掻き落としブレード(51)によって行われることができる。
【0073】
図10は、上述の態様で示された加熱ローラ(221)の代わりとなる又はそれを補完する昇華手段も示す。この態様では、昇華(20)を生じさせるための加熱は、受け取りストリップ(90)のストリップによって、コーティング(2)に面するガイドローラ(91)の領域で熱対流によって行われることができる。特に、ストリップ(90)は、コーティング(2)での局所的な熱伝導を容易にする材料、例えば金属で構成されること、及び/又は加熱されることができる。
【0074】
図11は、昇華ステップ又は工程(20)の別の態様を示し、第1の例示の実施形態について同様に示されるが、第2の例示の実施形態にも同様に適用されることができる。この実施形態の態様では、図10に示した態様とは異なり、昇華は輻射加熱(21)によって行われる。加熱は、輻射の通過に対して透過性である昇華材料の受け取りストリップ(90)を通してコーティング(2)に直接的に、又は受け取りストリップ(90)の加熱によって間接的に行われることができる。
【0075】
図11で見ることができるように、加熱(21)は、連続する2つの位置でコーティング(2)に面している2つのガイドローラ(91)の間で行われ、それにより受け取りストリップ(90)はその2つの位置の間でコーティング(2)と連続して接触し続けるようにされる。これは、加熱(21)と同時にコーティング(2)の表面の平滑化を提供することを可能にする。加熱(21)の代わりに又は加熱(21)を補完して、部分的な固化(10)がUV放射ランプ(211)によって、その放射線に対して透過性である受け取りストリップ(90)を通して行われることができる。この方法では、その領域においてストリップ(90)とコーティング(2)の間に存在する空気の量が減少するため、より効率的な硬化が実現されることができる。
【0076】
図12は、昇華ステップ又は工程(20)の別の態様を示し、第1の例示の実施形態について示されるが、第2の例示の実施形態にも同様に適用されることができる。この実施形態の態様では、上述の態様とは異なり、昇華(20)を行うためのコーティングの加熱は、加熱プレート(222)の形態の熱伝導要素(22)によって行われる。加熱プレート(222)は、垂直移動アクチュエータ(225)によって垂直方向に移動することができ、それにより浮き彫り生成材(3)を備えたコーティング(2)を加熱してその昇華を生じさせるために、プレート(222)はコーティング(2)と接触するまでプレート(222)と対面し、基材(1)はプレート(222)と対抗ローラ(222')の間にある。プレート(222)に移された昇華材料の清掃(50)は、その昇華材料を掻き落とすために水平方向に移動することができる掻き落としブレード(51)によって行われ、昇華材料はその除去材料の回収トレイ(52)に堆積される。
【0077】
図13は、昇華ステップ又は工程(20)の別の態様を示し、第1の例示の実施形態について示されるが、第2の例示の実施形態にも同様に適用されることができる。この実施形態の態様では、図12に示した態様とは異なり、プレート(222)とコーティング(2)の間に配置されて、コーティング(2)から昇華材料を受け取る昇華材料の受け取りストリップ(90)が存在する。受け取りストリップ(90)は、掻き落としブレード(51)によってその昇華材料が清掃(50)される。
【0078】
本発明は、示された態様に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての態様、変更及び組み合わせを含む。
【0079】
したがって、例えば、本発明によれば、昇華(20)を生じさせるための加熱は、単一のステップ又は工程で、あるいは本発明の方法の他のステップ又は工程と繋げた、互いに連続した、又は交互にされた複数のステップ又は工程で行われることができる。この観点で、例えば加熱ローラ(221)のような複数の伝導加熱要素(22)によって、昇華が始まる前にコーティング(2)の漸進的な加熱が行われることができることが考えられる。
【0080】
実際の実施形態の例
例として、カフェイン又はショウノウを昇華性の生産物として使用して、本発明に従ってそれらのそれぞれでの実際の実施形態の例を得た。
【0081】
市販の粉末形態の昇華性生産物から出発したが、これらの粉末は様々な粒径を有し、湿気によって固まった又は凝集した部分を有することさえあった。この粉末をひいて、2000Åの粒子サイズ(D50)の昇華性生産物の粉末を得た。次に、そのひいた昇華性生産物を、UV硬化を部分的に抑制したアクリルリキッドからなる分散剤に分散させて、昇華インクの約5重量%の昇華性生産物濃度のコロイド溶液を作り、インクジェット印刷によって使用できる昇華インクを得た。
【0082】
昇華インクは、浮き彫りのデジタルテンプレートに従って、インクジェットで印刷された。そのデジタル印刷は、木製の基材表面にあらかじめ塗布されたUV硬化型アクリルワニスの液体コーティングに行われた。印刷は、商標Seiko 1536RC(再循環機能付きヘッド)及び同じ商標Seiko 508GS(再循環機能なし)で販売されている印刷ヘッドにより行われた。
【0083】
昇華インクを塗布したら、塗布されたコーティング及び浮き彫り生成材を備えたサンプルは、電気アーク放電ランプによって、コーティングが部分的に硬化し、最大硬化度が約40%(コーティングを完全に硬化させるのに必要とされる照射エネルギーに対して)になるまでUV放射に曝された。次に、昇華性生産物がカフェインであるサンプルについては約160℃のコーティング温度、昇華性生産物がショウノウであるサンプルについては約150℃のコーティング温度に達するまで、IRランプによってIR放射に曝すことによってサンプルを加熱した。
【0084】
その加熱によって、その昇華性生産物は昇華され、得られる浮き彫りを定めるコーティング領域(昇華によるガスの排出の結果としての空洞領域)においてコーティングに弱化をもたらした。次に、試料をその完全固化のために最終硬化させた。
【0085】
最後に、コーティングの表面全体にブラッシングを適用して、昇華性生産物の昇華によって影響を受けたコーティング及び/又は塗布された昇華インクの残留物からなる昇華の効果によって弱くなったそのコーティング領域を除去し、材料がその内部から除去されると、その領域に対応する空洞が露出して、浮き彫りをもたらした。
【符号の説明】
【0086】
1 基材
2 コーティング
3 浮き彫り生成材
4 浮き彫りの空洞
5 連続シート形態の基材供給コイル
6 連続シート形態の基材回収コイル
7 得られた浮き彫り
10 固化手段
11 初期硬化用UVランプ
12 最終硬化用UVランプ
20 昇華手段
21 電磁放射加熱ランプ
211 UV加熱ランプ
22 熱伝導加熱要素
30 コーティング材料除去手段
31 コーティング材料除去用吸引機
40 インクジェットデジタル印刷手段
41 インクジェット印刷ヘッド
50 昇華材料清掃手段
51 掻き落としブレード
52 昇華材料回収トレイ
60 基材搬送手段
61 ベルトコンベア用の第1のガイドローラ
62 コンベアベルト用の第2のガイドローラ
63 基材用コンベアベルト
64 ベルトコンベア用ガイドローラの回転アクチュエータ
70 液体コーティングの塗布手段
71 液体コーティングの塗布ローラ
71' 塗布ローラの対抗ローラ
72 液体コーティングの添加ローラ
80 昇華によるガスを取り出す手段
81 昇華によるガスの取り出しフード
90 昇華材料の受け取りストリップ
91 昇華材料の受け取りストリップのガイドローラ
91' 受け取りストリップのガイドローラの対抗ローラ
92 昇華材料の受け取りストリップのガイドローラの回転アクチュエータ
93 昇華材料の受け取りストリップの供給コイル
94 昇華材料の受け取りストリップの回収コイル
95 ガイドローラの垂直移動アクチュエータ
221 熱伝導加熱ローラ
221' 加熱ローラの対抗ローラ
222 熱伝導加熱プレート
222' 熱伝導加熱プレートの対抗ローラ
223 加熱ローラの回転アクチュエータ
224 加熱ローラの垂直移動アクチュエータ
225 加熱プレートの垂直移動アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】