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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】電磁放射線スペクトル検出システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20231011BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20231011BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
H01L31/10 A
G01J1/02 B
H01L31/10 D
H01L31/10 G
H01L27/146 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581399
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 IB2021056905
(87)【国際公開番号】W WO2022024021
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】102020000018709
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(71)【出願人】
【識別番号】506224698
【氏名又は名称】ウニヴェルスィタ’デッリ ストゥディ ”ローマ トレ”
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリジェリオ、ヤコポ
(72)【発明者】
【氏名】イセッラ、ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】バッラービオ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】デ ヤコヴォ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】コレース、ロレンツォ
【テーマコード(参考)】
2G065
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065AB04
2G065BA01
2G065BA09
2G065BB25
2G065BB29
2G065BC33
2G065BC35
4M118AA10
4M118AB04
4M118BA09
4M118CA03
4M118CA05
4M118CA14
4M118CA23
4M118CB01
4M118CB02
4M118CB03
4M118CB05
4M118CB08
5F149AA02
5F149AA04
5F149AB03
5F149AB17
5F149BA30
5F149BB07
5F149DA01
5F149DA41
5F149KA04
5F149KA12
5F149LA01
5F149LA02
5F149LA09
5F149XB01
5F149XB36
5F149XB37
(57)【要約】
電磁放射線のスペクトルを検出するためのシステム(100)であって、「背中合わせ」構成の2つのフォトダイオードを備え、入射電磁放射線(EMR)を電気制御電圧に依存する相対スペクトル応答性の関数として電流に変換するように構成されたセンサデバイス(20,1)と、電子制御および処理モジュール(50)であって、入射電磁放射線に関連する対応する複数の検出電流(Iph)を得るために、上記スペクトル応答性を変化させることによって複数の制御電圧(VB)の値を前記センサデバイス(1)に選択的に提供するように;制御電圧(VB)の値および前記スペクトル応答性に基づいて上記検出電流(Iph)の値を処理して、入射電磁放射線のスペクトルに関する情報(SP-ANS;IPST-IM)を取得するように構成された電子制御および処理モジュール(50)とを備える、システム(100)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
「背中合わせ」構成の2つのフォトダイオードを備え、入射電磁放射線(EMR)を、電気調整電圧に依存するそれぞれのスペクトル応答性の関数として電流に変換するように構成されたセンサデバイス(20,1)と、
電子制御および処理モジュール(50)であって、
-前記センサデバイス(1)の応答性行列を表し、前記電気調整電圧を変化させることによって連続的に前記センサデバイス(1)の光応答を変化させることによって得られる、複数の数値較正値を格納する;
-前記入射電磁放射線に関連する対応する複数の検出電流(Iph)を得るために、前記スペクトル応答性を連続モードで変化させることによって、複数の電気制御電圧値(V)を前記センサデバイス(1)に選択的に提供する;
-前記電気調整電圧(V)から得られた前記検出電流(Iph)の値、および前記複数の数値較正値を処理して、前記入射電磁放射線スペクトルに関する情報(SP-ANS;IPST-IM)を取得し、複数の光波長に対する前記入射電磁放射線のパワースペクトル密度を決定する
ように構成された電子制御および処理モジュール(50)と
を備える、電磁放射線スペクトル検出システム(100)。
【請求項2】
前記電子制御および処理モジュール(50)が、前記センサデバイス(1)の応答性を変化させる前記電気調整電圧(V)の値に従って、前記センサデバイス(1)によって検出可能な前記入射放射線の波長を選択するように構成される、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記電子制御および処理モジュール(50)が、前記センサデバイス(20,1)上の前記入射電磁放射線の前記パワースペクトル密度を決定するために処理される合成応答性行列を得るために、前記応答性行列の線を線形結合するように構成される、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記制御および処理モジュール(50)が、
前記複数の検出電流(Iph)を受信し、それを複数の検出電圧(Vph)に変換するように構成された読み出しモジュール(2)と、
前記複数の検出電圧(Vph)を受信し、それを対応するデジタル検出値(Vphi)に変換するように構成された調整モジュール(3)と、
前記検出デジタル値(Vphi)を受信し、前記入射電磁放射線の前記スペクトル情報(SP-ANS;IPST-IM)を外挿するように構成された分析デバイス(4)と
を含む、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記スペクトル検出システム(100)が、前記電磁放射線入射のスペクトル分析(SP-ANS)を実行するように構成される、請求項1~4の少なくともいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項6】
単一のセンサデバイス(1)を備える、請求項6に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記センサデバイス(1)に従って構成され、前記センサデバイスと共に、それらの画素を識別するセンサデバイスの行列に従って配置された多数の追加のセンサデバイス(1)をさらに備え、
前記電子制御および処理モジュール(50)が、
-前記入射電磁放射線に関連するさらなる複数の検出電流(Iph)を得るために、各センサデバイスのスペクトル応答性を変化させることによって、さらなる複数の電気調整電圧値(V)をセンサデバイスのアレイに提供する、
-前記さらなる電気調整電圧値(V)および各センサデバイスの前記スペクトル応答性に基づいて、そのようなさらなる検出電流(Iph)のさらなる値を処理し、そのような画素に関連するハイパースペクトル画像(IPST-IM)の取得をもたらす
ようにさらに構成される、
請求項1~5の少なくとも一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記センサデバイス(1)が、1つの半導体材料内の第1のフォトダイオード(PD1)と、少なくとも部分的に別の半導体材料内の第2のフォトダイオード(PD2)とを備え、前記第1および第2のダイオードが、互いに電気的に接続されたそれぞれのカソードまたはアノードを有する、請求項1~7の少なくともいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記第1のフォトダイオード(PD1)が、第1の半導体材料内の基板(5)を備え、該基板(5)内に、第1のドーピング型を有する第1の層(6)と、前記第1のドーピング型とは反対の第2のドーピング型を有する第2の層(8)とが一体化されている、請求項1~8の少なくとも一項に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記第1のフォトダイオード(PD1)の前記基板(5)が、前記第1の半導体材料内に真性層(7)をさらに含む、少なくとも請求項10に記載のシステム(100)。
【請求項11】
前記第2のフォトダイオード(PD2)が、前記第1のフォトダイオード(PD1)と共有される前記第2の層(8)を含み、前記第2のフォトダイオード(PD2)が、
前記基板(5)と重なり合う第2の半導体材料内の一体化層(9)をさらに含み、該一体化層(9)内に、真性層(10)と、前記基板(5)に含まれる前記第2の層(8)のドーピングとは反対のドーピングを有する第1のドープ層(11)とが一体化されている、請求項9または10に記載のシステム(100)。
【請求項12】
前記第1および/または第2のフォトダイオード(PD1,PD2)が、以下のタイプ:
(a)半導体III-V族およびそれらの合金、
(b)半導体II-VI族およびそれらの合金、
(c)IV族の半導体およびそれらの合金
のうちの1つから選択される半導体材料で作製されている、請求項1~11の少なくともいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項13】
前記センサデバイス(1)が、
電磁放射線(EMR)に曝される第1の面(12,30)と、前記第1の面に対向する第2の面(32)とを画定するような第1の半導体材料内の基板(5)と、
前記第2の面(32)に延びるように前記基板(5)に含まれ、第1のドーピング型を有する第1のドープ領域(31)と、
前記第2の面(32)まで延びるように前記基板に含まれ、前記基板(5)の一部によって前記第1の領域(31)から分離され、第2のドーパント型を有する、第2のドープ領域(33)と、
前記第1のドープ領域(31)と接触し、前記第2の面(32)に対向する第3の面(35)を画定するように前記第2の面(32)上に配置された第2の半導体材料の層(34)と、
前記第2のドーピング型を有し、前記第3の面(35)と重なり合う前記第2の半導体材料内のドープ層(36)と、
前記第2の面の前記第2のドープ領域(33)と前記ドープ層(36)とに接触するように配置された金属コンタクトと
を含み、
前記第1のドープ領域(31)、前記基板(5)の一部、および前記第2のドープ領域(33)が、前記センサデバイス(1)の前記第1のフォトダイオード(PD1)の一部であり、
前記第1のドープ領域(31)、前記第2の半導体材料内の層(34)、および前記第2の半導体材料内のドープ層(36)が、前記センサデバイス(1)の前記第2のフォトダイオード(PD2)の一部である、
請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項14】
前記制御および処理モジュール(50)が、前記第1のフォトダイオード(PD1)が一体化されている前記シリコン基板(5)に一体化されている、請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項15】
前記第1および第2の半導体材料が、前記センサデバイス(1)が短波赤外線の一部までの可視近赤外で動作するように選択される、請求項8に記載のセンサデバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射線のスペクトルを検出するためのシステムに関する。特に、本発明は、スペクトル分析システムおよびハイパースペクトルイメージングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、スペクトル分析(分光法およびスペクトログラフィー)は、波長の関数としての放射線強度の測定に関する。
【0003】
ハイパースペクトルイメージングは、画像の各点についてスペクトル情報を取得することを可能にする測定技術である。
【0004】
スペクトル分解画像を測定するための公知の方法は、物体とカメラとの間に1つ以上のバンドパスフィルタまたは分散素子を配置すること、またはマルチチャネル検出器を使用して各スペクトルバンドの画像を取得することである。測定されるバンドの数および各バンドのスペクトル幅は、フィルタまたは分散素子および使用される検出器の特性に依存する。この技術は、光学バンドの離散的なセットにおいてスペクトル情報を取得し、マルチスペクトルイメージング技術とも呼ばれる。
【0005】
国際公開第2014063117A1号パンフレット「Single-sensor hyperspectral imaging device」は、電磁スペクトルの異なるバンドのマルチスペクトル画像を再構成するために、画素の前に配置された9つのフィルタのアレイが開発された多画素センサを記載している。
【0006】
フーリエ変換分光法に基づく別の公知の手法は、物体と検出器との間の干渉計を使用する。論文J.Craven-Jones et al.“Infrared hyperspectral imaging polarimeter using birefringent prisms,” Applied Optics,Vol.50,No.8,March 10,2011は、近赤外線および中赤外線のハイパースペクトルイメージング偏光計を記載してこり、このシステムは、フーリエ変換イメージング分光偏光計を形成するための1対のサファイアウォラストンプリズムおよびいくつかの高次リターダを含む。
【0007】
ウォラストンプリズムは、マイケルソン干渉計のような経路分割干渉計に比べて振動感度が低減された複屈折ベースの干渉計として用いられる。偏光データは、ストークスパラメータ情報でスペクトルを変調するためにチャネル分光偏光計を使用して取得される。取得されたインターフェログラムは、画像の空間的およびスペクトル的に分解されたストークスベクトルを抽出するために、フーリエ変換によってフィルタリングおよび再構成される。
【0008】
論文A.R.Harvey et al.“Birefringent Fourier-transform imaging spectrometer”,OPTICS EXPRESS 5368 No.22,Vol.12,1st November 2004は、入力偏光子と、カスケード状に配置された2つのウォラストンプリズム(一方は固定され、他方は可動)と、第2の偏光子と、画像を形成するためのレンズとに基づく複屈折フーリエ変換イメージング分光計を記載している。
【0009】
米国特許第7800067B1号明細書「Electronically tunable and reconfigurable hyperspectral photon detector」は、材料組成が空乏ゾーンに沿って直線的に変化するダイオードの空乏ゾーンを利用することによってスペクトル情報を収集することができる光センサを記載している。
【0010】
論文E.Talamas Simola et al.“Voltage-tunable dual-band Ge/Si photodetector operating in VIS and NIR spectral range” Vol.27,No.6;03/18/2019,OPTICS EXPRESS 8529は、背中合わせに接続され、広帯域の波長のための光検出器として動作するような2つのフォトダイオードを備えるエピタキシャルゲルマニウム・オン・シリコン構造を有するデバイスを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2014063117A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許第7800067B1号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Craven-Jones et al.“Infrared hyperspectral imaging polarimeter using birefringent prisms,” Applied Optics,Vol.50,No.8,March 10,2011
【非特許文献2】A.R.Harvey et al.“Birefringent Fourier-transform imaging spectrometer”, OPTICS EXPRESS 5368 No.22,Vol.12,1st November 2004
【非特許文献3】E.Talamas Simola et al.“Voltage-tunable dual-band Ge/Si photodetector operating in VIS and NIR spectral range” Vol.27,No.6;03/18/2019,OPTICS EXPRESS 8529
【発明の概要】
【0013】
出願人は、従来技術のスペクトル検出システム(例えば、ハイパースペクトルイメージングシステムなど)は、入射スペクトルを再構成するために光学部品(例えば、フィルタ、プリズム、分散素子)または機械部品(例えば、MEMS微小電気機械システム)の使用を必要とするという点で構造的に複雑に見えることに注目した。
【0014】
本発明は、公知の技術のシステムよりも構造的に複雑でないスペクトル検出システム(例えば、特に、スペクトル分析またはハイパースペクトルイメージングシステムとして動作するような)を提供するという問題に対処する。
【0015】
本発明は、請求項1に記載のスペクトル検出システムおよび請求項2~15によって定義されるその好ましい実施形態に関する。
【0016】
以下、本発明を、限定ではなく例として、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電磁放射線センサ装置と、電子制御および処理モジュールとを備えるスペクトル検出システムを概略的に示す図である。
図2】2つのフォトダイオードを含む上記装置に含まれる半導体センサの第1の実現の断面図である。
図3】波長および制御電圧の関数としてのセンサによって生成される電流の傾向の一例を示す図である。
図4】上記センサの第2の実現形態の断面図である。
図5】上記センサの第3の実現形態の断面図である。
図6】上記センサの第4の実現形態の断面図である。
図7】特定の入射放射線が与えられた場合の、上記センサに印加された電圧差の関数としてのセンサ応答性曲線のセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では、類似または同一の要素または構成要素は、同じ識別記号によって図面に示される。
【0019】
図1は、電磁放射線センサ装置20と、電子制御および処理モジュール50とを備えるスペクトル検出システム100を概略的に示す。より詳細には、電子制御および処理モジュール50は、センサ1を照明する放射線のスペクトルに関する情報を抽出して出力OU上に提供するように構成される。電子制御および処理モジュール50は、読み出しモジュール2(RD)と、調整モジュール3(CND)と、分析および制御デバイス4(CNT-AN)とを含む。
【0020】
以下に説明する第1の実施形態によれば、スペクトル検出システム100は、波長の関数として入射放射線の強度の測定に関する情報SP-ANSを出力OU上に提供することによって電磁放射線のスペクトル分析を実行するように構成されてもよい。
【0021】
電磁放射線センサ装置20は、2つのフォトダイオード(すなわち、二重フォトダイオード)タイプのセンサデバイスまたは光検出器デバイス1(以下、簡潔にするために、「センサ」)を背中合わせの構成で含む。後述するように、センサ1は、電気制御電圧に依存する相対スペクトル応答性に応じて、入射電磁放射線を電流に変換するように構成される。
【0022】
電磁放射線のスペクトル分析の目的のために、センサ装置20は、単一のセンサ1を含むことができる。
【0023】
図1に概略的に示すように、センサ1は、「背中合わせ」構成で、すなわち、カソード(またはアノード)が互いに電気的に接続されて配置された第1のフォトダイオードPD1および第2のフォトダイオードPD2(以下、簡潔にするために、第1および第2の「ダイオード」とも呼ばれる)を含む。これらの第1および第2のダイオードPD1およびPD2は、制御および処理回路50に接続された残りのアノード(またはカソード)に適切な電圧(V)を印加することによって調節される。
【0024】
特に、第1のフォトダイオードPD1は、エネルギーギャップEg1を有する半導体材料から得られ、第2のフォトダイオードPD2は、エネルギーギャップEg2<Eg1を有する別の半導体材料から得られる。
【0025】
第1のダイオードPD1は、第1の最小波長λmin(PD1)と第1の最大波長λmax(PD1)=hc/Eg1(hcはユニバーサル定数)との間の波長λを有する放射線を収集して電気信号(すなわち、光電流Iph)に変換するように構成される。
【0026】
第2のフォトダイオードPD2は、第2の最小波長λmin(PD2)から第2の最大波長λmax(PD2)=hc/Eg2、λmin(PD2)<λmax(PD1)までの範囲の波長を有する放射線を収集して電気信号(対応する光電流Iph)に変換するように構成される。
【0027】
例えば、シリコンの場合、λmin(PD1)およびλmax(PD1)の指標値はそれぞれ400nmおよび1100nmであり、ゲルマニウムの場合、λmin(PD2)およびλmax(PD2)の指標値はそれぞれ400nmおよび1800nmである。
【0028】
図2は、例として材料シリコンおよびゲルマニウムに関して説明されるセンサ1の第1の例示的な実施形態を示す。記載の例によれば、第1のフォトダイオードPD1は、シリコンで作製されたp-i-n(p型、真性、n型)ダイオードであり、第2のフォトダイオードPD2は、ゲルマニウムで作製されたp-i-n(p型、真性、n型)ダイオードである。
【0029】
より詳細には、センサ1は、第1のp型ドープ層6と、第1の層6に重ね合わされた第1の真性層7(i)とを順に備える、第1の半導体材料(例によれば、シリコン)で作製された基板5を含む。第1の真性層7上には、n+型(すなわち、高濃度ドーピング)の第2のドープ層8が重ね合わされている。
【0030】
図2の実施形態によれば、第1のドープ層6(アノード)、第1の真性層7、および第2のドープ層8(カソード)は、p-i-n型の第1のPD1ダイオードを形成する。
【0031】
第1のダイオードPD1は、シリコンで作製されており、可視および近赤外の放射線を収集して電気信号(すなわち、電流Iph)に変換し、次いで、示すように、400nmの最小波長λmin(PD1)および1100nmの最大波長λmax(PD1)を有する放射線を収集して電気信号に変換する。VIS(可視)バンドは、公知のように、400nm~700nmの波長範囲に含まれる。近赤外(NIR)バンドは、700nmから1100nmまで及ぶ。
【0032】
第1のダイオードPD1(シリコン)は、第1の真性層7の厚さが50μm~300μmであることが有利である。より薄い厚さは、実際に、シリコンがすべての入射放射線を吸収することを可能にしないが、反対に、より厚い厚さは、光生成電荷の収集効率を損なうことに留意されたい。
【0033】
加えて、センサ1の適切な動作を保証するために、第1の真性シリコン層7は、n型のバックグラウンドドーピングを有することが好ましい。このようにして、シリコン中の光生成電荷を低い再結合速度で構造に沿って効果的に輸送することができ、したがって高い効率を保証することができる。
【0034】
特定の例によれば、以下のサイズ値を第1のPD1ダイオードに採用することができる:
-第1のドープ層6(Si-p)は、約200nmの厚さを有し、1019cm-3に等しい濃度のホウ素原子でドープされる;
-第1の真性シリコン層7は、約300μmの厚さを有する;
-第2のドープ層8(Si、n+)は、1019cm-3のドーパント濃度を有する約150nmの厚さを有する。
【0035】
加えて、センサ1は、第2のダイオードPD2の一部が一体化されている第1のダイオードPD1の第2のドープ層8と重ね合わされた第2の半導体材料(例によれば、ゲルマニウムで作製されている)で作製された層9を含む。より詳細には、ゲルマニウム層9は、第2のドープ層8の上に配置された第2の真性層10と、第2の真性層10に重ね合わされた第3のn型ドープ層11とを含む。第2のダイオードPD2は、第2のドープ層8(すなわち、第1のダイオードPD1と共通のカソード)、第2の真性層10、およびアノードとして作用する第3のドープ層11を含む。
【0036】
代替構造によれば、第2のPD2ダイオードのn型層は、図2(すなわち、第2のドープ層8)のように第1のPD1ダイオードと共有されないが、関連するゲルマニウム層によって実現され得ることに留意されたい。
【0037】
少なくとも部分的にゲルマニウムで作製された第2のダイオードPD2は、示されるように、最小波長λmin(PD2)400nmおよび最大波長λmax(PD2)1800nmを有する放射線を収集して電気信号(すなわち、電流Iph)に変換するように構成される。
【0038】
公知のように、近赤外バンドNIR(Near InfraRed)は700nmから1100nmまで及ぶが、短波赤外バンドSWIR(Short Wave InfraRed)は1100nm~3000nmの波長範囲に含まれる。
【0039】
言い換えれば、センサ1は、図2の特定の実現形態に示すように、フォトダイオードPD1にシリコンを使用し、フォトダイオードPD2にゲルマニウムを使用して製造される場合、短波赤外線の一部までの可視近赤外で動作することができる。
【0040】
第2のPD2ダイオードのゲルマニウム層9は、1μmを超える厚さを有することが有利であり、実際に、より薄い厚さは、ゲルマニウムが入射放射線のすべてを吸収することを可能にはせず、その結果、応答性が全体的に低下することに留意されたい。
【0041】
例えば、第2のPD2ダイオードのゲルマニウム層には、以下のサイズ値を採用することができる:
-第2の真性層10(i-Ge)の厚さは約3μmである;
-第3のドープ層11(p-Ge)の厚さは150nmであり;ドーパント濃度は1018cm-3である。
【0042】
センサ1に印加される電圧の変化に伴う応答性曲線のばらつきを大きくするために、n型ゲルマニウム層がp型ゲルマニウム層よりも低ドープであるpnダイオードを有する第2のゲルマニウムPD2ダイオードを製造することも可能であることに留意されたい。さらに、この場合、p型層の全体の厚さは200nm以下である。実際に、より厚い厚さは、センサ1の全体的な効率を低減する。
【0043】
センサ1はまた、第1のドープ層6の自由面(すなわち、第1の真性層7と接していない)上に作製された第1のオーミックコンタクトBCを有する。第3のドープ層11の第2の真性層10と接していない面には、第2のオーミックコンタクトTCが形成されている。第1のオーミックコンタクトBCおよび第2のオーミックコンタクトTCは、例えば、金属コンタクト、特に金として作製されてもよい。
【0044】
第1のオーミックコンタクトBCは、EMR電磁放射線が影響を及ぼし得る第1のドープ層6の面の露出領域12を画定するように作製される。
【0045】
センサ1は、注入技術、スピンオンドーパントおよび堆積技術(エピタキシ、スパッタリング、蒸着を含む)、ウェハボンディングとしての転写を含むがこれらに限定されない当業者に公知の半導体デバイス製造技術を使用して製造することができる。
【0046】
センサ1の動作に関して、バイアス電圧Vは、従来、第2のオーミックコンタクトTCと第1のオーミックコンタクトBCとの間の電圧差として理解されていることに留意されたい。この定義によれば、正バイアス電圧Vの場合、第2のダイオードPD2は直接バイアスされ、第1のダイオードPD1は逆バイアスされ、負電圧Vの場合はその逆である。
【0047】
センサ1がエネルギーギャップEg1を有する半導体の側から(すなわち、例によれば、ダイオードPD1の露出領域12において)照明されるとき、第1のフォトダイオードPD1は、より高いエネルギーの光放射の一部を吸収し、第2のフォトダイオードPD2は、ギャップ半導体Eg1によって吸収することができない光放射のみによって照明される。
【0048】
したがって、ギャップ半導体Eg1(すなわち、第1のダイオードPD1)を用いて実現されるフォトダイオードは、低波長(λ<hc/Eg1、hcはユニバーサル定数)の光放射の存在下でのみ光電流を生成することができるが、反対に、第2のフォトダイオードPD2は、λmax(PD1)<λ<λmax(PD2)を有する光子にのみ応答する。センサ1によって生成される総光電流は、2つの異なるフォトダイオードによって生成される光電流間の差によって与えられる。
【0049】
より詳細には、第1のダイオードPD1が逆バイアスされるとき、第1のダイオードPD1は、λmin(PD1)とλmax(PD1)との間の波長λを有する放射線で照射されたときに光電流Iphを生成することができ、一方、第2のダイオードPD2は直接バイアスされ、したがって光学的に不活性であるが、電流Iphの循環を可能にする。
【0050】
逆に、第2のダイオードPD2が逆バイアスされるとき、第2のダイオードPD2は光電流Iphを生成することができ(λmax(PD1)とλmax(PD2)との間の放射線波長λで照射された場合)、一方、第1のダイオードPD1は直接バイアスされ、したがって光学的に不活性であるが、電流Iphの循環を可能にする。
【0051】
バイアス電圧VBに作用すると、分析および制御デバイス4を介して、センサ1のスペクトル応答を電気的に選択することが可能である。図3は、一例として、バイアス電圧Vの2つの極値に対する、波長の関数としての電流Iphの傾向を示す。
【0052】
印加されるバイアス電圧Vに応じて、2つの接合部の収集効率を変更することが可能であり、特に、ギャップEg1との接合部の収集効率が増加するにつれて、ギャップEg2との接合部の収集効率の低下が観察され、逆もまた同様である。この手法は、センサ1の応答性スペクトルが連続的に変化することを可能にする。
【0053】
図7は、いくらかの入射放射線が与えられたときにセンサに印加される電圧差の関数としてのセンサ1の応答性曲線のセットを示す。図7の曲線は、図2の曲線と類似の構造に関して実験的に得られた曲線である。
【0054】
図1の例では、シリコンおよびゲルマニウムの使用に言及したが、センサ1は他の半導体材料から製造され得ることに留意されたい。例えば、第1のダイオードPD1および/または第2のダイオードPD2の光応答バンド間の上述の関係を満たすことができる他の可能な材料は、以下のタイプのうちの1つから選択される半導体材料を含む:
a)III-V族半導体(例えば、GaAs、InAs、InP)およびその合金;
b)II-VI族半導体(例えば、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdTe、HgTe、PbS、PbSe)およびその合金;
c)IV族半導体(例えば、Si、Ge、GeSn)およびそれらの合金。
【0055】
制御および処理モジュール50に関して、読み出しモジュール2は、電流信号Iphを電圧信号Vphに変換するように構成され、例えば、トランスインピーダンスアンプ(図示せず)を含むことに留意されたい。なお、電流信号Iphは、バイアス電圧Vの変化に伴って順次得られることが有利である。なお、バイアス電圧Vの変化に伴って得られるすべてのIph電流信号の変換には、単一の読み出しモジュール2(単一のトランスインピーダンスアンプを有する)を使用することができる。
【0056】
調整モジュール3は、後続の処理に適するように電圧信号Vphを処理するように構成される。例えば、調整モジュール3は、電圧信号Vphの増幅、フィルタリング、レベルアダプテーション、暗電流キャンセル、およびデジタル値Vphiへのアナログ-デジタル変換などの動作を実行する。なお、バイアス電圧Vを変化させて得られる電圧信号Vphの処理には、単一の調整モジュール3が適している。
【0057】
分析および制御デバイス4は、様々なバイアス電圧Vに対してセンサ1によって生成された光電流信号に対応する電圧信号Vphを表すデジタル値Vphiを受信し、センサ1に侵入する放射線のスペクトル分析を実行するように構成される。分析および制御デバイス4は、このようなスペクトル分析を実行するように構成されたプログラマブルロジック(例えば、ASIC/FPGA)を含んでもよい。
【0058】
加えて、分析および制御デバイス4は、適切な調整(調整モジュール3によって実行することができる)によってセンサ1に印加されるバイアス電圧Vのアナログ値に変換されてそのスペクトル応答を変化させるデジタル電圧値Vbiを生成するように構成される。
【0059】
制御および処理モジュール50は、例えば、第1のフォトダイオードPD1を作製するために使用されるシリコン基板に直接一体化することができるROIC(読み出し集積回路)である。あるいは、センサ1およびROIC50は、2つの異なる基板上に製造され、次いでバンプボンディングまたはウェハボンディング技術を介して接続されてもよい。あるいは、センサ1およびROIC50は、異なる基板上に製造され、次いでPCB電子基盤を介して接続されてもよい。
【0060】
上述したように、センサ1の感度スペクトルは、連続的に変更することができる。特に、図3に示す極端なスペクトル応答(最大または最小バイアス電圧を印加することによって得られる)の中間の多数のスペクトル応答を得ることが可能である。例えば、バイアス電圧Vは、7mV~16mVのステップ、好ましくは8mV~13mVのステップで変化する。10mVのステップを使用すると、50nm未満のスペクトル分解能が得られ得ることに留意されたい。この特性は、バイアス電圧Vの印加によって動的に調整可能であり、可視および近赤外範囲に拡張された多数のスペクトルを得る可能性を提供し、コンパクトなスペクトル分析システムの実現を可能にする。
【0061】
スペクトル分析はセンサ1のスペクトル応答性の知識に基づいており、このスペクトル応答性は特性評価ステップで決定されることに留意されたい。
【0062】
分析および制御デバイス4によって実行されるスペクトル分析は、以下の考察に基づく。
【0063】
センサ1の有限数nのバイアス電圧および有限数mの分析波長を考察する。次の行列方程式(1)が有効である:
【数1】

(1)
式中、

【数2】

は、異なるバイアス電圧VBnにおける測定された光電流を含むベクトルであり;

【数3】

は、各行が所与のバイアス電圧VBnに対するセンサ1のスペクトル応答性を表すn×m行列であり;

【数4】

は、入射放射線のパワースペクトル密度を表す長さmのベクトルである。
【0064】
光電流のベクトル
【数5】

の値は、バイアス電圧VBnの異なる値で順次得られる。
【0065】
センサ1の特性評価によって得られた行列
【数6】

は、理想的には経時的に不変である。
【0066】
1つの分析モードによれば、行列
【数7】

の行は、ベクトル
【数8】


を得るために線形結合される。このベクトルは、特定のバイアス電圧で直接得られないが、センサ1に当然関連する応答性スペクトルの線形結合として計算可能な「合成」応答性スペクトルを表す。
【数9】

の計算は、以下の式(2)に従って実行され、式中、
【数10】

は長さnの数値係数のベクトルである。
【数11】

(2)
【0067】
式1の両方の要素を
【数12】

で乗算し、したがって、式(3)に報告されるものが得られ、これから、積
【数13】

は、応答性スペクトル
【数14】

を備え、放射線
【数15】

によって投入された「合成」センサの光電流を表すことが分かる。
【数16】

(3)
【0068】
【数17】

行列に含まれる応答性がすべて線形独立であった場合、分析手順を使用して閉形式で
【数18】

係数を導出することが可能であることに留意されたい。
【0069】
その結果、センサ1の感度スペクトル内の波長を中心とする
【数19】

ディラックデルタ関数を生成し、入射放射線のパワースペクトル密度に比例する一連の光電流を得ることが可能である。
【0070】
線形独立応答性曲線のセットを生成することができるデバイスを有さない場合、ガウス関数
【数20】

を近似するために、最小二乗フィッティング手法を使用して
【数21】

係数を計算することが可能である。
【0071】
この手法を使用すると、代わりに、閉形式で係数を計算することができない場合でも、係数
【数22】

を近似することが可能になる。さらに、ガウス型の関数
【数23】

の使用は、ディラック関数δを近似することを可能にし、同時にフィッティング手順を単純化することを可能にする。関数δは、実際には、パラメータ
【数24】

の計算を特に困難にする不連続性を呈する。
【0072】
上述のゲルマニウム-シリコン構造に基づくセンサ1は、応答性スペクトルが連続的に変化することを可能にし、複数のまばらに相関する応答性曲線をもたらす。
【0073】
したがって、式(3)によっても表されるように、スペクトル密度ベクトル
【数25】

に関連するスペクトル分析は、異なるVBnバイアス電圧に対して取得された光電流値間の一連の線形結合(
【数26】

)によって実行される。このようにして、バイアス電圧の変化に伴って得られるスペクトル応答性を全体として重み付けして評価することができ、非常に狭い波長範囲(理想的には、1nm)にわたってセンサ1に入射する光強度(スペクトル密度
【数27】

)の外挿を可能にする。
【0074】
光電流の線形結合の正確な実行に必要な
【数28】

ベクトルによって表される重み値は、画像センサの特性評価段階中に導出され、経時的に変化することはない。
【0075】
特に、センサ1の予備較正段階中、応答性行列
【数29】

は、バイアス電圧Vの変化に伴う光応答の実験室分析によって得られる。次いで、バンドパス型の合成応答性セット
【数30】

を得るために、重みのベクトル
【数31】

が最小二乗フィット手順によって決定される。ベクトル
【数32】

は、制御ユニット4内に格納され、センサ1に衝突する光放射のスペクトル組成に関する情報を取得するために使用される。
【0076】
式(3)によるスペクトル情報の外挿に使用される数学的手法は、和および乗算の演算の使用を含む。
【0077】
上記を要約すると、センサ装置20は、それに印加されるバイアス電圧Vを連続的に変化させることによってスペクトル応答を測定するように設計された較正手順を受ける。この較正手順の結果は、後続の段階で使用するために分析および制御デバイス4に格納されるスペクトル応答性行列
【数33】

および重みのベクトル
【数34】

の定義に使用される。
【0078】
センサ装置20の動作では、センサ装置20は、パワースペクトルを再構成する必要がある放射線で照明され、バイアス電圧Vは較正ステップで発生したのと同様に連続的に変化する。取得された光電流信号(すなわち、光電流ベクトル
【数35】

)は、さらなる処理のために分析および制御デバイス4に転送される。
【0079】
光電流信号は、較正によって得られた重みのベクトル
【数36】

を用いて分析および制御デバイス4によって処理される。処理の結果、すなわち波長の関数としてのスペクトル密度
【数37】

は、測定された光放射線のパワースペクトルを表す。
【0080】
システム100の第2の実施形態によれば、システムは、ハイパースペクトルイメージングシステム、すなわち、ハイパースペクトルイメージングシステムIPST-IMとして動作するように構成され得る。この場合、センサ装置20は、上述のセンサと同様に、行列に従って編成された複数のセンサデバイス1を含む。例えば、センサ装置20は、取得されるハイパースペクトル画像の画素にそれぞれ対応する数百万個のセンサ1を含むことができる。
【0081】
この場合、電子制御および処理モジュール50は、各センサ1(画素に対応する)によって提供される光電流Iphを受信し、それらを上述したものと同様に処理してハイパースペクトル画像を取得するように構成され、各画素についてシーンの画像スペクトルが提供される。
【0082】
なお、センサ1の構造に関して、他の形態の実現も可能であり、そのいくつかを以下に説明する。
【0083】
センサ1の代替実施形態(図示せず)によれば、構築プロセスを簡略化するために、第1のシリコンダイオードPD1は、n-型領域が1015cm-3~1016cm-3のドーパント密度を有するp-n-nダイオードによって形成される。より高いドーパントは、センサの全体的な効率を低減させ、一方、よい低いドーパントは、許容可能な性能を提供するが、技術的に実装がより複雑である。
【0084】
別の代替実施形態(同様に図示せず)によれば、印加電圧による応答性変調能力を高めるために、ゲルマニウムのn層(例えば、図1の第2のドープ層8)を、減少するゲルマニウム割合およびn型ドーピングを有するSixGe1-xゲルマニウム-シリコン合金によって形成された層で置き換えることが企図される。
【0085】
いくつかの可能な半導体材料の使用に加えて、センサ1は、いくつかの可能な構造を提示するように製造することができる。以下では、センサ1の可能な代替構造について説明する。
【0086】
図4は、同様にシリコンおよびゲルマニウムに関する、例として説明したセンサ1の第2の実施形態を示す。
【0087】
図4の例によれば、基板5内で、第1のダイオードPD1は、第1の層21(シリコン、p型)によって形成され、その上に、第2の層22(シリコン、n型)が配置され、真性シリコン層は存在しない。図4のセンサ1の第2のダイオードPD2は、同じ第1の層22(共通カソード)と、p型半導体として振る舞う第3の層23(ゲルマニウム内、真性)(第2のPD2ダイオードのアノード)とからなる。図4のセンサ1の構造は、特にコンパクトである。
【0088】
図5は、シリコンおよびゲルマニウムの使用に関する、例示的な限定ではない、コンパクトなタイプの第3の実現形態を示す。第1のダイオードPD1は、第1のシリコン層24(p型)と第2のシリコン層25(n型)とによって形成され、真性シリコン層は存在しない。図5の第2のダイオードPD2は、第1のゲルマニウム層26(n型)と、p型半導体として動作するゲルマニウムで作製された真性層27とからなる。
【0089】
図6は、例としてゲルマニウムおよびシリコンに関して説明されているが、使用され得る可能な代替材料に関して上述したのと同じ考察が適用され得るセンサ1の第4の実現形態を示す。
【0090】
この実施形態によれば、センサ1は、例えばp型ドーピングを有する第1の半導体材料(図示の例では、シリコン)内に相対基板5を備え、これは、第1の面30および対向する第2の面32を画定する。第1の面30は、EMR放射線が貫通する露出領域12を構成する。図6のセンサ1の基板5はn型であってもよいことに留意されたい。
【0091】
第1のドープ領域31(n-Si)は、基板5内に、基板と同じ材料であるが、基板5のドーピングとは反対のドーピング、すなわち、例によれば、n型ドーピングで形成される。第1のドープ領域31は、基板5の第2の面32から、基板自体の内部に向かって延び、第1の面30には到達しない。
【0092】
上記第1のドープ領域31は、第1のダイオードPD1および第2のダイオードPD2に対する共通電極(例によれば、カソード)として動作するように意図されていることに留意されたい。
【0093】
第2のドープ領域33は、基板5内に形成され、例によれば、基板30と同じ型であるがより高いドーピング、すなわちp+型ドーピングを有する。第2のドープ領域33は、第2の面32から基板5の内側に延び、第1の面30には到達せず、第1のドープ領域31の深さよりも浅い深さである。例えば、第2のドープ領域33は、第1のドープ領域31を横方向にリング状に取り囲むように基板5内に延びる。
【0094】
第2のドープ領域33は、第1のダイオードPD1のための追加の電極(この例では、アノードとして)として作用するように意図されていることに留意されたい。
【0095】
さらに、第4の実施形態によるセンサ1は、基板5の第2の面32上に配置され、第1のドープ領域31と接触するように配置された第2の半導体材料(例によれば、ゲルマニウムで作製されている)で作製された層34を含む。上記ゲルマニウム層34は、例えば、真性ゲルマニウムである。ゲルマニウム層34および第2の面32に対向する第3の面35を画定するものなど。
【0096】
真性ゲルマニウム層34は、結果として、第1のドープ領域31の一部(特に、その中央部分)に面し、第1のドープ領域31を完全に覆うことはない。
【0097】
なお、例によれば、ゲルマニウム層34は、第2のダイオードPD2の真性層として動作するように意図されている。
【0098】
真性ゲルマニウム層34の第3の面35の上には、例によれば、高p型ドーピング(すなわち、p+ドーピング)を有するドープ層36(ゲルマニウム内)が配置されている。ドープ層36は、第2のPD2ダイオードのアノードとして作用するように意図されている。
【0099】
図6の例によれば、センサ1は、第1のオーミックコンタクトBCを形成するために第2のドープ領域33(すなわち、第1のPD1ダイオードのアノード)の上方に配置された第1の金属層37を有する。
【0100】
さらに、センサ1は、ドープ層36に電気的に接続された(第2のオーミックコンタクトTCを形成する)第2の金属層38を含む。
【0101】
第2のオーミックコンタクトTCとドープ層36(すなわち、第2のダイオードPD2のアノード)との間の接続は、第1の高ドープウェル39(すなわち、高導電性ウェル)および第2の高ドープウェル40によって行われる。
【0102】
第1の高ドープウェル39は、第2の面32から第1のドープ領域31(n型)内に内側に延び、例によれば、p+ドーピングを有する。第2のオーミックコンタクトTCは、高ドーピングウェル39の一部と接触して、第2の面32上に配置される。
【0103】
第2の高ドープウェル40は、ゲルマニウム層34内で、ドープ層36(これと接触している)から、第2の面32の第1の高ドープウェル39まで延びる。この例によれば、第2の高ドープウェル40は、p+ドープゲルマニウム内にある。
【0104】
要約すると、第1のダイオードPD1は、第1のドープ領域31、基板5の一部、および第2のドープ領域33を含む。第2のダイオードPD2は、第1のドープ領域31、真性ゲルマニウム層34、ドープ層36、第1および第2の高ドープウェル39および40を含む。
【0105】
第1のドープ領域31、第2のドープ領域33、第1の高ドープウェル39および第2の高ドープウェル40は、注入技術によって、および/またはスピンオンドーパントによって、および/またはエピタキシ、スパッタリング、蒸着を含む堆積技術によって形成することができる。
【0106】
真性ゲルマニウム層34は、エピタキシ、スパッタリング、蒸着、またはさらにはウェハボンディングとしての転写などの化学的および/または物理的堆積技術によって作製することができる。真性ゲルマニウム層34は、完全にシリコン基板5の第1のドープ領域31内にあり、したがって、選択的堆積(例えば、酸化物窓堆積(oxide window deposition))などの技術によって真性ゲルマニウム層34を堆積することが可能であり、またはゲルマニウム層34を基板5全体にわたって堆積し、次いで選択的除去技術(フォトリソグラフィ)によって層34自体の幾何学的形状を画定することが可能である。
【0107】
図6の実施形態は、製造が複雑ではなく、さらに、センサの金属コンタクトを基板5の同じ側に提示し、そこで一体化され、したがって「平面」型をもたらすという利点を有する。
【0108】
スペクトル検出システム100は、例えば、自動車部門(フォグ、ナイトビジョン、増大された視野)、マシンビジョン部門(インダストリー4.0、マシンビジョンの向上)またはプラスチックリサイクル部門で使用される。
【0109】
上述のシステム100は、その様々な実施形態において、非常に有利である。
【0110】
特に、それはスペクトル応答の広い変調を可能にするので、公知の技術の場合のように複雑な光学的および機械的構造に頼ることなく、スペクトル再構成の効果的なアルゴリズムの実現を可能にするなど、多数の異なるスペクトル応答を有することを可能にし、優れた性能を得ることを可能にする。実際に、構造的単純化は、より大きな堅牢性ならびにより大きなコンパクト性をもたらす。
【0111】
さらに、電子モジュールを同じシリコン基板に一体化する可能性は、システム100の構造的複雑さおよび関連コストをさらに低減する。
【符号の説明】
【0112】
-スペクトル検出システム100
-電磁放射線センサ装置20
-電子制御および処理モジュール50
-センサ1
-出力OU
-読み取りモジュール2
-調整モジュール3
-分析および制御デバイス4
-第1のフォトダイオードPD1
-第2のフォトダイオードPD2
-光電流Iph
-基板5
-第1のドープ層6
-第1の真性層7
-第2のドープ層8
-エピタキシャル層9
-第2の真性層10
-第3のドープ層11
-第1のBCオーミックコンタクト
-第2のオーミックコンタクトTC
-露出領域12
-バイアス電圧VB
-電圧信号Vph
-デジタル電圧値Vbi
-第1の層21
-第2の層22
-第3の層23
-第1の層シリコン24
-第2の層シリコン25
-第1のゲルマニウム層26
-真性層27
-第1の面30
-第1のドープ領域31
-第2の面32
-第2のドープ領域33
-第2の半導体材料内の層34
-第3の面35
-ドープ層36
-第1の金属層37
-第2の金属層38
-第1の高ドーピングポケット39
-第2の高ドーピングパウチ40
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】