(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】核酸および分析物の同時検出のための多検体アッセイ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6853 20180101AFI20231011BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C12Q1/6853
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507933
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2021071370
(87)【国際公開番号】W WO2022029020
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512315119
【氏名又は名称】アルベルト-ルドビクス-ウニベルジテート フライブルク
(71)【出願人】
【識別番号】523039178
【氏名又は名称】ハーン-シカード-ゲゼルシャフト フォー アングワント フォースクング イー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】フリュー,スザンナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】クレベス,アンナ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA19
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、1つの試料から少なくとも2つの異なる標的分子の有無を検出する方法およびキットに関するものであり、ここで、少なくとも1つの標的分子が、目的の標的分析物であり、かつ少なくとも1つの他の標的分子が、目的の標的核酸であり、ここで、前記方法は、前記標的核酸またはそのアンプリコンが、少なくとも2つのアフィニティー標識で標識される、等温増幅反応を行うことと、シグナル生成を介して標的分析物および/または標識された標的核酸の存在を捕捉及び検出できる、アフィニティー分子が使用される、リガンド結合アッセイとを組み合わせるものである。また、本発明は、様々な分野におけるこの方法またはキットの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの試料から少なくとも2つの異なる標的分子の有無を検出する方法であって、少なくとも1つの標的分子が目的の標的分析物であり、かつ少なくとも1つの他の標的分子が目的の標的核酸であり、前記方法が、
以下を含む、等温増幅反応を行うこと、
少なくとも1つの標的核酸および/または少なくとも1つの標的分析物の有無について分析される試料を、少なくとも1組の増幅プライマーに接触させること、
ここで、前記2つの増幅プライマーは、標的核酸とハイブリダイズすることができ、 ここで、少なくとも1つの前記増幅プライマーが、第1のアフィニティー標識を含み、
ここで、第2のアフィニティー標識が、前記標的核酸のアンプリコンに取り込まれることができる方法で提供され、
リガンド結合アッセイを同時に行うことであって、ここで、シグナル生成を介して標的分析物および/または標識された標的核酸の存在を捕捉および検出することができるアフィニティー分子が使用され、
前記標的分析物および/または標的核酸の有無を検出すること
を含む、方法。
【請求項7】
前記標的核酸が、
DNA分子、好ましくはssDNA、dsDNA、cDNA、rDNA、mtDNA、cpDNAまたはプラスミドDNA、
RNA分子、好ましくはmRNA、循環RNA、miRNA、snRNA、snoRNA、rRNA、tRNA、asRNA、circRNA、hnRNA、siRNA、shRNA、snoRNA、snRNA、IncRNA、piRNA、またはtracrRNAである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の方法を実行するためのキットであって、前記キットが、
標的核酸とハイブリダイズする、少なくとも1組の増幅プライマー、
ここで、少なくとも1つの前記増幅プライマーが、第1のアフィニティー標識を含み、
任意で、前記標的核酸とハイブリダイズできる特異的プローブ、
前記第2のプライマーまたは前記特異的プローブのいずれかに関連する第2のアフィニティー標識、
等温増幅反応を実行するための試薬、および
アフィニティー分子
を含む、キット。
【請求項15】
体外診断、医薬品開発、食品安全、または環境安全のための、請求項1~14のいずれかに記載の方法またはキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
技術分野
分子(例えば、核酸、分析物など)の検出のために、いくつかの検出方法が技術水準において利用できる。これらの方法は、それぞれ特定の生体分子クラスに特化および最適化される(例えば、核酸検出のためのPCRまたは等温増幅法、またはタンパク質検出のための免疫測定法など)。
【0002】
多くの用途において、単一工程で複数のクラスの分子を同時に検出することが有利である。単一工程での核酸および分析物の多重検出の必要性が議論されているが、アプローチは、いくつかの課題と向き合うことを必要としている。それらは、生体試料中の核酸と分析物との濃度差を考慮する必要がある。生理学的に適切な濃度範囲の分析物および核酸は、同時に測定されなくてもよい。そのため、標的核酸の増幅が必要である。しかし、必要な増幅条件が、例えば、タンパク質の変性など、分析物の変化につながることが多い(例えば、PCR反応における加熱工程など)。分析物が、例えば、非天然構造をとると、標準的な免疫学的アッセイにより検出できない。
【0003】
関連技術の議論
分析物および核酸の同時検出のための最初のアプローチが開発された。しかし、これらのアプローチにはまだ制約がある。1つのアプローチには、プローブへのハイブリダイゼーションを介した核酸の検出と、抗原-抗体相互作用を介した分析物の同時検出とが含まれる(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。どちらの反応も異なる条件を必要とし、それが互いに干渉し合う。分析物は緩衝系で検出されるのに対し、ハイブリダイゼーション反応は高塩濃度および相対的に高温を必要とする。標的核酸に37℃でハイブリダイズするプローブの開発により、分析物の同時検出が可能となるが、なお弱い信号一雑音比をもたらす(非特許文献1)。さらに、いくつかのアプローチは、シーケンシャルアプローチで標的分子を分析し(非特許文献1)、および/または別途の試料調製工程を必要とする(非特許文献1;非特許文献3)。
【0004】
いくつかのアプローチは、アプタマーまたはオリゴヌクレオチドに結合した抗体などの分析物検出分子を用いて、分析物の情報を核酸の情報に変換する。その後、アプタマーまたは(抗体に結合した)オリゴヌクレオチドを標的核酸とともに増幅することで、標的分子の同時検出を可能とする。このように、核酸および分析物の同時検出のために同じ測定原理が使用される。
【0005】
しかし、抗体と比較してアプタマーの低い安定性、および複雑かつ粗いサンプルマトリックスにおける低い選択性は、分析物検出のためのアプタマーの広範囲の応用の妨げとなる。他方、抗体を検出する分析物へのオリゴヌクレオチドの結合は、時間のかかるプロセスであり得る。現在のアプローチは、ツーエンドアダプターライゲーション法、分岐鎖アッセイ、および近接拡張アッセイを含む、標的分析物結合オリゴヌクレオチドを増幅するために、異なる戦略を使用する。これらの全てのアプローチでは、標的核酸の検出のためのプライマーおよびプローブに加え、複数のプライマーおよび/またはプローブを設計する必要がある。このため、システムの複雑化が増加し、コストが増加し、プライマー/プローブの二量体形成により、バックグラウンドが高くなる可能性がある。
【0006】
技術水準において、非特許文献1には、核酸およびタンパク質の両方の検出に採用できる電気化学センサープラットフォームが記載されている。タンパク質の検出は、抗体-抗原反応に基づき、一方、核酸の検出は、ハイブリダイゼーション反応に基づく。核酸検出とタンパク質免疫測定法の統合を容易にするために、37℃でのハイブリダイゼーションに最適化されたプローブが開発された。検出は、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)の酸化還元反応に基づく。このアプローチは、2つの異なる測定原理に基づく。核酸はプローブのハイブリダイゼーションを介して検出され、一方、タンパク質は抗原-抗体反応を介して検出される。一般的に、これらの2つの測定原理は、異なるアッセイ条件を必要とする。しかし、該著者らは、同様のパラメーターを持つタンパク質および核酸アッセイを開発した。この妥協は、一方または両方の測定法の感度および特異性に影響を与える危険性がある。さらに、当該アプローチは、生体試料中のタンパク質および核酸の濃度差を考慮していない。タンパク質および核酸の生理学的に適切な濃度範囲は、同時に測定することができない。さらに、当該アプローチは、別途の試料調製、およびタンパク質または核酸の試料のセンサーへの別途添加を必要とする。
【0007】
非特許文献2には、核酸およびタンパク質の同時検出のためのラテラルフローデバイスが記載されている。ラテラルフローストリップ上で2つの個別の反応が行われる。タンパク質は、サンドイッチ型免疫反応を介して検出され、一方、核酸の検出は、DNAハイブリダイゼーション反応に基づく。標的核酸およびタンパク質は、同時にサンプルアプリケーションゾーンにアプライされ、対応するテストラインに結合する。標的分子は、検出プローブまたは検出抗体で機能化された金ナノ粒子を介して検出される。このアプローチは、2つの異なる測定原理を使用する。核酸は、プローブのハイブリダイゼーションを介して検出され、一方、タンパク質は、抗原-抗体反応を介して検出される。この結果、アッセイの感度が低くなる。さらに、当該アプローチは、非常に短い一本鎖DNAを用いるため、生体試料中のより長い二本鎖DNAには適さない。核酸は、検出前に増幅されないため、非常に多量の核酸のみが検出され、生理学的に適切でない可能性がある。
【0008】
非特許文献3には、マイクロアレイ上でタンパク質および核酸を同時に検出する能力を提供するコンビナトリアルアッセイが記載されている。検出は、抗体-抗原反応と、マイクロアレイへの標的核酸の検出のDNAハイブリダイゼーション反応とに基づいて行われる。当該アレイは、核酸検出のための捕捉プローブおよびタンパク質検出のための捕捉抗体で機能化される。アッセイ前に標的核酸の3’末端がビオチン化され、そして標的タンパク質およびビオチン化標的核酸の両方が、アレイに添加される。マイクロアレイの対応する領域に結合した後、ビオチン化抗体が添加され、標的タンパク質に結合させる。その後、標的分子が、ビオチン-PEG-結合金ナノ粒子を介して検出される。
【0009】
このアプローチは、2つの異なる測定原理を使用する。核酸はプローブのハイブリダイゼーションを介して検出されるのに対し、タンパク質は抗原-抗体反応を介して検出される。一般的に、これらの2つの測定原理は、最適な結果を得るために異なる測定条件を必要とする。さらに、当該アプローチは、別途の試料調製を必要とする。核酸の3’末端は、検出前にビオチン化キットを用いてビオチン化される必要があり、これにより更なる試料調製工程が追加される。ビオチン化された非標的核酸もビオチン-PEG-結合金ナノ粒子と結合するため、結合部位を占有し、高いバックグラウンドシグナルにつながる可能性がある。さらに、当該アプローチは、短い一本鎖のRNAまたはDNAの配列にしか適さず、核酸が増幅されないため、非常に多量の核酸しか検出することができない。ビオチン化された標的核酸を検出プローブにハイブリダイズさせるために、試料はマイクロアレイと45℃で2時間インキュベートされる。これらのアッセイ条件は、タンパク質の検出(捕捉抗体と同時に結合する)には最適ではなく、タンパク質の分解につながる可能性がある。
【0010】
特許文献1には、アプタマー技術を利用し、標的核酸および標的タンパク質を単一のアッセイで検出する方法が記載されている。そのため、1回の反応で標的核酸およびアプタマーを増幅させることが可能である。その後、増幅された標的核酸およびアプタマーを、蛍光標識法の配列決定などの標準的な核酸検出技術によって検出できる。したがって、アプタマーの検出により、試料中の標的タンパク質の存在が示唆される。一般的に、アプタマーは、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体よりも確立されておらず、全体的に負電荷を帯びているため、親水性になり、ヌクレアーゼによって急速に分解される。さらに、アプタマーは、(タンパク質を構成するアミノ酸22種と比較して)わずか4種の核酸を構成要素とするため、取り得る二次構造および三次構造の多様性に限界がある。さらに、それらのカスタム合成がコストに加算される。特に、複雑かつ粗いサンプルマトリックスにおけるアプタマーの安定性および選択性は、タンパク質検出のためのアプタマーの広範な応用を妨げている。
【0011】
特許文献2には、既存の配列決定法を用いた、組織、細胞または細胞内構造の使用された定義された領域におけるタンパク質および/または核酸の発現の同時の多重検出および定量化が記載されている。「2末端(two-ended)アダプターライゲーション法」と呼ばれる方法において、標的分析物は、プローブを用いて検出される。当該特異的プローブは、標的結合ドメインと、標的結合ドメインに結合した標的分析物を識別する識別子のオリゴヌクレオチドとを含む。さらに、当該プローブは、標的結合ドメインと識別子のオリゴヌクレオチドとの間に光切断可能なリンカーを含む可能性がある。十分な波長の光を照射することにより、当該リンカーが切断されるため、識別子のオリゴヌクレオチドを放出する。放出された識別子のオリゴヌクレオチドを回収した後、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブは、放出された識別子のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズしている。これらの核酸プローブは、異なるドメインを含む。第1の核酸プローブは、識別子のオリゴヌクレオチドの一部と相補的な配列、固有の分子識別子を含む配列、および増幅プライマー結合部位を含む。第2の核酸プローブは、識別子のオリゴヌクレオチドの一部と相補的な配列、および第2の増幅プライマー結合部位を含む。ハイブリダイズした核酸プローブは、ライゲーションし、その後、ライゲーション産物が増幅される。既存の配列決定法を用いて、増幅されたライゲーション産物が解析され、標的分析物が同定される。
【0012】
主な欠点は、この方法が1分子カウントに依存していることである。1分子カウントには、特殊な顕微鏡のような複雑で、高価な、かつ高感度な読み出し装置が必要であり、または、低コストの光学系を使用する場合は、複雑で、長い(バーコード付きの)プライマーおよびプローブは、標的分子ごとに設計しなければならず、また非常に高価で、大規模なアッセイ設計が必要である。
【0013】
さらに、プライマー/プローブの二量体形成による高いバックグラウンドが問題である。
【0014】
特許文献3には、分岐鎖に基づくアッセイを用いた、複数の核酸およびタンパク質の検出方法が記載されている。一般的に、このシステムは、非常に複雑で、複数のプライマーおよびプローブを必要とするため、アッセイにかかるコストがかさむ。さらに、当該分岐鎖アッセイは、標的分子の指数的増幅ではなく、線形的なシグナル増幅を採用している。
【0015】
特許文献4には、近接伸長アッセイを用いた核酸およびタンパク質の検出方法が記載されている。このアプローチでは、標的タンパク質に近接して結合する抗体ペアを使用する。各抗体は、もう一方の抗体の核酸にハイブリダイズする核酸と結合している。したがって、このアプローチは、抗体の品質に大きく依存し、両方の抗体が、同じ効率で標的に結合する必要があるが、近接した異なるエピトープに結合する必要がある。そのため、薬物または毒物などの低分子またはより小さなタンパク質を検出することができない。さらに、抗体へのオリゴヌクレオチドの結合には、時間がかかり得る。さらに、ヌクレオチドの非特異的なライゲーションおよび二量体の形成は、高いバックグラウンドシグナルの原因となり得る。
【0016】
特許文献5および特許文献6には、試料中のタンパク質および核酸を検出するための同様のアプローチが開示されている。タンパク質は、DNAバーコードと結合したタンパク質結合分子(例えば、抗体など)によって認識される。このオリゴヌクレオチド配列は、増幅および配列決定のためのプライマー(PCRハンドル)、タンパク質結合分子を識別するタンパク質識別配列、および検出プローブ中の配列にハイブリダイズするユニバーサルリンカー配列を含む。当該アプローチは、タンパク質結合分子がDNAバーコードに結合される方法が異なる。特許文献6は、DNAバーコードを例えば抗体などに連結するためにストレプトアビジン-ビオチン相互作用を利用している。一方、特許文献5では、タンパク質結合分子が、アミノ化DNAバーコードに共有結合している。しかし、DNAバーコードおよび核酸のユニバーサルリンカー配列は、対応するタンパク質検出プローブおよび核酸検出プローブにハイブリダイズする。その後、配列が増幅され、かつ配列決定され、分析物のためのシグナルを検出する。
【0017】
どちらのアプローチも単一細胞の解析に使用される。主な制限は、抗体のエピトープ位置であり、現状では細胞表面に限定されているため、細胞内タンパク質は検出されない。個々の細胞を捕捉するためには、単細胞懸濁液が必要である。この工程では、細胞の転写プロファイルに影響を与え、RNAの品質を低下させる可能性がある組織を分解するために、酵素処理がしばしば使用される。さらに、抗体へのオリゴヌクレオチドの結合には時間がかかる可能性がある。
【0018】
全体として、分析物および核酸の同時検出のための現在のアプローチは、感度、再現性、信号一雑音比に限界があり、または、異なる標的分子のために別途の試料調製が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第8431367号
【特許文献2】国際公開第2019/157445号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0004132号
【特許文献4】米国特許第10214773号
【特許文献5】米国特許出願公開第2018/0208975号
【特許文献6】米国特許出願公開第2018/0251825号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Mohan,R,et al.Clinical validation ofintegrated nucleic acid and protein detection on an electrochemical biosensorarray for urinary tract infection diagnosis.PLoS One,2011,6.10:e26846.
【非特許文献2】Mao,X,et al.Simultaneous Detection ofNucleic Acid and Protein Using Gold Nanoparticles and Lateral Flow Device.AnalyticalSciences,2014,30.6:637-642.
【非特許文献3】Scott,A.W.,et al.UniversalBiotin-PEG-Linked Gold Nanoparticle Probes for the Simultaneous Detection ofNucleic Acids and Proteins.Bioconjugate chemistry,2017,28.1:203-211.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、技術水準の欠点を回避した多検体(multianalyte)アプローチの開発が求められる。加えて、反応プロトコルは、種々のアプリケーションおよびプラットフォームへの実装が可能であることが利点である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の開示
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によって提供される。
【0023】
第1の実施形態において、本発明は、1つの試料から少なくとも2つの異なる標的分子の有無を検出する方法に関し、少なくとも1つの標的分子が、目的の標的分析物であり、かつ少なくとも1つの他の標的分子が、目的の標的核酸であって、該方法は、
以下を含む、等温増幅反応を行うことであって、
少なくとも1つの標的核酸および/または少なくとも1つの標的分析物の有無について分析される試料を、少なくとも2つの増幅プライマーを含む、少なくとも1組の増幅プライマーに接触させること、
ここで、2つの増幅プライマーが、標的核酸とハイブリダイズすることができ、
ここで、少なくとも1つの増幅プライマーが、第1のアフィニティー標識を含み、
ここで、第2のアフィニティー標識が、標的核酸のアンプリコンに取り込まれ得る方法で提供され、
リガンド結合アッセイを同時に行うことであって、ここで、アフィニティー分子が使用され、シグナル生成を介して標的分析物および/または標識された標的核酸の存在を捕捉および検出することができ、
前記標的分析物および/または標的核酸の有無を検出すること、
を含む。
【0024】
一般的に、多くの生理学的に適切な濃度範囲の分析物および核酸は、同時に測定することができない。しかし、本発明は、標的核酸を増幅し、かつアンプリコンを標識で機能化する、核酸-アフィニティー-リガンド変換を使用する。このため、異なる標的分子クラスの生理学的に適切な濃度範囲の同時検出が可能となる。
【0025】
本発明の方法は、少なくとも2つの異なるクラスの標的分子の存在を検出するために使用されることが好ましい。
【0026】
本発明は、増幅した核酸配列を標識で機能化(核酸-アフィニティー-リガンド変換(Nucleic-acid-to-affinity-ligand-transformation))し、かつ標識化した標的核酸および標的分析物を同一の測定原理で検出することにより、1つの試料から一度に核酸および分析物を同時検出するための新規な解決方法を提示する。これは、(1)標的核酸への標識の導入のために分析物に適合した等温増幅を用いること、および(2)リガンド結合アッセイを介して標的分子を検出することにより達成される。
【0027】
標的核酸および標的分析物の同じ測定原理による同時検出を可能にするためには、種々の標的分子の情報が単一の情報フォーマットに変換される必要がある。例えば、ある分析物(例えば、タンパク質など)の情報は、核酸の情報に変換される。これは、例えば、オリゴヌクレオチドに結合したタンパク質結合分子により実現され得る。
【0028】
この新規アッセイのコンセプトは、用途に応じて、紙ベースのセンサー、マイクロ流体システム、マイクロアレイ、液体処理プラットフォーム、チューブ、またはマイクロプレートベースのシステムなど、種々のシステムに実装され得るが、これらに限定されるものではない。
【0029】
当該コンセプトの特徴は、核酸の情報を分析物の情報に変換する「核酸-アフィニティー-リガンド変換」と呼ばれるものである。これにより、その後、同一の測定原理で標的核酸および標的分析物の同時検出が可能になる。さらに、標的の分子の同時検出のために別途の試料調製は必要ない。核酸-アフィニティー-リガンド変換のために、標的核酸の増幅および核酸へのアダプター分子(標識)の導入を同時に行う等温増幅法が使用される。これにより、タンパク質などの分析物に適合した条件下で反応が起こるため、別途の試料調製および加工が不要になる。その後のリガンド結合アッセイでは、標識された標的核酸および標的分析物が、アフィニティー分子によって捕捉および検出され、対応する標的分子のシグナルが生成される。
【0030】
本発明は、核酸-アフィニティー-リガンド変換を用いることにより、1つの試料から核酸および分析物を一度に同時に分析できることを見出したことに基づくものである。さらに、本発明は、核酸を増幅および標識し、その後、標的分析物および標識された標的核酸の両方を同時に検出するために、分析物に適合した等温増幅を使用することができるという知見に基づくものである。さらに、本発明は、同じ測定原理を用いることにより、全ての標的分子を一度に検出することができるという知見に基づくものである。
【0031】
標的核酸の分析物に適合した増幅および標的核酸の標識のために、等温増幅の変形が使用されることが好ましい。
【0032】
一つの態様において、本発明は、1つの試料から一度に標的分析物および/または標的核酸を同時に検出する方法を提供するものである。ここで、種々の標的分子クラスについて、別途の試料調製および加工は必要なく、かつ標的核酸は、分析物に適合した等温増幅反応において増幅され、増幅産物に標識が導入される。このプロセスは、「核酸-アフィニティー-リガンド変換」と記載される。その後、標識された標的核酸および/または標的分析物は、リガンド結合アッセイを介して検出される。
【0033】
本発明の方法は、多検体アッセイとも呼ばれ、核酸-アフィニティー-リガンド変換およびリガンド結合アッセイの新規な組み合せである。本発明の多検体アッセイは、同一の測定原理により標的分析物および標的核酸を同時に検出することができる。
【0034】
核酸-アフィニティー-リガンド変換とは、増幅された標的核酸配列を標識により機能化し、その後、標的分析物および標的核酸を同じ測定原理で検出することである。分析物に適合した等温増幅は、標的分析物の存在下で標的核酸の増幅、および増幅産物への標識の導入のために使用される。標識されたアンプリコンは、その後、リガンド結合アッセイを介して標的分析物とともに検出される。様々な等温増幅反応の設計パラメータは、当業者に周知である。
【0035】
第2の標識は、第1の標識と異なることが好ましい。
【0036】
好ましい実施形態では、標的核酸が増幅されると同時に、少なくとも第1及び第2のアフィニティー標識が増幅された標的核酸に導入される。
【0037】
プライマーは、約10~80ヌクレオチド長、特に好ましくは20~35ヌクレオチド長であり、かつ増幅産物は、約50~20000塩基対長、特に好ましくは70~500塩基対長とすべきであることが好ましい。少なくとも1つのプライマーは、アフィニティータグ(標識1)を含み、その5’末端にあることが好ましい。
【0038】
第1及び第2の標識は、ビオチン、FAM、ジゴキシゲニン、またはジニトロフェニル(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、テキサスレッド、カスケードブルー、ストレプトアビジンまたはその誘導体、Cy5、ダンシル、フルオレセイン、アジド、アルキン、または他のバイオ直交性官能基および/またはタグからなる群から選択されることが好ましい。
【0039】
また、第2のアフィニティー標識は、第2のプライマーを介して提供され、第1の標識とは異なることが好ましいが、また、ビオチン、FAM、ジゴキシゲニン、またはジニトロフェニル(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、テキサスレッド、カスケードブルー、ストレプトアビジンまたはそれらの誘導体、Cy5、ダンシル、フルオレセイン、アジド、アルキン、または他のバイオ直交性官能基および/またはタグが好ましい。
【0040】
本発明の主な利点の1つは、目的の核酸の検出が目的の分析物の検出と同時に行われることである。上記の増幅反応により、標的分析物および標識された増幅産物(標識された標的核酸)の両方が得られる。核酸-アフィニティー-リガンド変換により、リガンド結合アッセイを用いた同じ測定原理で標的分子の同時検出が可能となる。ここでは、典型的なリガンド結合アッセイの設計パラメータを説明する。標的分析物および標識された標的核酸は、いわゆる検出ゾーンにおいて検出される。
【0041】
本発明による検出ゾーンは、標的分子の検出が行われるプラットフォームの定義された領域である。検出ゾーンは、表面だけでなく、例えばラテラルフローテストのテストライン、マイクロタイタープレートのウェル、チューブ、マイクロアレイ上のスポット、またはマイクロ流体デバイス内のチャンバーなど、溶液中でもあり得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、標的分子は同じ検出ゾーンで検出される。他の実施形態において、標的分析物および標識された標的核酸は、異なる検出ゾーンで検出される。一般的には、標的分子は、アフィニティー分子によって捕捉および/または検出される。標的分子のアフィニティー分子への結合は、通常、緩衝液中で行われる。これは、リン酸塩緩衝系または炭酸一重炭酸緩衝系であり得る。
【0043】
さらに、緩衝系には、ブロッキング剤(例えば、BSAなど)、糖類(例えば、トレハロースなど)、または洗浄剤(例えば、Tween-20など)のような添加物が添加されてもよい。当業者であれば、自ら創意工夫することなく、バッファーを選択することができる。反応時間および温度は、標的分子および使用されるプラットフォームに依存する。いくつかの実施形態において、それぞれの標的分子の検出は、アフィニティー分子にシグナル伝達ツール(例えば、マーカーなど)を接着することによって達成される。シグナル伝達ツールは、酵素、蛍光レポーター、または電気化学発光標識であり得るが、これらに限定されない。他の実施形態において、それぞれの標的分子の検出は、ラベルフリーの検出方法によって達成される。
【0044】
別の好ましい実施形態において、少なくとも2つの増幅プライマーハイブリダイゼーション部位の間に局在化する配列とハイブリダイズする特異的なプローブが提供される。
【0045】
また、当該特異的なプローブが、第2のアフィニティー標識を含むことが好ましい。この場合、第2のプライマーは、標識を必要としない。
【0046】
また、当該特異的プローブが少なくとも1つの機能部位、好ましくは脱塩基残基またはポリメラーゼ伸長阻害基をさらに含むことが好ましい。
【0047】
これらの実施形態では、少なくとも2つのプライマーの標的配列への結合によって、試料中で標的核酸(例えば、DNAなど)が増幅される。少なくとも1つのプライマーは、好ましくはその5’末端に、アフィニティータグ(標識1)を含む。増幅により、第1の一重標識(SL)産物が得られる。このSL産物は、2つの増幅プライマー間に局在する相補的な配列にハイブリダイズする特異的なプローブによって認識される。いくつかの実施形態において、このプローブは、アフィニティータグ(標識2)を含み、脱塩基残基(例えば、THFなど)またはポリメラーゼ伸長阻害基(例えば、C3など)のような機能部位をさらに含有していてもよい。プローブとSL産物のハイブリダイゼーションにより、第2の二重標識(DL)産物が得られる。通常、このDL産物は、リガンド結合アッセイを介して検出される。
【0048】
増幅は、通常、標的核酸へのプライマーおよび任意でプローブの結合後に行われる。増幅反応のために、通常、核酸およびDNAポリメラーゼなどの試薬が必要である。いくつかの実施形態において、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼが使用される。さらに、いくつかの実施形態において、逆転写酵素のような追加の酵素は、反応に加えられ、RNAテンプレートから相補的なDNAを生成し得る。いくつかの実施形態において、反応にはさらなる要素が必要であり、これには一本鎖結合タンパク質、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、またはエンドヌクレアーゼが含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、酢酸マグネシウムまたは他の補因子の添加が必要とされる。
【0049】
プローブが使用される場合、プローブは、第2の標識プライマーの代わりに、第2のアフィニティータグ(標識2)を含むことが好ましい。プローブの位置は、上述した2つのプライマーの間に位置する。プローブと同じ方向を持つプライマーは重複し得る。
【0050】
すぐに利用できるソフトウェアは、標的核酸に相補的なプライマーおよび/またはプローブを設計するために使用され得る。さらに、プライマーおよび/またはプローブは、ヘアピンおよびステムなどの二次構造の領域を避けるように設計される。標的核酸にハイブリダイズするために反応混合物に添加される各プライマーおよび/またはプローブの濃度は、通常10~1000nM、好ましくは50~600nMおよび20~300nMの範囲にある。
【0051】
等温増幅反応は、少なくとも2つの増幅プライマー間に局在する配列にハイブリダイズして第2のDL産物をもたらす、特異的プローブによって認識される、第1の一重標識産物をもたらすことがさらに好ましい。
【0052】
あらゆる標的核酸および/または標的分析物が、本明細書に記載されるように検出され得る。
【0053】
また、標的核酸が、DNA分子、好ましくはssDNA、dsDNA、cDNA、rDNA、mtDNA、cpDNAまたはプラスミドDNA、RNA分子であることが好ましく、好ましくは、mRNA、循環RNA、miRNA、snRNA、snoRNA、rRNA、tRNA、asRNA、circRNA、hnRNA、siRNA、shRNA、snoRNA、snRNA、IncRNA、piRNA、またはtracrRNAである。
【0054】
用語「分析物」は、本発明の方法によって検出、定量、またはその他の方法でアッセイされる物質を意味する。代表的な分析物は、タンパク質、ペプチド、核酸セグメント、炭水化物、脂質、抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、抗原、オリゴヌクレオチド、特異的受容体タンパク質、リガンド、分子、細胞、微生物、断片、製品およびそれらの組み合わせ、または付着部位、結合部材または受容体(抗体など)が開発され得るための任意の物質を含み得るがこれらに限定されない。また、分析物は、前記実体からの複合体を指す場合もある。例えば、分析物は、例えば、タンパク質-タンパク質複合体など、複数の実体または分子から形成される凝集体または複合体を指す場合があり、この場合、実体/分子の相互作用が関心事となる。
【0055】
標的分析物は、タンパク質、ペプチド、抗体、ホルモン、酵素、低分子、炭水化物または任意の他の物質であるが、核酸でないことが特に好ましい。
【0056】
「タンパク質」とは、鎖長がより高度な三次構造および/または四次構造を製造するために十分であるアミノ酸配列を意味する。「ペプチド」とは、好ましくはより低分子量のタンパク質を指す。
【0057】
用語「核酸」とは、DNA、RNA、およびハイブリッドまたは修飾変異体、および一本鎖または二本鎖の形態のいずれかにおけるそれらのポリマー(「ポリヌクレオチド」)を含むが、これらに限定されない、任意の核酸分子を指す。特に限定しない限り、当該用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、かつ天然由来のヌクレオチドと同様の方法で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。特に断りのない限り、特定の核酸分子/ポリヌクレオチドは、また、明示的に示された配列と同様に、その保存的修飾を受けた変異体(例えば、コドン置換の縮重など)および相補的配列を暗黙的に包含する。具体的には、選択された1つ以上の(または全ての)コドンの3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換される配列を生成することによって、縮重コドン置換が達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。ヌクレオチドは、次の標準的な略号によりそれらの塩基により示される:アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)、およびグアニン(G)。
【0058】
試料が分割されず、別途のアッセイ手順および/またはプロトコルを必要としないことがさらに好ましい。このアプローチにより、同じ測定原理で種々の標的分子クラスの同時検出が可能となるため、試料の分割が不要となる。そのため、必要な試料量が少なくて済み、このことは、限られた試料材料しか入手できないような用途にとって非常に重要である。さらに、本発明による多検体アッセイにより、標的核酸および標的分析物のための個別のプロトコルを追求する必要がないため、種々の標的分子のより迅速かつ容易な検出が可能となる。
【0059】
さらに、特定の検出原理のために反応条件が定義されるため、より大きい(lager)バッファーまたは温度の変更も不要である。
【0060】
目的の核酸および/または分析物を含む試料は、任意の供給源から入手可能である。これには、細菌、ウイルス、菌類、オルガネラ、植物、哺乳類などの供給源が含まれ得る。他の試料は、環境源および生産物(例えば、食品または医薬品など)、または体液(例えば、血液、尿、創傷液、血清など)から得られてもよい。典型的な実施形態において、標的核酸は、DNA分子(例えば、ssDNA、dsDNA、cDNAなど)である。他の実施形態において、標的核酸は、RNA分子(例えば、mRNA、循環RNA、miRNAなど)である。標的は、例えば、病原体(例えば、細菌、ウイルス、または真菌など)、疾患(例えば、過剰発現および過小発現など)または核酸ベースの治療薬に関連する核酸を含み得る。典型的な実施形態において、標的分析物は、タンパク質である。他の実施形態において、標的分析物は、ペプチド、抗体、ホルモン、低分子炭水化物または他の任意の物質であるが、核酸ではない。いくつかの実施形態において、分析物は、炎症(例えば、インターロイキン、CRP)、疾患、アレルゲン、治療薬、または調節機能に関連し得る。概して、本発明は、本明細書に記載された多検体アッセイを用いた、1つの試料からの一度での標的核酸および標的分析物の同時検出を含む。これには、分析物適合性のある核酸-アフィニティー-リガンド変換とリガンド結合アッセイが含まれる。そのため、このアプローチでは、別途の試料調製や加工を必要としない。標的核酸および標的分析物は、増幅反応に直接同時に添加することができる。これは、増幅反応の分析物適合性により可能である。さらに、標的分子は、リガンド結合アッセイを用いた同じ測定原理により検出される。
【0061】
目的の標的核酸の検出は、目的の分析物の検出と同時に行われるため、増幅反応の条件は、分析物の安定性に適合されることが好ましい。増幅反応の時間および温度は、プライマー、(存在する場合)プローブおよび標的分析物によって変動し得る
好ましくは、反応は、室温~45℃で10分~2時間必要である。
【0062】
したがって、等温増幅反応は、分析物に適合した条件下で行うことが好ましい。一般的には、これは、アフィニティー分子が分析物と結合できるような適切な分析物の構造を維持するような反応条件(例えば、温度、バッファーなど)を選択しなければならないことを意味する。そのため、例えば、バッファーは、液体でなければならず、分析物は、変性してはいけないため、温度は、0~100℃の間である必要がある。条件は、分析物だけでなく、選択された増幅法およびリガンド結合アッセイにも依存する。当業者であれば、自ら創意工夫することなく、適切なパラメータを選択することができる。例えば、熱に不安定なタンパク質など、温度感受性の分析物に対しては、低温(25~40℃)で行うことができる増幅法、例えば、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)などを選択する必要がある。他の分析物は、より高い温度でも安定であり、例えば、ループ介在等温増幅(LAMP)は、40~70℃で行われ得る。また、例えば、dsDNAを溶解するために、等温増幅の前に初期変性工程(80~100℃)が可能な分析物がある。
【0063】
増幅は、通常、中性~弱塩基性(pH7.0~8.3)のpH領域で行われる。これは、ほとんどの分析物に適合する。しかし、必要に応じて、pH値を弱酸性領域(pH5.0~7.0)まで下げることも可能である。他のpH値も可能であり、当業者はどのpH範囲がどのような分析物に適合するかを知っており、例えば、LAMP反応はpH6.0~10.0の範囲内で起こる可能性があり、またはHADは約pH6.0~9.0の範囲内(トリス-酢酸またはトリス-塩酸のバッファー)で起こる可能性がある。
【0064】
標的核酸のシグナルが、アフィニティー分子によるアフィニティーラベルの結合を介して生成されることがさらに好ましい。したがって、アフィニティー分子は、本発明によるアフィニティー標識と結合する分子である。したがって、アフィニティー分子は、標的分析物または標識された標的核酸に結合する可能性のある標的結合部位を含む分子であることが好ましい。
【0065】
アフィニティー分子は、標的分析物と結合し、検出するためにも使用される。
【0066】
用語「親和性分子」は、好ましくは、結合対の一方のメンバーを指し、ここで、第2のメンバーは、分析物および/または親和性標識であり、ここで、用語「結合対」は、抗原/抗体またはハプテン/抗ハプテン系などの任意の免疫型結合対のクラスを含み;また、ビオチン/アビジン;ビオチン/ストレプアビジン;葉酸/葉酸結合タンパク質;相補的DNA鎖または相補的RNA鎖などの相補的核酸セグメント;タンパク質AまたはG/免疫グロブリン;およびマレイミドおよびハロアセチル誘導体を含むスルフヒドリル反応性基、およびイソトリオシアネート、スクシンイミジルエステルおよびスルホニルハライドなどのアミン反応性基などの共有結合を形成する結合対などの任意の非免疫型結合対のクラスを含む。分子インプリントポリマーのようなポリマーマトリックスも、本発明による親和性分子であり得る。
【0067】
アフィニティー分子は、抗体および/またはタンパク質、および/またはアプタマーおよび/または官能基および/またはリガンド結合ポリマー構造および/または分子インプリントポリマー(MIP)および/または官能基を含むことができる(マクロ)分子であることが好ましく、および/またはここで、シグナルツール、好ましくはマーカーがアフィニティー分子に付着している。
【0068】
等温増幅法は、標的分析物に適合した反応条件を有するものであれば、本発明の方法に使用することができる。記載された増幅反応は、単なる例示であり、本発明を限定するものではない。
【0069】
いくつかの実施形態において、標的核酸を増幅するために、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)が使用されてもよい。RPAは、37~42℃で動作する等温増幅法である。当該方法は、温度サイクルの代わりに、細胞のDNA合成、組み換えおよび修復に関与するタンパク質を使用する。ATPおよび密集剤の存在下で、リコンビナーゼタンパク質がプライマーに結合し、相同配列でのストランド侵入を促進する。置き換えられた鎖は、一本鎖結合タンパク質によって安定化される。プライマーの伸長には、鎖置換型DNAポリメラーゼが関与している。このプロセスのサイクルにより、標的核酸が指数関数的に増幅される。いくつかの実施形態においては、逆転写RPAが使用される。他の実施形態においては、さらに特定のプローブが使用される。
【0070】
この具体的な実施形態においては、1組のプライマーが標的核酸を増幅するように設計されることが好ましい。少なくとも1つのプライマーは、好ましくはその5’末端に、アフィニティータグ(標識1)を含む。アフィニティータグは、ビオチン、FAM、ジゴキシゲニン、またはDNPであり得る。一般的に、RPAプライマーは30~35ヌクレオチド長が好ましく、増幅産物は約70~500塩基対の長さとすることができる。特異性を高めるために、特異的なプローブが追加されてもよい。通常、プローブは、約46~53ヌクレオチド長であり、そのうち少なくとも30ヌクレオチドは、脱塩基側の5’に配置され、少なくともさらに15ヌクレオチドがその3’に配置される。アフィニティータグ(標識2)は、5’末端に位置し、かつ、ビオチン、FAM、ジゴキシゲニン、またはDNPであり得る(標識1とは異なるべきである)。
【0071】
一方、ポリメラーゼ伸長阻害基は、3’末端に位置し、かつ、リン酸、C3-スペーサーまたはジデオキシヌクレオチドであり得る。プローブの位置は、2つの上述したプライマーの間に位置する。プローブと同じ方向を持つプライマーは、重複し得る。ただし、重複は、プローブの最初の30ヌクレオチドに限定されることが好ましい。標的核酸とハイブリダイズするために反応混合物に添加される各プライマーおよびプローブの濃度は、通常150~600nMおよび50~300nMの範囲である。
【0072】
いくつかの実施形態においては、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)が、標的核酸の増幅に使用されてもよい。一般的に、HDAは、ヘリカーゼおよび一本鎖結合タンパク質を用いて、プライマーハイブリダイゼーションのための一本鎖テンプレートを生成する。鎖置換型DNAポリメラーゼがプライマーを伸長し、かつ、dsDNAを生成する。このプロセスのサイクルにより、標的核酸が指数関数的に増幅される。いくつかの実施形態においては、逆転写HDAが使用される。
【0073】
この具体的な実施形態においては、1組のプライマーが標的核酸を増幅するように設計される。少なくとも1つのプライマーは、前述したようにアフィニティータグを含む。好ましくは、プライマーは、24~33ヌクレオチド長であり、そして増幅産物は、約80~129塩基対の長さであり得る。特異性を高めるために、特異的なプローブが反応に添加されてもよい。プローブは、アフィニティータグ(標識2)で標識され、伸長を避けるために3’末端に位置し、かつビオチン、FAM、ジゴキシゲニン、またはDNPであり得る(標識1とは異なるべきである)。プローブの位置は、2つの上述したプライマーの間に位置する。これにより、非標識プライマーが反応を制限している。反応混合物に添加される各プライマーの濃度は、通常、50~200nMの範囲内である。
【0074】
いくつかの実施形態においては、鎖置換増幅(SDA)が、標的核酸の増幅のために使用されてもよい。SDAは、制限酵素のニッキング活性と、ニックの位置で複製を開始して下流の配列を置換するDNAポリメラーゼの能力に基づく。典型的なSDAにおいては、標的核酸に結合する2つのプライマーセット(2つのアウター「バンパー」プライマーおよびニッキング酵素の認識部位を含む2つのインナー伸長プライマー)が設計される。SDAのバリエーションは、CRISPR-Casシステムを用いてもよく、ここで、Cas9リボ核タンパク質のペアが、標的DNAを認識し、一対のニックを誘導する。特異性を高めるために、アンプリコンの2つの異なる領域を標的とする2つのプローブが、反応に添加されてもよい。捕捉プローブは、5’末端にアフィニティータグで標識され(標識1)、ここで、検出プローブは、3’末端にアフィニティータグで標識される(標識2)。アフィニティータグは、ビオチン、FAM、ジゴキシゲニン、またはDNPであってもよい。
【0075】
しかし、これらの増幅反応は、あくまで例示である。他の実施形態においては、ループ媒介等温増幅(LAMP)、または核酸配列ベース増幅(NASBA)などの等温増幅法が、使用されてもよい。さらに、偽陰性を排除するために、標的核酸と同時に内部増幅コントロール(IAC)核酸が増幅されてもよい。
【0076】
当該アッセイには、等温増幅の他に、リガンド結合アッセイが含まれる。リガンド結合アッセイは、標的分子のアフィニティー分子への結合に依存する、標的分子の検出のための分析手法である。この相互作用/結合は、共有結合性または非共有結合性であり得る。
【0077】
リガンド結合アッセイは、標的分子(リガンド)とアフィニティー分子との共有結合または非共有結合に依存するアッセイである。第一の実施形態では、標的分子の同時検出のために抗原抗体反応が使用される。一方、別の実施形態では、アプタマーの使用について説明する。また、両方のバリアントを同時に使用することも可能である。他の実施形態においては、異なる共有結合性または非共有結合性のリガンド結合コンセプト(例えば、リガンド結合ポリマー構造)が実施されてもよい。
【0078】
分析物の検出には、抗原抗体反応を利用することが技術水準である。抗体は、標的分析物を認識し、そのエピトープに結合できる。また、DLアンプリコンのアフィニティー標識は、特定の抗体により認識することができる。標的分析物および標識された標的核酸の検出には、競合免疫測定法またはサンドイッチ免疫測定法などの様々な免疫測定法様式を用いることができる。
【0079】
アプタマーは、標的分析物に結合する、オリゴヌクレオチドベースのアフィニティー分子である。それらの標的を認識し結合するのに十分な表面積を有し、(モノクローナル抗体のように)標的分析物のアイソフォームとバリアントを区別することが可能である。アプタマーを介した標的分子の検出には、競合型免疫測定法またはサンドイッチ免疫測定法などの様々な免疫測定法様式を使用できる。
【0080】
多検体アッセイに必要な構成要素はすべて市販されており、アッセイには複雑な設計工程(例えば、オリゴヌクレオチド配列による抗体の機能化、または複雑なプライマーおよびプローブシステムの設計など)は必要ない。
【0081】
本方法は、プラットフォームに統合されていることがさらに好ましい。好ましいプラットフォームは、マイクロタイタープレート、ラテラルフローテスト、アレイベースのプラットフォーム、特に好ましくはマイクロアレイ、マイクロ流体プラットフォーム、好ましくはLab-on-a-Chipまたはより大きなシステムまたは液体処理プラットフォーム、または他の任意の適切なプラットフォームである。
【0082】
マイクロタイタープレートアッセイの使用は、従来からある簡単なアプローチである。このプラットフォームは、例えば、ハイスループットタンパク質発現スクリーニングを行うために、実験室で使用され得る。ピペッティングロボットの使用により、このプロセスを自動化できる。特定の実施形態において、試料は第1のウェルに添加される。この第1のウェル内で、前述の核酸-アフィニティー-リガンド変換反応が行われる。その後、一定量の核酸-アフィニティー-リガンド変換反応が、リガンド結合アッセイを行うために第二のウェル(検出ゾーン)に移される。標的分子は、例えば、それぞれの標的分子に対する光信号などを生成するアフィニティー分子によって捕捉および/または検出される。最終的に、市販のマイクロタイタープレートリーダーによりプレートの光学的読み出しを行う。
【0083】
ラテラルフローテスト(LFT)は、紙ベースの装置であり、低コスト、簡便、迅速かつ携帯可能な標的分子の検出を可能とする。
LFTは、診断、品質管理、食品製造における製品安全、および環境衛生および安全を含む種々の産業において広く使用されている。一般的に、試料は毛管力によってラテラルフローストリップの様々なゾーンを通過して移動する。いくつかの実施形態においては、核酸-アフィニティー-リガンド変換反応は、チューブまたは他のキャビティ内で行われ、その後、一定量の反応がラテラルフローストリップ上に移される。一方、他の実施形態において、核酸-アフィニティー-リガンド変換反応は、ラテラルフローストリップに統合されている。その後のリガンド結合アッセイは、ラテラルフローストリップに統合される。アフィニティー分子(例えば、機能化金ナノ粒子など)が、標的分子に結合し、その複合体は第2のアフィニティー分子(例えば、抗体など)によって検出ゾーン(例えば、テストラインなど)に捕捉される。その後、対応する分子の信号は、肉眼による光学的な読み出しを介して検出される。さらなる実施形態においては、読み出しは、電気化学的検出または蛍光検出、または当業者によって知られている他の検出様式、例えば光音響などに基づくものでもよい。
【0084】
マイクロアレイは、ハイスループットプラットフォームであり、複数の標的分子の並行検出は、それらの主要な利点である。標的核酸および標的分析物を同時に検出するために、増幅プライマーおよび標的分析物に対する捕捉分子は、検出ゾーン上に固定化されてもよい。試料および核酸-アフィニティー-リガンド変換反応成分の混合物をマイクロアレイに添加後、デバイスは十分な時間インキュベートされる。他の実施形態においては、核酸-アフィニティー-リガンド変換反応は、分離された反応チャンバー内で行うことができ、その後、一定量の反応が、マイクロアレイの検出ゾーンに移される。検出分子の添加後、対応する信号が検出される。
【0085】
マイクロ流体プラットフォームは、生化学的アッセイの小型化、統合化、自動化および並列化を可能にする1組の流体の単位操作を提供する。可能なマイクロ流体プラットフォームとしては、圧力駆動型マイクロ流体、遠心型マイクロ流体、動電型マイクロ流体、および「マイクロ流体大規模集積」アプローチなどが挙げられるが、これらに限定されない。多検体アッセイの試薬は、全てマイクロ流体プラットフォーム内にあらかじめ保存できる。試料添加後、全ての処理工程は、マイクロ流体プラットフォームにより行われる。あらかじめ保存された試薬は、反応/検出チャンバーに運ばれ、自動化された核酸-アフィニティー-リガンド変換、およびその後のリガンド結合アッセイを介した標的分子の検出が可能となる。
【0086】
別の好ましい実施形態において、本発明は、先行する項のいずれか1つ以上に記載の方法を実行するためのキットに関するものであり、該キットは、
標的核酸とハイブリダイズする少なくとも1組の増幅プライマー、
ここで、少なくとも1つの増幅プライマーが、第1のアフィニティー標識を含み、
任意で特異的プローブ、
標的核酸とハイブリダイズできる、第2のプライマーまたは特異的プローブのいずれかに関連する第2のアフィニティー標識、
等温増幅反応を行うための試薬、および
アフィニティー分子
を含む。
【0087】
本方法について記載された全ての好ましい実施形態は、キットの好ましい実施形態でもある。
【0088】
好ましくは、キットは、増幅反応が行われる溶液を含み、ポリメラーゼ、リコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、増幅試薬、アンプリコン、緩衝剤、カチオン、dNTP、および/または他の構成要素を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0089】
別の好ましい実施形態において、本発明は、体外診断、医薬品開発、食品安全、または環境安全のための、先行する項のいずれか1つ以上に記載の方法またはキットの使用に関する。
【0090】
本発明は、限られた試料素材しか入手できない可能性がある、特に医薬品開発において有利である。核酸および分析物の同時検出により、対応する分析対象物とともに遺伝子発現の変調の解析が可能である。また、食品の安全性の観点から、分析物および核酸の同時検出は、微生物汚染物質がアレルゲン成分、毒素またはその他の生体分子汚染物質とともに検出され得るため、非常に有益である。
【0091】
本明細書に記載された発明は、疾患の予測もしくは検出、または疾患に対する疾病素質の決定、または疾患の治療のモニタリング、または治療反応の診断に使用することができる。
【0092】
本発明のプロセスにより、多様な感染症が検出可能である。一般的には、これらは、細菌、寄生虫、真菌またはウイルスによって引き起こされる。本発明は、感染症検出のために、宿主の炎症性タンパク質マーカーとともに病原体を同定するために使用され得る。これは、タイムクリティカルな感染症における迅速な治療方針の決定、または感染症の状況のモニタリングに特に有益である。
【0093】
一例として、細菌ゲノムDNA(例えば、緑膿菌gDNAなど)を炎症性サイトカインマーカー(例えば、インターロイキン-6など)とともに同時に検出することが挙げられる。病原体およびサイトカインは、創傷液または喀痰などの体液中で検出されてもよい。この特定の実施形態において、細菌DNAは、サイトカインの存在下で増幅され、その後、リガンド結合アッセイを介して標的分子が検出される。
【0094】
他の実施形態では、本発明は、検査の信頼性を高めるために、ウイルスに対して特異的な抗体または特異的なウイルス抗原とともにウイルスRNAを検出するために使用され得る。逆転写を使用して、RNAは、cDNAに転写され、その後増幅され、多検体アッセイを介して特異的な抗体/抗原とともに同時に検出される。ウイルスは、脳脊髄液、喀痰、またはその他の綿棒試料などの体液から、特異的な抗体/抗原とともに検出されてもよい。
【0095】
他の実施形態において、本発明は、癌の診断又はステージ決定に使用され得る。血液などの体液は、腫瘍マーカーの存在および/または量を決定するために使用されてもよい。本発明は、癌の種類またはステージに特異的なタンパク質、ホルモンおよび酵素などの標的分析物の、循環マイクロRNAまたはctDNAなどの標的核酸との同時検出を可能とする。これにより、例えば、早期診断、治療戦略のガイダンスおよび癌の状態のモニタリングなどが可能となる。
【0096】
また、本発明の多検体アッセイは、医薬品のスクリーニング、例えば、医薬品開発、または医薬品開発のための標的のスクリーニングなどに使用され得る。核酸および分析物の同時検出により、対応するタンパク質とともにパスウェイや遺伝子発現の変調の解析が可能となる。
【0097】
また、本発明の多検体アッセイは、食品の安全性の分野において使用され得る。食品の安全性の観点から、分析物および核酸の同時検出は、微生物汚染物質をアレルゲン成分、毒素またはその他の生体分子汚染物質とともに検出できるため、非常に有益であり得る。
【0098】
本発明の1つの大きな利点は、アプローチの柔軟性である。
【0099】
別の利点は、多検体アッセイに必要なすべての構成要素が市販されていること、およびアッセイに複雑な設計工程(例えば、オリゴヌクレオチド配列による抗体の機能化、または複雑なプライマーおよびプローブシステムの設計など)が要求されないことである。当該アッセイは、実施が容易であり、かつ特定のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできるため、迅速な集積が可能である。
【0100】
本発明は、多重化の新しい次元を導入し、異なる分子クラスのための多重化を可能にし、リガンド結合アッセイを介して検出可能な全ての分子の検出を可能にする。
【0101】
本発明は、大規模な実験自動化への当該技術の迅速かつ容易な適用を可能とするだけでなく、小型かつ専門化したポイントオブケア機器への統合を可能とする。
【0102】
本発明(方法、キットおよび使用)は、多くの用途において有利である。複数のクラス、好ましくは少なくとも2つの分子を単一の工程で同時に検出することは、長く望まれてきた目標であった。本発明は、感染症の検出のために、宿主の炎症性タンパク質マーカーとともに、DNA解析により病原体を特定するために利用することができる。本発明は、異なるアッセイプロトコルおよび解析方法に従う時間がないため、特に時間の制約が厳しい感染症において、迅速な治療方針の決定に大きな影響を与える。本発明の新規なアプローチにより、病原体および宿主の炎症に関する全ての重要な情報を含む生体分析結果が、技術水準と比較してはるかに迅速に得られる。
【0103】
特許文献および非特許文献の全ての引用文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
図面及び実施例
本発明を実施例に関して説明する前に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0105】
実施例:細菌ゲノムDNAの炎症性サイトカインマーカーとの同時検出。
【0106】
病原体および炎症性サイトカインの同時検出により、1つの試料から感染および宿主の反応の同時検討が可能となる。これは、時間の制約が厳しい感染症における迅速な治療方針の決定、感染症の状態のモニタリング、または個別化された治療に特に有益である。一例として、緑膿菌(P.aeruginosa)のゲノムDNA(gDNA)と急性マーカーであるインターロイキン-6(IL-6)との組み合わせの同時検出を示す。
【0107】
核酸-アフィニティー-リガンド変換とは、増幅された標的核酸配列を標識により機能化し、その後、標的分析物および標的核酸を同じ測定原理で検出することをいう。このように、本発明の多検体アッセイは、同一の測定原理で標的分析物と標的核酸とを同時に検出することが可能である。この特定の例では、IL-6の存在下で緑膿菌のgDNAを増幅し、標識するためにRPAが使用される。その後、両分析物は、マイクロタイタープレートのウェル内で、サンドイッチ免疫測定法を介して検出される。
【0108】
本実施例では、緑膿菌のLasB遺伝子の高度な保存領域を標的化するためにプライマーおよびプローブが設計される。使用されたプライマーおよびプローブの配列を表1に示す。LasB特異的プライマー(LasB-fwdおよびLasB-revプライマー)およびプローブ(LasB-probe)のセットにより、一重標識された(ジゴキシゲニン)161bpサイズの産物および二重標識された(ジゴキシゲニンおよびビオチン)123bpサイズの産物が産生される。二重標識産物のみが、リガンド結合アッセイを介して検出される。
【0109】
RPAは、TwistAmp(商標)nfo kit(TwistDx)を用いて50μlの容量において実施される。簡潔には、29.5μlの1x再水和バッファーを1.25μlのLasB-fwdプライマー(10μM)、1.25μlのLasB-revプライマー(10μM)、および1.2μlのLasB-プローブ(10μM)と混合した。その後、6μlの試料(ゲノムDNAおよびIL-6を含む)および8.3μlのddH2Oが反応混合物に添加される。次に、反応ペレットおよび2.5μlの酢酸マグネシウム(280nM)が添加され、チューブは直ちにブロックヒーター上に37℃で15分間置かれる。
【0110】
その後、RPA反応は、100μlのアッセイバッファー(1xPBS、0.1%BSA)で1:10に希釈され、4μg/mlの抗lL6抗体および4μg/mlストレプトアビジンでコートされたマイクロタイタープレートに添加される。マイクロタイタープレートは、あらかじめ5%BSAを含むPBSでブロッキングされる。標識された標的DNAおよび標的分析物を室温で1時間インキュベートした後、マイクロタイタープレートは、0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄される。その後、抗ジゴキシゲニンコンジュゲート蛍光マイクロスフェアおよび抗IL6コンジュゲート蛍光マイクロスフェアを介して標的分子が検出される。すなわち、100μlの各コンジュゲート蛍光マイクロスフェア(75μg/ml)が、マイクロタイタープレートに添加され、室温で1時間インキュベートされる。再度、マイクロタイタープレートは、0.05%Tween20を含むPBSで3回洗浄される。最終的に、100μlのPBSが、マイクロタイタープレートに添加され、市販のマイクロタイタープレートリーダーを介して各標的分子の蛍光シグナルが検出される(
図2)。
【0111】
異なる実施例において、IL-6および緑膿菌のgDNAが、ラテラルフローアッセイを介して検出される(
図3)。
【0112】
【0113】
表1に緑膿菌gDNAおよびIL-6の同時検出の検出について記載されたプライマーおよびプローブの配列を示す。
配列番号1 GAGAATGACAAAGTGGAACTGGTGATCCGCCTG
配列番号2 GCCAGGCCTTCCCACTGATCGAGCAC TTCGCCG
配列番号3 GAACAACATCGCCCAACTGGTCTACAACGTTCCTACCTGATTCCC
【図面の簡単な説明】
【0114】
【
図1】
図1は、複数の標的分子の従来の検出と、1つの試料からの一度での複数の標的分子の同時検出との比較を示す。(上)複数の標的分子の従来の検出。(下)本発明による多検体アッセイを介した標的分子の同時検出。
【
図2】
図2は、マイクロタイタープレート内での緑膿菌のgDNAおよびIL-6の同時検出を示す。
【
図3】
図3は、ラテラルフローアッセイを介した緑膿菌gDNAおよびIL-6の同時検出を示す。
【0115】
参考文献
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【符号の説明】
【0116】
図1
Conventional Process 従来のプロセス
Split sample 分注試料
Sample preparation 試料調製
Sample processing 試料の加工
Detection and readout 検出および読み出し
Data analysis データ解析
Multianalyte Process 多検体アッセイプロセス
図2
Detection of Interleukin-6 インターロイキン6の検出
Intensity 強度
P.aeruginosa gDNA 緑膿菌gDNA
copies/reaction コピー数/反応
Fit curve 適合曲線
Detection of P.aeruginosa gDNA 緑膿菌gDNAの検出
図3
Channel チャンネル
Interleukin-6 インターロイキン6
Flow control フローコントロール
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの試料から少なくとも2つの異なる標的分子の有無を検出する方法であって、少なくとも1つの標的分子が目的の標的分析物であり、かつ少なくとも1つの他の標的分子が目的の標的核酸であり、前記方法が、
以下を含む、等温増幅反応を行うこと、
少なくとも1つの標的核酸および/または少なくとも1つの標的分析物の有無について分析される試料を、少なくとも1組の増幅プライマーに接触させること、
ここで、前記2つの増幅プライマーは、標的核酸とハイブリダイズすることができ、
ここで、少なくとも1つの前記増幅プライマーが、第1のアフィニティー標識を含み、
ここで、第2のアフィニティー標識が、前記標的核酸のアンプリコンに取り込まれることができる方法で提供され、
リガンド結合アッセイを同時に行うことであって、ここで、シグナル生成を介して標的分析物および/または標識された標的核酸の存在を捕捉および検出することができるアフィニティー分子が使用され、
前記標的分析物および/または標的核酸の有無を検出すること
を含
み、
ここで、前記標的分析物が、タンパク質、ペプチド、抗体、ホルモン、酵素、低分子、炭水化物または任意の他の物質であるが、核酸でなく、
ここで、前記試料が分割されず、かつ別途のアッセイ手順および/またはプロトコルを必要としない、方法。
【請求項2】
前記標的核酸が増幅され、かつ同時に少なくとも前記第1のアフィニティー標識および前記第2のアフィニティー標識が、前記増幅された標的核酸に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの増幅プライマーのハイブリダイゼーション部位の間に局在する配列とハイブリダイズする特異的プローブが提供され、かつ前記特異的プローブが、前記第2のアフィニティー標識を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記等温増幅反応が、前記少なくとも2つの増幅プライマー間に局在する配列にハイブリダイズして第2の二重標識産物をもたらす、前記特異的プローブによって認識される、第1の一重標識産物をもたらす、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第2の標識が、前記第1の標識と異なる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記標的核酸の前記シグナルが、アフィニティー分子によるアフィニティー標識の結合を介して生成される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記標的核酸が、
DNA分子、好ましくはssDNA、dsDNA、cDNA、rDNA、mtDNA、cpDNAまたはプラスミドDNA、
RNA分子、好ましくはmRNA、循環RNA、miRNA、snRNA、snoRNA、rRNA、tRNA、asRNA、circRNA、hnRNA、siRNA、shRNA、snoRNA、snRNA、IncRNA、piRNA、またはtracrRNAである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記等温増幅反応が、分析物に適合する条件下で起こる、請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1の標識が、アフィニティータグ、好ましくはビオチン、FAM、ジゴキシゲニンまたはジニトロフェニル(DNP)、テトラメチルローダミン(TAMRA)、テキサスレッド、カスケードブルー、ストレプトアビジンおよび誘導体、Cy5、ダンシル、フルオロセイン、アジド、アルキン、または他の生体直交性官能基および/またはタグである、請求項1~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記特異的プローブが、少なくとも1つの機能部位、好ましくは脱塩基残基またはポリメラーゼ伸長阻害基をさらに含む、請求項3~
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記アフィニティー分子が、抗体、アプタマー、官能基、タンパク質、リガンド結合ポリマー構造物、官能基を含むことができる(マクロ-)分子、および/または分子インプリントポリマー(MIP)であり、および/またはシグナルツール、好ましくはマーカーが、前記アフィニティー分子に付着している、請求項1~
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれかに記載の方法を実行するためのキットであって、前記キットが、
標的核酸とハイブリダイズする、少なくとも1組の増幅プライマー、
ここで、少なくとも1つの前記増幅プライマーが、第1のアフィニティー標識を含み、
任意で、前記標的核酸とハイブリダイズできる特異的プローブ、
前記第2のプライマーまたは前記特異的プローブのいずれかに関連する第2のアフィニティー標識、
等温増幅反応を実行するための試薬、および
アフィニティー分子
を含む、キット。
【請求項13】
体外診断、医薬品開発、食品安全、または環境安全のための、請求項1~
12のいずれかに記載の方法またはキットの使用。
【国際調査報告】