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特表2023-543663ポリウレタン発泡体の劣化を抑える添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ポリウレタン発泡体の劣化を抑える添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/18 20060101AFI20231011BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20231011BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20231011BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20231011BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20231011BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20231011BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/00 L
C08G18/28 080
C08G18/08 038
C08L75/04
C08K5/42
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023511557
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2021072419
(87)【国際公開番号】W WO2022034151
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】20191153.4
(32)【優先日】2020-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509307912
【氏名又は名称】ハンツマン・インターナシヨナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブオーノ,ピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】デリクス,ディオン
(72)【発明者】
【氏名】ギアーズ,ワウテル
(72)【発明者】
【氏名】フンベルト,ハイコ・ハインリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ドリース,ゲールト・ルドウィック
(72)【発明者】
【氏名】バンデルストラエテン,ペトラ・エマ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK031
4J002CK041
4J002EV236
4J002FD036
4J002GM00
4J002GN00
4J034BA03
4J034BA08
4J034CA02
4J034CA04
4J034CA13
4J034CA15
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4J034CB05
4J034CB07
4J034CC03
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4J034CC12
4J034CC26
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4J034DQ05
4J034DQ16
4J034DQ18
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4J034HA06
4J034HA07
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4J034HB09
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
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4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
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4J034NA08
4J034QA01
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB15
4J034QB17
4J034RA11
4J034RA12
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】
本開示は、ポリウレタン製剤中の添加剤として使用するためのスルホン酸エステルに関する。前記ポリウレタン製剤は、さらに、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、反応性アミン触媒とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)式(1)を有する化合物、
【化1】
式(1)中、Rは1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(ii)式(2)を有する化合物、
【化2】
式(2)中、Xは水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキルまたは1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(iii)式(3)を有する化合物、
【化3】
式(3)中、Xは独立して水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、nは1~8の整数であり、RはH、1以上の水酸基で置換されてもよいC1-C4アルキル基または1以上の水酸基で置換されてもよいC-Cのアルコキシ基である;
(iv)式(4)を有する化合物、
【化4】
式(4)中、nは、1~5の整数である;
(v)式(5)を有する化合物、
【化5】
式(5)中、nは0から3の整数であり、Xは水素、または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基である;および
(vi)それらの混合物、から選択される、スルホン酸エステルと、
(b)イソシアネート官能基含有化合物と、
(c)活性水素含有化合物と、
(d)少なくとも1つの第3級アミン基を有するイソシアネート反応性アミン触媒と、を含むポリウレタン製剤であって、
前記製剤中の前記スルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対する、前記イソシアネート反応性アミン触媒(d)中の前記第3級アミン基の全モル数の比が2以上であることを特徴とする、ポリウレタン製剤。
【請求項2】
前記製剤中のスルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対する、イソシアネート反応性アミン触媒(d)中に存在する第3級アミン基のモル数の比が、好ましくは2~5の範囲、より好ましくは2~4の範囲、最も好ましくは2~3の範囲である、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項3】
前記スルホン酸エステルが、式(2)を有する化合物であり、Rは、メチルから選択される、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項4】
Xは、1以上の水酸基で置換されていてもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、ペンチル基から選ばれる低級アルキル基である、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項5】
Xが水素であり、Rがメチルから選択される、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項6】
前記スルホン酸エステルが、p-トルエンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル、ビス(p-トルエンスルホン酸)エチレンおよび/または4-メチルベンゼンスルホン酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルから選択される、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項7】
前記スルホン酸エステルが、式(3)を有する化合物である、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【化6】
【請求項8】
Xがそれぞれ独立して、1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-Cアルキル基、または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-Cアルコキシ基である、請求項7記載のポリウレタン製剤。
【請求項9】
反応性アミン触媒が式(6)を有する化合物であり、
【化7】
式(6)中、RとRは独立してC-Cアルキル基であるか、RとRが一緒になってOまたはNヘテロ原子を含む5員または6員の環状構造、または7員の二環式構造を形成し、mは1または2の整数で、Yは-OH、-NH、N(CH)CHCHOH、NHCHCHCHN(CHN(CH)CHCHCHNH、N(CHCH(CH)OH),N(CHCH(CH)OH)CHCHCHN(CHOCHCHOH、OCHCHNH、OCHCHCHNH、OCHCHN(CH)CHCHOHおよびOCHCHN(CH)CHCHCHNHから選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリウレタン製剤。
【請求項10】
前記イソシアネート反応性アミン触媒が、下記式を有する化合物である、請求項1~8の何れか1項に記載のポリウレタン製剤。
【化8】
【請求項11】
発泡剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリウレタン製剤。
【請求項12】
イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、任意の補助成分とを、少なくとも第3級アミン基と、(i)式(1)を有する化合物、
【化9】
式(1)中、Rは1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(ii)式(2)を有する化合物、
【化10】
式(2)中、Xは水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキルまたは1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(iii)式(3)を有する化合物、
【化11】
式(3)中、Xは独立して水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、nは1~8の整数であり、RはHまたは1以上の水酸基で置換されてもよいC-Cアルキル基またはC-Cアルコキシ基である;
(iv)式(4)を有する化合物、
【化12】
式(4)中、nは、1~5の整数である;
(v)式(5)を有する化合物、
【化13】
式(5)中、nは0から3の整数であり、Xは水素、または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり;および
(vi)それらの混合物、から選択される、スルホン酸エステルを含む、イソシアネート反応性アミン触媒の存在下で配合および/または反応させることを含む、ポリウレタン材料の製造方法であり、
前記製剤中の前記スルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対する、前記イソシアネート反応性アミン触媒(d)中に存在する前記第3級アミン基のモル数の比が、2以上、好ましくは2~5の範囲、より好ましくは2~4の範囲、最も好ましくは2~3の範囲であることを特徴とする、ポリウレタン材料の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって製造されたポリウレタン材料。
【請求項14】
前記ポリウレタン材料が、硬質発泡体、半硬質発泡体または軟質発泡体である、請求項13に記載のポリウレタン材料。
【請求項15】
船舶、航空機、トラック、自動車またはバスの車両内装または外装部品に使用するための、請求項12に記載の方法により製造されるポリウレタン材料。
【請求項16】
シートクッション、ドア側面エレメントの背面発泡体、計器盤、ハンドル、シフトボタン、ベッドライナー、ダッシュボードまたはドアパネルとして、自動車に使用される、請求項12の方法により製造されるポリウレタン材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ポリウレタン発泡体を含むポリウレタン材料の機械的性質の改善に使用するための添加剤に関する。特に、本開示は、熱、高湿度または熱高湿度条件下でのポリウレタン発泡体の機械的性質の劣化を大幅に低減し、揮発性化合物の排出を最小限に抑えるための添加物としての有機硫黄系化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は広く知られており、自動車産業など様々な用途で使用されている。自動車用途では、例えば、スポイラー、ルーフエレメント、スプリングエレメントなどの自動車外装材や、ルーフクラッディング、ドアライニング、ケーブル絶縁、ステアリングホイール、ボタン、シートパッドなどの自動車内装材に使用されている。
【0003】
これらのポリウレタン発泡体には優れた機械的性質が求められ、その性質は、自動車の寿命まで変化しないことが理想的である。例えば、ポリウレタン発泡体は、クッション性、ノイズ減衰性、触感特性を維持しつつ、事故時の機械的衝撃を減衰させるなど、安全性に関わる役割を果たすことが求められる。
【0004】
自動車内は、例えば、-10℃~60℃の大きな温度変化があり、それにより、ポリウレタン発泡体の経年劣化や機械的劣化を促進させる。さらに、空気中の相対湿度が100%になることもあり、それがエージングをさらに助長させる。そのため、自動車内装に使用されるポリウレタン発泡体についても、揮発性化合物の排出をできるだけ少なくすることが必要である。排出を削減するために、ポリウレタン製剤業者によりイソシアネート反応性触媒溶液が開発されている。しかし、これらの触媒は、熱または湿熱保存条件下でポリウレタン発泡体の機械特性をさらに悪化させる原因となりえる。
【0005】
したがって、熱または高湿熱条件下で、硬質、半硬質または軟質ポリウレタン発泡体の機械的性質の劣化を(現行の添加剤と比較して)低減し、さらにそのようなポリウレタン発泡体からの揮発性化合物の排出を最小化にできる新しい添加剤の開発が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、イソシアネート反応性アミン触媒と、スルホン酸エステルとを含むポリウレタン製剤であって、熱または湿熱条件下で機械的性質が向上し、揮発性化合物の排出が少ないポリウレタン発泡体材料を実現するために、前記製剤中のスルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対する前記イソシアネート反応性アミン触媒(d)中に存在する第3級アミン基のモル数の比が、2以上、好ましくは2~5の範囲、より好ましくは2~4の範囲、最も好ましくは2~3の範囲である、前記ポリウレタン製剤を提供する。
【0007】
さらに別の実施形態では、反応性アミン触媒およびスルホン酸エステルの存在下で、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、任意の補助成分とを配合するおよび/または反応させることを含む、ポリウレタン材料の形成方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語は、それぞれ次の意味で使用される。
【0009】
用語「を含む(comprising)」およびその派生語は、本明細書に開示されて
いるか否かに関わらず、追加成分、ステップまたまたは手順の存在を除外することを意図するものではない。一切の懸念を避けるため、「を含む(comprising)」という用語を使用して本明細書に記載されているすべての組成物は、特に断りのない限り、任意の追加添加剤または化合物を含んでもよい。一方、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、実施可能性に必須でないものを除き、後述の範囲から、構成要素、ステップまたは手順を除外し、「~からなる(consisting of)」という用語が使用される場合、具体的に定義または記載されていない構成要素、ステップまたは手順を除外する。特に断りのない限り、「または(or)」という用語は、列挙された部材のそれぞれ、またはその任意の組み合わせを意味する。
【0010】
本明細書における、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を示すために使用される。例として、「スルホン酸エステル」は、1または2以上のスルホン酸エステルを意味する。「一実施形態において(in one embodiment)」、「一実施形態によると(according to one embodiment)」などの表現は、一般的に、そのフレーズに続く特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、本開示の複数の実施形態に含まれる場合もあり得る。このような表現は必ずしも同じ態様を示すものではないということに留意すべきである。明細書中で、構成成分や機能が「may」、「can」、「could」、「might」で既定されている場合、その特定の構成成分や機能を含んでいる、または有していることが必須ではない。
【0011】
ここで使用する用語「約(about)」は、値または範囲における変動の程度を許容することができ、例えば、既定した値または範囲の規定した限界値の10%以内、5%以内または1%以内であってもよい。
【0012】
範囲を既定する数値は、その範囲の限界値として明示された数値だけでなく、その範囲内に包含される個々の数値や部分範囲のすべてが明示されていると柔軟に解釈されるべきである。例えば、1~6のような範囲は、1~3、2~4、3~6などの部分範囲と、例えば、1、2、3、4、5、6など、その範囲の個々の数値を含むと考えるべきである。これは、その範囲の広さに関係なく適用される。
【0013】
「好ましい(preferred)」および「好ましくは(preferably)」という用語は、特定の状況下で特定の利点を与えうる実施形態を示す。しかし、他の実施形態も、同一または他の状況下で、好ましい場合がある。1以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0014】
置換基を従来の化学式で示し、左から右に記述した場合、右から左に記述した場合と化学的に同一の置換基を等しく包含する、例えば、-CHO-は-OCH-と等価である。
【0015】
用語「アルキル基」は、直鎖および分岐鎖の飽和または不飽和アルキル基を包含する。このようなアルキル基は、特に指定がない限り、炭素数が最大で20になりうる。いくつかの実施形態では、アルキル基は、低級アルキル基であってもよい。用語「低級」は、炭素数1~5のアルキル基を意味する。「低級アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
「任意の(optional)」または「任意に(optionally)」という用
語は、その後に説明する事象または状況が発生してもしなくてもよく、その説明には当該事象または状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。
【0017】
本明細書で使用する「ポリウレタン」という用語は、純粋なポリウレタン、ポリウレタンポリ尿素および純粋なポリ尿素を包含するものである。
【0018】
ここで使用する「ポリウレタン材料」という用語は、硬質発泡体、軟質発泡体、半硬質発泡体、一体型発泡体、マイクロセルラーエラストマー、注型エラストマー発泡体、ポリウレタン-イソシアヌレート発泡体、反応射出成形ポリマー、構造反応射出成形ポリマーなどを包含する。
【0019】
本開示は、一般に、スルホン酸エステルを対象とし、さらに、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、少なくとも1つの第3級アミン基を含む反応性アミン触媒とを含みうるポリウレタン製剤におけるそれらの使用を対象とする。「反応性」触媒とは、イソシアネートに対する化学反応性基(例えば、-OH、-NH、-NH)を有する触媒を意味し、「イソシアネート反応性」とも言う。このような特徴を持つ触媒は、発泡体製造工程の最後に、発泡体の高分子構造の一部となる。一方、「非反応性」触媒は、イソシアネートに対する化学反応性基を有していないため、発泡体製造工程の最後には、遊離化学種として残存する。
【0020】
本開示はさらに、ポリウレタン材料を対象とし、詳細には、本明細書中で記載するスルホン酸エステルと、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、少なくとも1つの3級アミン基を有する反応性アミン触媒とを含むポリウレタン製剤から生成される、ポリウレタン発泡体(例えば、硬質、半硬質または軟質ポリウレタン発泡体を含む)を対象とする。
【0021】
驚くべきことに、本開示のスルホン酸エステルを反応性触媒に配合することにより、熱または湿熱条件下で、機械的性質が向上し、揮発性化合物の排出が最小限である、ポリウレタン材料を得られることが、発見された。目的は、スルホン酸エステルなしで製造された基準発泡体と同等の排出を維持しながら、湿度の高いエージング条件下での発泡体の劣化を低減および/または回避することによって発泡体の機械的性質を改善することである。その目的は、本発明によって達成され、ポリウレタン発泡体を製造するための反応性製剤中に、スルホン酸エステル化合物から選ばれた特定の添加剤とイソシアネート反応性アミン触媒化合物を特定の比率で配合することにより達成される。
【0022】
一実施形態によれば、スルホン酸エステルは、
(i)式(1)を有する化合物、
【化1】
式(1)中、Rは1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(ii)式(2)を有する化合物、
【化2】
式(2)中、Xは水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキルまたは1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(iii)式(3)を有する化合物、
【化3】
式(3)中、Xは水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、nは1~8の整数であり、RはHまたは1以上の水酸基で置換されてもよいC-Cアルキル基である;
(iv)式(4)を有する化合物、
【化4】
式(4)中、nは、1~5の整数である;
(v)式(5)を有する化合物、
【化5】
式(5)中、nは0から3の整数であり、Xは水素、または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基;および
(vi)それらの混合物、から選択される。
【0023】
一実施形態によれば、RおよびRで示されるアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピルなどの低級アルキル基を含むが、これらに限定されるものではない。別の実施形態では、Xはそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、プロピルまたはブチルを含みうるが、これらに限定されず、他の実施形態ではパラ位に配置される。
【0024】
スルホン酸エステルとして使用できる特定の化合物としては、p-トルエンスルホン酸メチル、o-トルエンスルホン酸シクロヘキシル、ベンゼンスルホン酸イソプロピル、クロロベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ブチルベンゼンスルホン酸、エチレンビス(ベンゼンスルホン酸)、エチレンジ(p-トルエンスルホン酸)およびこれらの変異体が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、ベンゼンスルホン酸メチルから選択されるスルホン酸エステル化合物の変異体としては、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル4-メチルベンゼンスルホン酸(下記構造2a参照)などの化合物が挙げられる。
【化6】
【0025】
一実施形態において、ポリウレタン製剤は、ポリウレタン製剤の総重量を基準として、少なくとも約0.1重量%のスルホン酸エステルを含んでもよい。他の実施形態において、ポリウレタン製剤は、ポリウレタン製剤の総重量を基準として、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.5重量%または少なくとも約0.7重量%のスルホン酸エステルを含んでもよい。さらなる実施形態において、ポリウレタン製剤は、ポリウレタン製剤の総重量を基準として、約3重量%以下のスルホン酸エステルを含んでもよい。他の実施形態において、ポリウレタン製剤は、ポリウレタン製剤の総重量を基準として、約2.5重
量%以下、約2重量%以下または約1.5重量%以下のスルホン酸エステルを含んでもよい。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、上記スルホン酸エステルは、製剤中のスルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対するイソシアネート反応性アミン触媒(d)に存在する第3級アミン基のモル数の比が2以上、好ましくは2~5の範囲、より好ましくは2~4の範囲、最も好ましくは2~3の範囲になるようにイソシアネート反応性アミン触媒に配合される。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、イソシアネート反応性アミン触媒は、一般式(6)を有する少なくとも1つの3級アミン基を含有する。
【化7】
式(6)中、RとRは独立してC-Cアルキル基であるか、RとRが一緒になってOまたはNヘテロ原子を含む環状5員または6員環、または7員の二環式構造を形成し、mは1または2の整数で、Yは-OH、-NH、N(CH)CHCHOH、NHCHCHCHN(CHN(CH)CHCHCHNH、N(CHCH(CH)OH),N(CHCH(CH)OH)CHCHCHN(CHOCHCHOH、OCHCHNH、OCHCHCHNH、OCHCHN(CH)CHCHOHおよびOCHCHN(CH)CHCHNHから選択される。好ましい反応性触媒としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化8】
好ましい環式、二環式の組み込み可能な触媒としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化9】
さらに別の実施形態において、反応性アミン触媒は、下記式を有する化合物である。
【化10】
【0028】
さらなる実施形態によれば、上記スルホン酸エステルは、非反応性触媒と組み合わせてもよい。代表的な非反応性触媒としては、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(JEFFCAT(登録商標)ZF-20触媒)、ビス-(N,N-ジメチルアミノエトキシ)メチルアミン(JEFFCAT(登録商標)LE-30触媒)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(JEFFCAT(登録商標)DMCHA触媒)、ベンジルジメチルアミン(JEFFCAT(登録商標)BDMA触媒)、ペンタメチルジエチレントリアミン(JEFFCAT(登録商標)PMDETA触媒)、N,N,N′,N″,N″-ペンタメチルジプロピレントリアミン(JEFFCAT(登録商標)ZR-40触媒)、トリエチレンジアミン(JEFFCAT(登録商標)TEDA触媒)、N-エチルモルホリン(JEFFCAT(登録商標)NEM触媒)、N-メチルモルホリン(JEFFCAT(登録商標)NMM触媒)、N,N´ジメチルピペリジン(JEFFCAT(登録商標)DMP触媒)、2,2′-ジモルフォリノジエチルエーテル(JEFFCAT(登録商標)DMDEE触媒)、1,3,5-トリス(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン(JEFFCAT(登録商標)TR-90触媒)が挙げられるが、これらに限定されない。JEFFCATはハンツマン株式会社またはその関連会社の登録商標である。本開示において使用され得る他の非反応性触媒としては、Herringtonらによる「Dow Polyurethanes Flexible Foams」の添付書類D、ページD.1~D.23(1997)に記載のものが挙げられ、この文献を参照により本明細書に組み込む。その他の例としては、「JEFFCAT(登録商標)Amine Catalysts for the Polyurethane Industry」JCT-0910版(参照により本明細書に組み込む)に記載されているものが挙げられる。
【0029】
別の実施形態によれば、ポリウレタン製剤は、非アミン触媒を含んでもよい。非アミン触媒は、イソシアネート基と活性水素含有化合物または水との反応に触媒活性を有する化合物であって、上記イソシアネート反応性アミン触媒の説明に該当しない化合物である。このような追加の非アミン触媒の例としては、例えば、
トリアルキルホスフィン、ジアルキルベンジルホスフィンなどの3級ホスフィン類;
Be、Mg、Zn、Cd、Pd、Ti、Zr、Sn、As、Bi、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Niなどの金属とアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどから得られる各種金属のキレート化合物;
酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの金属カルボン酸塩;
塩化第二鉄、塩化第二スズ、塩化第一スズ、三塩化アンチモン、硝酸ビスマス、塩化ビスマスなどの強酸の酸性金属塩;
アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、フェノキシドなどの強塩基;
Ti(OR、Sn(OR、Al(OR(Rはアルキルまたはアリール)などの各種金属のアルコレートおよびフェノレート、ならびにこれらのアルコレートとカルボン酸、ベータジケトンおよび2-(N,N-ジアルキルアミノ)アルコールの
反応生成物;
アルカリ土類金属、Bi、Pb、SnまたはAlのカルボン酸塩;および
4価の錫化合物、3価または5価のビスマス、アンチモンまたはヒ素化合物、が挙げられる。
【0030】
反応性アミン触媒、任意の非反応性触媒、非アミン触媒は、硬質、半硬質または軟質ポリウレタン発泡体または他のポリウレタン材料を製造するためのイソシアネート官能基含有化合物と活性水素含有化合物との反応を触媒するために触媒有効量で使用することができる。上記触媒(すなわち、アミン触媒、および任意に、非反応性および/または非アミン触媒)の触媒有効量は、活性水素含有化合物100部あたり約0.01~15部、いくつかの実施形態では活性水素含有化合物100部あたり約0.05~12.5部、さらなる実施形態では活性水素含有化合物100部あたり約0.1~7.5部、さらなる実施形態では活性水素含有化合物100部あたり約0.5~5の範囲になりうる。特定の実施形態において、触媒の量は、活性水素含有化合物100部当たり約0.1~3部の範囲になりうる。
【0031】
一実施形態において、イソシアネート官能基含有化合物は、ポリイソシアネートおよび/またはイソシアネート末端プレポリマーである。
【0032】
ポリイソシアネートとしては、一般式Q(NCO)で表されるものが挙げられ、aは2~5、例えば、2~3の数字であり、Qは、炭素数2~18の脂肪族炭化水素基、炭素数5~10の脂環式炭化水素基、炭素数8~13のアリール脂肪族炭化水素基または炭素数6~15の芳香族炭化水素基である。
【0033】
ポリイソシアネートは、例えば、エチレンジイソシアネート;1,4-テトラメチレンジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート;1,12-ドデカンジイソシアネート;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネートおよびこれら異性体の混合物;イソホロンジイソシアネート;2,4-ヘキサヒドロトルエン、2,6-ヘキサヒドロトルエンおよびこれら異性体の混合物;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水素化MDIまたはHMDI);1,3-フェニレンジイソシアネートおよび1,4-フェニレンジイソシアネート;2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネートおよびこれら異性体(TDI)の混合物;ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネートおよび/またはジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI);ナフシレン-1,5-ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’、4’’-トリイソシアネート;アニリンをホルムアルデヒドで縮合した後、ホスゲン化して得られるポリフェニル-ポリメチレン-ポリイソシアネート(ポリメリックMDI);ノルボルナンジイソシアネート、m-およびp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;過塩素化アリールポリイソシアネート;カルボジイミド基、ウレタン基、アロホネート基、イソシアヌレート基、ウレア基またはビウレット基を有する変性多官能イソシアネート;テロメリ化反応により得られる多官能イソシアネート;エステル基を有する多官能イソシアネート;およびポリメリック脂肪酸基を有する多官能イソシアネートが挙げられる。当業者であれば、前記ポリイソシアネートの混合物を使用することも可能である。
【0034】
ポリウレタン材料の調製には、イソシアネート末端プレポリマーを採用することもできる。イソシアネート末端プレポリマーは、過剰のポリイソシアネートまたはその混合物を、周知のツエレウィテイノフ・テストにより決定される少量の活性水素含有化合物と反応させることにより調製することができる。
【0035】
別の実施形態では、活性水素含有化合物は、ポリオールである。本開示での使用に好適なポリオールとしては、ポリアルキレンエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ならびにリン含有ポリオールまたはハロゲン含有ポリオールなどの不燃性ポリオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。このようなポリオールは、単独で使用してもよく、好適な組み合わせで混合物として使用してもよい。
【0036】
ポリアルキレンエーテルポリオールとしては、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)ポリマーなどのポリ(アルキレンオキシド)ポリマーや、ジオール、トリオールなどの多価化合物由来の末端水酸基を有する共重合体が挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパンおよび同様の低分子ポリオールが挙げられる。
【0037】
ポリエステルポリオールには、ジカルボン酸と過剰のジオール、例えば、アジピン酸とポリエチレングリコールまたはブタンジオールとの反応、またはラクトンと過剰のジオール、例えば、カプロラクトンとプロピレングリコールとの反応によって製造されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
ポリアルキレンエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールに加えて、ポリマーポリオールもまた、本開示における使用に適している。ポリマーポリオールは、ポリウレタン材料に使用され、変形抵抗を高め、例えば、発泡体や材料の耐荷重性を向上させるために使用される。ポリマーポリオールとしては、例えば、グラフトポリオールまたはポリウレア変性ポリオール(ポリハーンシュトッフ分散物ポリオール(Polyharnstoff Dispersion polyol))が挙げられるが、これらに限定されない。グラフトポリオールは、トリオールにビニルモノマーをグラフト共重合させたものである。好適なビニルモノマーとしては、例えば、スチレンまたはアクリロニトリルが挙げられる。ポリウレア変性ポリオールは、ポリオールの存在下でジアミンとジイソシアネートを反応させて形成したポリウレア分散液を含有するポリオールである。ポリウレア変性ポリオールの変異体は、ポリイソシアネートポリ付加(PIPA)ポリオールであり、イソシアネートとアルカノールアミンのその場反応によって形成される。
【0039】
不燃性ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオールが挙げられる。ハロゲン含有ポリオールは、例えば、エピクロルヒドリンまたはトリクロロブチレンオキシドの開環重合により得られるものが挙げられる。
【0040】
ポリウレタン製剤は、発泡剤として機能する1以上のハロゲン化オレフィン化合物をさらに含有してもよい。ハロゲン化オレフィン化合物は、3~4個の炭素原子と少なくとも1個の炭素-炭素二重結合からなる少なくとも1種のハロアルケン(例えば、フルオロアルケンまたはクロロフルオロアルケン)から構成されている。好適な化合物としては、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン(例えば、テトラフルオロプロペン(1234))、ペンタフルオロプロペン(例えば、ペンタフルオロプロペン(1225))、クロロトリフルオロプロペン(例えば、クロロトリフルオロプロペン(1233))、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、クロロテトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロブテン(例えば、ヘキサフルオロブテン(1336))などのハイドロハロオレフィン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、テトラフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、および/またはクロロトリフルオロプロペン化合物は、不飽和炭素鎖の末端炭素原子に連結したフッ素または塩素置換基を1つ以上有さない(例えば、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze);1
,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225yc)、(Z)-1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)、1,1,1,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(1336mzzm)またはその組み合わせ)。
【0041】
単独で、または前記ハロゲン化オレフィン化合物と組み合わせで使用できる他の発泡剤としては、空気、窒素、二酸化炭素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、アルカン、アルケン、モノカルボン酸塩、ケトン、エーテルまたはこれらの組み合わせが挙げられる。好適なHFCとしては、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルカンおよびアルケンとしては、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、1-ペンテンまたはそれらの組み合わせが挙げられる。好適なモノカルボン酸塩としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチルまたはそれらの組み合わせが挙げられる。適切なケトンおよびエーテルとしては、アセトン、ジメチルエーテル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
ポリウレタン製剤は、任意に、1以上の補助成分をさらに含んでもよい。補助成分の例としては、気泡安定剤、界面活性剤、鎖伸長剤、顔料、充填剤、難燃剤、熱膨張性微小球、水、増粘剤、抑煙剤、強化剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、染料、離型剤、抗真菌剤、殺生剤またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
気泡安定化剤としては、例えば、シリコン系界面活性剤、アニオン性界面活性剤などが挙げられる。好適なシリコン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキルシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール変性ジメチルポリシロキサン、アルキレングリコール変性ジメチルポリシロキサンまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
好適な界面活性剤(または表面活性剤)としては、乳化剤および発泡安定剤、例えば、当該技術分野で公知のシリコーン界面活性剤、例えば、ポリシロキサン、ならびに脂肪酸の種々のアミン塩、例えば、ジエチルアミンオレートまたはジエタノールアミンステアレート、ならびにリシノール酸のナトリウム塩が挙げられる。
【0045】
鎖伸長剤としては、例えば、グリコール類、アミン類、ジオール類、水などの水酸基またはアミノ官能基を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。鎖伸長剤の非限定的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、エトキシル化ハイドロキノン、1,4-シクロヘキサンジオール、N-メチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、4-アミノシクロヘキサノール、1,2-ジアミノエタンまたはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0046】
顔料は、製造時のポリウレタン材料の色分け、製品グレードの識別、黄変を目立たなくさせるために使用することができる。顔料は、任意の適切な有機顔料または無機顔料を含みうる。有機顔料または着色剤としては、例えば、アゾ/ジアゾ染料、フタロシアニン、
ジオキサジンまたはカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されない。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄または酸化クロムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
充填剤は、ポリウレタン発泡体または材料の密度および耐荷重性を高めるために使用しうる。好適な充填剤としては、硫酸バリウム、カーボンブラック、炭酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
難燃剤を使用することで、燃焼性を低減することができる。難燃剤としては、例えば、塩素化リン酸エステル、塩素化パラフィン、メラミンパウダーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
熱膨張性微小球としては、(シクロ)脂肪族炭化水素を含有するものが挙げられる。このような微小球は、一般に、平均直径が通常10~15ミクロンの小さな球状粒子からなる乾燥した未膨張または部分的に未膨張の微小球である。小球は、(例えば、アクリロニトリルやPVDCからなる)耐ガスポリマーシェルで形成され、(シクロ)脂肪族炭化水素の微小滴、例えば液体イソブタンを封入している。これらの微小球を、熱可塑性シェルを軟化させ、そこに封入された(シクロ)脂肪族炭化水素を揮発させるのに十分な高温レベル(例えば、150℃~200℃)で加熱すると、結果として生じるガスがシェルを拡張させ、微小球の体積を増加させる。膨張すると、微小球の直径は元の直径の3.5~4倍になり、その結果、膨張した体積は膨張していない状態での初期体積の約50~60倍となる。例えば、スウェーデンのAKZO Nobel Industries社から販売されているEXPANCEL(登録商標)-DU微小球が挙げられる。
【0050】
本開示のポリウレタン製剤からポリウレタン材料を製造する方法は、当業者にはよく知られており、例えば、米国特許No.第5,420,170号、第5,648,447号、第6,107,359号、第6,552,100号、第6,737,471号および第6,790,872号に記載されており、これらの内容は参照によりここに組み込まれる。ポリウレタン材料としては、硬質発泡体、軟質発泡体、半硬質発泡体、一体型発泡体、マイクロセルラーエラストマー、注型エラストマー発泡体、ポリウレタンイソシアヌレート発泡体、反応射出成形ポリマー、構造反応射出成形ポリマーなど種々のものが可能である。
【0051】
一実施形態によれば、本開示のポリウレタン材料は、15kPa以下、好ましくは1~14kPa、特に4~14kPaのDIN 53 421/DIN EN ISO 604による10%圧縮時の圧縮応力又は圧縮強度を有する軟質ポリウレタン発泡体である。
【0052】
別の実施形態によれば、本開示のポリウレタン材料は、DIN 53 421/DIN
EN ISO 604による10%圧縮時の圧縮応力が15kPa超~80kPa未満である半硬質ポリウレタン発泡体である。DIN ISO 4590によれば、本開示の半硬質ポリウレタン発泡体および軟質ポリウレタン発泡体は、好ましくは85%より大きい、特に好ましくは90%より大きい解放気泡を有していてもよい。
【0053】
別の実施形態によれば、本開示のポリウレタン材料は、10%圧縮時の圧縮応力が、80kPa以上、好ましくは120kPa以上、特に好ましくは150kPa以上の硬質ポリウレタン発泡体である。さらに、DIN ISO 4590の硬質ポリウレタン発泡体は、80%より大きい、特に好ましくは90%より大きい非解放気泡を有する。
【0054】
別の実施形態において、ポリウレタン材料は、DIN 53 577に従って厚さの50%の短時間変形後、10分後に元の厚さの2%以上の永久変形を有さないDIN 77
26に従ったポリウレタン発泡体を意味すると理解されるエラストマーポリウレタン発泡体である。これらは、硬質ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体または軟質発泡体のいずれであってもよい。
【0055】
さらなる実施形態において、本開示のポリウレタン材料は、成形プロセスにより、コアよりも高い密度を有する縁部領域を有するDIN 7726による一体型ポリウレタン発泡体である。コアおよび縁部領域を平均した総嵩密度は、好ましくは100gL以上である。本開示の意味での一体型ポリウレタン発泡体は、硬質ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体または軟質ポリウレタン発泡体であってもよい。
【0056】
一実施形態において、本開示のポリウレタン材料は、平均密度20g/L~850g/Lのポリウレタン発泡体、好ましくはポリウレタン硬質発泡体、柔軟ポリウレタン発泡体または硬質ポリウレタン発泡体、特に好ましくはエラストマー軟質ポリウレタン発泡体、硬質ポリウレタン発泡体またはエラストマー一体型ポリウレタン発泡体である。
【0057】
ある特定の実施形態において、本発明のポリウレタン材料は、平均密度20g/L~850g/Lのポリウレタン発泡体、好ましくは半硬質ポリウレタン発泡体または軟質ポリウレタン発泡体、特に好ましくはエラストマー柔軟ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体またはエラストマー一体型ポリウレタン発泡体である。
【0058】
エラストマー一体型ポリウレタン発泡体は、好ましくは、コアと縁部領域の平均密度が150g/L~500g/Lである。軟質ポリウレタン発泡体は、好ましくは、10g/L~100g/Lの平均密度を有する。半硬質ポリウレタン発泡体は、好ましくは、70g/L~150g/Lの平均密度を有する。
【0059】
さらなる実施形態において、本開示のポリウレタン発泡体は、好ましくは850g/L以上、好ましくは900g/L~1400g/L、特に好ましくは1000g/L~1300g/Lの密度を有する固体ポリウレタンである。固体ポリウレタンは、本質的に発泡剤を添加することなく得られる。製造上の理由でポリオール中に含まれる少量の発泡剤、例えば水などは発泡剤とはみなされません。小型ポリウレタン発泡体を製造するためのポリウレタン製剤は、好ましくは0.2重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、とりわけ0.05重量%未満の水を含有する。
【0060】
スルホン酸エステルを含む15~150kg/mの密度を有する一般的な軟質ポリウレタン発泡体製剤(例えば、自動車の座席)の非限定的な例では、重量部(pbw)で以下の成分を含んでいてもよい。
【表1】
【0061】
スルホン酸エステルを含む15~70kg/mの密度を有する一般的な硬質ポリウレタン発泡体製剤の非限定的な例では、重量部(pbw)で以下の成分を含んでもよい。
【表2】
【0062】
イソシアネート官能基含有化合物の量は限定されないが、一般に当業者に公知の範囲で使用できる。上記例示的な範囲は、イソシアネートの当量数を活性水素の当量数の合計で割って100を掛けたものとして定義されるイソシアネート指数を参照することによって示される。
【0063】
したがって、さらに別の実施形態において、本開示は、組み込み可能なアミン触媒の存在下で、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、本開示のスルホン酸エステルと、任意の補助成分とを(任意の順序で)配合および/または反応させる工程を含むポリウレタン材料の製造方法を提供する。
【0064】
実施形態によれば、スルホン酸エステル化合物は、活性水素含有化合物、イソシアネート反応性アミン触媒および任意の補助成分と配合および反応させる前に、イソシアネート官能基含有化合物と予め混合される。
【0065】
ある特定の実施形態において、ポリウレタン材料は、反応性アミン触媒およびスルホン酸エステルの存在下で、少なくとも1つのポリオールおよび少なくとも1つのポリイソシアネートを一緒にして反応混合物を生成し、前記反応混合物をポリオールがポリイソシアネートと反応するのに十分な条件にさらすことによって調製した、硬質、半硬質または軟質発泡体である。ポリオール、ポリイソシアネート、反応性触媒およびスルホン酸エステルは、これらを混合して反応混合物を生成する前に加熱してもよい。他の実施形態では、ポリオール、ポリイソシアネート、3級アミン基を含むイソシアネート反応性アミン触媒(「組み込み可能な」アミン触媒とも呼ばれる)およびスルホン酸エステルは、周囲温度(例えば、約15℃~40℃)で混合し、反応混合物を加熱してもよいが、いくつかの実施形態では、加熱は必須ではない。ポリウレタン発泡体は、垂直方向の制約が最小限または全くない状態で発泡体が自由に上昇するフリーライズ(スラブストック)プロセスで製造することができる。あるいは、反応混合物を密閉された金型内に導入し、前記金型内で発泡させることにより、成形発泡体を製造してもよい。特定のポリオールとポリイソシアネートは、得られる発泡体の所望の特徴を考慮して選択される。また、特定の種類の発泡体を製造するために、上記のようなポリウレタン発泡体の製造に有用な他の補助成分を含んでもよい。
【0066】
製造されたポリウレタン材料は、船舶、航空機、トラック、自動車またはバスなどの輸送手段、特に好ましくは自動車またはバス、特に自動車などの車両内外装部品に使用することができるが、これらに限定されず、様々な用途に使用することができる。以下、自動車やバスの内装を自動車内装部品と呼ぶ。軟質ポリウレタン発泡体はシートクッションとして、半硬質ポリウレタン発泡体はドア側部材や計器盤の背面発泡として、一体型ポリウレタン発泡体はハンドルやシフトボタンとして使用することができる。ポリウレタン発泡体は、ベッドライナー、ダッシュボード、ドアパネルなどにも使用されうる。他の実施形
態において、ポリウレタン発泡体は、プレコート;カーペット用下地材料;建築用複合材料;断熱材;スプレー発泡体断熱材;衝突混合スプレーガンの使用を必要とする用途;ウレタン/尿素ハイブリッドエラストマー;一体型スキン発泡体;硬質スプレー発泡体;硬質現場注入発泡体(pour‐in place foams);被膜;接着剤;シーラント;フィラメント巻き;および他のポリウレタン複合体、発泡体、エラストマー、樹脂および反応射出成型(RIM)に用いることができる。
【0067】
次に、以下の非限定的な例を参照して、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0068】
実施例1~4
ポリウレタン発泡体は、以下の表1記載の成分の配合により得られた。
【表3】

(*)製剤中のスルホン酸エステル化合物のモル数に対する、イソシアネート反応性アミン触媒中の第3級アミン基のモル数の比
OHvはOH価、Fnは官能基数を示す。
【0069】
以下の手順でポリウレタン発泡体を作製した。
まず、ポリオール混合物(官能基数が2~6のポリエーテルポリオール、発泡剤としての水、シリコーン界面活性剤、架橋剤および触媒を含む)を、800mlのカートンカップ中で低速(500rpm)で30秒間、本開示のスルホン酸エステルと予備混合した。
その後、MDIを添加し、得られたポリウレタン製剤を高速(2000rpm)で5秒間混合した。その後、予熱(50℃)した金型に前記ポリウレタン製剤を流し込んだ。金型の内寸は25×25×10cmである。密度約55g/Lのポリウレタン発泡体を作成することを目的とし、5分後、ポリウレタン発泡体を取り出し、重量を測定し、手動で粉砕した後、通常の条件(23℃±2℃、相対湿度50±5%)で少なくとも72時間硬化させた。
72時間後、発泡体を平行な上面と下面、および本質的に垂直な側面を持つ断片に切断した後、以下のように湿度老化圧縮永久歪みの下さらに試験した。試験片の寸法は、長さ(50±1)mm、幅(50±1)mm、厚さ(25±1)mmであった。試料は加速湿度老化試験(ISO 2440)にかけた。この試験は、オートクレーブで(120±2)℃、相対湿度100%の条件で5時間行った。老化試験後、試料をオーブンに入れ、(70±2)°Cで3時間乾燥させた。乾燥後,通常条件下(23℃±2℃、相対湿度50±5%)で3時間以上再調整を行った。圧縮永久歪みにかける前に、この加速老化試験を試料に対して3回行った。
その後,試料を(23℃±2℃、相対湿度50±5%)で調整し、ISO 1923に従って初期厚み
を測定した。試験片を圧縮装置のプレート間に挟み,厚さの(50±4)%圧縮し,その状態を維持した。その後,15分以内に圧縮した試料を(70±1)℃のオーブンに入れ,(22±0.2)時間加熱した。通常の条件下で、22時間後に装置をオーブンから取り出し、1分以内に試料を取り出し、熱伝導率の低い表面に置いた。通常条件下で(30±5)分間、試料片を回復させ、厚み
を再測定した。圧縮永久歪みは以下のように計算した。
【数1】
その結果を以下の表2に記載の通りである。
【表4】
【0070】
比較の老化防止用添加剤は、劣化後、圧縮永久歪みにより30.9%の高さ減少を示した。本発明の実施例1、3、4および5のポリウレタン発泡体は、乾燥圧縮永久歪みおよび/または乾湿圧縮永久歪みのいずれかがさらに改善されたことを示した。
さらに、上記ポリウレタン発泡体について、排出量の分析をおこなった。この工程はVDA-278方式で行った。Verbund Deutsche Automobil(VDA)-278試験法は、プラスチック(ポリウレタン発泡体)の昇温脱離解析で、ポリウレタン発泡体の一部を90℃で30分間暴露した後、同じ発泡体を120℃に加熱して60分間その温度を維持するものである。揮発性有機成分(VOC)をすべて回収し、GC-MSで分析した。その結果を表2に示す。本発明の実施例は、低排出量と良好な物性の両方を示した。
【0071】
上記は本開示の様々な実施形態を対象とするが、本開示の他の実施形態、それの基本的範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は以下の特許請求の範囲によって判断される。
【0072】
実施例6~7および比較例8~10
ポリウレタン発泡体は、以下の表3記載の成分の配合により得られた。
【表5】

(*)製剤中のスルホン酸エステル化合物のモル数に対する、イソシアネート反応性アミン触媒中の第3級アミン基のモル数の比
【0073】
実施例1~5の手順に従い、表3のポリウレタン発泡体を調製した。
本発明の実施例6および7は、低排出量と良好な物性の両方を示した。比較例8、9お
よび10の排出量は良好ではなかった。
【0074】
実施例11~12および比較例13のポリウレタン発泡体は、以下の表4記載の成分の配合により得られた。
【表6】

(*)製剤中のスルホン酸エステル化合物のモル数に対する、イソシアネート反応性アミン触媒中の第3級アミン基のモル数の比
【0075】
実施例1~5の手順に従い、表4のポリウレタン発泡体を調製した。
本発明の実施例11および12は、低排出量と良好な物性の両方を示した。比較例13の排出量は良好ではなかった。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ポリウレタン発泡体を含むポリウレタン材料の機械的性質の改善に使用するための添加剤に関する。特に、本開示は、熱、高湿度または熱高湿度条件下でのポリウレタン発泡体の機械的性質の劣化を大幅に低減し、揮発性化合物の排出を最小限に抑えるための添加物としての有機硫黄系化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡体は広く知られており、自動車産業など様々な用途で使用されている。自動車用途では、例えば、スポイラー、ルーフエレメント、スプリングエレメントなどの自動車外装材や、ルーフクラッディング、ドアライニング、ケーブル絶縁、ステアリングホイール、ボタン、シートパッドなどの自動車内装材に使用されている。
【0003】
これらのポリウレタン発泡体には優れた機械的性質が求められ、その性質は、自動車の寿命まで変化しないことが理想的である。例えば、ポリウレタン発泡体は、クッション性、ノイズ減衰性、触感特性を維持しつつ、事故時の機械的衝撃を減衰させるなど、安全性に関わる役割を果たすことが求められる。
【0004】
自動車内は、例えば、-10℃~60℃の大きな温度変化があり、それにより、ポリウレタン発泡体の経年劣化や機械的劣化を促進させる。さらに、空気中の相対湿度が100%になることもあり、それがエージングをさらに助長させる。そのため、自動車内装に使用されるポリウレタン発泡体についても、揮発性化合物の排出をできるだけ少なくすることが必要である。排出を削減するために、ポリウレタン製剤業者によりイソシアネート反応性触媒溶液が開発されている。しかし、これらの触媒は、熱または湿熱保存条件下でポリウレタン発泡体の機械特性をさらに悪化させる原因となりえる。
【0005】
したがって、熱または高湿熱条件下で、硬質、半硬質または軟質ポリウレタン発泡体の機械的性質の劣化を(現行の添加剤と比較して)低減し、さらにそのようなポリウレタン
発泡体からの揮発性化合物の排出を最小化にできる新しい添加剤の開発が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、イソシアネート反応性アミン触媒と、スルホン酸エステルとを含むポリウレタン製剤であって、熱または湿熱条件下で機械的性質が向上し、揮発性化合物の排出が少ないポリウレタン発泡体材料を実現するために、前記製剤中のスルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対する前記イソシアネート反応性アミン触媒(d)中に存在する第3級アミン基のモル数の比が、2以上、好ましくは2~5の範囲、より好ましくは2~4の範囲、最も好ましくは2~3の範囲である、前記ポリウレタン製剤を提供する。
【0007】
さらに別の実施形態では、反応性アミン触媒およびスルホン酸エステルの存在下で、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、任意の補助成分とを配合するおよび/または反応させることを含む、ポリウレタン材料の形成方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の用語は、それぞれ次の意味で使用される。
【0009】
用語「を含む(comprising)」およびその派生語は、本明細書に開示されているか否かに関わらず、追加成分、ステップまたまたは手順の存在を除外することを意図するものではない。一切の懸念を避けるため、「を含む(comprising)」という用語を使用して本明細書に記載されているすべての組成物は、特に断りのない限り、任意の追加添加剤または化合物を含んでもよい。一方、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、実施可能性に必須でないものを除き、後述の範囲から、構成要素、ステップまたは手順を除外し、「~からなる(consisting of)」という用語が使用される場合、具体的に定義または記載されていない構成要素、ステップまたは手順を除外する。特に断りのない限り、「または(or)」という用語は、列挙された部材のそれぞれ、またはその任意の組み合わせを意味する。
【0010】
本明細書における、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を示すために使用される。例として、「スルホン酸エステル」は、1または2以上のスルホン酸エステルを意味する。「一実施形態において(in one embodiment)」、「一実施形態によると(according to one embodiment)」などの表現は、一般的に、そのフレーズに続く特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、本開示の複数の実施形態に含まれる場合もあり得る。このような表現は必ずしも同じ態様を示すものではないということに留意すべきである。明細書中で、構成成分や機能が「may」、「can」、「could」、「might」で既定されている場合、その特定の構成成分や機能を含んでいる、または有していることが必須ではない。
【0011】
ここで使用する用語「約(about)」は、値または範囲における変動の程度を許容することができ、例えば、既定した値または範囲の規定した限界値の10%以内、5%以内または1%以内であってもよい。
【0012】
範囲で規定する数値は、その範囲の限界値として明示された数値だけでなく、その範囲内に包含される個々の数値や部分範囲のすべてが明示されていると柔軟に解釈されるべきである。例えば、1~6のような範囲は、1~3、2~4、3~6などの部分範囲と、例えば、1、2、3、4、5、6など、その範囲の個々の数値を含むと考えるべきである。
これは、その範囲の広さに関係なく適用される。
【0013】
「好ましい(preferred)」および「好ましくは(preferably)」という用語は、特定の状況下で特定の利点を与えうる実施形態を示す。しかし、他の実施形態も、同一または他の状況下で、好ましい場合がある。1以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0014】
置換基を従来の化学式で示し、左から右に記述した場合、右から左に記述した場合と化学的に同一の置換基を等しく包含する、例えば、-CHO-は-OCH-と等価である。
【0015】
用語「アルキル基」は、直鎖および分岐鎖の飽和または不飽和アルキル基を包含する。このようなアルキル基は、特に指定がない限り、炭素数が最大で20になりうる。いくつかの実施形態では、アルキル基は、低級アルキル基であってもよい。用語「低級」は、炭素数1~5のアルキル基を意味する。「低級アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
「任意の(optional)」または「任意に(optionally)」という用語は、その後に説明する事象または状況が発生してもしなくてもよく、その説明には当該事象または状況が発生する場合と発生しない場合が含まれることを意味する。
【0017】
本明細書で使用する「ポリウレタン」という用語は、純粋なポリウレタン、ポリウレタンポリ尿素および純粋なポリ尿素を包含するものである。
【0018】
ここで使用する「ポリウレタン材料」という用語は、硬質発泡体、軟質発泡体、半硬質発泡体、一体型発泡体、マイクロセルラーエラストマー、注型エラストマー発泡体、ポリウレタン-イソシアヌレート発泡体、反応射出成形ポリマー、構造反応射出成形ポリマーなどを包含する。
【0019】
本開示は、一般に、スルホン酸エステルを対象とし、さらに、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、少なくとも1つの第3級アミン基を含む反応性アミン触媒とを含みうるポリウレタン製剤におけるそれらの使用を対象とする。「反応性」触媒とは、イソシアネートに対する化学反応性基(例えば、-OH、-NH、-NH)を有する触媒を意味し、「イソシアネート反応性」とも言う。このような特徴を持つ触媒は、発泡体製造工程の最後に、発泡体の高分子構造の一部となる。一方、「非反応性」触媒は、イソシアネートに対する化学反応性基を有していないため、発泡体製造工程の最後には、遊離化学種として残存する。
【0020】
本開示はさらに、ポリウレタン材料を対象とし、詳細には、本明細書中で記載するスルホン酸エステルと、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、少なくとも1つの3級アミン基を有する反応性アミン触媒とを含むポリウレタン製剤から生成される、ポリウレタン発泡体(例えば、硬質、半硬質または軟質ポリウレタン発泡体を含む)を対象とする。
【0021】
驚くべきことに、本開示のスルホン酸エステルを反応性触媒に配合することにより、熱または湿熱条件下で、機械的性質が向上し、揮発性化合物の排出が最小限である、ポリウレタン材料を得られることが、発見された。目的は、スルホン酸エステルなしで製造された基準発泡体と同等の排出を維持しながら、湿度の高いエージング条件下での発泡体の劣
化を低減および/または回避することによって発泡体の機械的性質を改善することである。その目的は、本発明によって達成され、ポリウレタン発泡体を製造するための反応性製剤中に、スルホン酸エステル化合物から選ばれた特定の添加剤とイソシアネート反応性アミン触媒化合物を特定の比率で配合することにより達成される。
【0022】
一実施形態によれば、スルホン酸エステルは、
(i)式(1)を有する化合物、
【化1】
式(1)中、Rは1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(ii)式(2)を有する化合物、
【化2】
式(2)中、Xは水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキルまたは1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(iii)式(3)を有する化合物、
【化3】
式(3)中、Xは水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アル
キル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、nは1~8の整数であり、RはHまたは1以上の水酸基で置換されてもよいC-Cアルキル基である;
(iv)式(4)を有する化合物、
【化4】
式(4)中、nは、1~5の整数である;
(v)式(5)を有する化合物、
【化5】
式(5)中、nはから3の整数であり、Xは水素、または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基;および
(vi)それらの混合物、から選択される。
【0023】
一実施形態によれば、RおよびRで示されるアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピルなどの低級アルキル基を含むが、これらに限定されるものではない。別の実施形態では、Xはそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、プロピルまたはブチルを含みうるが、これらに限定されず、他の実施形態ではパラ位に配置される。
【0024】
スルホン酸エステルとして使用できる特定の化合物としては、p-トルエンスルホン酸メチル、o-トルエンスルホン酸シクロヘキシル、ベンゼンスルホン酸イソプロピル、クロロベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ブチルベンゼンスルホン酸、エチレンビス(ベンゼンスルホン酸)、エチレンジ(p-トルエンスルホン酸)およびこれらの変異体が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、ベンゼンスルホン酸メチルから選択されるスルホン酸エステル化合物の変異体としては、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル4-メチルベンゼンスルホン酸(下記構造2a参照)などの化合物が挙げられる。
【化6】
【0025】
一実施形態において、ポリウレタン製剤は、ポリウレタン製剤の総重量を基準として、少なくとも約0.1重量%のスルホン酸エステルを含んでもよい。他の実施形態において、ポリウレタン製剤は、ポリウレタン製剤の総重量を基準として、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.5重量%または少なくとも約0.7重量%のスルホン酸エステルを含んでもよい。さらなる実施形態において、ポリウレタン製剤は、ポリウレタン製剤の総重量を基準として、約3重量%以下のスルホン酸エステルを含んでもよい。他の実施形態において、ポリウレタン製剤は、ポリウレタン製剤の総重量を基準として、約2.5重量%以下、約2重量%以下または約1.5重量%以下のスルホン酸エステルを含んでもよい。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、上記スルホン酸エステルは、製剤中のスルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対するイソシアネート反応性アミン触媒(d)に存在する第3級アミン基のモル数の比が2以上、好ましくは2~5の範囲、より好ましくは2~4の範囲、最も好ましくは2~3の範囲になるようにイソシアネート反応性アミン触媒に配合される。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、イソシアネート反応性アミン触媒は、一般式(6)を有する少なくとも1つの3級アミン基を含有する。
【化7】
式(6)中、RとRは独立してC-Cアルキル基であるか、RとRが一緒になってOまたはNヘテロ原子を含む環状5員または6員環、または7員の二環式構造を形成し、mは1または2の整数で、Yは-OH、-NH、N(CH)CHCHOH、NHCHCHCHN(CHN(CH)CHCHCHNH、N(CHCH(CH)OH),N(CHCH(CH)OH)CHCHCHN(CHOCHCHOH、OCHCHNH、OCHCHCHNH、OCHCHN(CH)CHCHOHおよびOCHCHN(CH)CHCHNHから選択される。好ましい反応性触媒としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化8】
好ましい環式、二環式の組み込み可能な触媒としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化9】
さらに別の実施形態において、反応性アミン触媒は、下記式を有する化合物である。
【化10】
【0028】
さらなる実施形態によれば、上記スルホン酸エステルは、非反応性触媒と組み合わせてもよい。代表的な非反応性触媒としては、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(JEFFCAT(登録商標)ZF-20触媒)、ビス-(N,N-ジメチルアミノエトキシ)メチルアミン(JEFFCAT(登録商標)LE-30触媒)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(JEFFCAT(登録商標)DMCHA触媒)、ベンジルジメチルアミン(JEFFCAT(登録商標)BDMA触媒)、ペンタメチルジエチレントリアミン(JEFFCAT(登録商標)PMDETA触媒)、N,N,N′,N″,N″-ペンタメチルジプロピレントリアミン(JEFFCAT(登録商標)ZR-40触媒)、トリエチレンジアミン(JEFFCAT(登録商標)TEDA触媒)、N-エチルモルホリン(JEFFCAT(登録商標)NEM触媒)、N-メチルモルホリン(JEFFCAT(登録商標)NMM触媒)、N,N´ジメチルピペリジン(JEFFCAT(登録商標)DMP触媒)、2,2′-ジモルフォリノジエチルエーテル(JEFFCAT(登録商標)DMDEE触媒)、1,3,5-トリス(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン(JEFFCAT(登録商標)TR-90触媒)が挙げられるが、これらに限定されない。JEFFCATはハンツマン株式会社またはその関連会社の登録商標である。本開示において使用され得る他の非反応性触媒としては、Herringtonらによる「Dow Polyurethanes Flexible Foams」の添付書類D、ページD.1~D.23(1997)に記載のものが挙げられ、この文献を参照により本明細書に組み込む。その他の例としては、「JEFFCAT(登録商標)Amine Catalysts for the Polyurethane Industry」JCT-0910版(参照により本明細書に組み込む)に記載されているものが挙げられる。
【0029】
別の実施形態によれば、ポリウレタン製剤は、非アミン触媒を含んでもよい。非アミン触媒は、イソシアネート基と活性水素含有化合物または水との反応に触媒活性を有する化合物であって、上記イソシアネート反応性アミン触媒の説明に該当しない化合物である。このような追加の非アミン触媒の例としては、例えば、
トリアルキルホスフィン、ジアルキルベンジルホスフィンなどの3級ホスフィン類;
Be、Mg、Zn、Cd、Pd、Ti、Zr、Sn、As、Bi、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Niなどの金属とアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどから得られる各種金属のキレート化合物;
酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの金属カルボン酸塩;
塩化第二鉄、塩化第二スズ、塩化第一スズ、三塩化アンチモン、硝酸ビスマス、塩化ビスマスなどの強酸の酸性金属塩;
アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、フェノキシドなどの強塩基;
Ti(OR、Sn(OR、Al(OR(Rはアルキルまたはアリール)などの各種金属のアルコレートおよびフェノレート、ならびにこれらのアルコレートとカルボン酸、ベータジケトンおよび2-(N,N-ジアルキルアミノ)アルコールの
反応生成物;
アルカリ土類金属、Bi、Pb、SnまたはAlのカルボン酸塩;および
4価の錫化合物、3価または5価のビスマス、アンチモンまたはヒ素化合物、が挙げられる。
【0030】
反応性アミン触媒、任意の非反応性触媒、非アミン触媒は、硬質、半硬質または軟質ポリウレタン発泡体または他のポリウレタン材料を製造するためのイソシアネート官能基含有化合物と活性水素含有化合物との反応を触媒するために触媒有効量で使用することができる。上記触媒(すなわち、アミン触媒、および任意に、非反応性および/または非アミン触媒)の触媒有効量は、活性水素含有化合物100部あたり約0.01~15部、いくつかの実施形態では活性水素含有化合物100部あたり約0.05~12.5部、さらなる実施形態では活性水素含有化合物100部あたり約0.1~7.5部、さらなる実施形態では活性水素含有化合物100部あたり約0.5~5の範囲になりうる。特定の実施形態において、触媒の量は、活性水素含有化合物100部当たり約0.1~3部の範囲になりうる。
【0031】
一実施形態において、イソシアネート官能基含有化合物は、ポリイソシアネートおよび/またはイソシアネート末端プレポリマーである。
【0032】
ポリイソシアネートとしては、一般式Q(NCO)で表されるものが挙げられ、aは2~5、例えば、2~3の数字であり、Qは、炭素数2~18の脂肪族炭化水素基、炭素数5~10の脂環式炭化水素基、炭素数8~13のアリール脂肪族炭化水素基または炭素数6~15の芳香族炭化水素基である。
【0033】
ポリイソシアネートは、例えば、エチレンジイソシアネート;1,4-テトラメチレンジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート;1,12-ドデカンジイソシアネート;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネートおよびこれら異性体の混合物;イソホロンジイソシアネート;2,4-ヘキサヒドロトルエン、2,6-ヘキサヒドロトルエンおよびこれら異性体の混合物;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水素化MDIまたはHMDI);1,3-フェニレンジイソシアネートおよび1,4-フェニレンジイソシアネート;2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネートおよびこれら異性体(TDI)の混合物;ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネートおよび/またはジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI);ナフシレン-1,5-ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’、4’’-トリイソシアネート;アニリンをホルムアルデヒドで縮合した後、ホスゲン化して得られるポリフェニル-ポリメチレン-ポリイソシアネート(ポリメリックMDI);ノルボルナンジイソシアネート、m-およびp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;過塩素化アリールポリイソシアネート;カルボジイミド基、ウレタン基、アロホネート基、イソシアヌレート基、ウレア基またはビウレット基を有する変性多官能イソシアネート;テロメリ化反応により得られる多官能イソシアネート;エステル基を有する多官能イソシアネート;およびポリメリック脂肪酸基を有する多官能イソシアネートが挙げられる。当業者であれば、前記ポリイソシアネートの混合物を使用することも可能である。
【0034】
ポリウレタン材料の調製には、イソシアネート末端プレポリマーを採用することもできる。イソシアネート末端プレポリマーは、過剰のポリイソシアネートまたはその混合物を、周知のツエレウィテイノフ・テストにより決定される少量の活性水素含有化合物と反応させることにより調製することができる。
【0035】
別の実施形態では、活性水素含有化合物は、ポリオールである。本開示での使用に好適なポリオールとしては、ポリアルキレンエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ならびにリン含有ポリオールまたはハロゲン含有ポリオールなどの不燃性ポリオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。このようなポリオールは、単独で使用してもよく、好適な組み合わせで混合物として使用してもよい。
【0036】
ポリアルキレンエーテルポリオールとしては、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー、ポリ(プロピレンオキシド)ポリマーなどのポリ(アルキレンオキシド)ポリマーや、ジオール、トリオールなどの多価化合物由来の末端水酸基を有する共重合体が挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパンおよび同様の低分子ポリオールが挙げられる。
【0037】
ポリエステルポリオールには、ジカルボン酸と過剰のジオール、例えば、アジピン酸とポリエチレングリコールまたはブタンジオールとの反応、またはラクトンと過剰のジオール、例えば、カプロラクトンとプロピレングリコールとの反応によって製造されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
ポリアルキレンエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールに加えて、ポリマーポリオールもまた、本開示における使用に適している。ポリマーポリオールは、ポリウレタン材料に使用され、変形抵抗を高め、例えば、発泡体や材料の耐荷重性を向上させるために使用される。ポリマーポリオールとしては、例えば、グラフトポリオールまたはポリウレア変性ポリオール(ポリハーンシュトッフ分散物ポリオール(Polyharnstoff Dispersion polyol))が挙げられるが、これらに限定されない。グラフトポリオールは、トリオールにビニルモノマーをグラフト共重合させたものである。好適なビニルモノマーとしては、例えば、スチレンまたはアクリロニトリルが挙げられる。ポリウレア変性ポリオールは、ポリオールの存在下でジアミンとジイソシアネートを反応させて形成したポリウレア分散液を含有するポリオールである。ポリウレア変性ポリオールの変異体は、ポリイソシアネートポリ付加(PIPA)ポリオールであり、イソシアネートとアルカノールアミンのその場反応によって形成される。
【0039】
不燃性ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオールが挙げられる。ハロゲン含有ポリオールは、例えば、エピクロルヒドリンまたはトリクロロブチレンオキシドの開環重合により得られるものが挙げられる。
【0040】
ポリウレタン製剤は、発泡剤として機能する1以上のハロゲン化オレフィン化合物をさらに含有してもよい。ハロゲン化オレフィン化合物は、3~4個の炭素原子と少なくとも1個の炭素-炭素二重結合からなる少なくとも1種のハロアルケン(例えば、フルオロアルケンまたはクロロフルオロアルケン)から構成されている。好適な化合物としては、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン(例えば、テトラフルオロプロペン(1234))、ペンタフルオロプロペン(例えば、ペンタフルオロプロペン(1225))、クロロトリフルオロプロペン(例えば、クロロトリフルオロプロペン(1233))、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、クロロテトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロブテン(例えば、ヘキサフルオロブテン(1336))などのハイドロハロオレフィン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態において、テトラフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、および/またはクロロトリフルオロプロペン化合物は、不飽和炭素鎖の末端炭素原子に連結したフッ素または塩素置換基を1つ以上有さない(例えば、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(1234ze);1
,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225zc)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(1225yc)、(Z)-1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)、1,1,1,4,4-ヘキサフルオロブト-2-エン(1336mzzm)またはその組み合わせ)。
【0041】
単独で、または前記ハロゲン化オレフィン化合物と組み合わせで使用できる他の発泡剤としては、空気、窒素、二酸化炭素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、アルカン、アルケン、モノカルボン酸塩、ケトン、エーテルまたはこれらの組み合わせが挙げられる。好適なHFCとしては、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)またはそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルカンおよびアルケンとしては、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、1-ペンテンまたはそれらの組み合わせが挙げられる。好適なモノカルボン酸塩としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチルまたはそれらの組み合わせが挙げられる。適切なケトンおよびエーテルとしては、アセトン、ジメチルエーテル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
ポリウレタン製剤は、任意に、1以上の補助成分をさらに含んでもよい。補助成分の例としては、気泡安定剤、界面活性剤、鎖伸長剤、顔料、充填剤、難燃剤、熱膨張性微小球、水、増粘剤、抑煙剤、強化剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、染料、離型剤、抗真菌剤、殺生剤またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
気泡安定化剤としては、例えば、シリコン系界面活性剤、アニオン性界面活性剤などが挙げられる。好適なシリコン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキルシロキサン、ポリオキシアルキレンポリオール変性ジメチルポリシロキサン、アルキレングリコール変性ジメチルポリシロキサンまたはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
好適な界面活性剤(または表面活性剤)としては、乳化剤および発泡安定剤、例えば、当該技術分野で公知のシリコーン界面活性剤、例えば、ポリシロキサン、ならびに脂肪酸の種々のアミン塩、例えば、ジエチルアミンオレートまたはジエタノールアミンステアレート、ならびにリシノール酸のナトリウム塩が挙げられる。
【0045】
鎖伸長剤としては、例えば、グリコール類、アミン類、ジオール類、水などの水酸基またはアミノ官能基を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。鎖伸長剤の非限定的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、エトキシル化ハイドロキノン、1,4-シクロヘキサンジオール、N-メチルエタノールアミン、N-メチルイソプロパノールアミン、4-アミノシクロヘキサノール、1,2-ジアミノエタンまたはこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0046】
顔料は、製造時のポリウレタン材料の色分け、製品グレードの識別、黄変を目立たなくさせるために使用することができる。顔料は、任意の適切な有機顔料または無機顔料を含みうる。有機顔料または着色剤としては、例えば、アゾ/ジアゾ染料、フタロシアニン、
ジオキサジンまたはカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されない。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄または酸化クロムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
充填剤は、ポリウレタン発泡体または材料の密度および耐荷重性を高めるために使用しうる。好適な充填剤としては、硫酸バリウム、カーボンブラック、炭酸カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
難燃剤を使用することで、燃焼性を低減することができる。難燃剤としては、例えば、塩素化リン酸エステル、塩素化パラフィン、メラミンパウダーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
熱膨張性微小球としては、(シクロ)脂肪族炭化水素を含有するものが挙げられる。このような微小球は、一般に、平均直径が通常10~15ミクロンの小さな球状粒子からなる乾燥した未膨張または部分的に未膨張の微小球である。小球は、(例えば、アクリロニトリルやPVDCからなる)耐ガスポリマーシェルで形成され、(シクロ)脂肪族炭化水素の微小滴、例えば液体イソブタンを封入している。これらの微小球を、熱可塑性シェルを軟化させ、そこに封入された(シクロ)脂肪族炭化水素を揮発させるのに十分な高温レベル(例えば、150℃~200℃)で加熱すると、結果として生じるガスがシェルを拡張させ、微小球の体積を増加させる。膨張すると、微小球の直径は元の直径の3.5~4倍になり、その結果、膨張した体積は膨張していない状態での初期体積の約50~60倍となる。例えば、スウェーデンのAKZO Nobel Industries社から販売されているEXPANCEL(登録商標)-DU微小球が挙げられる。
【0050】
本開示のポリウレタン製剤からポリウレタン材料を製造する方法は、当業者にはよく知られており、例えば、米国特許No.第5,420,170号、第5,648,447号、第6,107,359号、第6,552,100号、第6,737,471号および第6,790,872号に記載されており、これらの内容は参照によりここに組み込まれる。ポリウレタン材料としては、硬質発泡体、軟質発泡体、半硬質発泡体、一体型発泡体、マイクロセルラーエラストマー、注型エラストマー発泡体、ポリウレタンイソシアヌレート発泡体、反応射出成形ポリマー、構造反応射出成形ポリマーなど種々のものが可能である。
【0051】
一実施形態によれば、本開示のポリウレタン材料は、15kPa以下、好ましくは1~14kPa、特に4~14kPaのDIN 53 421/DIN EN ISO 604による10%圧縮時の圧縮応力又は圧縮強度を有する軟質ポリウレタン発泡体である。
【0052】
別の実施形態によれば、本開示のポリウレタン材料は、DIN 53 421/DIN
EN ISO 604による10%圧縮時の圧縮応力が15kPa超~80kPa未満である半硬質ポリウレタン発泡体である。DIN ISO 4590によれば、本開示の半硬質ポリウレタン発泡体および軟質ポリウレタン発泡体は、好ましくは85%より大きい、特に好ましくは90%より大きい解放気泡を有していてもよい。
【0053】
別の実施形態によれば、本開示のポリウレタン材料は、10%圧縮時の圧縮応力が、80kPa以上、好ましくは120kPa以上、特に好ましくは150kPa以上の硬質ポリウレタン発泡体である。さらに、DIN ISO 4590の硬質ポリウレタン発泡体は、80%より大きい、特に好ましくは90%より大きい非解放気泡を有する。
【0054】
別の実施形態において、ポリウレタン材料は、DIN 53 577に従って厚さの50%の短時間変形後、10分後に元の厚さの2%以上の永久変形を有さないDIN 77
26に従ったポリウレタン発泡体を意味すると理解されるエラストマーポリウレタン発泡体である。これらは、硬質ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体または軟質発泡体のいずれであってもよい。
【0055】
さらなる実施形態において、本開示のポリウレタン材料は、成形プロセスにより、コアよりも高い密度を有する縁部領域を有するDIN 7726による一体型ポリウレタン発泡体である。コアおよび縁部領域を平均した総嵩密度は、好ましくは100gL以上である。本開示の意味での一体型ポリウレタン発泡体は、硬質ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体または軟質ポリウレタン発泡体であってもよい。
【0056】
一実施形態において、本開示のポリウレタン材料は、平均密度20g/L~850g/Lのポリウレタン発泡体、好ましくはポリウレタン硬質発泡体、柔軟ポリウレタン発泡体または硬質ポリウレタン発泡体、特に好ましくはエラストマー軟質ポリウレタン発泡体、硬質ポリウレタン発泡体またはエラストマー一体型ポリウレタン発泡体である。
【0057】
ある特定の実施形態において、本発明のポリウレタン材料は、平均密度20g/L~850g/Lのポリウレタン発泡体、好ましくは半硬質ポリウレタン発泡体または軟質ポリウレタン発泡体、特に好ましくはエラストマー柔軟ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体またはエラストマー一体型ポリウレタン発泡体である。
【0058】
エラストマー一体型ポリウレタン発泡体は、好ましくは、コアと縁部領域の平均密度が150g/L~500g/Lである。軟質ポリウレタン発泡体は、好ましくは、10g/L~100g/Lの平均密度を有する。半硬質ポリウレタン発泡体は、好ましくは、70g/L~150g/Lの平均密度を有する。
【0059】
さらなる実施形態において、本開示のポリウレタン発泡体は、好ましくは850g/L以上、好ましくは900g/L~1400g/L、特に好ましくは1000g/L~1300g/Lの密度を有する固体ポリウレタンである。固体ポリウレタンは、本質的に発泡剤を添加することなく得られる。製造上の理由でポリオール中に含まれる少量の発泡剤、例えば水などは発泡剤とはみなされません。小型ポリウレタン発泡体を製造するためのポリウレタン製剤は、好ましくは0.2重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、とりわけ0.05重量%未満の水を含有する。
【0060】
スルホン酸エステルを含む15~150kg/mの密度を有する一般的な軟質ポリウレタン発泡体製剤(例えば、自動車の座席)の非限定的な例では、重量部(pbw)で以下の成分を含んでいてもよい。
【表1】
【0061】
スルホン酸エステルを含む15~70kg/mの密度を有する一般的な硬質ポリウレ
タン発泡体製剤の非限定的な例では、重量部(pbw)で以下の成分を含んでもよい。
【表2】
【0062】
イソシアネート官能基含有化合物の量は限定されないが、一般に当業者に公知の範囲で使用できる。上記例示的な範囲は、イソシアネートの当量数を活性水素の当量数の合計で割って100を掛けたものとして定義されるイソシアネート指数を参照することによって示される。
【0063】
したがって、さらに別の実施形態において、本開示は、組み込み可能なアミン触媒の存在下で、イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、本開示のスルホン酸エステルと、任意の補助成分とを(任意の順序で)配合および/または反応させる工程を含むポリウレタン材料の製造方法を提供する。
【0064】
実施形態によれば、スルホン酸エステル化合物は、活性水素含有化合物、イソシアネート反応性アミン触媒および任意の補助成分と配合および反応させる前に、イソシアネート官能基含有化合物と予め混合される。
【0065】
ある特定の実施形態において、ポリウレタン材料は、反応性アミン触媒およびスルホン酸エステルの存在下で、少なくとも1つのポリオールおよび少なくとも1つのポリイソシアネートを一緒にして反応混合物を生成し、前記反応混合物をポリオールがポリイソシアネートと反応するのに十分な条件にさらすことによって調製した、硬質、半硬質または軟質発泡体である。ポリオール、ポリイソシアネート、反応性触媒およびスルホン酸エステルは、これらを混合して反応混合物を生成する前に加熱してもよい。他の実施形態では、ポリオール、ポリイソシアネート、3級アミン基を含むイソシアネート反応性アミン触媒(「組み込み可能な」アミン触媒とも呼ばれる)およびスルホン酸エステルは、周囲温度(例えば、約15℃~40℃)で混合し、反応混合物を加熱してもよいが、いくつかの実施形態では、加熱は必須ではない。ポリウレタン発泡体は、垂直方向の制約が最小限または全くない状態で発泡体が自由に上昇するフリーライズ(スラブストック)プロセスで製造することができる。あるいは、反応混合物を密閉された金型内に導入し、前記金型内で発泡させることにより、成形発泡体を製造してもよい。特定のポリオールとポリイソシアネートは、得られる発泡体の所望の特徴を考慮して選択される。また、特定の種類の発泡体を製造するために、上記のようなポリウレタン発泡体の製造に有用な他の補助成分を含んでもよい。
【0066】
製造されたポリウレタン材料は、船舶、航空機、トラック、自動車またはバスなどの輸送手段、特に好ましくは自動車またはバス、特に自動車などの車両内外装部品に使用することができるが、これらに限定されず、様々な用途に使用することができる。以下、自動車やバスの内装を自動車内装部品と呼ぶ。軟質ポリウレタン発泡体はシートクッションとして、半硬質ポリウレタン発泡体はドア側部材や計器盤の背面発泡として、一体型ポリウ
レタン発泡体はハンドルやシフトボタンとして使用することができる。ポリウレタン発泡体は、ベッドライナー、ダッシュボード、ドアパネルなどにも使用されうる。他の実施形態において、ポリウレタン発泡体は、プレコート;カーペット用下地材料;建築用複合材料;断熱材;スプレー発泡体断熱材;衝突混合スプレーガンの使用を必要とする用途;ウレタン/尿素ハイブリッドエラストマー;一体型スキン発泡体;硬質スプレー発泡体;硬質現場注入発泡体(pour-in place foams);被膜;接着剤;シーラント;フィラメント巻き;および他のポリウレタン複合体、発泡体、エラストマー、樹脂および反応射出成型(RIM)に用いることができる。
【0067】
次に、以下の非限定的な例を参照して、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0068】
実施例1~4
ポリウレタン発泡体は、以下の表1記載の成分の配合により得られた。
【表3】

(*)製剤中のスルホン酸エステル化合物のモル数に対する、イソシアネート反応性アミン触媒中の第3級アミン基のモル数の比
OHvはOH価、Fnは官能基数を示す。
【0069】
以下の手順でポリウレタン発泡体を作製した。
まず、ポリオール混合物(官能基数が2~6のポリエーテルポリオール、発泡剤としての水、シリコーン界面活性剤、架橋剤および触媒を含む)を、800mlのカートンカップ中で低速(500rpm)で30秒間、本開示のスルホン酸エステルと予備混合した。
その後、MDIを添加し、得られたポリウレタン製剤を高速(2000rpm)で5秒間混合した。その後、予熱(50℃)した金型に前記ポリウレタン製剤を流し込んだ。金型の内寸は25×25×10cmである。密度約55g/Lのポリウレタン発泡体を作成することを目的とし、5分後、ポリウレタン発泡体を取り出し、重量を測定し、手動で粉砕した後、通常の条件(23℃±2℃、相対湿度50±5%)で少なくとも72時間硬化させた。
72時間後、発泡体を平行な上面と下面、および本質的に垂直な側面を持つ断片に切断した後、以下のように湿度老化圧縮永久歪みの下さらに試験した。試験片の寸法は、長さ(50±1)mm、幅(50±1)mm、厚さ(25±1)mmであった。試料は加速湿度老化試験(ISO 2440)にかけた。この試験は、オートクレーブで(120±2)℃、相対湿度100%の条件で5時間行った。老化試験後、試料をオーブンに入れ、(70±2)°Cで3時間乾燥させた。乾燥後,通常条件下(23℃±2℃、相対湿度50±5%)で3時間以上再調整を行った。圧縮永久歪みにかける前に、この加速老化試験を試料に対して3回行った。
その後,試料を(23℃±2℃、相対湿度50±5%)で調整し、ISO 1923に従って初期厚み
を測定した。試験片を圧縮装置のプレート間に挟み,厚さの(50±4)%圧縮し,その状態を維持した。その後,15分以内に圧縮した試料を(70±1)℃のオーブンに入れ,(22±0.2)時間加熱した。通常の条件下で、22時間後に装置をオーブンから取り出し、1分以内に試料を取り出し、熱伝導率の低い表面に置いた。通常条件下で(30±5)分間、試料片を回復させ、厚み
を再測定した。圧縮永久歪みは以下のように計算した。
【数1】
その結果を以下の表2に記載の通りである。
【表4】
【0070】
比較の老化防止用添加剤は、劣化後、圧縮永久歪みにより30.9%の高さ減少を示した。本発明の実施例1、3、4および5のポリウレタン発泡体は、乾燥圧縮永久歪みおよび/または乾湿圧縮永久歪みのいずれかがさらに改善されたことを示した。
さらに、上記ポリウレタン発泡体について、排出量の分析をおこなった。この工程はVDA-278方式で行った。Verbund Deutsche Automobil(VDA)-278試験法は、プラスチック(ポリウレタン発泡体)の昇温脱離解析で、ポリウレタン発泡体の一部を90℃で30分間暴露した後、同じ発泡体を120℃に加熱して60分間その温度を維持するものである。揮発性有機成分(VOC)をすべて回収し、GC-MSで分析した。その結果を表2に示す。本発明の実施例は、低排出量と良好な物性の両方を示した。
【0071】
上記は本開示の様々な実施形態を対象とするが、本開示の他の実施形態、それの基本的範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は以下の特許請求の範囲によって判断される。
【0072】
実施例6~7および比較例8~10
ポリウレタン発泡体は、以下の表3記載の成分の配合により得られた。
【表5-1】
【表5-2】

(*)製剤中のスルホン酸エステル化合物のモル数に対する、イソシアネート反応性アミン触媒中の第3級アミン基のモル数の比
【0073】
実施例1~5の手順に従い、表3のポリウレタン発泡体を調製した。
本発明の実施例6および7は、低排出量と良好な物性の両方を示した。比較例8、9および10の排出量は良好ではなかった。
【0074】
実施例11~12および比較例13ポリウレタン発泡体は、以下の表4記載の成分の配合により得られた。
【表6】

(*)製剤中のスルホン酸エステル化合物のモル数に対する、イソシアネート反応性アミン触媒中の第3級アミン基のモル数の比
【0075】
実施例1~5の手順に従い、表4のポリウレタン発泡体を調製した。
本発明の実施例11および12は、低排出量と良好な物性の両方を示した。比較例13の排出量は良好ではなかった。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)式(1)を有する化合物、
【化1】
式(1)中、Rは1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(ii)式(2)を有する化合物、
【化2】
式(2)中、Xは水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキルまたは1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(iii)式(3)を有する化合物、
【化3】
式(3)中、Xは独立して水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、nは1~8の整数であり、RはH、1以上の水酸基で置換されてもよいC1-C4アルキル基または1以上の水酸基で置換されてもよいC-Cのアルコキシ基である;
(iv)式(4)を有する化合物、
【化4】
式(4)中、nは、1~5の整数である;
(v)式(5)を有する化合物、
【化5】
式(5)中、nはから3の整数であり、Xは水素、または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基である;および
(vi)それらの混合物、から選択される、スルホン酸エステルと、
(b)イソシアネート官能基含有化合物と、
(c)活性水素含有化合物と、
(d)少なくとも1つの第3級アミン基を有し、式(6)に対応する、イソシアネート反応性アミン触媒と、
【化6】
式(6)中、
- R とR は独立してC -C アルキル基であるか、R とR が一緒になってOまたはNヘテロ原子を含む環状5員または6員環、または7員の二環式構造を形成し、
- mは1または2の整数で、
- Yは-OH、-NH 、N(CH )CH CH OH、NHCH CH CH N(CH N(CH )CH CH CH NH 、N(CH CH(CH )OH) ,N(CH CH(CH )OH)CH CH CH N(CH OCH CH OH、OCH CH NH 、OCH CH CH NH 、OCH CH N(CH )CH CH OH、OCH CH N(CH )CH CH CH NH から選択される、を含むポリウレタン製剤であって、
前記製剤中の前記スルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対する、前記イソシアネート反応性アミン触媒(d)中の前記第3級アミン基の全モル数の比が2以上であることを特徴とする、ポリウレタン製剤。
【請求項2】
前記製剤中のスルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対する、イソシアネート反応性アミン触媒(d)中に存在する第3級アミン基のモル数の比が、好ましくは2~5の範囲、より好ましくは2~4の範囲、最も好ましくは2~3の範囲である、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項3】
前記スルホン酸エステルが、式(2)を有する化合物であり、Rは、メチルから選択される、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項4】
Xは、1以上の水酸基で置換されていてもよい、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、ペンチル基から選ばれる低級アルキル基である、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項5】
Xが水素であり、Rがメチルから選択される、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項6】
前記スルホン酸エステルが、p-トルエンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸メチル、ビス(p-トルエンスルホン酸)エチレンおよび/または4-メチルベンゼンスルホン酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルから選択される、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【請求項7】
前記スルホン酸エステルが、式(3)を有する化合物である、請求項1に記載のポリウレタン製剤。
【化7】
【請求項8】
Xがそれぞれ独立して、1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-Cアルキル基または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-Cアルコキシ基である、請求項7記載のポリウレタン製剤。
【請求項9】
前記イソシアネート反応性アミン触媒が、下記式を有する化合物である、請求項1~8の何れか1項に記載のポリウレタン製剤。
【化8】
【請求項10】
発泡剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリウレタン製剤。
【請求項11】
イソシアネート官能基含有化合物と、活性水素含有化合物と、任意の補助成分を、少なくとも式(6)の第3級アミン基と、
【化9】
式(6)中、
- R とR は独立してC -C アルキル基であるか、R とR が一緒になってOまたはNヘテロ原子を含む環状5員または6員環、または7員の二環式構造を形成し、
- mは1または2の整数で、
- Yは-OH、-NH 、N(CH )CH CH OH、NHCH CH CH N(CH N(CH )CH CH CH NH 、N(CH CH(CH )OH) ,N(CH CH(CH )OH)CH CH CH N(CH OCH CH OH、OCH CH NH 、OCH CH CH NH 、OCH CH N(CH )CH CH OH、OCH CH N(CH )CH CH CH NH から選択される、および
(i)式(1)を有する化合物、
【化10】
式(1)中、Rは1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキル基または1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(ii)式(2)を有する化合物、
【化11】
式(2)中、Xは水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、Rはメチル基、1以上の水酸基を有するC-C18アルキルまたは1以上の水酸基を有するC-C18アルコキシ基である;
(iii)式(3)を有する化合物、
【化12】
式(3)中、Xは独立して水素、または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上の水酸基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり、nは1~8の整数であり、RはHまたは1以上の水酸基で置換されてもよいC-Cアルキル基またはC-Cアルコキシ基である;
(iv)式(4)を有する化合物、
【化13】
式(4)中、nは、1~5の整数である;
(v)式(5)を有する化合物、
【化14】
式(5)中、nはから3の整数であり、Xは水素、または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルキル基または1以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいC-C18アルコキシ基から選ばれるオルト、メタまたはパラ置換基であり;および
(vi)それらの混合物、から選択される、スルホン酸エステルを含む、イソシアネート反応性アミン触媒の存在下で配合および/または反応させることを含む、ポリウレタン材料の製造方法であり、
前記製剤中の前記スルホン酸エステル化合物(a)のモル数に対する、前記イソシアネート反応性アミン触媒(d)中に存在する前記第3級アミン基のモル数の比が、2以上、好ましくは2~5の範囲、より好ましくは2~4の範囲、最も好ましくは2~3の範囲であることを特徴とする、ポリウレタン材料の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法によって製造されたポリウレタン材料。
【請求項13】
前記ポリウレタン材料が、硬質発泡体、半硬質発泡体または軟質発泡体である、請求項12に記載のポリウレタン材料。
【請求項14】
船舶、航空機、トラック、自動車またはバスの車両内装または外装部品に使用するための、請求項11に記載の方法により製造されるポリウレタン材料。
【請求項15】
シートクッション、ドア側面エレメントの背面発泡体、計器盤、ハンドル、シフトボタン、ベッドライナー、ダッシュボードまたはドアパネルとして、自動車に使用される、請求項11の方法により製造されるポリウレタン材料。
【国際調査報告】