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特表2023-543668アンモニア吸着触媒及びその製造方法並びに応用
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  • 特表-アンモニア吸着触媒及びその製造方法並びに応用 図1
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  • 特表-アンモニア吸着触媒及びその製造方法並びに応用 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】アンモニア吸着触媒及びその製造方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20231011BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20231011BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20231011BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20231011BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231011BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B01J29/74 A
B01J37/08 ZAB
B01J37/30
B01J37/02 301C
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513253
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2021116066
(87)【国際公開番号】W WO2023028928
(87)【国際公開日】2023-03-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523062903
【氏名又は名称】寧波吉利羅佑発動机零部件有限公司
【氏名又は名称原語表記】NINGBO GEELY ROYAL ENGINE COMPONENTS CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】523062914
【氏名又は名称】極光湾科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】AUROBAY TECHNOLOGY CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 立峰
(72)【発明者】
【氏名】沈 源
(72)【発明者】
【氏名】韋 虹
(72)【発明者】
【氏名】王 瑞平
(72)【発明者】
【氏名】肖 逸閣
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA17
3G091AB02
3G091AB03
3G091AB05
3G091AB08
3G091BA39
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3G091GB06W
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3G091GB17X
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4G169CA11
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4G169ZD01
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
本発明は、アンモニア吸着触媒及びその製造方法並びに応用を提供し、前記アンモニア吸着触媒は、担体と、前記担体の表面に位置する吸着層とを含み、前記吸着層は、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を含む。本発明の触媒は、アンモニア吸着/転化効率が高く、コストが低く、応用が柔軟であるなどの利点を兼ね備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア吸着触媒であって、担体と、前記担体の表面に位置する吸着層とを含み、前記吸着層は、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を含む、
ことを特徴とするアンモニア吸着触媒。
【請求項2】
前記貴金属は白金及び/又はパラジウムを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項3】
貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料における貴金属の含有量は1~20グラム/立方フィートである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項4】
貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料は、イオン交換法で貴金属をゼオライトに交換して得られ、前記ゼオライトは、βゼオライト、Yゼオライト、ZSM-5ゼオライトのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項5】
前記吸着層内の貴金属を含有するゼオライト吸着材料の質量含有量は90~100%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項6】
貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料と前記担体との質量体積比は30~200g:1Lである、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項7】
前記担体はコージェライト、シリコンカーバイド、及び金属担体のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1又は6に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のアンモニア吸着触媒の製造方法であって、
貴金属前駆体を用いてゼオライトに対してイオン交換処理を行い、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を得るステップと、
貴金属を含有するゼオライト吸着材料を接着剤、溶媒と混合してスラリーを製造するステップと、
前記スラリーを担体にコーティングし、乾燥、焼成した後に吸着層を形成し、前記アンモニア吸着触媒を得るステップとを含む、
ことを特徴とするアンモニア吸着触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のアンモニア吸着触媒のエンジン後処理システムでの応用。
【請求項10】
前記エンジン後処理システムは理論空燃比運転エンジン後処理システムを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の応用。
【請求項11】
前記エンジン後処理システムは三元触媒を含み、前記エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず三元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理され、
又は、前記エンジン後処理システムは選択触媒還元触媒を含み、前記エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず選択触媒還元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理される、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の応用。
【請求項12】
前記アンモニア吸着触媒は三元触媒と調合して使用され、前記調合方法は、以下の方式A及び方式Bのうちの少なくとも1つを含み、
方式A:前記アンモニア吸着触媒の吸着層と前記担体との間に三元触媒からなる三元触媒層が設けられ、
方式B:前記アンモニア吸着触媒の吸着層にはさらに前記三元触媒が含有される、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン排気処理触媒の分野に関し、具体的にはアンモニア吸着触媒及びその製造方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン排気後処理システムにおけるアンモニア(NH)は、(1)リッチの運転条件下で、触媒(例えば、三元触媒(TWC)及び希薄燃焼窒素酸化物トラップ触媒(LNT))上で生成されること、(2)希薄燃焼選択触媒還元(SCR)の還元剤として外部から後処理システムに能動的に添加されること、という2つの由来を有する。アンモニア酸化触媒(ASC)の基本的な機能は、排気に伴うアンモニアの漏れを低減するために、排出ガスにおける余分のアンモニア(NH)を吸着及び除去(転化又は酸化を含む)することである。一般的には、ASC触媒は後処理システムの後端に配置される。現在、市場に流通しているASC製品は一般的には、2つの独立しているコーティング層を有し、1つは担体3の表面に位置するアンモニア酸化コーティング層(例えば、図1のアンモニア酸化層2)であり、1つはアンモニア酸化コーティング層の表面に位置するアンモニア吸着材料層(例えば、図1の吸着層1)であり、図1に示すように、アンモニアを含む気流fはASCを通過し、まず、先端の吸着層1により吸着され、吸着されたアンモニアはエンジン排気の流れに従って徐々に脱着され、脱着されたアンモニアはアンモニア酸化層2を速やかに通過し、少なくとも部分的に酸化(当該プロセスでは、吸着されず、酸化されなかったアンモニアは下流の吸着層及びアンモニア酸化層によって吸着、脱着及び酸化プロセスを続ける)される。
【0003】
ここで、アンモニア吸着材料層を形成するための代表的なアンモニア吸着材料は、金属イオン交換されたゼオライト材料(例えば、Cu-β、Fe-β、Cu-SSZ-13など)であり、このようなゼオライト材料はアンモニアを吸着する以外、さらに希薄燃焼(空燃比λ>1.0)の条件でNOxを転化する還元剤としてアンモニアを徐々に消費し、それは主に、化学的、物理的吸着の2種類の方式で排気におけるアンモニアを吸着する。化学的に吸着されたアンモニアは比較的安定で脱着し難いが、化学的に吸着された量は有限である(化学的吸着は主に、ゼオライト中のブレンステッド酸点(BAS)で発生し、一般的には化学的に吸着されたアンモニアの量は総アンモニア吸着量の15%より小さい。触媒が通常の熱老化温度(一般的には650~700℃程度、特に>700℃である)で暴露される場合、BAS酸点が極端に少なくなり、それにより吸着材料によるアンモニアに対する化学的吸着量を著しく減少する)。排気における多量のアンモニアは、ゼオライト中のファンデルワールス力によりゼオライト内に一時的に物理吸着され、ゼオライト内に吸着されたアンモニアは、エンジン排気の流れに従って徐々に脱着し、先端ゼオライトから脱着されたアンモニアはまた下流のゼオライトにより再吸着、脱着され、繰り返し循環する。アンモニア酸化層におけるアンモニア酸化材料は一般的にはアルミナなどの基材と、当該基材に担持される貴金属(例えば白金(Pt)など)とを含み、アンモニアは吸着層のゼオライト材料から脱着した後、アンモニア酸化層を速やかに通過して少なくとも部分的に酸化され、酸化されなかったアンモニアは、下流の吸着層及びアンモニア酸化層によって吸着、脱着及び酸化プロセスを続ける。
【0004】
現在、後処理システムのアンモニア漏れを低減するために、ASCは既に、希薄燃焼の運転状態での選択触媒還元(SCR)システム、及び理論空燃比(λ=0.98~1.02)運転状態での天然ガス(圧縮天然ガスCompressed Natural Gas(CNG)及び液化天然ガスLiquified Natural Gas(LNG)を含む)エンジン運転システム三元触媒(TWC)後端に広く応用されている。具体的に言うと、希薄燃焼(酸素富化)の運転状態で、排気におけるNOxは一般的にはSCRにより除去されてもよく、具体的には、尿素を噴射し、尿素をアンモニアに加水分解し、アンモニアによってNOxを窒素ガス及び水に選択的に還元し、SCR後端はASCによって余剰で漏れようとするアンモニアを除去することができる。当該希薄燃焼状態で、アンモニアは主に、(1)アンモニア酸化層によって触媒酸化されること、(2)ゼオライト材料内でNOxを転化する還元剤として、それにより部分的に消費されること、(3)高温で小部分のアンモニアはゼオライト材料内で窒素ガスなどに酸化されること、という3つの方法でASCによって除去される。理論空燃比運転エンジンTWC後処理システムでのASCの作動原理は以下のとおりであり、希薄燃焼運転エンジンSCR後処理システム内にアンモニア(尿素噴射)を積極的に導入することと異なり、TWCで生成したアンモニアはリッチ(λ<1.0)の条件のみで生成し、下流ASCにより吸着され(吸着されたアンモニアはリッチの条件で酸化又は除去されることはできない)、排気がリーン(λ>1.0)の状態(フューエルカットなどのエンジン運転モードを含む)に切り替えられる場合、アンモニアが酸素富化条件で主に酸化層で酸化され、ASCによるアンモニアに対する吸着量が多いほど、酸化効率が高くなり、理論空燃比運転エンジン排気におけるアンモニアの漏れを低減する能力が高くなる。
【0005】
上記したように、現在の代表的なASC触媒は、表層の吸着層と下層のアンモニア酸化層からなり(図1に示す)、ASCのアンモニアの漏れを低減する効率を向上させるために、アンモニア吸着材料の量をできるだけ多くする必要があり、従って、ASCにおける吸着層の量は一般的には、150グラム/リットル触媒担体以上に達し、アンモニア酸化層の量は50グラム/リットル担体以下であり、現在のASCは一般的には以下の欠点を有し、(1)総コーティング量が200グラム/リットル担体以上であっても、ASCのアンモニア吸着量が依然として不足であり、吸着効率が低いこと、(2)アンモニアの酸化は主に、アンモニアがゼオライト材料から脱着されてからゼオライト材料に吸着されるまでの間の短時間でアンモニア酸化層により完了され、反応時間が短く、転化効率が制限されること、(3)吸着層及びアンモニア酸化層の特定の組み合わせは、ASCを独立して応用しなければならないことが決定され(他の触媒とそれぞれ異なる担体又は区画コーティングを採用する)、このように後処理システムの担体、パッケージなどのコストを増加させ、また、限られたシャーシ空間の合理的な配置に困難をもたらす可能性がある。
【0006】
エンジン排気のアンモニア漏れを低減することは、環境保護及び車両整備企業を含む分野において既に重要視を受けており、要求がより厳しい欧州七(EU7)/中国七(CN7)排出基準も2026年前後に登場することが予想され、ASCがエンジン排気のアンモニア漏れを低減するために適用されることは既に重要な選択肢であり、如何にASCの効率をさらに高め、ASC製品コストを削減し、及びASCの応用柔軟性を高めることは、依然として当業者によって解決すべき技術的問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はアンモニア吸着触媒を提供し、アンモニア吸着/転化効率が高く、コストが低く、応用が柔軟であるなどの利点を有し、従来技術に存在する欠点を効果的に改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様により提供されるアンモニア吸着触媒は、担体と、前記担体の表面に位置する吸着層とを含み、前記吸着層は、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を含む。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記貴金属は白金及び/又はパラジウムを含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料における貴金属の含有量は1~20グラム/立方フィートである。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料は、イオン交換法で貴金属をゼオライトに交換して得られ、前記ゼオライトは、βゼオライト、Yゼオライト、ZSM-5ゼオライトのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記吸着層内の貴金属を含有するゼオライト吸着材料の質量含有量は90~100%である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料と前記担体との質量体積比は30~200g:1Lである。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記担体はコージェライト、シリコンカーバイド、金属担体のうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
本発明の別の態様により提供される上記アンモニア吸着触媒の製造方法は、貴金属前駆体を用いてゼオライトに対してイオン交換処理を行い、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を得るステップと、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を接着剤、溶媒と混合してスラリーを製造するステップと、前記スラリーを担体にコーティングし、乾燥、焼成した後に吸着層を形成し、前記アンモニア吸着触媒を得るステップとを含む。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、上記アンモニア吸着触媒のエンジン後処理システムでの応用を提供する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記エンジン後処理システムは理論空燃比運転エンジン後処理システムを含む。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記エンジン後処理システムは三元触媒を含み、前記エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず三元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理され、又は、前記エンジン後処理システムは選択触媒還元触媒を含み、前記エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず選択触媒還元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記アンモニア吸着触媒は三元触媒と調合して使用され、前記調合方法は、以下の方式A及び方式Bのうちの少なくとも1つを含み、方式A:前記アンモニア吸着触媒の吸着層と前記担体との間に三元触媒からなる三元触媒層が設けられ、方式B:前記アンモニア吸着触媒の吸着層にはさらに前記三元触媒が含有される。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ゼオライト吸着材料内に貴金属を導入し、担体にアンモニア酸化層をさらにコーティングする必要がなく、触媒の製作工程を簡略化し、製作難易度を低下させ、コストを削減すると共に、空間を節約し、担体により多くのゼオライト吸着材料を担持することができ、アンモニアの吸着量を増加し、且つゼオライト吸着材料内に吸着されたアンモニアは、ゼオライト吸着材料内で直接触媒酸化されてもよく、アンモニアの酸化反応時間を延ばし、それによりアンモニアの転化率を向上させ、また、本発明のアンモニア吸着触媒はさらに他の触媒と組み合わせて使用することもでき(例えば、三元触媒(TWC)のコーティング層と調合して使用され、排気がリッチ(λ<1.0)である場合、アンモニアを吸着し、排気がリーン(λ>1.0)である場合、アンモニアを酸化する)、応用がより柔軟であり、また、研究から分かるように、従来の他の金属原子置換のゼオライト(例えばCu-ゼオライト)及び水素型ゼオライト(H-ゼオライト)に対して、本発明内に貴金属を導入するゼオライト吸着材料(ゼオライト内に置換された貴金属はゼオライト内のブレンステッド酸点Hを代替する)は、アンモニア吸着量を増加できるだけでなく、さらにより良好な熱安定性を示し、熱老化温度(650~750℃)で比較的良好なアンモニア吸着性能を示し、熱老化温度は一般的に実際の応用温度より高く、触媒の応用プロセスにおける温度は一般的に200~500℃であり、本発明のアンモニア吸着触媒は200~500℃ひいてはより高い温度で使用することができる。これにより、本発明のアンモニア吸着触媒はアンモニア吸着/転化効率が高く、コストが低く、応用が柔軟で、熱安定性に優れるなどの利点を兼ね備え、実際の産業化応用に対して重要な意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来のASCの構造及び応用プロセスの概略図である。
図2】本発明の一実施例における新鮮及び老化後の同様なゼオライト負荷量の異なるアンモニア吸着触媒ASCのアンモニア吸着量の温度に伴う変化曲線グラフである。
図3】(λ>1)は本発明の一実施例におけるアンモニア吸着触媒及び比較例におけるASCの希薄燃焼条件でのアンモニア転化効率の温度に伴う変化曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
当業者が本発明の態様をよりよく理解するために、以下、本発明についてさらに詳細に説明する。以下に挙げられる具体的な実施形態は本発明の原理及び特徴を説明するだけであり、挙げられる実施例は本発明を解釈するだけに用いられ、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的労働をせずに得た全ての他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
本発明のアンモニア吸着触媒は、担体と、担体の表面に位置する吸着層とを含み、吸着層は、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を含む。
【0024】
本発明では、ゼオライト吸着材料はアンモニアに対して良好な吸着及び触媒酸化能力を有し、ここで、ゼオライト吸着材料内に導入された貴金属は、主に触媒酸化アンモニアの機能を果たし、当該貴金属は例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)のうちの少なくとも1つを含むが、これに限定されず、いくつかの好ましい実施例では、貴金属は白金及び/又はパラジウムを含み、アンモニアの吸着触媒酸化効率をさらに向上させると共にコストを節約することに有利である。
【0025】
比較して言うと、貴金属の含有量が高すぎるとコストが高くなり、貴金属の含有量が低すぎると、アンモニア吸着触媒によるアンモニアに対する吸着転化性能にある程度で影響を与えるため、従って、これらの要因を総合的に考慮して、一般的には、貴金属を含有するゼオライト吸着材料における貴金属の含有量を1~20グラム/立方フィート、例えば1、3、5、7、10、12、15、18、20グラム/立方フィート又はそのうちのいずれか2つからなる範囲に制限することができ、一般的に好ましくは3~5グラム/立方フィートである。
【0026】
本発明では、貴金属を含有する上記ゼオライト吸着材料は、イオン交換法で貴金属をゼオライトに交換して得られてもよく、いくつかの実施例では、使用されるゼオライトは、βゼオライト、Yゼオライト、ZSM-5のうちの少なくとも1つを含む。ここで、ゼオライト吸着材料の体積は、使用されるゼオライトの体積に基本的に等しく、貴金属の含有量が3~5グラム/立方フィートであるゼオライト吸着材料を取得するために、ゼオライト吸着材料の製造プロセスでは、貴金属及びゼオライトの使用量を3~5グラム:1立方フィートを満たすように制限する。当然のことながら、本発明はイオン交換法に限定されるものではなく、噴霧法などにより貴金属をゼオライトに交換してもよい。
【0027】
具体的には、イオン交換法のプロセスは一般的には、貴金属前駆体を溶媒に溶解して浸漬液を形成し、当該浸漬液を用いてゼオライトに対して例えば等体積浸漬などの浸漬を行った後、乾燥、焼成することにより貴金属を含有するゼオライト吸着材料を製造し、ここで、貴金属前駆体は、一般的には貴金属の塩などの貴金属を含有する化合物を含んでもよく、具体的には硝酸白金及び/又は硝酸パラジウムなどの硝酸塩などの貴金属の可溶性塩を含んでもよく、乾燥、焼成時に硝酸根などのアニオンを分解してゼオライト材料から脱離させることである。
【0028】
一般的には、上記吸着層にはさらに接着剤及び/又は補助剤(補助材料)が含有され、上記貴金属を含有するゼオライト吸着材料を粘着してコーティング層(即ち吸着層)を形成することに有利であり、吸着層の強度及び安定性などの性能を最適化し、いくつかの実施例では、吸着層内の貴金属を含有するゼオライト吸着材料の質量含有量は90~100%であり、余分が接着剤及び補助材料である。任意選択的に、接着剤はアルミペースト及び/又はシリカゲルなどを含んでもよく、補助剤はセリウム材料及び/又はジルコニウム材料などを含んでもよい。
【0029】
具体的には、上記貴金属を含有するゼオライト吸着材料を担体の表面にコーティングして吸着層を形成してもよく、具体的に実施する場合、当該ゼオライト吸着材料を接着剤、溶媒と混合してスラリーを製造し、当該スラリーを担体の表面にコーティングし、乾燥した後に吸着層を形成してもよい。
【0030】
さらに研究したところ、上記貴金属を含有するゼオライト吸着材料と担体との質量体積比は30~280g:1L、例えば30g:1L、50g:1L、80g:1L、100g:1L、120g:1L、150g:1L、180g:1L、200g:1L、230g:1L、250g:1L、280g:1L又はこれらのうちの任意の2つの割合からなる範囲であってもよい。具体的に実施する場合、自動車のシャーシ空間に応じて吸着層の厚さ(ゼオライト吸着材料の担体でのコーティング量)を制御してもよく、できるだけ多くのゼオライト吸着材料をコーティングしてアンモニアの吸着量を高めることができる。一般的には、好ましくは、吸着層の質量と担体の体積との比が150g~230g:1Lである。
【0031】
本発明は当分野の従来の担体を用いることができ、いくつかの好ましい実施例では、担体はコージェライト(一般的にはセラミックハニカム状)、シリコンカーバイド及び金属担体などのうちの少なくとも1つを含む。担体の構造は例えばパーティキュレートフィルター(GPF)などであってもよく、本発明はこれについて特に限定しない。
【0032】
本発明により提供されるアンモニア吸着触媒の製造方法は、貴金属前駆体を用いてゼオライトに対してイオン交換処理(即ち、イオン交換法で貴金属をゼオライトに交換する)を行い、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を得るステップと、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を接着剤、溶媒と混合してスラリーを製造するステップと、スラリーを担体の表面にコーティングし、80~90℃で乾燥して多量の溶媒を除去してから100~200℃で乾燥し、残りの溶媒を除去し、続いて500~650℃で焼成して担体の表面に吸着層を形成し、アンモニア吸着触媒を得るステップとを含み、ここで、焼成時間は1~2時間であってもよく、これに限定されない。
【0033】
本発明では、上記アンモニア吸着触媒は直接使用されてもよく、他の触媒又はその機能成分と調合されてもよく、例えば、上記アンモニア吸着触媒をTWCと組み合わせて多機能触媒を形成することができ、具体的には、吸着層内にTWCを導入し、即ち貴金属を含有するゼオライト吸着材料をTWCと混合して吸着層を形成し、即ち上記吸着層にはさらにTWC触媒が含有され、又は、吸着層以外、担体の表面にさらにTWCからなるTWCコーティング層が設けられてもよく、吸着層とTWCコーティング層は担体の表面の異なる領域に位置し(即ち、担体の表面で区画して設ける)、両者は接してもよく又は接しなくてもよく(即ち一定の距離を隔てる)、又は、TWCコーティング層及び吸着層は担体の表面に階層的に設けられ、TWCコーティング層は担体の表面と吸着層との間に位置し、又は吸着層はTWCコーティング層と担体の表面との間に位置し、好ましくは、吸着層がTWCコーティング層と担体の表面との間に位置する。
【0034】
本発明はさらに、上記アンモニア吸着触媒のエンジン後処理システムでの応用を提供し、当該エンジン後処理システムは理論空燃比運転エンジン後処理システムを含んでもよく、即ち上記アンモニア吸着触媒は理論空燃比運転エンジン後処理システムに用いられてもよく、例えば理論空燃比運転エンジン後処理システムのTWC後端(即ちエンジン排気は、まずTWCにより処理されてから上記アンモニア吸着触媒気で処理される)に用いられてもよく、転化アンモニアを効率的に吸着することができる。ここで、エンジン理論空燃比運転は空燃比(λ)が理論空燃比(λ=1.0)の周りに小さな上下変動で運転を完了し(即ち、エンジン運転プロセスにおいてほぼ理論空燃比の燃焼モードで天然ガスなどの燃料を燃焼させる)、理論空燃比運転エンジンの空燃比が一般的には0.98~1.02(即ちλ=0.98~1.02)である。一般的には、エンジン理論空燃比運転の具体的な応用プロセスでは、リッチ(λ<1.0)条件で、アンモニアはTWCに生成され、酸素含有量が少ないため、アンモニア吸着触媒はアンモニアをほとんど酸化できず、主にアンモニアを吸着することを主とし、リーン(λ>1.0)の条件下では、TWC上にアンモニアが生成されなくなり、アンモニア吸着触媒はアンモニアを酸化することができるため、主にアンモニア酸化を主とする。
【0035】
本発明のアンモニア吸着触媒は理論空燃比運転エンジン後処理システムに用いられてもよく、アンモニア吸着量を著しく向上させることができると共に、アンモニアに対する良好な転化(触媒酸化)性能を示す。しかし、理論空燃比運転エンジン後処理システムに限定されず、上記エンジン後処理システムはさらに希薄燃焼(λ>1.0)運転エンジン後処理システムを含んでもよく、即ち上記アンモニア吸着触媒は希薄燃焼運転エンジン後処理システムに用いられてもよく、例えば、希薄燃焼運転エンジン後処理システム内のSCR後端に用いられる。
【0036】
具体的に言うと、アンモニア吸着触媒は単独で使用されてもよく、いくつかの実施例では、エンジン後処理システムは三元触媒(TWC)を含み、エンジン後処理システム内の処理対象気体(排気)は、まず三元触媒で処理されてからアンモニア吸着触媒で処理され、即ち、アンモニア吸着触媒はTWC後端に用いられる。他の実施例では、エンジン後処理システムは選択触媒還元(SCR)触媒を含み、エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず選択触媒還元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理され、即ち、アンモニア吸着触媒はSCR触媒後端に用いられる。
【0037】
本発明の応用は上記方法に限定されず、アンモニア吸着触媒を他の触媒(例えばTWCなど)又はその機能成分と組み合わせてもよく、例えば、いくつかの実施例では、アンモニア吸着触媒は三元触媒と調合して使用され、前記調合方法は、以下の方式A及び方式Bのうちの少なくとも1つを含み、方式A:前記アンモニア吸着触媒の吸着層と前記担体との間に三元触媒からなる三元触媒層が設けられ、方式B:前記アンモニア吸着触媒の吸着層にはさらに前記三元触媒が含有される。応用に際して、具体的にはエンジン後処理システム内のTWCシステムに用いられてもよい。
【0038】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施例と組み合わせて本発明の技術案を明確且つ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は本発明の実施例の一部であり、実施例の全てではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造な労働をしない前提で得た全ての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
(実施例1)
【0039】
本実施例のアンモニア吸着触媒(新鮮(Pt-ゼオライト)と記す)は担体、担体の表面に位置するアルミナコーティング層、及びアルミナコーティング層の表面に位置する吸着層からなり、ここで、アルミナコーティング層は、アルミナ材料と接着剤とをコーティングして形成され、吸着層は、白金を含有するゼオライト吸着材料(Pt-ゼオライト)と接着剤とをコーティングして形成され、
吸着層の成分は接着剤及び白金を含有するゼオライト吸着材料(Pt-ゼオライト)であり、吸着層におけるPt-ゼオライトの質量含有量が97%であり、余分が接着剤であり、
Pt-ゼオライトにおける白金の含有量が5グラム/立方フィートであり、
Pt-ゼオライトは、イオン交換法で白金をゼオライトに交換して得られ、使用されるゼオライトはβゼオライトであり、
Pt-ゼオライトと担体との質量体積比は150g:1L(即ちPt-ゼオライトの負荷量が150g/Lである)であり、
アルミナコーティング層と担体との質量体積比は50g:1L(即ちアルミナの負荷量が50g/Lである)であり、
担体はコージェライトである。
(実施例2)
【0040】
実施例2と実施例1との相違点は以下のとおりであり、アンモニア吸着触媒は担体及び担体の表面に位置する吸着層からなり(即ちアルミナコーティング層なし)、Pt-ゼオライトと担体との質量体積比は200g:1L(即ちPt-ゼオライトの負荷量が200g/Lである)である。
(比較例1)
【0041】
当該比較例1の触媒(新鮮(Cu-ゼオライト)と記す)は従来のASCであり、担体、担体の表面に位置するアンモニア酸化層、及びアンモニア吸着層の表面に位置するアンモニア吸着層からなり、アンモニア吸着層は、Cu-ゼオライトと接着剤とをコーティングして形成されたコーティング層であり、アンモニア酸化層は、白金が担持されたアルミナ材料と接着剤とをコーティングして形成されたコーティング層(50g/L)であり、ここで、
比較例1における担体は実施例1における担体と同じであり、
比較例1のアンモニア吸着層及びアンモニア酸化層からなる総コーティング層における白金含有量は実施例1の吸着層における白金含有量と同じであり、
比較例1のCu-ゼオライトの負荷量は実施例1のPd-ゼオライトの負荷量と同じ(150g/L)である。
(比較例2)
【0042】
当該比較例2の触媒(新鮮(H-ゼオライト)と記す)と比較例1との相違点は、H-ゼオライトを用いてCu-ゼオライトを置換することであり、他の条件は比較例1と同じである。
(触媒性能テスト)
【0043】
1、触媒老化
実施例1におけるアンモニア吸着触媒を管型反応炉内に720℃で、空間速度30000hr-1を保持した条件で40時間反応させ、老化後アンモニア吸着触媒(老化(Pt-ゼオライト)と記す)を得、
上記老化プロセスに応じて、比較例1における触媒を老化し、老化後触媒(老化(Cu-ゼオライト)と記す)を得、
上記老化プロセスに応じて、比較例2における触媒を老化し、老化後触媒(老化(H-ゼオライト)と記す)を得る。
2、テスト
上記新鮮(Pt-ゼオライト)、新鮮(Cu-ゼオライト)、新鮮(H-ゼオライト)、老化(Pt-ゼオライト)、老化(Cu-ゼオライト)、老化新鮮(H-ゼオライト)触媒をそれぞれ採用して以下のテスト1及びテスト2を行い、各触媒の理論空燃比運転条件でのアンモニア吸着量の温度に従う変化曲線(図2に示す)、及び希薄燃焼運転条件でのアンモニア転化率の温度に従う変化曲線(図3に示す)を測定する。
テスト1:理論空燃比運転エンジン後処理システムのTWC後の排気成分(表1におけるアンモニア吸着実験合成ガスに示す)をシミュレーションし、空間速度が170000hr-1であり、当該条件で触媒のアンモニア吸着量(貯蔵量)の温度に従う変化曲線をテストする。
テスト2:希薄燃焼運転エンジン後処理システムのSCR後の排気成分(表1におけるアンモニア酸化実験合成ガスに示す)をシミュレーションし、空間速度が170000hr-1であり、当該条件で触媒転化アンモニアの効率(アンモニア転化率)の温度に従う変化曲線をテストする。
【0044】
【表1】
【0045】
図2から分かるように、触媒のアンモニア吸着量が温度の上昇に従って減少し、新鮮(Pd-ゼオライト)のアンモニア吸着量が200℃での2.79g/Lから500℃での0.65g/Lに低下し、老化は触媒のアンモニア吸着性能にも影響を与え、老化(Pd-ゼオライト)の200℃でのアンモニア吸着量は約1.36g/Lであり、また、新鮮であっても老化後であっても、実施例1のアンモニア吸着触媒のアンモニア吸着量はいずれも比較例1及び比較例2における触媒より高く、より優れたアンモニア吸着性能及び熱安定性を示し、新鮮(Pt-ゼオライト)、新鮮(Cu-ゼオライト)、新鮮(H-ゼオライト)の200℃でのアンモニア吸着量は順で、2.79g/L、2.4g/L、2.3g/Lであり、老化(Pt-ゼオライト)、老化(Cu-ゼオライト)、老化新鮮(H-ゼオライト)のアンモニア吸着量の200℃でのアンモニア吸着量は順で、1.36g/L、0.9g/L、0.67g/Lである。
【0046】
図3と組み合わせて分かるように、実施例1のアンモニア吸着触媒は、アンモニア吸着量を増加させると共に、良好なアンモニア転化性能を有し、それは比較例1及び比較例2における触媒のアンモニア転化率に近接し、触媒のアンモニア転化率が温度の上昇につれて大きくなる傾向にあり、老化後触媒のアンモニア転化性能は低下するが、老化(Pt-ゼオライト)は、依然として、より高いアンモニア転化率を維持することができる。
【0047】
一般的には、理論空燃比運転エンジンの排気のアンモニア除去プロセスは、リッチ燃焼時にアンモニアを生成し且つASCなどの触媒に吸着され、リーン燃焼時にアンモニアを酸化するという2つの相対的に独立し且つ短いプロセスに分けることができ、上記したように、実施例1のアンモニア吸着触媒によるアンモニアに対する触媒酸化効率は、比較例1及び比較例2における触媒とほぼ同等であり、実施例1のアンモニア吸着触媒のアンモニア吸着量は比較例1及び比較例2の触媒より著しく優れており、且つ実施例1のアンモニア吸着触媒は、同じサイズの担体の場合、比較例1及び比較例2に比べてアンモニア吸着(ゼオライト)材料を30%まで多くコーティングすることができ、アンモニアに対する触媒酸化効率がほぼ同等である場合、アンモニア吸着量が大きいほど、排気内のアンモニアに対する除去効果がよりよくなる。
【0048】
本発明では、変量の影響をできるだけ低減するように上記実施例1を設計し、実施例1と比較例1との関連実験プロセスを列挙し、本発明のアンモニア吸着触媒が従来のASCに対して優れたアンモニア低減効果を有することが実証され、本発明は実施例2をさらに設計し、実施例2の触媒について上記のような実験を行った結果、実施例2のアンモニア吸着性能、アンモニア酸化性能及び熱安定性などの性能がいずれも実施例1のアンモニア吸着触媒よりも優れていることが示された。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されない。本願の精神と原則内で行われる任意の修正、同等の置換、及び改善などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0050】
1…吸着層、2…アンモニア酸化層、3…担体、f…気流。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン排気処理触媒の分野に関し、具体的にはアンモニア吸着触媒及びその製造方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン排気後処理システムにおけるアンモニア(NH)は、(1)リッチの運転条件下で、触媒(例えば、三元触媒(TWC)及び希薄燃焼窒素酸化物トラップ触媒(LNT))上で生成されること、(2)希薄燃焼選択触媒還元(SCR)の還元剤として外部から後処理システムに能動的に添加されること、という2つの由来を有する。アンモニア酸化触媒(ASC)の基本的な機能は、排気に伴うアンモニアの漏れを低減するために、排出ガスにおける余分のアンモニア(NH)を吸着及び除去(転化又は酸化を含む)することである。一般的には、ASC触媒は後処理システムの後端に配置される。現在、市場に流通しているASC製品は一般的には、2つの独立しているコーティング層を有し、1つは担体3の表面に位置するアンモニア酸化コーティング層(例えば、図1のアンモニア酸化層2)であり、1つはアンモニア酸化コーティング層の表面に位置するアンモニア吸着材料層(例えば、図1の吸着層1)であり、図1に示すように、アンモニアを含む気流fはASCを通過し、まず、先端の吸着層1により吸着され、吸着されたアンモニアはエンジン排気の流れに従って徐々に脱着され、脱着されたアンモニアはアンモニア酸化層2を速やかに通過し、少なくとも部分的に酸化(当該プロセスでは、吸着されず、酸化されなかったアンモニアは下流の吸着層及びアンモニア酸化層によって吸着、脱着及び酸化プロセスを続ける)される。
【0003】
ここで、アンモニア吸着材料層を形成するための代表的なアンモニア吸着材料は、金属イオン交換されたゼオライト材料(例えば、Cu-β、Fe-β、Cu-SSZ-13など)であり、このようなゼオライト材料はアンモニアを吸着する以外、さらに希薄燃焼(空燃比λ>1.0)の条件でNOxを転化する還元剤としてアンモニアを徐々に消費し、それは主に、化学的、物理的吸着の2種類の方式で排気におけるアンモニアを吸着する。化学的に吸着されたアンモニアは比較的安定で脱着し難いが、化学的に吸着された量は有限である(化学的吸着は主に、ゼオライト中のブレンステッド酸点(BAS)で発生し、一般的には化学的に吸着されたアンモニアの量は総アンモニア吸着量の15%より小さい。触媒が通常の熱老化温度(一般的には650~700℃程度、特に>700℃である)で暴露される場合、BAS酸点が極端に少なくなり、それにより吸着材料によるアンモニアに対する化学的吸着量を著しく減少する)。排気における多量のアンモニアは、ゼオライト中のファンデルワールス力によりゼオライト内に一時的に物理吸着され、ゼオライト内に吸着されたアンモニアは、エンジン排気の流れに従って徐々に脱着し、先端ゼオライトから脱着されたアンモニアはまた下流のゼオライトにより再吸着、脱着され、繰り返し循環する。アンモニア酸化層におけるアンモニア酸化材料は一般的にはアルミナなどの基材と、当該基材に担持される貴金属(例えば白金(Pt)など)とを含み、アンモニアは吸着層のゼオライト材料から脱着した後、アンモニア酸化層を速やかに通過して少なくとも部分的に酸化され、酸化されなかったアンモニアは、下流の吸着層及びアンモニア酸化層によって吸着、脱着及び酸化プロセスを続ける。
【0004】
現在、後処理システムのアンモニア漏れを低減するために、ASCは既に、希薄燃焼の運転状態での選択触媒還元(SCR)システム、及び理論空燃比(λ=0.98~1.02)運転状態での天然ガス(圧縮天然ガスCompressed Natural Gas(CNG)及び液化天然ガスLiquified Natural Gas(LNG)を含む)エンジン運転システム三元触媒(TWC)後端に広く応用されている。具体的に言うと、希薄燃焼(酸素富化)の運転状態で、排気におけるNOxは一般的にはSCRにより除去されてもよく、具体的には、尿素を噴射し、尿素をアンモニアに加水分解し、アンモニアによってNOxを窒素ガス及び水に選択的に還元し、SCR後端はASCによって余剰で漏れようとするアンモニアを除去することができる。当該希薄燃焼状態で、アンモニアは主に、(1)アンモニア酸化層によって触媒酸化されること、(2)ゼオライト材料内でNOxを転化する還元剤として、それにより部分的に消費されること、(3)高温で小部分のアンモニアはゼオライト材料内で窒素ガスなどに酸化されること、という3つの方法でASCによって除去される。理論空燃比運転エンジンTWC後処理システムでのASCの作動原理は以下のとおりであり、希薄燃焼運転エンジンSCR後処理システム内にアンモニア(尿素噴射)を積極的に導入することと異なり、TWCで生成したアンモニアはリッチ(λ<1.0)の条件のみで生成し、下流ASCにより吸着され(吸着されたアンモニアはリッチの条件で酸化又は除去されることはできない)、排気がリーン(λ>1.0)の状態(フューエルカットなどのエンジン運転モードを含む)に切り替えられる場合、アンモニアが酸素富化条件で主に酸化層で酸化され、ASCによるアンモニアに対する吸着量が多いほど、酸化効率が高くなり、理論空燃比運転エンジン排気におけるアンモニアの漏れを低減する能力が高くなる。
【0005】
上記したように、現在の代表的なASC触媒は、表層の吸着層と下層のアンモニア酸化層からなり(図1に示す)、ASCのアンモニアの漏れを低減する効率を向上させるために、アンモニア吸着材料の量をできるだけ多くする必要があり、従って、ASCにおける吸着層の量は一般的には、150グラム/リットル触媒担体以上に達し、アンモニア酸化層の量は50グラム/リットル担体以下であり、現在のASCは一般的には以下の欠点を有し、(1)総コーティング量が200グラム/リットル担体以上であっても、ASCのアンモニア吸着量が依然として不足であり、吸着効率が低いこと、(2)アンモニアの酸化は主に、アンモニアがゼオライト材料から脱着されてからゼオライト材料に吸着されるまでの間の短時間でアンモニア酸化層により完了され、反応時間が短く、転化効率が制限されること、(3)吸着層及びアンモニア酸化層の特定の組み合わせは、ASCを独立して応用しなければならないことが決定され(他の触媒とそれぞれ異なる担体又は区画コーティングを採用する)、このように後処理システムの担体、パッケージなどのコストを増加させ、また、限られたシャーシ空間の合理的な配置に困難をもたらす可能性がある。
【0006】
エンジン排気のアンモニア漏れを低減することは、環境保護及び車両整備企業を含む分野において既に重要視を受けており、要求がより厳しい欧州七(EU7)/中国七(CN7)排出基準も2026年前後に登場することが予想され、ASCがエンジン排気のアンモニア漏れを低減するために適用されることは既に重要な選択肢であり、如何にASCの効率をさらに高め、ASC製品コストを削減し、及びASCの応用柔軟性を高めることは、依然として当業者によって解決すべき技術的問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はアンモニア吸着触媒を提供し、アンモニア吸着/転化効率が高く、コストが低く、応用が柔軟であるなどの利点を有し、従来技術に存在する欠点を効果的に改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様により提供されるアンモニア吸着触媒は、担体と、前記担体の表面に位置する吸着層とを含み、前記吸着層は、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を含む。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記貴金属は白金及び/又はパラジウムを含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料における貴金属と前記担体との質量体積比は1~20グラム/立方フィートである。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料は、イオン交換法で貴金属をゼオライトに交換して得られ、前記ゼオライトは、βゼオライト、Yゼオライト、ZSM-5ゼオライトのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記吸着層内の貴金属を含有するゼオライト吸着材料の質量含有量は90~100%である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料と前記担体との質量体積比は30~200g:1Lである。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記担体はコージェライト、シリコンカーバイド、金属担体のうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
本発明の別の態様により提供される上記アンモニア吸着触媒の製造方法は、貴金属前駆体を用いてゼオライトに対してイオン交換処理を行い、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を得るステップと、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を接着剤、溶媒と混合してスラリーを製造するステップと、前記スラリーを担体にコーティングし、乾燥、焼成した後に吸着層を形成し、前記アンモニア吸着触媒を得るステップとを含む。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、上記アンモニア吸着触媒のエンジン後処理システムでの応用を提供する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記エンジン後処理システムは理論空燃比運転エンジン後処理システムを含む。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記エンジン後処理システムは三元触媒を含み、前記エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず三元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理され、又は、前記エンジン後処理システムは選択触媒還元触媒を含み、前記エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず選択触媒還元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記アンモニア吸着触媒は三元触媒と調合して使用され、前記調合方法は、以下の方式A及び方式Bのうちの少なくとも1つを含み、方式A:前記アンモニア吸着触媒の吸着層と前記担体との間に三元触媒からなる三元触媒層が設けられ、方式B:前記アンモニア吸着触媒の吸着層にはさらに前記三元触媒が含有される。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ゼオライト吸着材料内に貴金属を導入し、担体にアンモニア酸化層をさらにコーティングする必要がなく、触媒の製作工程を簡略化し、製作難易度を低下させ、コストを削減すると共に、空間を節約し、担体により多くのゼオライト吸着材料を担持することができ、アンモニアの吸着量を増加し、且つゼオライト吸着材料内に吸着されたアンモニアは、ゼオライト吸着材料内で直接触媒酸化されてもよく、アンモニアの酸化反応時間を延ばし、それによりアンモニアの転化率を向上させ、また、本発明のアンモニア吸着触媒はさらに他の触媒と組み合わせて使用することもでき(例えば、三元触媒(TWC)のコーティング層と調合して使用され、排気がリッチ(λ<1.0)である場合、アンモニアを吸着し、排気がリーン(λ>1.0)である場合、アンモニアを酸化する)、応用がより柔軟であり、また、研究から分かるように、従来の他の金属原子置換のゼオライト(例えばCu-ゼオライト)及び水素型ゼオライト(H-ゼオライト)に対して、本発明内に貴金属を導入するゼオライト吸着材料(ゼオライト内に置換された貴金属はゼオライト内のブレンステッド酸点Hを代替する)は、アンモニア吸着量を増加できるだけでなく、さらにより良好な熱安定性を示し、熱老化温度(650~750℃)で比較的良好なアンモニア吸着性能を示し、熱老化温度は一般的に実際の応用温度より高く、触媒の応用プロセスにおける温度は一般的に200~500℃であり、本発明のアンモニア吸着触媒は200~500℃ひいてはより高い温度で使用することができる。これにより、本発明のアンモニア吸着触媒はアンモニア吸着/転化効率が高く、コストが低く、応用が柔軟で、熱安定性に優れるなどの利点を兼ね備え、実際の産業化応用に対して重要な意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来のASCの構造及び応用プロセスの概略図である。
図2】本発明の一実施例における新鮮及び老化後の同様なゼオライト負荷量の異なるアンモニア吸着触媒ASCのアンモニア吸着量の温度に伴う変化曲線グラフである。
図3】(λ>1)は本発明の一実施例におけるアンモニア吸着触媒及び比較例におけるASCの希薄燃焼条件でのアンモニア転化効率の温度に伴う変化曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
当業者が本発明の態様をよりよく理解するために、以下、本発明についてさらに詳細に説明する。以下に挙げられる具体的な実施形態は本発明の原理及び特徴を説明するだけであり、挙げられる実施例は本発明を解釈するだけに用いられ、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的労働をせずに得た全ての他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
本発明のアンモニア吸着触媒は、担体と、担体の表面に位置する吸着層とを含み、吸着層は、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を含む。
【0024】
本発明では、ゼオライト吸着材料はアンモニアに対して良好な吸着及び触媒酸化能力を有し、ここで、ゼオライト吸着材料内に導入された貴金属は、主に触媒酸化アンモニアの機能を果たし、当該貴金属は例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)のうちの少なくとも1つを含むが、これに限定されず、いくつかの好ましい実施例では、貴金属は白金及び/又はパラジウムを含み、アンモニアの吸着触媒酸化効率をさらに向上させると共にコストを節約することに有利である。
【0025】
比較して言うと、コーティング触媒又は担体の体積に対して貴金属の含有量が高すぎるとコストが高くなり、貴金属の含有量が低すぎると、アンモニア吸着触媒によるアンモニアに対する吸着転化性能にある程度で影響を与えるため、従って、これらの要因を総合的に考慮して、一般的には、貴金属を含有するゼオライト吸着材料における貴金属の含有量を1~20グラム/立方フィート担体、例えば1、3、5、7、10、12、15、18、20グラム/立方フィート担体又はそのうちのいずれか2つからなる範囲に制限することができ、一般的に好ましくは3~5グラム/立方フィート担体である。
【0026】
本発明では、貴金属を含有する上記ゼオライト吸着材料は、イオン交換法で貴金属をゼオライトに交換して得られてもよく、いくつかの実施例では、使用されるゼオライトは、βゼオライト、Yゼオライト、ZSM-5のうちの少なくとも1つを含む。ここで、ゼオライト吸着材料の体積は、使用されるゼオライトの体積に基本的に等しく、貴金属の含有量が3~5グラム/立方フィート担体であるゼオライト吸着材料を取得するために、ゼオライト吸着材料の製造プロセスでは、ゼオライトにおける貴金属の使用量を3~5グラム:1立方フィート担体を満たすように制限する。当然のことながら、本発明はイオン交換法に限定されるものではなく、噴霧法などにより貴金属をゼオライトに交換してもよい。
【0027】
具体的には、イオン交換法のプロセスは一般的には、貴金属前駆体を溶媒に溶解して浸漬液を形成し、当該浸漬液を用いてゼオライトに対して例えば等体積浸漬などの浸漬を行った後、乾燥、焼成することにより貴金属を含有するゼオライト吸着材料を製造し、ここで、貴金属前駆体は、一般的には貴金属の塩などの貴金属を含有する化合物を含んでもよく、具体的には硝酸白金及び/又は硝酸パラジウムなどの硝酸塩などの貴金属の可溶性塩を含んでもよく、乾燥、焼成時に硝酸根などのアニオンを分解してゼオライト材料から脱離させることである。
【0028】
一般的には、上記吸着層にはさらに接着剤及び/又は補助剤(補助材料)が含有され、上記貴金属を含有するゼオライト吸着材料を粘着してコーティング層(即ち吸着層)を形成することに有利であり、吸着層の強度及び安定性などの性能を最適化し、いくつかの実施例では、吸着層内の貴金属を含有するゼオライト吸着材料の質量含有量は90~100%であり、余分が接着剤及び補助材料である。任意選択的に、接着剤はアルミペースト及び/又はシリカゲルなどを含んでもよく、補助剤はセリウム材料及び/又はジルコニウム材料などを含んでもよい。
【0029】
具体的には、上記貴金属を含有するゼオライト吸着材料を担体の表面にコーティングして吸着層を形成してもよく、具体的に実施する場合、当該ゼオライト吸着材料を接着剤、溶媒と混合してスラリーを製造し、当該スラリーを担体の表面にコーティングし、乾燥した後に吸着層を形成してもよい。
【0030】
さらに研究したところ、上記貴金属を含有するゼオライト吸着材料と担体との質量体積比は30~280g:1L、例えば30g:1L、50g:1L、80g:1L、100g:1L、120g:1L、150g:1L、180g:1L、200g:1L、230g:1L、250g:1L、280g:1L又はこれらのうちの任意の2つの割合からなる範囲であってもよい。具体的に実施する場合、自動車のシャーシ空間に応じて吸着層の厚さ(ゼオライト吸着材料の担体でのコーティング量)を制御してもよく、できるだけ多くのゼオライト吸着材料をコーティングしてアンモニアの吸着量を高めることができる。一般的には、好ましくは、吸着層の質量と担体の体積との比が150g~230g:1Lである。
【0031】
本発明は当分野の従来の担体を用いることができ、いくつかの好ましい実施例では、担体はコージェライト(一般的にはセラミックハニカム状)、シリコンカーバイド及び金属担体などのうちの少なくとも1つを含む。担体の構造は例えばガソリンパーティキュレートフィルター(GPF)などであってもよく、本発明はこれについて特に限定しない。
【0032】
本発明により提供されるアンモニア吸着触媒の製造方法は、貴金属前駆体を用いてゼオライトに対してイオン交換処理(即ち、イオン交換法で貴金属をゼオライトに交換する)を行い、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を得るステップと、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を接着剤、溶媒と混合してスラリーを製造するステップと、スラリーを担体の表面にコーティングし、80~90℃で乾燥して多量の溶媒を除去してから100~200℃で乾燥し、残りの溶媒を除去し、続いて500~650℃で焼成して担体の表面に吸着層を形成し、アンモニア吸着触媒を得るステップとを含み、ここで、焼成時間は1~2時間であってもよく、これに限定されない。
【0033】
本発明では、上記アンモニア吸着触媒は直接使用されてもよく、他の触媒又はその機能成分と調合されてもよく、例えば、上記アンモニア吸着触媒をTWCと組み合わせて多機能触媒を形成することができ、具体的には、吸着層内にTWCを導入し、即ち貴金属を含有するゼオライト吸着材料をTWCと混合して吸着層を形成し、即ち上記吸着層にはさらにTWC触媒が含有され、又は、吸着層以外、担体の表面にさらにTWCからなるTWCコーティング層が設けられてもよく、吸着層とTWCコーティング層は担体の表面の異なる領域に位置し(即ち、担体の表面で区画して設ける)、両者は接してもよく又は接しなくてもよく(即ち一定の距離を隔てる)、又は、TWCコーティング層及び吸着層は担体の表面に階層的に設けられ、TWCコーティング層は担体の表面と吸着層との間に位置し、又は吸着層はTWCコーティング層と担体の表面との間に位置し、好ましくは、吸着層がTWCコーティング層と担体の表面との間に位置する。
【0034】
本発明はさらに、上記アンモニア吸着触媒のエンジン後処理システムでの応用を提供し、当該エンジン後処理システムは理論空燃比運転エンジン後処理システムを含んでもよく、即ち上記アンモニア吸着触媒は理論空燃比運転エンジン後処理システムに用いられてもよく、例えば理論空燃比運転エンジン後処理システムのTWC後端(即ちエンジン排気は、まずTWCにより処理されてから上記アンモニア吸着触媒処理される)に用いられてもよく、転化アンモニアを効率的に吸着することができる。ここで、エンジン理論空燃比運転は空燃比(λ)が理論空燃比(λ=1.0)の周りに小さな上下変動で運転を完了し(即ち、エンジン運転プロセスにおいてほぼ理論空燃比の燃焼モードで天然ガスなどの燃料を燃焼させる)、理論空燃比運転エンジンの空燃比が一般的には0.98~1.02(即ちλ=0.98~1.02)である。一般的には、エンジン理論空燃比運転の具体的な応用プロセスでは、リッチ(λ<1.0)条件で、アンモニアはTWCに生成され、酸素含有量が少ないため、アンモニア吸着触媒はアンモニアをほとんど酸化できず、主にアンモニアを吸着することを主とし、リーン(λ>1.0)の条件下では、TWC上にアンモニアが生成されなくなり、アンモニア吸着触媒はアンモニアを酸化することができるため、主にアンモニア酸化を主とする。
【0035】
本発明のアンモニア吸着触媒は理論空燃比運転エンジン後処理システムに用いられてもよく、アンモニア吸着量を著しく向上させることができると共に、アンモニアに対する良好な転化(触媒酸化)性能を示す。しかし、理論空燃比運転エンジン後処理システムに限定されず、上記エンジン後処理システムはさらに希薄燃焼(λ>1.0)運転エンジン後処理システムを含んでもよく、即ち上記アンモニア吸着触媒は希薄燃焼運転エンジン後処理システムに用いられてもよく、例えば、希薄燃焼運転エンジン後処理システム内のSCR後端に用いられる。
【0036】
具体的に言うと、アンモニア吸着触媒は単独で使用されてもよく、いくつかの実施例では、エンジン後処理システムは三元触媒(TWC)を含み、エンジン後処理システム内の処理対象気体(排気)は、まず三元触媒で処理されてからアンモニア吸着触媒で処理され、即ち、アンモニア吸着触媒はTWC後端に用いられる。他の実施例では、エンジン後処理システムは選択触媒還元(SCR)触媒を含み、エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず選択触媒還元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理され、即ち、アンモニア吸着触媒はSCR触媒後端に用いられる。
【0037】
本発明の応用は上記方法に限定されず、アンモニア吸着触媒を他の触媒(例えばTWCなど)又はその機能成分と組み合わせてもよく、例えば、いくつかの実施例では、アンモニア吸着触媒は三元触媒と調合して使用され、前記調合方法は、以下の方式A及び方式Bのうちの少なくとも1つを含み、方式A:前記アンモニア吸着触媒の吸着層と前記担体との間に三元触媒からなる三元触媒層が設けられ、方式B:前記アンモニア吸着触媒の吸着層にはさらに前記三元触媒が含有される。応用に際して、前記アンモニア吸着触媒は具体的にはエンジン後処理システム内のTWCシステムに用いられてもよい。
【0038】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施例と組み合わせて本発明の技術案を明確且つ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は本発明の実施例の一部であり、実施例の全てではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造な労働をしない前提で得た全ての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
(実施例1)
【0039】
本実施例のアンモニア吸着触媒(新鮮(Pt-ゼオライト)と記す)は担体、担体の表面に位置するアルミナコーティング層、及びアルミナコーティング層の表面に位置する吸着層からなり、ここで、アルミナコーティング層は、アルミナ材料と接着剤とをコーティングして形成され、吸着層は、白金を含有するゼオライト吸着材料(Pt-ゼオライト)と接着剤とをコーティングして形成され、
吸着層の成分は接着剤及び白金を含有するゼオライト吸着材料(Pt-ゼオライト)であり、吸着層におけるPt-ゼオライトの質量含有量が97%であり、余分が接着剤であり、
Pt-ゼオライトにおける白金の含有量が5グラム/立方フィート担体であり、
Pt-ゼオライトは、イオン交換法で白金をゼオライトに交換して得られ、使用されるゼオライトはβゼオライトであり、
Pt-ゼオライトと担体との質量体積比は150g:1L(即ちPt-ゼオライトの負荷量が150g/Lである)であり、
アルミナコーティング層と担体との質量体積比は50g:1L(即ちアルミナの負荷量が50g/Lである)であり、
担体はコージェライトである。
(実施例2)
【0040】
実施例2と実施例1との相違点は以下のとおりであり、アンモニア吸着触媒は担体及び担体の表面に位置する吸着層からなり(即ちアルミナコーティング層なし)、Pt-ゼオライトと担体との質量体積比は200g:1L(即ちPt-ゼオライトの負荷量が200g/Lである)である。
(比較例1)
【0041】
当該比較例1の触媒(新鮮(Cu-ゼオライト)と記す)は従来のASCであり、担体、担体の表面に位置するアンモニア酸化層、及びアンモニア酸化層の表面に位置するアンモニア吸着層からなり、アンモニア吸着層は、Cu-ゼオライトと接着剤とをコーティングして形成されたコーティング層であり、アンモニア酸化層は、白金が担持されたアルミナ材料と接着剤とをコーティングして形成されたコーティング層(50g/L)である。
比較例1における担体は実施例1における担体と同じであり、
比較例1のアンモニア吸着層及びアンモニア酸化層からなる総コーティング層における白金含有量は実施例1の吸着層における白金含有量と同じであり、
比較例1のCu-ゼオライトの負荷量は実施例1のPd-ゼオライトの負荷量と同じ(150g/L)である。
(比較例2)
【0042】
当該比較例2の触媒(新鮮(H-ゼオライト)と記す)と比較例1との相違点は、H-ゼオライトを用いてCu-ゼオライトを置換することであり、他の条件は比較例1と同じである。
(触媒性能テスト)
【0043】
1、触媒老化
実施例1におけるアンモニア吸着触媒を管型反応炉内に720℃で、空間速度30000hr-1を保持した条件で40時間反応させ、老化後アンモニア吸着触媒(老化(Pt-ゼオライト)と記す)を得、
上記老化プロセスに応じて、比較例1における触媒を老化し、老化後触媒(老化(Cu-ゼオライト)と記す)を得、
上記老化プロセスに応じて、比較例2における触媒を老化し、老化後触媒(老化(H-ゼオライト)と記す)を得る。
2、テスト
上記新鮮(Pt-ゼオライト)、新鮮(Cu-ゼオライト)、新鮮(H-ゼオライト)、老化(Pt-ゼオライト)、老化(Cu-ゼオライト)、老化H-ゼオライト)触媒をそれぞれ採用して以下のテスト1及びテスト2を行い、各触媒の理論空燃比運転条件でのアンモニア吸着量の温度に従う変化曲線(図2に示す)、及び希薄燃焼運転条件でのアンモニア転化率の温度に従う変化曲線(図3に示す)を測定する。
テスト1:理論空燃比運転エンジン後処理システムのTWC後の排気成分(表1におけるアンモニア吸着実験合成ガスに示す)をシミュレーションし、空間速度が170000hr-1であり、当該条件で触媒のアンモニア吸着量(貯蔵量)の温度に従う変化曲線をテストする。
テスト2:希薄燃焼運転エンジン後処理システムのSCR後の排気成分(表1におけるアンモニア酸化実験合成ガスに示す)をシミュレーションし、空間速度が170000hr-1であり、当該条件で触媒転化アンモニアの効率(アンモニア転化率)の温度に従う変化曲線をテストする。
【0044】
【表1】
【0045】
図2から分かるように、触媒のアンモニア吸着量が温度の上昇に従って減少し、新鮮(Pd-ゼオライト)のアンモニア吸着量が200℃での2.79g/Lから500℃での0.65g/Lに低下し、老化は触媒のアンモニア吸着性能にも影響を与え、老化(Pd-ゼオライト)の200℃でのアンモニア吸着量は約1.36g/Lであり、また、新鮮であっても老化後であっても、実施例1のアンモニア吸着触媒のアンモニア吸着量はいずれも比較例1及び比較例2における触媒より高く、より優れたアンモニア吸着性能及び熱安定性を示し、新鮮(Pt-ゼオライト)、新鮮(Cu-ゼオライト)、新鮮(H-ゼオライト)の200℃でのアンモニア吸着量は順で、2.79g/L、2.4g/L、2.3g/Lであり、老化(Pt-ゼオライト)、老化(Cu-ゼオライト)、老化H-ゼオライト)のアンモニア吸着量の200℃でのアンモニア吸着量は順で、1.36g/L、0.9g/L、0.67g/Lである。
【0046】
図3と組み合わせて分かるように、実施例1のアンモニア吸着触媒は、アンモニア吸着量を増加させると共に、良好なアンモニア転化性能を有し、それは比較例1おける触媒のアンモニア転化率に近接し、触媒のアンモニア転化率が温度の上昇につれて大きくなる傾向にあり、老化後触媒のアンモニア転化性能は低下するが、老化(Pt-ゼオライト)は、依然として、より高いアンモニア転化率を維持することができる。
【0047】
一般的には、理論空燃比運転エンジンの排気のアンモニア除去プロセスは、リッチ燃焼時にアンモニアを生成し且つASCなどの触媒に吸着され、リーン燃焼時にアンモニアを酸化するという2つの相対的に独立し且つ短いプロセスに分けることができ、上記したように、実施例1のアンモニア吸着触媒によるアンモニアに対する触媒酸化効率は、比較例1及び比較例2における触媒とほぼ同等であり、実施例1のアンモニア吸着触媒のアンモニア吸着量は比較例1及び比較例2の触媒より著しく優れており、且つ実施例1のアンモニア吸着触媒は、同じサイズの担体の場合、比較例1及び比較例2に比べてアンモニア吸着(ゼオライト)材料を30%まで多くコーティングすることができ、アンモニアに対する触媒酸化効率がほぼ同等である場合、アンモニア吸着量が大きいほど、排気内のアンモニアに対する除去効果がよりよくなる。
【0048】
本発明では、変量の影響をできるだけ低減するように上記実施例1を設計し、実施例1と比較例1との関連実験プロセスを列挙し、本発明のアンモニア吸着触媒が従来のASCに対して優れたアンモニア低減効果を有することが実証され、本発明は実施例2をさらに設計し、実施例2の触媒について上記のような実験を行った結果、実施例2のアンモニア吸着性能、アンモニア酸化性能及び熱安定性などの性能がいずれも実施例1のアンモニア吸着触媒よりも優れていることが示された。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されない。本願の精神と原則内で行われる任意の修正、同等の置換、及び改善などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0050】
1…吸着層、2…アンモニア酸化層、3…担体、f…気流。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア吸着触媒であって、担体と、前記担体の表面に位置する吸着層とを含み、前記吸着層は、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を含む、
ことを特徴とするアンモニア吸着触媒。
【請求項2】
前記貴金属は白金及び/又はパラジウムを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項3】
貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料における貴金属と前記担体との質量体積比は1~20グラム/立方フィートである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項4】
貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料は、イオン交換法で貴金属をゼオライトに交換して得られ、前記ゼオライトは、βゼオライト、Yゼオライト、ZSM-5ゼオライトのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項5】
前記吸着層内の貴金属を含有するゼオライト吸着材料の質量含有量は90~100%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項6】
貴金属を含有する前記ゼオライト吸着材料と前記担体との質量体積比は30~200g:1Lである、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項7】
前記担体はコージェライト、シリコンカーバイド、及び金属担体のうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1又は6に記載のアンモニア吸着触媒。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のアンモニア吸着触媒の製造方法であって、
貴金属前駆体を用いてゼオライトに対してイオン交換処理を行い、貴金属を含有するゼオライト吸着材料を得るステップと、
貴金属を含有するゼオライト吸着材料を接着剤、溶媒と混合してスラリーを製造するステップと、
前記スラリーを担体にコーティングし、乾燥、焼成した後に吸着層を形成し、前記アンモニア吸着触媒を得るステップとを含む、
ことを特徴とするアンモニア吸着触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載のアンモニア吸着触媒のエンジン後処理システムでの応用。
【請求項10】
前記エンジン後処理システムは理論空燃比運転エンジン後処理システムを含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の応用。
【請求項11】
前記エンジン後処理システムは三元触媒を含み、前記エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず三元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理され、
又は、前記エンジン後処理システムは選択触媒還元触媒を含み、前記エンジン後処理システム内の処理対象気体は、まず選択触媒還元触媒で処理されてから前記アンモニア吸着触媒で処理される、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の応用。
【請求項12】
前記アンモニア吸着触媒は三元触媒と調合して使用され、前記調合方法は、以下の方式A及び方式Bのうちの少なくとも1つを含み、
方式A:前記アンモニア吸着触媒の吸着層と前記担体との間に三元触媒からなる三元触媒層が設けられ、
方式B:前記アンモニア吸着触媒の吸着層にはさらに前記三元触媒が含有される、
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の応用。
【国際調査報告】