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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】マイクロ流体センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20231011BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20231011BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61F 2/30 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
G01L1/14 K
B81B3/00
B81C1/00
A61F2/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513872
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 GB2021052238
(87)【国際公開番号】W WO2022043709
(87)【国際公開日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】2013560.4
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501308812
【氏名又は名称】ケンブリッジ エンタープライズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】カー‐ナラヤン ソヒニ
(72)【発明者】
【氏名】ジン キンシェン
(72)【発明者】
【氏名】カーマ ジェハンガー
(72)【発明者】
【氏名】アイベス リアム
(72)【発明者】
【氏名】カーンドュヤ ビカス
【テーマコード(参考)】
3C081
4C097
【Fターム(参考)】
3C081AA18
3C081BA23
3C081BA45
3C081BA77
3C081CA25
3C081CA31
3C081CA32
3C081CA38
3C081DA10
3C081EA03
3C081EA39
4C097AA04
4C097AA07
4C097AA08
4C097AA10
4C097AA11
4C097AA12
4C097AA13
4C097BB01
4C097DD04
4C097EE09
4C097EE11
4C097EE13
(57)【要約】
マイクロ流体センサは、第1の基板と、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に形成されたキャビティであり、キャビティが、貯水部分と、貯水部分から延在する流路部分とを含むキャビティと、第1の基板と第2の基板との間に配置された容量性素子であり、容量性素子がキャビティの流路部分に少なくとも部分的に配置される容量性素子と、貯水部分に設けられた誘電性検出液体とを備える。貯水部分に隣り合った第1の基板に対する力の印加時に、貯水部分は、流路部分内で容量性素子の容量を変化させるように、流路部分に沿って検出液体を変形および変位するように構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に形成されたキャビティであり、前記キャビティが、貯水部分と、前記貯水部分から延在する流路部分とを含むキャビティと、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された容量性素子であり、前記容量性素子が前記キャビティの前記流路部分に少なくとも部分的に配置される容量性素子と、
前記貯水部分に設けられた誘電性検出液体と
を備えるマイクロ流体センサであって、
前記貯水部分に隣り合った前記第2の基板に対する力の印加時に、前記貯水部分は、前記容量性素子の容量を変化させるように、前記流路部分に沿って前記検出液体を変形および変位するように構成される、マイクロ流体センサ。
【請求項2】
前記検出液体は、10と100との間の相対誘電率を有する液体を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記容量性素子の一部分に配置された絶縁コーティングを含む、請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記貯水部分は、前記流路部分の断面積のおよそ10倍と100倍との間のより大きい断面積を有する、請求項1から3のいずれかに記載のセンサ。
【請求項5】
前記容量性素子は、前記流路部分の単一表面上に形成される、請求項1から4のいずれかに記載のセンサ。
【請求項6】
前記容量性素子は、
第1の端部から第2の端部に延在する第1の電極であり、前記第1の電極から前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する複数の分岐を有する第1の電極と、
第1の端部から第2の端部に延在する第2の電極であり、前記第2の電極から前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する複数の分岐を有する第2の電極と
を備えており、
前記第1の電極の前記複数の分岐は、前記流路部分内で前記第2の電極の前記複数の分岐と互いに噛み合うように構成される、
請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記貯水部分で前記第1の基板と前記第2の基板との間に延在する少なくとも1つの弾性変形可能部材を備える、請求項1から6のいずれかに記載のセンサ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの弾性変形可能部材は、前記第1の基板から前記第2の基板へ延在するウェルとして形成される、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記流路部分は、前記貯水部分から遠位端へ延在し、前記センサは、前記遠位端に流体出口を備える、請求項1から8のいずれかに記載のセンサ。
【請求項10】
装置であって、
請求項1に記載される第1のセンサであり、前記装置上の第1の位置において印加された第1の力を検出するように構成される第1のセンサと、
請求項1に記載される第2のセンサであり、前記装置上の第2の位置において印加された第2の力を検出するように構成される第2のセンサと
を備える装置。
【請求項11】
前記第1のセンサは第1の方向における負荷を検出するように構成され、前記第2のセンサは前記第1の方向とは異なる第2の方向における負荷を検出するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
第1の部分と、
前記第1の部分の少なくとも一部分を受けるように構成される第2の部分であり、前記第1の部分の前記一部分が前記第2の部分内で受けられたとき、前記第1の部分と前記第2の部分との間に間隙が画定されるようにする第2の部分とを備えており、
使用時において、前記第1のセンサの前記貯水部分および前記第2のセンサの前記貯水部分は、前記間隙に配置され、前記第1の部分および前記第2の部分に接触するように構成される、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の部分または前記第2の部分のいずれかは、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサを受けるための1つまたは複数の溝穴を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の部分はカップ形区分を備えており、前記第2の部分はカップ形区分を備えており、前記1つまたは複数の溝穴は、前記第1の部分または前記第2の部分の前記カップ形区分に配置される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数の溝穴を備える前記カップ形区分は第1の曲率半径を有し、前記1つまたは複数の溝穴は第2の曲率半径を有し、前記第2の曲率半径は前記第1の曲率半径よりも大きい、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサに動作接続されたプロセッサを備えており、前記プロセッサは、
前記第1のセンサから第1の信号を受信し、
前記第2のセンサから第2の信号を受信し、
前記第1の印加された力を示す第1の値を計算し、
前記第2の印加された力を示す第2の値を計算し、前記第1の値および前記第2の値を出力する
ように構成される、請求項10から15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記第1のセンサの前記容量性素子は一対の電極を備えており、前記第2のセンサの前記容量性素子は一対の電極を備えており、前記プロセッサは、前記第1のセンサおよび前記第2のセンサの前記電極にクランプによって接続される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
請求項10から17のいずれかに記載の装置を備える整形外科インプラント。
【請求項19】
前記整形外科インプラントは、足首、膝、股関節、肘、脊柱、指節間、手首、または肩のインプラントのうちのいずれかである、請求項18に記載の整形外科インプラント。
【請求項20】
マイクロ流体センサを作製する方法であって、前記方法は、
第1の基板を設けることと、
前記第1の基板上へ容量性素子を堆積することと、
前記第1の基板上に第2の基板を設けることとを含み、前記第1の基板および前記第2の基板がその間にキャビティを画定し、前記キャビティが貯水部分および前記容量性素子と整列した流路を画定し、
前記方法は、更に、誘電性液体を前記貯水部分に引き入れることを含む、方法。
【請求項21】
前記容量性素子に絶縁コーティングを堆積することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記容量性素子は第1の直径を有するプリンタ先端を用いて堆積され、前記絶縁コーティングは前記第1の直径より大きい第2の直径を有するプリンタ先端を用いて堆積される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記容量性素子および前記絶縁コーティングは、エアロゾルジェット印刷によって堆積される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の基板を設けるステップは、エラストマー材料をモールド上に堆積する前に転写シート上に前記モールドを形成することを含み、前記モールドは、前記キャビティに対応するプロファイルを有する、請求項20から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記第2の基板は、下塗り剤およびシリコーン接着剤を使用して前記第1の基板に接合される、請求項20から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
請求項19に記載の整形外科インプラントを、それを必要とする患者に移植する方法であって、前記整形外科インプラントを前記患者の体内の関節において位置決めすることと、前記整形外科インプラントを使用した前記関節の均衡を評価することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体センサ、マイクロ流体センサを作製する方法、およびマイクロ流体センサを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
力検出要件は、生物医学工学、ロボット外科手術、健康管理、および他の分野における様々な用途にわたって偏在している。例えば、膝または股関節置換手術中に、外科医は、通常、関節と隣り合った四肢を手作業で操作し、予想可動域における靭帯または骨格に起因する何らかの望ましくない抵抗を触診することによって、関節インプラントが適切に位置決めされているかを手作業で評価する。これはインプラントの固定後に関節が均衡しているかの主観的評価となるため、大部分が個々の外科医の技能に依存している。その関節が不均衡であると触診された場合、外科医は、そのインプラントを再度位置決めし、その関節が均衡しているかを再評価する。完全股関節形成術(THA)において、股関節に対する正しい力の均衡は、インプラントの寿命のために、更には修正手術が必要になることを防ぐために、重要である。
【0003】
既存の力検出装置は、抵抗、容量、磁気、光学、圧電抵抗、圧電性の検出モダリティに基づき得る。ただし、磁気素子または光学素子とそれらの検出部品とを伴う設計は、容積的に大きく、それらの電気回路へ接続する機能によって制限される。抵抗センサおよび光センサは、顕著な電力消費を伴う。応答性圧電材料の選択は限定されており、したがってその使用は、生体適合用途の場合に制限される。
【0004】
既存の容量性力センサは、通常、触覚感知などの低負荷用途で使用され、通常、平行平板電極を含み、平板間の距離、したがってその測定容量が外部負荷の印加時に変化する。このようなセンサは、負荷が印加されると変形する場合が多く、これが電極自体を変形させる。これは、容量値が、電極の実効重複領域とともに電極間の距離に比例し、電極を本質的に変形することは電極間の面積とともに電極間の距離を変化させるため、望ましくない。更に、既存の容量センサは、通常、力が印加されると容量において非線形の変化を呈し、結果として、装置感度においてばらつきが生じ、そのようなセンサの較正時に更なる問題を引き起こす。容量センサは低負荷において有効であるが、その設計は、正常な日常活動中、または関節置換手術中に人間の関節に存在する負荷などの高負荷に対しては適さない。
【0005】
マイクロ流体装置開発のための既存の微細加工プロセスは、一般的に、拡張性に対して費用効果的でなく複雑な形状試作において時間がかかるリソグラフィに基づいている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくともいくつかに対処することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様からみると、本発明は、第1の基板と、第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に形成されたキャビティであり、キャビティが、貯水部分と、貯水部分から延在する流路部分とを含むキャビティと、第1の基板と第2の基板との間に配置された容量性素子であり、容量性素子がキャビティの流路部分に少なくとも部分的に配置される容量性素子と、貯水部分に設けられた誘電性検出液体とを備えるマイクロ流体センサを提供する。貯水部分に隣り合った第1の基板に対する力の印加時に、貯水部分は、容量性素子の容量を変化させるように、流路部分に沿って検出液体を変形および変位させるように構成される。
【0008】
それによって、本発明は、低コストの作製プロセスから作製可能であって所望の力範囲を測定するように調整可能である、変形可能マイクロ流体センサを提供する。
【0009】
検出液体は、10と100との間の相対誘電率を有し得る液体を含む。
【0010】
センサは、容量性素子の一部分に配置された絶縁コーティングを備えてもよい。これは、有益なことに、誘電性液体との直接接触に起因する腐食から電極を保護する。更なる利点は、容量性素子上での機械的摩耗も低減され、これによって、特にセンサが使用時に湾曲および/または屈折されたときに、検出素子がセンサから分離するリスクを減少させる。この絶縁コーティングは、更に、より堅牢なセンサを提供する。
【0011】
貯水部分は、流路部分の断面積のおよそ10倍と100倍との間のより大きい断面積を有してもよい。
【0012】
容量性素子は、流路部分の単一表面上に形成されてもよい。容量性素子は、第1の端部から第2の端部に延在する第1の電極であり、第1の電極から第1の端部と第2の端部との間に延在する複数の分岐を有する第1の電極と、第1の端部から第2の端部に延在する第2の電極であり、第2の電極から第1の端部と第2の端部との間に延在する複数の分岐を有する第2の電極とを備えてもよい。第1の電極の複数の分岐は、流路部分内で第2の電極の複数の分岐と互いに噛み合うように構成されてもよい。これは、有益なことに、分岐が全くない平行な電極を有するセンサと比較して、マイクロ流体センサの感度を高める。
【0013】
センサは、貯水部分で第1の基板と第2の基板との間に延在する少なくとも1つの弾性変形可能部材を備えてもよい。少なくとも1つの弾性変形可能部材は、第1の基板から第2の基板へ延在するウェルとして形成されてもよい。これは、有益なことに、負荷がかかった状態で貯水部分が崩壊するリスクを減少させる。
【0014】
流路部分は、貯水部分から遠位端へ延在してもよい。センサは、遠位端に流体出口を備えてもよい。
【0015】
更なる態様からみると、装置であって、上述したような第1のセンサであり、装置上の第1の位置において印加された第1の力を検出するように構成される第1のセンサと、上述したような第2のセンサであり、装置上の第2の位置において印加された第2の力を検出するように構成される第2のセンサとを備える装置が提供される。第1のセンサおよび第2のセンサは、同一方向の負荷を検出するように構成されてもよい。このような装置は、有益なことに、装置にわたる力の分布を測定する手法を提供する。
【0016】
第1のセンサは、第1の方向における負荷を検出するように構成されてもよく、第2のセンサは第1の方向とは異なる第2の方向における負荷を検出するように構成される。これは、有益なことに、装置に印加されている力の正味の方向および大きさを判断する手法を提供する。
【0017】
装置は、第1の部分と、第1の部分の少なくとも一部分を受けるように構成される第2の部分であり、第1の部分の一部分が第2の部分内で受けられたとき、第1の部分と第2の部分との間に間隙が画定されるようにする第2の部分とを備えてもよい。使用時において、第1のセンサの貯水部分および第2のセンサの貯水部分は、間隙に配置されてもよく、第1の部分および第2の部分に接触するように構成される。これは、有益なことに、負荷測定時に使用されないセンサの部品を保護する手法を提供し、測定された負荷がセンサの力検出部品に印加されることを確実にする。
【0018】
第1の部分または第2の部分のいずれかは、第1のセンサおよび第2のセンサを受けるための1つまたは複数の溝穴を備えてもよい。第1の部分はカップ形区分を備えてもよく、第2の部分はカップ形区分を備えてもよい。1つまたは複数の溝穴は、第1の部分または第2の部分のカップ形区分に配置されてもよい。センサ配列を固定するために溝穴を使用することは、有益なことに、装置へセンサを固定する受動的手法を提供する。カップ形区分に溝穴を形成することは、更に、インプラントにおいて既存の材料を利用し、したがって、適切な位置にセンサ配列を固定するために追加の固定材料または装置が必要ないため、インプラントの全体的な厚さを減少させる。
【0019】
1つまたは複数の溝穴を備えるカップ形区分は第1の曲率半径を有してもよく、1つまたは複数の溝穴は第2の曲率半径を有してもよい。第2の曲率半径は第1の曲率半径よりも大きくてもよい。
【0020】
装置は、第1のセンサおよび第2のセンサに動作接続されたプロセッサを備えてもよい。プロセッサは、第1のセンサから第1の信号を受信し、第2のセンサから第2の信号を受信し、第1の印加された力を示す第1の値を計算し、第2の印加された力を示す第2の値を計算し、第1の値および第2の値を出力するように構成されてもよい。
【0021】
第1のセンサの容量性素子は一対の電極を備えてもよい。第2のセンサの容量性素子は一対の電極を備えてもよい。プロセッサは、第1のセンサおよび第2のセンサの電極にクランプによって接続されてもよい。
【0022】
更なる態様からみると、上述した装置を備える整形外科インプラントが提供される。整形外科インプラントは、足首、膝、股関節、肩、肘、脊柱、手首、または指節間のインプラントのうちのいずれかでもよい。装置は、人間または動物の整形外科インプラントでもよい。
【0023】
更なる態様からみると、マイクロ流体センサを作製する方法であって、方法は、第1の基板を設けることと、第1の基板上へ容量性素子を堆積することと、第1の基板上に第2の基板を設けることとを含み、第1の基板および第2の基板がその間にキャビティを画定し、キャビティが貯水部分および容量性素子と整列した流路を画定し、方法は、更に、誘電性液体を貯水部分に引き入れることを含む、方法が提供される。
【0024】
これは、有益なことに、所望の荷重範囲についての所望の応答を提供するように容易に調節可能なマイクロ流体センサを作製する低コストの方法を提供する。
【0025】
上記方法は、容量性素子に絶縁コーティングを堆積するステップを含んでもよい。
【0026】
容量性素子は、第1の直径を有するプリンタ先端を用いて堆積されてもよく、絶縁コーティングは第1の直径より大きい第2の直径を有するプリンタ先端を用いて堆積されてもよい。より幅が広いプリンタ先端を使用することによって、容量性素子は、容量性素子を堆積するために使用される同一の経路をたどるときに絶縁コーティングによって完全に被覆される。
【0027】
容量性素子および絶縁コーティングは、エアロゾルジェット印刷によって堆積され得る。
【0028】
第1の基板を設けるステップは、エラストマー材料をモールドに堆積する前に転写シート上にモールドを形成することを含んでもよい。モールドは、キャビティに対応するプロファイルを有してもよい。
【0029】
第2の基板は、下塗り剤およびシリコーン接着剤を使用して第1の基板に接合されてもよい。これは、有益なことに、異なる剛性を有する材料間で液密封止を形成可能な接着剤を提供する。
【0030】
整形外科インプラントを、それを必要とする患者に移植する方法であって、整形外科インプラントを患者の体内の関節において位置決めすることと、整形外科インプラントを使用した関節の均衡を評価することとを含む方法が更に提供される。
【0031】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して以下に更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】例示的なマイクロ流体センサの斜視図である。
図2図1のマイクロ流体センサの下面図である。
図3図1のマイクロ流体センサの貯水部分を形成するために使用されるモールド材料の走査電子顕微鏡画像を示す図である。
図4】マイクロ流体センサを作製する例示的な方法を示す図である。
図5】マイクロ流体センサを作製する例示的な方法の概略図である。
図6】異なる例示的なマイクロ流体センサについての力に対する容量のグラフである。
図7】マイクロ流体センサの配列を有する例示的な整形外科股関節インプラントの概略図である。
図8図7のインプラントの拡大図である。
図9図7で使用されているインプラントの概略図である。
図10図7のインプラントの例示的な荷重シナリオを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、例示的なマイクロ流体センサ100の斜視図である。センサ100は、容量性素子110が形成されたポリイミド層105と、ポリイミド層105に接合されたエラストマー基板120とを備える。エラストマー基板120は、誘電性液体135を受けるために形成されたキャビティを有する。このキャビティは、第1の流路部分130a、第2の流路部分130b、及び第1の流路部分130aと第2の流路部分130bとの間に配置された貯水部分125を備えており、流体が第2の流路部分130bから第1の流路部分130aへ通過することを可能にする。容量性素子110は、センサ100の容量を測定するための外部インピーダンスアナライザ(不図示)と接続するために、第1の電極115aおよび第2の電極115bに接続される。第1の流路部分130aは、容量性素子110上に構成されることが好ましい。エラストマー基板120は、更に、エラストマー基板120の外面に配置された力検出面126を備える。この力検出面126は、貯水部分125上に構成されることが好ましい。エラストマー基板120は、更に、第1の流路部分130aと流体連結する流体出口122を備える。流体出口122は、空気などの流体をキャビティ内部から排出可能にする。誘電性液体135は、流路部分130a、130bおよび貯水部分125の内部に配置される。力検出面126への負荷印加時に、エラストマー基板120は変形し、誘電性液体135を、貯水部分125から出るように変位させて、容量性素子110上で長手方向に第1の流路部分130aに沿って移動させる。マイクロ流体センサ100の非変形状態では、誘電性液体135が貯水部分125内に含まれることが好ましい。流路部分130a内に誘電性液体135が存在しないことが好ましいが、当然ながら、場合によっては少量の誘電性液体135が流路部分130a内に存在する場合があり、容量性素子110の少なくともいくつかが誘電性液体135によって被覆されない状態のままの場合がある。マイクロ流体センサ100の変形状態では、流路部分130a内の容量性素子110の容量を変更するために、誘電性液体135が流路部分130aに沿って変位される。それにより、力検出面126がポリイミド層105に対して変形するが、負荷が力検出面126に印加された時、更に誘電性液体135が流路部分130aに沿って変位された時に、容量性素子110の構成要素は、互いに対して固定位置に残る。この動作方法は、先行技術のセンサと比較すると、非常に大きな範囲の力が測定されることを可能にする。同様に、負荷検出面126が変形された時に流路部分130aを構成するエラストマー基板120が変形されない状態のままであることが好ましい。本マイクロ流体センサ100において、容量性素子110上方の誘電環境は容量性素子110の被覆範囲に依存する。流路部分130aから分離した負荷検出面126を変形することによって、貯水部分125の容積が減少し、誘電性液体135が貯水部分125から流路部分130a内部に変位される。これは、誘電性液体135によって被覆される容量性素子110の面積を増加させ、流路部分130aにおける容量性素子110の誘電環境を変化させる。すなわち、本マイクロ流体センサ100は、電極115a、115b間の距離を変更せずに容量の変化を測定する。有益なことに、これは、電極115a、115b間の距離から独立して負荷を検出でき、更に、任意の基準圧力または容量値から独立したマイクロ流体センサ100を提供する。図示するように、容量性素子110および第1の流路部分130aは、長手方向に垂直なほぼ同一の幅を有する。ただし、当然ながら、これは必須ではなく、場合によっては、第1の流路部分130aが、容量性素子110よりも大きい幅を有し得る。場合によっては、第1の流路部分130aが、容量性素子110よりも小さい幅を有し得る。場合によっては、第2の流路部分130bが全体として省略されてもよい。第1の電極115aおよび第2の電極115b、ならびに容量性素子110は、銀を含有することが好ましい。
【0034】
ポリイミド層105は、膜として形成されることが好ましい。ポリイミド層105が本明細書で説明されるが、当然ながら、これは、容量性素子110を堆積する適切な層の例に過ぎず、他の層も適する場合がある。例えば、容量性素子110は、およそ1から5GPa、好ましくは2から4GPaの間のヤング率、およそ50μmから100μmの間の厚さを有する材料、カプトン(ポリイミド)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、およびポリメチルメタクリレート(PMMA)材料のうちのいずれかを含む層上に形成され得る。可撓性基板を提供することによって、本マイクロ流体センサ100は、高可撓性であり、多種多様な形状に適合できる。このような適合可能なマイクロ流体センサ100は、関節の表面の形状が大幅に不規則および/または非平面となり得る特に整形外科用途に適している。容量性素子110の全部品がポリイミド層105に接合されることが好ましい。
【0035】
エラストマー基板120は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を有することが好ましい。ただし、更に、または代わりとして、エラストマー基板120は、ポリウレタン、Ecoflexなどのシリコーン材料、低密度ポリエチレン(LDPE)、およびおよそ0.5MPaから500MPaの間のヤング率を有する材料のうちのいずれかを含んでもよい。所与のセンサ100が測定できる力の範囲は、エラストマー基板120の剛性に反応することが望ましいとされている。したがって、エラストマー基板120用に材料を適切に選択することによって、所与の力検出用途についてセンサ100を「調整する」ことが可能である。
【0036】
2:1の容積比でグリセロールおよび脱イオン水を含有する誘電性液体135は、本センサのための有効な作動液であるとされている。この比率は、脱イオン水の揮発性と純粋グリセロールの相対的に低い誘電率(水と比較した場合)との均衡を保つとされている。ただし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの他の誘電性液体135も適し得る。好ましくは、誘電性液体135は、100ピコファラッド未満の目標容量を生成するために、およそ10と100との間の相対誘電率を有する(図6も参照)。より好ましくは、誘電性液体135は、およそ30と80との間の相対誘電率を有する。
【0037】
図示される貯水部分125は、ほぼ正方形の断面プロファイルを有し、力検出面126は、およそ4mmの面積を有する。ただし、当然ながら、これは必須ではなく、貯水部分125は、ほぼ円形のプロファイルなどの他の断面プロファイルを有してもよく、4mmより大きくても小さくてもよい。
【0038】
本センサは、形成する際に使用可能な材料の範囲に起因して多用途に適している。例えば、5mmの幅、およそ3cmの長さ、および1mm未満の厚さを有するセンサ100となるように、PDMSを含有するポリイミド層105およびエラストマー基板120は形成され得る。これによって、センサは、凹または凸形状になるように湾曲しやすくなることが可能であり、各センサが10Nの力まで確実に測定できるため、本センサを幅広い範囲の力検出用途において使用可能とする。当然ながら、形状または材料の1つまたは複数のパラメータを変更することによって、この力検出範囲は必要に応じて操作可能である。エラストマー基板120の形状特性および材料特性を適切に適合することによって、100Nを超える力検出範囲を達成できる。
【0039】
図2は、図1のマイクロ流体センサ100の下面図である。図示された容量性素子110は、第1の流路部分130aの下方でほぼ直線方向に延在するポリイミド層105に形成された第1の電極115aおよび第2の電極115bを含む。第1の電極115aおよび第2の電極115bの各々は、更に、そこからそれぞれの電極115a、115bの垂直方向に延在する一連の分岐117a、117bを有する。第1の電極115aの分岐117aが第2の電極115bの分岐117bと交互に互いに噛み合うように、分岐117a、117bは、互いに噛み合うように構成される。これは、分岐117a、117bがない場合と比較して、検出素子110の感度を大幅に向上する。検出素子110は、更に、絶縁コーティング175によって少なくとも部分的に被覆される(図4e参照)。絶縁コーティング175は、誘電性液体135と、検出素子110の被覆部分との間に物理的接触がないことを確実にすることによって保護バリアを提供する。したがって、誘電性の検出液体135が第1の流路部分130bに沿って変位されると、これは、第1の流路部分130a内の誘電率に変化を生じさせ、それによって結果的に第1の流路部分130a内の材料の容量に検出可能な変化が生じる。絶縁コーティング175は、センサ100で使用される特定の誘電性液体135に対して安定した前駆液となり得る任意の非導電性材料を含む。好ましくは、この前駆液は、1000センチポアズ(cP)未満の粘度を有する。好ましくは、絶縁コーティング175は、20μm未満の厚さを有する連続薄膜である。絶縁コーティング175は、ポリイミド(カプトン)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリウレタン、およびナイロンのうちのいずれかを含有し得る。第1の電極115aおよび第2の電極115bをポリイミド層105上に構成することによって(すなわち、容量性素子110の構成部分はポリイミド層105に構成される)、第1の電極115aと第2の電極115bとの間の距離は、力検出面126に外部負荷がかかって変形されると、マイクロ流体センサ100の動作全体にわたって固定のままとなる。更に、当然ながら、検出素子110が図2に図示されるように流路部分130aに制限されることは必須ではない。
【0040】
第1の電極115aの端部領域112aおよび第2の電極115bの端部領域112bは、絶縁コーティング175によって被覆されない。これは、電極115a、115bと、第1の流路部分130a内の容量を測定するために使用されるインピーダンスアナライザとの電気的接続を確立するための便利な点を提供する。一例として、インピーダンスアナライザ(不図示)は、可撓性のプリント回路コネクタを使用して電極115a、115bにクランプ可能である。可撓性のプリント回路との安定した接続を実現するために、ポリイミド層105の一部分は、電極115a、115bをクランプするために使用される可撓性のプリント回路コネクタの形状に対応するように切り抜かれる。インピーダンスアナライザが説明されるが、当然ながら、これは、センサ100との接続に適した一装置に過ぎず、他の装置も同等に適し得る。
【0041】
図3は、マイクロ流体センサ100(図4参照)の貯水部分125を形成するために使用されるモールド材料145の走査電子顕微鏡画像を示す図である。図示されたモールド材料145は、9つの空隙147と第1の分岐146aおよび第2の分岐146bとを有する。これは、9つのウェルの配列と第1の流路部分130aおよび第2の流路部分130bとを有する対応プロファイルを有する貯水部分125を形成する。このウェル配列は、負荷がかけられたときに貯水部分125が崩壊することを防ぐように作用する。好ましくは、これらのウェルは、エラストマー層120の厚さを通って延在する。場合によっては、ウェルは、エラストマー基板120からポリイミド層105へ延在する。9つのウェルが図示されるが、当然ながら、モールド材料145における空隙147の数または形状を修正することによって、より多くのウェルまたはより少ないウェルが貯水部分125内に設けられてもよい。例えば、単一のウェルが使用されてもよく、または16個のウェルが貯水部分125に含まれてもよい。ウェルは、貯水部分125の容積のおよそ10%から30%の間を占有するように分布されてもよい。また、任意のウェルまたは支柱が貯水部分125内に存在することは必須ではない。場合によっては、貯水部分125の崩壊を防止するためには、PDMSよりも高い剛性の材料の使用が十分である。これは、ウェルまたは支柱を備える貯水部分125と比較すると、センサ100の感度を向上するという更なる利点を有する。
【0042】
図4は、マイクロ流体センサを作製する例示的な方法を示す図である。図示される方法は、モールド材料145を転写シート142上に堆積することから開始する(図4a)。モールド材料145は、好ましくはエアロゾルジェット印刷などの付加的な作成技法を使用してキャビティの形状に堆積される。塩化ナトリウムは、プリンタ先端140を使用して「インク」として転写シート上に堆積可能なモールド材料の一例である。転写シート142は、アルミニウム膜でもよい。付加的な作製技法の使用によって、堆積されたモールド材料145の形状に対する微細な制御が可能となり、したがってエラストマー基板120が形成されたときに結果としてキャビティが形成される。一例では、モールド材料145は、2mm×2mm×0.3mm(長さ×幅×深さ)の寸法を有する直方体として堆積され、20mm×0.5mm×0.2mm(長さ×幅×深さ)の寸法を有する細長い区分に接続される。それに応じて、モールド材料145は、エラストマー基板120に存在する何らかのウェルの外形を規定するように堆積または成形され得る。当然ながら、エアロゾルジェット印刷は、モールド材料145を堆積する例示的な方法として記載されているのに過ぎず、他の技法も適し得る。例えば、3Dプリンタを使用したモールド材料145の堆積が適し得る。3D印刷されたモールドが使用される場合、転写シート142を設ける必要はない。
【0043】
次いで、液体材料150は、モールド材料145の上部に注がれて、エラストマー基板120を形成するために硬化される(図4b)ことが可能である。次いで、転写シート142は、キャビティ内のモールド材料145を露出する(図4c)ためにエラストマー基板120から剥離されることが可能であり、それによって、次いで、モールド材料145は、流体の流れ155を使用して流されることが可能であり、所望のキャビティを有する結果的なエラストマー基板120を提供する。第1の流路部分130aの遠位端(すなわち、貯水部分125と逆の端部)は、空気に対して開放された流体出口122を有する。これによって、負荷検出面126が変形されたとき、更に誘電性液体135が流路部分130aを通って変位されたときに誘電性液体135の圧力が比較的一定のままであることを可能にする。また、当然ながら、所望の形状でエラストマー基板120を3D印刷することが可能であり、それによってエラストマー基板120を形成するために、モールド材料145を堆積するステップ、および液体材料150をモールド材料145上へ注ぐステップを回避する。
【0044】
一例として、電極115a、115bおよび分岐117a、117bは、エアロゾルジェット印刷を使用して銀を堆積することによって、ポリイミド層105上に形成される。ある場合では、電極115a、115bと分岐117a、117bとは、検出素子110を形成するためにプリンタ先端160を使用して堆積される(図4d)。第2のプリンタ先端170は、次いで、検出素子110上に絶縁コーティング175を堆積するために使用される。好ましくは、絶縁コーティング175は、検出素子110と同一パターンで堆積される(図4e)。より幅の広いプリンタ先端(例えば、電極115a、115bを堆積するために使用される150μmの先端と比較した場合の300μmの先端)を使用することによって、液体絶縁性材料は、電極115a、115bおよび分岐117a、117bの領域上およびその周辺を流れることができ、それによって、上述したように電気的接続を確立するために被覆されない状態が保たれる端部112a、112bを除いて、電極115a、115bおよび分岐117a、117bが絶縁コーティング175によって完全に被覆されることを確実にする(図4f)。電極115を印刷するためのプリンタ先端160は、100μmと150μmとの間の直径を有し得る。絶縁コーティング175を印刷するためのプリンタ先端170は、250μmと300μmとの間の直径を有し得る。
【0045】
エラストマー基板120は、次いで、液密封止を確立する接着剤を使用してポリイミド層105に取り付けられる(図4g)。この接着剤は、下塗り剤と、シリコーン接着剤とを含み得る。下塗り剤とシリコーン接着剤との組み合わせが説明されるが、当然ながら、両方が必須ではない。場合によっては、シリコーン接着剤が使用されて、下塗り剤なしでポリイミド層105をエラストマー基板120に接合してもよい。ただし、エラストマー基板120がエラストマー基板120よりも高剛性の層に接合されるとき、下塗り剤は、シリコーン接着剤を用いて良好な接着力を実現するために、高剛性の層の表面特性を修正するために使用可能である。よって、下塗り剤は、有益なことに、シリコーンなどのより軟性の材料を、ポリイミド層105などのより剛性の材料に接着可能とする。
【0046】
ポリイミド層105をエラストマー基板120に取り付けると、第1の流路部分130aは互いに噛み合った分岐117a、117bと整列される(図2)。これは、適切な整列を容易にするために、顕微鏡下で行われてもよい。センサ100は、次いで、メスまたはレーザカッタを使用するなど、手動または自動化された切削技法を使用して適切なプロファイルとなるように任意で特化可能である。センサ100の所望の形状が得られると、誘電性液体135は貯水部分125に引き入れられることが可能となる。図4hに図示するように、これを実現する一手法は、誘電性液体135が第2の流路部分130bおよび貯水部分125を満たすまで、誘電性液体135を第2の流路部分130bを介して貯水部分125に注入することである。図4hに示すように、満量線185まで第1の流路部分130aを満たすことは、貯水部分125が完全に満たされることを確実にする一手法である。次いで、注入口は、ポリイミドテープなどのテープで封止される。代替として、注入口は、シリコーン接着剤で封止可能である。次いで、電極115a、115bは、可撓性のプリント回路コネクタ(不図示)を使用して容量測定のために接続可能である。
【0047】
上記で説明され図4に図示された作製方法は、図5に示すように、ポリイミド層105を設けるステップ205と、ポリイミド層105上へ容量性素子110を堆積するステップ210と、ポリイミド層105上にエラストマー基板120を設けるステップ215と、誘電性液体135を貯水部分125に引き入れるステップ220とを含むように総括され得る。
【0048】
本出願のセンサから得られる典型的な力-容量測定値が図6に示される。貯水部分125に印加された負荷が増加すると、印加された力とおよそ9Nまでの容量の対応する変化との間には直線関係が存在する。この直線関係は、3.7pF/Nの感度を有するセンサを示す。この直線関係は、エラストマー基板120の弾性変形を反映しており、貯水部分125内の容積を減少させ、誘電性液体135が第1の流路部分130aを通って変位されたときに電極115a、115b間での容量の対応変化につながる。比較すると、並列電極(図6下線)は、0.55pF/Nの感度という大幅な減少を示す。
【0049】
更に、貯水部分125および/または第1の流路部分130aの形状を修正することによって、所与のセンサの感度および/または測定可能な力範囲を変更することが可能である。例えば、所与のサイズの貯水部分125について、容量性素子110の互いに噛み合った部分の幅よりも狭くなるように第1の流路部分130aの幅を減少させることによって、第1の流路部分130aと容量性素子110の互いに噛み合う部分が同一の幅を有する場合と同様の感度を示す。ただし、誘電性液体135を流体出口122へ変位させるためには、貯水部分125の変形はわずかでよいため、上記の力検出範囲はより小さい。逆に、第1の流路部分130aが容量性素子110の互いに噛み合った部分よりも幅が広いとき、より大きな測定範囲が得られるが、第1の流路部分130aが狭いときと比較して容量性素子110の単位部分を被覆する誘電性液体135の容積が大きくなるため、感度は小さくなる。同様に、貯水部分125上方のエラストマー基板120の厚さを修正することによって、センサ100の感度を変えることが可能である。例えば、厚いエラストマー基板120ほど剛性が高まり、したがって所与の負荷下ではあまり変形しない。これは、所与の負荷に対して貯水部分125内の容積の減少がより少なくなり、結果として、測定範囲が増加し、センサ100の感度が減少する。この効果は、0.5mmと2mmとの間の厚さを有するエラストマー基板120について認められるものである。力検出面126は、流体の流れの方向に垂直な第1の流路部分130aの断面積の10倍と100倍との間の面積を有し得る。
【0050】
所与のセンサ100は、特定の形状特性および材料特性を有する場合があり、したがって特定のセンサの力-容量関係を判断するために較正を必要とする場合がある。この較正プロセスは、既知の力をセンサ100に印加することと、電極115a、115b間の結果的な容量を測定することとを伴う。したがって較正曲線は、使用中にセンサ100に印加される未知の負荷を後に測定できるように、各センサに対して設定され得る。好ましくは、印加された力を判断するために使用される較正データは、図6に示される力容量曲線の直線領域である。本センサによって測定される容量は、第1の流路部分130a内の誘電性液体の変化容積によって決定される。このアプローチは、有益なことに、誘電性液体と電極115a、115bとの間の直接的な接触を必要としない。インピーダンスアナライザは、未知の力がセンサ100に印加されたときのセンサの容量応答を測定するために使用可能である。この容量値は、次いで、事前に得られた較正データを使用して力測定値に変換される。
【0051】
図7は、マイクロ流体センサの配列325を有する例示的な整形外科股関節インプラント310の概略図である。図8も参照する。装備された股関節インプラント310は、インナーカップ320と、放射状に配置されたマイクロ流体センサの配列325と、アウターカップ315とを備える。アウターカップ315は、患者に移植される寛骨臼カップ330に固定される。アウターカップ315は、更に、インナーカップ320およびセンサ配列325を受けるように成形されており、センサ配列325のセンサのうちの1つまたは複数を受けるための1つまたは複数の溝穴を備える。この溝穴は、センサ配列325の各センサの貯水部分125がアウターカップ315の内面を越えて突出するように、アウターカップ315の内面上に構成される。これによって、それぞれの第1の流路部分130aなどのセンサ100の残りの部分が、インナーカップ320とアウターカップ315との間に印加された負荷から保護されることが確実となる。インナーカップ320とアウターカップ315との間の間隙に貯水部分125のみ配置することによって、これは、大腿骨頭305によって印加される負荷が各センサ100のそれぞれの力検出面126に伝達されセンサの他の部分に伝達されないことを確実にする。これを実現する一手法は、アウターカップ315が第1の曲率半径を有する内面を有するように設けて、溝穴が第1の曲率半径よりも大きい第2の曲率半径を有するようにすることである。これによって、アウターカップ315の縁辺から中心に向かって進むにつれて深さが減少する溝穴が形成される。貯水部分(例えばセンサ325cの315c)が全てアウターカップ315の中心と隣り合って配置されるように(すなわち、各流路部分内の流れの方向がアウターカップ315の中心から離れているように)、センサ配列325の各センサが構成される。組み立てられると、先細の溝穴は、溝穴から出て間隙に入るように貯水部分125を隆起させる。溝穴がアウターカップ315に形成されるとして説明されたが、当然ながら、これは必須ではなく、場合によっては、センサ配列325を受けて保護するための必要な窪みを設けるために、溝穴の一部または全部がインナーカップ320の外面に形成されてもよい。
【0052】
図9および図10に示すように、センサの配列325は、大腿骨頭305と寛骨臼カップ330との間に印加された正味の力を判断する手法を提供する。股関節インプラント310におけるそれぞれの貯水部分125の異なる位置の各々で測定された力をマッピングすることによって、インプラント310内の力の分布をマッピングして正味の力の方向および大きさを導出することが可能になる。図中に示される数値は、大腿骨頭に印加された既知の負荷に対する測定負荷の比率に対応する。図10に図示される異なる荷重シナリオは、縦軸を基準として10度の既知の負荷を印加することに対応し、インプラント310は、ほぼ水平の平面を形成するアウターカップ315の縁辺によって水平配向で固定される。6つのセンサが図示されるが、当然ながら、6つより多いセンサまたは6つより少ないセンサが使用されてもよい。センサの数および構成も、特定の用途に依存する。
【0053】
このようなインプラントは、整形外科の状況において特に有益となる場合があり、装備された構成要素によって特定の関節がどの程度均衡しているか、更にそれらの構成要素のいずれかの位置が修正を必要とするかを外科医が客観的に測定することを助け得る。図10に示す手法と同様にして、異なる配向における正味の力と力の大きさとを判断することによって、本センサは、関節が均衡しているか否かを通知するのを助け得る。装備された股関節インプラントが患者に移植されると、生体内関節荷重の長期監視を実現し得る。インプラント310からのデータ通信を容易にするために、インプラント310は、外部受信機へ荷重データを送信するための通信モジュールを備えてもよい。この外部受信機は、受信データを表示するためのディスプレイに接続され得る。
【0054】
股関節インプラントが説明されたが、当然ながら、本インプラント構成は、他のボールソケット関節(肩など)、または蝶番関節(肘、膝、または足首)、または手もしくは足の小関節(手および足の指骨間関節など)での使用に適している。図7に示すように、半球シェルを組み込むことは必須でない場合があるが、上記インプラントは、依然として2つのカップ形部分を組み込み得る。これによって、センサ配列が上述した手法で装置内に固定されることが可能になり得る。荷重用途の範囲において所望の手法で協働できる一対の面を設けるために、カップ形部分は、10度と80度との間の角度に内在し得る。同様に、センサは、装備された整形外科インプラントの文脈で説明されたが、当然ながら、これは、本マイクロ流体センサ100の利点を利用する一種の装置に過ぎない。力測定のために以前に装備された靴またはスポーツ用品などの整形外科インプラント外部の他の装置は、説明するマイクロ流体センサ100の汎用性の利点を利用し得る他の用途を実現する。
【0055】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体において、「備える」および「含む」という語およびそれらの変形は、「含むが限定されない」ことを意味し、他の部分、付加物、構成要素、完全体、またはステップを排除することが意図されていない(排除しない)。本明細書の説明および特許請求の範囲全体において、文脈が必要としない限り、単数形は複数性を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈が必要としない限り、複数性とともに単数性を企図すると理解されたい。
【0056】
本発明の特定の態様、実施形態または例と併せて説明された特徴、完全体、特性、またはグループは、それと矛盾しない限り、本明細書で説明される任意の他の態様、実施形態、または例に適用可能であることを理解されたい。本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示される特徴の全て、および/またはそのように開示される任意の方法またはプロセスのステップの全ては、上記特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互排他的である場合の組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本発明は、あらゆる前述の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示される特徴の任意の新規の1つまたは任意新規の組み合わせ、あるいはそのように開示されたあらゆる方法またはプロセスのステップの任意の新規の1つまたは任意の新規の組み合わせまで拡大する。
【符号の説明】
【0057】
100 マイクロ流体センサ
105 ポリイミド層
110 容量性素子
112a、112b 端部
115a、115b 電極
117a、117b 分岐
120 エラストマー基板
130a、130b 流路部分
135 誘電性液体
310 インプラント
315 アウターカップ
320 インナーカップ
325 マイクロ流体センサの配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】