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特表2023-543697SCR触媒組成物及び該触媒組成物を含むSCR触媒物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】SCR触媒組成物及び該触媒組成物を含むSCR触媒物品
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/30 20060101AFI20231011BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231011BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20231011BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231011BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231011BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20231011BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20231011BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
B01J23/30 A ZAB
B01D53/94 222
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/28 301C
F01N3/28 301E
F01N3/24 E
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/035 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516778
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2021075424
(87)【国際公開番号】W WO2022058404
(87)【国際公開日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】20197042.3
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マッティア・シスト
(72)【発明者】
【氏名】エルサ・ブリクス・ロデルン
(72)【発明者】
【氏名】エロディ・クィネット
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ハヴガールド・ステフェンセン
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・マリオン・ガブリエルソン
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB13
3G091BA02
3G091BA07
3G091CA17
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3G190CB26
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4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒組成物であって、Vとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて2.0~4.0重量%の量のバナジウムの少なくとも1つの酸化物、WOとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて2.5~7.2重量%の量の少なくとも1つのタングステンの酸化物、Sbとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて0.6~3.4重量%の量の少なくとも1つのアンチモンの酸化物、ZrOとして計算して該触媒の総重量に基づいて0~1.0重量%の量の少なくとも1つのジルコニウムの酸化物、及びTiOとして計算して該触媒の総重量に基づいて84.6~94.9重量%の量の少なくとも1つのチタンの酸化物からなり、V、WO、Sb、TiO及び任意でZrOとしてそれぞれ計算してバナジウム、タングステン、アンチモン、チタン及び任意でジルコニウムの酸化物の重量割合が合計で100重量%になる、触媒組成物を開示する。更に、本発明によるSCR触媒組成物がコーティングの形態で付着されている、SCR触媒物品を開示する。好適な触媒担体は波形基材及びコージライトモノリスである。SCR触媒物品は、リーンバーン内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物の還元のための方法において使用することができ、それらは更に、ディーゼル排気ガスの処理のための排気ガス浄化システムに含めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒組成物であって、
-Vとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて2.0~4.0重量%の量の少なくとも1つのバナジウムの酸化物、
-WOとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて2.5~7.2重量%の量の少なくとも1つのタングステンの酸化物、
-Sbとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて0.6~3.4重量%の量の少なくとも1つのアンチモンの酸化物、
-ZrOとして計算して前記触媒の総重量に基づいて0~1.0重量%の量の少なくとも1つのジルコニウムの酸化物、
-及びTiOとして計算して前記触媒の総重量に基づいて84.6~94.9重量%の量の少なくとも1つのチタンの酸化物からなり、
、WO、Sb、TiO及び任意でZrOとしてそれぞれ計算してバナジウム、タングステン、アンチモン、チタン及び任意でジルコニウムの酸化物の重量割合が合計で100重量%になる、触媒組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのチタンの酸化物が二酸化チタンTiOであり、それが少なくとも95重量%のアナターゼを含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
触媒組成物であって、
-Vとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて2.0~4.0重量%の量の少なくとも1つのバナジウムの酸化物、
-WOとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて2.5~7.2重量%の量の少なくとも1つのタングステンの酸化物、
-Sbとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて0.6~3.4重量%の量の少なくとも1つのアンチモンの酸化物、
-及びTiOとして計算して触媒の総重量に基づいて85.6~94.9重量%の量の少なくとも1つのチタンの酸化物からなり、
、WO、Sb、及びTiOとしてそれぞれ計算してバナジウム、タングステン、アンチモン及びチタンの酸化物の重量割合が合計で100重量%になる、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
触媒組成物であって、
-Vとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて2.0~4.0重量%の量の少なくとも1つのバナジウムの酸化物、
-WOとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて2.5~7.2重量%の量の少なくとも1つのタングステンの酸化物、
-Sbとして計算して前記触媒組成物の総重量に基づいて0.6~3.4重量%の量の少なくとも1つのアンチモンの酸化物、
-ZrOとして計算して前記触媒の総重量に基づいて0.2~1.0重量%の量の少なくとも1つのジルコニウムの酸化物、
-及びTiOとして計算して前記触媒の総重量に基づいて84.6~94.7重量%の量の少なくとも1つのチタンの酸化物からなり、
、WO、Sb、TiO及びZrOとしてそれぞれ計算してバナジウム、タングステン、アンチモン、チタン及びジルコニウムの酸化物の重量割合が合計で100重量%になる、請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のSCR触媒組成物がコーティングの形態で付着されている触媒基材を含む、SCR触媒物品。
【請求項6】
前記触媒基材が波形基材及びコージライトモノリスから選択される、請求項5に記載のSCR触媒物品。
【請求項7】
前記触媒基材がウォールフローフィルタ及びフロースルー基材から選択されるコージライトモノリスである、請求項6に記載のSCR触媒物品。
【請求項8】
リーンバーン内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物の還元方法であって、
-窒素酸化物を含有する前記排気ガスに還元剤を添加する工程と、
-窒素酸化物を含有する排気ガスと還元剤とを含有する得られた排気ガス混合物を請求項5~7のいずれか一項に記載の触媒物品に通す工程と、を含む、方法。
【請求項9】
ディーゼル排気ガスの処理のための排気ガス浄化システムであって、
-酸化触媒、
-ディーゼル粒子フィルタ、及び
-請求項5~7のいずれか一項に記載の触媒物品
又は
-酸化触媒、及び
-ディーゼル粒子フィルタであって、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒組成物がコーティングとしてその上に存在する、ディーゼル粒子フィルタを含む、排気ガス浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの酸化物からなる、SCR触媒組成物に関する。更に、該触媒組成物を含む、SCR触媒物品を開示する。本発明によるSCR触媒組成物及び該SCR触媒組成物を含むSCR触媒物品は、リーン燃焼(lean combustion)エンジン、特にディーゼルエンジンの排気の浄化に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
主にリーン運転の燃焼エンジンを有する自動車からの排気ガスは、具体的には、粒子の排出に加えて、一次排出物の一酸化炭素CO、炭化水素HC、及び窒素酸化物を含有する。最大で15体積%(vol%)という比較的高い酸素含量のため、一酸化炭素及び炭化水素は酸化によって比較的容易に無害化することができる。しかし、窒素酸化物を窒素に還元することは、はるかに困難である。
【0003】
酸素の存在下で排気ガスから窒素酸化物NOを除去するための既知の方法は、好適な触媒上でのアンモニアによる選択的触媒還元(選択的接触還元)(SCR法)である。この方法では、排気ガスから除去されるべき窒素酸化物が、アンモニアを使用して窒素及び水に変換される。一酸化窒素NO及び二酸化窒素NOはNOとしてまとめられる。
【0004】
選択的触媒還元(SCR)は下の反応スキームに従ってSCR触媒の存在下で行われる。
4NO+4NH+O → 4N+6HO (1)
NO+NO+2NH → 2N+3HO (2)
6NO+8NH → 7N+12HO (3)
2NO+4NH+O → 3N+6HO (4)
【0005】
反応1及び反応2は主要な反応であり、変換される各NO1モルあたり、1モルのアンモニアが消費される。反応3及び反応4は、NOの大部分がNOとして存在するガスで起こる。150~480℃の温度で反応を起こさせるために触媒が使用される。最も一般的なSCR触媒のタイプは、二酸化チタン(TiO)担体系上の活性化合物としての酸化バナジウム、又は遷移金属で促進されたモレキュラーシーブをベースとしている。後者の場合、銅及び/又は鉄で促進されたゼオライトを大半の場合に扱っている。
反応1は「標準SCR反応」、反応2は「高速SCR反応」、反応3及び反応4は「NOSCR反応」として知られている。
還元剤として使用されるアンモニアは、排気システム内で二次排出物として製造可能であるか、又は排気ガスシステム内で、アンモニアを形成可能な前駆体、例えば尿素、カルバミン酸アンモニウム、若しくはギ酸アンモニウム等を注入することによる加水分解により、利用可能とすることができる。
最後に挙げたSCR法の変形法を行うためには、還元剤の供給源-還元剤を排気ガスの中に必要に応じて定量送出するための注入デバイス、及び排気ガスの流路に配置されたSCR触媒が必要である。
【0006】
例えば、特に二酸化チタン及び/又は五酸化バナジウム等のバナジウム酸化物をベースにし、かつ、シリコン、モリブデン、マンガン、タングステン等の酸化物といった、他の酸化物を含有することができる混合酸化物を、SCR触媒として使用することが可能である。これらの触媒は文献に詳細に記載されており、例えば、国際公開第89/03366(A1)号、欧州特許公開第0345695(A2)号、欧州特許公開第0385164(A2)号、国際公開第2011/013006(A2)号、及び米国特許出願公開第2013/205743号(A1)を参照されたい。
【0007】
国際公開第2011/011101(A1)号には、窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒が開示されている。その触媒は、金属酸化物担体と、バナジウムと、活性物質と、アンチモンと、窒素酸化物の還元のための触媒として作用し同時により高い硫黄被毒耐性及び低温触媒活性を促進することができるプロモーターと、を含む。その触媒のアンチモンの量は好ましくは0.5~7wt%(重量%)であり、バナジウムの量は好ましくは1~3重量%である。国際公開第2011/011101(A1)号によれば、酸化タングステンを含む混合金属酸化物触媒は、低温での硫黄被毒耐性を向上させるが、酸化タングステンの使用は触媒の価格を著しく上昇させ、これは経済的理由から回避されるべきである。結果として、この発明による触媒はタングステンを含まない。しかし、国際公開第2011/011101(A1)号による混合金属酸化物触媒は、担体、例えば酸化チタン、ケイ酸塩、ジルコニア、アルミナ及びそれらの混合物を含む。好ましくは、担体(同義的にキャリアとも呼ばれる)はTiOである。
【0008】
国際公開第2011/127505(A1)号には、式XVO/Sによって表されるバナジウム酸塩を含む組成物であって、XVOは、任意で1つ以上の希土類金属-バナジウム酸塩の混合物での、又は1つ以上の遷移金属-バナジウム酸塩の混合物での、又は1つ以上の遷移金属-バナジウム酸塩と1つ以上の希土類金属-バナジウム酸塩との混合物での、Bi-、Sb-、Ga-及び/又はAl-バナジウム酸塩を表し、Sは、任意でドーパントと組み合わせたTiOを含む担体である、組成物、及びそのような触媒組成物の調製方法が開示されている。XVOがSbVOである場合、それは63.9重量%のSbを含有するSbClの溶液と、NHVOを含有する溶液とを混合することによって合成される。か焼後に得られた固体はXRDによって特定された。担体材料は、好ましくは市販のTiO/WO/SiOである。該担体材料中のTiO、WO及びSiOの量は示されていない。
【0009】
国際公開第2017/101449(A1)号には、担体TiOと、CuKα線を用いたX線回折(XRD)分析によって決定されるVSbO及びV0.92Sb0.92とは異なるルチル型構造を有するバナジウムとアンチモンとを含有する複合酸化物と、任意でケイ素の酸化物、バナジウムの酸化物及びアンチモンの酸化物からなる群から選択される1つ以上の酸化物とを含む、窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒組成物、該触媒組成物の調製方法、該方法によって得られた/得ることができる触媒組成物、並びに窒素酸化物の選択的触媒還元のための該触媒組成物の使用が開示されている。担体材料はTiOを含む必要があるが、更には、TiO及びSiO及びWO、又はTiO及びZrOからなってもよい。
バナジウムとアンチモンとはルチル構造を有する複合酸化物の形態で存在する。
バナジウムは、単体Vとして計算して0.5~6重量%の量で触媒中に存在し、アンチモンは、単体Sbとして計算して0.8~16重量%の量で存在する。
TiOは、好ましくはアナターゼの形態で存在する。チタンの含量は、TiOとして計算して好ましくは50~97.5重量%の範囲であり、ケイ素(存在する場合)の含量は、単体Siとして計算して好ましくは0.2~9.5重量%の範囲である。
国際公開第2017/101449(A1)号は、WO及びZrOの量(それらが存在する場合)について言及していない。それは、a)TiO及びSiO及びWO、又はb)TiO及びZrOのいずれかが担体材料であり得ることを明示的に述べているが、4つの酸化物の全て、すなわちTiO及びSiO及びWO及びZrOが触媒組成物中に存在すべきであることを明示的には述べていない。
【0010】
中国特許公開第107262086(A)号は、SCR(selective catalytic reduction)脱硝触媒に関し、特に、低温煙道ガスによる硫酸水素アンモニウムの分解を促進するためのSCR(selective catalytic reduction)脱硝触媒、調製方法及び用途に関する。SCR脱硝触媒は、酸化チタンと遷移金属酸化物とからなる複合酸化物を担体とし、バナジウム酸化物を活性成分とし、タングステン酸化物を共触媒とし、触媒中の遷移金属元素のチタン元素に対するモル比が(0.1~0.5):1であり、遷移金属酸化物はMnO、Fe、CeO、ZrO、Al、SnO、Nb及びSbのうちの1つ以上を含む。適切な量の遷移金属酸化物を触媒に添加して、硫酸水素アンモニウムの低温分解を促進するためのSCR脱硝触媒を調製し、この触媒は350℃未満の温度で硫酸水素アンモニウムの分解を促進する。まとめると、中国特許公開第107262086(A)号による触媒は、チタン、バナジウム及びタングステンの酸化物を含み、それはまた二酸化ジルコニウム及び五酸化アンチモンから選択される遷移金属酸化物を含むことができる。1つ以上の遷移金属元素のモル比、例えばZrO及びSbのTiOに対するモル比は、0.1~0.5:1である。
【0011】
国際公開第2018/018406(A1)号には、NOx除去のための触媒、更に具体的には担持触媒、モノリシック選択的触媒還元(SCR)触媒、その調製方法、及びNOx除去方法が開示されている。担持触媒は、担体及び担体上に担持された触媒活性成分を含み、それはバナジウム、アンチモン、並びにケイ素、アルミニウム、及びジルコニウムの酸化物の群から選択される少なくとも1つの更なる成分、好ましくはシリカ及び/又はアルミナのうちの少なくとも1つを含む。担体材料は、TiO、又はTiO及びSiO、又はTiO及びWO、又はTiO、SiO及びWOから選択することができる。担体は、好ましくはTiOであり、50~97.5重量%の量で存在する。それぞれV及びSbとして計算して、Vの含量は好ましくは1~10重量%の範囲であり、Sbの量は好ましくは1~20重量%の範囲である。ZrO及びSiOは、0.5~20重量%の量で存在してもよい。国際公開第2018/018406(A1)号に示されている例のいずれも、6つの元素Ti、W、V、Sb及びZrの全ては含んでいない。実施例9及び10はTi、Si、W、V及びSbを含んでいるが、Zrを含まない。これらの実施例9及び10のみがWOを含む実施例であり、それらのWO含量は非常に高い(それぞれ9重量%及び10重量%)。国際公開第2018/018406(A1)号に開示されている他の全ての実施例は、これら5つの元素のうちのいくつかのみを含む。多くの実施例は酸化アンチモンを含むが、その量は様々である。国際公開第2018/018406(A1)号で行われたSCR活性の比較によれば、約2重量%という低い酸化アンチモン含量は、より高い量の酸化アンチモン、すなわち7~約16重量%の酸化アンチモンを含む触媒よりも著しく低いNOxの変換を示している。国際公開第2018/018406(A1)号において、酸化アンチモンはSbとして計算されている。
【0012】
米国特許出願公開第2016/0288094(A1)号は、少なくとも2つの触媒活性層A及びBを含む触媒を開示している。層Aは支持体に直接適用され、層Bは層Aに適用されて、層Aを少なくとも部分的に、又は層Aの全長にわたって覆う。したがって、層Bは、層Aの前に排気ガスと接触する。支持体は、スループットハニカム体であってもウォールフローフィルタであってもよい。層A及びBの両方は、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、又は酸化アルミニウムから選択される担体酸化物、好ましくは二酸化チタンを含む。層Aは、触媒活性金属酸化物として五酸化バナジウム及び三酸化タングステンを含み、任意でまた二酸化ケイ素及び/又は五酸化アンチモンも含む。層Bは、五酸化バナジウム、三酸化タングステン及び二酸化ケイ素を含み、任意でまた五酸化アンチモンも含む。層Aの総重量は層Bの総重量より大きく、層Aにおける五酸化バナジウムの割合は層Bにおける五酸化バナジウムの割合よりも大きい。層Aが二酸化ケイ素を含む場合は、層Aにおけるその比率は層Bのそれよりも小さい。実施例における触媒は全て、層A及びBの両方において約7~10重量%という高い五酸化タングステン割合を有する。
【0013】
HH Phil,MP Reddy,PA Kumar,LK Ju and JS Hyoの「SO resistant antimony prompted V/TiO catalyst for NH-SCR of Nox at low temparatures」,Applied Catal B 2008,78,301~308では、V/TiO SCR触媒の硫黄耐性に対するプロモーターの効果が検討された。プロモーターは、Se、Sb、Cu、S、B、Bi、Pb及びPから選択された。セレンは150~400℃で最良のNOxの変換率を示したが、セレンは高い蒸気圧を有するため除外された。残りのプロモーターの中で、V/TiO上の2重量%のSbの担持量が、SOに対する高い耐性と合わせて、最良のNOxの変換率を示した。V/TiO上に2重量%のSbを有する触媒が、V/TiO上に10重量%のWを含む市販の触媒と比較された。両方の触媒は同等のNOxの変換率及びSO耐性を示したが、両方の触媒を用いて行った活性測定、すなわち、SO、NO、NH、O及びHOを含む雰囲気中での測定からはまた、かなりの量の硫酸アンモニウム塩の形成が明らかになった。タングステンをプロモーターとして使用した場合、低温での硫黄被毒耐性を実現するために、タングステンの百分率を約5~10重量%の量に増加させる必要があった。タングステンの量は触媒の価格を上昇させるため、この研究の目的は、タングステンを置き換えることができるプロモーターを見出すこと、及び低温での硫黄被毒を改善することであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
自動車の内燃機関は、過渡運転サイクルで動作するため、広範に変化する動作条件下においてであっても、SCR触媒はまた、良好な選択性を有して、可能な限り高い窒素酸化物転換率を保証する必要がある。したがって、生じる窒素酸化物の量を完全かつ選択的に転換することもまた、高温である場合、例えばフルスロットルで生じる場合と同様に、低温でも保証する必要がある。
【0015】
しかし、これまでの先行技術では、バナジウムSCR触媒を、一方では低温活性(T<250℃)と熱安定性とに関して、他方ではフレッシュな触媒とエージング後の触媒の活性に関して、同時に最適化することはできない。低温活性の改善は常に熱安定性の不足に関連し、逆もまた同様であり、フレッシュな触媒対エージング後の触媒の活性についても、同じことが必要な変更を加えて準用される。
【0016】
しかし、まさにこの種の触媒に対する市場の需要は増大している。従って、本発明の目的は、良好な低温活性を示すと同時に、より良好な熱安定性を示し、また、フレッシュな及びエージング後の状態の両方において良好な触媒性能を示す、窒素酸化物の選択的触媒還元のためのバナジウム含有触媒組成物を提供することである。本発明の別の目的は、該SCR触媒組成物を含む、SCR触媒物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
技術的解決策
良好な低温活性と同時により高い高温選択性によって区別され、また、フレッシュな及びエージング後の状態の両方において良好な触媒性能を示す、窒素酸化物の選択的触媒還元のためのバナジウム含有触媒組成物を提供するという目的は、
-Vとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて2.0~4.0重量%の量の少なくとも1つのバナジウムの酸化物、
-WOとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて2.5~7.2重量%の量の少なくとも1つのタングステンの酸化物、
-Sbとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて0.6~3.4重量%の量の少なくとも1つのアンチモンの酸化物、
-ZrOとして計算して該触媒の総重量に基づいて0~1.0重量%の量の少なくとも1つのジルコニウムの酸化物、
-及びTiOとして計算して該触媒の総重量に基づいて84.6~94.9重量%の量の少なくとも1つのチタンの酸化物からなり、
、WO、Sb、TiO及び任意でZrOとしてそれぞれ計算してバナジウム、タングステン、アンチモン、チタン及びジルコニウムの酸化物の重量割合は合計で100重量%になる、触媒組成物によって実現される。
【0018】
驚くべきことに、新規な触媒組成物は、低温及び高温で良好な活性を示し、また、フレッシュな及びエージング後の状態でより良好な熱安定性を示すことを見出した。
【0019】
良好な低温活性を示すと同時に、より高い高温選択性を示し、また、フレッシュな及びエージング後の状態の両方において良好な触媒性能を示す本発明による窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒組成物、並びに該SCR触媒組成物を含むSCR触媒物品を下に説明し、本発明は、個々に及び互いに組み合わせて、下に示す全ての実施形態を包含する。
【0020】
「触媒組成物」は、排気ガス又は廃ガスの1つ以上の成分を1つ以上の他の成分に変換することができる物質又は物質の混合物である。したがって、「触媒組成物」は触媒的に活性である。このような触媒組成物の例は、例えば、揮発性有機化合物と一酸化炭素とを二酸化炭素に、又はアンモニアを窒素酸化物に変換することができる酸化触媒組成物である。このような触媒の別の例は、例えば、窒素酸化物を窒素と水とに変換することができる選択的還元触媒(SCR触媒)組成物である。本発明の文脈において、SCR触媒は担体基材とSCR触媒組成物とを含む触媒である。本発明によるSCR触媒組成物は、上で定義されたように、バナジウム、タングステン、アンチモン及びチタン並びに任意でジルコニウムの各々の少なくとも1つの触媒活性金属酸化物を含む。
【0021】
単に「担体基材」とも呼ばれる「触媒基材」は、触媒組成物を付着させて最終触媒を成形する支持体である。このように、担体基材は触媒活性組成物の担体である。
【0022】
懸濁液及び分散液とは、固体粒子と溶媒とを含む不均一な混合物である。固体粒子は溶解しないが、溶媒の体積全体にわたって懸濁し、媒体中に自由に浮遊したままである。固体粒子が1μm以下の平均粒径を有する場合、混合物は分散液と呼ばれ、平均粒径が1μmより大きい場合、混合物は懸濁液と呼ばれる。
本発明の文脈で使用される「混合物」という用語は、物理的に組み合わされた2つ以上の異なる物質から構成され、各成分がそれ自体の化学的特性及び構造を保持する材料である。その成分に化学的変化がないという事実にもかかわらず、混合物の物理的特性、例えばその融点は、成分の物理的特性とは異なり得る。
【0023】
「ウォッシュコート」とは、触媒基材に適用することができる固体粒子の懸濁液又は分散液である。この懸濁液又は分散液は、多くの場合「ウォッシュコートスラリー」と呼ばれる。スラリーを担体基材に適用し、続いて乾燥させる。
2つ以上のウォッシュコートを担体基材に連続的に付着させることも可能である。当業者には、「レイヤリング」又は「ゾーニング」によって2つ以上のウォッシュコートを単一の担体基材上に付着させることが可能であり、レイヤリングとゾーニングとを組み合わせることもまた可能であることが知られている。レイヤリングの場合、ウォッシュコートを担体基材上に次々に連続して付着させる。最初に付着され、したがって担体基材と直接接触しているウォッシュコートは「下層」であり、最後に付着されたウォッシュコートは「上層」である。ゾーニングの場合、第1のウォッシュコートを、担体基材の第1の面側Aから他方の面側Bに向かって担体基材上に付着させるが、担体基材の全長にわたってではなく、面側AとBとの間の終点までにのみ付着させる。その後、第2のウォッシュコートを、面側Bから開始して面側BとAとの間の終点まで担体上に付着させる。第1及び第2のウォッシュコートの終点は同一である必要はなく、それらが同一である場合は、両方のウォッシュコートゾーンは互いに隣接する。しかし、両方ともが担体基材の面側AとBとの間に位置する2つのウォッシュコートゾーンの終点が同一でない場合、第1のウォッシュコートゾーンと第2のウォッシュコートゾーンとの間に間隙が存在してもよく、又はそれらが重なってもよい。上述のように、例えば、一方のウォッシュコートが担体基材の全長にわたって適用され、他方のウォッシュコートが一方の面側から両方の面側の間の終点までのみ適用される場合、レイヤリングとゾーニングとを組み合わせることもできる。
本発明の意味におけるウォッシュコートは、溶媒、通常は水と、少なくとも1つのチタンの酸化物の粒子とを含む。更に、ウォッシュコートは任意で、バインダ及び/又は添加剤を含んでもよい。好適なバインダは、例えば、アルミナ、シリカ、非ゼオライトのシリカ-アルミナ、及び天然に存在する粘土である。好適な添加剤は、例えば、ポリアクリレート、アミン、シトレート、タータレート並びにデンプン及びセルロースなどのレオロジー改変剤である。当業者にはそのようなバインダ及び添加剤が知られており、特許請求の範囲から逸脱することなく、それらを本発明の文脈において使用することができる。
ウォッシュコートは担体基材上に1つ以上の工程で適用することができる。
本発明の一実施形態において、ウォッシュコートスラリーは、溶媒、通常は水と、少なくとも1つのチタンの酸化物の粒子とを含む。このウォッシュコートを基材上に適用して乾燥させる。続いて、例えば、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの少なくとも1つの酸化物の各々の前駆体を乾燥及びか焼されたウォッシュコートに含浸させることによって、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの少なくとも1つの酸化物又はそれらの前駆体の各々を乾燥及びか焼されたウォッシュコート上に適用する。バナジウム、タングステン、アンチモン及びジルコニウムの少なくとも1つの酸化物の各々を該酸化物の前駆体の形態で適用すること、又は、それらの全てを酸化物の形態で適用すること、又は、酸化物の一部を酸化物の前駆体の形態及び一部を酸化物の形態で、で適用することのいずれかが可能である。
前駆体は、例えば熱処理によって最終酸化物に変換することができる、バナジウム、タングステン、アンチモン又はジルコニウムの意図された酸化物の金属を含む化合物、例えば塩である。
本発明の別の実施形態では、ウォッシュコートスラリーは、溶媒、通常は水と、チタンの少なくとも1つの酸化物と、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの少なくとも1つの酸化物及び/又はバナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの少なくとも1つの酸化物の前駆体の各々とを含む。バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの少なくとも1つの酸化物の前駆体が使用される場合、それらは、続いて、上記のように触媒活性金属酸化物に変換される。
更に、少なくとも1つのチタンの酸化物並びにバナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの酸化物及び/又はそれらの前駆体の一部をウォッシュコートスラリーの形態で触媒基材に適用することができ、一方、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの他の酸化物を、乾燥及びか焼されたウォッシュコート上に、例えば、上記の含浸によって続いて適用する。本発明の文脈において、「コーティング」は、触媒基材に付着された本発明によるSCR触媒組成物である。該SCR触媒組成物の固定は、上記の実施形態に従って実施することができる。したがって、コーティングは、上記のように、チタン、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの酸化物を含む。
ウォッシュコートが触媒組成物の全ての金属酸化物又はそれらの前駆体を含む本発明の実施形態において、ウォッシュコートは、担体基材上に適用された後に、例えば室温で乾燥される。続いて、コーティングされた担体基材は、例えば500~600℃の温度でか焼される。ウォッシュコートを基材上に適用するこの方法は、以下では「ワンポット法」と呼ばれる。それは、波形及びコージライト基材の両方で実行可能である。
ウォッシュコートが触媒組成物の金属酸化物又はそれらの前駆体の全てではないが一部を含む本発明の実施形態では、ウォッシュコートは、担体基材上に適用された後に例えば室温で、乾燥される。続いて、コーティングされた担体基材は、例えば500~600℃の温度でか焼される。その後、他の酸化物又はそれらの前駆体を、例えば含浸によって、乾燥させたウォッシュコート上に適用し、次いで、好ましくは室温で乾燥工程を行う。次に、コーティングされた担体基材を450~600℃の温度に加熱する。金属酸化物の前駆体を使用した場合、この加熱工程によって前駆体は対応する金属酸化物に分解される。
ウォッシュコートを適用し、乾燥させ、か焼するための、また金属酸化物前駆体を分解して対応する金属酸化物に変換するためのこれらの方法は、当業者に公知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明の文脈において適用することができる。
【0024】
任意で、触媒担体材料と、チタン、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの少なくとも1つの酸化物又はそれらの前駆体の各々とを混合して、それを押出すこともできる。触媒担体材料と少なくとも1つのチタンの酸化物とのみを押出して、その後に、他の酸化物又はそれらの前駆体を適用することも可能である。更に、触媒担体材料、チタンの少なくとも1つの酸化物、及び他の酸化物又はそれらの前駆体の一部を押出して、その後に、他の酸化物又はそれらの前駆体を適用することが可能である。このような押出し法は当業者に公知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明の文脈において適用することができる。
【0025】
「触媒物品」又は「ブリック」は、触媒基材とそれに付着させたコーティングとを含む。
本発明の文脈において、「SCR触媒担持量」は、触媒基材1リットル当たりの、それぞれの成分のグラムで与えられるSCR触媒組成物の濃度である。
「SCR触媒物品」は、排気ガス又は廃ガスからのNOの除去に適した触媒物品である。
【0026】
本発明の文脈で使用される排気ガスの浄化のための「システム」は、連続した2つ以上の触媒物品を含み、各々の個々の触媒物品は、排気ガスの特定の成分、例えば、酸化触媒の場合は揮発性有機化合物VOC、炭化水素HC及び一酸化炭素、又はSCR触媒の場合は窒素酸化物、又は微粒子フィルタの場合は粒子状物質、又はアンモニアスリップ触媒ASCの場合は過剰なアンモニア、を除去するように設計される。これらの触媒物品はよく知られている。
【0027】
「上流」及び「下流」は、排気管路における排気ガスの通常の流れ方向に対する用語である。「ゾーン若しくはゾーンの上流に位置する触媒物品1又は触媒物品2」とは、ゾーン又は触媒物品1が、ゾーン又は触媒物品2よりも排気ガス源の近くに、すなわち燃焼源、例えばモーターの近くに配置されていることを意味する。流れの方向は、排気ガス源から、すなわち燃焼源から排気管への方向である。したがって、この流れ方向に対して、排気ガスはその入口端で各ゾーン又は触媒物品に入り、その出口端で各ゾーン又は触媒物品を出る。
【0028】
チタンの少なくとも1つの酸化物は、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの酸化物の量に応じて、84.6~94.9重量%の量で存在する。このことは、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの酸化物が上記の範囲で存在し、残りがチタンの酸化物であり、全ての酸化物の総量が100重量%になることを意味する。少なくとも1つのチタンの酸化物は、二酸化チタン(TiO)である。TiOがいくつかの相、とりわけアナターゼ、ルチル及びブルッカイトで存在することはよく知られている。好適な二酸化チタンは、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、更により好ましくは少なくとも99.5重量%のアナターゼを含む。合計で100重量%にするための残部は、好ましくはルチル及び/又はブルッカイト、より好ましくはルチルで表される。
【0029】
少なくとも1つのバナジウムの酸化物は、2.0~4.0重量%、好ましくは2.4~3.4重量%、より好ましくは2.4~2.8重量%の量で存在する。一実施形態では、少なくとも1つのバナジウムの酸化物は、五酸化バナジウム(V)である。
【0030】
少なくとも1つのタングステンの酸化物は、2.5~7.2重量%、好ましくは2.5~7.0重量%、より好ましくは3.0~5.5重量%、最も好ましくは3.5~5.0重量%の量で存在する。一実施形態では、少なくとも1つのタングステンの酸化物は、三酸化タングステン(WO)である。
【0031】
少なくとも1つのアンチモンの酸化物は、0.6~3.4重量%、好ましくは1.5~2.5重量%の量で存在する。一実施形態では、少なくとも1つのアンチモンの酸化物は、五酸化アンチモン(Sb)の形態で存在する。
【0032】
本発明による触媒組成物は、少なくとも1つのジルコニウムの酸化物を0~1.0重量%の量で含む。これは、0重量%という少なくとも1つのジルコニウムの酸化物の量に対応してジルコニウムの酸化物が存在しないか、又は少なくとも1つのジルコニウムの酸化物が0重量%より多く1.0重量%までの量で存在することを意味する。本発明において使用されるとき、「任意でジルコニウム」という用語は、ジルコニウムの酸化物が存在しない実施形態、及びまた少なくとも1つのジルコニウムの酸化物を0超~1.0重量%の量で含む実施形態も包含する。
ジルコニウムを含む実施形態では、ジルコニウムは、0超~1.0重量%、好ましくは0.01~1.0重量%、より好ましくは0.2~1.0重量%、更により好ましくは0.4~0.7重量%の量で存在する。一実施形態では、少なくとも1つのジルコニウムの酸化物は、二酸化ジルコニウム(ZrO)である。
チタン、タングステン、バナジウム及びアンチモンの酸化物の好ましい量は、ジルコニウムを含まない触媒について上に示したものと同じであり、同じことがこれらの元素の好ましい酸化物の性質にも当てはまる。
【0033】
当業者には、バナジウム、タングステン、アンチモン及びジルコニウムが各々、金属が異なる酸化状態を有する、いくつかの酸化物を形成することが知られている。
バナジウムの酸化物としては、例えば、V、VO、及びVが知られている。
タングステンの酸化物としては、例えば、WO、WOが知られている。
アンチモンの酸化物としては、例えば、Sb、Sb、及びSbが知られている。
ジルコニウムの酸化物としては、例えば、ZrOが知られている。
【0034】
当業者は、様々な酸化状態のこれらの金属の酸化物が一緒に共存し得ること、及びいくつかの金属、特にバナジウムが、酸化物の広範なファミリーを形成することを知っている。しかし、本発明の文脈において、バナジウム、タングステン、アンチモン及びジルコニウムの酸化物の量は、酸化物V、WO、Sb及びZrOの形態で計算される。当業者は、触媒組成物中の対応する金属、バナジウム、タングステン、アンチモン及びジルコニウムの量を決定する方法、並びにそれらをV、WO、Sb及びZrOの量に変換する方法を知っている。
【0035】
本発明の一実施形態では、窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒組成物は、
-Vとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて2.0~4.0重量%の量の少なくとも1つのバナジウムの酸化物、
-WOとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて2.5~7.2重量%の量の少なくとも1つのタングステンの酸化物、
-Sbとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて0.6~3.4重量%の量の少なくとも1つのアンチモンの酸化物、
-及びTiOとして計算して該触媒の総重量に基づいて85.6~94.9重量%の量の少なくとも1つのチタンの酸化物からなり、
、WO、Sb及びTiOとしてそれぞれ計算してバナジウム、タングステン、アンチモン及びチタンの酸化物の重量割合は合計で100重量%になる。
【0036】
本発明の別の実施形態では、窒素酸化物の選択的触媒還元のための触媒組成物は、
-Vとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて2.0~4.0重量%の量の少なくとも1つのバナジウムの酸化物、
-WOとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて2.5~7.2重量%の量の少なくとも1つのタングステンの酸化物、
-Sbとして計算して該触媒組成物の総重量に基づいて0.6~3.4重量%の量の少なくとも1つのアンチモンの酸化物、
-ZrOとして計算して該触媒の総重量に基づいて0.2~1.0重量%の量の少なくとも1つのジルコニウムの酸化物、
-及びTiOとして計算して該触媒の総重量に基づいて84.6~94.7重量%の量の少なくとも1つのチタンの酸化物からなり、
、WO、Sb、TiO及びZrOとしてそれぞれ計算してバナジウム、タングステン、アンチモン、チタン及びジルコニウムの酸化物の重量割合は合計で100重量%になる。
【0037】
本発明によるSCR触媒物品は、触媒基材であって、本発明によるSCR触媒組成物がコーティングの形態でその上に付着されている、触媒基材を含む。
【0038】
触媒基材は、波形基材及びコージライトモノリスから選択される。
【0039】
好適なコージライトモノリスは、ウォールフローフィルタであってもフロースルー基材であってもよい。ウォールフローフィルタ又はフロースルー基材は、ハニカム体の形態で存在してもよい。
【0040】
一実施形態では、担体基材は波形基材であり、それは以下で「波形基材モノリス」とも呼ばれる。このような波形基材モノリスは当業者に公知である。それらは、例えば、国際公開第2010/066345(A1)号に開示されている。波形基材は、好ましくは、少なくとも50g/lであるが300g/l以下の壁密度、及び少なくとも50%の気孔率を有する。モノリス基材は、高シリカ含量ガラスの紙又はEガラス繊維の紙である。任意で、紙は珪藻土の層及び/又はチタニアの層を有する。珪藻土は、純白色からオフホワイトの粉末に容易に砕かれる、天然に存在する軟らかい珪質の堆積岩である。珪質岩は、主成分としてシリカ(SiO2)を有する堆積岩である。
【0041】
触媒組成物が波形基材上に適用された触媒物品は、触媒層、すなわち触媒組成物を担体基材上に適用することによって形成された層が、燃焼機関又はガスタービンの始動及び停止の際にモノリス基材から剥離しないという利点を有する。同時に、この触媒は改善された触媒活性を有することが示された。
【0042】
触媒材料は、平板又は波板の形態を有するモノリス基材上に適用される。基材は、Eガラス繊維のシートから、又は高いケイ素含量を有するガラスのシートから作製される。任意で、シートは、TiOの層、珪藻土の層、又はTiOと珪藻土との両方を含む層を含んでもよい。
【0043】
高ケイ素含量ガラスは、94~95重量%のSiO、4~5重量%のAl及びいくらかのNaOを含有し、これらの繊維は、8~10μmの繊維径で2,000~2,200g/lの密度を有する。一つの例は、市販のSILEXステープルファイバーである。
【0044】
Eガラスは、52~56重量%のSiO、12~16重量%のAl、5~10重量%のB、0~1.5重量%のTiO、0~5重量%のMgO、16~25重量%のCaO、0~2重量%のKO/NaO及び0~0.8重量%のFeを含有する。
【0045】
好ましくは、基材の材料は、基材の密度が材料の少なくとも50g/lであるが300g/l以下であり、基材壁の気孔率が材料の少なくとも50体積%であるように選択される。
【0046】
モノリス基材の気孔率は、50μm~200μmの深さ及び1μm~30μmの直径を有する細孔によって得られる。
【0047】
チタン、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの酸化物の好ましい量は、ジルコニウムを含む又は含まない触媒組成物について上に示したものと同じであり、同じことがこれらの元素の好ましい酸化物の性質にも当てはまる。
【0048】
コーティングの形態での触媒基材上へのSCR触媒組成物の固定は、上で定義されたウォッシュコートを触媒基材上に適用することによって行われる。
【0049】
ウォッシュコートは、少なくとも溶媒、好ましくは水と、少なくとも1つのチタンの酸化物の粒子とを含む。チタンの少なくとも1つの酸化物は、好ましくはTiOであり、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、更により好ましくは少なくとも99.5重量%のアナターゼを含む。合計で100重量%にするための残部は、好ましくはルチル及び/又はブルッカイト、より好ましくはルチルで表される。
一実施形態では、ウォッシュコートは、バインダ、例えば、アルミナ、シリカ、非ゼオライトのシリカ-アルミナ又は天然粘土を更に含む。
別の実施形態では、ウォッシュコートは、添加剤、例えば、ポリアクリレート、アミン、シトレート、タータレート、並びにデンプン及びセルロースなどのレオロジー改変剤を更に含む。
更に別の実施形態では、ウォッシュコートは、添加剤を更に含むが、バインダを含まない。
コーティングがジルコニウムの少なくとも1つの酸化物を含む場合、二酸化ジルコニウム又はその前駆体をウォッシュコートに添加することができる。
バインダ及び/又は添加剤及び/又はジルコニウムの少なくとも1つの酸化物若しくはその前駆体をウォッシュコートに添加することもまた可能である。
【0050】
一実施形態では、ウォッシュコートは、水と、二酸化チタンと、任意でバインダ及び/又は添加剤及び/又はジルコニウムの少なくとも1つの酸化物若しくはその前駆体とからなる。
【0051】
別の実施形態では、ウォッシュコートは、水と、二酸化チタンと、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの少なくとも1つの酸化物及び/又はバナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの少なくとも1つの酸化物の前駆体の各々と、任意でバインダ及び/又は添加剤とからなる。
更に別の実施形態では、ウォッシュコートは、水と、二酸化チタンと、バナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの酸化物及び/又はそれらの前駆体の一部と、バインダ及び/又は添加剤とからなる。
【0052】
ウォッシュコートは、触媒基材の面側A及びBに対して垂直な方向に触媒基材上に適用される。それは、好ましくはウォッシュコートを圧力下で上面側から底面側の方向に適用することによって、上から下に適用することができる。あるいは、ウォッシュコートは、好ましくはそれを減圧下で底面側から上面側まで浸漬することによって、下から上に適用することができる。ウォッシュコートの上から下への、また下から上への適用は当業者に公知であり、この知識を特許請求の範囲から逸脱することなく本発明の文脈において適用することができる。
【0053】
ウォッシュコートの乾燥物及びpH値は、所望のコート担持量を得るために都合よく調整することができる。本発明の実施形態では、ウォッシュコートのpH値は、ウォッシュコート中に懸濁又は分散された粒子の等電点(IEP)と異なるように調整される。等電点とは、粒子が正味電荷を持たないpH値である。IEPよりも酸性であるpH値への調整は、酸、例えば硝酸を添加することによって行うことができる。IEPよりも塩基性であるpH値への調整は、塩基、例えばアンモニア又はアミンを添加することによって行うことができる。当業者にはウォッシュコートの乾燥物及びpH値の調整方法は既知であり、特許請求の範囲から逸脱することなくこの知識を適用することができる。
【0054】
任意で、ウォッシュコートを触媒基材上に適用する前に、例えばビーズミルで粉砕する。好ましくは、ウォッシュコート中に含有される粒子を、≦2μmのD90粒径まで粉砕する。
【0055】
続いて、ウォッシュコートは、触媒基材上に適用した後に乾燥及びか焼され、例えば、室温で乾燥され、続いて500~600℃でか焼される。
【0056】
ウォッシュコートがバナジウム、タングステン、アンチモン及び任意でジルコニウムの酸化物の全ては含まなかった場合、まだ適用されていない該酸化物を、その後の工程で、例えばウォッシュコートにこれらの酸化物及び/又はそれらの前駆体を含浸させることによって適用することができる。含浸は、例えば、ウォッシュコートされた触媒基材を前駆体の水溶液に浸漬することによって行うことができる。バナジウム、タングステン、アンチモン及びジルコニウムの酸化物の前駆体は、好ましくはそれらの水溶液の形態で使用される。
【0057】
バナジウムの好適な前駆体塩は、メタバナジン酸アンモニウム及びバナジウムのシュウ酸塩及び酒石酸塩である。
タングステンの好適な前駆体塩は、メタタングステン酸アンモニウムである。
アンチモンの好適な前駆体塩は、硫酸アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、グリコール酸アンチモン及びアンチモンアセチルアセトネートである。
ジルコニウムの好適な前駆体は、塩化ジルコニウム(IV)、硝酸ジルコニル(IV)、硫酸ジルコニル(IV)である。
酒石酸アンチモン以外のアンチモン前駆体を使用する場合、酒石酸をアンチモン前駆体の水溶液に添加することが好ましい。好ましくは、酒石酸とアンチモン前駆体とは、2:1~8:1の酒石酸対アンチモンのモル比で使用される。
【0058】
本発明の一実施形態では、触媒基材は波形基材であり、ウォッシュコートは水と、二酸化チタンと、任意でバインダ及び/又は添加剤及び/又はジルコニウムの少なくとも1つの酸化物若しくはその前駆体とからなる。本発明による触媒組成物がジルコニウムを含む場合、ジルコニウム前駆体をウォッシュコートに添加することが最も好ましい。ウォッシュコートを適用した後、続いてウォッシュコートした波形基材を、バナジウム、タングステン及びアンチモンの前駆体の水溶液で含浸させる。ウォッシュコートの適用、乾燥及びか焼、並びに金属酸化物前駆体の対応する金属酸化物への分解は、上記のように行われる。
【0059】
本発明の別の実施形態では、触媒基材は波形基材であり、ウォッシュコートは、二酸化チタンと、バナジウム、タングステン、アンチモンの酸化物及び/又はバナジウム、タングステン及びアンチモンの前駆体と、任意でバインダ及び/又は添加剤及び/又はジルコニウムの少なくとも1つの酸化物又はその前駆体とを含む。ここでもまた、ウォッシュコートの適用、乾燥及びか焼、並びに金属酸化物前駆体の対応する金属酸化物への分解は、上記のように行われる。ウォッシュコートを適用するこの方法は、上で定義した「ワンポット法」である。
【0060】
本発明の更に別の実施形態では、触媒基材は上記のようなコージライト基材であり、ウォッシュコートは、二酸化チタンと、バナジウム、タングステン、アンチモンの酸化物と、任意でバインダ及び/又は添加剤及び/又はジルコニウムの少なくとも1つの酸化物又はその前駆体とを含む。
【0061】
波形基材を、本発明による触媒組成物を含むウォッシュコートでコーティングする場合、好ましくは250~550g/l、より好ましくは350~450g/lである。
コージライト基材を、本発明による触媒組成物を含むウォッシュコートでコーティングする場合、好ましくは100~500g/l、より好ましくは150~400g/lである。
【0062】
本発明による触媒物品は特に、リーンバーン内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガス中の窒素酸化物の還元に適する。
したがって、本発明はまた、リーンバーン内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物の還元方法であって、以下の方法の工程:
-窒素酸化物を含有する該排気ガスに還元剤を添加する工程と、
-窒素酸化物を含有する排気ガスと還元剤とから得られた混合物を、本発明による触媒物品に通す工程と、を含む、方法に関する。
【0063】
還元剤としては、アンモニアが特に考慮され、特に有利には、アンモニアそのものではなく、アンモニア前駆体-特に尿素-を、窒素酸化物を含有する排気ガスに添加する。
【0064】
特に、本発明による触媒は、例えば本発明による触媒物品に加えて、流入側に配置された酸化触媒及びディーゼル粒子フィルタを含む排気ガス浄化システムの構成要素として用いられる。その際には、本発明による触媒物品はまた、ディーゼル粒子フィルタのコーティングとしても存在してもよい。
【0065】
したがって、本発明はまた、ディーゼル排気ガスの処理のための排気ガス浄化システムであって、排気ガスの流れ方向において、
-酸化触媒、
-ディーゼル粒子フィルタ、及び
-本発明による触媒物品、
又は
-酸化触媒、及び
-ディーゼル粒子フィルタであって、本発明による触媒組成物がコーティングとしてその上に存在する、ディーゼル粒子フィルタを含む、排気ガス浄化システムに関する。
【0066】
本発明による排気ガス浄化システムに好適な酸化触媒、特に、例えば酸化アルミニウム上に担持された白金、パラジウム、又は白金とパラジウム、及びディーゼル粒子フィルタは、当業者に既知であり、市販されている。
【0067】
本発明による排気ガス浄化システムは概して、本発明による触媒の上流に配置された還元剤を定量送出するためのデバイスを含む。注入デバイスは当業者によって自在に選択することができる。このようなデバイスは当業者に公知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明の文脈において適用することができる。
注入デバイスを介して排気ガス流に注入された還元剤は、具体的には、アンモニア自体であっても、アンモニアが周囲条件下で形成される化合物の形態であってもよい。好適な化合物の例は、尿素又はギ酸アンモニウムの水溶液、及び固体カルバミン酸アンモニウムである。通例、還元剤又はその前駆体は、注入デバイスと共に担持され、注入デバイスに接続される容器内で原料にて保持される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】2.7重量%のV、4.0重量%のWO及び0重量%のSbを含む触媒と比較した、3.6重量%のWO及び1.6重量%のSbを含む触媒組成物中における重量%でのVの量の関数としての200℃におけるフレッシュな及びエージング後の状態でのNOの変換を示す。
図2】2.7重量%のV、4.0重量%のWO及び0重量%のSbを含む触媒と比較した、3.6重量%のWO及び1.6重量%のSbを含む触媒組成物中における重量%でのVの量の関数としての550℃におけるフレッシュな及びエージング後の状態でのNOの形成を示す。
図3】2.7重量%のV、0重量%のSbを含む触媒と比較した、2.4重量%のV及び1.6重量%のSbを含む触媒組成物中における重量%でのWOの量の関数としての200℃におけるフレッシュな及びエージング後の状態でのNOの変換を示す。
図4】2.7重量%のV及び0重量%のSbを含む触媒と比較した、2.4重量%のV及び1.6重量%のSbを含む触媒組成物中における重量%でのWOの量の関数としての550℃におけるフレッシュな及びエージング後の状態でのNOの形成を示す。
図5】フレッシュな触媒組成物についてのSbの量の関数としてのNOの変換を示す。
図6】エージング後の触媒組成物についてのSbの量の関数としてのNOの変換を示す。
図7】ZrOの含有が0重量%であるサンプルについての550℃におけるNOxの変換及びNOの形成を示す。
図8】ワンポット法で作製されたサンプルについての550℃におけるNOの変換及びNOの形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
実施形態
実施形態1:波形触媒基材を有するSCR触媒物品の調製
本発明によるSCR触媒物品を調製した。波形基材を触媒基材として使用して、本発明によるSCR触媒組成物及びいくつかの比較触媒組成物をそれらに付着させた。
【0070】
波形触媒基材を有する触媒物品の調製
TiO(アナターゼ)及びZrO(NOを含有し、57~59重量%の乾燥物含量を有する水性スラリーを、260cpsiの波形基材上に適用し、「cpsi」とは「平方インチ当たりのセル」を表す。次いで、基材を580℃でか焼した。続いて、Aグラムの、シュウ酸バナジル(7.15%V)を含有する水溶液、Bグラムの、メタタングステン酸アンモニウムの水溶液(39.36%W)、Cグラムの脱イオン水、Dグラムの酒石酸、及びEグラムの酢酸アンチモン(Sb(OAc))を様々な量で混合することによって、含浸溶液を調製した(表1参照)。次いで、基材を含浸溶液中に20秒間浸漬し、乾燥させ、次いで450℃で熱処理して、表1に示すように、触媒組成物の総重量に基づいて%V、%WO、%Sb、%ZrO2の触媒担持量を得た。
【0071】
【表1】
【0072】
表1中の実施例1、4、7、8及び9は、タングステン若しくはアンチモンを含まないか、又はタングステンもアンチモンも含まないかのいずれかなので、比較例であることに留意されたい。
【0073】
実施形態2:波形触媒基材を有するSCR触媒物品のNOxの変換及びNOの形成
実施形態1による実施例のNOxの変換及びNOの形成を、フレッシュな状態で、及びエージング後に以下の条件で試験した。
【0074】
NOx(250ppm)、NH(300ppm)、HO(4%)、O(12%)、GSVH=100,000時-1、Nで100%。NOxの変換を、200、250、300、350、400、450、500℃及び550℃で測定した。
【0075】
エージングは、550℃で100時間、HO=(10%)、GSVH=10,000時-1で行った。
【0076】
上に示した全ての百分率は体積パーセントを指す。
【0077】
GHSVはガスの時間当たりの空間速度である。
【0078】
入口及び出口のNO濃度に基づいて、NOの変換は次のように計算される。
【0079】
【数1】
【0080】
式中、
X:NOの変換%
NOxin:SCR触媒物品の入口端におけるNO濃度
NOxout:SCR触媒物品の出口端におけるNO濃度
入口端、出口端それぞれにおけるNO濃度は、モル又は質量として示すことができる。NO及びNO濃度はFTIRによって測定した。
【0081】
フレッシュな及びエージング後の実施例についてのNOxの変換及びNOの形成の結果を表2及び表3に示す。
【0082】
X(T)は、℃での温度TにおけるNOの変換を示す。NOの形成は550℃で測定した。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
実施形態3:Vの量の関数としてのNOの変換及びNOの形成
3.6重量%のWO及び1.6重量%のSbを含む触媒組成物中の重量%でのVの量の関数としての200℃におけるフレッシュな及びエージング後の状態でのNOxの変換を図1に示す。比較のために、2.7重量%のV、4.0重量%のWO及び0重量%のSbを含む触媒もまた示す。それぞれの酸化物に示された全ての量は触媒組成物の総量に対するものである。100重量%までの残部はTiOで表される。
【0086】
触媒組成物のエージング及びNOxの変換の測定は上記のように行なった。
【0087】
表4に、触媒組成物及びNOxの変換を示す。
【0088】
結果を図1に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
3.6重量%のWO及び1.6重量%のSbを含む触媒組成物中の重量%でのVの量の関数としての550℃におけるフレッシュな及びエージング後の状態でのNOの形成を図2に示す。比較のために、2.7重量%のV、4.0重量%のWO及び0重量%のSbを含む触媒もまた示す。それぞれの酸化物に示された全ての量は触媒組成物の総量に対するものである。100重量%までの残部はTiOで表される。
【0091】
触媒組成物のエージング及びNOの形成の測定は上記のように行った。
【0092】
表5に触媒組成物及びNOの形成を列記する。
【0093】
結果を図2に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
実施形態3:WOの量の関数としてのNOの変換及びNOの形成
2.4重量%のV及び1.6重量%のSbを含む触媒組成物中の重量%でのWOの量の関数としての200℃におけるフレッシュな及びエージング後の状態でのNOの変換を図1に示す。比較のために、2.7重量%のV、0重量%のSb及び様々な量のWOを含む触媒もまた示す。それぞれの酸化物に示された全ての量は触媒組成物の総量に対するものである。100重量%までの残部はTiOで表される。
【0096】
触媒組成物のエージング及びNOxの変換の測定は上記のように行なった。
【0097】
表6に触媒組成物及びNOxの変換を示す。
【0098】
結果を図3に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
2.4重量%のV及び1.6重量%のSbを含む触媒組成物中の重量%でのWOの量の関数としての550℃におけるフレッシュな及びエージング後の状態でのNOの形成を図4に示す。比較のために、2.7重量%のV、0重量%のSb及び様々な量のWOを含む触媒もまた示す。それぞれの酸化物に示された全ての量は触媒組成物の総量に対するものである。100重量%までの残部はTiOで表される。
【0101】
触媒組成物のエージング及びNOの形成の測定は上記のように行った。
【0102】
表7に触媒組成物及びNOの形成を列記する。
【0103】
結果を図4に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
実施形態4:Sbの量の関数としてのNOの変換及びNOの形成
アンチモンを含有する実施例2と26は、アンチモンを含有しない実施例8と9よりも高い安定性及び高いフレッシュな状態の性能を示す。
【0106】
実施例9は、フレッシュな状態の性能が、アンチモンを含有しない配合物中のタングステン含量を増加させることによって補償され得ること示している。しかし、アンチモンを添加しないと熱安定性を得ることができない。
【0107】
表8にフレッシュな触媒組成物についてのSbの量の関数としてのNOの変換及びNOの形成を示す。NOの変換の結果を図5に示す。
【0108】
表9にエージング後の触媒組成物についてのSbの量の関数としてのNOの変換及びNOの形成を示す。NOの変換の結果を図6に示す。
【0109】
【表8】
【0110】
【表9】
【0111】
上の実施形態はアンチモンの添加が触媒組成物の熱安定性を改善することを示している。アンチモンが触媒組成物中に存在する場合、バナジウムとタングステンのみを含むがアンチモンを含まない触媒の範囲で脱硝活性を得るために必要なバナジウムとタングステンの量はそれぞれより少ない。
【0112】
先行技術とは対照的に、図2から分かるように、WOは、触媒組成物の良好なフレッシュな状態の性能を得るために必要であることが示されている。
【0113】
実施形態5:含有ZrOが0%であるサンプルのNOの変換及びNOの形成
55%の乾燥物含量を有するTiO(アナターゼ)を含有する水性スラリーを、260cpsiの波形基材上に適用した。次に、ジルコニウムを含まない基材を580℃でか焼した。続いて、215グラムの、シュウ酸バナジル(7.15%V)を含有する水性溶液、72グラムの、メタタングステン酸アンモニウムの水溶液(39.36%W)、151グラムの脱イオン水、59グラムの酒石酸及び28グラムの酢酸アンチモンを混合することによって、含浸溶液を調製した。次いで、基材を含浸溶液中に20秒間浸漬し、乾燥させ、次いで450℃で熱処理して、触媒組成物の総重量に基づいて、それぞれ3.1%、4.0%及び1.7%の%V、%WO、%Sbの触媒担持量を得た。27とラベル付けされたサンプルを、
NOx(250ppm)、NH(300ppm)、HO(4%)、O(12%)、GSVH=100000時-1、Nで100%として測定した。NOxの変換を、200、250、300、350、400、450、500℃及び550℃で測定した。
【0114】
エージングは550℃で100時間、HO=(10%)、GSVH=10000時-1で行った。
【0115】
結果を図7及び表10に示す。
【0116】
【表10】
【0117】
実施形態6:ワンポット法で作製されたサンプルのNOxの変換及びNOの形成
TiO(アナターゼ)、VO、Sb(グリコレート)、WOを含有し、55%の乾燥物含量を有する水性スラリーを、260cpsiの波形基材に適用し、次いで580℃でか焼して、触媒組成物の総重量に基づいて、それぞれ、3.2%、4.0%、及び2.0%の%V、%WO、%Sbの触媒担持量を得た。28とラベル付けされたサンプルを、
NOx(250ppm)、NH(300ppm)、HO(4%)、O(12%)、GSVH=100000時-1、Nで100%として測定した。NOxの変換を、200、250、300、350、400、450、500℃及び550℃で測定した。
【0118】
エージングは550℃で100時間、HO=(10%)、GSVH=10000時-1で行った。
【0119】
結果を図8及び表11に示す
【0120】
【表11】
【0121】
実施形態7:コージライト基材上にワンポット法で作製したサンプル
TiO(アナターゼ)、VO、WO、Sbを含有し、55%の乾燥物含量を有する水性スラリーを、300cpsiのコージライト基材上に適用し、次いで580℃でか焼して、触媒組成物の総重量に基づいて、それぞれ3.2%、4.0%、及び2.0%の%V、%WO、%Sbの触媒担持量を得た。
【0122】
29とラベル付けされたサンプルを、
NOx(250ppm)、NH(300ppm)、HO(4%)、O(12%)、GSVH=100000時-1、Nで100%として測定した。NOxの変換を、200、250、300、350、400、450、500℃及び550℃で測定した。
【0123】
エージングは550℃で100時間、HO=(10%)、GSVH=10000時-1で行った。
【0124】
NOxの変換及びNOの形成は実施形態6と同等である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】