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特表2023-543738界面活性剤フリーの発泡性口腔ケア組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】界面活性剤フリーの発泡性口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20231011BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518376
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 CN2021075095
(87)【国際公開番号】W WO2022062300
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】202011011010.7
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523088693
【氏名又は名称】シャンドン ベンジェン コスメティックス カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ジェンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ディン, ジンピン
(72)【発明者】
【氏名】リン, フイ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AB171
4C083AB221
4C083AB281
4C083AB292
4C083AB321
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AD041
4C083AD242
4C083AD261
4C083AD262
4C083BB41
4C083BB55
4C083BB60
4C083CC41
4C083EE09
(57)【要約】
本願発明は、界面活性剤フリーの発泡性口腔ケア組成物である。本願発明に係る口腔ケア組成物は、0.1-10%(w/w)のメチルセルロースを含み、水溶液における0.1質量%の濃度の前記メチルセルロースの表面張力が、60mN/m未満であり、好ましくは、47~59mN/mであり、組成物におけるメチルセルロースの含有量が、組成物の重量に基づき、0.1~10重量%であり、好ましくは、0.5~10重量%、より好ましくは1~7重量%、特に好ましくは2~5重量%、特に2.5~4.0重量%である。口腔ケア組成物が、界面活性剤を含まず、歯磨き時に発泡をし得る。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性口腔ケア組成物であって、メチルセルロースを含み、水溶液における0.1質量%の濃度の前記メチルセルロースの表面張力が、60mN/m未満であり、好ましくは、47~59mN/mであり、前記組成物における前記メチルセルロースの含有量が、前記組成物の重量に基づき、0.1~10重量%であり、好ましくは、0.5~10重量%、より好ましくは1~7重量%、特に好ましくは2~5重量%、特に2.5~4.0重量%である、口腔ケア組成物。
【請求項2】
(a)10~50%(w/w)、好ましくは12~40%(w/w)、特に好ましくは15~30%(w/w)、特に18~25%(w/w)の研磨剤、
(b)5~50%(w/w)、好ましくは10~45%(w/w)、特に好ましくは15~40%(w/w)、特に18~30%(w/w)の保湿剤、
(c)0.005~10.0%(w/w)、好ましくは0.1~5.0%(w/w)、より好ましくは0.5~1.0%(w/w)の着香剤、及び
(d)0.01~10%(w/w)、好ましくは0.1~5%(w/w)、より好ましくは1.0~2.0(w/w)の機能性添加剤
を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記研磨剤が、例えばシリカゲル、二酸化ケイ素水和物もしくは沈降二酸化ケイ素である二酸化ケイ素;酸化アルミニウム;不溶性リン酸塩、炭酸カルシウムもしくはこれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記保湿剤が、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコールもしくはこれらの組み合わせから選択される、請求項2又は3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記着香剤が、香料及び/又は甘味料から選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記機能性添加剤が、着色剤、腐食防止剤、抗う蝕剤、抗歯垢形成剤、抗歯石剤、抗炎症剤、防臭剤、減感剤もしくはこれらの組み合わせから選択される、請求項2~5のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
(a)10~50%(w/w)、好ましくは12~40%(w/w)、特に好ましくは15~30%(w/w)、特に18~25%(w/w)の研磨剤、
(b)5~50%(w/w)、好ましくは10~45%(w/w)、特に好ましくは15~40%(w/w)、特に18~30%(w/w)の保湿剤、
(c)2~20%(w/w)、好ましくは4~16%(w/w)、特に好ましくは6~12%(w/w)、特に8~10%(w/w)のセルロース、
(d)5~30%(w/w)、好ましくは8~26%(w/w)、特に好ましくは12~22%(w/w)、特に14~18%(w/w)の乳酸菌発酵化合物、
(e)1~12%(w/w)、好ましくは2~10%(w/w)、特に好ましくは3~8%(w/w)、特に4~6.0%(w/w)のスターチ
を含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
界面活性剤を含んでおらず、前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
防腐剤を含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
0.75未満、好ましくは0.65未満、特に0.6未満の水分活性を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年9月23日付で中国特許庁に提出された出願番号CN2020110111010.7の中国特許出願の優先権を主張し、当該出願の全内容を本件出願に参照により援用する。
本開示は、口腔ケア組成物に関し、特に、表面活性剤フリーの口腔ケア組成物、特に、表面活性剤フリーの発泡性歯磨き粉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨き粉は、人々にとって不可欠な日用品である。日々口腔と直接に接触する製品として、歯磨き粉の安全性及び健康への影響は、人々の関心を持たせるところである。歯磨き粉は、複雑な成分の混合物であり、通常、研磨剤、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、香りエッセンス、甘味料、着色剤、及び殺菌性防腐剤等から調製される。
【0003】
界面活性剤は、歯磨き粉にとって必要な成分である。例えば、米国特許出願公開第4058595号明細書には、通常歯磨き粉に使用される界面活性剤、例えば、アルキルアリールスルホン酸塩、高級アルキルスルホ酢酸塩、タウリンの高級脂肪酸アミド、及びソルビタンモノステアレート等について開示されている。しかしながら、これら合成界面活性剤、及びこれらの分解産物は、粘膜への刺激、皮膚アレルギー、毒性及び発がん性を有し得、肌味覚細胞及び口腔細胞の破壊を含む、皮膚及び口腔の生態学的環境を壊すおそれがあり、残留の化学成分は、口腔の生態学的環境を壊し得、さらに、口腔粘膜を透過して血液に入り、潜在的で重大な安全性のリスクをもたらす。よって、歯磨き粉の安全性は、消費者に大いに関心を持たれている。
【0004】
界面活性剤の潜在的な安全性リスクを減らすために、マイルドな歯磨き粉が開発されており、この種類のマイルドな歯磨き粉は、例えば、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、アルキルグリコシド、コカミドプロピルベタイン、及び天然の界面活性剤(ソヤサポニン)等である相対的にマイルドな界面活性剤を使用している。ところが、我々の研究チームは、実験室で、所定濃度の歯磨き粉水溶液に対して緑豆実験を実施したところ、これら界面活性剤含有の歯磨き粉が水で20倍希釈されたとしても、緑豆が発芽できなかった結果を発見した。研究により、界面活性剤の存在により、歯磨き粉の安全性が減じられ、潜在的な安全のリスクが残っていることが示される。
【0005】
さらに、歯磨き粉組成物用途のために界面活性剤の代替品も開発されている。
【0006】
中国特許出願公開第103211716号は、界面活性を有するタンパク質、又はタンパク質ベースの界面活性剤を、独特なクリーニングおよび洗浄用の成分として使用して歯磨き粉を製造する方法を開示しており、当該界面活性を有するタンパク質、又はタンパク質ベースの界面活性剤は、大豆タンパク質ナトリウム、シルクタンパク質カルシウム、天然シルクタンパク質乳化剤又はカゼインナトリウムのうちの1つ、2つ、3つもしくは4つである。
【0007】
米国特許出願公開第2006222602号は、歯をクリーニングするための歯磨き粉組成物について開示している。当該歯磨き粉のカルシウム塩成分は、ナノ粒子及び、例えば、大豆タンパク質やカゼイン等のタンパク質成分を含む。当該歯磨き粉組成物は、アニオン性界面活性剤、双性イオン及び両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又はこれら化合物の混合物をさらに含む。歯磨き粉組成物は、ソフトな処置及びクリーニングの効果を有する。
【0008】
中国特許出願公開第108261343号は、歯磨き粉組成の総重量をベースとし、0.05~5.5%のカルシウムカゼインを含む歯磨き粉組成物について開示しており、当該代替的な界面活性剤は高価である。
【0009】
界面活性剤による潜在的な安全性リスクを低減させるために、界面活性剤フリーの歯磨き粉が開発されているものの、当該界面活性剤フリーの歯磨き粉は、歯磨きする際に発泡することができないため、ユーザーにとって使用感が劣り、受け入れにくい。
【0010】
よって、ユーザーの使用感を維持しつつ、界面活性剤フリー、防腐剤フリーの口腔ケア組成物、特に歯磨き粉組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第4058595号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第103211716号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006222602号
【特許文献4】中国特許出願公開第108261343号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
セルロースタイプの天然由来高分子ポリマーは、歯磨き粉における通常の増粘剤である。本開示の研究者らは、口腔ケア組成物が、界面活性剤フリーの条件下でも、特定のメチルセルロースを増粘剤として使用することで、発泡させることができることを発見し、これをベースに本願発明を完成させた。
【0013】
したがって、本開示は、発泡性口腔ケア組成物に関しており、口腔ケア組成物の重量に基づき、0.1~10重量%のメチルセルロースを含み、0.1質量%濃度での水溶液中のメチルセルロースの表面張力は、60mN/m未満であり、好ましくは47~59mN/mであり、特に好ましくは、48~53mN/mである。本開示の組成物における成分内容物は、質量パーセント(w/w)であると解される。
【0014】
いくつかの実施態様では、本開示は、口腔ケア組成物に関し、かかる口腔ケア組成物は、
(a)10~50%(w/w)、好ましくは12~40%(w/w)、特に好ましくは15~30%(w/w)、特に18~25%(w/w)の研磨剤、
(b)5~50%(w/w)、好ましくは10~45%(w/w)、特に好ましくは15~40%(w/w)、特に18~30%(w/w)の保湿剤、
(c)0.01~2.0%(w/w)、好ましくは0.1~1.0%(w/w)、より好ましくは0.5~1.0%(w/w)の着香剤、及び
(d)0.01~10%(w/w)、好ましくは0.1~5%(w/w)、より好ましくは1.0~2.0(w/w)の機能性添加剤
(e)0.1~10%(w/w)、好ましくは0.5~10%(w/w)、より好ましくは1~7%(w/w)、特に好ましくは2~5%(w/w)、特に2.5~4.0%(w/w)のメチルセルロース
を含む。
【0015】
少なくとも1つ以上の実施態様において、本開示の口腔ケア組成物は、
(a)10~50%(w/w)、好ましくは12~40%(w/w)、特に好ましくは15~30%(w/w)、特に18~25%(w/w)の研磨剤、
(b)5~50%(w/w)、好ましくは10~45%(w/w)、特に好ましくは15~40%(w/w)、特に18~30%(w/w)の保湿剤、
(c)2~20%(w/w)、好ましくは、4~16%(w/w)、特に好ましくは6~12%(w/w)、特に8~10%(w/w)のセルロース、
(d)5~30%(w/w)、好ましくは8~26%(w/w)、特に好ましくは12~22%(w/w)、特に14~18%(w/w)の乳酸菌発酵化合物、
(e)0.1~10%(w/w)、好ましくは0.5~10%(w/w)、より好ましくは1~7%(w/w)、特に好ましくは2~5%(w/w)、特に2.5~4.0%(w/w)のメチルセルロース、及び
(f)1~12%(w/w)、好ましくは2~10%(w/w)、特に好ましくは3~8%(w/w)、特に4~6.0%(w/w)のスターチ
を含む。
【0016】
メチルセルロース(MC)
本開示の口腔ケア組成物において、0.1%のメチルセルロース水溶液の表面張力は、60mN/m未満であり、好ましくは47~59mN/mである。
【0017】
許容可能な発泡効果を得るために、口腔ケア組成物に基づき、本開示のメチルセルロースの使用量は、0.1~10%(w/w)、好ましくは0.5~10%、より好ましくは1~7%、特に好ましくは2~5%、特に2.5~4.0%である。
【0018】
いくつかの実施態様において、市販のメチルセルロースは選択されており、例えば、Shandong HEAD社の55HD400FG(食品級)及び55HD400(医療級)である。
【0019】
研磨剤
本開示の複数の実施態様において、当該口腔ケア組成物の媒体が固体又はペーストである条件において、口腔ケア組成物は、歯のエナメルを研磨し、もしくは美白効果を提供するために使用され得る歯科許容可能な研磨性材料もしくは研磨剤を含む。いかなる口腔的に許容可能な研磨剤が使用され得る。しかしながら、研磨剤の種類、適合度(粒子サイズ)、及び量は、当該組成物の通常使用により歯のエナメルが過度にすり減らされないように、選択されるべきである。適切な研磨剤は、例えばシリカゲル、二酸化ケイ素水和物もしくは沈降二酸化ケイ素の形態である二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、不溶性リン酸塩、炭酸カルシウム、及び例えば、尿素ホルムアルデヒド縮合物である樹脂系研磨剤等を含むが、これらに限定されない。研磨剤として使用される不溶性リン酸塩は、オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩及びピロリン酸塩を含む。典型的な実施例は、カルシウムオルトリン酸塩二水和物、カルシウムピロリン酸塩、β-カルシウムピロリン酸塩、トリカルシウムリン酸塩、カルシウムポリメタリン酸塩、及び不溶性ポリメタリン酸ナトリウムである。1つ以上の研磨剤は、必要に応じて、典型的に当該組成物の約10~50%、例えば、12~40%、15~30%、もしくは18~25%の有効総研磨量で存在する。
【0020】
保湿剤
本開示に使用可能な保湿剤は、例えば、グリセロール、ソルビトール、キシリトール及びポリエチレングリコールである多価アルコールを含む。種々の実施態様において、保湿剤は、空気に曝露された場合ペーストもしくはゲル組成物の硬化を防止するために使用され得、保湿剤はまた、甘味剤の効果を奏する。1つ以上の保湿剤は、必要に応じて、5~50%、好ましくは10~45%、特に好ましくは15~40%、特に18~30%の総量で存在する。
【0021】
増粘剤
増粘剤は、通常、組成物の粘度を制御もしくは変更するために口腔ケア組成物に使用される。歯磨き粉の泡に影響しない前提において、本開示の少なくとも1つの態様に係る当該歯磨き粉は、メチルセルロースと異なる増粘剤を含み、当該増粘剤は、多糖類または多糖類誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及び他のセルロース誘導体、並びにスターチ)、カルボマー(例えば、架橋したポリアクリル酸コポリマーもしくはアクリル酸ホモポリマー及びポリアルケニルポリエーテルと架橋したコポリマー)、天然及び合成のガム(例えば、カラゲナン、キサンタンガム、カラヤガム、グアーガム、ゼラチン、アルギン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、キトサン、及びアカシアガム)、アクリルアミドポリマー、アクリル酸ポリマー、ビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン)、ポリアミン、ポリ四級化合物、エチレンオキシドポリマー、並びにこれらの混合物から選択される。いくつかの実施態様において、粘土、有機的に改変した粘土、例えば二酸化ケイ素である一部の無機増粘剤、及びこれらの混合物が、本開示に使用される。
【0022】
着香剤
本開示において使用される着香剤は、組成物の味を改善するように作用可能ないかなる物質、もしくはこれら物質の混合物を含む。いかなる口腔的に許容可能な天然のもしくは合成的な着香剤は使用され得、例えば、香味オイル、香味アルデヒド、エステル、アルコール、類似物質及び、これらの組み合わせである。着香剤としては、バニリン、セージ、マヨラナ、オランダセリ油、スペアミント油、シナモンオイル、ウインターグリーン油、ハッカ油、チョウジ油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、かんきつ油、果実油、並びにレモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、アプリコット、バナナ、ブドウ、リンゴ、いちご、さくらんぼ及びパイナップル等に由来するエッセンスが挙げられる。1つ以上の着香剤は、必要に応じて、0.01~5%の総量で存在する。
【0023】
いくつかの実施態様において、本開示に使用される着香剤は、口腔的に許容可能な天然のもしくは人工的な、栄養性もしくは非栄養性の甘味剤を含む。この種類の甘味剤は、デキストロース、ポリデキストロース、スクロース、マルトース、デキストリン、乾燥された転化糖、マンノース、キシロース、リボース、フルクトース、レブロース、ガラクトース、コーンシロップ、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルチトール、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリン、及びこれらの塩、スクラロース並びにこれらの混合物を含む。1つ以上の甘味剤は、約0.005~10%、必要に応じて約0.01~1%の含有量で、必要に応じて存在する。
【0024】
選択的な活性物質
本開示の組成物は、必要に応じて、1つ以上の追加的な活性物質を含み、口腔内の硬組織もしくは軟組織の疾患もしくは障害を防止もしくは処置し、生理学的障害もしくは疾患を防止もしくは処置し、又は、メイクアップの利点を提供するために使用可能である。種々の実施において、活性剤は、口腔内(例えば、歯、歯茎もしくは他の口腔の硬組織もしくは軟組織)において障害を処置しもしくは防止し、又はメイクアップの利点を提供するために使用可能である「口腔ケア活性剤」である。本開示に使用可能である口腔ケア活性剤は、着色剤、腐食防止剤、抗う蝕剤、抗歯垢形成剤、抗歯石剤、抗炎症剤、防臭剤、減感剤もしくはこれらの組み合わせ等を含む。
【0025】
本開示に使用可能である活性剤は、必要に応じて、本開示の組成物において安全及び有効な量で存在する。活性剤の「安全及び有効」な量は、活性剤を使用して、不適切な副作用(例えば、毒性、刺激、またはアレルギー反応)を有することなく、ヒトもしくは下等動物対象において、所望な処置もしくは防止効果を生じさせるための十分な量である。本開示の方法における適用において、合理的な利点/リスク比が認識される。活性剤の特定の安全的かつ有効量は、処置される特定の疾患、対象の身体の健康状態、並行の処置(ある場合)の特性、特別に使用される活性剤、特定の剤形、使用される担体、及び所要な投与計画の因子に伴い変化し得る。
【0026】
pH調整剤
本開示に使用可能なpH調整剤は、pH降下酸性化剤、pH上昇塩基化剤、及び所要の範囲におけるpHを制御するためのバッファー剤を含み、例えば、およそpH2~10を提供するように酸性化剤、塩基化剤及びバッファー剤から選択される1つ以上の化合物を含む。いかなる口腔的に許容可能なpH調整剤は使用され得、カルボン酸、リン酸、スルホン酸、酸性塩(例えば、クエン酸モノナトリウム、クエン酸ニナトトリウム、マレイン酸モノナトリウム)、例えば水酸化ナトリウムであるアルカリ金属の水酸化物、例えば炭酸ナトリウムである炭酸塩、重炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩及びリン酸塩(例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、及びポリリン酸塩)を含む。1つ以上のpH調整剤は、必要に応じて、組成物を口腔的に許容可能なpH範囲に有効的に維持する総量で存在する。
【0027】

本開示の種々の実施態様において、水はまた、口腔組成物に存在し、少なくとも1つの実施態様において、有機的不純物を含まない脱イオン水が使用される。他の物質、例えばソルビトールと共に導入される場合を除き、添加された水は、自由水である。水は、通常、本開示の歯磨き粉組成物の10~50%、好ましくは15~35%を占める。
【0028】
界面活性剤
他の実施態様において、本開示の口腔ケア組成物は、界面活性剤フリーの組成物である。本開示の用語「界面活性剤」は、界面剤とも呼ばれ、液体表面張力もしくは2相間の界面張力を低減させることができる物質である。界面活性剤は、両親媒性であり、親水性基と親油性基を含む。親水性基の例は、アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基、ヒドロキシ基等を含むが、これらに限定されない。疎水性基の例は、C8以上の脂肪族アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素等を含むが、これらに限定されない。よく使用される界面活性剤の例は、天然の界面活性剤もしくはこれらの誘導体、および合成の界面活性剤を含むが、これらに限定されない。天然界面活性剤もしくはこれらの誘導体の例は、タンパク質をベースとする界面活性剤を含む。
【0029】
例示のアニオン性界面活性剤は、例えば、高級脂肪酸モノグリセリドモノサルフェートの水溶性塩、例えば、水素化ココナッツオイル脂肪酸のモノサルフェートモノグリセリドのナトリウム塩(sodium salts of monosulfated monoglyceride of hydrogenated coconut oil fatty acids)、例えば、N-ココイルN-メチルタウリンナトリウム(sodium N-methyl N-cocoyl taurate)、及びココグリセリド硫酸ナトリウム(sodium cocoglyceride sulfate)、高級アルキルサルフェート(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、高級アルキルエーテルサルフェート(例えばラウレス2-硫酸ナトリウム)、高級アルキルアリールスルホネート(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム))、及び高級アルキルスルホ酢酸(例えば、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム(ドデシルスルホ酢酸ナトリウム))、1,2-ジヒドロキシプロパンスルホン酸の高級脂肪酸エステル、スルホラウリン酸塩及びラウリルサルコシン酸ナトリウムである。
【0030】
本開示のカチオン性界面活性剤について、カチオン性界面活性剤は、C8~C18長のアルキル鎖を有する脂肪族四級アンモニウム化合物の誘導体として広く定義され得、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ジイソブチルフェノキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ココアルキルトリメチルアンモニウム亜硝酸塩、セチルピリジニウムフルオリド、及びこれらの混合物である。
【0031】
例示の非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド基と、実質的に脂肪族もしくはアルキル芳香族化合物となり得る疎水性有機化合物と縮合することにより産生される化合物として、広く定義され得る。適切な非イオン性界面活性剤の例は、アルキルフェールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物から誘導された縮合生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、並びにこれら種類の物質の混合物、例えば、ポロクサマー、ポリソルベート及びポリエチレングリコール水素化ひまし油を含むが、これらに限定されない。
【0032】
例示の両性界面活性剤は、ベタイン(例えば、コカミドプロピルベタイン);脂肪族二級及び三級アミンの誘導体であって、ここで、脂肪族基は、直鎖もしくは分枝鎖であり得、脂肪族置換基のうちの一つは、約8~18の原子を含み、一つは、アニオン性水可溶化基(例えば、カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、もしくはホスホネート)を含む、誘導体;及びこの種類の材料の混合を含む。
【0033】
他の実施態様において、本願発明は、防腐剤及び制菌剤を含まない。防腐剤及び制菌剤は、アルコール、ホルムアルデヒドドナー及びアルデヒド誘導体、安息香酸及びその誘導体、並びに他の有機化合物、例えば、フェノキシエタノール及びベンジルアルコール、イミダゾリジニルウレア、パラベン、ブロノポール、カルバゾン、及び四級アミン塩から選択される。
【0034】
理論により拘束されず、高含有量の保湿剤、例えば水溶性小分子、例えばグリセロール、ソルビトール、キシリトール、及びイソマルチトール、並びに天然高分子ポリマーを通じて、口腔ケア組成物の水分活性を制御することで、微生物の成長を阻害する。本開示の口腔ケア組成物(歯磨き粉として)の水分活性は、0.75未満、好ましくは0.65未満、特に0.6未満である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】歯磨き粉の発泡能力の比較を示す。
図2】M1実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図3】M2実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図4】M3実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図5】M4実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図6】M5実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図7】M6実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図8】実施態様1#実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図9】実施態様1#実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図10】実施態様1#実験の15時間後の緑豆条件を示す。
図11】実施態様1#実験の5日目の緑豆条件を示す。
図12】実施態様1#実験の7日目の緑豆条件を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、下記態様を解読することでより明瞭に理解され得る。これらの態様は、本願発明を限定する意図で記載されたものではなく、本開示の例示的な実施形態にすぎない。特別に言及しない限り、下記態様は、質量パーセントとなる。
【0037】
口腔ケア組成物は、下記比率に基づき調製される。
実施態様1#の処方:55部のソルビトール(70%のソルビトール水溶液)、22部のリン酸二カルシウム、5.5部のグリセロール、5.5部のキシリトール、2.2部のセルロース、2.2部のスターチ、4.6部の乳酸菌発酵化合物、及び3.0部のMC(X1)。
【0038】
実施態様2#の処方:52.5部のソルビトール(70%のソルビトール水溶液)、22部のリン酸二カルシウム、8部のグリセロール、5.5部のキシリトール、2.2部のセルロース、2.2部のスターチ、4.6部の乳酸菌発酵化合物、及び3.0部のMC(X2)。
【0039】
実施態様3#の処方:50部のソルビトール(70%のソルビトール水溶液)、22部のリン酸二カルシウム、10.5部のグリセロール、5.5部のキシリトール、2.2部のセルロース、2.2部のスターチ、4.6部の乳酸菌発酵化合物、及び3.0部のMC(X3)。
【0040】
口腔ケア組成物は、下記比率に基づき調製される。
すなわち、50部のソルビトール(70%のソルビトール水溶液)、22部のリン酸二カルシウム、10.5部のグリセロール、5.5部のキシリトール、2.2部のセルロース、2.2部のスターチ、4.6部の乳酸菌発酵化合物、及び3.0部のMC(Xn)。
注記:Xnは、種々モデルのMCを意味し、nが4、5、6等である。
【0041】
表面張力試験方法
MCは、0.1%の水溶液中に調製され、溶液の表面張力は、JYW-200C全自動表面張力計で測定した。
発泡試験方法
歯磨き粉の発泡性能は、下記方法に基づき測定した。長さ4cmの歯磨き粉を、粗めの石表面に押し出した。当該粗めの石を予め濡らし、真の歯ブラシの頻度をシミュレートすることにより、1分間繰り返して磨くために歯ブラシが濡らされた。当該歯磨き粉の発泡性能を観察し、数値0~4で評価した。組成物が、歯磨き粉として使用された場合、2の発泡性能が、ある程度の発泡性を示し、3および4が、良好な発泡効果を示し、0が発泡不能を示す。
【0042】
表1:MCの表面張力及び組成物の発泡能力
【表1】
【0043】
比較例4#:界面活性剤を含む市販の歯磨き粉、界面活性剤がラウロイルサルコシン酸ナトリウムである。
結果は、図1及び表1に示す。0.1%の選択されたMCの水溶液の表面張力が、47~59mN/mであり、本開示の歯磨き粉は、市販の界面活性剤含有歯磨き粉に対して、ほぼ同様な発泡効果を有する。
【0044】
安定性試験
表2:3種の歯磨き粉組成物の水分活性Aw
【表2】
【0045】
防腐効果誘発試験のバクテリア培地:レシチンTWEEN(登録商標)80寒天培地(Hopebioから入手):24.0gの培地(レシチンTWEEN(登録商標)80寒天培地)を、1000mlの三角フラスコに入れ、加熱し、沸騰状態になるように沸騰させ、500mlの蒸留水に溶解した。使用に供するために121℃で20分間高圧殺菌を行った。
【0046】
真菌培地:ポテトデキストロース培地(PDA)、及びローズベンガル寒天培地(Beijing Luqiaoから入手):18.3gの培地(上記2培地のうちの一つ、本実施態様では、ローズベンガル寒天培地を使用)を、1000mlの三角フラスコに入れ、500mlの蒸留水に溶解し、加熱して、沸騰状態になるように沸騰させ、完全溶解になるまで加熱した。使用に供するために121℃で15分間の高圧殺菌を行った。
【0047】
生理食塩水:使用に供するために121℃で15分間の高圧殺菌を行った。
【0048】
試験された菌株:
Escherichia Coli, ATCC 8739
Pseudomonas Aeruginosa, ATCC 9027
Staphy Lo Coccus Aureus, ATCC 6538
Candida Albicans, ATCC 10231
Aspergiblus Niger, ATCC 16404
【0049】
実験方法
本実験は、米国薬局方USP39<51>の微生物防腐性効果試験方法に基づく。試験される各サンプルを30g秤量し、滅菌したサンプル瓶に入れた。定量的に混合したバクテリア懸濁液(上記5株)を添加した。サンプルにおけるバクテリアの、初期のバクテリア(Escherichia Coli, Pseudomonas Aeruginosa及びStaphy Lo Coccus Aureus)添加濃度は、10cfu/gであった。Candida Albicans及びAspergiblus Nigerの初期バクテリア添加濃度は、10 cfu/gであった。さらに、十分かつ均一に混合させた。サンプル瓶の開口部は、開口部封止用接着剤で密封した。その後、サンプル瓶は、約28℃のインキュベーターに入れた。サンプリングは、分析のために、接種の7日目、14日目、21目及び28日目にそれぞれ実施した。
【0050】
評価基準
全バクテリア数の初期値から7日目のバクテリア数の対数減少値が1.0より少なくならない;全バクテリア数の初期値から14日目のバクテリア数の対数減少値が3.0より少なくならない;さらに、バクテリア数は、14日目から28日目まで増加しなかった。Candida Albicans及びAspergiblus Nigerの全バクテリア数は、初期から、7日目、14日目、及び28日目に増加しなかった。
【0051】
表3:時間の変化に伴うコロニー数
【表3】

【0052】
3つの実施態様の歯磨き粉組成物の防食剤フリー系のサンプルは、微生物誘発実験に供された。その結果は、これらの組成物が当該誘発実験を合格したことを示す。よって、本開示により、水分活性Awが0.7未満であるように制御することによって、防食性効果を達成することができることを示す。
【0053】
安全性実験
緑豆出芽実験
植物の生命は、種子の出芽から始まる。水が発芽及びもやしの成長のために必須な条件である。水中における汚染物質(歯磨き粉中の化学成分)の存在は、種子の発芽及び新芽(苗)の成長を阻害する。本実験は、緑豆種子の発芽における歯磨き粉水溶液の効果を通じて、歯磨き粉成分の安全性もしくは潜在的な危険性を分析する。
【0054】
(1)試験された歯磨き粉サンプル
表4:試験された歯磨き粉サンプル
【表4】

注記:M1-M6が、市販の歯磨き粉であり、「-」が界面活性剤フリーを意味する。
【0055】
(2)試験方法
歯磨き粉は、培養皿において純水で20回希釈した。6つの健康な緑豆を、培養皿に入れ、もやしの発芽及び成長を観察し、歯磨き粉成分の安全性及び潜在的毒性を試験した。
【0056】
(3)試験結果
表5:試験結果
【表5】

上記検討範囲内において、市販の歯磨き粉に放置された緑豆はいずれ発芽しなかった(図2~7)。本願発明により提供した界面活性剤フリーの歯磨き粉に放置した全ての緑豆が100%発芽し(図8~10)、後続も良好に成長した(図11、12)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】