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特表2023-543792燃料電池ユニットおよび燃料電池ユニットを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】燃料電池ユニットおよび燃料電池ユニットを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/248 20160101AFI20231011BHJP
【FI】
H01M8/248
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519012
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2021076330
(87)【国際公開番号】W WO2022063970
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102020212104.4
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルクス オクス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン グランツォウ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA25
5H126AA28
5H126BB06
5H126JJ02
(57)【要約】
本発明は、燃料電池スタックであって、積層方向(z)に積層されて配置された複数の燃料電池を有しており、燃料電池は、それぞれプレート状に形成されておりかつ積層方向(z)に直交する方向に見てそれぞれ第1の横方向(x)と第2の横方向(y)とに延びており、かつそれぞれ積層方向(z)に積層された状態で、燃料を案内する燃料通路構造を備えた陽極側のバイポーラハーフプレートと;陽極側のガス拡散層と;電解質膜と、電解質膜の両側に配置され、燃料と酸化剤とを電気化学反応させるための陽極および陰極を形成する電極層とを有する膜・電極ユニットと;陰極側のガス拡散層と;酸化剤を案内する酸化剤通路構造を備えた陰極側のバイポーラハーフプレートと;積層方向(z)においてスタックの両端部に設けられたエンドプレートとを有している、燃料電池スタックに関する。本発明に基づき、スタックの側方においてエンドプレートに複数のベルト取付け部が取り付けられ、ベルト取付け部を介して、ベルトがスタックを緊締するように取り付けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(10,300,400)であって、積層方向(z)に積層されて配置された複数の燃料電池(20)を有しており、該燃料電池(20)は、それぞれプレート状に形成されておりかつ前記積層方向(z)に直交する方向に見てそれぞれ第1の横方向(x)と、該第1の横方向(x)に直交する第2の横方向(y)とに延びており、
前記燃料電池(20)は、それぞれ前記積層方向(z)に積層された状態で、
燃料を案内する燃料通路構造(24)を備えた陽極側のバイポーラハーフプレート(22)と、
陽極側のガス拡散層(26)と、
電解質膜(30)と、前記積層方向(z)において前記電解質膜(30)の両側に配置され、燃料と酸化剤とを電気化学反応させるための陽極(32)および陰極(34)を形成する電極層(32,34)とを有する膜・電極ユニット(28)と、
陰極側のガス拡散層(36)と、
酸化剤を案内する酸化剤通路構造(40)を備えた陰極側のバイポーラハーフプレート(38)と、
前記積層方向(z)において当該スタックの両端部に設けられたエンドプレートと、
を有しており、
当該スタックの側方において前記エンドプレート(310,315,410,415)に複数のベルト取付け部(330,430)が取り付けられており、該ベルト取付け部を介して、ベルト(320,420)が前記スタックを緊締するように取り付けられていることを特徴とする、燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項2】
少なくとも1つのベルト取付け部が、前記積層方向(z)に移動可能に配置されている、請求項1記載の燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項3】
前記ベルト取付け部は、丸みの付いた形、または楕円形、または半円形を有している、請求項1または2記載の燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項4】
前記ベルト(320,420)は、第1のエンドプレートに設けられたベルト取付け部と、第2のエンドプレートに設けられたベルト取付け部とを介して案内されており、これにより、前記ベルトは、当該燃料電池スタックの側面を側方から見た平面図では、当該スタックの前記側面の大部分、特に50%超、60%超または70%超を取り囲んでいる、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項5】
前記ベルト取付け部は、全て同じ形状を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載の燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項6】
前記ベルト取付け部(330,430)は、それぞれ異なる形状を有している、請求項1または2記載の燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項7】
前記エンドプレート(310,315,410,415)は、前記バイポーラプレート(22,38)と同じ材料から成る、請求項1から6までのいずれか1項記載の燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項8】
前記エンドプレート(310,315,410,415)は導電性の材料から成り、各前記燃料電池(20)において、前記陽極側のバイポーラハーフプレート(22)の中間領域(23’)および/または前記陰極側のバイポーラハーフプレート(38)の中間領域(39’)は、前記積層方向(z)に突出した突出部を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項9】
前記エンドプレート(310,315,410,415)は、非導電性の材料から成る、請求項1から6までのいずれか1項記載の燃料電池スタック(10,300,400)。
【請求項10】
複数のベルト対が取り付けられており、前記ベルトは対毎に異なる特性を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の燃料電池スタック(10,400)。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の燃料電池スタック(10,300,400)を製造する方法であって、
それぞれプレート状に形成されておりかつ積層方向(z)に直交する方向に見てそれぞれ第1の横方向(x)と、該第1の横方向(x)に直交する第2の横方向(y)とに延びている燃料電池(20)であって、該燃料電池(20)がそれぞれ前記積層方向(z)に積層された状態で、燃料を案内する燃料通路構造(24)を備えた陽極側のバイポーラハーフプレート(22)と;陽極側のガス拡散層(26)と;電解質膜(30)と、前記積層方向(z)において前記電解質膜(30)の両側に配置され、燃料と酸化剤とを電気化学反応させるための陽極(32)および陰極(34)を形成する電極層(32,34)とを有する膜・電極ユニット(28)と;陰極側のガス拡散層(36)と;酸化剤を案内する酸化剤通路構造(40)を備えた陰極側のバイポーラハーフプレート(38)と;前記積層方向(z)において前記スタックの両端部に設けられたエンドプレートとを有している、燃料電池(20)を、前記積層方向(z)に積層して配置することにより、燃料電池ユニット(10)を形成するステップと、
前記スタックの前記エンドプレート(310,315,410,415)の側方に複数のベルト取付け部(330,430)を取り付けるステップと、
を含む方法において、
ベルト(320,420)が前記スタックを緊締するように、前記ベルト取付け部を介して前記ベルト(320,420)を取り付けることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記スタックに初期予荷重を加えてから、1つまたは複数の前記ベルトを取り付ける、請求項11記載の、燃料電池スタック(10,300,400)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタックの迅速な製造および緊締を保証することができるようにすると共に、所要張力を調整し、かつ燃料電池ユニットに必要なフレキシビリティまたは伸び率を可能にするための緊締手段に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池ユニットは、従来技術では燃料電池スタックまたは「スタック」と呼ばれることが多く、積層方向に積層されて配置された複数の燃料電池を有しており、これらの燃料電池は、それぞれ板状に形成されておりかつ積層方向に直交する方向に見てそれぞれ第1の横方向と、第1の横方向に直交する第2の横方向とに延びている。
【0003】
燃料電池は、それぞれ積層方向に積層された状態で、
燃料を案内する燃料通路構造を備えた陽極側のバイポーラハーフプレートと、
陽極側のガス拡散層と、
電解質膜と、積層方向において電解質膜の両側に配置され、燃料と酸化剤とを電気化学反応させるための陽極および陰極を形成する電極層とを有する膜・電極ユニットと、
陰極側のガス拡散層と、
酸化剤を案内する酸化剤通路構造を備えた陰極側のバイポーラハーフプレートと、
を有している。
【0004】
このような燃料電池スタックの従来技術に関しては、例えば欧州特許第2357698号明細書、欧州特許第2445045号明細書、欧州特許第2584635号明細書、欧州特許第2946431号明細書および欧州特許出願公開第3316377号明細書の各刊行物を参照されたい。
【0005】
燃料電池スタックは、典型的には緊締ボルトまたはねじおよびばね部材により、機械的に緊締される。さらに、(大抵は金属の)ベルトをスタックの周りに案内し、次いで固定点においてスタックのエンドプレートに固定しかつベルトに予荷重を加える構成が存在し、これについては例えば米国特許第2006/093890号明細書(Steinbroner)を参照されたい。補足的な構成は、歯付きベルトまたはVベルトに基づく緊締手段であり、これらの緊締手段は、複数の緊締ユニットと共に複数のベルトに基づいている。
【0006】
スタックの緊締の弱点は、持続力を調整するために、ばね部材または場合によって緊締ベルトと共に必要とされる多数の緊締箇所もしくはねじまたは可動の構成部材である。大量生産および迅速かつ生産的な製造設備への組込みのためには、迅速な緊締プロセスが不可欠である。さらに、製造および緊締に必要とされる個別部品の数を最小限に抑える必要がある。
【0007】
スタックの迅速な製造および緊締を保証できるようにすると共に、所要張力を調整し、かつ緊締ベルトに必要なフレキシビリティまたは伸び率を保つためには、ベルト部材が好適である。
【0008】
ただし、中央の緊締は、重大な欠点をもたらし、これは、ベルトの変向率または半径変化およびエンドプレートの高さ構成に関係する。さらに、中央の緊締ユニットにより、場合によって異なるベルトの伸び率または張力に調整することはできない。少数のベルトおよび少数の機械的な構成部材を備えるにもかかわらず、スタックの所要構成空間を大幅に増大させることなく誤差の相違への適合を可能にする構成が有利な場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、ベルトガイドの周囲や内部にスタックハウジングを拡張することによって解決される。本発明により、この課題は第1の態様に基づき請求項1記載の燃料電池ユニットによって解決される。従属請求項は、本発明の有利な改良に関する。
【0010】
本発明に基づき、この場合、燃料電池スタックの側方においてエンドプレートに複数のベルト取付け部が取り付けられており、ベルト取付け部を介してベルトがスタックを緊締するように取り付けられていることが想定されている。
【0011】
この場合、スタックの側方において、例えばエンドプレートに当て付けられたベルト取付け部は、簡単な取付けの要求と、ベルトを介したエンドプレートへの省スペースかつ適合可能な力導入の要求の両方を満たす。
【0012】
燃料電池スタックは、積層方向の長手方向軸線と、燃料電池の側面により形成され、スタックの積層方向および長手方向軸線に対して平行に延びる側面とを有している。直方体形の燃料電池スタックは、例えば各2対の、それぞれ反対の側に位置する2つの平行な側面を有しており、これらの対は互いに直交して位置している。
【0013】
好適には、スタックは両端部に各1つのエンドプレートを有しており、エンドプレートでは、互いに反対の側に位置する2つの側面に、それぞれ側面から突出したベルト取付け部が取り付けられている。ベルト取付け部は、エンドプレートの側面からも、燃料電池の側面により形成されたスタックの側面からも突出している。
【0014】
好適な改良では、このベルト取付け部は、高さを(すなわち積層方向に沿って)可変にまたは調整可能にエンドプレートに取り付けられている。これは、取付け後にスタックを緊締する力の適合を可能にする。つまり、取付け後に、緊締を後調節または調整することができる。
【0015】
固定の不変の長さを有するベルトを取り付けた場合、積層方向においてスタック中心部からスタック端部に向かう、ベルト取付け部の端部プレートに対する移動によって、エンドプレートはより強力に、スタック中心部に向かって押圧される。これによって、より強力な圧縮力がスタックに加えられる。反対に、ベルト取付け部をエンドプレートに対してスタック中心部に向かって移動させると、圧縮力を低下させることができる。エンドプレートに対するベルト取付け部の相対位置の移動および/または固定は、例えば調整ねじまたはその他の機械的な調整機構により可能である。緊締力は、緊締ベルトの弾性変形に基づき加えられてもよい。
【0016】
スタック製造終了時に、例えばスタックに初期予荷重を加えた後に、緊締部材としてのベルトを、ベルト収容部を介してさらにずらすことができる。次いで、ベルト収容部を所望の予荷重に調整することができる。緊締手順の後に、スタックが完成する。
【0017】
本発明による燃料電池スタックの特に有利な実施形態では、スタックの上側のエンドプレートと下側のエンドプレートとに、ベルトユニットが、それ自体一貫して閉じた緊締ベルトを被せ嵌めることができるように配置されている。この場合、スタックを緊締するための圧縮力を、上述したように、積層方向におけるベルト取付け部の移動により調整することができる。
【0018】
好適には、それ自体閉じたベルトは、取付け状態において、その中心垂線がスタックの側面およびスタックの長手方向軸線に対して直交して延びる仮想平面を形成する。この場合、ベルトによって形成される平面は、好適にはスタックの側面に対して平行である。好適には、緊締ベルトは、その中心垂線がスタックの長手方向軸線に直交して交差するように、側面に対して配置されている。この幾何学形状は、緊締ベルトを側方からスタックに簡単に被せ嵌めることを可能にする。
【0019】
この構成は、スタックの長辺または短辺に取り付けられていてよい2つまたは4つのベルト取付け部によっても、より多くのベルト取付け部によっても実現することができる。
【0020】
好適には、燃料電池スタックは、互いに反対の側に位置する少なくとも2つの側面に、このような緊締ベルトを有している。
【0021】
このために、スタックのエンドプレートはそれぞれ、互いに反対の側に位置する2つの側に、各1つのベルト取付け部を有している。ベルト取付け部は、有利には側面の幅の大部分にわたり延在している。例えば、ベルト取付け部は、側面の幅の少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%にわたり延在している。これにより、ベルトによりもたらされる圧縮力が、スタックの幅にわたり分散される。より良好に力を分散させるために、ベルト取付け部はさらに、丸みの付いた形、または楕円形、または半円形を有していてもよい。ベルトは、スタックの側面の幅に沿って横方向に、ベルト取付け部とその形状とを介して案内される。
【0022】
被せ嵌められた緊締ベルトは、第1のエンドプレートに設けられた第1のベルト取付け部により、ベルト取付け部の幅にわたり案内され、(積層方向において)スタックの長さにわたり、積層方向において反対の側に位置する第2のエンドプレートに設けられた第2のベルト取付け部まで延びている。そこで緊締ベルトは第2のベルト取付け部を介して案内され、第1のベルト取付け部に戻る。ベルト取付け部の広幅の賦形に基づき、緊締ベルトは、スタックの側面の大部分にわたり延在している。よって、燃料電池スタックの側面を側方から見た平面図では、緊締ベルトはスタックの側面の大部分(例えば50%超、60%超または70%超)を(ベルト取付け部の形状に応じて例えば環状、楕円形または卵形に)取り囲んでいる。
【0023】
これにより、燃料電池スタックの側面毎に1本の緊締ベルトでも、スタックにわたる広範な力分散を保証することができる。これにより、取り付けられるべきコンポーネントの数を少なく抑えることができる。取り付けられるべきコンポーネントの数の更なる削減は、スタックの各側面に1つおきにのみ緊締ベルトを配置することによって達成することができる。それでもなお、ベルト取付け部の上述した幾何学形状に基づき、スタックにわたる広範な力分散を達成することができる。
【0024】
本発明による構成の利点はとりわけ、1つの燃料電池スタックにまとめられねばならない個別コンポーネントが比較的少ない、という点である。これに対応して、留意せねばならない誤差も比較的小さく、取扱い時間を短縮することができる。さらに有利なのは、迅速で丈夫なベルト緊締手段およびスタック力導入手段と組み合わせられた、自動化された緊締装置であり得る。
【0025】
燃料電池ユニットを用いて電気化学反応により、連続供給される燃料(例えば水素)と連続供給される酸化剤(例えば酸素または空気)との化学反応エネルギを、電気エネルギに変換することができる。
【0026】
(導電性の)バイポーラハーフプレートを介して電気的な直列接続で配置された燃料電池の動作中は、電気化学反応の反応物、つまり燃料(例えば水素)と酸化剤(例えば空気)とを、各燃料電池内の、積層方向に見て膜・電極ユニットのそれぞれ異なる側に供給する必要がある。
【0027】
このために、各燃料電池のバイポーラハーフプレートは、それらの膜・電極ユニットに面した側にそれぞれ通路構造を備えて形成されており、これにより、膜・電極ユニットの各側でこれらの通路構造を介して、そこに隣接する各ガス拡散層内へ燃料と酸化剤とを導入し、ひいては各ガス拡散層を介して、対応する電解質膜の側の各電極層に近づけることができるようになっている。
【0028】
電極層は、一般に炭素材料から形成されており、適切な触媒でコーティングされているか、または適切な触媒が混入されている。この場合、燃料側の電極層は、膜・電極ユニットの陽極を形成しており、酸化剤側の電極層は陰極を形成している。
【0029】
個々の燃料電池内で進行する電気化学反応の生成物、例えば水は、酸化剤(例えば空気)を案内する燃料電池領域を介して導出することができる。
【0030】
個々の燃料電池において、燃料を案内する領域、すなわち陽極側の通路構造、ガス拡散層、電極層(陽極)、および酸化剤を案内する領域、すなわち陰極側の通路構造、ガス拡散層、電極層(陰極)は、これらの領域の間での、出力効率に不都合なガス交換を防止するために、互いにシールされていなければならない。
【0031】
これは特に、周囲環境を介したこのような交換を阻止するために、2つの領域のうちの少なくとも一方を、燃料電池または燃料電池スタックの周囲環境(例えば大気)に対してシールする必要があることを意味する。この場合、実地では少なくとも、燃料を案内する領域が周囲環境に対してシールされ、これにより、この燃料電池領域から周囲環境への燃料の損失ならびに周囲環境からこの燃料電池領域への媒体(例えば空気)の進入を防ぐ。
【0032】
特に、空冷式の燃料電池ユニットを形成するためには、酸化剤を案内する領域が、周囲環境に対して「開放」されて形成されていてもよい。例えば、個々の燃料電池に設けられた酸化剤通路構造は、燃料電池の、横方向に見て互いに反対の2つの側において開いていてよく、これにより、動作中、酸化剤(例えば空気)がこの横方向で燃料電池ユニットを通って流れることを可能にする。このために、酸化剤を、例えばファンにより、側方が開いた燃料電池ユニットを通過させてよく、この場合は同時に、冷却の働きもすることができる。
【0033】
ただし、多くの場合においてより有利なのは、燃料電池スタックの燃料を案内する領域と、酸化剤を案内する領域の両方が、互いにかつ周囲環境に対してシールされている場合である。
【0034】
このようなシールに関して一般的なのは、例えば別個に製造され、バイポーラプレートと膜・電極ユニットとの間に挿入されるシール、または例えば組立てプロセス中の、燃料電池の各コンポーネント(例えばバイポーラプレート、膜・電極ユニット)に対するシール材料の分配/射出、またはシールが既に一体成形された燃料電池のコンポーネントの事前製造である。
【0035】
いくつかの実施形態では、燃料電池ユニットの燃料電池は、それぞれ燃料として水素を用いた運転に適するように、例えばプロトン伝導膜として形成された電解質膜を備えて形成されている。
【0036】
ただし、代替的に、例えば燃料電池ユニットを、例えば有機化合物(例えばメタンまたはメタノール)または例えば天然ガス等の別の燃料を用いて運転するように形成することも考慮される。
【0037】
一実施形態では、燃料電池ユニットは、酸化剤として空気を用いた運転に適するように形成されている。
【0038】
一実施形態では、バイポーラハーフプレートは、金属材料から形成されている。代替的に、バイポーラハーフプレートは、特に例えば炭素材料から、または(例えば相応に調量された、例えばカーボンブラックを含む)例えば導電性のプラスチック材料から、または別の導電性の材料から形成されていてもよい。
【0039】
一実施形態では、本発明に設けられるバイポーラハーフプレートは、それぞれ互いに別個に予め製造され、燃料電池ユニットの製造時に個々のコンポーネントを積層することにより、相応にスタックに嵌め込まれる。
【0040】
別の態様では、本発明は、燃料電池ユニットを製造する方法に関する。
【0041】
以下に、添付の図面を参照して本発明を実施例に基づきさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】従来技術に基づいた一実施例による燃料電池の断面を概略的に示す図である。
図2】歯付きベルトまたはVベルトに基づく緊締を概略的に示す図である。
図3】スタックの側方においてエンドプレートに当て付けられたベルト取付け部の第1の構成を概略的に示す図である。
図4】スタックの側方においてエンドプレートに当て付けられたベルト取付け部の第2の構成を概略的に示す図である。
図5】幾何学形状を明確にするために、図3に示した実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1には、供給される燃料(例えば水素)と供給される酸化剤(例えば空気)との化学反応エネルギを、電気エネルギに変換することができる従来の構成を備えた燃料電池20が示されている。
【0044】
燃料電池20はプレート状に成形されており、この成形形状のプレート平面内で、第1の横方向xと、第1の横方向xに直交する第2の横方向yとに(例えば長方形の輪郭を備えて)延在している。
【0045】
横方向x,yにより形成されるプレート平面に対して直交する方向を、積層方向zと呼ぶ。なぜなら、実際には大抵このような積層方向zに積層されて配置された多数の燃料電池20から1つの燃料電池ユニット(「燃料電池スタック」)が形成されるからである。積層方向zの両端部には、エンドプレートが位置している。エンドプレートはスタックの安定化に用いられ、通常、スタックの中心に設けられるバイポーラプレートよりも機械的に安定している。つまり、エンドプレートは、スタックまたは燃料電池スタックに圧力を加えることができる。
【0046】
エンドプレートは、バイポーラプレートと同じ材料から成っていてもよいし、または別の材料から成っていてもよい。燃料電池20はそれぞれ、スタックの各端部に設けられたプレート状のエンドプレートを含む、プレート状に成形されかつ積層方向zに積層されて配置された複数のコンポーネントから構成されている。
【0047】
この場合はまず、陽極側のバイポーラハーフプレート22のことである。陽極側のバイポーラハーフプレート22の内面(すなわち燃料電池20の内部に面した側)には、燃料を案内する通路構造24が形成されており、以下、燃料通路構造24とも呼ばれる。
【0048】
導電性の材料(例えば金属)から製造されたバイポーラハーフプレート22を介して、燃料電池20の動作中に生じた電流が導出される。
【0049】
バイポーラハーフプレート22の内面ひいては燃料通路構造24に隣接して、導電性かつ燃料透過性のガス拡散層26(例えば炭素不織布)が設けられており、燃料は、燃料電池20の動作中、ガス拡散層26を介して、積層方向zにおいてガス拡散層26に隣接する膜・電極ユニット28に到達する。
【0050】
膜・電極ユニット28は、非導電性の(燃料が水素の場合はプロトン伝導性の)電解質膜30と、積層方向zに見て電解質膜30の両側に配置された、触媒35(例えば白金またはパラジウム)が混入された導電性の電極層32および34(例えば金属製)とを含む。この場合、燃料と酸化剤とを電気化学反応させるために、電極層32は陽極を形成し、電極層34は陰極を形成する。
【0051】
燃料電池20の動作中、燃料(例えば水素)は、燃料通路構造24から出発して陽極側のガス拡散層26を経て電極層32(陽極)に接近し、酸化剤(空気)は、電極層34(陰極)に隣接した陰極側のガス拡散層36を経て電極層34に接近する。
【0052】
積層方向zにおいてこの導電性の酸化剤透過性のガス拡散層36に隣接して、導電性の陰極側のバイポーラハーフプレート38が設けられており、陰極側のバイポーラハーフプレート38の内面には、酸化剤を案内する通路構造40が形成されており、以下、酸化剤通路構造40とも呼ばれる。
【0053】
電気化学反応の生成物、例えば水は、ここでは例えばバイポーラハーフプレート38の酸化剤通路構造40を含む、酸化剤(例えば空気)を案内する燃料電池領域を介して導出することができる。その他に、バイポーラハーフプレート38は、燃料電池20の動作中、燃料電池20によって生じた電流を陰極側に導出するために用いられる。
【0054】
燃料電池20において、燃料を案内する領域、すなわち、燃料通路構造24、ガス拡散層26、電極層32(陽極)、および酸化剤を案内する領域、すなわち酸化剤通路構造40、ガス拡散層36、電極層34(陰極)は、これらの領域の間での、出力効率に不都合なガス交換を防止するために、互いにシールされていなければならない。
【0055】
このために、燃料電池20は、その側縁領域にシール50を有しており、シール50は、バイポーラハーフプレート22と、バイポーラハーフプレート38と、膜・電極ユニット28とに当接しており、これにより、バイポーラハーフプレート22から膜・電極ユニット28に向かってかつ膜・電極ユニット28からバイポーラハーフプレート38に向かってシールすることができるようになっている。シール50は、横方向(図1における横方向y)において、バイポーラハーフプレート22,38の側縁23,39と同一平面上で終わっている。
【0056】
本発明は、例えば図1に示すような燃料電池において、または複数のこのような燃料電池から形成された燃料電池ユニットにおいて、燃料および/または酸化剤および/または場合により2つの隣り合う燃料電池の間の空間に設けられた冷却媒体を所望のように案内するためのシールを実現することができる新規の方法を示すことを目指す。
【0057】
燃料電池スタックは、典型的には緊締ボルトまたはねじ、および場合によってばね部材により、機械的に緊締される。さらに、大抵は金属のベルトをスタックの周りに案内し、次いで1つまたは2つの固定点においてスタックのエンドプレートに固定しかつベルトに予荷重が加えられる構成が存在する。
【0058】
図2には別の構成が示されており、この構成では、歯付きベルトまたはVベルトに基づく緊締は、複数のベルトに加え、複数の緊締ユニットを基礎とする。燃料電池スタックまたはスタック210は、ベルト231,232,233,234によって緊締される。ベルトはエンドプレート220の上に延びており、エンドプレート220の上では緊締調整器240,245が張力の調整を可能にしている。
【0059】
ただし、持続力を調整するために必要とされる多数の緊締箇所、多数のねじ、およびその他の可動の構成部材は、不都合な場合がある。圧力を適合させるためまたは調整するためには、追加的にばね部材または緊締ベルトが必要とされることが多い。
【0060】
大量生産および迅速かつ生産的な製造設備への組込みのためには、対応して迅速な緊締プロセスを適用することができると有利である。同様に、製造および緊締に必要とされる個別部品の数を最小限に抑えることが望ましい。図3には、スタック300の側方においてエンドプレート310,315に当て付けられたベルト取付け部330の第1の構成が具体的に示されている。看取されるのは1本のベルトとそのベルト取付け部である。つまり、合計2本のベルトがスタックを緊締している。ベルト取付け部は、エンドプレートに固定されてまたは高さを可変に取り付けられていてよい。様々な調整手段を使用することができる。ベルト320は緊締部材として、スタック製造終了時にベルト取付け部を介して取り付けられてよい。組立て構想に応じて、スタックに初期予荷重が加えられてから、ベルトが取り付けられる。
【0061】
次いで、場合により、ベルトを所望の予荷重に調整し、これによりスタックの緊締が完了する。
【0062】
ベルト320は、ベルト取付け部330に圧力を加える。それぞれ異なる圧力作用が矢印341,342,343として示されている。スタック幾何学形状およびエンドプレート幾何学形状に対する機械的な要求および所要スペースに応じて、ベルト取付け部を適合させることができる。これにより、圧力作用も適合させることができる。本発明の異なる構成では、ベルト取付け部は、丸みの付いた形、または楕円形、または半円形を有していてよい。図3に示す構成の2つのベルト取付け部は、両方とも同じ形状を有していてもよいし、または異なる形状を有していてもよい。
【0063】
エンドプレートは、圧力が加えられるように構成されている必要がある。エンドプレートは、例えば金属から、例えば鋼から成形することができまたは成っていてよく、この場合、金属は導電性であり、したがってエンドプレートと活性電池との間には電気絶縁層が存在する必要がある。エンドプレートは、非導電性の材料、例えばポリマー化合物等から成っていてもよい。ただし、所要の機械的な特性は保証される必要がある。
【0064】
図4には、スタック400の側方においてエンドプレート410,415に当て付けられたベルト取付け部430の第2の構成が示されている。看取されるのは、スタックを緊締している4本のベルトまたは2対のベルトのうちの2本である。ベルト取付け部は、エンドプレートに固定されてまたは調整手段により適合可能に取り付けられてよい。ベルト420は緊締部材として、スタック製造終了時にベルト取付け部を介して取り付けられてよい。組立て構想に応じて、スタックに初期予荷重が加えられてから、ベルトが取り付けられる。図3の場合と同様に、次いで場合により、ベルトを所望の予荷重に調整し、これによりスタックの緊締が完了する。
【0065】
両ベルト対は、構成および必要に応じて異なる長さまたは幾何学形状を有していてよく、つまり、側方のベルトと、これに直交する方向に設けられたベルトとの2本のベルトが、それぞれ異なる特性を有していてよい。ベルト対は、それぞれ異なる機械的な特性を有していてもよい。例えば、ベルト対は、それぞれ異なる長さであってもよいし、それぞれ異なる太さまたは幅または厚さであってもよいし、それぞれ異なる伸び率等を有していてもよい。取付け部も、それぞれ異なって構成することができる。個々のベルトは、それぞれ異なる機械的な特性を有していてよく、かつ/またはそれぞれ異なる長さまたは幾何学形状を有していてよい。ベルト対間または個々のベルト間の緊締プロセスに差がある場合もある。つまり、例えば、場合により各緊締部材において異なる予荷重を調整しながら、第1のベルト対をずらし、第2のベルト対をずらし、このようにして、燃料電池スタックを構成する。
【0066】
ベルト420は、ベルト取付け部430に圧力を加える。それぞれ異なる圧力作用が矢印441,442,443として示されている。スタック幾何学形状およびエンドプレート幾何学形状に対する機械的な要求および所要スペースに応じて、ベルト取付け部ひいては圧力作用をも適合させることができる。本発明の異なる構成では、ベルト取付け部は、丸みの付いた形、または楕円形、または半円形を有していてよい。図4に示す構成の8つのベルト取付け部は、全て同じ形状を有していてもよいし、またはそれぞれ異なる形状を有していてもよい。
【0067】
図5には、図3に示した実施形態が再度、幾何学形状を明確にするために示されている。長手方向軸線500が、積層方向に燃料電池スタック300の中心を通って延びている。緊締ベルト320により、軸線510および520によって表される平面が形成される。緊締ベルト320の中心垂線530は、軸線510および520によって形成される平面と、スタックの長手方向軸線500とに対して垂直に位置している。軸線510および520(および緊締ベルト)によって形成される平面は、スタックの側面540に対して平行に延びている。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】