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特表2023-543810親和性結合及び細胞培養のための活性化溶解性担体
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  • 特表-親和性結合及び細胞培養のための活性化溶解性担体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】親和性結合及び細胞培養のための活性化溶解性担体
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/06 20060101AFI20231011BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20231011BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20231011BHJP
   C12N 11/10 20060101ALN20231011BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20231011BHJP
【FI】
C08B37/06
C12M1/00 C
C07D405/12
C12N11/10
C12N1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519269
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 US2021050221
(87)【国際公開番号】W WO2022066466
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】63/084,153
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.KITCHENAID
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アンリ,ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ワルラック,コリーヌ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B033
4B065
4C063
4C090
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB01
4B033NA42
4B033NB04
4B033NB34
4B033NB68
4B033NC05
4B033NC16
4B033ND20
4B033NF06
4B033NG05
4B033NH04
4B033NH06
4B065AA90X
4B065BC42
4C063AA01
4C063BB08
4C063CC78
4C063DD03
4C063EE05
4C090AA05
4C090BA50
4C090BB02
4C090BB13
4C090BB32
4C090BB36
4C090BB52
4C090CA35
4C090CA38
4C090DA40
(57)【要約】
イオン的に架橋されたカルボン酸基と活性化されたヒドロキシル基とを含む少なくとも1つの反復単位を有するポリマー材料を含む、イオンチャネル的に架橋された化合物を含む、活性化された溶解性担体が提供され、ここで、ヒドロキシル基は、溶媒中、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルによって活性化されて、リガンド結合のための炭酸スクシンイミジル基を形成する。活性化された溶解性担体を形成する方法、活性化された溶解性担体上で細胞を培養する方法、及び溶解性担体から細胞を回収する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化された溶解性担体であって、
少なくとも1つの反復単位を有するポリマー材料を含むイオンチャネル的に架橋された化合物
を含み、該化合物が、
イオン架橋カルボン酸基、及び
活性化されたヒドロキシル基であって、溶媒中、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルによって活性化されて、リガンド結合のための炭酸スクシンイミジル基を形成する、ヒドロキシル基
を含む、活性化された溶解性担体。
【請求項2】
前記カルボン酸基が多価カチオンとイオン的に架橋される、請求項1に記載の溶解性担体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの反復単位が次を含む、請求項1に記載の溶解性担体:
【化1】
【請求項4】
前記溶媒が非プロトン性溶媒である、請求項1に記載の溶解性担体。
【請求項5】
前記ポリマー材料がポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含む、請求項1に記載の溶解性担体。
【請求項6】
前記PGA化合物が、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の溶解性担体。
【請求項7】
前記部分的にエステル化されたペクチン酸が、1モル%から40モル%のエステル化度を含む、請求項6に記載の溶解性担体。
【請求項8】
前記部分的にアミド化されたペクチン酸が、1モル%から40モル%のアミド化度を含む、請求項7に記載の溶解性担体。
【請求項9】
前記溶解性担体が、ビーズ、繊維、織物、発泡体、又はコーティングを含む構造を含む、請求項1に記載の溶解性担体。
【請求項10】
活性化された溶解性担体を形成する方法であって、
イオンチャネル的に架橋された化合物を形成するステップ
を含み、該ステップが、
ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むポリマー溶液を少なくとも1つの多価カチオンを含む溶液に加えることによって溶解性担体を形成することであって、前記PGA化合物がペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、及びそれらの塩のうちの少なくとも1つから選択される、形成すること、並びに
活性化溶液を加えることによって、ヒドロキシル基を活性化して、前記溶解性担体の前記PGA化合物に炭酸スクシンイミジル基を形成すること
を含む、方法。
【請求項11】
前記方法が、活性化の前に前記溶解性担体をすすいで、結合していないヒドロキシル含有化合物を除去するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、リガンドを前記活性化されたヒドロキシル基に結合させて、リガンド可溶性担体コンジュゲートを生成するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記リガンド可溶性担体コンジュゲートが、次を含む少なくとも1つの単位を含む、請求項12に記載の方法:
【化2】
【請求項14】
前記リガンドが、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、糖類、及び薬物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、活性化後に活性化された溶解性担体を少なくとも1つの多価カチオンを含む溶液ですすぐステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2020年9月28日出願の米国仮特許出願第63/084,153号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は概して、活性化された溶解性担体に関する。特に、本開示は、細胞培養及び細胞捕獲に使用するための活性化された溶解性担体に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞療法は、多くの疾患の治療法として人気を集めている。従来の細胞療法の生産では、方法は労働集約的であり、小さいバッチでの生産に適した形式となっている。しかしながら、多くの新たに出現した細胞療法は、不均一な細胞混合物から目的の低周波細胞を単離し、その後、捕獲した細胞を大規模増殖させることを必要とする。従来の小バッチの生産技法は、標的細胞の単離及び細胞の効率的な培養を可能にする細胞療法用の生産方法に対するニーズの高まりに応えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の細胞単離技法では、リガンドと受容体の相互作用を使用して細胞を単離しており、リガンドは固体担体上に固定化する必要がある。しかしながら、固体担体上にリガンドを固定化する従来の方法は、カルボン酸基の活性化に依拠しており、これが担体の機械的完全性に影響を与え、さらなる処理中に担体の劣化を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態は、活性化された溶解性担体を提供する。該担体は、細胞培養培地の機械的完全性を維持しつつ、細胞培養、細胞捕獲、又はその両方を可能にする。細胞捕獲又は細胞培養を可能にするリガンドが共有結合により固定化され、したがって溶解性担体に永続的に接着されることから、溶解性担体はポリマー接着コーティングを必要としない。溶解性担体内のイオン架橋の性質によって、該担体は培地の存在下でも機械的完全性を維持する。
【0006】
担体は溶解可能であり、したがってオンデマンドで消失しうるため、本開示の実施形態による担体は、下流の処理の簡素化を可能にする。したがって、溶解性担体は、酵素の添加による消化などにより、担体自体が要求に応じて溶解可能であるため、捕獲細胞又は培養細胞の回収の向上を提供する。加えて、溶解性担体は、任意の適切な形式(例えば、とりわけビーズ、繊維、発泡体モノリス)とすることができ、二次元(2D)単層細胞培養などの平面上の細胞培養に限定されない。
【0007】
一態様では、活性化された溶解性担体は、イオン架橋カルボン酸基と活性化されたヒドロキシル基とを含む少なくとも1つの反復単位を有するポリマー材料を含む、イオンチャネル的に架橋された化合物を含み、ここで、ヒドロキシル基は、溶媒中、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルによって活性化されて、リガンド結合のための炭酸スクシンイミジル基を形成する。
【0008】
幾つかの実施形態では、カルボン酸基は多価カチオンとイオン的に架橋される。幾つかの実施形態では、溶媒は非プロトン性溶媒である。幾つかの実施形態では、非プロトン性溶媒は無水溶媒である。
【0009】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの反復単位は、次を含む:
【0010】
【化1】
【0011】
幾つかの実施形態では、ポリマー材料はポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含む。幾つかの実施形態では、PGA化合物は、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、部分的にエステル化されたペクチン酸は、1モル%から40モル%のエステル化度を含む。幾つかの実施形態では、部分的にアミド化されたペクチン酸は、1モル%から40モル%のアミド化度を含む。
【0012】
幾つかの実施形態では、溶解性担体は、ビーズ、繊維、織物、発泡体、又はコーティングを含む構造を含む。幾つかの実施形態では、溶解性担体は多孔性ビーズを含む。幾つかの実施形態では、溶解性担体はマクロ多孔性発泡体を含む。幾つかの実施形態では、溶解性担体は、細胞培養容器の細胞培養表面のためのコーティングを含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、溶解性担体は、酵素、キレート剤、又はそれらの組合せによる消化によって溶解される。幾つかの実施形態では、酵素は非タンパク質分解酵素を含む。幾つかの実施形態では、非タンパク質分解酵素は、ペクチン分解酵素及びペクチナーゼからなる群より選択される。幾つかの実施形態では、溶解性担体の消化は約1時間未満で完了する。幾つかの実施形態では、溶解性担体の消化は約15分未満で完了する。幾つかの実施形態では、リガンドは、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、糖類、又は薬物を含む。
【0014】
一態様では、活性化された溶解性担体を形成する方法は、ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むポリマー溶液を少なくとも1つの多価カチオンを含む溶液に加えることによって溶解性担体を形成することであって、該PGA化合物が、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、及びそれらの塩のうちの少なくとも1つから選択される、ステップと、活性化溶液を加えることによってヒドロキシル基を活性化して溶解性担体のPGA化合物に炭酸スクシンイミジル基を形成するステップとを含む、イオンチャネル的に架橋された化合物を形成するステップを含む。
【0015】
幾つかの実施形態では、該方法は、活性化の前に溶解性担体をすすいで、結合していないヒドロキシル含有化合物を除去するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、該方法は、リガンドを活性化されたヒドロキシル基に結合させて、リガンド可溶性担体コンジュゲートを生成するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、リガンドは、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、糖類、及び薬物を含む。幾つかの実施形態では、リガンド可溶性担体コンジュゲートは、次を含む少なくとも1つの単位を含む:
【0016】
【化2】
【0017】
幾つかの実施形態では、該方法は、活性化後に活性化された溶解性担体を少なくとも1つの多価カチオンを含有する溶液ですすぐステップをさらに含む。
【0018】
幾つかの実施形態では、イオンチャネル的に架橋された化合物は、ビーズ、繊維、織物、又は発泡体を含む構造へと形成されうる。幾つかの実施形態では、イオンチャネル的に架橋された化合物は、細胞培養表面にコーティングとして施すことができる。
【0019】
幾つかの実施形態では、活性化溶液は、活性化剤と溶媒とを含む。幾つかの実施形態では、活性化剤は、N、N’-炭酸ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルを含む。幾つかの実施形態では、溶媒は非プロトン性溶媒を含む。
【0020】
幾つかの実施形態では、ポリガラクツロン酸化合物は、ペクチン酸、1から40モル%のエステル化度又はアミド化度を有する部分的にエステル化若しくはアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、ポリガラクツロン酸化合物は20モル%未満のメトキシル基を含む。
【0021】
一態様では、溶解性担体上で細胞を培養する方法は、溶解性担体上に細胞を播種するステップ;及び、溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップを含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、溶解性担体上に細胞を播種するステップは、細胞を溶解性担体の表面に接着させることを含む。幾つかの実施形態では、細胞が溶解性担体の細孔内で凝集してスフェロイドを形成する。
【0023】
幾つかの実施形態では、溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップは、溶解性担体を細胞培養培地に沈設することを含む。幾つかの実施形態では、溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップは、細胞培養培地を溶解性担体上に連続的に通過させることを含む。幾つかの実施形態では、細胞培養培地を溶解性担体上に連続的に通過させることは、細胞培養培地の少なくとも一部を溶解性担体との接触から取り除くこと、及び溶解性担体と接触する細胞培養培地の体積が実質的に一定に維持されるように、溶解性担体を新鮮な細胞培養培地と接触させることを含む。
【0024】
一態様では、溶解性担体から細胞を回収する方法は、溶解性担体を酵素、キレート剤、又はそれらの組合せに曝露することによって溶解性担体を消化するステップ;及び、溶解性担体が消化されるときに曝露された細胞を回収するステップを含む。
【0025】
幾つかの実施形態では、溶解性担体は、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、及びそれらの塩のうちの少なくとも1つから選択される、イオンチャネル的に架橋されたポリガラクツロン酸化合物を含み、酵素は非タンパク質分解酵素を含む。幾つかの実施形態では、非タンパク質分解酵素は、ペクチン分解酵素及びペクチナーゼからなる群より選択される。幾つかの実施形態では、溶解性担体を消化することは、溶解性担体を約1Uから約200Uの間の酵素に曝露することを含む。幾つかの実施形態では、溶解性担体を消化することは、溶解性担体を約1mMから約200mMの間のキレート剤に曝露することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の一実施形態による担体に播種した細胞の蛍光画像
図2】本開示の一実施形態による担体に播種した細胞の蛍光画像
図3】実施例5に記載される陰性対照に播種した細胞の蛍光画像
図4】本開示の一実施形態による担体に捕獲した細胞の蛍光画像
図5】実施例6に記載される陰性対照に捕獲した細胞の蛍光画像
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の実施形態は、活性化された溶解性担体を提供する。該担体は、細胞培養培地の機械的完全性を維持しつつ、細胞培養、細胞捕獲、又はその両方を可能にする。さらには、細胞捕獲又は細胞培養を可能にするリガンドは、共有結合により固定化され、したがって溶解性担体に永続的に接着される。担体は溶解可能であり、したがってオンデマンドで消失しうるため、本開示の実施形態による担体は、下流の処理の簡素化を可能にする。
【0028】
本発明の一態様では、活性化された溶解性担体が提供される。溶解性担体は、溶解性のイオンチャネル的に架橋された材料を含む。幾つかの実施形態では、溶解性材料は、その内容全体が明細書に取り込まれる、国際公開第2014/209865号及び同第2019/104069号に記載されるものなど、ペクチニン酸若しくはペクチン酸誘導体又はアルギン酸誘導体を含む。
【0029】
従来の活性化方法は、カルボン酸基の活性化に依拠している。従来の活性化方法とは対照的に、本開示の実施形態におけるヒドロキシル活性化方法は、イオノトロピックゲル化に関与するカルボキシル(COOH)基に影響を与えない。したがって、本開示の実施形態は、イオン架橋の密度が変化しないことから、担体の機械的完全性を保存し、劣化のリスクを伴うことなくさらに加工することができる。本開示の実施形態では、溶解性担体は、炭酸塩の結合の安定性が高いことにより、固定化能力の損失のリスクを最小限に抑えつつ、さらなるリガンド結合のために活性化して数か月間保存することができる。
【0030】
アミン官能基を介したリガンドの溶解性のペクチニン酸誘導体、ペクチン酸誘導体、又はアルギン酸誘導体への従来の結合は、2つの主な方法によって行われる。1つ目の従来の方法は、例えばNHSエステルなどの活性化エステルへと変換されるカルボン酸基の活性化、及び担体と固定化されるリガンドとの間のアミド結合の形成に依拠する。このようなカルボジイミドベースの化学は、とりわけ、カルボン酸基、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ヒアルロン酸、及びポリアクリル酸を含むポリマーにとって最適な化学であり、アミン含有化合物をアルギン酸塩又はペクチン誘導体(いずれも多数のカルボキシル基を有するゲル化ポリマーである)に結合するために用いられる。2つ目の従来の方法は、過ヨウ素酸又は過ヨウ素酸塩を使用して、多糖類の骨格上のシス-ジオールの酸化を制御することによってアルデヒド基を生成することを包含する。このような方法は、アルギン酸又は他のカルボン酸を含有するバイオポリマーなど、カルボン酸基を有する多糖類の活性化に用いられる。
【0031】
しかしながら、従来の技法では、ポリマー担体の機械的特性が大幅に損失することになる。カルボジイミド媒介性の結合の場合、イオン架橋に関与するカルボン酸基が消費されて活性化エステルが形成されると、架橋密度が大幅に低下する。その結果、架橋密度の低下により担体の機械的特性が低下し、該担体は、撹拌、細胞培養培地の流れ、又はカラム形式内での親和性捕獲に必要な流れに耐えることができなくなる。アルデヒド活性化担体の場合、過ヨウ素酸塩又は過ヨウ素酸を使用して酸化を制御することによるアルデヒド基の導入は、ポリマーの分子量の大幅な低下及び幾らかの酸化的脱炭酸をもたらし、その結果、担体の機械的抵抗が大幅に低下する可能性がある。したがって、従来の技法では、架橋密度を低下させることなく、また許容可能な寸法安定性をもたらしつつ、溶解性担体を活性化することはできない。
【0032】
本開示は、細胞の親和性捕獲、細胞培養、又はそれらの組合せのための活性化された溶解性のイオン的に架橋された担体に関する。活性化された担体は、リガンドの固定化とその後の分子又は細胞の捕獲に使用することができる。該担体は、ペプチド及びタンパク質などのリガンドを固定化し、細胞選別又は細胞培養を実施するのに特に適している。活性化された担体はオンデマンドで溶解可能である。例えば、酵素及び/又はキレート剤を簡単に添加することにより、オンデマンドで担体を排除又は溶解させることができる。溶解性は、親和性によって捕獲された分子又は細胞の回収に有利である。完全な溶解により、捕獲された標的の精製も促進される。
【0033】
本開示の実施形態による方法は、イオン的に架橋された溶解性担体からのヒドロキシル基の活性化に依拠している。活性化は、溶媒中のN、N’-炭酸ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルによるものであり、アミン求核試薬に対して反応性が高く、また耐久性のあるカルバメート結合を形成することができる、炭酸スクシンイミジル基を形成する。幾つかの実施形態では、溶媒は無水溶媒でありうる。
【0034】
実施形態では、ヒドロキシル基は、無水溶媒中、N、N’-炭酸ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシルスクシンイミジルによって活性化されて、炭酸スクシンイミジル基を形成する。このようなヒドロキシル基の活性化は、リガンドの効率的な固定化を可能にすると同時に、溶解性担体の機械的完全性の損失を防止する。
【0035】
実施形態では、溶解性材料は、イオン的に架橋(イオンチャネル的に架橋)されたアルギン酸塩、又はペクテート及びペクチネートなどのペクチン誘導体から作られることが好ましい。このような物理的架橋は、カルボン酸基とカルシウムなどの多価カチオンとの相互作用に依拠する。このような物理的架橋は可逆的であり、材料の架橋はキレート剤と接触させることによって破壊することができる。幾つかの実施形態では、材料は、酵素を添加することによって完全に消化されうる。酵素の中でもとりわけ、ペクチナーゼ及びアルギン酸リアーゼは、それぞれ、ペクテート又はペクチネート及びアルギン酸塩材料の消化に使用することができる。
【0036】
カルボキシル基の代わりにヒドロキシル基上の結合を使用することにより、本開示の実施形態による溶解性担体は、高いイオン架橋密度を維持し、担体の機械的完全性又は幾何学形状の損失のリスクを排除する。
【0037】
一態様では、活性化された溶解性担体を形成するポリマー材料は、次を含む少なくとも1つの単位を含む:
【0038】
【化3】
【0039】
別の態様では、リガンド可溶性担体コンジュゲートは、次を含む少なくとも1つの単位を含む:
【0040】
【化4】
【0041】
リガンドは、少なくとも1つのアミノ基を有し、標的細胞と相互作用することができる、任意の合成分子又はは天然分子でありうる。好ましいリガンドは、とりわけ、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、特定の糖類、及び薬物である。
【0042】
活性化されたイオン的に架橋された担体の幾何学形状は、任意の適切な幾何学形状を有しうる。幾つかの実施形態では、活性化されたイオン的に架橋された担体は、ビーズ、繊維、織物、又は発泡体モノリスを含む。幾つかの実施形態では、担体は、マクロ多孔性発泡体又は多孔性ビーズを含む。幾つかの実施形態では、溶解性担体は、細胞培養のためのカートリッジ又は容器内に配置されるように構成されており、したがってカートリッジの容積を満たすように構成されうる。一例として、溶解性担体がマクロ多孔性発泡体片の形態をしている場合、この発泡体担体の活性化により、発泡体片が配置されるカートリッジの体積に適切に適合するために必要な発泡体の幾何学的形状が保存される。
【0043】
幾つかの実施形態では、溶解性担体はマクロ多孔性であり、これにより、材料全体にわたる液体の容易な流れを低い背圧で可能にし、分離プロセスを容易にする。マクロ多孔性材料は、とりわけ、泡立ち、ガス発泡、及び泡立てによる通気などの任意の適切な方法によって調製することができる。
【0044】
本開示の実施形態による方法は、発泡体の酸性の性質にもかかわらず、ペクチン誘導体などのCOOH基を有する多糖類で作られた高多孔性発泡体にリガンドを結合させるのに有用である。該方法は、容易な流れを提供する高多孔性発泡体を官能化するのに有利であるが、材料中に存在する固形物の量が少ない(通常は2質量%未満)ことと、そのヒドロゲルの性質、したがって大量の水を吸収する能力に起因する固有の低い弾性率により、寸法安定性の問題が生じる可能性がある。機械的特性が弱いことから、大型の分離カラムの調製は依然として困難である。したがって、本開示に記載されるもののような高いイオン架橋を維持する結合化学は、許容可能な機械的抵抗及び寸法安定性を維持するのに役立つ。
【0045】
任意の適切なポリマー又はバイオポリマーは、溶解性担体に使用することができ、かつ本開示の実施形態による溶解性担体を形成する方法に使用することができる。幾つかの実施形態では、バイオポリマーは、親水性で、細胞毒性がなく、培養培地中で安定な多糖類を含む。本明細書に記載される溶解性担体は、少なくとも1つのイオンチャネル的に架橋された多糖類を含みうる。概して、多糖類は、細胞培養用途に有益な属性を有している。多糖類は、親水性であり、細胞毒性がなく、培養培地中で安定である。例には、ポリガラクツロン酸(PGA)としても知られるペクチン酸又はそれらの塩、部分的にエステル化されたペクチン酸又はそれらの塩、若しくは部分的にアミド化されたペクチン酸又はそれらの塩が含まれる。ペクチン酸は、ある特定のペクチンエステルの加水分解によって形成することができる。ペクチンは細胞壁多糖類であり、自然界では植物において構造的な役割を有する。ペクチンの主な供給源には、柑橘類の皮(例えば、レモン及びライムの皮)並びにリンゴの皮が含まれる。ペクチンは、1,2-結合L-ラムノースによってランダムに中断された、1,4-結合アルファ-D-ガラクツロネート骨格に基づいている、主として直線状のポリマーである。平均分子量は約50,000~約200,000ダルトンの範囲である。
【0046】
アルギン酸塩は、溶解性担体又は細胞培養足場を形成するための多糖ポリマー材料の一例である。アルギン酸塩は、1-4結合したβ-Dマンヌロン酸(M)及びα-L-グルロン酸(G)の二成分共重合体である。モノマーは鎖に沿ってブロック状のパターンで配置され、二価カチオン(Ca2+、Ba2+、Sr2+)がアルギン酸塩のGブロックに優先的に結合し、隣接するアルギン酸塩鎖間に結合を形成する。したがって、架橋ゲルの安定性はGブロックの量に応じて決まる。
【0047】
幾つかの実施形態では、ポリガラクツロン酸(PGA)ポリマーは、溶解性担体又は細胞培養足場を形成するために用いられる。ポリガラクツロン酸又はペクチン酸の場合、各モノマー単位は潜在的にイオン架橋に関与している可能性があり、これにより、高度に架橋されたゲルがもたらされる。高い架橋能力により、とりわけ、細胞培養で通常遭遇する培地のような高イオン強度培地に曝露された場合、PGAは機械的特性と高い安定性の点で魅力的になる。さらには、PGA溶液の粘度は通常アルギン酸塩から作られるものよりも低いことから、PGAを使用すると、より高い固形分含有量を達成することができる。
【0048】
実施形態では、溶解性担体はポリガラクツロン酸化合物を含む。実施形態では、ポリガラクツロン酸化合物は、ペクチン酸、1から40モル%のエステル化度又はアミド化度を有する部分的にエステル化若しくはアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
ポリガラクツロン酸は、植物の構造的役割を担う細胞壁多糖類であるペクチンの制御された加水分解から生じる。それらは、1,2-結合L-ラムノースによってランダムに中断された1,4-結合アルファ-D-ガラクツロネート骨格をベースとした、主に線状のポリマーである。平均分子量は約50,000~約200,000ダルトンである。ペクチンの2つの主な供給源は、例えば、柑橘類の皮(主にレモン及びライム)又はリンゴの皮であり、それらの抽出によって得ることができる。
【0050】
ペクチンのポリガラクツロン酸鎖は部分的にエステル化することができ、メチル基及び遊離酸基は、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムイオンなどの一価のイオンで部分的に又は完全に中和されていてもよい。ペクチニン酸は、ポリガラクツロン酸をメタノールで部分的にエステル化したものであり、それらの塩はペクチネートと呼ばれる。市販の高メトキシル(HM)ペクチンのメチル化度(DM)は、典型的には、例えば、約60から約75モル%であり、低メトキシル(LM)ペクチンのメチル化度は、中間の値及び範囲を含めて、約1から約40モル%、約10から約40モル%、及び約20から約40モル%でありうる。
【0051】
実施形態では、溶解性担体は、LMペクチンから調製されることが好ましい。実施形態では、ポリガラクツロン酸は20モル%未満のメトキシル基を含む。実施形態では、ポリガラクツロン酸は、ペクチン酸のようなメチルエステル含有量がないか、又はごくわずかしかない。単純化するため、本開示では、メチルエステルを全く有していないか、又はごくわずかしか有していないペクチニン酸、及び低メトキシル(LM)ペクチンの両方をPGAと呼ぶ。同じ理由で、ペクチン酸又はペクチニン酸がアミド化される場合、アミド化度は、イオノトロピックゲル化による架橋を可能にするように十分低くなければならない。
【0052】
ペクチンのポリガラクツロン酸鎖は部分的にアミド化されていてもよい。ポリガラクツロン酸が部分的にアミド化されたペクチンは、例えばアンモニアで処理することによって生成されうる。アミド化されたペクチンは、カルボキシル基(~COOH)、メチルエステル基(~COOCH)、及びアミド化基(-CONH)を含む。アミド化度は変化してよく、例えば、約10%から約40%がアミド化されうる。
【0053】
本開示の実施形態によれば、本明細書に記載される溶解性担体は、ペクチン酸と部分的にエステル化されたペクチン酸との混合物を含みうる。相容性のあるポリマーとのブレンドも使用することができる。例えば、ペクチン酸及び/又は部分的にエステル化されたペクチン酸は、デキストラン、置換セルロース誘導体、アルギン酸、デンプン、グリコーゲン、アラビノキシラン、アガロースなどの他の多糖類と混合することができる。ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカンや、エラスチン、フィブリン、シルクフィブロイン、コラーゲン、及びそれらの誘導体などのさまざまなタンパク質も使用することができる。水溶性の合成ポリマーを、ペクチン酸及び/又は部分的にエステル化されたペクチン酸とブレンドすることもできる。例示的な水溶性合成ポリマーとしては、ポリアルキレングリコール、ポリ(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(メタ)アクリルアミド及び誘導体、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、及びポリビニルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
幾つかの実施形態では、ポリガラクツロン酸化合物は、ペクチン酸、1から40モル%のエステル化度又はアミド化度を有する部分的にエステル化若しくはアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、ポリガラクツロン酸化合物は20モル%未満のメトキシル基を含む。
【0055】
一態様では、活性化された溶解性担体を形成する方法は、イオンチャネル的に架橋された化合物を形成するステップを含み、該ステップは、ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むポリマー溶液を少なくとも1つの多価カチオンを含む溶液に加えることによって溶解性担体を形成するステップであって、該PGA化合物が、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、及びそれらの塩のうちの少なくとも1つから選択される、ステップ;及び、活性化溶液を加えることによって溶解性担体のPGA化合物におけるヒドロキシル基を活性化するステップを含む。
【0056】
幾つかの実施形態では、活性化された溶解性担体は、ビーズ、繊維、織物、又は発泡体を含む構造へと形成されうる。幾つかの実施形態では、活性化された溶解性担体は、細胞培養表面にコーティングとして施すことができる。
【0057】
本開示の実施形態による溶解性担体は、細胞培養培地への溶解を防止するために架橋されていてもよい。幾つかの実施形態では、方法は、PGAなどのペクチン酸誘導体のイオノトロピックゲル化による架橋を含む。架橋はイオノトロピックゲル化によって実施することが好ましい。イオノトロピックゲル化は、多価対イオンの存在下で高分子電解質が架橋して架橋ヒドロゲルを形成する能力に基づいている。架橋は、外部イオノトロピックゲル化によって実施することができる。カルシウム、ストロンチウム、又はバリウムの非限定的な例を含む、さまざまな二価カチオンを架橋に使用することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、活性化溶液は、活性化剤と溶媒とを含む。任意の適切な活性化剤を本開示の実施形態による方法に使用することができる。幾つかの実施形態では、活性化剤は、N、N’-炭酸ジスクシンイミジル(DSC)である。幾つかの実施形態では、活性化剤はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルである。任意の適切な溶媒は、本開示の実施形態による方法に使用することができる。幾つかの実施形態では、溶媒は非プロトン性溶媒を含む。非プロトン性溶媒にはO-H結合又はN-H結合がないため、副反応を回避することができる。幾つかの実施形態では、非プロトン性溶媒は無水溶媒を含む。非プロトン性溶媒の非限定的な例としては、とりわけ、無水アセトン、無水DMSO、無水NMP、及び無水DMAcが挙げられる。幾つかの実施形態では、溶媒は無水DMSOである。幾つかの実施形態では、非プロトン性溶媒は水混和性である。溶媒の水混和性により、カラム形式内で使用されうるマクロ多孔性担体上で活性化が行われる場合など、活性化時の担体の過剰な収縮が防止される
幾つかの実施形態では、該方法は、活性化の前に溶解性担体をすすいで、結合していないヒドロキシル含有化合物を除去するステップをさらに含む。炭酸スクシンイミジル試薬と反応してPGAの活性化を低下させる可能性があるすべての結合していないヒドロキシル含有化合物を除去するために、担体は、活性化前に注意深く洗浄されうる。ヒドロキシル含有化合物は、低分子量の糖類、グリセロールなどの可塑剤、及び界面活性剤の非限定的な例など、発泡添加剤としてPGA多孔性発泡体中に存在しうる。実施形態では、すすぐステップは水を用いて実施され、その後DMSOなどの乾燥溶媒ですすぐ。材料に残っている水の程度は、活性化のレベルに影響を与える可能性がある。無水溶媒で十分に洗浄すると活性化度が高くなる。
【0059】
幾つかの実施形態では、本開示の実施形態による方法はさらに、活性化後にすすぐステップを含む。幾つかの実施形態では、該方法は、活性化後に活性化された溶解性担体を少なくとも1つの多価カチオンを含有する溶液ですすぐステップをさらに含む。イオン架橋の低減を避けるために、活性化及びリガンドの結合の後のすすぐステップは、例えばカルシウムなどの少なくとも1つの多価イオンを含む溶液を使用して行われることが好ましい。非限定的な例として、CaCl2溶液は、少なくとも1つの多価イオンを含む溶液である。
【0060】
幾つかの実施形態では、該方法は、リガンドを活性化されたヒドロキシル基に結合させて、リガンド可溶性担体コンジュゲートを生成するステップをさらに含む。幾つかの実施形態では、リガンドは、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、糖類、及び薬物を含む。幾つかの実施形態では、リガンド可溶性担体コンジュゲートは、次を含む少なくとも1つの単位を含む:
【0061】
【化5】
【0062】
細胞培養、細胞捕獲、及び細胞回収
最近の研究では、二次元(2D)又は単層培養とは対照的に、インビボで細胞が経験する環境が3D細胞培養においてより正確に表されていることが示唆されており、3D培養における細胞応答は、2D培養における細胞応答よりもインビボ挙動に類似していることが実証されている。3D培養のさらなる次元性は、周囲の細胞との相互作用に関与する細胞表面受容体の空間的構成に影響を与え、細胞への物理的制約を引き起こし、それによって細胞の外側から内側へのシグナル伝達に影響を与え、最終的には遺伝子発現と細胞の挙動に影響を及ぼすことから、細胞応答の違いにつながると考えられる。
【0063】
細胞の天然の3D環境をシミュレートするために、細胞培養技術が開発されている。例えば、幾つかのバイオリアクタには、細胞の接着及び増殖を促進するための固定床又は充填床を形成する固定充填材の形態をした担体が含まれる。3D細胞培養技術の別の例は、細孔内及びマトリクスの他の内部空間内で培養細胞の成長及び増殖を促進する、多孔性の3Dマトリクス又は足場である。しかしながら、このような技術では、細胞を回収するためにプロテアーゼ処理が用いられることが多く、それによって細胞が過酷な条件に曝露され、細胞の構造及び機能に損傷を与える可能性がある。加えて、プロテアーゼ処理を使用すると、多くの場合、限られた量の細胞剥離しか起こらない。固定床材料では、該固定床材料の高密充填される性質により、プロテアーゼ剤を床全体に循環させ、回収される細胞の収量を増加させることがより困難になる。同様に、プロテアーゼ剤を3Dマトリクスの内部空間に循環させるのは困難な場合があり、その結果、回収プロセス中に細胞を取り除くことが困難になる。この困難性は、細胞を固定床材料の表面又はマトリクスの表面に付着させる働きをする、培養細胞によって分泌される細胞外高分子の存在によってさらに悪化する。したがって、従来の細胞培養技術では、細胞を回収するためにプロテアーゼ処理の代わりに、又はプロテアーゼ処理と組み合わせて、機械的な力が使用されてきた。細胞を回収するためのこのような方法及びシステムは、機械的な力を印加して、固定床材料又は3Dマトリクスから培養細胞を解放する。例えば、固定床材料、3Dマトリクス、又は固定床材料又は3Dマトリクスを含むより大きいシステムを振盪又は振動させて、培養細胞を解放することができる。しかしながら、機械的な力を使用すると、培養細胞に物理的損傷が生じる可能性があり、細胞培養の収率が低下する。
【0064】
本開示の実施形態によれば、本明細書に記載される溶解性担体上で細胞を培養する方法又は細胞を捕獲する方法も開示される。幾つかの実施形態では、方法は、溶解性担体における細胞凝集体又はスフェロイドの細胞捕獲又は細胞培養を含む。幾つかの実施形態では、方法は、バイオリアクタシステム内の溶解性担体での細胞培養を含む。不死化細胞、初代培養細胞、がん細胞、幹細胞(例えば、胚性又は人工多能性)などを含むがこれらに限定されない、任意のタイプの細胞を溶解性担体上で培養することができる。細胞は、哺乳類細胞、鳥類細胞、魚類細胞などでありうる。細胞は、腎臓、線維芽細胞、乳房、皮膚、脳、卵巣、肺、骨、神経、筋肉、心臓、結腸直腸、膵臓、免疫(例えば、B細胞)、血液などを含むがこれらに限定されない、任意の組織タイプでありうる。細胞は、分散(例えば、新たに播種)、コンフルエント、二次元、三次元、スフェロイドなどを含む、任意の培養形態のものであってもよい。溶解性担体上で細胞を培養することは、溶解性担体上に細胞を播種することを含みうる。溶解性担体上に細胞を播種するステップは、担体を、細胞を含む溶液と接触させることを含みうる。本開示の実施形態による活性化された担体はカスタマイズ可能であり、細胞接着を促進する異なる成分又は化合物(例えば、タンパク質、ペプチド)で官能化することができる。播種された細胞が官能化された担体に導入されると、細胞は官能化された担体の表面に接着する。
【0065】
溶解性担体上で細胞を培養することは、担体を細胞培養培地と接触させることをさらに含みうる。概して、担体を細胞培養培地と接触させることは、細胞が培養される培地を含む環境内の担体上に培養される細胞を置くことを含む。担体を細胞培養培地と接触させることは、細胞培養培地を担体上にピペッティングすること、又は担体を細胞培養培地に沈設すること、又は細胞培養培地を担体上に連続的に通過させることを含みうる。概して、本明細書で用いられる場合、「連続的」という用語は、細胞培養環境に出入りする細胞培養培地の一貫した流れで細胞を培養することを指す。連続的な方法での担体上の細胞培養培地のこのような通過は、所定の期間、細胞培養培地に担体を沈設し、その後、所定の期間後に細胞培養培地の少なくとも一部を除去し、溶解性担体と接触する細胞培養培地の体積が実質的に一定に維持されるように新鮮な細胞培養培地を加えることを含みうる。細胞培養培地は、所定のスケジュールに従って除去及び交換されうる。例えば、細胞培養培地の少なくとも一部は、1時間ごと、又は12時間ごと、又は24時間ごと、又は2日間ごと、又は3日間ごと、又は4日間ごと、又は5日間ごとに除去及び交換されうる。
【0066】
細胞の増殖を支援することができる任意の細胞培養培地を使用することができる。細胞培養培地は、例えば、限定はしないが、糖、塩、アミノ酸、血清(例えば、ウシ胎児血清)、抗生物質、成長因子、分化因子、着色剤、又は他の所望の因子でありうる。 例示的な細胞培養培地には、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)、ハムのF12栄養混合物、最小必須培地(MEM)、RPMI培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、MesenCult(商標)-XF培地(STEMCELL Technologies Inc.社から市販される)などが含まれる。
【0067】
本開示の実施形態によれば、本明細書に記載される溶解性担体から細胞を回収するための方法もまた開示される。
【0068】
本明細書に開示される溶解性担体は、溶解性及び不溶性として記載される。本明細書で用いられる場合、「不溶性」という用語は、例えば細胞培養培地を含む従来の細胞培養条件下で、溶解せず、架橋されたままである材料又は材料の組合せを指すために用いられる。また、本明細書で用いられる場合、「溶解性」という用語は、材料又は材料の組合せを消化又は分解する適切な濃度の酵素及び/又はキレート剤に曝露されたときに消化される材料又は材料の組合せを指すために用いられる。本明細書に記載される溶解性担体は、細胞間相互作用及び3D方式での細胞外マトリクス(ECM)の形成が促進される、細胞の培養のための保護された環境を提供するための任意の適切な形式でありうる担体である。溶解性担体は完全に消化されうるため、プロテアーゼ処理及び/又は機械的回収技法を使用する場合に細胞を損傷することなく細胞を回収することができる。本開示の実施形態に従って調製された担体は、非タンパク質分解酵素、キレート剤、又はその両方を使用する担体の溶解によって、担体に捕獲された細胞又は担体で培養された細胞の高効率な解放を可能にする。
【0069】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される溶解性担体は、材料を消化又は分解する適切な酵素に曝露されると消化される。本明細書に記載される細胞を回収する方法は、溶解性担体を酵素に曝露することによって溶解性担体を消化するステップを含みうる。担体の消化、細胞の回収、又はその両方に適した非タンパク質分解酵素には、ペクチン質を加水分解する関連酵素の異種グループである、ペクチン分解酵素又はペクチナーゼが含まれる。ペクチナーゼ(ポリガラクツロナーゼ)は、複雑なペクチン分子をより短い分子のガラクツロン酸へと分解する酵素である。ペクチナーゼの商業的に入手可能な供給源は、概して、アスペルギルス・アキュレアタス(Aspergillus aculeatus)の選択された株から産生されるペクチン分解酵素調製物である、Pectinex(商標)ULTRA SP-L(米国ノースカロライナ州フランクリントン所在のNovozyme North American,Inc.から市販される)などの多酵素である。Pectinex(商標)ULTRA SP-Lは、主に、ポリガラクツロナーゼ(EC3.2.1.15)、ペクチントランスエリミナーゼ(EC4.2.2.2)、及びペクチンエステラーゼ(EC:3.1.1.11)を含む。EC指定は、酵素が触媒する化学反応に基づく酵素についての酵素委員会の分類スキームである。
【0070】
溶解性担体を酵素に曝露することは、担体を約1から約200Uの間の酵素濃度に曝露することを含みうる。例えば、該方法は、担体を、約2Uから約150Uの間、又は約5Uから約100Uの間、又はさらには約10Uから約75Uの間、及びそれらの間のすべての値の酵素濃度に曝露することを含みうる。
【0071】
本明細書に記載される細胞を採取する方法は、材料をキレート剤に曝露することをさらに含みうる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される溶解性担体は、材料を消化又は分解する適切なキレート剤に曝露されると消化される。本開示の実施形態によれば、溶解性担体の消化は、担体を二価カチオンのキレート剤に曝露することを含む。例示的なキレート剤には、限定はしないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、エチレングリコール四酢酸(ETGA)、クエン酸、及び酒石酸が含まれる。
【0072】
溶解性担体をキレート剤に曝露することは、担体を約1mMから約200mMの間のキレート剤濃度に曝露することを含みうる。例えば、該方法は、担体を、約10mMから約150mMの間、又は約20mMから約100mMの間、又はさらには約25mMから約50mMの間、及びそれらの間のすべての値のキレート剤濃度に曝露することを含みうる。
【0073】
本明細書に記載される溶解性担体の消化を完了するまで時間は、約1時間未満でありうる。例えば、担体の消化を完了するまで時間は、約45分未満、又は約30分未満、又は約15分未満、又は約1分から約25分の間、又は約3分から約20分の間、又はさらには約5分から約15分の間でありうる。
【実施例
【0074】
本開示の実施形態は、例示のみであり、限定することは意図されていない、それらのある特定の例示的実施形態及び特定の実施形態に関して以下にさらに説明される。
【0075】
実施例1
実施例1は、以下のスキームI及びスキームIIに示されるように、従来のリガンド結合法と本開示の実施形態による結合法とを比較する。スキームIは、リガンドをアルギン酸又はポリガラクツロン酸などの材料に結合させる従来の方法又は伝統的な方法の一例である。スキームIIは、本開示の実施形態によるリガンドを結合する方法の一例である。
【0076】
スキームI:伝統的な方法によるポリガラクツロン酸のカルボン酸基を介した活性化及び結合
【0077】
【化6】
【0078】
スキームII:本開示による実施形態における溶解性担体(ポリガラクツロン酸)のヒドロキシル基を介した活性化及び結合
【0079】
【化7】
【0080】
スキームIに示される伝統的な方法が示すように、カルボン酸基が活性化され、その後リガンドがこのような活性化されたカルボン酸基(NHSエステル)に結合する。誘導体化されたカルボン酸がアミドリンカーへと変換されると、それらは、遊離のカルボン酸がイオン架橋することができるようなカルシウムイオンとのイオン架橋に寄与できなくなる。したがって、架橋密度が低下し、その結果、溶解性担体の機械的特性の劣化につながる。
【0081】
対照的に、スキームIIに示される本開示の実施形態による方法に示されるように、リガンドはヒドロキシル基に結合しているが、カルボン酸基は手付かずのままである。したがって、カルボン酸基は、例えばカルシウムなどの多価カチオンによるイオン架橋に利用可能なまま維持される。したがって、結合リガンドの量に関係なく、架橋密度は低下しないため、溶解性担体の機械的特性はほとんど変化しない。
【0082】
実施例2
実施例2は、マクロ多孔性PGAをベースとした溶解性発泡体の活性化を示している。マクロ多孔性担体を以下のように調製した。
【0083】
油浴(設定温度104℃)を使用して、Sigma Aldrich社から入手可能な適切な量のポリガラクツロン酸ナトリウム塩(PGA)を脱塩水に溶解することによって、2質量%のPGA溶液、約162gを調製した。得られた溶液を室温まで冷却した。この溶液に、0.97gのPluronic123を加え、混合下、低温で溶解した。次いで、得られた溶液をミキサーボウル(例えば、KitchenAidミキサーボウル)に入れた。次に、17.5gのスクロースと7.5gのグリセロールをボウルに加え、砂糖が完全に溶解するまで混合物を穏やかに混合した。10mlの水中、150kDaのデキストラン0.97g及び0.125gのTween(商標)20から調製した溶液をボウルに加え、穏やかに混合して均一な混合物を達成した。次に、0.53gのCaCO3(Sigma社製)、0.248gのドデシル硫酸ナトリウム、及び14.5mlの超純(UP)水からなる分散液をボウルに加えた。ワイヤループの泡立て器を速度2で5分間使用して懸濁液を泡立てて空気を取り込むことにより、発泡体を調製した。その後、3.77gのGDLと12.6gのDMSOを混合することによって調製した新たに作製したグルコノデルタラクトン(GDL)溶液をボウルに素早く加え、約60秒間泡立てを続けた。架橋を完了させるために、発泡体を23℃のベンチ上のボウル内で3時間、覆いをせずに静置した。次に、架橋発泡体をディスク(スライス)状に打ち抜き、スライスした。
【0084】
その後、発泡体片を-80℃で16時間凍結させた後、-86℃、0.11ミリバール(11Pa)で72時間凍結乾燥した。得られた発泡体は、約0.04~0.045g/cmの乾燥発泡体密度(DFD)を示す。
【0085】
次いで、発泡体スライスを以下のようにDSCと反応させることによって活性化した。簡単に説明すると、各34mgの10枚のスライスを50mlのプラスチック管に加え、UP水で2回、無水DMSOで3回すすいで、結合していない材料を除去した。添加剤である材料の約90%が発泡体から除去される。次に、上清を捨て、40mlの無水DMSO、394mgのN,N′-炭酸ジスクシンイミジル(DSC)、及び167mgの4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を混合することによって調製した溶液約40mlをスライスに加えた。管を振盪器上に置き、室温(RT)で5.5時間撹拌した。スライスを4質量%のCaCl,pH8.5で2回すすぎ、未反応の試薬を除去した。このステップにおいて発泡体を凍結乾燥し、乾燥剤を使用して、暗所、4℃で数か月間保管することができる。
【0086】
実施例3
実施例3は、実施例2に由来する溶解性担体上でのVNペプチドの結合を示す。
【0087】
発泡体スライス1枚あたり、pH9に調整した4%CaCl2中の5mg/mlのビトロネクチン-NH2ペプチド(American Peptide Company,Inc社製)溶液4mlを加えた。スライスをオーブン中、60℃で一晩インキュベートした。スライスをUP水で十分にすすぎ、ビシンコニン酸アッセイ(BCAアッセイ)を用いて、固定化されたVNペプチドの量を定量した。BCA分析により、乾燥発泡体1mgあたり約 0.5μgのペプチドが固定化されたことが示された。この発泡体は、劣化の兆候を示すことなく、大量のすすぎに耐えた。
【0088】
実施例4
実施例4は、130mgのDSC及び62mgのDMAPを使用し、活性化を18時間実施したことを除き、実施例2に記載されるように調製した活性化溶解性担体上へのプロテインAの固定化を示す。
【0089】
実施例2に従って調製した発泡体スライスあたり、4質量%のCaCl2,pH9中の0.25mg/mlのプロテインA溶液4mlを加えた。スライスをRTで48時間インキュベートし、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)溶液中、1質量%のTergitol(商標)NP40で1回、徹底的にすすぎ、次にDPBSで3回すすいだ。固定化されたプロテインAの量は、ビシンコニン酸アッセイ(BCAアッセイ)を使用して定量した。BCA分析により、乾燥発泡体1mgあたり約0.9μgのプロテインAが固定化されたことが示された。発泡体は大量の洗浄に耐えた。
【0090】
固定化されたプロテインAが官能性であることを示すために、OKT3マウスモノクローナル抗体をPA官能化発泡体に結合させた。典型的な実験では、約8mlのDPBSに160μgのOKT3抗体を含む溶液を調製した。各PA官能化発泡体スライスに、4mlのOKT3抗体溶液を加えた。スライスをRTで1時間静置し、次いでDPBS中、2mlの1%Tergitol NP40ですすぎ、続いて2mlのDPBSで3回すすいだ。Elisaアッセイでは、スライス1枚あたり約0.75μgのOKT3抗体が固定化されていることが示された。
【0091】
実施例5
実施例5は、実施例3に記載される実施形態に従って活性化されたビトロネクチンペプチド(VN)で官能化された発泡体の多孔質構造におけるHEK293T細胞の培養を示す。このようなVNペプチド官能化発泡体は実施例5内では「VN」と呼ぶ。
【0092】
陰性対照として、実施例2に記載される実施形態に従ってスライスを活性化したが、ビトロネクチンで官能化する代わりにエタノールアミンでブロックした。このようなブロックされた発泡体を実施例5内では「EA」と呼ぶ。
【0093】
実施例3に従って上記のように調製したVN及びEA官能化発泡体の両方のスライスを、以下のように洗浄した。スライスをポリスチレン6ウェルプレートのウェル内に配置した。4mlの70%エタノール水溶液を各ウェルに加えて10分間消毒した。次いで、エタノール水溶液を吸引により除去し、発泡体をUP水で3回すすいだ。
【0094】
過剰な水を除去した後、湿った発泡体スライスを、4mlの完全なイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)を含む、Costar(登録商標)6ウェル透明平底超低接着表面マルチウェルプレート、製品番号3471(Corning Incorporated社、米国ニューヨーク州コーニング所在)のウェルに移した。完全IMDM培地は、450mlのIMDM、50mlのFBS、5mlのペニシリン/ストレプトマイシン、及び5mlのGlutamax(商標)(Thermo Fisher Scientific社から市販される)を混合することによって調製した。
【0095】
ひとたび発泡体スライスが培地を吸収したら、過剰な培地を吸引によって除去した。次に、300KのHEK293 T細胞を含む150μlの培地を各スライスに加えた。プレートを37℃/5%CO2のインキュベーター内で3時間静置し、細胞を接着させた。次に、4mlの完全培地を加え、細胞を5日間増殖させた。
【0096】
播種1日後、カルセイン染色後の蛍光顕微鏡を用いた目視検査により、細胞の接着を評価した。細胞計数は、播種の5日後に、0.5mlのトリプシン、2mlのペクチナーゼ50U、及び5mMのEDTAからなる溶液を各スライスに加えることにより、発泡体足場を消化することによって行った。溶解に約5分かかった。
【0097】
図1は、実施例5(VN)によるVN官能化足場に播種したHEK293 T細胞の拡散及び接着を示している。図2は、播種の5日後に足場の表面全体を覆っている細胞を示している。計数は、細胞が6.5倍に増殖したことを示した。
【0098】
図3は、陰性対照の蛍光画像を示している。図1及び図2に示される接着とは対照的に、細胞は、エタノールアミン(EA)でブロックした陰性対照の発泡体には接着できない。代わりに、細胞は、EAでブロックした対照発泡体には接着できずに、図3のクラスタ状に凝集した。
【0099】
実施例6
実施例6は、OKT3抗体で官能化した発泡体足場による、CD3抗原を発現するJurkat細胞の捕獲を示す。
【0100】
実施例4に従って調製したOKT3結合発泡体スライスを、450mlのロズウェルパーク記念研究所培地(ATCC改変RPMI)、50mlのFBS、5mlのペニシリン/ストレプトマイシン、及び5mlのGlutamax(商標)(Thermo Fisher Scientific社から市販される)を混合することによって調製した4mlの培地とともに、Costar(登録商標)6ウェル透明平底超低接着表面マルチウェルプレート、製品番号3471(米国ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated社)のウェルに移した。過剰な培地は、吸引により可能な限り除去した。次に、150μlのJurkat制帽懸濁液、10,000K(1000万)/mlを、各足場片に加えた。細胞捕獲できるように、足場を37℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞をカルセインで染色した後に、発泡体をD-PBS緩衝液で3回洗浄した。染色細胞を画像化した。図4の染色細胞によって示されるように、多数の細胞がOKT3結合足場によって捕獲された。
【0101】
OKT3を含まない、プロテインA官能化足場を陰性対照として使用した(実施例6内では「PA」と呼ぶ)。細胞をカルセインで染色し、画像化した。図5の画像は、図4とは対照的に、陰性対照(OKT3を除いたPA官能化担体)では少量の細胞のみが非特異的に捕捉されたことを示している。
【0102】
比較例1
比較例1は、カルボン酸基の活性化が架橋及び溶解性担体の安定性に悪影響を及ぼす可能性があることを示している。
【0103】
次のように、実施例2に記載される方法を使用して発泡体スライスを調製した。油浴(設定温度104℃)を使用して、Sigma Aldrich社から入手可能な適切な量のポリガラクツロン酸ナトリウム塩(PGA)を脱塩水に溶解することによって、2質量%のPGA溶液、約162gを調製した。得られた溶液を室温まで冷却した。この溶液に、0.97gのPluronic123を加え、混合下、低温で溶解した。次いで、得られた溶液をミキサーボウル(例えば、KitchenAidミキサーボウル)に入れた。次に、17.5gのスクロースと7.5gのグリセロールをボウルに加え、砂糖が完全に溶解するまで混合物を穏やかに混合した。10mlの水中、150kDaのデキストラン0.97g及び0.125gのTween(商標)20から調製した溶液をボウルに加え、穏やかに混合して均一な混合物を達成した。次に、0.53gのCaCO3(Sigma社製)、0.248gのドデシル硫酸ナトリウム、及び14.5mlの超純(UP)水からなる分散液をボウルに加えた。ワイヤループの泡立て器を速度2で5分間使用して懸濁液を泡立てて空気を取り込むことにより、発泡体を調製した。その後、3.77gのGDLと12.6gのDMSOを混合することによって調製した新たに作製したグルコノデルタラクトン(GDL)溶液をボウルに素早く加え、約60秒間泡立てを続けた。架橋を完了させるために、発泡体を23℃のベンチ上のボウル内で3時間、覆いをせずに静置した。次に、架橋発泡体をディスク(スライス)状に打ち抜き、スライスした。その後、発泡体片を-80℃で16時間凍結させた後、-86℃、0.11ミリバール(11Pa)で72時間凍結乾燥した。得られた発泡体は、約0.04~0.045g/cmの乾燥発泡体密度(DFD)を示す。
【0104】
実施例2では、調製した発泡体スライスを次にDSCで活性化した。対照的に、比較例1で調製した発泡体スライスは、代わりに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)/N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)との反応によって活性化した。
【0105】
EDC/NHSの活性化は次のように実施した。発泡体スライスを4mlのUP水で4回すすいで、結合していない材料を除去した。次に、4mlの200mM EDC及び50mM NHSを加えることによって、足場を活性化した。活性化をRTで30分間実施し、次いで足場をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1回すすいだ。過剰のDPBSを吸引により注意深く除去した。
【0106】
次に、実施例4に記載される条件を使用してプロテインAを固定化した。
【0107】
活性化反応及び活性化剤を変更することにより、比較例1で調製した発泡体スライスは、実施例2に記載の活性化されたヒドロキシル基を有する代わりに、活性化されたカルボキシル基を有する。実施例2とは対照的に、比較例1で得られた発泡体スライスは、すすぎプロセス中に崩壊した。これは、アミド結合を生成するためのカルボキシル基の消費が、イオン架橋部位の密度の低下により発泡体の安定性に悪影響を及ぼすことを証明している。
【0108】
さまざまな開示される実施形態は、その特定の実施形態に関連して記載される特定の特徴、要素、又は工程を含みうることが認識されよう。また、特定の特徴、要素、、又は工程は、特定の一実施形態に関連して説明されているが、図示されていないさまざまな組合せ又は順列の代替的な実施形態と交換又は組み合わせることができることも認識されよう。
【0109】
本明細書で用いられる場合、用語「the」、「a」、又は「an」は、「少なくとも1つ」を意味し、明示的に反対の指示がない限り、「1つのみ」に限定されるべきではないことが理解されるべきである。よって、例えば、「ある1つの(a)開口部」への言及は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、そのような「開口部」を2つ以上有する実施例を含む。
【0110】
本明細書で使用される科学的用語及び技術的用語はすべて、特に指定されない限り、当技術分野で一般的に用いられる意味を有する。本明細書で提供される定義は、本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0111】
本明細書で用いられる場合、「有する」、「有している」、「含む」、「含んでいる」、「備える」、「備えている」などは、オープン-エンドの意味で用いられており、一般に「含むがそれらに限定されない」ことを意味する。
【0112】
本明細書では、範囲は、約1つの特定の値から、及び/又は約別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、例は、その1つの特定の値から及び/又は他方の特定の値までを含む。同様に、例えば先行詞「約」の使用によって、値が近似値として表される場合、その特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。さらには、範囲の各々の端点は、他の端点に関連して、及び他の端点とは独立してのいずれにおいても重要であることが理解されよう。
【0113】
本明細書で表現されるすべての数値は、特に明記されていない限り、そのように記載されているかどうかにかかわらず、「約」を含むものとして解釈されるべきである。しかしながら、列挙された各数値は、その値が「約」として表現されているかどうかにかかわらず、同様に正確に企図されていることもさらに理解される。したがって、「10mm未満の寸法」及び「約10mm未満の寸法」の両方とも、「約10mm未満の寸法」並びに「10mm未満の寸法」の実施形態を包含する。
【0114】
特に明記しない限り、本明細書に記載の任意の方法は、その工程が特定の順序で実行されることを必要とすると解釈されることは、決して意図していない。したがって、方法クレームがその工程が従うべき順序を実際に列挙していないか、又は工程が特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲又は明細書に具体的に述べられていない場合には、いかなる特定の順序も、推測されることは、決して意図していない。
【0115】
特定の実施形態のさまざまな特徴、要素、又は工程は、「含む」という移行句を使用して開示されうるが、「~からなる」又は「~から実質的になる」という移行句を使用して説明されうるものを含む代替的な実施形態態が暗示されることが理解されるべきである。したがって、例えば、A+B+Cを含む方法の暗黙の代替的な実施形態には、方法がA+B+Cからなる実施形態、及び方法が実質的にA+B+Cからなる実施形態が含まれる。
【0116】
例示的な実装形態
以下は、開示された主題の実装形態のさまざまな態様の説明である。各態様は、開示された主題のさまざまな特徴、特性、又は利点のうちの1つ以上を含みうる。実装形態は、開示された主題の幾つかの態様を説明することを意図しており、すべての可能な実装形態の包括的又は網羅的な説明と見なされるべきではない。
【0117】
態様1は、イオン架橋カルボン酸基と活性化されたヒドロキシル基とを含む少なくとも1つの反復単位を有するポリマー材料を含むイオンチャネル的に架橋された化合物を含む活性化された溶解性担体を対象とし、ここで、ヒドロキシル基は、溶媒中、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルによって活性化されて、リガンド結合のための炭酸スクシンイミジル基を形成する。
【0118】
態様2は、カルボン酸基が多価カチオンとイオン的に架橋される、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0119】
態様3は、少なくとも1つの反復単位が次を含む、態様1に記載の溶解性担体を対象とする:
【0120】
【化8】
【0121】
態様4は、溶媒が非プロトン性溶媒である、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0122】
態様5は、非プロトン性溶媒が無水溶媒である、態様4に記載の溶解性担体を対象とする。
【0123】
態様6は、ポリマー材料がポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含む、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0124】
態様7は、PGA化合物が、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0125】
態様8は、部分的にエステル化されたペクチン酸が1モル%から40モル%のエステル化度を含む、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0126】
態様9は、部分的にアミド化されたペクチン酸が1モル%から40モル%のアミド化度を含む、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0127】
態様10は、溶解性担体が、ビーズ、繊維、織物、発泡体、又はコーティングを含む構造を含む、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0128】
態様11は、溶解性担体が多孔性ビーズを含む、態様10に記載の溶解性担体を対象とする。
【0129】
態様12は、溶解性担体がマクロ多孔性発泡体を含む、態様10に記載の溶解性担体を対象とする。
【0130】
態様13は、溶解性担体が、細胞培養容器の細胞培養表面のためのコーティングを含む、態様10に記載の溶解性担体を対象とする。
【0131】
態様14は、溶解性担体が、酵素、キレート剤、又はそれらの組合せによる消化によって溶解される、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0132】
態様15は、酵素が非タンパク質分解酵素を含む、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0133】
態様16は、非タンパク質分解酵素がペクチン分解酵素及びペクチナーゼからなる群より選択される、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0134】
態様17は、溶解性担体の消化が約1時間未満で完了する、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0135】
態様18は、溶解性担体の消化が約15分未満で完了する、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0136】
態様19は、リガンドが、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、糖類、又は薬物を含む、態様1に記載の溶解性担体を対象とする。
【0137】
態様20は、イオンチャネル的に架橋された化合物を形成するステップを含む、活性化された溶解性担体を形成する方法を対象とする。イオンチャネル的に架橋された化合物を形成するステップは、ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むポリマー溶液を、少なくとも1つの多価カチオンを含む溶液に加えることによって、溶解性担体を形成するステップであって、該PGA化合物が、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、及びそれらの塩のうちの少なくとも1つから選択される、ステップ;及び、活性化溶液を加えることによって、ヒドロキシル基を活性化して溶解性担体のPGA化合物に炭酸スクシンイミジル基を形成するステップを含む。
【0138】
態様21は、方法が、活性化の前に溶解性担体をすすいで、結合していないヒドロキシル含有化合物を除去するステップをさらに含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0139】
態様22は、方法が、リガンドを活性化されたヒドロキシル基に結合させて、リガンド可溶性担体コンジュゲートを生成するステップをさらに含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0140】
態様23は、リガンド可溶性担体コンジュゲートが、次を含む少なくとも1つの単位を含む、態様20に記載の方法を対象とする:
【0141】
【化9】
【0142】
態様24は、リガンドが、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、糖類、及び薬物を含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0143】
態様25は、該方法が、活性化後に、活性化された溶解性担体を少なくとも1つの多価カチオンを含む溶液ですすぐステップをさらに含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0144】
態様26は、イオンチャネル的に架橋された化合物が、ビーズ、繊維、織物、又は発泡体を含む構造へと形成されうる、態様20に記載の方法を対象とする。
【0145】
態様27は、イオンチャネル的に架橋された化合物が、細胞培養表面にコーティングとして施されうる、態様20に記載の方法を対象とする。
【0146】
態様28は、活性化溶液が活性化剤と溶媒とを含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0147】
態様29は、活性化剤が、N、N’-炭酸ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルを含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0148】
態様30は、溶媒が非プロトン性溶媒を含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0149】
態様31は、ポリガラクツロン酸化合物が、ペクチン酸、1から40モル%のエステル化度又はアミド化度を有する部分的にエステル化若しくはアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0150】
態様32は、ポリガラクツロン酸化合物が20モル%未満のメトキシル基を含む、態様20に記載の方法を対象とする。
【0151】
態様33は、溶解性担体上に細胞を播種するステップ;及び、溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップを含む、溶解性担体上で細胞を培養する方法を対象とする。
【0152】
態様34は、溶解性担体上に細胞を播種するステップが、細胞を溶解性担体の表面に接着させることを含む、態様33に記載の方法を対象とする。
【0153】
態様35は、細胞が溶解性担体の細孔内で凝集してスフェロイドを形成する、態様33に記載の方法を対象とする。
【0154】
態様36は、溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップが、溶解性担体を細胞培養培地に沈設することを含む、態様33に記載の方法を対象とする。
【0155】
態様37は、溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップが、細胞培養培地を溶解性担体上に連続的に通過させることを含む、態様33に記載の方法を対象とする。
【0156】
態様38は、細胞培養培地を溶解性担体上に連続的に通過させることが、細胞培養培地の少なくとも一部を溶解性担体との接触から取り除くこと、及び溶解性担体と接触する細胞培養培地の体積が実質的に一定に維持されるように、溶解性担体を新鮮な細胞培養培地と接触させることを含む、態様37に記載の方法を対象とする。
【0157】
態様39は、溶解性担体から細胞を回収する方法であって、溶解性担体を酵素、キレート剤、又はそれらの組合せに曝露することによって溶解性担体を消化するステップ;及び、溶解性担体が消化されるときに曝露された細胞を回収するステップを含む、方法を対象とする。
【0158】
態様40は、溶解性担体が、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、及びそれらの塩のうちの少なくとも1つから選択される、イオンチャネル的に架橋されたポリガラクツロン酸化合物を含み、酵素が非タンパク質分解酵素を含む、態様39に記載の方法を対象とする。
【0159】
態様41は、非タンパク質分解酵素がペクチン分解酵素及びペクチナーゼからなる群より選択される、態様40に記載の方法を対象とする。
【0160】
態様42は、溶解性担体を消化することが、溶解性担体を約1Uから約200Uの間の酵素に曝露することを含む、態様39に記載の方法を対象とする。
【0161】
態様43は、溶解性担体を消化することが、溶解性担体を約1mMから約200mMの間のキレート剤に曝露することを含む、態様39に記載の方法を対象とする。
【0162】
本開示の複数の実施形態が詳細な説明に記載されているが、本開示は、開示された実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって記載され定義される開示から逸脱することなく、多くの再構成、修正、及び置換が可能であるものと理解されたい。
【0163】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0164】
実施形態1
活性化された溶解性担体であって、
少なくとも1つの反復単位を有するポリマー材料を含むイオンチャネル的に架橋された化合物
を含み、該化合物が、
イオン架橋カルボン酸基、及び
活性化されたヒドロキシル基であって、溶媒中、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルによって活性化されて、リガンド結合のための炭酸スクシンイミジル基を形成する、ヒドロキシル基
を含む、活性化された溶解性担体。
【0165】
実施形態2
前記カルボン酸基が多価カチオンとイオン的に架橋される、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0166】
実施形態3
前記少なくとも1つの反復単位が次を含む、実施形態1に記載の溶解性担体:
【0167】
【化10】
【0168】
実施形態4
前記溶媒が非プロトン性溶媒である、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0169】
実施形態5
前記非プロトン性溶媒が無水溶媒である、実施形態4に記載の溶解性担体。
【0170】
実施形態6
前記ポリマー材料がポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含む、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0171】
実施形態7
前記PGA化合物が、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0172】
実施形態8
前記部分的にエステル化されたペクチン酸が、1モル%から40モル%のエステル化度を含む、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0173】
実施形態9
前記部分的にアミド化されたペクチン酸が、1モル%から40モル%のアミド化度を含む、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0174】
実施形態10
前記溶解性担体が、ビーズ、繊維、織物、発泡体、又はコーティングを含む構造を含む、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0175】
実施形態11
前記溶解性担体が多孔性ビーズを含む、実施形態10に記載の溶解性担体。
【0176】
実施形態12
前記溶解性担体がマクロ多孔性発泡体を含む、実施形態10に記載の溶解性担体。
【0177】
実施形態13
前記溶解性担体が、細胞培養容器の細胞培養表面のためのコーティングを含む、実施形態10に記載の溶解性担体。
【0178】
実施形態14
前記溶解性担体が、酵素、キレート剤、又はそれらの組合せによる消化によって溶解される、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0179】
実施形態15
前記酵素が非タンパク質分解酵素を含む、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0180】
実施形態16
前記非タンパク質分解酵素が、ペクチン分解酵素及びペクチナーゼからなる群より選択される、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0181】
実施形態17
前記溶解性担体の消化が約1時間未満で完了する、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0182】
実施形態18
前記溶解性担体の消化が約15分未満で完了する、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0183】
実施形態19
前記リガンドが、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、糖類、又は薬物を含む、実施形態1に記載の溶解性担体。
【0184】
実施形態20
活性化された溶解性担体を形成する方法であって、
イオンチャネル的に架橋された化合物を形成するステップ
を含み、該ステップが、
ポリガラクツロン酸(PGA)化合物を含むポリマー溶液を少なくとも1つの多価カチオンを含む溶液に加えることによって溶解性担体を形成することであって、前記PGA化合物がペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、及びそれらの塩のうちの少なくとも1つから選択される、形成すること、並びに
活性化溶液を加えることによって、ヒドロキシル基を活性化して、前記溶解性担体の前記PGA化合物に炭酸スクシンイミジル基を形成すること
を含む、方法。
【0185】
実施形態21
前記方法が、活性化の前に前記溶解性担体をすすいで、結合していないヒドロキシル含有化合物を除去するステップをさらに含む、実施形態20に記載の方法。
【0186】
実施形態22
前記方法が、リガンドを前記活性化ヒドロキシル基に結合させて、リガンド可溶性担体コンジュゲートを生成するステップをさらに含む、実施形態20に記載の方法。
【0187】
実施形態23
前記リガンド可溶性担体コンジュゲートが、次を含む少なくとも1つの単位を含む、実施形態20に記載の方法:
【0188】
【化11】
【0189】
実施形態24
前記リガンドが、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、糖類、及び薬物を含む、実施形態20に記載の方法。
【0190】
実施形態25
前記方法が、活性化後に活性化された溶解性担体を少なくとも1つの多価カチオンを含む溶液ですすぐステップをさらに含む、実施形態20に記載の方法。
【0191】
実施形態26
前記イオンチャネル的に架橋された化合物が、ビーズ、繊維、織物、又は発泡体を含む構造へと形成されうる、実施形態20に記載の方法。
【0192】
実施形態27
前記イオンチャネル的に架橋された化合物が、細胞培養表面にコーティングとして施されうる、実施形態20に記載の方法。
【0193】
実施形態28
前記活性化溶液が活性化剤と溶媒とを含む、実施形態20に記載の方法。
【0194】
実施形態29
前記活性化剤が、N、N’-炭酸ジスクシンイミジル(DSC)又はクロロギ酸N-ヒドロキシスクシンイミジルを含む、実施形態20に記載の方法。
【0195】
実施形態30
前記溶媒が非プロトン性溶媒を含む、実施形態20に記載の方法。
【0196】
実施形態31
前記ポリガラクツロン酸化合物が、ペクチン酸、1から40モル%のエステル化度又はアミド化度を有する部分的にエステル化若しくはアミド化されたペクチン酸、又はそれらの塩のうちの少なくとも1つを含む、実施形態20に記載の方法。
【0197】
実施形態32
前記ポリガラクツロン酸化合物が20モル%未満のメトキシル基を含む、実施形態20に記載の方法。
【0198】
実施形態33
溶解性担体上で細胞を培養する方法であって、
溶解性担体上に細胞を播種するステップ、及び
前記溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップ
を含む、方法。
【0199】
実施形態34
溶解性担体上に細胞を播種するステップが、細胞を前記溶解性担体の表面に接着させることを含む、実施形態33に記載の方法。
【0200】
実施形態35
細胞が前記溶解性担体の細孔内で凝集してスフェロイドを形成する、実施形態33に記載の方法。
【0201】
実施形態36
前記溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップが、前記溶解性担体を細胞培養培地に沈設することを含む、実施形態33に記載の方法。
【0202】
実施形態37
前記溶解性担体を細胞培養培地と接触させるステップが、細胞培養培地を前記溶解性担体上に連続的に通過させることを含む、実施形態33に記載の方法。
【0203】
実施形態38
細胞培養培地を前記溶解性担体上に連続的に通過させることが、前記細胞培養培地の少なくとも一部を前記溶解性担体との接触から解除すること、及び前記溶解性担体と接触する細胞培養培地の体積が実質的に一定に維持されるように前記溶解性担体を新鮮な細胞培養培地と接触させることを含む、実施形態37に記載の方法。
【0204】
実施形態39
溶解性担体から細胞を回収する方法であって、
前記溶解性担体を酵素、キレート剤、又はそれらの組合せに曝露することによって前記溶解性担体を消化するステップ、及び
前記溶解性担体が消化されるときに曝露された細胞を回収するステップ
を含む、方法。
【0205】
実施形態40
前記溶解性担体が、ペクチン酸、部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸、及びそれらの塩のうちの少なくとも1つから選択される、イオンチャネル的に架橋されたポリガラクツロン酸化合物を含み、前記酵素が非タンパク質分解酵素を含む、実施形態39に記載の方法。
【0206】
実施形態41
前記非タンパク質分解酵素が、ペクチン分解酵素及びペクチナーゼからなる群より選択される、実施形態40に記載の方法。
【0207】
実施形態42
前記溶解性担体を消化するステップが、前記溶解性担体を約1Uから約200Uの間の前記酵素に曝露することを含む、実施形態39に記載の方法。
【0208】
実施形態43
前記溶解性担体を消化するステップが、前記溶解性担体を約1mMから約200mMの間の前記キレート剤に曝露することを含む、実施形態39に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】