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特表2023-543846不可逆的電気穿孔のための前処理波形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】不可逆的電気穿孔のための前処理波形
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20231011BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20231011BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B5/11 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519700
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 US2021052478
(87)【国際公開番号】W WO2022072385
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/085,452
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シュロス、アラン
【テーマコード(参考)】
4C038
4C160
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB32
4C038VB40
4C038VC20
4C160KK16
4C160KK23
4C160KK32
4C160KK36
4C160KK37
4C160KK63
4C160MM38
(57)【要約】
患者の標的組織を治療するための電気穿孔アブレーションシステムである。電気穿孔アブレーションシステムは、アブレーションカテーテルおよび電気穿孔発生器を含む。アブレーションカテーテルは、ハンドルと、遠位端を有するシャフトと、シャフトの遠位端に位置し、電気パルスに応答して標的組織内に電場を発生させるように空間的に配置されたカテーテル電極とを含む。電気穿孔発生器は、カテーテル電極に動作可能に結合され、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスで電気パルスを1つ以上のカテーテル電極に送達するように構成される。プレコンディショニングパルスシーケンスは、標的組織の近くでの電気分解、および患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすように構成された複数のプレコンディショニング電気パルスを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の標的組織を治療するための電気穿孔アブレーションシステムにおいて、
アブレーションカテーテルであって、
ハンドルと、
遠位端を有するシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端に位置し、電気パルスに応答して前記標的組織内に電場を発生させるように空間的に配置されたカテーテル電極と、
を含むアブレーションカテーテルと、
前記カテーテル電極に動作可能に結合され、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスで前記電気パルスを1つ以上のカテーテル電極に送達するように構成される、電気穿孔発生器と、を備え、
前記プレコンディショニングパルスシーケンスは、前記標的組織の近くでの電気分解、および前記患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすように構成された複数のプレコンディショニング電気パルスを含む、電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項2】
前記患者に取り付けられ、前記電気パルスに応答して前記患者内に電場を発生させるように構成された表面パッチ電極を備える、請求項1に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項3】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスが、前記表面パッチ電極からソースされ、前記1つ以上のカテーテル電極によってシンクされる複数の単極電気パルスを含む、請求項2に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項4】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスが、前記1つ以上のカテーテル電極からソースされ、前記表面パッチ電極によってシンクされる複数の単極電気パルスを含む、請求項2に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項5】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスが、前記1つ以上のカテーテル電極のうちの少なくとも1つからソースされ、前記1つ以上のカテーテル電極のうちの少なくとも別の1つによってシンクされる複数の双極電気パルスを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項6】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスが、選択された周波数で送達される複数のプレコンディショニングパルスを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項7】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスが、経時的により低い電圧からより高い電圧に電圧が上昇される複数のプレコンディショニングパルスを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項8】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスは、前記標的組織の近くで電気分解を引き起こす指数関数的に減衰する後側の波形を含む複数のプレコンディショニングパルスを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項9】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスは、単相である複数のプレコンディショニングパルスを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項10】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスおよび前記電気穿孔パルスシーケンスを含む前記不可逆的電気穿孔パルスシーケンスが、前記患者の心臓の不応時間、330ミリ秒未満、および100~250ミリ秒の時間枠のうちの1つ以上で前記患者に送達される、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項11】
前記電気穿孔パルスシーケンスは、前記プレコンディショニングパルスシーケンスのうちに送達される、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項12】
前記電気穿孔パルスシーケンスが、前記カテーテル電極の1つ以上のカテーテル電極対に送達される複数の双極電気パルスを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項13】
前記患者の骨格筋刺激を監視するように構成された加速度計を備え、前記電気穿孔アブレーションシステムは、前記電気穿孔発生器が前記プレコンディショニングパルスシーケンスを送達し、前記患者におけるテタニーを検出し、その後に前記電気穿孔パルスシーケンスを送達するように構成されるような閉ループシステムであり、局所インピーダンスが測定されてアブレーション前およびアブレーション後の値を計算し、病変有効性を評価する、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項14】
患者の標的組織を治療するための電気穿孔アブレーションシステムにおいて、
アブレーションカテーテルであって、
ハンドルと、
遠位端を有するシャフトと、
前記シャフトの前記遠位端に位置し、電気パルスに応答して前記標的組織内に電場を発生させるように空間的に配置されたカテーテル電極と、
を含むアブレーションカテーテルと、
表面パッチ電極および1つ以上のカテーテル電極のうちの1つ以上を含む複数の電極に動作可能に結合され、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスで前記電気パルスを前記複数の電極に送達するように構成された電気穿孔発生器であって、前記プレコンディショニングパルスシーケンスの間に前記電気穿孔パルスシーケンスを送達する、電気穿孔発生器と、を備える、電気穿孔アブレーションシステム。
【請求項15】
前記プレコンディショニングパルスシーケンスは、前記標的組織の近くでの電気分解、および前記患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすように構成された複数の電気パルスを含む、請求項14に記載の電気穿孔アブレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者の組織をアブレーションするための医療装置、システム、および方法に関する。より具体的には、本開示は、電気穿孔による組織のアブレーションのための医療装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーション手術は、患者における多くの異なる状態を治療するために使用される。アブレーションは、心不整脈、良性腫瘍、癌性腫瘍を治療するため、および手術中の出血を制御するために使用され得る。通常、アブレーションは、高周波(RF)アブレーションおよびクライオアブレーションを含む熱アブレーション技術によって達成される。RFアブレーションでは、プローブが患者に挿入され、高周波がプローブを介して周囲の組織に伝送される。高周波は熱を発生し、熱は周囲の組織を破壊するとともに血管を焼灼する。クライオアブレーションでは、中空針またはクライオプローブが患者に挿入され、低温の熱伝導性流体がプローブを通して循環されることで周囲の組織を凍結して死滅させる。RFアブレーションおよびクライオアブレーションの技術は、細胞壊死によって組織を無差別に死滅させるが、これは、食道内の組織、横隔神経細胞、および冠動脈内の組織などの、他の点では健康な組織を損傷または死滅させ得る。
【0003】
別のアブレーション技術は、電気穿孔を使用する。電気穿孔または電気透過化では、電場を細胞に印加することで細胞膜の透過性を増加させる。電気穿孔は、電場の強度によって、可逆的または不可逆的であり得る。電気穿孔が可逆的である場合、細胞膜の増加した透過性は、細胞の治癒および回復の前に、化学物質、薬物、および/またはデオキシリボ核酸(DNA)を細胞に導入するために使用され得る。電気穿孔が不可逆的である場合、影響を受けた細胞はアポトーシスによって死滅する。
【0004】
不可逆的電気穿孔(IRE)は、非熱的アブレーション技術として使用され得る。IREでは、短い高電圧パルス列を使用して、アポトーシスによって細胞を死滅させるために十分強い電場を発生させる。心臓組織のアブレーションにおいて、IREは、RFアブレーションおよびクライオアブレーションなどの熱アブレーション技術の無差別な死滅に対する安全かつ有効な代替手段であり得る。IREは、標的組織を死滅させるが、標的でない心筋組織、赤血球、血管平滑筋組織、内皮組織、および神経細胞などの他の細胞または組織を永久的に損傷しない電場強度および持続時間を使用することによって、心筋組織などの標的組織を死滅させるために使用され得る。
【0005】
いくつかのIRE手術では、電気穿孔電気パルスは、骨格筋刺激(SMS)および係合という望ましくない副作用を引き起こす。SMSを低減する1つの方法は、IRE電気パルスを精緻化して、SMSを回避するようにパルスを最適化することである。多くの場合、これは、より小さいアブレーション電場を有し、より小さい病変(lesion)を作成する結果となる。SMSを回避しながら有効なIREエネルギーを送達する方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
実施例1では、患者の標的組織を治療するための電気穿孔アブレーションシステムである。電気穿孔アブレーションシステムは、アブレーションカテーテルおよび電気穿孔発生器を含む。アブレーションカテーテルは、ハンドルと、遠位端を有するシャフトと、シャフトの遠位端に位置し、電気パルスに応答して標的組織内に電場を発生させるように空間的に配置されたカテーテル電極とを含む。電気穿孔発生器は、カテーテル電極に動作可能に結合され、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスで電気パルスを1つ以上のカテーテル電極に送達するように構成される。プレコンディショニングパルスシーケンスは、標的組織の近くでの電気分解、および患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすように構成された複数のプレコンディショニング電気パルスを含む。
【0007】
実施例2では、患者に取り付けられ、電気パルスに応答して患者内に電場を発生させるように構成された表面パッチ電極を備える、実施例1の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0008】
実施例3では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、表面パッチ電極からソース(source)され、1つ以上のカテーテル電極によってシンク(sink)される複数の単極電気パルスを含む、実施例2の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0009】
実施例4では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、1つ以上のカテーテル電極からソースされ、表面パッチ電極によってシンクされる複数の単極電気パルスを含む、実施例2の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0010】
実施例5では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、1つ以上のカテーテル電極のうちの少なくとも1つからソースされ、1つ以上のカテーテル電極のうちの少なくとも別の1つによってシンクされる複数の双極電気パルスを含む、実施例1~4のいずれか1つの電気穿孔アブレーションシステムである。
【0011】
実施例6では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、選択された周波数で送達される複数のプレコンディショニングパルスを含む、実施例1~5のいずれか1つの電気穿孔アブレーションシステムである。
【0012】
実施例7では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、経時的により低い電圧からより高い電圧に電圧が上昇される複数のプレコンディショニングパルスを含む、実施例1~6のいずれか1つの電気穿孔アブレーションシステムである。
【0013】
実施例8では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、標的組織の近くで電気分解を引き起こす指数関数的に減衰する後側の波形を含む複数のプレコンディショニングパルスを含む、実施例1~7のいずれか1つの前記穿孔アブレーションシステムである。
【0014】
実施例9では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、単相である複数のプレコンディショニングパルスを含む、実施例1~8のいずれか1つの電気穿孔アブレーションシステムである。
【0015】
実施例10では、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスは、患者の心臓の不応時間、330ミリ秒未満、および100~250ミリ秒の時間枠のうちの1つ以上で患者に送達される、実施例1~9のいずれか1つの電気穿孔アブレーションシステムである。
【0016】
実施例11では、電気穿孔パルスシーケンスは、プレコンディショニングパルスシーケンスのうちに送達される、実施例1~10のいずれか1つの電気穿孔アブレーションシステムである。
【0017】
実施例12は、電気穿孔パルスシーケンスが、カテーテル電極の1つ以上のカテーテル電極対に送達される複数の双極電気パルスを含む、実施例1~11のいずれか1つの電気穿孔アブレーションシステムである。
【0018】
実施例13では、患者の骨格筋刺激を監視するように構成された加速度計を備え、電気穿孔アブレーションシステムは、電気穿孔発生器がプレコンディショニングパルスシーケンスを送達し、患者内のテタニーを検出し、その後に電気穿孔パルスシーケンスを送達するように構成されるような閉ループシステムであり、局所インピーダンスが測定されてアブレーション前およびアブレーション後の値を計算し、病変有効性を評価する、実施例1~12のいずれか1つの電気穿孔アブレーションシステムである。
【0019】
実施例14では、患者の標的組織を治療するための電気穿孔アブレーションシステムである。電気穿孔アブレーションシステムは、アブレーションカテーテルおよび電気穿孔発生器を含む。アブレーションカテーテルは、ハンドルと、遠位端を有するシャフトと、シャフトの遠位端に位置し、電気パルスに応答して標的組織内に電場を発生させるように空間的に配置されたカテーテル電極とを含む。電気穿孔発生器は、表面パッチ電極および1つ以上のカテーテル電極のうちの1つ以上を含む複数の電極に動作可能に結合されるとともに、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスで電気パルスを複数の電極に送達するように構成され、プレコンディショニングパルスシーケンスの間に電気穿孔パルスシーケンスを送達する。
【0020】
実施例15では、プレコンディショニングパルスシーケンスは、標的組織の近くでの電気分解、および患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすように構成された複数の電気パルスを含む、実施例14の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0021】
実施例16では、患者の標的組織を治療するための電気穿孔アブレーションシステムである。電気穿孔アブレーションシステムは、アブレーションカテーテルおよび電気穿孔発生器を含む。アブレーションカテーテルは、ハンドルと、遠位端を有するシャフトと、シャフトの遠位端に位置し、電気パルスに応答して標的組織内に電場を発生させるように空間的に配置されたカテーテル電極とを含む。電気穿孔発生器は、カテーテル電極に動作可能に結合されるとともにプレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスで電気パルスを1つ以上のカテーテル電極に送達するように構成され、プレコンディショニングパルスシーケンスは、標的組織の近くでの電気分解、および患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすように構成された複数のプレコンディショニング電気パルスを含む。
【0022】
実施例17では、患者に取り付けられ、電気パルスに応答して患者内に電場を発生させるように構成された表面パッチ電極を備える、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0023】
実施例18では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、表面パッチ電極からソースされ、1つ以上のカテーテル電極によってシンクされる複数の単極電気パルスを含む、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0024】
実施例19では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、1つ以上のカテーテル電極からソースされ、表面パッチ電極によってシンクされる複数の単極電気パルスを含む、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0025】
実施例20では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、1つ以上のカテーテル電極のうちの少なくとも1つからソースされ、1つ以上のカテーテル電極のうちの少なくとも別の1つによってシンクされる複数の双極電気パルスを含む、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0026】
実施例21では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、選択された周波数で送達される複数のプレコンディショニングパルスを含む、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0027】
実施例22では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、経時的により低い電圧からより高い電圧に電圧が上昇される複数のプレコンディショニングパルスを含む、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0028】
実施例23では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、標的組織の近くで電気分解を引き起こす指数関数的に減衰する後側の波形を含む複数のプレコンディショニングパルスを含む、実施例16の前記穿孔アブレーションシステムである。
【0029】
実施例24では、プレコンディショニングパルスシーケンスが、単相である複数のプレコンディショニングパルスを含む、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0030】
実施例25では、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスは、患者の心臓の不応時間、330ミリ秒未満、および100~250ミリ秒の時間枠のうちの1つ以上で患者に送達される、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0031】
実施例26では、電気穿孔パルスシーケンスは、プレコンディショニングパルスシーケンスのうちに送達される、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
実施例27は、電気穿孔パルスシーケンスが、カテーテル電極の1つ以上のカテーテル電極対に送達される複数の双極電気パルスを含む、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0032】
実施例28では、患者の骨格筋刺激を監視するように構成された加速度計を備え、電気穿孔アブレーションシステムは、電気穿孔発生器がプレコンディショニングパルスシーケンスを送達し、患者内のテタニーを検出し、その後に電気穿孔パルスシーケンスを送達するように構成されるような閉ループシステムであり、局所インピーダンスを測定してアブレーション前およびアブレーション後の値を計算し、病変有効性を評価する、実施例16の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0033】
実施例29では、患者の標的組織を治療するための電気穿孔アブレーションシステムである。電気穿孔アブレーションシステムは、アブレーションカテーテルおよび電気穿孔発生器を含む。アブレーションカテーテルは、ハンドルと、遠位端を有するシャフトと、シャフトの遠位端に位置し、電気パルスに応答して標的組織内に電場を発生させるように空間的に配置されたカテーテル電極とを含む。電気穿孔発生器は、表面パッチ電極および1つ以上のカテーテル電極のうちの1つ以上を含む複数の電極に動作可能に結合されるとともに、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスで電気パルスを複数の電極に送達するように構成され、プレコンディショニングパルスシーケンスの間に電気穿孔パルスシーケンスを送達する。
【0034】
実施例30では、プレコンディショニングパルスシーケンスは、標的組織の近くでの電気分解、および患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすように構成された複数のプレコンディショニング電気パルスを含む、実施例29の電気穿孔アブレーションシステムである。
【0035】
実施例31は、電気穿孔パルスシーケンスが、選択されたカテーテル電極対に送達される複数の双極電気パルスを含む、実施例29の電気穿孔アブレーションシステムである。
実施例32では、不可逆的電気穿孔によって患者の標的組織をアブレーションする方法である。本方法は、表面パッチ電極およびカテーテル上の1つ以上のカテーテル電極のうちの1つ以上を含む複数の電極間にプレコンディショニングパルスシーケンスを送達することで、標的組織の近くでの電気分解、および患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすことを含む不可逆的電気穿孔パルスシーケンスを送達するステップと、電気穿孔パルスシーケンスを複数の電極に送達することで、標的組織の不可逆的電気穿孔アブレーションを引き起こすステップとを含む。
【0036】
実施例33では、プレコンディショニングパルスシーケンスを送達するステップは、経時的により低い電圧からより高い電圧へと電圧が上昇する複数の電気パルスを送達することを含み、電気パルスのうちの1つ以上は、指数関数的に減衰する後側の波形を含む、実施例32の方法である。
【0037】
実施例34では、電気穿孔パルスシーケンスは、プレコンディショニングパルスシーケンスの間に送達される、実施例32の方法である。
実施例35では、患者上の加速度計を監視するステップと、閉ループシステムにおいて、患者内でテタニーを達成するためにプレコンディショニングパルスシーケンスを送達するステップと、加速度計によって患者におけるテタニーを検出するステップと、テタニーが達成された後に電気穿孔パルスシーケンスを送達するステップとを含む、実施例32の方法である。
【0038】
複数の実施形態が開示されているが、本開示のさらに他の実施形態は、本開示の例示的な実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、限定的なものではないとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本開示の主題の実施形態による、電気生理学システムを使用して患者を治療するための、および患者の心臓を治療するための例示的な臨床設備を示す図である。
図2A】本開示の主題の実施形態による、カテーテルに含まれるシャフトの遠位端、および電極対間の相互作用を示す図である。
図2B】本開示の主題の実施形態による、電極対間の相互作用によって発生される軸線方向の電場を示す図である。
図2C】本開示の主題の実施形態による、カテーテルの電極対間の相互作用によって発生される周方向の電場を示す図である。
図3】本開示の主題の実施形態による、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含むIREパルスシーケンスを示す図である。
図4】本開示の主題の実施形態による、不可逆的電気穿孔によって患者の標的組織をアブレーションする方法を示すフローチャート図である。
【0040】
本開示は、様々な修正形態および代替形態を受け入れるが、特定の実施形態が図面において例として示されており、以下で詳細に説明される。しかしながら、その意図は、本開示を説明される特定の実施形態に限定することではない。逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲内に入るすべての修正形態、均等物、および代替形態を包含するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下の詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、決して本発明の範囲、適用性、または構成を限定することを意図するものではない。むしろ、以下の説明は、本発明の例示的な実施形態を実装するためのいくつかの実際的な例示を提供する。構成、材料、および/または寸法の例は、選択された要素に対して提供される。当業者は、記載された例の多くが様々な適切な代替形態を有することを認識するであろう。
【0042】
図1は、本開示の主題の実施形態による、電気生理学システム50を使用して患者20を治療するための、および患者20の心臓30を治療するための例示的な臨床設備10を示す図である。電気生理学システム50は、電気穿孔システム60と、電気解剖学的マッピング(EAM)システム70とを含み、EAMシステム70は、位置特定場発生器80と、マッピングおよびナビゲーションコントローラ90と、ディスプレイ92とを含む。また、臨床設備10は、撮像機器94(Cアームによって表される)などの追加の機器と、オペレータが電気生理学システム50の様々な態様を制御することを可能にするように構成されたフットコントローラ96などの様々なコントローラ要素とを含む。当業者によって理解されるように、臨床設備10は、図1に示されていない他の構成要素および構成要素の配置を有してもよい。
【0043】
電気穿孔システム60は、電気穿孔カテーテル105と、導入器シース110と、表面パッチ電極115と、電気穿孔発生器130とを含む。また、実施形態では、電気穿孔システム60は加速度計117を含み、加速度計117は、別個のセンサまたは表面電極パッチ115の一部であり得る。加えて、電気穿孔システム60は、電気穿孔システム60の構成要素を互いにおよびEAMシステム70の構成要素に機能的に接続するように働く様々な接続要素(例えば、ケーブル、アンビリカルなど)を含む。接続要素のこの配置は、本開示にとって決定的に重要なものではなく、当業者は、本明細書に説明される様々な構成要素が様々な方法で相互接続され得ることを認識するであろう。
【0044】
実施形態では、電気穿孔システム60は、患者の心臓30内の標的組織に電場エネルギーを送達して組織アポトーシスを生じさせることで、組織が電気信号を伝導できないようにするように構成される。電気穿孔発生器130は、電気穿孔システム60の機能的態様を制御するように構成される。実施形態では、電気穿孔発生器130は、本明細書でより詳細に説明されるように、パルスシーケンスを発生させ、電気穿孔カテーテル105および表面パッチ電極115に供給するためのパルス発生器として動作可能である。実施形態では、電気穿孔発生器130は、加速度計117から感知信号を受信するように動作可能であり、受信した感知信号に基づいて、本明細書でより詳細に説明されるように、パルスシーケンスを発生させ、電気穿孔カテーテル105および表面パッチ電極115に供給するためのパルス発生器として機能する。
【0045】
実施形態では、電気穿孔発生器130は、電気穿孔カテーテルシステム60の機能的態様を制御および/または実施するためにメモリからコードを実行する1つ以上のコントローラ、マイクロプロセッサ、および/またはコンピュータを含む。実施形態では、メモリは、1つ以上のコントローラ、マイクロプロセッサ、および/もしくはコンピュータの一部、ならびに/またはワールドワイドウェブ等のネットワークを通してアクセス可能なメモリ容量の一部であってもよい。
【0046】
実施形態では、導入器シース110は、電気穿孔カテーテル105が患者の心臓30内の特定の標的部位に展開され得る送達導管を提供するように動作可能である。しかしながら、導入器シース110は、電気生理学システム50の全体に対する状況を提供するために本明細書で図示および説明されているが、本明細書で説明される様々な実施形態の新規な態様にとって必須ではないことが理解されよう。
【0047】
EAMシステム70は、電気穿孔システム60の様々な機能的構成要素の位置を追跡し、対象の心腔の高忠実度の3次元解剖学的マップおよび電気解剖学的マップを作り出すように動作可能である。実施形態において、EAMシステム70は、Boston Scientific Corporationによって販売されているRHYTHMIA(登録商標)HDxマッピングシステムであってもよい。また、実施形態において、EAMシステム70のマッピングおよびナビゲーションコントローラ90は、EAMシステム70の機能的態様を制御および/または実施するためにメモリからのコードを実行する1つ以上のコントローラ、マイクロプロセッサ、および/またはコンピュータを含み、メモリは、実施形態において、1つ以上のコントローラ、マイクロプロセッサ、および/もしくはコンピュータの一部、ならびに/またはワールドワイドウェブなどのネットワークを介してアクセス可能なメモリ容量の一部であってもよい。
【0048】
当業者によって理解されるように、図1に示される電気生理学システム50の図は、システム50の様々な構成要素の一般的概要を提供することを意図しており、決して本開示が任意の構成要素のセットまたは構成要素の配置に限定されることを暗示することを意図するものではない。例えば、当業者は、追加のハードウェア構成要素、例えば、ブレークアウトボックス、ワークステーションなどが電気生理学システム50に含まれてもよく、含まれる可能性が高いことを容易に認識するであろう。
【0049】
EAMシステム70は、場発生器80を介して位置特定場を発生させることで心臓30の周りの位置特定体積を画定し、例えば電気穿孔カテーテル105などの追跡される装置上の1つ以上の位置センサまたは感知要素は、マッピングおよびナビゲーションコントローラ90によって処理され得る出力を生成することで位置特定体積内のセンサの位置、したがって対応する装置の位置を追跡する。示される実施形態では、装置追跡は、磁気追跡技術を用いて達成され、そのため、場発生器80は、位置特定体積を画定する磁場を発生させる磁場発生器であり、追跡される装置上の位置センサは、磁場センサである。
【0050】
他の実施形態では、インピーダンス追跡方法が、様々な装置の位置を追跡するために採用されてもよい。そのような実施形態では、位置特定場は、例えば、表面電極などの外部場発生器配置によって、または心臓内カテーテルなどの体内もしくは心臓内装置によって、またはその両方によって発生される電場である。これらの実施形態では、位置感知要素は、位置特定体積内の様々な位置感知電極の位置を追跡するためにマッピングおよびナビゲーションコントローラ90によって受信および処理される出力を生成する追跡される装置上の電極を構成してもよい。
【0051】
実施形態において、EAMシステム70は、磁気追跡能力およびインピーダンス追跡能力の両方を備える。そのような実施形態では、インピーダンス追跡の正確度は、いくつかの事例では、前述のRHYTHMIA HDx(商標)マッピングシステムを用いて可能であるように、磁気位置センサを備えるプローブを使用して対象の心腔内の電場発生器によって誘導される電場のマップを最初に作成することによって向上させることができる。1つの例示的なプローブは、Boston Scientific Corporationによって販売されているINTELLAMAP ORION(登録商標)マッピングカテーテルである。
【0052】
使用される追跡方法にかかわらず、EAMシステム70は、例えば、電気穿孔カテーテル105または感知電極を備えた別のカテーテルもしくはプローブによって取得される心臓の電気活動と共に、様々な追跡される装置の位置情報を利用して、心腔の詳細な3次元幾何学的解剖学的マップまたは表現、ならびに対象の心臓の電気活動が幾何学的解剖学的マップ上に重ね合わされる電気解剖学的マップを作り出し、ディスプレイ92によって表示する。さらに、EAMシステム70は、幾何学的解剖学的マップおよび/または電気解剖学的マップ内に様々な追跡される装置のグラフィカル表現を作り出してもよい。
【0053】
EAMシステム70は、例示的な臨床設備10の包括的な図を提供するために電気穿孔システム60と組み合わせて示されているが、EAMシステム70は、電気穿孔システム60の動作および機能にとって必須ではない。すなわち、実施形態では、電気穿孔システム60は、EAMシステム70または任意の同等の電気解剖学的マッピングシステムとは独立して使用することができる。
【0054】
示される実施形態では、電気穿孔カテーテル105は、ハンドル105aと、シャフト105bと、以下でさらに説明する電気穿孔電極構成体150とを含む。ハンドル105aは、電気穿孔電極構成体150を所望の解剖学的位置に位置決めするためにユーザによって操作されるように構成される。シャフト105bは、遠位端105cを有し、全般的に、電気穿孔カテーテル105の長手方向軸線を画定する。示されるように、電気穿孔電極構成体150は、シャフト105bの遠位端105cに、またはその近位に位置する。実施形態では、電気穿孔電極構成体150は、電気穿孔発生器130に電気的に結合されて電気パルスシーケンスまたはパルス列を受け取り、それによって、不可逆的電気穿孔によって標的組織をアブレーションするための電場を選択的に発生させる。
【0055】
実施形態では、表面パッチ電極115は、患者の胸部など、患者20の身体に取り付けることができる導電性電極を含む。導電性電極を含む表面パッチ電極115は、電気穿孔発生器130に電気的に結合されて、システム内の電気エネルギーのリターン経路またはシンクとして働くとともに電気穿孔発生器130から電気パルスシーケンスまたはパルス列を受け取り、それによって電気エネルギーのソースとして働き、不可逆的電気穿孔によって標的組織をアブレーションするための電場を選択的に発生させる。実施形態では、表面パッチ電極115は、電気穿孔カテーテル105および電気穿孔電極構成体150によって受け取られる電気エネルギーのためのリターンまたはシンクとして働く。実施形態では、表面パッチ電極115は、電気エネルギーのソースとして働き、電気穿孔電極構成体150を含む電気穿孔カテーテル105は、ソースされた電気エネルギーのリターンまたはシンクとして働く。
【0056】
電気穿孔システム60は、プレコンディショニング(前処理)パルスシーケンスと電気穿孔パルスシーケンスとを含むIREパルスシーケンスを発生させるように動作可能である。IREパルスシーケンスは、標的組織をアブレーションするように構成される。実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンスは、骨格筋組織にテタニーを起こさせるため、および標的組織の近くに電気分解を提供するために、大きさが増加する一連の電気パルスである。実施形態では、電気穿孔パルスシーケンスは、標的組織に不可逆的損傷を引き起こすように構成された一連の電気穿孔パルスである。
【0057】
実施形態では、電気穿孔システム60は、患者の胸部などの患者20の身体に取り付けられ、電気穿孔発生器130に電気的に結合され得る加速度計117を含む。加速度計117は、患者の骨格筋系の収縮を感知することでテタニーを検出するように構成される。加速度計117からの信号は、電気穿孔発生器130によって受信され、電気穿孔発生器130は、信号を処理して、患者の骨格筋系が収縮しているか否か、およびテタニーが達成されたか否かを判定する。実施形態では、電気穿孔発生器130は、患者においてテタニーが達成された後にのみ電気穿孔パルスシーケンスを提供するように構成される。
【0058】
実施形態では、電気穿孔システム60は、表面加速度計117が胸部振動を監視し、電気穿孔発生器130がテタニーが達成されるまでパルスを変調し、その後に電気穿孔発生器130が電気穿孔パルスを送達する、閉システムとして働く。また、実施形態では、標的組織および標的組織を取り囲む組織の局所インピーダンスをこの時間中に測定してアブレーション前およびアブレーション後の値を計算し、病変有効性の評価することができる。
【0059】
図2A図2Cは、例示的な実施形態による電気穿孔電極構成体150を含む電気穿孔カテーテル105の特徴を示す。図2Aに示す実施形態では、電気穿孔電極構成体150は、3次元電極アレイに配置された複数の電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fを含み、電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fのそれぞれは、軸線方向に(すなわち、長手方向軸LAの方向に)、長手方向軸LAの周りで周方向に、および/または長手方向軸LAに対して半径方向に、互いから離間される。いくつかの実施形態では、電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fは、複数のアノード-カソード電極対を画定するために、電気穿孔発生器130(図1)を介してそれぞれ個別に選択的にアドレス指定可能であり、各アノード-カソード電極対は、電気穿孔発生器130から電気パルスシーケンスを受け取ることができ、その結果、IREによって標的組織をアブレーションすることを含む、電気穿孔によって組織を選択的に標的化することができる電場を生成することができる。図2Aは、電気穿孔カテーテル105に含まれる電極201(例えば、201a、201b、201c、201d、201e、および201f)間に形成される電極対間の相互作用(例えば、電場を形成する電流フロー)を概略的に示す。この図において、相互作用は、電極201間の電流フローを示す対になった矢印(例えば、a-d、b-e、およびd-f)として示される。また、電極対(例えば、201aおよび201d、201bおよび201e、ならびに201dおよび201f)は、それらのそれぞれの電流フロー(例えば、a-d、b-e、およびd-f)がラベル付けされて示される。
【0060】
図2Bは、電気穿孔カテーテル105内の電極対間の相互作用によって発生される電場210を示す図である。この図では、左心房223と左下肺静脈225との間の小孔221に位置付けられた、軸線方向に配向された電場210が示されている。実施形態では、軸線方向に配向された電場210は、電気パルスを軸線方向に離間されたアノードおよびカソードに送達することによって生成される。
【0061】
図2Cもまた、電気穿孔カテーテル105内の電極対間の相互作用によって発生される電場210を示す図である。しかし、ここでは、電場210は周方向に配向されている。実施形態では、周方向に配向された電場210は、周方向に離間されたアノード(「A」)およびカソード(「C」)に電気パルスを送達することによって生成される。
【0062】
図2A図2Cは、複数の電場210が、同時におよび/または順次に、軸線方向および周方向の向きで発生され得ることを示す。例えば、実施形態では、軸線方向および周方向に配向された電場210は、それぞれの電極201への電気パルスの送達のタイミングを選択的に制御することによって、事前に定められたシーケンスで非同時に発生されてもよい。加えて、電極対のセット間の互い違いの相互作用によって引き起こされる断続的に発生された電場210、ならびに軸線方向および周方向以外の電場配向は、本開示の範囲を超えないことが理解される。
【0063】
図2Aに見られ得るように、電気穿孔電極構成体150は、複数の電極対(例えば、アノード-カソード対)を選択的に画定するように配置された複数の個別にアドレス指定可能な電極201(例えば、アノードまたはカソード)を含み得る。各アノード-カソード対は、パルスシーケンスがそこに送達されたとき、電場を発生させるように構成されてもよい。複数のアノード-カソード対は、第1のアノード-カソード対、第2のアノード-カソード対、および第3のアノード-カソード対のうちの少なくとも2つを含んでもよい。第1のアノード-カソード対は、第1のパルスシーケンスがそこに送達されるとき、長手方向軸に対して概ね周方向に配向される第1の電場を発生させるように配置されてもよい。第2のアノード-カソード対は、第2のパルスシーケンスがそこに送達されるとき、概ね長手方向軸と同じ方向に配向された第2の電場を発生させるように配置されてもよい。第3のアノード-カソード対は、第3のパルスシーケンスがそこに送達されるとき、概ね長手方向軸に対して横断方向に配向される第3の電場を発生させるように配置されてもよい。実施形態では、第1、第2、第3のパルスシーケンスの任意の組み合わせが、同時にまたは断続的に送達されてもよく、様々な形態をとってもよい。
【0064】
実施形態では、電気穿孔電極構成体150は、電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fを、遠位に位置する第1の領域およびより近位に位置する第2の領域に構造的に配置するように構成され得る。したがって、電極対は、第1の領域と第2の領域との間の電気穿孔電極構造体150内の様々な電極201にわたって形成され得る。例えば、電極201dおよび201fは、電極対を形成するように構成されてもよい。同様に、電極201aおよび201d、または電極201bおよび201e、またはそれらの組み合わせを選択して、それぞれの電極対を形成してもよい。したがって、電極対は、軸線方向に間隔を置いて配置された電極、横方向に間隔を置いて配置された電極、または周方向に間隔を置いて配置された電極を含んでもよい。加えて、実施形態では、所与の電極(例えば、201d)は、電場210を発生させるために、少なくとも2つの電極対における共通電極として機能してもよい。
【0065】
図2Bは、電気穿孔電極構成体150によって発生され得る例示的な電場210の図を示す。電気穿孔電極構成体150は、少なくとも1つのパルスシーケンスがそこに送達されるときに多方向電場210を発生させるように構成され得る。多方向電場210は、長手方向軸に対して、概ね軸線方向、周方向、および横方向のうちの少なくとも2つの方向を含んでもよい。本明細書で使用される場合、横方向は、長手方向軸に対して任意の非平行な角度を意味し得る。本明細書の他の箇所に説明されるように、電気穿孔電極構成体150は、少なくとも1つのパルスシーケンスを発生させるように構成された電気穿孔発生器に動作可能に結合するように構成されてもよい。電気穿孔電極構成体150は、電気穿孔発生器から少なくとも1つのパルスシーケンスを受け取るように構成されてもよい。したがって、電気穿孔電極構成体150および電気穿孔発生器は、互いに動作可能に通信していてもよい。本開示では、そのような通信を用いて、少なくとも実質的に隙間のない電場210を発生させることができる。
【0066】
電気穿孔電極構成体150によって発生される電場210における望ましくない隙間は、制限され得るか、または少なくとも実質的に排除され得る。そのような隙間は、潜在的に、病変の隙間をもたらし、したがって、例えば、カテーテルの複数の再位置付けを必要とすることがある。電場210を重ね合わせることにより、そのような隙間の数を少なくとも実質的に制限することができる。実施形態では、第1のパルスシーケンスセットにおいて発生される電場210の少なくともいくつかは、互いに少なくとも部分的に重なり合ってもよい。例えば、複合電場211内の隣接する複数の電場210(例えば、軸線方向、横方向、および/または周方向)は、複合電場211内に隙間がないように制限されるように、互いに交差してもよい。重なり合いは、隣接する複数の電場210の周辺またはその付近で生じてもよく、または1つ以上の隣接する電界210のうちの圧倒的多数または大部分にわたって生じてもよい。本開示において、隣接するとは、隣り合う電極201、またはそうでなければ互いに近い電極201を意味する。電気穿孔発生器は、重なり合う電場を発生させる際に使用されるパルスシーケンスを発生させるように構成されてもよい。
【0067】
様々な実施形態における電気穿孔電極構成体150の構成は、現在知られているか後に開発されるかにかかわらず、3次元電極構造に適した任意の形態をとることができる。例示的な実施形態では、電気穿孔電極構成体150は、それぞれの電極201a、201b、201c、201d、201e、および201fが、当技術分野で知られている任意の方法で複数のスプライン上に配置された、スプラインバスケットカテーテルの形態であってもよい。実施形態では、電気穿孔電極構成体150は、拡張可能なバルーン上に形成することができ、例えば、電極は、バルーン表面上に配置された可撓性回路分岐または個々のトレース上に形成される。他の実施形態では、電気穿孔電極構成体150は、拡張可能なメッシュの形態であってもよい。要するに、電気穿孔電極構成体150を形成するために使用される特定の構造は、本開示の実施形態にとって必須ではない。
【0068】
図3は、例示的な実施形態による、プレコンディショニングパルスシーケンス302および電気穿孔パルスシーケンス304を含む、本明細書ではIREパルスシーケンス300とも呼ばれるアブレーションエネルギー印加シーケンス300を示す図である。プレコンディショニングパルスシーケンス302は、より低い電圧からより高い電圧へと大きさが増加する一連のパルス306である。電気穿孔パルスシーケンス304は、大きな正および/または負の電圧値を有する一連の高エネルギー電気穿孔パルス308である。
【0069】
電気穿孔システム60は、テタニーを達成するため、および電気分解を発生させるための一連のパルス306またはパルス306のシーケンスを送達するプレコンディショニングパルスシーケンス302を送達するように構成される。図3では、図を明確にするために、プレコンディショニングパルスシーケンス302の3つのパルス306のみが指されているが、実施形態では、パルス306のシーケンスは、プレコンディショニングパルスシーケンス302内のすべてのパルスを含む。電気穿孔システム60は、一連の電気穿孔パルス308において、電気穿孔パルスシーケンス304、すなわち電気穿孔アブレーションエネルギーを送達して標的組織をアブレーションするようにさらに構成される。実施形態では、IREパルスシーケンス300内のすべてのパルスは、250~330ミリ秒以内など、心臓の不応期以内に送達される。
【0070】
パルス306のシーケンスは、経時的により低い電圧からより高い電圧まで大きさが増加する一連の単相パルスである。電圧の傾斜は、骨格筋の比較的遅い動員を引き起こすことで、最終的に、電気穿孔パルスシーケンス304におけるより高い電圧の電気穿孔パルス308に先行して、テタニー性骨格筋収縮をもたらす。パルス306の各々、またはパルス306の少なくともいくつかはまた、パルス306の後側に単相の指数関数的に減衰する波形310(または垂下波形)を含むなど、電気分解を促進する特徴を有する。図3では、図を明確にするために、プレコンディショニングパルスシーケンス302内の指数関数的に減衰する波形310のうちの3つのみが指されているが、実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンス302内のすべてのパルスが、指数関数的に減衰する波形310を含む。実施形態では、パルス306は、完全に単相でなくてもよいが、正および負の成分の両方で電荷平衡される少なくともいくつかの非対称相を含んでもよい。いくつかの実施形態では、パルス306の持続時間は、1ミリ秒(ms)から60msであり、いくつかの実施形態では、波形の傾き/垂下/指数関数的減衰は、前縁の20から80%の範囲内である。
【0071】
パルス306は、いくつかの異なる特性を有してもよい。実施形態において、プレコンディショニングパルスシーケンス302内のパルス306は、1キロヘルツなどの選択された周波数で提供される。いくつかの実施形態では、この周波数は200~1000Hzの範囲である。実施形態において、パルス306は、0ボルトから、5~100ボルトの電圧に上昇され、いくつかの実施形態において、振幅は、100~1000ボルトに達する。また、実施形態では、上昇割合は、先行するパルスの1%~30%増分することができる。いくつかの実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンス302は、100~250ミリ秒のシーケンス持続時間で印加される。
【0072】
プレコンディショニングパルスシーケンス302は、少なくとも2つの方法で電気穿孔のために身体をプレコンディショニングする。第1に、プレコンディショニングパルスシーケンス302は、より高い電圧の電気穿孔パルスシーケンス304を受け取る前に、テタニー、すなわち患者の身体の骨格筋の収縮を引き起こす一連のテタニー性骨格筋パルス306として作用する。パルス306の大きさをより低い電圧からより高い電圧へと経時的に上昇させることは、テタニーを引き起こすか、またはテタニー引き起こすことに寄与する。このSMSは、電気穿孔パルスシーケンス304におけるより高い電圧の電気穿孔パルス308のために患者を準備するが、そうでなければ、患者にショックを与えるか、または患者にとって苦痛な経験となり得る。第2に、プレコンディショニングパルスシーケンス302は、標的組織の近くで電気分解を引き起こす一連の電気分解誘導パルス306として作用する。これにより、標的組織の近くに細胞毒性環境が作り出され、その結果、より小さい電気穿孔パルスを使用して標的組織を透過化し、細胞死を引き起こすことができ、より小さい電気穿孔パルスでより大きい病変を作成することができる。
【0073】
この相乗的電気分解は、プレコンディショニングパルスシーケンス302などの比較的長い低電圧パルスを標的領域に印加することによって引き起こされる。特に、プレコンディショニングパルスシーケンス302のパルス306の後側の指数関数的に減衰する波形310(または垂下波形)は、電極付近の電気分解を引き起こす。さらに説明すると、相乗的電気分解は、電極と溶液中のイオンとの間の電子移動の結果として電極の界面で新しい化学種が生成されるときに起こる。新しい化学種は、電気化学ポテンシャルによって駆動されるプロセスにおいて、電極から組織内に拡散する。生理溶液中では、電解反応によってpHが変化することで、アノード付近に酸性領域が生じ、カソード付近に塩基性領域が生じる。pHの局所的変化に起因して発生する細胞毒性環境、および溶液の電気分解中に形成されるいくつかの新しい化学種の存在は、電気穿孔の透過化と協働して、細胞死を引き起こす。
【0074】
例示的な実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンス302は、一連の単極電気パルス306として送達される。患者20の胸部に取り付けられた表面パッチ電極115は、電気穿孔発生器130から電気パルスを受け取るとともに電気エネルギーをソースし、表面パッチ電極115は、電気パルスのソース電極として機能する。電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の電極は、表面パッチ電極115によってソースされる電気エネルギーをシンクし、電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の電極は、電気パルスのシンクとして作用する。これは、患者の骨格筋を収縮させてテタニーに達し、電気穿孔カテーテル105の電極が標的組織の近くに位置する標的組織の近くで相乗的な電気分解を発生させる。
【0075】
他の実施形態では、電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の電極は、電気穿孔発生器130からパルス306を受け取り、電気エネルギーをソースするので、電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の電極が電気パルス306のためのソース電極として作用する。患者20の胸部に取り付けられた表面パッチ電極115は、電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の電極によってソースされる電気エネルギーをシンクするので、表面パッチ電極115が電気パルスのシンクとして作用する。
【0076】
プレコンディショニングパルスシーケンス302の少なくともいくつかを送達した後、電気穿孔システム60は、電気穿孔パルスシーケンス304、すなわち電気穿孔アブレーションエネルギーを送達して、標的組織をアブレーションするように構成される。電気穿孔パルスシーケンス304は、短い持続時間の高エネルギー電気穿孔パルス308を含む。図示されるように、電気穿孔パルスシーケンス304の電気穿孔パルス308は、例えば、正パルスおよび負パルスの両方を含む二相性である。実施形態において、電気穿孔パルス308は、正1000ボルトおよび負1000ボルトであってもよい。他の実施形態では、電気穿孔パルス308は、例えば、全て正のパルスまたは全て負のパルスを含む単相でもよい。
【0077】
電気穿孔パルス308を印加する前にプレコンディショニングパルスシーケンス302のパルス206の少なくともいくつかが印加されると、標的組織付近または標的組織での電気分解は、電気穿孔パルスのみを使用する場合に通常または必要なもの(500V/cm~2,500V/cm)よりも振幅が低い、例えば250ボルト/センチメートル(V/cm)~1000V/cmの電気穿孔パルス308を使用することを可能にする。
【0078】
図示されるように、電気穿孔パルスシーケンス304の電気穿孔パルス308は、プレコンディショニングパルスシーケンス302の一連のパルス306内で送達される。他の実施形態では、電気穿孔発生器130は、プレコンディショニングパルスシーケンス302のすべてのパルス306が送達された後に、電気穿孔パルスシーケンス304の電気穿孔パルス308を送達するように構成してもよい。
【0079】
電気穿孔パルスシーケンス304の電気穿孔パルス308は、単極パルスまたは双極パルスのどちらかであり得る。実施形態では、電気穿孔カテーテル105上の電極対(または電極セット)は、選択された電極対間に双極パルスを送達するように選択される。電極対の各電極は、ソース電極として作用してもよく、電極対の各電極は、シンクとして作用して、電気アブレーションエネルギーを標的組織に送達してもよい。
【0080】
他の実施形態では、単極パルスを提供するために、電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の電極は、電気穿孔発生器130から電気穿孔パルスシーケンス304の電気穿孔パルス308を受け取り、電気エネルギーをソースするので、電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の電極は電気パルスのためのソース電極として作用する。患者20の胸部に取り付けられた表面パッチ電極115は、電気穿孔カテーテル105上の1つ以上の電極によってソースされる電気エネルギーをシンクするので、表面パッチ電極115は電気パルスのシンクとして作用する。
【0081】
実施形態では、電気穿孔システム60は、患者の胸筋の収縮などの患者の骨格筋の収縮を感知してテタニーを検出するように構成された加速度計117を含む。加速度計117からの信号は、電気穿孔発生器130によって受信され、電気穿孔発生器130は、信号を処理して、患者の骨格筋系が収縮しているか否か、およびテタニーが達成されたか否かを判定する。実施形態では、電気穿孔発生器130は、患者においてテタニーが達成された後にのみ電気穿孔パルスシーケンス304を提供するように構成される。電気穿孔発生器130は、プレコンディショニングパルスシーケンス302の間、またはプレコンディショニングパルスシーケンス302の後に、電気穿孔パルスシーケンス304を提供してもよい。
【0082】
したがって、電気穿孔システム60は、表面加速度計117が胸部振動を監視し、電気穿孔発生器130がテタニーが達成されるまでパルス306を変調し、その後に電気穿孔パルス308を送達する、閉システムとして作用する。また、実施形態では、標的組織および標的組織を取り囲む組織の局所インピーダンスをこの時間中に測定してアブレーション前およびアブレーション後の値を計算し、病変有効性の評価することができる。
【0083】
電気穿孔パルスシーケンス304の電気穿孔パルス308を送達する前に、プレコンディショニングパルスシーケンス302内の少なくともいくつかのパルス306を印加することによって、患者の骨格筋のテタニーまたは収縮を達成することができ、電気分解によって、電気穿孔パルスシーケンス304の電気穿孔パルス308を送達する前に、標的組織の近くまたは標的組織に隣接して細胞毒性環境を確立することができる。これは、プレコンディショニングパルスシーケンス302を伴わずにはるかに多くのエネルギーまたははるかに多くの電気穿孔パルス308を使用して作成され得るものと同じサイズの病変を、より低いエネルギーの電気穿孔パルス308および/またはより少ない電気穿孔パルス308を使用して作成することが可能になるという結果をもたらす。
【0084】
図4は、本開示の主題の実施形態による、不可逆的電気穿孔によって患者の標的組織をアブレーションする方法を示すフローチャート図である。不可逆的電気穿孔によって患者の標的組織をアブレーションするそのような方法および他の関連する方法が、本明細書に開示される。
【0085】
この方法は、402のプレコンディショニングパルスシーケンスを送達するステップと、404の電気穿孔パルスシーケンスを送達するステップとを含む、IRE(不可逆的電気穿孔)パルスシーケンスを送達することを含む。実施形態では、電気穿孔パルスシーケンスは、プレコンディショニングパルスシーケンスの間またはプレコンディショニングパルスシーケンスのうちに送達される。他の実施形態では、電気穿孔パルスシーケンスは、プレコンディショニングパルスシーケンスが停止した後に送達される。例示的な実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンスおよび電気穿孔パルスシーケンスを含むIREパルスシーケンスは、患者の心臓の不応時間、330ミリ秒未満、および100~250ミリ秒の時間枠のうちの1つ以上で患者に送達される。
【0086】
402のプレコンディショニングパルスシーケンスを送達するステップは、表面パッチ電極とカテーテル上の1つ以上のカテーテル電極との間にプレコンディショニングパルスシーケンスを送達することで、標的組織の近くでの電気分解、および患者におけるテタニー性骨格筋刺激を引き起こすことを含む。実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンスは、表面パッチ電極からソースされ、1つ以上のカテーテル電極によってシンクされる複数の単極電気パルスを含む。他の実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンスは、1つ以上のカテーテル電極からソースされ、表面パッチ電極によってシンクされる複数の単極電気パルスを含む。また、実施形態において、プレコンディショニングパルスシーケンスは、単相である複数のプレコンディショニングパルスを含む。
【0087】
プレコンディショニングパルスシーケンスは、選択された周波数で送達され、経時的により低い電圧からより高い電圧まで電圧が上昇する複数のプレコンディショニングパルスを含む。実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンスは、約1キロヘルツで送達される複数のプレコンディショニングパルスを含む。また、実施形態では、プレコンディショニングパルスシーケンスは、0ボルトから、5~100ボルトの電圧に上昇される複数のプレコンディショニングパルスを含む。経時的にパルスの電圧をより低い電圧からより高い電圧に上昇させることは、患者にテタニー性の骨格筋収縮を引き起こすことに寄与する。また、プレコンディショニングパルスシーケンスは、標的組織の近くで電気分解を引き起こすか、またはそれに寄与する指数関数的に減衰する後側の波形を含む複数のプレコンディショニングパルスを含む。
【0088】
404の電気穿孔パルスシーケンスを送達するステップは、電気穿孔パルスシーケンスをカテーテル上のカテーテル電極に送達して、標的組織の不可逆的電気穿孔アブレーションを引き起こすことを含む。実施形態では、電気穿孔パルスシーケンスは、カテーテル電極の1つ以上のカテーテル電極対に送達される複数の双極電気パルスを含む。他の実施形態では、電気穿孔パルスシーケンスは、表面パッチ電極とカテーテル上の1つ以上のカテーテル電極との間に送達される複数の単極電気パルスを含む。
【0089】
実施形態では、方法は、患者上の加速度計117を監視することをさらに含み、加速度計は、患者の胸筋の収縮など、患者の骨格筋の収縮を感知して、テタニーを検出するように構成される。閉ループシステムにおいて、加速度計117からの信号は、電気穿孔発生器130によって受信され、電気穿孔発生器130は、信号を処理して、患者の骨格筋系が収縮しているか否か、およびテタニーが達成されたか否かを判定する。実施形態では、電気穿孔発生器130は、患者においてテタニーが達成された後にのみ電気穿孔パルスシーケンスを提供するように構成され、これは、プレコンディショニングパルスシーケンス中またはプレコンディショニングパルスシーケンス後であってもよい。
【0090】
また、実施形態では、方法は、標的組織および標的組織を取り囲む組織の局所インピーダンスを監視して、病変有効性の評価のためにアブレーション前およびアブレーション後の値を計算することを含む。
【0091】
本開示の範囲から逸脱することなく、説明した例示的な実施形態に対して様々な修正および追加を行うことができる。例えば、上記の実施形態は特定の特徴に言及しているが、本開示の範囲はまた、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態、および説明された特徴の全てを含まない実施形態を含む。したがって、本開示の範囲は、特許請求の範囲内に入るすべてのそのような代替形態、修正形態、および変形形態を、そのすべての均等物とともに包含することが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
【国際調査報告】