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特表2023-543858酸-塩基中和合剤を含む医薬組成物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】酸-塩基中和合剤を含む医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/22 20060101AFI20231011BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 33/02 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 33/20 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 33/18 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/133 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 31/191 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 31/08 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20231011BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231011BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231011BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231011BHJP
【FI】
A61K33/22
A61K33/00
A61K33/02
A61K33/04
A61K33/20
A61K33/18
A61K31/133
A61K31/19
A61K31/194
A61K31/191
A61P35/00
A61P29/00
A61P5/00
A61P17/00
A61P15/00
A61P1/18
A61P11/04
A61P13/08
A61P1/16
A61P11/00
A61P1/04
A61P1/02
A61P15/02
A61P9/00
A61P19/02
A61P11/02
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/22
A61P31/04
A61P31/08
A61P31/10
A61P37/08
A61P17/04
A61P17/10
A61P17/14
A61K45/00
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/46
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/36
A61K47/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519733
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2021122041
(87)【国際公開番号】W WO2022068918
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202011064448.1
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011059746.1
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/076749
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/077290
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/078914
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521083980
【氏名又は名称】チェンドゥ クァチャンアオプー メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521083991
【氏名又は名称】クァチャン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ファンリン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,リーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジェンシャ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076CC04
4C076CC09
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD51
4C076DD55
4C076DD59
4C076DD60
4C076DD61
4C076DD63
4C076DD66
4C076DD67
4C076EE30
4C076EE38
4C076EE42
4C076EE53
4C076EE56
4C076FF53
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB212
4C084ZB262
4C084ZB352
4C084ZC202
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA04
4C086HA05
4C086HA07
4C086HA15
4C086HA16
4C086HA17
4C086HA19
4C086HA23
4C086HA24
4C086HA26
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206DA07
4C206DA34
4C206DA36
4C206FA02
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4C206MA01
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4C206NA14
4C206ZA34
4C206ZA36
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA67
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA92
4C206ZA96
4C206ZB08
4C206ZB11
4C206ZB13
4C206ZB26
4C206ZB32
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
本願の開示は、局所病変疾患の治療のための局所医薬品の製造における局所有効成分としての酸-塩基中和合剤の使用、その合剤を含む局所医薬組成物、及び局所病変疾患を治療する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物の製造における局所有効成分としての酸-塩基中和合剤の使用であって、前記酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、前記酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され、前記塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され、前記pH中和剤は、前記酸性化剤又は前記塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、前記酸性化剤、前記塩基性化剤、及び前記pH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される、使用。
【請求項2】
局所有効成分として酸-塩基中和合剤を含む、局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物であって、前記酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、前記酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され、前記塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され、前記pH中和剤は、前記酸性化剤又は前記塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、前記酸性化剤、前記塩基性化剤、及び前記pH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される、局所医薬組成物。
【請求項3】
局所有効成分として酸-塩基中和合剤及び前記中和合剤の局所相乗剤を含む、局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物であって、前記酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、前記酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され、前記塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され、前記pH中和剤は、前記酸性化剤又は前記塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、前記酸性化剤、前記塩基性化剤、及び前記pH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される、局所医薬組成物。
【請求項4】
局所病変疾患を治療する方法であって、それを必要としている個人の局所病変領域に、標的領域の組織壊死を引き起こし得る治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含み、前記医薬組成物は、局所有効成分として作用することができる酸-塩基中和合剤及び任意的に前記中和合剤の局所相乗剤を含み、前記酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、前記酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され、前記塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され、前記pH中和剤は、前記酸性化剤又は前記塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、前記酸性化剤、前記塩基性化剤、及び前記pH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される、方法。
【請求項5】
前記局所有効成分は、効果的な組織間浸透作用、好ましくは最大の組織間浸透作用を有する成分を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項6】
前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記酸性化剤及びそのpH中和剤又は前記塩基性化剤及びそのpH中和剤は、(0.5~35)/(1~35)、好ましくは(1.5~35)/(1~35)の投与量比(w/w)(W塩基性化剤/W中和剤、又はW酸性化剤/W中和剤)で標的領域に入る、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項7】
前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記酸性化剤又は前記塩基性化剤は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%又は≧2.5%の投与濃度で標的領域に入り、前記pH中和剤は、前記医薬組成物の投与pH値が、同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpHよりも中性に近く、且つ2つのpHの差(投与されることになる前記医薬組成物のpH-同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する前記単一の薬物のpH)の絶対値が≧0.25、≧0.5、又は≧1.0であるような投与濃度で標的領域に入る、請求項1乃至5のいずれかに一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項8】
前記医薬組成物の投与pH値は、7.5±4.5、10.0±2.0、又は4.0±2.0であり、好ましくは8.5~11.5、9.5~11.5、10.0~11.0、3.0~5.0、又は3.5~4.5である、請求項6に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項9】
前記塩基性化剤は強塩基であり、前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記強塩基は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、又は≧1%の濃度(w/v)、0.5~10%、好ましくは0.75~10%、又は1~10%の濃度(w/v)で投与されるか、又は
前記塩基性化剤は弱塩基であり、前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記弱塩基は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、又は≧5%の濃度(w/v)、2.5~35%、好ましくは3.0~35%、又は5~35%の濃度(w/v)で投与されるか、又は
前記酸性化剤は強酸であり、前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記強酸は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、又は≧1%の濃度(w/v)、0.5~10%、好ましくは0.75~10%、又は1~10%の濃度(w/v)で投与されるか、又は
前記酸性化剤は弱酸であり、前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記弱酸は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、又は≧5%の濃度(w/v)、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、又は5~20%の濃度(w/w)で投与される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項10】
前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記pH中和剤は、弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び弱酸のうち1つ以上を含む群から選択され、前記pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項11】
前記塩基性化剤は強塩基のうち1つ以上であり、前記pH中和剤は、弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び弱酸のうち1つ以上を含む群から選択され、前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記強塩基は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、又は≧1%の濃度、0.5~10%、好ましくは0.75~10%、又は1~10%の濃度で投与され、前記pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項12】
前記塩基性化剤は弱塩基のうち1つ以上であり、前記pH中和剤は、他の弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び弱酸のうち1つ以上を含む群から選択され、前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記弱塩基は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、又は≧5%の濃度、2.5~35%、好ましくは3.0~35%、又は5~35%の濃度で投与され、前記pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項13】
前記酸性化剤は強酸のうち1つ以上であり、前記pH中和剤は、弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び弱酸のうち1つ以上を含む群から選択され、前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記強酸は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、又は≧1%の濃度、0.5~10%、好ましくは0.75~10%、又は1~10%の濃度で投与され、前記pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される、請求項1乃至10のいずれかに一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項14】
前記酸性化剤は弱酸のうち1つ以上であり、前記pH中和剤は、弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び他の弱酸のうち1つ以上を含む群から選択され、前記医薬組成物は、前記酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され、前記弱酸は、≧2.5%、好ましくは2.5~20%、好ましくは3.0~20%、又は5~20%、≧0.75%の濃度で投与され、前記pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される、請求項1乃至10のいずれかに一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項15】
前記強塩基はアルカリ金属水酸化物を含み、前記アルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムを含む、請求項1乃至14のいずれかに一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項16】
前記弱塩基は、多塩基弱酸のアルカリ無機塩、多塩基弱酸の酸無機塩、及び窒素含有弱塩基を含む、請求項1乃至14のいずれかに一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項17】
前記多塩基弱酸のアルカリ無機塩は、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及びホウ砂を含む、請求項16に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項18】
前記多塩基弱酸の酸無機塩は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、及び硫酸水素ナトリウムを含む、請求項16に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項19】
前記窒素含有弱塩基は、アンモニア、塩化アンモニア、2-アミノエタノール、トロメタモール、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、2-アミノエタノール、トロメタモール、トリエタノールアミン、メグルミン、N-エチルグルカミンを含む群から選択される、請求項16に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項20】
前記弱酸は、無機弱酸及び/又は有機弱酸のうち1つ以上から選択され、前記無機弱酸は、リン酸、炭酸、ホウ酸、亜硫酸を含み、前記有機弱酸は、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、マロン酸、酪酸、コハク酸、乳酸(2-ヒドロキシプロピオン酸)、クエン酸(2-ヒドロキシ-1,2,3プロパン-トリカルボン酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、シュウ酸、グルコン酸等の1~3のヒドロキシル基で置換されたC1~10脂肪族カルボン酸を含む、請求項1乃至14のいずれかに一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項21】
前記強酸は、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、セレン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸を含む、請求項1乃至14のいずれかに一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項22】
前記局所相乗剤は、細胞傷害性薬物及び/又は従来の無効薬物のうち1つ以上から選択され、前記医薬組成物において、
前記細胞傷害性薬物の濃度は、その溶解度の50~100%であり、及び/又は
前記従来の無効薬物の濃度は、0.35~40%、好ましくは1~40%である、
請求項3乃至21のいずれかに一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項23】
前記細胞傷害性薬物は、DNAの構造及び機能にダメージを与える薬物、DNAに挿入されてRNAの転写に干渉する薬物、DNA合成に干渉する薬物、及びタンパク質合成に影響を与える薬物のうち1つ以上を含む群から選択され、好ましくは、アルキル化剤、例えばシクロホスファミド及びカルムスチン等、金属白金錯体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン等、DNAトポイソメラーゼ阻害薬、例えばドキソルビシン、トポテカン、及びイリノテカン等、抗腫瘍抗生物質、例えばアクチノマイシン、ダウノルビシン等、ピリミジン拮抗薬、例えばウラシル誘導体5-フルオロウラシル、フトラフール、テガジフール、シトシン誘導体シタラビン、シクロシチジン、5-アザシチジン等、タキサン、例えばパクリタキセル、ドセタキセル等のうち1つ以上を含む群から選択される、請求項22に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項24】
前記従来の無効薬物は、アミノ酸ベースの栄養素、炭水化物栄養素、脂質栄養素、色素及び芳香族化合物、サリチル酸化合物、キニーネ化合物、血液増量剤、プロバイオティクス成分のうち1つ以上を含む群から選択された1つ以上である、請求項22に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項25】
前記アミノ酸ベースの栄養素は、塩基性アミノ酸ベースの栄養素及び/又は非塩基性アミノ酸ベースの栄養素のうち1つ以上から選択され、前記塩基性アミノ酸ベースの栄養素は、例えば、アルギニン、リジン、ヒスチジン、好ましくはアルギニンであり、前記非塩基性アミノ酸ベースの栄養素は、例えば、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、アミノ酸塩のうち1つ以上を含む群であり、前記中性アミノ酸は、例えば、グリシン、トリプトファン、チロシン、セリン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、トレオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリンであり、前記酸性アミノ酸は、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸であり、前記アミノ酸塩は、例えば、リジン塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩、システイン塩酸塩、アルギニン塩酸塩、グリシン硫酸塩、硫酸鉄グリシン、リジン塩酸塩、アスパラギン酸塩酸塩等、酸と上記のアミノ酸とによって形成される塩を含み、前記アミノ酸ベースの栄養素は、≧5%、好ましくは10~30%の濃度(w/v)で投与される、請求項24に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項26】
前記炭水化物栄養素は、グルコース、フルクトース、オリゴキトサン、グルコサミン、ラクツロース、ソルビトール、リボース、ソルボース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、キシロオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、マンノースオリゴ糖、キシリトールのうち1つ以上から選択され、より好ましくは、グルコース、グルコン酸ナトリウム、オリゴキトサン、グルコサミン、ラクツロース、リボース、オリゴマンノース、キシリトールのうち1つ以上から選択され、前記炭水化物栄養素は、≧10%、好ましくは10~40%の濃度(w/v)で投与される、請求項24に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項27】
前記脂質栄養素は、植物油、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、長鎖脂肪乳剤、中鎖脂肪乳剤、リン脂質のうち1つ以上から選択され、前記脂質栄養素は、≧4%、好ましくは4~25%の濃度(w/v)で投与される、請求項24に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項28】
前記色素及び芳香族化合物は、メチレンブルー、パテントブルー、イソスルファンブルー、ベンガルレッドのうち1つ以上から選択され、前記色素及び芳香族化合物は、≧0.35%、好ましくは0.5~10%の濃度(w/v)で投与される、請求項24に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項29】
前記血液増量剤は、デキストラン血液増量剤、デンプン誘導体血液増量剤、ゼラチン誘導体血液増量剤、合成血液増量剤のうち1つ以上を含む群から選択され、好ましくはデキストラン10、デキストラン40、デキストラン70のうち1つ以上を含む群から選択されたデキストラン血液増量剤であり、前記血液増量剤は、≦30%、好ましくは2~30%、より好ましくは2~5%、5~15%、又は15~25%の濃度(w/v)で投与される、請求項24に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項30】
前記プロバイオティクス成分は、プロバイオティクス水溶性成分、プロバイオティクス半流動性成分、プロバイオティクス成分非水溶性粒子、不活化プロバイオティクスを含む1つ以上のプロバイオティクス成分又は誘導体から選択され、好ましくはプロバイオティクス水溶性成分及び/又はプロバイオティクス半流動性成分のうち1つ以上から選択され、前記プロバイオティクス成分又は誘導体は、≧0.25%、好ましくは0.25~25%、より好ましくは0.5~5%、5~10%、又は15~25%の濃度(w/v)で投与される、請求項24に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項31】
前記局所病変は、腫瘍、非腫瘍性肥大、局所炎症、異常な分泌腺機能、及び皮膚疾患を含む、請求項1乃至30のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項32】
前記腫瘍は、悪性腫瘍及び非悪性腫瘍を含む、請求項31に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項33】
前記悪性腫瘍は、乳がん、膵臓がん、甲状腺がん、上咽頭がん、前立腺がん、肝臓がん、肺がん、腸がん、口腔がん、食道がん、胃がん、喉頭がん、精巣がん、膣がん、子宮がん、及び卵巣がんを含む、請求項32に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項34】
前記非悪性腫瘍は、乳腺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、前立腺腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、腸腫瘍、口腔腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、上咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、精巣腫瘍、膣腫瘍、子宮腫瘍、卵管腫瘍、及び卵巣腫瘍を含む、請求項32に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項35】
前記非腫瘍性肥大は、過形成(乳房、膵臓、甲状腺、副甲状腺、前立腺の過形成等)、嚢胞(乳房、甲状腺、副甲状腺の嚢胞等)、小結節(乳房、甲状腺、副甲状腺における小結節等)、異常な静脈腫瘤(痔核等)、局所の炎症及び腫脹、微生物の感染及び腫脹を含む、請求項31に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項36】
前記局所炎症は、局所部位における非腫瘍性炎症を指し、変質性炎症、滲出性炎症、及び増殖性炎症を含む、請求項31に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項37】
前記局所炎症は、関節炎、乳腺炎、膵臓炎、甲状腺炎、前立腺炎、肝炎、肺炎、腸炎、口腔の炎症、咽頭炎、歯周炎、食道炎、胃炎、胃潰瘍、鼻炎、副鼻腔炎、喉頭炎、気管炎、気管支炎、膣炎、子宮炎、卵管炎、及び卵巣炎のうち1つ以上を含む、請求項36に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項38】
前記異常な分泌腺機能は、分泌腺の機能亢進(甲状腺機能亢進症)、及び分泌腺の機能低下(甲状腺機能低下症、低インスリン症等)を含む、請求項31に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項39】
前記皮膚疾患は、皮膚又は皮膚付属器官に原発性又は続発性の病変を指し、皮膚がん、非悪性皮膚腫瘍、ウイルス性皮膚疾患(ヘルペス、イボ、風疹、手足口病等)、細菌性皮膚疾患(膿痂疹、おでき、ハンセン病等)、真菌性皮膚疾患(様々な白癬等)、性行為感染症(梅毒、淋病、及び尖圭コンジローマ等)、アレルギー性及び自己免疫性皮膚疾患(接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹等)、物理的皮膚疾患(日光皮膚疾患、凍傷、魚の目、手足の皮膚のひび割れ、褥瘡等)、結合組織疾患(エリテマトーデス等)、色素性皮膚疾患(そばかす、色素性ほくろ、様々な斑点等)、皮膚付属物疾患(ざ瘡、酒さ、脂漏性皮膚炎、円形脱毛症、脱毛症、多汗症、及び臭汗症等)のうち1つ以上を含む、請求項31に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項40】
請求項2乃至39のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む、局所病変疾患を治療するための装置。
【請求項41】
前記弱有機酸のアルカリ金属塩は、フタル酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、2-ヒドロキシプロパン-1、2,3-トリカルボン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【請求項42】
前記強酸及び強塩基と配合された塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムを含む、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の使用、医薬組成物、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示は、局所病変疾患の治療のための局所医薬品の製造における局所有効成分としての酸-塩基中和合剤の使用、及びその合剤を含む局所医薬組成物、並びに局所病変疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの研究活動によって支持されているように、固形腫瘍は、局所病変疾患、特に難治性の局所病変疾患に対する研究モデルとして使用されることが多い。固形腫瘍は、腫瘍体(tumor body)症状を伴う腫瘍疾患である。腫瘍体は、腫瘍細胞を有する特徴的な病理組織である。膵臓がんの腫瘍体を例として挙げると、膵臓がん細胞は体積の約30%しか占めない。腫瘍細胞に加えて、腫瘍体組織には、様々な他の細胞、様々な細胞間物質、及び様々な管を含む多数の他の構成要素(腫瘍細胞の微小環境と呼ばれることもある)が存在することが多いということが分かる。
【0003】
局所投与には、薬物の物理的標的という利点がある。従って、細胞傷害性薬物の局所性投与は、薬物の腫瘍内濃度を上昇させ、その結果、有効性を向上させることができるとかつては考えられていた。しかし、細胞傷害性薬物の局所性投与は、有効性における著しい改善を示していない。単に腫瘍内濃度を上昇させるだけでは、腫瘍内組織のがん細胞を標的にすることにおける薬効を著しく改善することはできないように思われる。遅延放出型に頼ることに加えて、細胞傷害性薬物は、依然として臨床現場ではほぼ全身投与されている。ケミカルアブレーション剤(高純度のエタノール、高濃度の酸、塩基)は、細胞破壊ではなく組織破壊を特徴とする。細胞傷害性薬物と比較して、ケミカルアブレーション剤は、がん細胞を標的とする全身的な治療効果はほとんどないが、局所的な治療効果を示すことが多くある。酸-塩基のケミカルアブレーション剤の場合、その極端な酸性/アルカリ性がその作用の根拠であると考えられている。しかし、ケミカルアブレーション剤は、通常、標的組織を他の組織から十分に認識することができない強力な破壊剤である。これによって、局所的な刺激が強くなる。その低い効率及び強い刺激作用が、実用の適用を制限している。従って、ケミカルアブレーション剤は、ここ10年間で悪性固形腫瘍の臨床治療から徐々にフェードアウトしている。実際、臨床現場において、高い局所安全性と高い局所有効性を併せ持つ局所性薬物はほとんど存在しない。
【0004】
従って、従来技術では満たすことができない様々な臨床ニーズを満たすために、固形腫瘍等の局所病変疾患を治療するための新薬、特に局所性薬物の開発が依然として必要とされている。実際、他の局所病変疾患、特に難治性の局所病変疾患の予防及び治療も至急必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Burgi Y. Pharmacology; Drug actions and reactions.Cancerres.1978, 38(2), 284-285
【非特許文献2】Zhengjun JIN, Equal probability and curve and ”Q50”, Journal of the Second Shanghai Medical College; 1981, 1, 75-86
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、局所病変疾患、特に難治性の局所病変疾患を予防及び治療するための局所医薬品を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、従来技術のケミカルアブレーション剤(酸性化剤又は塩基性化剤)又はそれらを含む医薬組成物よりも特異性、有効性、及び安全性において優れた局所薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物の製造における局所有効成分としての酸-塩基中和合剤の使用が提供され、酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され;塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され;pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、酸性化剤、塩基性化剤、及びpH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される。
【0008】
本発明の別の態様によると、局所有効成分として酸-塩基中和合剤を含む、局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物が提供され、酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され;塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され;pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、酸性化剤、塩基性化剤、及びpH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される。
【0009】
本発明のさらなる態様によると、局所有効成分として酸-塩基中和合剤及び中和合剤の局所相乗剤を含む、局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物が提供され、酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され;塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され;pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、酸性化剤、塩基性化剤、及びpH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される。
【0010】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、水性キャリア又はアルコール性キャリア等の薬学的に許容されるキャリア、好ましくは水をさらに含む。一部の実施形態において、本発明の組成物は、注射製剤の剤形として調製することができる。注射製剤は、液体注射製剤、注射用粉末製剤を含む。
【0011】
本発明のさらなる態様によると、局所病変疾患を治療する方法が提供され、当該方法は、それを必要としている個人の局所病変領域に、標的領域の組織壊死を引き起こし得る治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含み、医薬組成物は、局所有効成分として作用することができる酸-塩基中和合剤及び任意的に中和合剤の局所相乗剤を含み、酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され;塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され;pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、酸性化剤、塩基性化剤、及びpH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される。
【0012】
本発明による実施形態は、従来技術の酸-塩基ケミカルアブレーション剤と比較して、特異性、有効性、及び安全性がより高いという利点を有する。
【0013】
本発明による実施形態は、酸-塩基ケミカルアブレーション剤を含む従来技術の医薬組成物と比較して、特異性、有効性、及び安全性がより高いという利点を有する。
【0014】
本発明による実施形態は、局所病変疾患の治療に対して従来技術のものと比較して以下の:従来技術の細胞傷害性薬物と比較して、ほぼ無毒の全身安全性を示し、局所病変疾患に対して有意に高い有効性を示す;分子標的薬と比較して、あまり厳しくない効能のスクリーニング(screening of indications)を示し、さらに、急速に増大する腫瘍、大きな腫瘍、及び乏血性腫瘍に対して大きな可能性を有する;という利点を有する。また、本発明の使用及び組成物は、従来技術の細胞傷害性薬物及び既存の分子標的薬が遭遇する薬剤耐性の問題に悩まされることもない。加えて、当該使用及び組成物は、調製が容易で低コストであり、これは、高い費用を支払う余裕のない一般集団に対して安全且つ効果的な治療を提供するのに特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
従来技術で教示されているように、局所病変におけるpHの上昇は、ケミカルアブレーション剤として塩基性化剤(例えば水酸化ナトリウム等)を使用するための薬理学的基礎である。本発明者等は、塩基性化剤を使用するケミカルアブレーション研究を実行するにあたり、pH中和剤としてpHがはるかに低い炭酸水素ナトリウムを水酸化ナトリウムと混合して、この酸-塩基中和組成物(3%水酸化ナトリウム/7%炭酸水素ナトリウム)を負の対照として使用する。従来技術の開示により推定されるように、水酸化ナトリウム溶液の薬学的有効性は、炭酸水素ナトリウムの添加により中和された後、pHが(例えばpH12から10.0まで)低下すると共に減少する。しかし、予想外に、低いpHの組成物(酸-塩基中和組成物)は、高いpHの水酸化ナトリウムよりも有意に高い腫瘍抑制率を示した(例えば、腫瘍抑制率は、43%から68%に上昇する)。このように、本発明者等は、薬学的に許容される酸-塩基中和組成物を調査し、さらに、酸-塩基中和合剤及びその局所相乗剤を含む医薬合剤、並びにその使用を調査した。
【0016】
従って、本発明の一態様によると、局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物の製造における局所有効成分としての酸-塩基中和合剤の使用が提供され、酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され;塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され;pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、酸性化剤、塩基性化剤、及びpH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される。一実施形態において、局所医薬組成物は、酸-塩基中和合剤の局所相乗剤をさらに含む。
【0017】
一実施形態では、酸-塩基中和合剤によって提供される局所活性は、効果的な組織間浸透作用、好ましくは最大の組織間浸透作用を含む。
【0018】
一実施形態において、局所有効成分は、効果的な組織間浸透作用、好ましくは最大の組織間浸透作用を有する成分を含む。
【0019】
一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製され:酸性化剤及びそのpH中和剤又は塩基性化剤及びそのpH中和剤は、(0.5~35)/(1~35)、好ましくは(1.5~35)/(1~35)の量比(w/w)(W塩基性化剤/W中和剤、又はW酸性化剤/W中和剤)で投与される。
【0020】
一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製され:酸性化剤又は塩基性化剤は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%又は≧2.5%の濃度で投与され、pH中和剤は、医薬組成物の投与pH値が、同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpHよりも中性に近く、且つ2つのpHの差(医薬組成物の投与pH-同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpH)の絶対値が≧0.25、≧0.5、又は≧1.0であるような濃度で投与されるべきである。
【0021】
本発明の別の態様によると、局所有効成分として酸-塩基中和合剤を含む、局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物が提供され、酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され;塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され;pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、酸性化剤、塩基性化剤、及びpH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される。
【0022】
一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように構成され:酸性化剤及びそのpH中和剤又は塩基性化剤及びそのpH中和剤は、(0.5~35)/(1~35)、好ましくは(1.5~35)/(1~35)の量比(w/w)(W塩基性化剤/W中和剤、又はW酸性化剤/W中和剤)で投与される。
【0023】
一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように構成され:酸性化剤又は塩基性化剤は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%又は≧2.5%の濃度で投与され、pH中和剤は、医薬組成物の投与pH値が、同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpHよりも中性に近く、且つ2つのpHの差(医薬組成物の投与pH-同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpH)の絶対値が≧0.25、≧0.5、又は≧1.0であるような濃度で投与されるべきである。
【0024】
本発明のさらなる態様によると、局所有効成分として酸-塩基中和合剤及び中和合剤の局所相乗剤を含む、局所病変疾患の治療のための局所医薬組成物が提供され、酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され;塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され;pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、酸性化剤、塩基性化剤、及びpH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される。
【0025】
一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように構成されており:酸性化剤及びそのpH中和剤又は塩基性化剤及びそのpH中和剤は、(0.5~35)/(1~35)、好ましくは(1.5~35)/(1~35)の量比(w/w)(W塩基性化剤/W中和剤、又はW酸性化剤/W中和剤)で投与される。一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤及び局所相乗効果を提供する局所有効成分としての局所相乗剤の要件を満たすように構成されており:酸-塩基中和合剤対局所相乗剤の投与量比(w/w)(W局所相乗剤/W酸-塩基中和合剤)は、(0.1~45)/(1.5~45)である。
【0026】
一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように構成されており:酸性化剤又は塩基性化剤は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%又は≧2.5%の濃度で投与され、pH中和剤は、医薬組成物の投与pH値が、同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpHよりも中性に近く、且つ2つのpHの差(医薬組成物の投与pH-同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpH)の絶対値が≧0.25、≧0.5、又は≧1.0であるような濃度で投与されるべきである。
【0027】
本発明のさらなる態様によると、局所病変疾患を治療する方法が提供され、当該方法は、それを必要としている個人の局所病変領域に、標的領域の組織壊死を引き起こし得る治療有効量の医薬組成物を投与するステップを含み、医薬組成物は、局所有効成分として作用することができる酸-塩基中和合剤及び任意的に中和合剤の局所相乗剤を含み、酸-塩基中和合剤は、酸性化剤及びそのpH中和剤、又は塩基性化剤及びそのpH中和剤を含み、酸性化剤は、強酸又は弱酸のうち1つ以上から選択され;塩基性化剤は、弱塩基又は強塩基のうち1つ以上から選択され;pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤をpH中和しやすくすることができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択され、酸性化剤、塩基性化剤、及びpH中和剤は、好ましくは、局所病変疾患の治療に対して従来の有効成分としてではなくpH調整剤として使用することができる酸性物質又はアルカリ性物質から選択される。
【0028】
一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように投与され:酸性化剤又は塩基性化剤は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%又は≧2.5%の濃度で投与され、pH中和剤は、医薬組成物の投与pH値が、同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpHよりも中性になりやすく、且つ2つのpHの差(医薬組成物の投与pH-同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一の薬物のpH)の絶対値が≧0.25、≧0.5、又は≧1.0であるような濃度で投与されるべきである。
【0029】
本願の開示のさらなる態様では、本願の開示に従って定められる酸-塩基中和合剤を含む局所医薬組成物を含む、局所病変疾患を治療するための装置が提供される。
【0030】
本発明の範囲において、本明細書において使用される場合「医薬組成物」(又は医薬合剤)という用語は、同じ製剤において均一に分布する2つ以上の薬物の混合物を指す。「局所医薬組成物」という用語は、局所的に投与することができ、所望の濃度又は濃度比で適切に混合することができ、さらに標的領域に入ることができる複数の有効成分の医薬組成物を指し;好ましくは、「局所医薬組成物」は、非局所医薬品に対して一般的に使用される塩化ナトリウム(等張調節物質)等の添加物を含まない。
【0031】
本発明の範囲では、「酸性化剤(又は塩基性化剤)」という用語は、組成物中の最もアルカリ性の物質又は最も酸性の物質を指す。「pH中和剤(又は中和剤)」という用語は、酸性化剤のpHを上昇させる(又は塩基性化剤のpHを低下させる)酸性物質又はアルカリ性物質を指し、従って、組成物のpHが中性になりやすくする(pH約7.0)。「従来の有効成分」という用語は、全身投与されたときに効果的な活性を提供することができる医薬品成分を指す。「pH調整剤」という用語は、全身投与されたときに、医薬活性(例えば、抗病原体活性)ではなく、主にpH調整を提供する医薬品成分を指す。
【0032】
本願において開示される医薬組成物の薬理学的効果は、相乗効果及び任意的に他の薬理学的効果を含む。一実施形態では、酸-塩基中和合剤自体によって又は酸-塩基中和合剤及び同時投与物質を含む組成物によって提供される相乗効果は、以下のうち1つ以上によって特徴づけられる:相乗効果には、安全性相乗効果(例えば、局所刺激を減少させる相乗効果、必要な酸性化剤(又は必要な塩基性化剤)の用量を減少させる相乗効果等)、局所相乗効果(短期相乗効果として示される)、組織間効果的相乗浸透(中期相乗効果として示される)が含まれる。
【0033】
本開示の範囲では、別段の定めがない限り、「標的領域に入る濃度(又は量比)」(又は、標的領域に入る濃度又は量比)という用語は、特定の成分が標的領域に接触し始める濃度(又は量比)を意味し、その濃度(又は量比)は、本発明の局所(標的領域)投与における投与濃度(又は投与量比)と同等であり、従来の(全身)投与における投与濃度(又は投与量比)と同等ではない。
【0034】
本開示の範囲では、本明細書において使用される場合「標的領域」という用語は、隣接領域、境界面、局所病変の内側(好ましくは内部)等の投与の標的部位を指す。「局所活性」という用語は、病原体内(例えば、腫瘍細胞内)ではなく、局所標的領域の組織内で優先的に生じる薬物の薬理学的活性を指し、例えば、単一の薬物の局所効果及び同時投与薬物の局所同時投与効果を含む。「局所効果(又は局所同時投与効果)」という用語は、従来の効果(又は従来の同時投与効果)とは区別され、後者は、従来の投与(例えば、静脈内注射、腔内注射、皮下投与、粘膜投与等)後に血流に吸収されて薬物を運搬する血液を形成し且つ標的領域に入る薬物によって生じる薬理学的効果(又は同時投与効果)を指すのに対し、前者は標的領域に局所投与された後に標的領域で優先的に生じる薬物の薬理学的効果(又は同時投与効果)を指し、局所効果(又は局所同時投与効果)には、標的領域組織を優先的に標的とする化学効果(又は同時投与化学効果)が含まれる。「局所化学効果(又は局所同時投与化学効果)」という用語は、その組織内の病原体ではなく局所組織において優先的に発生する薬物の化学効果(又は同時投与化学効果)を指す。「局所有効成分」という用語は、局所的に単独で又は組み合わせて使用される場合に、効果的な局所活性を含む薬理学的活性を提供することができる医薬品成分を指すために使用される。
【0035】
一実施形態において、局所相乗効果は、好ましくは、その組織における病原体内ではなく局所組織内で優先的に発生する相乗効果である。一実施形態において、局所相乗効果は、局所的な化学的相乗効果と、任意的に他の薬理学的効果とを含む。一実施形態において、医薬組成物は、局所的な相乗効果を持つ組成物である。一実施形態では、pH中和剤及び酸性化剤又は塩基性化剤は、同じ溶液において局所的な相乗効果を持つ。一実施形態では、局所相乗剤及び酸-塩基中和合剤は、同じ溶液において局所的な相乗効果を持つ。
【0036】
本開示の範囲において、「相乗効果」という用語は、有効成分の同時投与が、単独で投与される任意の有効成分の医薬有効性(例えば、本発明の実施例で指定された実際/期待比q>1.0を有する医薬有効性等)よりも高い所望の医薬有効性を示すことを意味する。「局所相乗効果」という用語は、主に局所活性の相乗効果として示されるものを指す。「局所相乗剤」という用語は、同時投与によって、特に本発明のpH中和合剤との同時投与によって局所相乗効果をもたらすことができる医薬品成分を指す。本願の範囲内では、特定の薬物(例えば、pH中和合剤)との局所相乗剤の全身同時投与は、相乗効果をもたらさないか、又は局所相乗効果ではない相乗効果をもたらす。
【0037】
本開示の範囲において、「治療有効量」という用語は、疾患(例えば、腫瘍等)を治療するために使用され、且つ有効な効果(例えば、疾患症状の軽減及び/又は緩和等)を達成する薬物の用量を指す。
【0038】
本開示の医薬組成物は、標的領域組織のより効率的な壊死、好ましくは効果的な壊死を引き起こすための局所相乗効果の必要性を満たすように調製、構成、又は投与される。一実施形態でおいて、局所相乗効果は、より高い治療有効性を提供するために酸性化剤又は塩基性化剤の等量を使用する等、薬力学的相乗作用である。一実施形態において、局所相乗効果は、同じ治療有効性をもたらすために最小の総酸又は総塩基(又はin vivoでの酸-塩基バランスの最小の乱れ)を使用する等、安全性の相乗作用である。一実施形態において、組織壊死は、直接的な組織壊死、及び任意的に間接的な組織壊死を含む。一実施形態において、直接的な組織壊死は、非常に激しいため、組織は化学的に切除される。
【0039】
本開示の範囲では、本明細書において使用される場合「間接的な組織壊死」という用語は、標的領域組織における病原体(例えば、細胞、ウイルス、若しくは細菌等)の増殖の阻害によって又は個人の免疫系への刺激の影響によって引き起こされる組織壊死を指し、前者、例えば細胞傷害性薬物は、がん細胞を阻害することによって、最終的にがん細胞が位置する組織の壊死につながる可能性があり、後者、例えば抗腫瘍ワクチンは、免疫系を刺激してがん細胞を攻撃することによって、最終的にがん細胞が位置する組織の壊死につながる可能性がある。従って、間接的な壊死は、全身投与又は局所投与のいずれかによって達成することができる。本明細書において使用される場合「直接的な組織壊死」という用語は、間接的な組織壊死に依存しない標的領域への組織損傷因子の直接投与から生じる組織壊死を指し、組織損傷因子には、例えば、物理的なアブレーション器具(例えば、加温針等)のアブレーション部、従来のケミカルアブレーション剤等が含まれる。
【0040】
本発明の範囲では、「アブレーション」という用語は、標的組織がその本来の生理学的機能を本質的に失う(不活性化)組織壊死をもたらすほど強いin situ処理による局所効果を指す。組織壊死には、凝固壊死、液化壊死、及びフィブリノイド壊死等が含まれる。腫瘍組織壊死は、腫瘍組織の形態学的変化(体積減少)をもたらすことがあり、これは、最終的には腫瘍抑制率の上昇をもたらす。「ケミカルアブレーション」という用語は、免疫性ではなく主に化学的なアブレーションを指す。「ケミカルアブレーション剤」という用語は、局所投与された場合にのみ切除効果を示す薬物を指す。
【0041】
本発明の範囲では、別段の定めがない限り、「濃度」という用語は、局所医薬組成物の単位体積における特定の成分の重量パーセント濃度(w/v)を指す。「局所投与量比」(又は投与量比)という用語は、薬物が局所投与される場合の2つの特定の成分の重量比を指し、これは、薬物接触標的領域(例えば、注射針の穴又は灌流管の出口等)における特定の成分の重量比であってもよい。「局所投与濃度」(又は投与濃度)という用語は、薬物の局所投与時の特定の成分の濃度を指し、これは、薬物接触標的領域(例えば、注射針の穴又は灌流管の出口等)における特定の成分の濃度であってもよい。「局所投与pH」(又は投与pH)という用語は、局所投与時の薬物のpHを指し、これは、接触標的領域(例えば、注射針の穴又は灌流管の出口等)における薬物のpHであってもよい。
【0042】
一実施形態において、相乗的組成物は、相乗的安全性を有する組成物である。一実施形態において、相乗的組成物は、相乗的医薬有効性を有する組成物である。
【0043】
一実施形態において、医薬組成物は、7.5±4.5、好ましくは10.0±2.0又は4.0±2.0の投与pHを有する。一実施形態において、医薬組成物は、8.5~11.5、9.5~11.5、又は10.0~11.0の投与pHを有する。一実施形態において、医薬組成物は、3.0~5.0又は3.5~4.5の投与pHを有する。
【0044】
一実施形態において:
塩基性化剤は強塩基であり、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:強塩基は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、又は≧1%の濃度(w/v);0.5~10%、好ましくは0.75~10%、又は1~10%の濃度(w/v)で投与される;又は
塩基性化剤は弱塩基であり、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:弱塩基は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、又は≧5%の濃度(w/v);2.5~35%、好ましくは3.0~35%、又は5~35%の濃度(w/v)で投与される;又は
酸性化剤は強酸であり、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:強酸は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、又は≧1%の濃度(w/v);0.5~10%、好ましくは0.75~10%、又は1~10%の濃度(w/v)で投与される;又は
酸性化剤は弱酸であり、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:弱酸は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、又は≧5%の濃度(w/v)、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、又は5~20%の濃度(w/w)で投与される。
【0045】
一実施形態において、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:pH中和剤は:弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸のうち1つ以上を含む群から選択され、pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される。
【0046】
一実施形態において、塩基性化剤は強塩基のうち1つ以上であり、pH中和剤は:弱塩基、強酸及び強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び弱酸のうち1つ以上を含む群から選択され、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:強塩基は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、又は≧1%の濃度;0.5~10%、好ましくは0.75~10%、又は1~10%の濃度で投与され、pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される。
【0047】
一実施形態において、塩基性化剤は弱塩基のうち1つ以上であり、pH中和剤は:他の弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び弱酸を含む群のうち1つ以上から選択され、医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:弱塩基は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、又は≧5%の濃度;2.5~35%、好ましくは3.0~35%、又は5~35%の濃度で投与され、pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される。
【0048】
一実施形態において、酸性化剤は強酸のうち1つ以上であり、pH中和剤は:弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び弱酸のうち1つ以上を含む群から選択され;医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:強酸は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、又は≧1%の濃度;0.5~10%、好ましくは0.75~10%、又は1~10%の濃度で投与され、pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される。
【0049】
一実施形態において、酸性化剤は弱酸のうち1つ以上であり、pH中和剤は:弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、及び他の弱酸を含む群から選択された1つ以上であり;医薬組成物は、酸-塩基中和合剤に局所活性を提供させるように調製、構成、又は投与され:弱酸は、≧2.5%、好ましくは2.5~20%、好ましくは3.0~20%、又は5~20%、≧0.75%の濃度で投与され、pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~35%の濃度で投与される。
【0050】
一実施形態において、医薬組成物中の強塩基の濃度は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、若しくは≧1%であるか、又は0.5~10%、好ましくは0.75~10%、若しくは1~10%である。
【0051】
一実施形態において、医薬組成物中の弱塩基の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~35%、好ましくは3.0~35%、若しくは5~35%である。
【0052】
一実施形態において、医薬組成物中の強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、若しくは≧1%であるか、又は0.5~10%、好ましくは0.75~10%、若しくは1~10%である。
【0053】
一実施形態において、医薬組成物中の弱酸の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、若しくは5~20%である。
【0054】
一実施形態において、塩基性化剤は強塩基から選択され、医薬組成物は10.0±2.0又は10.5±1.0のpHを有する。
【0055】
一実施形態において、塩基性化剤は弱塩基から選択され、医薬組成物は8.0±1.0又は8.5±0.5のpHを有する。
【0056】
一実施形態において、酸性化剤は弱酸から選択され、医薬組成物は4.0±1.0又は4.0±0.5のpHを有する。
【0057】
一実施形態において、酸性化剤は強酸から選択され、医薬組成物は3.0±1.0又は3.0±0.5のpHを有する。
【0058】
一実施形態において、pH中和剤の添加は、医薬組成物のpHを中和しやすくし、医薬組成物の緩衝能を増加させる。
【0059】
一実施形態において、医薬組成物は、>0.01mol・L-1・pH-1、好ましくは0.015~0.45mol・L-1・pH-1の緩衝能を有する。
【0060】
一実施形態において、医薬組成物の緩衝能は、好ましくは≧0.04mol・L-1・pH-1であり、より好ましくは≧0.05mol・L-1・pH-1である。
【0061】
一実施形態において、医薬組成物は、0.04~0.45mol・L-1・pH-1、より好ましくは0.05~0.45mol・L-1・pH-1の緩衝能を有する。
【0062】
本発明の範囲において、「緩衝能」(緩衝指数としても知られる)という用語は、医薬組成物の単位体積(例えば1L等)のpHが1単位変化したときに添加する必要がある一塩基強酸(例えば塩酸等)又は一塩基強塩基(例えば水酸化ナトリウム等)の量(例えばxモル等)を指し、mol・L-1・pH-1で表される。
【0063】
本発明の範囲において、pH中和剤は、酸性化剤又は塩基性化剤以外のものであり、医薬組成物のpHをより中性にし、これは:強塩基、弱塩基、強酸又は強塩基と配合された塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸、及び強酸を含む群から選択された1つ以上のものである。医薬組成物において、pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは2~35%であってもよい。
【0064】
本発明の範囲において、「酸性化剤又は塩基性化剤のpHを中和しやすくする」とは:酸性化剤又は塩基性化剤が強塩基又は弱塩基から選択された場合に、酸性化剤又は塩基性化剤のpHと組成物のpHとの差が≧0.25であり;酸性化剤又は塩基性化剤が強酸又は弱酸から選択された場合に、組成物のpHと酸性化剤又は塩基性化剤のpHとの差が≧0.25である;ことを意味する。また、pH中和剤を添加することによって、pHを変化させた後の組成物の緩衝能を高めることができる。
【0065】
本発明の範囲において、pH中和剤は、好ましくは、水溶性の医薬品添加剤化合物及び/又は水溶性の医薬品補助化合物から選択される。一実施形態において、pH中和剤の濃度は、≧2%又は≧3%、好ましくは3~35%であってもよい。
【0066】
本発明の範囲において、弱塩基は:多塩基弱酸のアルカリ無機塩、多塩基弱酸の酸無機塩、窒素含有弱塩基を含む群から選択された1つ以上である。
【0067】
本発明の範囲において、「多塩基弱酸の酸無機塩」という用語は、水中の水素イオンをイオン化することができる多塩基弱酸無機塩を指す。酸性化剤又は塩基性化剤としての多塩基弱酸の酸無機塩は、好ましくは0.01M水溶液がアルカリ性であり、好ましくはpH≧8.0である多塩基弱酸の酸無機塩(例えば、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)である。「多塩基弱酸のアルカリ無機塩」という用語は、水中の水素イオンをイオン化することができない多塩基弱酸無機塩を指し、多塩基弱酸-強塩基無機塩の陽性の塩(a positive salt)を含む。「窒素含有弱塩基」という用語は、窒素元素を含有する弱塩基性化合物を指し、弱塩基性化合物は、好ましくは、水溶性(w/w)が≧2%の弱塩基性化合物から選択される。
【0068】
一実施形態において、組成物は、例えば、以下の表1において列挙された組成物を含む。
【0069】
【表1-1】
【0070】
【表1-2】
【0071】
【表1-3】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強塩基から選択され、pH中和剤は:多塩基弱酸のアルカリ無機塩、窒素含有弱塩基、強酸及び/又は強塩基と配合された塩、多塩基弱酸の酸無機塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸、強酸を含む群のうち1つ以上から選択され、強塩基の濃度は≧0.5%、好ましくは0.75~10%であり;pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは2~35%である。
【0072】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は多塩基弱酸のアルカリ無機塩のうち1つ以上から選択され、強塩基の濃度は、≧0.75%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~7%であり;多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2%、好ましくは2~20%である。
【0073】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、強塩基の濃度は、≧0.75%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~7%であり;窒素含有弱塩基の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%である。
【0074】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上から選択され、強塩基の濃度は、≧0.75%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~7%であり;多塩基弱酸の酸無機塩の濃度は、≧2%、好ましくは2~20%である。
【0075】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上から選択され、強塩基の濃度は、≧0.75%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~7%であり;弱有機酸のアルカリ金属塩の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%である。
【0076】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は強酸及び/又は強塩基と配合された塩のうち1つ以上から選択され、強塩基の濃度は、≧0.75%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~5%であり;強酸及び/又は強塩基と配合された塩の濃度は、≧1%、好ましくは1.5~10%である。
【0077】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は:多塩基弱酸のアルカリ無機塩、窒素含有弱塩基、多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上を含む群のうち1つ以上から選択され、強塩基の濃度は、≧0.75%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~7%であり;pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは2~35%である。
【0078】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は弱塩基から選択され、pH中和剤は:他の弱塩基、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸、強酸のうち1つ以上を含む群のうち1つ以上から選択され、弱塩基の濃度は、≧3.0%若しくは≧5%であるか、又は2.5~35%、好ましくは3.0~35%、若しくは5~35%であり、pH中和剤の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%であり、弱塩基は、多塩基弱酸のアルカリ無機塩、多塩基弱酸の酸無機塩、又は窒素含有弱塩基から選択される。
【0079】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸のアルカリ無機塩から選択され、多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は≧2.5%、好ましくは2.5~15%である。
【0080】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は窒素含有弱塩基から選択され、窒素含有弱塩基の濃度は、≧2.5%、好ましくは2.5~35%である。
【0081】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸の酸無機塩から選択され、多塩基弱酸の酸無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは2.5~15%である。
【0082】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸のアルカリ無機塩のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は:窒素含有弱塩基、多塩基弱酸の酸無機塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸、強酸のうち1つ以上を含む群のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、若しくは5~20%であり、pH中和剤の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%である。
【0083】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸のアルカリ無機塩のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%であるか、又は2.5~10%、好ましくは3.0~10%であり;多塩基弱酸の酸無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは2.5~10%である。
【0084】
1つの実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸のアルカリ無機塩のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%であるか、又は2.5~10%、好ましくは3.0~10%であり;窒素含有弱塩基の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%である。
【0085】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸のアルカリ無機塩のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%であるか、又は2.5~10%、好ましくは3.0~10%であり;弱有機酸のアルカリ金属塩の濃度は、≧5%、好ましくは5~35%である。
【0086】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は、多塩基弱酸のアルカリ無機塩のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は、弱酸及び/又は強酸のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%であるか、又は2.5~10%、好ましくは3.0~10%であり;弱酸及び/又は強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは1~15%である。
【0087】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上であり、pH中和剤は:窒素含有弱塩基、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸、強酸のうち1つ以上を含む群のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸の酸無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、若しくは5~20%であり、pH中和剤の濃度は、2%、好ましくは2~35%である。
【0088】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は、窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、又は2.5~10%、好ましくは3.0~10%であり;窒素含有弱塩基の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%である。
【0089】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%であるか、又は2.5~10%、好ましくは3.0~10%であり;弱有機酸のアルカリ金属塩の濃度は≧5%、好ましくは5~35%である。
【0090】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は多塩基弱酸のアルカリ無機塩のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は弱酸及び/又は強酸のうち1つ以上から選択され、多塩基弱酸の酸無機塩の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%であるか、又は2.5~10%、好ましくは3.0~10%であり;弱酸及び/又は強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは1~15%である。
【0091】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は窒素含有弱塩基から選択され、pH中和剤は:多塩基弱酸のアルカリ無機塩、多塩基弱酸の酸無機塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸、強酸のうち1つ以上を含む群のうち1つ以上から選択され、窒素含有弱塩基の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~35%、好ましくは3.0~35%、若しくは5~35%であり、pH中和剤の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%である。
【0092】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上から選択され、窒素含有弱塩基の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~35%、好ましくは3.0~35%、若しくは5~35%であり;多塩基弱酸の酸無機塩の濃度は、≧2%、好ましくは2~10%である。
【0093】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は多塩基弱酸のアルカリ無機塩のうち1つ以上から選択され、窒素含有弱塩基の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~35%、好ましくは3.0~35%、若しくは5~35%であり;多塩基弱酸のアルカリ無機塩の濃度は、≧2%、好ましくは2~10%である。
【0094】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は、弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上から選択され、窒素含有弱塩基の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~35%、好ましくは3.0~35%、若しくは5~35%であり;弱有機酸のアルカリ金属塩の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%である。
【0095】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は弱酸及び/又は強酸のうち1つ以上から選択され、窒素含有弱塩基の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~35%、好ましくは3.0~35%、若しくは5~35%であり;弱酸及び/又は強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは1~15%である。
【0096】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は酸から選択され、酸は弱酸又は強酸のうち1つ以上から選択され、強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、若しくは≧1%であるか、又は0.5~10%、好ましくは0.75~10%、若しくは1~10%であり;或いは、弱酸の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、若しくは5~20%である。
【0097】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は弱酸から選択され、pH中和剤は:強塩基、多塩基弱酸のアルカリ無機塩、窒素含有弱塩基、多塩基弱酸の酸無機塩、弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上を含む群のうち1つ以上から選択され、弱酸の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、若しくは5~20%であり;pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは2~35%である。
【0098】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は弱酸のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は、多塩基弱酸のアルカリ無機塩及び/又は多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上から選択され、弱酸の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、若しくは5~20%であり;pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは2~25%である。
【0099】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は弱酸のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は、窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、弱酸の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、若しくは5~20%であり、窒素含有弱塩基の濃度は、≧1%、好ましくは2~35%である。
【0100】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は弱酸のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上から選択され、弱酸の濃度は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは3.0~20%、若しくは5~20%であり;弱有機酸のアルカリ金属塩の濃度は、≧2%、好ましくは2~35%である。
【0101】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強酸から選択され、pH中和剤は:多塩基弱酸のアルカリ無機塩、窒素含有弱塩基、多塩基弱酸の酸無機塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸のうち1つ以上を含む群のうち1つ以上から選択され、強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、若しくは≧1%であるか、又は0.5~10%、好ましくは0.75~10%、若しくは1~10%であり;pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは2~35%である。
【0102】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強酸のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は、多塩基弱酸のアルカリ無機塩及び/又は多塩基弱酸の酸無機塩のうち1つ以上から選択され、強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、若しくは≧1%であるか、又は0.5~10%、好ましくは0.75~10%、若しくは1~10%であり;pH中和剤は、≧1%、好ましくは2~25%の濃度である。
【0103】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強酸のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は窒素含有弱塩基のうち1つ以上から選択され、強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、若しくは≧1%であるか、又は0.5~10%、好ましくは0.75~10%、若しくは1~10%であり;窒素含有弱塩基の濃度は、≧1%、好ましくは2~35%である。
【0104】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強酸のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上から選択され、強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、若しくは≧1%であるか、又は0.5~10%、好ましくは0.75~10%、若しくは1~10%であり;弱有機酸のアルカリ金属塩の濃度は、≧1%、好ましくは2~35%である。
【0105】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は強酸のうち1つ以上から選択され、pH中和剤は他の弱酸のうち1つ以上から選択され、強酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは≧0.75%、若しくは≧1%であるか、又は0.5~10%、好ましくは0.75~10%、若しくは1~10%であり;他の弱酸の濃度は、≧1%、好ましくは2~25%である。
【0106】
一実施形態において、酸-塩基中和合剤組成物の総濃度は、≧1.5%、好ましくは2.25~40%である。
【0107】
一実施形態において、酸-塩基中和合剤組成物の総濃度は、酸-塩基中和合剤組成物の局所投与濃度でもある。
【0108】
一実施形態において、強塩基はアルカリ金属水酸化物を含み、アルカリ金属水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムを含む。
【0109】
一実施形態において、強塩基は、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムであり、好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0110】
一実施形態において、多塩基弱酸のアルカリ無機塩は、例えば、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ砂を含み、好ましくは炭酸ナトリウム及び/又はリン酸ナトリウムを含む。
【0111】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は水酸化ナトリウムであり、pH中和剤は炭酸ナトリウムであり、水酸化ナトリウムの濃度は、≧0.5%、好ましくは0.75~5%であり;炭酸ナトリウムの濃度は、≧2%、好ましくは2~10%である。
【0112】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は水酸化ナトリウムであり、pH中和剤はリン酸ナトリウムであり、水酸化ナトリウムの濃度は、≧0.5%、好ましくは0.75~5%であり;リン酸ナトリウムの濃度は、≧2%、好ましくは2~10%である。
【0113】
一実施形態において、多塩基弱酸の酸無機塩は、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、硫酸水素ナトリウムを含む。
【0114】
一実施形態において、多塩基弱酸の酸無機塩は、炭酸水素ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムである。
【0115】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は水酸化ナトリウムであり、pH中和剤は炭酸水素ナトリウムであり、水酸化ナトリウムの濃度は、≧0.5%、好ましくは0.75~5%であり;炭酸水素ナトリウムの濃度は、≧2%、好ましくは2~10%である。
【0116】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は水酸化ナトリウムであり、pH中和剤はリン酸二水素ナトリウムであり、水酸化ナトリウムの濃度は、≧0.5%、好ましくは0.75~5%であり;リン酸二水素ナトリウムの濃度は、≧2%、好ましくは2~10%である。
【0117】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は炭酸ナトリウムであり、pH中和剤は炭酸水素ナトリウムであり、炭酸ナトリウムの濃度は、≧1.5%、好ましくは3~10%であり;炭酸水素ナトリウムの濃度は、≧2.5%、好ましくは4~15%である。
【0118】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤はリン酸水素二ナトリウムであり、pH中和剤はリン酸二水素ナトリウムであり、リン酸水素二ナトリウムの濃度は、≧1.5%、好ましくは2~7%であり;リン酸二水素ナトリウムの濃度は、≧2%、好ましくは3~10%である。
【0119】
一実施形態において、窒素含有弱塩基は、例えば、水性のアンモニア、塩化アンモニア、2-アミノエタノール、トロメタモール、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、2-アミノエタノール、トロメタモール、トリエタノールアミン、メグルミン、N-エチルグルカミンを含む。
【0120】
一実施形態において、弱有機酸のアルカリ金属塩は、例えば、フタル酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、2-ヒドロキシプロパン-1、2,3-トリカルボン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムを含む。
【0121】
一実施形態において、弱有機酸のアルカリ金属塩は:酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、2-ヒドロキシプロパン-1、2,3-トリカルボン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウムから選択された1つ以上である。
【0122】
一実施形態において、強酸又は強塩基と配合された塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムを含む。
【0123】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は水酸化ナトリウムであり、pH中和剤は塩化カリウムであり、水酸化ナトリウムの濃度は、≧0.5%、好ましくは0.75~5%であり;塩化カリウムの濃度は、≧1%、好ましくは1.5~10%である。
【0124】
一実施形態において、弱酸は、無機弱酸及び/又は有機弱酸のうち1つ以上から選択され、無機弱酸は、例えば、リン酸、炭酸、ホウ酸、亜硫酸を含み;有機弱酸は、例えば、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、マロン酸、酪酸、コハク酸、乳酸(2-ヒドロキシプロピオン酸)、クエン酸(2-ヒドロキシ-1,2,3プロパン-トリカルボン酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシコハク酸)、酒石酸、シュウ酸、グルコン酸等の1~3のヒドロキシル基で置換されたC1~10脂肪族カルボン酸を含む。
【0125】
一実施形態において、弱酸は、好ましくは:炭酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、マロン酸、酪酸、コハク酸、乳酸(2-ヒドロキシプロピオン酸)、クエン酸(2-ヒドロキシ-1,2,3プロパン-トリカルボン酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシコハク酸)、酒石酸、シュウ酸、グルコン酸のうち1つ以上から選択され;好ましくは酢酸である。
【0126】
一実施形態において、弱酸は酢酸を含み、酢酸の濃度は、≧3.5%、好ましくは5~15%である。
【0127】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は酢酸であり、pH中和剤は炭酸水素ナトリウムであり、酢酸の濃度は、≧5%、好ましくは5~15%であり;炭酸水素ナトリウムの濃度は、≧2%、好ましくは2~10%である。
【0128】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は酢酸であり、pH中和剤は酢酸ナトリウムであり、酢酸の濃度は、≧3.5%、好ましくは5~15%であり;酢酸ナトリウムの濃度は、≧5%、好ましくは5~25%である。
【0129】
一実施形態において、弱酸は、酢酸及びグルコン酸を含み、好ましくはグルコン酸を含む。
【0130】
一実施形態において、強酸は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、セレン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸を含む。
【0131】
一実施形態において、強酸は:塩酸、硫酸、硝酸のうち1つ以上から選択され、好ましくは塩酸である。
【0132】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は塩酸であり、pH中和剤は酢酸であり、酢酸の濃度は、≧3.5%、好ましくは5~15%であり;塩酸の濃度は、≧0.5%、好ましくは1~5%である。
【0133】
本発明の範囲において、局所相乗剤は、細胞傷害性薬物及び/又は従来の無効薬物のうち1つ以上から選択される。
【0134】
本発明の範囲において、「局所相乗剤」という用語は、上記の中和合剤と混合することによって投与されたときに、投与位置において短期相乗効果及び/又は中期相乗効果をもたらす薬物を指す。
【0135】
一実施形態では、酸性化剤又は塩基性化剤、pH中和剤、及びそれらの局所相乗剤(アミノ酸ベースの栄養素を単に例にとる)を含む医薬組成物は、例えば、以下の表2において列挙された組成物を含む。
【0136】
【表2】
本開示では、「細胞傷害性薬物」という用語は、本明細書において使用される場合、安全な用量での吸収により局所病変疾患(例えば固形腫瘍等)を効果的に治療するためにその細胞傷害性を使用することができる薬物を指し、当技術分野において知られている細胞傷害性薬物、好ましくは、特に中国、米国、若しくは欧州の公式の管轄行政部局(例えば、FDA若しくは中国の国家食品薬品監督管理局)によって承認されたか又は承認される予定の抗腫瘍化学療法剤、又は中国、米国、若しくは欧州の公式の薬局方に含まれているか又は含まれる予定の抗腫瘍化学療法剤等の細胞傷害性薬物から選択される。本明細書において使用される場合「吸収」という用語は、薬物が血液によって吸収されて、薬物を運ぶ血液が標的領域に形成されるという薬理学的作用を指し;「吸収される薬物」という用語は、主に吸収を介して薬物効果をもたらす治療薬を指す。
【0137】
本開示では、「従来の無効薬物」という用語は、本明細書において使用される場合、従来の効果的な薬物(抗腫瘍剤等)とは異なり、細胞実験では特定の細胞に対して効果(抗腫瘍細胞効果等)を示す可能性があるが、動物実験では吸収作用を介して従来の効果的な化合物よりも効果的な阻害を示さないため、非抗局所病変疾患薬、栄養剤、診断用薬剤、及び医薬品添加物等、特定の局所病変疾患の治療に効果的な薬物として医薬品規制当局(FDA等)によって承認されていない薬剤を指す。
【0138】
一実施形態において、細胞傷害性薬物の濃度は、医薬組成物におけるその溶解度の≧50%、好ましくは50~100%である。
【0139】
一実施形態において、従来の無効薬物は、≧0.35%、好ましくは0.35%~25%である。
【0140】
一実施形態において、細胞傷害性薬物は:DNAの構造及び機能にダメージを与える薬物、DNAに挿入されてRNAの転写に干渉する薬物、DNA合成に干渉する薬物、及びタンパク質合成に影響を与える薬物を含む群から選択された1つ以上であり;好ましくは:アルキル化剤、例えばシクロホスファミド及びカルムスチン等;金属白金錯体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン等;DNAトポイソメラーゼ阻害薬、例えばドキソルビシン、トポテカン、及びイリノテカン等;抗腫瘍抗生物質、例えばアクチノマイシン、ダウノルビシン等;ピリミジン拮抗薬、例えばウラシル誘導体5-フルオロウラシル、フトラフール、テガジフール、シトシン誘導体シタラビン、シクロシチジン、5-アザシチジン等;タキサン、例えばパクリタキセル、ドセタキセル等;を含む群から選択された1つ以上である。
【0141】
一実施形態において、細胞傷害性薬物はアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、カルムスチン等)から選択され、局所医薬組成物中の抗腫瘍化学療法剤としてのアルキル化剤の濃度(w/v)は、0.5~6%、好ましくは0.75~1.5%である。
【0142】
一実施形態において、細胞傷害性薬物は金属白金錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン等)から選択され、局所医薬組成物中の金属白金錯体の濃度(w/v)は、0.03~0.15%、好ましくは0.05~0.15%である。
【0143】
一実施形態において、細胞傷害性薬物はDNAトポイソメラーゼ阻害薬(例えば、ドキソルビシン、トポテカン、イリノテカン等)から選択され、局所医薬組成物中のDNAトポイソメラーゼ阻害薬の濃度(w/v)は、0.05~0.20%、好ましくは0.075~0.15%である。
【0144】
一実施形態において、細胞傷害性薬物は抗腫瘍抗生物質(例えば、アクチノマイシン、ダウノルビシン等)から選択され、局所医薬組成物中の抗腫瘍抗生物質の濃度(w/v)は、1~4%、好ましくは1~2%である。
【0145】
一実施形態において、細胞傷害性薬物はピリミジン拮抗薬(例えば、ウラシル誘導体5-フルオロウラシル、フトラフール、テガジフール、シトシン誘導体シタラビン、シクロシチジン、5-アザシチジン等)から選択され、局所医薬組成物中のピリミジン拮抗薬の濃度(w/v)は、0.5~2%、好ましくは0.75~1.5%である。
【0146】
一実施形態において、細胞傷害性薬物はタキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル等)から選択され、局所医薬組成物中のタキサンの濃度(w/v)は、0.5~2%、好ましくは0.75~1.5%である。
【0147】
一実施形態において、従来の無効薬物は:アミノ酸ベースの栄養素、炭水化物栄養素、脂質栄養素、色素及び芳香族化合物、サリチル酸化合物、キニーネ化合物、血液増量剤、プロバイオティクス成分のうち1つ以上を含む群のうち1つ以上から選択される。好ましくは、血液増量剤は、ポリマー血液増量剤を含む。
【0148】
本発明の範囲において、「アミノ酸ベースの栄養素」という用語は、栄養学的効果及びヘルスケア効果を有するアミノ酸及びその低分子(分子量<3000)誘導体を指す。
【0149】
本発明の範囲において、「炭水化物栄養素」という用語は、本明細書において使用される場合、栄養学的効果及びヘルスケア効果を有する炭水化物化合物を指し、好ましくは、栄養学的効果及びヘルス効果を有する単糖、糖ポリマー、及び糖誘導体から選択され、より好ましくは、中国、米国、又は欧州の公式の薬局方又はガイドラインに含まれる栄養学的効果及びヘルスケア効果を有する炭水化物栄養剤及び炭水化物添加剤から選択され、例えば:グルコース、リボース、デオキシリボース、キシロース、フルクトース、ガラクトース、フコースを含む群からの単糖類又はその誘導体を含む。
【0150】
本発明の範囲において、「脂質栄養素」という用語は、栄養学的効果及びヘルスケア効果を有する脂質化合物、好ましくは、中国、米国、又は欧州の公式の薬局方又はガイドラインに含まれる栄養学的効果及びヘルスケア効果を有する脂質化合物を指すために使用され、より好ましくは、脂肪、脂肪酸、脂肪乳剤及び脂肪様のもの(adipoid)から選択された1つ以上である。
【0151】
本発明の範囲において、「色素及び芳香族化合物」という用語は、標的領域に特定の波長の光を選択的に吸収又は反射させる薬学的に許容される芳香族化合物を指し、例えば、生体染色色素、光増感剤、及び着色化学療法薬を含んでもよい。生体染色色素は、例えば、以下の:メチレンブルー(その水和物を含む)、パテントブルー、イソスルファンブルー、トルイジンブルー、トリパンブルー、ベーシックブルー、エオシン、ベーシックフクシン、クリスタルバイオレット、ゲンチアナバイオレット、ニュートラルレッド、ヤヌスグリーンB、サフラニン、ベンガルレッド等の有機色素及びそれらの誘導体のうち1つ以上を含んでもよく、光増感剤は、例えば、以下の:混合ポルフィリン光増感剤、ポルフィリン(例えば、ポルフィリン、ポルフィン、プルプリン、内因性ポルフィリン等)及びそれらの誘導体、フタロシアニン化合物、バクテリオクロリン化合物、縮合環状キノン化合物、ベンゾポルフィリン誘導体、5-アミノレブリン酸、ジヒドロポルフィン化合物等のうち1つ以上を含んでもよく、着色化学療法薬は、例えば、以下の:ニトロフェノール化合物、フラボノイド(例えば、アントシアニン、ゲニステイン等)、イソヘキセニルナフトキノン化合物等(例えばシコニン等)のうち1つ以上を含んでもよい。メチレンブルーを例にとると、その誘導体は、通常、1,9-ジメチルメチレンブルー、1-メチルメチレンブルー等の色素でもある。メチレンブルー等の一部の色素及び芳香族化合物は、両方の生体染色色素、光増感剤、及び着色化学療法薬である。
【0152】
本開示の範囲において、「サリチル酸化合物」という用語は、本明細書において使用される場合、サリチル酸及びその誘導体を指す。サリチル酸の化学名は2-ヒドロキシ安息香酸である。サリチル酸誘導体は、当業者に知られている任意の適したものであってもよく、例えば、金属化合物を含有する又は含有しないサリチル酸誘導体を含み得る。前者には、例えば、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸亜鉛、及び金属元素錯体等(銅アスピリン等)が含まれてもよく、後者には、例えば、アセチルサリチル酸(アスピリン)、アスピソール(Aspisol)、ジフルオロベンゼンサリチル酸、アミノサリチル酸、p-アミノサリチル酸、N-フェニルアントラニル酸、サリチルアニリド、o-エトキシベンズアミド、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、ジサリチル酸塩、ジクマリン、及びそれらの薬学的に許容される誘導体が含まれてもよい。
【0153】
本開示の範囲において、「キニーネ化合物」という用語は、本明細書において使用される場合、キニーネ並びにその異性体及び薬学的に許容される塩等、薬学的に許容されるキニーネ並びにその構造類似体を指す。キニーネの場合、その異性体は、例えば、キニジン、シンコニン、及びシンコニジンであってもよく、その塩は、例えば、塩酸キニーネ、二塩酸キニーネ、及び硫酸キニーネ等であってもよい。
【0154】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素の濃度(w/v)は、≧5%、好ましくは10~35%である。
【0155】
一実施形態において、炭水化物栄養素の濃度(w/v)は、≧5%、好ましくは5~40%である。
【0156】
一実施形態において、脂質栄養素の濃度は、5%を超え、好ましくは10~30%である。
【0157】
一実施形態において、色素及び芳香族化合物の濃度(w/v)は、≧0.35%、好ましくは0.35~10%である。
【0158】
一実施形態において、サリチル酸化合物の濃度(w/v)は、≧2%、好ましくは2~30%である。
【0159】
一実施形態において、キニーネ化合物の濃度(w/v)は、≧2%、好ましくは2~10%である。
【0160】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素は、塩基性アミノ酸ベースの栄養素及び/又は非塩基性アミノ酸ベースの栄養素のうち1つ以上から選択され、塩基性アミノ酸ベースの栄養素は、例えば、アルギニン、リジン、ヒスチジンであり、好ましくはアルギニンであり;非塩基性アミノ酸ベースの栄養素は、例えば:中性アミノ酸、酸性アミノ酸、アミノ酸塩を含む群のうち1つ以上であり、中性アミノ酸は、例えば、グリシン、トリプトファン、チロシン、セリン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、トレオニン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、プロリンでありであり;酸性アミノ酸は、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸であり;アミノ酸塩は、例えば、リジン塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩、システイン塩酸塩、アルギニン塩酸塩、グリシン硫酸塩、硫酸鉄グリシン、リジン塩酸塩、アスパラギン酸塩酸塩等、酸と上記のアミノ酸とによって形成される塩を含む。
【0161】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素は、好ましくは:アルギニン、リジン、グリシン、トリプトファン、セリン、システイン、グルタミン、プロリンから選択される1つ以上のアミノ酸及びそれら由来の塩である。
【0162】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素の濃度は、好ましくは≧5%であり、好ましくは7.5~35%である。
【0163】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素はアルギニンを含む。
【0164】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素はアルギニンであり、アルギニンの濃度は、≧10%、好ましくは10~20%である。
【0165】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は水酸化ナトリウムであり、pH中和剤は炭酸水素ナトリウムであり、アミノ酸ベースの栄養素はアルギニンであり、水酸化ナトリウムの濃度は、≧0.5%、好ましくは0.75~5%であり;炭酸水素ナトリウムの濃度は、≧2.5%、好ましくは4~15%であり;アルギニンの濃度は、≧10%、好ましくは10~20%である。
【0166】
一実施形態において、酸性化剤又は塩基性化剤は炭酸ナトリウムであり、pH中和剤は炭酸水素ナトリウムであり、アミノ酸ベースの栄養素はアルギニンであり、炭酸ナトリウムの濃度は、≧1.5%、好ましくは2~10%であり;炭酸水素ナトリウムの濃度は、≧1%、好ましくは1~5%であり;アルギニンの濃度は、≧10%、好ましくは10~20%である。
【0167】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素はグリシンを含む。
【0168】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素はグリシンであり、グリシンの濃度は、≧10%、好ましくは10~25%である。
【0169】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素はリシン塩酸塩を含む。
【0170】
一実施形態において、アミノ酸ベースの栄養素は2つ以上のアミノ酸ベースの栄養素の混合物である。
【0171】
一実施形態において、炭水化物栄養素は:グルコース、フルクトース、オリゴキトサン、グルコサミン、ラクツロース、ソルビトール、リボース、ソルボース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、キシロオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、マンノースオリゴ糖、キシリトールのうち1つ以上から選択され;より好ましくは:グルコース、グルコン酸ナトリウム、オリゴキトサン、グルコサミン、ラクツロース、リボース、オリゴマンノース、キシリトールのうち1つ以上から選択され;医薬組成物中の炭水化物栄養素の濃度(w/v)は、≧10%、好ましくは10~40%である。
【0172】
一実施形態において、脂質栄養素は:植物油、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、長鎖脂肪乳剤、中鎖脂肪乳剤、リン脂質のうち1つ以上から選択され、医薬組成物中の脂質栄養素の濃度(w/v)は、≧4%、好ましくは4~25%である。
【0173】
一実施形態において、色素及び芳香族化合物は:メチレンブルー、パテントブルー、イソスルファンブルー、ベンガルレッドのうち1つ以上から選択され、医薬組成物において、色素及び芳香族化合物の濃度(w/v)は、≧0.35%、好ましくは0.5~10%である。
【0174】
一実施形態において、サリチル酸化合物は:サリチル酸、アセチルサリチル酸、アスピソールのうち1つ以上から選択され、局所医薬組成物において、サリチル酸化合物の濃度(w/v)は、≧5%、好ましくは5~10%である。
【0175】
一実施形態において、キニーネ化合物は、塩酸キニーネ、二塩酸キニーネ、及び硫酸キニーネのうち1つ以上から選択され、局所医薬組成物において、キニーネ化合物の濃度(w/v)は、≧3%、好ましくは3~6%である。
【0176】
一実施形態において、血液増量剤は、デキストラン血液増量剤、デンプン誘導体血液増量剤、ゼラチン誘導体血液増量剤、合成血液増量剤のうち少なくとも1つを含む。一実施形態において、デキストラン血液増量剤は、デキストラン10、デキストラン40、デキストラン70のうち少なくとも1つから選択され;デンプン誘導体血液増量剤は、カルボキシエチルデンプン20、カルボキシエチルデンプン40、カルボキシエチルデンプン130/0.38~0.45、カルボキシエチルデンプン200/0.5のうち少なくとも1つから選択される。ゼラチン誘導体血液増量剤は、酸化したポリゼラチン(polygelatin)及び/又はサクシニルゼラチンであってもよく;合成血液増量剤は、フルオロカーボン人工血液及び/又はポリビニルピロリドンであってもよい。一実施形態において、増量剤の薬理学的濃度は、2~30%、好ましくは2~25%又は2~20%であってもよい。
【0177】
一実施形態において、プロバイオティクス成分は、不活化プロバイオティクス、プロバイオティクス水溶性成分、プロバイオティクス非水溶性成分粒子、プロバイオティクス半流動性成分のうち少なくとも1つを含む。プロバイオティクス成分は:プロバイオティクス水溶性成分、プロバイオティクス半流動性成分、プロバイオティクス成分非水溶性粒子、及び不活化プロバイオティクスのうち1つ以上から選択され、細菌免疫原性が低い。本発明の一例として、プロバイオティクス成分は、プロバイオティクス水溶性成分及び/又はその操作された類似体(例えば、プロバイオティクス多糖の水溶性誘導体等)から選択され、その組成物は溶液組成物である。一実施形態において、プロバイオティクス水溶性成分は、以下の:破壊されたプロバイオティクス上澄み成分、プロバイオティクス抽出物、プロバイオティクス細胞内水溶性成分、プロバイオティクス多糖、プロバイオティクス核酸及びそれらの誘導体のうち1つ以上を含む群から選択され、好ましくは、以下の水溶性医薬群:プロバイオティクス多糖、プロバイオティクス多糖誘導体、プロバイオティクス核酸のうち1つ以上から選択される。一実施形態では、プロバイオティクス成分の濃度は、0.25~25%、0.25~20%であり、好ましくは0.5~15%であり、より好ましくは1~15%又は5~15%である。
【0178】
一実施形態において、プロバイオティクスは、天然の細菌及び/又は操作された細菌:プロバイオティクスバチルス、プロバイオティクスラクトバチルス、プロバイオティクスビフィドバクテリウム、プロバイオティクス真菌を含む群のうち1つ以上から選択される。一実施形態において、バチルスは:バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、納豆菌(Bacillus natto)を含む群から選択された1つ以上を含み;ラクトバチルスは:アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、カゼイ菌(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・プミルス(Lactobacillus pumilus)、及びファーメンタム菌(Lactobacillus fermentum)を含む群から選択された1つ以上を含み;ビフィドバクテリウムは:ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、フェシウム菌(Enterococcus faecium)、及びフェカリス菌(Streptococcus fecalis)を含む群から選択された1つ以上を含み;上記の真菌は:酵母菌及びブレタノミセス・ブルセレンシス(Brettanomyces bruxellensis)(サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii))を含む群から選択された1つ以上を含み、上記の酵母菌は:サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・デルボウイリス(Saccharomyces delbouillis)、サッカロミセス・ウィッカム(Saccharomyces Wickham)、サッカロミセス・ピキア(Saccharomyces Pichia)、トルラ酵母(Candida utilis)、ホエイ酵母(Whey yeast)を含む群から選択された1つ以上を含む。一実施形態において、プロバイオティクスは、サッカロミセス・セレビシエ及び/又はブレタノミセス・ブルセレンシス(サッカロミセス・ブルセラ(Saccharomyces brucella))から選択されたものを含む。
【0179】
本開示による医薬組成物は、有効成分(医薬組成物、及び任意的に上記の他の薬物)を含む局所投与に適した任意の剤形であってもよく、好ましくは、剤形は、注射剤(好ましくは局所注射剤)、外用液剤、及び噴霧製剤等である。
【0180】
本発明に関連して、本明細書において使用される場合「注射剤」という用語は、有効成分及び液体キャリアを含むin vivo投与のための滅菌製剤を指す。注射剤は、投与モードに従って局所注射剤及び静脈内注射剤等に分けられ、静脈内注射剤は、所与の局所投与濃度に達した後にのみ局所注射剤として使用され得る。注射剤は、商品のタイプに従って液体注射剤及び注射用粉末製剤等に分けられる。注射用粉末製剤は、滅菌乾燥粉末及び溶媒を含有し、滅菌乾燥粉末は、有効成分の一部又は全てを含有し、溶媒は、全ての液体キャリアを含有する。注射剤中の有効成分の濃度は、有効成分と液体キャリア全てとの混合物中の有効成分の濃度であり、通常は、局所投与装置(注射器、穿刺器、及び注入カテーテル等)のエンドポイント(針穴及びカテーテル出口等)における液剤中の有効成分の濃度である。注射用粉末製剤では、有効成分の濃度は、滅菌乾燥粉末と溶媒(例えば、懸濁溶液(a reconstituted solution)又は薬学的に許容される液体キャリア)との混合物中の有効成分の濃度である。本発明に関連して、「外用液剤」という用語は、有効成分及び液体キャリアを含有し、且つ体表面[皮膚、粘膜(眼粘膜及び鼻粘膜等)及び/又は腔等(口腔、直腸、膣、尿道、鼻腔、及び外耳道等)]に投与される液剤を指し、例えば、ローション、リニメント、ドロップ、うがい薬、及び塗布薬等を含む。局所投与の場合、液剤は、一般的に、ローションボトル、ドリップボトル、滴下ピペット、うがいボトル、及び綿棒等の局所投与装置によって提供される。外用液剤中の有効成分の濃度は、液剤中の有効成分の濃度である。
【0181】
本発明の範囲において、「噴霧製剤」という用語は、有効成分及び液体キャリアを含有し、且つ使用時に圧力を介して上記の液剤を噴霧するために使用することができる剤形を指す。噴霧製剤は、皮膚及び粘膜(眼粘膜及び鼻粘膜等)及び/又は腔(口腔、直腸、膣、尿道、鼻腔、及び外耳道等)に投与することができ、例えば、エアロゾル、スプレー、及び噴霧器(a nebula)等を含む。局所投与において、液剤の噴霧は、アトマイザー、ネブライザー、及びスプレー等の局所投与装置によって形成されることが多い。薬剤は目標位置にスプレーされた後に蓄積して、噴霧化前の液剤とほぼ同じ組成の液剤を形成する。そのようなものとして、噴霧製剤中の有効成分の濃度は、噴霧化前の液剤中の有効成分の濃度によって表すことができる。
【0182】
本発明の技術的解決策によると、本発明の組成物は、標的領域に局所投与することができる剤形、好ましくは局所医薬剤形に調製されるべきであることを当業者は理解するであろう。
【0183】
本発明の調製方法によると、本発明の医薬組成物の調製は、以下のステップ:1つ又は複数の必須成分(例えば、医薬組成物等)及び任意的に他の物質を含む液体薬物を調製するステップを含む。液体薬物は、溶液(例えば、親水性溶媒における溶液、好ましくは水溶液)、懸濁液、又は乳剤であってもよい。液体医薬組成物が懸濁液である場合、その中の分散媒体は、マイクロ材料又はナノ材料等、当業者に知られている任意の適したものであり得る。液体医薬組成物が乳剤である場合、その中の分散媒体は、注入に使用することができる植物油、合成油、又は半合成油等、当業者に知られている任意の適したものであり得る。植物油は、例えば、綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ひまし油、ごま油、大豆油、及びピーナッツ油であってもよい。
【0184】
本発明の調製方法によると、医薬組成物及び他の薬物の濃度は、本発明の医薬組成物中のそれらの濃度以上である。そのような濃度が本発明の医薬組成物中の濃度よりも大きい場合、使用のためにさらに希釈することができる。
【0185】
本開示の一実施形態によると、本発明の医薬組成物の液体注入は、以下のステップ:1)局所投与濃度に基づく必要な量の必須成分(例えば、医薬組成物等)、任意的に他の成分を水に添加して、液体を調製するステップ;2)局所投与濃度に基づく必要な量の他の任意の薬物を、1)において調製した液体に添加し、それらを均一に混合し、従って、液体薬物を得るステップ;及び、3)2)において調製した液体薬物を滅菌し、液体注射剤にするステップ;を含む方法によって調製することができる。使用時には、液体注射剤の形態の滅菌液体薬物を、直接又は希釈後に局所投与用の液剤として使用することができる。
【0186】
本開示の一実施形態によると、本発明の医薬組成物の注射用粉末は、以下の:局所投与濃度に基づく必要な量の医薬組成物の滅菌乾燥粉末を調製するステップ;及び、局所投与濃度に基づく必要な量の他の任意の成分を含有する滅菌溶媒を調製するステップ;を含む方法によって調製することができる。滅菌乾燥粉末は、好ましくは、滅菌凍結乾燥粉末であり、滅菌乾燥粉末の調製方法は:1)アミノ酸ベースの栄養素、水溶性弱中和剤、及び任意の他の成分を含有する溶液を調製するステップ;2)滅菌、ろ過、及び包装するステップ;3)凍結乾燥するステップ;及び、4)栓及びキャップをするステップ;を含む。凍結乾燥のプロセス条件には、例えば、予備凍結温度の-45°Cを4時間保つ予備凍結条件;温度を0.1°C/分の速度で-15°Cまで上昇させ、少なくとも10時間保つ昇華乾燥条件;及び、30°Cの温度を6時間保つ吸着乾燥条件;が含まれる。使用時には、注射用粉末製剤の滅菌乾燥粉末が滅菌溶媒において懸濁されて懸濁薬物が形成され、これを、局所投与用の液体薬物として、直接使用することができるか又は希釈して使用することができる。
【0187】
本発明の調製方法の一実施形態によると、本発明の医薬組成物の外用液剤は、以下のステップ:局所投与濃度に基づく必要な量の医薬組成物及び任意的に他の成分を溶媒に添加して液体薬物を調製するステップを含む方法によって調製される。使用時には、液体薬物を、局所投与用の外用液剤として、直接使用することができるか又は希釈して使用することができる。
【0188】
本発明の調製方法の一実施形態によると、本発明の医薬組成物の噴霧製剤は、以下のステップ:1)局所投与濃度に基づく必要な量の医薬組成物及び噴霧添加物を溶媒に添加して液体を調製するステップ;2)局所投与濃度に基づく必要な量の他の任意の成分(水溶性酸等)を、1)において調製した液体に添加し、均等に混合して液体薬物を得るステップ;を含む方法によって調製することができる。一般的に使用される噴霧添加物には、例えば、グリセリン、ポリソルベート80、塩化ベンザルコニウム、及び結晶セルロース-カルボキシメチルセルロースナトリウム等が含まれる。使用時には、液体薬物がアトマイザー(スプレー等)に添加され、噴霧化作用下で霧の形態で標的領域に局所投与され、これらの霧は標的領域において蓄積されて液体薬物になる。
【0189】
上記の方法の原理に従って、当業者は、任意の適した特定の方法を採用して、本発明の組成物を含有する種々の特定の剤形を調製することができる。例えば、本発明の医薬組成物に対して作成された異形には:異なるタイプ及び濃度の医薬組成物を有するもの、異なるタイプ及び濃度の他の薬物を有するもの、異なるタイプ及び濃度の他の添加物(鎮痛剤及び活性化剤等)を有するものが含まれてもよい。
【0190】
本開示において、医薬組成物は、主に、局所投与を介して、局所病変疾患、特に難治性の局所病変疾患を予防及び治療するために使用される。
【0191】
本発明に関連して、「局所病変疾患」という用語は、局所病変症状を示す疾患を指し、「局所病変」という用語は、動物(好ましくはヒト)の局所体部の構造、形態、又は機能における原発の又は続発の異常を指し、例えば、以下の:腫瘍体、非腫瘍性肥大、局所炎症、及び分泌腺の異常な分泌機能等のうち1つ以上を含んでもよい。局所体部は、当業者に知られている任意の適したものであってもよく、例えば、以下の器官:分泌系が位置する分泌器官、血液循環系が位置する心血管器官、及び皮膚等のうち1つ以上を含む局所体部であってもよい。
【0192】
局所投与は、局所病変が位置する組織に医薬組成物(局所有効成分、1つ又は複数の成分の構成比及び濃度)を介入的手段によって投与することができ、組織において所望の治療効果を生じさせることを必要とする。例えば、病変が腫瘍である場合、局所組織は、腫瘍細胞が位置する腫瘍体である。病変が非腫瘍性肥大である場合、局所組織は、過形成、嚢胞、及び小結節等、腫脹した腫瘤等の異常である。病変が局所炎症である場合、局所組織は、炎症を起こした腫脹等の炎症部位である。病変が異常な分泌物である場合、局所組織は、異常の発生源、又はそのような異常な分泌物が位置する分泌腺である。別の例では、疾患が異常なインスリン分泌である場合、異常の発生源は膵島であり、局所組織は、膵島又は膵島が位置する膵臓である。疾患が皮膚疾患である場合、局所組織は、病変皮膚又は病変皮膚の付属器官である。
【0193】
具体的には、本開示において、局所病変は、腫瘍、非腫瘍性肥大、局所炎症、異常な分泌腺機能、及び皮膚疾患を含む。
【0194】
本発明に関連して、「腫瘍」という用語は、細胞又は変異した細胞の異常な増殖により形成された腫脹した腫瘤を指し、固形腫瘍を含む。「固形腫瘍」という用語は、腫瘍体を有する腫瘍を指し、任意の病理(悪性及び非悪性)により形成された且つ任意のステージの腫瘍であってもよく、例えば、腫瘍細胞のタイプに従って分類される以下の群:上皮細胞腫瘍、肉腫、リンパ腫、胚細胞腫瘍、芽腫;及び、腫瘍細胞の集中領域が位置する器官又は組織にちなんで名前が付けられた腫瘍であって、例えば、以下の器官又は組織:皮膚、骨、筋肉、乳房、腎臓、肝臓、肺、胆嚢、膵臓、脳、食道、膀胱、大腸、小腸、脾臓、胃、前立腺、精巣、卵巣、又は子宮にちなんで名前が付けられた腫瘍等を含む。
【0195】
具体的には、悪性腫瘍には、例えば、乳がん、膵臓がん、甲状腺がん、上咽頭がん、前立腺がん、肝臓がん、肺がん、腸がん、口腔がん、食道がん、胃がん、喉頭がん、精巣がん、膣がん、子宮がん、及び卵巣がん等が含まれる。
【0196】
非悪性腫瘍には、例えば、乳腺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、前立腺腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、腸腫瘍、口腔腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、上咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、精巣腫瘍、膣腫瘍、子宮腫瘍、卵管腫瘍、及び卵巣腫瘍等が含まれる。
【0197】
一実施形態において、局所病変疾患には非腫瘍性肥大が含まれる。「非腫瘍性肥大」という用語は、腫瘍以外の肥大を指し、例えば、過形成(乳房、膵臓、甲状腺、副甲状腺、及び前立腺等の過形成等)、嚢胞(乳房、甲状腺、及び副甲状腺等の嚢胞等)、小結節(乳房、甲状腺、及び副甲状腺等における小結節等)、異常な静脈腫瘤(痔核等)、局所の炎症及び腫脹、並びに微生物の感染及び腫脹等を含む。痔核には、内痔核、外痔核、及び混合痔核が含まれる。
【0198】
一実施形態において、局所病変疾患には、局所炎症、特に難治性の炎症が含まれる。本発明に関連して、「局所炎症」という用語は、局所体部の非腫瘍性炎症を指し、例えば以下の:関節炎、乳腺炎、膵臓炎、甲状腺炎、前立腺炎、肝炎、肺炎、腸炎、口内炎、咽頭炎、歯周炎、食道炎、胃炎、胃潰瘍、鼻炎、副鼻腔炎、喉頭炎、気管炎、気管支炎、膣炎、子宮炎、卵管炎、及び卵巣炎等のうち1つ以上を含む、例えば、当業者に知られている任意の適したものであり得る変質性炎症、滲出性炎症、及び増殖性炎症を含む。
【0199】
一実施形態において、局所病変疾患には、皮膚疾患、特に難治性の皮膚疾患が含まれる。本発明に関連して、「皮膚疾患」という用語は、皮膚又は皮膚付属器官に原発性又は続発性の病変を指し、例えば、以下の:皮膚がん、非悪性皮膚腫瘍、ウイルス性皮膚疾患(ヘルペス、イボ、風疹、手足口病等)、細菌性皮膚疾患(膿痂疹、おでき、ハンセン病等)、真菌性皮膚疾患(様々な白癬等)、性行為感染症(梅毒、淋病、及び尖圭コンジローマ等)、アレルギー性及び自己免疫性皮膚疾患(接触性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹等)、物理的皮膚疾患(日光皮膚疾患、凍傷、魚の目、手足の皮膚のひび割れ、褥瘡等)、結合組織疾患(エリテマトーデス等)、色素性皮膚疾患(そばかす、色素性ほくろ、様々な斑点等)、皮膚付属物疾患(ざ瘡、酒さ、脂漏性皮膚炎、円形脱毛症、脱毛症、多汗症、及び臭汗症等)のうち1つ以上を含む当業者に知られている任意の適したものであってもよい。
【0200】
一実施形態において、局所病変疾患には、分泌腺の異常な分泌機能が含まれる。本発明に関連して、「分泌腺」という用語は、外分泌腺及び内分泌腺を含む、腺細胞又は腺細胞集団によって形成され且つ分泌機能を果たす構造を指す。分泌腺の異常な分泌機能には、分泌腺の機能亢進(甲状腺機能亢進症等)、及び分泌腺の機能低下(甲状腺機能低下症、低インスリン症(糖尿病の一種)等)が含まれる。
【0201】
一実施形態において、局所病変疾患には心血管疾患が含まれる。介入性療法が、心血管疾患に対する重要な治療法となっている。心血管疾患には、例えば、血管腫、肥大型閉塞性心筋症、心房細動、不整脈、及び動脈塞栓症等が含まれる。
【0202】
本発明の局所医薬組成物は治療薬である。局所病変疾患の予防及び治療に使用される場合、医薬組成物は、他の介入性療法、全身化学療法、免疫療法、光線力学療法、音響力学療法、外科的処置、又はそれらの組み合わせと組み合わせて適用して、有効性をさらに高めることもできる。
【0203】
本開示において、医薬組成物は、主に、局所投与を介した局所病変疾患の予防及び治療に使用される。
【0204】
本願による局所病変疾患の局所治療及び予防のための使用及び方法では、含まれる酸性化剤又は塩基性化剤、pH中和剤、及びそれらの局所相乗剤は、局所医薬組成物中のその濃度又は量比で局所投与される。この濃度又は量比での投与は、局所反応の相乗効果をもたらすことができる。
【0205】
以下においてより詳細に記載される研究に基づき、具体的なメカニズムはまださらに研究されていないけれども、本発明の医薬組成物は、局所病変疾患を治療する安全且つ効果的な医薬効果を達成するように、患者の正常組織へのダメージを最小限に抑えながら、局所病変が位置する組織(病変組織等)の関連構造におけるダメージを促進するのに効果的であると示されている。
【0206】
実施例
以下の具体例は、本発明をさらに例証するために使用されるが、本発明を限定するものとしては使用されない。以下の実施例では、全ての実験動物を、関連する規制及び産業上の自己規律に従って行った。別段の定めがない限り、全ての試験を従来の方法に従って実行した。
【0207】
以下の具体例で使用される材料及び試薬は、別段の定めがない限り、商業的供給源から得ることができる。以下の実施例において使用される一部の塩基性化剤、水溶性電解質、及び抗腫瘍薬が以下の表において列挙されている。
【0208】
【表3】
クラス:クラス1は強塩基であり;クラス2は強酸であり;クラス3は多塩基弱酸のアルカリ無機塩であり;クラス4は他の弱塩基であり;クラス5は有機弱酸のアルカリ金属塩であり;クラス6は多塩基弱酸の酸無機塩であり;クラス7は弱酸であり;クラス8はアミノ酸化合物であり;クラス9は強酸及び強塩基と配合された塩であり;クラス10は他の薬物である。
【0209】
以下の実施例において使用される実験動物は、専門の実験動物会社から購入したSPF(特定病原体除去(Specific Pathogen Free))グレードの動物である。例えば、2つのタイプのマウス:BALB/cマウス及びヌードマウスがあり、ヌードマウスは、BALB/cマウスにヌード遺伝子(nu)を導入することによって得られた突然変異系統(BALB/c-nu)マウスである。マウスは、6~8週齢の健康な雌で、体重は17.5~20.5gである。
【0210】
細胞を皮下移植して局所病変(例えば腫瘍体等)を有する動物を生成する動物モデリングは従来技術である。モデリングは、腫瘍体が所望の体積(例えば、担がんマウスでは50~500mm等)まで成長する場合に成功である。モデリング後、動物を、1つのグループあたり6匹の動物でいくつかのグループに分け、定期的に観察して、全身状態、体重、食物摂餌量、動物の移植片対宿主病、腫瘍体積、腫瘍重量、生存期間等を決定した。好ましくは、局所病変モデルはそれぞれ、(腫瘍体を代表する)腫瘍細胞を含む腫瘍体、(線維芽細胞を含む腫瘍体及び他の局所病変を代表する)線維芽細胞を含有する小結節、並びに(正常組織を含む局所病変を代表する)正常な生検を含む。
【0211】
局所病変(例えば腫瘍等)体積(V)、相対局所病変(例えば腫瘍等)増殖率(R)、局所病変(例えば腫瘍体等)抑制率(r´)、及び腫瘍抑制率(r)を、以下の式:
局所病変(例えば腫瘍体等)の体積:V=0.5×a×b(a及びbは、それぞれ局所病変の長さ及び幅を表す);
相対局所病変(例えば腫瘍体等)増殖率R=TRTV/CRTV×100(TRTV及びCRTVは、それぞれ研究グループ及び陰性対照グループにおける局所病変体積である);
相対局所病変(例えば腫瘍体等)体積=V/V(V、Vは、それぞれグループ分け後の薬物投与の1日目及び薬物投与のt日目の腫瘍体積を表す);
局所病変(例えば腫瘍体等)抑制率(r´)=100%-R(Rは腫瘍増殖率である);
腫瘍抑制率r=(CW-TW)/CW×100%(TW及びCWは、それぞれ研究グループ及び陰性対照グループの平均腫瘍重量である);
に従って算出した。
【0212】
以下の実施例において、薬物iの医薬有効性はEiと表され、これは、ri´又はriとして表すことができる。薬物の作用タイプ、すなわち薬理は、医薬有効性、特に異なるレジメンにおける同じ薬物の医薬有効性によって研究することができる。例えば、XレジメンとYレジメンとの間の薬物iの医薬有効性の差が有意ではない(例えば、Ei/Ei<200%である)場合は、薬物の薬理は同じであることを示しており;XレジメンとYレジメンとの間の薬物iの医薬有効性の差が有意である(例えば、Ei/Ei>200%である)場合は、Xレジメンにおける薬物iの薬理は、動態の観点から、Yレジメンにおけるその薬理の予想される範囲を大きく超えており、Yレジメンとは異なる新たな薬理を含んでいる可能性が高いことを示している。2つの薬物が、有意に異なるEi/Eiの関係を示している場合は、それらは、異なる薬理を含んでいる可能性が高く;2つの薬物が、類似のEi/Eiの関係を示している場合は、それらは、同じ薬理を含んでいる可能性が高いか、又は、少なくともケミカルアブレーション様薬理及びケミカルアブレーション薬理等、類似の薬理を含んでいる可能性が高い。
【0213】
以下の実施例では、実験結果(例えば、腫瘍重量、腫瘍体積、病変組織体積等)を平均±標準偏差(x±s)として表し、統計ソフトウェアSPSS13.0又はSPSS19.0を使用して、2つの実験動物グループ間の差及びグループ平均値を、その有意性について検定し、統計量tを使用して検定を行った。α=0.05,P<0.05の検定レベルによって統計学的に有意な差が示されたが、P>0.05は統計学的に有意ではなかった。
【0214】
化学療法に対する陽性対照は、古典的な細胞傷害性薬物(例えば、以下の実施例の条件下で≧30%の腫瘍抑制率を有した0.5~1%の5-フルオロウラシル等)及び古典的なケミカルアブレーション剤(例えば、以下の実施例の条件下で≧15%の腫瘍抑制率を有した75~99%エタノール等)を含んだ。免疫増強陽性対照は、サイトカイン(例えばインターロイキン-12等)、細菌成分(例えば、弱毒細菌ワクチン等)、及びワクチンアジュバント等の免疫増強剤を含んだ。
【0215】
本発明の範囲内では、薬物Aと薬物Bとの組み合わせを、B/Aとして表し、その同時投与効果を、q=実際の同時投与効果/理論的に予想された純粋な相加効果によって決定し、薬物A単独及び薬物B単独の医薬有効性を、それぞれE及びEとして表し、A/Bの実際の同時投与の医薬有効性を、腫瘍抑制率に対して等、EA+Bとして表した。q=1の場合、実際の同時投与効果は理論的な予想に従ったものであり、相加効果を示し;q<1の場合、実際の同時投与効果は理論的な予想より弱く、拮抗効果を示し;q>1の場合、実際の同時投与効果は理論的な予想を超え、相乗作用を示した。
【0216】
動物実験における併用薬物投与の効果を決定する方法は、Burgi法(非特許文献1)であった。このBurgi法を、Zhengjun Jin(非特許文献2)によって修正し、qを:q=EA+B/(E+E-E×E)として計算した。本発明の以下の実施例では、薬物Aと薬物Bとの併用投与の同時投与医薬有効性を、以下のようにZhengjun Jin法に従って実際の医薬有効性/予想された医薬有効性の比qによって決定した。
【0217】
薬物A及び薬物Bの組成物グループが意味のある医薬有効性を示さなかった(例えば、r又はr´≦15%である)場合、併用投与も意味のある同時投与効果を示さず、本発明では無視できる併用効果とみなした。この組成物グループが意味のある医薬有効性を示した(例えば、腫瘍抑制率≧15%である)場合、実際の医薬有効性/予想された医薬有効性の比q=1.00であれば、その組成物の同時投与医薬有効性は相加的であり(実際の効果は、理論的な純粋な相加的予想の効果と一致しており);実際の医薬有効性/予想された医薬有効性の比q>1.00であれば、その組成物の同時投与医薬有効性は有意な相乗的医薬有効性であり(実際の効果は、理論的な純粋な相加的予想を超えており);実際の医薬有効性/予想された医薬有効性の比q<1.00であれば、その組成物の同時投与医薬有効性は有意な拮抗的医薬有効性であった(実際の効果は、理論的な純粋な相加的予想を下回っていた)。
【実施例1】
【0218】
実施例1:医薬組成物の調製
上記の本発明の医薬組成物の調製方法に従って、多数の異なる本発明の局所医薬組成物を製剤化することができる。本発明の医薬組成物のいくつかの調製例が以下において述べられる。
【0219】
1.液体注射製剤の調製
医薬組成物の必須成分(例えば、塩基性化剤として水酸化ナトリウム3g、pH中和剤として炭酸水素ナトリウム7g)、任意的に他の成分、及び一定の総体積(例えば100ml等)に調整するための液体キャリア(例えば注射用の水等)を測定し、必要な濃度に従って得た。混合物をゆっくり均一に混合し、滅菌し、さらにろ過した後で、必要な量(例えば10ml/バイアル等)に分け、使用のために保存した。この製剤(例えば、7%炭酸水素ナトリウム/3%水酸化ナトリウムの水溶液等)を、液剤として局所投与することができる。
【0220】
2.注射用粉末製剤の調製
医薬組成物の必須成分(例えば、塩基性化剤として水酸化ナトリウム3g、pH中和剤として炭酸水素ナトリウム7g)、任意的に既存の他の成分、及び一定の総体積(例えば100ml等)に調整するための液体キャリア(例えば注射用の水等)を測定し、必要な濃度に従って得て、ゆっくり均一に混合し、滅菌し、さらにろ過した後で、凍結乾燥、栓及びキャップをするために必要な量(例えば10ml/バイアル等)に分けて、後で使用するために滅菌乾燥粉末に調製した。
【0221】
必要な量の滅菌粉末(例えば、1バイアルの上記の乾燥粉末)を、各成分の必要な濃度に従って必要な量の滅菌液体(例えば注射用の水等)において懸濁させて、所望の懸濁溶液(例えば、7%炭酸水素ナトリウム/3%水酸化ナトリウムの水溶液等)にした後で、局所投与用の液剤として使用した。
【0222】
3.外用液剤の調製
医薬組成物の必須成分(例えば、塩基性化剤として水酸化ナトリウム3g、pH中和剤として炭酸水素ナトリウム7g)、任意的に既存の他の成分、及び一定の総体積(例えば100ml等)に調整するための液体キャリア(例えば注射用の水等)を測定し、必要な濃度に従って得て、ゆっくり均一に混合した。この製剤(例えば、7%炭酸水素ナトリウム/3%水酸化ナトリウムの水溶液等)を、局所投与用の局所液剤として直接使用することができる。
【0223】
4.噴霧製剤の調製
医薬組成物の必須成分(例えば、水酸化ナトリウム3g、炭酸水素ナトリウム7g)、及び噴霧製剤のための以下の補助材料:グリセロール(2.5g)、ポリソルベート80(1.5g)、塩化ベンザルコニウム(0.02g)、結晶セルロース-カルボキシメチルセルロースナトリウム(1.5g)、及び一定の総体積(100ml等)に調整するための溶媒(注射用の水等)を測定し、必要な濃度(表1に記載)に従って得て、後で使用するためにゆっくりと均一に混合した。この製剤(例えば、7%炭酸水素ナトリウム/3%水酸化ナトリウムの水溶液等)を、スプレーの原液として使用することができ、スプレーに添加した後で、標的領域に直接スプレーして液剤を形成することができる。
【実施例2】
【0224】
実施例2:組成物の相乗作用に関する研究
一連の実験において、薬物の腫瘍抑制効果、刺激作用、及び組織壊死をそれぞれ研究した。
【0225】
腫瘍抑制効果の研究では、モデル化に成功した実験動物(平均腫瘍体積314mmの肉腫S180細胞を有するマウス)を、2つの陰性対照グループ(01、02)及び9つの薬物研究グループ(1~9)に無作為に分けた。陰性対照グループには生理食塩水を与え、試験薬は以下の表において示されている通りであった。薬物は全て水溶液中にあり、実施例1の調製方法に従って製剤化した。陰性対照及び試験薬を、それぞれ腹腔内注射(グループ02、6、及び9)及び腫瘍内注射(他の研究グループ)によって投与した。各グループに、3日に1回、計3回投与し、注射量は150μl/マウスであった。投与が終了してから5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。各薬物投与モードの陰性対照グループから腫瘍抑制率を算出した。結果が以下の表に示されている。
【0226】
刺激研究試験では、雌及び雄への制限なく30匹のマウスを5つのグループ(以下の表のグループ1、3、4、7、及び8)に無作為に分け、各グループは6匹のマウスを有した。各グループの実験動物に対して、以下の表に示す試験薬100ulを右脚の大腿四頭筋に注射した。注射から24時間後に動物を安楽死させ、注射部位のうっ血、浮腫、変性、及び壊死の程度を、刺激反応スコアのために観察した。陰性対照グループの現象に対して0スコア、及び3%NaOHグループの現象に対して5スコアというスコア基準に基づき、スコアを算出した。刺激反応スコアの結果を、以下の表において示した。
【0227】
組織壊死研究実験では、雌及び雄への制限なく体重が2.0kgから2.5kgのNew Zealand Large Whiteウサギ30匹を5つのグループ(以下の表のグループ1、3、4、7、及び8)に無作為に分け、各グループは6匹のウサギを有した。ウサギにはまず、耳の縁に麻酔薬を静脈内注射することによって麻酔をかけ、次に、ウサギ台の上に仰臥位で固定し、無菌条件下で腹部の右側を小さく切開することによって肝臓を露出させ、次に、肝臓のうち最も厚い部分である肝臓の右葉の中央に22GのPTC針を、針の先端が穿刺点のグリソン鞘から1.5cmの深さに位置するように刺し、試験薬をそれぞれ均一の速速でゆっくりと注入した。各ウサギに1回ずつ肝内注射を行い、以下の表に示す試験薬1.0mLを注入した。ウサギには薬物投与後も通常の食事を続けさせ、1週間後に安楽死させ、さらに、剖検後に肝臓の壊死ゾーンを決定した。肝臓を壊死ゾーンの中央に沿って切開し、壊死ゾーンの範囲を最大レベルで測定し、壊死ゾーンの最大径及び最小径をそれぞれ測定した。肝臓組織の壊死ゾーンの平均直径=(最大径+最小径)/2である。肝臓組織の壊死ゾーンの平均直径の結果を以下の表において示した。
【0228】
【表4】
一般的に、B-技術的溶液における同じ組成物の抗腫瘍有効性は、A-技術的溶液における薬力学的改善の予想範囲(典型的には、<150%、又は効果無しから有効効果への変化、又は腫瘍重量の統計的有意差)を超えると考えられており、異なる薬理学的薬物効果である可能性が高い。
【0229】
上記の表における腫瘍抑制効果の結果から、腹腔内注射のシリーズでは、組成物研究グループ6及び9の各々と陰性対照グループ(グループ02)との腫瘍重量の差は、統計学的に有意ではなく(全てp>0.05)、その腫瘍抑制率は従来の効果的な腫瘍抑制基準(40%)よりも低かった。予想外に、同じ組成物を使用して、腫瘍抑制率は、研究グループ6と比較して研究グループ4では20倍を超えて高く、研究グループ9と比較して研究グループ8では40倍を超えて高かった。このように、同じ組成物の異なる投与モードは、完全に異なる薬物効果によって、有意に異なる標的及び薬理を示した。異なるモード(腹腔内注射及び局所投与)による投与後の同じ投与構成を有する組成物は、標的領域(局所病変領域)構成の点で完全に異なる可能性がある。腹腔内注射された組成物が血流に入り、次に、局所病変領域に到達すると、その投与構成は血液によって完全に希釈されるか又は均一に散逸した(例えば、特定の器官において構成によって保持は異なる)。一方、局所投与された組成物の標的領域構成は、(少なくとも一定期間)その投与構成と同じであった。言い換えると、異なる投与モードによって投与される組成物は、相乗効果を得るために異なる構成特徴を有するべきである。
【0230】
従来技術では、ある濃度閾値を超えた局所投与される塩基及び酸(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸、塩酸等)を、化学的切除剤として使用することができる。化学的切除剤のpHの二極性(0になる傾向又は14になる傾向)は、化学的切除効果と正の相関があると考えられている。従って、従来の化学的切除剤のpHは、通常、≦2%(例えば、50%酢酸、25%塩酸)又は≧11.5%(例えば7%水酸化ナトリウム)であるように選ばれる。そのような極端なpH条件下では、激しい未分化組織の破壊が、従来の化学的切除剤の薬理作用の基礎であると考えられている。一般的に、化学的切除剤による正常組織の破壊が大きいほど、疾患組織の破壊が大きいと考えられている。多くの化学的切除剤は、正常組織(例えば肝臓組織等)の破壊によってスクリーニングされる。上記の表では、単一薬物の研究グループ1及び2の結果は:刺激反応スコアが高いほど、肝臓組織の壊死ゾーンの直径は大きく、腫瘍抑制効果は高いという、当技術分野で知られていることと一致していた。
【0231】
従って、酸性化剤又は塩基性化剤のpHを中和するpH中和剤の添加は、組織破壊に対して相乗的ではなく拮抗的な効果を示すはずである。7%炭酸水素ナトリウム(pH6.9)の添加は、3%水酸化ナトリウム(pH11.8)のpHを1.6だけ低下させ、組成物は、有意に中和された(7%炭酸水素ナトリウム/3%NaOH、pH10.2)。研究グループ1と比較して、研究グループ4は刺激反応スコアを有し、肝臓組織の壊死ゾーンの直径は実際に予測通りに減少し、組成物のグループは、局所刺激の拮抗作用及び正常組織破壊の拮抗作用を示した。しかし、上記の表では、研究グループ1と比較して、研究グループ4は、研究グループ1よりも高い腫瘍抑制率を示した。研究グループ4、3、及び1の中で、組成物グループ4がq=1.11を有し、>1.00であり、グループ4とグループ3及び1の各々との遺残腫瘍の重量の差はそれぞれ、統計学的に有意であり(全てp<0.05)、有意な相乗的薬効が示された。これらの結果は、pHがより中性の物質を添加することで、組成物がより高い組織破壊特異性を示すのを可能にし、その結果、局所刺激作用のリスクが低下し、相乗的な安全性を示し、さらには同時に相乗的薬効をもたらし得ることを示唆している。
【0232】
通常の(酸性化剤又は塩基性化剤のpHが中和される傾向のある組成物は、病変組織に対して相乗的な医薬有効性、又は有意に相乗的な医薬有効性でさえも示したという)見解とは完全には一致しないこの現象の出現には、従来型ではない技術的解決策が明らかに必要である。上記の表では、局所投与シリーズにおいて、組成物研究グループ5の腫瘍抑制率は、組成物研究グループ4の47%に過ぎず(32%対68%)、さらに、各組成物の成分量比が同じにもかかわらず、2つのグループ間の腫瘍重量の差は統計的に有意であった(p<0.05)。研究グループ5と2との間で、その腫瘍抑制率は一般規格の40%に達しておらず、遺残腫瘍の重量の差も統計的に有意ではなく(p>0.05)、従って、相乗効果は示されなかった。研究グループ5及び4は、組成物において同じ成分及び量比を使用したが、酸性化剤又は塩基性化剤及びそれぞれのpH中和剤の濃度が異なるため、同時投与効果は異なった。これらの結果はさらに、相乗的薬効を得るためには、異なるモードで投与される組成物は、完全に異なる成分要素を必要とし得ることを示唆している。全身投与組成物は、通常、成分量比のみを必要とする(成分は、希釈のためにとにかく血流に入るよう意図する)けれども、局所投与組成物には、明らかに成分量比のみを与えることはできず、他の特徴(例えば濃度等)も与えなければならない。
【0233】
さらに、上記の表の刺激反応及び組織壊死の結果において、15%アルギニン/7%炭酸水素ナトリウム/3%NaOHは、7%炭酸水素ナトリウム/3%NaOHと比較してpHにおいてわずかな上昇を示したが、15%アルギニンを添加すると、刺激反応スコア及び肝臓組織の壊死ゾーンの直径が減少し、局所刺激拮抗作用及び正常組織破壊拮抗作用が示された。しかし、研究グループ8、7、及び4の中で、組成物グループ8がq=1.15を有し、>1.00であり、グループ8とグループ7及び4の各々との遺残腫瘍の重量の差はそれぞれ統計的に有意であり(全てp<0.05)、従って、有意な相乗的薬効が示された。新しい局所相乗剤の添加は、組成物の特性を変化させることによって(おそらく、例えば、緩衝能を増加させることによって)、組成物がより高い薬効又は相乗効果さえも示すのを可能にし得ることをこれらの結果は示唆している。
【0234】
要約すると、本発明の組成物は、局所投与された場合に、全身投与された場合とは有意に異なる薬理を示すようである。例えば、主要な薬理は、血流中に分子形態で分布されて病変組織(例えば、腫瘍体内の腫瘍細胞等)の病原体を攻撃するのではなく、投与部位において組織間質空間に薬物流体の形態で分布されて、病変組織(例えば、腫瘍内組織等)を攻撃する。
【0235】
上記の研究及びさらなる類似の研究に基づき、局所病変疾患の治療のための局所医薬品を製造する際に局所有効成分として本発明の組成物を使用する技術的解決策のための本質的条件は、以下であると結論づけることができる。
【0236】
本発明の医薬組成物の構成は、それらを局所的に、且つ医薬組成物の成分量比が相乗効果をもたらす濃度閾値を超えて投与することができるようなものにするべきである。具体的には、医薬組成物中の酸性化剤又は塩基性化剤の濃度は、(例えば、担がんマウスの腫瘍抑制濃度が≧40%であるように)その効果的な切除濃度未満であるべきであるが、相乗的薬効濃度閾値を超える(例えば、強塩基又は強酸では≧0.5%、及び弱塩基又は弱酸では≧2.5%である)べきである。さらに、pH中和剤の濃度は、医薬組成物が中和しやすくなるのを可能にする、及び同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一薬物と医薬組成物とのpHの差の絶対値が≧0.25となるのを可能にするようなものである。
【0237】
加えて、相乗的薬効を示す組成物は、>0.01mol・L-1・pH-1の緩衝能を有する緩衝液であるとも決定される。
【0238】
加えて、本発明の組成物は、局所相乗剤を添加することによって、薬効、さらには相乗的薬効もさらに増加させることができる。
【0239】
以下の実施例は、上記の本質的な条件下での本発明の組成物の技術的解決策をさらに調査したものである。
【実施例3】
【0240】
実施例3:本発明の強塩基/pH中和剤の組成物の相乗的技術的解決策に関する研究
実験において、試験動物はBALB/cマウスであり、モデリング細胞は乳がん4T1細胞であり、移植腫瘍を動物の右腋の皮膚下で1×10細胞/マウスでモデル化した。モデル化に成功した実験動物(平均腫瘍体積325mm)を、1つの陰性対照グループ(グループ0)及び11の薬物研究グループ(グループ1~11)に無作為に分けた。陰性対照は生理食塩水であり、試験薬は以下の表において示した。薬物は全て水溶液であり、実施例1の調製方法に従って製剤化した。各グループに、3日に1回、計3回腫瘍内注射によって投与し、毎回、注射量は150μl/マウスであった。投与が終了してから5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を決定した。陰性対照グループから腫瘍抑制率を算出した。結果を以下の表において示した。
【0241】
【表5】
上記の表では、研究グループ7、1、及び6の中で、組成物グループ7がq<1.0を有し、相乗的薬効は示されなかった。研究グループ8、2、及び5の中で、組成物グループ8がq=1.04を有し、>1.00であり、有意な相乗効果が示された。研究グループ9、3、及び4の中で、組成物グループ9がq<1.0を有し、相乗的薬効は示されなかった。研究グループ11、3、及び10の中で、組成物グループ11がq=1.42を有し、>1.00であり、有意な相乗的薬効が示された。
【0242】
上記の研究及びさらなる類似の研究に基づき、本発明の強塩基/pH中和剤の組成物の薬力学的相乗作用及び安全性の相乗作用に対する好ましい条件は以下の通りである。
1.組成物における好ましい同時投与薬剤:強塩基はアルカリ金属水酸化物を含み;pH中和剤は、好ましくは、水溶液中のpHが強塩基のpHよりも低いが、2.0を超える化合物から選択された化合物であり、以下の:多塩基弱酸のアルカリ無機塩、弱有機酸のアルカリ金属塩、他の弱塩基、強酸及び強塩基と配合された塩、多塩基弱酸の酸無機塩、弱酸のうち1つ以上から選択された化合物等である。
2.組成物の化学成分特徴(化合物の濃度及び量比):強塩基がアルカリ金属水酸化物から選択された場合、アルカリ金属水酸化物の濃度は、≧0.5%、好ましくは0.75%~7.5%、又は0.75%~5%であり;pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは1%~35%であり;アルカリ金属水酸化物対pH中和剤の量比(wアルカリ金属水酸化物:wpH中和剤)は、<1、好ましくは1/20~1/1.25である。
3.組成物のイオン成分特徴(H濃度指数):同じ強塩基の濃度を有する単一薬物と組成物とのpHの差は、≧0.25、好ましくは0.5~3.5、又は1.0~3.5であり;組成物の水溶液のpHは、10.0±2.0、好ましくは10.0±1.0である。
【0243】
加えて、実施例2において示されているように、本発明の強塩基/pH中和剤の組成物は、局所相乗剤の添加によって、薬効、さらには相乗的薬効もさらに高めることができる。
【実施例4】
【0244】
実施例4:本発明の弱塩基/pH中和剤の組成物の相乗的技術的解決策に関する研究
別の実験において、試験動物はBALB/cマウスであり、モデリング細胞は乳がん4T1細胞であり、移植腫瘍を動物の右腋の皮膚下で1×10細胞/マウスでモデル化した。モデル化に成功した実験動物(平均腫瘍体積307mm3)を、1つの陰性対照グループ(グループ0)及び13の薬物研究グループ(グループ1~13)に無作為に分けた。陰性対照は生理食塩水であり、試験薬は以下の表において示した。薬物は全て水溶液であり、実施例1の調製方法に従って製剤化した。各グループに、3日に1回、計3回腫瘍内注射によって投与し、毎回、注射量は150μl/マウスであった。投与が終了してから5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を決定した。陰性対照グループから腫瘍抑制率を算出した。結果を以下の表において示した。
【0245】
【表6】
上記の表では、研究グループ7、1、及び6の中で、組成物グループ7がq<1.0を有し、相乗的薬効は示されなかった。研究グループ8、1、及び4の中で、組成物グループ8がq=1.43を有し、>1.00であり、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ9、2、及び5の中で、組成物グループ9がq=1.43を有し、>1.00であり、有意な相乗的薬効が示された。同様に、組成物グループ10も有意な相乗的薬効が示されたが、その腫瘍抑制率は、組成物グループ9の60%に過ぎなかった。研究グループ11、3、及び5の中で、組成物グループ11がq<1.0を有し、相乗的薬効は示されなかった。
【0246】
加えて、研究グループ13、12、及び9の中で、組成物グループ13がq=1.16を有し、>1.00であり、有意な相乗的薬効が示された。局所相乗剤の添加は、組成物の特性を変化させることによって(おそらく、例えば、緩衝能を増加させることによって)、組成物に相乗的薬効を示させることができたということを再びこの結果は示した。
【0247】
上記の研究及びさらなる類似の研究に基づき、本発明の弱塩基/pH中和剤の組成物に対する好ましい条件は以下の通りである:
弱塩基は、≧2.5%、好ましくは≧3.0%、若しくは≧5%であるか、又は2.5~20%、好ましくは≧3.0~20%、若しくは≧5~20%の濃度であり;
同じ濃度の弱塩基の単一薬物と組成物とのpHの差は、≧0.25、好ましくは0.5~2.5であり;
組成物のpHは、9.0±2.0、好ましくは9.0±1.3であり;
pH中和剤は、上記の条件を満たす以下の1つ又は複数の群:他の弱塩基、弱有機酸のアルカリ金属塩、弱酸、及び強酸のうち1つ以上から選択され、他の弱塩基は、アブレーション剤として使用される弱塩基とは異なるものであり;
pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは1%~35%である。
【0248】
弱塩基/pH中和剤の組成物が、多塩基弱酸のアルカリ塩/多塩基弱酸の酸塩の組成物である場合、多塩基弱酸のアルカリ塩対多塩基弱酸の酸塩の量比(w:w)は、0.56を超えるが7未満であり、好ましくは1から2である。
【0249】
加えて、本発明の弱塩基/pH中和剤の組成物は、局所相乗剤を添加することによって、薬効、さらには相乗的薬効もさらに増加させることができる。
【実施例5】
【0250】
実施例5:本発明の弱酸/pH中和剤の組成物の相乗的技術的解決策に関する研究
一実験において、試験動物はBALB/cマウスであり、モデリング細胞は乳がん4T1細胞であり、移植腫瘍を動物の右腋の皮膚下で1×10細胞/マウスでモデル化した。モデル化に成功した実験動物(平均腫瘍体積316mm)を、1つの陰性対照グループ(グループ0)及び12の薬物研究グループ(グループ1~12)に分けた。陰性対照は生理食塩水であり、試験薬は以下の表において示されている。薬物は全て水溶液であり、実施例1の調製方法に従って調製した。各グループに、3日に1回、計3回腫瘍内注射によって投与し、毎回、注射量は150μl/マウスであった。投与が終了してから5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。陰性対照グループから腫瘍抑制率を算出した。結果を以下の表において示した。
【0251】
【表7】
上記の表では、研究グループ7、1、及び5の中で、組成物グループ7がq<1.00を有し、相乗的薬効は示されなかった。研究グループ8、2、及び4の中で、組成物グループ8がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ9、3、及び4の中で、組成物グループ9がq<1.00を有し、相乗的薬効は示されなかった。研究グループ10、2、及び6の中で、組成物グループ10がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。
【0252】
さらに、研究グループ12、10、及び11の中で、組成物グループ12がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。局所相乗剤の添加は、pHの変化をほとんど伴わずに組成特性を変化させることによって(おそらく、例えば、緩衝能を増加させることによって)、組成物に相乗効果を示させることができることを再びこの結果は例示した。
【0253】
上記の研究及びさらなる類似の研究に基づき、本発明の弱酸/pH中和剤の組成物の薬力学的相乗作用及び安全性の相乗作用に対する好ましい条件は以下の通りである。
1.好ましい有効成分:弱酸は、好ましくは、酢酸及びその類似体、例えば1~3のヒドロキシル置換基を有する他のC1~10脂肪族カルボン酸[ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、マロン酸、酪酸、コハク酸、乳酸(2-ヒドロキシプロピオン酸)、クエン酸(2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシコハク酸)、酒石酸、シュウ酸、グルコン酸]等から選択され;pH中和剤は、好ましくは、その水溶液のpHが弱酸のpHより高いが10未満である化合物から選択され、例えば、以下の:多塩基弱酸のアルカリ無機塩、窒素含有弱塩基、多塩基弱酸の酸無機塩、弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上から選択される。
2.組成物の化学構成特徴(同時投与物質の濃度及び量比):弱酸の濃度は、>3%、好ましくは5~25%であり;pH中和剤の濃度は、≧3%、好ましくは3%~35%であり;弱酸対pH中和剤の量比(w弱酸:wpH中和剤)は、(5~25)/(3~35)であった。
3.組成物のイオン構成特徴(H濃度指数):同じ弱酸の濃度を有する単一薬物と組成物とのpHの差は、≧0.25、好ましくは0.5~2.5であり;組成物の水溶液のpHは、4.0±1.5、好ましくは4.0±1.0である。
【0254】
加えて、本発明の弱酸/pH中和剤の組成物は、局所相乗剤の添加によって、薬効、さらには相乗的薬効もさらに高めることができる。
【実施例6】
【0255】
実施例6:本発明の強酸/pH中和剤の組成物の相乗的技術的解決策に関する研究
実験において、試験動物はBALB/cマウスであり、モデリング細胞は乳がん4T1細胞であり、移植腫瘍を動物の右腋の皮膚下で1×10細胞/マウスでモデル化した。モデル化に成功した実験動物(平均腫瘍体積324mm)を、1つの陰性対照グループ(グループ0)及び9つの薬物研究グループ(グループ1~9)に分けた。陰性対照は生理食塩水であり、試験薬は以下の表において示されている。薬物は全て水溶液であり、実施例1の調製方法に従って調製した。各グループに、3日に1回、計3回腫瘍内注射によって投与し、毎回、注射量は150μl/マウスであった。投与が終了してから5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。陰性対照グループから腫瘍抑制率を算出した。結果を以下の表において示した。
【0256】
【表8】
上記の表では、研究グループ6、1、及び5の中で、組成物グループ6がq<1.00を有し、相乗的薬効は示されなかった。研究グループ7、2、及び5の中で、組成物グループ7がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ8、3、及び4の中で、組成物グループ8がq<1.00を有し、相乗的薬効は示されなかった。
【0257】
上記の研究及びさらなる類似の研究に基づき、本発明の強酸/pH中和剤の組成物に対する好ましい条件は以下の通りである:
強酸の濃度は、>0.5%、好ましくは0.75~3%であり;
強酸対pH中和剤の量比(w:w)は、<1、好ましくは1/20から1/1.25であり;
同じ濃度の弱酸を有する単一薬物と組成物とのpHの差は、≧0.25、好ましくは0.5~4.0であり;
組成物のpHは、4.0±1.5、好ましくは4.0±1.0であり;
pH中和剤は、上記の条件を満たす以下の1つ又は複数の群:多塩基弱酸のアルカリ無機塩、窒素含有弱塩基、多塩基弱酸の酸無機塩、弱有機酸のアルカリ金属塩のうち1つ以上から選択され;
pH中和剤の濃度は、≧1%、好ましくは1%~35%である。
【実施例7】
【0258】
実施例7:本発明の酸-塩基中和合剤の組成物及びその局所相乗剤の相乗作用に関する研究
実験において、試験動物はBALB/cマウスであり、モデリング細胞は乳がん4T1細胞であり、移植腫瘍を動物の右腋の皮膚下で1×10細胞/マウスでモデル化した。モデル化に成功した実験動物(平均腫瘍体積317mm)を、2つの陰性対照グループ(グループ01、02)及び20の薬物研究グループ(グループ1~20)に分けた。陰性対照は生理食塩水であり、試験薬は以下の表において示されている。薬物は全て水溶液であり、実施例1の調製方法に従って調製した。陰性対照及び試験薬を、それぞれ腹腔内(グループ02、11、及び15)及び腫瘍内(他の研究グループ)に投与した。全てのグループに、3日に1回、計3回、腫瘍内注射によって投与し、注射量は150ul/マウスであった。投与が終了してから5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。陰性対照グループから腫瘍抑制率を算出した。結果を以下の表において示した。
【0259】
【表9】
上記の表では、腹腔内注射のシリーズにおいて、組成物研究グループ11及び15のいずれの腫瘍抑制率も従来の効果的な腫瘍抑制基準(40%)よりも低く、研究グループ11と陰性対照グループ(グループ02)との腫瘍重量の差は、統計学的に有意ではなかった(p>0.05)。予想外に、同じ組成物を使用して、腫瘍抑制率は、研究グループ11よりも研究グループ10において2倍を超えて高く(86%:36%)、研究グループ14よりも研究グループ14において25倍を超えて高かった(83%:3%)。このように、同じ組成物の異なる投与モードは、完全に異なる薬物効果によって、有意に異なる標的及び薬理を示した。異なるモード(腹腔内注射及び局所投与)による投与後の同じ投与構成を有する組成物は、標的領域(局所病変領域)構成の点で完全に異なる可能性がある。腹腔内注射された組成物が血流に入り、次に、局所病変領域に到達すると、その投与構成は血液によって完全に希釈されたか又は均一に散逸した(例えば、特定の器官において構成によって保持は異なる)。また、局所投与された組成物の標的領域構成は、(少なくとも一定期間)その投与構成と同じであった。言い換えると、異なる投与モードによって投与される組成物は、相乗的薬効を得るために異なる構成特徴を有するべきである。
【0260】
このあまり一般的ではない(すなわち、全身投与と局所投与との間で実質的に異なる影響が生じる)現象の出現には、従来型ではない技術的解決策が明らかに必要である。上記の表では、局所投与シリーズにおいて、各組成物の同じ成分量比にもかかわらず、組成物研究グループ12の腫瘍抑制率は、組成物研究グループ10の腫瘍抑制率のわずか38%であり(33%:86%)、組成物研究グループ16の腫瘍抑制率は、組成物研究グループ14の腫瘍抑制率のわずか27%であった(22%:83%)。実際、組成物研究グループ12も組成物研究グループ16も相乗効果を示さなかった。しかし、研究グループ10、1、及び5の中で、組成物研究グループ10がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ14、3、及び8の中で、組成物グループ14がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。これらの結果はさらに、相乗的薬効を得るためには、異なるモードで投与される組成物は、完全に異なる成分要素を必要とし得ることを示唆している。全身投与組成物は、通常、成分量比のみを必要とする(成分は、希釈のためにとにかく血流に入るよう意図する)けれども、局所投与組成物には、明らかに成分量比のみを与えることはできず、他の特徴(例えば濃度等)も与えなければならない。
【0261】
加えて、研究グループ18、1、及び17の中で、組成物グループ18がq>1.00を有し、有意な相乗効果が示された。研究グループ20、3、及び19の中で、組成物グループ14がq>1.00を有し、有意な相乗効果が示された。
【0262】
要約すると、本発明の組成物は、局所投与された場合に、全身投与された場合とは有意に異なる薬理を示すようである。例えば、その主要な薬理は、血流中に分子形態で分布されて病変組織(例えば、腫瘍体内の腫瘍細胞等)の病原体を攻撃するのではなく、投与部位において組織間質空間に薬物流体の形態で分布されて、病変組織(例えば、腫瘍内組織等)を攻撃する。
【0263】
上記の研究及びさらなる類似の研究に基づき、局所病変疾患の治療のための局所医薬品を製造する際に、局所有効成分として酸-塩基中和合剤の組成物及びその局所相乗剤を使用する技術的解決策のための本質的条件は、以下であると結論づけることができる。
【0264】
本発明の医薬組成物の構成は、それらを局所的に、且つ医薬組成物の成分量比が相乗的薬効をもたらす濃度閾値を超えて投与することができるようなものにするべきである。具体的には、医薬組成物において、酸性化剤又は塩基性化剤の濃度は、(例えば、担がんマウス実験における腫瘍抑制濃度が≧40%であるように)その効果的な切除濃度以下であるべきであるが、相乗的薬効濃度閾値以上である(例えば、強塩基又は強酸の酸性化剤又は塩基性化剤の濃度に対して≧0.5%、及び弱塩基又は弱酸の酸性化剤又は塩基性化剤の濃度に対して≧2.5%である)べきである。酸性化剤又は塩基性化剤の濃度に基づき、必須成分の各々の量比は以下の通りであった:酸性化剤又は塩基性化剤の濃度は、上記の通りであり;pH中和剤の濃度は、酸性化剤又は塩基性化剤を用いて相乗効果をもたらし得る濃度(具体的には、医薬組成物が中和しやすくなるのを可能にする、及び同じ濃度の酸性化剤又は塩基性化剤を有する単一薬物と医薬組成物とのpHの差の絶対値が≧0.25となるのを可能にする濃度)であり;局所相乗剤の濃度は、酸性化剤又は塩基性化剤及びそれぞれのpH中和剤と相乗効果を発揮できる(例えば、組成物中の局所相乗剤の飽和溶解度の5%を超えるか又は25%を超える)濃度である。
【0265】
加えて、相乗効果を示す組成物は、>0.01mol・L-1・pH-1の緩衝能を有する緩衝液であるとも決定される。
【0266】
さらに、酸性化剤とそのpH中和剤、又は塩基性化剤とそのpH中和剤の相乗的な組み合わせは、本発明の酸-塩基中和合剤/局所相乗剤の医薬組成物の相乗作用の基礎であると思われる。
【実施例8】
【0267】
実施例8:本発明の酸-塩基中和合剤の組成物及びその局所相乗剤についての相乗的な技術的解決策に関するさらなる研究
実験において、試験動物はBALB/cマウスであり、モデリング細胞は乳がん4T1細胞であり、移植腫瘍を動物の右腋の皮膚下で1×10細胞/マウスでモデル化した。モデル化に成功した実験動物(平均腫瘍体積336mm)を、1つの陰性対照グループ(グループ0)及び16の薬物研究グループ(グループ1~16)に分けた。陰性対照は生理食塩水であり、試験薬は以下の表において示されている。薬物は全て水溶液であり、実施例1の調製方法に従って調製した。各グループに、3日に1回、計3回腫瘍内注射によって投与し、毎回、注射量は150μl/マウスであった。投与が終了してから5日目に動物を安楽死させ、動物の解剖後に腫瘍重量を測定した。陰性対照グループから腫瘍抑制率を算出した。結果を以下の表において示した。
【0268】
【表10】
上記の表では、研究グループ11、1、及び5の中で、組成物グループ11がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ12、2、及び6の中で、組成物グループ12がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ13、1、及び7の中で、組成物グループ13がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ14、1、及び8の中で、組成物グループ14がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ15、3、及び9の中で、組成物グループ15がq=>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。研究グループ16、3、及び10の中で、組成物グループ16がq>1.00を有し、有意な相乗的薬効が示された。
【実施例9】
【0269】
実施例9:本発明の医薬組成物のさらなる抗腫瘍用途
この一連の実験では、ヒトがん細胞を有するモデル化に成功したヌードマウスを、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループに無作為に分けた。対応する陰性対照は生理食塩水であり、6つの試験薬は:A(4%炭酸水素ナトリウム/7%炭酸ナトリウム)、B(4%炭酸水素ナトリウム/15%酢酸)、C(7%炭酸ナトリウム/1%水酸化カリウム)、D(15%アルギニン/7%炭酸水素ナトリウム/3%水酸化ナトリウム)、E(2%KCl/1%NaOH/20%アルギニン/20%キシリトール)、F(20%グリシン/3%炭酸水素ナトリウム/10%酢酸)であった。薬物は全て水溶液であり、実施例1の調製方法に従って調製した。各グループに、3日に1回、計3回腫瘍内注射を行い、毎回、注射量は150μl/マウスであった。投与が終了してから5日目に動物を安楽死させ、解剖後に腫瘍重量を測定し、それぞれの陰性対照グループから腫瘍抑制率を算出した。
【0270】
1)乳腺腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト乳がん細胞(MDA-MB231)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積303mm)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ79%、73%、77%、92%、97%、及び91%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【0271】
2)肺腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト肺がん細胞(A549)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積326mm)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ71%、76%、79%、92%、95%、及び89%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【0272】
3)甲状腺腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト甲状腺がん細胞(SW579)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積341mm)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ79%、75%、71%、92%、97%、及び88%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【0273】
4)前立腺腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト前立腺がん細胞(LNCaP/AR)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積348mm3)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ71%、78%、76%、93%、97%、及び92%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【0274】
5)肝臓腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト肝臓がん細胞(HepG2)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積309mm)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ73%、71%、76%、92%、95%、及び89%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【0275】
6)頭頸部腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト頭頸部がん細胞(Fμda)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積305mm)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ72%、79%、75%、93%、97%、及び86%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【0276】
7)上咽頭腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト上咽頭がん細胞(CNE1)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積327mm)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ79%、73%、71%、91%、95%、及び88%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【0277】
8)胃腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト胃がん細胞(BGC823)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積314mm)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ71%、73%、74%、88%、91%、及び93%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【0278】
9)卵巣腫瘍の治療における使用
この研究実験では、ヒト卵巣がん細胞(PA1)を有するモデル化に成功したヌードマウス(平均腫瘍体積311mm)を、1つの陰性対照グループ及び6つの研究グループ(グループA、B、C、D、E、及びF)に無作為に分けた。グループA、B、C、D、E、及びFの腫瘍抑制率は、それぞれ75%、76%、71%、91%、93%、及び85%であり、全て一般的に認められている効果的な抗腫瘍基準(腫瘍抑制率≧40%)を満たしていた。
【実施例10】
【0279】
実施例10:本発明の酸-塩基中和合剤の組成物及びその局所相乗剤に関するさらなる研究
試験動物をA及びBの2つのシリーズに分けた。シリーズAの動物はモデル化されていないヌードマウスであり、4つのグループに無作為に分け、右脚の側筋の筋肉内注射によって、表11のグループ1~4に従って薬物を注入した。各グループに一回投与し、注射量は100μl//マウスであった。投与が終了してから3日目に動物を安楽死させ、ヌードマウスの右脚の側筋量からの検体を解剖して取り出し、肉眼所見分析を行った。正常筋肉の組織破壊領域(不完全壊死)の領域(T3d)とその中の重度の組織破壊領域(完全壊死)の領域(S3d)とを区別するために筋切片を測定し、その結果が以下の表11において示されている。
【0280】
シリーズBの動物は中年及び高年齢の患者モデルとして8か月齢のマウスにおいてモデル化されたが、腫瘍形成、腫瘍組織形態学、及び体の免疫能力の点で一般的に使用される若年患者モデルとは一致しなかった。移植腫瘍モデリングのために1×10マウス肝臓がんHepa1-6細胞/マウスを右腋に皮下注入し、モデル化に成功したマウスの平均腫瘍体積は136.6mmであった。モデル動物を13のグループに無作為に分けた。各グループに、腫瘍内注射によって表11の薬物分類に従って一回投与し、注射量は100μl/マウスであった。薬物投与後3日目及び14日目に腫瘍体積(V)を測定し、陰性対照グループに対する各時点での腫瘍抑制率(r´3d、r´14d)を算出し、結果を以下の表11に示した。投与される薬物は、水溶液に対する従来の調製方法に従って又は実施例1における調製方法に従って調製した。
【0281】
【表11-1】
【0282】
【表11-2】
短期薬効に対する実際/予想比q3d、及び中期薬効に対する実際/予想比q14dを、それぞれ異なる時期(3日目、14日目)の薬効(r´3d、r´21d)に基づき算出した。
【0283】
上記の表のシリーズAでは、グループ2及び4に対するS3dは、それぞれ18.3±7.52mm、0mmであり、塩基性化剤は予想通りに局所作用強度を最大化したが、中和合剤のpH中和剤は予想通りに塩基性化剤の局所作用強度を低下させたことを示している。一般的に、壊死領域の面積は、完全に壊死した領域の面積と正の相関があるはずであると考えられている。しかし、グループ2及び4に対するT3dは逆であり、それぞれ29.6±8.31mm及び47.6±15.32mmであり、酸-塩基中和合剤は、重度の組織破壊に対しては拮抗的な効果をもたらしたが、一般的な組織破壊に対しては相乗効果をもたらしたことを示している。
【0284】
一般的に、腫瘍細胞は急速且つ強力に増殖すると考えられており、腫瘍抑制の医薬効果は、効果的な阻害を行うために局所作用薬物が完全な壊死の程度に及ぼす(局所効果を最大化する)効果と関連付けられるべきであり;短期腫瘍抑制の医薬有効性(r´3d)は、(重度の組織破壊の点で)薬物の強さと正の相関を示すはずである。しかし、シリーズBにおけるグループ2及び4からのr´3dの結果(r´>r´)は、シリーズAにおけるグループ2及び4からのS3dの結果(S>S)とは逆であり、T3dの結果(T<T)と一致しており、さらに、グループ4における短期の実際/予想比はq3d>1.00を有し、酸-塩基中和合剤によって生じる一般的な組織破壊に対する相乗効果が、腫瘍組織破壊に対する相乗効果として示される可能性があることを示している。一般的に、中期の医薬有効性(r´14d)は短期の有効性(r´3d)の継続であり、これは、短期の有効性と確実に一致すると考えられている。しかし、シリーズBのグループ2及び4では、(r´14d4/r´14d2=1.15)の中期の比較結果は、その短期の比較結果(r´3d4/r´3d2=9.68)とは大きく異なっていた。加えて、グループ4も、中期の相乗効果を示し、中期対短期の実際/予想比q14d/q3dは200%を超えており、酸-塩基中和合剤が、予想される局所相乗効果をはるかに超える新しい薬理をもたらしたことを示している。
【0285】
上記の表のシリーズBでは、グループ9及び10における酸-塩基中和合剤/同時投与物質が短期の相乗効果(q3d>1.00)及び中期の相乗効果(q14d>1.00)を示し、グループ11及び12における酸-塩基中和合剤/同時投与物質が短期の拮抗効果(q3d<1.00)及び中期の相乗効果(q14d>1.00)を示し、中期の相乗効果が、酸-塩基中和合剤/同時投与物質の基本的な特徴であったことを示している。本発明の酸-塩基中和合剤の組成物又は酸-塩基中和合剤/同時投与物質の組成物の活性特徴は、最大の局所作用を提供することではなく、組織内で適切な局所作用を最大に浸透させることであったことを上記の結果は示した。
【0286】
上記の実施例の結果及び他の類似の試験の結果に基づき、本発明の酸-塩基中和組成物(本発明の組成物)は、以下の点で、従来技術における酸-塩基作用薬物(例えば、高濃度の酸、高濃度の塩基等)(従来技術薬物と略される)の予想を上回った:
1)その薬理は予想を上回った:従来技術薬物の特徴的な薬理は、組織に対する効果的な局所作用であり、好ましくは局所作用を最大化し、本発明の組成物の特徴的な薬理は、効果的な組織間浸透であり、好ましくは浸透を最大化する;
2)その薬理学的構成は予想を上回った:その異なる薬理を達成するために、従来技術薬物は、局所作用の最大の強度を必要とし、従って、非常に高い酸(又は塩基)の薬理学的濃度(例えば、50%酢酸、14%水酸化ナトリウム)及びその純粋な酸(又は塩基)のpHを必要とし、本発明の組成物は、局所作用の最大の強度を必要としなかったが、浸透作用の最大の強度を必要とし、従って、酸(又は塩基)とは逆の酸-塩基中和合剤を必要とした。本発明の組成物は、酸性化剤対そのpH調整剤(又は、塩基性化剤対そのpH調整剤)の(主に十分な中和効果を確実にするための)適切な量比、並びに、酸性化剤(又は塩基性化剤)のより小さな薬理学的濃度(例えば、≦15%酢酸、≦5%水酸化ナトリウム)を含み、そのpHが酸(又は塩基)のpHから十分に離れた酸-塩基中和溶液が結果として生じる;
3)その技術的効果は予想を上回った:安全性の点で、従来技術薬物の薬理学的構成は、強い局所刺激作用及び酸(又は塩基)の過剰摂取のリスクをもたらしたが、本発明の組成物の薬理学的構成は、局所刺激作用及び酸(又は塩基)の過剰摂取のリスクを大幅に減らすことができた。有効性の点で、本発明の組成物の薬理学的構成の浸透作用は、より広い範囲の効果的な作用をもたらすことができた。治療有効性及び安全性により、本発明の組成物は、中年及び高年齢の患者、好ましくは局所刺激作用及び酸(又は塩基)の過剰摂取のリスクがある高齢者に対して、従来技術薬物よりも適したものとなった。
【0287】
上記の実施例の結果及び他の類似の試験の結果に基づき、本発明の酸-塩基中和合剤及びその同時投与物質の組成物(本発明の組成物)は、以下の点で、局所作用薬物(例えば、エタノール、高濃度の酸、高濃度の塩基等)及びその同時投与物質を含む従来技術の予想組成物(従来技術薬物と略される)の予想を上回った:
1)その薬理は予想を上回った:従来技術組成物の特徴的な薬理は、せいぜい局所効果の相乗作用であり、本発明の組成物の特徴的な薬理は、酸-塩基中和合剤の効果的な組織間浸透を含む相乗効果であった;
2)その薬理学的構成は予想を上回った:浸透効果を有する上記の酸-塩基中和合剤の薬理学的構成は予想を上回った;
3)その技術的効果は予想を上回った:酸-塩基中和合剤からの効果的な組織間浸透効果を含む相乗効果は、従来技術組成物から予想されるものを超える中期の治療有効性をもたらすことができた。
【0288】
実施例1の方法によって調製した本発明の一部の他の組成物(各実施例における相乗的組成物等)も、上記の様々な腫瘍の治療の使用において類似の結果を得ることができる。
【0289】
局所病変症状を伴う疾患、特に難治性の疾患に対する局所投与による介入的治療は、通常、腫瘍をモデルとする。局所病変に関連する疾患の中でも、腫瘍のメカニズムは極めて複雑であり、最も治療が困難である。腫瘍をモデルとして使用することによって得られる局所薬物投与の技術的解決策は、通常、他の局所病変関連疾患にも適用可能である。以下の実験は、本発明の組成物のより多くの応用を研究する。
【0290】
本明細書において記載されているものに加えて、本発明の様々な修正が、上述の記載から当業者には明らかになる。そのような修正は、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図している。本明細書において参照されている全ての特許、出願、雑誌記事、書籍、及びいかなる他の開示も含む各参考文献は、その全体を参照により本明細書において援用する。
【国際調査報告】