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特表2023-543863ドナー造血細胞キメリズム並びに臓器及び組織移植並びに自己免疫寛容
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】ドナー造血細胞キメリズム並びに臓器及び組織移植並びに自己免疫寛容
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20231011BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20231011BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231011BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALN20231011BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P37/06
A61K38/17 100
A61K35/17
C12N5/0789
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519754
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 US2021052346
(87)【国際公開番号】W WO2022072320
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/085,717
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ロフスキー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ストロバー,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,エバレット ハートゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンセン,ケント
(72)【発明者】
【氏名】バスキュー,ステファン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BA21
4B065BD12
4B065BD50
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA34
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB44
4C087BB64
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZB08
(57)【要約】
生きている、及び/又は死亡したドナーの造血細胞の注入を使用した臓器及び組織移植並びに自己免疫寛容の達成のための組成物及び方法が提供される。本明細書に提供される方法は、ATGが含まれるか否かに応じて、複数の線量の総リンパ照射(TLI)、及び本明細書では「TLI-svldTBI-ATG」又は「TLI-svldTBI」と称される単回の非常に低線量のTBI(svldTBI)を用いたコンディショニングを提供する。svldTBIとTLIとの組み合わせは、非リンパ組織常駐記憶免疫細胞を特異的に標的とする。インビトロ改変ドナー細胞組成物は、コンディショニングレジメンとともに使用するために提供され、特定の比率のCD34及び他の造血幹細胞及び前駆細胞集団が、定義された用量のCD3T細胞、並びに/又は精製された制御性T細胞(Treg)細胞、インバリアントナチュラルキラー(iNK-T)細胞、及び/若しくはCD8記憶T細胞と組み合わされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシピエントにおいて免疫寛容を達成するための方法であって、
前記レシピエントを、複数の総リンパ照射線量、及び40~140cGyの非常に低い全身照射(svldTBI)の単回線量で調節することと、
前記レシピエントに、インビトロで操作されたドナーの造血幹細胞産物を注入することと
を含んでおり、
前記レシピエントが、ドナー造血細胞との安定した、高レベルの混合キメリズムを達成する、
方法。
【請求項2】
前記ドナーが、前記レシピエントに対して1つ以上のMHCミスマッチを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドナーが、前記レシピエントに対して3つ以上のMHCミスマッチを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドナーが、生きている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドナーが、死亡している、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記造血幹細胞産物の注入後に、前記レシピエントに固体組織又は臓器が移植される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レシピエントが、自己免疫疾患を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記造血幹細胞産物が、再生医療の利益を提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の総リンパ照射線量が、0.8Gyの分割線量で送達される7.2~8Gyの総線量を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1つ以上の用量のATGが、前記レシピエントに投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
最終照射線量が、svldTBI線量である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記造血幹細胞産物が、約4~約20×10CD34細胞/kgレシピエント体重の凍結前値を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記造血幹細胞産物が、前記CD34細胞の注入後0~3日で注入された、約8~約100×10CD3細胞/kgレシピエント体重の凍結前値を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記造血幹細胞産物が、前記CD34細胞の注入後0~3日で注入された、約1~約12×10細胞/kgのドナー由来のCD8記憶T細胞の凍結前値を有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記CD8記憶T細胞が、CD3/CD8/CD45RA/CD45RO細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記CD8記憶T細胞が、CD3細胞の代わりに提供される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記造血幹細胞産物が、前記CD34細胞の注入後0~4日で注入された、約1~約10×10細胞/kgのTreg細胞の凍結前値を有する、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記Treg細胞が、CD4CD25FoxP3細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ドナーTreg細胞が、1:50~3:1の範囲のTreg:CD3T細胞の比率で、ドナーCD3T細胞と組み合わされる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
CD34細胞対CD3T細胞の比率が、約1:4~約1:15である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項21】
前記比率が、約1:10である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
約4~約20×10CD34細胞/kgレシピエント体重の凍結前値を有する、操作された造血幹細胞産物。
【請求項23】
約8~約100×10CD3細胞/kgレシピエント体重を含む、請求項22に記載の造血幹細胞産物。
【請求項24】
約1~約12×10細胞/kgのドナー由来のCD8記憶T細胞を含む、請求項22又は23に記載の造血幹細胞産物。
【請求項25】
前記CD8記憶T細胞が、CD3/CD8/CD45RA/CD45RO細胞である、請求項24に記載の造血幹細胞産物。
【請求項26】
前記CD8記憶T細胞が、CD3細胞の代わりに提供される、請求項24に記載の造血幹細胞産物。
【請求項27】
約1~約10×10細胞/kgのTreg細胞の凍結前値を含む、請求項22~26のいずれか一項に記載の造血幹細胞産物。
【請求項28】
前記Treg細胞が、CD4CD25FoxP3細胞である、請求項27に記載の造血幹細胞産物。
【請求項29】
ドナーTreg細胞が、1:50~3:1の範囲のTreg:CD3T細胞の比率で、ドナーCD3T細胞と組み合わされる、請求項27又は28に記載の造血幹細胞産物。
【請求項30】
前記CD34細胞対CD3T細胞の比率が、約1:1~約1:15である、請求項23に記載の造血幹細胞産物。
【請求項31】
前記比率が、約1:10である、請求項30に記載の造血幹細胞産物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
生きている、及び死亡したドナーの臓器及び組織(腎臓、肝臓、肺、心臓、膵臓、膵島、腸、及び複合組織移植)のレシピエントは、免疫媒介性臓器移植拒絶反応を防ぐために、免疫抑制(IS)薬の組み合わせを厳格かつ生涯にわたって遵守する必要がある。より新しいIS薬剤の組み合わせは、急性(早期)移植片拒絶反応の割合をわずかに改善している。
【0002】
免疫媒介性拒絶反応による急性(移植の最初の1年以内)移植片喪失のリスクは、ほぼ全ての事例で約5~15%である。移植の最初の年を超え、IS薬物併用を継続しているにもかかわらず、慢性免疫媒介拒絶反応による移植片の喪失(年間約5%)が続いている。死亡したドナーの臓器及び生きているドナーの臓器の大部分は、それぞれ移植後8年以内及び15年以内に失われる。腎移植の場合、移植片喪失後の長期生存率は低く、肺移植及び心臓移植のレシピエントにとっては更に悪い。
【0003】
IS薬物自体が、慢性同種移植血管障害、糖尿病、感染症、がん、心臓病、高血圧、腎機能障害、並びに骨粗しょう症及び骨減少症を含むが、これらに限定されない重大な医学的併存症を誘発する及び/又はそれらに強く関連することが十分に確立されている。例えば、心臓移植から5年を超えると、多剤併用ISに起因するIS関連悪性腫瘍は、年間死亡数の20%超を占める。
【0004】
現在、生きている関連及び非関連ドナー並びに死亡ドナーの臓器及び造血細胞の併用移植後に持続的な混合キメリズムを確立するための既存の方法は存在しない。臓器移植レシピエントにおける持続的な混合ドナー造血細胞キメリズムの確立は、免疫寛容をもたらし、これらのニーズを満たす可能性がある。成功する安全な臓器移植の主な制限的特徴は、急性及び慢性免疫媒介性移植片拒絶反応、並びにIS薬物の併用によって誘発される医学的併存疾患である。副作用を伴うIS薬の生涯にわたる必要性を排除し、腎臓、肝臓、心臓、肺、及び腸移植を含む、生きている、及び死亡したドナーの臓器移植の免疫媒介拒絶を防止するための医療的ニーズがまだ満たされていない。
【発明の概要】
【0005】
生きている、及び/又は死亡したドナーの造血細胞の注入を使用した臓器及び組織移植並びに自己免疫寛容の達成のための組成物及び方法が提供される。
【0006】
一実施形態では、レシピエントコンディショニングの新規方法が提供される。この独自の方法では、総リンパ照射(TLI)は、複数の線量、例えば、少なくとも約5、6、7、8、9、10以上の投与線量にわたって分割され、単回の非常に低線量の全身照射(svldTBI)と組み合わされ、本明細書で「TLI-svldTBI」と称される。TLI線量は、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)と組み合わせることができ、このプロトコルは、「TLI-svldTBI-ATG」と称される。典型的には、svldTBIは、移植前の最終放射線量である。svldTBIの放射線量は、約40~約140cGy、約50~約120cGy、約75~約100cGyである。
【0007】
svldTBIとTLI-ATGとの組み合わせは、非リンパ系組織記憶免疫細胞を特異的に標的とすることによって、レシピエント免疫細胞の枯渇を誘導する。svldTBIは、BMTプロトコルで使用されるTBIベースのレシピエントレジメン、例えば、重度の血球減少症、粘膜炎、及び他のGI毒性を伴う骨髄形成不全に関連する毒性を誘導するには低すぎる線量で投与される。非リンパ組織常駐レシピエント免疫細胞を標的とし、枯渇させることは、骨髄形成不全を誘発することなく、持続的な混合ドナー造血細胞キメリズムの割合の改善をもたらすことができ、移植片対宿主疾患(GVHD)のリスクを回避する。いくつかの実施形態では、TLI-svldTBIコンディショニングレジメンは、ドナー由来のCD34及びCD3T細胞の非生理学的比率を含むドナー細胞組成物と組み合わせて使用される。
【0008】
一実施形態では、インビトロ改変ドナー細胞組成物が提供され、特定の比率のCD34及び他の造血幹細胞及び前駆細胞集団が、定義された用量のCD3T細胞、並びに/又は精製された制御性T細胞(Treg)細胞、インバリアントナチュラルキラー(iNK-T)細胞、及び/若しくはCD8記憶T細胞と組み合わされる。細胞は、生きているドナーから、例えば末梢血から単離されてもよい。一実施形態では、細胞は、死亡したドナーからの骨髄、脾臓、リンパ節などの血液組織から単離される。改変細胞組成物は、TLI-svldTBI又はTLI-svldTBI-ATGコンディショニングレジメンと組み合わせて特に使用される。改変細胞組成物は、GVHDのリスクなしに持続性ドナー細胞キメリズムを誘導する。注入されたドナー細胞の持続的な混合キメリズムは、臓器及び組織移植耐性、並びに自己免疫疾患を有する患者における寛容を可能にし得る。
【0009】
生きているHLAミスマッチ関連ドナー及び非関連ドナーの場合、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)+/-モゾビルを使用してドナー造血細胞を動員することができ、ドナーは、血液単核細胞を得るために1日又は2日連続して大量(12リットル超)血液アフェレーシスを受ける。アフェレーシス収集は、製造業者のガイドラインに従って、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は磁気活性化細胞選別(MACS)のいずれかを使用して、CD34細胞濃縮のために処理される。
【0010】
CD34濃縮生成物は、標準的な様式で凍結保存される。凍結前のCD34細胞純度は、少なくとも約70%超である。CD34細胞用量は、約4~約20×10CD34細胞/kgレシピエント体重、例えば約4×10CD34細胞/kg、約10×10CD34細胞/kg、約12×10CD34細胞/kg、約14×10CD34細胞/kg、約16×10CD34細胞/kg、約18×10CD34細胞/kg、約20×10CD34細胞/kgの凍結前値を有する。
【0011】
いくつかの場合では、CD34濃縮ステップ後の非CD34細胞画分を使用して、定義された用量のCD3T細胞が得られ、通常の様式で凍結保存される。CD3細胞の凍結前用量は、約25~約100×10CD3/kgレシピエント体重、例えば約25×10CD3/kg、約35×10CD3/kg、約45×10CD3/kg、約50×10CD3/kg、最大約100×10CD3/kg、最大約90×10CD3/kg、最大約80×10CD3/kg、最大約70×10CD3/kg、最大約60×10CD3/kgである。
【0012】
いくつかの実施形態では、CD3/CD8/CD45RA/CD45ROとして定義され得るドナー由来のCD8記憶T細胞の濃縮集団は、約1~約12×10細胞/kg、例えば、約1×10細胞/kg、約2×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約12×10細胞/kg、約10×10細胞/kg、約8×10細胞/kgの用量で提供される。記憶細胞は、CD34濃縮細胞産物の約0~約3日後、例えば、CD34濃縮細胞産物の約0~3日後、約1~3日後、約2~3日後に注入され得る。いくつかの実施形態では、CD8記憶T細胞は、CD3細胞の代わりに提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、FACS又はMACS法によって濃縮されたCD4CD25FoxP3として定義され得るドナー由来のTreg細胞は、ドナーCD34濃縮細胞の注入後約0~約4日で、約1~約10×10細胞/kg、例えば、約1×10細胞/kg、約2×10細胞/kg 約4×10細胞/kg、約6×10細胞/kgから、約12×10細胞/kg、約10×10細胞/kg、約8×10細胞/kgまでの用量で注入される。Treg細胞は、CD34濃縮細胞産物の約0~約4日後、例えば、CD34濃縮細胞産物の約0~3日後、約1~3日後、約2~3日後に注入され得る。いくつかの実施形態では、ドナーTreg細胞は、1:50、1:20、1:10、1:5、1:2、2:1~3:1の範囲のTreg:CD3T細胞の比率で、ドナーCD3T細胞と組み合わされる。
【0014】
死亡したドナーからの組織は、臓器移植又は組織移植を受ける患者の臨床使用のためにバンクされることができ、組織は、また、難治性及び再発性自己免疫疾患の制御のための細胞療法を受ける患者における移植のために使用され、また再生医療療法にも使用される。関心がある組織としては、脾臓及び骨髄由来の造血幹細胞及び前駆細胞集団、間葉系幹細胞、間質細胞CD3Th1/Th2Th17/Tfh T細胞、CD19B細胞、制御性T細胞(Treg)及びインバリアントナチュラルキラー(iNK T細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
全ての程度のHLAミスマッチの臓器移植におけるドナーとレシピエントの対のための持続的な混合キメリズムを確立するための方法が提供される。本明細書に開示される新規のコンディショニングレジメン(TLI-svldTBI-ATG)は、ドナーCD34、CD3、及び/若しくはCD8記憶T細胞、並びに/又はTreg細胞の独自の組成物と組み合わせて、持続的な混合キメリズムを補助し、GVHDから保護する。持続的な混合キメリズムの達成は、移植臓器耐性及び免疫抑制薬の最小限化及び/又は停止を可能にする。
【0016】
本開示の一態様は、9線量のTLIのレシピエント移植耐性コンディショニングレジメンであり、1つのsvldTBIは、ATGと組み合わせて、臓器移植における持続的な混合キメリズムを確立する。svldTBI線量は、以前に説明されていなかった、又は臨床的に意味があると考えられていなかった、ひいては非直感的な開示を表す放射線量を用い、svldTBIは、ドナー造血細胞生着に抵抗する組織常駐宿主免疫細胞の臨床的に意味がある枯渇及び持続的な混合キメリズムの確立を提供する。TLI-svldTBI-ATGレシピエントコンディショニングの使用は、レシピエント免疫細胞を変化及び枯渇させ、全ての程度のHLAミスマッチの死亡したドナーの臓器移植のレシピエントにおける持続的なドナー細胞キメリズムを促進する。したがって、TLIのみのコンディショニングレジメンと比較して、はるかに少ない数のCD34造血細胞が造血細胞生着を達成することができる。移植耐性は、任意の固体組織に対して達成され、これには、生きている関連及び非関連、並びに死亡したドナーの臓器、例えば、腎臓、心臓、肺、肝臓、腸などのレシピエントに対する耐性、並びに全ての程度のHLAミスマッチを含む組織及び複合組織移植が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物は、自己免疫障害を有するレシピエントの治療に利用される。免疫系は、例えば、T-、B-、ナチュラルキラー(NK)、及び制御性T(Treg)細胞が関与する、これらの疾患の病因において重要な役割を有する。自己免疫性障害の治療のための従来の疾患修飾療法は、有効性を示しているが、疾患発症の根底にある免疫調節異常を「リセット」及び「回復」するものはない。本出願で概説される造血細胞サブセットの注入は、自己免疫疾患の根底にある免疫調節不全をリセットし、回復させる。いくつかの実施形態では、TLI-svldTBIを使用するレシピエントコンディショニングは、細胞注入の直前に施される。この治療は、非常に効果的で耐久性がある疾患制御を可能にする方法で免疫寛容を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物は、再生医療療法を受ける患者における耐性を誘導するために利用される。老化、疾患、及び損傷による臓器及び組織の喪失は、組織を再生し、移植への依存を減少させることができる治療法の開発を促す。再生医療は、再生を促進するために工学的組織を適用し、機能不全、病気、及び損傷した組織及び全臓器を回復させることができる。具体的には、ドナー脾臓及び骨髄から得られた細胞サブセットは、細胞注射、いくつかの場合では遺伝子操作された細胞、又は免疫調節によってその環境を変化させることによって、宿主の本質的な再生能力を増強することができる。有益な治療応答は、成長因子の分泌、及び宿主細胞との相互作用などの間接的な手段を介して得られ、宿主への細胞自体の顕著な組み込み、又は移植された細胞がバルク組織を形成することなく得られる。注射/注入された細胞は、このメカニズムを介して組織再生を改善するために細胞外マトリックス(ECM)を変化させることによって、正常な老化による臓器機能不全を回復し、損傷又は病気の環境を矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むと最もよく理解される。一般的な実施によれば、図面の様々な特徴は、縮尺どおりでないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小される。図面には、以下の図が含まれる。
【0020】
図1】生きているドナーの腎臓移植の例を示す。レシピエントへのHLAミスマッチ腎臓ドナーは、血液アフェレーシスを受け、CD34及びCD3T細胞の独自の非生理学的比率を与えるために細胞産物を操作する。いくつかの場合では、ドナーTreg及びCD8T記憶細胞も、CD34、CD3T細胞産物に独自の非生理学的比率で加えられる。この生成物は、「ミスマッチ生体ドナー造血細胞」(mmLD-HC)とラベル付けされ、凍結保存される。その後のある時点で(数週間から数カ月)、患者は、mmLD-HCが製造されたのと同じドナーから通常の様式で腎臓移植を受ける。腎移植直後、レシピエントは、TLI-svldTBI-ATGからなる「使用患者」に記載される独自の移植コンディショニングを開始する。TLI-svldTBI-ATGが完了すると、ドナー細胞接種体が解凍され、細胞が静脈に注入される。患者は、6カ月を超えて持続する混合ドナー細胞キメリズムを有し、腎移植片拒絶反応及び移植片対宿主病の証拠がないことが予測される。標準的な腎移植後免疫抑制薬は、約12カ月の期間にわたってゆっくりと止める。レシピエントは、持続する混合ドナー細胞キメリズムを維持することが予測され、したがって、レシピエントは、全ての免疫抑制薬を完全に停止し、腎臓移植片拒絶反応のリスクなしに正常な移植片機能を維持することが予測される。
図2】死亡したドナーの腎臓の移植の例を示す。この例に示されるような臓器調達チームは、通常の様式でドナーの腎臓を採取し、脊柱及び脾臓も採取する。死亡したドナーの腎臓は通常の様式で移植され、その後まもなく(7日以内に)レシピエントはTLI-svldTBI-ATGの独自のコンディショニングを開始する。患者が移植及びTLI-svldTBI-ATGを受けている間、研究室は、混合造血細胞キメリズムを誘発する独自の細胞産物を製造している。死亡したドナーの椎体骨髄及び脾臓から得られた細胞は、生きているドナーからアフェレーシスによって得られた造血前駆細胞及び免疫細胞にある程度類似した表現型プロファイルを有し得るが、基本的に生理学的に異なるため、新たな組成物を表す。組成物に概説されている細胞は、製造され、死亡したドナーの椎体及び脾臓細胞(ddVB+/-SPLN)として標識され、凍結保存される。ddVB+/-SPLN細胞産物を、TLI-svldTBI-ATGコンディショニング後に解凍し、レシピエント静脈に注入して、持続的な混合造血細胞キメリズムを確立する。患者は、12カ月を超えて持続する混合ドナー細胞キメリズムを有し、腎移植片拒絶反応及び移植片対宿主病の証拠がないことが予測される。標準的な腎移植後免疫抑制薬は、約12カ月の期間にわたってゆっくりと止める。レシピエントは、持続する混合ドナー細胞キメリズムを維持し、したがって、レシピエントは、全ての免疫抑制薬を完全に停止し、腎臓移植片拒絶反応のリスクなしに正常な移植片機能を維持し得ることが予測される。
図3】造血細胞命名法を定義する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の開示は、生きている、及び/又は死亡したドナーの造血細胞の注入を使用して、臓器及び組織移植並びに自己免疫寛容を達成する方法を説明する。定義により、臓器及び組織「移植耐性」又は「耐性」は、免疫抑制薬を必要とせず、臓器又は組織移植片拒絶反応の証拠がない、正常な臓器及び組織移植グラフト機能を指す。「移植片拒絶反応」という用語は、早期(急性)及び後期(慢性)移植拒絶反応の両方を包含する。移植片拒絶反応では、移植された組織はレシピエントの免疫系によって拒絶され、破壊される。
【0022】
いくつかの実施形態では、臓器移植又は組織移植を受けている患者に利益を提供し、臓器移植及び組織移植耐性を促進する相互依存性成分が提供され、これらの成分は、また、限定されないが、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(ループス)、炎症性腸疾患、多発性硬化症(MS)、1型糖尿病、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、及び乾癬を含む、難治性及び再発性自己免疫性疾患の制御のための細胞療法を受けている患者に適用され得る。本明細書に記載される概念は、再生医療の分野においても利点を提供する。
【0023】
本発明の開示に適用される「再生医療」という用語は、正常な機能を回復又は確立するためにヒト細胞、組織又は臓器を置き換える、又は再生するプロセスをもたらす、死亡したドナーの脾臓又は骨髄由来の細胞サブセットのいずれかの細胞工学、遺伝子組換え及び改変を含むがこれらに限定されない多数の戦略を包含する。これには、この場合、脾臓及び骨髄細胞に独自に由来する細胞療法を投与することによる、加齢、疾患、及び損傷による臓器及び組織喪失の回復が含まれる。
【0024】
本開示の好ましい態様が本明細書に示され、説明されているが、本開示は、以下に記載される本開示の特定の態様に限定されるものではなく、特定の態様の変形がなされてもよく、依然として添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。また、使用される用語は、本開示の特定の態様を説明することを目的としており、限定的であることが意図されるものではないことも理解されるべきである。代わりに、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段に指定しない限り、複数の参照を含む。
【0025】
値の範囲が提供される場合、別段文脈が明らかに示さない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの介在する各値、及び記述の範囲内の任意の他の記述の値又は介在する値が、本明細書で提供される開示に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の特異的に除外された制限に従って、本発明内に包含されてもよい。記載された範囲が限定の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限定のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本明細書で提供される開示に含まれる。
【0026】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法、デバイス及び材料と類似又は同等の任意の方法、デバイス及び材料は、本開示の実施又は試験に使用することができるが、ここでは、好ましい方法、デバイス及び材料を説明する。
【0027】
死亡した源からの造血細胞に関して、健康な生きているドナーからアフェレーシスによって得られるHSC及び免疫細胞と比較して、死亡したドナー(dd)骨髄(BM)細胞から得られる造血幹細胞(HSC)及び免疫細胞の細胞組成及び免疫特性には有意な差がある。
【0028】
死亡したドナーの骨髄及び脾臓細胞の場合、循環からの細胞の汚染なしに、VB、骨盤、大腿骨若しくは十分な細胞を含有する他の骨からの、又は脾臓からの純粋な常駐骨髄細胞が得られる。アフェレーシス収集の場合、細胞産物は血液から直接得られ、骨髄空間から血液中に放出される動員された造血前駆細胞を含有する。同様に、アフェレーシスによって収集される免疫細胞集団は、死亡したドナーの骨髄及び脾臓細胞を採取することによって得られる免疫細胞の集団とは異なる。細胞集団は、異なる生理学的特性を有する。表1は、これらの違いを示す。
【0029】
造血幹細胞集団の場合、CD34細胞は、アフェレーシスによって収集された生成物と比較して、死亡したドナーの椎体(ddVB)骨髄(BM)細胞中のゲーティングされた生きたCD45細胞の中でより高いパーセンテージで存在する。多能性の長期的な造血幹細胞(LT-HSC)及び共通の骨髄性前駆細胞(CMP)は、ddVB BM細胞産物においてより頻繁である。多能性前駆体(MPP)及び一般的なリンパ系前駆体(CLP)は、生きているドナーのアフェレーシス産物においてより一般的である。HSCの命名法を強調する図3も参照されたい。
【0030】
免疫細胞サブセットの場合に、CD3T細胞コンパートメントは、アフェレーシス収集においてはるかに豊富である。制御性及び抑制性Treg細胞及びナチュラルキラー(NK)T細胞は、ddVB BM細胞産物においてより一般的である。これらの細胞は、GVHD反応を抑制し、ドナー細胞生着を増強し得る。骨髄由来抑制細胞(MDSC)は、ddVB BM細胞中のそれらのパーセンテージと比較して、G動員アフェレーシス産物中の有核細胞のパーセンテージとしてより頻繁である。これらの未成熟骨髄細胞は、臓器移植後のアロ反応性免疫応答を阻害し、混合キメリズム及び臓器移植耐性を促進するために役立つ制御性及び抑制性の性質を有する(例えば、Blood Advances 2021:Vol5,issue 17,2021:Development of immunosuppressive myeloid cells to induce tolerance in solid organ and hematopoietic cell transplant recipientsを参照されたい)。
異なる細胞組成は、死亡したドナーの産物がCD34細胞の数がより少ない持続的な混合キメリズムを確立し得る理由を強調し得る。より多くのLT-HSC及びCMPがあり、これらは長期のドナー細胞生着を促進する上で重要である。
【0031】
【表1】
【0032】
定義により、臓器及び組織「移植耐性」又は「耐性」は、免疫抑制薬を必要とせず、臓器又は組織移植片拒絶反応の証拠がない、正常な臓器及び組織移植グラフト機能を指す。移植片拒絶反応という用語は、早期(急性)及び後期(慢性)移植拒絶反応の両方を包含する。移植拒絶反応では、移植された組織はレシピエントの免疫系によって拒絶され、破壊される。
【0033】
がん患者を治療するために血液及び骨髄移植(BMT)で使用される従来の(15年超)レシピエントコンディショニングレジメンは、a)TLI-ATGと呼ばれる抗胸腺細胞グロブリン(ATG)と組み合わされた総リンパ照射(TLI)、及びb)化学療法の追加あり、又はなしでの全身照射(TBI)である。これらのレジメンは、レシピエント骨髄幹細胞ニッチ及び免疫細胞を枯渇させて、骨髄「空間」を形成し、それぞれ、注入されたドナー細胞接種体のレシピエント免疫媒介性拒絶を防止し、それによって、レシピエントからドナー型の造血細胞への完全な転換を可能にする。完全なキメリズムは、がん治療に役立つ有益な移植片対腫瘍(GVT)反応と関連しているため、がん患者に対するBMTの目標は、完全なドナー細胞キメリズムの確立である。
【0034】
IS薬物最小限化は、維持用低治療用量単剤IS単剤療法として定義され、従来のマルチIS薬物レジメンによって引き起こされる医学的併存疾患とは関連しない。免疫抑制のためのIS薬物及び生物学的疾患修飾薬物の使用は、重大な医学的併存疾患(結核、敗血症及び肺炎を含む細菌感染、浸潤性真菌、ウイルス及び他の日和見感染を含む重篤感染症、進行性多発性白質脳症、リンパ腫、がん、肝胆管疾患、うっ血性心不全並びに自己免疫様障害)を発症するリスクに関連する。
【0035】
混合キメリズムは、そのような分析において1%ドナー超であるが95%ドナー未満のDNAであると定義される。混合キメリズムを示す個体は、キメリズムの進展に従って更に分類することができ、混合キメリズムの改善は、少なくとも6カ月間にわたるドナー細胞の割合の連続的な増加として定義される。安定した混合キメリズムは、ドナー細胞を完全に喪失せずに、時間経過に伴うレシピエント細胞のパーセンテージの変動として定義される。免疫抑制の離脱の候補は、移植後少なくとも6カ月まで混合キメリズムを有する。
【0036】
本明細書に開示される方法及び組成物は、高レベルの混合キメリズムを提供し、これは、少なくとも約20%のドナー型、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、又はそれ以上である血液細胞を有すると定義され得る。混合キメリズムは、安定しており、すなわち、少なくとも約6ヵ月、少なくとも約9ヵ月、少なくとも約12ヵ月、少なくとも約18ヵ月、少なくとも約2年、又はそれ以上の期間、少なくとも約20%のドナー血液細胞を提供する。
【0037】
「主要組織適合性複合体抗原」(「MHC」、「ヒト白血球抗原」、HLAとも呼ばれる)は、これらの細胞に独自の抗原同一性を付与する細胞の表面上に発現されるタンパク質分子である。MHC/HLA抗原は、免疫エフェクター細胞と同じ造血幹細胞源に由来するもの(「自己」)又は別の造血再構成細胞源に由来するもの(「非自己」)としてT細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞によって認識される標的分子である。HLA抗原の2つの主要なクラス:HLAクラスI及びHLAクラスIIが認識されている。HLAクラスI抗原(ヒトではA、B、及びC)は、各細胞を「自己」として認識可能にするが、HLAクラスII抗原(ヒトではDR、DP、及びDQ)は、リンパ球と抗原提示細胞との間の反応に関与する。どちらも、移植された臓器の拒絶反応に関与している。
【0038】
HLA遺伝子系の重要な側面は、その多型である。各遺伝子、MHCクラスI(A、B、及びC)並びにMHCクラスII(DP、DQ及びDR)は、異なる対立遺伝子に存在する。HLA対立遺伝子は、数字及び添字で指定される。例えば、2つの無関係の個体は、それぞれクラスI HLA-B、遺伝子B5、及びBw41を保有し得る。対立遺伝子産物は、α及び/又はβドメイン内の1つ以上のアミノ酸が異なる。特定の抗体又は核酸試薬の大きなパネルは、クラスI及びクラスII分子を発現する白血球を使用して個体のHLAハプロタイプをタイピングするために使用される。HLAタイピングにとって最も重要な遺伝子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRそれぞれの2つの対立遺伝子であるMHCクラスI及びクラスIIタンパク質の8つの高発現対立遺伝子である。
【0039】
HLA遺伝子は、6つの古典的な移植HLA遺伝子と、免疫系の調節並びにいくつかの他の基本的な分子及び細胞プロセスにおいて重要な役割を有する少なくとも132のタンパク質コード遺伝子とをコードする染色体位置6p21に存在する「スーパー遺伝子座」にクラスタ化される。完全な遺伝子座は約3.6Mbであり、少なくとも224の遺伝子座がある。このクラスタ化の1つの効果は、「ハプロタイプ」、すなわち、一方の親から遺伝した単一の染色体上に存在する対立遺伝子のセットが、群として遺伝する傾向があることである。各親から遺伝した対立遺伝子のセットは、いくつかの対立遺伝子が一緒に会合する傾向があるハプロタイプを形成する。いくつかの対立遺伝子及びハプロタイプが他の対立遺伝子よりも一般的であり、それらは異なる人種及び民族集団において異なる頻度で分布するため、患者のハプロタイプを同定することは、適合ドナーを見出す確率を予測するために役立ち、検索戦略の開発を支援することができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「HLAマッチ」という用語は、HLA抗原のいずれもドナーとレシピエントとの間でミスマッチでない、ドナーレシピエント対を指す。HLAマッチ(すなわち、8つの対立遺伝子の全てがマッチした)ドナー/レシピエント対は、ミスマッチ対(すなわち、8つの対立遺伝子のうちの少なくとも1つがミスマッチしている)と比較して、移植片対宿主疾患(GVHD)のリスクが低下している。
【0041】
本明細書で使用される場合、「HLAミスマッチ」という用語は、少なくとも1つのHLA抗原が、特にHLA-A、HLA-B、及びHLA-DRに関して、ドナーとレシピエントとの間でミスマッチである、ドナーレシピエント対を指す。いくつかの場合では、一方のハプロタイプがマッチし、他方がミスマッチである。このような状況は、しばしば生きている、又は死亡したドナーからの臓器で見られる。HLAミスマッチドナー/レシピエント対は、完全にマッチした(すなわち、8つの対立遺伝子全てがマッチしている)対と比較して、GVHDのリスクが増加している。
【0042】
HLA対立遺伝子は、典型的には、様々なレベルの詳細で記述される。殆どの命名は、HLA及び遺伝子座の名称で始まり、次いで、*及び対立遺伝子を特定するいくつかの(偶数)桁数である。最初の2桁は、対立遺伝子の群を特定する。古いタイピング方法論は、対立遺伝子を完全に区別できないことが多く、このレベルで中断した。第3桁から第4桁は、同義の対立遺伝子を特定する。第5桁から第6桁は、遺伝子のコードフレーム内の任意の同義の変異を示す。第7桁及び第8桁は、コード領域外の変異を区別する。L、N、Q、又はSなどの文字が、発現レベル又はこれに関する既知の他の非ゲノムデータを特定するために、対立遺伝子の命名後にあってもよい。したがって、完全に説明される対立遺伝子は、HLA-prefix及び遺伝子座表記を含まない、最大9桁の長さであり得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「レシピエント」は、一般に同じ種の別の個体(ドナー)からの臓器、組織、又は細胞が移植された個体である。本開示の目的のために、レシピエント及びドナーは、HLAマッチ又はHLAミスマッチのいずれかである。
【0044】
本明細書で使用される場合、「固形臓器移植」という用語は、この用語の従来の意味に従って使用され、ドナーからの臓器(ドナーは生きていてもよく、又は死亡していてもよい)は、レシピエントの体内に適切な位置に置かれ、心血管接続は、レシピエントに生理学的に統合される。移植のための関心がある固形臓器としては、当該技術分野において知られているように、腎臓、膵臓及び膵島細胞、心臓、肺、腸、肝臓、結腸などが挙げられる。移植された臓器は、「移植片」と呼ばれ得、臓器の生理学的統合は、生着と称され得る。
【0045】
造血幹細胞移植(HCT)は、通常は骨髄、末梢血、又は臍帯血に由来する、多能性造血幹細胞の移植である。本開示の方法に関して、造血細胞は、2つの生成物のうちの1つに操作され得る。造血細胞は、特定の所定数の精製(例えば、70%以上の純度)CD34前駆細胞及びCD3T細胞を有する注入用の生成物に操作される。造血細胞は、固形臓器ドナーから得ることができ、したがって固形臓器とHLAマッチし、臓器レシピエントとHLAミスマッチである。造血細胞は、固形臓器ドナーから得ることができ、したがって固形臓器とHLAマッチし、臓器レシピエントとHLAマッチする。
【0046】
ドナーが死亡している場合、造血細胞は、骨髄(例えば、椎骨、骨盤骨など)から得ることができる。ドナーが生きているドナーである場合、造血細胞は、動員され(例えば、G-CSFで)、アフェレーシス又は同様の方法によって収集され得る。あるいは、細胞は、骨髄(例えば、骨盤骨など)から得ることができる。
【0047】
造血細胞は、かなりの数の細胞を損傷することなく、長期間凍結(例えば、凍結保存)することができる。HSCを凍結保存するには、保存剤であるDMSOを添加しなければならず、氷結晶形成中の浸透圧細胞傷害を予防するために細胞を制御速度冷凍庫で非常にゆっくりと冷却しなければならない。HSCは、典型的には液体窒素を使用する冷凍庫で何年も保管することができる。
【0048】
本明細書で使用される「免疫抑制」とは、主に、移植片に対する宿主免疫系の免疫応答を減少させるために、移植片レシピエントの薬剤による治療を指すが、薬剤は、また、ドナー造血細胞のGVHDを減少させ得る。例示的な免疫抑制レジメンは、本明細書においてより詳細に記載されるが、約6~12カ月の期間、従来のものであってもよい。レシピエントは、造血系の混合キメリズムについて試験され、少なくとも6カ月後に混合キメリズムを維持していたことが判明した場合、免疫抑制を漸減される。
【0049】
移植患者の免疫抑制的治療は、誘導期、術中、及び移植後直ちに開始される。次いで、安定した混合キメリズムを示す個体については、離脱まで維持療法が継続する。誘導及び維持戦略は、移植患者に長期移植片生存の最善の希望を与えるために、特定の用量又は標的治療レベルを達成するように調整された用量で異なる薬を使用する。
【0050】
一次免疫抑制剤には、カルシニューリン活性を阻害するために結合タンパク質と組み合わされるカルシニューリン阻害剤が含まれ、これには、例えば、タクロリムス、シクロスポリンAなどが含まれる。シクロスポリン及びタクロリムスの両方のレベルを注意深く監視しなければならない。最初は、レベルは10~20ng/mLの範囲内に維持することができるが、3カ月後には、腎毒性のリスクを低減するためにレベルをより低く維持することができる(5~10ng/mL)。
【0051】
アジュバント剤は、通常、カルシニューリン阻害剤と組み合わされ、ステロイド、アザチオプリン、マイコフェノール酸モフェチル、及びシロリムスを含む。関心があるプロトコルとしては、ミコフェノール酸モフェチルを有するカルシニューリン阻害剤が挙げられる。補助剤の使用は、臨床医が個々の薬剤の用量及び毒性を減少させながら、適切な免疫抑制を達成することを可能にする。腎移植レシピエントにおけるミコフェノール酸モフェチルは、いくつかの臨床試験で、アザチオプリンと比較して急性細胞拒絶反応の有病率が著しく低下し、1年間の治療失敗が減少した後、免疫抑制において重要な役割を担っている。
【0052】
抗体ベースの療法は、モノクローナル(例えば、ムロモナブ-CD3)若しくはポリクローナル抗体又は抗CD25抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)を使用し、移植後初期(最大8週間)に投与される。抗体ベースの療法は、カルシニューリン阻害剤の回避又は用量低減を可能にし、腎毒性のリスクを減少させ得る。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の副作用プロファイルは、一部の患者におけるそれらの使用を制限する。
【0053】
移植片対宿主疾患(GVHD)は、造血細胞の移植に特有の炎症性疾患である。これは、ドナーの骨髄の免疫細胞によるレシピエントの組織に対する攻撃である。GVHDは、HLA適合移植及び不適合移植の両方のリスクである。GVHDは、ドナー及びレシピエントがHLA適合であっても発生し得るが、それは、免疫系が、それらの組織間の他の違いを依然として認識することができるためである。GVHDは通常、宿主のMHC上に提示される外来ペプチドに反応するT細胞によって媒介される。GVHDのリスクは、完全キメリズムではなく、混合キメリズムを有する患者において著しく低下し、この理由から混合キメリズムを達成することが望ましい。更に、免疫不全及び感染は、混合キメリズムに対して、完全キメリズムにおいてより頻繁に観察される。
【0054】
GVHDには、急性及び慢性の2つの種類がある。急性GVHDは、典型的には、移植後の最初の3カ月に生じ、皮膚、腸、又は肝臓を侵し得る。プレドニゾンなどの高用量コルチコステロイドが、標準治療である。
【0055】
慢性GVHDは、また、ハプロタイプマッチ移植後に発症し得、典型的には、移植後の最初の3カ月後に生じ得る。これは後期治療関連合併症の主な原因であるが、それほど頻繁には死に至らない。炎症に加えて、慢性GVHDは、強皮症と同様の線維症又は瘢痕組織の発症をもたらし得る。これは機能障害を引き起こし得、長期の免疫抑制療法を必要とする。
【0056】
「急性移植拒絶反応」とは、移植された臓器の免疫系による拒絶反応である。急性拒絶反応は、エフェクター機能を実行し、移植された組織を破壊する、レシピエントの免疫細胞による移植された組織の浸潤を特徴とする。急性拒絶反応の発症は急速であり、一般に移植手術後数週間以内にヒトで発生する。
【0057】
一般に、急性拒絶反応は免疫抑制薬で阻害又は抑制される。ステロイドは、急性拒絶反応のエピソードの療法の中心である。典型的な投薬量は3~5日間で3~5mg/kg/日であり、次いで維持用量まで漸減される。ATG及びムロモナブ-CD3もまた使用される。
【0058】
「慢性移植拒絶反応」は、急性拒絶反応の免疫抑制が成功している場合でさえ、移植後数カ月から数年以内にヒトで一般的に生じる。線維症は、全ての種類の臓器移植の慢性拒絶における一般的な要因である。慢性拒絶反応は、典型的には、特定の臓器の特徴である一連の特定の障害によって説明することができる。例えば、肺移植では、そのような障害には、気道の線維増殖性破壊(閉塞性細気管支炎)が含まれ、心臓移植又は弁置換などの心臓組織の移植では、そのような障害には、線維性動脈硬化が含まれ、腎臓移植では、そのような障害には、閉塞性腎症、腎硬化、管間質性腎症が含まれ、肝臓移植では、そのような障害には、消失性胆管症候群が含まれる。
【0059】
慢性拒絶反応は、また、免疫抑制薬に関連する虚血性傷害、移植された組織の変性、高脂血症及び高血圧を特徴とし得る。不十分な免疫抑制が拒絶反応の原因でない限り、免疫抑制療法の変化は、一般に、慢性拒絶反応を逆転させるために有効ではない。血圧の制御、高脂血症の治療、及び糖尿病の管理が、移植片の保存のための治療の現在の中心である。
【0060】
「移植拒絶反応」という用語は、急性及び慢性移植拒絶反応の両方を包含する。移植拒絶反応では、移植された組織はレシピエントの免疫系によって拒絶され、破壊される。急性拒絶反応は、一卵性双生児の場合又は免疫抑制中を除いて、全ての移植である程度生じ得る。急性拒絶反応は、移植後1週間が経過するとすぐに始まる可能性があり、急性拒絶反応の発症の最大のリスクは、移植後の最初の3カ月に生じる。慢性拒絶反応は、移植臓器の長期的な機能喪失である。
【0061】
造血細胞移植喪失は、同種移植後+45日目にドナー起源の造血再構成がないこと(一次移植片拒絶反応)、又はドナー起源造血の一過性移植後にドナー細胞の喪失が確認されることである。腎移植片不全は、クレアチニンクリアランスの10ml/分未満への低下、又は患者が透析に戻ること、又は患者が再移植のための移植リストに戻ることである。
【0062】
キメリズムは、本明細書で使用される場合、概して、特に明記しない限り、造血系のキメリズムを指す。個体が完全キメラ、混合キメラ、又は非キメラであるか否かの決定は、移植片レシピエント、例えば当該技術分野において知られているように末梢血、骨髄などからの造血細胞試料の分析によって行うことができる。任意の好都合なタイピング方法によって分析を行うことができる。いくつかの実施形態では、全ての単核細胞、T細胞、B細胞、CD56NK細胞、及びCD15好中球間でのキメリズムの程度は、マイクロサテライト分析のためのプローブを用いたPCRを使用して定期的に監視される。例えば、ドナー及び宿主起源の短末端反復長における多型を区別する市販のキットが利用可能である。自動リーダーは、人工ドナー及び宿主細胞混合物からの標準曲線に基づいてドナー種細胞の割合を提供する。
【0063】
移植後の任意の時点でそのような分析によって所与の血液細胞系統において95%超のドナー細胞を示す個体は、この移植患者群において完全なドナーキメリズムを有すると称される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「診断」は、概して、対象の疾患又は障害に対する感受性の決定、対象が現在疾患又は障害によって冒されているか否かの決定、疾患又は障害によって冒された対象の予後(例えば、転移前又は転移性のがん状態、がんの段階、又は療法に対するがんの応答性の同定)、及び治療薬の使用(例えば、対象の状態を監視して、療法の効果又は有効性に関する情報を提供する)を含む。
【0065】
「生体試料」という用語は、生物から得られる様々な試料型を包含し、診断又は監視アッセイで使用することができる。用語は、生体起源の血液及び他の液体試料、生検標本若しくは組織培養物又はそれらに由来する細胞などの固体組織試料、並びにその子孫を包含する。用語は、また、試薬での処理、可溶化、又は特定の成分の濃縮など、調達後に任意の方法で操作された試料も包含する。用語は、臨床試料を包含し、細胞培養物中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、体液、及び組織試料も含む。
【0066】
「治療」、「治療すること」、「治療する」などの用語は、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指すために本明細書で使用される。この効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に防止するという点で予防的であり得、並びに/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する有害作用の部分的若しくは完全な安定化又は治癒という点で治療的であり得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療をカバーし、(a)疾患又は症状にかかりやすいが、疾患を有するとまだ診断されていない対象において、疾患又は症状が発生するのを防止すること、(b)疾患症状を阻害すること、すなわち、その発生を阻止すること、又は(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患若しくは症状の退行を引き起こすことを含む。
【0068】
「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、診断、治療、又は療法が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。
【0069】
「移植片管理」という用語は、腎臓移植を含むがこれに限定されない、固形臓器の修復移植を誘導及び/又は促進する治療方法を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、レシピエントの生存率が損なわれる程度まで、レシピエントであるヒト又は動物の生理学を損なわない化合物又は化合物の組み合わせを指す。好ましくは、投与される化合物又は化合物の組み合わせは、レシピエントであるヒト又は動物の健康に対して、最大でも一時的な有害作用を誘発する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、治療用組成物が皮膚の創傷に直接投与されることを可能にする薬剤の任意の薬学的に許容される溶媒を指す。担体は、移植のための臓器の露出表面及び臓器が配置されるレシピエントの部位に組成物を局所的に適用することを可能にする。したがって、本明細書で使用される場合、「担体」は、限定されないが、水、生理食塩水、油-水エマルション、又は任意の他の溶媒若しくは溶媒の組み合わせなどの溶媒、並びにレシピエントであるヒト又は動物に薬学的及び生理学的に許容される当業者に知られている化合物を指す。
【0072】
「評価する」及び「見積もる」という用語は、任意の形態の測定を指すために互換的に使用され、要素が存在するか否かを決定することを含む。「決定する」、「測定する」、「評価する」、及び「アッセイする」という用語は、互換的に使用され、定量的及び定性的決定の両方を含む。評価することは、相対的であっても絶対的であってもよい。「~の存在を評価する」ことは、存在する何かの量を決定すること、並びにそれが存在するか否かを決定することを含む。
【0073】
使用方法及び細胞組成物
本開示の態様は、生きている関連及び非関連、並びに死亡したドナーの臓器(腎臓、心臓、肺、肝臓、及び腸)のレシピエントに臓器移植及び組織移植耐性を提供する方法及び組成物、並びに全ての程度のHLAミスマッチを含む組織及び複合組織移植を含む。本開示の一態様は、TLI-ATGレシピエントコンディショニングレジメンを提供する。本開示の一態様は、ドナー細胞接種用の組成物を提供する。レジメン及び組成物を組み合わせると、全ての程度のHLAミスマッチの生きている関連及び非関連レシピエント並びに死亡したドナー臓器移植において持続的な混合ドナー細胞キメラが確立されることが期待される。持続的な混合キメリズムは、臓器移植片の拒絶を防止しながら、IS薬物の最小限化及び/又はIS薬物の完全な停止を補助する。IS薬物の最小限化(維持用低治療用量単剤IS単剤療法として定義される)は、現在のマルチIS薬物レジメンによって引き起こされる医学的併存疾患と関連するとは予測されない。
【0074】
本明細書の開示の態様は、再発性及び難治性自己免疫障害を有する患者に施される方法及び組成物を含む。これらの疾患の病因における免疫系の重要な役割に関する豊富な証拠があり、T-、B-、ナチュラルキラー(NK)、及び制御性T(Treg)細胞が関与している。これらの免疫細胞型を、いくつかの治療用モノクローナル抗体、サイトカイン遮断薬、及びインテグリン遮断薬で標的化することは、疾患制御及び患者症状の緩和を首尾よく提供することができる。例えば、ナタリズマブは、α4β1インテグリンに結合することによってリンパ球のCNSへの侵入を遮断し、インフリキシマブは、CD52に結合することによってTNF-αを遮断し、アレムツズマブは、T細胞及びB細胞を枯渇させ、オクレリズマブ及びリツキシマブの両方は、CD20に結合することによってB細胞を枯渇させる。自己免疫性障害の治療のための全てのクラスの生物学的疾患修飾療法は、有効性を示しているが、疾患発症の根底にある免疫調節異常を「リセット」及び「回復」するものはない。臓器及び組織移植と同様に、長期及び継続的な維持療法が必要である。継続的使用によって、全てのクラスの生物学的疾患修飾薬物は、重大な医学的併存疾患(結核、敗血症及び肺炎を含む細菌感染、浸潤性真菌、ウイルス及び他の日和見感染を含む重篤感染症、進行性多発性白質脳症、リンパ腫、がん、肝胆管疾患、うっ血性心不全並びに自己免疫様障害)を発症するリスクに関連する。造血細胞サブセットの注入と組み合わせたTLI-svldTBIを使用するレシピエントコンディショニングを施すことは、自己免疫疾患の根底にある免疫調節不全を「リセット」及び「回復」し、非常に有効かつ耐久性がある疾患制御を可能にする様式で免疫寛容を提供し得る。
【0075】
本開示の態様は、臓器において使用され得るTLI-ATGレシピエントコンディショニングレジメン、並びに組織移植及び自己免疫寛容プロトコルを含む。本方法は、単回の非常に低線量のTBI(svldTBI)を投与することを含む。「TLI-svldTBI-ATG」と呼ばれる本明細書のコンディショニングレジメンは、以下に記載される(時折、いくつかの場合ではATGを省略してもよい)。svldTBIの使用は、TLI、ATG、又はTLI-ATGによって標的化されていない非リンパ組織常駐免疫細胞を特異的に標的化することによって、TLA、ATG、又はTLI及びATGの組み合わせによって誘導されるものを超えた深刻なレシピエント免疫細胞枯渇を誘導する。結果として、TLI-svldTBIATGは、TLI-ATGとは有意に異なる結果をもたらす。ドナー造血細胞生着に対する耐性を媒介する組織常駐宿主免疫細胞の枯渇が増大した結果、はるかに少ない数のドナーCD34造血幹細胞及びそのサブセットが、ドナー造血細胞生着及び持続的な混合キメリズムを促進するために使用され得る。svldTBIは、「骨髄空間」を形成するにはTBIの用量が低すぎ、重度の血球減少、粘膜炎、及び他のGI毒性を伴う骨髄形成不全などの完全なドナー型造血への変換をもたらすBMTプロトコルで使用されるTBIベースのレシピエントレジメンに関連する毒性を誘導するには用量が低すぎる。骨髄形成不全を誘発せずに非リンパ系の常駐組織レシピエント免疫細胞を標的にすることにより、持続的な混合ドナー造血細胞キメリズムの割合が改善され、移植片対宿主疾患(GVHD)のリスクが回避される。
【0076】
TLI-ATG宿主コンディショニングへの修飾された改善は、単回のTLI用量が単回の非常に低線量のTBIで置き換えられた場合に、持続性の混合ドナー細胞キメリズムを増強する。TBI線量は、同種造血細胞移植レジメンで以前に使用されたものよりもはるかに低い。単回の非常に低線量のTBIは、骨髄形成不全を誘導するのではなく、TLIの領域外に存在する組織常駐記憶T細胞を減量するために新規な様式で使用される。宿主組織常駐記憶T細胞を根絶することは、全ての程度のHLAミスマッチの生きている関連及び非関連ドナーからの、又は死亡したドナーからの、併用臓器及び同じドナーの造血細胞移植後の持続的なドナー細胞キメリズムを促進する。TLI-svldTBI-ATGの修飾及び改善された宿主コンディショニングは、独自の「組成物」を構成するドナー血液又は骨髄(又は脾臓)由来のCD34及びCD3T細胞の新規及び非生理学的比率と組み合わせるように設計される。
【0077】
主題の方法は、TLI-ATGコンディショニングの使用を、単回の非常に低線量のTBIと組み合わせて、HLAミスマッチした生きている、又は死亡した臓器ドナーからのドナー造血細胞の注入後の持続的な混合造血細胞キメリズムを促進することができる。
【0078】
TLI-ATGは、規則的な様式で投与されるが、TLIの1回の線量は省略され、代わりに、TBI(svldTBI)、40~140cGyの単回の非常に低線量が投与される。200cGy未満の単回TBI線量は、部分的には、200cGy未満の単回線量が、ドナー細胞生着及びキメリズムを容易にするために十分な骨髄形成不全を誘導するとは予測されないため、ヒトに以前に投与されていない。svldTBI(40~140cGy)もまた骨髄形成不全を誘発するとは予測されず、むしろsvldTBIは宿主リンパ枯渇を増強し、単回の非常に低線量に起因してレシピエント臓器毒性を増加させない。TLIとは異なり、TBIは腸、肝臓、及び肺を保護しないため、これらの臓器内に存在する大規模な免疫細胞リザーバーは、単回の非常に低線量の照射後に部分的に枯渇する。増強された非リンパ性免疫細胞枯渇は、ドナー細胞生着に対する耐性を除去し、全ての程度のHLAミスマッチを有する生きている関連及び非関連ドナーからの、及び死亡したドナーからの造血細胞の注入後、持続的な混合キメリズムを可能にする。混合キメリズムは保護的であるため、TLI-svldTBI-ATGレジメンはGVHDから保護することができる。
【0079】
TLIの線量は、それ以外の場合、従来のものであり、約8Gyの総線量を提供し、通常、svldTBIを説明するために、0.8Gyの線量で分割された約7.2Gyの総線量を、約2分画/週で提供する。
【0080】
いくつかの場合では、ATGが含まれ、例えば静脈内に送達される。いくつかの場合では、単回用量のATGが、レシピエントに送達され得る。他の場合では、レシピエントは、2回以上の用量のATGを受け得る。例えば、レシピエントは、少なくとも1回用量のATG、2回用量のATG、3回用量のATG、4回用量のATG、5回用量のATG、6回用量ATG、7回用量のATG、8回用量のATG、9回用量のATG、10回用量のATG、11回用量のATG、12回用量のATG、13回用量のATG、14回用量のATG、15回用量のATG、16回用量のATG、17回用量のATG、18回用量のATG、19回用量のATG、又は少なくとも20回用量のATGを受け得る。いくつかの場合では、ATGの各用量は、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約5mg/kg、最大約20mg/kgである。いくつかの場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流される前に、術中に送達される。他の場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流された後に術中に送達される。いくつかの場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流される前に静脈内に送達される。他の場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流された後に静脈内に送達される。いくつかの場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流される前に動脈内に送達される。他の場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流された後に動脈内に送達される。いくつかの場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流される前に皮下に送達される。他の場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流された後に皮下に送達される。いくつかの場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流される前に腹腔内に送達される。他の場合では、ATGは、移植された臓器が宿主血で灌流された後に腹腔内に送達される。
【0081】
コルチコステロイド療法は、ATGの投与前に医薬として投与され得る。いくつかの場合では、ATGの副作用を低減するために十分な当業者に知られている任意のコルチコステロイドが有効用量で用いられ得るが、ソルメドロールが投与されてもよい。いくつかの場合では、コルチコステロイドは、ATGが投与されるのと同じ日に投与され得る。
【0082】
レシピエントに投与される最終線量のATGの後、プレドニゾンが投与され得る。いくつかの場合では、プレドニゾンの単回用量が投与され得る。他の場合では、2回以上のプレドニゾン用量が投与され得る。例えば、プレドニゾンの複数回投与は、漸減経路又は一定コースに従って投与され得る。
【0083】
ヒト白血球抗原のタイピング
いくつかの場合では、本明細書に記載の方法は、ドナー及びレシピエントをHLAタイピングして、HLAマッチ又はHLAミスマッチ対を決定するステップを含む。「HLAマッチ」は、8つの高発現HLA抗原(例えば、HLA-A、B、DR)の全てが、ドナーとレシピエントとの間でマッチしていることを示す。「HLAミスマッチ」は、8つのHLA抗原(例えば、HLA-A、B、C、DR)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ又はそれ以上がミスマッチしていることを示す。一般に、8つのHLA抗原(例えば、HLA-A、B、C、DR)のうちの少なくとも一部分がマッチし、例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも6つがマッチしている。
【0084】
いくつかの場合では、方法は、少なくとも、固形臓器及び造血細胞をドナーから得るステップと、適切な種類及び用量の造血細胞を単離するステップと、固形臓器を移植するステップと、固形臓器の移植後、かつ操作された造血細胞を注入する前に、レシピエントにコンディショニングレジメンを実行するステップと、レシピエントを少なくとも6カ月間免疫抑制レジメンに維持するステップと、造血系の混合キメリズムについてレシピエントを監視するステップと、レシピエントが安定した混合キメリズムを示す場合、免疫抑制を離脱させるステップとを含み得る。本明細書に記載される方法は、HLAマッチ移植コンディショニング及びHLAミスマッチ移植コンディショニングの両方に適用される。
【0085】
本明細書に記載される方法のために選択される個体は、(i)固形臓器移植片を必要とすること、並びに(ii)固形臓器及び造血細胞を得ることができるHLAマッチドナー又はHLAミスマッチドナーのいずれかを有することの基準を満たし得る。固形臓器の併用移植及び個体に適した操作された造血細胞注入を、非骨髄破壊的コンディショニングと組み合わせて行うことにより、患者は、少なくとも6カ月間、持続的な混合キメリズムを発症する高い可能性を有し得る。少なくとも6カ月持続する混合キメリズムは、経時的な免疫抑制の離脱を可能にし得る。
【0086】
ドナー由来の細胞及びレシピエント由来の試料をタイピングするために、当該技術分野において知られている任意の方法を使用することができる。例えば、3つの主な手順が、HLAタイピングを実行するために使用され得る。1つ目は、リンパ球(例えば、血液又は脾臓から採取した)の試料をテラサキプレートに加える、従来の血清細胞毒性法である。いくつかの場合では、Bリンパ球がクラスIIタイピングに使用され得る。他の場合では、クラスIタイピングは、残りの白血球で実行され得る。磁気ビーズを使用して、血液又は脾臓から細胞を精製することができる。
【0087】
いくつかの場合では、テラサキプレートの各ウェルは、複数の抗体(例えば、母体血清又は製造されたモノクローナル抗体のいずれかから)を含有し得る。いくつかの場合では、細胞によって発現されるHLA抗原は、ウェル内の抗体に結合する。補体の添加後、HLA抗原及び抗体が結合したウェル内に位置する細胞が殺傷され得る。いくつかの場合では、細胞死のパターンがウェルから決定され得る。パターンは、元の組織上に存在していたHLA抗原の組み合わせの推定を可能にし得る。いくつかの場合では、HLA抗原の組み合わせの推定は、HLA抗原のタイピングをもたらし得る。
【0088】
HLAタイピングに使用され得る別の方法は、フローサイトメトリーである。従来の血清細胞傷害法とは異なり、フローサイトメトリーを使用して、1つ以上のHLA対立遺伝子を同定することができる。この方法では、関心があるHLAの種類に結合する抗体と白血球は組み合わされてもよい。いくつかの場合では、抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。いくつかの場合では、抗体は、検出可能な標識を含有してもよい。いくつかの場合では、抗体は、検出可能な標識に直接コンジュゲートされ得る。他の場合では、検出可能な標識を有する異なる抗体がHLA抗体に結合し、次いで複合体が検出される。フローサイトメトリーによるHLAタイピングに使用され得る検出可能な標識の種類は、容易に入手可能であり、当業者に知られている。試料を分析して、どのHLA抗体が細胞に結合しているかを判定することができる。
【0089】
HLAタイピングに使用され得る更に別の方法は、DNAタイピングである。いくつかの場合では、DNAタイピングは、配列データを生成するポリメラーゼ連鎖反応技術を使用して、細胞からDNAを抽出し、HLAペプチドをコードする遺伝子を増幅することを伴う。ポリメラーゼ連鎖反応技術は、当業者に知られている配列データを生成する任意のポリメラーゼ連鎖反応技術を含み得る。
【0090】
いくつかの場合では、遺伝子の配列は、いくつかの遺伝子(例えば、遺伝子バンク)データベースのうちの少なくとも1つに位置するHLA対立遺伝子の既知のヌクレオチド配列とマッチし得る。いくつかの場合では、遺伝子バンクデータベースは、IMGT/HLA(International Immunogenetics Project)データベースであり得る。
【0091】
固形臓器移植
固形臓器は、臓器がレシピエント体内の適切な位置に配置されるように、ドナーからレシピエントに移植され得る。いくつかの場合では、固形臓器間の心血管接続は、生理学的にレシピエント体内に統合され得る。いくつかの場合では、臓器は、生きているドナーからのものであり得る。他の場合では、臓器は、死亡したドナーからのものであり得る。いくつかの場合では、固形臓器は、ドナーとレシピエントとの間でHLAマッチしていてもよい。他の場合では、固形臓器は、ドナーとレシピエントとの間でHLAミスマッチであってもよい。
【0092】
臓器移植に使用され得る任意の固形臓器は、本明細書に記載の方法で使用され得る。いくつかの場合では、臓器は、当業者に知られているように、腎臓、肺、膵臓、膵島細胞、心臓、腸、結腸、肝臓、皮膚、筋肉、歯茎、眼、歯などであってもよい。いくつかの場合では、臓器は、完全な臓器であってもよい。他の場合では、臓器は、臓器の一部であってもよい。他の場合では、臓器は、臓器の組織由来の細胞であってもよい。
【0093】
本明細書に記載の方法を使用して、固形臓器が採取され、従来の慣行に従って移植される。いくつかの場合では、固形臓器は、操作された造血細胞の注入の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は少なくとも20日前に移植され得る。
【0094】
移植用の造血幹細胞の取得
造血幹細胞移植(HCT)は、ドナーからレシピエントへの多能性造血幹細胞の移植を含む。本明細書に記載される方法のために、HCTは、固形臓器移植と組み合わされてもよい。いくつかの場合では、造血幹細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAマッチしていてもよい。他の場合では、造血幹細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAミスマッチであってもよい。
【0095】
いくつかの場合では、造血幹細胞は、固形臓器ドナーから単離及び精製される。固形臓器ドナーは、生きていてもよく、又は死亡していてもよい。生きているドナーの場合、造血細胞は、生きているドナーからの動員された末梢血のアフェレーシス、死亡したドナーの骨髄からの造血細胞の採取などを含む、当業者に知られている様々な方法のいずれかを用いて、固形臓器ドナーから得ることができる。死亡したドナーの場合、造血細胞は骨髄から得ることができる。例えば、死亡したドナーでは、細胞は、脾臓、椎骨の骨髄、骨盤骨、大腿骨、又は造血細胞を抽出するために十分な骨髄を含む任意の他の骨から得ることができる。
【0096】
いくつかの場合では、造血細胞は、単離及び精製の前に動員され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)でドナーを処置することによって動員され得る。例えば、造血細胞を単離及び精製する前に、ドナーは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11回以上の用量のG-CSFで処置され得る。いくつかの場合では、G-CSFの用量は、1日(例えば、24時間)又は複数日にわたってドナーに送達され得る。例えば、複数日は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11日以上を含み得る。好ましい場合では、ドナーは1日に2回投与される。いくつかの場合では、ドナーに送達されるG-CSFの各用量は、従来の用量、例えば、約1~約20μg/kgドナー体重である。他の場合では、ドナーに送達されるG-CSFの各用量は、約8μg/kgドナー体重である。いくつかの場合では、アフェレーシスは、ドナーが単回用量のG-CSFを受けた後に行われ得る。例えば、アフェレーシスは、ドナーがG-CSFの単回用量を受けてから約1時間~約48時間、又は48時間を超えて行われ得る。他の場合では、アフェレーシスは、ドナーが複数用量のG-CSFの最終用量を受けた後に行われ得る。1つ以上のアフェレーシス生成物がドナーから得られてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、レシピエントにHLAマッチした固形臓器ドナーから得られる。この場合、造血細胞は、固形臓器及び固形臓器レシピエントにHLAマッチしている。他の場合では、造血細胞は、レシピエントにHLAミスマッチした固形臓器ドナーから得ることができる。この場合、造血細胞は、固形臓器にHLAマッチし、固形臓器レシピエントにHLAミスマッチしている。
【0098】
本明細書に記載の方法について、造血細胞は、単離後、又は固形臓器ドナーからの単離及び精製後に凍結(例えば、凍結保存)され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、当業者に知られている凍結保存媒体及び凍結保存方法を使用して凍結保存され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ノルモゾル、ヘタスターチ、及びヒト血清アルブミン(HSA)を含有する凍結保存媒体を使用して凍結保存され得る。いくつかの場合では、凍結保存媒体は、本明細書に記載の方法に従って、及び本明細書に記載の方法で使用するために、造血細胞を凍結保存するために他の成分を含有し得る。
【0099】
本明細書に記載の方法について、造血細胞は、単離後、又は固形臓器ドナーからの単離及び精製後に凍結(例えば、凍結保存)され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、当業者に知られている凍結保存媒体及び凍結保存方法を使用して凍結保存され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、胎仔血清(FCS)、及びRPMI媒体を含有する凍結保存媒体を使用して凍結保存され得る。いくつかの場合では、凍結保存媒体は、本明細書に記載の方法に従って、及び本明細書に記載の方法で使用するために、造血細胞を凍結保存するために他の成分を含有し得る。
【0100】
造血細胞の凍結保存は、一度凍結保存媒体中に含まれた細胞を制御された速度で凍結するプロセスを含む。いくつかの場合では、制御速度凍結の速度及び温度を制御するためのコンピュータを装備したクライオフリーザーを使用して、造血細胞の凍結保存を実行することができる。例えば、造血細胞は、6.5℃以下のチャンバー温度のクライオフリーザー内に設置され得る。コンピュータは、本明細書に記載の方法に従う様式で造血細胞が保存されるように、クライオフリーザーが少なくとも-130℃又はそれ未満の温度に達するように、制御された速度凍結の速度及び温度を制御し得る。いくつかの場合では、クライオフリーザーは、液体窒素を使用して、造血細胞が保存される冷凍庫の温度を制御する。いくつかの場合では、造血細胞は、レシピエントへの送達前に、凍結保存され、クライオフリーザー内に保存され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、約1カ月未満~約60カ月未満の間凍結保存され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、1年未満~約60年未満の間凍結保存され得る。いくつかの場合では、凍結保存は、レシピエントへの注入前に細胞の解凍後に決定される造血細胞死をもたらし得る。当業者に知られている細胞死を決定する従来の方法(例えば、トリパンブルー染色、フローサイトメトリーなど)を用いて、凍結保存された造血細胞のバッチ中の死細胞の割合が決定され得る。
【0101】
ドナー造血幹細胞及び独自の免疫細胞サブセットの単離及び精製
本明細書に記載の方法では、造血幹細胞は、骨髄、末梢血(血液単核細胞のアフェレーシスによる)、臍帯血、脾臓、リンパ節などに由来し得る。いくつかの場合では、造血幹細胞及び免疫細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAマッチしていてもよい。他の場合では、造血幹細胞及び免疫細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAミスマッチであってもよい。
【0102】
いくつかの場合では、細胞の特定のサブセット及び細胞の独自の集団は、造血細胞の源から単離及び精製される。いくつかの場合では、単離及び精製される細胞は、CD34細胞であり、免疫細胞サブセットは、CD3細胞から単離される。いくつかの場合では、CD34及びCD3細胞は、造血細胞の同じ画分から単離される。いくつかの場合では、CD34及びCD3細胞は、造血細胞の異なる画分から単離される。いくつかの場合では、CD34細胞は、前駆細胞である。いくつかの場合では、CD3細胞は、T細胞である。
【0103】
いくつかの場合では、CD34細胞は、ドナー造血細胞から単離及び精製される。例えば、CD34細胞は、好適なCD34親和性試薬を選択的に結合することによって、ドナー造血細胞から単離及び精製され得る。いくつかの場合では、CD34親和性試薬は、抗体、全長抗体、抗体の断片、天然に存在する抗体、合成抗体、操作された抗体、全長アフィボディ、又は上記のいずれかの断片であり得る。いくつかの場合では、親和性試薬は、検出試薬及び/又は精製試薬に直接的に結合されている。いくつかの場合では、検出試薬及び精製試薬は同じである。他の場合では、検出試薬及び精製試薬は異なる。例えば、検出試薬及び/又は精製試薬は、蛍光性、磁気性などである。いくつかの場合では、検出試薬及び/又は精製試薬は、カラム精製のための磁性粒子である。例えば、磁気カラム精製は、当業者に知られているカラム、抗体、緩衝液、調製材料及び試薬などのMiltenyiシステムを使用して行ってもよい。いくつかの場合では、磁性粒子を用いて単離及び精製されたCD34細胞は、鉄を含有し得る。単離及び精製されたCD34細胞の鉄含有量は、単離及び精製前のCD34細胞中の鉄含有量よりも、磁性粒子を使用した単離及び精製後の方が大きい場合がある。
【0104】
いくつかの場合では、CD3細胞は、ドナー造血細胞から単離及び精製される。例えば、CD3細胞は、好適なCD3親和性試薬を選択的に結合することによって、ドナー造血細胞から単離及び精製され得る。いくつかの場合では、CD3親和性試薬は、抗体、全長抗体、抗体の断片、天然に存在する抗体、合成抗体、操作された抗体、全長アフィボディ、アフィボディの断片、全長アフィリン、アフィリンの断片、全長アンチカリン、アンチカリンの断片、全長アビマー、アビマーの断片、全長DARPin、DARPinの断片、全長フィノマー、フィノマーの断片、全長クニッツ(kunitz)ドメインペプチド、クニッツドメインペプチドの断片、全長モノボディ、モノボディの断片、ペプチド、ポリアミノ酸などであり得る。
【0105】
いくつかの場合では、親和性試薬は、検出試薬及び/又は精製試薬に直接的に結合されている。いくつかの場合では、検出試薬及び精製試薬は同じである。他の場合では、検出試薬及び精製試薬は異なる。例えば、検出試薬及び/又は精製試薬は、蛍光性、磁気性などである。いくつかの場合では、検出試薬及び/又は精製試薬は、カラム精製のための磁性粒子である。例えば、磁気カラム精製は、当業者に知られているカラム、抗体、緩衝液、調製材料及び試薬などのMiltenyiシステムを使用して行ってもよい。
【0106】
いくつかの場合では、磁性粒子を用いて単離及び精製されたCD34及びCD3細胞の両方は、鉄を含有し得る。単離及び精製されたCD34及びCD3細胞の鉄含有量は、単離及び精製前のCD34及びCD3細胞中の鉄含有量よりも、磁性粒子を使用した単離及び精製後の方が大きい場合がある。
【0107】
医薬組成物のための造血幹細胞及び免疫細胞の操作及び調製
本明細書に記載の方法を使用して、ドナーに由来するCD34及びCD3細胞の組み合わせは、固形臓器レシピエントへの投与のための医薬組成物に操作され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、レシピエントへの注入のための単一の医薬組成物に操作され得る。他の場合では、造血細胞は、レシピエントへの注入のための複数の医薬組成物に操作され得る。いくつかの場合では、CD34及びCD3細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAマッチしていてもよい。他の場合では、CD34及びCD3細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAミスマッチしていてもよい。
【0108】
いくつかの場合では、造血細胞は、追加の細胞と混合する前に、少なくとも50%以上の純度、55%以上の純度、60%以上の純度、65%以上の純度、70%以上の純度、75%以上の純度、80%以上の純度、85%以上の純度、90%以上の純度、95%以上の純度、又は98%以上の純度である、所定の純度のCD34造血細胞を有する医薬組成物に操作され得る。例示的な場合において、操作された造血細胞におけるCD34前駆細胞の純度は、70%以上の純度である。
【0109】
例えば、操作された造血細胞におけるCD3細胞の純度は、30%以上の純度、40%以上の純度、50%以上の純度、55%以上の純度、60%以上の純度、65%以上の純度、70%以上の純度、75%以上の純度、80%以上の純度、85%以上の純度、90%以上の純度、95%以上の純度、又は98%以上の純度であり得る。別の例では、操作された造血細胞におけるCD3細胞の純度は、10~30%の純度、15~35%の純度、20~40%の純度、25~45%の純度、30~50%の純度、35~55%の純度、40~60%の純度、45~65%の純度、50~70%の純度、55~75%の純度、60~80%の純度、65~85%の純度、70~90%の純度、75~95%の純度、及び80~100%の純度であり得る。例示的な場合では、操作された造血細胞におけるCD3細胞の純度は、CD34細胞と組み合わせる前に70%以上の純度である。
【0110】
生きているHLAミスマッチ関連ドナー及び非関連ドナーの場合、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)+/-モゾビルを使用してドナー造血細胞を動員することができ、ドナーは、血液単核細胞を得るために1日又は2日連続して大量(12リットル超)血液アフェレーシスを受ける。アフェレーシス収集は、製造業者のガイドラインに従って、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は磁気活性化細胞選別(MACS)のいずれかを使用して、CD34細胞濃縮のために処理される。
【0111】
CD34濃縮生成物は、標準的な様式で凍結保存される。凍結前のCD34細胞純度は、少なくとも約70%超である。CD34細胞用量は、約4~約20×10CD34細胞/kgレシピエント体重、例えば約4×10CD34細胞/kg、約10×10CD34細胞/kg、約12×10CD34細胞/kg、約14×10CD34細胞/kg、約16×10CD34細胞/kg、約18×10CD34細胞/kg、約20×10CD34細胞/kgの凍結前値を有する。
【0112】
いくつかの場合では、CD34濃縮ステップ後の非CD34細胞画分を使用して、定義された用量のCD3T細胞が得られ、通常の方法で凍結保存される。CD3細胞の凍結前用量は、約25~約100×10CD3/kgレシピエント体重、例えば約25×10CD3/kg、約35×10CD3/kg、約45×10CD3/kg、約50×10CD3/kg、最大約100×10CD3/kg、最大約90×10CD3/kg、最大約80×10CD3/kg、最大約70×10CD3/kg、最大約60×10CD3/kgである。
【0113】
いくつかの実施形態では、CD3/CD8/CD45RA-/CD45ROとして定義され得るドナー由来のCD8記憶T細胞の濃縮集団は、約1~約12×10細胞/kg、例えば、約1×10細胞/kg、約2×10細胞/kg 約4×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約12×10細胞/kg、約10×10細胞/kg、約8×10細胞/kgの用量で提供される。記憶細胞は、CD34濃縮細胞産物の約0~約3日後、例えば、CD34濃縮細胞産物の約0~3日後、約1~3日後、約2~3日後に注入され得る。いくつかの実施形態では、CD8記憶T細胞は、CD3細胞の代わりに提供される。
【0114】
いくつかの実施形態では、FACS又はMACS法によって濃縮されたCD4CD25FoxP3として定義され得るドナー由来のTreg細胞は、ドナーCD34濃縮細胞の注入後約0~約4日で、約1~約10×10細胞/kg、例えば、約1×10細胞/kg、約2×10細胞/kg 約4×10細胞/kg、約6×10細胞/kgから、約12×10細胞/kg、約10×10細胞/kg、約8×10細胞/kgまでの用量で注入される。Treg細胞は、CD34濃縮細胞産物の約0~約4日後、例えば、CD34濃縮細胞産物の約0~3日後、約1~3日後、約2~3日後に注入され得る。いくつかの実施形態では、ドナーTreg細胞は、1:50、1:20、1:10、1:5、1:2、2:1~3:1の範囲のTreg:CD3T細胞の比率で、ドナーCD3T細胞と組み合わされる。いくつかの実施形態では、ドナーTreg細胞は、1:20、1:10、1:5、1:3、1:2~1:1の範囲のTreg:CD8記憶T細胞の比率で、ドナーCD8記憶T細胞と組み合わされる。
【0115】
いくつかの場合では、改変細胞組成物は、約1:1~約1:15、例えば、約1:1、約1:2、約1:4、約1:6、約1:8、約1:10、約1:12、及び約1:15以下のCD34細胞対CD3T細胞の比率を含む。CD34細胞の絶対数が持続的な混合キメリズムを確立するために必要な2500万/kgレシピエント体重の下限未満である場合、死亡したドナーの脾細胞を使用して、ddVB-BMCに添加される追加のCD34細胞を得ることができる。CD3T細胞の絶対数が持続的な混合キメリズムを確立するために必要な4000万/kgレシピエント体重の下限未満である場合、死亡したドナーの脾細胞を使用して、2500万~1億/kgの所望の閾値を達成するために、CD3T細胞用量を得、増強することができる。
【0116】
本開示の態様は、持続的な混合キメリズムを補助する、TLI-svldTBI-ATGコンディショニング後に注入されるドナー造血細胞(HC)又は骨髄細胞(BMC)の組成を含む。HLAミスマッチの生きているドナーから得られた造血細胞は、mmLD-HCと称され、死亡したドナー椎体から得られた骨髄細胞は、ddVB-BMCである。両方の事例では、mmLD-HC及びddVB-BMCにおいて、細胞組成は、直感的には明らかではない、(独自の比率の)CD34細胞集団とCD3T細胞との独自の組み合わせ及び対を表す。組成は、宿主TLI-svldTBI-ATGコンディショニングと組み合わせた場合に持続的な混合キメリズムをもたらすCD34細胞対CD3T細胞の比率を含み得る。
【0117】
いくつかの場合では、mmLD-HC由来のG動員移植片について、TLI-svldTBI-ATG宿主コンディショニングと組み合わせた場合、CD34:CD3細胞比率は、直観的又は生理学的に生じるものではなく、従来の非操作G動員移植片の約1:50の生理学的比率と比較して、1:2~1:10に近似する。
【0118】
いくつかの場合では、ddVB-BMCについて、TLI-svldTBI-ATG宿主コンディショニングと組み合わせた場合のCD34:CD3細胞比率は、がん患者の臨床BMTで40年以上使用されている非操作骨髄採取の使用に関して説明されているように、1:10~1:20の比率と比較して、1:2~1:5に近似する。
【0119】
単離及び精製されたCD34細胞及びCD3細胞は、操作された造血細胞組成物中で使用する前に、新しく単離されるか、又は凍結(例えば、凍結保存)されてもよい。いくつかの場合では、CD34細胞は、操作された造血細胞組成物を調製するために、新しく単離又は凍結された細胞として使用する前に、CD3細胞と組み合わされてもよい。
【0120】
死亡したドナーの臓器の場合、ドナー造血細胞及び免疫細胞は、通常の様式で椎体(VB)、骨盤骨、及び脾臓から得られ、凍結保存される。宿主TLI-svldTBI-ATGコンディショニングの後、死亡したドナーの造血細胞及び免疫細胞は解凍され、レシピエントに注入される。これは、死亡したドナーから得られた細胞を使用して持続的な混合ドナー細胞キメリズムを確立するために、独自に定義された造血及び免疫細胞産物と組み合わせた宿主コンディショニングレジメンの最初のヒト内適用である。持続的な混合キメリズムは、臓器移植耐性、並びにIS薬物最小限化及び/又は離脱につながる。
【0121】
VBから死亡したドナーの骨髄細胞を得るために、椎弓でVBを横断し、独自の手順ステップで、非常に薄い高圧生理食塩水ジェットストリームを適用して、VBから結合組織及び壊死性外科/細菌/細胞破片を「パワーウォッシュ」する。VBがパワーウォッシュされた後、回転鋸スライスがVBを開き、その後、エンドウ豆サイズのチャンクが作製される。これらの方法を組み合わせると、最大の細胞抽出及び収率を可能にするVB骨髄表面積が最大化される。細胞産物は、マルチシーブ溶出及び精製ステップに通過させる。これらの新規の方法は、以前に公開された手順及び方法と比較して、VB細胞の収率及び純度を有意に改善する。
【0122】
VB骨髄細胞を使用して、CD34細胞用量範囲は、200万~2000万/kgレシピエント体重であり、CD3T細胞用量範囲は、1000万~1億/kgである。
【0123】
いくつかの実施形態では、脾細胞は、VB骨髄細胞接種体を補足する。ドナー脾臓から除去されたいくつかの(典型的には2~8個の)2インチサイズの脾臓キューブは、持続的な混合ドナー細胞キメリズムを補助するために、追加の免疫細胞源として必要とされる。脾臓キューブは、臓器調達の間に採取され、ドナーVBとともに標準輸送媒体中で輸送される。生きた単核脾細胞からなる単一細胞懸濁液は、i)化学及びタンパク質分解酵素による過剰消化、並びにii)過度の機械的力、ボルテックス、均質化、異常な浸透圧ストレス又はそれらの組み合わせによる環境ストレスからの過度の組織分解を防止するために、特殊な解離媒体及び技術を使用して脾臓組織から細胞を解離することによって得られる。単一細胞懸濁液は、最終的な80~120ミクロンのストレーナを備えたマルチシーブ溶出塔に通過させられる。細胞ペレットは、CD3細胞、及びTreg細胞、間葉系幹細胞(MSC)、B細胞、インバリアントナチュラルキラー(iNK)細胞、及び造血細胞前駆体のアリコートのための生細胞のMACS/FACS分離の有無にかかわらず、凍結保存のために調製される。これらの細胞型は、1つ以上のレシピエントの治療を可能にし得る細胞増殖プロトコルにおいて使用され得る。
【0124】
いくつかの場合では、脾臓CD3T細胞は、注入されたVB骨髄細胞に添加され、低い場合(例えば、死亡したドナーの細胞を使用する場合、及びVB骨髄細胞から5000万個未満のCD3T細胞が得られる場合)、ドナーCD3T細胞用量を増強する。いくつかの場合では、脾臓T細胞を添加して、2億個のCD3T細胞/kgと高くてもよいCD3T細胞用量を可能にする。いくつかの場合では、脾細胞は、100万~1000万/kgレシピエント体重の用量で使用されるTreg細胞を排他的に得るために使用される。いくつかの場合では、脾臓Treg細胞は、特異的T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターのトランスフェクションを介して、所定の抗原特異性で操作され得る。操作されたTreg細胞は、移動、移行及び選択されたレシピエント組織(骨髄、リンパ節、神経細胞、心臓、肺、腎臓、肝臓、腸、及び膵臓)に存在するTreg細胞を促進する組織特異的抗原を発現して、持続的な混合キメリズム及び/又は組織特異的耐性を増強する局所的免疫抑制反応を促進し得る。Tregは、一次細胞として、又は培養増殖において使用されてもよく、潜在的に複数のレシピエントにおいて使用されてもよい。いくつかの場合では、VB骨髄及び/又は脾細胞の「残存」部分は、凍結保存され、数カ月から数年保存され、キメリズム及び/又は耐性が経時的に減少している場合、後のドナー細胞ブーストとして与えることができる。
【0125】
いくつかの場合では、CD34及びCD3細胞は、新たに単離された細胞として、又は凍結保存された細胞として独立して維持される。例えば、新たに維持されたCD34細胞及びCD3細胞は、注入のための操作された組成物中でCD34及びCD3細胞の標的用量が達成されるように組み合わされてもよい。他の場合では、独立して凍結保存されたCD34及びCD3細胞が解凍され、解凍後に各細胞型の標的用量が決定され得る。解凍されたCD34及びCD3細胞は、注入のための操作された組成物中のCD34及びCD3細胞の目標用量が達成されるように組み合わされ得る。
【0126】
医薬組成物のための操作された造血細胞の処理
操作された造血細胞(例えば、CD34及びCD3細胞)は、レシピエントへの投与のための医薬組成物を生成する前に、新たに調製されてもよく、又は以前に凍結されていてもよい(例えば、凍結保存されていてもよい)。いくつかの場合では、CD34及びCD3細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAマッチしていてもよい。他の場合では、CD34及びCD3細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAミスマッチしていてもよい。
【0127】
凍結保存の方法は、本明細書の他の箇所に記載されている。いくつかの場合では、CD34細胞の1つのアリコートが解凍される。他の場合では、CD34細胞の2つ以上のアリコートが解凍される。いくつかの場合では、CD3細胞の1つのアリコートが解凍される。他の場合では、CD3細胞の2つ以上のアリコートが解凍される。いくつかの場合では、CD34細胞及びCD3細胞の組み合わせの1つのアリコートが解凍される。他の場合では、CD34細胞及びCD3細胞の組み合わせの2つ以上のアリコートが解凍される。
【0128】
いくつかの場合では、新しく調製された操作された造血細胞は、当業者に知られている方法を使用して、エクスビボで増殖されてもよい。他の場合では、以前に凍結されていた操作された造血細胞は、当業者に知られている方法を使用して、エクスビボで増殖されてもよい。いくつかの場合では、新しく調製された、又は以前に凍結されていた操作された造血細胞のいずれかは、少なくとも1つの成長因子を使用することによって、エクスビボで増殖されてもよい。いくつかの場合では、細胞を増殖させるために、2つ以上の成長因子が使用され得る。例えば、成長因子は、アクチビンA、ADAM-10、アンジオゲニン、アンジオポエチン-1、アンジオポエチン-2、アンジオポエチン-3、アンジオポエチン-4、BIO、骨形態発生タンパク質-2、骨形態発生タンパク質-3、骨形態発生タンパク質-4、骨形態発生タンパク質-5、骨形態発生タンパク質-6、骨形態発生タンパク質-7、脳由来神経栄養因子、E-カドヘリン、Fcキメラ、カテプシンG、ch2阻害剤II、表皮成長因子、エオタキシン、エオタキシン-2、エオタキシン-3、Fas、線維芽細胞成長因子-4、線維芽細胞成長因子-5、線維芽細胞成長因子-6、線維芽細胞成長因子-8b、線維芽細胞成長因子-8c、線維芽細胞成長因子-9、線維芽細胞成長因子-10、線維芽細胞成長因子-17、線維芽細胞成長因子-18、線維芽細胞成長因子、線維芽細胞成長因子酸性、線維芽細胞成長因子塩基性、線維芽細胞成長因子塩基性断片1~24ウシ、線維芽細胞成長因子受容体1a、線維芽細胞成長因子受容体1b、線維芽細胞成長因子受容体2a、線維芽細胞成長因子受容体2b、線維芽細胞成長因子受容体3a、線維芽細胞成長因子受容体4、flt-3、flk-2リガンド、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、GROa、GROb、ヘパリン結合EGF様成長因子、ヘレグリン-a1 EGFドメイン、ヘレグリン-b1 EGFドメイン、ヘレグリン-B、インスリン様成長因子-1、インスリン様成長因子II断片33~40、インスリン様成長因子結合タンパク質-2、インスリン様成長因子-1、インスリン様成長因子II、インターフェロンa、インターフェロンaA、インターフェロンaA/D、インターフェロンb、インターフェロンg、インターフェロン、インターフェロンg受容体1、インターロイキン-1a、インターロイキン-1b、インターロイキン可溶性受容体II型、インターロイキン-2、インターロイキン-2可溶性受容体a、インターロイキン-2可溶性受容体b、インターロイキン-2可溶性受容体g、インターロイキン-3、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-6可溶性受容体、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-11、インターロイキン-12、白血病抑制因子、LONG EGF、LONG R2 IGF-1、LYN A、マクロファージ炎症性タンパク質-1a、マクロファージ炎症性タンパク質-1b、マクロファージ炎症性タンパク質-1g、マトリックスメタロプロテイナーゼ-1、マトリックスメタロプロテイナーゼ-2、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9、MIG、単球走化性タンパク質-1、単球走化性タンパク質-3、単球走化性タンパク質-4、単球走化性タンパク質-5、神経成長因子受容体、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、ノギン、ノッチ-1、オンコスタチンM、オンコスタチンM受容体b、オステオポンチン、オステオプロテグリン、フェニルアルシンオキシド、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子-AB、血小板由来成長因子-BB、血小板由来成長因子可溶性受容体a、血小板由来成長因子受容体b、抗POU5F1、oct4、RANTES、SCF可溶性受容体、L-セレクチン、幹細胞因子、間質細胞由来因子1a、間質細胞由来因子1b、トロンボポエチン、Tie-1、メタロプロテイナーゼ-2の組織阻害剤、形質転換成長因子-a、形質転換成長因子-b1、形質転換成長因子-b2、形質転換成長因子-b3、形質転換成長因子-b1受容体II可溶性断片、形質転換成長因子-b可溶性受容体III、TrkB、血管内皮成長因子120、血管内皮成長因子121、血管内皮成長因子164、VEGF受容体-2/Flk1/KDR及び/又はVEGF受容体-3/Flt-4であってもよい。エクスビボ増殖のために使用される各成長因子の量は、当業者に知られており、本明細書に記載される方法での使用に好適である。
【0129】
いくつかの場合では、新しく調製された、又は以前に凍結されていた操作された造血細胞のいずれかは、少なくとも1種類のフィーダー細胞を使用することによって、エクスビボで増殖されてもよい。フィーダー細胞が操作された造血細胞の生存能を維持し、操作された造血細胞の増殖及び分化を促進するように、任意の種類のフィーダー細胞が使用され得る。いくつかの場合では、フィーダー細胞が操作された造血細胞の生存能を維持し、操作された造血細胞の増殖及び分化を促進するように、少なくとも1種のフィーダー細胞と組み合わされた少なくとも1種の成長因子が使用され得る。いくつかの場合では、フィーダー細胞は、有糸分裂性不活性であってもよい。いくつかの場合では、2種以上のフィーダー細胞が、細胞を増殖させるために使用され得る。いくつかの場合では、ある種類のフィーダー細胞は、成体マウス内皮細胞、胚性マウス内皮細胞、成体マウス線維芽細胞、胚性マウス線維芽細胞、成体ヒト内皮細胞、胚性ヒト内皮細胞、成体ヒト線維芽細胞、胚性ヒト線維芽細胞、成体非ヒト霊長類内皮細胞、胚性非ヒト霊長類内皮細胞、成体非ヒト霊長類線維芽細胞、胚性非ヒト霊長類線維芽細胞、成体ウシ内皮細胞、胚性ウシ内皮細胞、成体ウシ線維芽細胞、胚性ウシ線維芽細胞、成体ブタ内皮細胞、胚性ブタ内皮細胞、成体ブタ線維芽細胞、胚性ブタ線維芽細胞などに由来してもよい。
【0130】
いくつかの場合では、フィーダー細胞は、有糸分裂性不活性であってもよい。例えば、改質は遺伝的であってもよい。いくつかの場合では、フィーダー細胞は、非天然遺伝子を発現してもよく、天然遺伝子の発現を抑制してもよく、又は天然遺伝子を過剰発現してもよい。例えば、フィーダー細胞は、LacZ、GFP、RFPなどを発現し得る。
【0131】
造血幹細胞の組成物
本明細書で提供される方法の造血幹細胞及びその組成物は、ヒト投与のために十分に滅菌された条件下で調製された等張賦形剤を含む、医薬組成物の形態で供給され得る。細胞賦形剤及び組成物の任意の付随要素の選択は、投与に使用される経路及びデバイスに従って適合される。医薬製剤における一般的な原理については、読者は、Cell Therapy:Stem Cell Transplantation,Gene Therapy,and Cellular Immunotherapy,by G.Morstyn & W.Sheridan eds,Cambridge University Press,1996、及びHematopoietic Stem Cell Therapy,E.D.Ball,J.Lister & P.Law,Churchill Livingstone,2000を参照されたい。
【0132】
いくつかの場合では、造血幹細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAマッチしていてもよい。他の場合では、造血幹細胞は、ドナーとレシピエントとの間でHLAミスマッチであってもよい。
【0133】
いくつかの場合では、医薬組成物は、レシピエントにおける造血細胞の移植を増強する薬剤を含有し得る。他の場合では、医薬組成物は、レシピエントにおける造血細胞の移植に影響を及ぼさない薬剤を含み得る。いくつかの場合では、医薬組成物は、造血細胞に対するレシピエントの負の反応を防止する薬剤を含有し得る。例えば、上述の任意の薬剤は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、賦形剤、担体、不活性分子、抗体又はその断片、小分子、薬物、アゴニスト、アンタゴニスト、化学物質などであり得る。レシピエントにおける造血細胞の医薬組成物に使用される任意の薬剤は、生理学的に許容されるものである。
【0134】
造血細胞をレシピエントに送達するために様々な方法が使用され得、当業者に知られている任意の方法が本明細書に記載の造血細胞に適用され得る。例えば、造血細胞は、針、カテーテル、中心線などを使用して注射することによってレシピエントに送達され得る。いくつかの場合では、造血細胞は、血管内、静脈内、動脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下、筋肉内、眼窩内、又は造血細胞がレシピエントにおける適切な部位に帰着することを可能にする任意の源を介して、造血細胞がレシピエントにおいて持続し、再生し、分化するように送達され得る。
【0135】
操作された造血細胞の組成物は、また、細胞の生着又は機能的動員を容易にする1つ以上の他の成分を含むか、又はそれを伴ってもよい。例えば、成分は、細胞を補助し、細胞の接着を促進するマトリックスタンパク質、又は相補的な細胞型(例えば、内皮細胞)を含み得る。
【0136】
いくつかの場合では、造血細胞は、レシピエント内の臓器、組織、又は細胞型に帰着してもよい。例えば、臓器は、脳、甲状腺、眼、皮膚、肺、膵臓、脾臓、膀胱、前立腺、腎臓、胃、肝臓、心臓、副腎、気管支、大腸、小腸、脊髄、骨、骨髄、下垂体、唾液腺、胆嚢、喉頭、リンパ節、前立腺、骨格筋、虫垂、食道、副甲状腺、気管、尿道、卵巣、精巣、子宮、尿管、卵管、又は体内の任意の腺であってもよい。いくつかの場合では、組織又は細胞型は、臓器の一部であってもよい。いくつかの場合では、組織又は細胞型は、臓器に由来するものであってもよい。いくつかの場合では、組織又は細胞型は、臓器から単離されてもよい。
【0137】
いくつかの場合では、造血幹細胞のレシピエントは、固形臓器移植を受けていなくてもよい。他の場合では、レシピエントは固形臓器移植を受けていてもよい。いくつかの場合では、固形臓器移植レシピエントは、1用量の操作された造血幹細胞を投与され得る。他の場合では、固形臓器移植レシピエントは、2回以上の用量の操作された造血幹細胞を投与され得る。いくつかの場合では、操作された造血幹細胞の各用量間の経過時間は、同じであってもよい。他の場合では、操作された造血幹細胞の各用量間の経過時間は、異なっていてもよい。
【0138】
例えば、固形臓器移植レシピエントは、HSC注入から少なくとも約1日、少なくとも約5日、少なくとも約10日、少なくとも約15日、少なくとも約20日、少なくとも約25日、少なくとも30日又はそれ以上の日数後に、操作された造血幹細胞の第1の用量を投与されてもよい。いくつかの場合では、操作された造血幹細胞の第2の用量が、レシピエントに投与され得る。いくつかの場合では、2回を超える用量の操作された造血幹細胞が固形臓器移植レシピエントに投与される。上述の時間枠のいずれもまた、追加の用量の間を通り得る。
【0139】
免疫抑制
レシピエントに投与される最終線量のATGの後、プレドニゾンが投与され得る。いくつかの場合では、プレドニゾンの単回用量が投与され得る。他の場合では、2回以上のプレドニゾン用量が投与され得る。例えば、プレドニゾンの複数回投与は、漸減経路又は一定コースに従って投与され得る。
【0140】
いくつかの場合では、漸減コースの場合、プレドニゾンの第1の用量は、100mg/dで開始し、次いで用量が少なくとも15日間5mg/dで一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、90mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、80mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、70mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、60mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、50mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、40mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、30mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、20mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、又は、プレドニゾンの第1の用量は、10mg/dで開始し、少なくとも15日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよい。いくつかの場合では、一定コースの場合、プレドニゾンの用量は、少なくとも15日間、100mg/d、90mg/d、80mg/d、70mg/d、60mg/d、50mg/d、40mg/d、30mg/d、20mg/d、10mg/d又は5mg/dであってもよい。
【0141】
いくつかの場合では、漸減コースの場合、プレドニゾンの第1の用量は、100mg/dで開始し、次いで少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、90mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、80mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、70mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、60mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、50mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、40mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、30mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、20mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、又は、プレドニゾンの第1の用量は、10mg/dで開始し、少なくとも30日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよい。いくつかの場合では、一定コースの場合、プレドニゾンの用量は、少なくとも30日間、100mg/d、90mg/d、80mg/d、70mg/d、60mg/d、50mg/d、40mg/d、30mg/d、20mg/d、10mg/d又は5mg/dであってもよい。
【0142】
いくつかの場合では、漸減コースの場合、プレドニゾンの第1の用量は、100mg/dで開始し、次いで少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、90mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、80mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、70mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、60mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、50mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、40mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、30mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、20mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、又は、プレドニゾンの第1の用量は、10mg/dで開始し、少なくとも45日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよい。いくつかの場合では、一定コースの場合、プレドニゾンの用量は、少なくとも45日間、100mg/d、90mg/d、80mg/d、70mg/d、60mg/d、50mg/d、40mg/d、30mg/d、20mg/d、10mg/d又は5mg/dであってもよい。
【0143】
いくつかの場合では、漸減コースの場合、プレドニゾンの第1の用量は、100mg/dで開始し、次いで少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、90mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、80mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、70mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、60mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、50mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、40mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、30mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、プレドニゾンの第1の用量は、20mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよく、又は、プレドニゾンの第1の用量は、10mg/dで開始し、少なくとも60日間一定となるまで5mg/dで低減されてもよい。いくつかの場合では、一定コースの場合、プレドニゾンの用量は、少なくとも60日間、100mg/d、90mg/d、80mg/d、70mg/d、60mg/d、50mg/d、40mg/d、30mg/d、20mg/d、10mg/d又は5mg/dであってもよい。
【0144】
コルチコステロイド及び/又はプレドニゾンは、血管内、静脈内、動脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下、筋肉内、眼窩内、経口、局所的に、又はレシピエントによるコルチコステロイド及び/又はプレドニゾンの適切な代謝を可能にする任意の源を介して投与され得る。
【0145】
いくつかの場合では、レシピエントは、照射により治療される。照射は、分割されてもよく、又は非分割であってもよい。レシピエントが2回以上の線量の照射で治療される場合、全ての線量が分割されてもよい。レシピエントが2回以上の線量の照射で治療される別の場合において、全ての線量が非分割であってもよい。レシピエントが2回以上の線量の照射で治療される別の場合において、線量は、分割及び未分画の混合であってもよい。
【0146】
いくつかの場合では、照射は、術中に送達される。いくつかの場合では、照射は、静脈内に送達される。いくつかの場合では、照射は、動脈内に送達される。いくつかの場合では、照射は、皮下に送達される。いくつかの場合では、照射は、腹腔内に送達される。
【0147】
いくつかの場合では、単回線量の照射が、レシピエントに送達され得る。他の場合では、レシピエントは、2回以上の線量の照射を受け得る。例えば、レシピエントは、少なくとも1回線量の照射、2回線量の照射、3回線量の照射、4回線量の照射、5回線量の照射、6回線量の照射、7回線量の照射、8回線量の照射、9回線量の照射、10回線量の照射、11回線量の照射、12回線量の照射、13回線量の照射、14回線量の照射、15回線量の照射、16回線量の照射、17回線量の照射、18回線量の照射、19回線量の照射、又は少なくとも20回線量の照射を受け得る。
【0148】
いくつかの場合では、各照射線量は、少なくとも1cGy、2cGy、3cGy、4cGy、5cGy、6cGy、7cGy、8cGy、9cGy、10cGy、11cGy、12cGy、13cGy、14cGy、15cGy、16cGy、17cGy、18cGy、19cGy、20cGy、21cGy、22cGy、23cGy、24cGy、25cGy、26cGy、27cGy、28cGy、29cGy、30cGy、31cGy、32cGy、33cGy、34cGy、35cGy、36cGy、37cGy、38cGy、39cGy、40cGy、41cGy、42cGy、43cGy、44cGy、45cGy、46cGy、47cGy、48cGy、49cGy、50cGy、51cGy、52cGy、53cGy、54cGy、55cGy、56cGy、57cGy、58cGy、59cGy、60cGy、61cGy、62cGy、63cGy、64cGy、65cGy、66cGy、67cGy、68cGy、69cGy、70cGy、71cGy、72cGy、73cGy、74cGy、75cGy、76cGy、77cGy、78cGy、79cGy、80cGy、81cGy、82cGy、83cGy、84cGy、85cGy、86cGy、87cGy、88cGy、89cGy、90cGy、91cGy、92cGy、93cGy、94cGy、95cGy、96cGy、97cGy、98cGy、99cGy、100cGy、105cGy、110cGy、115cGy、120cGy、125cGy、130cGy、135cGy、140cGy、145cGy、150cGy、155cGy、160cGy、165cGy、170cGy、175cGy、180cGy、185cGy、190cGy、195cGy、200cGy、205cGy、210cGy、215cGy、220cGy、225cGy、230cGy、235cGy、240cGy、245cGy、250cGy、255cGy、260cGy、265cGy、270cGy、275cGy、280cGy、285cGy、290cGy、295cGy、300cGy、305cGy、310cGy、315cGy、320cGy、325cGy、330cGy、335cGy、340cGy、345cGy、350cGy、355cGy、360cGy、365cGy、370cGy、375cGy、380cGy、385cGy、390cGy、395cGy、400cGy、405cGy、410cGy、415cGy、420cGy、425cGy、430cGy、435cGy、440cGy、445cGy、450cGy、455cGy、460cGy、465cGy、470cGy、475cGy、480cGy、485cGy、490cGy、495cGy又は少なくとも500cGyであり得る。
【0149】
固形臓器移植の同じ日に照射が施されてもよい。いくつかの場合では、複数の照射線量は、臓器移植後の一定期間にわたって送達され得る。いくつかの場合では、複数の照射線量は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、3週間、又はそれ以上の期間にわたって送達され得る。いくつかの場合では、照射の線量は、投与のコースにわたって一定の間隔で送達される。他の場合では、照射の線量は、投与のコースにわたって一定の間隔で送達されない。例えば、照射は、移植後1日目~4日目、及び7日目~11日目に、胸腺に送達されてもよい。
【0150】
照射は、レシピエントの体の特定の位置に標的化され得る。いくつかの場合では、照射は、組織、臓器、身体の領域、又は全身に標的化され得る。いくつかの場合では、照射は、リンパ節、脾臓、若しくは胸腺又は当業者に知られている任意の他の領域に標的化され得る。いくつかの場合では、照射は、少なくとも2回以上の線量の照射が患者に送達される場合、同じ位置に標的化され得る。他の場合では、照射は、少なくとも2回以上の線量の照射が患者に送達される場合、異なる位置に標的化され得る。
【0151】
コンディショニング中、レシピエントは、非骨髄破壊的コンディショニングに関連する状態の発症について監視され得る。そのような疾患としては、好中球減少症(例えば、顆粒球<2,000/mL)、血小板減少症(例えば、血小板<60,000/mL)及び二次感染が挙げられる。いくつかの場合では、G-CSF(例えば、10μg/kg/日)が、好中球減少症に対して投与され得る。いくつかの場合では、当業者に知られている任意の標準的な治療は、血小板減少症又は任意の二次感染症に対して投与され得る。
【0152】
いくつかの場合では、レシピエントが好中球減少症、血小板減少症、又は任意の二次感染を発症する場合、コンディショニングは一時的に中止され得る。非骨髄破壊的コンディショニングは、好中球減少症、血小板減少症、及び任意の二次感染が解消された後も継続され得る。いくつかの場合では、レシピエントが1,000細胞/mm未満の白血球数を有する場合、レシピエントは、非骨髄破壊的コンディショニング後、G-CSF(例えば、10μg/kg/日)で治療され得る。
【0153】
免疫抑制及び移植片管理
HLAマッチ又はHLAミスマッチ固形臓器移植、及び操作されたHLAマッチ又はHLAミスマッチ造血細胞の投与のいずれかの後、レシピエントは、免疫抑制レジメンを受け得る。免疫抑制レジメンは、誘導段階及び維持段階の2つの段階を有し得る。誘導及び維持段階戦略は、レシピエントにおける長期移植持続性を高めるために標的治療レベルを達成するように調整された用量で異なる薬を使用し得る。いくつかの場合では、誘導段階は、術中に開始してもよい。いくつかの場合では、誘導段階は、移植直後に開始してもよい。いくつかの場合では、誘導段階は、術中及び移植直後の両方であってもよい。いくつかの場合では、免疫抑制レジメンは、レシピエントがキメリズムを達成するまで、維持療法として継続し得る。例えば、キメリズムは、本明細書に記載されるように、安定した混合キメリズムであり得る。
【0154】
いくつかの場合では、免疫抑制レジメンは、1種の薬剤を含んでもよい。他の場合では、免疫抑制レジメンは、2種以上の薬剤を含み得る。例えば、免疫抑制レジメンに好適な薬剤としては、カルシニューリン阻害剤及び/又はアジュバントが挙げられ得る。いくつかの場合では、一次免疫抑制剤には、カルシニューリン活性を阻害するために結合タンパク質と組み合わされるカルシニューリン阻害剤が含まれる。いくつかの場合では、カルシニューリン阻害剤は、当業者に知られているタクロリムス、シクロスポリンA、又は任意のカルシニューリン阻害剤であり得、カルシニューリン阻害剤として標的免疫抑制を提供するために有効な用量でレシピエントに投与され得る。
【0155】
いくつかの場合では、シクロスポリンAは、1カ月未満、2カ月未満、3カ月未満、4カ月未満、5カ月未満、6カ月未満、7カ月未満、8カ月未満、9カ月未満、10カ月未満、11カ月未満、12カ月未満、13カ月未満、14カ月未満、15カ月未満、16カ月未満、17カ月未満、18カ月未満、19カ月未満、20カ月未満、21カ月未満、22カ月未満、23カ月未満、又は24カ月未満の期間後に、レシピエントから離脱され得る。
【0156】
いくつかの場合では、シクロスポリンAは、1カ月超、2カ月超、3カ月超、4カ月超、5カ月超、6カ月超、7カ月超、8カ月超、9カ月超、10カ月超、11カ月超、12カ月超、13カ月超、14カ月超、15カ月超、16カ月超、17カ月超、18カ月超、19カ月超、20カ月超、21カ月超、22カ月超、23カ月超、又は24カ月超の期間後に、レシピエントから離脱され得る。
【0157】
いくつかの場合では、シクロスポリンAの用量は、レシピエントが拒絶反応の欠如及びGVHDの臨床基準を満たす場合、徐々に漸減され得る。例えば、投与されるシクロスポリンAの総量は、経時的に低減され得る。いくつかの場合では、シクロスポリンAの漸減は、漸減レジメンの終了時にシクロスポリンAの用量がゼロまで漸減されるように、1カ月未満、2カ月未満、3カ月未満、4カ月未満、5カ月未満、6カ月未満、7カ月未満、8カ月未満、9カ月未満、10カ月未満、11カ月未満、12カ月未満、13カ月未満、14カ月未満、15カ月未満、16カ月未満、17カ月未満、18カ月未満、19カ月未満、20カ月未満、21カ月未満、22カ月未満、23カ月未満、又は24カ月未満の期間にわたって行われ得る。いくつかの場合では、シクロスポリンAの漸減は、漸減レジメンの終了時にシクロスポリンAの用量がゼロまで漸減されるように、1カ月超、2カ月超、3カ月超、4カ月超、5カ月超、6カ月超、7カ月超、8カ月超、9カ月超、10カ月超、11カ月超、12カ月超、13カ月超、14カ月超、15カ月超、16カ月超、17カ月超、18カ月超、19カ月超、20カ月超、21カ月超、22カ月超、23カ月超、又は24カ月超の期間にわたって行われ得る。
【0158】
いくつかの場合では、シクロスポリンAは、単回用量によってレシピエントに送達され得る。他の場合では、レシピエントは、2回以上の用量のシクロスポリンAを受け得る。例えば、レシピエントは、少なくとも1回用量のシクロスポリンA、2回用量のシクロスポリンA、3回用量のシクロスポリンA、4回用量のシクロスポリンA、5回用量のシクロスポリンA、6回用量のシクロスポリンA、7回用量のシクロスポリンA、8回用量のシクロスポリンA、9回用量のシクロスポリンA、10回用量のシクロスポリンA、11回用量のシクロスポリンA、12回用量のシクロスポリンA、13回用量のシクロスポリンA、14回用量のシクロスポリンA、15回用量のシクロスポリンA、16回用量のシクロスポリンA、17回用量のシクロスポリンA、18回用量のシクロスポリンA、19回用量のシクロスポリンA、又は20回用量のシクロスポリンAを受け得る。
【0159】
いくつかの場合では、複数のシクロスポリンA用量が、臓器移植後の一定期間にわたって送達され得る。いくつかの場合では、複数のシクロスポリンA用量は、少なくとも0.1日、0.2日、0.3日、0.4日、0.5日、0.6日、0.7日、0.8日、0.9日、1.0日、1.1日、1.2日、1.3日、1.4日、1.5日、1.6日、1.7日、1.8日、1.9日、2.0日、2.1日、2.2日、2.3日、2.4日、2.5日、2.6日、2.7日、2.8日、2.9日、3.0日、3.1日、3.2日、3.3日、3.4日、3.5日、3.6日、3.7日、3.8日、3.9日、4.0日、4.1日、4.2日、4.3日、4.4日、4.5日、4.6日、4.7日、4.8日、4.9日、5.0日、5.1日、5.2日、5.3日、5.4日、5.5日、5.6日、5.7日、5.8日、5.9日、6.0日、6.1日、6.2日、6.3日、6.4日、6.5日、6.6日、6.7日、6.8日、6.9日、7.0日、7.1日、7.2日、7.3日、7.4日、7.5日、7.6日、7.7日、7.8日、7.9日、8.0日、8.1日、8.2日、8.3日、8.4日、8.5日、8.6日、8.7日、8.8日、8.9日、9.0日、9.1日、9.2日、9.3日、9.4日、9.5日、9.6日、9.7日、9.8日、9.9日、10日、10.5日、11日、11.5日、12日、12.5日、13日、13.5日、14日、14.5日、15日、15.5日、16日、16.5日、17日、17.5日、18日、18.5日、19日又は少なくとも20日の期間にわたって送達され得る。
【0160】
いくつかの場合では、シクロスポリンAの各用量は、少なくとも0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5.0mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg、5.9mg/kg、6.0mg/kg、6.1mg/kg、6.2mg/kg、6.3mg/kg、6.4mg/kg、6.5mg/kg、6.6mg/kg、6.7mg/kg、6.8mg/kg、6.9mg/kg、7.0mg/kg、7.1mg/kg、7.2mg/kg、7.3mg/kg、7.4mg/kg、7.5mg/kg、7.6mg/kg、7.7mg/kg、7.8mg/kg、7.9mg/kg、8.0mg/kg、8.1mg/kg、8.2mg/kg、8.3mg/kg、8.4mg/kg、8.5mg/kg、8.6mg/kg、8.7mg/kg、8.8mg/kg、8.9mg/kg、9.0mg/kg、9.1mg/kg、9.2mg/kg、9.3mg/kg、9.4mg/kg、9.5mg/kg、9.6mg/kg、9.7mg/kg、9.8mg/kg、9.9mg/kg、又は少なくとも10mg/kgであってもよい。
【0161】
いくつかの場合では、患者に投与されるシクロスポリンAの量は、血流中のシクロスポリンAの量によって決定され得る。例えば、シクロスポリンAは、0~40mg、5~50mg、10~60mg、15~65mg、20~70mg、25~75mg、30~80mg、35~85mg、40~90mg、45~95mg、50~100mg、55~105mg、60~110mg、65~115mg、70~120mg、75~125mg、80~130mg、85~135mg、90~140mg、95~145mg、100~150mg、105~155mg、110~160mg、115~165mg、120~170mg、125~175mg、130~180mg、135~185mg、140~190mg、145~195mg、150~200mg、160~210mg、170~220mg、180~230mg、190~240mg、200~250mg、210~260mg、220~270mg、230~280mg、240~290mg、250~300mg、260~310mg、270~320mg、280~330mg、290~340mg、300~350mg、310~360mg、320~370mg、330~380mg、340~390mg、350~400mg、360~410mg、370~420mg、380~430mg、390~440mg、400~450mg、410~460mg、420~470mg、430~480mg、440~490mg、450~500mg、46~510mg、470~520mg、480~530mg、490~540mg、500~550mg、510~560mg、520~570mg、530~580mg、540~590mg、550~600mg、560~610mg、570~620mg、580~630mg、590~640mg、600~650mg、610~660mg、620~670mg、630~680mg、640~690mg、650~700mg又は700mg超の範囲を達成するための用量で投与され得る。
【0162】
いくつかの場合では、タクロリムスは、1カ月超、2カ月超、3カ月超、4カ月超、5カ月超、6カ月超、7カ月超、8カ月超、9カ月超、10カ月超、11カ月超、12カ月超、13カ月超、14カ月超、15カ月超、16カ月超、17カ月超、18カ月超、19カ月超、20カ月超、21カ月超、22カ月超、23カ月超、又は24カ月超の期間後に、レシピエントから離脱され得る。いくつかの場合では、タクロリムスの用量は、レシピエントが拒絶反応の欠如及びGVHDの臨床基準を満たす場合、徐々に漸減され得る。例えば、投与されるタクロリムスの総量は、経時的に低減され得る。いくつかの場合では、タクロリムスの漸減は、漸減レジメンの終了時にタクロリムスの用量がゼロまで漸減されるように、1カ月未満、2カ月未満、3カ月未満、4カ月未満、5カ月未満、6カ月未満、7カ月未満、8カ月未満、9カ月未満、10カ月未満、11カ月未満、12カ月未満、13カ月未満、14カ月未満、15カ月未満、16カ月未満、17カ月未満、18カ月未満、19カ月未満、20カ月未満、21カ月未満、22カ月未満、23カ月未満、又は24カ月未満の期間にわたって行われ得る。
【0163】
いくつかの場合では、タクロリムスは、1カ月未満、2カ月未満、3カ月未満、4カ月未満、5カ月未満、6カ月未満、7カ月未満、8カ月未満、9カ月未満、10カ月未満、11カ月未満、12カ月未満、13カ月未満、14カ月未満、15カ月未満、16カ月未満、17カ月未満、18カ月未満、19カ月未満、20カ月未満、21カ月未満、22カ月未満、23カ月未満、又は24カ月未満の期間後に、レシピエントから離脱され得る。いくつかの場合では、タクロリムスの用量は、レシピエントが拒絶反応の欠如及びGVHDの臨床基準を満たす場合、徐々に漸減され得る。例えば、投与されるタクロリムスの総量は、経時的に低減され得る。いくつかの場合では、タクロリムスの漸減は、漸減レジメンの終了時にタクロリムスの用量がゼロまで漸減されるように、1カ月超、2カ月超、3カ月超、4カ月超、5カ月超、6カ月超、7カ月超、8カ月超、9カ月超、10カ月超、11カ月超、12カ月超、13カ月超、14カ月超、15カ月超、16カ月超、17カ月超、18カ月超、19カ月超、20カ月超、21カ月超、22カ月超、23カ月超、又は24カ月超の期間にわたって行われ得る。
【0164】
いくつかの場合では、タクロリムスは、単回用量によってレシピエントに送達され得る。他の場合では、レシピエントは、2回以上の用量のタクロリムスを受け得る。例えば、レシピエントは、少なくとも1回用量のタクロリムス、2回用量のタクロリムス、3回用量のタクロリムス、4回用量のタクロリムス、5回用量のタクロリムス、6回用量のタクロリムス、7回用量のタクロリムス、8回用量のタクロリムス、9回用量のタクロリムス、10回用量のタクロリムス、11回用量のタクロリムス、12回用量のタクロリムス、13回用量のタクロリムス、14回用量のタクロリムス、15回用量のタクロリムス、16回用量のタクロリムス、17回用量のタクロリムス、18回用量のタクロリムス、19回用量のタクロリムス、又は少なくとも20回用量のタクロリムスを受け得る。
【0165】
いくつかの場合では、複数のタクロリムス用量が、臓器移植後の一定期間にわたって送達され得る。いくつかの場合では、複数のタクロリムス用量は、少なくとも0.1日、0.2日、0.3日、0.4日、0.5日、0.6日、0.7日、0.8日、0.9日、1.0日、1.1日、1.2日、1.3日、1.4日、1.5日、1.6日、1.7日、1.8日、1.9日、2.0日、2.1日、2.2d日、2.3日、2.4日、2.5日、2.6日、2.7日、2.8日、2.9日、3.0日、3.1日、3.2日、3.3日、3.4日、3.5日、3.6日、3.7日、3.8日、3.9日、4.0日、4.1日、4.2日、4.3日、4.4日、4.5日、4.6日、4.7日、4.8日、4.9日、5.0日、5.1日、5.2日、5.3日、5.4日、5.5日、5.6日、5.7日、5.8日、5.9日、6.0日、6.1日、6.2日、6.3日、6.4日、6.5日、6.6日、6.7日、6.8日、6.9日、7.0日、7.1日、7.2日、7.3日、7.4日、7.5日、7.6日、7.7日、7.8日、7.9日、8.0日、8.1日、8.2日、8.3日、8.4日、8.5日、8.6日、8.7日、8.8日、8.9日、9.0日、9.1日、9.2日、9.3日、9.4日、9.5日、9.6日、9.7日、9.8日、9.9日、10日、10.5日、11日、11.5日、12日、12.5日、13日、13.5日、14日、14.5日、15日、15.5日、16日、16.5日、17日、17.5日、18日、18.5日、19日又は少なくとも20日の期間にわたって送達され得る。
【0166】
いくつかの場合では、タクロリムスの各用量は、少なくとも0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5.0mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg、5.9mg/kg、6.0mg/kg、6.1mg/kg、6.2mg/kg、6.3mg/kg、6.4mg/kg、6.5mg/kg、6.6mg/kg、6.7mg/kg、6.8mg/kg、6.9mg/kg、7.0mg/kg、7.1mg/kg、7.2mg/kg、7.3mg/kg、7.4mg/kg、7.5mg/kg、7.6mg/kg、7.7mg/kg、7.8mg/kg、7.9mg/kg、8.0mg/kg、8.1mg/kg、8.2mg/kg、8.3mg/kg、8.4mg/kg、8.5mg/kg、8.6mg/kg、8.7mg/kg、8.8mg/kg、8.9mg/kg、9.0mg/kg、9.1mg/kg、9.2mg/kg、9.3mg/kg、9.4mg/kg、9.5mg/kg、9.6mg/kg、9.7mg/kg、9.8mg/kg、9.9mg/kg、又は少なくとも10mg/kgであってもよい。
【0167】
いくつかの場合では、患者に投与されるタクロリムスの量は、血流中のタクロリムスの量によって決定される。例えば、タクロリムスは、0~40mg、5~50mg、10~60mg、15~65mg、20~70mg、25~75mg、30~80mg、35~85mg、40~90mg、45~95mg、50~100mg、55~105mg、60~110mg、65~115mg、70~120mg、75~125mg、80~130mg、85~135mg、90~140mg、95~145mg、100~150mg、105~155mg、110~160mg、115~165mg、120~170mg、125~175mg、130~180mg、135~185mg、140~190mg、145~195mg、150~200mg、160~210mg、170~220mg、180~230mg、190~240mg、200~250mg、210~260mg、220~270mg、230~280mg、240~290mg、250~300mg、260~310mg、270~320mg、280~330mg、290~340mg、300~350mg、310~360mg、320~370mg、330~380mg、340~390mg、350~400mg、360~410mg、370~420mg、380~430mg、390~440mg、400~450mg、410~460mg、420~470mg、430~480mg、440~490mg、450~500mg、46~510mg、470~520mg、480~530mg、490~540mg、500~550mg、510~560mg、520~570mg、530~580mg、540~590mg、550~600mg、560~610mg、570~620mg、580~630mg、590~640mg、600~650mg、610~660mg、620~670mg、630~680mg、640~690mg、650~700mg又は700mg超の範囲を達成するための用量で投与され得る。
【0168】
レシピエントにおけるシクロスポリン又はタクロリムスのいずれかのレベルが監視され得る。免疫抑制の開始時に、シクロスポリン又はタクロリムスのいずれかのレベルは、例えば、レシピエントにおいて、0~15ng/mL、5~15ng/mL、10~20ng/mL、15~25ng/mL、20~30ng/mL、25~35ng/mL、30~40ng/mL、35~45ng/mL又は40~50ng/mLの範囲内であり得る。いくつかの場合では、シクロスポリン又はタクロリムスのいずれかのレベルは、レシピエントにおいて一定期間後に低減され得る。例えば、期間は、1週間未満、2週間未満、3週間未満、4週間未満、5週間未満、6週間未満、7週間未満、8週間未満、9週間未満、10週間未満、11週間未満、12週間未満、13週間未満、14週間未満、15週間未満、16週間未満、17週間未満、18週間未満、19週間未満、20週間未満、21週間未満、22週間未満、23週間未満、24週間未満、25週間未満、26週間未満、27週間未満、28週間未満、29週間未満、又は33週間未満であってもよい。いくつかの場合では、シクロスポリン又はタクロリムスのいずれかのレベルは、レシピエントにおいて、0~1ng/mL、0.5~1.5ng/mL、1.0~2.0ng/mL、1.5~2.5ng/mL、2.0~3.0ng/mL、2.5~3.5ng/mL、3.0~4.0ng/mL、3.5~4.5ng/mL、4.0~5.0ng/mL、5.5~6.5ng/mL、6.0~7.0ng/mL、6.5~7.5ng/mL、7.0~8.0ng/mL、8.5~9.5ng/mL又は9.0~10.0ng/mLの範囲内に低減され得る。
【0169】
いくつかの場合では、カルシニューリン阻害剤は、プリン代謝阻害剤(例えば、ミコフェノール酸モフェチル)と組み合わせてレシピエントに投与され得る。例えば、シクロスポリンA及びミコフェノール酸モフェチルは、腎移植の場合に使用され得る。
【0170】
いくつかの場合では、アジュバントは、1カ月超、2カ月超、3カ月超、4カ月超、5カ月超、6カ月超、7カ月超、8カ月超、9カ月超、10カ月超、11カ月超、12カ月超、13カ月超、14カ月超、15カ月超、16カ月超、17カ月超、18カ月超、19カ月超、20カ月超、21カ月超、22カ月超、23カ月超、又は24カ月超の期間後に、レシピエントから離脱され得る。いくつかの場合では、アジュバントの用量は、レシピエントが拒絶反応の欠如及びGVHDの臨床基準を満たす場合、徐々に漸減され得る。例えば、投与されるアジュバントの総量は、経時的に低減され得る。いくつかの場合では、アジュバントの漸減は、漸減レジメンの終了時にプリン代謝阻害剤の用量がゼロまで漸減されるように、1カ月超、2カ月超、3カ月超、4カ月超、5カ月超、6カ月超、7カ月超、8カ月超、9カ月超、10カ月超、11カ月超、12カ月超、13カ月超、14カ月超、15カ月超、16カ月超、17カ月超、18カ月超、19カ月超、20カ月超、21カ月超、22カ月超、23カ月超、又は24カ月超の期間にわたって行われ得る。
【0171】
いくつかの場合では、アジュバントは、1カ月未満、2カ月未満、3カ月未満、4カ月未満、5カ月未満、6カ月未満、7カ月未満、8カ月未満、9カ月未満、10カ月未満、11カ月未満、12カ月未満、13カ月未満、14カ月未満、15カ月未満、16カ月未満、17カ月未満、18カ月未満、19カ月未満、20カ月未満、21カ月未満、22カ月未満、23カ月未満、又は24カ月未満の期間後に、レシピエントから離脱され得る。いくつかの場合では、アジュバントの用量は、レシピエントが拒絶反応の欠如及びGVHDの臨床基準を満たす場合、徐々に漸減され得る。例えば、投与されるアジュバントの総量は、経時的に低減され得る。いくつかの場合では、アジュバントの漸減は、漸減レジメンの終了時にプリン代謝阻害剤の用量がゼロまで漸減されるように、1カ月未満、2カ月未満、3カ月未満、4カ月未満、5カ月未満、6カ月未満、7カ月未満、8カ月未満、9カ月未満、10カ月未満、11カ月未満、12カ月未満、13カ月未満、14カ月未満、15カ月未満、16カ月未満、17カ月未満、18カ月未満、19カ月未満、20カ月未満、21カ月未満、22カ月未満、23カ月未満、又は24カ月未満の期間にわたって行われ得る。
【0172】
アジュバント剤を使用して、免疫抑制レジメンの一部である他の個々の薬剤の用量及び毒性を減少させながら、免疫抑制を増強することができる。いくつかの場合では、アジュバント剤は、カルシニューリン阻害剤と組み合わされてもよい。例えば、アジュバント剤としては、ステロイド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シロリムス、抗体又は当業者に知られている任意のアジュバント剤が挙げられ得、免疫抑制を増強するため効果的な用量でレシピエントに投与され得る。
【0173】
いくつかの場合では、抗体ベースの療法は、免疫抑制レジメンにおけるカルシニューリン阻害剤の用量を回避又は低減するために使用され得る。例えば、抗体ベースの療法は、モノクローナル(例えば、ムロモナブ-CD3)抗体、ポリクローナル抗体、及び/又は抗CD25抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)を含み得る。いくつかの場合では、抗体ベースの療法は、早期移植後期間中に投与され得る。例えば、早期の移植後は、移植後8週間までであり得る。
【0174】
移植片管理は、免疫抑制薬で急性拒絶反応を予防、阻害、又は抑制することを含み得る。いくつかの場合では、複数の薬剤を使用して、急性拒絶反応のエピソードを予防、阻害、又は抑制することができる。例えば、薬剤は、ステロイドであってもよい。いくつかの場合では、1種以上のステロイドを使用して、急性拒絶反応のエピソードを予防、阻害、又は抑制することができる。急性拒絶反応の予防、阻害又は抑制に好適な当業者に知られている任意のステロイドが使用され得る。例えば、急性拒絶反応の予防、阻害又は抑制に好適な当業者に知られている任意のステロイドの任意の用量、投与様式及び投与期間が使用され得る。いくつかの場合では、ステロイドの投与は、維持用量まで漸減され得る。
【0175】
例えば、薬剤は、抗胸腺細胞グロブリンであってもよい。いくつかの場合では、抗胸腺細胞グロブリンは、急性拒絶反応のエピソードを予防、阻害、又は抑制するために使用され得る。急性拒絶反応の予防、阻害又は抑制に好適な抗胸腺細胞グロブリンの任意の用量、投与様式及び投与期間が使用され得る。いくつかの場合では、抗胸腺細胞グロブリンの投与は、維持用量まで漸減され得る。
【0176】
例えば、薬剤は、ムロモナブ-CD3であってもよい。いくつかの場合では、ムロモナブ-CD3は、急性拒絶反応のエピソードを予防、阻害、又は抑制するために使用され得る。急性拒絶反応の予防、阻害又は抑制に好適なムロモナブ-CD3の任意の用量、投与様式及び投与期間が使用され得る。いくつかの場合では、ムロモナブ-CD3の投与は、維持用量まで漸減され得る。
【0177】
キメリズム
HLAマッチ又はHLAミスマッチ固形臓器移植、及び操作されたHLAマッチ又はHLAミスマッチ造血細胞の投与のいずれかの後、レシピエントは、キメリズムについて監視され得る。移植後の任意の時点でキメリズムを決定するための任意の分析によって所与の血液細胞系統において95%超のドナー細胞を示すレシピエントは、完全なドナーキメリズムを有すると分類され得る。いくつかの場合では、混合キメリズムは、所与の系統の1%超のドナー由来細胞であるが95%未満のドナー由来DNAであり得る。
【0178】
混合キメリズムを示す個体は、キメリズムの進展に従って更に分類することができ、混合キメリズムの改善は、ある期間(例えば少なくとも6カ月間)にわたるドナー細胞の割合の連続的な増加であってもよい。いくつかの場合では、安定した混合キメリズムは、ドナー細胞を完全に喪失せずに、時間経過に伴うレシピエント細胞の割合の変動を含み得る。
【0179】
混合キメリズムは、レシピエント内の単一の細胞型に対するドナー細胞の割合を測定することによって決定され得る。例えば、混合キメリズムは、レシピエントにおけるドナー由来顆粒球の割合によって決定され得る。いくつかの場合では、混合キメリズムは、レシピエント内の複数の細胞型に対するドナー細胞の割合を測定することによって決定され得る。例えば、混合キメリズムは、レシピエントにおけるドナー由来顆粒球、ナチュラルキラー細胞、B細胞、及びT細胞の割合によって決定され得る。
【0180】
当業者に容易に入手可能でありかつ知られているキメリズムの試験の複数の方法が存在する。細胞のドナー又はレシピエントの起源を区別するキメリズムの試験の任意の方法が、本明細書に記載の方法における使用に好適である。
【0181】
いくつかの場合では、キメリズムの試験方法は、遺伝子ベースの方法を含み得る。例えば、プローブを利用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの方法が使用されてもよい。いくつかの場合では、PCRベースの方法のためのプローブは、マイクロサテライト分析のためのプローブであり得る。別の例では、ドナー及び宿主起源の短末端反復長における多型を区別する市販のキットが容易に入手可能であり、当業者に知られている。
【0182】
いくつかの場合では、主要組織適合性複合体(MHC)タイピングが、キメリズムを試験するために使用され得る。例えば、MHCタイピングは、血液中の細胞の種類を試験するために使用することができる。いくつかの場合では、MHCタイピングは、フローサイトメトリーと組み合わせて使用され得る。いくつかの場合では、フローサイトメトリーによるHLA染色細胞の分析が実行され得る。
【0183】
本明細書に記載される方法は、レシピエントが免疫抑制薬の離脱を可能にするために十分な安定した混合キメリズムを達成し得るように提供される。例えば、免疫抑制薬の離脱は、免疫抑制薬の漸減を含み得る。他の場合では、免疫抑制薬の離脱は、免疫抑制薬の即時中止を含み得る。いくつかの場合では、混合キメリズムは、免疫抑制薬の離脱前に少なくとも6カ月持続する。他の場合では、混合キメリズムは、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、又は少なくとも24カ月持続する。いくつかの場合では、アジュバントの用量は、レシピエントが拒絶反応の欠如及びGVHDの臨床基準を満たす場合、徐々に漸減され得る。例えば、投与されるアジュバントの総量は、経時的に低減され得る。いくつかの場合では、アジュバントの漸減は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、又は少なくとも24カ月の期間にわたって行われ得る。
【0184】
いくつかの場合では、拒絶反応エピソードの欠如は、免疫抑制薬の離脱前の混合キメリズムと一致し得る。いくつかの場合では、拒絶反応エピソードの欠如は、免疫抑制薬の離脱前の少なくとも6カ月間一貫し得る。他の場合では、拒絶反応エピソードの欠如は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、又は少なくとも24カ月一貫し得る。いくつかの場合では、アジュバントの用量は、レシピエントが拒絶反応の欠如及びGVHDの臨床基準を満たす場合、徐々に漸減され得る。例えば、投与されるアジュバントの総量は、経時的に低減され得る。いくつかの場合では、アジュバントの漸減は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、又は少なくとも24カ月の期間にわたって行われ得る。
【0185】
いくつかの場合では、GVHDの欠如及び拒絶反応エピソードの欠如は、免疫抑制薬の離脱前の混合キメリズムと一致する。いくつかの場合では、GVHDの欠如及び拒絶反応エピソードの欠如は、免疫抑制薬の離脱前の少なくとも6カ月間一貫し得る。他の場合では、GVHDの欠如及び拒絶反応エピソードの欠如は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、又は少なくとも24カ月一貫し得る。いくつかの場合では、アジュバントの用量は、レシピエントが拒絶反応の欠如及びGVHDの臨床基準を満たす場合、徐々に漸減され得る。例えば、投与されるアジュバントの総量は、経時的に低減され得る。いくつかの場合では、アジュバントの漸減は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、又は少なくとも24カ月の期間にわたって行われ得る。
【0186】
免疫抑制レジメンの漸減がレシピエントに適切であるか否かを決定するために、レシピエントは、通常、一定の間隔で、混合キメリズムについて試験され得る。例えば、一定の間隔は、毎月、月2回、毎週、隔月、毎年、隔年などであり得る。
【0187】
本発明は、完全に説明されているが、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができることは、当業者には明らかである。
【実施例
【0188】
本開示は、本開示の実施のための好ましいモードを含むように見出されるか、又は提供される特定の場合に関して説明されている。当業者には、本開示に照らして、本開示の意図される範囲から逸脱することなく、例示される特定の実施形態で多数の修正及び変更を行うことができることが理解される。例えば、コドン冗長性によって、タンパク質配列に影響を与えることなく、基礎となるDNA配列の変更を行うことができる。生物学的機能的等価性を考慮することによって、種類又は量において生物学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造の変更を行うことができる。かかる修正は全て、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0189】
本開示の実施に有用な一般的な技法の更なる詳細については、実施者は、細胞生物学、組織培養、及び発生学における標準的な教科書並びにレビューを参照することができる。組織培養及び胚性幹細胞に関して、読者は、Teratocarcinomas and embryonic stem cells:A practical approach(E.J.Robertson,ed.,IRL Press Ltd.1987);Guide to Techniques in Mouse Development(P.M.Wasserman et al.eds.,Academic Press 1993);Embryonic Stem Cell Differentiation in Vitro(M.V.Wiles,Meth.Enzymol.225:900,1993);Properties and uses of Embryonic Stem Cells:Prospects for Application to Human Biology and Gene Therapy(P.D.Rathjen et al.,Reprod.Fertil.Dev.10:31,1998)を参照し得る。
【0190】
分子生化学及び細胞生化学における一般方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001)、Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley & Sons 1999)、Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley & Sons 1996)、Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press 1999)、Viral Vectors(Kaplift & Loewy eds.,Academic Press 1995)、Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press 1997)、及びCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths,John Wiley & Sons 1998)などの標準的な教本に見出すことができる。本開示で言及される遺伝子改変のための試薬、クローニングベクター、及びキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma-Aldrich、及びClonTechなどの商業的ベンダーから入手可能である。
【0191】
以下の実施例は、当業者に、本開示の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されるものであり、本開示としてみなされるものの範囲を限定することを意図せず、また、以下の実験が行われる全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数字(例えば、量、温度など)に対する正確性を確保する努力がなされているが、ある程度の実験誤差及び偏差は考慮されるべきである。別様に示されない限り、部とは重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。
【0192】
実施例1
単回の非常に低線量の全身照射(svldTBI)並びに臓器及び組織移植及び自己免疫寛容のためのドナー造血細胞サブセットの注入と組み合わされた、総リンパ照射(TLI)を伴う宿主コンディショニングを使用した、持続性のドナー造血細胞キメリズム。
【0193】
レジメン
HLAマッチした生きている関連ドナーの腎移植において持続的な混合キメリズムを誘発するために使用される現在のレシピエントコンディショニングレジメンへの有意かつ新規な非直感的改善を説明する。
【0194】
TBIの単一画分(1線量)による宿主コンディショニングは、数十年にわたってBMTを受けるがん患者において説明されているように、フルダラビン及び/又はアルキル化化学療法剤と組み合わせて一般的に使用される。これらの公開された研究では、TBIは200~400cGyの間で投与され、これにより骨髄空間が形成され、実質的に全ての患者が2週間超血液及び血小板輸血補助を必要とする深刻な好中球減少症、血小板減少症、及び貧血を発症するように、有意な骨髄形成不全及び血球減少症を誘発した。TBIベースのレシピエントコンディショニングからの深刻な骨髄形成不全の結果、完全なドナー細胞キメリズムが生じ、これらの研究におけるドナー細胞移植片は、TBIベースのコンディショニング後の代替骨髄として機能した。200~400cGyのTBIベースのレシピエントコンディショニングが、レシピエントの約20~40%の進行性急性GVHD、及び約30%のレシピエントの慢性GVHDと関連していることが十分確立されている。パブリックドメインでは、フルダラビン及びシクロホスファミドと組み合わされたTBI 200cGyを使用した、生きているドナーを含む腎移植臓器寛容誘導のためのレシピエントコンディショニングがあるが、予測されるように、このレジメンは、完全なドナー細胞キメリズム(混合キメリズムではない)をもたらし、急性及び慢性GVHDに関連する。
【0195】
ここで、非自明の新しいレシピエントコンディショニングを説明する。TLI-ATGは、通常の方法で投与されるが、TLIの1回の線量は省略され、代わりに、TBIの単回の非常に低線量(svldTBI、40~140cGy、これまでに有益又は有用と考えられたよりもはるかに低い)が投与される。現在、レシピエントBMTコンディショニングにTBIを何十年も使用しているにもかかわらず、部分的には、200cGy未満の単回線量がドナー細胞の生着及びキメリズムを容易にするために十分な骨髄形成不全を誘導することが予想されないため、200cGy未満の単回TBI線量はヒトに投与されていない。本出願では、svldTBI(40~140cGy)もまた骨髄形成不全を誘発することは予測されず、むしろsvldTBIは宿主リンパ枯渇を増強することが予測され、単回の非常に低線量に起因してレシピエント臓器毒性を増加させない。TLIとは異なり、TBIは腸、肝臓、及び肺を保護しないため、これらの臓器内に存在する大規模な免疫細胞リザーバーは、単回の非常に低線量の照射後に部分的に枯渇する。増強された非リンパ性免疫細胞枯渇は、ドナー細胞生着に対する耐性を除去し、全ての程度のHLAミスマッチを有する生きている関連及び非関連ドナーからの、及び死亡したドナーからの造血細胞の注入後、持続的な混合キメリズムを可能にすることが予測される。svldTBIは、顕著な骨髄形成不全、細胞減少、又はGI毒性を誘導することは予測されない。混合キメリズムは保護的であるため、TLI-svldTBI-ATGレジメンはGVHDから保護することが予測される。がん及び腎寛容患者においてTLI-svldTBI-ATG宿主コンディショニングを実行したが、予測どおり、血球減少又は消化管毒性は認められていない(2019年8月~12月までの未公開の観察)。
【0196】
組成物
現在の造血細胞組成物は、全ての程度のHLAミスマッチの生きている関連及び非関連ドナーからの臓器移植レシピエントにおける持続的な混合ドナー細胞キメリズムを達成するには不十分である。本明細書では、全ての程度のHLAミスマッチの生きている関連及び非関連ドナーからの、並びに死亡したドナーからの併用臓器(腎臓、心臓、肝臓、肺、及び腸)、組織及び複合組織並びに造血細胞移植後の、IS薬物最小限化及び/又は完全な薬物停止を可能にする、ドナー細胞産物の新規組成物を説明する。独自のTLI-svldTBI-ATGレシピエントコンディショニングと組み合わせた場合、本明細書に記載のドナー細胞接種は、移植耐性の要件であり、GVHD保護の要件である持続的な混合キメリズムをもたらすことが期待される。
【0197】
生きているHLAミスマッチ関連ドナー及び非関連ドナーの場合、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)+/-モゾビルを使用してドナー造血細胞が動員され、ドナーは、がん患者におけるBMTドナーの標準ケアに従う通常の様式で血液単核細胞を得るために1日又は2日連続して大量(12リットル超)血液アフェレーシスを受ける。アフェレーシス収集は、製造業者のガイドラインに従って、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は磁気活性化細胞選別(MACS)のいずれかを使用して、CD34細胞濃縮のために処理される。CD34濃縮生成物は、標準的な様式で凍結保存される。凍結前のCD34細胞純度は、70%超でなければならない。CD34細胞用量は、800万~2000万個のCD34細胞/kgレシピエント体重の凍結前値である。
【0198】
いくつかの場合では、MACS又はFACS CD34濃縮ステップ後の非CD34細胞画分を使用して、定義された用量のCD3T細胞(2500万~1億CD3/kgレシピエント体重の凍結前用量)が得られ、通常の様式で凍結保存される。
【0199】
いくつかの場合では、100万~1200万/kgの用量のドナー由来のCD8記憶T細胞(CD3/CD8/CD45RA/CD45ROとして定義され、がん患者で使用するための、2017年12月5日に発行された米国特許第9,833,477B2号に記載される濃縮方法)の濃縮集団が、CD34濃縮細胞産物の0~3日後に、ドナーCD3T細胞の代わりに注入され得る。
【0200】
いくつかの場合では、FACS又はMACS法によって濃縮されたドナー由来のTreg細胞(CD4CD25FoxP3)は、ドナーCD34濃縮細胞の注入の0~4日後に、100万~1000万/kgの用量で注入される。
【0201】
いくつかの場合では、ドナーTreg細胞は、1:50~3:1の範囲のTreg:CD3T細胞の非直感的及び非生理学的比率で、ドナーCD3T細胞と組み合わされ、ドナーCD34濃縮細胞の注入から0~4日後に注入される。
【0202】
上記のドナー細胞接種の全ては、天然に存在する生理学的細胞比率の調整を表し、ドナー移植片改変における組成物の知的財産を表す。CD3T細胞及び/又はCD8記憶T細胞及び/又はTreg細胞と組み合わされた場合、CD34濃縮細胞は、TLI-svldTBI-ATGの独自のレシピエントコンディショニングに続いて、持続的な混合ドナー細胞キメリズムをもたらすことが予測される。
【0203】
死亡したドナーの臓器の場合、通常の様式で椎体(VB)、骨盤骨、及び脾臓から死亡したドナーの造血及び免疫細胞を取得し、細胞を凍結保存する。宿主TLI-svldTBI-ATGコンディショニング後に、死亡したドナーの造血細胞及び免疫細胞は解凍され、レシピエントに注入される。これは、死亡したドナーから得られた細胞を使用して持続的な混合ドナー細胞キメリズムを確立するために、独自に定義された造血及び免疫細胞産物と組み合わせた宿主コンディショニングレジメンの最初のヒト内適用である。持続的な混合キメリズムは、臓器移植耐性、並びにIS薬物最小限化及び/又は離脱につながる。
【0204】
VBから死亡したドナーの骨髄細胞を得るために、椎弓でVBを横断し、独自の手順ステップで、非常に薄い高圧生理食塩水ジェットストリームを適用して、VBから結合組織及び壊死性外科/細菌/細胞破片を「パワーウォッシュ」する。VBがパワーウォッシュされた後、回転鋸スライスがVBを開き、その後、エンドウ豆サイズのチャンクが作製される。これらの方法を組み合わせると、最大の細胞抽出及び収率を可能にするVB骨髄表面積が最大化される。細胞産物は、マルチシーブ溶出及び精製ステップに通過させる。これらの新規の方法は、以前に公開された手順及び方法と比較して、VB細胞の収率及び純度を有意に改善する。
【0205】
VB骨髄細胞を使用して、CD34細胞用量範囲は、200万~2000万/kgレシピエント体重であり、CD3T細胞用量範囲は、1000万~1億/kgである。
【0206】
いくつかの事例では、VB骨髄細胞接種体を補足するために脾細胞を得る。我々は以前、ドナー脾臓から除去されたいくつかの(典型的には2~8個の)2インチサイズの脾臓キューブが、持続的な混合ドナー細胞キメリズムを補助するために、追加の免疫細胞源として必要とされることを決定した(ファイル中の未公開データ)。脾臓キューブは、臓器調達の間に採取され、ドナーVBとともに標準輸送媒体中で輸送される。生きた単核脾細胞からなる単一細胞懸濁液は、i)化学及びタンパク質分解酵素による過剰消化、並びにii)過度の機械的力、ボルテックス、均質化、異常な浸透圧ストレス又はそれらの組み合わせによる環境ストレスからの過度の組織分解を防止するために、特殊な解離媒体及び技術を使用して脾臓組織から細胞を解離することによって得られる。単一細胞懸濁液は、最終的な80~120ミクロンのストレーナを備えたマルチシーブ溶出塔に通過させられる。細胞ペレットは、CD3細胞、及びTreg細胞、間葉系幹細胞(MSC)、B細胞、インバリアントナチュラルキラー(iNK)細胞、及び造血細胞前駆体のアリコートのための生細胞のMACS/FACS分離の有無にかかわらず、凍結保存のために調製される。これらの細胞型は、1つ以上のレシピエントの治療を可能にし得る細胞増殖プロトコルにおいて使用され得る。
【0207】
脾細胞の使用
いくつかの場合では、脾臓CD3T細胞は、注入されたVB骨髄細胞に添加され、低い場合(例えば、VB骨髄細胞から5000万個未満のCD3T細胞が得られる場合)、ドナーCD3T細胞用量を増強する。
【0208】
いくつかの場合では、脾臓T細胞を添加して、2億個のCD3T細胞/kgと高くてもよいCD3T細胞用量を可能にする。
【0209】
いくつかの場合では、脾細胞は、100万~1000万/kgレシピエント体重の用量で使用されるTreg細胞を排他的に得るために使用される。
【0210】
いくつかの場合では、脾臓Treg細胞は、特異的T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)をコードするウイルスベクターのトランスフェクションを介して、所定の抗原特異性で操作され得る。操作されたTreg細胞は、移動、移行及び選択されたレシピエント組織(骨髄、リンパ節、神経細胞、心臓、肺、腎臓、肝臓、腸、及び膵臓)に存在するTreg細胞を促進する組織特異的抗原を発現して、持続的な混合キメリズム及び/又は組織特異的耐性を増強する局所的免疫抑制反応を促進し得る。Tregは、一次細胞として、又は培養増殖において使用されてもよく、潜在的に複数のレシピエントにおいて使用されてもよい。
【0211】
いくつかの場合では、VB骨髄及び/又は脾細胞の「残存」部分は、凍結保存され、数カ月から数年保存され得、キメリズム及び/又は耐性が経時的に減少している場合、後のドナー細胞ブーストとして与えることができる。
【0212】
いくつかの場合では、上記に概説される、死亡したドナーの骨髄及び脾臓細胞サブセットの使用は、免疫調節及び寛容を確立し、持続可能な自己免疫疾患制御を提供するために、再発性及び難治性自己免疫障害を有するレシピエントに注入される。
【0213】
総合して、本明細書では、9回線量のTLIと、ATGと組み合わされた1つの非自明の非常に低線量のTBIとを含む、新しいレシピエント移植耐性コンディショニングレジメンが説明される。新たなレジメンにおけるTBI線量は、以前に公表された単回線量TBIよりもはるかに低い。単回の非常に低線量のTBIは、骨髄形成不全を誘導することは予測されず、むしろ、ドナー造血細胞生着に対する耐性を媒介し、持続的な混合キメリズムを防止する非リンパ系組織に存在するレシピエント免疫細胞を標的とすることが予測される。TLI-svldTBI-ATGレシピエントコンディショニングの使用は、レシピエント免疫細胞区画を変化及び枯渇させ、生きている関連及び非関連ドナーの臓器移植のレシピエント、並びに全ての程度のHLAミスマッチの死亡したドナーの臓器移植のレシピエントにおける持続的なドナー細胞キメリズムを促進する。
【0214】
新規のTLI-svldTBI-ATGレシピエントコンディショニングレジメンは、全ての程度のHLAミスマッチの生きている関連及び非関連ドナー及び死亡したドナーからの臓器又は組織耐性プロトコルで移植を受けているレシピエントのための新たな「組成物」を表す新規のドナー造血細胞産物と組み合わされる。
【0215】
生きているドナーの臓器のレシピエントの場合、造血細胞産物は、短期間のG-CSF及び/又はモゾビル動員とFACS又はMACSによるドナーアフェレーシス及び濃縮の後に得られた、定義された用量のCD34細胞(400万~2000万CD34細胞/kgの凍結前用量)からなる。非CD34細胞画分を使用して、定義された用量のCD3T細胞(2500万~1億/kgの凍結前用量)、又は選択されたCD8記憶T細胞(100万~1000万/kgの凍結前用量)及び/若しくはTreg細胞が得られる。
【0216】
固形臓器ドナーは、生きていてもよく、又は死亡していてもよい。生きているドナーの場合、造血細胞は、生きているドナーからの動員された末梢血のアフェレーシス、死亡したドナーの骨髄からの造血細胞の採取などを含む、当業者に知られている様々な方法のいずれかを用いて、固形臓器ドナーから得ることができる。死亡したドナーの場合、造血細胞は骨髄から得ることができる。例えば、死亡したドナーでは、細胞は、椎骨の骨髄、骨盤骨、大腿骨、又は造血細胞を抽出するために十分な骨髄を含む任意の他の骨若しくは脾臓から得ることができる。独自の組成物は、組織特異的キメラ抗原受容体を発現するように遺伝子操作されていない、又は遺伝子操作されていなくてもよいCD34細胞、CD3細胞、及び/又はTreg細胞の比率に関連する。
【0217】
実施例2
単回の非常に低線量の全身照射(svldTBI)及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG)と組み合わされた、総リンパ照射(TLI)を伴う宿主コンディショニング、並びに移植耐性のためのドナーCD3T細胞及び/又はドナーCD8記憶T細胞の定義された用量をドナーCD34細胞に注入した後の、ドナー造血細胞キメリズム及び臓器移植耐性について説明する。
【0218】
本実施例は、以下を実証する。1.移植片がレシピエントの自然な生活のために生存することができるように、生きている、及び死亡したドナーの臓器移植の免疫媒介拒絶を防ぐ。2.付随する副作用を伴うIS薬物併用の生涯要件の必要性を排除又は大幅に低減する。
【0219】
ここでは、全ての程度のHLAミスマッチを含む、関連及び非関連の生きている、及び死亡したドナーの臓器(腎臓、心臓、肺、肝臓、及び腸)移植のレシピエントに広く適用できる、高レベルの持続性混合キメリズムを達成するための新たな方法を開示する。現在のTLI-ATG宿主コンディショニングレジメンの改善、及びドナーCD34細胞対CD3T細胞の比率を定義するための組成物が説明される。
【0220】
1つのプロトコルに組み合わされた場合、レジメン及び組成物は、全ての程度のHLAミスマッチの関連及び非関連の生きている、及び死亡したドナーの臓器移植のレシピエントの大部分において持続的な混合ドナー細胞キメリズムを確立することが予測される。組成物を含まないレジメン、又はその逆は、IS薬物の最小限化/離脱を補助するために十分高いレベルで持続的な混合キメリズムを確立する可能性が低い。この2つは、成功を達成するために重要である。
【0221】
臓器移植後1年を超える高レベルの持続的な混合キメリズム(>20%ドナーT細胞キメリズム)は、2年目のISの薬物離脱又はISの「部分的な薬物離脱」を補助する。「部分的薬物離脱」の定義は、現在のマルチIS薬物レジメンによって引き起こされる医学的併存症に関連することが予測されない、単一のIS薬物、単剤療法の低治療用量として定義される、有意なIS薬物最小限化を指す。
【0222】
レジメン
本明細書では、HLAマッチした生きている関連及び非関連ドナーの移植患者において持続的キメリズムを誘発するために、我々が開発し、18年以上にわたって使用してきた現在のTLI-ATG宿主コンディショニングレジメンに対する有意な改善及び修正を説明する。
【0223】
我々は、がん患者において、TLI-ATG宿主コンディショニング並びにHLAマッチ及びミスマッチの関連及び非関連ドナーからの移植片を使用して移植された600人を超えるがん患者の転帰を報告した。がん患者研究における目標は、がん治癒のための有益な移植片対腫瘍反応に必要な完全ドナーキメリズムである。
【0224】
我々は、腎寛容移植患者において、TLI-ATGコンディショニングを使用して生きている関連HLAマッチ及びミスマッチドナーから腎臓及び造血細胞の併用移植を受けた50人以上の患者の転帰を報告した。これらの研究では、免疫抑制薬の離脱及び臓器移植片拒絶反応なしの中断を可能にするため、持続的な混合キメリズムが目標であった。
【0225】
上術の研究の全てにおけるTLI-ATGコンディショニングの安全性プロファイルは十分に文書化されている。このレジメンは、低強度であり、80歳までの患者においても耐容性が良好であり、重度の血球減少を誘発せず、粘膜炎を含むGI毒性とは関連しない。TLI-ATGによる宿主コンディショニングは、HLAマッチレシピエントにおける耐久性があるドナー造血細胞移植を確立する。このレジメンは、GVHDから保護する。
【0226】
HLAマッチドナーからHLAミスマッチドナーへの移行では、死亡したドナーへの持続的な造血細胞生着に対する免疫媒介性耐性が増加する。mmLD-HC及びddVB-BMCの持続的な混合キメリズムを促進するために、我々は、直感的でも以前に報告されたものでもない様式で、TLI-ATGレジメンに対する独自の改善及び修正を提案する。
【0227】
同種造血細胞移植を受けているがん患者において、TBI単独の、又はより一般的にはフルダラビン及び/若しくはアルキル化化学療法剤と組み合わせた、低用量の単一画分を使用する宿主コンディショニングが数十年にわたって使用されてきた。これらの研究では、TBIの線量は200~400cGyの範囲であり、これは、「低減された強度」の線量とみなされるものの、有意な骨髄形成不全及び血球減少を誘発し、事実上全ての患者が少なくとも2~3週間輸血補助を必要とする深刻な好中球減少、血小板減少、及び貧血を発症した。TBIの単回線量(200~400cGy)からの深刻な宿主骨髄形成不全及び宿主免疫細胞枯渇のために、一般に完全なドナー細胞キメリズムが生じた。TBI(200~400cGy)ベースの宿主コンディショニングレジメンは、レシピエントの約40%で急性GVHD、及び約30%のレシピエントで慢性GVHDに関連する。
【0228】
本出願では、次のような非自明の修正及び改善について説明する。TLI-ATGは、通常の方法で投与されるが、10回の線量のTLI(80~120cGy/線量)の代わりに、1回の線量のTLIが省略され、単回の、しかしながら非常に低線量のTBI(svldTBI、40~140cGy)に置き換えられる。現在、がん患者及び臓器寛容レジメンのためのTBI宿主コンディショニングが数十年使用されているにもかかわらず、200cGy未満の単回線量が骨髄形成不全を誘導しないため、200cGy未満の単回TBI線量は、部分的には、ドナー細胞生着及びキメリズムを容易にするために以前に投与されていない。
【0229】
本願では、TBIの単回線量は新規であり、同種造血細胞移植を補助するためのTBIの使用に焦点を当てている40年以上の科学及び医学文献の集積において議論又は言及されていない。本明細書に記載されるsvldTBI(40~140cGy)は、骨髄形成不全を誘発するものではない。むしろ、svldTBIは、同種異系ドナー細胞生着に対する耐性を媒介するTLIの領域外に存在する組織常駐記憶T細胞を根絶する。同種抗原に以前の曝露されていない場合でさえ、記憶T細胞の1~10%は、インビトロで同種異系主要組織適合性複合体(MHC)分子に反応し得る内因性で同種反応性の天然に存在する記憶T細胞である。これらの記憶細胞は、他のペプチドに結合した同種異系MHC分子によって形成された複合体を模倣することができる、共生細菌からのペプチド又は自己MHCによって提示された環境抗原の認識によって生成される可能性が高い。「異種免疫」と呼ばれる抗原模倣は、ヒト及び実験動物モデルにおいて十分に文書化されている。これらの天然に存在する同種反応性組織常駐記憶T細胞は、ドナー造血細胞生着に対する耐性を媒介し、持続的な混合キメリズムを達成する可能性を阻害する。
【0230】
1つのTLI画分をsvldTBIで置き換えることは、TLI-ATGの安全性を維持し、TBIの非常に低い単回線量に起因する毒性を増加させないが、TLI-svldTBI-ATGをドナー細胞接種体の特定の組成物と組み合わせた場合に、持続的な混合キメリズムを達成する能力を高めると仮定される。
【0231】
組成物
ここで、全ての程度のHLAミスマッチの生きている関連及び非関連ドナーからの、並びに死亡したドナーからの、併用臓器(腎臓、心臓、肝臓、肺、及び腸)及び造血細胞移植後に、持続的なキメリズムを補助し、IS薬物最小限化及び/又は停止を可能にする、ドナー細胞産物の新規「組成物」を説明する。説明されるドナー細胞接種体は、GVHDから保護する。ドナー細胞接種体は、TLI-svldTBI-ATG宿主コンディショニングと特異的に対にされ、一緒に組み合わされて、持続的な混合キメリズムを補助する。
【0232】
mmLD-HC(関連及び非関連ドナー)の場合、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)+/-モゾビルを使用してドナー造血細胞が動員され、ドナーは、BMTドナーの標準ケアに従う通常の様式で1日又は2日連続して大量(12リットル超)血液アフェレーシスを受ける。アフェレーシス収集は、製造業者のガイドラインに従って、蛍光活性化細胞選別(FACS)又は磁気活性化細胞選別(MACS)のいずれかを使用して、CD34細胞濃縮のために処理される。CD34濃縮生成物は、標準的な様式で凍結保存される。凍結前のCD34細胞純度は、70%超でなければならない。CD34細胞用量は、1000万~2000万個のCD34細胞/kgレシピエント体重の凍結前値である。MACS又はFACS CD34濃縮ステップ後のフロースルー画分を使用して、定義された用量のCD3T細胞(2500万~1億CD3/kgレシピエント体重の凍結前用量)が得られ、通常の様式で凍結保存される。一緒に組み合わせた場合、CD34+及びCD3T細胞用量は直感的ではなく、天然に生じる生理学的細胞集団及び比率からの移植片改変による調整を表す。CD34細胞対CD3細胞の正確な比率は、ドナー(生きている関連対非関連)及びHLA抗原ミスマッチの程度に依存する。例えば、1-又は2-HLA抗原が患者とミスマッチしている生きている関連ドナーは、CD34:CD3細胞比率が約1:5になる。レシピエントと>3-Agミスマッチした非関連の生きているドナーは、CD34:CD3T細胞比率が1:10に近い。生きている関連又は非関連HLAミスマッチドナーレシピエント対の全ての場合において、CD34及びCD3細胞産物比率は、生理学的又は直観的ではなく、TLI-svldTBI-ATGの新規宿主コンディショニングレジメンと組み合わせた場合に、持続性ドナー細胞キメリズムを補助するように特異的に操作される。
【0233】
いくつかのまれな事例(おそらく5又は6人の抗原HLAミスマッチ非関連ドナー)では、GVHDを誘導しないCD3/CD8/CD45RA/CD45ROT細胞(CD8記憶T細胞と呼ばれる)からなる高度に定義されたドナー細胞集団が、CD3T細胞の代わりにCD34細胞フロースルー画分から得られる。CD8記憶T細胞の凍結前要件は、100万~1000万/kgであり、75%超の純度及び生存率を有する。この独自の細胞集団、及び細胞を得るために使用される方法は、BMTがん患者のがん治癒に重要な、移植片対腫瘍(GVT)活性を有するが、GVHDを有さないCD8記憶T細胞に関連する米国特許第9,833,477B2号に記載されている。本出願では、TLI-svldTBI-ATG宿主コンディショニングの投与後の移植耐性のための持続的な混合キメリズムを補助するために、CD34濃縮ドナー細胞画分は、1:1(それぞれ、1:0.25~1:1.5の範囲のCD34:CD8記憶T)の比率でドナーCD8記憶T細胞(新規な「組成物」)と組み合わされる。独自の細胞集団と「組成物」のこの組み合わせは、パブリックドメインで利用可能なものに基づいた直感的な概念ではない。
【0234】
死亡したドナーの臓器を使用した移植の場合、他で説明されているように、椎体(VB)から死亡したドナーの骨髄細胞(BMC)を入手する。骨髄CD34及びCD3T細胞画分を列挙し、通常の方法で凍結保存する。ドナーBMCは、宿主TLI-svldTBI-ATGコンディショニング後にレシピエントに注入される。がん患者のための同種異系BMTで使用され、40年以上にわたって説明されている従来のBMC採取物は、約1:20の比率のCD34細胞対CD3細胞を含有する。寛容誘導のための臓器移植レシピエントにおける持続的な混合キメリズムを誘導するための本出願では、ddVB-BMCの組成物は、約1:10(上限1:15)のCD34細胞対CD3T細胞比率を必要とする。CD34細胞の絶対数が持続的な混合キメリズムを確立するために必要な500万/kgレシピエント体重の下限未満である場合、死亡したドナーの脾細胞を使用して、ddVB-BMCに添加される追加のCD34細胞を得る。CD3T細胞の絶対数が持続的な混合キメリズムを確立するために必要な4000万/kgレシピエント体重の下限未満である場合、死亡したドナーの脾細胞を使用して、4000万~1億/kgの所望の閾値を達成するために、CD3T細胞用量を得て、増強する。
【0235】
脾細胞を得るために、我々は以前、ドナー脾臓から除去されたいくつかの(典型的には3~6個の)1インチサイズのキューブが必要とされることを決定した(ファイル中の未公開データ)。脾臓キューブは、臓器調達の間に採取され、ドナーVBとともに標準輸送媒体中で輸送される。生単核脾細胞からなる単一の細胞懸濁液は、最初に解離培地中で組織から細胞を解離することによって得られる。発現した細胞を100ミクロンのストレーナに通し、細胞ペレットを遠心分離によって収集する。MACS/FACS分離あり、又はなしでFicollにおける分画遠心法を使用して生単核細胞が得られる。この最終ステップに続く定義されたアリコートは、脾臓CD34細胞又はCD3T細胞を提供する。持続的なドナー細胞キメリズムを可能にし、移植耐性を補助するために、脾臓CD34細胞及び/又はCD3T細胞にddVB-BMCを注入する。時には、ddVB-BMC+/-脾細胞の「残りの」画分を凍結保存し、数カ月から数年保存してもよく、キメリズムが経時的に減少している場合、後期ドナー細胞ブーストとして投与してもよい。
【0236】
実施例3
本明細書では、脾臓及び骨髄由来の造血幹細胞及び前駆細胞集団、間葉系幹細胞、樹状細胞集団、間質細胞CD3 Th1/Th2Th17/Tfh T細胞、CD19B細胞、制御性T細胞(Treg)、及び臨床使用のためのインバリアントナチュラルキラー(iNK T細胞)からなる死亡したドナーの組織バンクの新規形成を説明する。死亡したドナーの脾臓及び骨髄細胞集団のサブセットの非生理学的比率は、臓器又は組織移植耐性を誘導し、難治性及び再発性自己免疫疾患を制御し、組織治癒及びより健康な機能への回帰をもたらす治療的な「再生医療」応答を刺激することが予測される。
【0237】
我々は、後の臨床使用のために凍結保存される様々な細胞集団の死亡したドナーの脾臓及び骨髄細胞を特性評価し、濃縮する方法を開発した。いくつかの場合では、例えば、40色FACSパネルを使用して、細胞サブセットを定量化、特性評価、並べ替え、及び分離する。以下の表は、凍結保存及び後の臨床使用のために、死亡したドナーの脾臓及び骨髄細胞の部分集団を特性評価するために40色フローを使用するそのようなアプローチの1つを概説している。
【0238】
【表2-1】
【0239】
【表2-2】
【0240】
いくつかの場合では、特定の前駆体及び免疫細胞サブセットは、肺、肝臓、皮膚、腎臓、血管内皮、腸又は中枢/末梢神経系を含むがこれらに限定されない組織への細胞輸送を変化させる独自のキメラ抗原受容体を保有するように遺伝子操作される。一例として、いくつかの場合では、脾臓Treg細胞は、操作された脾臓Treg細胞を胃腸粘膜に方向付けて、強化された免疫調節によって部位指向性組織治癒を誘導する、粘膜アドレシン細胞接着分子1(MADCAM1)の抗原受容体を発現するように操作される。しかしながら、他の場合では、選択された脾臓及び骨髄細胞サブセットは、免疫調節、及び/又はECMの修飾によって組織治癒を誘導する、操作された抗原受容体あり又はなしで、合成能力を有するように操作される。
【0241】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/085,717号の利益及び優先権を主張し、その開示全体が本明細書に記載されている。
【0242】
連邦政府による資金提供の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された政府支援契約AI109565及びHL075462によって行われたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】