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特表2023-543900磁気抵抗センサにおける低周波磁気ノイズを抑制するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(54)【発明の名称】磁気抵抗センサにおける低周波磁気ノイズを抑制するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20231011BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20231011BHJP
【FI】
G01R33/09
H10N50/10 Z
H10N50/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520115
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2021076939
(87)【国際公開番号】W WO2022069626
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】2010041
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(71)【出願人】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソリニャック,オレリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョッタ,ガルシア・マファルダ
(72)【発明者】
【氏名】ムーラン,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィットロック,ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ボルトロッティ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】クロ,バンサン
(72)【発明者】
【氏名】フェルモン,クロード
(72)【発明者】
【氏名】パヌティエ-ルクール,ミリアム
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA10
2G017AB07
2G017AC09
2G017AD55
2G017BA05
5F092AA05
5F092AB01
5F092AC04
5F092AC08
5F092AC12
5F092BB08
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB30
5F092BB33
5F092BB43
5F092BB53
5F092BC04
5F092BC07
5F092BC12
5F092EA08
(57)【要約】
本発明の1つの目的は、磁気抵抗センサからの低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)であって、 - 可変磁化を有する自由磁性層を備える少なくとも1つの磁気抵抗センサ(101); - 自由磁性層の磁化を修正するための手段(102、104、105、106)を備え、前記低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)は、自由層の磁化を修正するための手段(102、104、105、106)が、自由磁性層の磁化のダイナミクスを駆動するように構成されることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗センサからの低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)であって、
- 可変磁化を有する自由磁性層を備える少なくとも1つの磁気抵抗センサ(101)と、
- 自由磁性層の磁化を修正するための手段(102、104、106)と
を備え、前記低周波磁気ノイズを抑制するためシステム(111、112、113)は、自由磁性層の磁化を修正するための手段(102、104、105、106)が、自由磁性層の磁化のダイナミクスを、それがトラップされることを防止し低周波磁気ノイズを低減するために駆動するように構成されることを特徴とする、低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)。
【請求項2】
自由磁性層の磁化が、空間的に不均質な構成を有することを特徴とする、請求項1に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)。
【請求項3】
自由磁性層の磁化が、渦構成におけるものであることを特徴とする、請求項2に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)。
【請求項4】
自由磁性層の磁化を修正するための手段(102、104、106)が、渦を動かすことを含む、自由層の磁化のダイナミクスを駆動するように構成されることを特徴とする、請求項3に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)。
【請求項5】
自由磁性層が、自由磁性層の積層体を含み、積層体の各自由磁性層が、空間的に不均質な磁化を含むことを特徴とする、請求項2に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)。
【請求項6】
自由磁性層が、2つずつ直接接触していることを特徴とする、請求項5に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111、112、113)。
【請求項7】
自由磁性層の磁化を修正するための手段が、磁気抵抗センサ内へと直流電流を注入するための手段(102)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(111)。
【請求項8】
自由磁性層磁化修正手段が、磁気抵抗センサ内へと交流電流を注入するための手段(104)を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(112)。
【請求項9】
磁気抵抗センサ内へと注入される電流密度が、所定の臨界密度よりも大きく、所定の臨界密度が、6.2・1010A/m以上であることを特徴とする、請求項7または8に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム。
【請求項10】
自由磁性層の磁化を修正するための手段が、振動磁場を発生させるための手段(106)を備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム(113)。
【請求項11】
適用される振動磁場が、所定の臨界場よりも大きいことを特徴とする、請求項10に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム。
【請求項12】
磁気抵抗センサの抵抗を測定するように構成された手段(103)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の低周波磁気ノイズを抑制するためのシステム。
【請求項13】
磁気抵抗センサを備える測定デバイスによる外部磁場の測定と関連付けられる低周波磁気ノイズを抑制するための方法であって、前記磁気抵抗センサが、可変磁化を有する自由磁性層を備え、
a.磁気抵抗センサの自由磁性層を、所定の磁化状態にするステップ、
b.自由磁性層の磁化を修正するための手段を使用して、自由磁性層の磁化のダイナミクスを、それがトラップされることを防止し低周波磁気ノイズを低減するために駆動するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
自由磁性層の磁化が、渦構成におけるものであり、自由磁性層の磁化のダイナミクスを駆動するステップが、渦を動かすステップを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
磁気抵抗センサの抵抗を測定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
自由磁性層の磁化のダイナミクスを作り出すステップ、および、磁気抵抗センサの抵抗を測定するステップが、同時に行われることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場を測定するための磁気抵抗センサの分野に属する。本発明の1つの目的は、磁気抵抗センサからの低周波磁気ノイズを抑制するためのシステムである。本発明の別の目的は、磁気抵抗センサからの低周波磁気ノイズを抑制するための方法である。
【0002】
磁気抵抗センサは、例えば、巨大磁気抵抗(GMR)およびトンネル磁気抵抗(TMR)センサを含むが、本発明は、任意の磁気抵抗タイプ磁場センサに関する。
【背景技術】
【0003】
トンネル磁気抵抗(TMR)または巨大磁気抵抗(GMR)を伴う磁気抵抗(MR)センサは、典型的には、非磁性スペーサにより分離される2つの強磁性層から成り、2つの強磁性層は、それぞれ、GMRについては金属性であり、TMRについては絶縁性である。一方の強磁性、いわゆる「参照」層は、検出されることになる磁場から独立した磁化を有する。他方の、いわゆる「自由」磁性層は、検出されることになる磁場により影響を受ける磁化構成を有する。
【0004】
MRセンサの性能は、しばしば、積層体の自由磁性層の磁気的揺らぎに起因する、磁気起源のノイズの存在により制限される。この磁気ノイズの低減によって、例えば、自動車用途における、または、非破壊試験における、MRセンサの性能における大幅な改善が可能となることになる。
【0005】
低周波ノイズ源は、とりわけ製造方法に起因する、磁気センサデバイスについての磁化の揺らぎ、磁性層における欠陥の現出および/もしくは不均質性、または、トンネル障壁の電気的揺らぎなど、内因的なものとすることができる。内因的起源に加えて、駆動DC電流または適用される磁場における外部的揺らぎが、また、測定ノイズの一因となり得る。
【0006】
MRセンサにおける電気ノイズを低減する方法が知られている(例えば、本出願人に代わって出願された特許出願EP3631484「System and method for suppressing low frequency noise in magnetoresistive sensors」参照)。
【0007】
磁気ノイズを低減する試みにおいて、通常、使用される技法は、層成長、使用される材料、または結合などの、MR積層体の特性を改善することに基づく(例えば、「Optimizing magnetoresistive sensor signal-to-noise via pinning field tuning」、J.Moulinら、Applied Physics Lettersにおける公開、2019参照)。このことによって、自由磁性層の磁化の安定化を得ることが可能となる。
【0008】
使用される別の手法は、全体の磁気の大きさを増大し、したがって、磁気ノイズを低減するために、多数のMRセンサを直列にすることである。
【0009】
しかしながら、当業者に知られているこれらの解決法は、満足のいくものではない。例えば、とりわけTMRセンサのための積層体に対する作業に関して、主に困難なことは、外部場にセンシティブな、安定化された自由磁性層を達成することである。さらに、直列の多数のMR要素を伴うデバイスの場合、センサの電力消費が、最終的なシステムの総体的なサイズと同様に著しく増大する。
【0010】
換言すれば、測定されることになる磁場の広い範囲にわたる、自由層の良好な感度、および、センサの線形応答を保つために、MRセンサにおける磁気ノイズを低減する方法は、現在は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3631484号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「Optimizing magnetoresistive sensor signal-to-noise via pinning field tuning」、J.Moulinら、Applied Physics Letters出版、2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、低電力消費を含み、外部磁場の広い範囲にわたり線形応答を呈する、総体的なサイズの小さい低周波磁気ノイズ抑制システムを提供することにより、上記で述べられた問題を少なくとも部分的に解決することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この最終目的のために、本発明の第1の目的は、磁気抵抗センサからの低周波磁気ノイズを抑制するためのシステムであって:
- 可変磁化を有する自由磁性層を備える少なくとも1つの磁気抵抗センサ;
- 自由磁性層の磁化を修正するための手段;
を備え、前記低周波磁気ノイズを抑制するためのシステムは、自由磁性層の磁化を修正するための手段が、自由磁性層の磁化のダイナミクスを駆動するように構成されることを特徴とする、低周波磁気ノイズを抑制するためのシステムである。
【0015】
磁気抵抗センサとは、外部磁場に依存する、および、スピンエレクトロニクスに基づく、抵抗を伴う任意のセンサを意味する。MRセンサは、磁性参照層と、自由磁性層とを有し、その磁化は、測定されることになる磁場にセンシティブである。磁気抵抗センサの例は、上記で紹介されたGMRまたはTMRセンサである。
【0016】
磁気ノイズ抑制とは、磁気ノイズの低減または抑制を意味する。磁気ノイズは、例えば、本発明によるセンサにより半減され得る。本発明によるセンサによる磁気ノイズの低減は、また、2分の1を超え、最高で、磁気ノイズの完全な抑制になることがある。
【0017】
自由層の磁化を修正するための手段とは、自由層の磁化特性を修正するように構成された手段と理解される。例えば、そのような手段は、磁気抵抗センサ内へと直流もしくは交流を注入するための手段を、または、振動磁場を適用するための手段さえも含み得る。自由層の磁化を修正するための手段は、また、自由層の磁化を修正するための局部加熱を引き起こすように構成された手段を含み得る。例えば、自由層の磁化を修正するための手段は、レーザなどのパルス光源を備え得る。
【0018】
磁化ダイナミクスとは、自由層の磁化特性の経時的な変動を意味する。例えば、自由層の磁化を変化させるための手段は、自由層の磁化にトルクを適用するように構成され得る。この場合、トルクは、電流に起因する、センサにおいて存在する磁性層どうしの間のスピントランスファにより、または、磁場に起因するゼーマン効果により発生され得る。
【0019】
1つの実施形態によれば、自由層の磁化は、空間的に不均質な構成を有する。換言すれば、自由層の磁化は、空間的に可変な強度および方向を有する。
【0020】
1つの実施形態によれば、自由層の磁化は、渦状の構成を有する。渦状の構成は、磁化が、それが位置する点に応じて異なる向きを有する、空間的に不均質な磁気構成である。磁化は、自由磁性層の平面にあり、時計回りまたは反時計回りのいずれかで回転し、磁化の円形な挙動は、漏れ場の自発的最小化により説明される。さらに、磁化が平面の外に向く、「渦コア」と呼ばれるゾーンにおける渦の中心において、特異性が観測される。
【0021】
この場合、自由層磁化のダイナミクスは、磁化修正手段により適用されるトルクに起因して、渦コアを動かすことを含む。1つの実施形態によれば、渦コアを動かすことは、自由層の平面において行われる。自由層の磁化のダイナミクスは、例えば、渦コアのジャイロトロピックな動き、すなわち、渦コアの、その平衡位置の周りの動きを誘起し得る。
【0022】
有利には、磁気渦磁化のダイナマイゼーションは、それが、磁気ノイズを生じる部位または欠陥においてトラップされることを防止する。
【0023】
換言すれば、周波数の広い範囲にわたって渦コアのダイナミクスを駆動することによって、MRセンサにおける磁気起源の低周波ノイズを低減することが、または、抑制することさえも可能になる。この低減に関係付けられるノイズは、例えば、1/fノイズまたはランダムテレグラフノイズ(RTN)である。
【0024】
代替として、自由層の磁化は、いくつかの渦を含む構成を有し得る。本発明の別の実施形態によれば、自由層は、自由磁化を有する複数の磁性層を備える積層体を備え、積層体の各層は、空間的に不均質な磁化を有する。例えば、積層体の各層は、1つ以上の渦を有する磁化を呈し得る。
【0025】
別の実施形態によれば、自由層の磁化は、反渦、渦反渦対、スキルミオンタイプの構成、または、渦のものに近いトポロジカルな特性を有する構成を有する。
【0026】
1つの実施形態によれば、本発明による磁気ノイズ抑制システムは、複数の磁気抵抗センサを備える。この場合、異なるセンサの自由層は、漏れ磁場、注入される電流、または、外部磁場により、互いに結合され得る。
【0027】
1つの実施形態によれば、自由磁性層の磁化を修正するための手段は、MRセンサ内へと直流または交流電流を注入するように構成された手段を備える。代替として、自由層の磁化を修正するための手段は、それがトラップされることを防止し、磁気ノイズを低減する振動外部磁場を適用するように構成された手段を備え得る。以下では、直流またはDC、および、交流またはACは、互いに交換可能に言及されることになる。
【0028】
トラッピングとは、磁化の磁気トラッピングを意味する。
【0029】
有利には、MRセンサ内への電流の注入は、自由磁性層の磁化に作用するスピントランスファトルクを発生させ、それがトラップされることを防止し、磁気ノイズを低減する。
【0030】
有利には、振動磁場の適用は、ゼーマン効果により、自由磁性層の磁化へのトルクを作り、それがトラップされることを防止し、磁気ノイズを低減する。
【0031】
有利には、低周波磁気ノイズの低減は、信号対ノイズ比が、適用される磁場を測定するときに増大されることを可能とし、一方で、測定の信頼度および精度を増大する。
【0032】
有利には、本発明によるシステムによって、測定されることになる磁場の広い範囲にわたる低ノイズおよび線形応答を伴うMRセンサを得ることが可能になる。
【0033】
磁化のダイナミクスは、2つの異なるレジーム:亜臨界レジームおよび自己振動レジームにおいて誘起され得る。第1の場合、自由磁化を修正する手段により適用されるトルクは、システムのダンピングよりも少ない。第2の場合、適用されるトルクは、システムダンピングを超過し、渦コアの自己持続振動を発生させる。
【0034】
本発明のすべての実施形態において、電流の注入、または、振動磁場の適用は、MRセンサを使用して測定を行う際に必要とされるのみである。
【0035】
渦ダイナミクスの制御は、その非線形性により、無線周波数通信のための構成要素などの、様々な高周波用途を有することに留意することが重要である。渦ダイナミクスは、外部RF場を適用することにより、または、MRセンサ内へとDCもしくはAC電流を注入することにより誘起され得る。これらの手段は、振動することを開始させる、スピントランスファまたはゼーマン効果による、渦の磁化へのトルクを誘起する。渦における低周波ノイズを低減するためにダイナミクスを使用することは知られていない。さらに、そのようなダイナミクス制御は、線形化のために特に渦を使用する磁気センサのために決して使用されなかった。磁場の広い範囲にわたる、本発明によるセンサの線形応答は、また、例えばいくつかの結合された渦を有する、異なる磁気構成について得られる。
【0036】
有利には、測定中のみの変調手段の動作によって、本発明によるシステムによる電力消費が制限されることが可能となる。
【0037】
有利には、渦コアダイナミクスが、センサ内へと注入される電流により駆動されるとき、同じ電流が、追加的な電力源なしに、センサの磁気応答を読み出すために使用され得る。このことは、本発明によるシステムの総体的なサイズおよび電力消費の両方を低減する。
【0038】
本発明によるシステムは、また、個々に、または、任意の技術的に可能な組み合わせによって検討される、以下の特徴のうちの1つ以上を有し得る:
- 自由磁性層の磁化が、空間的に不均質な構成を含む;
- 自由磁性層の磁化が、渦構成におけるものである;
- 自由磁性層の磁化が、いくつかの渦を含む;
- 自由磁性層が、自由磁性層の積層体を備え、積層体における各自由磁性層が、空間的に不均質な磁化を含む;
- 積層体の各層の磁化が、1つ以上の渦を含む;
- 自由磁性層の磁化を修正するための手段が、渦を動かすことを含む、自由磁性層の磁化のダイナミクスを駆動するように構成される;
- 自由磁性層の磁化を修正するための手段が、磁気抵抗センサ内へと直流電流を注入するための手段を備える;
- 自由磁性層の磁化を修正するための手段が、磁気抵抗センサ内へと交流電流を注入するための手段を備える;
- 自由磁性層の磁化を修正するための手段が、振動磁場を発生させるための手段を備える;
- 磁気抵抗センサ内へと注入される電流密度が、所定の臨界密度よりも大きい;および、
- 適用される振動磁場が、所定の臨界場よりも大きい;
- 本発明によるシステムが、磁気抵抗センサの抵抗を測定するように構成された手段をさらに備える。
【0039】
本発明の別の目的は、磁気抵抗センサを備える測定デバイスによる外部磁場の測定と関連付けられる低周波磁気ノイズを抑制するための方法であって、前記磁気抵抗センサが、可変磁化を有する自由磁性層を備える、方法である。
【0040】
本発明による方法が:
- 磁気抵抗センサの自由磁性層を、所定の磁化状態にするステップ;
- 自由磁性層の磁化を修正するための手段を使用して、自由磁性層の磁化のダイナミクスを駆動するステップ
を含む。
【0041】
本発明による方法は、また、個々に、または、任意の技術的に可能な組み合わせによって検討される、以下の特徴のうちの1つ以上を有し得る:
- 方法が、磁気抵抗センサの抵抗を測定するステップをさらに含む;
- 自由磁性層の磁化が、渦構成におけるものであり、自由磁性層の磁化のダイナミクスを駆動するステップが、渦を動かすステップを含む;
- 方法が、磁気抵抗センサの抵抗を測定するステップをさらに含む;
- 自由磁性層の磁化のダイナミクスを作り出すステップ、および、磁気抵抗センサの抵抗を測定するステップが、同時に行われる。
【0042】
有利には、このことは、本発明による方法の電力消費を低減する。
【0043】
有利には、本発明による方法の実施によって、外部磁場の測定と関連付けられる低周波磁気ノイズを低減することが、または、抑制することさえも可能になる。このことは、駆動されるダイナミクスが、自由層磁化のトラッピングを防止し、MRセンサにおける低周波ノイズの原因のうちの1つを除去するという事実により可能である。
【0044】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付される図を参照して、指示するために、および、決して限定目的ではなく、下記で与えられる説明から、より明確になることになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A】本発明によるシステムの1つの実施形態を示す図である。
図1B】本発明によるシステムの1つの実施形態を示す図である。
図1C】本発明によるシステムの1つの実施形態を示す図である。
図2】GMRまたはTMRタイプMRセンサを作製するために使用される層の積層体の、1つの例示的な実施形態を示す図である。
図3】本発明によるシステムのノイズ応答を示す図である。
図4】本発明によるシステムの抵抗応答を示す図である。
図5図1Cにおいて表される実施形態において適用される振動磁場の強さに応じてのノイズ低減を示す図である。
図6図1Cにおいて表される実施形態の場合、適用される振動磁場の周波数に応じてのノイズ低減を示す図である。
図7図1Bにおいて表される実施形態の場合、注入される交流電流の周波数に応じての磁気ノイズの低減を示す図である。
図8】本発明による低周波磁気ノイズを抑制するための方法のステップを例解する図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1Aは、本発明による低周波磁気ノイズ抑制システムの第1の実施形態111を示す。システム111は、MRセンサ101と、MRセンサ101の自由磁性層の磁化を修正するための手段102とを備える。この実施形態によれば、手段102は、MRセンサ101内へと直流IDCを注入するための手段を備える。低周波磁気ノイズ抑制システム111は、MRセンサ101の抵抗を測定するための手段103をさらに備え得る。
【0047】
有利には、実施形態111において、MRセンサ101は、直流IDCを供給され、それが、センサ101の自由磁性層における磁化のダイナミクスを駆動し、したがって、磁気起源のノイズを低減することを、または、抑制することさえも可能にする。この電流IDCの、または、センサ101の両端間の電圧の測定が、センサ101の抵抗の変動、したがって、検出されることになる磁気信号へのアクセスを与える。
【0048】
1つの実施形態によれば、システム111の自由層の磁化のダイナミクスは持続させられ得る。動作のこのモードは、また自己振動レジームと称される。代替として、システムは、ダンピングしたレジームまたは亜臨界レジームにおいて動作し得る。持続振動レジームを達成するために、臨界密度よりも大きい電流密度を注入することが必要である。自己振動レジームに達するために必要とされる臨界電流密度は、DC電流が注入されるときにセンサにより放射される無線周波数電力を測定することにより決定される。
【0049】
図1Bは、第2の実施形態112を例解する。低周波磁気ノイズ抑制システム112は、MRセンサ101と、MRセンサ101の自由層の磁化を修正するための手段104とを備える。手段104は、MRセンサ101内へと交流電流IACを注入するように構成される。低周波磁気ノイズ抑制システム112は、MRセンサ101の抵抗を測定するための手段103をさらに備え得る。
【0050】
有利には、実施形態112において、MRセンサ101は、交流電流IACを供給され、それが、センサ101の自由層におけるダイナミクスを駆動し、したがって、磁気起源のノイズを低減することを、または、抑制することさえも可能にする。この電流IACの、または、センサ101の両端間の電圧の測定が、センサ101の抵抗の変動、したがって、検出されることになる磁場の強度を測定することを可能にする。
【0051】
1つの実施形態によれば、システム112の自由層の磁化のダイナミクスは持続させられ得る。動作のこのモードは、また自己振動レジームと称される。代替として、システムは、ダンピングしたレジームまたは亜臨界レジームにおいて動作し得る。持続振動レジームを達成するために、臨界密度よりも大きい電流密度を注入することが必要である。
【0052】
図1Cは、第3の実施形態113を例解する。低周波磁気ノイズ抑制システム113は、MRセンサ101と、MRセンサ101の自由層の磁化を修正するための手段106とを備える。手段106は、MRセンサ101の近傍において振動磁場を適用するように構成される。低周波磁気ノイズ抑制システム112は、MRセンサ101内へとDCまたはAC電流を注入するための手段105をさらに備え得る。
【0053】
有利には、ACまたはDC電流を注入するための手段105によって、センサの両端間の電圧の測定が可能となる。センサ101の抵抗の変動によって、したがって、検出されることになる磁場を測定することが可能になる。低周波磁気ノイズ抑制システム113は、MRセンサ101の抵抗を測定するための手段103をさらに備え得る。
【0054】
センサの自由層の磁化を修正するための手段106は、無線周波数すなわちRFにおいて振動する電流により給電される、センサに近いコイルまたはフィールド線を備え得る。
【0055】
1つの実施形態によれば、システム113の自由層磁化のダイナミクスは持続させられ得る。動作のこのモードは、また自己振動レジームと称される。代替として、システムは、ダンピングしたレジームまたは亜臨界レジームにおいて動作し得る。持続振動レジームを達成するために、臨界振動場よりも大きい振動磁場を適用することが必要である。
【0056】
図2は、カバー層201と、自由磁化を有する第1の強磁性層202と、非磁性層203と、固定磁化を有する第2の強磁性層204と、バッファ層205とからなる、MRセンサの典型的な積層体200を示す。2つの強磁性層202および204は、したがって、それぞれ、GMRについては金属性であり、TMRについては絶縁性である、非磁性スペーサ203により分離される。図2において表される層は、各々、所望される機能を達成するために選定される異なる材料および厚さを含む、層の積層体を含み得る。
【0057】
「参照」層と称される第2の強磁性層204は、検出されることになる磁場から独立した磁化を有する。第1の、いわゆる「自由」強磁性層202は、検出されることになる磁場にしたがう磁化を有する。バッファ層によって、基板上の再成長が可能となる。保護層は、とりわけ酸化からセンサを保護し、電気接触が継続されることを可能とする。参照層、自由層、保護層、およびバッファ層は、1つ以上の層から成り立ち得る。
【0058】
1つの実施形態によれば、第1の自由強磁性層202は、複数の自由磁性層を備える。自由磁性層は、例えば非磁性層により、2つずつ間をおいて離隔され得る。前記非磁性層は、例えば、2つの隣り合う自由磁性層の間の間接結合を実現する。代替法によれば、自由磁性層は、積層体を横断して測定可能な磁気抵抗信号を改善するように、2つずつ接触していてもよい。前記自由磁性層は、部分的または全体的に接触している。自由磁性層が直接接触しているとき、結果的に生じる磁化のダイナミクスも改善される。
【0059】
1つの実施形態によれば、MRセンサは、基板のためのSi/SiO2タイプ積層体/バッファ層/PtMn(15)/CoFe29(2.5)/Ru(0.85)/CoFeB(1.6)/CoFe_30(2.5)/MgO(1)/FeB(6)/MgO(1)/カバー層から成るTMRセンサである。丸括弧内の数字は、ここでは、nm単位での層厚さを示す。この積層体は、金属接点により接続される、典型的には300nm直径のピラーへと製作され得る。参照層PtMn(15)/CoFe29(2.5)/Ru(0.86)/CoFeB(1.6)/CoFe30(2.5)の磁化が、薄層の平面においてロックされ、自由FeB層(6)の磁化が、その厚さ、および、パッドのサイズにより、渦状態において安定化される。
【0060】
この渦構成は興味深いものであり、なぜならば、それによって、測定されることになる磁場の広い範囲にわたる、場に応じてのセンサの線形応答が可能となるからである。パッドおよびMRスタッキングのサイズによって、場の応答および線形性範囲が制御されることが可能となる。これらのセンサにおける1/fおよびRTNノイズは、この線形性範囲にわたって鋭く増大し、磁気起源のものであり、そのことは、センサの性能をその動作範囲にわたって制限する。有利には、本発明によるシステムの使用によって、測定されることになる磁場の広い範囲にわたる線形性を保ちながら、このタイプのセンサと関連付けられるノイズを低減することが可能になる。
【0061】
図3は、350nm直径の、および、段落[0050-0052]において説明された層の積層体を備えるTMRピラーにおいて測定されたノイズ応答を示す。図3は、ゼロ場の付近である、および、センサの線形性範囲にわたる、センサ動作レジームにおける磁気ノイズにおける上昇を示し、この磁気ノイズは、高磁場において抑制される。図3におけるグラフは、薄層の平面において、および、センサの感度軸に沿う参照層の磁化の方向に平行な方向において適用される外部磁場に応じてのHoogeパラメータを示す。Hoogeパラメータは、1/fノイズ振幅を決定し、ノイズスペクトル密度測定から抽出される。円は、参照層磁化に平行な自由層磁化を伴うセンサの状態Pから、2つの反平行磁化を伴うセンサの状態APへの遷移を示す。正方形は、APからP構成への逆遷移を例解する。渦のキラリティおよび偏極が、それぞれ文字PおよびCにより示される。ノイズ低減が、渦のすべての4つの状態:+P、-P、+C、および-Cについて検証された。
【0062】
図4は、図3において設定された条件と同じ条件のもとでの抵抗応答を例解する。センサ応答は、-30Oeから80Oeの範囲にわたって線形である(ただし、1エルステッドは、国際単位系における1000/(4π)A・m-1に等しい)。
【0063】
図5は、図1Cの構成における、本発明によるシステムを使用することによる、低周波磁気ノイズにおける低減を例解する。
【0064】
図5におけるグラフは、本発明による、自由層磁化の渦ダイナミクスを駆動するための適用されるRF磁場の強さに応じてのHoogeパラメータを表す。実線により接続されるドットは、図1Cの構成113において測定されたHoogeパラメータを表す。破線は、適用される磁場なしで、すなわち、本発明によるシステムが使用されないときに測定された磁気ノイズを表す。図5は、したがって、本発明によるシステムが、低周波磁気ノイズを低減することにおいて効果的であることを示す。
【0065】
図6は、本発明による自由層磁化の渦ダイナミクスを駆動するために適用される振動磁場の周波数に応じてのHoogeパラメータを例解する。実線により接続されるドットは、図1Cの構成113において測定されたHoogeパラメータを表す。破線は、適用される磁場なしで、すなわち、本発明によるシステムが使用されないときに測定された磁気ノイズを表す。図5の場合のように、図6は、したがって、本発明によるシステムが、低周波磁気ノイズを低減することにおいて効果的であることを示す。
【0066】
図5および6の場合、MRセンサは、8mAの適用されるDC電流、および、4kOeの垂直磁場を伴う、自己振動レジームにおけるものである(ただし、1エルステッドは、国際系単位における1000/(4π)A・m-1に等しい)。
【0067】
1つの実施形態によれば、自由層の上方に配置されるAC線が、図1Cの線106内へと注入されるRF電流によって、円盤の平面に平行な振動磁場を適用するために使用される。自己振動レジームへと移ることにより、ノイズをさらに低減し、渦ベースのTMRセンサの線形性の利点を保ちながら、センサ磁化の平行状態におけるノイズ値(一般的には最も低い)が達せられることを可能とすることが可能である。
【0068】
図7は、図1Bにおいて例解される構成112による、MRセンサ内へと注入されるAC電流の周波数に応じてのHoogeパラメータを例解する。測定は、約3μWに対応する電力-25dBmを有するセンサにおけるRF電流について行われた。図5および6においてのように、実線により接続されるドットは、測定されたHoogeパラメータに対応し、本発明によるシステムが使用されないときの場合に対応する破線と比較してのノイズ低減を示す。
【0069】
図5、6、および7において例解される測定は、本発明によるシステムによって、ここで検討される構成における3分の1の磁気ノイズの低減が可能となることを示す。3倍の利得が、したがって、信号対ノイズ比に関して直接的に得られる。追加的なAC励磁を使用することなく、信号対ノイズ比に関して3倍のこの利得を得るためには、測定の平均化を10倍増大させることが必要であることになることが留意されるべきである。
【0070】
有利には、測定手段103は、センサからの信号の低周波成分を測定することにより、センサ抵抗における変動を測定するように構成される。センサからの信号は、例えば、電圧または電流である。信号の低周波成分は、有利には、1MHz未満、例えば50kHz未満の最大周波数を有する。
【0071】
センサからの信号から高周波成分を分離し、外部場が適用される、または適用されないときの高周波成分の周波数シフトを決定することにより、外部磁場の値を測定することが、当業者に知られている。前記信号の高周波成分は、1MHzよりも大きい、例えば数ギガヘルツのオーダーの周波数を有する。この方法は、センサの抵抗における変動を測定するのではなく、単に、高周波成分の周波数における変動を測定する。当業者に知られているこの方法は、例えば、低周波成分から高周波成分を分離するための偏極ティを実現する。
【0072】
本発明による測定手段103によって、他方で、センサの抵抗における変動を直接的に測定することが可能になる。それは、また、偏極ティを使わないという利点を有し、それゆえに、より単純である。ローパスフィルタが、センサからの信号の高周波成分を除去するために使用され得る。
【0073】
図8は、磁気抵抗センサを備える測定デバイスによる外部磁場の測定と関連付けられる低周波磁気ノイズを抑制するための方法PROを例解する。
【0074】
方法PROは、磁気抵抗センサの自由磁性層を、磁化の所定の状態にすることを含む第1のステップPLを含む。
【0075】
有利には、このステップによって、MRセンサの自由層の磁化状態を決定することが可能になる。自由層の磁化を、良好に決定された状態にすることは、本発明による方法の実施中に、そのダイナミクスを効果的に駆動できるために不可欠である。
【0076】
1つの実施形態によれば、自由層の磁化の状態は、渦構成における磁化である。
【0077】
方法PROは、自由磁性層の磁化のダイナミクスを駆動するステップDYをさらに含む。
【0078】
有利には、このステップは、自由磁性層の磁化が、層における欠陥においてトラップされることを防止することにより、低周波磁気ノイズを低減する。
【0079】
自由磁性層の磁化が渦構成におけるものであるとき、自由層のダイナミクスは、層の平面において渦のコアを動かし、それがトラップされることを防止し、低周波磁気ノイズを低減することを含み得る。
【0080】
1つの実施形態によれば、本発明による方法PROは、MRセンサの抵抗を測定するステップRESをさらに含む。有利には、このステップによって、外部磁場を測定することが可能になる。
【0081】
1つの実施形態によれば、自由磁性層のダイナミクスを駆動するステップDY、および、MRセンサの抵抗を測定するステップREは、同時に行われる。換言すれば、自由層磁化のダイナミクスは、外部磁場の測定中にのみ駆動される。
【0082】
有利には、このことによって、本発明による方法の実施中の電力消費を制限することが可能になり、なぜならば、自由層の磁化のダイナミクスが、外部磁場を測定するという動作中にのみ駆動されるからである。
【0083】
有利には、渦コアのACダイナミクスが、センサ内へと注入される電流により作り出されるとき、同じ電流が、追加的な電力源なしに、センサの磁気応答を読み出すために使用され得る。
【0084】
本発明によるPRO方法は、自由層磁化のダイナミクスを駆動するために必要な条件を決定するステップをさらに含み得る。
【0085】
換言すれば、本発明によるPRO方法は、自由層磁化の所望されるダイナミクスを達成するために、自由層磁化修正手段の特性を決定するステップを含み得る。
【0086】
例えば、自由層磁化ダイナミクスを駆動するために必要な、電流および/または磁場および/または周波数および/または振幅条件が、スペクトル分析器を使用してMRセンサに関して事前に測定され得る。
【0087】
典型的には、構成111および112については、数10^7A/cmの(すなわち、検討されるセンササイズについて1mAのオーダーの)電流密度が必要とされ、標準的な磁性材料について典型的には100MHzから600-700MHzの範囲に及ぶジャイロトロピックモード周波数を誘起する。結合された渦システムについては、この周波数範囲を大幅に増大させることが可能であることに留意されたい。構成113については、100MHzのオーダーのAC場が適用されるべきである。
【0088】
1つの実施形態によれば、DC電流の臨界電流密度は、6.2・1010A/m以上である。したがって、図2を参照して説明されたような、および、例えば350nmの直径を有する、積層体をわたる6mA電流の流れによって、磁化の自己振動レジームが達せられること、したがって、改善されたノイズ低減が可能となる。この臨界電流密度に対応する磁化ダイナミクスの周波数範囲は、例えば300MHzの付近、例えば200MHzから400MHzの間の無線周波数範囲であり得る。前に述べられた例において、磁化ダイナミクスの周波数は、240MHzであり得る。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】